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閉塞性黄疸
外科主任医長 牧野 一郎
“黄疸”と聞くと、体が黄色くなること、とご存知の方も多いと思いますが、閉塞性黄疸という言葉はあまり聞き慣れないかもしれません。黄疸はその原因によって治療法が異なります。閉塞性黄疸は外科手術を要することが多かったので別名外科的黄疸とも呼ばれていましたが、近年は内視鏡的処置なども進歩し、さまざまな方法で治療が行われるようになってきました。今回は、この閉塞性黄疸についてご紹介します。
外科外来 TEL 093-671-9312
十二指腸乳頭 胆管開口部を電気メスで切開する
左右肝内胆管が腫瘍により泣き別れ状態(矢印)
経皮ルートを用い2本の金属ステントを留置(矢印)
切開した十二指腸乳頭より結石を摘出する
結石を鉗子で把持する
図2
図5
図1 胆道解剖図
どんな病気? 黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じます。原因としては、①溶血によるもの②肝細胞の障害によるもの ③胆汁の流れの障害によるもの ④体質によるもの、などがあります。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されます(図1)が、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼びます。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となります。
症状は? 皮膚や粘膜が黄色くなってきます。また、全身の皮膚のかゆみや尿の色が濃くなる、灰白色便や腹痛、熱発、全身倦怠、食欲不振などの症状を伴うこともあります。黄疸が長びくと、肝臓をはじめとしてさまざまな臓器障害を引き起こします。また、胆管炎が生じ重篤な状態に陥ることもあります。
診断は? 血液検査では、ビリルビン値やγ-GTP、アルカリフォスファターゼなどの胆道系酵素値が上昇します。腹部エコー、CT、MRなどの画像検査では結石や腫瘍が認められたり、閉塞部位の上流側の胆管が拡張している所見が得られます。
治療は? 良性と悪性の病気では、治療の最終目標が異なります。【良性の場合】 多くは総胆管結石によるものです。この場合は結石を除去すれば治療は終了です。ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)といわれるカメラによる手技を用いて、結石の除去を行っています(図2)。
口からカメラを飲んでいただき、十二指腸まで挿入し胆管の開口部から造影検査を行います。結石の存在が確認できたら、バスケット鉗子やバルーンを用いて結石を胆管から除去します。胆管の出口は狭いため、電気メスで切開したり、バルーンで押し広げた後に結石を取り出します。当院におけるERCPは、安 消化器外科部長により導入され、最近はあらたなスタッフも加わり、件数は年々増加しています。昨年は約200例のERCPを行っています。(図3)
【悪性の場合】 胆道がんや膵がんなどによる胆管の閉塞の場合、根本的治療は手術による病変部の摘出ですが、より安全な手術・術後経過となるように、手術前に黄疸を改善します。前述のERCPの手技を用い、閉塞部をくぐらせるようにプラスティックのチューブを胆管内に挿入し、胆汁が流れるようにします。1本で不十分な場合は、複数本を留置することもあります(図4)。カメラを用いた方法が困難な場合は、体外から肝臓内にチューブを挿入する方法を取ります。がんの進行度などで根治手術が困難な場合は、抗がん剤などによる治療が選択されますが、この際も黄
疸を改善することが必要であり、プラスティックチューブやメタリックステント(金属でできた網目状の筒)(図5)を胆管内に留置し胆汁が流れるようにします。
おわりに 閉塞性黄疸は、その原因と閉塞部位により、さまざまな治療法や技術が要求される分野ですが、当院では最新の機器や手技を導入し、検査・治療に取り組んでいます。
おう だん
かん し
図3ERCP総数
2004年
250
200
150
100
50
02005年 2006年 2007年 2008年
2本の肝内胆管が腫瘍により泣き別れ状態 (矢印)
それぞれの胆管にチューブステントを留置(矢印)
十二指腸内から見た2本のチューブステント
図4
ERCPスタッフ
総胆管
特集 閉塞性黄疸
特集 閉塞性黄疸
閉塞性黄疸
外科主任医長 牧野 一郎
“黄疸”と聞くと、体が黄色くなること、とご存知の方も多いと思いますが、閉塞性黄疸という言葉はあまり聞き慣れないかもしれません。黄疸はその原因によって治療法が異なります。閉塞性黄疸は外科手術を要することが多かったので別名外科的黄疸とも呼ばれていましたが、近年は内視鏡的処置なども進歩し、さまざまな方法で治療が行われるようになってきました。今回は、この閉塞性黄疸についてご紹介します。
外科外来 TEL 093-671-9312
十二指腸乳頭 胆管開口部を電気メスで切開する
左右肝内胆管が腫瘍により泣き別れ状態(矢印)
経皮ルートを用い2本の金属ステントを留置(矢印)
切開した十二指腸乳頭より結石を摘出する
結石を鉗子で把持する
図2
図5
図1 胆道解剖図
どんな病気? 黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じます。原因としては、①溶血によるもの②肝細胞の障害によるもの ③胆汁の流れの障害によるもの ④体質によるもの、などがあります。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されます(図1)が、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼びます。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となります。
症状は? 皮膚や粘膜が黄色くなってきます。また、全身の皮膚のかゆみや尿の色が濃くなる、灰白色便や腹痛、熱発、全身倦怠、食欲不振などの症状を伴うこともあります。黄疸が長びくと、肝臓をはじめとしてさまざまな臓器障害を引き起こします。また、胆管炎が生じ重篤な状態に陥ることもあります。
診断は? 血液検査では、ビリルビン値やγ-GTP、アルカリフォスファターゼなどの胆道系酵素値が上昇します。腹部エコー、CT、MRなどの画像検査では結石や腫瘍が認められたり、閉塞部位の上流側の胆管が拡張している所見が得られます。
治療は? 良性と悪性の病気では、治療の最終目標が異なります。【良性の場合】 多くは総胆管結石によるものです。この場合は結石を除去すれば治療は終了です。ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)といわれるカメラによる手技を用いて、結石の除去を行っています(図2)。
口からカメラを飲んでいただき、十二指腸まで挿入し胆管の開口部から造影検査を行います。結石の存在が確認できたら、バスケット鉗子やバルーンを用いて結石を胆管から除去します。胆管の出口は狭いため、電気メスで切開したり、バルーンで押し広げた後に結石を取り出します。当院におけるERCPは、安 消化器外科部長により導入され、最近はあらたなスタッフも加わり、件数は年々増加しています。昨年は約200例のERCPを行っています。(図3)
【悪性の場合】 胆道がんや膵がんなどによる胆管の閉塞の場合、根本的治療は手術による病変部の摘出ですが、より安全な手術・術後経過となるように、手術前に黄疸を改善します。前述のERCPの手技を用い、閉塞部をくぐらせるようにプラスティックのチューブを胆管内に挿入し、胆汁が流れるようにします。1本で不十分な場合は、複数本を留置することもあります(図4)。カメラを用いた方法が困難な場合は、体外から肝臓内にチューブを挿入する方法を取ります。がんの進行度などで根治手術が困難な場合は、抗がん剤などによる治療が選択されますが、この際も黄
疸を改善することが必要であり、プラスティックチューブやメタリックステント(金属でできた網目状の筒)(図5)を胆管内に留置し胆汁が流れるようにします。
おわりに 閉塞性黄疸は、その原因と閉塞部位により、さまざまな治療法や技術が要求される分野ですが、当院では最新の機器や手技を導入し、検査・治療に取り組んでいます。
おう だん
かん し
図3ERCP総数
2004年
250
200
150
100
50
02005年 2006年 2007年 2008年
2本の肝内胆管が腫瘍により泣き別れ状態 (矢印)
それぞれの胆管にチューブステントを留置(矢印)
十二指腸内から見た2本のチューブステント
図4
ERCPスタッフ
総胆管
特集 閉塞性黄疸
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