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注意 未完成です(2017 年 10 月 3 日現在)。3 週間ぐらいに 1 度更新します。気力が続かず、未 記入の箇所があり、その箇所を後から書いたために、節や章を大幅に修正することがあり ます(ありました)。 文の繋がりが分からなかったり、変な議論をしていたり、間違っていたら、知らせてく ださい。 @がある箇所は「見直しをしていない」「学習中」「書く気力がない」のいずれかです。 進捗状況 1 章はちょびっとできました。 2 章は考え中。 3章以下は基本的に書く気力がありません。

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注意

未完成です(2017 年 10 月 3 日現在)。3 週間ぐらいに 1 度更新します。気力が続かず、未

記入の箇所があり、その箇所を後から書いたために、節や章を大幅に修正することがあり

ます(ありました)。

文の繋がりが分からなかったり、変な議論をしていたり、間違っていたら、知らせてく

ださい。

@がある箇所は「見直しをしていない」「学習中」「書く気力がない」のいずれかです。

進捗状況

1 章はちょびっとできました。

2 章は考え中。

3 章以下は基本的に書く気力がありません。

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目次

1 章 量子化学

1.1 シュレディンガー方程式へのヒント/1.1.1 黒体輻射/1.1.2 Compton 効果/1.1.3

ド・ブロイ波/1.2 シュレディンガー方程式/1.2.1 古典的な波の式の導出/1.2.2 電子の

波/1.2.2.1 左進行の電子波/1.3 波の重ね合わせ/1.3.2 確率解釈/1.4 演算子/1.4.1 波

動関数から求まる演算子/1.4.2 その他の演算子/1.4.3 期待値/1.4.3.1 エルミート演算

子/1.5 交換関係/1.6 不確定性関係/1.6.1 不確定性算術/1.7 波動力学の他の表現方法/

1.7.1 固有関数の連続性を表す数学的空間/1.7.1.1 集合がベクトル空間になる条件

/1.7.2 固有関数の規格直交性を導入する計量ベクトル空間/1.7.2.1 固有関数の状態ベク

トル表示/1.7.3 群/1.8 粒子の統計的性質

2 章 化学熱力学

2.1 平衡状態の取扱い/2.1.1 系と外界、符号のルール/2.1.1.1 外界の性質/2.1.2 状態

量/2.1.2.1 示量性変数と示強性変数/2.1.4 粒子の集合体の見た目/2.2 平衡状態に対す

るミクロな視点/2.2.1 大数の法則と中心極限定理/2.2.2 当重率の仮定/2.2.2.1 気体分

子運動論/2.2.2.2 孤立系における粒子の分布/2.2.2.3 閉鎖系における粒子の分布

/2.2.2.4 開放系における粒子の分布 /2.2.3 エネルギー準位への占有のされ方による粒

子の分布/2.2.3.1 Boltzmann 分布/2.2.3.2 Fermi-Dirac 分布/2.2.3.3 Bose-Einstein 分

布/2.3 熱現象の取扱い/2.3.1 熱量/2.3.2 内部エネルギー/2.3.2.1 熱量と仕事の変換/

2.4 自発的な方向を決める量/2.5 状態変化

3 章 分光化学

3.1 分子の並進エネルギー/3.1.1 量子論敵な粒子がもつ並進エネルギー/3.1.2 古典的な

粒子がもつ並進エネルギー/3.2 分子の振動エネルギー/3.2.1 量子論的な粒子がもつ振動

エネルギー/3.2.2 古典的な粒子がもつ振動エネルギー/3.3 分子の回転エネルギー/3.3.1

量子論的な粒子がもつ回転エネルギー/3.3.2 古典的な粒子がもつ回転エネルギー/3.4 比

熱の温度変化

4 章 水素および多電子原子

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4.1 水素原子のエネルギー/4.2 Slater 則/4.3 電子配置/4.4 項の記号/4.5 中性原子の

ラジカル化/4.5.1 イオン化エネルギー/4.5.2 電子親和力/4.5.3 酸化還元電位/4.6 分極

率と分子の大きさ/4.7 周期表と中性原子の性質/4.8 放射性

5 章 化学種の結合の種類

5.1 強い化学結合力/5.2 弱い化学結合力

6 章 化学種の立体構造

7 章 電気化学

8 章 多原子分子の安定性

8.1 熱力学的な安定性/8.2 共有結合性分子の π結合による安定化/8.3 結晶場理論/8.4

配位子場理論

9 章 化学種の反応性

1 章の付録

A プランクの公式/B エネルギーと質量の等価性/C 物質波/D ボーアモデル/E 解像度と光

の波長/F フーリエ級数/G マクロとミクロにおけるエネルギー保存則/H 粒子数が一定で

ないときの量子論/I ポテンシャルエネルギーの位置依存性/J マクロとミクロにおける保

存則

2 章の付録

2.A ラグランジュ未定定数法による Boltzmann 分布則の導出/2.B 気体についての状態方

程式

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1 章 量子化学

中性分子、帯電したイオン、電子が 1 個ペアを作らずに存在するラジカルをまとめて化

学種という。その化学種にエネルギーを与えると、化学種同士を反応させたり、化学種の

形を変形させることができる。そのためのエネルギーとしては「化学エネルギー」「光エ

ネルギー」「熱エネルギー」「電気エネルギー」「力学的エネルギー」など多くの形態が

あり、その総和は一定になる。

この章では「光エネルギー」を取り扱う上で使用する量子化学を説明する。ただ、「光

エネルギー」と「他のエネルギー」への変換については後の章で扱うことにして、この章

では量子化学の主要なテーマである「ミクロな波動性をもつ粒子の振る舞い」を記述する

方法を考える。

(内容概観)

エネルギーの量子化および物質の粒子性と波動性に関する実験結果をもとに、力学的エ

ネルギー保存則からミクロの粒子が満たすシュレディンガー方程式を発見する(1.1 節~

1.2 節)。そこで発見した波動関数に対して、与えられた要請を考える(1.3 節)。また、シ

ュレディンガー方程式を見つける過程で現れた演算子表現について、位置と運動量から求

まる物理量に対する演算子を導き、固有関数と合わせて、その性質について説明する(1.4

節)。測定の順番によって物理量が異なる値をとる可能性について触れ(1.5 節)、撹拌の影

響を含めて一般的に考える(1.6 節)。固有関数がもつ性質である関数の連続性と規格直交

性をより一般に表現し、他の量子化学的表現を考える(1.7 節)。1.7 節で説明した手法を取

り入れつつ、粒子の統計的特徴について触れる(1.8 節)。

1.1 シュレディンガー方程式へのヒント

この節ではミクロな粒子がもつ特性を表した実験結果を見ていく。それらの実験結果(エ

ネルギーの量子化、粒子の波動性)を用いて、1.2 節ではミクロな粒子が満たすシュレディ

ンガー方程式H𝜓 = 𝐸𝜓およびiℏ ∂ψ/ ∂t = Eψを比較的簡単かつ自然に発見する。

1.1.1 黒体輻射~エネルギーの量子化~

1900 年ドイツのマックス・プランクは黒体のスペクトルを説明するために、(式 1.1)を

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導出した。この式は現代から見ると、量子化されたエネルギーhνをもつ振動子がボルツマ

ン分布に従うと仮定して求めることができる[付録 A]。

もし、エネルギーという普遍的な量が量子化されている(式 1.2)ならば、あらゆる物理

現象に現れ、h も同じ値になるはずである。実際、ミリカンの光電効果の実験の結果も低

温下における比熱の変化を予測するときにも、同じ h を用いて計算できるため、このエネ

ルギーの量子化は普遍的な事実であると示される。

(式 1.1) u(ν, T) =8𝜋ℎ𝜈3

𝑐31

exp(ℎ𝜈/𝑘𝐵𝑇) − 1

(式 1.2) ΔE = hν

1.1.2 Compton 効果~粒子としての光(光子)~

エネルギーの量子化とは別に、Compton 効果という現象がある。これは電子に X 線を照

射したときに、まるで非弾性衝突をしたかのように、電子が運動量をもち、散乱 X 線の波

長が長くなる現象である。この実験事実を解釈するためには、光は粒子性をもつと考える

必要がある。

もし、光が粒子であれば、アインシュタインのエネルギーと質量の等価性[付録 B]によ

って、(式 1.3)が成立する。

(式 1.3) hν = √𝑚2𝑐4 + p2𝑐2

光には質量がないため、m = 0であり、光の振動数、波長、速度の関係式λν = cを用いる

と、(式 1.4)が成立する。この(式 1.4)は Compton 効果の結果を定量的に示すことができ

る。したがって、光はヤングの実験により波であることが示されていたが、この結果によ

り、粒子(光子)でもあることが示された。

(式 1.4) p =h

λ

ちなみに、質量のある粒子の場合は𝑚𝑐2(1 + 𝑝2/𝑚2𝑐2)1/2であり、粒子の速度が光と比べ

て小さいならば、(式 1.5)が成立する。mc2は静止エネルギーという。

(式 1.5) hν = mc2 +𝑝2

2𝑚

1.1.3 ド・ブロイ波~波としての物質波~

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1924 年フランスのルイ・ド・ブロイは質量を持たない物質だけでなく、質量をもつ粒子

も位相速度を持つ随伴波を生じると考え、(式 1.4)を導出した[付録 C]。そして、不自然な

仮定(電子の粒子性のみを使用していたことによる)を用いていたボーアのモデルを自然な

ものに書き改めることに成功した[付録 D]。

そして、この(式 1.4)が粒子に対しても成立することは、電子や原子、中性子に対する

回折実験により示された。

(式 1.4) p =h

λ

1.1 節 参考文献

[1] マッカーリサイモン 物理化学(上) 1 章

[2]

1.2 シュレディンガー方程式

もし、電子がほぼ粒子と見なせる状態1であれば、電子の運動は古典力学の運動方程式を

用いて表すことができる。しかし残念なことに、小さい質量と体積をもつ粒子は観測する

ためには短い波長の光を当てる必要がある[付録 E]。すると(式 1.4)により粒子はその小

さい波長から大きな運動量を受け取ってしまうため、粒子はその光が当たった位置から動

く。そのため、初期状態における位置や運動量を正確に測定することができず、正確な位

置と運動量に関する情報が必要な運動方程式を用いることができない2。

しかし、(式 1.4)は電子が位相速度をもつと仮定することで導くことができた。そして、

位相速度をもつ物質は波の式で表現できる。この節では波の式を用いて、電子の挙動を表

す式を見つける。

1.2.1 古典的な波の式の導出

1 λが非常に小さいとき。 2 電子(粒子)が外場の影響で大きな運動エネルギーを持てば、運動量が大きくなるので、

波長が小さくなり、このときは運動方程式が使えるのかもしれない(@)。

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電子に対する波の式を求める前に古典的な波の式を導出しよう。任意の周期をもつ波は

正弦波と余弦波の重ね合わせとして表現できるため[付録 F]、この節では簡単な一次元の

正弦波を導くことにする(図 1)。この図 1 において、波の山と谷の 1 サイクルが終わった

ときの x 軸方向の波の長さを波長といい、λと表現する。

まず、時刻t = 0において、位置x = x0に存在する波の高さがゼロで、x軸正方向が山であ

る波を考える。このときの波の式は(式 2.1)のようになる3。

(式 2.1) y = sin(2πx0/λ)

次に、時刻t 、位置xにおける波の式を求める。波が右方向にvt動いたとする(図 1 破線)。

このときの位置はx = x0 + vtとなる。x0 = 𝑥 − 𝑣𝑡を(式 2.1)に代入すると、(式 2.2)となる。

(式 2.2)は t 秒毎に左から波が来ていると考えることもできる。

(式 2.2) y = sin(2πx/λ − 2πvt/λ)

ここで位相速度を考えると、v = λ/Tを用いることで、(式 2.3)を導くことができる。ま

た、波数として、k = 2π/λを用い、角速度として、ω = 2π/Tを用いると、(式 2.4)に変形す

ることができる。1/T = νを用いて(式 2.5)ともできる。

(式 2.3) y = sin(2𝜋𝑥/𝜆 − 2𝜋𝑡/𝑇)

(式 2.4) y = sin(kx − ωt)

(式 2.5) y = sin(2πx/λ − 2πνt)

図 1. 正弦関数と波の式

1.2.2 電子の波-シュレディンガー方程式-

(式 2.5)に波かつ粒子としての電子が満たす関係(式 1.4)とエネルギー量子化(式 1.2)

を代入する。1 つ目は(式 1.4)より、1/λ = P/hを代入し、2 つ目はエネルギーの量子化(式

1.2)より、ν = E/hを代入する。ここでゼロ点エネルギーを基準(E0 = 0)とし、ΔE = Eとし

た。すると、(式 2.6)が求まる。

(式 2.6) y = sin (2𝜋𝑃

ℎ𝑥 −

2𝜋𝐸

ℎ𝑡)

このままの形(式 2.6)では、エネルギーや運動量が分かっていないと使えない式になる。

3 x = 0, λ/4, 3λ/4, λにおける波の高さがy = 0, 1, −1, 0になるように調整した。

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運動量に関する項もエネルギー保存則を用いて、エネルギーに関する項に直してみる。そ

の上で、粒子数も保存されると仮定し、エネルギー保存則として、E = 𝑃2/2𝑚 + 𝑉(x)を用

いる4[付録 G,H]。

また、運動量の二乗は波の式(式 2.6)を x について 2 階微分することで、かっこの外に

出すことができるので、(式 2.7)のように書くことができる。ここでℏ = h/2πとした(ディ

ラク定数)。

(式 2.7) 𝜕2𝑦

𝜕𝑥2= −

𝑃2

ℏ2𝑦 = −

2𝑚(𝐸 − 𝑉(𝑥))

ℏ2𝑦

整理すると、波の式は変わらず微分演算するとエネルギーが求まるという形になる(式

2.8)。このかっこ内のことを演算子と呼び、エネルギーを求めるこの演算子をハミルトニ

アンという。また、時間に依存した項が演算子に含まれていないため、この式は定常波の

シュレディンガー方程式という。

(式 2.8) (−ℏ2

2𝑚

𝜕2

𝜕𝑥2+ 𝑉)𝑦 = 𝐸𝑦

次に、時間に依存するエネルギーを求める式を考える。その上で、波の式が変わらない

ようにするには、1 階微分しても関数が変わらない指数関数を用いる必要がある。このと

き、(式 2.8)と整合性が取れるように、指数関数に虚数を加えた(式 2.9)を考えることにな

る。また、波数や角速度を用いて、(式 2.10)のように直すこともできる。

(式 2.9) ψ = exp(i (𝑃

ℏ𝑥 −

𝐸

ℏ𝑡))

(式 2.10) ψ = exp(𝑖𝑘𝑥 − 𝑖𝜔𝑡)

この新たな波の式は先の古典的な波の式と区別するために波動関数という。この波動関

数(式 2.9)を時間について 1 階微分し整理すると、時間依存するシュレディンガー方程式

を求めることができる(式 2.11)。

(式 2.11) 𝑖ℏ∂

∂t𝜓 = 𝐸𝜓

1.2.2.1 左進行の電子波

4 相対論効果が絡むような粒子数が変化したり、質量が変化する場合は今使っているエネ

ルギー保存則では両辺が合わなくなる。

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(式 2.9)の波動関数を位置で 1 階微分し整理すると、(式 2.12)となる。(式 2.12)は右進

行の電子波を表しているので、−iℏ ∂/ ∂xという演算は右方向に進む運動量の大きさを表し

ている。

(式 2.12) −𝑖ℏ𝜕

𝜕𝑥𝜓 = 𝑝𝜓

したがって、左方向の電子波を求めるときは、波動関数の中身をx → −xとすれば良いと

わかる5(式 2.13)。

(式 2.13) ψ = exp(−𝑖𝑘𝑥 − 𝑖𝜔𝑡)

左進行の波と右進行の波が重なっているときは、波の重ね合わせの原理(1.3 節)を物質

波にも適用して、次のように表現することができる。

Ψ = Aexp(−ikx − iωt) + Bexp(ikx − iωt)

そして、時間に関する項をまとめると、(式 2.14)のように位置と時間を別々に考えるこ

とができる。また、時間と空間が独立していると見なせる状況において、波動関数として

ψ(x)のみを計算して、後から時間に関する項を掛けることで波動関数を求めることができ

る6。

(式 2.14) {𝐴𝑒𝑥𝑝(−𝑖𝑘𝑥) + 𝐵𝑒𝑥𝑝(𝑖𝑘𝑥)} exp(−𝑖𝜔𝑡) = ψ(x)exp(−iωt)

1.3 波の重ね合わせ(@)

固有値固有関数について。離散固有値からはシグマを用いて、固有関数の波の重ね合わ

せを考えることができる。連続固有値からはインテグラルを用いて、固有関数の波の重ね

合わせを考えることができる。また、離散固有値の固有関数からは規格直交性がクロネッ

カーのデルタ関数として求まる。連続固有値の固有関数からは規格直交性がディラックの

デルタ関数として定まる。

5 古典的な波ではy = sin(2πx/λ − 2πνt)が右進行の波であり、y = sin(2πx/λ + 2πνt)が左進

行の波である。そこで、y = −sin2π(−x/λ − νt)と変形すれば、指数関数の中身と一致す

る。

6この pdf で用いた波の式はポテンシャルの影響を受けていない波である(自由粒子に相当

する)。したがって、ポテンシャルが働くときは波の形も変わるのに、演算子の形は変わら

ないのか(@)。

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1.3.2 確率解釈(@)

ここで、波動関数の自身と自身の複素共役7との積は粒子の存在確率密度を表すとする。

このとき、微小空間における粒子の存在確率は、(式 3.1)のように表現できる。

(式 3.1) 𝜓∗𝜓𝑑𝜄 = |ψ|2𝑑𝜄

粒子がある範囲内に束縛されているなら、その範囲内に渡って積分すると、必ず粒子は

存在するため、1 になるはずである(式 3.2)。また、粒子が束縛されていないときは、積分

値が発散し、粒子はどこにでも存在しうることになる。しかし、波動関数は束縛されてい

ないとき、指数関数の形のまま保持されるため、無限遠点(x → ±∞)ではψ = 0となる。

(式 3.2) ∫ |ψ|2𝑑𝜄 = 1

(式 3.1)は他の原理からは導出できないが、種々の実験結果から、この要請の正しさは

示される。

例えば、有機反応における有機電子論、錯体における結晶場理論、分子の構造を予測す

るのに使われる VSEPR 理論などは電荷密度を用いて理論を考えているため、電荷密度を

−e|ψ|2dιとして計算すれば、実験結果と一致するはずである。

しかし、電荷密度を考えるとき、電子の位相に関する情報が絶対値を考えるため消えて

しまう。そのため、位相を考慮した理論を用いれば、電荷密度以上の情報が得られること

は想像に難しくない。例えば、フロンティアオービタル理論、配位子場理論、Walsh 則な

どは有機電子論、結晶場理論、VSEPR 理論よりも正確に実験との比較ができる理論である。

1.4 演算子

この節ではまず、位置と運動量の演算子表現を求め、次にその他の古典的な物理量に対

する演算子表現を求める8。

7 存在確率は実数の値を取る必要がある。波動関数は一般に複素数であるため、複素共役

を取らないと実数にはならない。 8 古典力学では位置と運動量の組(正準変数)が定まれば、状態を一意に決定できるため、

物理量も正準変数で決めることができる。しかし、ミクロでも正準変数だけ定めれば、状

態を一意に決定できるという保証は今のところ自分はできない。したがって、これを仮定

して得た物理量が実測値と一致することから、この pdf ではそれを保証する。

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1.4.1 波動関数から求まる演算子

1.2 節では演算子と波動関数を作用させて、演算子に対応する物理量を求めることがで

きた。一般的に書くと(式 4.1)となり、ハットがついているAを線形演算子9、𝑎を固有値と

いい全体で固有値方程式という。

また、この節以降ではψを一般に固有関数といい、ハミルトニアンを満たすときに限り

波動関数と呼ぶことにする。

(式 4.1) A𝜓 = 𝑎𝜓

まず、波動関数から運動量の演算子とハミルトニアンを求める。(式 2.9)より、波動関

数は𝜓 = 𝑒𝑥𝑝(𝑖𝑃𝑥/ℏ − 𝑖𝐸𝑡/ℏ)となる。位置について 1 階偏微分すると運動量が求まり(式

4.2)、2 階偏微分するとエネルギーが求まる(式 4.3)。

(式 4.2) �� = −𝑖ℏ𝜕

𝜕𝑥

(式 4.3) H = −ℏ2

2𝑚

𝜕2

𝜕𝑥2+ 𝑉(𝑥)

(式 4.3)におけるポテンシャルエネルギーは位置の関数[付録 G]である。そして、(式 4.3)

ではポテンシャル項に対して微分操作を必要としないため、位置の演算子は関数と掛け算

をするという演算として考えることができる(式 4.4)。

(式 4.4) 𝑥 = 𝑥

時間に関する演算子も同じようにして考えたいが、波動関数(式 2.9)からは時間の演算

子が求められないことが分かる10。そこで、時間とは演算子で表現できるものではなく、パ

ラメータとして働くと考える11。

1.4.2 その他の演算子

エネルギー保存則からシュレディンガー方程式を推察することができたように、他の保

存則についても調べることで何か有益な情報が得られる可能性がある[付録 H]。ここでは

9 1.3 節で説明したように、重ね合わせの原理(𝜓 = 𝑐1𝜙1 + 𝑐2𝜙2)を適用できるように、

演算子は一次関数である必要がある。つまり、 ��𝜓 = ��(𝑐1𝜙1 + 𝑐2𝜙2) = 𝑐1��𝜙1 + 𝑐2��𝜙2を満

たす必要がある。 10 エネルギーで偏微分すれば求まるが、意味のある式だとは思えない。 11 場の量子論では、時間と位置は同じものとして見るらしく、時間と位置はどちらもパ

ラメータとして扱うらしい。

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角運動量の演算子を求める。

角運動量は(式 4.5)のような行列として書くことができる。一行目の成分は基底ベクト

ルを表す。たとえば、z 成分の運動量はLz = 𝑦𝑃𝑧 − 𝑧𝑃𝑦となる12。これを演算子表現すると、

(式 4.6)となる。

(式 4.5) 𝐋 = [

𝑒𝑥 𝑒𝑦 𝑒𝑧𝑥 𝑦 𝑧𝑃𝑥 𝑃𝑦 𝑃𝑧

]

(式 4.6) Lz = xPy − ����𝑥 = −iℏ [𝑥𝜕

𝜕𝑦− 𝑦

𝜕

𝜕𝑥]

これらの演算において、固有関数は微分操作が可能な関数である必要がある。微分が可

能な関数は全て連続関数となる13。エネルギーが求まる固有関数である波動関数の場合は 2

階微分可能な関数であり、なめらかな連続関数という。また、1 つに固有関数に対して、

値は 1 つだけ得ることができるため、1 価の関数である必要もある。前者のなめらかな連

続関数という条件は境界条件として、これから用いることがある。

1.4.3 期待値(@)

固有値方程式A𝜓 = 𝑎𝜓の両辺に同じ波動関数の複素共役をかけて積分した後に整理する

と、(式 4.7)となる。この(式 4.7)は、確率に取りうる物理量を掛けたものであるため、期

待値、または平均値ということができる。記号として、⟨A⟩を用いる。

(式 4.7) ⟨A⟩ = 𝑎 =∫ψ∗A𝜓𝑑𝜄

∫ 𝜓∗𝜓𝑑𝜄

1.4.3 節 参考文献

[1] マッカーリサイモン 物理化学(上) 3 章 4 章

12 後で述べるスピンの寄与が入っていない角運動量であるためLを用いた。また、z 成分

を選んだのは、右手系でも左手系でも z 成分は変わらないからである。 13 微分可能であれば、 lim

𝑥→𝑎

𝑓(𝑥)−𝑓(𝑎)

𝑥−𝑎とlim(x − a)が存在するため、次の式の第一項から第二

項への変形が可能となり、𝑙𝑖𝑚 {𝑓(𝑥)−𝑓(𝑎)

𝑥−𝑎} 𝑙𝑖𝑚{(𝑥 − 𝑎)} = lim {

𝑓(𝑥)−𝑓(𝑎)

𝑥−𝑎(𝑥 − 𝑎)} = lim(𝑓(𝑥) −

𝑓(𝑎))が成立する。そして、𝑙𝑖𝑚(𝑥 − 𝑎)はゼロに収束するため、lim(𝑓(𝑥) − 𝑓(𝑎)) = 0が成立

する。この最後の式は関数の連続性を表す定義式である。

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1.4.3.1 エルミート演算子

波の確率解釈から∫ 𝜓∗𝜓𝑑𝜄 = 1であることが分かった。ここでは、∫ 𝜓𝑖∗𝜓𝑗𝑑𝜄の値を求める。

ある演算子 ��について、異なる固有関数を作用させると、(式 4.8)、(式 4.9)が成立する。

(式 4.8) ��𝜓𝑗 = 𝑎𝑗𝜓𝑗

(式 4.9) ��𝜓𝑘 = 𝑎𝑘𝜓𝑘

(式 4.8)に左から𝜓𝑘∗を掛けて積分し、(式 4.9)は両辺複素共役を取った後、左から𝜓𝑗を

掛けて積分すると、(式 4.10)、(式 4.11)が成立する。差をとると、(式 4.12)が成立する。

(式 4.10) ∫ 𝜓𝑘∗ ��𝜓𝑗𝑑𝜏 = 𝑎𝑗∫ 𝜓𝑘

∗𝜓𝑗𝑑𝜏

(式 4.11) ∫ 𝜓𝑗(��𝜓𝑘)∗𝑑𝜏 = 𝑎𝑘

∗∫ 𝜓𝑘∗𝜓𝑗𝑑𝜏

(式 4.12) ∫ 𝜓𝑘∗ ��𝜓𝑗𝑑𝜏 − ∫ 𝜓𝑗(��𝜓𝑘)

∗𝑑𝜏 = (𝑎𝑗 − 𝑎𝑘

∗)∫ 𝜓𝑘∗𝜓𝑗𝑑𝜏

観測できる物理量は実数であるため、固有値は実数になるはずで、 j = kであれば、(式

4.13)が成立する。

(式 4.13) ∫ 𝜓∗��𝜓𝑑𝜏 − ∫𝜓(��𝜓)∗𝑑𝜏 = 0

異なる固有関数同士では∫ 𝜓𝑘∗ ��𝜓𝑗𝑑𝜏 − ∫ 𝜓𝑗(��𝜓𝑘)

∗𝑑𝜏 = 0となりそうだが、きちんと導出す

る。(式 4.13)に波の重ね合わせ(𝜓 = 𝑐1𝜓𝑗 + 𝑐2𝜓𝑘)を用いて、(式 4.13)に代入してみる。た

だし、cは複素数とする。このとき、

∫(𝑐1∗𝜓𝑗

∗ + 𝑐2∗𝜓𝑘

∗)��(𝑐1𝜓𝑗 + 𝑐2𝜓𝑘)𝑑𝜏 − ∫(𝑐1𝜓𝑗 + 𝑐2𝜓𝑘)(𝑐1∗(��𝜓𝑗)

∗+ 𝑐2

∗(��𝜓𝑘)∗) = 0

となる。第 1 項は

𝑐1𝑐1∗∫𝜓𝑗

∗��𝜓𝑗𝑑𝜏 + 𝑐2𝑐2∗∫𝜓𝑘

∗ ��𝜓𝑘𝑑𝜏 + 𝑐2𝑐1∗∫𝜓𝑗

∗��𝜓𝑘𝑑𝜏 + 𝑐1𝑐2∗∫𝜓𝑘

∗ ��𝜓𝑗𝑑𝜏

となり、第二項は

−c1𝑐1∗∫𝜓𝑗

∗��𝜓𝑗𝑑𝜏 − 𝑐2𝑐2∗∫𝜓𝑘

∗ ��𝜓𝑘𝑑𝜏 − 𝑐2𝑐1∗∫𝜓𝑘(��𝜓𝑗)

∗𝑑𝜏 − 𝑐1𝑐2

∗∫𝜓𝑗(��𝜓𝑘)∗𝑑𝜏

となり、同じ係数をまとめると、以下のようになる。

𝑐2𝑐1∗ (∫𝜓𝑗

∗��𝜓𝑘𝑑𝜏 − ∫𝜓𝑘(��𝜓𝑗)∗𝑑𝜏) + 𝑐1𝑐2

∗ (∫𝜓𝑘∗ ��𝜓𝑗𝑑𝜏 − ∫𝜓𝑗(��𝜓𝑘)

∗𝑑𝜏) = 0

上の等式が成立するには括弧の中身がゼロになる必要があるため、(式 4.14)が成立する。

(式 4.14) ∫ 𝜓𝑗∗��𝜓𝑘𝑑𝜏 − ∫𝜓𝑘(��𝜓𝑗)

∗𝑑𝜏 = 0

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∫ 𝜓𝑘∗ ��𝜓𝑗𝑑𝜏 − ∫𝜓𝑗(��𝜓𝑘)

∗𝑑𝜏 = 0

この(式 4.14)をエルミート性といい、(式 4.12)は(式 4.15)のように書き直せることが

分かる。(式 4.15)から異なる固有値を与える波動関数同士はお互いに直交することが分か

る(式 4.16)。しかし、同じ固有値を与える異なる波動関数(縮退している場合)は直交する

かどうかは任意であるため、通常直交化させる。

(式 4.15) 0 = (𝑎𝑖 − 𝑎𝑗∗)∫ 𝜓𝑗

∗𝜓𝑖𝑑𝜄

(式 4.16) ∫ 𝜓𝑗∗𝜓𝑖𝑑𝜄 = 0

1.4.3 節 参考文献

[1] マッカーリサイモン 物理化学(上) 3 章 4 章

1.5 交換関係

��𝜓 = 𝑎𝜓 の解釈を考える。これは物理量𝐴を測定したら、実測値として𝑎を得たと解釈す

ることができる。そのため、2 つの物理量を測定することは演算子を用いて表現する

と、 ����𝜓 = ��(��𝜓) = (��𝜓)𝑏 = 𝑎𝑏𝜓と書くことができる。 ����𝜓とはBを測定した直後に、A

を測定するという意味である14。

マクロな世界では測定する順番によって測定値が異なるということは考えづらいが、ミ

クロの世界では微分演算子が現れるため、測定する順番によって値が異なることがある。

これは、Compton 効果とは異なり15、本質的な不一致性である。そこで、交換子(式 5.1)を

定義し、いくつかの演算子に関して不一致性が現れるかを計算してみる。

(式 5.1) [��, B] = ���� − ����

今まで説明した演算子に対する交換子について、非ゼロになるもの(同時に測定できな

い物理量)はいくつかあり、(式 5.2)、(式 5.3)などである。

(式 5.2) [z, P𝑧] = iℏ

(式 5.3) [L𝑥, L𝑦] = iℏL𝑧

14 シュレディンガー描像(@)の波動関数は時間をパラメータとして持っているため、B を

測定したらすぐに A を測定しないと波動関数が変わってしまう可能性がある。 15 Compton 効果では測定する光によって、位置と運動量が乱されたが、この節ではある物

理量の組に対しては、測定する前から不確実性を持つことを示す。

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(式 5.3)について計算過程を記す。波動関数を忘れずに中身を解くと次のようになる。

[Lx, Ly]ψ = [yPz– zPy, zPx– xPz]ψ

右辺の左から 1 番目が 3 番目に作用したのが、下の式の右辺 1 項目である。それぞれの

対応関係を 1+3’→1 という風に簡略化して書くと、1+4’→2, 2+1’→3, 2+2’→4, 3’+1→

5, 3’+2→6, 4’+1→7, 4’+2→8 となる。

[Lx, Ly]ψ = y(Pzz)Pxψ– ����𝐳����𝐳𝛙– ����𝒚����𝒙𝝍

+ zPyxPzψ– {zPxyPzψ– ����𝒙����𝒚𝝍– ����𝐳����𝐳𝛙+ x(Pzz)Pyψ}

同じ軸方向の演算子について微分演算子が左隣にあるとき、別々に動かすことができな

いため、カッコで括っている。しかし、それ以外の演算子は順番を入れ替える事ができる。

その結果、太字で記した項はお互いに消え、下の式となる。

[Lx, L𝑦]ψ = y(Pzz)Pxψ+ zPyxPzψ– zPxyPzψ– x(Pzz)Pyψ

P𝑧��のかたまりがあるため、z��𝑧のかたまりを作れば、綺麗にまとまり、以下のようにして、

交換子が非ゼロであることを求めることができる。

[Lx, L𝑦]ψ = (Pzz)[����𝑥 − 𝑥��𝑦]𝜓 + (����𝑧)[𝑥��𝑦 − ����𝑥]ψ = [𝑥��𝑦 − ����𝑥][����𝑧 − ��𝑧��]𝜓 = 𝑖ℏ��𝑧𝜓

交換子がゼロになる例としては全角運動量とある軸方向の角運動量がある(式 5.4)。こ

の計算も煩雑であるため、記しておく。

(式 5.4) [L2, Lz] = 0

[L2, Lz]ψ = [Lx2 + Ly

2 + Lz2 , Lx]ψを展開すると、次のようになる。

[L2, Lz]ψ = ��x𝟐 ��𝐱𝛙+ Ly

2 Lxψ+ Lz2Lx𝜓– {��𝐱��𝐱

𝟐𝛙+ LxLy2ψ + LxLz

2ψ}

太字のところは同じ部分であるため、お互いに消える。残りの部分は角運動量の交換関

係をうまく使うと綺麗に書くことができ、以下のようになる。

[L2, Lz]ψ = L𝑦(LyLx − LxLy) + ��𝒚��𝒙��𝒚 + Lz(LzLx − LxLz) + ��𝐳��𝐱��𝐳 − (LxLy − LyLx)Ly − ��𝒚��𝒙��𝒚

− (LxLz − LzLx)L𝑧 − ��𝐳��𝐱��𝐳 = −iℏLyLz + iℏLzLy − iℏLzLy + iℏLyLz = 0

1.5 節 参考文献

[1] マッカーリサイモン 物理化学(上) 3 章 4 章

[2] 類家正稔 詳解 量子化学の基礎

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1.6 不確定性関係(@)

1.5 節で計算した交換関係(観測値の不一致性)に Compton 効果などの影響を入れたもの

に、以下の小澤の不等式がある。

(式 6.1) ε(A)η(B) + ε(A)σ(B) + σ(A)η(B) ≥1

2|[��, ��]|

(式 6.1)について、@@@@とすれば、位置と運動量に関する不確定性関係として、(式 6.2)

を導くことができる。

(式 6.2) δxδPx ≥ ℏ/2

上で説明した不確定性関係は、ミクロの粒子がもつ普遍的な性質と観測することにより

生じる撹拌の影響を含めた式となっている。統計力学などで古典近似を用いるときに使わ

れる位置と運動量の不確定性関係はハイゼンベルクの不確定性関係なので、そちらについ

ても説明する。

粒子をΔxの範囲内に見出すことを考える。粒子を観測するにはそれに対応した波長の光

を当てる必要がある[付録 E]。Δxに相当する光の波長をΔx~λと書くと、粒子は Compton 効

果によって運動量を持つため、粒子の位置と運動量の積について、ΔxΔPx~𝜆 × ℎ/𝜆 = ℎが成

立する16。この(式 6.3)をハイゼンベルクの不確定性関係という。

(式 6.3) ΔxΔPx~ℎ

ハイゼンベルクの不確定性関係には時間とエネルギーの不確定性関係もある。しかし、

この pdf ではその導出は考えない。理由は 2 つあり、1 つが対象によって表式が異なるか

らであり、もう 1 つは時間の演算子が考えられないからである。

1.6.1 不確定性算術(@)

具体的な問題にまだ入っていないが、不確定性算術という不確定性関係を用いた近似計

算を紹介する。エネルギーは位置(ポテンシャル)と運動量の関数であるため、(式 6.2)を

用いれば、位置か運動量の関数に直すことができる。そして、エネルギーが最小になると

きの値を求め、その値を位置または運動量の関数に代入することで、エネルギー最小値を

推測することができる。

16 レンズの解像度が波長に比例することや、光学理論を用いた導出はいつか書く。

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例 1. 一次元調和振動子

E =P2

2𝑚+

1

2𝑚𝜔2𝑥2と書くことができる。δxδp ≥ ℏ/2を用いると、E ≤

P2

2𝑚+

ℏ2

8𝑚𝜔2(𝑝)−2と

できる。エネルギーが最小になるときの運動量の値は∂E/ ∂p = 0より、p2 = ℏmω/2となり、

E ≤ ℏω/2となる。この等号は後の章で導出する調和振動子のゼロ点エネルギーと一致する。

例 2. 水素型原子

E =p2

2m−

Ze2

4𝜋𝜀𝑟と書くことができる。

例 3. ボーア半径から水素原子のエネルギーを推測

あくまで近似式であるため、例 1 のように一致することもあれば、例 2 のように一致し

ないときもある。エネルギーのオーダーを求めるときには有益である。

変分法の根拠(@)

1.6 節 参考文献

[1]

[2] Olaf Nairz, Markus Arndt, and Anton Zeilinger,"Experimental verification of

the Heisenberg uncertainty principle for fullerene molecules"PHYSICAL REVIEW A,

VOLUME 65, 032109

1.7 波動力学(シュレディンガー方程式)の他の表現方法

この節では波動力学の他の表現方法を考える。具体的にはベクトル表示、行列表示、群

を用いた表現である。そのために、1.6 節までに説明した固有関数の性質について、その

演算規則を抽象化してみる。

1.6 節までで説明した式を書き出すと、次のようなものがある。一行目は波の重ね合わ

せであり、波を足しても引いても定数倍しても、波を表現できることを意味する。二行目

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は確率解釈であり、波動関数の二乗が確率を表現するため、波動関数は連続性と一意性が

要請される。連続性は波の重ね合わせとも通じる部分である。三行目はある物理量を測定

すると、波動関数が実数倍されることを表している。四行目は異なる固有値を与える波動

関数同士の積分はゼロになることを表している。

ψ = ∑ 𝑐𝑖𝜙𝑖𝑖

∫|ψ|2𝑑𝜏 = 1

A𝜓 = 𝑎𝜓

∫ 𝜓𝑗∗𝜓𝑘𝑑𝜄 = 0(𝑖𝑓𝑗 ≠ 𝑘)

まとめると、量子化学において、固有関数自身の性質としては連続性が大切であり、固

有値を求めるときの性質としては同じ波動関数同士の積分は 1 になり、異なる波動関数同

士の積分は 0 になることが大切である。

1.7.1 固有関数の連続性を表す数学的空間

関数の連続関数を表現する空間としてはベクトル空間というのがある。ベクトル空間は

連続関数の集合の一般的な表現であり、固有関数の他の同値な表現を考えることができる。

この節では集合がベクトル空間になるための条件を説明し、連続関数の集合がその条件を

満たしていること他にどのような表現があるのかを確かめる。

1.7.1.1 集合がベクトル空間になる条件

集合Vが 5 個のベクトルに関する条件を満たし、集合Vとは無関係に定義される外部の集

合Fが 5 個のスカラーに関する条件を満たすとする。このとき、集合Vをベクトル空間とい

い、そのの元をベクトルという。そして、外部の集合Fの元をスカラーという。

○ ベクトル(Vector)に関する条件

ベクトルに関する条件とはベクトル和の規則とゼロベクトルと逆ベクトルの導入であり、

次の 5 つの条件である。

(V1) ∀𝒂, 𝒃 ∈ 𝑉 ⇒ 𝒂 + 𝒃 ∈ 𝑉

(V2) ∀𝒂, 𝒃 ∈ 𝑉 ⇒ 𝒂 + 𝒃 = 𝒃 + 𝒂

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(V3) ∀𝒂, 𝒃 ∈ 𝑉 ⇒ (𝒂 + 𝒃) + 𝒄 = 𝒂 + (𝒃 + 𝒄)

(V4) ∃𝟎 ∈ V𝑠. 𝑡. ∀𝒂 ∈ 𝑉 ⇒ 𝒂 + 𝟎 = 𝒂

(V5) ∃𝒃 ∈ Vs. t. ∀𝒂 ∈ 𝑉 ⇒ 𝒂 + 𝒃 = 𝟎

○ スカラー(Scalar)に関する条件

スカラーに関する条件とは分配則とスカラーが乗法単位元をもつことであり、次の 5 つ

の条件である。

(S1) ∀k ∈ F, ∀𝒂 ∈ V ⇒ k𝒂 ∈ V

(S2) ∀k,m ∈ F,∀𝒂 ∈ V ⇒ (k + m)𝒂 = k𝒂 + m𝒂

(S3) ∀k ∈ F,∀𝒂, 𝒃 ∈ V ⇒ k(𝒂 + 𝒃) = k𝒂 + k𝒃

(S4) ∀k,m ∈ F, ∀𝒂 ∈ V ⇒ (km)𝒂 = k(m𝒂)

(S5) ∃1 ∈ Fs. t. ∀𝒂 ∈ V ⇒ 1𝒂 = 𝒂

まとめると、「(Ⅰ)ベクトル和やスカラー積が定義できる集合Vの元について17、(Ⅱ)ベ

クトル和やスカラー積を施して得た結果も集合Vの元であり18、(Ⅲ)ベクトルについては逆

元とゼロ元が存在し、スカラーについては乗法単位元が存在する19」となる。

検証. 固有関数~連続関数~

値が複素数になる連続関数の集合{fi(x)}におけるベクトル和は「𝑓1(𝑥) + 𝑓2(𝑥)」のように

定義し、スカラー積は「𝑐𝑓1(𝑥)」と定義する。このとき、連続関数同士の和は連続関数であ

り、連続関数の複素数倍も連続関数であるため、ⅠとⅡを満たす。

波が存在しない状態「ψ = 0」を定義すれば、波の重ね合わせの原理から「ϕ1 + 𝜙2 = 0」

という状態を考えることができるので、逆元を考えることができる。乗法単位元としては

波に手を加えない状態「1 ⋅ ψ = ψ」は自然に成り立つので、Ⅲも満たされる。したがって、

連続関数の集合はベクトル空間の元となる。

このようなベクトル空間となる連続関数の集合の具体例としては、ルジャンドル多項式、

ラゲール多項式、エルミート多項式、ベッセル関数などがある。

17 条件(V1)と(S1)に相当する。 18 このことをベクトルVについて閉じているという。条件(V2)、(V3)、(S2)、(S3)、(S4)

に相当する。 19 条件(V4)、(V5)、(S5)に相当する。

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例 1. 矢印~方向と大きさを持った矢印の集合~

矢印の集合がベクトル和およびスカラー積に関して閉じている必要があるため、巻矢印

などの折れ曲がった矢印は除外すると、Ⅰを満たす。

矢印の集合のベクトル和やスカラー積は以下の図で示すようなベクトルの合成を考え

るとⅡを満たす。

図 2. 演算の定義

そして、矢印のゼロ元を点、矢印の逆元は矢印の向きを反対にする、乗法単位元は矢印

の長さや向きを変えないと定義すれば、Ⅲを満たし、矢印の集合はベクトル空間となる。

例 2. 実数の組(𝑎0, 𝑎1,⋯ , 𝑎𝑛)

ベクトル和を(𝑎0, 𝑎1,⋯ , 𝑎𝑛) + (𝑏0, 𝑏1,⋯ , bn) = (𝑎0 + 𝑏0, 𝑎1 + 𝑏1,⋯ , 𝑎𝑛 + 𝑏𝑛)と定義し、スカ

ラーβを実数とし、積をβ(𝑎0, 𝑎1, ⋯ , 𝑎𝑛) = (𝛽𝑎0, 𝛽𝑎1, ⋯ , 𝛽𝑎𝑛)と定義すると、括弧内の各項は

ただの実数の足し算となるので、ⅠとⅡを満たす。

そして、実数の組のゼロ元を(0,0,⋯ ,0)とし、逆元を上のベクトル和についてプラスをマ

イナスにすることとし、乗法単位元は数 1 とすれば、Ⅲを満たすため、実数の組の集合は

ベクトル空間となる20。

同じように考えれば、複素数の組の集合もベクトル空間となり、異なる種類の塊同士で

実数や複素数の演算が定義できるものもベクトル空間となる21。

例 3. 行列~m× n行列を考える(行列の要素は実数でも複素数でも良い)~

ベクトル和を(

𝑎11 ⋯ 𝑎1𝑛⋮ ⋱ ⋮

𝑎𝑚1 ⋯ 𝑎𝑚𝑛

) + (𝑏11 ⋯ 𝑏1𝑛⋮ ⋱ ⋮

𝑏𝑚1 ⋯ 𝑏𝑚𝑛

) = (𝑎11 + 𝑏11 ⋯ 𝑎1𝑛 + 𝑏1𝑛

⋮ ⋱ ⋮𝑎𝑚1 + 𝑏𝑚1 ⋯ 𝑎𝑚𝑛 + 𝑏𝑚𝑛

)と定義

20 関係ないが、矢印の集合も実数の組の集合も同じベクトル空間であるため、ベクトルの

座標表示ができる。

21 例えば、𝑎0 + 𝑎1𝑥 + 𝑎2𝑥2 +⋯ や行列。

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し、スカラーβについてスカラー積をβ(

𝑎11 ⋯ 𝑎1𝑛⋮ ⋱ ⋮

𝑎𝑚1 ⋯ 𝑎𝑚𝑛

) = (𝛽𝑎11 ⋯ 𝛽𝑎1𝑛⋮ ⋱ ⋮

𝛽𝑎𝑚1 ⋯ 𝛽𝑎𝑚𝑛

)と定義すると、

ⅠとⅡを満たす。

そして、すべての要素がゼロとなる行列をゼロ元とし、逆元を上のベクトル和をプラス

からマイナスにしたものとし、乗法単位元を 1 とすれば、Ⅲをみたす。したがって、行列

の集合はベクトル空間の元となる。

1.7.1 節 参考文献

[1] 矢野健太郎 線形代数学 日評数学選書

1.7.2 固有関数の規格直交性を導入する計量ベクトル空間

計量ベクトル空間とは、以下の内積という演算規則が導入されたベクトル空間である。

検証. 波動力学を再現できたか。

固有関数は内積を導入することで、規格直交性を表現できた。そして、この計量ベクト

ル空間の元として表現される複素数値をとる連続関数は、ヒルベルト空間上の元ともいう。

このヒルベルト空間上の任意の元は、固有値に対応する固有関数を全て用いれば、表現

することが可能である。しかし、連続関数で表される固有関数の固有値は無限個(離散的な

固有値なら加算無限個)存在するため、ベクトルの基底となるお互いに直交するベクトル

の数も無限個になる。したがって、固有値が有限個になるときは連続関数では表現できな

い。そのため、固有値が有限個になるときの表現としては、行列表現が便利である。

1.7.2.1 固有関数の状態ベクトル表示(@)

複素数の組の集合は有限個でも無限個でも表すことができる。そこで、固有関数に相当

するベクトルを(式)のように書く。右辺はϕnのところを点線(…)で書けば、無限個につい

ても表現できる。

|ψ⟩ = (𝜙1

⋮𝜙𝑛

) = (

10⋮0

)𝜙1 + (

01⋮0

)𝜙2 +⋯+(

00⋮1

)𝜙𝑛

@@@

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波動力学では連続関数の集合に対して、外部の集合として複素数の集合を用いた。しか

し、このブラケット記法では外部の集合として行列の集合を用いている。複素数の集合は

積について可換であるが、行列の集合は一般に可換でない。したがって、このブラケット

記法はベクトル空間(体上の加群)よりも一般的な環状の加群における計算と呼ばれる。

1.7.3 群(@)

集合Vがベクトル空間になるには「(Ⅰ)ベクトル和やスカラー積が定義できる集合Vの元

について、(Ⅱ)ベクトル和やスカラー積に関して閉じていて、結合法則を考えることがで

き、(Ⅲ)ベクトルについては逆元とゼロ元が存在し、スカラーについては乗法単位元が存

在する」である。

ここで、外部演算であるスカラー積を除外して、ベクトルだけに完結して表現し直すと、

群という構造が生じる。スカラーを除外するため、基底ベクトルの寄与の大きさについて

の情報を失うが、あるベクトルはどの基底ベクトルを含んでいるかの情報は残る22。

ある集合が群になるというのは、次の 4 つの演算が許された集合である。

(G1) 任意の二つ以上の演算は集合内で閉じている

(G2) 演算に対して、結合法則が成立する

(G3) すべての演算に対して、逆操作が 1 つずつ存在する

(G4) すべての演算に対して、恒等演算が唯 1 つ存在する

群における演算を∘で表すと、群の 2 つの要素A, Bについて、A ∘ B = B ∘ Aを考えることが

できる。これが成立するときはアーベル群であるという。

群の中でも点群を用いると、指標表を扱うことができる。この指標表は固有関数の規格

直交性に相当する性質を持っている。

化学では分子の構造を実験的に決定または VSEPR 理論を用いて推定した後、その構造が

満たす対称的な操作を考える。そのときの対称的な操作には恒等操作、回転操作、鏡映操

作、反転操作、回映操作の 5 つがある。ここでいう対称的な操作とは番号を付けないと操

作前と操作後の区別がつかない操作のことである。

22 スカラーを除外するため、ベクトルという表現は不正確である。以下の節ではこの集

合を群と呼ぶ。

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恒等操作Eとは、条件(G4)を満たす操作であり、任意の操作に、この恒等操作を施しても

何も変化しないという操作である。回転操作C𝑛とは、分子を360°/n回転する操作である。

鏡映操作σとは、分子の中に鏡を置き、原子の位置を鏡が写った方向に移し替える操作であ

る。反転操作 iとは、分子の中心に対して全ての原子の位置を分子の中心を通って反対側に

移し替える操作である。回映操作Snとは、回転操作をした後に鏡映操作を連続的にする操

作である。

1.7.4 表現論

1.7.5 作用素環

1.8 粒子の統計的性質(@)

電子はαスピンとβスピンをもつ23。しかもそのスピンの値は半整数である。スピンが半

整数であるような粒子は Fermi-Dirac 統計に従い Fermi 粒子という(2 章)。対して、スピ

ンが整数である粒子は Bose-Einstein 統計に従い Bose 粒子という(2 章)。

Fermi 粒子は粒子の名前を入れ替えると、波動関数の符号が変わるという性質がある。

対して Bose 粒子は粒子の名前を入れ替えても波動関数の符号が変わることはない。

上のことを導出するのは非常に難しい24。この節では粒子の名前を入れ替えると、波動関

数の符合が変わりうることを確かめる。

粒子の名前を入れ替えるときは、2 個ずつ入れ替えることを考えるので、2 粒子系につい

て考え、それを一般化する。まず、粒子の名前を入れ替えるだけなので、存在確率は変化

しない(式 8.1)。

(式 8.1) |𝜓(1,2)|2𝑑𝜄 = |𝜓(2,1)|2𝑑𝜄

また、波動関数は一般に複素関数であるため、絶対値を外すと適当な実数θを用いて、(式

8.2)と書くことができる。このときのexp(iθ)は位相因子という。

(式 8.2) 𝜓(1,2) = 𝜓(2,1)exp(𝑖𝜃)

23 あえて上向き、下向きと表現しないのは方向が磁場を印加する方向に依存するからで

ある(右から左に磁場を印加すれば、スピンの方向は左右に向くのに上向き、下向きとは

言わない)。また、スピンの固有関数としてαおよびβという記号を用いる。 24 場の量子論とか QED を学べば、分かるかも。分かったら、修正する。

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再び粒子の名前を入れ替えることを考える。この行為は先に行った行為と違いがないた

め(もし違いがあれば、確率が変わるはず)、(式 8.3)のように書くことができる。

(式 8.3) 𝜓(2,1) = 𝜓(1,2)exp(𝑖𝜃)

つまり、𝜓(1,2) = 𝜓(1,2) |𝑒𝑥𝑝(𝑖𝜃) |2が成立し、位相因子は𝑒𝑥𝑝(𝑖𝜃) = ±1の値を取ることが

できる。その結果、粒子の名前を入れ替えるとき、波動関数の符号が変わりうることが示

される。

一般については次のように書くことができる。

1.8 節 参考文献

[1] マッカーリサイモン 物理化学(上) 3 章 4 章

付録 A(プランクの公式)

u(ν, T) =8𝜋ℎ𝜈3

𝑐31

exp(ℎ𝜈/𝑘𝐵𝑇) − 1

付録 B(エネルギーと質量の等価性)

E2 = m2𝑐4 + 𝑝2𝑐2

付録 C(物質波)

p =h

λ

参考文献

[1]村上陽一 『ルイ・ド・ブロイ(1892‐1987)の功績』journal of the Heat Transfer Society

of Japan 49(208), 52-57, 2010-07-01 日本伝熱学会

付録 D(ボーアモデル)

ファインマニウム

参考文献

[1]はじめての構造化学

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付録 E(解像度と光の波長)

付録 F(フーリエ級数)

付録 G(マクロとミクロにおけるエネルギー保存則)

付録 H(粒子数が一定でないときの量子論)

相対論的量子力学

付録 I(ポテンシャルエネルギーの位置依存性)

付録 J(マクロとミクロにおける保存則)

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2 章 化学熱力学

この章では「熱エネルギー」を取り扱う上で使用する化学熱力学を説明する。熱エネル

ギーは光エネルギーと比べて化学種に与えるエネルギーは小さい25が、物質の状態変化を

引き起こし、化学反応の制御を行う上でも重要な役割を果たす。

ただ、この章でも「熱エネルギー」の変換については扱わず、化学熱力学のもう一つの

主題であるミクロな粒子の集合体(マクロな物質)の振る舞いを考える。

1 章と 2 章をもって、電荷的に中性な化学種のミクロな振る舞いとマクロな振る舞いを

考える基礎ができる。

(内容概説)

多数の量子論的な粒子の振る舞いについて考えるために、平衡状態にあるとはどういう

ことかを考えます(2.1 節)。マクロな現象として現れる熱量保存則やエネルギー保存則を

説明し(2.2 節)、自発的な変化の方向を決める量について考えます(2.3 節)。粒子は集まる

と、常温常圧下では固体、液体、気体の状態をとり、マクロな状態量によって移り変わる

ことについて考えます(2.4 節)。

2.1 平衡状態の取扱い

粒子数が増えると、粒子数が増加するに従い埋もれない粒子に共通した性質が現れる26。

その粒子に共通した性質をもった状態を平衡状態と呼ぶ。その平衡状態では圧力や体積な

どの物理量が決まれば、どんな状態からの変化であっても、有限の時間後、必ず同じ平衡

状態になる。

この節では平衡状態を考えるために必要な物理量の性質や対象の性質について記述する。

2.1.1 系と外界、符号のルール

化学熱力学的な対象(粒子の集合体)を取り扱うときは、それらが存在する領域を系と呼

25 後の章で具体的に扱う。気体定数Rおよび温度Tを用いると、熱エネルギーはRT程度の

エネルギーを与えることができる。そして、プランク定数hおよび波長νを用いると、光

エネルギーはhν程度のエネルギーを与えることができる。 26 メソスコピック領域を意識した表現。学びしだい追加予定。

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び、それらが存在しない領域を外界と呼び区別する。

そして、外界から系に対して何らかの変化が生じたときと、系から外界に対して何らか

の変化が生じたときを区別する必要がある。そこで、この pdf では外界から系へのエネル

ギー移動を正とし、系から外界へのエネルギー移動を負とする。

系と外界の間には境界が存在するが、境界の性質によって系の区別ができる。境界が物

質やエネルギーを通過させない境界であるとき、その系を孤立系であるという。また、物

質もエネルギーも通過させるときは開放系といい、エネルギーのみを通過させるときは閉

鎖系という。これらの区別は平衡状態を規定する状態量の組が異なるという点においても

重要である。

境界を系の中に作ることもでき、その分割された系を部分系という。

2.1.1.1 外界の性質

外界は化学熱力学的対象以外を指すが、通常、外界は系よりも体積が大きいため、系が

断熱壁に覆われていない限り27、系の温度は外界の温度に近づき、平衡状態に達する。断熱

壁に覆われている系の温度は外界の温度には近づかないが、こちらも有限時間後、平衡状

態に達する。つまり、外界は示強性の物理量である温度を規定する役割をもつ。

2.1.2 状態量

物理量のうち化学熱力学において興味深い性質をもつ量を状態量と呼び、状態量の組が

定まれば、必ず同じ平衡状態になる。その状態量とは圧力、体積、温度、粒子数、化学ポ

テンシャルなどがある。これらの状態量は加算が定義できる相加的な物理量と加算が定義

できない示強的な物理量がある。さらに、相加的な物理量だけからなる関数について、状

態を変化させたときの変化のさせかたによって値が変わる経路関数と状態だけ指定すれば、

変化のさせかたによらない状態関数がある。

2.1.2.1 示量性変数(経路関数、状態関数)と示強性変数

27 2.3 節で説明するが、熱の移動がないとき、温度変化は生じない。その熱の移動を許容

しない壁が断熱壁である。

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まず、相加的な物理量の例を説明する。例えば、体積28、重量、エネルギー29、物質量、

粒子数などは加算を定義することができる。

そして、系中の粒子が均一に広がっているならば、系の体積に比例すると考えることが

できる。このとき、示量的な物理量、または単に示量変数という。

化学熱力学では系が平衡に至ったときの状態を考えるので、粒子は系または部分系に均

一に広がっていると考え、相加的な物理量と示量変数は同じ意味で用いる。

次に状態関数と経路関数について天下り的ではあるが説明する。状態関数には、エネル

ギー、化学ポテンシャル、エントロピーなどがある。そして、経路関数には仕事と熱量な

どが挙げられる。

最後に示強性変数の例を挙げる。例えば、温度、圧力、速度などがある。温度や圧力は

後で見るように粒子の平均速度によって定義することもできる。そして、速度はベクトル

量であり、スカラー量でないため、加算は定義できない。

また、示量性変数と示強性変数の積はエネルギーになることがある。この関係を双対性

と呼ぶ。

2.1.4 粒子の集合体の見た目

粒子数が増えるに従い粒子同士が分子間力によって、異なる性質をもつ状態を得る。も

し、分子間力が強ければ、粒子の増加とともに粒子の集合体は固体となる。そして、分子

間力が相対的に弱ければ気体となり、その中間であれば液体となる。圧力や温度を変化さ

せることによって分子間力に打ち勝てば、状態を移す(相転移)こともできる。

固体や液体については省略30して、気体について説明すると、状態量のうち圧力、体積、

温度について気体ではこの 3 者の間に関係式(状態関数)が成立する[付録 A]。気体は粒子

の分子間力が固体や液体と比べて弱いため、拡散し容器の体積と気体の体積は一致する。

28 しかし、体積は粒子間の分子間力によって決まるマクロな量であるため、異なる分子

間力をもつ粒子の集合体同士では加算が成立しないことがある。目安としては、重量は粒

子あたりの重力の影響によって決まるマクロな値であるため、密度の値が近い物質同士は

体積の加算が成立すると考えることができる。

29 粒子自身のエネルギーが粒子間の相互作用によって生じるエネルギーを無視できるほ

ど大きければ、加算が成立する。目安としては、 30 学びしだい追加

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液体を構成する粒子間の分子間力は気体よりも強いが、固体よりも弱く、液体の一部は

気体となっている。

2.2 平衡状態に対するミクロな視点(@)

粒子数が増加するに従い、粒子の個々の特徴や性質が失われ、粒子の共通した性質のう

ち粒子数の増加とともに失われない性質が、マクロな現象の結果として現れるという考え

についてまとめる(予定)

2.2.1 大数の法則と中心極限定理(@)

この節では粒子数が増加するに従い、測定値と期待値が近接することをもって、粒子個々

の特徴が失われ、共通した性質が期待値として現れるという考えを得る。

2.2.2 等重率の仮定(@)

2.2.1 節より、「粒子数が増加する」または真空領域が生じないときは、「体積が増加す

る」に従い粒子が平均値からずれた値をもつ確率が減少することが分かった。この平均値

からずれた値をもつ粒子が少なくなり、「粒子がほぼ同じような物理量をとる状態」を平

衡状態と考えることができる。

そこで思い切って、

2.2.2.1 気体分子運動論~完全気体のエネルギー~(@)

一辺が𝑎の立方体の箱の中に、完全気体の粒子がN個存在する系を考える。さらに、系の

温度は一定とする。この条件下における系の圧力を計算する。

まず、1 粒子あたりに働く重力は無視できるほど小さく、理想気体であるため、粒子の

電荷は中性であり、ポテンシャルエネルギーも無視できる(実在気体の引力項と反発項が

ゼロ)とする。

次に、x軸方向に

[付録 Maxwell 速度分布関数、平均速度、平均二乗速度…]

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2.2.2.2 孤立系における粒子の分布~ミクロカノニカル分布~

2.2.2.3 閉鎖系における粒子の分布~カノニカル分布~

2.2.2.4 開放系における粒子の分布~グランドカノニカル分布~

2.2.3 エネルギー準位への占有のされ方による粒子の分布(@)

粒子が大量に存在するときも、エネルギー準位は存在する。粒子数が増えるに従い、こ

の節では全エネルギーと全粒子数が保存される中で粒子がエネルギー準位を占有するとき

の関係式を導く。

2.2.3.1 Boltzmann 分布

あるエネルギーεiに存在する粒子の数をni個とする。そして、運動状態は区別できるがエ

ネルギー的には区別できないエネルギー準位がgi個あるとする31。このときの粒子が占有す

るときの場合の数は(式 2.1)となる32。

(式 2.1) W = ∏(𝑔𝑖)

𝑛𝑖

𝑛𝑖!𝑖

このとき、エントロピーは(式 2.2)のように書くことができ、内部エネルギーUは(式 2.3)

と書くことができる。

(式 2.2) S = kB𝑙𝑛𝑊 = 𝑘𝐵∑ [𝑛𝑖𝑙𝑛𝑔𝑖 − 𝑙𝑛(𝑛𝑖!)]𝑖

(式 2.3) U = ∑ 𝑛𝑖𝜀𝑖𝑖

(式 2.2)と(式 2.3)を含んだ熱力学量について、粒子数が変化したときの関係式を導い

31 縮退と考えても良い。 32 gi個のエネルギー準位にni個の粒子が入るとき、1 個目の粒子はgi個の準位のうちどれ

か 1 つに占有し、2 個目の粒子もgi個の準位のうちどれか 1 つに占有する。これがni個続

いた後、同じエネルギー準位に占有されている粒子は区別できないので、ni!通りの並べ

方で割っている。

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てみる。つまり、化学ポテンシャルを導入したヘルムホルツエネルギーF = U − TS +

∑ μi𝑑𝑛𝑖𝑖 について(式 2.4)を計算する。

(式 2.4) μi = (𝜕𝐹/𝜕𝑛𝑖)

(式 2.4)はμi = 𝜕[∑ 𝑛𝑘𝜀𝑘 − 𝑘𝐵𝑇∑ [𝑛𝑘𝑙𝑛𝑔𝑘 − ln(𝑛𝑘!)]𝑘𝑘 ]/𝜕ni = εi − 𝑘𝐵𝑇[𝑙𝑛𝑔𝑖 − 𝑙𝑛(𝑛𝑖)]となり、

niについての式にすると、(式 2.5)となる。

(式 2.5) ni = 𝑔𝑖𝑒𝑥𝑝 (−𝜀𝑖 − 𝜇𝑖𝑘𝐵𝑇

)

2.2.7.2 節と 2.2.7.3 節の結果をみると、(式 2.6)のとき Fermi-Dirac 分布または Bose-

Einstein 分布は Boltzmann 分布に近似されることが分かる。したがって、εi ≫ μiが成立す

る必要があるので、それを踏まえると、(式 2.5)は(式 2.7)のように書くのが妥当かもしれ

ない[付録 A]。

(式 2.6) exp (−𝜇𝑖 − 𝜀𝑖𝑘𝐵𝑇

) ≫ ±1

(式 2.7) ni = 𝑔𝑖𝑒𝑥𝑝 (−𝜀𝑖𝑘𝐵𝑇

)

2.2.3.2 Fermi-Dirac 分布

(式 2.8) W =∏𝑔𝑖!

𝑛𝑖! (𝑔𝑖 − 𝑛𝑖)!𝑖

粒子の総数が一定であれば、(式 2.3)は同じであり、異なるのはエントロピー項である

(式 2.9)。

(式 2.9) 𝑆 = 𝑘𝐵∑ [𝑔𝑖𝑙𝑛(𝑔𝑖) − 𝑛𝑖 𝑙𝑛(𝑛𝑖) − (𝑔𝑖 − 𝑛𝑖)𝑙𝑛(𝑔𝑖 − 𝑛𝑖)]𝑖

したがって、(式 2.4)を計算すると、(式 2.10)となる。

(式 2.10) nigi=

1

exp(−𝜇𝑖 − 𝜀𝑖𝑘𝐵𝑇

) + 1

2.2.3.3 Bose-Einstein 分布

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(式 2.11) W =∏(𝑛𝑖 + 𝑔𝑖 − 1)!

𝑛𝑖! (𝑔𝑖 − 1)!𝑖

gi ≠ 1とし、粒子の総数が一定であれば、異なるのはエントロピー項だけであり、エント

ロピー項は(式 2.12)となる。

(式 2.12) S = kB𝑇∑ [(𝑔𝑖 + 𝑛𝑖 − 1) ln(𝑔𝑖 + 𝑛𝑖 − 1) − 𝑛𝑖 ln(𝑛𝑖) − (𝑔𝑖 − 1)ln(𝑔𝑖 − 1)]𝑖

したがって、gi ≠ 1とし、(式 2.4)を計算すると、(式 2.13)となる。

(式 2.13) ni

𝑔𝑖 − 1=

1

exp(−𝜇𝑖 − 𝜀𝑖𝑘𝐵𝑇

) − 1

もしgi = 1であれば、粒子の配置の数は 1 となり、エントロピー項はゼロとなる。

2.3 熱現象の取扱い

化学反応が進行すると、系の温度が上昇したり、下降することがある。例えば、常温の

水に濃硫酸を加えると、水と濃硫酸を含む系の温度は上昇する。また、氷水に濃硫酸を加

えると、系の温度は下降する。反応によっては加えた直後は温度変化が見られず、撹拌す

ると、温度が上昇するという場合もある。

つまり、反応の進行状態と系の温度は密接な関係があると予想できる。これをエネルギ

ーという観点からみると、温度は示強性変数であるため、何らかの示量性変数との積を考

えれば、エネルギーとして表現できる。この温度に関係したエネルギーは熱量と呼ばれる。

また、温度変化に関係しないエネルギーも考えることができる。例えば、膨張収縮によ

るエネルギーで、示量性変数である体積と示強性変数である圧力の積で表現できる。温度

は粒子の乱雑な運動により生じるエネルギーであるが、仕事は粒子の方向がある程度制御

できるエネルギーとして区別できる。

2.3.1 熱量

物質 A と物質 B を接触させると有限の時間後、同じ温度になる。しかし、物質 C と物質

A を接触させ有限の時間が経過したときの温度と物質 C と物質 B を接触させ同じく有限の

時間が経過したときの温度は異なる33。

33 例えば、服の上に 10 円玉を置く。時間が経過すると、両者の温度は等しくなる。そこ

で、服と 10 円玉を触ってみると、10 円玉の方が冷たく感じるはず。これは、体の温度と

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この長時間の接触において、両物質の温度は等しくなるため、何らかのエネルギー量が

分配(移動)したと考えることができる。この温度に関係したエネルギー量を熱量という。

そして、物質を長時間接触させると、熱量が分配され全体で保存されると考える(熱力学第

ゼロ法則)。

2.3.1.1 熱量と仕事の変換

もし、熱量がエネルギーの一形態であれば、熱量から他のエネルギーへ変換またはその

逆ができるはずである。

1847 年 James Prescott Joule は Benjamin Tompson の力学的エネルギーと水の温度上

昇の関係を正確に測定し直し、1 g の水が 14.5 ℃から 15.5 ℃になるときのエネルギーを

4.184 J と見積もることができた。

この単位質量と単位温度変化あたりのエネルギー(J/(g ⋅ ℃))を比熱といい、熱エネルギ

ーから力学的エネルギーへの換算ではこの物質によって異なる比熱を用いる。温度変化で

あるため、温度はセルシウス温度でもケルビン温度でも良い。

この比熱の重量を物質量に、温度をケルビン温度にし、系の体積を一定にしたときに測

定した値を定積モル熱容量(CV~𝐽/(𝑚𝑜𝑙 ⋅ 𝐾))という34。この熱容量や比熱は温度域によって、

値が変化し、実験的に測定した値(𝑎, 𝑏, 𝑐)を用いて(式 3.1)のように表現できる。

(式 3.1) CV = 𝑎 + 𝑏𝑇 + 𝑐𝑇2

また、任意の条件下(系の体積が一定または外界の圧力が一定)において、質量m、比熱c

の物質を温度ΔT変化させるときに必要な熱量Qは(式 3.2)のようになる。

(式 3.2) Q = mcΔT

質量の代わりに物質量(モル数)nを用いると、(式 3.3)のように表現できる。このときの

Cは熱容量といい、定圧下での熱容量を定圧モル熱容量CP、定積下では定積モル熱容量CV

という。

(式 3.3) Q = nCΔT

2.3.1.2 温度変化しないときの熱エネルギーの移動

(式 3.2)や(式 3.1)では温度変化がないとき、熱エネルギーも移動しないと捉えること

10 円玉の温度の差が体の温度と服の温度の差よりも大きいからである。 34 比熱を測定する時も系の体積か外界の圧力を一定にして測定する。

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ができる。しかし、それは正しくない。例えば、物質の状態が変化(相変化)するときは加

熱などにより熱エネルギーを系に与える必要があるが、温度は変化しない。

温度変化するときの熱量と温度変化しないときの熱量を含めて考えるために、単位が J/K

であるエントロピーという示量変数35を考え、熱量を(式 3.4)のように表現する。

(式 3.4) Q = ST

熱量の微小変化を考えると、dQ = TdS + SdTとなる。温度が一定のとき、(式 3.5)が成立

し、これをエントロピーの定義式とする。

(式 3.5) dS = dQ/T

2.3.2 内部エネルギー(@)

粒子の乱雑な運動によるエネルギー(熱量Q)と粒子の規則的な運動によるエネルギー

(仕事W)の和を内部エネルギー(全エネルギーU)といい、これらの和は保存される(式 1)。

U = Q +W

ただし、この式では系が動いたり、位置が変化しないと考える。本来は(全エネルギー)

= (気体や液体、固体などの系の運動エネルギーと位置エネルギーの和) + (ミクロな粒子

のエネルギー)となる36。

@ 1.6.@ 化学反応における熱量

化学反応においては反応が進行すると、系の温度が上昇したり下降したりする。そのた

め、内部エネルギーを扱うよりは熱量を扱うと便利である。

そこで、dQ = dU− dWと変形し、W = Δ(PV)となる。これを用いると、Q = Uf + 𝑃𝑓𝑉𝑓 −

(𝑈𝑖 + 𝑃𝑖𝑉𝑖)となるため、新しい状態量として、エンタルピーH = U+ PVを定めることができ

る。

35 温度は粒子数に依存しない量であり、エネルギーは粒子数に依存する量であるため、

エントロピーは粒子数に依存する量となり、示量性変数となる。 36 固体であって、ミクロな粒子のエネルギーが無視できるときは、その固体を剛体と呼

び、力学で記述できる。

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@仕事

方向を制限できるエネルギーを仕事という。体積変化による仕事はdW = −PdVと書かれ

る。電位差ϕによって電荷dqがする仕事はdW = ϕdqとなり、電場Eにおける電気双極子モ

ーメントの変化dPに伴って変化するエネルギー(仕事)はdW = −EdPとなる。また、磁場B

における磁気双極子モーメントの変化dMに伴って変化するエネルギー(仕事)はdW =

−BdMとなり、表面張力γが働くときに表面積がdA変化したときの仕事はdW = γdAである。

2.4 自発的な方向を記述する方法

ゆらぎの定理

2.5 状態変化

2.5.@ 融点と沸点

融点は固体から液体に相変化するときの温度、沸点は液体から気体に相変化するときの

温度を意味する。このとき、ギブズの自由エネルギーは 0 になるため、融点や沸点は

T =ΔH

ΔS

となる。ΔHは化学結合力の強さに依存し、ΔSは相変化前後の配置の数の比に依存し、

ΔS = 𝑘𝐵ln(𝑊𝑓

𝑊𝑖)

となる。

[email protected] 化学結合力~エンタルピー項の寄与~

エンタルピー項の詳しい説明は 5 章の化学結合力に関する記述を参考にしてもらい、こ

こでは簡単に触れる。

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まず、分子が密集している結晶と分子が分散している気体においては後者の方が@@@。

結晶について説明すると@@@。液体では@@@。気体では@@@。強い化学結合力の順

序は@@@。弱い化学結合力については、水素結合、電気的相互作用、分散力の順に弱く

なる。

[email protected] 対称性~エントロピー項の寄与~

エントロピー項は相変化前後における分子の取りうる状態の数が増加すれば、大きな値

をとる。したがって、球に近いような対称的な分子(指数が多い)ほど相変化前後で状態数

は変化しないため、エントロピー項は小さくなる。

ただし、これは融点において寄与する考え方であって、沸点では気体分子になるため、

液体時に特別な相互作用がない限り、エントロピーはほぼ同じ値を取るため(トルートン

の規則)、対称性を考える必要はない。

[email protected] 融点と沸点の比較

具体例に適用してみる。

@@@

(1) 生成エンタルピーΔHf

標準状態において安定して存在できる元素を基準とし、化合物が生成するときのエンタ

ルピー変化である。

(2) 燃焼エンタルピーΔHc

標準状態において気体、液体、固体のいずれかにある化学種を基準として、その化学種

を燃焼したときに変化するエンタルピー変化である。酸化物が生じる過程であり、安定化

過程であるため、負の値を取りやすい。

(3) イオン化エンタルピーΔHion

298Kにおいて気体にした中性の化学種を基準として、電子を 1 個取り除いた時のエン

タルピー変化である。イオン化エネルギーと比べて、Δ(PV)項大きな値を持つが、通常無視

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する。陽イオンが生じるのは不安定化過程であるため、正の値を取りやすい。

(4) 電子付加エンタルピー ΔHeg

298Kにおいて気体にした中性の化学種を基準として、電子を 1 個与えた時のエンタル

ピー変化である。これは電子親和力と関係があるが、電子親和力は値が正になるように調

製しているため、負号を付ける必要がある。電子親和力に負号を付けて、正の値にしてい

るのは、陰イオンが生じるは安定化過程であり、負の値を取りやすいためである。

(5) 原子化エンタルピー

(6) 水和エンタルピー

(7) 溶解エンタルピー

(8) 混合エンタルピー

(9) 溶解エンタルピー

(10) 蒸発エンタルピー

(11) 昇華エンタルピー

(12) 転位エンタルピー

1.6.@@ 温度が変化するときの熱量

1.6.@@@ 圧力が変化するときの熱量

1.6.@ 定圧熱容量と定積熱容量の関係式

付録 A(ラグランジュ未定乗数法による Boltzmann 分布則の導出)

Boltzmann 分布則の導出については、しばしばラグランジュの未定乗数法によって導出

されている。付録でその説明を行う。

付録 B(気体についての状態方程式)

B.1 完全気体の圧縮因子

すべての気体は低圧条件下において同じように振る舞う。そのような粒子の性質とは無

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関係に振る舞う気体を完全気体または理想気体という。完全気体について、圧力P、体積V、

物質量n、気体の温度T、定数Rを用いると、Z = PV/nRT = 1を満たす37。しかし、実際の粒

子の性質を考慮すると、この値からのずれが生じる。

上に述べたことは 1 種類の気体についてだが、お互いに反応しない気体からなる混合気

体の圧力も考えることができる。混合気体の圧力は(式 1)で定義される分圧の和になる。

(式 1) Pi =𝑛𝑖𝑛𝑎𝑙𝑙

𝑃𝑎𝑙𝑙

完全気体ではPV = nRTが成立するため、系の体積は一定とすると、分圧をその気体だけ

が系を占めたときの圧力と考えることができる(ドルトンの法則)。しかし、実在気体の場

合は(式 5)や(式 6)を見れば分かる通り、気体の圧力と物質量が単純な関係になっていな

いため、完全気体のような法則は成立しない。

B.2. ファンデルワールス状態方程式

完全気体では粒子集合の普遍的な性質だけを取り出して考えているが、実際の気体には

異なる粒子によって変わる粒子自身の大きさや粒子間に働く分子間力がある。分子間力に

ついていえば、5 章で説明するようにr−6の距離で粒子間に引力が働き、r−12の距離で反発

力が働くと考える。

これらの寄与を完全気体の状態方程式に導入するにあたり、体積を 1 mol あたりの体積

をVとする(モル体積)。反発力は粒子自身の大きさの寄与に含めて考える38と、実際の気体

の体積Vrealは、完全気体の体積Videlと 1 mol あたりの粒子自身の大きさ(排除体積)の寄与

39𝑏を用いると、(式 2)を満たす。

また、粒子の大きさの寄与はその粒子が球状(半径r)ならば(式 3)を満たす(図 1)。Naは

アボガドロ定数である。ここで、反発項を表す𝑏は��と同じ単位をもつ。

(式 2) Vreal = ��𝑖𝑑𝑒𝑎𝑙 + 𝑏

(式 3) 𝑏 =4𝜋(2𝑟)3

3𝑁𝑎

分子間引力は容器の壁に衝突する粒子の速度を緩める。したがって、実際の気体の圧力

37 Zを圧縮因子といい、PV = nRTを完全気体の状態方程式という。 38 つまり、引力項はr−6に比例し、反発項はr3に比例するとした。 39 粒子自身の大きさではない。

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Prealは、完全気体の圧力Pidealと分子間力の寄与P𝐽を用いて、Preal = 𝑃𝑖𝑑𝑒𝑎𝑙 + 𝑃𝐽を満たす。分

子間力はr−6の項を持つため、1 mol あたりの分子間引力の寄与を𝑎とすると、𝑃𝐽 = 𝑛𝑎/��2を

満たす(式 4)。

(式 4) Preal = 𝑃𝑖𝑑𝑒𝑎𝑙 − 𝑎/��2

以上の粒子の性質を完全気体の状態方程式に代入すると、(式 5)を得る(ファンデルワー

ルスの状態方程式)。逆に(式 5)は気体の体積が大きくなる(粒子の濃度が小さくなる)とき、

完全気体の状態方程式に近づく。そのことから、体積が大きくなる条件(外圧が低圧であり

系が高温環境下40)において実際の気体は完全気体に近似できることが分かる。

(式 5) (𝑃 + 𝑎/��2)(�� − 𝑏) = 𝑅𝑇

B.3 ビリアルの状態方程式

(式 5)から気体の体積が大きいとき実在気体は完全気体に近づくことが分かる。したが

って、Vが大きいとき完全気体に近似できるとして、実在気体は完全気体を体積1/Vで

Taylor 展開したものとみることができる(式 6)。この状態方程式をビリアルの状態方程式

という。また、完全気体の状態方程式PV = RTを用いて、右辺を書き換えると、(式 7)にで

きる41。このとき、B′ = B/RT, C′ = C/(RT)2となる。

(式 6) PV = RT[1 + 𝐵/�� + 𝐶/��2 +⋯ ]

(式 7) PV = 𝑅𝑇[1 + 𝐵′𝑃 + 𝐶′𝑃 +⋯ ]

B.4 実在気体が完全気体に近似できる条件

ファンデルワールスの状態方程式を P について変形すると、𝑃 = 𝑅𝑇/(�� − 𝑏) − 𝑎/��2とな

る。気体の温度が高温であれば、第二項は無視でき、圧力が小さければ、𝑏を無視できる。

その結果、高温かつ低圧条件下において、ファンデルワールス状態方程式は完全気体の状

態方程式に近似できる。

このことを用いて他の状態方程式を考えることもできる。例えば、第二項に温度の項を

露わに入れることもできる。𝑃 = 𝑅𝑇/(�� − 𝑏) − 𝑎/(��2𝑇)となるが、これはベルテローの状態

40 後に詳しく検討するが、低圧条件だけで十分である。しかし、高温条件だけでは不十

分である。 41 外圧が低いとき粒子間の衝突も少なくなると考えられるため、Pで Taylor 展開するの

は自然であるが、Pで展開したときと1/Vで展開したときのビリアル係数の換算を考える

ために完全気体の状態方程式を援用した。

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方程式という。さらに指数関数を用いた表現も可能である(ディエテリチの状態方程式)。

この節ではファンデルワールス状態方程式とビリアル状態方程式を用いて、実在気体が

完全気体に近似できる条件をさらに検討する。B.1 で説明したように、完全気体は圧縮因

子が 1 となる状態である。そこで、実在気体について圧縮因子を求めてみると、ファンデ

ルワールス状態方程式は(式 8)、ビリアル状態方程式は(式 9)を得る。

(式 8) Z =1

1 − b/V−

𝑎

��𝑅𝑇

(式 9) Z = 1 +B

V+⋯

𝑏は粒子自身の大きさの寄与であるため、気体の体積Vと比べて小さくなり、1 > |b/V|を

満たす。すると、(式 8)の第一項は無限等比級数の和であるから、(式 10)のように書き換

えることができる42。

(式 10)において、第二項がbを含むため反発項の寄与、第三項がaを含むため引力項の寄

与を表している事がわかる。したがって、圧縮因子が 1 よりも大きいときは反発項の寄与

が優先し、1 よりも小さいときは引力項の寄与が優先していることが分かる。

(式 10) Z = 1 +b

V−

𝑎

��𝑅𝑇+⋯

(式 9)と(式 10)を比べることで、第二ビリアル係数を粒子の性質と関連付けることがで

きる(式 11)。(式 8)においては高温かつ体積が大きくなる(気体が希薄になる)条件で完全

気体に近づくことが分かるが、(式 9)においては第二ビリアル係数が 0 に近づくか体積が

大きくなる条件で完全気体に近づく。

(式 11)について、高温(𝑎 ≪ 𝑇)にすると、𝐵 = 𝑏となるため、ビリアル状態方程式の高温

近似がファンデルワールス状態方程式と言えそうである。そこで、𝐵 = 0になるときの温度

を求めると、(式 12)となる(ボイル温度)。

つまり、高温かつ体積が大きくなる条件というのは大雑把な分類であり、正確にはボイ

ル温度より系の温度が高いか低いかによって、実在気体が完全気体として振る舞う条件が

決まる。

(式 11) 𝐵 = 𝑏 −𝑎

𝑅𝑇

42 反発項を正確に抜き出すと、Σ𝑛=1

∞ (𝑏/��)𝑛となる。

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(式 12) 𝑇 =𝑎

𝑏𝑅

ボイル温度をTBと表記する。このとき、TBよりも低い温度、TBの近傍における温度、TB

よりも高い温度において、実在気体が完全気体として振る舞う条件を検討しよう。

各温度における二酸化炭素の PV 図を以下に示す。等温線 a はボイル温度よりも高い温

度における等温線であり、下に行くほど温度が減少する。

等温線 a ではそれ以下の温度における等温線と比べ、極値を持たない。これが完全気体

の等温線である。

等温線 b になると、極値が生じる。この極値を臨界点と呼び、この等温線は臨界等温線

という。

等温線 c や d では極小値と極大値が生じている。極小値付近では加熱液体が生じており、

極大値付近では過飽和蒸気が生じている。

この加熱液体と飽和蒸気については、前者はグレーザーの泡箱として、後者はウィルソ

ンの霧箱として利用されている。

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3 章 分光化学

分子の並進運動、振動運動、回転運動についてシュレディンガー方程式を解き、分光化

学的な話題に触れます。また、コンプトン効果から求まる不確定性関係(ハイゼンベルクの

不確定性関係)を用いて、古典論からの導出にも触れ、両者の比較をします。

@ Born-Oppenheimer 近似と断熱近似

3.1 分子の並進エネルギー

3.1.1 量子論的な粒子がもつ並進エネルギー

3.1.2 古典論的な粒子がもつ並進エネルギー

3.1.3 カノニカル分布

3.1.3.@ エネルギー等分配則

3.2 分子の振動エネルギー

3.2.1 量子論的な粒子がもつ振動エネルギー

3.2.1.1

3.2.1.2 生成消滅演算子

3.2.2 古典論的な粒子がもつ振動エネルギー

3.2.3 カノニカル分布

3.2.3.@ エネルギー等分配則

3.3 分子の回転エネルギー

3.3.1 量子論的な粒子がもつ回転エネルギー

3.3.2 古典論的な粒子がもつ回転エネルギー

3.3.3 カノニカル分布

3.3.3.@ エネルギー等分配則

3.4 比熱の温度変化

4 章 元素の量子化学的取扱い

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4.1 水素原子のエネルギー

動径成分と角度成分

水素原子の波動関数においては距離や角度によって、波動関数の符号が変わることがあ

る。このとき、波動関数は節をもつと表現する。主量子数n、方位量子数lを用いると、動

径成分の節の数は𝑛 − 𝑙 − 1個と求まり、角度成分の節の数は𝑙個となる。

4.1.3 Hartree

4.2 Slater 則

電子が 1 個のときの核電荷は原子番号Zと一致する。しかし、電子の数が多くなると、電

子同士の反発や占有される軌道の違いから、実験と合致するような核電荷(有効核電荷Zeff)

とずれが生じる。

電子間の反発は遮蔽効果として現れ、核電荷を減少させる。多電子のときは 1 電子のと

きと同じ軌道を保っているとは限らないが、近似的に考えるため軌道の形は保持されてい

るとする。このとき、

有効主量子数n∗と 1 電子近似における主量子数nとの関係は以下の表のようになる。

有効核電荷Zeffと 1 電子近似における核電荷Zとの関係は遮蔽定数Sを用いて、(式)のよ

うになる。

Zeff = Z − S

Sは次のようにして求める。まず、構成原理に従って、電子配置を決定する。次に、n 個

の電子からなる系を考える。このとき、ある 1 個の電子の有効核電荷を求めるときは、残

り n-1 個の電子の寄与を考える必要がある。

同じ軌道に入った電子は区別できず、s 軌道と p 軌道は接近している。また、1 電子近似

を用いているため、エネルギー準位は以下のように考える。

(1s)(2s,2p)(3s,3p)(3d)(4s,4p)(4d)(4f)…

注目している電子が属しているグループより左にある電子は遮蔽定数に関与しないと考

える。そして、(ns,np)のグループか(nd)または(nf)のグループかで次のように遮蔽定数の

寄与を考える。また、ここでは遮蔽定数への寄与に関して線形性が成立すると仮定する。

(ns,np)グループの電子を考える。

(ns,np)グループの電子の寄与は見ている電子 1 個を除いて、1 個あたり+0.35 の寄与が

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ある。主量子数が 1 つ小さいグループでは電子 1 個あたり+0.85 の寄与があり、それより

も小さいグループでは電子 1 個あたり+1.00 の寄与がある。

(nd)または(nf)グループの電子を考える。

(nd)または(nf)グループの電子の寄与は見ている電子 1 個を除いて、1 個あたり+0.35 の

寄与がある。そのグループよりも左側にあるグループの寄与は電子 1 個あたり+1.00 の寄

与がある。

4.3 電子配置

多電子原子のエネルギー、電子相関

4.4 項の記号

電子配置では区別しないか、ある代表した電子の配置だけを書いている。これは、電子

の角度依存によるエネルギー変化やスピンの方向によるエネルギー変化の寄与を無視した

表現である。

しかし、多電子原子では方位量子数の値やスピン量子数の値によってエネルギーは分裂

するため、考えうる電子配置は区別して表現する方が良い。

4.4.1 全角運動量と全スピン量子数

4.4.@ 例

𝑠軌道は方位量子数が𝑙 = 0であり、スピンはs = ±1/2の値をとる43。そのため、電子は合

計して2個入ることができる。P軌道では同じように考えると、6個入ることができ、d軌道

では10個入ることができる。

もし、同じ主量子数の軌道に電子が2個入るときは、s軌道では1通りだが、p軌道では15

通り、d軌道では45通りの配置を考える必要がある。異なる主量子数であれば、s軌道では

4 通り、p軌道では36通り、d軌道では100通りの配置を考える必要がある。

s軌道に電子が入る場合は簡単なので省略し、d軌道に電子が入るときは煩雑となるので、

ここでは簡単に説明するために、p軌道に電子が2個入ったときの例を考える。

43 ℏは省略した。

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(例 1) p軌道に電子が 2 個入った場合

p軌道に電子が2個入る時の全方位量子数の最大値は2であり、全スピン量子数の最大値

は1である。

電子の軌道を横棒で表現し、左から𝑙 = −1, 𝑙 = 0, 𝑙 = 1とし、スピンを片矢印で表現し、

上向きを+1/2、下向きを−1/2とする。負の値は正の値と対称的なので、正の値だけ表にす

ると、下の図 1 および図 2 のように電子配置を分類できる。

図 1. pp軌道の項の記号 図 2. p2軌道の項の記号

横軸をMLとし、縦軸をMsとしたときの同じ電子配置を取る組の数を表にすると、表 1、

表 2 のようになる。

表 1. pp軌道における同じ組の数

2 1 0

1 1 2 3

0 2 4 6

表 2. p2軌道における同じ組の数

2 1 0

1 0 1 1

0 1 2 3

表 1 および表 2 は表の要素が1ずつになっていないが、表の要素を1と0を用いて書いた

ものは項の記号で表現できる(表 3-表 8)。そのため、pp軌道を表現する項の記号は 3D, 1D,

3P, 1P, 3S, 1S となり、p2軌道を表現する項の記号は 1D, 3P, 1S となる。

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表 3. 𝐷3 項の電子配置

2 1 0

1 1 1 1

0 1 1 1

表 4. 𝐷1 項の電子配置

2 1 0

1 0 0 0

0 1 1 1

表 5. 𝑃3 項の電子配置

2 1 0

1 0 1 1

0 0 1 1

表 6. 𝑃1 項の電子配置

2 1 0

1 0 0 0

0 0 1 1

表 7. 𝑆3 項の電子配置

2 1 0

1 0 0 1

0 0 0 1

表 8. 𝑆1 項の電子配置

2 1 0

1 0 0 0

0 0 0 1

4.5 中性原子のラジカル化

気相中(溶媒和が無視できる状態)の中性原子をラジカル化する時のエネルギーはイオン

化エネルギーや電子親和力に相当する。対して、溶媒和を考慮する時の化学種をラジカル

化する時のエネルギーは酸化還元電位に素電荷を掛けたものに相当すると見ることができ

る44。

4.5.1 イオン化エネルギー

4.5.2 電子親和力

4.5.3 酸化還元電位

フラーレン

44 イオン化エネルギーや電子親和力は絶対値で与えられるのに対し、酸化還元電位は相対

的な値となる。また、後者については後の章で説明する。

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4.6 分極率と原子の大きさ

4.7 周期表と中性原子の性質

元素周期表を以下に示す。

列を族といい、行を周期という。大雑把にみると、1 族から 13 族までが金属であり、14

族が半金属、15 族から 18 族が非金属である。そして、金属同士は合金を作り、非金属同

士は揮発性分子化合物を、金属と非金属は不揮発性固体化合物を作る。

もう少し細かく分類すると、1 族はアルカリ金属、2 族はアルカリ土類金属という。3 族

から 12 族を遷移金属といい、他の元素と化合物を作ると、紫外可視領域に光の吸収が生じ

る。14 族は半金属といい、有機化学でも半導体化学でも重要な役割を演じる。17 族はハロ

ゲンといい、化合物中でも原子のときに当てはまった性質を強く受け継ぐ。18 族は貴ガス

といい、HOMO-LUMO のバンドギャップが大きいため、周期が小さいうちは他の元素と化合

物を作ることが難しい(反応性が低い)。

このように周期表には元素の規則的な性質が現れている。原子の大きさ、電子の受取や

すさ、電子の取り出しやすさ、電荷分布への影響(電気陰性度)なども周期表から判断でき

る。その理由を 2.2 節で明らかにした内容を適宜用いて説明を試みる。

4.8 放射性

5 章 結合の種類(@)

物質を支配する力には 4 つある。1 つめは重力、2 つめは弱い力、3 つめは電磁気力、4

つめは強い力である。

弱い力はベータ崩壊を引き起こす力であり、10−17𝑚の距離で働く。強い力は原子核を束

縛する力であり、10−15𝑚の距離で働く。対して、重力や電磁気力はどんなに離れていても

働いてる力であり、特に電磁気力は日常的な力の元になっている(垂直抗力や化学結合力

など)。その力の強さは以下のようになる。

重力 < 弱い力 < 電磁力 < 強い力

これらの力はエネルギー保存則、運動量保存則、角運動量保存則、電荷保存則を満たす。

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電子についてのシュレディンガー方程式が満たされるのも、その電磁力がエネルギー保存

則を満たすからだと考えられる。

化学で扱う力は化学結合力といい、電磁力である。そして、化学結合にも強い化学結合

力と弱い化学結合力があり、共有結合、配位結合、イオン結合、金属結合は強い化学結合

力に属し、水素結合、分子間力、静電的相互作用力などは弱い化学結合力に属す。

5.1 強い化学結合力(@)

化学結合の強さは、まず、原子軌道準位に支配され、次に原子軌道の重なりが寄与する。

実際に原子軌道が 1 対 1 で相互作用する時の分子になったことで原子と比べてどのぐらい

安定化したかをみる。原子軌道準位(クーロン積分)α、共鳴積分 β、重なり積分 S を用いて、

原子 A(αA, β, S)と原子 B(αB, β, S)との相互作用において、非縮退系(αA < αB)であれば、

εlow = 𝛼𝐴 −(𝛽 − 𝛼𝐴𝑆)

2

(𝛼𝐵 − 𝛼𝐴)(1 − 𝑆2)

εhigh = αB +(𝛽 − 𝛼𝐵𝑆)

2

(𝛼𝐵 − 𝛼𝐴)(1 − 𝑆2)

となり、縮退系(α = αA = αB)であれば、

εlow = 𝛼 −𝑆𝛼 − 𝛽

1 + 𝑆

εhigh = 𝛼 −𝑆𝛼 − 𝛽

1 − 𝑆

となる。原子軌道のエネルギー準位が αなので、第二項が安定化または不安定化の大きさ

を表す。説明を続ける前に、クーロン積分や共鳴積分について説明する。

クーロン積分は同じ原子間での相互作用の大きさであり、

αA = ∫ϕA��𝜙𝐴𝑑𝜄

と表現できる。原子の内殻電子は核と強く束縛されるため、最外殻電子の運動エネルギー

と遮蔽されたポテンシャルとの和がαとなり、実測可能な物理量の中では最外殻の電子を

原子から取り除くという意味で、イオン化ポテンシャル I に負号を付けた値が近くなると

推定できる。

0 > α = −I

共鳴積分は Wolfsburg-Helmholz の近似式として、

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βAB =1.75

2𝑆𝐴𝐵(𝛼𝐴 + 𝛼𝐵)

として与えられる。

重なり積分の値は結合距離であれば、正の値は 0.2 から 0.4 までを取るため、α = αA =

𝛼𝐵であれば、β ≤ 0.7αとなる。

以上のことも念頭に置きつつ、先の原子軌道からの安定化を表す式を見る。非縮退系で

は第二項の分子分母は正の値を取る。しかし、原子軌道準位の差が大きいほど、分母が大

きくなり、原子からの安定化の程度が小さくなる。そのため、イオン結合、配位結合、共

有結合の順で、原子軌道からの安定化が大きくなると考えられる。

縮退系でも αが負であることに注意すれば、第二項の分子分母は正であり、

εlow = 𝛼 +0.75𝑆𝛼

1 + 𝑆= 𝛼 +

0.75𝛼

1 + 1/𝑆

となるため、軌道の重なりが大きいほど、安定化が大きくなる。そのため、同じ原子同士

の相互作用であれば、δ結合、π結合、σ結合の順に、原子軌道からの安定化が大きくな

ると考えられる。

5.2 弱い化学結合力(分子間力)(@)

弱い化学結合力としては、水素結合、極性結合、分散力などがある。

水素結合は、水素と電気陰性の原子との間に働く力であり、強い化学結合力(イオン結合、

共有結合、配位結合)よりは弱いが、極性結合、分子間力と比べると強い。ただ、水素結合

の働きやすさは電気陰性の原子の大きさが水素原子に近いほど働きやすくなるため、電気

陰性でかつ周期表の上側の原子でない限り寄与は小さい。

極性結合は電気陰性度の差により生じた部分電荷由来のクーロン引力である。部分電荷

は波動関数の大きさ、電子の確率密度を電子が多いところを負、電子が少ないところを正

として表現している。電気陰性度はイオン化エネルギーと電子親和力の平均値として与え

られる。

分散力は距離 r-6に比例する引力である。それ以上の距離(r-12)では反発力となるが圧力

をかけない限りそのような寄与は無視する。表面積が大きい分子ほど分子が重なった時の

分散力が大きくなる。また、モル質量が大きいほど、電子が多いことを意味するため、表

面積が大きくなり、分散力が大きくなる。中性、アニオン、カチオンで見ても、電子が多

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いほど、クーロン反発で表面積が大きくなるため、分散力は大きくなる。

5.1.1 イオン結合

5.1.2 共有結合

5.1.3 配位結合

5.1.4 金属結合

5.2 弱い化学結合力

5.2.1 電気的(*)な引力

5.2.2 電荷移動相互作用

共鳴構造を用いて表現すると次のようになる。

Gutmann の DN値と AN値を用いることで、ある分子と他の分子の電荷移動相互作用の大き

さΔHを推定できる。

ΔH ≅DN𝐴𝑁100

[𝑘𝑐𝑎𝑙/𝑚𝑜𝑙]

5.2.3 水素結合

Pimentel は水素結合の定義を次のようにした。

そのような水素結合はいくつかの要素からなる。一番寄与の大きいのが静電的相互作用

であり、電気陰性度が大きい原子に水素が付いていないと水素結合は生じない。次に寄与

が大きいのが@@であり、水素原子との軌道の重なりが小さいと水素結合は弱くなる(第

二周期以降の原子だと水素結合が弱くなる)。

付録[トンネル効果]

例. 水の水素結合力を計算する。

氷の昇華エネルギー…

5.2.4 ファンデルワールス

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5 章 参考文献

[1] 友田修司 量子化学

[2] 西尾元宏 有機化学のための分子間力入門

6 章 立体構造

結晶や分子の構造について説明します。分子については定性的に分子の形を予測する方

法(VSEPR 理論)と一重項や三重項など電荷密度が同じで VSEPR 理論では予言できない化学

種を Walsh 則で予測する方法を説明します。また、キラルについて説明し、クロマトグラ

フィーについても触れます。

6.1 Lewis の構造式

6.2 金属結晶

6.3 イオン結晶

6.4 VSEPR 理論

キラル

正四面体の各辺の大きさを𝑎とすると、原子 2 と原子 3 の同一平面上での距離は√2𝑎とな

る。そして、四面体の中心である原子 1 は正八面体の中心でもあるので、原子 1 からその

平面への垂線の大きさは𝑎/2となる。したがって、原子 1 を中心として、原子 2 と 3 の角

度はtan(θ/2) = √2よりθ = 109.47°となる。

図 1. 正八面体中の正四面体

錯体の形

6.5 Walsh 則

6.6 実験的同定

赤外スペクトル、ラマンスペクトル→結合角度、結合距離

7 章 電気化学

8 章 多原子分子のエネルギー

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8.1 熱力学的な安定性

最大ハードネスの原理

8.2 Huckel 則、電荷密度、結合強度、フロスト円、D2 点群

8.3 結晶場理論

8.4 配位子場理論

9 章 化学種の反応性

Hammond の仮説

最大ハードネスの原理 R.G. Pearson, Acc. Chem. Res. 1993, 26, 25

有機電子論

フロンティアオービタル理論

酸化還元

例. 常温で反応が進むときの活性化エネルギー

「15~20kcal/mol程度の熱エネルギーを必要とする反応は 25 度付近で容易に起こる」と

いう記述がある45。このことを確かめてみよう。ここで、反応が進むとは速度定数が大きい

ため、反応速度が速いと考える。

アレニウス式から分かる活性化エネルギー(式 1)と遷移状態理論から求まる速度式(式

2)を用いる。ここで、c0は標準濃度 1mol/Lであり、‡は遷移状態における熱力学関数を意

味する。また、𝑛は反応する物質の分子数、𝑚は活性錯合体の分子数とし、反応する物質と

活性錯合体の間には他の中間体・遷移状態はないとする46。

(式 1) Ea = 𝑅𝑇2(𝜕𝑙𝑛𝑘/𝜕𝑇)

(式 2) k =kB𝑇

ℎ(𝑐0)

𝑚−𝑛exp(−Δ‡𝐺/𝑅𝑇)

遷移状態におけるギブズ自由エネルギーはΔ‡𝐺 = Δ‡𝐻 − 𝑇Δ‡𝑆 = Δ‡𝑈 + Δ‡(𝑃𝑉) − 𝑇Δ‡𝑆と

なる。溶液中の反応を考え、大きな圧力変化がないとすると、Δ‡𝐺 = Δ‡𝑈 − 𝑇Δ‡𝑆と近似で

きる。さらに、一般的に考えるためにエントロピー項も無視して47、Δ‡𝐺 = Δ‡𝑈と書く。す

45 ジョーンズ有機化学第 3 版 1 章 1.6 節 p.31 46 アレニウス式や遷移状態理論、素反応に関する説明は@@節 47 エントロピー項と反応の型は一般に決められないと思うので、これを無視して、おお

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ると、(式 2)は(式 3)のように書くことができる。これを(式 1)に代入すると、(式 4)が求

まり、速度定数と活性化エネルギーの関係式が求まる(式 5)。

(式 3) k =kB𝑇

ℎ(𝑐0)

𝑚−𝑛exp(−Δ‡𝑈/𝑅𝑇)

(式 4) Ea = 𝑅𝑇 + Δ‡𝑈

(式 5) k =kB𝑇

ℎ(𝑐0)

𝑚−𝑛e1exp(−Ea/𝑅𝑇)

この速度定数の逆数をとったものを反応時間とみなすと(初濃度の影響は受けると思う

けど、概算として)、Ea = 20𝑘𝑐𝑎𝑙/𝑚𝑜𝑙で 1 分、Ea = 25kcal/molで 85 時間という結果を得

ることができるので、活性化エネルギーが20kcal/mol以下なら常温で反応が進むと考える

ことができる。

付録 A(命名法)

化合物Am𝐵𝑛が分子またはイオンを考える。この化学式では成分Aは電気陰性度が小さく、

成分Bは電気陰性度が大きいことを表しており、命名は電荷的に中性なときのAの名称に、

変化させたBの名称を付ける。Bが原子のときは語尾を-ide にし、原子団のときは-ate を

つける。また、成分の数は 2 個ならジ、3 個ならトリ、4 個ならテトラ、5 個ならペンタ、

6 個ならヘキサとする。

化合物が塩(単塩、複塩、酸性塩、塩基性塩)のときを考える。

よその値を求めた。