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インドネシア国 北スマトラ州水道公社 インドネシア国 樹脂管に特化した漏水探索器を使用した 無収水削減対策及び配水管網維持管理の 普及・実証事業 業務完了報告書 平成 27 5 2015 年) 独立行政法人 国際協力機構(JICA株式会社グッドマン 国内 JR 15-030

インドネシア国 樹脂管に特化した漏水探索器を使 …open_jicareport.jica.go.jp/pdf/12237871_01.pdfBPS BADAN PUSAT STATISTIK インドネシア統計局 DMA District

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インドネシア国

北スマトラ州水道公社

インドネシア国

樹脂管に特化した漏水探索器を使用した

無収水削減対策及び配水管網維持管理の

普及・実証事業

業務完了報告書

平成 27 年 5 月

(2015 年)

独立行政法人

国際協力機構(JICA)

株式会社グッドマン

国内

JR

15-030

インドネシア国

北スマトラ州水道公社

インドネシア国

樹脂管に特化した漏水探索器を使用した

無収水削減対策及び配水管網維持管理の

普及・実証事業

業務完了報告書

平成 27 年 5 月

(2015 年)

独立行政法人

国際協力機構(JICA)

株式会社グッドマン

目次

巻頭写真 ……………… ⅰ

略語表 ……………… ⅳ

地図 ……………… ⅴ

図表番号 ……………… ⅸ

案件概要 ……………… ⅻ

要約 …………… xiii

1.事業の背景

(1)インドネシア共和国における開発課題の現状及びニーズの確認

①インドネシア共和国の政治・経済の概況 ……………… 1

②インドネシア都市給水分野における開発課題 ……………… 4

③インドネシア共和国の無収水削減対策における関連計画、政策

(外交政策含む)および法制度 ……………… 5

④インドネシアの無収水削減対策における ODA 事業の

事例分析及び他ドナーの分析 ……………… 6

(2)普及・実証を図る製品・技術の概要 ……………… 9

2.普及・実証事業の概要

(1)事業の目的 ……………… 19

(2)期待される成果 ……………… 19

(3)事業の実施方法・作業工程 ……………… 19

(4)投入(要員、機材、相手側投入、その他) ……………… 24

(5)事業実施体制 ……………… 27

(6)相手国実施機関の概要 ……………… 27

3.普及・実証事業の実績

(1)活動項目ごとの内容と成果 ……………… 29

①国内作業(2013 年 11 月~12 月) ……………… 29

②現地作業:第 1 次現地調査(2014 年 1 月 13 日~2014 年 2 月 9 日) ……………… 29

③本邦受入活動(2014 年 5 月 19 日~5 月 28 日) ……………… 41

④現地作業:第 2 次現地調査(2014 年 6 月 1 日~2014 年 6 月 28 日) ……………… 45

⑤国内作業(2014 年 7 月~8 月) ……………… 69

⑥第 3 次現地調査:(2014 年 8 月 26 日~2014 年 9 月 22 日) ……………… 70

⑦第 4 次現地調査総括 ……………… 83

⑧その他・セミナー関係報告 ……………… 101

(2)事業目的の達成状況 ……………… 103

(3)開発課題解決の観点から見た貢献 ……………… 119

(4)今後の課題と対応策 ……………… 119

(5)事業実施後の相手国実施機関の自立的な活動継続について ……………… 120

(6)日本国内の地方経済・地域活性化への貢献 ……………… 121

4.本事業実施後のビジネス展開計画

(1)今後の対象国におけるビジネス展開の方針・予定 ……………… 122 ①マーケット分析 ……………… 122

②ビジネス展開の仕組み ……………… 122

③想定されるビジネス展開の計画・スケジュール ……………… 123

④ビジネス展開可能性の評価 ……………… 125

(2)想定されるリスクと対応 ……………… 125

(3)普及・実証に関して検討した事業化およびその開発効果 ……………… 126

(4)本事業から得られた教訓と提言 ……………… 126

添付資料

添付資料① 2015 年 2 月 23 日 PDAM Tirtanadi 最終報告会 ……………… X1

添付資料② 2014 年 2 月 26 日 Pilot Project NRW PDAM Tirtanadi 発表資料 ……………… X9

添付資料③ 漏水調査報告書(例) ……………… X15

添付資料④ 漏水調査報告書 ……………… X15

i

巻頭写真

PDAM Tirtanadi 高架水槽

(109 周年式典)

各事業所長へデモンストレーション (2014 年 6 月 3 日)

ハイドロフォン使用の漏水調査

(2014 年 6 月 5 日)

漏水調査機器の検品 (2014 年 6 月 6 日)

夜間最少流量計測時の水圧調査

(Denai 地区 2014 年 1 月 27 日)

夜間最少流量計測時の流入量確認調査 (Denai 地区 2014 年 1 月 27 日)

ii

インドネシア水道協会との会議

(2014 年 6 月 12 日)

樹脂管用漏水探索・配管路探索器

PVC ロケーターD305 による漏水調査

(2014 年 6 月 9 日)

PDAM Tirtanadi 職員による漏水調査

(2014 年 6 月 9 日)

盗難された水道メーター

(1 カ月で 200 個盗難されるケースもある)

USAID セミナー NRW Reduction and How to Leakage Detection

work and How to use of leakage detection equipment(2014 年 6 月 25 日)

インドネシア水道協会・日本水道協会共催Capacity Building on water Supply for Young

Leaders (2014 年 8 月 28 日)

iii

ビンジャイ市長表敬訪問

Seminar of Water Leakage Management 開催

(2014 年 9 月 15 日)

セミナー開催 JICA 富原企画調査員挨拶

(2014 年 9 月 8 日)

D305 を使用した実証事業調査 (2014 年 9 月 3 日)

小型音聴式漏水探索器を使用した 地下漏水調査研修 (2014 年 9 月 15 日)

DELI TUA地区で検出された配水管漏水箇所

(2014 年 9 月 8 日)

給水管からの漏水 (2014 年 9 月 16 日)

iv

略語表 略語 英語表記 日本語表記

ADB Asian Development Bank アジア開発銀行

AusAID Australian Agency for International

Development

豪州国際開発庁

BPS BADAN PUSAT STATISTIK インドネシア統計局

DMA District Metered Area

水道メーター給水区域(水道メーターで給水

量を測定・管理するために区切られた給水区

域)

GDP Gross Domestic Product 国内総生産

GoI Government of Indonesia インドネシア政府

IWA International Water Association 国際水協会

LCC Life Cycle Cost 製品や構造物を取得・使用するために必要な

費用の総額

MNF Minimum Night Flow

夜間最少流量(水を使用していない深夜に対

象給水区域に流入する水量で一番少ない水

量を漏水量とする測定法)

NRW Non-Revenue Water 無収水

OJT On the Job Training 職場内訓練

PDAM Tirtanadi The Tirtanadi Regional Government Water

Company

ティルタナディ北スマトラ州水道公社

PPP Public–Private Partnership

官民連携(民間事業者の資金やノウハウを活

用して社会資本を整備し、公共サービスの充

実を進めていく手法)

PVC Polyvinyl Chloride ポリ塩化ビニル

USAID United States Agency for International

Development

米国国際開発庁

WB World Bank 世界銀行

v

図ⅰ メダン市位置図(出典:http://www.sekaichizu.jp/)

地図

vi

図ⅱ 北スマトラ州行政区図(市・村落数)

(出典BPS-Statistics of Sumatera Utara Province)

vii

図ⅲ PDAM Tirtanadi とその共同経営地域

(出典:PDAM Tirtanadi「Making Water Flow Fostering Good Things in Life」)

viii

図ⅳ メダン市配水管網図 (出典:PDAM Tirtanadi)

ix

図表番号

図ⅰ メダン市位置図(出典:http://www.sekaichizu.jp/) ⅴ

図ⅱ 北スマトラ州行政区図(市・村落数) ⅵ

図ⅲ PDAM TirtanadiI とその共同経営地域 ⅶ

図ⅳ メダン市配水管網図 ⅷ

図 1-1 メダン市各地区 3

図 1-2 PVC ロケーターD305 9

図 1-3 D305 漏水探索概念図 9

図 1-4 小型音聴式漏水探索 10

図 1-5 音聴棒 LSP-1.5 10

図 1-6 小型軽量漏水探索機 11

図 1-7 アナログ式漏水探知機 HG-10A 11

図 1-8 アクアスキャン 610 13

図 1-9 相関式漏水探知機 LC-2500 13

図 1-10 AS610 相関式漏水探索器の原理図 15

図 1-11 水素式高性能漏水探索器バリオテック 460 16

図 1-12 トレーサーガス式漏洩探知機 9012 XPS System 16

図 1-13 超音波流量計 F601 17

図 1-14 高精度デジタル圧力計 18

図 2-1 作業工程計画 23

図 2-2 実施体制図 27

図 2-3 PDAM Tirtanadi 組織図 28

図 3-1 Comp Menteng 地区ステップテスト結果 32

図 3-2 Comp Menteng 地区配水区域位置図 32

図 3-3 Comp Putri Deli 地区ステップテスト結果 33

図 3-4 Comp PutriDeli 地区配水区域(Section)位置図 33

図 3-5 D305 で絞り込みポケットフォンで漏水地点を検出 34

図 3-6 Amplas 地区の水圧調査(0.08MPa) 35

図 3-7 口径 3 インチ PVC 管ソケット部からの漏水 35

図 3-8 Amplas 支所 Comp Riviera 地区:DMA 及び配水区域位置図 36

図 3-9 Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区:DMA 及び配水区域位置図 37

図 3-10 Sunggal 支所 Comp Graha Sunggal 地区:DMA 及び配水区域位置 38

x

図 3-11 Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区漏水位置図 39

図 3-12 Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区漏水位置図 40

図 3-13 地上漏水調査(小型音聴式漏水探索・浅い埋設管での漏水) 49

図 3-14 地下漏水調査(ハイドロフォン・AS610 センサー・AS610 相関器・D305 による調査) 50

図 3-15 Cemara Hijau の漏水 50

図 3-16 Cemara Hijau 地区 51

図 3-17 Cemara 支社 Cemara Asri 地区 52

図 3-18 Diski 支社 Padang Hijau 地区 54

図 3-19 Bukit Johor Mas 地区,給水管からの漏水 55

図 3-20 Padan Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区 55

図 3-21 Tuasan 支社 Komplek Vetpur 地区 調査 57

図 3-22 Diski 支社 Bumi Asri DMA 地区 58

図 3-23 Medan Labuhan 支部 Kpum 地区、メーター継手部からの漏水 59

図 3-24 Medan Labuhan 支部 Kpum 地区 60

図 3-25 Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区 61

図 3-26 Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区 62

図 3-27 Medan Kota 支社 64

図 3-28 Management Water Supply 65

図 3-29 Medan Kota 支社 3 区域 66

図 3-30 残留塩素測定状況 67

図 3-31 「Air Minum」JICA Start New Survey Scheme for NRW Reduction 69

図 3-32 Pukat1 地区漏水検出 72

図 3-33 M.Yamin 支所 Pukat1 地区 漏水調査及び漏水地点 73

図 3-34 AS610 の宅内給水設備への設置 74

図 3-35 Amir Hamzah 地区小型軽量漏水探索による漏水調査 74

図 3-36 Sei Agul 支社 Amir Hamzah 地区 74

図 3-37 Tutup Nati 地区漏水現場 75

図 3-38 Deli Tua Bersaudara 地区 漏水調査及び漏水地点 76

図 3-39 Deli Tua 支所 Bersaudara 地区 漏水状況 77

図 3-40 Bogor 地区 D305 による調査 78

図 3-41 Bogor 地区 AS610 センサー設置 78

図 3-42 Medan Kota 支所 Bogor 地区 漏水調査及び漏水地点 78

図 3-43 Sunggal 支社 Tasbih 地区 79

xi

図 3-44 Pdan Bulan 支社 Citra Garden 地区 81

図 3-45 Villa Peruma 地区低く配線された高電圧線 87

図 3-46 Villa Peruma 地区 調査 87

図 3-47 Amplas 支社 Villa Perma 地区 漏水調査及び漏水地点 88

図 3-48 Waikiki 地区 AS610+D305 設置状況 88

図 3-49 Waikiki 地区 音聴棒を利用して確実に接地 88

図 3-50 Sunggal 支社 Komp Waikiki 地区 漏水調査及び漏水地点 89

図 3-51 Waikiki 地区 D305 による配水管調査 89

図 3-52 Waikiki 地区 ST04 による給水管漏水調査 89

図 3-53 Peruma BSD 地区 90

図 3-54 Deli Tua Bersaudara 地区 漏水調査及び漏水地点 90

図 3-55 Bagan Deli 地区(左)配水管漏水箇所(右) AS610 及び D305 設置 91

図 3-56 Bagan Deli 地区 夜間時調査 92

図 3-57 Bagan Deli 地区 夜間時調査 エリア流入管における AS610 漏水調査 92

図 3-58 Belawan 支所 Bagan Deli 地区 漏水調査及び漏水地点 92

図 3-59 Sicanang 地区 AS610 設置 93

図 3-60 Sicanang 地区 水圧計設置 93

図 3-61 Sicanang 地区 (左)AS610 設置 (中央)仕切弁 (右)地下漏水 93

図 3-62 Belawan 支社 Sicanang 地区 94

図 3-63 Komp Minimalis 地区 小型音聴式漏水探索機 ST04 95

図 3-64 Komp Minimalis 地区 検出された違法接続管 95

図 3-65 Labuhan 支社 Komp Minimalis 地区 95

図 3-66 バリオテック 460(左)機材一式 (中央)ガス管を蛇口に接続 (右)職員への指導 97

図 3-67 バリオテック 460 (左)漏水確認調査 (中央)検出数値 160 (右)台所にて検出 97

図 3-68 Tiritanadi 本局内モスクでのトレーサーガス式漏水調査 98

図 3-69 パーマー社製相関式漏水探索機 104

図 3-70 D305 の探索原理 109

図 3-71 AS610+D305 +ポケットフォンを併用した漏水調査 110

図 3-72 AS610 バルブ濁流の波形 110

図 3-73 D305・AS610 音聴式漏水探索器を併用した漏水調査イメージ 111

図 3-74 メダン市の漏水管理図 117

図 3-75 配管修理後:斜めに接続された管 120

xii

表 1-1 インドネシア GDP 推移 2004-2013 年 2

表 1-2 メダン市人口推移 4

表 1-3 メダン市収入 4

表 1-4 メダン市及び周辺地域の水供給量・収水量・無収水量の推移 5

表 1-5 給水等の分野における近年の対インドネシア協力案件一覧 7

表 2-1 日本人調査チーム 25

表 2-2 投入機材 26

表 3-1 第 1 次現地調査日程 29

表 3-2 パイロット地区 30

表 3-3 漏水調査前の確認事項一覧 30

表 3-4 漏水発見箇所数 35

表 3-5 Amplas 支所 Comp Rivier 地区漏水調査結果 36

表 3-6 Amplas 支所 Comp Rivier 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 36

表 3-7 Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区漏水調査結果 37

表 3-8 Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 38

表 3-9 Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区漏水調査結果 39

表 3-10 Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 39

表 3-11 Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区漏水調査結果 40

表 3-12 Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 40

表 3-13 本邦受入活動 PDAM Tirtanadi 参加者 41

表 3-14 本邦受入活動カリキュラム一覧 42

表 3-15 第 2 回漏水調査日程 45

表 3-16 漏水調査機器一覧表 47

表 3-17 第 2 回漏水調査パイロット地区 48

表 3-18 漏水調査内容 48

表 3-19 Cemara Hijau 地区調査概要 51

表 3-20 Cemara Hijau 地区漏水量の計測 51

表 3-21 Cemara Hijau 地区流入量・使用水量・ 無収水率の推移 52

表 3-22 Cemara Asri 地区調査概要 52

表 3-23 Cemara Asri 地区漏水量の計測 53

表 3-24 Cemara Asri 地区流入量・使用水量・ 無収水率の推移 53

xiii

表 3-25 Padang Hijau 地区調査概要 53

表 3-26 Padang Hijau 地区漏水量の計測 54

表 3-27 Padang Hijau 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 54

表 3-28 Padan Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区調査概要 55

表 3-29 Padan Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区漏水量の計測 56

表 3-30 Padan Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 56

表 3-31 Tuasan 地区 調査概要 57

表 3-32 Tuasan 支社 Komplek Vetpur 地区 漏水量の計測 57

表 3-33 Tuasan 支社 Komplek Vetpur 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移 58

表 3-34 Bumi Asri 地区 調査概要 58

表 3-35 Diski Bumi Asri DMA 地区漏水量の計測 59

表 3-36 Diski 支社 Bumi Asri 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移 59

表 3-37 Labuhan Kpum 地区 調査概要 60

表 3-38 Medan Labuhan 支社 Kpum 地区 漏水量の計測 60

表 3-39 Medan Labuhan 支社 Kpum 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移 61

表 3-40 Kampung Nelayan 地区 調査概要 62

表 3-41 Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区 漏水量の計測 63

表 3-42 Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移 64

表 3-43 Medan Kota 支社 調査概要 65

表 3-44 Medan Kota 支社 漏水量の計測 66

表 3-45 第 2 回漏水調査結果 69

表 3-46 第 3 回漏水調査日程 70

表 3-47 第 3 回 DMA 地区選定結果の水道情報 71

表 3-48 漏水調査内容 72

表 3-49 M.Yamin 支社 Pukat 地区漏水量の計測 73

表 3-50 M.Yamin 支社 Pukat 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 74

表 3-51 Sei Agul 支社 Amir Hamzah 地区 漏水量の計測 75

表 3-52 Sei Agul 支社 Amir Hamzah 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 75

表 3-53 Deli Tua 支所 Bersaudara 地区 漏水量の計測 76

表 3-54 Deli Tua 支所 Bersaudara 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 76

表 3-55 Medan 支所 Kota Bogor 地区漏水量の計測 78

表 3-56 Medan 支所 Kota Bogor 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 79

xiv

表 3-57 Sunggal 支所 Tasbih 地区 漏水量の計測 80

表 3-58 Sunggal 支所 Tasbih 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 80

表 3-59 Pdan Bulan 支社 Citra Garden 地区の漏水量の計測 81

表 3-60 Pdan Bulan 支社 Citra Garden 地区流入量・使用水量・無収水率の推移 81

表 3-61 第 3 回漏水調査で実施した事業結果 82

表 3-62 第 4 回漏水調査日程 83

表 3-63 第 4 回漏水調査パイロット地区 85

表 3-64 漏水調査内容 86

表 3-65 Sunggal 支社 Komp Waikiki 地区漏水量の計測 89

表 3-66 Deli Tua 支社 PeruBSD 地区漏水量の計測 91

表 3-67 Belawan 支所 Bagan Deli 地区漏水調査及び漏水地点 93

表 3-68 Belawan 支所 Sicanang 地区漏水量の計測 94

表 3-69 Labuhan 支社 Komp Minimalis 地区の漏水量の計測 96

表 3-70 第 4 回漏水調査結果 99

表 3-71 各調査状況に対する対応結果まとめ 100

表 3-72 セミナー等の内容とその成果 101

表 3-73 IWA(International Water Association) Water balance 104

表 3-74 第 1 回漏水調査地域の漏水量と無収水率削減幅 104

表 3-75 第 2 回漏水調査地域の漏水量と無収水率削減幅 105

表 3-76 第 3 回漏水調査地域の漏水量と無収水率削減幅 106

表 3-77 全調査地域の漏水検出数及び検出漏水量 107

表 3-78 全調査地域の検出漏水量 107

表 3-79 漏水調査機材の評価(高い 5~低い 1) 112

表 3-80 メンテナンス問合せ先 121

xv

案件概要

xvi

要 約

提案事業の概要

案件名 樹脂管に特化した漏水探索器を使用した無収水削減対策及び配水管網維持管理の

普及・実証事業

事業実施地 インドネシア国メダン市

相手国

政府関係機関

インドネシア国北スマトラ州水道公社(PDAM Tirtanadi)

事業実施期間 2013 年 11 月~2015 年 5 月

契約金額 65,518,200 円(税込)

事業の目的 樹脂管用漏水探索器を使用した漏水調査の実施を通じ当該機器の有効性を実証

するとともに、同機器使用の漏水調査手法等にかかる技術移転等の普及活動を通

じ、水道事業体を念頭にインドネシア国内での展開策について検討する。

事業の実施方針 樹脂管に特化した D305 樹脂管用漏水探索器を使用した漏水調査を実施し、漏水

調査結果を踏まえ、現地の状況に有効な漏水探索器及び漏水調査手法の実証・提案

を行う。同漏水探索器を使用した漏水調査手法や配水管網維持管理にかかる技術移

転を行うとともに、漏水調査結果等についてセミナー等で関係者と共有する等、同

機器の普及に向けた活動を行う。

実績 1.実証・普及活動

第 1~4 次現地調査を実施し、提案製品である漏水調査機器を活用した漏水調査

を実施するとともに、発見・修理した漏水箇所による無収水削減への効果について

検証した。

その結果、これまでの漏水調査では発見できなかった漏水箇所含め、117 ヶ所の

漏水箇所を検出でき、漏水量として約 173,000 ㎥/月の節約となるなど、今回提案の

漏水調査機器の有効性を実証することができた。また無収水率に関しては、漏水調

査実施前後で 41.82%(2014 年1 月)から 24.45%(2014 年 10月)へ約17%の削減

に貢献した。これは、対象地区の水道料金約 32 円/㎥をベースに換算すると月あ

たり約 5,536,000 円相当になり、経済的なインパクトをもたらす成果となった。

(1)投入機材

・樹脂管用漏水探索・配管路探索器 PVC ロケーターD305

・相関式漏水探索器アクアスキャン 610(ハイドロフォン併用)

・小型軽量漏水探索器ポケットフォン

・水素式超高性能漏水探索器

・小型音聴式漏水探索器 ステットホン 04

・超音波流量計 Fluxus F601

・高精度デジタル圧力計 KDM30

xvii

(2)相手国政府関係機関との協議状況

・インドネシア公共事業省:日本政府のインドネシア向け中小企業ノンプロ

ジェクト無償資金協力に関し、予算計上された場合の機材活用及び普及方

法等について協議。

・インドネシア公共事業省、PDAM Tirtanadi、インドネシア水道協会:第 3

セクターによる漏水調査会社の設立可能性について協議し、日本国内での

契約方法等を紹介。インドネシアにおける関連情報を収集した。

(3)本邦受入活動

PDAM Tirtanadi 職員を対象に、本邦にて提案製品の使用方法及び無収水率

削減等について以下項目にかかる講義・実習等を実施。

(参加者:技術部長マギンダ・リトンガ氏、技術装置課長デルヴィアンド

リ氏、無収水対策課長ホットマ・チュア・ハラハップ氏・メダン市給水

管係長アーマッド・サマリ氏、セマラ市給水管係長アーマッドセントー

サ・シレカ氏)

①樹脂管用漏水探索器及び同機器を使用した漏水調査手法の説明

②無収水削減計画、老朽管更新計画策定にかかる事例紹介(横浜市、ジャイプ

ール市)

③管路研修施設での樹脂管用漏水探索器を使用した漏水調査実習

④配水管新設工事現場視察

⑤給水管・配水管維持管理にかかる説明・討議

⑥ドナー等による技術協力事例の紹介

⑦水道メーター維持管理にかかる事例紹介

(4)実証活動実績(樹脂管用漏水探索器及び同機器を使用した漏水調査)

①第 1 次現地調査(2014 年 1 月 13 日~2 月 9 日)

<第 1 回漏水調査の実施>

【調査方法】

無収水率の高い地区及び漏水箇所が長い間不明な場所を中心にパイ

ロット地区を選択。樹脂管漏水探索・配管探索器 D305、小型軽量漏水探

索器ポケットフォン、水相関用ハイドロフォンを併用の相関式漏水探索

器アクアスキャン 610(各 1 台)を使用し、配水管・給水管の漏水調査

を実施。

【調査対象地域】

Comp Riviera 地区・Comp Meteng 地区・Comp Graha Sunggal 地区

Comp PutriDeli 地区・Comp Malibu 地区

【実施体制】

PDAM Tirtanadi 職員と日本人調査チームを中心に、漏水調査機器の取

xviii

扱いや特性について説明しながら漏水調査を実施。

【漏水調査結果】

地上漏水:配水管 1 ヶ所 給水管 7 ヶ所

地下漏水:配水管 5 ヶ所 給水管 6 ヶ所

②第 2 次現地調査(2014 年 6 月 1 日~6 月 28 日)

<第 1 回漏水調査結果検証>

第 1 回漏水調査対象地域の無収水率が、漏水調査前(2014 年 1 月)時点

32.11%から調査後(2014 年 5 月)時点で 17.58%に減少。

<第 2 回漏水調査の実施>

【調査方法】

地上漏水調査:小型軽量漏水探索器・小型音聴式漏水探索器・音聴棒

(PDAMTirtanadi 所有)を使用し、水道メーター周辺の給

水管に直接接触することによる漏水調査を実施。

地下漏水調査:樹脂管用漏水探索器 D305 による配管路探索・配管長を

計測し、ハイドロフォンを併用した相関式漏水探索器ア

クアスキャン 610 の水相関による漏水箇所の絞り込み、

D305 及び小型軽量漏水探索器による漏水箇所の位置確

認。

【調査対象地域】

Cemara Hijau 地区・Cemara Asri 地区・Diski Padang Hijau 地区

Padan Bulan 地区・Tuasan 地区・Diski Bumi Asri 地区

Medan Labuhan 地区・Belawan 地区・Medan Kota 地区

【実施体制】

日本人調査チームを中心にPDAM Tirtanadi職員とともに2班に分け日

本調査員指導の下、探索器材の取扱方法、漏水調査手法、地上漏水調査

や地下漏水といった場面ごとの機材選択法について実習しながら 2 班

とも同じ内容の調査を実施。

【漏水調査結果】

地上漏水:配水管 0 ヶ所、給水管:22 ヶ所

地下漏水:配水管 17 ヶ所、給水管:17 ヶ所

※既存の漏水調査機器では発見できなかった漏水箇所も検出

③第 3 次現地調査(2014 年 8 月 26 日~9 月 22 日)

<第 3 回漏水調査の実施>

【調査方法】

地上漏水調査:小型軽量漏水探索器、小型音聴式漏水探索器 ST04、音

聴棒を使用し、水道メーター周辺の給水管に直接接触す

xix

ることによる漏水調査

地下漏水調査:樹脂管用漏水探索器 D305 による配管路探索・配管長を

計測しハイドロフォン併用の相関式漏水探索器アクア

スキャン 610 による漏水箇所の絞り込み、D305 及び小

型軽量漏水探索器による漏水箇所の位置確認を行った。

超音波流量計 F601・高精度デジタル圧力計による夜間最少流量調査:

漏水検出が困難な条件がある DMA 地区を選定し、有効な調査手法を

検証

【調査対象地域】

Pukat1 地区、Amir Hamzah 地区・Tani Bersaudara 地区・Bogor 地区

Tasbih 地区 Citra Garden 地区

【実施体制】

PDAM Tirtanadi 職員への漏水調査手法指導を兼ね、日本人調査チーム

と習熟度別に分けた PDAM Tirtanadi 職員の混合チーム 2 班体制で実施

【漏水調査結果】

地上漏水:配水管 3 ヶ所 給水管 8 ヶ所

地下漏水:配水管 7 ヶ所 給水管 6 ヶ所

PDAM Tirtanadi 職員のみでの検出:

地上漏水:給水管 10 ヶ所

地下漏水:配水管 2 ヶ所

④第 4 次現地調査(2015 年 2 月 1 日~2 月 28 日)

<第 4 回漏水調査の実施>

【調査方法】

超音波流量計 F601 と高精度デジタル圧力計による夜間最少流量調査:

漏水検出が困難な条件がある DMA 地区を選定し、有効な調査手法を

検証

【調査対象地域】

Villa Permata 地区、Komp Wakiki 地区・Perum BSD 地区

Bagan Deli 地区・Sicanang 地区 Komp Minimalis 地区

【実施体制】

地上漏水班と地下漏水班の 2 班体制で実施

【漏水調査結果】

地上漏水:配水管 0 ヶ所 給水管 5 ヶ所

地下漏水:配水管 5 ヶ所 給水管 8 ヶ所

xx

(5)普及活動の実績(ワークショップ・セミナーでの発表・報告)

①USAID 主催無収水削減対策セミナーへの参加(2014 年 6 月 25 日)

樹脂管用漏水探索器及び同機器を使用した漏水調査手法の説明、無収水削

減対策にかかるプレゼンテーションを実施。

漏水管理課長を含め参加人数約 20 名を 2 班に分け樹脂管用漏水探索器を

使用して漏水調査を実施。

②ジャワ島ショートワジョウ市 PDAM Tirtanadi への訪問(2014 年 6 月 26 日)

提案機材による漏水調査に関する情報を提供。同市は漏水も多く、無収水

率も高いので調査依頼の希望があった。

③日本水道協会・インドネシア水道協会主催によるセミナー

(JWWA-PERPAMSI 研修会への参加(2014 年 8 月 28 日)

樹脂管用漏水探索器及び同機器を使用した漏水調査手法の説明、無収水削

減対策にかかるプレゼンテーション、及びジャカルタ市内のパイロット地

区で漏水調査機器のデモンストレーションを実施した。PDAM Tirtanadi 漏

水管理課 3 名の職員も参加し地下漏水調査手法を紹介した。

④「Water Leakage Management to Reducing the Non Revenue Water」の開催

(2014 年 9 月 8 日)

漏水調査手法及び漏水対策、配水管網維持管理に関するワークショップ

を開催(PDAM 関係者約 80 名が参加)。

⑤ビンジャイ市での無収水削減手法及び漏水調査にかかるワークショップ開

(2014 年 9 月 15 日)

無収水削減手法及び漏水調査の重要性に関するプレゼンテーション及び

職場内研修を実施(OJT)。

⑥公共事業省・PERPAMSI 共催「Joint Seminar on LCC Reduction Challenges for

PDAMs System Development in Indonesia」(2015 年 2 月 24 日)

生涯維持管理コスト削減の観点から見た水道局の運営について意見交換

を行う。各水道事業体 38 名、現地日系企業 23 名、JICA 4 名、JETRO1 名、

その他 5 名が参加した。

⑦バンドン市水道公社幹部職員を対象に漏水探索技術及び無収水対策に関す

るプレゼンを実施。既存の漏水探索器との違い等を説明し、機材導入効果

について理解が深まった。

(6) 事業目的の達成状況

①a.漏水調査結果と無収水率推移

全 25DMA のうち 17DMA で漏水調査を行った実証結果

xxi

漏水調査結果(発見箇所数)

1st 2nd 3rd 4th 合計

配水管 6 17 10 5 38

漏水

地上漏水 1 0 3 0 4

地下漏水 5 17 7 5 34

給水管 13 39 14 13 79

漏水

地上漏水 7 22 8 5 42

地下漏水 6 17 6 8 37

合計 19 56 24 18 117

検出漏水流出量

1st 2nd 3rd 4th 合計

配水管 8,333 49,179 70,121 32,400 160,033

漏水

地上漏水 700 0 12,000 0 12,700

地下漏水 7,633 49,179 58,121 32,400 147,334

給水管 1,248 6,847 4,069 734 12,899

漏水

地上漏水 285 4,778 1,503 389 6,955

地下漏水 963 2,069 2,566 346 5,944

合計 9,582 56,026 74,190 33,134 172,932

b.調査対象の 17DMA 全体の無収率の推移

各 DMA 内への流入量から調査対象 17DMA の無収水率を算出

調査前(2014 年 1 月) 41.82% → 調査後(2014 年 10 月)24.45%

約 17%無収水率を削減

②インドネシア環境下での提案機材の有効性評価

a.樹脂管用漏水探索・配管路探索機 PVC ロケーターD305

パイプロケーターとしての扱い易い、AS610 と併用で確度の高い漏水

調査が可能。乾燥地では深いアースで対応可。浸水地・電線/鉄線入舗

装では誘導の影響により使用不可。両端に 1 台ずつ設置して探索する

と精度が上がる。

b.長距離相関式漏水探索機アクアスキャン(AS)610

地下漏水探索に効果的。特に低水圧やソケット抜けによる漏水の場

合はハイドロフォンを併用することにより確度の高い調査が可能。

D305/ポケットフォンと併用して違法接続管の発見にも有効。距離が長

い場合はアンテナを延長することにより対応。効果的な運用のために

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 ㎥/月
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xxii

は仕切弁の増設が必要。

c.小型軽量漏水探索機

従来の音聴より精度が高い。AS610 と周波数を合わせて併用するこ

とにより確度の高い探索が可能。低水圧、微弱な漏水音の場合は検出

困難なため、AS610 での絞り込みが必要。

d.小型音聴式漏水探索機 ST04

操作が簡単で初心者のモチベーション向上に最適。記録が残るので

再確認が容易。検出精度が高い。

e.水素式高性能漏水探索機バリオテック 460

宅内漏水が簡単に発見可能。音聴も D305 も難しい場合の解決策とな

る可能性が高い。

課題 1.実証・普及活動を通じて抽出された課題

(1)商業地域にみられた特性

①水道管の分岐が多く、D305 では漏水個所との見分けが困難

②AS610 では分岐箇所で起こる渦流とソケット部漏水の波形が酷似し見分け

が困難

③住宅街では区間内の止水栓を止め配管の静かにさせるのも住民の協力が必

要となり AS610 とハイドロフォンでの計測にも時間を要する

④維持管理のための仕切弁の増設が必要

⑤夜間も車両の往来が激しいため日中と条件は変わらず、音聴式漏水探索器

による確認作業も時間を要する

(2)天候によるスケジュール遅延

雨天による調査中断、日中酷暑による作業効率の低下。

(3)トレーサーガス

ガス調達業者が少なくガス代が高いため、代用品の検討が必要

2.ビジネス展開計画

・漏水調査機器のバックアップ及び修理メンテナンス体制確立の必要性

・漏水調査機器購入のための各水道公社の予算化に向けた州政府への働きかけ

・高額な輸送・物流コスト及び全体で 30%近い諸税等により販売価格が高騰

事業後の展開 今後の事業展開に向け、本事業終了後、以下の取り組みを中心に行う予定。

・現地協力者と雇用契約締結、現地調査・販売活動・修理受付業務を任命する。

・機材のメンテナンス体制を充実するための修理体制ネットワークの整備及び

現地協力者へ修理技術を移転する。

・インドネシア水道協会会報を通じたインドネシア国内広報活動を継続的に展

開する。特に各主要 PDAM 及び大学教育機関への漏水探索技術の紹介と情報

発信を行う。

・インドネシア公共事業省(32 州)の地方局へ機材配備計画を推進する。

xxiii

・セミナー参加者リストをもとにして、PDAM 事業体に漏水調査機器の有用

性と経済効果をアピールし普及を図る。(必要に応じ Tirtanadi 職員によるデ

モンストレーションの実施。)

・水道事業に参画している現地日系企業・商社等に対し本事業の成果を共有

し、将来的な ODA 事業の可能性を打診。

・樹脂管を使用している日本国内の水道事業体や本邦コンサルタント会社等

に対し本事業の成果を共有し、実証事業で得られた手法の国内普及を図る。

・主要 PDAM に無収水対策専門の漏水研修施設を整備し、漏水探索専門技術

の人材開発を支援する。その際、漏水熟練技術者の再雇用についても検討

する。

・インドネシア無収水対策に関する ODA 事業にかかる情報収集及び関係者と

の意見交換を行う。

1

1.事業の背景

(1)インドネシア共和国における開発課題の現状及びニーズの確認

①インドネシア共和国(以下、インドネシア)の政治・経済の概況

インドネシアは面積約 189 万 km²(日本の約 5 倍)、人口約 2.47 億人(2012 年世界第 4 位)の、ASEAN

最大の人口と国土を有する中核国である。世界最大のムスリム人口を抱え、マラッカ海峡を始め重

要な海上交通路の要衝に位置し、同国の安定は我が国を含むアジア全体の安定と繁栄に不可欠であ

る。

インドネシアは共和制の下、33 州から構成される。2004 年 10 月にインドネシア史上初となる有

権者直接投票によりユドヨノ政権(民主党)が発足。同年 12月のスマトラ沖大地震及びインド洋津波、

2006 年 5 月及び 7 月の相次ぐジャワ島での地震等、自然災害に見舞われたが、これら自然災害への

有効な対策、その他治安の改善や堅実なマクロ経済運営などが評価され、高い支持率を獲得し、2009

年 7 月の大統領選挙で再選された。ユドヨノ政権第 2 期目(2009 年~2014 年)では、国家開発の基本

方針「国家中期開発計画」において、インフラ及び投資・ビジネス環境の整備を重点施策と位置付

け、積極的に外資系企業の誘致に取り組み、安定した政治体制を維持してきた。

2014 年 7 月に実施された大統領選挙にて当時ジャカルタ州知事のジョコ・ウィドド氏(闘争民主

党)が当選、7 代目大統領(任期 5 年)として現在政権運営にあたっている。

インドネシアの経済状況については、1997 年~1998 年のアジア通貨危機を機に好調だった国内経

済が一転し 1998 年の経済成長率がマイナス 13.1%と落ち込んだこともあったが、その後世界金融・

経済危機の影響を受けたにもかかわらず 2009 年も 4.6%の経済成長を維持した、その後も 2010 年

6.2%、2011 年 6.5%、2012 年 6.3%と回復し、堅調に成長を維持してきたが、2013 年、世界経済の

成長鈍化や米国の金融緩和縮小等の影響を受け、成長率は5.8%と減速し、2009年以来4年ぶりに6%

を下回る結果となった。しかしながら、近年の政治的安定と順調な経済成長の実現により、東南ア

ジア唯一の G20 メンバーとして国際場裏での役割を拡大してきており、気候変動対策や民主化支援

などアジア地域及び国際社会の課題に対しても積極的に取り組む姿勢を見せている。

日本との関係では、インドネシアへ進出している日系企業数は約 1,300 社に達し、インドネシア

は我が国企業にとって重要な活動拠点となってきていると言える。また、インドネシアは、LNG や

石炭等のエネルギー資源、銅やニッケル等の鉱物資源の重要な供給国であり、対日貿易総額は 2.8

兆円(2013 年)にのぼる。インドネシアがより良いビジネス・投資環境を整備し、更なる経済成長を

達成することは、インドネシアのみならずアジア地域の発展に大変重要であると同時に、我が国が

アジア諸国と共に成長するという観点からも重要なステークホルダーであると言える。

経済協力の分野においても両国の関係は深く、2012 年度の日本の対インドネシア援助実績は総額

約 277.6 億円(内円借款 154.90 億円)にのぼり、累計ベースでは世界最大の援助国となっている。(出

典:外務省「国別データブック」)

2

また、インドネシアの特徴として、若年層労働者人口の層が厚い、輸出額の割合が低く個人消費

の割合が高いといった内需主導型の経済構造であることから、国内消費の拡大が経済成長へつなが

るものと考えられる。さらに、石油や天然ガスをはじめ天然ゴムや銅鉱、コーヒー・紅茶など多様

な天然資源・産物に恵まれ、地理的にも成長目覚ましい中国・インドに近いことから両国の資源需

要がインドネシア経済の外需を支えるものとみられる。

本事業対象のメダン市は、インドネシアの西端に位置するスマトラ島の北部、北スマトラ州の州

都でありインドネシア第 3 の都市である。マラッカ海峡に注ぐデリー川の河口から 24km 上流に位

置し、面積は 265.10 ㎢、21 地区(District)で構成される。気候は、年平均気温 27 度、年間降雨量約

1,800 ミリメートルと年間を通じて高温多湿な熱帯雨林気候である。

1860 年代にオランダのたばこ会社が進出してから急速に発展し、タバコ・ゴム・茶・アブラヤシ

など、周辺地の産物の集散地として繁栄した。

現在は、人口約 211 万人を擁するスマトラ島最大の都市として、また、市内北方 25km に位置す

るベラワン港を拠点とした交易の中心地として、インドネシアにおいて重要な地位を占めているほ

か、国内最大の湖、トバ湖(市内の中心地より南東約 200km)の玄関口として内外から多くの観光客

が訪れている。

表 1-1 インドネシア GDP推移 2004-2013年

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

8,000,000

9,000,000

10,000,000

IDR

2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年

2,295,826 2,774,281 3,339,217 3,950,893 4,948,688 5,606,203 6,446,852 7,419,187 8,229,439 9,083,972

出典:IMF World Economics Data Base 2014

単位:Rp.

3

図 1-1 メダン市各地区

出典:PREPARATION OF THE MEDIUM TERM INVESTMENT PROGRAM PLAN (RPIJM)

DRINKING WATER PROVISION SYSTEM PDAM Tirtanadi

インドネシア経済の堅調な成長を背景に、近年はメダン市内でも中間所得層の豊富な消費活動が

顕著であり、市内に次々とショッピング・モールや高級ホテルがオープンしている。また、今後の

成長分野として、スマトラ島の豊富な農業資源、地熱などの自然エネルギーの活用が期待されてお

り、シンガポールやクアラ・ルンプール(マレーシア)とも近い地理的な優位性とも併せて、大きな

潜在力を秘めた地域として注目されている。

好調な経済に伴いメダン市の人口も 1 人あたりの収入も表 1-2、表 1-3 に示すように毎年伸びてい

る。今後この人口増に対応しながら国際競争力のある投資環境と強固な経済基盤を構築する為には、

それら経済活動を支える基本的社会インフラである上下水道整備・改善が重要な課題と認識されて

いる。

4

表 1-2 メダン市人口推移

年度 メダン市人口 人口増加率% 市域(km2) 人口密度(人/ km2)

2001 1,926,520 - 265.10 7,267

2002 1,963,882 1.94 265.10 7,408

2003 1,993,602 1,51 265.10 7,520

2004 2,006,142 0.63 265.10 7,567

2005 2,036,185 1.50 265.10 7,681

2006 2,067,288 1.53 265.10 7,798

2007 2,083,156 0.77 265.10 7,858

2008 2,102,105 0.91 265.10 7,929

2009 2,121,055 0.90 265.10 8,001

出典:Medan dalam Angka Tahun 2010(BPS Kota Medan:メダン市統計局)

表 1-3 メダン市収入

項目 年

2007 2008 2009

メダン市地方収入(百万 Rp.) 51,649,690 62,226,200 69,728,190

人口 2,083,156 2,102,105 2,121,055

1 人当り収入(Rp.) 24,793,962 29,601,851 32,874,296

出典:Medan dalam Angka Tahun 2010(BPS Kota Medan:メダン市統計局)

②インドネシア都市給水分野における開発課題(特に無収水対策について)

無収水とは浄水場で浄化された給水量から水道メーターで計測し各家庭に請求された使用水量を

差し引いた水量のことをいう。無収水量の発生には一般的に以下の要因が指摘されている。

・請求書を受領しても支払い能力のない家庭での使用水量。

・水道メーターを設置せず、かつ水道料金の徴収ができない使用水量。

・水道メーターに換算できない不感水量。

・違法接続して水道水を使用している家庭の使用水量。(罰則あり)

・PVC 管の老朽化が原因で交通など振動により水道管の継手部や劣化部に入る亀裂や、配水管部と

給水管の分岐部の接続不良による漏水(PVC 管寿命は約 20 年(日本の基準)だが、PDAM Tirtanadi

を含めたインドネシア水道公社では 20 年~30 年使用されている)。

・新設水道管の洗浄水、各水道事業所で使用する水道水といった事業所用水。

・各家庭に設置した受水槽のフロート故障による漏水。

2011 年 12 月インドネシア北スマトラ州水道公社(PDAM Tirtanadi Provinsi Sumatra Utara) (PDAM

Tirtanadi)が北スマトラ州政府に提出した 2011-2015 中期開発計画書(PRJIM)に、メダン市及びその近

郊地域(ゾーンⅠ)における 2010 年の年間給水量は 167,154,487m³であるのに対し年間無収水量は

46,762,052m³、率にして 27.98%と報告されている。2008 年の 29.58%からの推移をみると無収水量

は 2009 年に 5.34%、2010 年には 0.37%と減少している。これはインドネシア国全体の平均無収水

5

率 37%と比較すると低い数値である。

しかしながらメダン市の人口は 2005 年から 2009 年にかけて平均 1.055%の割合で増加し、2009

年の時点で 2,121,055 人と大都市のカテゴリーに位置づけられ、2015 年には給水世帯数は 44 万世帯

へ給水需要も 1300 万㎥になると推定している。(出典「2015 年中期開発計画」 2015 年までの給水

需要と無収水の推定値)このような状況から中期開発計画書では特にメダン市及びその近郊地域(ゾ

ーンⅠ)を重点的に改善する方針を示し、2015 年までに無収水率を 2010 年の 27.98%から 22%に引

き下げることを目標としている。(表 1-4)

表 1-4 メダン市及び周辺地域の水供給量・収水量・無収水量の推移

Branch Year

2008 2009 2010

Water produced (m3/ year) 158,656,386 163,745,798 167,154,487

Water sold (m3/ year) 111,732,355 117,770,130 120,392,435

Water loss (m3/ year) 46,924,031 45,975,668 46,762,052

Water loss (%) 29.58 28.08 27,98

出典:Laporan Litbang PDAM Tirtanadi tahun 2008, 2009 dan 2010

そのための対策として、漏水調査、配水機器の修理・更新、配水管路・区域の整備、基準に則し

た水道メーターの校正交換をあげている。漏水調査に関しては、以前配備された相関式漏水探索機、

鉄管探知器、音聴式漏水探索機等が主に金属管の漏水探索に適して開発されたものであるため、PVC

管を使用している配水管や水圧が 0.05MPa 程度と低い PDAM Tirtanadi の水道施設では、漏水音が小

さいもしくは水道管に伝わりにくい状況のため、地下漏水探索が困難であったり、故障したまま使

用できなくなっていたりと、既存の機材が活用されていない。結果として 2014 年 1 月時点(第 1 次

現地調査時)で、今回 3 回の調査で対象となったパイロット地区の平均無収水率をみても、37.71%

と依然として高い状況である。

また、水道を各家庭に届けるまでにかかる費用には、河川・ダム等の水源水を浄水場までポンプ

圧送するための電気料金、浄水のための薬品代金、及び浄水場から各配水池までポンプ圧送するた

めもしくは水圧の低い地域の場合配水池から各家庭に圧送するための電気料金がかかる。PDAM

Tirtanadi Production Division の報告によると、本事業の対象地域である PDAM Tirtanadi Zone1(メダン

市及びその近郊の地域)における水道水製造費用は 982Rp/㎥と報告されている。

このことから算出すると表 1-4 から

年間無収水量 46,762,052m3(2010 年)×982≒460 億 Rp(約 4 億 3500 万円)

と、多額の費用が損なわれていることがわかる。

すなわち現地における無収水問題は膨大な量のエネルギー損失と薬剤の損失、さらに収益面での

マイナス要素に大きくかかわる重大案件であることを認識し、各 PDAM(水道公社)に対して無収水

対策に対する予算化を促していく必要がある。

③インドネシア共和国の無収水削減対策における関連計画、政策(外交政策含む)および法制度

ア.関連計画

インドネシアの国家開発政策は、社会経済開発計画に相当する20年間の長期国家開発計

6

(RPJPN2005~2025)を国家開発計画庁(BAPPENAS)が作成している。同計画では、貧困層に配慮し

た安全な水供給システムの改善についての基本方針が示されている。また、その下位計画として、

国家中期開発計画(RPJMN 2010~2014)があり、それを踏まえてセクター別国家政策と戦略計画

(RENSTRA 2010~2014)を関係各省庁が策定している。水道セクターに関しては、ミレニアム開

発目標(MDGs)の達成を目指した給水率の向上が目標となっており、「安全な水へのアクセス率」

を基準年(1993 年)の37.73%から目標年次(2015 年)の68.87%に増加させることを目指している。

また、公共事業省居住総局(Cipta Karya)が作成する戦略計画(RENSTRA 2010~2014)では、水道

サービスの課題のひとつとして、37%と高い漏水率1に併せて低水圧を問題にしており、水圧の

低い配水管に漏水箇所があると、管周囲の汚染物質を内側に引き込んでしまい管内の水道水を汚

染する原因となることもあり、漏水率削減は急務であると指摘している。

イ.関連法制度

2010 年インドネシア共和国大統領令 No.13 では、(2005 年 No.67 の改正)政府とインフラ整備企

業体の連携について「飲料水設備、水源水取水用設備を含む送水管網、配水管網、浄水設備の整

備をすること」と定められている。

また 2005 年の水供給システムの開発に係る政令 No.16 において、行政は、国民が安全で衛生

的、生産的な生活を維持するために必要な水供給システムの開発を行わなければならない、とし

ている。(Indonesia Water Investment Roadmap 2011-2014)

④インドネシアの無収水削減対策における ODA 事業の事例分析及び他ドナーの分析

ア.我が国の無収水削減対策における ODA 事業の事例

対インドネシア国別援助方針(2012年4月)では、「長い友好関係を有する戦略的パートナーであ

るインドネシアのさらなる経済成長に重点を置きつつ、均衡のとれた発展と、アジア地域および

国際社会の課題への対応能力向上を支援する」ことを援助の基本方針とし、重点分野「更なる経

済成長への支援」の下インフラ整備支援を進めるとし、特に官民連携(PPP)の枠組みの強化を促し

ていくことに留意するよう掲げている。

我が国による近年の給水等の分野に関する協力実績(表1-5参照)において、本事業との関連性が

あるものとして、技術協力プロジェクトとして実施された「南スラウェシ州マミナサタ広域都市

圏上水道サービス改善プロジェクト」があげられる。対象となる4つのPDAMに向け広域連携体

制構築、無収水率改善対策、財務改善、施設維持管理改善、水質管理改善を通して水道サービス

の向上を図る2年5ヶ月にわたるプロジェクトであったが、無収水率削減に関しては漏水調査をは

じめメーター検針の指導や水道料金徴収率の上昇など複合的な技術指導の結果、全体で削減され

財務状況が改善された。

本事業については、漏水が原因の無収水に対象を絞り、非金属管向けに開発された漏水調査機

器がPDAMの無収水削減対策にもたらす効果を実証することを目的に実施した。

1 漏水率とは全体の給水量のうち漏水量の占める割合のことをいう。

7

表 1-5 給水等の分野における近年の対インドネシア協力案件一覧

スキーム 分野別課題内訳 案件名 期間

開発調査 都市給水 ジョグジャカルタ特別州広域水道整

備計画調査 2006/09~2008/03

開発調査 総合的資源管理 バリ島総合水資源開発・管理計画調

査 2004/09~2006/08

開発調査 その他水資源・防災 ウォノギリ多目的貯水池堆砂対策計

画調査 2004/01~2007/08

開発調査 総合的水資源管理 ジェネベラン川流域管理能力強化計

画調査 2003/04~2007/03

技術協力プロジェクト 水質汚濁 ジャカルタ汚水管理マスタープラン

の見直しを通じた汚水管理能力強化

プロジェクト 2010/07~2012/06

技術協力プロジェクト 環境行政一般 河川流域期間実践的水資源官営強化

能力向上プロジェクト 2008/07~2011/07

技術協力プロジェクト 水資源開発 インドネシア国「水資源開発研究所

機材整備計画」フォローアップ協力

(据付・指導) 2007/03~2010/03

技術協力プロジェクト その他 地方給水プロジェクト 2004/01~2006/12 個別案件(専門家) 総合的水資源管理 水資源政策アドバイザー 2008/05~2010/05 個別案件(専門家) 地方給水 水道政策 2007/04~2010/03

草の根技協(地域提案

型) 都市給水 インドネシア・スラバヤ市民のため

の安全な飲料水供給と水質改善に関

する調査 2014/05~2017/03

草の根技協(地方提案

型) 水質汚濁 スラバヤ市水質管理能力向上 2007/11~2009/03

有償資金協力- 附帯プロ 総合的水資源管理 ジャカルタ首都圏総合治水能力強化

プロジェクト 2010/10~2013/10

有償資金協力 総合的水資源管理 ウォノギリ多目的ダム・貯水池堆砂

対策事業(Ⅰ) 2009/03~2012/10

有償技術支援-付帯プ

ロ 都市給水 南スラウェシ州マミナサタ広域都市

圏 上水道サービス改善プロジェク

ト 2009/10~2012/02

出典:JICA プロジェクト基本情報

イ.ODA 事業以外の我が国の無収水削減対策における協力事例

日本水道協会では、インドネシア水道協会及びJICAの協力のもと、毎年我が国の水道局若手職

員育成のためにジャカルタで研修を実施している。2015年も8月24日から8月30日まで「2014

PERPAMSI And JWWA Exchange Training Program ; Capacity Building on Water Supply for Young

Leaders」を開催し、今回提案製品の樹脂管用漏水探索・配管路探索機PVCロケーターD305・長距

離相関式漏水探索機アクアスキャン610・小型軽量漏水探索機を持ち込み漏水調査の基礎知識・

無収水削減対策について現地調査を交えてセミナーを行った実績がある。

ウ .他ドナーの分析

インドネシアでは、世界銀行(WB)、アジア開発銀行(ADB)、米国国際開発庁(USAID)、豪州国

際開発庁(AusAID)等を中心にさまざまなドナーが水セクターで活動を展開している。主なプログ

8

ラム・プロジェクトについては以下のとおり。

a.Water Supply And Sanitation for Low Income Communities Project(PANSIMAS):WB、AusAID

資金規模:300 億円弱(AusAID:54.5 百万豪ドル(有償)、WB:137.5 百万米ドル(有償)、

インドネシア政府(GoI):101.1 百万米ドル)

対象期間:2006 年 9 月~2014 年 12 月(現在フェーズⅢ)

概要 :コミュニティによる水管理組合の組織化、料金徴収並びに簡単な施設の点検・

補修・維持管理の指導能力開発。AusAID(2013 年 1 月)のレビューでは、15 件

110 地区 6,190の村で 420万人への水供給と 300 万人の衛生施設の設置がなされ

たと報告。

b.Urban Water Supply And Sanitation Project(UWSSP):WB

・西ジャワ州ボゴール(事業費 10.95 百万ドル)新規浄水場の建設、既存浄水場のリハビリ

配水池の建設、配水管網の拡張と給水管接続、無収水削減対策

・中部カリマンタン州カプアス(事業費 5.65 百万ドル)配水池の建設、配水管網の拡張と給

水管接続、無収水削減対策

・南スマトラ州ムアラ・エニム(事業費 14.58 百万ドル)取水施設と導水管の建設、新規浄水

場の建設、配水池の建設、配水管網のリハビリ、給水管接続、無収水削減対策

c.West Jakarta Water Supply Development Project:ADB

・資金規模:47 百万ドル

・対象期間:2008 年~2012 年

・概要 :政府保証なしの民間企業(PT PALYJA)へのプライベートセクターローンにより

配水管網復旧・漏水調査及び修繕・水圧管理・不良及び老朽メーター交換・

接続部普及等の無収水削減対策や老朽管更新を含む水道施設の整備を実施。

同企業は当該プロジェクト開始より飲料水水質基準を順守しながら平均 20%

の収益を維持している。

9

(2)普及・実証を図る製品・技術の概要

探索機 提案製品

樹脂管

漏水探

索機

樹脂管用漏水探索・配管路探索機 PVC ロケーターD305

株式会社グッドマン製

【概要】

樹脂製水道管に設置している仕切弁や消火栓等の金属部分

を電極として、これに電磁波をかけることにより、管内を流れ

る水道水が媒体となって電磁波が管内に伝わる。この電磁波を

受信することにより配管の埋設位置を確認する。漏水点以降は

電磁波も地中に漏れるため地表の電界レベルが急激に減少す

ることを利用して漏水点の検出が可能となる装置。

【用途】

樹脂管の配管路探索及び漏水箇所の特定調査

【製品仕様】

発信機 電源:12V シールドバッテリー 作動時間:約 6 時

送信出力:30W(可変)max 作動温度:-15~50℃

電池残量表示:電圧計に表示

受信機 電源 9V リチウムイオン充電池 作動時間:約 20 時間

作動温度:-20~60℃

寸法:540×400×210 ㎜ 総重量:13.5kg

【販売価格】

1,296,000 円(税込)

【特徴・優位点】

・樹脂管の漏水探索に特化して開発された機器であり、樹脂管が多く使われているメダン市で

の漏水探索に適している。

・従来の音聴式ではなく電磁波により漏水箇所を絞り込むため、車両の往来が激しい騒音が多

い環境でも使用可能。

図 1-3 D305 漏水探索概念図

図 1-2 PVC ロケーターD305

10

【デメリット】

・雨天時、水分を多く含む土壌での探索や、金属部分のバルブ等が水没して電磁波が地表面で

拡散してしまい探索できない。

・分岐箇所・配管の落込み箇所で漏水と同じ信号音の減衰がみられ、区別が難しい場合がある。

探索機 提案製品 (参考)現在インドネシアで使用されている機

器及び競合製品

音聴式

探索機

小型音聴式漏水探索機 ST04

(ドイツ ゾブリン社製)

【概要】

漏水音を自動的に増幅するデジタルアンプを

搭載し、音圧が数値で表示されるので、誰にでも

簡単に漏水箇所の絞り込みができる。ステンレス

棒を継ぎ足すことにより、電子音調棒としても使

用できる。

【用途】

上記 D305 等で漏水箇所を絞り込んだ後、漏水

点をピンポイントで発見するために使用。電子音

聴棒を直接管体にあて、音聴及び音圧レベルを確

認して漏水箇所を特定する。

【製品仕様】

電源:単 3 アルカリ電池(ニッケルマンガン充電

池)2 個(それぞれ最小で 2000mA/h)

作動時間:最小 8 時間

動作温度:-10℃~+50℃

保管温度:-25℃~+70℃

【販売価格】

280,800 円(税込)

【特徴・優位点】

・小型で軽量。

・デジタル式のアンプを搭載し、周辺ノイズを

自動的に消去して漏水音のみを容易に判別で

きる。

音聴棒 LSP-1.5(フジテコム株式会社製)

【概要】

棒の先端を給水装置に当てて音聴し、異常

音を調査する。

通常は熟練した技術者が、棒に伝わる音か

ら漏水の有無を判別する。

【用途】

棒の先端を直接管体にあて、ダイアフラム

を介した音を聞きながら漏水箇所を特定す

る。

【製品仕様】

カップ寸法:67 ㎜×29 ㎜

全長:1513 ㎜

バー直径:7 ㎜

重さ:510g

【販売価格】

29,160 円(税込)

【特徴・デメリット】

・かつては漏水探索方法の主流であった。

・棒に伝わる風の音や騒音の中から微弱に

増幅された漏水音を判別できる豊富な経

験を必要とする。

図 1-4 小型音聴式漏水探索機 図 1-5 音聴棒 LSP-1.5

11

・音聴棒と比較し数百倍の漏水音の増幅が得ら

れ、PVC 管・樹脂管のわずかな漏水音の診断

が容易となる。

・自動的に最少の音圧レベルをデジタル数字で

LCD 画面に表示するため、漏水箇所の特定が

容易にできる。

・延長可能なステンレス探査棒により、音聴棒

的な使用感も得られる。

・周囲の騒音の混入を防ぎ漏水音のみに集中で

きるイヤーマフラータイプの専用ヘッドホン

の採用で長時間作業も容易にできる。

【デメリット】

PVC 管の場合漏水個所からの発生音が伝搬し

にくいため、周囲の騒音や振動が大きい場合は特

に音聴確認できる範囲や深度が狭くなる。

・漏水音の増幅率が弱いため、平均(0.021

~0.04MpA)の低水圧下のPVC管における

漏水音の検出は困難である。

・車の騒音が激しい環境での使用には適さ

ない。

・宅内漏水など狭い場所では長い棒が扱い

にくい。

小型漏

水探索

小型軽量漏水探索機(グッドマン・ギューターマン

共同開発)

【概要】

より小さな漏水音を聞くことができるよう高

感度セラミックマイクを搭載した音聴式漏水探

索機。マイクロフォンの小型軽量化により、総重

量は約 0.5kg。手元グリップにスイッチを搭載し

電源の入切を行う。デジタルアンプには環境ノイ

ズを除去するフィルター、直近の 8 つの探索記録

を表示して漏水地点までの距離を比較。マイクに

探査棒を接続することにより電子音聴棒として

も使用できる。

【用途】

上記 ST04 同様、漏水箇所を絞り込んだ後、漏

水点をピンポイントで発見するために使用。マイ

クとデジタルアンプを介し地上もしくは配管か

ら直接音聴することにより漏水箇所を探る。

アナログ式漏水探知機 HG-10A(フジテコム株

式会社製)

【概要】

アナログメーター付のアナログ系アンプで

構成されている。見やすいメーターと聴きや

すい音が選択できるフィルターを採用するこ

とにより、探知効率を高めるとされている。

【用途】

マイクとアナログアンプを介し地上もしく

は配管から直接音聴することにより漏水箇所

を探る。

図 1-6 小型軽量漏水探索機 図 1-7 アナログ式漏水探索機

HG-10A

12

【製品仕様】

フィルター:狭帯域のフィルターで、特定の音

を音聴

レベルメモリ:8 回

画面:バックライト付 LCD 表示

電源:アルカリ単 3×4 本

作動時間:通常使用 60 時間

アンプ重量:270g

マイク重量:250g

販売価格:518,400 円(税込)

【特徴・優位点】

・ノイズフィルターとメモリー機能により誰に

でも容易に漏水点の確認ができる

・総重量約 500g と軽量であるうえ、トリガー

部にソフトグリップが装着されているので、

長時間作業に対応。

・恒常的に発生する最少音のみを把握するため

騒音環境に強い。

・狭帯域フィルター搭載、音圧レベルのデジタ

ル数値化により、PVC 管の漏水音の補足が可

能。

・屋外防滴仕様で、雨天時の作業も可能。

・マイク部接地面は摩耗した場合ビス交換によ

る修復が簡単。

・疲労によるコード損傷の修理費は 2 万円程度

(通常 5~10 年で交換)

【デメリット】

水圧が極端に低い場合やソケットの抜けによ

る漏水は漏水音が発生しにくく、音聴が困難。

【製品仕様】

フィルター:広帯域のフィルターで、特定

の環境音をカット

レベルメータ:65 ㎜×53 ㎜

電源:単 3×6 本

寸法:175×70×105 ㎜

重量:800g

販売価格:537,840 円(税込)

【特徴・デメリット】

・アナログメーターは音圧レベルの最小・

最高値を補足しにくいため実際の漏水音

圧の適正な確認には熟練が必要。

・メモリー機能はない

・本体重量が 800g あるため、長期間作業で

の利便性が低い。

・フィルターの周波数帯域が限定されてい

るため、水圧の高い配管や漏水音が顕著な

鉄管やタグタイル鋳鉄管には対応可能で

あるが、極低水圧の PVC 管や樹脂管の漏

水音は周波数が低いため探知困難。

・コード損傷の修理費は約 10 万円。

13

相関式漏水

探索機

長距離相関式漏水探索機アクアスキャン 610

(ドイツ・ギューターマン社製日本版)

【概要】

高感度マイクと発信機が一体になった 2 つ

の完全防水センサーと相関器で構成される。

また、グラフ表示により漏水を視覚的に表示

する。

※相関:漏水箇所から発生した音が A・B

各センサーに到達し相関器に漏水音の波形

を送信する。双方の波形を照合し漏水箇所か

ら各センサーに到達するまでの時間差を自

動的に計測することにより漏水地点を割り

出す技術。

【用途】

広域の探索範囲から漏水箇所を絞り込む

ために使用。具体的には、設置した A・B セ

ンサーにより収集した音圧データを相関処

理し、各センサーから漏水地点までの距離を

グラフと数値で表示する。

【製品仕様】

フィルター:自動選択式、手動による無限

調整

ノッチフィルター:周波数選択

センサー/プリアンプ:一体型

センサー/プリアンプ重量:800g

相関式漏水探知器 LC-2500

(フジテコム株式会社製)

【概要】

マイク・発信機・相関器で構成。24 ビット

DSP による高速演算処理を行う。性能・操作

性、耐久性を備えた効率的な機器とされる。

【用途】

広域の探索範囲から漏水箇所を絞り込むた

めに使用。具体的には、設置した A・B センサ

ーにより収集した音圧データを相関処理し、各

センサーから漏水地点までの距離をグラフと

数値で表示する。

【製品仕様】

フィルター:ハイパス・ローパス

ノッチフィルター:OFF・50Hz/60Hz

センサー/プリアンプ:分離型(別々のケー

ブルで接続)

センサー/プリアンプ重量:3270g

(2850g+420g)

図 1-8 アクアスキャン 610 図 1-9 相関式漏水探知機 LC-2500

14

相関器重量:1Kg

センサー感度:15V/g

送信出力:500mW 自動認識信号発信機能

(ATIS)付

送信距離:1000m 以上(郊外)

~600m (市街地)

~300m(マンホール密閉状態)

相関分解能:16,000 ポイント

相関精度:100m につき 1cm

周波数解析:FFT、コヒーレンス及び

ASA(高度スペクトラム解析)

PC 出力:ブルートゥ-ス

電源:3.7V リチウムポリマー2 次電池

作動時間:相関器 12 時間/センサ-8 時間

センサー:電波送信及び磁界固定内蔵型超

小型高感度ピエゾセラミック

センサー

販売価格:3,132,000 円(税込)

【特徴・優位点】

・相関プロセスにおいて漏水固有の周波数

範囲に限定する機能により、従来型の相

関器では難しい環境ノイズの多い場所

で、わずかな漏水を発見できる

・同時多重相関(異なる周波数帯における同

時相関)が可能で、二次的漏水(取付管の

漏水など)の発見が可能

・マンホール蓋を閉めたまま(A/B 間 300m

以内)探索ができるため、作業の安全性を

確保できる。

・高感度マイクと発信機が一体となった完

全防水センサーで取り扱いが楽である。

・完全自動フィルター搭載で、漏水箇所の

検出診断が容易。

・ハイドロフォン(水中を伝わる音を収集す

る装置)を併用することにより難しい低

水圧の樹脂管の漏水を検出することが可

能である。

・本体とセンサーを同時に充電できる。

相関器重量:3.1Kg

センサー感度:2.5V/g

送信出力:1mW

送信距離:100m 以下(当社比較試験による)

マンホール密閉状態は不可

相関分解能・精度:未公表

周波数解析:FFT

PC 出力:RS232C

電源:相関器 単一電池×4 本

送信機 単一電池×6 本

作動時間:相関器 8 時間/送信機 8 時間

センサー:圧電型

販売価格: 3,024,000 円(税込)

専用ソフト別売:64,800 円(税込)

【特徴・デメリット】

・マンホールカバーを開けて作業すること

になるので、市中での作業安全性が劣る。

・鋼管やタグタイル鋳鉄管には使用できる

が、低水圧の PVC 管・ポリエチレン管に

は対応できない。

・ソフトウェアのアルゴリズムが 10 年以上

改良されていないため、高度な相関検査

に対応できない。

・送信出力が1mmW と低いため電波が届か

ないことが多い。

・ソフト面での開発がなされていないため、

PVC 管や低い水圧の環境には対応できて

いない。

15

・各センサーの収録音を無線で確認、小型

音聴式漏水探索機を接続して音聴確認す

ることもできる。

【デメリット】

調査を行う範囲にセンサーを接続する止

水栓・蛇口・露出金属部が必要。街中で A/B

センサー間の止水が不可能な地域において

は使用水と漏水との相違を判別することが

困難。この場合夜間の作業が必要。

音波音波

La LbL

相関器

伝搬時間 T1 伝搬時間 T1伝搬時間差T2

伝搬速度 C 伝搬速度 C

センサー・増幅送信機(A)

センサー・増幅送信器(B)から漏水個所までの距離: Lb=(L ― T2・C)/2

センサー・増幅送信機(B)

漏水

図 相関式漏水探索機の原理図

センサー・増幅送信機(B)から漏水箇所までの距離: Lb=(L-T2・C)/2

16

水素式漏水

探索機

水素式高性能漏水探索機バリオテック 460

(ドイツ・ゾブリン社製)

【特徴】

水素 5%、窒素 95%の混合ガスを配管内に

注入し、配管から漏れて地表に噴出してくる

ガスを、プローブを使って検知する。

【用途】

区間を区切って管内の水を抜くことがで

きる状況が必要。音聴式漏水探索機や D305

の使用が難しい環境や、メーター以降の建物

内の漏水検知に効果的である。

【製品仕様】

本体重量:約 1Kg

寸法:148×57×205mm

感度:0.1ppm H2(大気中)

ポンプ(本体内蔵):真空>250mbar

表示:大画面デジタル数値表示・ブザー

(80dB)・信号光

データ保存:8MB

画面表示:320×240 ピクセル

インターフェース:USB

電源:ニッケル水素充電池もしくはアルカ

リ単三電池 4 本

連続使用時間:8 時間以上

販売価格:1,706,400 円(税込)

トレーサーガス式漏洩探知器 9012 XPS

System(フジテコム株式会社製)

【特徴】

水素 5%、窒素 95%の混合ガスを配管内に注

入し、配管から漏れて地表に噴出してくるガス

を、プローブを使って検知する。

【用途】

区間を区切って管内の水を抜くことができ

る状況が必要。車や雑踏の音がある繁華街や日

中の漏水探索に用いる。

【製品仕様】(本体)

本体重量:2.5kg

寸法:260×220×95 ㎜

感度:0.2ppm H2(大気中)

ポンプ(プローブ装備):200mbar

表示:10 段階分割 LED 表示

・スピーカー:5-1600Hz

・イヤホン:標準 3.5 ㎜ジャック 8Ω以上

データ保存:不可

画面表示:不可

外部出力:不可

電源:鉛充電池(ゲル仕様)

連続使用時間:13 時間(20℃)

6 時間(-20℃)

販売価格:約 4,000,000 円(全装備含む)

図 1-11 水素式高性能漏水探索機

バリオテック 460

図 1-12 トレーサーガス式漏洩探知機

9012 XPS System

17

【特徴・優位点】

・2 種のセンサー(ガス感知半導体と熱伝導

センサー)により高感度、瞬時に反応。

・混合ガスはヘリウムガス方式に比べ安価

なので、経済的。

・PC に接続することにより取得データの

管理、分析が容易。

・交換用フィルター標準装備

【デメリット】

水素 5%窒素 95%のガス及びボンベが必

要。ガス注入のための閉鎖領域を作ることが

必要。

【特徴・デメリット】

・水素窒素混合ガスを用いることにより、ヘ

リウムガス工法に比べ安価かつ迅速に調

査を実施できる。

・埋設管の管種・口径・深さに関係なく調

査できる。

・非常に高額である。

・水素 5%窒素 95%のガス及びボンベが必

要。ガス注入のための閉鎖領域を作ること

が必要

その他周辺

機器

超音波流量計 F601(ドイツ・フレキシム社製)【提案製品】

【用途】

夜間における水道水の流量がほぼ漏水量に準ずるという

点に着目し、地域毎の夜間流量を計測することで漏水の有

無を調査する。漏水探索を行う際の優先順位の確立に有効

である。

【製品仕様】

測定原理:伝播時差相関式

流速:0.01…25m/S

再現性:測定値の 0.15%±0.01m/s

精度(標準):測定値の±1.6%±0.01m/s

電源:100~240V/50~60Hz もしくは 10.5~15VDC

一体型電池(リチウムイオン 7.2V/4.5Ah 寿命>14 時間

応答時間:1s(1 チャネル)、 オプション:70ms

保 護:IP65 防水

重 量:1.9Kg

データロガー:記録容量>100,000 計測値

通信インターフェース:RS232/USB

電流出力:0/4~20mA

出力周波数範囲:0~5kHz

販売価格:1,400,000 円(税抜)

【特徴・優位点】

・水管橋など幾層にも重ねられた塗膜やある程度の錆のある材質にも、的確に流量を検出

することができる。

・極めて微少な流量変化の補足が可能であり、補足データのロギング機能を備えている。

・小型軽量で現場での取り扱いが容易である。

図 1-13 超音波流量計 F601

18

高精度デジタル圧力計(日本製)KDM30【提案製品】

【用途】

夜間と昼間の水圧変化の推移を現認する。

【製品仕様】

測定レンジ:1Mpa

精度:±0.25% F.S.±1deg

耐久性:100 万回サイクル以上

接続ネジサイズ:G1/4

重量:約 180g(電池含む)

電源:006P(9V)×1 個 もしくは 12VDC/20mA

電池残量表示:Hi/Lo/ピーク表示

出力:アナログ出力 0.5~4.5VDC

電流:最大値 1mA

販売価格:106,900 円(税抜)

【特徴・優位点】

・通常のデジタル圧力計が水圧変化を現認するのみの機能であるのに対し、データ出力が

可能、誤読防止に活用できる。

・精度の高いフル 4 桁 LCD 表示 バックライト付

・表示部および本体部がそれぞれ 330 度回転可能となっており、あらゆる取付位置でも数

値を読み取りやすい設計となっている。

図 1-14 高精度デジタル圧力計

19

2.普及・実証事業の概要

(1)事業の目的

インドネシアの無収水削減に資する取り組みとして、本事業では、インドネシアで多く見られる低

水圧の給配水管や振動が伝わりにくい樹脂管等の非金属管に対し、従来の漏水探索機とは異なり樹脂

管に特化した漏水探索機 D305 及び関連する漏水調査機器を導入し、より効果・効率的な漏水調査を

実施することを目的としている。D305 等の提案製品を基にインドネシアに適合した漏水調査手法を

C/P 機関と協働で実践・検証し、調査・検証結果を踏まえ提案製品の有用性や優位性について実証を

行う。

また、その実証結果を踏まえ、無収水削減対策における漏水調査の位置づけ等を整理した上で、

PDAM Tirtanadi に対し漏水調査計画、老朽管更新計画、配水管網の維持管理等にかかる技術移転を行

うとともに、当該提案製品を活用した漏水調査手法の紹介や成果の共有等を通じ普及活動を行う。

(2)期待される成果

①提案漏水調査機器の実証及び普及

提案漏水調査機器を活用した漏水調査がインドネシアの無収水削減対策として有効なことが実証さ

れ、PDAM Tirtanadi 及びインドネシア水道協会と協力し普及活動が展開されることで、インドネシ

ア国内での認知度・信頼度が高まる。

②安定的な水の供給の実現

漏水が減少することにより、水質が改善され適切な水圧での給水が可能となる。

③安全な水供給の実現

断水時の管内負圧減少により漏水箇所から汚水が管内流入することを防ぎ飲用に適した安全な水供

給を実現する。

④PDAM Tirtanadi 経営安定化

効果的な漏水調査により無収水量が下がることで断水の頻度が軽減される等水道事業体の運営が健

全化、経営の安定化が向上する。

⑤PDAM Tirtanadi 職員に対する無収水対策にかかる技術移転及び意識向上

提案製品を活用した漏水調査手法にかかる PDAM Tirtanadi 職員の能力が向上するとともに、無収水

削減対策として漏水調査や配水管網の維持管理の重要性が理解される。

(3)事業の実施方法・作業工程

①事業実施の基本方針

北スマトラ州水道公社が水道事業を実施しているメダン市内の配水管網施設よりパイロット地区

として 7 ヶ所を選定する。この地区の漏水調査計画書を作成し、提案製品を活用した漏水調査の他、

水道メーター管理、水圧調査、漏水箇所の修理を行い、無収水削減効果を測定する。

漏水調査実施にあたっては、インドネシアの様々な現場環境や条件に合った漏水調査手法を検証

することを念頭に、異なる特性・機能を持った漏水調査機器について実証を行う。加えて PDAM

Tirtanadi 職員と協同で漏水調査を実施することにより、各漏水調査手法にかかる技術移転を推進す

るとともに、当該提案製品に対する PDAM Tirtanadi の認知度・信頼度向上を図る。

なお、インドネシアの無収水削減対策として漏水箇所の検出と修理が最重要課題であることから、

PDAM Tirtanadi 自身が漏水調査及び配水管維持管理の重要性を認知し実際に実行していくよう働き

かけることが重要である。そのような状況から、上述の無収水削減効果の測定結果を踏まえ、IWA

20

の手法による配水量の分析を通じ既存の無収水削減計画の問題点を抽出するとともに、配水管網整

備計画、老朽管更新計画、漏水調査計画書の策定方法等も含めた無収水削減対策にかかる技術移転

を普及活動の一環として実施することとする。

②事業実施の方法

提案製品の実証活動(技術移転にかかる活動含む)

事前協議

パイロット地区の選定。現状の水道使用量の把握、配水管網整備の把握。流

入量の把握。配水管網の図面管理の把握。配水量の分析等のデータ収集。パ

イロット地区の図面作成とメッシュ図面の作成。各パイロット地区の漏水調

査計画書の作成。

事前現地調査 配水管・仕切弁・消火栓等の位置確認。水道メーター(稼働・不稼働・設置無

等)の確認。水圧調査。配管図面と現地の位置確認。漏水状況調査。

漏水調査実施

漏水調査計画書に基づき漏水調査機器を使用して調査の実施。

パイロット地区の流入量の把握調査、各水道メーター使用水量調査を行い無

収水量の確認作業を実施。

PDAM Tirtanadi職員に漏水調査機器使用法を伝授しながら OJT方式で漏水調

査の実施、漏水調査作業日報の記載方法についての技術移転。

漏水箇所の修理

早期修理及び漏水調査作業日報の有効利用について指導。

埋設深度・口径・管種・漏水量を測定して漏水調査報告書を作成及び同技術移

転。

修理後の再調査 漏水修理後、超音波流量計により流入量の確認と漏水の有無確認調査を実施。

同時に水圧調査の実施。

漏水箇所の分析

無収水量の分析

配水量の分析。水道メーター不感水量(器具摩耗に伴う流量計測の誤差)、違

法接続水量、行政施設水量、業務用水水量、漏水量の把握。分析表の作成。

受水槽からのオーバーフロー水量の把握。その他使用水量の把握。同分析業

務の技術移転。

漏水調査計画書

老朽管更新計画書

配水管維持管理

無収水量を削減するための全域漏水調査計画書を作成。

配水管の埋設年度調査・漏水箇所の多い配水管路調査を実施し、老朽管更新

計画書を策定。

配水管の維持管理手法についての技術移転。

提案製品の普及活動及び事業展開案の検討方法

PDAM Tirtanadi 職員との協議 漏水探索機の使用方法に関する協議。調査方法について協議。

セミナーの開催 スマトラ州水道公社の管理職及び技術職員を対象にしたセミナーの開催。

ビジネス含む事業展開案の検

インドネシア国公共事業省への PRと販売。インドネシア国水道協会への PR

と販売。水道協会発行の水道誌への無収水削減対策手法の記事報告と PR。

漏水調査機器が使用できる各水道事業体の情報収集と PR(個別展開)。

21

ア.国内作業(事前):(2013 年 11 月中旬~2013 年 12 月下旬)

a.漏水調査実施に向けた関連資料作成・情報収集作業

・北スマトラ州水道公社職員に対して提案製品の漏水探索機の使用方法について指導する

ための説明資料を作成

・漏水調査に関する作業日報、漏水修理工事資料、漏水修理整理簿、漏水調査計画書

マニュアル及び人員配置についての資料の作成

・普及活動の一環として、日本国内外で実施される水道総会、展示会等の情報収集

b.漏水調査実技指導のための準備

・インドネシア国の漏水調査実績の収集

・日本国内の PVC 管導入現場にて、D305 を用いて擬似漏水検出実験を行い、漏水探索方法の

検証

イ.現地作業:第 1 次現地調査(2014 年 1 月初旬~2014 年 2 月初旬)

a.キックオフミーティング

・PDAM Tirtanadi と協議及びセミナー開催

・質問票に基づくヒアリング、資料収集及び現地調査

・パイロット地区の選定: 3~4 ヶ所選定、事前現地調査、漏水調査、データの分析を行い、

各パイロット地区の漏水調査計画書を作成

b.パイロット地区の漏水調査・分析

・樹脂管に特化した漏水探索機を中心とした漏水調査を実施

・PDAM Tirtanadi 職員へ老朽管/故障機材の交換指示

・PDAM Tirtanadi 職員に調査手法習得のための指導

ウ.本邦受入活動(2014 年 5 月)

a.配水計画総論、無収水対策概論、漏水対策、漏水管理、メーター管理、盗水対策、

事業経営、水道料金、マッピングについての講習

b.研修施設での漏水調査機器実習、お客様対応実習、検針実習、広報活動、給水装置工事/漏水

対策工事の実践

エ.現地作業:第 2 次現地調査(2014 年 6 月)

a.第 1 次現地調査フォローアップミーティング

b.無収水削減対策セミナー開催(スマトラ島水道事業体管理職対象)、漏水探索技術実技研修

・横浜水道局の事例・PDAM Tirtanadi の事例を挙げ、無収水の削減・継続的漏水調査の必要性

を説明

・配水管の図面管理・配水管網整備・老朽管更新計画・漏水調査計画について講習

・漏水探索手法における金属管と PVC 管との違いについて説明

・漏水探索機を使用した OJT 研修

c.パイロット地区の漏水調査・分析

・樹脂管に特化した漏水探索機を主に使用して漏水調査を実施

・老朽管/故障機材の交換・無収水の削減効果検証

・収集したデータを分析し、漏水調査計画や配水管の維持管理計画などの策定支援を実施

22

オ.現地作業:第 3 次現地調査(2014 年 8 月下旬~9 月中旬)

a.第 2 次現地調査フォローアップミーティング

b.無収水削減対策セミナー開催(スマトラ島水道事業体管理職対象)、漏水探索技術実技研修

(第 2 次現地調査に同じ)

c.パイロット地区の漏水調査・分析(第 2 次現地調査に同じ)

カ.現地作業:第 4 次現地調査(2015 年 2 月)

・第 3 次現地調査フォローアップミーティング

・パイロット地区の漏水調査・分析(第 3 回現地調査に同じ)

・成果の発表・ワークショップ開催

・関係者を集めて成果の発表と PDAM Tirtanadi 職員の評価を実施

キ.国内作業:(2014 年 2 月中旬~2015 年 5 月下旬)

a.事業結果取りまとめ

b.月報の作成

事業実施中は、毎月月報を JICA へ提出する。

c.進捗報告書作成

事業実施中は、半期毎に進捗報告書を JICA へ提出する。

d.業務完了報告書(案)作成

現地の実証結果を業務完了報告書(案)として取りまとめ、事業完了予定の 2 か月前を目途に

JICA へ提出する。

e.業務完了報告書(最終成果物)作成

業務完了報告書(案)の協議結果を踏まえ、業務完了報告書を作成し、JICA へ提出する。

以下(次頁)、図 2-1 のとおり、業務フローを示す。

23

調査項目 2013 2014 2015

11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5

無収水削減対策情

報収集・計画立案

レイアウト・人員配

置計画等

無収水削減対策セ

ミナー

配水管網データ収

漏水調査計画書作

老朽管更新計画書

作成

配水管網維持管理

計画書作成

パイロットト地区:

3~4 地区選定

パイロット地区:現

地調査

(弁・水圧等)

パイロット地区:水

道メーター調査

D305:給配水管漏水

調査実施

漏水調査結果:デー

タ分析

漏 水 個 所 修 理 手

法・漏水量計測

パイロット内流入

量調査・使用水量調

パイロット地区:配

水量分析

職員による漏水調

査計画書作成

無収水対策セミナ

ー実施 (幹部職員・技術職

員)

漏水修理後の漏水

調査実施

ビジネス展開業務

総合報告書セミナ

ー実施

報告書作成・資料収

集・データ管理

最終報告書作成

本邦研修

図 2-1 作業工程計画

現地作業 (実績) 現地作業 (予定)

国内作業 (実績) 国内作業 (予定)

(4)投入(要員、機材、相手側投入、その他)

24

①要員

第 2・3 次日本側要員は(次頁)表 2-1 の通りである。

25

表 2-1 要員計画

担当業務 氏名 所属先 予定

11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 人・日計

実績 現地 国内

業務主任 渡邊

研一 グッドマン

予定 0.97 0.00

実績 1.33 6.7

技 術 渡邊

尚輝 グッドマン

予定 1.87 0.00

実績 0.00 0.85

技 術 久貝

洋 グッドマン

予定 0.00 0.00

実績 0.93 0.00

技 術 塩野

拓也 グッドマン

予定 0.00 0.00

実績 0.93 0.00

チーフ アドバイザー 豊 田

徹 YWC*

予定 1.87 1.00

実績 1.87 0.90

無収水削減

老朽管更新計画

中之薗

賢治 YWC

予定 3.77 1.00

実績 3.73 1.00

漏水調査 松尾

圭将 YWC

予定 3.73 1.00

実績 3.73 1.00

受注企業 人・月計(予定) 2.84 0.00

受注企業 人・月計(実績) 3.19 7.55

外部人材 人・月計(予定) 9.37 3.00

外部人材 人・月計(実績) 9.33 2.90

人・月計(予定) 12.17 3.00

人・月計(実績) 12.52 10.45

15 14

48 16 13 13 7 5 17 9 9 12

7 12 1

28

2

28

15

28

28

14 10 14

28

28

14 10

28

28

14

15 2 3 1 5 14 3

2

14 1 1 13 2

28 10 28 10

28

2 28

5 2 28

2 1 28 28

10 28 10

28

1 3 28

28

5 5 28 6

現地日数(予定) 現地日数(実績) 国内日数(予定) 国内日数(実績) 15 16 10 12 *YWC:横浜ウォーター株式会社

26

②機材

日本側の投入機材は以下の通り。

表 2-2 投入機材

機材名 型番 数

納入

年月

設置先

1. 樹脂管用漏水探索・配管路探索機 PVC ロケーター D305 1

5

2014.1

2014.6

PDAM

Tirtanadi

2. 相関式漏水探索機アクアスキャン 610 ハイドロフォン付 AS610 1 2014.1

PDAM

Tirtanadi

3. 水中マイク ハイドロフォン(2 個/組) HP 1 2015.2. PDAM

Tirtanadi

4. 小型軽量漏水探索機ポケットフォン AS3PM 1

1

2014.1

2014.6

PDAM

Tirtanadi

5. 水素式超高性能漏水探索機 VT460 1 2014.6 PDAM

Tirtanadi

6. 小型音聴式漏水探索機 ST04 10 2014.6 PDAM

Tirtanadi

7. 超音波流量計 F601 1 2014.6 PDAM

Tirtanadi

8. 高精度デジタル圧力計 KDM30 1 2014.6 PDAM

Tirtanadi

③PDAM Tirtanadi の投入

・ワークスペースとして 10m×10m の部屋の提供と、机・椅子 5 セット、コピー機、漏水調査備品庫等

の提供。

・漏水調査実施要員として 22 名。(PDAM Tirtanadi 漏水管理課(Water Losses Control Division)職員及

び出先職員含む)

・漏水発見後ただちに修理するための修理業者。

27

(5)事業実施体制

総括:渡邊 研一(グッドマン)

プロジェクト実施体制の確認

ワークプラン策定

漏水探索機及び無収水対策セミナー・研修会計画

改善策の提案・検討 事業展開計画策定

図 2-2 実施体制図

(6)相手国実施機関の概要

・機関名:インドネシア北スマトラ州水道公社(PDAM Tirtanadi)

・機関基礎情報:人口 2,800,000 人

給水総戸数 400,000 戸

水道普及率 72.5%

The Tirtanadi Regional Government Water Company (PDAM) Medan は、1905 年 9 月 8 日にオランダの植民

地下に設立された NV. Waterleiding Maatschappij Ayer Bersih(本社アムステルダム)が前身である。オラン

ダ・日本の支配下の時代を経てその後のインドネシア共和国が独立するに至る間も体制は変わりながら

も継続して公共に水道サービスを提供してきた。その後 1979 年北スマトラ地方政府の法令 No.11 に基づ

き、北スマトラ州政府の所轄である PDAM Tirtanadi 北スマトラ州政府水道公社となった。PDAM Tirtanadi

水道公社はメダン市とその周辺地域に飲料水を供給していたが、水道水サービス改善のための法令 No.3

に基づき 1999 年 7 月 17 日 Labuhan Batu 地方政府及び Dairi 地方政府と 25 年間の共同運営・共同経営の

マネジメントチーム

上水道事業計画:豊田 徹 無収水削減計画:中之薗 賢治

課題・問題点の抽出

活動計画作成

事業進捗評価及び指導

各計画書・報告書の監修

活動計画作成・見直し

配水計画見直し

セミナー・研修会用資料作成

無収水率測定結果分析

業務報告書作成

活動チーム

無収水削減対策:松尾 圭将

(横浜市水道局)

漏水探知技術:渡邊 尚輝 久貝 洋

塩野 拓也

(グッドマン)

区域分離化状況確認

無収水測定と無収水率結果検証

ワークプラン・標準手順書作成

区域分離化状況確認

漏水探索技術指導

漏水調査作業日報作成

国際協力機構

カウンターパート

報告・

連絡・

相談

業務調整

28

協定を締結し、北スマトラ州政府所掌のもと Deli Serdang・ Samosir・Toba Samosir, Tapanuli Tengah・ Nias

Selatan・Tapanuli Selatan の経営を任されることになった。この協力体制により、安全な水の供給サービ

ス改善が期待されている。

なお、インドネシアには、インドネシア水道協会の組織があり、国全体の水道に関する基本的な運営

管理、維持管理、水道管等の基準を制定している。

PDAM Tirtanadi では、安全な水の安定供給及び水資源の有効活用のため、無収水を削減すること、エ

ネルギーの有効活用のため水圧の適正化を図ること、適正な配水管網の維持管理を行うことが非常に重

要な課題となっている。

当該地域の無収水率は 2010 年時点で 27.98%(中期計画データ)と高く、無収水削減が一つの大きな課題

となっている。漏水が多発している市内の配水管には、PVC 管が多く使用されている。市内に埋設され

ている PVC 管は、埋設後 20 年以上経過しているものも相当数あると推測されており(PVC 管の耐用年数

は日本では 20 年とされている)、水道管の継手部分、亀裂箇所から漏水が発生しているのが現状である。

(PVC 管、鋼管、ダクタイル管の等管種の記述はあるが、配水管延長等、詳細データは中期計画に記述が

ない。)現在使用している金属管用漏水調査機器では探知に熟練を要し、漏水箇所を発見するには職員の

個人差が大きく影響し、非常に効率の悪い業務となっている。特に、北スマトラ水道公社職員は時代と

ともに若返りの傾向にあり、経験、ノウハウ、技術が不十分であるため、人材の育成は非常に重要な課

題となっている。

知事 監査

局長

企画部長 財務部長 運営部長

研 究

開発部

企画部 免許部 生産部 金融部 総務部 人事部 機材部

Zone1

運営

Zone2

運営

広 報

内 務

監査部

PKA 部

部門責任

者 2

部門責

任者 3

部門責

任者 2

部門責

任者 3

部門責

任者 2

部門責

任者 2

部門責

任者 2

部門責

任者 2

部門責

任者 2

部門責

任者 2

部門責

任者 2

部 門 責

任者 2

浄 水 長

クラス A

部門責

任者 5

部門責

任者 3

部門責

任者 3

部 門 責

任者 6

部門責

任者 5

部門責

任者 4

浄 水 長

クラス B

下水道長

メダン

支社長

クラス A

支社長

クラス B

支社長

クラス C

浄水長

クラス D

研究室長

部門責

任者 2

部門責

任者 2

図 2-3 PDAM Tirtanadi 組織図

29

3.普及・実証事業の実績

(1)活動項目ごとの内容と成果

①国内作業(2013 年 11 月~12 月)

ア.漏水調査実施に向けた関連資料作成・情報収集作業

PDAM Tirtanadi 職員に対して本事業の概要及び各漏水調査機器の特徴や取扱方法に関す

る説明資料を作成した。

イ.漏水調査実技指導するための準備

国内で PVC 管を利用している現場 (千葉県・神奈川県)にて D305 を使用した擬似漏水検出

試験を実施、特に難しい土壌・環境における漏水探索方法の検証を行った。

②現地作業:第 1 回漏水調査(2014 年 1 月 13 日~2014 年 2 月 9 日)

第 1 回漏水調査では、無収水削減と漏水調査の必要性を職員に理解してもらい、調査機材取

扱い方法及び配管情報のデータ収集管理の技術移転を目的として実施した。

表 3-1 第 1 回漏水調査日程

日付 業務内容 備考

1 月 13 日(月) 移動日:羽田→シンガポール→メダン

1 月 14 日(火) 団内協議、市内水道設備調査

1 月 15 日(水) 表敬訪問、事業内容・持込機器紹介

在日本大使館メダン総領事館表敬訪問

1 月 16 日(木) 漏水調査の概要説明とデータ収集、資料作成

1 月 17 日(金) 資料作成、キックオフミーティング(局長以下 20 名)

1 月 18 日(土) 団内協議、JICA インドネシア事務所、水道協会資料作成

1 月 19 日(日) JICA インドネシア事務所、水道協会資料作成

1 月 20 日(月) JICA インドネシア事務所、水道協会協議(ジャカルタ)

Amplas 支部現地調査

1 月 21 日(火) Amplas 支部での OJT 研修

持込機器の説明及び講義

1 月 22 日(水) 漏水調査機器説明資料作成

AS610 及びハイドロフォンに関する講義

1 月 23 日(木) Amplas 支部での漏水調査実証(AS610 及びハイドロフォン)

調査資料作成

1 月 24 日(金) 来週以降調査スケジュール協議、漏水調査手法資料作成

1 月 25 日(土) Belawan 地区現地調査

1 月 26 日(日) データ収集整理、報告書作成

1 月 27 日(月) Denai 地区での実証及び OJT 豊田帰国

1 月 28 日(火) Denai 地区での実証及び OJT 渡邊帰国

1 月 29 日(水) Denai 地区での実証及び OJT、全体スケジュール計画協議

1 月 30 日(木) Denai 地区 Section 4 での実証及び OJT

1 月 31 日(金) シボランゲ水源地視察

30

2 月 1 日(土) 漏水調査報告書及び第 1 回目報告書作成

2 月 2 日(日) 漏水調査報告書及び第 1 回目報告書作成

2 月 3 日(月) 漏水調査手法、機器の維持管理等協議及び Deritua 地区現地調

2 月 4 日(火) Deritua 地区での実証及び OJT

2 月 5 日(水) Sunggal 地区での実証及び OJT

2 月 6 日(木) Sunggal 地区の漏水調査

2 月 7 日(金) 局長への第 1 回目の実証業務報告及び協議

2 月 8 日(土) 第 1 回目報告書及び帰国報告書作成

2 月 9 日(日) 移動日:メダン→シンガポール→羽田

ア.漏水調査のパイロット地区の選定

パイロット地区の選定は、無収水削減対策を実施している漏水管理課の Mr. POTMATUA

HARAHAP 課長と協議の上、メダン市全 13 支所で DMA が形成されている 64 地区の内、無

収水率の高い地区及び漏水箇所が不明な個所を中心に表 3-1 の 7 地区とした。

表 3-2 パイロット地区

地区名 無収水率

(%)

配 水 区 域 数

(Section)

1 Amplas 支所 Comp Rivier 地区 33% 8

2 Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区 33% 4

3 Sunggal 支所 Comp Graha Sunggal 地区 31% 10

4 Medan Labuhan 支所 Comp Kpum 地区 43% 9

5 Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区 29% 7

6 Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区 67% 3

7 Medan Kota 支所 Bogol 地区 35% 9

イ.漏水調査前の確認作業

現場での漏水調査に先立ち、効率的な調査を行うため、漏水管理課職員と以下の表の 6 点

について確認を行った。

表 3-3 漏水調査前の確認事項一覧

確認事項 確認結果

A)各 DMA の図面確認(流量計、

仕切弁、配水管、給水管、管種、

口径、その他の情報)

7 パイロット地区に関しては図面及び配水管路情報(管種、口

径、バルブの位置)はまとめてられており、流量計も正しく計測

されていることを確認。一方で、給水管の情報が全く整備されて

いないこと、配水管情報の更新が不十分であることを確認。漏水

調査を実施するにあたり、図面情報と現地管路情報との整合がと

れているか確認が必要。

b) DMA の流入地点の流量計の作 PDAM Tirtanadi はメダン市内で 64 の DMA を構築しているが、

31

動状態 複雑な配水管網を抱えているメダン市中心部ではDMAが構築で

きていないことを確認。図面情報と現地管路情報との整合性を確

認したところ、7 パイロット地区に関しては、流入箇所は 1 ヶ所、

流入箇所には流量計が設置され正常稼働していることを確認。

c) DMA 内への流入点の確認及び

給水区域の配水区域化状態(配水

区域流入点のバルブの設置状況)

対応するバルブを適宜開閉し水の流入を制御することにより、

DMA 内で各配水区域を区切ることが可能であることを確認。

d) 給水メーターの管理 給水メーターはインドネシア製が使用され、5 年周期で更新さ

れている。更新時に精度検定を行い、正常に計測できることを確

認しており、給水量測定に問題はない。精度検定を行うための基

準タンクの点検も年 1 回実施していることからメーターの信頼

性は確保されていると考えられる。

しかし、メーター異常を発見した場合日本では通常、検針員が

水道使用者又は水道局に異常を通知し、メーター故障または漏水

の対処を行うが、PDAM Tirtanadi ではその対処について規定がな

いことを確認。(Comp Graha Sunggal 地区で漏水調査実施中に故

障メーターを発見、現地スタッフによると、設置したメーターの

稼働確認は行われていないとの説明。)

e) DMA 内の水圧調査実施の有無

及びそのデータ化

ステップテストなど調査を行う際、水圧計をセットし流入圧の

計測は行われているが、計測値についてデータ化はされていなか

った。

f) 夜間最少流量(MNF)調査の実

施状況1

超音波流量計を備えており、簡易的な夜間最少流量の測定は行

われていることを確認。

ここでの確認を踏まえ、管路の口径・延長・材質、漏水の履歴(場所、管の口径・材質、

漏水の状況)などのデータ化については老朽管改良計画や調査計画に必要になることを説明

し、データ化を促し PDAM Tirtanadi もこれを理解した。今回調査において全ての管路につい

て漏水調査することは困難なため、PDAM Tirtanadi と協議の結果、ステップテスト2で各配水

区域に優先順位を付け、優先順位の高い配水区域から漏水調査を行うことで合意した。

ウ.ステップテスト

以下の実施手順に従い、Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区と Delitua 支所 Comp PutriDeli

地区の二つの DMA でステップテストを実施した。なお、AMPLAS 支所 Comp Rivier 地区で

は PDAM Tirtanadi の方ですでにステップテストを行っていたため漏水調査のみを行った。

a.図面情報と現地管路状況の照合

b.各配水区域を断水するためのバルブの有無を確認

c.夜間、水流が安定したところで区域全体に流れ込む流量を記録 1 夜間最小流量調査とは夜間使用水量の少ない時間帯(一般的に午前1時から午前4時)に測定区画内を断水状態にし、区画

外より一方通水で電磁流量計、超音波流量計などを用いて水を送水することにより、区画内へ流入する流量を測定する。この流

量は、漏水量と使用量が含まれるため、漏水エリアを推測するための情報となる。 2 夜間、使用水量が少ない時間帯に DMAへ流入する流量を計測しながら、各 Sectionの流入を遮断することで、各 Sectionの漏

水量の多少を推定する手法。

32

d.バルブを閉めて一部の配水区域を断水

e.各配水区域で c)、d) を繰り返し、各配水区域への流入量を把握するとともに漏水量の

多少を推定し、各配水区域の漏水調査の優先順位を決定

エ.ステップテスト結果

a.Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区

Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区では図 3-2 に色分けしてあるように DMA を 4 つの

配水区域(Section)に分けている。図 3-1 は DMA への流入量を表示したものである。同

図より、配水区域 2 を断水したときに流入量が 3.7(ℓ/秒)減少していることがわかり、配

水区域 2 の漏水量及び使用水量が最も多いことを示している。DMA 内で最も漏水量が多

いと推測される配水区域 2 を、重点的に調査することとした。

図 3-1 Comp Menteng 地区ステップテスト結果

図 3-2 Comp Menteng 地区配水区域位置図

配水区域 3 の流入量

配水区域 1 と 3 の流入量

配水区域 2 の流入量

配水区域 4 の流入量

33

b.Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区

Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区では、DMA を 9 つの配水区域に分けている。

図 3-4 は DMA への流入量を表示したものである。図 3-4 より、配水区域 7 を断水した

ときに流入量が 2.8(ℓ/秒)減少していることがわかり、配水区域 7 の漏水量及び使用水

量が最も多いことを示している。DMA 内で最も漏水量が多と推測される配水区域 7 を、

重点的に調査することとした。

図 3-4 Comp PutriDeli 地区配水区域(Section)位置図

図 3-3 Comp Putri Deli 地区ステップテスト結果

配水区域 7 の流入量

34

オ.漏水調査手法

ステップテスト結果を考慮し、Medan Denai 支所 Comp MentAng 地区においては配水区域

2 を、DlituA 支所 Comp Putri Deli 地区においては配水区域 7 を重点的に漏水調査した。また

過去に PDAM Tirtanadi が実地されたステップテストに基づき、Amplas 支所 Comp RivierA 地

区においても漏水調査を行った。当該地区では配水管に PVC 管が使用されており、以下の

機器を使用した漏水調査が最適と判断し、以下の機種を使用し漏水調査実証事業を実施した。

・樹脂管漏水探索・配管探索機 D305

・小型軽量漏水探索機ポケットフォン

・アクアスキャン AS610

対象配水区域で 50m 程度の配水管の両端(仕切弁、給水管、水道メーターなど)に AS610

相関式漏水探索器の発信機(発信機 A 及び発信機 B)を取り付け、漏水と思われる波形が出

るまで順次発信機を取り付けて調査した。AS610 の相関器で漏水の波形が確認されたら、近

隣の仕切弁、水道メーター、水道管(GP 管)などの金属部分に D305 送信機のプラス端子を

接続、マイナス端子は地面に差してアースをとり、受信機で送信機からの信号音を追尾しな

がら漏水箇所の確認を行った。

D305 で漏水位置を特定した後、正確な位置確認のためポケットフォンで漏水音を確認し

た。最も漏水音の高い場所を掘削し、同行修理業者が漏水個所の修理を行った。D305 探査

範囲は埋設深度 4m であるが、メダン市内の配水管埋設深度は 1m 程度と浅く、当該機器を

使用した漏水調査には問題は見られなかった。

カ.漏水調査結果

表 3-3 は当初選定されたパイロット地区 7 ヶ所のうち 5 ヶ所の漏水調査を実施した結果で

ある。SunngAl 支所 Comp Graha Sunggal 地区及び Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区につい

ては、今回は日数が限られていたためステップテストを事前に行うことができなかった。本

来ならば事前にステップテストを行い、優先度を定めた上で調査すべきであるが、PDAM

Tirtanadi の強い要請があったため漏水調査のみ行った。また、雨天による漏水調査の延期や

イスラム教の習慣である金曜礼拝、PDAM Tirtanadi 職員のモチベーションの低さなどが影響

し、予定していた Medan Labuhan 支所 Comp Kpum 地区、Medan Kota 支所 Bogol 地区につい

てはステップテストも漏水調査も行うことができなかった。

図 3-5 D305 で絞り込みポケットフォンで漏水地点を検出

35

図 3-6 Amplas 地区の水圧調査

(0.8MPa) 図 3-7 口径 3 インチ PVC管ソケット

部からの漏水

表 3-4 漏水発見箇所数

地区名 給水

戸数

無収水

率(%)

配水区域数

(Section)

漏水発見

個所数

1 Amplas 支所 Comp Rivier 地区 449 33% 8 2

2 Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区 630 33% 4 13

3 Sunggal 支所 Comp Graha Sunggal 地区 265 31% 10 0

4 Medan Labuhan 支所 Comp Kpum 地区 698 43% 9 -

5 Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区 261 29% 7 2

6 Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区 345 67% 3 2

7 Medan Kota 支所 Bogol 地区 500 35% 9 -

※全地区 24 時間給水

a.Amplas 支所 Comp Rivier 地区漏水調査(2014 年 1 月 20・21・23 日)

5 年前、PDAM Tirtanadi 職員がステップテストを実施、この地区内に漏水があること

を確認し、所有している金属管用漏水調査機器を使用して漏水調査を行ったが、漏水音

が伝わりにくい PVC 管であり、また水圧が 0.8bAr と低いため漏水箇所を特定できてい

なかった。

しかし、今回の漏水調査では上述の漏水調査手法により約 2 時間で漏水箇所を特定す

ることができた。過去に検出できなかった理由として、PVC 配水管継手部からの漏水で、

開口部が大きく水道(みずみち)ができているため、漏水音が配管に伝わらず従来の方

法では検出できなかったことが考えられる。他にも給水管からの漏水を発見し合計 2 ヶ

所の漏水を発見した。この区域の無収水率は、今次調査前(2014 年 1 月時点)では 33%

であったが、調査後(2014 年 5 月末計測時)には 6.68%と大きく減少した。

36

表 3-5 Amplas 支所 Comp Rivier 地区漏水調査結果

図 3-8 Amplas 支所 Comp Riviera 地区:DMA 及び配水区域位置図

表 3-6 Amplas 支所 Comp Rivier 地区流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

2 454 13,223 10,211 3,012 22.78%

3 454 11,988 9,955 2,033 16.96%

4 454 11,792 9,968 1,824 15.47%

5 456 10,631 9,921 710 6.68%

6 456 11,723 9,921 1,802 15.37%

7 459 10,631 9,684 947 8.91%

8 482 12,177 10,745 1,432 11.76%

9 482 12,152 10,385 1,767 14.54%

10 483 12,195 10,532 1,663 13.64%

11 485 12,172 10,622 1,550 12.73%

12 485 12,023 9,751 2,272 18.90%

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 60.9 2,630

給水管 地下漏水 ② 6.9 300

合計 67.8 2,930

0.00%

5.00%

10.00%

15.00%

20.00%

25.00%

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

無収水率 推移%

37

b.Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区漏水調査(2014 年 1 月 27 日~30 日)

事前のステップテストにより無収水量の確認業務を実施した結果、無収水量が多かっ

た配水区域 4 を対象に漏水調査を実施し、配水管の漏水 4 ヶ所、給水管の漏水箇 9 ヶ所

合計 13 ヶ所の漏水を発見した。

図 3-9 Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区:DMA 及び配水区域位置図

表 3-7 Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区漏水調査結果

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水

① 11.6 500

② 11.6 500

③ 11.6 500

給水管

地下漏水

④ 1 45

⑤ 1 45

⑥ 1 45

地上漏水

⑦ 1 45

⑧ 1 45

⑨ 1 45

⑩ 1 45

⑪ 1 45

⑫ 1 45

⑬ 0.6 24

合計 44.4 1,929

38

表 3-8 Medan Denai 支所 Comp Menteng 地区流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

水無収

㎥ %

2 635 22,823 15,921 6,902 30.24%

3 635 20,860 15,800 5,060 24.26%

4 635 20,900 15,697 5,203 24.89%

5 633 22,921 18,625 4,296 18.74%

6 632 20,721 15,190 5,531 26.69%

7 632 19,113 13,760 5,353 28.01%

8 633 20,921 16,125 4,796 22.92%

9 633 21,612 16,571 5,041 23.33%

10 634 21,891 16,775 5,116 23.37%

11 634 21,756 16,932 4,824 22.17%

12 635 21,988 16,957 5,031 22.88%

c.Sunggal 支所 Comp Graha Sunggal 地区漏水調査(2014 年 2 月 5・6 日)

配水管及び給水管の漏水調査を行ったが、漏水箇所は検出できなかった。無収水の原

因として違法接続・水道メーターの不感水量もしくは故障も考えられるので今後原因の

究明が必要である。

図 3-10 Sunggal 支所 Comp Graha Sunggal 地区:DMA 及び配水区域位置図

39

d. Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区漏水調査(2014 年 2 月 3 日)

Medan Denai 地区と同様に作業を実施した結果、PutriDeli 地区で給水管からの漏水 2

ヶ所の漏水を発見した。

図 3-11 Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区漏水位置図

表 3-9 Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区漏水調査結果

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

給水管 地下漏水 ④ 5.8 250

⑤ 6.6 283

合計 12.4 533

表 3-10 Delitua 支所 Comp PutriDeli 地区流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

2 316 7,100 5,187 1,913 26.94%

3 316 6,589 5,085 1,504 22.83%

4 316 6,780 5,387 1,393 20.55%

5 316 6,765 5,398 1,367 20.21%

6 316 8,182 6,434 1,748 21.36%

7 316 7,875 6,234 1,641 20.84%

8 316 7,901 6,330 1,571 19.88%

9 317 7,998 6,349 1,649 20.62%

10 317 7,987 6,351 1,636 20.48%

11 317 7,995 6,359 1,636 20.46%

12 318 7,902 6,355 1,547 19.58%

40

e. Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区漏水調査(2014 年 2 月 6 日)

この地区は商店街もあることから夜間最少流量測定スケジュールと合わせて、夜間地

下漏水調査を実施した。最少流量計測する区域(Sector)ごとに流量計測と漏水調査を

実施したところ、地下配水管とバルブから計 2 ヶ所の漏水箇所を検出した。

表 3-11 Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区漏水調査結果

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 81 3,500

地上漏水 ③ 16.2 700

合計 97.2 4,200

表 3-12 Medan Kota 支所 Comp Maribu 地区流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

2 460 32,521 22,925 9,596 29.51%

3 460 30,022 22,230 7,792 25.95%

4 460 29,742 22,337 7,405 24.90%

5 460 29,911 22,441 7,470 24.97%

6 460 30,011 23,011 7,000 23.32%

7 460 30,555 22,459 8,096 26.50%

8 460 31,105 23,045 8,060 25.91%

9 461 31,134 23,427 7,707 24.75%

10 461 31,133 23,451 7,682 24.67%

11 461 31,159 23,695 7,464 23.95%

12 461 31,147 23,987 7,160 22.99%

図 3-12 Medan Kota支所 Comp Maribu地区漏水位置図

No.1

No.2

41

キ.評価

PDAM Tirtanadi は、鉄管探知機、相関式漏水探知機、音聴式漏水探索機及び超音波流量計

を保持している。給水地区を管理するため DMA を構築しているがまだ 64 地区に留まり、詳

しい無収水率の把握はできていない。配水管路に PVC 管が多く使用され、また水圧も 0.03 ~

0.19MPA と低く漏水音が小さい、伝わりにくいなど、音に頼る従来の漏水探索機では、地下

漏水の発見は困難であった。

今回の漏水調査で使用した D305 は漏水音を拾うものではなく、電磁波を利用した探索機

であるため、漏水音が小さい状況においても、漏水箇所の発見、PVC 管の位置の特定が可能

できた。

また、AS610 は PDAM Tirtanadi 所有の相関式漏水探知機と原理は同じであるが、発信機の

電波強度が強くより長距離での相関が可能で、また水道管中の水に伝わる漏水音を直接拾う

ことができるハイドロフォンと組み合わせることでより確実な探知ができた。

小型軽量漏水探索機にはバンドフィルターがあり、漏水で管が振動する固有周波数を含む

狭い帯域で音を拾うため、PDAM Tirtanadi 所有の音調式漏水探索機よりも探査が容易である。

また、AS610、D305 、小型軽量漏水探索機と広いエリアからピンポイントの漏水箇所へと

調査範囲を狭めていくことにより漏水調査の効率化を図ることができた。

今回は PDAM Tirtanadi に対して OJT 研修を兼ねつつ漏水調査を行ったため、凡その調査

量としては、地上漏水(小型軽量漏水探索器使用)が 2 人 1 組で 1 日 500m 前後、地下漏水

(D305・AS610 使用)が 3 人 1 組で 1 日約 1.0Km~1.5Km 程度であった。

③本邦受入活動(2014 年 5 月 19 日~5 月 28 日)

本邦受入活動として、PDAM Tirtanadi の職員 5 名が参加して樹脂管に特化した樹脂管用漏水

探索・配管路探索器 PVC ロケーターD305、相関式漏水探索器アクアスキャン 610、小型軽量

漏水探索機ポケットフォン、小型音聴式漏水探索機ステットホン 04、超音波流量計の理論と取

り扱い方について講義、また横浜市水道局管路研修施設を使用しての実技と工事現場での埋設

方法、安全管理等について実習を行った。活動概要は以下のとおり。

ア.本邦受入活動参加者

表 3-13 本邦受入活動 PDAM Tirtanadi 参加者

氏 名 役 職

Mr. MANGINDANG RITONGA Operation Director

技術部長兼局長

Mr. DELVIYANDRI Head Division of Technical Equipment

技術資器材課長

Mr. HOTMA TUA HARAHAP Head Division of Leakage management

漏水管理課長

42

Mr. AKHMAD SAMARI Head Section of Pipeline, Medan City Branch

メダン市配水管理係長

Mr. AHMAD SENTOSA SIREGAR Head Section of Pipeline, Cemara Branch

メダン市配水管理係長

イ. 活動内容

a.全体趣旨

本活動は、PDAM Tirtanadi 水道公社のカウンターパート職員を日本に招へいし、講義・実習を通して

彼らの無収水削減対策に係る知識・技術の向上を図り、漏水探索をはじめとする今後の無収水削減対

策及び配水管網維持管理の普及・実証事業活動に反映されることを目的とする。

b.活動目標

・漏水調査機器ごとの特長を理解、目的・周辺環境・配管材質に応じて最適に活用する

技術の習得

・配管修繕技術の習得

・無収水率削減対策に係る幅広い技術及び実務の習得

・将来の水道事業経営にむけて、無収水削減の経済的効果について学習

c.研修日程・カリキュラム

表 3-14 本邦受入活動カリキュラム一覧

日時

形態 項目 研修内容・狙いと成果・課題

5/20(火)PM

講義

コースオリエン

テーション(横浜

市の水道事業概

要/研修の狙い)

【研修内容・狙い】

・水源から浄水場までの水の流れ、配水管理・水質管理について概

要説明。

・横浜市水道事業 126 年の変遷を通じ、同市の水道システムの現状

を説明

【成果・課題】

PDAM Tirtanadi の現状と課題について、以下を確認した。

・メーターボックス設置状況改善について

・水道メーターの適正/維持管理について

・漏水調査/漏水修理・盗水・節水について

横浜での水不足対策・停水から通水におけるコスト・濁水を流し

た後の処理方法等にかかる疑問点が解消した。

43

5/21(水)

講義 漏水調査機

【研修内容・狙い】

漏水調査方法の体系を大きく 3 段階に分け、各機材の特長を説明。

それぞれの機種についての特性を理解する。不明点の解決。

・広域調査:管理区域内のバルブ上にロガーを常時設置して定期的

に無線でデータ収集を行い、パソコンを使い分析、広

域の漏水発生状況を監視するシステム

・範囲調査:AS610 とハイドロフォンを使用して、漏水箇所の絞

り込みを行う調査方法。

・特定調査:ポケットフォンや D305 を使用して漏水箇所を特定

する調査方法。

【成果・課題】

漏水探索機の全体像について把握できた。

AS610 についてフィルターの使用方法・設定・結果解析法について

理解を深め、特に波形の解釈といった操作上不明なところが解消され

た。

提案機器以外(ゾーンスキャン 820・オゾンガス式漏水探索機)の

機材が認知された。

5/22(木)

講義

無収水対策

【研修内容・狙い】

横浜の配水ブロックシステムによる流量・水圧コントロールを紹介

し DMA(メーター管理区域)での水量管理の習得。

配水量分析について IWA(世界水協会)が推奨する手法を紹介し、

日本で行っている分析法との相違について説明。

【成果・課題】

無収水管理方法についての理解が深まった。

5/23(金)

実習 漏水修繕の実践

【研修内容・狙い】

管路研修施設において、実際の配水圧力に近い水圧を体験。

配水管工事における管栓抜出しなどの事故を未然に防ぐための体験。

漏水修繕:通常国内使用されている漏水修理機材を使用した 100 ㎜程

度の配水管の漏水修繕状況の確認。

また、漏水区域より手前の配水区域の断水回避方法の紹介。(漏水

区域近辺に止水弁がない場合の取付け方法。

給水装置取出し体験:配水管から分岐工事を行い、水道メーターま

での給水管敷設、水道メーター取付け、蛇口での通水確認を一連の給

水工事作業を通じ、給水工事の内容を確認。

【成果・課題】

インドネシアで利用されている PVC 管は湿気が多い状態では完全

に接着しない。PDAM Tirtanadi は施工不良が原因の漏水が非常に多

い。今後の配管敷設・修繕方法の改善の必要性が認識された。

ダクタイル鋳鉄管など新しい水道機材の知識が得られた。

44

5/23(金)

講義実習

漏水管理

【研修内容・狙い】

横浜市の漏水率は、近年は約 5%(2010 年度:5.4%)を維持し続けて

いる。戦後 70~80%と言われた漏水率をどのように減少させていった

のか、横浜市水道局の漏水対策の変遷、漏水調査機器の紹介を行う。

漏水発見に有効的である相関式漏水探知理論の解説。

DMA (District Metered Area:給水管理区域)設定区域内で行う漏水量

測定に有効な夜間最小流量測定の概要について講義。

横浜市水道局が有する西谷浄水場内の管路研修施設での漏水調査

機器を使用して実習、操作方法を理解する。

【成果・課題】

従来の音聴を基本とした音による漏水探索方法以外にも D305 や水

素・オゾンなど別の方法で有用性の高い漏水探索が行える事が理解さ

れた。

ピンホール漏水の検出や配管上でのピンポイント検出の技術向上

が課題として上がった。

漏水調査機器を日常業務に活用しようとするモチベーションが向

上した。

5/26

(月)AM

講義実習

水道メーター管

【研修内容・狙い】

無収水対策の一環として水道メーターの導入及び維持管理は大切

な役割を演じている。計量法についての講義を通じ、水道メーターの

機能、基準について学ぶ。故障の原因の多くが水道水内の異物・濁質

分によることから、対策について理解する。

【成果・課題】

水道メーターの分解・組立の実習を通じ、維持管理に必要なスキル

が習得された。

5/26

(月)PM

講 義 意 見

交換

水質検査による

漏水判定法

【研修内容・狙い】

これまで簡易な水質検査を行ってきた PDAM Tirtanadi 水道に対し、

本格的な水質管理体制の構築に向け横浜市水道局の水質管理体制を

紹介する。講義の導入部では、PDAM Tirtanadi 水道の水質管理状況を

確認し、専門家の立場から現状の水質管理及び今後の適切な水質管理

に向け意見交換を行う。また、漏水確認に対する残留塩素測定方法に

ついて学ぶ。

【成果・課題】

水質管理に関する理解が深まった。

漏水調査の際の水道水確認方法にも活用できることが認識された。

45

5/27

(火)AM

意見交換

無収水削減に係

る意見交換

【研修内容・狙い】

盗水が大きな問題となっている PDAM Tirtanadi 水道に対し、横浜

市水道局が取り組んできた盗水対策を紹介する。また、故障メーター

が多く見られる状況に対しての原因究明と、その対応方法について意

見交換を行う。

【成果・課題】

特に水道メーターの分解・清掃でほとんどの故障は防げることが理

解された。

現状として水道メーターの盗難が課題にある。解決策としてプラス

チック製メーターの導入も検討中。

5/27(火)

発表準備

研修全般質疑発

表会・評価会準備

【研修内容・狙い】

研修発表会に向けた準備として、研修全般について内容確認を行

う。

5/27

(火)PM

発表討議

研修のまとめ発

表会・評価会

【研修内容・狙い】

研修の総括を行う。各自の発表を通じ帰国後の活動内容について確

認。

【参加者からのコメント】

・今後、無収水削減対策のために管轄する DMA 地区における漏水調

査活動プランを指揮する。(DelviyAndri 氏)

・今回習得した技術を普段の漏水探索・水道メーターの校正・配管路

探索などの活動に生かし、PDAM Tirtanadi の無収水率削減につなげ

る。(Hotma Tua Harahap 氏)

・積極的に漏水探索器を活用し無収水を更に削減していく。(Ahmad

Sentosa Siregar 氏)

・継続的な漏水調査機器研修の要望、故障対応が課題である。

(DelviyAndri 氏)

・探索機器を設置するバルブが少ない場合の探索方法が課題である。

(Akhmad Samari 氏)

④現地作業:第 2 回漏水調査(2014 年 6 月 1 日~2014 年 6 月 28 日)

第 2 回漏水調査では DMA 地区での調査を通して導入された漏水調査機材の有効性を検証す

るとともに配水管網維持管理の技術移転を目的とする。

表 3-15 第 2 回漏水調査日程

日 付 内 容

6 月 1 日(日) 移動日:羽田→シンガポール→メダン

PDAM Tirtanadi・梅田氏と日程確認

6 月 2 日(月) PDAM Tirtanadi 表敬訪問、 執務室確認作業

在日本大使館メダン総領事館濱田総領事表敬訪問、業務日程説明

46

6 月 3 日(火) PDAM Tirtanadi の 6 支店長と業務日程協議

漏水調査機器の説明とデモンストレーション

6 月 4 日(水) Cemara Hijau 地区の配水管・弁・水道メーターの確認

同地区及び周辺地区の漏水調査確認作業

6 月 5 日(木) Cemara Hijau 地区周辺の漏水調査実施

漏水調査機器の検収作業の準備と段取り協議

6 月 6 日(金) 漏水調査機器検収及び取扱方法の説明

JICA インドネシア事務所・インドネシア水道協会会長訪問について協議

6 月 8 日(日) メダン市内給水状況調査

6 月 9 日(月) Cemara 支社 Cemara Asri 地区の弁・配水管・水道メーター確認、漏水調査実施

流入量・使用水量表の調査、確認

6 月 10 日(火) Cemara 支社 Cemara Asri 地区の漏水調査実施

ジャカルタ出張のための協議内容打合せと資料作成

6 月 11 日(水) Medan Labuhan 支社 Kpum 地区の漏水調査実施

中之薗:ジャカルタへ移動

6 月 12 日(木)

Diski 支社 Padan Hijau 地区の漏水調査実施

中之薗:インドネシア水道協会会長表敬訪問及び 8 月実施予定の同協会と日本水

道協会開催の研修セミナーについて協議

JICA インドネシア事務所富原氏へ実証事業報告

6 月 13 日(金) Medan Kota 支社の漏水調査実施

インドネシア国情報収集

6 月 16 日(月)

漏水調査報告書作成

漏水調査機器のインドネシア語カタログ製作について協議

濱田総領事と研修センター建設について相談(中之薗)

6 月 17 日(火) 給水管取付業務の技術指導。残留塩素測定について指導

Padan Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区の漏水調査

6 月 18 日(水) Diski 支社 Bumi Asri 地区漏水調査

6 月 19 日(木) Tuasan 支社 Komplek Vetpur 地区漏水調査

6 月 20 日(金) Medan Kota 支社の漏水調査

6 月 22 日(日) USAID iuwash の研修セミナー資料作成

6 月 23 日(月) Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区漏水調査

6 月 24 日(火) Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区漏水調査

6 月 25 日(水)

Amplas 地区下見調査

USAID iuwash の技術者へ無収水削減対策の講義及び漏水調査機器の説明

夜間:USAID iuwash に対して漏水調査の OJT 研修 (Amplas 地区)

6 月 26 日(木) 第 2 回漏水調査最終報告会

6 月 27 日(金) 漏水担当課長と第 1 次調査 DMA 地区の無収水率推移について報告

6 月 28 日(土) 移動日:メダン→シンガポール→羽田

47

第 2 回漏水調査は、漏水調査等に取り掛かる前に、まず 4 月下旬に届いた漏水調査機器(表

3-12 参照)の点検を行い、PDAM Tirtanadi 各配水管理事務所所長・漏水管理課職員を対象に各

機器使用方法等についてデモンストレーションを行った。今回対象地区の配水管のほとんどに

樹脂管(PVC 管)が使用されているため、樹脂管に特化した漏水探索機 D305 を中心に検証し

ながら漏水調査実証活動を行う旨の方針説明とともに、配水管網の維持管理・漏水調査の重要

性・水圧管理・無収水削減対策の重要性等についてパワーポイントで説明しながら技術移転を

行った。

表 3-16 漏水調査機器一覧表

漏水調査機器名称 入荷数 合計 メーカー支店連絡先

D305 樹脂管漏水探索機

高精度デジタル圧力計

5

1

6

1

株式会社グッドマン

TEL+81-45-701-5680

小型軽量漏水探索機

アクアスキャン 610

1

0

2

1

Gutermann AG

Kuala Lumpur MalaysiaTEL+60-3-2116-5999

水素式超高性能漏水探索機

小型音聴式漏水探索機 ST04

1

10

1

10

PT. Pratama Graha Semesta

Jakarta Indonesia TEL +62-21-6900656

超音波流量計 F601 1 1

Flexim Instruments Asia Pte Ltd

Singapore TEL +65-6794-5325

ア. 第 2 回漏水調査地区の選定

漏水調査実施前に、調査対象となる DMA の選定を漏水管理課長と行った後、対象 DMA

を管轄している配水管理事業所の所長または技術責任者から各 DMA の現状と問題点にかか

る報告を受け、それぞれ漏水調査の日程を決定した。今回漏水調査でも、PDAM Tirtanadi 職

員の人材育成を重視して活動を行うこととし、漏水調査機器の取扱方法について OJT 方式で

指導した。その後、夜間最少流量計測を行い、各 DMA 内に流入する水量、各家庭で使用す

る水量、無収水量の把握を行った。その結果、漏水調査を実施するパイロット地区は次の表

3-17 のとおり決定した。

48

表 3-17 第 2 回漏水調査パイロット地区

DMA Cemara

Hijau

Cemara

asri

Padan

Hijau

Padan

Bulan Tuasan

Bagan

Deri

調査日程 6/4~6/10 6/12~6/17 6/19~6/24

建設年度 2004 2004 2004 2007 1994 1994

流入点 1 ヶ所 2 ヶ所 1 ヶ所

6”

1 ヶ所

4”

2 ヶ所

3・4” 2 ヶ所

流量計 1 ヶ所 2 ヶ所 - 1 ヶ所 2 ヶ所

3”4” 2 ヶ所

配水区域 4 6 4

深井戸:2

深度 210m

8ℓ/S,7ℓ/S

給水戸数 1,002 3,600 385 255 350 1,077

無収水 34.47% 36.76% 38.00% 23.39% 23.54% 32.00%

管種 PVC 管

管径(inch) 3”,4”,6” 2”,3”

4”,6”

2”,3”

4”,6” 3” 3“

2”,3”

4”.6”

配水管延長 1,800m 3,600m 3,500 m 3,300 m 3,000m

水圧 0.4~0.5Bar 0.4 Bar 0.3 Bar 0.7 Bar 0.7 Bar 0.3 Bar

給水時間 24 時間 24 時間

18 時間

(4:00~

22:00)

24 時間 24 時間 24 時間

コメント 中国人居住

地区

中国人居住

地区

シボランゲ

系統

漏水・

苦情多い

3 ヵ月前

ポンプ更新

※配水区域:DMA をさらにバルブ等で区分けした小区画

※コメント:各配水管理事務所長

調査名称 漏水調査機 内 容

夜間最少流量調査

超音波流量計(既存のものと

合わせて 2 台)

高精度デジタル圧力計

区画内へ流入する流量を測定する。この流量は、

漏水量と使用量が含まれるため、漏水エリアを推

測するための情報となる。

地上漏水調査

小型軽量漏水探索機

小型音聴式漏水探索機 ST04

音聴棒(既存のもの)

地下埋設管の継ぎ手部分からの漏水や地上に水

が漏れ出ている漏水の調査。目視ならびに水道メ

ーターや各家の前に幅 1m 位の水路を横断してい

る給水管に探査棒を接触させて音聴調査を行っ

た。

地下漏水調査

D305 樹脂管漏水探索機、

相関式漏水探索機 AS610

小型軽量漏水探索機

地下に埋設された配水管からの漏水箇所を特定

する調査。

D305 の使用方法:

表 3-18 漏水調査内容

49

イ.漏水調査事前準備

各事業所長に対し今次漏水調査に従事する職員の選出を依頼し、PDAM Tirtanadi 漏水管理

課職員 8 名に加え、今次対象 DMA の管轄事業所から選出された職員 20 名の計 28 名が招集

された。まず初めに 28 名の職員に対し、表 3-14 にある通り漏水探索器の作動原理及び機材

の使用方法、各機材を使用した漏水調査手法、各漏水調査内容に合わせた漏水探索器の選択

方法等について講義を行い、OJT 研修を兼ねて漏水調査を実施した。効率的な漏水調査実施

のため参加者 28 名を 2 班に分けることとした。

●A チーム(松尾):D305、小型軽量漏水探索、小型音聴式漏水探索 ST04

配水管:D305 の実証調査

給水管:ST04 で給水管からの漏水音調査

●B チーム(久貝):AS610、小型軽量漏水探索、小型音聴式漏水探索 ST04

配水管:AS610 にて実証調査

給水管:ST04 で給水管からの漏水音調査

漏水管理課職員で漏水調査技術を習得している責任者を各班 1、2 名同行させ、地上漏水・

地下漏水調査を交互に行いながら、班の職員に対し漏水調査の方法について指導を行った。

延長・給水個数・管種・水圧のデータ等を調べ図面化できるようになった。漏水調査を実

施する前に漏水管理課の責任者が各班に対して毎回漏水調査方法の説明を行った。

あらかじめ水道管の修理業者を同行、待機させ、漏水箇所発見後即日修理を実行すること

とした。

配水管上の仕切弁又は水路を横断している給水

管の水道メーター金属部に D305 の送信機を設置

し、水道管内の水を通して電磁波を受信すること

で配管路を確認し、信号音が弱くなる地点から漏

水箇所を絞り込む。

AS610 の使用方法

配水管に設置してある水道仕切弁又は水路を横

断している給水管の水道メーター金属部分にセン

サーを(A 点/B 点)設置して AB 点間で漏水箇所

の検出を行う

図 3-13 地上漏水調査(小型音聴式漏水探索・浅い埋設管での漏水)

50

また、漏水管理課の職員と各事業所から参加した職員は、DMA 地区の図面作成・配水管

ウ.第 2 回漏水調査結果

漏水調査結果は、次の通りである。各地区の漏水量の計測は、漏水箇所から流出する毎分

の水量を計測し、㎥/月を概算で算出したものである。なお、「流入量・使用水量・無収水率

の推移」は、第 1 次調査の際 PDAM Tirtanadi 職員に DMA 地区内の流入量、給水戸数、使用

水量のデータから無収水率を計算する IWA(InternAtionAl WAter AssociAtion)の配水量分析

手法を教え、第 1 次・第 2 次調査対象 DMA 地区のデータを作成させたものである。

a. Cemara 支部 Cemara Hijau 地区(2014 年 6 月 4 日~5 日)

夜間最少流量計測を実施するために、各配水区域(Section)の仕切弁、消火栓等の位置

確認、現場の状況調査を実施し、確認ができた弁室に番号を記した。しかし 6 月 4 日、5

日とも夕方に大雨が降り夜間最少流量計測は実施できなかった。

この地区は中国人居住区で使用水量も無収水量も多く無収水率は 34.47%と高い。とこ

ろが配水管を中心に漏水調査機材を使用して漏水調査を実施した結果、地区内の漏水箇所

は発見できなかった。

配水管理課長から Cemara Hijau 地区近隣の区外漏水調査の依頼があった。コンクリート

道路のひび割れ部分から水道水が湧きでている漏水現場である。調査は AS610 のセンサー

とハイドロフォンを A,B 間距離 86m に設置、漏水個所を絞り込み D305 と小型軽量漏水

探索で場所を特定した。

図 3-14 地下漏水調査

(ハイドロフォン・AS610 センサー・AS610 相関器・D305 による調査)

図 3-15 Cemara Hijau の漏水

51

表 3-19 Cemara Hijau 地区調査概要

図 3-16 Cemara Hijau 地区

よって、図 3-16 の赤丸で記されている通り、Cemara Hijau 地区内での漏水検出箇所はな

く、地区外で 1 ヶ所の地下配水管からの漏水を検出した。計測の結果、流出量は約 8,780

㎥/月であった。

表 3-20 Cemara Hijau 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

区域外配水管漏水 地下漏水 ① 200 8,780

表 3-21 は調査前の 2014 年 5 月と調査実施後 6 月以降 12 月までの 8 ヶ月にわたる給水戸

数、水道水生産量、消費量、無収水量、無収水率の推移を表とグラフで表したものである。

Cemara Hijau地区の 2014年 5月から 12月までの各数値はわずかに変動しているものの、

今回検出した漏水箇所は区域外であるため計測数値には影響していない。

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 3 名 / 16 名

無収水率 34.47%

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 1.84Km

配水圧力 0.4~0.7bAr

調査終了範囲 全体の 25%

52

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

5 1,002 37,475 24,556 12,919 34.47%

6 1,002 35,338 23,743 11,595 32.81%

7 1,002 35,286 23,961 11,325 32.09%

8 1,002 33,521 24,096 9,425 28.12%

9 1,002 33,241 24,173 9,068 27.28%

10 1,003 33,374 24,655 8,719 26.13%

11 1,003 33,353 24,795 8,558 25.66%

12 1,003 33,321 24,823 8,498 25.50%

b. Cemara 支社 Cemara Asri 地区の調査(2014 年 6 月 9~10 日)

Cemara Asri 地区も中国人居住区である。38 度の気温の中、漏水担当課職員と漏水調査

を実施したが、午後 2 時以降、暑さのため作業効率が下がり、再調査 3 ヶ所は翌日 10 日

に繰り越し実施した。

表 3-22 Cemara Asri 地区 調査概要

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 3 名 / 12 名

無収水率 36.76%

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 1.84Km

配水圧力 0.4bAr

調査終了範囲 100%

調査の結果、図 3-17 に標された通り、給水管の地上漏水 5 ヶ所、配水管の地下漏水 2

ヶ所を検出した。各流出量を計測したところ、配水管からの大きな漏水が含まれていたた

め、この地区で発見された漏水箇所の合計流出量は約 28,240 ㎥/月であった。(表 3-23)

0.00%5.00%

10.00%15.00%20.00%25.00%30.00%35.00%40.00%

5 6 7 8 9 10 11 12

無収水率 推移%

表 3-21 Cemara Hijau 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

図 3-17 Cemara 支社 Cemara Asri 地区

(月)

53

表 3-23 Cemara Asri 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 578.7 25,000

給水管 地上漏水

② 16.2 700

③ 16.2 700

➃ 16.2 700

⑤ 16.2 700

⑥ 10.2 440

合計 653.7 28,240

漏水箇所検出後は同行の修理業者が即時修理をした。その結果、表 3-24 にみられるよう

に調査前の 2014 年 5 月は 36.76%だった無収水率が、調査実行した翌月 6 月に 20.69%に

大きく減少し 12 月までほぼ横ばいに推移していることから、漏水箇所検出修理の効果が

はっきりと確認できる。

c. Diski 支社 Padang Hijau 地区の調査(2014 年 6 月 12 日)

Padang Hijau 地区は給水時間 4:00~22:00 の閑静な住宅街である。AS610 にて設置セ

ンサー距離 160m 間でピンポイント検出した漏水箇所からは 35ℓ/分の水道水が流出してい

た。

表 3-25 PAdAng HijAu 地区 調査概要

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 2 名 / 11 名

無収水率 38.86%

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 不明

配水圧力 0.3bAr

調査終了範囲 40%

表 3-24 Cemara Asri 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

54

図 3-18 Diski 支社 Padang Hijau 地区

表 3-26 Padang Hijau 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管漏水 地下漏水 ① 36.5 1,576

② 44 1,900

合計 80.5 3,476

表 3-27 にみられるように、この地区の無収水率の推移についても調査前の 2014 年 5 月

計測時は 38.86%から調査実施した 6 月の 18.37%と大きく下降し、その後低い値を維持し

ている。無収水量は 5 月の 4,356 ㎥から 6 月の 962 ㎥と 3,394 ㎥減少しているので、表 3-26

にある合計漏水量 3,476 ㎥に相当する分は削減できたことがわかる。

表 3-27 Padang Hijau 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

5 385 11,210 6,854 4,356 38.86%

6 385 5,237 4,275 962 18.37%

7 385 5,014 4,301 713 14.22%

8 385 5,167 4,287 880 17.03%

9 386 5,177 4,297 880 17.00%

10 386 5,181 4,300 881 17.00%

11 387 5,201 4,307 894 17.19%

12 387 5,299 4,355 944 17.81%

(月)

55

d. Padang Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区の調査(2014 年 6 月 17 日)

この地区は 2007 年に水道管が敷設された住宅街である。地上漏水では継手部分、管の

ひび割れ、腐食によるピンホール、図 3-19 のような各家の敷地との間の溝を横断している

水道管からの漏水が多く発生し、給水管の維持管理が行われていない状況である。

地下漏水:給水管の立ち上がり部の腐食による継手部分からの漏水ピンホールによる漏

水が多かった。

表 3-28 Padan Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区 調査概要

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 4 名 / 16 名

無収水率 23.39%

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 3.3Km

配水圧力 0.3bAr

調査終了範囲 100%

図 3-20 Padan Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区

図 3-19 Bukit Johor Mas 地区,給水管からの漏水

56

この地区では給水管の地上漏水 3 ヶ所(青丸)及び地下漏水 5 ヶ所(緑)、配水管の地下漏水

1 ヶ所(赤丸)の合計 9 ヶ所を検出した。各箇所からの漏水流出量は表 3-29 の通りである。

それぞれの漏水量が小さいものであったが、9 ヶ所の合計約 670 ㎥/月分の漏水箇所を修復

した。

表 3-29 Padan Bulan 支社 Bukit Johor Mas 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 5.7 245

給水管

地下漏水

② 2.1 90

③ 2.1 90

➃ 2.1 90

⑤ 1 45

⑥ 1 45

地上漏水

⑦ 1 45

⑧ 1 45

⑨ 1 45

合計 17 740

この結果、表 3-30のように調査前の 2014年 5月には 23.39%であった無収水率が減少し、

6 月以降 17%以下に落ち着いている。無収水量も 5 月の 1,981 ㎥から 6 月の 1,364 ㎥へと

617 ㎥落ちており、漏水流出量に相当する分減少していることがわかる。

表 3-30 Bukit Johor Mas 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

5 255 8,469 6,488 1,981 23.39%

6 255 7,865 6,501 1,364 17.34%

7 255 7,901 6,498 1,403 17.76%

8 255 7,821 6,582 1,239 15.84%

9 255 7,823 6,577 1,246 15.93%

10 256 7,852 6,591 1,261 16.06%

11 256 7,861 6,599 1,262 16.05%

12 256 7,872 6,612 1,260 16.01%

(月)

57

e. Tuasan 支所 Komplek Vetpur 地区の調査(6 月 19 日)

この地区は 1994 年に水道が敷設された古い住宅街である。ST04 による給水管、水道メ

ータでの音聴調査及び D305 と AS610 による配水管及び給水管部の漏水調査を行った。過

去の PDAM Tirtanadi 職員による既存に機器を使用した漏水調査では水路部分からの漏水

箇所を確認できなかったが、今回詳細調査した結果、配水管の継手からの漏水が確認され

た。

表 3-31 Tuasan 地区 調査概要

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 3 名 / 10 名

無収水率 23.54%

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 3.0Km

配水圧力 0.7bAr

調査終了範囲 10%

配水管地下漏水 1 ヶ所

図 3-21 Tuasan 支社 Komplek Vetpur 地区 調査

発見できたのは図 3-21 の赤丸部 1 ヶ所であったが、配水管からの漏水であったため表

3-32 の通り流出量約 509 ㎥/月の漏水を修復した。

表 3-32 Tuasan 支社 Komplek Vetpur 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 11.8 509

表 3-33 にみられるように、無収水量もこの上記流出量に相当する分減少し、その結果、

無収水率が 2014 年 5 月時点の 23.54%から 6 月以降の 19%前後へと減少した。

58

表 3-33 Tuasan 支社 Komplek Vetpur 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

5 309 10,005 7,650 2,355 23.54%

6 309 9,502 7,701 1,801 18.95%

7 309 9,611 7,765 1,846 19.21%

8 309 9,561 7,791 1,770 18.51%

9 309 9,566 7,782 1,784 18.65%

10 310 9,617 7,792 1,825 18.98%

11 310 9,620 7,820 1,800 18.71%

12 310 9,627 7,829 1,798 18.68%

f. Diski 支社 Bumi Asri の調査(6 月 18 日)

DMA 地区の中では比較的広い住宅地である。AS610 のセンサーを A、B 間 86m に設置

し、PVC 管の微少漏水を 1 ヶ所発見(図 3-22 の赤丸箇所)することができた。PDAM Tirtanadi

の職員は、地上漏水でなかったため漏水の可能性は無いと断言していた。

表 3-34 Bumi Asri 地区 調査概要

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 3 名 / 11 名

無収水率 32%

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 2.99Km

配水圧力 0.7bAr

調査終了範囲 90%

図 3-22 Diski 支社 Bumi Asri DMA 地区

(月)

59

表 3-35 Diski Bumi Asri DMA 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 126.9 5,481

1 ヶ所であったが流出量は 4,392 ㎥/月とかなり大きな漏水であった。無収水率は 5 月時

点の 32.88%から 6 月の 12.09%、その後 16%台と減少した。ひと月の流出量は漏水箇所を

確認した時点で計測した数値を㎥/月単位に換算した概算である。表 3-36 をみると無収水

量は 5 月と 6 月の減少幅が 6,625 ㎥と計測した流出量以上削減されているので、月を通し

た実際の流出量はそれ以上であったといえる。

表 3-36 Diski 支社 Bumi Asri 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

5 842 29,370 19,712 9,658 32.88%

6 842 25,085 22,052 3,033 12.09%

7 842 24,991 20,814 4,177 16.71%

8 842 25,221 21,015 4,206 16.68%

9 842 25,314 21,027 4,287 16.94%

10 843 25,376 21,093 4,283 16.88%

11 843 25,339 21,011 4,328 17.08%

12 843 25,351 21,033 4,318 17.03%

g. Medan Labuhan Kpum 地区の調査(6 月 11 日)

海が近く低地のため水位が高い住宅地である。止水バルブが海水に浸かって D305 をバ

ルブに設置することができない箇所が多い。小型音聴式漏水探索器もしくは小型軽量漏水

探索器により取出しパイプ箇所を中心に調査した。大半はメーターの継手部分からの漏水

であった(図 3-23)。

AS610 は調査区間を 20m と狭くすることにより計測することができた。

図 3-23 Medan Labuhan Kpum 地区、メーター継手部からの漏水

(月)

60

表 3-37 Labuhan Kpum 地区 調査概要

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 3 名 / 20 名

無収水率 20%

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 3.4Km

配水圧力 0.3bAr

調査終了範囲 100%

図 3-24 Medan Labuhan 支社 Kpum 地区

図 3-24 にみられるように、この地区では給水管地上漏水 4 ヶ所と地下漏水 8 ヶ所の合計

12 ヶ所の漏水を発見した。それぞれの漏水箇所からの流出量と全体の流出量は表 3-38 の

通りで、全体で約 2,000 ㎥/月の流出を食い止めることができた。

表 3-38 Medan Labuhan 支社 Kpum 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

給水管

地下漏水

① 3.9 170

② 4.4 190

③ 4.4 190

➃ 3.5 150

⑤ 5.1 220

⑥ 4.2 180

⑦ 4.1 175

⑧ 6 260

地上漏水

⑨ 2.1 90

⑩ 4.1 175

⑪ 5.1 220

⑫ 2.1 90

合計 49 2,110

61

この結果、表 3-39 のように、無収水率は調査前の 2014 年 5 月時点での 33.08%から 6

月以降は 20%前後でほぼ横ばいに推移している。無収水量も 5 月時点での 5,895 ㎥/月から

7 月の 3,784 ㎥と削減幅が 2,111 ㎥であり、今回の漏水発見修理の成果が反映されているこ

とが確認できる。

表 3-39 Medan Labuhan 支社 Kpum 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

5 700 17,820 11,925 5,895 33.08%

6 719 14,590 11,925 2,665 18.27%

7 718 16,920 13,136 3,784 22.36%

8 718 15,840 12,711 3,129 19.75%

9 719 15,891 12,799 3,092 19.46%

10 719 15,887 12,678 3,209 20.20%

11 719 15,872 12,692 3,180 20.04%

12 719 15,881 12,778 3,103 19.54%

h. Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区の調査(6 月 23 日、24 日)

ここは Belawan 湾に埋め立てを行った住宅街で(図 3-25)、深井戸 3 ヶ所から水道水を

供給している地区である。Belawan 支社では適正な維持管理を実施していないとみられ、

地盤が低いために満潮時には海水が各住宅の床下まで入り込み地下埋設管は、常に海水に

浸かっていて、海水からの腐食対策を行っていない状況である。また、仕切弁は深井戸か

ら送水するところに各 1 ヶ所設置されているだけでほとんどない。浸水状態の給水設備に

漏水調査機器を設置することが出来ないので、Medan Labuhan Kpum 地区同様、目視調査

と探査棒を取り付けた小型軽量漏水探索機もしくは小型音聴式漏水探索機 ST04 による地

上漏水調査を主体として漏水調査を実施した。

図 3-25 Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区

(月)

62

地下漏水調査は、配水管に設置してある仕切弁及び露出している給水管の金属部分もし

くは水道メーターの金属部分に D305 の送信機を設置して調査を試みたが、地面が海水に

つかった状態のため、送信機取付部から水分を多量に含んだ地面に電磁波が拡散して、的

確な漏水箇所を特定することは難しかった。

AS610 による調査は、露出部分の金属管にセンサーを取付け、A・B 間の距離を 20m程

度と短くした結果、的確に漏水箇所を確認することが出来た。PVC 配水管の継手部分を接

続する際、接着部が水に濡れ完全に乾燥しないまま接続し埋設したことによる接着不良が

原因と思われる漏水がほとんどであった。

給水管は金属の継手部が海水により腐食したことが原因の漏水がほとんどであった。漏

水箇所を特定するために長さ 1.2m の音聴棒を使用し、漏水検出地点の地面に穴を開けて

水道水が地上に出てくるかどうかの確認を行いながら業務を実施した。

地下水位の高い地区であり、条件が悪く通常に比べて漏水箇所の特定は難しかったが、

図 3-25 に示された通り、給水管地上漏水が 7 ヶ所、地下漏水が 4 ヶ所、配水管の地下漏水

が 7 ヶ所、人員 16 名 2 日間で合計 18 ヶ所の漏水を確認することが出来た。PDAM Tirtanadi

の職員にとっても良いケーススタディとなった。

表 3-40 Kampung Nelayan 地区 調査概要

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 3 名 / 13 名

無収水率 34.62%

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 不明

配水圧力 不明

調査終了範囲 90%

図 3-26 Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区

63

表 3-41 Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水

① 1.6 70

② 1.6 70

③ 2.3 100

➃ 3.5 150

⑤ 1.9 80

⑥ 1 45

⑦ 2.3 100

給水管

地下漏水

⑧ 1 45

⑨ 1 45

⑩ 1 45

⑪ 1 45

地上漏水

⑫ 1 45

⑬ 1 45

⑭ 1 45

⑮ 1 45

⑯ 1 45

⑰ 1 45

⑱ 1 45

合計 25.2 1,110

表 3-41 にある通り、それぞれの漏水は小さいものであったが、数多く検出することがで

きたので、総流出量は 1405.44 ㎥/月となった。これにより表 3-42 にみられるように、無収

水率は 5 月時点 34.62%から 7、8 月の約 19%へと推移している。この地区は 6 月に給水戸

数が増え、使用量、生産量とも増加した。このため 6 月から 7 月にわずかに無収水率が増

加するなど漏水修理以外の要因が推移に影響しているようであるが、無収水量は調査前の

2014年 5月と比較して検出漏水量にほぼ匹敵する平均約 1,300㎥/月減少しているところに

成果を確認することができる。

64

表 3-42 Belawan 支社 Kampung Nelayan 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

i. Medan Kota 支社の調査(6 月 20 日)

メダン市内中心部の住宅街の漏水調査を行った。この地区の送水管、配水管、給水管は

いずれも古く継手部分、給水管栓部からの漏水が多く発生している。また、配水管図面管

理の更新がなされていないので地下埋設位置の確認にも多くの時間を要した。小型音聴式

漏水探索機及び ST04 による水道メーターに探査棒を充てて行う漏水音調査を行ったが、

市内の水道メーターは毎月 200個程度盗難にあっているので水道メーター部分に荷物を置

いて盗難防止を行っている。このため水道メーターでの漏水音確認調査に時間を要した。

水道管の継手部分、管栓部分から 4 ヶ所の漏水を発見することが出来た。

地下漏水調査は、配水管に設置してある仕切弁及び露出している給水管の金属部分、水

道メーターの金属部分に「樹脂管用漏水探索・配管路探索器 PVC ロケーターD305」の送

信機の設置及び「相関式漏水探索器アクアスキャン 610」機器の A センサー・B センサー

を設置して地下に埋設されている配水管及び給水管からの漏水音の確認調査と詳細調査

を行った。D305 による漏水箇所の確認 については、この地域は交通量が多く道路も狭い

ため昼間の漏水調査は交通整理員を要しての調査となった。効率的な漏水調査は出来ない

が、今後は夜間漏水調査に切り替える必要がある。

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

5 1,077 34,848 22,782 12,066 34.62%

6 1,234 58,222 47,889 10,333 17.75%

7 1,253 59,000 48,044 10,956 18.57%

8 1,253 58,325 47,233 11,092 19.02%

9 1,253 58,716 46,132 12,584 21.43%

10 1,253 58,831 46,591 12,240 20.81%

11 1,253 58,932 46,674 12,258 20.80%

12 1,253 58,714 46,123 12,591 21.44%

図 3-27 Medan Kota 支社

(月)

65

AS610 は、露出部分の金属管にセンサーを取付け、A 点・B 点間の距離を短くして調査

を行った結果、的確に漏水箇所を確認することが出来た。住民からの情報では今まで 11

回も PDAM Tirtanadi に連絡したが漏水修理に対応していなかったとのことである。職員に

確認すると、給水管は所有者(住民)が修理するとの誤った認識を持っていた。このため職

員に対して水道メーターまでは PDAM Tirtanadi が修繕しなければ漏水により排出された

水道水はすべて無収水となることを説明した。

一方、配水管から分岐した箇所から大量に水道水が水路に流されていたが、この時にも

職員は水路に流れている水が水道水とは理解していなかった。で蛇口の水と水路に流れて

いる水で残留塩素濃度を測定して残留塩素があることを確認させることを伝えた。第 2 回

目の報告会でも残留塩素測定手法(図 3-28 「残留塩素測定状況」参照)について、参加

した職員、各事務所の責任者に説明とデモンストレーションを行い、水道水かを確認する

ためには残留塩素測定の重要性について理解していただいた。

その結果、配水管で 7 ヶ所の漏水、給水管で 4 ヶ所の漏水を確認することが出来た。

地下水位の高い地区での漏水調査は、D305 の場合電磁波が拡散されてしまうので漏水

箇所の特定は不向きであることが分かった。このような地区での漏水調査は AS610 の漏水

探索器を先行して漏水調査を行い、ある程度漏水位置が確認出来たら小型軽量漏水探索を

利用して漏水個所を特定する手法が適していることが確認できた。

表 3-43 Medan Kota 支社 調査概要

調査人数(日本人調査チーム/PDAM Tirtanadi) 4 名 / 9 名

無収水率 DMA 化されていな

いため不明

管種/管径 PVC 管/3 インチ

区域総距離 不明

配水圧力 0.7bAr

調査終了範囲 100%

図 3-28 ManagementWater Supply

66

図 3-29 Medan Kota 支社 3 区域

調査の結果、図 3-27 に示された通り、給水管地上漏水 3 ヶ所(青丸印)、配水管地下漏

水 3 ヶ所(赤丸印)の計 6 ヶ所の漏水箇所を検出することができた。

表 3-44 Medan Kota 支社 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥

/月

配水管 地下漏水

① 50.9 2,200

② 30.3 1,310

③ 39.4 1,700

給水管 地上漏水

➃ 3 130

⑤ 4.6 200

⑥ 4.6 200

合計 132.8 5,740

なお、この地区は流入点が多数あるため DMA 化して管理されていない状況である。そ

のため無収水率のデータ等は入手不可能であった。今回は住民からの強い要望もあり、漏

水調査の対象とした。配管の老朽管が多い影響か、表 3-40 のように検出数の割には全体で

流出量約 5850 ㎥/月もの大きな漏水を修復したので、残念ながら無収水率の推移は確認で

きないが、大きく削減されているはずである。

67

図 3-30 残留塩素測定状況

■第 2 回漏水調査結果

第 1 回漏水調査では、D305、AS610、小型軽量漏水探索器各 1 台のみの機材で、なおかつ状況調査

及び PDAM Tirtanadi 職員への技術移転をしながらの調査であったため漏水検出数は 19 ヶ所にとどま

ったが、今回の第 2 回漏水調査では予定機材がすべて投入され、また職員の技術も向上した。その結

果配水管の地下漏水:17 ヶ所、給水管の地下漏水、17 ヶ所、給水管の地上漏水:22 ヶ所、合計 56 ヶ

所の漏水箇所を発見することが出来た。(表 3-45 「第 2 回漏水調査結果」参照)

基本的には既存の鉄管用の漏水探索器では漏水を発見することが極めて困難であったが、今回投入

した機材が現地の状況に十分適応し漏水を検出できることが証明できた。また、これら機材と現地に

適合した探索手法を使い実際結果を出すことにより漏水発見認識のモチベーションが上がったこと

も一因である。したがって、漏水発見の 3 大要素としてハードウェア(漏水探索器)・ソフトウェア(手

法/管網整備)・ヒューマンウェア(人的資産の運営)の両立が功を奏した結果となっている。

【漏水探索機材の評価】

D305

目 的:樹脂管(PVC 管)の漏水個所特定・配管路確認・水道管埋設深度の確認

適合環境:・PDAM Tirtanadi が管理している配水管は、PVC 管が多く使用されており、水圧も

低い DMA 地区内での漏水調査であったが送信機と受信機の電磁波の強弱の微調

整により的確に漏水箇所を特定することができた。

・他の管が輻輳している場合誘導の影響を受けやすくなるが、送信機と受信機の距

68

離を短くすることにより、漏水箇所の特定が可能であった。

・配水管埋設位置の確立されていない DMA 地区内でも配水管埋設位置確にも利用で

きた。

・漏水箇所の特定後、水道管の埋設深度を確認することができた

不適合環境:地下水位が高い地域や給水管に金属管が使用されて輻輳に路上配管されている地

域では、電磁波が拡散する現象が起きるため、漏水箇所の特定が困難であった。

相関式漏水探索器 AS610

目 的:広範囲(約 1Km)からの漏水箇所絞り込み検出

適合環境:・A センサー、B センサーを設置する金属部のある仕切弁、給水管、水道メーター

が必要である。

・A・B センサーの距離を短くすることで的確に漏水箇所を特定することが出来た。

・塩ビ管の場合は配管を伝わる漏水音が届きにくいが、ハイドロフォン併用で漏水

箇所検出が可能になった。

・仕切弁、給水管、水道メーターがぬれている場合、布等で水分を拭き取り乾燥さ

せてからセンサーを設置しないと効率が下がることを確認できた。

小型軽量漏水探索機

目 的:探査棒を取付け地上漏水調査、路面で漏水音を確認する地下漏水調査

適合環境:地上/地下漏水いずれの場合も漏水箇所を的確に特定することが出来た。

小型音聴式漏水探索機 ST04

目 的:水道メーターの金属部分に探査棒を接触する地上漏水調査

適合環境:地上漏水調査で漏水箇所を的確に特定することが出来た。

漏水調査機器の実証事業は、漏水調査機器が PDAM Tirtanadi の配水管(PVC 管)で機能するかど

うかの評価である。樹脂管に特化した漏水調査機材は十分機能することが確認された。「1.(2)普及・

実証を図る製品・技術の概要」で説明した従来の金属管を想定して開発された漏水探知機の場合、鋳

鉄管・ダクタイル鋼管等の金属管では管を伝達する漏水音を確認することはできるが、PVC 管等音を

伝達しにくい材質に対しては漏水地点でないと確認できない欠点があった。今回開発した樹脂管用漏

水探索・配管路探索器 PVC ロケーターD305 は水道管内に電磁波を送り込むことにより水道水を媒体

として伝達する電磁波を受信することにより管路や漏水箇所を探索する機材のため、PDAM Tirtanadi

で使用している樹脂管(PVC 管)では確実に漏水箇所を特定することが出来た。

相関式漏水探索器 AS610 についても、配水管に設置してある仕切弁、給水管の金属管部分、水道メ

ーターの金属部分に A センサー・B センサーを設置して実証事業を実施した。最初は、A・B 間の距

離を 150m にして実証したが、各地区の条件がバラバラであるので最終的には、50m 間隔で確実に漏

水位置を特定する方式に切り替えて実証した結果、漏水箇所を特定することが出来た。

早期発見、早期修理した結果、各 DMA 地区内の無収水率も低くなってきた。今後も引き続き漏水

調査の実施と老朽管更新計画により配水管を新設管に取り換えれば更に無収水率は低くなっていく

ことが期待される。

69

表 3-45 第 2 回漏水調査結果

⑤国内作業(2014 年 7 月~8 月)

ア.漏水調査実施のための関連資料作成・情報収集作業

PDAM Tirtanadi 職員に対して本プロジェクトの概要及

び漏水探索機の各機種の特徴や取扱方法を説明するため

のパワーポイント資料を作成。

インドネシア水道協会発行の有力な情報雑誌「Air

Minum」2014 年 7 月号にて、無収水削減をテーマに本事

業の概要が掲載。(図 3-31 参照)

図 3-31 「Air Minum」JICA StArt

New Survey Scheme for NRW

Reduction

70

イ.7 月 1 日から 4 日まで横浜市で開催した「The 3rdExecutive Forum for Enhancing Sustainability

of Urban Water Service in Asian Region」に出席した PREPAMSI 会長・公共事業省部長・PDAM

Tirtanadi 局長及びアンドリー課長と、インドネシアの水道状況に関するデータ収集と今後の

業務に関し協議を実施。

⑥第 3 回漏水調査:(2014 年 8 月 26 日~2014 年 9 月 22 日)

第 3回漏水調査では漏水調査を通して無収水を削減し同時に漏水調査機器の有効性を検証す

る。と共にジャカルタで行われた日本水道協会及びインドネシア水道協会共催の研修会及び

PDAM Tirtanadi 主催の無収水削減セミナーを通して漏水調査機器を広く周知することを目的

とした。

表 3-46 第 3 回漏水調査日程

日 付 内 容

8 月 26 日(火) 移動日:羽田→ジャカルタ

8 月 27 日(水) 日本水道協会富岡氏、インドネシア水道協会 Mr. Rudie 氏と打合

デモンストレーション現場下見調査

8 月 28 日(木) 漏水調査の開発・新規漏水調査機器と無収水削減対策手法の発表

漏水調査機器を使用して現場でのデモンストレーション(4 ヶ所検出)

8 月 29 日(金) JICA ジャカルタ事務所富原さん・公共事業省菅原専門家へ報告

8 月 30 日(土) 移動日:ジャカルタ→メダン

8 月 31 日(日) 第 3 次調査資料作成及びメダン市内園地調査

9 月 1 日(月) PDAM Tirtanadi 局長へ表敬訪問/9 月 8 日メダンセミナーについて協議

9 月 2 日(火) 在メダン総領事館濱田総領事への表敬訪問及び第 3 次調査業務内容説明

7DMA 地区各所長と DMA 情報及び問題点について協議。日程調整。

9 月 3 日(水) M.Yamin 支社 Pukat1 地区漏水調査実施

9 月 4 日(木) メダン駅前及び Medan Kota 支社 Bogor 地区の漏水調査実施

9 月 5 日(金) セミナー資料作成

9 月 6 日(土) シボランゲ水源地・浄水施設視察、トバ湖の水質調査

9 月 7 日(日) セミナー発表資料作成及び準備

9 月 8 日(月)

PDAM Tirtanadi 無収水対策セミナー開催、調査状況発表

北スマトラ州水道協会会長とビンジャイ市セミナー開催要請を協議

公共事業省菅原氏、インドネシア水道協会 Mr.Rudie 会長と協議

9 月 9 日(火) Medan Kota 支社 Bogor 地区漏水調査、スンガル浄水場視察

9 月 10 日(水) Padan Bulan 支社 Citra Garden 地区漏水調査実施

9 月 11 日(木) Delitua 支社 Bersaudara 地区漏水調査実施

ビンジャイ水道局 Mr. Yusmanshayh 氏と OJT 研修について協議

9 月 12 日(金) Sunggal 支社 Tasbih 地区漏水調査及び漏水調査地区データ収集

9 月 13 日(土) 漏水調査データ整理

9 月 14 日(日) 漏水調査データ整理

71

9 月 15 日(月) ビンジャイ市水道公社セミナー及び機器デモンストレーション

ビンジャイ市長表敬訪問

9 月 16 日(火) Sunggal 支社 Tasbih 地区漏水調査及び漏水調査地区データ収集

9 月 17 日(水) Sei Agul 支社 Amir Hamzah 地区漏水調査及び漏水調査地区データ収集

9 月 18 日(木) 第 3 回漏水調査資料整理

9 月 19 日(金) 第 3 回漏水調査報告会

9 月 20 日(土) 報告書作成

9 月 21 日(日) 北スマトラ州水道公社 109 周年記念式典参加

移動:メダン→ジャカルタ→羽田(9 月 22 日到着)

ア.第 3 回漏水調査地区の選定

DMA 地区の選定については、第 2 回漏水調査と同じ方式で DMA 地区の選定、各事務所責

任者の水道施設の情報提供、問題点を発表してスケジュール調整を行った。

第 3 回漏水調査調査の各 DMA 地区の情報は以下の通りである。

今回は、ジャカルタでのインドネシア水道協会主催の研修会の出席や 2014 年 9 月 8 日の

メダンセミナーの準備のため、時間的にステップテストを行うことができなかった。よって

各事務所責任者からの情報に基づき協議の上、パイロット地区を選定した。

イ.漏水調査事前準備

第 1 回漏水調査では、PVC 管に適用された新しい漏水調査機器の説明と無収水削減するた

めの漏水調査の重要性についての説明と OJT 方式による知識を習得した。第 2 回漏水調査で

は、地上漏水、地下漏水調査を各班ごとに実施して漏水調査を実施したところ、職員間の能

表 3-47 第 3回 DMA地区選定結果の水道情報

72

力の差が出てきた。

今回の第 3 回漏水調査では、漏水管理係の職員を責任者にして各配水管理事務所職員の技

術レベル向上を目指すため、習熟度に応じて漏水調査班を 2 班に編成、理解が遅い職員は比

較的安易な地上漏水調査班へ、理解が進んでいる職員は地下漏水調査班へ振り分けて実証事

業を行った。

表 3-48 漏水調査内容

調査名称 漏水調査機器 内 容

夜間最少流量調査

超音波流量計(2 台)

高精度デジタル圧力計

区画内へ流入する流量を測定する。この流量は、

漏水量と使用量が含まれるため、漏水エリアを推測

するための情報となる。

地上漏水調査

小型軽量漏水探索機

小型音聴式漏水探索機 ST04

音聴棒

地下埋設管の継ぎ手部分からの漏水や地上に水

が漏れ出ている漏水の調査。目視ならびに水道メー

ターや各家の前に幅1m位の水路を横断している給

水管に探査棒を接触させて音聴調査を行った。

地下漏水調査

D305 樹脂管漏水探索器、

相関式漏水探索器 AS610

小型軽量漏水探索機

地下に埋設された配水管からの漏水箇所を特定

する調査。

D305 の使用方法:

配水管上の仕切弁又は水路を横断している給水

管の水道メーター金属部に D305 の送信機を設置

し、水道管内の水を通して電磁波を受信することで

配管路を確認し、信号音が弱くなる地点から漏水箇

所を絞り込む。

AS610 の使用方法

配水管に設置してある水道仕切弁又は水路を横

断している給水管の水道メーター金属部分にセン

サーを(A 点/B 点)設置して AB 点間で漏水箇所の

検出を行う

小型軽量漏水探索使用方法

漏水地点を絞り込んだ後、最後の音聴確認に使用

する。

ウ.第 3 回漏水調査結果

a. M.Yamin 支社 Pukat1 地区の調査(2014 年 9 月 3 日)

Pukat1 地区は、Akusara 通り(図 3-33 参照)に商店街

を有する住宅地である。水圧が 0.1 bar で午前中は水道

水が出るが午後から水圧はゼロとなり水道管の水もな

くなるため昼間の漏水調査は難しい。早朝か夜間の作業

が望ましい。

図 3-32 Pukat1 地区漏水調査

73

図 3-33 M.Yamin 支所 Pukat1 地区 漏水調査及び漏水地点

地上漏水調査:小型軽量漏水探索機ポケットフォン、小型音聴式漏水探索機 ST04 によ

る音聴調査を通して給水管からの継手部分・給水管の腐食している部分の漏水調査を行っ

た(図 3-32 参照)。3 ヶ所の漏水と思われる箇所があったが(図 3-33 青丸印) 、その後水圧

がなくなったため、最終確認と掘削修理は延期となった。この箇所の流出量は流出音を音

聴で確認することにより概算で算出した値である。

表 3-49 M. Yamin 支所 Pukat 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 31 1,320

給水管 地上漏水

②調査のみ 3 120

③調査のみ 3 120

➃調査のみ 3 120

合計 39 1,680

表 3-49 の「調査のみ」の漏水箇所は第 3 回漏水調査終了後 9 月末に職員により再調査・修

理済みである。

74

図 3-34 AS610 の宅内給水設備へ

の設置

表 3-50 M. Yamin 支所 Pukat 地区流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

8 150 6,599 3,320 3,279 49.69%

9 150 5,749 3,425 2,324 40.42%

10 150 4,880 3,280 1,600 32.79%

11 152 5,069 3,608 1,461 28.82%

12 153 4,990 3,824 1,166 23.37%

b. Sei Agul 支社 Amir Hamzah 地区の漏水調査結果(2014 年 9 月 17 日)

AS610 の探索精度をあげている補助接続器ハイドロフォンの設置のためには消火栓など

水道水との接点が必要である。メダンの場合そのような取付口があらかじめ備わっている

ところは少ないため、図 3-34 のように住民の協力のもと各住宅の水道栓を利用する方法で

これまで大きな効果を上げている。ところが高級住宅街の Sei Agul 地区においては、ほと

んどの家の門が閉まっており団員は住民との接触ができないため、他の住宅街と比較して

給水管の漏水調査が難しい地区である。よって可能な限り水道メーター箇所で漏水調査を

行うこととした。

図 3-36 に示されたように、この地区では 2 ヶ所の給水管地上漏水を発見した。流出量は

表 3-51 の通りである。

図 3-36 Sei Agul 支社 Amir Hamzah 地区

図 3-35 Amir Hamzah 地区小型軽量

漏水探索による漏水調査

(月)

75

表 3-51 Sei Agul 支社 Amir Hamzah 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量 ℓ/分 流出量 ㎥/月

給水管 地上漏水 ① 9 400

給水管 地上漏水 ② 10 435

合計 19 835

表 3-52 Sei Agul 支社 Amir Hamzah 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

8 700 27,519 19,221 8,298 30.15%

9 700 27,822 19,727 8,095 29.10%

10 700 27,282 19,819 7,463 27.36%

11 700 27,169 20,586 6,583 24.23%

12 700 27,158 20,689 6,469 23.82%

c. Delitua 支部 Tani Bersaudara 地区漏水調査結果(2014 年 9 月 11 日)

漏水調査地域が広い住宅街のため、漏水報告が多い地区に絞って調査を実施した。下水

道に流れる水道を発見したため(DPD 試薬により残留塩素があることを確認)、かなり大

きな漏水があることが予想された。AS610 の A・B センサーをそれぞれ仕切弁と水道メー

ターに設置し相関検査すると漏水個所を表す波形が確認できた。さらに検出場所近辺を

D305 により絞り込み調査、小型軽量漏水探索機を用いてφ6inch のジョイント部の漏水を

発見した。推定漏水量(5ℓ/秒)と大きい漏水であるが、5 年前に既存の漏水探索機で調査

を行ったが漏水箇所が特定できなかった場所で、図 3-38 の➃

にあたる箇所である。原因は図 3-37 にあるように配管つなぎ

目からの漏水であった。修繕後、下水道を流れる水道水は止ま

った。

1 日で検出したこの地区の漏水箇所の流出全体量は約 33,500

㎥/月(表 3-53 参照)と膨大な水量であり、表 3-54 で確認でき

るとおり、調査前 8 月から調査月 9 月と比較しても相当量の無

収水が減少している。この地区は生産された水道水のほとん

どが流出していた状態であった。依然として高い数値である

ので今後も現地職員による調査が必要である。

図 3-37 Tutup Nati 地区漏

水現場

(月)

76

図 3-38 Delitua Bersaudara 地区 漏水調査及び漏水地点

表 3-53 Delitua 支所 Bersaudara 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管

地下漏水 ① 498 21,500

地上漏水

② 104 4,500

③ 104 4,500

➃ 69 3,000

合計 775 33,500

表 3-54 Delitua 支所 Bersaudara 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

8 523 55,111 10,012 45,099 81.83%

9 523 40,041 16,932 23,109 57.71%

10 525 30,521 18,912 11,609 38.04%

11 527 29,101 19,112 9,989 34.33%

12 526 28,111 20,012 8,099 28.81%

(月)

77

図 3-39 Delitua 支所 Bersaudara 地区 漏水状況

d. Medan Kota 支社 Bogor 地区漏水調査実証結果(2014 年 9 月 4 日、9 日)

Medan Kota 支社 Bogor 地区は、メダン市内の中心部で商店街、事務所の多い地区であ

る。車の往来も激しく騒音も多い。また、下記のような商業地区特有の状況下から、漏水

調査には多くの時間を要した。

配管分岐が多い:D305 は本管調査の際、分岐のある個所では電磁波が 2 分されることが

原因で受信信号強度が低下するため漏水地点検出の際の反応と区別が

つかない。反対に分岐の有無の確認に利用できる。

AS610 の場合は、分岐箇所で起こる渦流音がソケット部漏水音と酷似し

た波形を示し判別が難しい。

使用水停止不可:AS610 をハイドロフォン併用の水相関で利用する際、配管内の水の状態

が静かな状態が望ましい。商業地区の場合、住宅街のように区間内の使

用水を制限して良い条件を整えることは難しい。

止水栓接続不可:住宅街のように商店街や大型ビルの止水栓に AS610 センサーをその場所

で取り付けることは難しく、探索機設置場所が限定される。

舗装されている:試掘、ボーリング等行うことが難しい。

上記の状況を踏まえ、まず D305 で配管路と分岐箇所の有無を確認する路上調査をした

上で分岐不在箇所を把握し、分岐不在区間で信号強度が落ちるなど漏水の疑わしい地点を

検出する都度、AS610 とハイドロフォンを併用して漏水の有無を顕在化する手法で、地下

漏水の探索を遂行した。

78

条件的には厳しいものの、D305 及び AS610 の水相関を併用することにより、このよう

な地区における漏水探索も可能であることが実証された。尚、車両の往来が非常に激しい

地域であるため、従来の音聴による地上漏水調査は騒音や使用水の少ない夜間以外は難し

いことがわかった。D305 及び水相関による AS610 で検出された箇所は、小型音聴式漏水

探索機の音聴棒を差し込んで最終チェックをしてから掘削を行った。その結果、図 3-42

に示された箇所に配水管地下漏水を検出した。一箇所であったが表 3-55 にあるように、月

にすると約 3,645 ㎥の流出量なので比較的大きな漏水箇所であったため、その効果が表

3-56 の無収水率の推移で確認できる。

図 3-42 Medan Kota 支所 Bogor 地区漏水調査及び漏水地点

表 3-55 Medan 支所 Kota Bogor 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 流出量ℓ/分 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 150 84 3,645

図 3-40 Bogor 地区 D305 による調査 図 3-41 Bogor 地区 AS610 センサー設置

79

表 3-56 Medan 支所 Kota Bogor 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

8 320 16,005 5,397 10,608 66.28%

9 320 16,087 7,381 8,706 54.12%

10 320 16,893 9,930 6,963 41.22%

11 320 16,861 10,940 5,921 35.12%

12 320 16,551 11,931 4,620 27.91%

e. Sunggal 支社 Tasbih 地区漏水調査結果 (9 月 12 日)

DMA エリアとしてはかなり広いエリアであるため、今後細分化する必要がある。調査

地区を絞り配水区域を 2 区域選定し、3 班に分かれて調査を実施した。

地上漏水チーム(2 班/各 3 名):小型軽量漏水探索機・小型音聴式漏水探索機 ST04 による給

水管・水道メーター箇所での漏水調査

地下漏水チーム(1 班/各 4 名):D305・AS610・小型軽量漏水探索機による調査

この地区は、交通量も少ない住宅街であり PDAM Tirtanadi 職員が主体となって漏水調査

実証を実施した。目視による調査で給水管地上漏水を 3 ヶ所検出できた(図 3-43 緑丸印)。

目視による調査で相当数の漏水を発見できる可能性がある地域である。地下漏水チームも

D305 及び相関式漏水探索器 AS610 機器を基本の手法で効果的に利用し、配水管地下漏水

2 ヶ所(橙丸印)及び給水管地下漏水 4 ヶ所(赤丸印)合計 6 ヶ所の漏水を発見した。

図 3-43 Sunggal 支社 Tasbih 地区

表 3-57 は各漏水箇所からの流出量の測定結果である。配水管からの漏水が大きかったた

め流出量の合計は約 32,405 ㎥/月となった。

(月)

80

表 3-57 Sunggal 支所 Tasbih 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 463 20,000

② 232 10,000

給水管

地下漏水

③ 19 800

➃ 14 600

⑤ 9 400

⑥ 7 300

地上漏水

⑦ 3 130

⑧ 3 130

⑨ 1 45

合計 751 32,405

表 3-58 Sunggal 支所 Tasbih 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

8 2,287 125,811 68,484 57,327 45.57%

9 2,283 97,005 68,227 28,778 29.67%

10 2,285 95,911 71,005 24,906 25.97%

11 2,286 93,115 70,985 22,130 23.77%

12 2,288 93,435 72,867 20,568 22.01%

f. Padan Bulan 支所 Citra Garden 地区漏水調査結果 (9 月 10 日)

この地区も住宅街であるが、静かな地域であり地上漏水班と地下漏水班に分かれて漏水

調査を実施した。地下漏水調査で4ヶ所配水管からの漏水音を確認したが(図3-44青丸印)、

この地区は時間給水のため(5:00-13:00)給水終了し水圧がなくなったため、今回の調

査は中断し第 4 回漏水調査の際改めて再確認した。

■日本人調査職員 2 名は各住宅を訪問して漏水に関する意見を収集した。

・メーター検針職員がメーターを検針していると思うが住民と会話したことがない

・水道メーター付近で微量の水道水が漏れているが指導されたことがない

・住民に対してもっと情報提供してほしい

といった意見が出された。

PDAM Tirtanadi 職員の漏水調査方法、漏水探査機の使い方、漏水調査技術の習得・お客

様に接する会話、お客様の満足する水道技術を伝えようとする技術の習得等が必要である

ことが十分に理解できた。

(月)

81

図 3-44 Pdan Bulan 支社 Citra Garden 地区

表 3-59 Pdan Bulan 支社 Citra Garden 地区の漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量ℓ/分 流出量㎥/月

配水管 地下漏水 ① 32 1,400

② 6 250

給水管 地下漏水 ③ 7 300

➃ 4 170

合計 49 2,120

表 3-60 Pdan Bulan 支社 Citra Garden 地区 流入量・使用水量・無収水率の推移

月 給水

戸数 生産量 消費量

無収水

㎥ %

8 440 15,779 9,192 6,587 41.75%

9 440 15,049 10,392 4,657 30.95%

10 440 15,659 11,192 4,467 28.53%

11 442 15,879 11,681 4,198 26.44%

12 442 15,959 12,192 3,767 23.60%

イ. 第 3 回漏水調査結果

6DMA 地区を対象に漏水調査機器を使用して漏水調査を行った結果、配水管の地下漏水調

査で 9 ヶ所、給水管の地下漏水調査で 4 ヶ所、地上漏水で 5 ヶ所、計 18 ヶ所検出した。ま

た職員が自発的に行った Medan Kota 支社の漏水調査では、配水管の地下漏水調査で 2 ヶ所、

給水管の地上漏水で 10 ヶ所の計 12 ヶ所、あわせて 30 ヶ所の漏水を発見して修理を行った。

(月)

82

今回の調査で検出した漏水箇所の流出量合計は約 33,000 ㎥/月であった。商業地区や住民

の協力が得られない地域、時間給水など調査が難しい場所もあったが、漏水調査機器の調査

手法を工夫することで、結果を出すことはできた。

実証事業で使用している漏水探索機は、現場に適した手法により PDAM Tirtanadi の配水管

に十分効果がでることが分かり、無収水削減及び漏水調査に大きく貢献することが確認され

た。

表 3-61 第 3 回漏水調査で実施した事業結果

2014 年 9 月 19 日の現地報告会の席上にて PDAM Tirtanadi 幹部職員に対し、職員全員を対

象に人材育成を目的にした以下項目にかかる研修が重要であることを説明。同幹部職員は、

研修業務課を中心に 2015 年以降これらの研修を行う方向で合意した。

人材能力開発(管理者研修/技術者研修)

個人の能力に応じた人材育成

顧客満足度

水道メーター計測能力向上

配管修理技術の向上

83

第 3 回漏水調査で、第 2 回漏水調査と同じ方式を用い、地上漏水調査及び地下漏水調査を

実施した。商業地区や住宅街など漏水箇所探索が難しい地域もあったが、確認作業に時間は

かかりながらも漏水箇所を検出するなど、一定の効果は確認できた。PDAM Tirtanadi 職員に

ついては、漏水調査機器の取扱い方で不慣れなところもあったが、積極的に漏水調査を実施

し漏水箇所を発見し業者に修理指示するなど技術的にも習熟してきた職員もみられるよう

になった。

⑦第 4 回漏水調査:(2015 年 2 月 1 日~2015 年 2 月 28 日)

第 4 回漏水調査では第 1 次~第 3 回漏水調査において探索困難であった環境における漏水調

査及び手法を再検証すること、また公共事業省とインドネシア水道協会共催のセミナーに参加

し本事業の成果を周知し漏水調査機器の普及を図る事を目的とした。

表 3-62 第 4 回漏水調査日程

日 付 内 容

2 月 1 日(日) 移動日:羽田→ジャカルタ→メダン市

2 月 2 日(月) TIRTANADI 局長表敬訪問及び漏水管理課打ち合わせ

2 月 3 日(火) 在メダン総領事館濱田総領事への表敬訪問及び第 4 次調査業務内容説明

漏水管理課と打ち合わせ

2 月 4 日(水) 漏水管理課、各支社とパイロットエリアについて打ち合わせ

2 月 5 日(木) Deli Tua 支社 Perum BSD 地区漏水調査及び漏水調査地区データ収集

2 月 6 日(金) Deli Tua 支社 Perum BSD 地区、Tuasa 支社 Gaharu 通り漏水調査及び漏水調査地区データ収

2 月 7 日(土) 漏水調査データ整理、最終報告会準備

2 月 8 日(日) 漏水調査データ整理、最終報告会準備

2 月 9 日(月) Labuhan 支社 minimalis 地区漏水調査実施

2 月 10 日(火) Belawan 支社 Bagan Deli 地区漏水調査実施,夜間時漏水調査及び step test

2 月 11 日(水) Belawan 支社 Bagan Deli 地区漏水調査実施

2 月 12 日(木) Amplas 支社 Villa Permata 地区、Tuasa 支社 Gaharu 通り漏水調査及び漏水調査地区データ

収集

2 月 13 日(金) Tuasa 支社 Gaharu 通り漏水調査及び漏水調査地区データ収集

2 月 14 日(土) 漏水調査データ整理、最終報告会準備

2 月 15 日(日) 漏水調査データ整理、最終報告会準備

2 月 16 日(月) Deli tua 支社一般家庭宅地内漏水調査実施

2 月 17 日(火) Sunggal 支社 Waikiki 地区漏水調査及び漏水調査地区データ収集

2 月 18 日(水) Belawan 支社 Sicanang 地区漏水調査及び漏水調査地区データ収集

2 月 19 日(木) Siborangi 浄水場視察

2 月 20 日(金) 漏水管理課とプロジェクト投入機器の評価について打ち合わせ

2 月 21 日(土) 漏水調査データ整理、最終報告会準備

2 月 22 日(日) 漏水調査データ整理、最終報告会準備

84

2 月 23 日(月) 最終報告会

2 月 24 日(火)

Tuasa 支社 Gaharu 通り漏水調査及び漏水調査地区データ収集

インドネシア国公共事業省にて、Life Sycle Cost のセミナー発表

公共事業省水道関係部署と技術協力プロジェクトについて協議

2 月 25 日(水)

Tuasa 支社 Gaharu 通り漏水調査及び漏水調査地区データ収集

公共事業省水道関係部長とメダン事業について報告

インドネシア国水道協会と今後の技術協力について協議

2 月 26 日(木) 漏水調査データ整理、移動メダン市→ジャカルタ市

バンドン市水道公社と NRW Reduction についてセミナー開催

2 月 27 日(金) 公共事業省協議、インドネシア国水道協会協議、漏水調査データ整理

移動 ジャカルタ市→国際空港 深夜:ジャカルタ空港 → 東京羽田

2 月 28 日(土) 東京羽田空港到着 帰国

ア.漏水調査地区の選定

第 1 次~第 3 次までの調査において特に漏水検出が困難であった状況に対する有効な探

索手法を探求・実証するため下記にあてはまる地区をあらかじめ選定しておくよう手配し

た。

(選定理由)

a.基礎地盤で地下水位の高い地域《No.4,5,6》

b.商業地域など地下埋設管が輻輳されている道路

c.高台等で地盤の乾燥している地区《探査棒を延長した音聴式漏水探索機》《No.2》

d.水圧の低い地区《No.1・No.2・No.5》

e.交通量の多い道路・交差点《AS610+ハイドロフォンで検証》

f.仕切弁・消火栓が少なく、民家の水栓も利用できない地区《D305 2 台》

g.違法接続の調査《No.6》

h.給水管(宅内含む)の漏水検出《水素式漏水探索機》

第 4 回漏水調査の各 DMA 地区の情報は次の通り(事項)である。

85

Branches

(選定理由) DMA Customer

Water

Pressure

Pipe

Material

Pipe

Length Construction

Inlet

point

NRW

(%)

No.1

AMPLAS

(d)

Villa

Permata

227 0.4kg/m² PVC 3inch

768m

4inch

337m

2005 1 27%

No.2 SUNGGAL

(c / d)

Komp

Wakiki

602 0.3-0.7kg/m² PVC 2inch

690m

3inch

1110m

4inch

1500m

2003 1 45%

No.3 DELI TUA

Perum.

BSD

402 0.35 kg/m² PVC 2inch

1094m

3inch

1603m

4inch

1314m

6inch

1318m

1995 1 28%

No.4 BELAWAN

(a)

Bagan Deli 489 0.3-1.4kg/m² PVC 3inch

211m

4inch

287m

6inch

1696m

1985 1 25%

No.5 BELAWAN

(a / d)

Sicanang 1445 0.7kg/m² PVC 3inch

3355m

4inch

16m

1985 1 28%

No.6 LABUHAN

(g)

Komp

Minimalis

245 0.8kg/m² PVC 2inch

261m

3inch

1352m

6inch

425m

2005 1 20 %

表 3-63 第 4 回漏水調査パイロット地区

86

イ.漏水調査事前準備

今回の漏水調査では、AS610 と D305 を用いて配水管を重点的に調査する班と、小型音

聴式漏水探索機 ST04 とポケットフォンを用いて給水管を重点的に調査する班の 2 班体制

で実施した。

表 3-64 漏水調査内容

調査名称 漏水調査機器 内 容

夜間最少流量調査

超音波流量計(1 台)

高精度デジタル圧力計

区画内へ流入する流量を測定する。この流量は、漏

水量と使用量が含まれるため、漏水エリアを推測する

ための情報となる。

地上漏水調査

小型軽量漏水探索機

小型音聴式漏水探索機 ST04

音聴棒

地下埋設管の継ぎ手部分からの漏水や地上に水が漏

れ出ている漏水の調査。目視ならびに水道メーターや

各家の前に幅 1m 位の水路を横断している給水管に探

査棒を接触させて音聴調査を行った。

地下漏水調査

D305 樹脂管漏水探索器、

相関式漏水探索器 AS610

+ハイドロフォン

小型軽量漏水探索機

音聴棒

地下に埋設された配水管からの漏水箇所を特定する

調査。今回の調査では、AS610 のセンサー設置場所に

D305 の発信器を設置して同時に調査することで、漏水

発見の確実性を高める、違法接続を発見することを目

的とした。

D305 の使用方法

配水管上の仕切弁又は水路を横断している給水管の

水道メーター金属部に D305 の送信機を設置し、水道管

内の水を通して電磁波を受信することで配管路を確認

し、信号音が弱くなる地点から漏水箇所を絞り込む。

AS610 及びハイドロフォンの使用方法

配水管に設置してある水道仕切弁又は水路を横断し

ている給水管の水道メーター金属部分にセンサーを(A

点/B 点)設置、もしくはハイドロフォンを水栓に取付

けセンサーに接続し、AB 点間で漏水箇所の検出を行

う。

小型軽量漏水探索使用方法

漏水地点を絞り込んだ後、最後の音聴確認に使用す

る。

ウ.第 4 回漏水調査結果

a. Amplas 支社 Villa Perma 地区の調査(2015 年 2 月 12 日)

Villa Peruma 地区は住宅地となっており、DMA 流入地点での水圧が 0.1〜0.2kgf/㎠と

87

図 3-45 Villa Peruma 地区低く

配線された高電圧線

非常に低い。

D305

この地区は 220V の高電圧線が配水管路上部に

低く何本 も配電されているため、(図 3-45)受信機

が配管内の信号音でなくより強い電線の磁場を受

信してしまうこと、また鉄格子や鉄線の入ったブ

ロック舗装の道路の影響等により、D305 による探

索はできなかった。

610+ハイドロフォン

分岐点より各方面への漏水箇所を調査したが、

大きな漏水箇所は検出されなかった。水圧が非常

に低く(0.1〜0.2kgf/㎠)ハイドロフォンのエア抜きができず確実な設置ができない

箇所があった。

音聴式漏水探索機

圧力が低く検出は難しかった。夜間業務として再度調査することを C/P 側へ提言

した。この地区では結局漏水箇所が検出できなかったが、メーター故障や未収水水

道料金等の可能性も考えられるので、これについても調査するよう C/P 側へ提言し

た。

図 3-46 Villa Peruma地区 調査

(左)水圧計設置状況 (中央)AS610+ハイドロフォン設置 (右) D305 設置

88

b.Sunggal 支社 Komp Waikiki 地区の漏水調査結果(2014 年 2 月 17 日)

Komp Waikiki 地区の水源は深井戸水を使用しており、地下水位が低く水圧も 0.3〜

0.7kgf/㎠と低い。

D305

低い地下水位に対応するため、音聴棒(現地製作)を利用して地面深く確実にアース

をとった。この結果、配管内の信号が受信しやすくなる事が確認できた。

また、ひとつの調査手法の試みとして、AS610 を D305 と同箇所に同時に設置して調

査した結果、それぞれの結果を複合的に判断することができ、漏水箇所特定の確実性

と効率性が向上した。

図 3-48 Waikiki 地区

AS610+D305 設置状況 図 3-49 Waikiki 地区

音聴棒を利用して確実に接地

図 3-47 Amplas 支社 Villa Perma 地区 漏水調査及び漏水地点

89

表 3-65 Sunggal 支社 Komp Waikiki 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量 ℓ/分 流出量㎥/月

管配水管 地下漏水 ① 30 2160

給水管 地下漏水

② 1 45

③ 1 45

➃ 1 45

合計 33 2295

図 3-50 Sunggal 支社 Komp Waikiki 地区 漏水調査及び漏水地点

図 3-51 Waikiki 地区

D305 による配水管調査

図 3-52 Waikiki 地区

ST04 による給水管漏水調査

90

c.Deli Tua 支部 Peruma BSD 地区漏水調査結果(2015 年 2 月 5、6 日)

Peruma BSD 地区は地盤高の高低差が 10m以上あり、流入点での水圧と末端部での水

圧差が 1kgf/㎡ほどある地域である。

今回の調査では AS610 と D305 により配水管の漏水を発見することはできなかったが、

地上給水管漏水を二ヶ所発見という結果となった。末端部での水圧が 1kgf/㎡高いため、

末端部を中心に配水管を調査するよう C/P ヘ提言した。

図 3-54 Deli Tua Bersaudara 地区 漏水調査及び漏水地点

図 3-53 Peruma BSD 地区

(左)漏水調査状況 (中央)AS610+D305 設置状況 (右)給水管からの漏水

91

表 3-66 Deli Tua 支所 Peruma BSD 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量 ℓ/分 流出量㎥/月

給水管 地上漏水 ① 3 130

② 3 130

合計 6 260

d.Belawan 支社 Bagan Deli 地区漏水調査実証結果(2015 年 2 月 10 日、11 日)

Belawan 支社 Bagan Deli 地区は、海に面している貧困層住宅地で治安が悪い地域であ

る。地盤が低いので、時々海水が上昇し海水で満たされることが多く、地下水位も非常

に高い。この地域では、Tirtanadi 水道管以外に、港湾局所有の水道管、オイル精製場

(PERTAMINA)所有の水道管、各家庭の井戸からの給水管が埋設されている。他企業

の水道管が埋設されている場合、他企業管と区別するためにも水道管の図面管理(台帳)

は重要であるが、現存する図面が不正確のため、Tirtanadi の水道管のみの漏水調査を実

施することは困難であった。

今回の調査では調査区域が広いため、夜間業務としてステップテスト方式で漏水量が

多いと推定される地域を選定し、その地域を重点的に調査した。ステップテストを行う

前にセクションを区切るためのバルブの確認調査を行ったが、バルブの故障のため各エ

リアを区切ることができず、優先地域の選定も困難であった。そのため使用水量が少な

い夜間の時間帯に AS610 を用いてエリア流入管に設置してある仕切弁を利用して径

φ150mm、延長 1600m の漏水調査を行った結果、漏水と疑わしいと思われるところを数

箇所発見し、発見個所について詳しい調査をするよう PDAM Tirtanadi 職員に依頼した。

また、バルブ確認のための歩行調査の際、目視及び ST04 により地上漏水 2 ヶ所 (内 1

ヶ所はメーター不在)、地下配水管漏水 1 ヶ所を検出し、また二日目の調査では、AS610

と D305 を併用して調査し、1 ヶ所の配水管地下漏水を発見した。

図 3-55 Bagan Deli 地区

(左)配水管漏水箇所 (右) AS610 及び D305 設置

92

図 3-58 Belawan 支所 Bagan Deli 地区 漏水調査及び漏水地点

図 3-56 Bagan Deli 地区 夜間時調査 超音波流量計及び AS610 設置状況

図 3-57 Bagan Deli 地区 夜間時調査 エリア流入管における AS610 漏水調査

93

表 3-67 Belawan 支所 Bagan Deli 地区 漏水調査及び漏水地点

漏水タイプ 漏水箇所 流出量 ℓ/分 流出量㎥/月

管配水管 地下漏水 ① 30 1,300

給水管 地下漏水

② 1 45

③ 1 45

地上漏水 ➃ 1 45

合計 33 1,435

e.Belawan 支社 Sicanang 地区漏水調査結果(2015 年 2 月 18 日)

DMA エリアとしてはかなり広いエリアであるため、今後は、DMA 地区内を細分化す

る必要がある。浄水場からの流入と DMA エリア内の深井戸水を利用しているエリアで

あり、水圧は 0.25kgf/㎠と非常に低い。海に面しているエリアであるため時々海水が上

昇し、地下水位も非常に高いエリアである。

AS610はセンサーA とセンサーBとの距離が 500m前後以上離れている場合(ただし、

受信可能距離は途中の障害物等に依存する)、アンテナをセンサーに取り付けることで

より広範囲を調査することが可能である。漏水の疑いのある波形が検出された箇所を重

点的に D305 及びポケットフォンを使用して漏水調査する手法が効果的であった。今回

の調査では AS610 のセンサーにアンテナを接続して、口径 φ150mm、距離 663m の PVC

管を調査した結果、漏水音と疑わしい箇所を同時に数箇所検出した。そのうちの一ヶ所

を確認したところ漏水を現認したが、降雨のためその他の箇所は支社担当に確認調査す

るよう依頼した。流入ポイント周辺の給水管と流入ポイントから 663m までの広域調査

のみで、天候によりほとんどの DMA 区域で調査できなかった。

図 3-61 Sicanang 地区 (左)AS610 設置 (中央)仕切弁 (右)地下漏水

図 3-59 Sicanang 地区 AS610 設置 図 3-60 Sicanang 地区 水圧計設

94

図 20 Belawan 支社 Sicanang 地区

表 3-68 Belawan 支所 Sicanang 地区 漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量 ℓ/分 流出量㎥/月

管配水管 地下漏水 ① 30 1,300

給水管 地下漏水 ② 1 45

合計 31 1,345

f.Labuhan 支所 Komp Minimalis 地区漏水調査結果(2015 年 2 月 9 日)

この地区は川に面した静かな住宅街であり 3 つのセクションで構成されている。この

ためセクションⅠとセクションⅡに班を分けて漏水調査を実施した。セクションⅠの班

は AS610 と D305 を使用し配水管を重点的に調査、セクションⅡは D305、小型音聴式

漏水探索機 ST04、ポケットフォンを使用して配水管ならびに給水管を重点的に調査し

た。

違法接続の調査

小型音聴式漏水探索機 ST04 を用いて各家庭の給水管を調査する際、メーター前

のバルブを開閉することによる違法接続調査手法を検証した。メーター前のバルブ

を閉めた後 ST04 で管内水音を確認する。違法接続がない場合は水音は止まるが、

違法接続がある場合は水音は継続する。この手法により違法接続を 1ヶ所発見した。

D305

川に面していることもあり地下水位が非常に高い地域であるため、D305 の使用

は限られたが、分岐箇所を確認するなど管路探索には効果的であった。

AS610+ハイドロフォン

配管距離 235m の広域調査、その後検出箇所をポケットフォン及び ST04 により

音聴調査し、2 ヶ所の地下配水管漏水を発見した。

また、小型音調式漏水探索機 ST04 とポケットフォンを用いて地上と地下給水管

漏水をそれぞれ 2 ヶ所、計 4 ヶ所の漏水を発見した。午後から大雨となり調査は中

B 点

A 点

図 3-62 Belawan 支社 Sicanang 地区

95

止としたため、残りの区域については引き続き PDAM Tirtanadi で調査実施すること

とした。

図 3-65 Labuhan 支社 Komp Minimalis 地区

図 3-64 Komp Minimalis 地区

検出された違法接続管

図 3-63 Komp Minimalis 地区

小型音聴式漏水探索機 ST04

96

表 3-69 Labuhan 支社 Komp Minimalis 地区の漏水量の計測

漏水タイプ 漏水箇所 流出量 ℓ/分 流出量㎥/月

管配水管 地下漏水 ① 30 1,300

② 30 1,300

給水管

地下漏水 ③ 1 45

④ 1 45

地上漏水 ⑤ 1 45

⑥ 1 45

合計 64 2,780

g.Tuasa 支社 Gaharu 通り漏水調査(2015 年 2 月 24 日、25 日)

今回予定していた地域ではないが、下水工事の際破損した水道管からの漏水がマンホ

ールに流入、応急措置として配管を経由して用水路へ流している現場の調査を依頼され

た。この地域は DMA 管理されていない地域である。D305、AS610、ステットホン及び

ポケットフォンにより探索した結果、小規模漏水を 3 ヶ所を検出修理、大規模漏水箇所

1 ヶ所のおおよその位置を特定した。予定外の作業であったため、掘削確認は調査団帰

国後 PDAM により行われた。

h.トレーサーガスを使用した宅内漏水探索

第 4 次調査では、窒素 95%、水素 5%のトレーサーガスを使用した給水管の漏水箇所

探索調査の検証をした。ガスの調達先及び内容は下記の通りである。

PDAM Tirtanadi の水道水を多量に使用している個人宅を選定、本人了解の基、調査を

実施。

個人宅で使用する水道の蛇口を全て閉め、水道メーターの確認作業を行ったところ、

水道メーターが回転していたことから、漏水の可能性が確認された。配水管と水道メー

ター間の漏水を確認すべく、ST04 及びポケットフォンにて調査をしたが漏水は確認さ

れなかった。そこでトレーサーガスを用いた漏水調査を実施することとした。

まず水道メーター部分に設置してある止水栓を全閉にして給水管の配管されている

位置の確認を行った後、1階に取り付けられている水道蛇口から給水管内にたまってい

る水を完全に抜き、ホースを使用して 1 階の蛇口からトレーサーガス(窒素 95%、水素

5%混合)を注入した。配管内にガスが充満してくると開放していた(配管最上である)2

階の水道蛇口から残水が吐出しガスが噴出する。この現象を確認してからすべての蛇口

販売店 TRI GASES

Jl. Karya Rakyat No.41 Medan 20117 Indonesia

調達ガス N2:95% H2:5%の混合ガス 1㎥ 2本

費 用 ガス代 2㎥ 1,000,000Rp

同上用貸しボンベ代 2本 1,200,000Rp

97

を閉め、バリオテック 460 による漏水確認調査を実施した。配管内に充填した水素ガス

は比重が軽く漏水箇所から漏れ出るため、そのガスを検知することにより漏水箇所を特

定することができる。調査の結果、1 階トイレ、台所、2 階トイレ、寝室のガス流入箇

所それぞれの蛇口取付け部分からガスが漏れ出していることを確認した。

PDAM Tiritanadi 職員も実証を兼ねて調査を行ったところ、短時間の指導で簡単にガス

の接続、水道管への注入、漏水箇所検出といった一連の手順を習得した。トレーサーガ

ス式漏水探索は宅内漏水の検出に非常に適しているため、今後住民からの宅内漏水調査

の依頼にも応対することができる。ただしガスの調達先は現在メダンには1社しかない

ため、ガス購入費を含めた調査費用を個人宅が負担できるか否かという点が今後の課題

である。

またこの探索手法は、バルブなどによる配管の閉鎖領域を確保できること、大量のガ

スを調達するといった課題を克服することができれば、時間給水の地域や音聴も D305

も難しい調査環境下における漏水調査方法として給配水管への適用が多いに期待でき

るところである。

図 3-66バリオテック 460 (左)機材一式 (中央)ガス管を蛇口に接続 (右)PDAM Tirtanadi職員への指導

図 3-67 バリオテック 460 (左)漏水確認調査 (中央)検出数値 160 (右)台所にて検出

98

図 3-68 PDAM Tiritanadi 本局内モスクでのトレーサーガス式漏水調査

(左)蛇口にガス管設置 (右)PDAM Tirtanadi 職員による漏水箇所確認

99

イ.第 4 回漏水調査結果

6DMA 地区を対象に漏水調査を行った結果、配水管の地下漏水調査で 5 ヶ所、給水管の地下

漏水調査で 8 ヶ所、地上漏水で 5 ヶ所、及び DMA 区域外配水管地下漏水 1 ヶ所、計 19 ヶ所発

見し、修理を行った (表 3-70 参照) 。今回検出された漏水箇所のうち修理済みの推定流出量合

計は約 34,000 ㎥/月であった。

今回は特に漏水調査の難しい地域での実証を試みたが、表 3-71 にある通り、漏水調査機器

の調査手法を工夫することにより、PDAM Tirtanadi の無収水削減及び漏水調査に大きく貢献す

ることができることが実証された。

表 3-70 第 4 回漏水調査結果

支社 DMA NRW (%) 漏水検出数 備考

1 AMPLAS Villa Permata 27%

給水管 地上 0

低水圧

低い高圧線

鉄線入り舗装

地下 0

配水管 地上 0

地下 0

2 SUNGGAL Komp Wakiki 45%

給水管 地上 0

乾燥した地盤

低水圧

地下 3

配水管 地上 0

地下 1

3 DELI TUA Perum. BSD 28%

給水管 地上 2

大きな地盤高低差 地下 0

配水管 地上 0

地下 0

4 BELAWAN Bagan Deli 25%

給水管 地上 1

高い水位

民間・他局の水道管混在

地下 2

配水管 地上 0

地下 1

5 BELAWAN Sicanang 28%

給水管 地上 0

高い水位

低水圧

地下 1

配水管 地上 0

地下 1

6 LABUHAN Komp Minimalis 20.00%

給水管 地上 2

高い水位

違法接続調査

地下 2

配水管 地上 0

地下 2

合 計

給水管 地上 5

全 18 ヶ所

(その他 DMA 外 1 ヶ所)

地下 8

配水管 地上 0

地下 5

100

表 3-71 各調査状況に対する対応結果まとめ

D305 AS610 ST04 PM 備考

高水位 × 〇 〇 〇 D305:バルブの浸水状態では使用不可

低水位 △ 〇 〇 〇 D305:適切なアースで対応可能

超低水圧 〇 △ △ △ AS610:ハイドロフォンの併用

商業地区 △ △ △ △ D305 で配管分岐確認後 AS610 にて再調査

音聴は夜間調査が望ましい

仕切弁少数

長距離調査

△ △ - - D305:2 台使用

AS610:アンテナ利用、測定時間延長

電線近接 × 〇 〇 〇 D305:鉄線など誘導の影響に弱い

違法接続 ○ 〇 ◎ ◎ 併用で高い効果

ウ.最終報告会について

2 月 23 日に、PDAM Tirtanadi において最終報告会が行われ、以下のとおり報告した。

1.PDAM Tirtanadi が維持管理する責任のある給水管の範囲の明確化。

2.今回実証した漏水調査機器についての PDAM Tirtanadi 職員の評価及び問題解決策につ

いて報告。

3.無収水削減対策の一環としてパイロット地区に選定された 25 ヶ所の DMA 区域の漏水

調査結果を報告。

地下漏水・地上漏水合わせて 117 ヶ所の漏水を発見・修理したが、これら漏水の全体量は約

173,000 ㎥/月で、水道料金に換算すると毎月約 55,360 万円損失している計算となる。実証活動

を通じた漏水調査により無収水率に関しても、42%前後から 25%へ約 17%の削減に貢献した。

本事業は漏水調査機器の有効性に特化して実証を行ったため、依然として残る無収水に関して

は違法接続や、メーター検針、メーター不感水量などの他の要因の可能性と各分析法について

説明するにとどまり(P103 参照)、それ以上の詳細な分析は行っていない。また、調査未実

施の区域も残されているため、本事業で実践した漏水調査により更なる無収水削減に貢献する

ことが期待される。

4.ライフサイクルコストの観点から、耐用年数の基準を 100 年として PVC 管及び HDPE

管、DIP 管の管材費及び維持管理費を含めたコストを計算し、更新時の配管材料選定

について説明。

5.PDAM Tirtanadi による第 3 セクターの漏水調査実施機関設立の重要性について説明。

局長も前向きに取り組むことを確認、PDAM Tirtanadi 管理区域内の漏水調査及び修理

からスタートし、中期的には北スマトラ州内の水道事業体に対する漏水調査及び修理

の実施、将来的にはインドネシア国水道協会と MOU を結び全国展開が出来るように

していく事を目標とすることを確認。

6.水道施設の維持管理については、維持管理計画、無収水削減計画、漏水調査計画書を

作成のうえ計画的に実施していくことを確認。

7.2035 年までの Master Plan の作成、職員育成も踏まえ研修施設の建設の可能性につい

て検討する事を確認。

101

8.人材育成について、PDAM Tirtanadi 独自にて管理職員・支所職員・特にミスの多い水

道メータ検針員のための研修を実施する予定。

漏水再発防止のため、提携している修理業者の基礎知識/技能向上の必要性を強調し、技能

研修を行うことも推奨した。

⑧その他・セミナー関係報告

第 2 回~第 4 回漏水調査で実施したセミナー等の内容については次のとおり。

表 3-72 セミナー等の内容とその成果

開催日時

相手先機関

テーマ

内容:本事業の報告・無収水削減対策について・漏水調査の必 要性・水

道施設の維持・漏水探索機の OJT 研修

2014 年 6 月 25 日

USAID iuwash 機関

無収水削減

セミナー目的:無収水削減対策手法と漏水調査方法・漏水調査機材を使

用した OJT 研修を通して、漏水調査機器の促進

参 加 者 :スマトラ州水道公社技術職員 16 名

成果・課題 :各水道公社とも漏水調査機材やその技術、水道施設維持

管理が不足している。OJT 研修や無収水削減の講習を通

してその重要性を認識した結果、研修セミナーや漏水調

査機材導入を強く要望するに至った。さらなる水平展開

が課題である。

協 力 :PDAM Tirtanadi 漏水管理課長以下 4 名

2014 年 8 月 28 日

日本水道協会・インドネシア水

道協会

Program Schedule for “PERPAMSI

and JWWA Exchange Training

Program 2014: Capacity Building

on water Supply for Young

Leaders”

セミナー目的:樹脂管に特化した漏水調査機器を学び PR することによ

り日本・インドネシア双方へ技術を周知し、水平展開に

つなげる

参 加 者 :日本及びインドネシアの水道局若手技術者

成果・課題: 今後漏水探索機導入を検討する。

セミナーの要望を受けた。

無収水削減の重要性、漏水調査の重要性を広く認識した。

2014 年 9 月 8 日

PDAM Tirtanadi

Water Leakage Management with

Goodman INC. JAPAN at 109

Anniversary of PDAM Tirtanadi

North Sumatera Province

セミナー目的:樹脂管に特化した漏水調査検索機の実証結果の報告と無

収水削減対策の重要性、漏水調査の重要性を発表し、今

後の水平展開を計る

参 加 者 :スマトラ島の水道事業体局長、インドネシア水道協会会

長、北スマトラ州水道協会会長、PDAM Tirtanadi 局長及

び幹部職員、日本大使館在メダン総領事、JICA インドネ

シア事務所、公共事業省専門家、合計 80 名が参加

成果・課題: Bin Jai 市水道公社及び北スマトラ水道協会会長からセ

ミナー及び漏水調査実施依頼がなされた。

全体的に機材の展示、パンフレット、技術資料配布で漏

水調査機材の知識が共有された。

102

2014 年 9 月 15 日

ビンジャイ市水道公社

漏水探索技術/無収水対策

セミナー目的:前述した 9 月 8 日のセミナーで招致を受けて実施した。

樹脂管に特化した漏水調査機器の実証結果の報告と無収

水削減対策と漏水調査の重要性を説明し、漏水調査機器

の導入を促す。

参 加 者 :ビンジャイ市水道事業体技術職員 20 名、局長、ビンジャ

イ市長及び副市長

成果と課題: 漏水探索と無収水削減の重要性が理解された。

漏水機材を保有していないため機材購入を検討中

2014 年 7 月 1 日~4 日

JICA 横浜

The 3rd Executive Forum for

Enhancing Sustainability of Urban

Water Service in Asian Region

セミナー目的:インドネシア国水道事業体が今後実施しなければならな

い、水道事業経営、無収水削減対策、水道施設の維持管

理、水質管理等について習得し、事業に反映させる

参 加 者 :公共事業所部長、水道協会会長 PDAM Tirtanadi 局長、ス

ラバヤ副局長、その他 2 名

成果と課題: 自国の問題を提起し解決の手段を見出すことができた。

今後どのようにサポートしていくかが課題

2015 年 2 月 24 日

ジャカルタ市公共事業省

PERPAMSI-JWWA, PU-PERA

Joint Seminar on LCC Reduction

Challenges for PDAMs System

Development in Indonesia

セミナー目的:生涯維持管理コスト削減の観点から見た水道局の運営に

ついて意見交換する

参 加 者 :各水道事業体 38 名、及び水道事業に関連する日系企業

23 名、JICA4 名、JETRO1 名、その他 5 名

成果と課題: PVC 管と HDP/DIP 管φ75・100・150mm について、新

設工事費用及び維持管理費用の比較を行った。漏水調査

機器を効果的に取り入れ無収水を抑制し、初期投資額は

大きいが維持管理コストが低く耐用年数が長い HDP へ

徐々に更新することが望ましい点を説明。無収水削減対

策に PDAM がどの程度予算をつけるかが課題。

日系在インドネシア企業の参加者リストをもとにアプ

ローチし、本事業後のインドネシア向け機材販売を念頭

に足がかりをつけていく予定

2015 年 2 月 26 日

バンドン市水道公社

漏水探索技術/無収水対策

セミナー目的:従来より所有の漏水探索機と今回の提案調査機器との違

いを説明し、機材導入効果について理解を深め今後の購

入につなげる。

参 加 者 :バンドン市水道公社幹部職員

成果と課題: 同市での提案製品の導入時期や取引方法については未定

だが漏水調査機器の見積をバンドン市へ提出済。

103

(2)事業目的の達成状況

第 1 次~第 4 次漏水調査結果と無収水率推移

①無収水率の確認

国際水道協会では Water balance 表(表 3-73 参照)を使用して無収水削減率の計算を行っている。

途上国では浄水場で生産した浄水量を 100%にして、一般市民が使用した水道量の料金を支払っ

た金額の差を無収水とし計上し、その割合を無収水率という。

無収水量はそれぞれ次の方法で割り出される 1.漏水量:使用料の極端に少ない夜間最小流量測定により計測された流量。 2.違法接続水量:実際の水量の把握は困難なため漏水量と組み合わせる。DMA が完全に構築

され全給水区域で夜間最小流量測定を通して基礎漏水量の算定が可能になれば、漏水量と

組み合わせた違法水量から基礎漏水量を差し引くことにより算出できる。

3.メーター不感水量:設置水道メーターを各経過年度、製造会社、地域ごとに各 5 個ずつ抽

出し、試験室にてメーター器差の試験を行い、各メーター器差1を算出し水道メーター不感

水量を算出する。

4.水道区事業用水量:通常毎年計算している水量を使用する。

5.料金支払い不可能水量:前年度の回収不可能金を使用し、水道収入に対する比率を計上す

る。

本事業の目的は PVC 管に特化した漏水調査機器の有効性の検証であったので、無収水率につ

いては漏水量に着目し、他の項目については今回分析調査を行っていない。

無収水の中でも漏水は日本国内でも全体の半分を占めていることから、水道事業体にとって一

番大きな水量であるといえる。地上漏水・地下漏水を早期に発見して早期に修理することで無収

水率を大幅に下げることが出来るので、漏水調査計画書を作成して 2 年から 3 年サイクルで水道

施設の漏水調査を実施する必要がある。

しかしながら Belawan のように 1985 年に敷設した PVC 配管(寿命 20~25 年)がいまだに使用さ

れているなど、既に更新時期を経過している地域もみられ、老朽管を永久的に使用していると漏

水箇所を修理しても直ぐに次の継手の亀裂等から漏水が発生する危険があるので、老朽管更新計

画も作成し計画的に更新していくことも重要である。

1メータ器差:試験流速を 30/60/120/800L/h、定格流量を 10L/20L/40L/100Lとして試験器から水を流し、定格流量と各水道メータのカウント数を比較し各々の流速における計測誤差(器差)を算出する。

104

図 3-69 パーマー社製相

関式漏水探索機

表 3-73 IWA(International Water Association) Water balance

ア.第 1 回漏水調査の検証

表 3-74 第 1 回漏水調査地域の漏水量と無収水率削減幅

BRANCH OFFICE 給水

戸数

漏水

検出

ヶ所

漏水量

合計

ℓ/分

漏水量

㎥/月

調査前無

収水量

㎥/月

漏水

量割

調査前

無収水

率 1 月

調査後無

収水率 12

無収水

率削減

Amplas

Comp Riviera 449 2 67.8 2,930 4,963 59% 33.05% 16.96% 16.09%

Medan Denai

Komp Menteng 630 13 44.4 1,929 7,177 27% 32.81% 24.26% 8.55%

Sunggal

Comp Graha Sunggal 265 0 0 0 1,830 0% 31.20% (26.21%) -

Delitua

Comp Putri Deli 261 2 12.4 533 2,037 26% 28.89% 22.83% 6.06%

Medan Kota

Comp Malibu 500 2 97.2 4,200 12,066 35% 34.62% 25.95% 8.67.%

表 3-74 は第 1 回漏水調査時 2014 年 1 月のデータと調査後の 2014

年 12 月の無収水率データを比較したものである。検出した漏水箇所

の漏水量の割合に応じるように無収水率が削減されていることがわ

かる。

この中で突出しているのが Amplas/Comp Riviera 地区の大きな

漏水箇所検出(2 ヶ所で毎分 80ℓ)で、5 年前からステップテストに

より漏水があることが指摘されながら、PDAMTirtanadi が従来よ

り保有しているフジテコム社製 LSP-1.5 音聴棒及びアナログ式漏水探知機 HG-10A、イギリス

パーマー社製相関式漏水探索機(図 3-69 参照)では位置を特定できず放置されていた漏水であ

105

った。

MedanDenai/Comp Menteng 地区についてはステップテストの結果(3.7ℓ/秒=222ℓ/分)の約 8

割を解決している。一方 Delitua/Comp Putri Deli ではステップテスト結果(2.8ℓ/秒=168ℓ/分)

からすると検出量が 20ℓ/分とまだ漏水箇所が残されている可能性がある。Medan Kota/Comp

Malibu についても全体の無収水量からすると、今後もさらなる調査が必要と思われる。なお、

Sunggal/Comp Graba Sunggal 地区については漏水ヶ所が見つからなかったにもかかわらず無収

水率が約半分になっている。これは水道メーター交換等他の要因が考えられるため、調査が必

要である。

イ.第 2 回漏水調査の検証

表 3-75 第 2 回漏水調査地域の漏水量と無収水率削減幅

BRANCH OFFICE 給水

戸数

漏水

検出

ヶ所

漏水量

合計

ℓ/分

漏水量

㎥/月

調査前無

収水量

㎥/月

漏水量

割合

調査前

無収水

率 5 月

調査後

無収水

率 12 月

無収水

率削減

Cemara

Cemara Hijau(2004) 1002 1 200 8,780 12,919 68% 34.47% 32.09% 2.38%

Cemara

Cemara Asri(2004) 3460 6 653.7 28.240 54,565 52% 36.76% 20.48% 16.28%

Diski

Padang Hijau(2004) 385 2 80.5 3,476 4,356 80% 38.86% 14.22% 24.64%

Padang Bulan

Bukit Johor Mas(2007) 255 9 15 670 1,981 33% 23.39% 17.76% 5.63%

Tuasan

Komplek Vetpur(1994) 309 1 10 440 2,355 19% 23.54% 19.21% 4.33%

Diski

Bumi Asri 842 1 100 4,390 9,658 45% 32.88% 16.71% 16.17%

Medan Labuhan

Kpum 700 12 45 1,975 5,895 34% 33.08% 22.36% 10.72%

Belawan

Kampung Nelayan 1077 18 32 1,425 12,066 12% 34.62% 18.57% 16.05%

Medan Kota

Caban Disk

明 6 133 5,850 不明 - 不明 不明 -

表 3-75 は第 2 回漏水調査前 2014 年 5 月のデータと調査後の 2014 年 12 月の無収水率データ

を比較したものである。この結果で顕著なのは Diski/Padang Hijau の無収水率が 38.86%から

14.22%へ約 24.64%削減したことである。配水管の地下漏水 2 ヶ所と検出数は少ないものの流

出量の多い漏水で、このような漏水は特に配管に音が伝わりにくく検出が難しい。AS610 の水

相関と D305 のコンビネーションにより的確に検出できた。

また、水位が高く調査環境が悪い Medan Labuhan/Kpum 及び Belawan/Kampung Nelayan につ

106

いては検出合計 30 ヶ所中 19 ヶ所が地下漏水であった。AS610 を小間隔で使用しながら小型音

聴式漏水探索機及び小型軽量漏水探索で音聴確認するという方式で確実に結果を出すことが

できた。一方、無収水率が高いにもかかわらず漏水箇所が検出されなかった Cemara Hijau 地区

に関しては、違法接続の可能性も考えられるため、ステップテストを行ったうえで再度調査す

ることが望ましい。

ウ.第 3 回漏水調査の検証

表 3-76 第 3 回漏水調査地域の漏水量と無収水率削減幅

BRANCH OFFICE 給水

戸数

漏水

検出

ヶ所

漏水量

合計

ℓ/分

漏水量

㎥/月

調査前無

収水量

㎥/月

漏水量

割合

調査前

無収水

率 8 月

調査後

無収水

率 12 月

無収水

率削減

HM Yamin

Pukat(2008) 150 4 39 1680 3,279 51% 49.69% 32.79% 16.9%

Medan Kota

DMA Bogor(不明) 320 1 84.4 3645 10,608 62% 66.28% 41.22% 25.06%

Padang Bulan

Citra Garden(2004) 440 4 49 2120 6,587 32% 41.75% 28.53% 13.22%

Deli Tua

Tani Bersaudara(2008) 523 4 775.5 33500 45,099 74% 81.83% 38.04% 43.79%

Sunggal

Tasbi I(2004) 2287 9 750.1 32405 57,327 57% 45.57% 25.97% 19.6%

Sei Agul

Amir Hamzah(1992) 700 2 19.4 835 8,298 3% 30.15% 27.36% 2.79%

HM Yamin 支所 Pukat・Medan Kota 支所 Bogor・Deli Tua 支所 Tani Bersaudara ともに、発見

された漏水箇所は 1~3 ヶ所と多くはないが、それぞれ漏水量が大きい地下漏水であったため、

調査後の無収水率に大きく差が出た。いかに地下漏水検出の技術が重要であるか物語る結果で

ある。

107

エ.漏水調査全体の検証

1 回~第 4 回までの漏水調査での漏水発見箇所と漏水量は次の通りである。

表 3-77 全調査地域の漏水検出数及び検出漏水量

調査結果 漏水検出数

1st 2nd 3rd 4th Total

配水管 6 17 10 5 38

地上漏水 1 0 3 0 4

地下漏水 5 17 7 5 34

給水管 13 39 14 13 79

地上漏水 7 22 8 5 42

地下漏水 6 17 6 8 37

合計 19 56 24 18 117

表 3-78 全調査地域の検出漏水量

調査結果 検出漏水量

1st 2nd 3rd 4th Total

配水管 8,333 49,179 70,121 32,400 160,033

地上漏水 700 0 12,000 0 12,700

地下漏水 7,633 49,179 58,121 32,400 147,334

給水管 1,248 6,847 4,069 734 12,899

地上漏水 285 4,778 1,503 389 6,955

地下漏水 963 2,069 2,566 346 5,944

合計 9,582 56,026 74,190 33,134 172,932

表 3-77 にある通り、4 回にわたる調査で検出した配水管漏水箇所は地上 4 ヶ所・地下 34 ヶ

所の計 38 ヶ所、給水管漏水箇所は地上 42 ヶ所・地下 37 ヶ所の計 79 ヶ所、合計全 117 ヶ所の

漏水箇所を検出した。また、検出箇所からの漏水量を月単位で換算すると配水管では約 160,000

㎥、給水管では約 12,900 ㎥、合計約 173,000 ㎥/月に及んだ。この結果からもわかるとおり、

108

従来の漏水探索機では検出できなかった地下漏水の比重が地上漏水に比べて 10 倍と非常に大

きい。地上漏水は目視で確認できる場合もあり比較的簡単に見つけることができるが、配水管

漏水は PVC 管のソケット抜けで音が伝わりにくい漏水が多いため従来の調査機器による調査

では発見できないまま放置されていた箇所もあった。今回提案の漏水調査機器を導入すること

により、漏水損失を飛躍的に削減することが可能であることが実証された。

PDAM Tirtanadi では、1 ㎥あたりの水道料金を約 32 円と設定している。この料金設定をベ

ースに上記漏水検出量(173,000 ㎥/月)を料金換算すると 5,536,000 円/月に相当する。今回漏

水調査の作業日数は 42 日間で、毎月約 5,536,000 円相当の無収水防止に貢献したこととなる。

今回の漏水調査結果をふまえ、5,536,000 円/月相当の無収水削減に必要となる漏水調査のコ

ストについて、以下のとおり分析した。

まず、今回導入した漏水調査機器については合計で 13,520,000 円であり漏水調査を実施した

作業員の人件費については、PDAM Tirtanadi へのヒアリングから、単価を約 5 万円/月(イン

ドネシアの平均月収は 24,400 円)とし、管理費及び諸経費を概算で人件費の 20%と設定。そ

の他、修理部材はタイヤチューブを利用しておりほとんど経費としてはかからないのでここで

の計上は不要であるため、これら条件設定から今回の漏水調査にかかった機材費及び費用を概

算で算出した場合、以下ボックスのとおりである。

①漏水調査必要経費(漏水調査作業日数:42 日間、作業員数:25 名)

機材投入額 13,520,000 円

人件費 25 名(修理作業員含む) 25 名×@50,000 円/20×42 日 2,625,000 円

管理費及び諸経費概算@2,625,000 円×20% 525,000 円

漏水調査費用及び機材費合計 16,670,000 円

②173,000 ㎥/月が生み出す収益

(水道利用料金)5,536,000 -(浄水コスト@9.82 円/㎥)1,698,860 円 =3,837,140 円

③費用対効果(①÷②)

16,670,000 ÷ 3,837,140 =4.3 ヶ月

つまり、漏水調査機器の新規購入費用及び 42 日間の漏水調査にかかる人件費等も含めて

16,670,000 円に費用が必要となるが、上記のとおり、単純に計算すると約 5 ヶ月間で回収が可

能といえる。他方で、必要経費の算出内容からもわかるとおり、機材購入費が大部分を占める

ため、漏水調査を継続して実施し漏水量を削減していくことで、かかる費用も相対的に低減し

ていくと考えられるが、より精緻な分析にはより長期かつ広範囲な調査等が必要となるので、

本事業では参考までに上記の概算額をベースとして考えることとする。

一方で、漏水問題が徐々に改善され水圧が現在より上昇した場合、修理方法や配管敷設が正

しく施工されないままであると、不完全に施工された弱い箇所で漏水が再発する恐れがある。

従って、漏水を検出するだけでなく、正しい修理・施工方法を徹底することも重要である。

109

②機材の検証

ア.樹脂管用漏水探知機 [D305]

●操作が簡単、音とメーターの強弱で反応を判断するため経験の浅い職員でも使いこなすこと

ができる。

●配管ルートの確認に有効である。

●設置箇所から約 5m 以上離れた所に良好のアースを取ることが重要である。土壌が乾いてい

る場合は音聴棒をアース棒として使用し深いアースをとる、さらに乾燥している場合はアー

ス廻りに差し水をするとよい。

●配管分岐箇所がある場合漏水箇所と同じように減衰するため区別が難しい。今後図面の整備

が必要である。

●雨天時・地下水位が高い・バルブが浸水している状況では送信機設置箇所から電磁波が周囲

に拡散してしまい探索が阻害される。

●電話・電気の配線が地上より約 3m 程度と低く配線されている地域、金網入りブロック舗装、

鉄柵が近くにある場合、電磁波は水より金属に流れやすいためこのような設備に誘導電流が

流れ、探索が阻害される。

●水位の低い乾燥地の場合は金属製音聴棒を深く打ち込み深いアースをとると反応がよくな

る。

●AS610 及びポケットフォンと併用することにより、探索結果を複合的に把握できるため漏水

箇所の特定精度があがる。

図 3-70 D305 の探索原理

イ.相関式漏水探知機 [AQUASCAN 610]及びハイドロフォン

●配水管の漏水調査に非常に効果的である。

●水圧の低い DMA では、メーターもしくは最寄りの水道蛇口部分に水中相関であるハイドロ

フォンを接続して併用することにより、精度の高い漏水検出が行える他、違法接続箇所の特

定も可能である。

●AS 610 の 2 点間の距離計測、センサー設置、解析機へのデータ入力には約 5 分から 10 分か

かる。仕切弁の間隔が 1km に及ぶ場合、解析機へのデータ入力等に時間がかかるが、セン

サーアンテナを延長することにより状況は改善する。

110

図 3-71 AS610+D305+ポケットフォンを併用した漏水調査

図 3-72 AS610バルブ渦流の波形

●現在は仕切弁間隔が 500m以上、1km 以内に 1 ヶ所設置されている状況である。維持管理を

考慮した仕切弁設置が今後の課題として必要である。

※センサーを設置しているバルブの直上で出ている山の字の形は、典型的なバルブ半開き状

態によっておこる渦流の波形である。バルブ渦流が非常に大きなノイズを発するため本来の漏

水地点の波形が消滅することがある。この場合はバルブを全開にするなどして渦流の発生を止

めてから相関調査をする必要がある。なお、ソケット抜けによる漏水も同じ形の波形である。

ウ.D305・AS610・ST04 による住宅地漏水調査例

図 3-74 は代表的な住宅地の漏水調査のイメージ図である。機材をチームワークで複合的に

活用することにより、効率の良い調査を行うことができた。水道水の圧が低いため、民家には

上階へ水を送水するためのポンプを自前で設置している場合が少なくない。

a.D305 及び AS610 センサー(+ハイドロフォン)はメーター・水栓(民家借用)・露出配管

(金属管)に設置する。

b.AS610 にて相関調査、同時に D305 により管路調査を行う。AS610 波形反応箇所を重点

的に管路上の調査する。

c.小型音聴式漏水探索器 ST04 にて家の引込み・メーター付近の音聴調査(使用水の有無・

違法接続の有無確認)

d.ST04 及び小型軽量漏水探索機により路上を音聴調査(漏水の有無確認)

111

図 3-73 D305・AS610・音聴式漏水探索器を併用した漏水調査イメージ

波形がピークを示した地点をステットホン・ポケットフォンで音聴調査

③使用機器の有効性の検証

今回、民間提案型普及・実証事業で実証した漏水調査機器類について、PDAM Tirtanadi 漏水管

理課職員と各支部の漏水調査職員が約 1 年に渡り、使用した感想、当地での使用における機器本

体、ならびに、その解析システムに関する改善や要望について、聞き取り調査を行った。また、

別途漏水調査機器を購入する場合の機器構成を検討した。

PDAM Tirtanadi による漏水調査機材の評価

実証事業チームが持ち込んだ漏水調査機器及び超音波流量計、更には実証事業チーム及び

PDAM Tirtanadi が自主製作した音聴棒について、PDAM Tirtanadi は次のように評価した。

112

表 3-79 漏水調査機材の評価(高い 5~低い 1)

注 1:正確性は漏水調査で特定した漏水場所と実際の漏水場所の差が小さければ正確性

が高い

注 2:操作性は機材の操作感や使い勝手が良ければ操作性が高い

ア.樹脂管用漏水探知機 [D305]

D305 に対する PDAM Tirtanadi のユーザーレビューは以下のとおりである。

・配水本管の仕切弁に送信機を設置して、地盤の地下水位が低い場合、音調棒を深く

打ち込みアースを取って漏水調査を実施した。給水管の分岐箇所で送信機からの信

号が減衰するため漏水箇所の検出にはあまり使えなかった

・調査対象の配水本管の位置をうまく特定できないことがあった。

・送信機の距離を短くして、2 台の送信機をそれぞれ探索範囲の仕切弁もしくは給水

管の水道メータの両端に設置して、両側から漏水調査を実施した結果、給水管の位

置、漏水箇所が確実に検出することができた。

・パイプ・ロケータとしては有効に活用できる。

・水圧の低い DMA 地区では、水道メータ以降にポンプを設置して急速に水道水を高

層部に圧送している家庭があり、送信機の電磁場が阻害される場合があった。

・AQUASCAN610・D305・ポケットフォンを併用して漏水調査を行った場合、漏水箇

所の特定、違法接続管の発見に充分活用できることを理解した。

PDAM Tirtanadi では PVC 管が多く使用されており、水圧も非常に低いため、D305 が有効

に機能することを期待した。当初は片面に送信機を設置して漏水調査を実施した時には、高

い評価は得られなかったが、探索範囲の両端に送信機を設置して両方向から漏水調査を実施

113

した場合、確実に調査ができるようになり評価が高くなった。今後は、維持管理を考慮した

仕切弁の設置を確実に実施することにより樹脂管用漏水探知機は将来的にはD305を有効に

活用できると考えている。特に樹脂管を使用している途上国では大きく貢献することが期待

できる。D305 は特にパイプ・ロケータとして非常に有効に活用できる。

本事業を通じ 6 台導入しており、現数で今後有効活用できると評価した。

イ.相関式漏水探知機 [アクアスキャン(AS) 610](ハイドロフォン含む)

AS610 に対する PDAM Tirtanadi のユーザーレビューは以下のとおりである。

・分析結果がすぐに画面に表示されるため、効率よく漏水調査ができる機材である。

・漏水の有無が分からない路線において、漏水がないことも画面で確認できるため、

業務上他の職員に説明がしやすい。

・漏水量が少ない場合には、相関機の分析結果を解釈することが難しい場合がある。

・特に夜間漏水調査を行う場合非常に良い。

・漏水調査結果を保存できるため、データの共有・報告書作成、各支部へデータを送

信して情報を共有することにより、状況の説明が明確になった。

・現在、1 セットしかないので日常のメンテナンス方法や長期に使用するための維持

管理方法を技術移転していただきたい。

評価表によると AS610 の PDAM Tirtanadi の評価は高かった。PDAM Tirtanadi では、従来

漏水調査というと地上漏水を主体としていた。今回、地下漏水調査でも口径・管の延長、管

種を入力して早急に解析が出来ることが高い評価に結びついたと思われる。

本漏水調査機器を導入することにより 1 回の漏水調査範囲が飛躍的に広がったことは、本

器導入によるところが大きく、効率的な漏水調査という観点では大きな成果に繋がった。

また、今回の実証事業では、漏水解析に時間をかけて効率的な漏水調査の検討・実践を試

みたこと、OJT 方式による機器の使用方法についての技術移転も同時に実施したことから、

通常の調査業務に比べると時間がかかった。

AS610 の維持管理方法については、25 日午後から 26 日午前中に漏水管理課職員に対して

詳細にわたり説明を行った。

今後も継続的に効率的な漏水調査を実施するためには、本漏水調査機器は漏水管理課及び

漏水管理課職員によるデモンストレーションのための持ち出しがあるため、各支部で使用で

きるよう、合計 3 台必要であると評価する。

114

ウ.音聴式漏水探知機 [ポケットフォン]

ポケットフォンに対する PDAM Tirtanadi のユーザーレビューは以下のとおりである。

・ピンポイントで漏水を発見する上では、非常に精度が高く、信頼できる機材である。

・正確な漏水位置を特定できるとともに、様々な管種、様々な漏水音に対応できるた

め、漏水調査において有効利用できる機材である。

・特に D305 及び相関式漏水探知機 AS 610 と組み合わせることで、非常に効率の良

い確実な漏水調査が実現できる。(AS 610 の周波数《PVC 管:300Hz~500Hz》に

合わせてポケットフォンを 400Hz に設定して同時に調査することにより、漏水ヶ

所を特定する際のトリプルチェックが可能)

・管内水圧が低く漏水音が小さい場合は、ピンポイントで特定することは難しい。

・漏水調査を行った後、調査個所の測定データを 8 個まで保存できるため、漏水ヶ所

の再確認に非常に便利である。

PDAM Tirtanadi では、樹脂管を多く使用しているので、この機器の使用頻度は高かった。

ポケットフォンは従来型の音聴式漏水調査機材を改良してノイズカット方式、周波数の変更

可能、軽量型でセンサー感度を良くした音聴式漏水探知機であり、AS610・D305 を用いて

面的・線的に漏水位置を特定した後、最終的な漏水箇所特定のために本機を使用した。ポケ

ットフォン本来の使用方法に合致している上、高い精度が得られているため高評価であった。

本機は最終的な漏水位置を特定する上で非常に有効であり、各自持ち歩き使用するため、

今回の導入は 2 台であったが、漏水調査範囲を拡大するためには合計 4 台は必要である。

エ.小型音聴式漏水探索器 ST04(ステットフォン)

小型音聴式漏水探索器 ST04(ステットフォン)に対する PDAM Tirtanadi のユーザーレビ

ューは以下のとおりである。

・給水管部の漏水調査において、給水管の金属部分に当てて漏水音の確認調査を行う

が、操作が簡単で我々でも簡単に調査が出来た。

・操作時にヘッドフォンの差し込み位置の確認をしないで使ったこともある。今後は

再確認しながら使用していく。調査精度は高い。

・交通量の多い地区では、漏水音のデータを保存して再確認することができ有効であ

る。

・漏水調査を初めて経験する職員でも簡単に調査が出来るので、モチベーションの向

上にも大いに活用できる。

小型音聴式漏水探索器 ST04(ステットフォン)は、PDAM Tirtanadi 職員の研修でも使用

できるので、職員間での使用頻度も高くなることが予想される。漏水管理課で維持管理につ

いての丁寧な説明を行えば、長期間使用できる。

10 セット導入されているので、追加導入の要望はなかった。

オ.水素式高性能漏水探索器バリオテック 460

115

水素式高性能漏水探索器バリオテック 460 に対する PDAM Tirtanadi のユーザーレビュー

は以下のとおりである。

・水道メータ以降の給水管は、各お客様が管理する家の中のため漏水は見つけること

が出来なかった、窒素 95%水素 5%の混合ガスを給水管内部に注入することにより

簡単に漏水箇所を特定することができたので、今後お客様からの要望に応じること

が可能である。PDAM Tirtanadi として有効利用できる。

・操作は、簡単であるが、メダン市内でガスを購入できる会社が少ないので使用頻度

が少なくなる。

・ガスを購入する場合、高価であるので一般の家庭宅から調査費用を徴収できるか心

配である。

今回 2 ㎥で 2 軒調査を行ったが、技術移転しながらであったためガスは通常より多めに使

用した。国内の実績では 2 ㎥であれば 4 軒調査ができる。今回 2 ㎥で 1,000,000Rp(約 10,000

円)かかっている(ボンベ賃貸料は含まず)ので、1 軒あたり 2,500 円のガス代が必要である。

水道料金は 3,200Rp(約 32 円)/㎥なので、水道水量に換算すると約 80 ㎥に値する。

漏水箇所検出の確率が高く効果がある反面、混合ガスについて入手先や費用といったガス

の供給について課題が残る。どんな地域でも有効に活用できるような機材開発を検討したい。

またこの探索手法は、大量のガスの調達及び仕切弁整備により配管の閉鎖領域を確保する

といった課題を克服できれば、時間給水の地域や音聴も D305 も難しい調査環境下における

漏水調査方法として給配水管への適用が多いに期待できるところである。

カ.ポータブル超音波流量計 [Flexim F601]

Flexim F601 に対する PDAM Tirtanadi のユーザーレビューは以下のとおりである。

・管路に関する情報が正確であれば、非常に正確な流量を取得できる。

・流量計や親メータの精度や能力を確認できる良い機材である。

・正しく設置すれば、他の流量計と同等のデータを取得できるが、現場によっては本

流量計を正しく設置するのは非常に難しい。

・DMA 区域を作成する中では、DMA 区域内の流量を確実に把握できるので有効利用

できる。

・この超音波流量計は、10 万個のデータを保存することが可能なため、24 時間のデ

ータを取得し解析結果を有効利用することができる。

Flexim F601 は純粋な漏水調査機器ではないが、無収水削減を進める上で、正確な水量を

把握するために必要なものである。測定値の精度については高い評価を得ているが、本機を

正しく設置することは容易ではない。当初は設置までに時間を要し、うまくデータを取得で

きなかったが、その後何回も流量測定を重ねる中で熟知し、短時間で機材を設置してデータ

を取得できるようになった。

今後、多数の DMA 区域を構築する中で、親メーターの精度確認や、親メーターの設置が

困難な場所での流量測定など、有効に活用できるものと考えられる。本機は現在 1 台導入さ

れているが、DMA 区域形成時の流入量測定で必要不可欠な機器であるので合計 2 台は必要

である。

116

キ.高精度デジタル圧力計(日本製)KDM30

高精度デジタル圧力計 KDM30 に対する PDAM Tirtanadi のユーザーレビューは以下のと

おりである。

・DMA 区域内の漏水調査を実施する前に、水圧が確認できるので有効利用できる。

・今後、夏場の水道使用量の多い時期における水圧調査に活用できる。プロジェクト

チームから要請にあった水圧分布図面作成でも有効利用できる。

高精度デジタル圧力計は、重要なブロック化された区域、DMA 化された地域内での水圧

調査に活用した。この圧力計で計測した結果に基づき漏水調査機器や手法を選定する場合に

も有効である。横浜市水道局では、夏季水圧調査を実施して水圧分布図面を作成して配水管

網形成時の管網計算、漏水調査計画書作成時も有効利用されている。今後 PDAM Tirtanadi

でも管網計算時や漏水調査計画書作成時の水圧測定が重要になるので、今後も引き続き有効

利用されるものである。

ク.音聴棒

音聴棒は、横浜市水道局で使用した経験があり、はじめに現地で 2 本製作し、利用方法に

ついて説明の上調査機器とあわせて活用した。その後、この音調棒の利用価値が評価されて、

PDAM Tirtanadi が 10 本の音調棒を自主製作したものである。PDAM Tirtanadi のユーザーレ

ビューは以下のとおりである。

・漏水の発見と漏水位置の確認をする上で、最良の道具である。

・特に水道メーター露出部などに充て、大まかな漏水個所の発見に有効である。

・配水管の位置確認にも有効利用できる。

・D305 のアース棒として有効利用できる。

・弁室内に土砂が入っている場合、土砂を取り除くのに有効活用できる。

横浜市水道局では漏水調査を実施する場合、職員が一人 1 本持って給水管からの漏水音の

確認、仕切弁・消火栓等の金属部分に音調棒を当てて、漏水の有無、最終的な漏水位置の特

定の際に用いている。音の聞き分けには熟練を必要とするが、非常に簡易に製作でき、原理

的にベーシックな道具であるため、今後、PDAM Tirtanadi で活用されることを期待している。

④配水管維持管理に関する技術移転

現在 PDAM Tirtanadi が維持管理しているメダン市内では 64 ヶ所の DMA 区域に加え、未整備

の区域がある。未整備区域については、配水管網整備を行いながら DMA 構築していく計画を持

っている。漏水調査計画については、DMA 区域、未整備区域合わせて約 100 の DMA 構築を計

画している。

今回の実証事業では、DMA 区域 21 ヶ所の漏水調査を通して漏水調査機器のノウハウを技術移

転することができた。今後の漏水調査計画書作成では、PDAM Tirtanadi が管理している地域を 3

年間で一巡することについて漏水管理課長と協議し承認を得た。

117

3 年間の漏水調査計画書を作成するにあたり、次の事項を順守するよう指導した。

・ 配水管・給水管を管理している支社から漏水調査実施の優先順位付けするための基礎資料を

取得すること。

・ 基礎資料には、流入点、流入量、仕切弁数、配水管口径、管種、延長、水道メータ-個数、

建設年度、過去の漏水発生箇所数、漏水量(概算水量でも可)を図面に記載する。

・ 漏水管理課は、基礎資料に基づき、1 年目:30DMA、2 年目:30DMA、3 年目:40DMA の

漏水箇所を選定のうえ漏水調査を実施する。

・ 漏水調査終了後、漏水調査報告書を作成する。(添付資料③参照)

・ DMA 区域の図面に配水管・給水管別に漏水箇所を記入し図示する。

・ 漏水調査の年間結果を一覧表として作成し報告書にまとめる。

また、老朽管更新計画書については、次の項目を重点に更新計画を立てるよう漏水管理課長、

計画課長と協議し了解を得た。

・ 漏水が多く発生している配水管

・ 建設年度が古く、配水管の継手部分からの漏水が発生している配水管

・ 給水人口の増加に伴い給水不良地区がある場合:配水管網計算の結果、適正でないと判断さ

れる口径の配水管

・ PDAM Tirtanadi の送水・配水管のうち、管網計算で口径が小さいと判断される送水・配水管

本事業を通じて、漏水調査計画書の作成や漏水調査機器の取扱方法、漏水調査方法、漏水箇所

の修理方法、無収水削減対策手法(ステップテスト、夜間最小流量計測、流量計計測、水圧測定

手法)、無収水削減計画の作成、老朽管更新計画書の作成等、無収水削減対策について総合的に

技術移転を行ったが、PDAM Tirtanadi の総合的評価として技術移転の達成度合は 80%を超える評

価であった。特に漏水調査機器の維持管理、漏水調査方法に関しては、すでに PDAM Tirtanadi

職員自ら積極的に漏水調査を実践する等の成果を上げている。

118

⑤事業の成果

ア.漏水調査機器の実証及び普及:本事業期間中に実施したセミナー等を通して、インドネシア

における本調査機器の有効性を他の水道事業体等に対しても周知することができた。本事業

後もあわせて、公共事業省及びインドネシア水道協会と協力しつつ普及活動を展開する予定

である。

イ.安定的・安全な水の供給の実現:今回の漏水調査だけでも無収水率を約 17%削減した。水質

改善・水圧確保を実現するためには、更なる漏水調査の実施に加え、適切かつ計画的な修理・

施工による老朽管の更新が必要である。

ウ.PDAM Tirtanadi の経営安定化:今回の漏水調査を通じ 173,000 ㎥/月相当の漏水を削減したこ

とで、水道料金として今後 5 百万円/月相当の無収水削減に貢献することとなる。本事業では、

PDAM Tirtanadi の経営状況にどのように反映されるかまで確認できなかったので、本事業後

も情報収集し分析をする予定である。

エ.PDAM Tirtanadi 職員に対する無収水対策にかかる技術移転及び意識向上:第 4 回漏水調査終

了後も職員のみで大きな地下漏水を D305 と AS610 により検出したとの報告を受け、技術移

転が確実に行われたことが確認できた。また、ジャカルタで行われた LCC セミナーにおい

ても、他の水道事業体と比較して意欲的な姿が見られた。熟練差が求められる従来の音聴式

に比べ初心者でも検出しやすい音聴式漏水探索器や高い無収水削減効果が得られる D305 及

び AS610 による地下漏水の検出によって、同職員の意識は本事業開始時に比べ大きく向上し

たといえる。

図 3-74 メダン市の漏水管理図

119

(3)開発課題解決の観点からみた貢献

第 1 次から第 4 次までの現地調査の結果、漏水調査対象 DMA 全体の無収水率は調査前の 41.82%か

ら 24.45%と約 17%減少する等、本事業はインドネシアの無収水削減対策に対し一定程度貢献しうる

ことが証明できた。また、PDAM Tirtanadi 職員に対する技術移転に関しても、本事業を通じ無収水削

減対策全般について行ってきたが、その中でも特に漏水調査については技術が定着してきている。第

3、4 次現地調査においては PDAM Tirtanadi 職員独自で漏水箇所を検出するなど着実に技術が向上して

いると言える。本事業を通じ、特に漏水調査にかかる技術移転は一定程度達成されたことから、ここ

で培った漏水調査機器・技術を活用し、本事業後も PDAM Tirtanadi 自身で漏水調査の実施計画立案か

ら実践までを継続していくことにより、2015 年中期投資計画にある無収水率の目標値 22%の達成も可

能であると考えられる。

他方で、前述のように PDAM Tirtanadi では DMA の構築がまだ 64 区域に留まっており、対象エリ

アにおける全体的な無収水率について完全には把握できていない状況であり、今後計画的に無収水を

削減していくためにも、まずは DMA 未構築区域について早急に DMA 構築を進め、可及的速やかに対

象エリア全体的な無収水率を正確に把握・分析することが望まれる。

このように、本事業ではメダン市の都市給水分野における課題の中でも、特に漏水対策という限定

された側面から実証活動を行い、パイロット的に一部のDMAのみを対象に活動した結果ではあるが、

今回提案機材を活用した漏水調査が無収水削減に確実に貢献することを実証することができた。また、

あくまで概算ではあるが一定程度の水道収益の増加が見込まれるとの分析結果も導かれた。

これまでの漏水調査機器では全く検出できなかった漏水箇所を発見できる等、本事業を通じて導か

れた結果は実証成果として意義ある内容である一方で、本事業期間中にはインドネシア国内で提案機

材等が普及される段階まで至っておらず、同国の開発課題解決の観点からは未だ途上段階にある。

本事業後の活動・事業になるが、本事業で得られた成果を踏まえ、また同国内での普及の足掛かり

を築くことができたことから、引き続き PDAM Tirtanadi やインドネシア水道協会等と協力し、効果的

な漏水調査による無収水対策及び適切な維持管理について普及・拡大していく予定である。特に適切

な漏水調査により水道事業体の収益増加が見込まれることから、その増収益による計画的な老朽管更

新や故障水道メーター交換といった維持管理体制お改善を推進する等、健全経営に向けた好循環を生

み出すきっかけとなると考えられる。このような好循環が普及・定着していくことで、PDAM Tirtanadi

をはじめとして、インドネシアにおける給水事情が大きく改善していくことが大いに期待される。

(4)今後の課題と対応策

①商業地区における漏水調査の効率化

商業地区では配管の分岐が多く漏水箇所と分岐箇所の判別に時間を要する。今後のことも踏

まえ、配水管網図面を整備・更新し分岐箇所を事前にチェックできる体制作りが求められる。

②トレーサーガスの調達

水素式超高性能漏水探索機のためのガス調達先はメダン市内に 1 社のみ、しかもガス代金は高額

である。ガスボンベの流通網が構築されることも必要であるが、今後この手法を配水管に活用する

ことも念頭に入れると、どのような地域でも使用できるような機材の開発が必要である。

③住民との接触が難しい住宅地区

第3回漏水調査における高級住宅街であるSei Agul/Amir Hamzah地区のケースにみられるように、

住人と接触のできない地域においては宅内の止水栓の借用、調査区間内の利用を一時停止すること

120

ができないため、水道メーター周り以外の漏水探索は難しい。実際この地域では流出量の多い配水

管の漏水は検出できず検出された漏水流出量は全体の無収水量の 3%に過ぎない。商業地区でも似

たようなことが言えるが、無収水削減を含む配水管維持管理のため仕切弁整備などが必要である。

④配管敷設・修繕技術の向上

漏水箇所を発見してもその修理方法が適切でなければ再度配管が抜けて漏水する可能性がある。

断水して管を切断、もしくは水を流しながら修理を行っているのが現状である。図 3-75 は、配管修

理後の写真である。接続が不十分であると水圧がかかった時に最も弱い接続部分が抜けやすくなる。

再発防止のためには継手部分を完全に乾燥させてからの修理方法を徹底させるといった、基本的な

配管敷設技術を職員が熟知し業者へ徹底させるなど、全体的な技術の向上が必要である。

(5)事業実施後の相手国実施機関の自立的な活動継続について

漏水調査機器の有効性とその経済的効果は PDAM Tirtanadi 職員も認識しており、その操作方法も十

分習得しているようである。既に独自で漏水調査活動を自主的に行い成果に繋がっているため、トレ

ーナーズトレーニングによる技術移転が順調に行われたことが確認できる。今後さらなる意欲向上と

技術普及のために、職員の中で競争原理が働くように成果主義を取り入れることを提案し、同意を得

ている。

今後の維持管理を踏まえ、電池交換といった職員自身が行うことのできる簡単なメンテナンスにつ

いて講習した。消耗品の入手や修理依頼などがどの職員でもインドネシア語で気軽に行えるよう、い

ままで本事業に協力してきた梅田氏を現地連絡先として対応できるよう改めて契約を取り交わした。

機材が使われないまま放置されないよう周辺国のメーカーと協力してサポート体制を整えている。

また、第 4 回漏水調査時に機材の取扱方法や探索手法をビデオ撮影しており、今後ビデオ教材を作

塩ビ管修復作業でみられた問題点

×配管が濡れた状態で接着する 〇完全に水分をぬぐって接着する

×管と管を曲がって挿入する 〇双方を平行に保ちまっすぐ挿入する

×ベル管のベル側に潤滑剤を塗る 〇ゴムがめくれる原因になるのでベルでない側に塗る

×古タイヤのチューブの使用 〇施工の均一性が保たれず、耐久性にも問題あり。あくまで

も一時利用にとどめる。

図 3-75 配管修理後:斜めに接続された管

121

成する予定である。製作編集したビデオは PDAM Tirtanadiをはじめ関係機関へも配布する予定である。

なお、機材のメンテナンス及び修理問い合わせ先については次のとおりである。

表 3-80 メンテナンス問合先

現地総合窓口:Jamharil Umeda

Email:[email protected]

TEL. +62-(0)812-6036-142

(インドネシア語・英語・日本語対応)

総販売元 :Goodman Inc.

Email :[email protected]

TEL. +81-(0)45-701-5680 (英語・日本語対応)

機種名 メーカー修理送り先

樹脂管用漏水探索機 D305

高精度デジタル圧力計 KDM30

Goodman Inc.

Email:[email protected]

TEL. +81-(0)45-701-5680

相関式漏水探索機アクアスキャン 610

小型軽量漏水探索機ポケットフォン

Gutermann Pty Ltd

9 Wrights Road, Drummoyne, NSW, 2047,

Australia.

TEL .+61-2-9764- 5433

小型音聴式漏水探索機ステットホン

水素式超高性能漏水探索機 VT460

Hermann Sewerin GmbH

Robert-Bosch-Str. 3 D-33334 Gütersloh

TEL. +49-524- 934-232

超音波流量計 F601 Flexim Instruments Asia Pte Ltd

10 Toh Guan Road

TT International Tradepark #05-01A

Singapore 608838

Email: [email protected]

TEL. +65-6794-5321

(6)日本国内の地方経済・地域活性化への貢献

今回の現地業務では、弊社が提案する漏水探索機器 D305、AS610、小型軽量漏水探索機、音聴式漏

水探索機 ST04 を使用した漏水調査が水圧の低い PVC 管路で有効なことが実証できた。横浜市におい

ても給水管には PVC 管を使用しており、宅内漏水に応用することが可能で、水道修理業者で構成する

横浜市管工事協同組合に機器の販売及び調査手法を伝えることにより、地方経済に貢献ができる。ま

た同様に、日本でも全体の約 30%の地域において配水管に PVC 管やポリエチレン管などの樹脂管を

使用している。本事業で実践した漏水調査手法を用いることで、既存の漏水探索機器や手法で発見で

きなかった漏水個所を発見でき、有収率を向上させることで水道事業体の経営改善に寄与することが

できると考える。

今回、低水圧の PVC 配水管の漏水を発見した AS610、D305、小型音聴式漏水探索機、小型軽量漏

水探索 ST04 を使用した効率的・効果的な調査手法を国内の漏水調査へフィードバックしていく予定

である。