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発行 監修 ( ) 大阪精神科診療所協会

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発行 大 阪 府

監修 (社)大阪精神科診療所協会

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職場のメンタルヘルス 中小企業の皆さまへのメッセージ

●職場のメンタルヘルス対応のポイント

~大切なのは、誠意と責任ある判断です~

メンタルヘルス問題といっても、特別に身構える必要はありません。

メンタルヘルス対応の基本は、誠意の気持ちと、正しい情報に基づいた判断に

よる行動です。

具体的な対応のポイントは、

・ 医療的レベルの可能性がある人は、早めに専門家への受診を促す

・ 病名や症状は個人情報なので本人の意向を尊重する

以上の点に注意をしていただければ、一般的な問題へのアプローチと大きく

異なることはありません。

●職場のメンタルヘルス対応

~ 本 当 の 目 的 ~

メンタルヘルスマネジメントが従業員と会社双方の活力となることは、言う

までもありません。

「メンタルヘルスの知識」、「会社の安全配慮義務」、そして人道的な「配慮」

というメンタルヘルス対応への姿勢が、健康で明るく元気な職場をつくります。

従業員が精神的に健康で、そのパフォーマンスを十分に活かすことができれ

ば、それは会社の業績向上にもつながります。

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メメンンタタルルヘヘルルススククイイズズ

第1問 「うつ病」は、どちらに近い?

1.心の風邪

2.脳の機能障害

解説 「うつ病は心の風邪」というフレーズは、うつ病は誰でもかかる可能性があり、

かつ治る病気であるということを一般的に認知してもらうため広められたもので

す。しかし、このフレーズはうつ病を正しく表現していると言えません。

うつ病とは、個人的、心理的、身体的、環境的など様々な因子が関係し、苦し

んでいるうちに、脳の中のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の

働きに異常が生じてしまい、そのために症状が出現する病気と考えられています。

したがって、うつ病は「脳の機能障害に近い」ということになります。

正解 2

第2問 うつ病の時は・・・

1.気になる問題は、片付けていった方がいい

2.気になる問題があっても、棚上げしておく

解説 気にかかる問題をそのままにしておくと、そのことがストレスとなり、うつ病が

悪化してしまうように思われるかもしれません。しかし、実際には、うつ病になる

と、症状として、理解力、判断力など知的な機能が低下してしまいます。さらに、

不安も強くなり、ものごとを悲観的に考えてしまいます。そのため、健康な時のよ

うな、適切な判断ができなくなります。

うつ病になってしまったら、無理をせず、まずはゆっくり休み、治療を受けて、

体調や判断力が回復してから、大切な判断を行うようにしてください。

正解 2

第3問 従業員のメンタルヘルス不調で、会社側に、業務上の安全配慮義務違反が認め

られた場合、損害賠償の支払い義務は?

1.会社にのみに支払い義務が生じる

2.上司(管理監督者)にも支払い義務が生じる

解説 会社は、労働安全衛生法により、従業員に対し、その健康と生命を守るべく安全

配慮義務を負っています。そして、管理監督者が、その履行責任者としての義務を

負います。メンタルヘルス問題の判例でも、損害賠償の責任は、会社と管理監督者

に及ぶとされており、安全配慮義務が果たされていないと認められた場合は、両者

に損害賠償の支払い義務が発生します。

正解 2

1

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第4問 メンタルヘルス不調で休職している人の主治医から、復職可能の診断書が出ま

した。

1.主治医の判断に従わなければならないので、ただちに復職の準備を行なう

2.現場での判断を優先し、復職を見合わせることがある

解説 主治医によって作成される復職可能診断書は、通常の日常生活を送ることができ

る程度に回復した状態であること以上に、具体的な業務内容への適応を保障したも

のではありません。仕事内容、就業条件などの情報を加味したうえで、復職の最終

的判断を行うのは会社とされています。産業医が選任されている場合は、産業医の

意見を聞きながら、会社自身の責任で判断しましょう。

正解 2

第5問 部下から、「最近、気が重く仕事がはかどらない」という相談がありました。

1.病気の可能性も疑い、医師に相談するようにすすめた

2.やる気が出ていないので、様々な自己啓発やスキルアップの情報を与えた

解説 部下からこのような相談を受けると、労務管理上の指導や対応、あるいは、自分

なりのアドバイスをついしたくなるものです。しかし、メンタルヘルスが不調にな

り仕事がはかどらなくなっている場合も少なくありません。メンタルヘルス不調の

可能性がないかなど、多面的に考えながら対応することが大切です。

問題の原因がうつ病であった場合、叱咤激励など一般的な対処法は、病状を悪化

させる恐れもあります。症状が2週間以上続いているようであれば、医療機関での

受診を指示するなど、適切な医療的対応につなげましょう。

正解 1

第6問 メンタルヘルス不調により休職、復職予定の人がいます。

1.適切な対応をするためには、現場で病名を知っておいた方がよい

2.病名を知ったからといって、適切な対応ができるわけではない

解説 病名を知らなければ適切な対応ができないと思われがちですが、決してそうでは

ありません。病名を知っても、かえって病気に対する誤ったイメージなどが先行し

てしまうおそれもあります。また、病名は個人情報ですので、取扱いには細心の注

意が必要です。本人の同意がなければ、第三者などに伝えることもできません。

大切なのは病名そのものではなく、本人の状態に応じた現場での適切な対応です。

医師など専門家に事前に確認したうえで、対応を進めていくようにしましょう。

正解 2

2

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早早期期発発見見ははおお互互いいにに

【自分で行う うつ病チェック】

この2週間以上、

1.毎日のように、ほとんど1日中ずっと気分が沈んでいた

2.何に対しても興味がわかず、楽しめなかった

3.毎日のように、食欲が低下、または体重の減少が激しかった

4.毎晩のように、寝付けないとか、夜中や早朝に目が覚めた

5.毎日のように、動作や話し方が遅かったり、いらいらしたり、落ち着きが

なかった

6.毎日のように、疲れを感じたり、気力がわかなかった

7.毎日のように、自分には価値が無いとか、申し訳がないと感じていた

8.毎日のように、仕事や家事に集中したり、決断したりすることが、できな

かった

9.この世から消えてしまいたいと思うことが繰り返しあった

◆ 1か2の少なくとも一つを含み、合計5つ以上があてはまる場合、うつ病

の可能性が高いと思われます。早めに医師を受診してください。

【アルコール依存チェック】

1.あなたは今までに、自分の酒量を減らさなければいけないと感じたことが

ありますか?

2.あなたは今までに、周囲の人に自分の飲酒について批判されて困ったこと

がありますか?

3.あなたは今までに、自分の飲酒についてよくないと感じたり、罪悪感をも

ったことがありますか?

4.あなたは今までに、朝酒や迎え酒を飲んだことがありますか?

◆ 2項目以上あてはまれば、アルコール依存症の可能性が高いです。

早めに医師にご相談ください。

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【周囲が気づくメンタルヘルス不調チェック】

1.遅刻や早退が多くなる

2.しばしば休んだり,突然休む

3.大した理由もなく職場転換を希望したり,退職を訴える

4.仕事上のミスが増える

5.不平不満が多くなる

6.ケガが多くなる

7.職務上の義務を怠りがちになり,責任感に乏しくなる

8.同僚などと話し合うのを嫌がり,付き合いを避ける

9.身体の具合が悪いといったり,とりとめのない訴えが多くなる

10.表情が乏しく,口数が滅って,行動に生気がなくなる

11.自信がなくなり,取り越し苦労をしたり,自分の能力の低下を訴える

12.金づかいが荒くなり,借金を多くするようになる

13.アルコール量が増える

◆ これは、いくつあったら異常ということではありませんが、メンタルヘル

ス不調の可能性のある状態の一例です。

ポイントになるのは、その人の「いつもと違う」ということです。いつも

は遅刻や早退などしない人が、遅刻や早退が増えた場合、あるいは、ミスな

どしない人のミスが増えてきた場合など、「いつもと違う」ときには、メン

タルヘルス不調も疑われます。早めに専門家に相談するようにしましょう。

4コマまんが

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職職場場のの疑疑問問ににおお答答ええししまますす

○ わかりにくいかもしれませんが、うつ状態になる状態や病態は数多くあります。前項

のチェックシートもひとつの目安になりますが、健康なときのうつ状態なのか、病的な

うつ状態・うつ病かを見分けるのが大切です。

○ 医師からの診断書に、「うつ状態」と書かれていることも多いようですが、これは、「適

応障害」などを含む広い意味で書かれている場合もありますし、「うつ病」の場合もあり

ます。また、「うつ状態」は認められるものの、それ以上の詳細な診断は分からないとい

うときにも「うつ状態」と書かれることがあります。

○ 「うつ病」は、「うつ状態」を症状とする病気です。「うつ状態」の程度があるレベルを

超えてしまったものが、「うつ病」です。

「うつ病」かどうか? のポイントは、「1日中、それも2週間以上ずっと憂うつな気分、

あるいは、興味や楽しみを感じなくなった状態が続く」ということです。言いかえれば、

気分転換ができるかどうか、ということです。

「うつ病」のレベルにいたってしまうと、それまで好きだったことや興味のあったこと

も楽しめなくなり、気分転換ができなくなります。これは、「うつ病」になると、脳の中

の「神経伝達物質」とよばれる化学物質の働きが低下してしまうから、と考えられてい

ます。

○ 「うつ状態」とは、気分が「沈んだ状態」であり、健康なときでも「うつ状態」になる

ことはあります。悲しい映画やドラマを見たあとや、試験に失敗したあとなどは、気分

が沈みます。しかし、少し時間をおけば回復してきます。これが、健康なときの「うつ

状態」であり、病気ではありません。

また、家族や大切な友人を亡くした場合でも「うつ状態」になりますが、これは、「悲

嘆反応」といいます。人事異動や上司・同僚との人間関係など、環境要因がストレスと

なって「うつ状態」になることも少なくありません。これは「適応障害」とよばれます。

甲状腺機能低下症など、様々な内科疾患でも「うつ状態」になることがありますし、

そのほかの様々な病気からも、「うつ状態」は生じます。

Q1 「うつ状態」って「うつ病」なの?

A 「うつ状態」と「うつ病」は、同じではありません。「うつ病」は、

「うつ状態」を主な症状とする疾患のひとつです。

うつ状態=

うつ病?

「自律神経失調症」って…!?

自律神経失調症という「病気」ではなく、自律神経の調子が

失われている「状態」を指します。

精神的な不安や緊張など、様々なメンタルヘルス不調の結果

として生じる「身体の症状」のことなのです。

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○ 職場においては、職場環境に適応できないことによる「うつ状態」も多く、これは「適

応障害」とよばれます。

○ 「適応障害」であれば、配置換えや就労環境の見直し、指導や助言などの労務管理的

な対応、さらには、本人への心理的カウンセリングが必要になることもあります。

○ 「適応障害」は、何らかのストレスのもと(因子)に反応して、生活に支障をきたすほ

どの症状が、心身に現れるものです。ストレスのもとが消えると症状は改善するもので、

「うつ病」のレベルにはいたっていません。

Q2 勤務中は元気がないけど休みの日は元気。これってうつ病?

A うつ病ではありません。ストレスがなければ症状がなくなり楽しめる

というのは、環境への不適応による「うつ状態」の可能性が高いです。

メンタルヘルスによい 職場環境 って?

熱血系!? それとも癒し系!? どんな職場の雰囲気、上司との関係が、従業員のメンタルヘル

スにいいのでしょう? 大阪府が、平成20年に中小企業とその従業員に行った、アンケート

調査の結果から、探ってみます。

(星は、休・退職者の発生や従業員のメンタルヘルスへの影響の大きさ。☆は良い影響で、★は悪い影響) ●メンタルヘルス不調による休・退職者の有無に、影響を与えていた項目

・同僚や上司に悩みごとなどをなんでも相談できる … ☆☆

・同僚や上司と本音で話し合える … ☆☆

・正社員は、即戦力を確保するより長期雇用のもとでじっくり育成 … ☆ ●従業員のメンタルヘルスに、よい影響を与えていた項目

・上司は、できるだけ部下が自己裁量を発揮できるように配慮してくれる … ☆

・上司は、部下のモチベーションを上げるように努力してくれる … ☆

・職場のなかは暖かくてなじみやすい … ☆☆

・ほぼ望みどおりの仕事をさせてもらっている … ☆☆ ●従業員のメンタルヘルスに、悪い影響を与えていた項目

・職場の仲間はお互いに無関心で冷淡 … ★★

・同僚が休職しても、人員の補充は見込めない … ★★

・休日に仕事をすることが多い … ★★

忙しくても、少しゆとりを持って「風通しのよい職場」を心がけるのが、いいようです。 ※詳しい調査結果は、府ホームページ

http://www.pref.osaka.jp/rosei/000-koyousuisin/200-sanrou.html

病気? 元気?

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○ 人間は、ストレスがかかりすぎると、その反応として、心理面、行動面に、変化が出

てきます、身体の症状としては、首や肩のこり、疲労感、不眠などの症状、心理面では、

意欲の低下、過度の不安、憂うつな気分など、そして、行動面では、遅刻やミスが増え

る、人を避けるようになるなどです。行動面は、まわりから見つけやすいこともありま

す。

○ 本人は、それがストレス反応による症状だということに気づかないことも多く、周囲

の気づきと声がけが、早期発見に有効です。

もし、職場に、「少し様子がおかしいな」と思われる部下がいたら、まず次のことを、

自然な会話の中で、確認してみてください。

「きちんと眠れてますか?」、「好きなことを楽しめてますか?」

○ 3ページ、4ページのチェックリストのように、メンタル疾患にも様々な症状がある

のですが、まずは、この2つの質問で、どちらもが「NO」であれば、メンタルヘルス

不調の可能性があります。医療機関の受診を促してください。

確認の際には、あまり身構えて質問をすると、まじめな人などは「大丈夫です!」と、

気丈に振る舞うかもしれません。自然に答えられる雰囲気で、聞いてあげましょう。

○ また、本人に面と向かって、「メンタルヘルス不調の可能性があるので、精神科に行っ

てはどうか」とは言いにくいものです。身体の病気と同じように、「君の体調が心配だか

ら、一度医者に診てもらった方がいいよ」という言い方でかまいません。

産業医がいる会社の場合、まずは産業医の受診をすすめてください(本人が同意すれ

ば、会社が診察の予約を取ってもよいと思います)。産業医がいない会社では、本人のか

かりつけの医療機関に、一度相談に行くようすすめてください。

その後、医療機関が、適切な対応をしてくれます。

○ メンタルヘルス不調の早期発見には、上司が部下の「いつもと違う」に気づくことが

大事です。そのためには、いつも何気ない会話をし、健康なときの部下の状態を知って

おくことも、重要でしょう。

○ また、上司に話しにくいこともあると思いますので、

社内または社外に、相談窓口を設けるのもよいでしょう。

Q3 様子がおかしい部下。どんな点に注意して、どう声をかけたらいい?

A いつもと違う部下に、ちゃんと睡眠がとれているか、趣味などが楽し

めているかを聞いてみましょう。

いつもと違う!?

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○ 「診察を受けたくない」と回答があった場合は、「今の状況では、仕事をすることで、

さらに体調が悪くなるように思うので、心配だ。専門の医師に、仕事をしてもよいのか

どうか、意見書を出してもらいたいのだが」と言って、そのままでは仕事を任せること

ができない旨を伝えることが、必要となります。

場合によっては、家族と連絡を取り、協力を得ることも必要です。

○ 法律で、会社には従業員の心身の健康などに配慮する義務(安全配慮義務)

があるとされており、体調不良の部下を「本人が行きたがらないから」と、

そのままにしておくことは、この安全配慮義務に違反することにもなります。

体調をさらに悪化させ、長期休業にいたることなどないよう、

適切な対応をとることが、上司には求められています。

○ 上司がひとり一生懸命に対応しても、結局、本質的な解決になっていないことがあり

ます。メンタルヘルスに不調を生じた従業員への対応で大切なのは、問題の解決と「適

切な連携」です。

○ メンタルヘルスに不調がありそうだと感じたとき、あるいは、業務管理(安全管理)上、

仕事を続けさせるのが困難だと感じたときは、休養を取らせることが必要かもしれませ

ん。

○ たとえば、「仕事がうまくこなせない」という悩みを訴えてきた部下に対して、長時間

話を聞き、懇切丁寧に指導したり、励ましたり、異動や配置換えをしたりと様々な労務

管理上の対応をしたとしても、その部下が「うつ病」のために仕事ができなくなってい

るとしたら、必要なのは、早く医療機関を受診するようにすすめることです。

実際に、労務管理上の対応をあれこれしているうちに従業員が自殺してしまい、会社

や上司が賠償責任を負わされたケースもあります。

○ 抱え込んで、上司の方が倒れてしまうこともあります。メンタルヘルス

不調のドミノ倒しを防ぐためにも、専門家との連携が重要です。

メンタルヘルス不調の従業員が発生した場合の対処方法などを、

社内で一度整理しておかれるとよいでしょう。

Q5 上司として途中で対応にギブアップするのは、誠意がない?

A 抱え込んではいけません。誠意で対応すると同時に、専門家の助言も

得ながら、解決に向かってください。

Q4 部下に受診をすすめても応じたがらない場合、どうしたらいい?

A そのまま放置せず、受診させることが必要です。

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○ 会社や上司には「安全配慮義務」がある、というのはQ4のとおりです。では、会社

や上司の責任として、どこまで個人の性格を考慮した対応を行うべきなのでしょう?

たとえば、同じ部署で同じ仕事をしている人が複数いたとして、そのうちの一人だけ

がメンタルヘルス疾患にかかってしまった場合、会社の責任はどうなるのでしょうか?

○ 実際の裁判では、従業員の性格は様々であり、業務の過重負担による疾病の発生に、

従業員の性格が関係していたとしても、その性格が通常の範囲であれば、上司は、その

疾病を予想すべきであった——という趣旨の判決が出ています。また、上司は、従業員

の配置や業務内容の決定を、性格を考慮し、適性を判断して行うこともできるのだから、

メンタルヘルス疾患の発生は、従業員の性格のみを原因としない——ともされています。

*最高裁平成12年3月24日第二小法廷判決(平成10年(オ)第217号・第218号損害賠償請求事件)

○ 上司には、部下の個々の心身の状態を把握し、適切な業務の指揮命令を行うこと、そ

の仕事に対する従業員のストレス耐性を考慮した対応が、求められているのです。

少し面倒に感じるかもしれません。しかし、「適材適所」は、

本人にも会社にも、高い成果を生み出します。メンタルヘルス

対策は、生産性向上にもつながるものでもあるのです。

○ 従業員が「休職の診断書」を持ってきた場合は、主治医の意見に基づいて、一定期間、

休職してもらうことになります。

法律で、会社には従業員の心身の健康などに配慮する義務があるとされていますので、

診断書を無視して勤務を命じることは、この安全配慮義務に違反することになります。

○ 診断書に記載されている「自宅療養期間」もしくは「入院治療期間」などについては、

従業員の健康を第一に考えると、短くすることはできないと考えられます。

たとえば、「向こう約2か月の休職を要する」と診断書に書かれていれば、その指示ど

おり、2か月間は休職させることになります。

○ 休職は、就業規則に従って行ないます。メンタルヘルス不調の場合、

本来は、働けない状態であるので、「休職」となります。

期間が短い場合などは「有給休暇」を使うことも考えられますが、

この場合、「業務に支障が出る」などを理由に取得時期をずらすことは、

行なうべきではありません。

Q6 本人がストレスに弱い場合も、会社の責任?

A 会社の責任です。性格や特性に応じた業務を与える必要があります。

Q7 「休職の診断書」を提出されたら、どうしたらいい?

A 休職を認め、その回復に努めてもらうことが必要となります。

診断書

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○ 休職中は、孤独感や復職への不安、今後のキャリアや経済的な不安で一杯になります。

そのため、本人の状態などに配慮しながら、休職期間中や復職後のことについて、あ

らかじめ話し合い、納得を得ておいたほうがよいでしょう。

たとえば、次のようなことです。

① 傷病手当金など公的支援制度の情報を提供する

② 相談できる場(社内の窓口や社外の相談機関など)を設ける

③ 休職中の、会社と本人の接触方法やタイミング ※詳しくは、Q9

④ 休養の場所(単身者や単身赴任者は、安心して休養がとれるよう、実家や自宅に

帰るようにすすめた方がよいでしょう)

⑤ 主治医と会社の連携について(情報交換や相談など)

⑥ 復職について

・ どのような状態になると復職できるのか

・ 復職までの流れ ※詳しくは、Q10

・ 復職後の業務をどのように検討するのか

○ 労使が協議して就業規則などに定め、周知しておくことが望ましい事項もあります。

① 休職の最長(保障)期間、職場復帰後に再び休職するときの期間通算ルール

② 休職期間の最長期間満了後に雇用契約の解除を行う場合

Q8 休職させるときに必要なことは?

A 従業員にとって一番大切なのは、仕事を休んで治療に専念することで

す。安心して休養がとれるよう、環境を整えることが肝心です。

メンタルヘルスによい 働き方 って?

仕事や会社に対する意識は、メンタルヘルスに影響するのでしょうか? 平成20年大阪府

の中小企業従業員へのアンケート調査の結果を見てみましょう。

(星は、従業員のメンタルヘルスへの影響の大きさ。☆は良い影響で、★は悪い影響) ●次のような意識の人は、メンタルヘルスがよくありませんでした

・残業手当がつかなくても、やり終えるまでは仕事を続けたいと思うことがある … ★★

・会社の問題が、あたかも自分自身の問題であるかのように感じる … ★★

・出勤前、仕事に行くのが嫌になって、家にいたいと思うことがある … ★★ ●次のような意識の人は、メンタルヘルスが良好でした

・会社にとって重要なことは、私にとっても重要 … ☆☆

・会社にいることが楽しい … ☆☆ 滅私奉公型の働き方や、仕事を楽しめない状況は、メンタルヘルスを悪くするようです。

アンケートでは、「ライフプランやキャリアプランを考えている人は、考えていない人より

メンタルヘルスがよい」という結果も出ています。心に少しゆとりを持ち、目標をもって働く

こと、仕事を楽しむことが、元気に働き続ける秘訣のようです。 ※詳しい調査結果は、府ホームページ

http://www.pref.osaka.jp/rosei/000-koyousuisin/200-sanrou.html

未来の

わたし

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○ 休職中も、手続きのため、本人と連絡をとる必要がありますが、これが本人にとって

どれほどの負担になるかは、病状や個人の受け止め方によって異なります。

連絡の頻度や方法など、会社としてのルールはあった方がいいですが、安全を優先し

ながら、実際のペースは、できる範囲で本人の体調に合わせるようにします。

会社に診断書を提出してもらうときに、あわせて面談するのが理想的ですが、本人の

体調に応じて、郵送やメールにしても、かまいません。

○ 本人が会社との接触を拒否する場合は、必要に応じて、家族の方から様子を聞きます。

本人が拒否するからといって、休職中の対応を止めてしまうのは、よくありません。

できるだけ本人の負担にならない手段(メール、電話、郵便、家族をとおすなど)を

使ったり、家族や本人が気持ちを許している人(職場の同僚や相談機関のスタッフなど)

をとおして連絡を入れてもらうなど、様々な方法で本人の状況を把握する工夫が必要です。

○ 休職中の関係を良好に保つためには、本人の状況を把握しながら、本人に、「復職に向

け、会社は温かく見守り待っている」という姿勢を伝えること、また、「体調がどのよう

な状況になれば復職できるのか」について、納得を得ておくことが、大切です。

Q9 休職中は、どう対応すればいいの?

A 本人の体調を優先し、急がず焦らず——が基本です。

医師などに情報提供を求める場合

会社として、休職や復職の判断をするにあたり、主治医に情報提供を求める場合、間

違い防止や個人情報の適正管理の観点から、文書による方がよいでしょう。

●情報提供依頼書の例(復職の場合)

医師からも、文書で回答をもらう方がよいでしょう(料金については、医師にお尋ね

ください)。

情報提供依頼書

○○医院 ○○先生 御机下 △△株式会社 産業医△△ 印 (△△株式会社 △△部長 印)

弊社従業員□□の職場復帰支援に際し、下記の事項について、任意の書式の文書により、情報提供及びご意見をいただければと存じます。なお、いただいた情報は、本人の職場復帰を支援する目的のみに使用し、プライバシーに十分配慮しながら、会社が責任を持って管理します。

1 従 業 員 氏名 □□ (男 ・ 女) 生年月日

2 情報提供依頼事項

(1)

(2) <本人の同意書欄>

私は、この依頼書の内容につき、情報提供文書の作成ならびに会社への提出に、同意します。

年 月 日 氏名 印

(情報提供を求めたいことを具体的に書きます)

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○ 主治医による診断書は、必ずしも、職場で必要とされる「業務遂行能力の回復」まで

保障するものではありません。

また、メンタルヘルスの不調では、身体の疾患とは違い、復職後の能力が完全に回復

していないこともよくあります。

そのため、会社として、復職のルールや判断基準をしっかりと持つことが大切です。

○ 就業できるかどうかの判断は、日常生活レベルで、精神的・身体的な体力が、どこまで

回復しているかを見て、職場復帰して担当業務を行えるほど回復しているかどうか、推測

するしかありません。

ポイントは、次のとおりです。

① 就労上の障がいとなっていた精神症状が、軽くなっているか?

② 月曜から金曜まで、毎日、就労時間帯に、混雑した電車に乗って、安全な通勤が

できるまで、体力が回復しているか?

③ 他人がいる空間で、毎日約8時間、拘束されることが可能なまで、精神的・肉体

的な体力が回復しているか?

産業医がいる場合は、本人に面談してもらい、これらのポイントを見てもらうことも、

一つの方法です。

○ 復職の際には、時間軽減勤務や段階的な復職が効果的な場合もあります。その場合は、

賃金体系や労災の問題をどうするか? といった、法的な問題や労務管理上の問題もあり

ます。必要に応じて、社会保険労務士などに相談するとよいでしょう。

○ 復職判定は、主治医の診断書をもとに最終的に会社が行なうものですが、微妙な案件

でもありますので、担当者などが単独で判断するのは、困難でもあり重責でもあります。

そのためにも、社内で「復職判定委員会」を設置し、経営者や役員、人事労務担当者、

上司、産業医などが参加し、様々な方向から協議して判断するのがよいでしょう。 ① 本人の復職の意思

② 主治医からの診断書

③ 産業医による本人との面談(産業医がいない場合は人事担当者)

④ 復職判定委員会

⑤ 復 職 又は 休職継続

Q10 「復職可能の診断書」が提出されたら、どうすればいい?

A プライバシーに配慮しながら必要な情報の収集と評価を行い、会社の

責任で、職場復帰の可否の最終判断を行ないます。

産業医の意見

主治医からの情報提供書 人事労務担当者などの意見

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産業医がいない ある中小企業のケース

Aさんは、従業員20人の会社で働く、30代のシステ

ムエンジニア。まじめで熱心な社員です。

Aさんの会社には、産業医や産業保健スタッフは、いま

せんでした。

20XX年、3月の期末にかけて納期のある仕事がいくつか重なり、

また、その時期に同僚が急に退職したため、残業が毎日続くように

なったAさんは、過労から「うつ病」になってしまいました。

Aさんは、近くの精神科医にかかり、2か月の休養をとりました。

その後、Aさんは、職場に復帰しましたが、復帰して1か月も

経たないうちに再び症状が出て、復帰してから2か月後、「1か月

間の休養が必要」との診断書が出されました。

Aさんは休職に入りましたが、「また休んでしまい、会社に迷惑

をかけて申し訳ない」と謝るばかりです。

会社は、Aさんの復職が前回と同じ結果にならないよう、

「今回は復職について主治医にも相談しよう」と考えました。

そこで、Aさんに連絡を取り、Aさんから主治医に、その旨を

伝えてもらい、主治医もそれを承諾しました。

こうしたやりとりの後は、Aさんを交えて、主治医と上司が情報

交換するようになり、お互いの誤解がなくなっていきました。

主治医も、職場の事情がよく分かるようになったため、実際に、

会社が実施できるような具体的な形で、Aさんの職場復帰に必要な

配慮や支援について、示せるようになりました。

こうして、本人・主治医・上司が納得したうえで、復職への流れが

でき、復職もスムーズにいきました。

そうして、Aさん、主治医、上司が会って話をすると、色々な問題が

あったことが、明らかになりました。

前回の休職時に、主治医は「もう少し休んだ方がいい」と、Aさんに

アドバイスをしていたのに、Aさんが、「会社に迷惑をかけているので、

早く復職したい」と聞き入れなかったことが分かりました。

会社側も、復職後は「残業しないように」と、Aさんに言ってはいた

ものの徹底されておらず、結果として、Aさんは、また無理をしていた

ことが分かりました。

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○ 試し出勤は、復職に伴う様々なリスクを減らす方法として、有効です。

○ 試し出勤は、休職中(復職前)に行われるため、「労働」ではありません。

ですから、会社は、試し出勤中は、業務を命じることはできません。一方、従業員に

は、給料は出ませんし、出社途中などに事故に遭った場合でも、労災は認められません。

○ このように、試し出勤は、通常の出勤とは異なる取扱いとなるため、処遇などについ

て、あらかじめ、本人とよく打ち合わせをしておくことが重要です。

○ 試し出勤は、およそ次のような手順で進めるとよいでしょう。

① 主治医による治療

② 本人の復職の希望

③ 主治医の意見

④ 本人との面談

⑤ ためし出勤

復職判定 ※詳しくはQ10

○ 会社として、セカンドオピニオンを聞く、あるいは、復職判定のための作業能力検査

や適性検査などを行なうため、主治医以外の診察を受けさせたいことがありえます。

しかし、メンタルヘルス不調の診断や病気の経過予想などは、初診で簡単に分かるも

のではありません。また、他の医師の診断を受けるということで、現在の主治医との治療

関係に悪影響を及ぼすこともあります。

まずは、本人の了解や同席のもとで、現在の主治医と面会し、

十分な意見交換をはかることが第一です。

○ そのうえで、なお主治医以外の医師の意見が必要であれば、

その理由を本人に説明し、納得を得ることが不可欠です。

○ さらに、主治医にも、他の医師の意見を必要とする旨を説明し、了解を得て、

できれば、主治医に「診療情報提供書」を作ってもらうのが望ましいです。

○ 復職判定などに際し、会社として、主治医以外の医師に意見を求めることをルール化

するのであれば、そのことを就業規則に記しておく方がよいでしょう。

Q11 「試し出勤」って?

A 休職中の従業員が、復職できるかを確認するため、復職前に、業務を

伴わない出勤を行なう、社内制度です。

Q12 主治医以外の先生の意見を求めたいのですが。

A 慎重に。まずは主治医と意見交換。本人と主治医の了解が原則です。

ためし出勤可能の診断書などをもらいます

・産業医や人事担当者が本人と面談し、“安全に会社まで来られる

か?”、“一定時間拘束されて、何らかの作業等が可能か?”などを

推測します

・処遇や人事労務管理上の扱い、労災適用の有無などを話し合います

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治療により、規則正しい生活習慣を取り戻します(リハビリ)

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○ 従業員のメンタルヘルス不調の発生に、職場の因子が大きく関与していると考えられ

る場合には、復職する職場を慎重に考える必要があります。

特に、仕事の内容にうまく適応できなかったため、メンタルヘルス不調に陥ったと思

われる場合は、本人の職業適性などを確認し、復職先を変えることも検討すべきでしょ

う。得意な分野で能力を発揮させることができれば、本人だけでなく、会社にとっても

メリットになります。

○ 適性を客観的に評価する方法は、厚生労働省の職業適性検査など、幅広く利用されて

いるものがあります。

○ 職場の人間関係が原因でメンタルヘルス不調に陥ったと思われるケースでは、復職前

に、本人や関係者と面談するなどし、人間関係を調整することが必要となります。

そのうえで、本人の発症状況を確認して、同じような状況にならないよう、具体的な

対策を検討します。

本人や関係者の納得がどうしても得られない場合には、異動も視野に入れて再考した

方が、再発を予防できることもあります。

○ メンタルヘルス不調で休職していた従業員が職場復帰するとき、本人は、周りの従業

員の目が気になるものです。

一方、周りの従業員も、本人の病状への不安や、「どう接したらいいのか?」といった

本人との関係に関する不安など、様々な不安を持っているものです。

○ そのため、周りの従業員に対する適切な説明が、必要となります。

その際、本人の了解なく、病名や病状を伝えることは、個人情報保護

の観点から適当ではありません。

復職前に、まずは本人と、周りの従業員にどのように説明するか

について、相談する必要があります。

○ 職場復帰する従業員を迎える場合、周囲に病名を伝える必要はありません。

現在の状態と今後の復職プランをきちんと説明するようにしましょう。

○ また、業務軽減などの処置をする場合、周りの従業員が不公平感をもつこともありま

す。その場合は、病気になった際には、就業規則に則り、すべての従業員が、同じよう

な対応を受ける権利がある——ということが伝わるようにしましょう。

Q13 本人が希望する職場に復職させた方がいいの?

A 本人の適性の検討、人間関係の調整などを踏まえて柔軟に考える。

Q14 復職時の周囲への説明はどうすればいい?

A まずは本人と相談します。周りの不公平感の是正も大切です。

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○ 欠勤が多く通常の業務が遂行できない従業員がいる場合、原因が本人の怠惰によるも

のであれば、懲戒などの処分の対象となります。これを会社側が大目にみると、職場の

士気が低下するなど、周囲の従業員に大きな影響を及ぼすことが、懸念されます。

○ 通常勤務ができない原因が心身の疾患によるものであり、業務を続けることで、健康

がさらに害されると想定された場合、そのまま勤務を続けさせることは、安全配慮義務

に抵触することになります。「仕事ができないから大目にみておこう」と会社側が考え

たとしても、業務を続けることにより症状が悪化すれば、会社が従業員の健康について

適正な措置を講じなかったと判断されます。

○ 通常業務ができない状態が続く場合には、心身両面の病気の有無について医師の診察

を受診するようすすめることも、一つの方法です。

従業員が会社の指示に従わないまま、休みがちで、しかも通常業務ができない状況が

続くようであれば、会社が指定する医師の受診を命ずることも可能、との司法判断があり

ます。

Q15 欠勤が多い、通常業務ができないけど大目にみないといけないの?

A 大目が裏目に!? 安全配慮義務違反になることもあります。

職場のメンタルヘルスに関する相談窓口など ●企業のメンタルヘルス対策に関する相談・支援

大阪産業保健推進センター(メンタルヘルス対策支援センターOSAKA) (06-6944-0971

中央労働災害防止協会(大阪労働衛生総合センター) (06-6448-3840

●勤労者のメンタルヘルスに関する相談

大阪労災病院勤労者予防医療センター(勤労者心の電話相談) (072-251-9556

大阪府こころの健康総合センター(こころの電話相談専用ダイヤル) (06-6607-8814

●職場のトラブルの解決支援

大阪府総合労働事務所(労働相談) (06-6946-2600

●職業適性相談

大阪府総合労働事務所(職業カウンセリングセンター) (06-6946-2614

●働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

厚生労働省 こころの耳 http://kokoro.mhlw.go.jp/

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メメンンタタルルヘヘルルスス対対策策ののポポイインントト66かか条条

~基本は身体の健康と同じです~

①「再発させない」が最重要ポイント!

休職や復職の手続きのめざす目標は、単に復職することそのものではありません。復

職し、その後、従業員がうまく適応して、病気が再発せず健康に生き生きと働いてもら

うことです。

ですので、復職を考える際には、その従業員の希望だけでなく、適性などを十分に検

討し、本人がもっともパフォーマンスを発揮できる方法を考えていくのがポイントです。

②「正式な手続き」がポイント!

正式な方法で進めることは事務的に進めるという意味ではありません。健康管理に関

する制度を作成し、明示しておき、病気になってしまった場合には、その手順にそって

進めることがポイントです。

(手順通りに行うことが、信頼のある仕事につながるのと同じ)

③「事前に説明」がポイント!

メンタルヘルス不調に陥った時の会社としての対応に関し、事前に流れを従業員に説

明しておくことで、お互いに安心感と信頼感が生まれます。就業規則に示しておくこと

も意味のあることですし、休職を余儀なくされた場合には、休職に関する制度、復職に

関する手順などを最初に示しておくことが必要です。(一般業務の流れと同じ)

④「多面的に可能性を考える」のがポイント!

何らかの不調を訴えたり、様子がおかしな従業員に気付いた場合、自分の基準で判断す

ると、間違うことが少なくありません。労務管理レベルの問題か、本人の心理的レベルの

問題か、あるいは医療的レベルの問題かなど、多面的な観点で考えていくことが重要です。

⑤「説得」ではなく「納得」がポイント!

メンタルヘルス不調が疑われる従業員に医師の受診を勧める場合、あるいは、休職、

復職に際し、何らかの制限を加えるような場合、「従業員を説得しなければ」という気持

ちで一方的に説得をしようとすると、関係を膠着化させます。

まずは、従業員の気持ちや不安をよく聞き、その思いを十分に受け容れること、そし

て、会社側の意向を伝える際には、そのような結論にいたる状況や背景について、十分

に説明して、従業員の納得を得ることが重要です。

⑥本人の能力と適性を活かすことがポイント!

メンタルヘルス問題への対応の最良の方法は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に

防ぐことです。従業員がその適性を十分に生かし、その能力を十分に発揮できるような

企業風土が育成されれば、メンタルヘルス不調の発生は減少するでしょうし、同時に、

会社の業績向上につながると考えられます。

従業員のメンタルヘルス向上と会社の業績向上は、実は、同じ方向の上にあるのです。

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平成 23年 3月発行 (平成 24年1月増刷)

発行:大阪府商工労働部雇用推進室

〒559-8555 大阪市住之江区南港北1丁目14-16 咲洲庁舎24階

電 話 06-6210-9519(ダイヤルイン)

FAX 06-6210-9517

監修:社団法人 大阪精神科診療所協会

協力:日本CHRコンサルティング株式会社 この冊子は8千部作成し、1部あたりの単価は約 25円です。