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「けいれんの患者さんです。」
家族や救急隊から状況を確認する けいれんについて けいれんは続いているのか 持続時間は どんな型のけいれんか
全身状態について 意識状態、バイタルサイン 併発する症状:発熱、呼吸障害、嘔吐、外傷等 その他 基礎疾患(てんかん、熱性けいれんの既往、 発達遅滞の有無、他神経疾患 等) 現在行っている処置
準備する物 モニター、酸素・吸引・マスクとバッグ、輸液セット、 抗けいれん薬(DZP, MDZ)など、 気管挿管セット、採血等検査セット 等
思い出してほしいこと けいれんで死ぬことはまずない すべてのけいれんはいつか止まる 止めてはいけないけいれんはない
慌てず落ち着いて対応しましょう
けいれん重積とは (status epileptics)
定義
一定した見解はないが、広く知られているのは 「30分以上持続するけいれん、あるいは複数回の 発作が断続的に起こり、間欠期にも意識障害を 認める状態」 診察時にけいれんが続いていれば けいれん重積と考えて対応する。 遷延するほど、合併症と神経障害が残る リスクが高くなる。
まず行うべき検査、処置
血管確保と同時に、採血 項目:血算、血糖、血ガス、電解質、炎症反応 けいれんが止まってから、脳画像検査(CT, MRI) 状況に応じて ウィルス抗原(インフルエンザ、ロタウィルス等) 血中濃度(抗てんかん薬等) 代謝系:アンモニア、乳酸・ピルビン酸、ケトン体、 (アミノ酸及び有機酸分析、タンデムマス) 凝固能 髄液検査 急性期の検体保存:血清または血漿、
尿、髄液、ガスリーろ紙を凍結保存
けいれん重積の治療
けいれん重積の治療について、 日本、あるいは国際的に受け入れられている 特定の治療プロトコールは存在しない。 日本救急医学会小児救急特別委員会が開催している小児救急診療コースPECEP(pediatric emergency care & assessment for physicians)マニュアル 2005年に「小児のけいれん重積状態の診断・ 治療ガイドライン(案)-よりよい治療法を求めて」
許勝栄 小児科診療 2013年・5号
林北見 小児科診療 2011年・6号
第一選択はセルシン!
①ジアゼパム (DZP) (商品名 セルシン、ホリゾン 5mg/ml/1A)
使用量 0.06~0.1ml/kg/回(=0.3~0.5mg/kg/回) ゆっくり静注 (0.1ml/10秒かけて) 利点 即効性がある 高いけいれん抑制効果 注意点 急速静注で呼吸抑制 効果持続時間20分程度 鎮静作用あり(眠気、ふらつき、易刺激性) 血管刺激性強い⇒漏れると壊死 希釈すると結晶析出⇒希釈しないで使用
けいれん重積の治療
※座薬はダイアップ
けいれん重積の治療
次に使う薬、あるいは血管確保困難な時
②ミダゾラム (MDZ、MDL) (商品名 ドルミカム 10mg/2ml/1A=5mg/1ml)
使用量 0.15mg/kg/回(=0.1~0.3mg/kg/回) ゆっくり静注 (1mg/分かけて) 鼻腔/口腔、筋注投与は(0.1~)0.3mg/kg ※使用時は1Aに生食8mlを加え10mg/10mlとしてもよい 利点 即効性あり 希釈可能、血管痛なし 効果持続時間30~50分だが持続投与可 注意点 実はけいれんには適応外使用 呼吸抑制を認める
セルシン、ドルミカム静注で止まらない時
その後の選択肢は3つ
③ミダゾラム持続静注 0.1~0.15mg/kg/hrでdiv、0.05~0.1mg/kg/hrずつ 0.3mg/kg/hrまで増量、最大0.5mg/kg/hrまで可 注意点 呼吸抑制、分泌物増加、 依存性、耐性、クリアランスの増加 発作抑制までに時間かかる
④フェニトイン (現在はホスフェニトイン) ⑤フェノバルビタール
けいれん重積の治療
④ホスフェニトイン (f-PHT) ●フェニトインのプロドラッグ、投与後速やかにPHTに変換される
(商品名 ホストイン 750mg/10ml/1V)
使用量 初回 22.5(18~20)mg/kg//回 3mg/kg/分または150mg/分を超えない 維持 5~7.5mg/kg/日を1回または分割 1mg/kg/分または75mg/分を超えない 利点 意識レベルに影響しない 効果持続時間10時間程度と長い f-PHTは静脈炎のリスク少ない 注意点 血圧低下、不整脈に注意 ⇒心電図モニター必ず!
けいれん重積の治療
⑤静注用フェノバルビタール (PB) (商品名 ノーベルバール 250mg/1V) ●適応症:てんかん重積状態 新生児けいれん
使用量 ・てんかん 15~20mg/kg/回 (10分以上) ・新生児 20mg/kg/回 (5-10分かけて) 維持 2.5~5mg/kg/日を1日1回 利点 呼吸抑制が起こりにくい 半減期が数日と長い 注意点 効果発現が遅い(脳内最高血中濃度15分以上) 催眠効果あり、意識の評価困難
けいれん重積の治療
それでも止まらない時はバルビツレートによる治療へ
⑥静注用バルビツレート チオペンタール (商品名 ラボナール) チアミラール (商品名 イソゾール) 使用量 3~5mg/kg/回をゆっくり静注 2~5mg/kg/hrで持続静注 利点 強力な抗けいれん作用(即効性、確実性高い) 脳保護作用(←脳圧と脳代謝の低下) 注意点 呼吸抑制、血圧低下を来す(+腸蠕動も↓) ⇒人工呼吸管理、血圧管理必要 強アルカリにて静脈炎→できればCVから 脳波をモニターしながら
けいれん重積の治療
けいれん群発(seizure clustering)とは
定義 「短期間に発作が反復し、各発作の間には 意識の回復があるものの、更に発作が反復する 可能性がある状態」
胃腸炎関連けいれん
良性乳児けいれん
どちらも ・2歳以下の乳幼児に多い ・けいれん群発しやすい ・DZP, MDZが効かず、 カルバマゼピンやPBが効く ・予後良好
群発するけいれんに対して
熱性けいれん (febrile seizures: FS)
・定義「通常38℃以上の発熱に伴って乳幼児期に生じる発作性疾患で、中枢神経感染症、代謝異常、その他明らかな発作の原因疾患のないもの」 ・好発年齢:6ヶ月~6歳 ※日本の有病率は7~8% (欧米2~5%) ・発作型:左右対称性の全身性強直間代発作 通常は5~15分以内におさまる ・治療:自然に頓挫が多い (けいれんが止まっていればダイアップ不要) ・鑑別:急性脳炎/脳症、細菌性髄膜炎など 意識の回復程度、麻痺や髄膜刺激症状の 有無に注意
熱性けいれん
・再発の予防法 ダイアップ座薬0.3~0.5mg/kg、発熱時と8時間後 解熱剤(アンヒバ)座薬入れる時には30分以上あける 無投薬に対して1/3程度に抑えられる 期間は通常2年間もしくは4~5歳まで ※治療の適応は次頁参照
・単純型と複雑型 複雑型FS ①部分発作、②15分以上の持続 ③24時間以内に繰り返す※文献により異なる ⇒てんかん発症のリスクより高い 後日、脳波や脳画像検査検討
急性脳炎・脳症 (acute encephalitis/encephalopathy)
●急性脳症 ・定義:はっきりした定義を持たないが、 「急に強い意識障害を生ずる複数の症候群の総称」 多くの症例でみられる症状・所見 1、急性発症の意識障害が一定期間持続する ※インフルエンザ脳症ガイドラインでは JCS10以上、12時間「急性脳症の疑い診断」 24時間「急性脳症の確定診断」
2、感染症の経過中に発症 3、けいれんや異常行動をしばしば伴う 4、脳画像検査等で非炎症性脳浮腫の所見 ※脳炎は病態の主体が炎症(例 ヘルペス脳炎)
急性脳炎・脳症
・急性脳症と熱性けいれんとの鑑別
①遷延する意識障害 (postictal state, 発熱によるせん妄, 薬物の影響等で説明できない)
②繰り返すけいれん ③不随意運動、瞳孔左右差などの神経症状 ④脳画像 CT:皮髄境界不明瞭、脳浮腫像 MRI:拡散低下(DWIで高、ADCmapで低信号) ⑤脳波:びまん性高振幅徐波 等 ⑥髄液所見:蛋白高値、細胞数増多
急性脳症の分類
インフルエンザ脳症 HHV6, 7脳症
ロタウィルス脳症 水痘・帯状疱疹脳症
麻疹脳症 マイコプラズマ脳症 RSウィルス脳症
その他
古典的Reye症候群 Reye様症候群 HSE症候群 (出血性ショック脳症症候群)
急性壊死性脳症 MERS (一過性脳梁膨大部病変を有する軽症脳症)
AESD (二相性けいれんと遅発性の拡散能低下を 呈する急性脳症)
その他
先行感染症のウィルスに もとづく分類
臨床・検査・画像所見に もとづく症候群分類
(水口 雅 日小児会誌, 2010)
急性脳炎・脳症
疑ったら 早めの治療!
治療 ※インフルエンザ脳症ガイドライン (平成21年 厚労省)を参考に 1、支持療法 呼吸、循環、水分・電解質管理など けいれんの治療 頭蓋内圧の管理 ①D-マンニトール 0.5~1g(2.5~5ml)/kg/日 15~30分div, 3~6回/日 ②代謝疾患の可能性→グリセオールは推奨しない 2、特異的治療 ①抗ウィルス薬(ラピアクタ、タミフル等) ②ステロイドパルス療法 :メチルプレドニゾロン 30mg/kg/日×3日 (ヘパリン一緒に) ③γグロブリン大量療法 :1g/kg/日 10~15時間
3、特殊治療
①脳低体温療法、、⑤脳保護剤(エダラボン) など‥ ※ヘルペス脳炎が否定できない間は ⇒アシクロビル(ゾビラックス) 10mg/kg ×3回/日, 14日間 1時間div、必要に応じて20mg/kg/回まで
※先天代謝異常症の可能性あり (代謝性アシドーシス、高乳酸血症、低血糖・肝障害など) ⇒ミトコンドリアレスキュー薬投与 :ビタミンB1, カルニチン, CoQなど
※二相性脳症(AESD)の場合 けいれん重積後意識ほぼ回復、脳MRI正常、 3日目以降再度けいれんや意識障害悪化するので注意
急性脳炎・脳症
胃腸炎関連けいれん (benign convulsion associated with mild gastroenteritis)
診断、臨床像
・胃腸炎症状に伴う それ自体による脱水や電解質異常を伴わない ・年齢:6ヶ月~3歳(1~2歳台が多い) ・原因ウィルス:ロタウィルスやノロウィルス 等 ・けいれんの特徴 30秒~3分の強直あるいは強直間代発作 群発しやすい(間欠時の意識は正常) 啼泣や点滴などの痛み刺激で誘発されやすい けいれん群発は胃腸炎の第3病日に起こりやすい ・血液、脳画像、間欠期脳波で異常なし
胃腸炎関連けいれん
治療 ・多くは24時間以内に自然軽快する ・短時間に群発する場合は
カルバマゼピン (商品名 テグレトール) 5mg/kg/回 1日1回、1~3日間 ※単回投与で97%が抑制される
他に、PB 10mg/kg/回 内服、坐剤、静注 (商品名 坐剤 ワコビタール、ルピアール) 予後 ・けいれんの予後良好 ・次回胃腸炎時、抗けいれん薬予防投与不要