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資 料 RI・放射線の産業利用* II.産 業各分野におけるRI等 利用例

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Page 1: 資 料 RI・放射線の産業利用* II.産 業各分野におけるRI等 利用例

RADIOISOTOPES, 46, 464-471 (1997)

資 料

RI・ 放射線 の産業利用*

II.産 業各分野 におけ るRI等 利用例

3.紙 ・パ ル プ産 業 分 野 †

幸 一彦

王子 製紙(株)技 術部

104東 京 都中央 区銀座4-7-5

Key Words: industrial use, radioisotope, pulp, paper, paper machine, thickness

gage, quality control system, B/M system, basis weight, kripton-85, promethium-147

1.は じ め に

日本の紙 ・板紙の生産量はアメリカに次いで

世界第二位(約28000千 トン/年,全 世界の

11%)で あり,ペ ーパーレス時代とはいえ日本

は依然として製紙大国である。一方,近 年顧客

の品質要求は多様化 し,か っ高品質への要求は

高まるばかりである。

そのような中,紙 パルプ業界は安定 した高品

質の製品を供給すべ く日夜努力 しているが,そ

の品質管理 に欠かせないのがRI利 用の測定機

器である。具体的には紙パルプ製造工程では密

度計,レ ベル計,坪 量*(つ ぼりょう)計(B/

M**計)な ど多 くのRI利 用測定機器が使用

されている。また,X線 を利用 した灰分***計

や最近では紙の表面加工用として電子線照射装

置,バ イオ研究用の トレーサ として放射線 や

RIが 利用されている例 もある。

本稿では,そ の中でも紙製品の最終品質をオ

ンラインで測定する最 も重要なセンサーである

坪量計について紹介する。

2.製 紙用坪量計(B/M計)

2・1概 要 ・特徴

2・1・1概 要

坪量計とは,紙 の製造工程の抄紙 ・加工 ライ

ンに設置され,製 造中のウェブすなわち各種紙

の坪量を計測する装置である。通常は紙のもう

一つの重要な品質である水分を測定する近赤外

線水分計 とともに設置され,一 般にB/M計 と

呼ばれている。さらに近年では,紙 のその他の

重要品質である紙厚,色 相,灰 分,光 沢などを

オンラインで測定するセンサーを搭載 した総合

品質測定,制 御システムとなっている。

図1に は一般的な紙の製造工程を示す。本 シ

ステムは通常図1に 示す位置に挿入され,紙 の•õIndustrial Uses of Radioisotopes and Radia-

tion. II. Applications of Radioactivity etc. in

Various Industry. 3. Aspects in the Pulp and

Paper Industries. Kazuhiko SAIWAI: Technical

& Engineering Dept., Oji Paper Co., Ltd., 4-7-5,

Ginza, Chuo-ku, Tokyo 104, Japan.

*本 報告 は,日 本 アイ ソ トー プ協会理工学 部会 「放

射性同位体等 の産業利 用専門委員会」(委 員長;小

佐古敏荘(東 大 ・原総 セ ンター))に よ って検討 さ

れ た ものである。

*坪 量:単 位面積当 た りの紙 の重量(g/m2) 。紙 パ

ルプ業界 で は,紙 の密度 は一定 ではな いので厚 み

計 と呼 ばず,坪 量計 とい う。**B/M:Bは 坪量 の意 味(basis weight)

,Mは 水

分の意味(moisture)。***灰分:紙 の固形量 に対 す る紙 中 の無 機質 の重量

割合(%)。

(48)

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Jul. 1997 RI・ 放射線 の産業利用 465

図1紙 の製造工程

図2B/M計 の概要

品質をオンライ ンで測定す るとともに,パ ル

プ,填 料,染 料,薬 品および蒸気電気などのパ

ラメータを制御することにより,紙 の流れ方向

および幅方向の品質を目標値 に維持するために

用いられる。B/M計 は図2の ように構成 され

るが,測 定信号を処理 しオペ レータとの対話,

記録の保存,上 位 システムとの通信などの機能

も合わせ持っている。

坪量計は紙の製造工程の中で最も重要なセン

サーであり,β 線を用いて紙を透過する際のβ

線吸収量の変化により坪量を測定するセ ンサー

である。

2・1・2特 徴

(1)検 出部は上下に分離 されており,走 査式

測定である。下 ヘッ ドの線源より放射線を出

し,紙 に吸収されなかった透過量を上ヘ ッドの

検出器で検出する。検出部は紙幅方向に常時往

復移動 し,測 定値と検出器の位置信号を同期さ

せて幅方向の坪量プロファイルを測定する。こ

のため上下ヘ ッドの相対位置ズレを最小にする

フレームやヘ ッドの形状設計,駆 動機能が要求

される。 ミスアラインメントに伴う誤差の概念

を図3に 示す。

図3ミ スアライ ンメ ン ト誤差の概念

(2)本 測定は非接触で,耐 環境性が要求され

る。紙 は1000m/分(60km/時)程 度の高速

で走行 しており,非 接触測定は不可避の要求で

ある。さらに,紙 と上下ヘッドとの空間距離の

変動,紙 のばたつきやシワ,紙 粉や汚れの侵入

や堆積,高 温高湿度,静 電気などの外乱に影響

されにくいセンサー設計などが必要である。こ

れ らを補正する自動校正機能はシステムにとっ

て不可欠である。

(3)サ ンプリング測定である。

検出器は紙上 を走査 しなが ら常時測定す る

が,紙 の走行方向に直角に走査するため,測 定

点の軌跡はジグザグ状でサ ンプリング測定 とな

(49)

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466 RADIOISOTOPES Vol. 46, No. 7

図4測 定点の軌跡

る(図4)。 したがって,紙 の幅方向の測定値

は信号処理により正 しい情報に再現させる必要

がある。最近は紙品質の幅方向プロファイル制

御が 一般的になっており,検 出器に対 し幅方向

分解能や応答を最適化 し,制 御に結びつけるこ

とが要求されることが多い。

2・2原 理

放射性同位元素か ら放出されたβ線が紙を

図5(1)坪 量 の測定原理

透過するとき,そ のβ線の減衰量が紙の坪量

によって決まることを利用 して坪量は測定され

る。

図5(1)の ように,放 射線源 とβ線検出器の

間に紙 を置いたとき,紙 を透過 したβ線の強

度 は次式で表 され,坪 量 との関係は図5(2)の

ようになる。

I/I0=exp(-xA・BW)

I:紙 を 透 過 した後 の β線 強度

I0:紙 を 透 過 す る前 の β線 強 度

xA:紙 の 質 量 吸 収 係 数(m2/g)

(紙 の原 料 組 成 に よ って決 ま る定 数)

BW:紙 の 坪 量(g/m2)

2・3構 成 と仕様

2・3・1構 成

坪量計(B/M計)は 大きく分けて,測 定部,

データ処理部,制 御部の三つの基本パー トか ら

成 り,そ れ らを専用のデータウェイで結んだ機

能水平分散型の構成となっている(図6)。

(1)測 定部

放射線を使用 した坪量計を含む紙品質測定セ

ンサーを搭載 した上下ヘッド部,そ れを走行さ

せる駆動機構を持っフレーム部およびセンサー

の測定デー タを演算処理す るCPU部 か らな

る。走査速度は25m/分 の高速走行を実現する

ため,フ レームは軽量かっ高剛性のモノコック

図5(2)坪 量 とβ線透過強度 との関係(ポ リエ ステル標 準 フィル ム)

(50)

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Jul. 1997 RI・ 放射線 の産業利用 467

図6B/M計 システ ム構成

構造 となっている。

(2)デ ータ処理部

CRT,キ ーボー ド,CPUお よびハー ドデ ィ

スクからなり,測 定 したデータの演算処理を行

う。 さらに品質データの表示,目 標値の入力な

どオペレータとの対話 の役割を も合わせ持つ。

最近ではオペ レータの操業を支援するガイダン

ス機能の強化や銘柄変更制御機能の高度化が進

あられている。

(3)制 御部

測定 した値を目標値に維持するための制御演

算 を行 い,制 御用操作端へ制御信号を出力す

る。制御演算を行 うCPUは プロセスと直接関

わりがあるため,CPUダ ウン時 もシステム全

体 が停止 しないようCPUは 二重化 されてい

る。

2・3・2特 性

(1)放 射線源

β線源は測定する坪量に応 じて厚手のものは

クリプ トン85(85Kr)を,ま た薄手 のものには

プロメチウム147(147Pm)の 線源を選択使用す

る。

85Krは 坪量範囲10-1200g/m2に 適 し,ル

ビジウム(85Rb)へ 崩壊す るときに0.687MeV

の β線を放射する半減期10.76年 の気体状人

工放射性核 種であ る。 坪量計 に使 用 され る

85Krは チタン製の容器に密封されている。147Pmは 坪量範囲10-100g/m2に 適 し

,サ

マ リウム(147Sm)へ 崩壊 す るときに0.224

MeVの β線を放射する半減期2.623年 の固体

状人工放射性核種である。坪量計に使用される

147Pmは ステンレス鋼製の基板上にセラミック

エナメルとともに焼き固め られた状態で,容 器

に密封 されている。

(2)電 離箱

電離箱は上ヘッド内に収あ られ,β 線の強度

に対応 した電離電流を得る。電離箱の内部には

乾燥気体が封入されており,印 加電極と集電極

の両電極間にはDC300Vの 電圧が印加 されて

いる。測定対象物(紙)を 透過 して きた β線

は,ア ル ミ蒸着されたポリエステルフィルム製

の窓部から電離箱内に入射する。窓部の直径は

90mm,検 出効率 は約5%で 定期的 に自動

キャリブレーションが実施 される。

(3)外 乱対策

測定に影響を及ぼす外乱には,紙 の温度,雰

囲気温度湿度,紙 粉 ダス ト,静 電気などがあ

る。坪量計では,空 気層1mmは 坪量換算で

1.3g/m2に 相当するため,線 源と電離箱間の

空気層の密度変動をいかに補償するかが重要な

ポイントとなる。そのため検出ヘ ッド全体を恒

温化 し,さ らに恒温化されたエアで線源と電離

箱間の隙間や測定窓をエアパージし,空 気層の

温度変動や測定窓に堆積するダストを最小限に

おさえている。また,上 下ヘ ッド間の距離や空

気層の温度や気圧を測定 し補正を加 えた り1),

線源を回転ボディー内に組み込み従来のシャッ

ター機構をな くして線源を電離箱に極力近づけ

てS/N比 を向上 させ る工夫を している例2)も

ある(図7)。 さらに一定時間 ごとに検出ヘ ッ

ドをオフシートさせ,自 動的にゼロとスパ ンを

調整 し,堆 積 ダス ト量や線源の減衰 の補正を

行ったり,べ ースシャーシに取 り付けた自己放

電式除電器で静電気を除去することにより,外

乱に対 して安定かっ高精度な測定が可能になっ

(51)

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図7改 良型 シャッター機構(メ ジ ャレックス社 の例)

ている。

(4)オ ンライン検定

紙の原料組成や設置条件(雰 囲気温度湿度や

紙のばたつ きなど)が 精度 に影響を与えるた

め,設 置後はオンラインでの測定値とサンプリ

ングした紙の実測値を比較 し,精 度の検定を定

期的に実施 している。

2・3・3仕 様

(1)測 定 原 理:β 線 透 過 型 厚 み計

(2)測 定 範 囲:85Kr:坪 量 範 囲10-1200

g/m2

147Pm:坪 量 範 囲10-100

g/m2

(3)線 源:85Kr15.54GBq(420mCi)

147Pm12 .95GBq(350mCi)

(4)線 源 交 換 周 期:推 奨5年

(5)検 出 器:電 離 箱

(6)紙 の 測定 面 積:25mmφ

(7)測 定環 境:

紙 温 度0-100℃(紙 か らの 垂 直 距 離 が

10cm離 れ た位 置 の温 度 が50℃

以 下 の こ と)

周 囲 温 度0-50℃(水 冷 ユ ニ ッ ト使 用 の

場 合900Cま で可 能)

周 囲 湿 度20-90%RH(た だ し結 露 が な

い こ と)

2・3・4精 度(以 下 の精 度 は2σ 値 を示 す)

(1)標 準 サ ンプル を 基 準 位 置 で 測 定 した場 合

の 繰 返 し精 度:±0.2%(た だ し100g/m2

以 下 は ±0.2g/m2)

(2)検 出 ヘ ッ ドに標 準 サ ン プル を搭 載 し,走

査 した場 合 の1走 査 ご との平 均 値 デ ー タの

繰 返 し精 度:±0.2%(た だ し100g/m2以

下 は ±0.2g/m2)

(3)走 行 特 性 に起 因 す る精 度:±0.2%(た

だ し100g/m2以 下 は ±0.2g/m2)

(4)オ ン ラ イ ン測 定 時 の 計 器 精 度:±0.3%

(た だ し100g/m2以 下 は ±0.3g/m2)

2・4導 入 ・使 用 に あ た って の 留 意 点

2・4・1留 意 点

(1)設 置位 置 に つ い て

aセ ンサ ー の設 置位 置 は熱 に よ る フ レー ム の

歪 み や ケ ー ブル の劣 化 を 防 ぐた め,ド ライ ヤ

直後 な ど60℃ 以 上 の高 温 雰 囲気 の 所 は避 け

る こ と。

b紙 の ば た つ きや紙 端 の カ ー ル が大 きい場 合

は押 え ロー ル を付 け るか フ リー な紙 パ ス を短

く し使 用 す る こ と。

c通 紙 ロー プ や通 紙 装 置 と測 定 ヘ ッ ドが干 渉

しな い よ う設 置 位 置 を決 め る こ と。

(2)紙 サ ン プ ル を あ らか じめ メ ー カ ー へ 送

り,銘 柄 別 に質 量 吸 収 係 数 を決 定 して お く こ

と。

(3)設 置 後,オ ン ライ ン検 定 を定 期 的 に実 施

す る こ とが望 ま しい。

(4)線 源 は5年 ご とに更 新 す る。

(5)フ レー ム 内 の稼 動 ケ ー ブ ル は5年 ごと に

更 新 す る。

2・4・2安 全 面 で の留 意 点

(52)

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Jul. 1997 RI・ 放 射線 の産 業利 用 469

(1)線 源容器の安全性

線源容器の構造や性能,試 験方法などについ

ては,日 本工業規格 「放射線厚 さ計の線源容

器」(JISZ4614-1973)3)に 規定 されている。

a線 源容器の放射線遮蔽能力

シャッター閉の状態で,容 器外面か ら50

cmの 距離で6μSv/h以 下であること。

b線 源容器の機構的安全性

線源容器自体の機構 はすべて安全サイ ドに

作動すること。たとえば,シ ャッターは停電

時 もしくは温度 ヒューズが切れた場合(110

℃ 以上で断)は スプ リングの力で シャッ

ター閉 となる。

c線 源容器の耐火災安全性

線源容器はβ線の場合,ま ず β線を遮蔽

するため低原子番号の物質で線源を囲み,次

に発生す る制動放射線を遮蔽するため鉛など

の高原子番号の物質で囲み,こ れらの遮蔽体

を耐火性のステンレス鋼でおおう構造になっ

ている。ちなみに鉛の融点 は327℃,ス テン

レス鋼は1400℃ である。

(2)線 源部に隣接 した保守作業時の留意点

「放射線障害予防規定」を遵守すること。

特に以下の点に留意す ること。

a作 業 日時,内 容を事前に放射線取扱主任者

に連絡。

bフ ィルムバ ッジなど放射線測定用具を携

行。

c必 要以上に線源部に近寄 らないこと。

d放 射線障害を予防するため保護眼鏡など保

護具を着用すること。

e作 業前に線源部のシャッター閉を確認。

f線 源が漏洩 した場合は人命の安全を最優先

とし,か っ工程停止や製品出荷停止など放射

能汚染拡大の防止に努めること。

2・4・3概 算費用

(1)坪 量 ・水分計(B/M計)約4000万 円~

フレーム1本

データ表示用操作画面1台

流れ方向坪量および水分制御

専用ケーブル

(2)工 事費用 約400万 円~

据付 ・配線 ・配管工事

(3)納 期 約6か 月

2・5実 施例

B/M計 の検出器と0型 フレームの外観の例

を図8に 示す。O型 フレームの内側を紙が走行

し,紙 をはさんで上側検出ヘッ ドと下側検出

ヘッドが同期 して横方向に往復走査する。

B/M計 が抄紙機に設置された例を図9に 示

す。本例では塗工機前と最終 リール前 にB/M

図8B/M計 外観(横 河電機製BM7000XLの 例)

(53)

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470 RADIOISOTOPES Vol. 46, No. 7

図9B/M計 の抄紙機 への設 置例

計が2台 設置されており,製 品の坪量だけでな

く2台 のB/M計 の坪量差から塗工量 も測定 し

ている。 ここではB/M計 は総合品質測定制御

システムの中核をなしており,紙 の流れ方向の

坪量 ・水分 ・塗工量制御ばかりではなく幅方向

の各種制御アクチエータにより幅方向の坪量 ・

水分 ・紙厚制御が可能になっている。

またコンピュータにより幅方向および流れ方

向の各種品質が測定され,オ ペレータにわかり

やすいように統計処理され操作画面に表示 され

る。幅方向品質プロファイルの画面表示例を図

10に 示す。さらに測定された各種品質や抄紙

機の操業条件は上位の製品管理 コンピュータへ

伝送される。そのほか銘柄変更制御やスター ト

アップ制御,品 質の幅方向の空間周波数解析機

能などによりオペ レー タの操業を支援 してい

る。

B/M計 のシステム構成例を図11に 示す。

3.紙 パルプ産業における利用普及への提言

RI利 用の測定機器は,非 接触かっ非破壊で

外乱に強いという長所があるものの,法 規制の

拘束を受けるという短所がある。

図10紙 幅方向品質 プロフ ァイル画面例

規制緩和や微弱RI利 用測定機器 の用途開発

が進めば,さ らにRI利 用測定機器の普及が見

込まれるであろう。

3・1密 封線源による放射線利用の規制緩和

紙パルプ産業で利用されるRIは 密封線源で

あり,現 在の規制緩和の趨勢の中,効 率的で簡

素な行政運用が望まれる。

(54)

Page 8: 資 料 RI・放射線の産業利用* II.産 業各分野におけるRI等 利用例

Jul. 1997 RI・ 放射線 の産業利用 471

図11B/M計 の システム構成例

特に,密 封線源使用に対する許認可手続 きの

簡素化と迅速化,放 射線利用の監督官庁の業務

の効率化などが挙げられる。

3・2密 封線源使用者の事故時管理体制の

充実

密封線源使用者側が自主的に事故時管理体制

の充実を図ることは当然のことである。少量の

密封線源であって も,事 故時は非密封状態にな

るわけで,日 頃か らの事故時管理教育,事 故時

管理体制および事故時管理マニュアルなどの充

実が必要である。

3・3微 弱RI利 用測定機器の用途開発

法規制値以下(数 量3.7MBq以 下または濃

度74Bq/g以 下)の ため放射線取扱主任者や

法令 による届 出が不要な微 弱

RI利 用測定機器の用途拡大が

望まれる。低線量による精度不

足を補 うための高感度検出器の

開発や電子回路技術,計 算機処

理技 術の開発 が待 たれる。 実

際,低 線量の密度計はすでに市

販されるなど,低 線量化への利

用者のニーズは大 きく,そ こに

ビジネスチ ャンスも大 き く広

が っていると思われる。

4.お わ り に

赤外線などの代替技術 と競合

する中,RIだ けが持ち得 る長

所 を十分に発揮 し,RI利 用の

測定機器が これからも紙パルプ

産業の一助 として発展 していく

ことを期待 したい。

文 献

1) 明円 隆:山 武-ア キ ュ レイ ・スマー ト坪量計,

紙パ ルプ技術 タイムス, 36, (9), 24 (1993)

2) 設楽 久敬:MX Openの 新 しい計測技術―Pre-

cision PLUS―,同 上, 36, (9), 18 (1993)

3) 日本工業規格 「放射線厚 さ計 の線源容器」JISZ

4614-1973,(財)日 本 規格協 会,昭 和48年8月1

日制定

4) 石川宏俊:連 載B/M計 講座 第1回,紙 パ ル

プ技術 タイ ムス, 32, 69 (1989)他

5) “紙 パ ル プ製 造 技術 シ リー ズ(10)紙 パ ル プ計

装 ・制御 システム”,紙パル プ技術協 会 (1992)

6) 日本 アイ ソ トープ協 会編:“ ラジオアイ ソ トー

プ基礎 か ら取扱 まで”,丸善,東 京 (1991)

7) “放射 線障害 防止法解説 と手続便覧”,日本原子

力産業会議 (1990)

8) “放射 線計測器 ガイ ドブ ック勢,(社)日本電 気計測

器工業会放射線計測器委員会 (1992)

(55)