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デジタル画像処理とグラフィック・アートのための カラーコミュニケーション、カラー測定およびカラー制御について [カラーガイドと用語解説]

カラーガイドと用語解説 - sdg-net.co.jp · 今日、カラーコミュニケーション、あるいはカラー情報を用いたビジネスなどカラー情報 は、事実上ほとんどの商品販売を推進するために必要不可欠なものとして、ますます注目

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デジタル画像処理とグラフィック・アートのためのカラーコミュニケーション、カラー測定およびカラー制御について

[カラーガイドと用語解説]

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目 次

1 カラーコミュニケーション ……………………………………………1

色彩に関する知識 …………………………………………………………4CIEカラーシステム ……………………………………………………14分光特性データ VS 三刺激値データ …………………………………19

2 カラー測定とコントロール…………………………………………22測定器 ……………………………………………………………………22グラフィック・アートのワークフローにおけるカラー測定アプリケーション……26カラー仕様書 ……………………………………………………………27カラーマネージメント …………………………………………………28色の特性 …………………………………………………………………35カラー制御 ………………………………………………………………35色校正 ……………………………………………………………………37

3 Glossary[用語解説] …………………………………………………41

©X-Rite® 、X-RiteColor®、the X-RiteColor logo、Digital Swatchbook®、X-Scan®、QuickInk®はX-Rite Incorporated.の登録商標です。Adobe、Adobe PageMaker、PostScriptは登録商標で、Adobe Photoshop、Adobe IllustratorはAdobe Systems Incorporatedの登録商標です。Encapsulated PostScript (EPS)はAltsys Corporationの登録商標です。FreeHandはMacromedia Inc.の登録商標です。QuarkXPressはQuark Inc.の登録商標です。その他すべての商標あるいは製品名が商標あるいはそれぞれの保有者の登録商標です。本小冊子での引用は第三者製品の言及が情報の目的のみのためであって、是認と推薦のいずれも該当しません。X-Rite、Incorporatedは講演あるいはこれらの第三者製品の使用に対する責任をとりません。Apple Macintoshはアメリカ合衆国と他の国で登録されたApple Computer Inc.の登録商標です。Mac、ColorSyncはApple Computer Inc.の登録商標です。

[カラーガイドと用語解説]デジタル画像処理とグラフィック・アートのためのカラーコミュニケーション、カラー測定およびカラー制御について

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今日、カラーコミュニケーション、あるいはカラー情報を用いたビジネスなどカラー情報

は、事実上ほとんどの商品販売を推進するために必要不可欠なものとして、ますます注目

されつつあります。それは、製品の購買意欲をかき立てる一つの要因だからです。デザイ

ン関連、グラフィック関連そして画像処理のプロの間では、カラー情報は購買の意志決定の

重要な要因であるが故に、販売戦略における重要な部分の一つと認知されつつあります。

もし、製造およびマーケティング段階で効果的にカラー情報を使えるならば、潜在的な顧

客からその製品の付加価値の高さについて理解を得られるでしょう。

1

1 カラーコミュニケーション

効果的にカラー情報を利用するには、きちんとした取り決めを守らなければなりません。カ

ラー情報を用いたワークフローはデザイナーのアイディアや顧客の色指定からスタートして

います。アイディアや指示に従って、カラーを表現および再現する方式の異なる多くの周辺

機器を使って相互に正確なカラーコミュニケーションを実現しなればなりません。それぞれ

の製品の位置づけによって、前段の「入力作業」は後段の「出力作業」へとつながってゆきま

す。この作業の流れの中でデバイス間の色空間の変換が必要になります。例えば、写真フィ

ルムからモニタRGBそしてCMYKプロセスの色校正や各種システムでの印刷などへと色情

報はそれぞれの色空間に変換されます。そして、その出力結果はそれぞれ異なった観察条件

と異なった観察者によって評価されることになります。

この複雑なプロセス全体を通して、いかにしてオリジナルのアイディアや顧客の色表現を確

実にフイードバックし保証すべきか?本小冊子はこの重要な疑問に答えるために作られまし

た。もし色を管理・運営でき、制御できるとすれば、その答えは「カラー測定」にあります。

これ以降のページでは、カラーコミュニケーション、カラー測定およびその制御方法につい

ての基本原理について解説しています。

これらのGATFによる画像テストは、カラー情報を高精度に再現しなければいけな

いという事実を物語っています。もし、肌、青空、芝生の緑および食物などのカラ

ー情報が、再現する能力が十分でないために「一部の色情報が失われた」とすると、

それらの画像は全体的にマイナスな印象を与えてします。

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チャレンジ:カラーコミュニケーション The Challenge: Color Communication

顧客の色指定をきちんと守っていくために、多くのプロセスの各スッテプで、色に関する責

任のバトンを正しく伝えていかなければなりません。

• クライアントは、メッセージを明確にし、イメージのコンセプトを決定します。一般的も

しくは具体的な色やぺ-パの指定をおこないます。

• グラフィックデザイナーやフォトグラファーは、画像、アートワークそして版下ファイルを

提供します。場合によっては、色校正出力やデジタルでの色の指示を提出します。

• 製版サービス関係者は、最終カラー分解フィルムを提供し、再現できない色についての情

報提供や色校正出力結果、あるいはデジタルでの色の指示を提出します。

• 印刷インキ供給元は、用紙の指定条件を十分に考慮し、色指定条件に合ったインキを供給

します。

• 印刷会社は、色指定条件に合った最終印刷物を提出します。

カラー再現プロセスの各ステップでは、各々のメッセージに対して価値とその具体的な内容が

付加されます。きちんとした色指定をおこなうことで、それぞれのプロセスが受け取った素

材を基に、正確な色を提供することを確かなものにします。

高品質なカラードキュメント作成に努めるために、それぞれの制作段階で色をコントロールす

ることに努力しています。しかしながらそれぞれの作業段階では、同じ色がそれぞれ独自の方

法で解釈され表示されてしまいます。

• オリジナルの風景には、幅広い自然で鮮やかな色が含まれています。

• フォトグラフィック上の風景イメージではその多くの色を保存しようとします。しかし、画

像がRGBデータで読み取られる時にいくつかの魅力的なトーンを持つ色情報は失われま

す。さらに読取画像がモニタ上に映し出された時にも多くの色情報が失われます。また、

異なったモニタ装置で同じカラーイメージを表示させると微妙な差異が生じます。

The Color Guide and Glossary

2

input

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• フォトレタッチソフト、イラストレーション作成ソフト、レイアウトソフトへ

とアートワーク作業が移行するように、カラー情報も異なった方法で受け渡されてい

きます。例えば、マゼンタ87%、イエロー91%の色指定は、Photoshop™、FreeHand™

あるいはQuarkXPress®上でわずかに異なった色として生成されます。

• アートワーク作業の結果を印刷する時に、カラー情報はRGBデータからCMYKデータへ

色分解処理さされます。レーザコピー、プルーファーや印刷機など異なったデバイスでカ

ラー情報の微妙な差異が生じます。

• 出力結果を評価する時、私たちはそれぞれ異なる照明条件の基で色を評価しますが、こ

の異なる照明が色の見え方に大きく影響を及ぼします。またそれぞれが独自の経験と記

憶をもとに色を見てしまいます。

この様なプロセスを通して「どのデバイスが『真実』の色を再現するのか?」といったの疑問が

生じます。 残念ながら、現状ではいかなるビュアー、アプリケーション、デバイスを使用して

も「真実」の色を再現することはできません。人は単に照明やその他多くの要素に影響される

色の「見え」を知覚しているだけなのです。

ソリューション:カラー測定とその制御 The Solution: Color Measurement and Control

色の測定は、一貫生産管理を行うためのキーになっています。これに関してはインチや

mmで長さを測定したり、ポンドやグラムで重さを測定するのと同じことです。これら

の物差しは生産プロセスにおいて繰り返し利用可能な正確な測定基準を確立し、すべて

の製造物が同様にかつ品質の許容範囲内に収まることを確実にします。計測されたカ

ラーデータを使うことで、同様に色を扱うことができるようになります。すなわち、制

作プロセスのそれぞれの段階で色を監視でき、繰り返し可能で標準的な数値データを

使って色の一致性をチェックできます。それでは色のどんな特性がそれぞれを個有のも

のとし、計測を可能にするのでしょうか?

自然界や人間の心理においてどのように色が発生しているのか?、モニタ画面や紙の上でど

のように再現されているのか?そして、反射率データ(スペクトルデータ)や三次元データ(三

刺激値データ)として色がどのように情報交換されているのか?といった色に関する本質を

調べて見ましょう。

Color Communication

3

構想から印刷まで:グラフイックアーツのワークフローは得意先に始まり得意先に終わります。我々が直面しているたいへんな問題は、全てのステージにおいて首尾一貫した色再現が求められていることです。

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測色方法を明確に理解するためには、最初に色に関する物理学的・生理学的な基本特性知る必

要があります。色は光源、物体および視覚者の相互作用によって決まります。光は物体によっ

て組成が変えられます。その意味で視覚者(人間の視覚システムのような)は、その変化し

た光を個々の色として知覚しているのです。人が色が存在することを知覚するためには、これ

ら3つ全ての要素が必要となります。まず最初に光について調べ、色彩のなりたちについて詳

細を考察しましょう。

The Color Guide and Glossary

4

色彩に関する知識 UNDERSTANDING COLOR

光:波長と可視スペクトル Light Wavelengths and the Visible Spectrum

光は電磁波スペクトルの一部です。光はしばしば波から成り立っているとされてい

ます。通常波それぞれの波頭から次の波頭まで長さを「波長」として記述されます。

光の場合波長はナノメータ(nm)を単位として計測され、ナノメータ(nm)は1ミリ

の100万分の1にあたります。

波長

人間の目に見える電磁波スペクトル(分光)領域(可視領域)はおよそ 400nm から 700nm

と云われています。これは広域な電磁波スペクトルのほんの一部分でしかありません。人間は

広域な電磁波スペクトルを知覚することはできませんが、他の方法で可視領域外の電磁波スペ

クトルを利用しています。例えば、レントゲン写真で利用されている短波長やラジオとテレビ

で利用されている長波長などがそれです。

人間の目は、可視スペクトル波長を視覚する受光センサを持っています。受光センサが可視光

波長を感じたとき、受光センサが人間の脳にその信号を送ります。その時、これらの信号は特

定の色として脳で認識されます。正確には色の認知は、可視光波長の中の波長成分に依存して

います。例えば、受光センサは、全ての可視光波長成分を一度に検出した場合、脳は白色の光

として認識します。また、全ての可視光波長成分を検出できなかった場合、光の供給が全くな

い黒として認識します。

可 視 ス ペ ク ト ル

宇 宙 線 紫 外 線 赤 外 線 レ ー ダ ーX 線 無 線

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今日、人間の目と脳が、すべての可視光波長がある場合、また全く可視光波長がない場合

にそれぞれにどのように反応するのかが解明されてきています。

次に人間の視覚システムが個々の可視光波長にどのように応答するのか考察してみましょう。

白色光線をプリズムに通すと、人間の目がそれぞれの波長毎に感じる色を観察することがで

きます。この実験は、異なった波長の光をそれぞれ異なった色として人間が認識していること

を示しています。人間は、赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青色、藍色、菫色(青紫色)など隣同

士連続的に混ざり合っている「虹色」の可視成分を識別します。

人間の視覚システムが700nm 付近の波長を感じると、「赤色」として認識します。また、

450~500nm 付近の波長を感じる時、「青色」として認識します。400nm付近の波長は

「菫色」とします。このような反応は、人間の視覚システムが日々に何十億という異なった色を

認別する基本的な仕組みです。

Color Communication

5

菫(青紫)

しかしながら、純粋な白色光のような全ての波長成分、あるいは単一の波長のみを感じること

はほとんどありません。人間にとっての色の世界は実に複雑です。もう色は単に光の一部では

ないことにお気づきのことでしょう。人間が色を見るとき、多くの波長の分布として新しく補

正された光を感じます。例えば、赤い色の物体を見るとき、「主に赤色」付近の波長成分を含ん

だ光を検出しています。つまりすべての被写体は光の性質を変えることで独自の色を持つこ

とを意味しています。それぞれの被写体はユニークな波長成分の合成結果を人間の目に送る

ため、人間はカラフルな被写体の世界を見ているのです。次にどのように被写体が光に影響を

与えるかを考察してみましょう。

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被写体:波長を処理する仕組み Objects―Manipulating Wavelengths

光の波が被写体に照射された時、被写体の表面はいくつかのスペクトル・エネルギーを吸収し、

残った全てのスペクトルは表面から反射されます。この被写体から反射した光は被写体によっ

て性質の変えられた光であり、全く新しい波長成分の合成結果となっています。種々の絵の具、

染料とインクを含んでいる表面は、それぞれ異なったユニークな波長成分の合成結果を作り出し

ます。

光は、紙のように反射性の被写体に反射したり、フィルムやスライドのような透過性の被写体を

透過したりして修正されます。それ自身が発光する光源(人工的な光源やコンピュータのモニ

タの様な放射性の被写体)も、それ自身でユニークな波長成分の分布を持っています。

反射、透過あるいは発光した光は、最も純粋な意味で「物体色」です。それぞれの被写体が独自

の方法で光に影響を与えるため、異なった被写体表面の数だけ異なった色が存在するという

ことになります。

The Color Guide and Glossary

6

被写体を通過した後の波長パターンは、被写体のスペクトル・データです。これはしばしば「色

の指紋」と呼ばれています。このスペクトル・データはそれぞれの波長成分を精密に検査・測定

することで得られます。この検査は我々が理解できる値として各波長の視覚者に返される割合

(反射率強度)を決定します。

スペクトル・カーブとしてその測定データをプロットすることによって視覚的に色のスペクトル

特性を調べることができます。このデータ形式はX-Rite社のDigital Swatchbook®、938 、分

光測色計530、DTP41、あるいは自動走査分光測色計(ATS) システムの様な測定機器・シ

ステムを利用することで収集することができます。

反射型オブジェクト 透過型オブジェクト

発光性オブジェクト

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スペクトル(分光)・データ Spectral Data

スペクトルデータは、「色の指紋」の視覚表現であるスペクトル曲線としてプロットできます。光

の波長と反射率強度は、曲線をプロットする際の二つの独立した値として扱われます:300nm

間の値を横軸に、各波長での反射率強度を縦軸に取ります。

X-Rite社のColorShopのSpectrum Compareツールを使うと、波長軸に沿ってカラー曲

線の形状の違い(どこで増加特性を示し、どこで減少特性を示すか)を比較できます。

スペクトルデータを計算するために、分光測色計は波長軸に沿って各ポイントをサンプリング

します(例えば、X-Rite社のDigital Swatchbookでは10mm間隔で31ポイントをサンプ

リングします)。その時、分光測色計は各波長での反射率強度の大きさを計測します。これは

理解しやすい色の最も安全かつ確実な記述方法です。後に他のカラーモデルと測定仕様を比

較しながら、スペクトルデータの持つ意義と精度について説明します。

Color Communication

7

これまでのところ、どのように被写体がそれぞれの色を作り出すため光に影響を与え、どのよ

うに分光測色計がその影響の度合を直接測定できるかなど、「光」と「被写体」について学習を

進めてきました。色を完全に記述するためには、すでにおわかりのように、視覚(色を感知し

認識する人間の目や他のデバイスの仕組み)についてもう少し学習を進める必要があります。

「赤レンガ」のスペクトル(分光)曲線 です。オレンジから赤の領域で急激に 値が増加しています。

「ロゴ・プラム」のスペクトル(分光)曲線 です。青と赤の領域で強い成分がミックス されています。

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視覚:「色」として波長を感知する仕組み Viewer_Sensing Wavelengths as "Color"

色が見えるものとして存在するためには、色の三要素(光源、被写体、観測者)が必要不可欠で

す。光源が存在しなかったら、全ての波長成分は存在しません。被写体が存在しなかったら、

光の波長成分は色に反応せず、真っ白しか存在しません。観測者が存在しなかったら、ユニー

クな「色」としての波長成分を認知し、記憶へと登録するであろう感覚的な応答が存在しなくな

ります。

よく知られているなぞなぞ....

として「もし森の中に木が落ち、そこで誰もそれを聞いていなかっ

たなら、木は音を立てたのだろうか?」というものもあります。実際によく似た設問として、色

に関して「もし赤いバラを見ていないならば、バラには色が付いていたのだろうか?」という

問いがあります。答えは驚くことに「NO、(付いていない)」です。技術的にはその色には波長成

分の形式で存在しています。しかしながら、この場合の「赤」として知られている色は、人間の

視覚感知システムがそれらの波長に反応した後、人間の深層心理の中に存在しているだけなの

です。

三刺激値を使って正確に色を表現するためには、色を観察する際に使う光源の特性を正確に定

義する必要があります。

The Color Guide and Glossary

8

観察者が存在しなかったら、バラの色は

実際には存在しません。赤色として存在するためには

反射光の波長合成プロセスが必要です。

しかし、「赤色」として感じ、

記憶している色は人間の深層心理

の中に存在しています。

人間の視覚の基礎は目の中にある受光センサのネットワークです。これらの受光センサは、ユ

ニークなパターンの電気信号を脳に送ることによって異なった波長を感知します。脳の中でこ

れらの信号は、視覚、光そして色の刺激に変換されます。記憶システムが個別の色を認別する

様に、その時感知した色と名前とを関連づけています。

それでは、人間の脳も不連続な波長情報をチェックし、我々が見ている全ての色について曲線

を描いているのでしょうか?いいえ、そうではありません。それをするには人間の視覚システ

ムは波長情報を刻々と受け、殺到する新しい波長情報を受け付けるために超高速な処理を行

わなければなりません。そこでシステムの驚異的な仕組みは、その代わりに膨大な波長情報を

高速に処理するためのより効果的な方法を採用しています。可視スペクトル特性を赤、緑と青

色の最も主要な範囲に分割して、カラー情報を計算する色成分の分析に専念するのです。

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RGB:加法混色の原色 RGB―Color's Additive Primaries

これらの原色を異なったコンビネーションで(この色を加法混色の原色といいます。)、自然界

に存在する全ての色を非常に綿密にシミュレーションできます。もし反射光が純粋な赤成分、

緑成分、そして青成分の光の混合で成り立っているならば、人間の目は白として認識します。も

しどの成分の光も混合されていなかったら、黒として認識されます。2つの純粋な加法混色の

原色を結合すると減法混色の原色になります。シアン、マゼンタ、イエローの減法混色は、そ

れぞれ赤、緑と青の補色関係にあります。

Color Communication

9

人間の目の3刺激値によるカラーシステムは、カラース

キャナ、モニタ、プリンタなどの発明者にとって開発のお

手本となりました。これらのデバイスに使われているカ

ラー表現方法は、まさに赤成分、緑成分、そして青成分の

光に対する人間の刺激を基礎としています。

モニタ表面は微細な画素の集まりで構成されています。

それぞれの画素はRGBの蛍光体を含んでいます。

この蛍光体はモニタ内から発する電子によって変化します。ぞれぞれの蛍光体に照射される電子の量に相当する電荷を変化させることで異なった色を表現することが可能となります。

2つの加法混色の原色が重なり合うと減法混色の原色となります。加法混色において3色すべてが混ざり合うと白色となります。

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人間の目のように、これらのデバイスもスクリーンや紙面上の膨大なカラー情報を処理しなけ

ればなりません。論理的な方法で、デバイスはカラフルな幻影を作り出すために、人間の目の

加法混色の原色に対する反応を模倣しています。例えば、モニタは、小さなピクセルの1つ1

つから発せられるさまざまな強さの赤、緑、青の光をまぜ合わせます。これらのピクセルは

人の目の解像力に対して十分に小さいため、人の目はそれらが3つの色であるにもかかわら

ずだまされるようにたくさんに色を知覚してしますのです。

The Color Guide and Glossary

10

CMY & CMYK:減法混色の原色 CMY and CMYK-The Subtractive Primaries

モニタ装置やスキャナ装置は、まっ暗な状態に直接赤、緑、青の光を加えるような自

身が発光デバイスであるため、加法混色を利用しています。一方、プリンタ装置は紙

や他のベース上に色を形成しなければならず、反射光の仕組みを利用する必要があ

ります。これを実現するためにプリンタ装置はモニタ装置やスキャナ装置と補色関

係にあるシアン、マゼンタ、イエローの減法混色の原色を利用しています。

単色 インキ

オーバー プリント

インキの色 吸 収 反 射 見え方

(絵の具ではない) (光ではない)

(光ではない)

可視スペクトル内でシアンは赤の補色であり、マゼンタは緑の補色、そしてイエローは青の補

色です。シアン、マゼンタ、イエローの絵の具で白色あるいは反射素材上に描こうとする時、白

色光は絵の具の補色を完全に完全吸収あるいは減法処理されます。このため、印刷過程では、

白い紙面から反射される赤、緑、青の光量を制御する目的でシアン、マゼンタ、イエローのイン

キが使われています。

これらの色はハーフトーン・パターン(網点パターン)の異なる層として紙面上に印刷されます。

異なった色と調子は、網点のサイズ、バランスおよびスクリーン角度によって表現されます。

*理論的には三色全てが混色する

時、黒色が作り出されることになり

ますが、実際にはシアン、マゼンタ、

イエローのインキを使っても、おお

むね濁った茶灰色となります。この

ため、印刷過程では、テキストや他

の重要な細部での明瞭かつ堅実な

黒を保証し、印刷の全体的な調子再

現を改善するために、純粋な黒いイ

ンキが第四の材料として付加される

のです。

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さまざまな網点サイズはモニタ上の赤、緑、青の発光特性の強弱と類似した効果を示します。

この図は、いかにして減法混色の原色が色再現のために光から反対色の成分を吸収している

かを示しています。

HSL:色の3次元 HSL―The Three Dimensions of Color

これまでのところ、色が複雑な波長情報から成り立っており、人間の目、モニタ装置そしてプ

リンタ装置は、その波長情報を単純化し、定量化するために根本的な色の三原色システムに変

換していることを説明しました。カラー記述を単純化するもう1つの方法として色の三属性あ

るいは「三次元」で記述する方法があります。

Color Communication

11

鮮やかな 赤色

鮮やかな 赤色

暗い 緑色

くすんだ 赤色

明るい 赤色

暗い 赤色

暗い グレー

明るい グレー

光の波にも色相、彩度、明度の属性に直接影響を与える三つの属性があります。波長成分は色

相に相当し、曲線の単純さは彩度に相当し、波の振幅高さは明度に相当します。

スペクトル曲線は波の属性と人間がこれらの属性を知覚する方法との相互関係を示していま

す。鮮やかでカラフルな被写体は、高くて明確なスペクトル成分を有しています。

• 色相(Hue) :赤、ピンク、青あるいはオレンジのような基本的なカラー表現

• 彩度(Saturation):色の鮮明さあるいは鈍さの表現

• 明度(Lightness):色の明るさあるいは暗さの表現

波長成分で曲線の立ち上がり位置が色相に相当します。

曲線の純度(曲線形状の明確さ)が彩度に相当します。

曲線の振幅(曲線の高さ)が明度に相当します。

低彩度な色とは曲線のシャープさや変化がないことです。

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色 相

明 度

白色に近い明るいグレーの被写体は、おおむね一様なスペクトル分布を示しています。暗いグ

レー、暗い茶色そして黒色の被写体は大半のスペクトルエネルギーを吸収しています。

色空間:色の3次元マッピング Color Space―Mapping Color’s Dimensions

色相、彩度、明度は目に見える色の三次元化の一手法です。これらの属性は色空間の中で目に

見える色を図示化するために3つの座標軸が使用されます。20世紀初頭の芸術家A.H.Munsell

(マンセル・カラー・チャートの創作者)は、三次元色空間の直感的な表現方法の開発者として有

名です。現在では彼が考案したマンセルカラーをベースに、あるいはそれと類似するような多

くの異なった色空間表現が存在しています。

基本的には色相(Hue)、彩度(Chroma)、明度(Value)をベースとした色空間は、円柱上の座

The Color Guide and Glossary

12

標空間を利用します。明度は中心の垂直方向の軸に相当し、彩度は明度の軸に垂直な軸に相当

します。色相は、明度の軸を中心とした角度で表現されます。

3次元色空間に対して波の属性と色の属性との相関関係を適用することができます。波の振幅

が明度の軸上の色の位置を示しています。

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波の純度は彩度の軸上での色の位置を示しています。波長の大きさは色相の角度を示してい

ます。「赤道」の周りに鮮やかな純粋な色相が配置されます。色相が中心に向かって混色し合う

につれて色相は純粋さを失い、彩度を失います。垂直軸方向の変化に従って、それぞれ異なっ

た色相と彩度の色は明るくあるいは暗くなります。白色と黒色の明度は縦軸の両端に位置し

ます。もちろん、全ての色相に対して白色から黒色への変化するグレー色は中心軸に位置します。

三刺激値データ Tristimulus Data

色空間は被験者やデバイスにとって可視化でき、再現性の高い色の定量化表現(もしくは

gamut)として利用されます。この三次元フォーマットは2つ以上の色再現の関係を比較する

のに最も効果的な方法の一つです。後で色空間内の距離によって2つの色の知覚的「近さ」を

表現する方法を紹介しましょう。RGB、CMYあるいはHSLなどの三つの値で表現される三次

元カラーモデルは三刺激値モデルとしてよく知られています。

Color Communication

13

RGBやHSLのような三刺激値を使った色空間内で、ある特定の色を突き止めることは、地図

を使ってある都市を検索する「ナビゲーション」に似ています。例えば、HSLの色空間内で、最

初に色相の角と彩度の距離の交点を検索します。次に明度値からどの明度平面(黒に相当する

底面からグレーに相当する中間面および白に相当する上面)に目的の色が属するか突き止めま

す。多くのアプリケーションでは、三刺激値の表記がその直感性の良さから複雑な(しかし、三

刺激値より完全で正確な)スペクトルデータに代わる便利な計測値になっています。例えば、

色彩計と呼ばれる道具は、赤、緑、青の光の量を計算するために人間の目の仕組みを模式化す

ることで色を計測しています。これらのRGBデータは、いくつかの測定された色彩値間の関係

を比較することのできるより直感的な3次元システムへと変換されます。

しかしながら、どのような測定システムでも普遍的で標準的なスケールが必要です。色彩の測

定においては、RGBカラーモデルでは再現性に欠けるため標準として利用できません。

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これは、人間の視覚、モニタやスキャナ(後に論じるデバイス依存性)の存在と同じように多く

の異なったRGB色空間があるためです。標準的な色彩測定のスケールの設定について、CIE

(国際照明委員会:Commission Internationaled’Eclairage)の有名な作業について説明し

ます。

測定可能な色の構成要素と属性を知った上で、カラーコミュニケーションとカラー計測の大半

が基本としているCIEの標準化について考察しましょう。

The Color Guide and Glossary

14

CIEカラーシステム The CIE COLOR SYSTEMS

1931年にCIEは可視光スペクトルを表現する一連の色空間の標準化を制定しました。この

システムを利用することで、再現性のある標準規格を背景に、異なる観測者やデバイス間の

様々な色空間を比較することが可能となります。CIEカラーシステムはこのマニュアルで説明

してきた他の三刺激値モデル(色が位置する3つの座標値を利用するモデル)と類似していま

す。しかし、CIE色空間(CIE XYZ,CIE L*a*b*およびCIE L*u*v*)は デバイス・インデペン

ド です。すなわち、色空間内に規定できる色の範囲は特殊なデバイスや特別な観察者の視覚

能力の表現特性に依存しません。

CIE XYZと標準観測者 CIE XYZ and The Standard Observer

CIE色空間の基本モデルとしてCIE XYZがあります。これは標準観測者の視覚特性を基本と

しています。標準観測者とは人間の視覚に関するCIEの広範囲な調査結果から導き出された

仮想の視覚者です。CIEは多くの色に対して等色実験を行って、共同実験によって「等色関数」

と平均的な人間の有色覚範囲を表す「共通な色空間」を制定しました。

波 長

刺激値 Z

刺激値 Y

刺激値 X

反射強度

等色関数とは平均的な人間の知覚システムで、すでての可視域のスペクトルと等しく知覚

するために必要とされる、それぞれの原色光(赤、緑、青)の混合量を表します。三つの原

色光として、X、Y、Z座標系が採用されています。

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XYZの各値から、CIEでは三次元色空間として可視光スペクトルを定義するxyY色度図を定義

しました。この色空間の各軸はHSL色空間の軸と類似していますが、xyY空間は円筒形また

は球形として表現できませんでした。CIEでは、人間は全ての色を均等に認識しないことを発

見し、それゆえに視覚域をマッピングするために開発されたこの色空間は、歪みを持っています。

xy色度図の表記方法を使ってモニタRGBおよびプリンタCMYKの色空間の再現限界を実際

に説明しました。次の議論に入るために、RGBとCMYKの色域(ガモット)は、標準的な色域

Color Communication

15

標準観察者の等色関数を ベースにしたxy色空間

赤,緑,青の蛍光体の特性を ベースとした代表的なモニタ色空間

CMYK色素の特性をベースとした代表的なプリンタ色空間

xy 色度図は馬蹄形の独特な形状となっています。これは緑から黄色への変化よりも紫から赤色への色の変化の方が少なく感じることを表現した形状となっています。図の左上から緑色、黄色、さらに中央に白色と変化し、下の方で赤から紫色にかけて色の分布が狭くなっていることが分かります。

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ではないことに注意しなければなりません。これらの色域は個別の装置によって変化してし

まいます。一方、XYZ色域は装置に依存しない、再現性の高い標準的な表記方法になっています。

CIE L*a*b*

CIEの最大の目的は、ペイント、インキ、染料、他の塗料の製造業者にとって色の情報伝達の標

準である再現性の高いシステムの開発です。この標準的で最も重要な機能は、色合わせ作業の

ための普遍的な枠組を供給することです。標準観測者とXYZ色空間はこの枠組の基礎となっ

ています。しかしながら、xyY色度図によって説明したようにXYZ色空間の歪みを持った特徴

は、これらの標準によって色情報を明確に扱うことが難しいことを示しています。

The Color Guide and Glossary

16

結果として、CIEは、CIE L*a*b*および CIE L*u*v*と呼ばれるより均一な色空間を開発しま

した。この2つのモデルのうち、CIE L*a*b*は最も広く使われています。L*a*b*色空間の均

一性に優れた構造は、同時に緑色と赤色の両方が存在しないこと、青色と黄色も同時に存在し

ないことの理屈に基づいています。つまり、赤色/緑色および黄色/青色の特性を記述するた

めに1つづつの値が使用されます。CIE L*a*b*で色を定義するとき、L*が明度、a*が赤色/

緑色のバランス、b*が黄色/青色のバランスを表しています。いろいろな意味でこの色空間は

HSLのような三次元色空間に似ています。

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CIE L*C*H°

L*a*b*カラーモデルは黄―青と緑―赤の直角軸を基本にした長方形座標で示されま

す。CIE L*C*H°カラーモデルはL*a*b*のような同じXYZから導き出された色空間

を利用していますが、明度(Lightness)、彩度(Chroma)、色相(Hue)角の円筒形座

標で示されます。L*a*b*とL*C*H°の値は測定されたスペクトルデータからXYZ値を

経て直接変換で導きだすことができます。あるいは XYZ色彩値から直接、値を得る

ことができます。それぞれの数値をそれぞれの座標に置点すれば、L*a*b*色空間内の

色の特定位置を正確に示すことができます。L*a*b*とL*C*H°座標系を示す下図は、

L*a*b*の頂上からみた様子を図示したものです。後ほど色の許容誤差と相互検証につ

いて説明する時、これらの色空間に再び戻ってきます。

これらの3次元色空間は、2色間の、あるいはもっと多くの色の関連性を計算すること

ができるように、論理的な枠組を提供しています。これらの色空間内では、2色間の

「距離」は互いの色の「類似性」を示しています。

Color Communication

17

彩 度

赤 緑

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視覚者の色域(ガモット)はそれぞれの観察状態によって変化するだけではありません。照明条

件も色再現に影響を与えいています。色を三刺激値を使って記述するとき、光源の反射特性デ

ータを記述しなければなりません。しかし、「どのような光源を利用すべきか?」という疑問に

答えるために、CIEではイルミナント(標準の光)を定義しています。

CIE イルミナント(標準の光/測光用の光)CIE Standard Illuminants

イルミナント(標準の光)の特性を記述することは多くのアプリケーションでカラーを記述する

ための重要な部分です。CIE標準では一般的に使われるいくつかのイルミナント(標準の光)に

対して、予め定義した普遍的なスペクトルデータを定義しています。

CIEイルミナント(標準の光)として、始めにA、BとCの3セットを1931年に制定されました。

The Color Guide and Glossary

18

「青っぽい」昼光色の反射特性 「暖かい」白熱光の反射特性

後にCIEではイルミナントDのシリーズ、仮想的なイルミナントE、イルミナントFシリーズを

追加制定しました。イルミナントDは色温度の測定結果からさまざまな昼光条件を代表して

います。D50とD65の2つのイルミナントは、グラフィックアートでの観測ブースのためのイ

ルミナントとして一般的に利用されています。(「50」と「65」はそれぞれ約5000°Kと約6500°

Kの色温度に相当します)

これらのイルミナントはスペクトルデータとして色の計算用に記述されています。光源のスペ

クトルデータと、反射物体色のスペクトルデータとは何ら違いはありません。スペクトル曲線

の相対的な分布を調査することで、異なる光源下でのある特定の色の影響を認識することが可

能となります。

• イルミナントA:約2856°Kの色温度を持つ白熱灯の照明条件を代表します。

• イルミナントB:約4874°Kの日光の直接光を代表します。

• イルミナントC:約6774°Kの日光の間接光を代表します。

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三刺激値カラーの記述は、CIE標準カラーシステムとイルミナント(標準の光)に大きく依

存しています。一方、スペクトル特性は、この追加の情報なしに記述できます。しかしなが

ら、CIEの標準化はスペクトルデータから三刺激値へのカラー情報変換において重要な役

割を果たしています。次に、スペクトルデータと三刺激値データとの関係を考察してみましょ

う。

Color Communication

19

スペクトル(分光)データ VS 三刺激値データ SPECTRAL DATA VS. TRISTIMULUS DATA

今まで色を記述するための原則を説明してきました。この方法は次の異なる2つのカテゴリ

ーに大別されます。

• 一つはスペクトルデータです。これは、物体表面が光(反射、透過、発光)にどのよう

な影響を与えるかを明示することによって、実際に物体色の表面特性を記述したもの

です。照明の変更、人間のユニークな視覚特性、そして異なった表現方法などの条件は、

この表面特性になんら影響を与えません。

• もう一つは三刺激値データです。これは、物体色が視覚者やセンサにどのように見える

か、あるいは色がモニタやプリンタのようなデバイスでどのように再現されるかを簡

単に記述したものです。XYZやL*a*b*などのCIEシステムは、三次元座標系の色空間

の中に色を定義しています。その中でRGBやCMY(K)のような色再現システムは色を

形成するための混色に用いられる3つの値で色を表現します。

カラー仕様と情報伝達の形式として、スペクトルデータはRGBやCMY(K)のような形式的

な三刺激値形式よりも明らかに有利な点があります。最も重要なことは、スペクトルデータ

は実際の物体色の特性記述に唯一適していることです。一方、RGBやCMYKの色表現は、

色を決めているデバイスの種類や色を観察するための照明のタイプなどの観察条件に依存

しています。

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The Color Guide and Glossary

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装置依存 Device-Dependence

今までの色空間比較で議論したように、全てのカラーモニタはそのRGB発光特性(同じメーカ

ーによって同じ年に作られたものであっても)を使って再現する色の範囲(あるいはガモット)

はそれぞれ異なります。同じことがプリンタのCMYK色素についても当てはまりますが、一般

的にプリンタの色再現範囲は、多くのモニタの色再現範囲よりは狭いのです。

RGBあるいはCMYKの値を使って正確に色を指定するためには、色を再現する指定装置の色

特性を明記しなければなりません。

イルミナント(標準の光)依存 Illuminant-Dependence

以前に説明したように、白熱光と日光のような異なった光はそれ自身のスペクトル(分光)特性

を持っています。色再現はこの特性に大きく影響されます。例えば、異なった照明下で同じ物

体を見るとしばしば異なった色となって認識されます。

三刺激値を使って正確に色を表現するためには,色を観察する際に使う照明の特性を正確に定

義する必要があります。

Digital Swatchbook分光測色計はオブジェクトから反射する光

のスペクトラム相対量を測定します。

この計測方法は色の本質をとら

えることができます。

色の「見え」は観察者や光源条件に依存しています。しかし、オブジェクトが光の影

響を受ける仕組みはこれらの要素に依存していません。

デバイスとイルミナントの非依存 Device- and Illuminant- Independence

一方でスペクトルデータの測定は、デバイスや照明のどれにも依存しません。

• スペクトルデータは、観測者やデバイスがそれを認識する前に物体から反射

される光の成分を測定したものです。

• 異なった光源では、それぞれの波長で異なったスペクトル量を含んでいるた

め、被写体から反射された時、異なった再現性を示します。

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Color Communication

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サンプル1

サンプル2

昼 光 色

白 熱 灯

昼光色下でのサンプル

白熱灯下でのサンプル

各波長部分はそれぞれ異なった方法で被写体からの影響を受けます。例えば、デパートの

蛍光灯の下で色合いが合うソックスとズボンを1組買った後、自宅の白熱灯の下でそれを見

たとき違うと感じた経験があるでしょう?この現象はメタメリズム(条件等色)と呼ばれて

います。

次の例でメタメリック・マッチング現象を示す微妙な2つのグレーを比較します。日光の下

でこれらのグレーは非常によく色が合っています。しかしながら白熱灯の下で、最初のグレ

ーサンプルは赤みがかったように見えます。この変化は次のような方法で説明できます。

異なったグレーと異なった光源のスペクトル曲線を描き、相互関係とスペクトル波長の可

視領域の関係で、波長が最も反射率を示している場所を比較することでメタメリズム現象

を説明できます。

しかしながら、被写体は常にスペクトルの量にかかわらず、それぞれの波長に対する同一な

相対的割合を吸収および反射しています。スペクトルデータはこの相対的割合を測定するこ

とを意味します。

全ての観測条件で変化する色の2つの構成要素は(光源と観察者あるいはデバイス)「無視」され、

代わりに被写体表面の常に安定した特性が測定されます。つまり、実際は正確な色の指定には、

スペクトルデータがあれば十分だということです。一方、RGBとCMYKの記述は、異なった観

測者やデバイス毎に「解釈」を受けやすいのです。

メタメリズム(条件等色)の発見 Detecting Metamerism

スペクトルデータのもう一つの利点は、異なった光源下で被写体の色を再現する時の差異を予

め認識できることです。以前に述べたように、異なった光源は独自の波長分布を持っており、

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具体的には、サンプルが日光の下で照明されているとき、これら2つの色の相互関係は青領域

(強調された領域)で強調されています。その領域では互いの曲線が一致しています。一方、白

熱灯は赤領域でより強い反射特性を持っています。この領域では2つのサンプルの曲線ははっ

きりと分離されています。つまり、冷色光の下では、2つのサンプルの差異は明確でありませ

んが、暖色光の下では、明確にその差異を観察できます。人間の視覚は照明条件の変化に騙さ

れ易いものです。三刺激値データが光源に依存しているため、光源の変化の効果を説明できませ

ん。唯一メタメリズム特徴を明確に検出することができるものは、スペクトルデータです。

The Color Guide and Glossary

22

2 カラー測定とコントロール

三原色の特性、知覚特性、実際のスペクトル(分光)データなどいずれかを使って色を伝達し、

記述するための多くのスケールについて述べてきました。 これらのモデルは「インチ」や「オ

ンス」と似た測定単位を提供します。必要なものはCIE L*a*b*のような数式的に色を測定で

きる「法則」です。今日、最も一般的に利用されている色の測定器は、濃度計、色彩計そして分

光測色計です。

色の収集 Gathering Color Measurements

色の測定器は、人間の目が色を認識するのと同じ方法で色を認識しています。それは、被写体

から反射され、それによって変化した光の波長成分を収集し、フィルタリングする方法です。以

前に光、被写体(ここでは薔薇を取り上げた)そして視覚者のコンビネーションがどのように薔

薇の「赤色」を認識しているかを説明しました。測定器が視覚者であるとき、反射された波長を

数値として認識します。数値化の範囲と正確さは測定に使われる測定器に依存しています。

これらの値は、濃度計では単純な濃度値、色彩計の三刺激値、分光測色計ではスペクトルデー

タとして表示されます。

測定器 INSTRUMENTATION

前章で色の基本とカラーデータの情報交換には異なった方法があることを述べました。次にこ

のデータを採取する方法を見てみましょう。色を測定する測定器として、分光測色計と色彩計

についてすでに簡単に触れました。まず始めにグラフィック・アートで使われている一般的な

測定器:濃度計とあわせて、これらの測定器についてもっと詳細に調べてみましょう。そのと

き、異なったタイプの色彩計測方式についても説明します。また、デジタル・イメージングやグ

ラフィック・アートの作成ワークフローの段階で測定器をいかに活用すべきかも説明することにし

ます。

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数値を色に割り当てる方法 Assigning Numeric Values to Colors

それぞれのタイプの測定器は人間の目ではできないことを行うことができます。すなわち、色

の許容値やコントロールリミットを数値的に求めることができます。それぞれの測定器では

この変換方法に違いがあります。

• これらの測定器の中では濃度計が一般的に最も広く使われています。濃度計は光電デバ

イスであり、照射した光のうちどの程度の光量がオブジェクトから反射あるいは透過して

くるかを単純に計測し、計算するものです。濃度計は印刷、製版、フォトグラフィック用の

アプリケーションでまず最初に使われるシンプルな測定器であり、計測された色の強度を

決定します。

Color Measurement and Control

23

この例ではカラーバーの中のマゼンタ色のパッチは濃

度値 D1.17です。この値によっては印刷オペレー

ターは必要なインキキー調整が可能になります。

X-Rite社製ATD(上図)と361TR(左図)のような濃

度計は、被写体からの反射あるいは透過された光量を

計測し、色の濃度値あるいは強度を決定します。

自動走査濃度計

361T 透過濃度計

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The Color Guide and Glossary

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• 色彩計も光を計測しますが、人間の目、モニタやスキャナと同じような方法で

光をRGBの三原色に分解します。色はCIE XYZ色空間やCIE L*a*b*およびCIE

L*u*v*の様なXYZ空間から派生した色空間を使って数値化決定されます。

これらの計測結果は色空間図の中で視覚的に説明されます。

X-Rite社製528モデルでは、被写

体から反射される赤、緑、青の光成

分の量を計測します。参照用色空間

としてCIE XYZが使われ、色彩デ

ータはL*a*b*座標値へ変換されま

す。ここでは、計測されたC IE

L*a*b*の値として、(2°視野観測+標

準 光 源 D 5 0 に お い て )

L * = 5 1 . 1 8 , a * = + 4 8 . 8 8 ,

b*=+29.53のような値を正確に示

しています。

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• 分光測色計はスペクトルデータ、すなわち可視領域の内でいくつかの間隔で被写体から反

射された光のエネルギーの量を計測します。測定結果は、スペクトル曲線の形状で視覚的

に解釈される反射値の複雑なデータセットとなっています。

Color Measurement and Control

25

分光測色計は完全な色情報を採取するため、簡単にこの情報から色彩データや濃度データへ

変換することができます。要するに分光測色計は最も正確で、利用価値が高く、自由度の高い

測定器です。

X-Rite社製Digital Swatchbook

のような分光測色計は、測定表面

がそれぞれ異なった波長ごとにど

のような影響を与えているかを調

査することでスペクトル的(分光

的)な指紋を作りだします。

波 長

反射強度

400nm : 26%

410nm : 29%

420nm : 34%

430nm : 37%

…など31個以上のサンプリングデータが あります。

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さまざまなタイプの色彩計がグラフィックアートの生産現場でのワークフローの各段階で

利用されています。正確な計測プログラムは、初期の構想から最終段階の印刷結果まで、す

なわちデバイスからデバイスへの中間段階での色変換における一貫したカラー品質結果を

確かなものにします。それぞれのタイプの計測機は特定の生産段階に適しています。例え

ば、スペクトルデータはピンポイントの色指定において最適な測定形態です。また、単純な

濃度測定は4色プロセスの印刷過程の中で印刷紙面上のカラーバーをモニタするのに適し

ています。

最初に、次の重要な点を再度強調しておきたいと思います。典型的なRGB色空間は人間の

目が視覚できる色の範囲よりも狭く、CMYK印刷プロセスはもっと狭い色再現範囲を示し

ていることです。また、照明条件や色材、紙質などの材料もまた、色の再現域を制限しま

す。スキャニングとディスプレイ技術は色のビット数を増やし、RGB出力能力の向上を続

けています。HiFiカラーのような新しい印刷技術はプロセス印刷の色再現範囲を広げてい

ます。しかしながらオリジナルの自然色と、スキャナやモニタ・ディスプレイを通した再現

色、また、印刷プロセスでの再現色との間にはバリエーションが常に存在します。

カラー測定は色の作成において、次のような結果を成し遂げることを可能にしますColor measurement allows us to achieve the best possible color production results:

• デバイスや生産プロセス間においてバリエーションを最小限に抑えます。

• これらのバリエーションは予測可能なものであり、全体の出力過程には一貫性があります。

• 問題のある色のバリエーションは即座に判断・修正され、時間とマテリアルの浪費を最小

限に押さえます。

次に、色の作成のワークフローにおけるいくつかの重要な段階で、色の一貫性と品質を最

適化するためにどのようなカラー測定が利用できるかを考察してみましょう。

• 色の仕様書(クライアントとコンテンツ・クリエータ)

• カラーマネージメント(コンテンツ・クリエータとサービス・プロバイダ)

• フォーミュレーション(インキ供給元と印刷業者)

• コントロール(印刷業者)

• 校正(印刷業者、クライアントとコンテンツ・クリエータ)

このワークフローは色再現のサイクルです。重要なことはクライアントのオリジナルな色の指

示を、いかに最終段階で再現できるかです。

The Color Guide and Glossary

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グラフィックアートのワークフローにおけるカラー測定アプリケーションMEASUREMENT APPLICATIONS IN THE GRAPHIC ARTS WORKFLOW

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色を定義する最も完全な方法はスペクトルデータです。技術進歩が分光測色計を広く利用

可能にした今日、スペクトルデータは色の記述、指定そして識別の最も論理的で最良な解

決方法です。特にスペクトル計測は、色再現範囲外のスポットカラーやHiFiプロセスカラー

のような伝統的なCMYKカラーの記述以外で色を決定するために極めて重要なものです。

スペクトルの記述は装置依存性が無いため、どのようなワークフローでも同等に扱い続け

ることがでます。加えてRGB、CMYKそしてカスタム・インキのフォーミュレーションは

スペクトルデータから正確に得られます。

X-Rite社製Digital Swatchbookシステムは携帯式の分光測色計であり、カラーサンプ

ルに計測部を押しあてるだけで測定可能です。即座にコンピュータのモニタ上に色の情報

が表示され、確認できます。計測された色のスペクトルデータはデジタルデータとして保

存されます。計測された色の情報は、「パレット」の中に保存され、Adobe Illustrator™

のような他のグラフィック・プログラムで読み込みが可能となります。また、このパレットは

AppleカラーピッカーとしてAdobe Photoshop™からアクセス可能です。スペクトルの

記述を使って色作成のワークフローの構築をはじめることは次のような意義を持っていま

す。クライアントや印刷業者によって利用される他のプロセスの段階(サービス・プロバイ

ダー)とのコミュニケーションにおいて、正確で装置に依存しないデータを利用すること

を可能にします。

Color Measurement and Control

27

カラー仕様書 COLOR SPECIFICATION

実際に存在するどのような色

でもColorShopのデジタル「パ

レット」に登録できます。このパレッ

トは、保存したそれぞれの色に対してス

ペクトルデータ、RGBあるいはCMYKデー

タを含んだEPS形式のデータとして保存でき

ます。

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以前にモニタの数だけRGB色空間があり、プリンタの数だけCMYK色空間があることを指摘

しました。この状況はデスクトップ・デバイスでカラー生成作業と校正作業を行うデザイナ

ーにとって、あいまいさと当て推量な作業を増やすだけです。スキャナで読取られた色はモ

ニタで表示された場合や色校正用に出力された場合などで同じ色に見えません。画像ファ

イルの中に保存されている色はそれぞれの生産段階(デザイン・スタジオ、サービス・ビュ

ーロー、印刷会社など)で異なった表示と印刷が行われます。カラーマネージメントシステ

The Color Guide and Glossary

28

カラーマネージメント COLOR MANAGEMENT

ム(Color Management System : CMS)はデスクトップ・レベル

でこれらの問題を解決するのに役立ちます。また、同様に下流のプ

ロセスの現場においても問題解決の実現を可能にします。

カラーマネージメントシステムはカラー作業を決定する重要なRGB

やCMYK色空間(利用しているスキャナ、モニタそしてプリンタ装置

に帰属する色空間)を識別します。デバイスの色特性は適切な「プロ

ファイル」と呼ばれます。MacintoshとMacOS互換機では、Apple

ColorSyncと呼ばれる仕組みが組み込まれ、提供されています。こ

の仕組みは各デバイスのプロファイルを保持・操作します。色彩測

定器はCMSとCMSをサポートしているソフトウェアと共に使用し

ます。色彩測定器はデバイス・プロファイルを構成する重要な特性

データを収集し、デバイスの性能を定期的にモニタリングし、調整

します。CMSとCMS互換ソフトウェア、そのユーティリティとプラ

グインおよび色彩測定器を利用することで、デバイスをキャリブレ

ーションし、キャラクタライゼイション(特性を定量化)するという、

2つの重要なステップでデスクトップカラーの一貫性を確保すること

ができます。

デバイス・キャリブレーション Device Calibration

デバイス・キャリブレーションはデスクトップ・カラーマネージメントのプロセスにおいての第

一歩です。利用しているモニタと出力デバイスのパフォーマンス特性は時間とともに変化す

ます。モニタの蛍光体はモニタの発光特性をドリフトさせる主要因の一つです。色材と部屋

の湿度の変化は通常状態からプリンタの性能を狂わせます。モニタとプリンタとではキャリ

ブレーションプロセスで異なったタイプのデバイスを利用します。

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X-Rite社製Monitor OptimizerやDTP92のような色彩計と互換性のあるキャリブレー

ション・ソフトウェアを利用することで正確なモニタ・キャリブレーションを実現すること

ができます。例えば、ColorShopモニタ調整コントロールパネルを起動するとモニタの

画面上にカラーターゲットが表示されます。Monitor Optimizerを直接カラーターゲット

に当て、キャリブレーション処理をスタートさせるとターゲットは一連の色をすばやく

変化させ、色彩計がそれぞれのパッチを計測します。これによって、ソフトウェアは測定

データを集計し、このデータからモニタのパフォーマンスがどれだけドリフトしているか

を分析、決定します。

Color Measurement and Control

29

この測定に従い、利用しているモニタのガンマ値、白色点、黒色点そしてカラーバランス

を調整し、修正します。最後に、ソフトウェアはシステム・フォルダ内のColorSyncプロファ

イル・フォルダ内(Machintoshの場合)にモニタ・プロファイルを保存します。

キャリブレーションに加えて信用できるモニタ観察環境を確保するためには他に次のようなこ

とに注意すべきです。まず利用しているモニタのデスクトップ・パターンにはニュートラルなグ

レーを選択します。明るい彩色アートワークをモニタ画面の近くに置かないようにします。

窓際や眩しく頻繁に変化する室内照明の下にモニタを設置してはいけません。さらに、厚紙な

どでできた「フードカバー」をモニタの上部と側面において常に周囲光の影響からモニタ表面

を保護します。またキャリブレーションを実行する前に、モニタのブライトネスとコントラスト

を適切なレベルに設定しておかなければなりません。

Monitor Optimizer

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出力装置のキャリブレーションは一般的に濃度計(最近では色彩計や分光測色計を使う場合

が多くなってきています)と添付ソフトウェアを利用することで可能となります。キャリブ

レーションはデバイス出力をソフトウェアが要求する値と関連づけて調整します。カラープ

リンタの場合、キャリブレーションはシアン、マゼンタ、イエロ、ブラック(墨)の各色素を正

しい濃度で印刷するように調整します。一般的なテスト画像はパッチ列(印刷可能なそれ

ぞれの原色を一列に配置したもの)を使用します。それぞれの列のパッチは、通常、ベタ印

刷から紙色までの5%あるいは10%の増加ステップパターンで配列されたものを使用しま

す。一方、イメージセッタ出力の場合、出力値はそれぞれの分解フィルムの階調を検証するものです。

これらのパッチを計測することで、キャリブレーション・ソフトウェアにより指示された値

The Color Guide and Glossary

30

を正確に出力しているかどうかを示すデバイスのリニアリティ(直線再現性)を確認すること

ができます。X-Rite社製DTP32のような自動走査濃度計は読取り部に測定対象物のサンプ

ルを通すことで自動的にキャリブレーション用パッチ濃度を読み取り、測定を高速かつ簡易

に行うことができます。結果、測定値はソフトウェアへ戻され、出力デバイスへ送った色の値を

制御するポストスクリプト (PostScript) コマンドを内部的に調整します。

デバイスキャラクタライゼイション/プロファイル生成Device Characterization / Profiling

デバイス・キャリブレーションの次におこなわれたデバイスのキヤラクタライゼイション(特性

の定量化)はカラーマネージメント・プロセスの第二段階です。特性の定量化は、利用している

スキャナ、モニタ、プリンタ用のデバイス・プロファイルを実際に作成するプロセスです。多く

のデバイスが製造業者は工場出荷時点で、製品の標準的なプロファイルを提供していますが、

所有デバイスに対して独自に生成したカスタム・プロファイルの方がより正確で信用できます。

つまり、より良い色再現の結果を引き出すことが可能になります。

X-Rite DTP32 濃度計

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スキャナ装置のキャラクタライゼイション(特性の定量化)にはIT8ターゲットのような

読取テスト用プリントあるいはフィルムが必要となります。まず、スキャナ装置のキャラ

クタライゼイションを行うユーティリティープログラムを実行します。IT8 テストパタ

ーンはCIE XYZやCIE L*a*b*色空間の均一にサンプリングした何十もの異なったカラ

ーパッチから成り立っています。ターゲットには,各パッチ毎のXYZ値を記述したデー

タファイルが存在しています。

ユーティリティーはそれぞれの色をスキャナで読取った時のRGB値(デバイスに依存したRG

B値)と、カラーパッチのCIE XYYやCIE L*a*b*値を比較し,二つの値の差異を算出します。

算出されたデータからスキャナのデバイス色空間を決定します。このユニークな色空間情報

は、独自のスキャナ用カスタムプロファイルとして保存されます。

Color Measurement and Control

31

モニタ装置のキャラクタライゼイション(特性の定量化)は、キャリブレーション同様、

測定器(Monitor Optimizerのような)とキャラクタライゼイションための画面上の

ターゲット画像を使って行われます。モニター上に映し出されるカラーパッチを計測す

ることで得られる色彩値データはそれぞれの色を表示するモニタの能力と比較されま

す。ソフトウェアは、モニタ色空間とXYZ色空間の関係を計算します。このユニークな

情報はモニタ用カスタム・プロファイルの中心的な要素となります。

反射型スキャナ用IT8ターゲット

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プリンタ装置のキャラクタライゼイション(特性の定量化)は、スキャナ装置のそれと同じよう

にデバイスが再現できる色を決定するためのテストパターンを印刷・計測することで行われま

す。プリント用にテストパターンは出力デバイスでの使用を想定し、CMYKの重ね合わせに

よる均一色のパッチになっています。

プリンタ装置のキヤラクタライゼイション(特性の定量化)を行うソフトウェアは非常にたくさ

んのカラーパッチを持ったテスト画像を使用します。この画像をプリンタ装置で印刷します。

ぞれぞれのパッチが計測され、結果、色彩データはCIE XYZやCIE LAB色空間と関連付けるこ

とができる特定のプリンタ用色空間情報を導き出します。この情報はプリンタのカスタム・プ

ロファイルの中心的な要素となります。

キャラクタライゼイションはプロセスカラーの再現範囲を表現するそれぞれのプリンタの能

力と関係しています。しかし、特定の色素の濃度とは関係していません。測定値を収集するた

めには色彩計および分光測色計(たとえば、X-Rite社製のDigital Swatchbook分光測色計

やDTP41自動走査分光測色計など)を利用しなければなりません。

The Color Guide and Glossary

32

プルーファーと印刷機のキャラクタライゼイション(特性の定量化)はクライアントやデ

ザイナーにとって生産プロセスの最終段階での色の再現を正確に予測するための助けとなり

ます。色彩計測やカラーマネージメントシステムを使用しているサービス・ビューローや印刷

業者は使われている出力デバイスのカスタム・プロファイルをクライアントに提供することが

可能となります。ワークフローの中で全ての出力デバイスの特性を把握することは、生産プロ

セスにおける初期段階であるデスクトップ上のデザインの時点から、重要な色に関するコント

ロールの能力を高めることができます。プロセスにおいて早期にカラーコントロールを実現

することは、川下での色校正サイクルの時間と無駄な材料の浪費を押さえることを可能にしま

す。

X-RIte社製 DTP41

自動走査分光測色計

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デバイス色空間の解説 Anatomy of a Device Color Space

デバイス色空間は、CIE xy色度図上に、それぞれの機器が読取り、表示、出力できる能力を基

に構築されています。多くのターゲットパッチは、彩度が最大なさまざま色相のパッチが含ま

れています。また、明度差表現に対するデバイスの性能を決定するためにブラック(墨)や原色

の多様な階調パッチが含まれています。

キャラクタライゼイションソフトウェアはターゲット・パッチの装置に依存しない値を知って

います。これらの既知のカラー値とデバイスによって計測された実際の計測値を比較します。

それぞれのポイントでの相違量を決定し、計測されたポイントを既知のポイントに対してマッ

ピングします。結果、このソフトウェアはデバイスのユニークな性能を詳細に記述し、その情

報を提供します。

Color Measurement and Control

33

CIExy色度図

プリンタ装置の色空間: 再現可能な最も彩度の高い色をCIExy色空間上にマッピングして得られたプリンタの色空間

モニタ装置の色空間:RGB各100%出力値をCIExy色空間上でプロットした場合の色再現領域

プロファイル生成システムは利用しているシステム・ソフトウェア内の特定の場所にデバイス・

プロファイルを保存します。ColorShop、Adobe® Illustrator、Adobe® PageMaker™、

Macromedia Free Hand™、Adobe® Photoshop™、QuarkXPress®のようなデバイス・

プロファイルを活用するプログラムは、オペレーション環境設定メニューを使って、格納してあ

る位置から必要なデバイス・プロファイルを読み出し、利用することが可能です。

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カラーマネージメント・システムの動作 How Color Management Systems Work

前ページに示したxy色再現範囲の内側にマッピングされた狭いRGB色空間およ

びCMYK色空間の図から、色再現領域の圧縮のプロセスを理解することができ

ます。このような色再現領域の圧縮は各プロセスで色を受け渡す際に頻繁に

発生します。オリジナル・シーンには写真フィルム上には捕らえることができな

い色が含まれています。写真の中のいくつかの色はスキャナの色再現範囲内に収まりません。

さらに読取られた色をモニタの色再現範囲内で表示する際に、多くの色が失われ、別の色に置

き換えられます。その画像を色校正デバイスや印刷機で印刷する時、オリジナルの色再現範囲

はかなり圧縮されてしまいます。それぞれの段階で色再現範囲外の色は再生可能な最も近い

色に置き換えられてしまいます。

例えば、Apple ColorSyncは色再現範囲の圧縮や予測・制御可能な方法を提供しています。

周辺機器のプロファイル情報を利用してCIEXYZを共通基盤としての色空間を計算します。

ColorSyncとともにプロファイル情報を持った周辺機器を利用するとき、デバイス色空間エリ

アとオーバーラップした色のみを使って作業をすることができます。このエリア内の色空間情

報によって次のデバイス色空間への変換が容易に行えます。例えば、モニタ上で見ている色を

基本に、出力する色をより正確に予測することができます。

The Color Guide and Glossary

34

RGB CMYK

RGB

RGB

CMYK

CIE XYZ 参照用色空間

表示結果 印刷結果

この図はCMSがスキャナ、モニタそして

プリンタの色空間情報をCIE XYZ座標

へ変換する様子を示しています。普遍的

な色の「言語」としてCIE XYZを利用す

ることでCMSはプリンタ装置の特定の出

力特性をより正確に表現するためのモニ

タRGB値を計算することができます。

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特定のスポットカラーのカスタムフォーミュレーションは、さまざまなインキと紙のコン

ビネーションを分光測色計で測定した結果を基本としています。これはインキ製造業者が

伝統的に行ってきた方法です。今日、測 定 器 と ソフトウェアの技術的な進歩によって

印刷段階でのインキのフォーミュレーションを可能としました。このことで、インキフ

ォーミュレーションに実際に使用するペーパーの特性を加味することができるた

め、より一層顧客の仕様を満たすことが可能になりました。X-Rite社製QuickInkシ

ステムのような手頃な価格のソリューションでは、提供されたスペクトルデータや既存の

カラーガイドあるいは実際のサンプルや材料見本の測定を利用したフォーミュレーション

が可能です。

Color Measurement and Control

35

カラーフォーミュレーション COLOR FORMULATION

カラーコントロール COLOR CONTROL

カラーコントロールあるいはプロセスコントロールは、全印刷工程で、また交代勤務やオペ

レーター間において、ロットの異なる素材間で常に一貫性のある高品質な色を実現するため

に重要なものです。どんな印刷や画像処理アプリケーションにおいても、色は1つのページ

内、ページ間にバラツキが発生しやすいものです。計測情報をこの色のバリエーションを制御

するために役立てることができます。

例えば、濃度計は紙の余白に印刷される小さな基本的なテストパターンのカラーバーを読取

るのに使用されます。一般的にこのカラーバーは、重要な印刷特性をテストするためのサン

プルパッチ(ベタ、網点、オーバープリント、特殊パターンなど)からなっています。これらの

パッチを測定し計算される濃度、ドットエリア、ドット・ゲイン、プリントコントラストそしてト

ラップなどの値により、印刷オペレータは印刷時における色のトラブルを解決することがで

きるようになります。また、印刷シート間のカラーバーの測定値を比較することによって、印

刷特性のシート間の変化を明確に把握できるようになります。

QuickInk ソフトウェアは測

定された色データとマッチ

するようににカスタムイン

キをフォーミュレーション

します。

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こららの濃度計測は、計測時の印刷の状態がどのようになっているかを示すことができます。

印刷機が動作している際に、様々な間隔でそれぞれの印刷シート上のカラーバーを抜き取り計

測することによって、印刷機オペレータは次のようなことが可能になります。

The Color Guide and Glossary

36

• 長時間にわたって、全般的な印刷機の処理能力を監視することができます。

• 長時間にわたって、個々のインキ特性のパフォーマンスを監視することができます。

• クライアント向けに印刷品質に関するレポートを作成することができます。

測定結果に対して、印刷の品質を決定するためのコントロールリミットに関する分析をおこ

ないます。コントロールリミットの許容範囲を超えた計測結果は、プロセスや設備上に問題

が発生している可能性があることを示しています。簡単にこの情報を入手することによって、

オペレータはプロセス問題個所を発見し、最小限の材料消費で、迅速かつ継続的な印刷機の最

適設定を実行できます。

HiFi カラーのような今日最新の印刷技術は、色彩計測やスペクトル計測でより効果的

に監視と制御が行えます。特に、CMYK+RGB、カスタム・タッチ・プレートやバンプ・

カラーを使うHiFi印刷アプリケーションはX-Rite500シリーズ938携帯型分光測色

計やATSシステムのようなツールを使ってプロセスをコントロールすることが可能で

す。HiFi カラー印刷の実現可能な色再現範囲の拡大に伴って、実現可能なプロセスカ

ラーパレットの増加を制御するために、スペクトルデータの果たす役割が大きくなるで

しょう。

X-Rite 自 動 走 査 分 光 測 色 計

(ATS)システムは印刷機が実行中

でも様々な間隔で印刷シートのカラ

ーバーを自動的に計測する。計測デ

ータは添付のATSソフトウェアイ

ンターフェースによって近くのコン

ピュータ上に表示されます。

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コントロールリミット Control Limits

以前に述べたように、どのような印刷機でも稼動中にシートからシート、開始から終了までの

間に出力カラーは様々に変化します。ある範囲のバリエーションはノーマルなものであり受

け入れ可能です。コントロールリミットはプレスの変動を受け入れ可能な範囲に押さえるた

めに設定せれます。工程管理者は、通常、印刷工程内の微妙な変化を把握し、その変化が許容

範囲に収まるように常にプロセスを監視し微妙に調整しています。しかし、一般的な印刷プロ

セスでは、媒介物や印刷機の性能が突然変化し、設定してある許容限界を超えることがしばし

ば発生します。その変化を早期に発見し、プロセスを調整することがプロセスの工程管理に

とって重要となります。

最も一般的には印刷機から出力されるカラーバーを頻繁に濃度計測し、その結果を活用する

ことでコントロールリミットを監視することが可能となります。例えば、自動走査分光測色計

システム(ATS)では、長時間にわたる印刷機性能の傾向をトレンドグラフィックで表示するソ

フトウェア・パッケージを標準搭載しています。これらのグラフによってどのインキ濃度測定

結果が許容値より大きいか、小さいかを識別できるようになっています。

Color Measurement and Control

37

これらのATSソフトウェア内のグ

ラフは長時間にわたる多様な計測

結果を表示しています。それぞれ

のグラフの水平なセンターライン

は最適な濃度値です、そしてセン

ターラインの上と下の線は濃度変

化のための許容リミットです。

カラーマネージメントのもうひとつの重要なメリットは、色再現ワークフローの各過程

で、正確に色を監視し、顧客の仕様を可能な限り満足させるために、最終的な検証を

可能にすることです。

実際のインキの色、特に非プロセス・インキの色の適性を検証するために色彩計や分光

測色計の能力が必要となります。(濃度計でも特定の色を検証する時に有効ですが、通

常、色の強度を測定するだけのものです。)分光測色計は濃度計や色彩計の機能を持つ

ため、色再現作業の品質制御と検査のために最も論理的かつ有効な方法を提供します。

コントロールリミットを越えると印刷機オペレーターに対して印刷機の設定を最適にするように警告します。

色校正 COLOR VERIFICATION

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カラーの許容値 COLOR TOLERANCES

カラー仕様書と実際の出力結果との検証は、カラー計測結果の数値データを元にした許容値

を使用して実現できます。許容値判定は、いくつかのカラーサンプル(カラー出力)の計測結

果と既知の標準カラーデータ(仕様や入力時のデータ)とを比較することでおこないます。そ

して、サンプルと標準との類似度を判定します。サンプルの計測データと所望の標準値との

間に十分な類似性がないならば、許容外であり、プロセスや装置の調整が必要になります。

(コントロールリミットと許容値は個別に管理しますが、ワークフローや印刷作業は両パラメ

ータを念頭においてセットアップ作業をおこなわなければなりません。作業プロジェクト開始

時に顧客仕様書を検討し、印刷機のコントロールリミットを超える可能性がある仕様を合意

せず、適切な修正を協議することが一般的な運用です。)

2色間の近似性は多様な色差式の計測方法を使って計算されます。L*a*b*のような三次元空

間内で2つのポイントの距離を計算することで2つの色の色差を決定します。この最も一般的

な方法にはCIELABやCMCなどがあります。

CIELAB:色差の決定方法 CIELAB Tolerancing Method

CIELAB色差計算は以前説明したL*a*b*色空間をベースに行われます。CIELABを活用す

ることで、標準色(あるいはオリジナルの仕様で指定された色)は、L*a*b*色空間内の計測

データによって特定することができます。そのとき、色の中心として論理的な「識別球」が描

かれます。この球は標準と計測サンプル(カラー出力)との許容差可能な範囲を示していま

す。識別球の中にあるデータは許容可能な色であることを示し、識別球の外側に位置する

計測結果は許容外であることを示しています。

識別球の大きさは顧客要求仕様が求める許容できる色差(ΔE:デルタ誤差のようなデルタ:Δ

The Color Guide and Glossary

38

標準色

識別球内のサンプルは 受け入れ可能を表します。

識別球外のサンプルは 除外されます

識別球

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で表現される)で決まります。グラフィック・アート業界での典型的な顧客要求の許容誤差は、

通常、ΔEで2から6の範囲です。例えば、識別球の外側に位置するサンプルは、標準から直径

6を超えた球の外に存在していることを意味しています。直径2以下の識別球は通常にプロセ

ス変動では達成不可能な許容色差です。大きな許容色差は顧客の要求仕様と出力結果とのミ

スマッチを生み出します(画像の依存性が高い)。直径4以下の識別球に収まる画像では、大半

の視覚者は色の差異を識別できません。

識別楕円を使った許容色差の決定方法 Elliptical Tolerancing Methods

CIELABの許容値決定法で使われる「球体」の領域とは反対に、人間の眼が許容できる色は「識

別楕円」の領域に相当すると言われています。このため、CIELAB法はしばしば誤解を招く結

果を導き出します。例えば、CIELABの許容範囲内に位置する許容可能な色でも、実際には、

許容可能な識別楕円の外側に位置する場合があります。

CMCとCIE94の許容値決定法は直接、色差の「識別楕円」を認識し、CIELABよりもより論理

Color Measurement and Control

39

的で正確な許容誤差決定システムとして多くの業界で扱われ始めています。CIE94と呼ばれ

る類似の色差計算方法は「識別楕円」を利用しており、ポピュラーなもとのして広く普及し続け

ています。

CMCとCIE94は新しい色空間ではなく、ただ単にL*a*b*色空間をベースとした許容値決定シ

ステムです。計算式は数学的に色空間内の標準色を中心とした識別楕円を定義しています。こ

の識別楕円は色相、彩度、明度の特性に対応した補助軸から成り立っています。CIELABの識

別球が許容可能な色差限界を定義した同じ方法で、標準色に関する許容可能な領域を規定し

ています。CMCとCIE94では、色空間内の色の位置を規定する識別楕円の大きさは様々です。

例えば、オレンジ色の領域内では識別楕円は小さく、緑色の領域内では全体的に識別楕円は大

きくなっています。また、彩度が低い領域に比べ、彩度が高い領域に位置する識別楕円は大き

くなります。

標準色

識別楕円内のサンプルは 受け入れ可能を表します。

識別楕円外のサンプルは 除外されます。

(CIE L*a*b*ΔE法では受け入れ可能)

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まとめ SUMMARY

このカラーガイドは読者が明瞭で興味が持てるようにカラーコミュニケーション、カラー計測

そしてカラー制御の各項目毎に記述しました。この小冊子で手短に取り上げた各概念とプロセ

スの背景には、色を生産するノウハウを増すための多くの付加的な情報と技術が含まれていま

す。しかしながら、この小冊子から学んだ情報がカラー計測とカラー制御の作業を始める際の

一助となるように、カラーに関するサイエンスと理論に対する基礎的な説明と、生産プロセス

における各段階でカラー計測が重要な役割を果たすことを述べました。手元にこの知識を持

って、巻末にある文献目録の中からリストアップされた優秀な文献を読まれることをお勧めし

ます。そこで、覚えておいていただきたい重要なことは、色を計測できるようになれば、色を制

御できるようになると言うことです。カラー計測作業なしに行われるカラーの定量的な記述作

業や検証作業は、あいまいなもので役に立たないものです。しかしながら、カラー計測データ

を入手することによって、精度良くかつ信頼性の高いカラー記述とその検証が可能となること

をぜひ覚えておいてください。

The Color Guide and Glossary

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緑 赤

識別楕円は緑の領域で 大きくなっています。

オレンジの領域で 識別楕円は詰め込まれた 形状になっています。

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3 Glossary [用語解説]

A~ZCIE Chromaticity Coordinates CIE色度座標値CIE色度図の中で色座標を指定するためのx,yの値

CIE (Commission Internationale de l' Eclairage) CIE(国際照明委員会)国際照明委員会でフランス語名の略。色の測定の基礎として用いられる多くの標準を制定する組織です。

CIE Standard Illuminants CIE 標準イルミナント(標準の光)CIEが設定した分光分布が明らかになっている4種類のイルミナント。カラーを定量的に記述するときに使用する三刺激値データを得るには、光源の特性を明確にしなければなりません。標準イルミナントは実際に測定する光源の代わりとして使用されます。

CIE Standard Observer CIE標準観測者1931年にCIEが制定した2°視野観測における三刺激等色実験に基づいた仮想の観測者です。1964年に10°視野の補助標準観測者が制定されました。規定がない限り、2°視野標準観測者が使用されます。4°よりも大きな視野で観測される場合は、10°視野標準観測者を使用します。

CIE Tristimulus Values CIE 三刺激値CIEシステムにおける3色の加法混色の等色実験で必要な3つの刺激量です。CIEではX、Y、Z値に相当します。標準イルミナントと標準観測者は等色実験において重要な役割を果たします。何も規定されていない場合は、CIEで1931年制定した2°視野標準観測者とC光源を利用しなければなりません。

CIE xy Chromaticity Diagram CIE xy色度図横軸にx、縦軸にyとなるようにした2次元の色度図です。この色度図はスペクトル(分光)の関係(380から770nmまでの単色スペクトルの色度座標分布)をみることができます。発光材料および非発光材料のどちらでも色特性を比較するために広く利用されています。

CIE94 CIE94色を採用するために3次元楕円体を利用した色差算出方法の一つであります。CIE94は概念的にCMC2:1と類似していますが、色相と明度の最適化が不充分です。CIE94は研究が盛んに行われており、近い将来さらに発展すると期待されています。

CIELAB (or CIE L*a*b*, CIE Lab) CIELABL*, a*, b*を互いに独立した3次元座標(互いの軸を直角)に配置した色空間である。空間の距離を求める算出式は色差の算出式となる。L*値は明度を表し、a*値は「赤/緑」の軸を示し、b*値は「黄/青」の軸を示します。CIELABは反射性または透過性の物体を測定する際に利用される一般的な色空間です。

Glossary

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CMC (Color Measurement Committee) CMC(カラー測色委員会)英国で染色と色彩に関する協会に属す委員会です。CIELAB色空間で識別球体を実用的にするために、より論理的な識別楕円体を開発し、色差計算式を具体化しました。

CMY CMYシアン、マゼンタ、イエローの減法混色の三原色です。(→減法混色の原色)

ColorSync™ ColorSync™Apple Macintosh で構築されているカラーマネージメント・アーキテクチャーです。他社はデバイスをキャリブレーションしたり、デバイスの特徴を定量化したりするときに、あるいはデバイスのプロファイルを作成する方法としてColorSyncのフレームワークを利用しています。

D50 D505000°Kの色温度を持つCIE補助標準の光です。グラフィック・アーツ業界の観測ブースでもっとも広く利用されている色温度です。(→光源D)

D65 D656504°Kの色温度を持つCIE標準の光です。

ICC (International Color Consortium) ICC (International Color Consortium)色の表示の開発するために結成されたハードウェアおよびソフトウェア関連会社のグループ。ここで規定される表色はOSに依存しない、デジタル画像、デジタル印刷などの関連分野のためのものものです。また、デバイス装置および提唱するメディアの色表現および色再現特性を規定するための業界標準のデータ形式を提唱しています。

IT8 IT8ANSI(米国規格協会:American National Standards Institute)内のデジタルデータ交換の標準化委員会IT8によって制定された色を特徴付けるためのテストターゲットとそのツールの総称。IT8ターゲットはスキャナやプリンタのようなデバイスの色の特徴付け(キャラクタライゼーション)する際に利用されます。

L*C*H°L*C*H°CIE LABと類似の色空間ですが、明度軸、クロマ軸と色相角度の直交座標で表現されます。

RGB RGB赤、緑、青の加法混色の三原色。(→加法混色)

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あ明るさ Brightness反射する光あるいは発光の大小に従う知覚の一属性。カラーモデルHSB(色相Hue、彩度Saturation、明るさBrightness)における色の属性のひとつ。(→明度)

イエロー Yellow印刷におけるプロセス・インキの一色。純粋なイエローには青色を含まず、青色の光の波長成分を吸収し、赤と緑の光の波長成分を反射する色。

色域、ガモット Gamutカラーモデルを解釈したり、デバイス装置の特性を特定する際の色再現範囲。

色域圧縮 Gamut Compression(あるいは階調圧縮)より大きなガモットからより小さなガモットヘと色空間を変換すること。最も広く見られる形式のガモットマッピングです。例えば、写真フィルムの色域を4色プロセスの印刷に使うCMYK色域再現へ圧縮すること。(→色域、ガモット)

色域マッピング(ガモットマッピング) Gamut Mapping 二つ以上の色空間を共通の色空間に座標変換すること。しばしば階調圧縮が生じます。(→色域圧縮)

色温度 Color Temperature物体が熱せられた時に発する光の測定用語。温度は絶対 評価またはケルビンで表現されます。物体は熱せられるにつれ、特徴的な色を持つ光を放射します。2400 K゚ では赤っぼい色の光を放射します。9300 K゚のような高温になれば青みが強くなります。ニュートラルな色温度は6504 K゚でありグレー色になります。(→「相関色温度」)

色の表示あるいは表色 Color Specificationカラーシステムの中で色を定量的に規定するために利用される三刺激値の値、色度座標値と輝度、あるいは他の色の尺度。

色分解 Color SeparationRGBの色情報をコンピュータ上で印刷時のCMYKへ変換すること。

色空間 Color Space色の3次元の幾何学的な表現で、確実なカラーモデルを使って色を見たり、作成するためのものです。

オーバープリント Overprint印刷シートのカラーバー上、オーバープリントは2つのプロセスインキが重なり合うように印刷されるカラーパッチです。プロセスオペレータは、濃度値を変化させながらパッチを印刷し、印刷トラップ値を決定します。オーバープリントの用語はある色の上に他の色が印刷されたものを表すこともあります。

Glossary

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か可視スペクトル Visible Spectrum電磁的スペクトルのうちおよそ380nm から720nm までの範囲。この部分の波長は人問の目で見た場合、色の知覚を刺激します。短い波長成分は、スミレ色、紫色、青色であり、長い波長成分はオレンジ色、赤色の知覚を刺激します。

画素 Pixel微小な画像要素。モニタやスキャナでカラーを表現する時の赤、緑、青の情報を記述する際の最小単位。カラーが作成される時、画素は紙に印刷されたインキのドットに似ています。モニタの解像度は1インチ当りの画素数(ppi: pixels-per-inch)で表現され、1インチ当りのドット数(dpi: dots-per-inch)で表現される印刷時の解像度に似ています。

加法混色の原色 Additive Primaries赤、緑、青の光。加法混色の三原色をそれぞれ100%の強度で混色すると白色の光となります。三原色を可変させながら混色すると多くの色域(ガモット)を表現することができます。100%の二色の混色は減法混色の原色になります。すなわち、シアン、マゼンタ、イエローの色が表現できます。赤100%+緑100%→イエロー赤100%+青100%→マゼンタ緑100%+青100%→シアン(→「減法混色の原色」)

カラーマネージメント Color Managementオリジナル画像、スキャナからの読取画像、モニタでの表示画像、カラープリンタや最終印刷機の印刷画像における相互の色を合わせる仕組みのこと。

カラーモデル Color Model色の知覚的な属性を定量的に決定する色彩計測のスケールとシステムです。色彩計測とコンピュータ・グラフィック・アプリケーションで利用されます。

顔料、染料、着色料 Colorants染料、顔料、トナー、蛍光体など色を作成するために使われる材料。

顔料 Pigment不溶性の色素、可溶性の染料に対する色素。

キャリブレーション Calibrationデバイス装置の特性をチェック、調整し、システム的に規格化すること。

吸収 Absorb/Absorption物質の相互作用として電磁波エネルギーが他の形態に変化するエネルギー損失。入射放射線に対するある角度の透過率の減少を指します。吸収されたエネルギーが変化し、他のエネルギーとの交換

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を生みます。

強度 Intensity 可視光領域の波長と関連する感度あるいは反射エネルギー。高い強度をもつ反射分光特性は、彩度あるいはクロマ値も高くなります。

許容 Tolerance既知の標準サンプル(通常は顧客の表色)と計測されたサンプルとの許容できる差異。(→ 色差)

黒あるいは墨(スミ) Black光の反射が全くない状態、すなわち光源から発光される波長成分すべてが物体に吸収される時の色。シアン100%、マゼンタ100%、イエロ100%の染料が混ぜ合わさると理論的には黒色となります。実際の混色結果は濁ったグレーや茶色などの色となります。4色プロセス印刷では、黒色をプロセスインキの一つとしています。RGBの青色の表記「B」と区別するために4色プロセスCMYKの中で黒色を表現するために「K」(スミ)という文字が使われます。

クロマ Chroma特定の色や色合いを示す知覚の一属性。例えば、リンゴの赤はクロマ値が高く、パステルカラーはクロマ値が低い。黒、白、グレーはクロマ値が0です。カラーモデルL*C*H*(明度Lightness、クロマ Chroma, 色相Hue)における色の属性のひとつです。(→彩度)

蛍光体 Phosphors陰極線が発光する時、あるいは電界が照射されたときに光を発光する物質。可視光の量は励起エネルギーの量に比例しています。

蛍光ランプ Fluorescent Lamp蛍光現象を利用するランプ。蛍光灯は、蛍光体を塗ったガラス管の内側に、低圧の水銀蒸気を満たしたものです。水銀蒸気は、電流が流れると放射線を出します。次にこの放射が蛍光体を刺激し、光を発します。

ケルビン (K) Kelvin (K) 色温度を測定する時の計測単位。ケルビンスケールは絶対零度となる-273℃からスタートしています。

原色 Primary Colors赤、緑、青およびその反対色であるシアン、マゼンタ、イエローなど、可視光スペクトルの中の主成分。(→加法混色、減法混色)

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イルミナント(標準の光/測色用の光) Illuminantスペクトル的に定義された光源。

イルミナントD (CIE) Illuminants D (CIE)様々な時間帯の昼光のスペクトルを実際に測定した結果に基づく、CIE の昼光標準イルミナント。相関色温度6504 K゚のイルミナントD65は最も一般的に利用されています。他にD50 、D55 、D75のようなイルミナントもあります。

イルミナントF (CIE) Illuminants F (CIE)蛍光灯による照明条件を近似するために考案されたCIEのイルミナント。F2は4200°Kの白色冷陰極蛍光灯に相当します。F7は6500°Kの高演色性昼光色蛍光灯に相当します。F11は4000°Kの低演色性蛍光灯に相当します。

イルミナントA (CIE) Illuminant A (CIE)白熱光源によって生成されるCIE 標準イルミナントで、色合いは黄とオレンジの中間で、相関色温度は2856 ゜K です。

イルミナントC (CIE) Illuminant C (CIE)フィルタをかけたタングステン光源によって生成されるCIE 標準イルミナントで、平均的な昼光を近似しています。色合いは青みがかっていて、相関色温度は6774 K゚ です。

光電子 Photoelectric写真装置の光あるいは放電、例えば電子放電のような電気的な効果に関する用語。

コントラスト Contrastイメージ画像の明暗領域の中間的な変化です。

さ彩度 Saturation同一明度上での無彩色からの距離に相当する色知覚の一属性。クロマとも呼ばれている。

三刺激値 Tristimulus3つの刺激を使って色を表現し、作成する方法。加法混色(RGB)、減法混色(CMY)や三属性(明度、色相、彩度など)。

シアン Cyan印刷におけるプロセス・インキの一色。純粋なシアンには赤色を含まず、赤色の光の波長成分を吸収し、青と緑の光の波長成分を反射する色です。

シーケンス Sequence印刷プロセスで紙の上にインキを付着する手順。

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色差、デルタE (ΔE) Delta Error (ΔE)色の差にあたり、ΔEは色差色を使って色の差異を表すデルタエラーを表現します。一般的に色差は2つの色度座標値の二乗(Δa* 、Δb*, ΔL*)の総和の平方根で計算されます。

色彩計 Colorimeter人間の視覚特性を模倣して色再現を行う光学的な測定器です。反射光をフィルタリングし、赤、緑、青の主要な成分に分解します。

色相 Hue「赤」、「緑」、「紫」などのオブジェクトの基本色。円筒形の色空間や色相環の角度成分です。

色相環 Color Wheelスペクトル色を環または円盤状に配置する方法で通常補色どうしが互いに向かい合うようにします。

色度、色度座標 Chromaticity, Chromaticity Coordinates輝度から独立した色相と彩度の関係(または光度をのぞく、赤色から緑色、黄色から青色など)を表現した色刺激の大きさ。一般的に輝度一定平面内の位置で色を表現します。

視細胞 Photoreceptor人間の網膜を覆っている錐状または得状の細胞群を指す。この視細胞は可視光の波長に反応し、(受容器とも呼ばれます。)人間の網膜の中にある光に反応する特別な細胞。色に対する知覚反応が起こったとき、脳へ信号を送ります。

スペクトラム(本書ではスペクトルと訳してあります) Spectrum電磁的エネルギーの成分を波長の順に空間的に配列したものです。(→ 電磁スペクトル、可視光スペクトル)

コントロールリミット Control Limits印刷中に起こりうる印刷能力に対して許容できる変動量。

染料 Dye可溶性の色素で、不溶性の顔料に対するもの。

装置依存(デバイス・ディペンデント) Device-Dependent特定装置の色再現特性の情報によって色空間の表現方法が依存すること。たとえば、RGB 色空間は、色域(gamut)を決定するのに特性と限界を持つモニタのようなデバイスでしか生成されません。さらにすべてのモニタ装置はぞれぞれ異なった特性と色再現の限界を持っている。同様なことが、スキャナ装置、プリンタ装置や印刷機についてもあてはまります。

装置非依存(デバイス・インディペンデント)Device-Independent標準観測者によって規定される人間の視覚特性の全色域を使って色空間を表現する方法で、色再現特性はどの装置にも依存しません。

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属性 Attribute見かけの感覚、認識あるいは形態における顕著な特徴。色相(hue)、彩度(saturation、chromaクロマ)、明度(lightness)という3つの属性をもって色を表現する場合があります。

たダイナミック・レンジ Dynamic Range 測定可能な値に対する測定器のレンジ。検出できる最も低い値から処理できる最も高い値までの範囲を指します。

デバイスプロファイル Device Profileデバイスが色を解釈する特性や色を再現する特性などデバイスによって規定される色情報。モニタ・プロファイル、スキャナ・プロファイル、プリンタ・プロファイルなどは他のアプリケーションやデバイスとの連携性を考慮してApple ColorSyncのようなカラーマネージメントシステムの中で利用されます。プロファイルはキャリブレーションやキャラクタライゼーションを利用して作成されます。

デルタ(Δ) Delta (Δ)偏差あるいは差異を表すときに用いられる記号。

電磁スペクトル Electromagnetic Spectrum電磁的エネルギーの成分を波長の順に配列したもの。電磁的スペクトルはすべての波長を包含するものですが、目に見えるスペクトルは約380nm から720nm の渡長から成る、目に見える範囲だけを含んでいます。目に見える可視光スペクトル外では、ガンマ線、X線、マイクロ波そして電磁波などがあります。

等色関数 Color Matching Functions光の各波長における等色実験での3つの加法的な原色の相対的な量です。一般的にはCIE標準観測者での等色関数を引用する場合が多い。(→CIE標準観測者)

透過物体 Transmissive Object一方から他方へ光が通過する物体。透過中に変化する光の波長で透過物体の色が規定されます。

な波 Wave波が媒体を通して伝送される際に、周期的に上下に運動する自然界の活動の根源。

ナノメータ(nm) Nanometer (nm)10の9乗のメートルに相当する長さの単位。ミリメータの100万分の一に相当します。波長はこのナノメータを基準単位として測定されます。

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は濃度 Density表面や素材の光を吸収する能力を表すために計算された量。色が濃いほど濃度も高くなります。

濃度計 Densitometer画像や色の濃度を計測する高精度な光電計測機。

ハイファイ印刷 HiFi Printing伝統的な4色印刷に特別な色を追加するプロセスカラー印刷の一種。

白色光 White Light理論上、可視光領域のすべてのスペクトル波長を均一な強度で発光する光。実際には現実しにくい光源。

波長 Wavelength光は電磁波で成り立っています。波長は隣接した2つの波の頂点の間の距離で表されます。

反射物体 Reflective Object物体表面に照射されたいくつか、あるいはすべての光の波長を反射する固体を指す。すべての光を100%反射する反射物体を完全拡散(完全白色表面)と呼びます。

反射率 Reflectance物体表面から反射される光の割合。分光測色計は様々な波長間隔で単色可視光スペクトルに沿った反射光を計測し、物体表面の色の分光曲線を決定しています。(→分光曲線、分光データ)

光 Light人間の目に見えるスぺクトルの範囲内(約 380から720nm)の電磁的放射。

色彩測定 Colorimetric赤、緑、青の三色の光の量や受光体の感度と関連する値を意味します。

標準 Standardサンプルを評価するために、設定、承認された基準。

減法混色の原色 Subtractive Primariesシアン、マゼンタ、イエロー。論理上、白色紙の上に減法混色の三原色をそれぞれ100%の強度で混色すると黒となります。三原色を可変させながら混色すると多くの色域(gamut)を表現することができます。100%強度の二色の混色は加法混色の原色になります。すなわち、赤、緑、青の色が表現できます。シアン100%+マゼンタ100% →青

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シアン100%+イエロー100% →緑マゼンタ100%+イエロー100% →赤

プリズム Prismガラスまたは他の透明な素材の三角形をした小片。光がプリズムの中を通るとき、虹色のような各波長成分の色を観察できます。これは光が色によって構成されていることを実証するもので、可視光スペクトル中の色の配列状態を表示することができます。(→可視光スペクトル)

プロセス制御 Process Control印刷シート上のカラーバーを濃度計や色彩計で計測し、その計測データを使って、稼動中の印刷機の印刷特性をモニタすること。設定されたプロセス制御のコントロールリミットに関してデータが分析されます。(→コントロールリミット)

分光曲線 Spectral Curve「色の指紋」:目に見える色のスペクトルデータの表現方法。分光曲線は反射強度の相対レベルを縦軸に可視光スペクトルの波長を横軸にとったグリッド上に描かれる。反射光の割合はある一定間隔でプロットされ、各点を結ぶことで曲線として表現されます。

分光測色計 Spectrophotometer物体表面からの反射光あるいは物体内部を通る透過光の特性を測定する測定器。この測定器から分光データを得ることができます。

分光データ Spectral Data物体の色を規定する最も正確なデータです。物体の色は物体表面からの反射により照射された光の特性が変化し、観測者によって認識された結果です。分光データは、反射光がどのように変化するかを表します。反射光の割合は、ある間隔でスペクトル波長に沿って計測されます。この情報は分光曲線として目に見える形に再現することができます。

放射物体(光電発光物)Emissive Object光を放射する被写体。一般的には、太陽のコロナ放電や電球の放熱フィラメントのような化学反応です。

まマゼンタ Magenta印刷におけるプロセス・インキの一色。純粋なマゼンタには緑色を含まず、緑色の光の波長成分を吸収し、赤と青の光の波長成分を反射する色です。

マンセルカラーチャート Munsell Color Chartsアルバート・マンセルによって開発された3次元カラーシステムであり、マンセルヒュー、マンセルバリュー、マンセルクロマの三属性を基本として構成されています。

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見かけ(アピアランス) Appearanceサイズ、形状、色、構成、光沢性、透明性、不透明度など目に見える属性ではなく、物体や材料の本質を表明すること。

明度 Lightnessある参照白色を基準とした明るさの属性。一般に、反射性または透遇性の表両について記述する際に用いられる用語です。白色物体表面とグレーな物体表面と区別し、明部から暗部の有彩色表面を区別するための属性です。

メタメリズム、メタメリック対 Metamerism, Metameric Pair2つの色がある光源下で見かけ上一致するが、異なった光源下では一致しない現象、このような色をメタメリック対と呼んでいます。

モニタRGB Monitor RGBRGBと同じ。モニタRGBは赤、緑、青の光の混色を使う特定のモニタで規定される特別な色空間です。

よ4色プロセス Four Color Process紙面上に溶融させるシアン、マゼンタ、イエロー、スミといった減法混色の原色の組み合わせ。これらの染料はドットサイズ、ドットの形、スクリーン角を持って各色が表現されます。(→ CMY、減法混色)

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文献目録

Billmeyer, Fred W. Jr., and Max Saltzman 1982. 「Principles of Color Technology」. Second Edition. Chichester, England: John Wiley & Sons.

Hunt, R.W.G. 1991.

「Measuring Colour」 Second Edition. Chichester, England: Ellis Horwood.

Jackson, Richard, Ken Freeman, and Lindsay MacDonald 1994.

「Computer Generated Colour」. First Edition. Chichester, England: John Wiley & Sons.

Kieran, Michael 1994.

「Understanding Desktop Color」First Edition.Berkeley, California: Peachpit Press.

Molla, R.K. 1988.

「Electronic Color Separation」Montgomery, WV: R.K. Printing and Publishing.

Southworth, Miles, Thad McIlroy, and Donna Southworth 1992.

「The Color Resource Complete Color Glossary」Livonia, New York: The Color Resource.

[翻訳監修]:杉山久仁彦

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