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1 日本政策金融公庫 総合研究所 中小企業研究グループ 2019年4月22日 NO.141 中小企業動向 トピックス 中小企業の景況は、弱い動きがみられるものの、 緩やかに回復している 「全国中小企業動向調査・中小企業編」結果概要 〔2019 年 1-3 月期実績、4-6 月期および 7-9 月期見通し〕 業況判断 DI は低下もプラス水準を維持 今期(2019 年 1−3 月期)の業況判断 DI は、前期から 4.3 ポイント低下し、 2.6となりました(図−1)。 低下は 2 期ぶりです。業種別にみると、製造業では前期から 7.9 ポイント低下し、-1.3 と 10 期ぶり にマイナス水準となりました。一方、非製造業は前期から 1.4 ポイント低下したものの、5.7 と高い 水準を維持しています。 先行きをみると、来期(2019 年 4−6 月期)は 2.3 に低下し、来々期(2019 年 7−9 月期)は 3.3 と なる見通しです。 図-1 業況判断 DI の推移(前年同期比で「好転」-「悪化」企業割合、季節調整値) 0 70 60 50 40 30 20 10 10 20 30 40 DI) (93/10) (08/2) (09/3) (12/3) (12/11) (97/5)(99/1)(00/11)(02/1) (91/2) (暦年・四半期) 91 90 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 見通し 19/1-3月期実績、( )は前期の値 全業種計: 2.6(6.9) 製 造 業: -1.3(6.6) 非製造業: 5.7(7.1) 全業種計 製造業 非製造業 資料:日本政策金融公庫総合研究所「全国中小企業動向調査・中小企業編」(以下同じ) (注)△は景気の山、▼は景気の谷を示す(以下同じ)。 当公庫ではお取引先のご協力を得て、2019年3月中旬に「全国中小企業動向調査・中小企業編」 を実施しました(調査対象 12,617 社、有効回答企業数 5,790 社、回答率 45.9%)。 今期の業況判断 DI は、前期から 4.3 ポイント低下したものの、2.6 とプラス水準を維持しました。 業種によっては弱い動きがみられたものの、全体としては緩やかな回復が続きました。

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Page 1: Ô SfÚ %¬ ïùZ ty ¤ 'ÀZ ¬ç Ó ¤ 'À ² Äп«µ3 売上DIは4期ぶりに低下 今期の売上DIは、前期から7.6ポイント低下し9.5となりました(図−4)。低下は4期ぶりですが、

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日本政策金融公庫 総合研究所 中小企業研究グループ2019年4月22日

NO.141中小企業動向トピックス 

中小企業の景況は、弱い動きがみられるものの、緩やかに回復している

「全国中小企業動向調査・中小企業編」結果概要〔2019年 1-3月期実績、4-6月期および7-9月期見通し〕

業況判断DI は低下もプラス水準を維持

 今期(2019 年 1−3月期)の業況判断DIは、前期から 4.3 ポイント低下し、2.6 となりました(図−1)。低下は 2期ぶりです。業種別にみると、製造業では前期から 7.9 ポイント低下し、-1.3 と 10 期ぶりにマイナス水準となりました。一方、非製造業は前期から 1.4 ポイント低下したものの、5.7 と高い水準を維持しています。 先行きをみると、来期(2019 年 4−6 月期)は 2.3 に低下し、来々期(2019 年 7−9 月期)は 3.3 となる見通しです。

図-1 業況判断DI の推移(前年同期比で「好転」-「悪化」企業割合、季節調整値)

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-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

10

20

30

40(DI) (93/10) (08/2)(09/3) (12/3)(12/11)(97/5) (99/1) (00/11)(02/1)(91/2)

(暦年・四半期)9190 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

見通し

19/1-3 月期実績、( )は前期の値全業種計: 2.6(6.9)製 造 業: -1.3(6.6)非製造業: 5.7(7.1)

全業種計製造業非製造業

資料:日本政策金融公庫総合研究所「全国中小企業動向調査・中小企業編」(以下同じ)(注)△は景気の山、▼は景気の谷を示す(以下同じ)。

 当公庫ではお取引先のご協力を得て、2019年 3月中旬に「全国中小企業動向調査・中小企業編」を実施しました(調査対象12,617社、有効回答企業数5,790社、回答率45.9%)。 今期の業況判断DIは、前期から4.3ポイント低下したものの、2.6とプラス水準を維持しました。業種によっては弱い動きがみられたものの、全体としては緩やかな回復が続きました。

中小企業動向141.indd 1 2019/04/25 9:26

Page 2: Ô SfÚ %¬ ïùZ ty ¤ 'ÀZ ¬ç Ó ¤ 'À ² Äп«µ3 売上DIは4期ぶりに低下 今期の売上DIは、前期から7.6ポイント低下し9.5となりました(図−4)。低下は4期ぶりですが、

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内需向けの業種でDI は高い水準

 さらに細かく業種別の動きをみると、米中貿易摩擦に端を発する海外経済の減速の影響などから、業務用機械、電子部品・デバイス、輸送用機械といった外需比率の高い製造業では大きく低下し、マイナス水準となりました(図−2)。一方、製造業のなかでも内需が中心の飲食料品、木材・木製品、窯業・土石などは上昇し、プラス水準となっています。

 非製造業は全体的に低下幅は小さく、依然として好調が続く倉庫業や情報通信業などは高い水準となっています。総じてみると、今期は内需向けの業種が業況を下支えしたといえそうです。

図-2 業種別業況判断DI の推移(前年同期比で「好転」-「悪化」企業割合、季節調整値)

-50

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-20

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10

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(DI)

 売

 業

 売

 業

宿泊・飲食サービス業

 庫

 業

 運

 業

 送

 業

 設

 業

非製造業

その他製造業

自動車部品

電子部品・デバイス

 

 鋼

業 ・

プラスチック製品

印刷 ・

同関連

紙 ・ 紙加工品

木材

木製品

繊維

繊維製品

2019/7-9 月期見通し2018/10-12 月期実績 2019/1-3 月期実績2019/4-6 月期見通し

業況判断DI は 6地域で低下

 業況判断DI を地域別にみると、今期は北海道、東北、関東、東海、近畿、中国の 6地域で低下しました(図−3)。一方、北陸は前年同期に大雪によって経済活動が落ち込んだ反動から、今期は大きく上昇しています。 来期は北海道、関東、東海、中国、九州の 5地域で上昇する見通しです。

図-3 地域別業況判断DI の推移(前年同期比で「好転」-「悪化」企業割合、季節調整値)

北海道 東 北 関 東 北 陸 東 海 近 畿 中 国 四 国 九 州-30

-20

-10

0

10

20(DI)

2.2 0.9

7.0 6.9

0.6

9.8

1.02.1

4.5 4.8

16.7

4.81.7

0.2

9.9

5.5 5.27.3

5.22.7

0.03.3

1.6 2.8

7.7 6.84.0

10.9

-7.8

-1.2 -1.0 -0.4 -1.5-2.9

-6.6

-0.6

2019/7-9 月期見通し2018/10-12 月期実績 2019/1-3 月期実績2019/4-6 月期見通し

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Page 3: Ô SfÚ %¬ ïùZ ty ¤ 'ÀZ ¬ç Ó ¤ 'À ² Äп«µ3 売上DIは4期ぶりに低下 今期の売上DIは、前期から7.6ポイント低下し9.5となりました(図−4)。低下は4期ぶりですが、

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売上DI は 4期ぶりに低下

 今期の売上DI は、前期から 7.6 ポイント低下し 9.5 となりました(図−4)。低下は 4期ぶりですが、依然として高い水準となっています。来期は 10.9、来々期は 12.9 と上昇する見通しです。

図-4 売上DI の推移(前年同期比で「増加」-「減少」企業割合、季節調整値)

(93/10) (08/2)(97/5)(91/2) (99/1) (00/11)(02/1) (09/3) (12/3)(12/11)

-80

-70

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-30

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50(DI)

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 18 1917(暦年・四半期)

見通し

全業種計製造業非製造業

19/1-3 月期実績、( )は前期の値全業種計: 9.5(17.1)製 造 業: 5.6(16.2)非製造業: 12.5(18.0)

純益率DI は横ばい

 今期の純益率DI は、前期から横ばいの -3.0 となりました(図−5)。原油や金属、紙など原材料価格の上昇や、人手不足による人件費の増加が続いていることから、純益率は低調な動きとなっています。

図-5 純益率DI の推移(前年同期比で「増加」-「減少」企業割合、季節調整値)

-70

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30(DI) (93/10) (08/2)(97/5)(91/2) (99/1) (00/11)(02/1) (09/3) (12/3)(12/11)

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 18 1917(暦年・四半期)

見通し

19/1-3 月期実績、( )は前期の値全業種計: -3.0(-3.0)製 造 業: -7.1(-5.0)非製造業:  0.2(-1.3)

全業種計製造業非製造業

中小企業動向141.indd 3 2019/04/25 9:26

Page 4: Ô SfÚ %¬ ïùZ ty ¤ 'ÀZ ¬ç Ó ¤ 'À ² Äп«µ3 売上DIは4期ぶりに低下 今期の売上DIは、前期から7.6ポイント低下し9.5となりました(図−4)。低下は4期ぶりですが、

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日本政策金融公庫 総合研究所 中小企業研究グループ2019年4月22日

NO.141中小企業動向トピックス販売価格DI、仕入価格DI のいずれも低下

 販売価格DIは前期から 2.3 ポイント低下し、12.7 となりました(図−6)。仕入価格DIは前期から 6.2ポイント低下し、48.7 となりました。来期は販売価格DIは上昇し、仕入価格DIは低下する見通しです。

図-6 販売価格DI と仕入価格DI の推移(いずれも前年同期比で「上昇」-「低下」企業割合、原数値)

0

-100

-80

-60

-40

-20

20

40

60

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90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 18 1917(暦年・四半期)

(93/10) (97/5) (99/1) (00/11)(02/1) (08/2)(09/3) (12/3)(12/11)(91/2)

見通し

販売価格DI仕入価格DI

19/1-3 月期実績、( )は前期の値販売価格DI: 12.7(15.0)仕入価格DI: 48.7(54.9)

売上・受注の停滞、減少の割合が上昇

 当面の経営上の問題点をみると、「求人難」と回答した割合が 34.4%と最も高く、次いで「売上・受注の停滞、減少」(28.2%)、「原材料高」(9.9%)の順となっています(図−7)。前期と比較すると、「求人難」は 0.7 ポイント、「売上・受注の停滞、減少」は 2.9 ポイント上昇しています。 今期の業況判断DI は低下したものの、非製造業を中心にプラス水準を維持しており、緩やかな回復が続いていると考えられます。ただし、外需向けの業種が大きく低下するなか、景気の先行きに慎重な見方が広がりつつあります。業況の回復が続くのか、これまで以上に注視する必要があるでしょう。� (分須�健介)

 「中小企業動向トピックス」に関するご意見・ご要望等ございましたら、本支店窓口までお問い合わせください。  発行:日本政策金融公庫 総合研究所 ~ホームページ https://www.jfc.go.jp/ ~

図-7 当面の経営上の問題点

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100(%)

その他19.3

求人難34.4人件費や支払利息等の増加5.5

製品安や値下げ要請2.7原材料高9.9売上・受注の停滞、減少28.2

90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 18 1917(暦年・四半期)

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