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2010.10 NHO Iwakuni Clinical Center
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人工呼吸器関連肺炎について~呼吸管理における理想的なチーム医療の進展を目指して~
記 リハビリテーション科
理学療法士 本田 今日子
はじめに
人工呼吸器とは
当センターでは、医師、看護師、コメディカルスタッフなどがさまざまな機会を介し、それぞれが関わる患者さまへの治療、ケアを検討しています。 今回は、人工呼吸器を装着された患者さまに起こる「人工呼吸器関連肺炎とその予防」について、当院の取り組みと併せて紹介いたします。
■スタンダードプリコーション(標準予防策) 接触・空気・飛沫感染などに全て対応する対策で、マスク、手袋、ガウンの 着用を行います。
■口腔ケア 口腔に存在する原因菌が管をつたって気管内に入るため、口腔内を清潔に保 つことが大切になります。
■経鼻挿管や経鼻栄養チューブへの注意 鼻から管を通す際は、鼻に存在する原因菌が、管をつたって肺へ流れこむ感染が 起こりやすくなるため、注意が必要です。鼻に管を通すことで鼻の中で感染が起こ り、副鼻腔炎を引き起こします。管の留置により、胃の中の食べ物が口腔内へ逆流 して、肺炎を引き起こします。
■カフ上吸引 管をつたって肺へ入ってくる原因菌や唾液などを、カフ(管を留めている風船の ような物)の上で取り除いて、肺炎を予防します。
人工呼吸器は、酸素を体外から取り入れ、細胞内で消費することができなくなる呼吸不全また意識障害、心不全などの症状や、酸素を体内に取り込む道である気道が何らかの理由で閉鎖される状況で、自らは呼吸ができない場合などに、空気を肺へ送り込み、呼吸を助けるために用いられます。 人工呼吸器を使用する際には、呼吸を助けるためにマスク型のものを用いたり、肺へ空気を流し込むために、管を口や鼻から通す挿管方法などを用いたりします。
人工呼吸器によって起こる肺炎を「人工呼吸器関連肺炎」といいます。この肺炎は、発症時期によって早期と晩期に分けられます。
人工呼吸器関連肺炎は…●院内肺炎は、院内感染の中で尿路感染に次いで 2番目の15%を占めます。
●院内感染の死亡率は 20~33%、人工呼吸器を装着した患者さまは、さらに高くなり60%。
●気管挿管や人工呼吸器装着をした場合、肺炎の発生リスクは1日1%上昇。
●人工呼吸器関連肺炎を発症すると、ICU 滞在期間が延長、入院期間が 4~ 9日延びます。
人工呼吸器関連肺炎とは
人工呼吸器関連肺炎を予防するための対処法
分類 発症について 原因菌早期人工呼吸器関連肺炎
(早期発症型)人工呼吸器を装着する際に肺へと菌が持ち込まれ、48 ~ 96 時間以内に起こる肺炎をいいます。
大腸菌・肺炎球菌・インフルエンザ菌・黄色ブドウ球菌 など
晩期人工呼吸器関連肺炎(晩期発症型)
唾液や逆流した胃液などが、少しずつ肺に入って
起こる不ふ け ん せ い ご え ん
顕性誤嚥により、人工呼吸器を装着して96 時間以上経過して起こる肺炎をいいます。
緑膿菌・MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)など
(図)挿管患者さんの口腔 内の様子(常在菌あり)
(図)口腔ケアの様子
リハビリだより
2010.10 NHO Iwakuni Clinical Center
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人工呼吸器関連肺炎に関する勉強会
栄養サポートチーム回診
口腔ケアラウンド
■体位変換とポジショニング(表 1) 体の位置を変えることで、肺全体へ空気をまんべんなく送り、肺炎を予 防します。頭を少しでも上げておくことで、胃の中の食べ物などの逆流物 が肺へ入らないようにします。表で示したとおり、頭を少しでも上げてお くと、肺炎の割合が少なくなります。
我々リハビリ部門では、体位排痰法(体位を変えて痰を出しやすくする手技)、呼吸介助(胸部を軟らかくして呼吸をしやすくする介助法)、吸引や口腔ケアに関わっています。 1 部署のみの活動では、患者さまの状態の管理は不十分です。多くの部署が包括的に関わり合いながら知識を深め、患者さまの状態を把握し、人工呼吸器関連肺炎の予防を行いながら、より良いケアが提供できるよう、さらに努めていきたいと思います。
岩国医療センターでの活動
(引用・参考文献)岸本 裕充・眞渕 敏・宇都宮 明美 「呼吸ケアチームの役割と VAP 予防の最新口腔ケア」SAGE Products,Inc.
http://www.sageproducts.com/(2010.08.20 取得)
各部署での勉強会 岩国医療センターでは、各部署がそれぞれの知識を持ち寄り、人工呼吸器患者さまのケア方法や、口腔ケアなどについての勉強会を行っています。
NST :栄養サポートチーム “栄養管理は全ての医療の基本”という原則に基づき、入院患者さまを対象に、他職種合同で栄養評価を行い、適切な栄養管理がなされているかを検討し、その患者さまに最もふさわしい栄養管理法を指導、提言しています。医師、看護師、栄養士、言語聴覚士、薬剤師、検査技師、ソーシャルワーカーからなります。
口腔ケアラウンド 口腔ケアラウンドは、看護師、言語聴覚士が週に 1 回病棟を回り、口腔の状態を評価し、病棟看護師や患者さまのご家族へ、口腔ケアの方法・指導および口腔ケア用品の紹介を行っています。
RST:呼吸サポートチーム 医師、看護師、臨床工学士、理学療法士などからなるチームで装着患者さまの回診を行い、人工呼吸器の早期離脱やケア方法などの検討を行っています。
呼吸サポートチーム回診
おわりに
40(%)
30
20
10
0寝ている姿勢 身体を起こして
いる姿勢
(表1)肺炎発症率Drakulovic Nov1999
実技指導