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2010年 8月。 京 都・立 命 館 大 学 衣 笠キャンパスでは、全 国 25の大学から集った教職員・学生約200名が熱い討論を繰り広 げていた。「どんな授業を望んでいるか」「学生生活を充実させる には」…掲げられた数々のテーマに共通するのは「大学という場」 「大学生」についてともに語り合い、あり方を考えること。 各大学 で学生 FD活動に取り組む学生を中心とするイベント「学生 FDサ ミット」でのひとこまだ。     曽根健吾さん(教育学科 2年/現チームリーダー)ほか 7名が、 学生サミットという言葉に惹かれてこのイベントに参加した。ところ が予想外の活発な議論を目の当たりにして衝撃を受けた。 「自分の大 学を良くしたいという思いがひしひしと伝ってきた」 (曽根さん)、「ともに学び合おうとする学生の姿があった」(山形 奈津美さん/教育学科 2年)――味わったことがない雰囲気に 飲まれたが、いつしか自分たちも「今まで心の中で考えていたこと を、その場で出会った仲間たちに懸命に伝えようとしていた」(道 正恒さん/教育学科 1年)という。 帰京する新幹線の中で、参加メンバーは自然と心を合わせた。 「自分たちも同じような活動をしてみようよ」。それが、このチーム の始まりとなった。 チームは昨年 10月、「まずは学年や専攻を超えた交流を」と、 夏のサミットでの経験を参考に学内で交流会(オープンカフェ)を 開催。「おもしろい授業とは」などのテーマをグループごとに話し 合い、参加者から「こういう場を求めていた!」という感想があがる など手ごたえも得た。 週1回ミーティングを開き、他大学での事例 研究をすすめながら、「東洋大学生が大学や学生生活について 語れる“場づくり”」に取りかかっている。 学生が参画して「 大学の授業を学生が求める授業 」にするの は簡単ではない。しかしハーバード大学の「白熱教室 」が TV放 映されて以降、学生側も意見を述べる“対話型授業”が注目を浴 び、各大学で学生を巻き込みながら“議論” “交流”をよりクローズ アップした試みが始まっている。 「まだ何かを議論できるレベルには達していない。しかし、深い やり取りの中でたくさんの気づきがある。この活動の中で、自分 で考え行動することの大切さを学んでいる」(小泉健さん/教育 学科 2年)と実感がこもる。 HP:http://www.toyo.ac.jp/fd (東洋大学 FD推進センター) Mail :mlstudentfd@toyo.jp FD(Faculty Development)とは 一般的には「授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取 り組み」の総称を指す。 実際は、単に授業内容・方法にとどまらず、広 く教育の改善ととらえ、カリキュラムの改訂や編成なども含み学生の 学習意欲の向上と教育の質の向上を図りながら、教育目標の実現を目 的とするものだ(2008年度より各大学の学部・学科においてFDは法 律で義務化)。 長らく教員主体のものとして捉えられてきたが、近年ではその享受 者である学生自身が参画することの必要性とその効果が注目され、 「学生 FD」と呼ばれる活動が立ち上がり始めている。 各大学によりさ まざまな取り組み方があるが、教員-職員-学生の協働がカギとなる。 学生が、大学を変えてゆく力となる。 そのために新しく芽生えたチーム。 ミーティングのたびに丁寧に作成しているレ ジュメも、すでに10数回を重ねた。12月には 『しゃべり場♪』と題するニュースレターも発 行。これから手がけてみたいことが山ほど! 以前からFDに関心を持ち、学外で活動していた関根美 祈さん(生命科学科 4年)は、2010年に発足した法政・青 山学院・立教・東洋の 4大学から成る「HART*コミュニテ ィ」(※)の学生スタッフメンバー。今では曽根さん、山形 さんも加わり、「HART*」という他大学との交流の場で得 た学びを、学内での学生FD活動の研究に活かしている。 (※)他大学学部生・大学院生とのコミュニケーションや、大学間を越えた学生・職員・教員の協働コミュニティ活動 (各種 FD企画の開催・参加など)を通して、「教育改善」や「より良い学びの場」を考えることを目的としている。 チーム発足の原点となった 「学生 FDサミット2010夏」にて。 チームが主催した「交流会」(2010年12月9日)にて。 学生FD研究チーム Toyo Student's FD Research Team vol. 03 2月3日のミーティングでは春合宿を企画 中。 合宿ではテーマを決めて議論する 予定だ。「実践を重ねて、プレゼン能力 が向上するといいね~」 学生生活を送っている中で、悩みを抱えたり、危険な事件・事故に巻 き込まれたりしてしまうこともある。そこで今年度、朝霞キャンパスでは 「Let's Enjoy Campus Life」をスタートさせた。 各機関のプロフェッ ショナルから「自分の身は自分で守る」ためのテクニックを伝授してもら い、4年間という貴重なキャンパスライフを楽しく、充実した時間にしても らうための全 6回のプログラムだ。 第 1回目は「 女子学生必見!ザ・護身術!(入門編)」。 埼玉県朝霞 警察署生活安全課の警察官を講師に迎え、「なぜ護身術が必要なの か」「どのような時に使うのか」を、実演・実例を交えながら講演。 今まで と比べ行動範囲の広がるキャンパスライフで、女性にとっては危険回 避の方法を心得ておくのも大切だろう。なかなか教わる機会のない護 身術を体験した学生からは、「もっと護身術を学んでみたい」との意見が あがり、第5回目の護身術 (中級編)は学生の声が 反 映され、実 施されたも のだ。 学生の声から生まれた もう一つのプログラムは、 第 4回目の「アロマ体験 してみませんか?」。 アロ プロから伝授!自由参加型プログラム 朝霞キャンパス学生生活 Let's Enjoy Campus Life Focus on Seminor Vol.3 マテラピスト・インストラクターの講師を招き、日常生活に取り入れるアロ マテラピーのレッスンを受けた。 学生は自分のお気に入りのアロマオイ ル(精油)を選び、そのオイルを使って腕や手をトリートメント。「 友達と 興味本位で参加したが、参加して正解」「今までアロマテラピーに触れ る機会がなかったが、とても良い経験になった。 手のマッサージを友達 や親にやってあげようと思う」と大人気だった。 他にも、本学相談員と一緒にストレスチェックや、音楽・アロマ・ハー ブティーでのリラクセーションを体験。また、友人にも相談しにくい悪徳 商法やデートDV(ドメスティックバイオレンス)の正しい知識や対策方 法を学べるプログラムも実施。 「自分に限って…」と思いがちだが、いざというときのために備えようと いう意識が大切だ。 今回、どのプログラムも参加した学生から好評を 得ており、2011年度はより学生に身近な企画していく予定。 友人を 誘ってぜひ参加してみよう! 本学に在籍する留学生のうち大半を占める中国人留学生。日本人 学生に母国を知ってもらえるきっかけになればと、留学生が講師や運営 スタッフを務めた中国語の講座が、2010年度は春学期に2回、秋学 期に 4回の合計 6回白山キャンパスで開催された。 中国語を学びたい人にとって、どのような学習法が最適なのかわかり にくいもの。特に中国語の場合は英語に比べ、学習法に関する書籍 や情報が少ないので、ネイティブに教わる機会は大変貴重である。 講 習会では、中国語を母国語とする留学生から一人ひとり丁寧に発音の 基礎から教わるため、受講者は講習会が終わるころには自己紹介レベ ルの簡単な会話ができるように。 同世代の講師ということもあり、和や かな雰囲気で学べるのも魅力の一つだ。 また、講師が実際に伝 統 衣 装 のチャイナドレス を着て登 場したり、中 国 の王宮文化や食べ物な どを紹介。 母国に親しみ を感じてもらおうと内容に 毎回変化をつけ、さまざま な工 夫を凝らしている。 学内留学!? 言葉を交わして輪を広げよう 外国人留学生による 母国語講習会 ~中国語編~ なかでも中国の歌を紹介するコーナーでは、テンポのいい「愛(歌手: 小虎隊)」や、友情をテーマに歌った「 朋友 」など選曲にもこだわりが。 「 歌は学 習が楽しくなる」との参 加 者の声もあり、最 終 回は全員で歌 い、踊り、大盛況で幕を閉じた。 講習会で単に語学を教えるだけでなく、 “母国の良さ”を伝えるにはどう したらいいか。 一から実施内容を構成することは、留 学 生の日本 語 勉 強にもなり、そして大きな達成感にも繋がっているそうだ。こういった経 験を通して、慣れない異国の地での生活に自信を持つことができる講習 会は、講師を務める留学生にとっても有意義なものとなっているのだ。 言語を習うにはネイティブスピーカーから教わるのが一番。そのネイ ティブをマンツーマンで教えてもらえるチャンスが学 内にある。日本 人 学生と留学生のコミュニケーションの場を利用し、語学力の向上と学内 で留学気分を体験してみることで、今まで見えなかった世界や友人と出 会えるかもしれない。これからも留学生による母国語講習会を予定し ているので、お楽しみに。 普段の生活に取り入れやすいアロママッサージ。身体の接触による 精神面の癒し効果も大きいとされている。女性に大好評。 14 TOYO UNIVERSITY NEWS 15 TOYO UNIVERSITY NEWS

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Page 1: 03 Let's Enjoy Campus Life 学生が、大学を変えてゆく力 · PDF file京都・立命館大学衣笠キャンパスでは、全国 25の大学 ... 週1回ミーティングを開き、他大学

 2010年 8月。京都・立命館大学衣笠キャンパスでは、全国25の大学から集った教職員・学生約200名が熱い討論を繰り広げていた。「どんな授業を望んでいるか」「学生生活を充実させるには」…掲げられた数々のテーマに共通するのは「大学という場」

「大学生」についてともに語り合い、あり方を考えること。各大学で学生FD活動に取り組む学生を中心とするイベント「学生FDサミット」でのひとこまだ。    曽根健吾さん(教育学科 2年/現チームリーダー)ほか7名が、学生サミットという言葉に惹かれてこのイベントに参加した。ところが予想外の活発な議論を目の当たりにして衝撃を受けた。

 「自分の大学を良くしたいという思いがひしひしと伝ってきた」(曽根さん)、「ともに学び合おうとする学生の姿があった」(山形奈津美さん/教育学科 2年)――味わったことがない雰囲気に飲まれたが、いつしか自分たちも「今まで心の中で考えていたことを、その場で出会った仲間たちに懸命に伝えようとしていた」(道正恒さん/教育学科 1年)という。 帰京する新幹線の中で、参加メンバーは自然と心を合わせた。

「自分たちも同じような活動をしてみようよ」。それが、このチームの始まりとなった。 チームは昨年 10月、「まずは学年や専攻を超えた交流を」と、夏のサミットでの経験を参考に学内で交流会(オープンカフェ)を開催。「おもしろい授業とは」などのテーマをグループごとに話し合い、参加者から「こういう場を求めていた!」という感想があがるなど手ごたえも得た。週1回ミーティングを開き、他大学での事例研究をすすめながら、「東洋大学生が大学や学生生活について語れる“場づくり”」に取りかかっている。 学生が参画して「大学の授業を学生が求める授業」にするのは簡単ではない。しかしハーバード大学の「白熱教室」がTV放映されて以降、学生側も意見を述べる“対話型授業”が注目を浴び、各大学で学生を巻き込みながら“議論”“交流”をよりクローズアップした試みが始まっている。 「まだ何かを議論できるレベルには達していない。しかし、深いやり取りの中でたくさんの気づきがある。この活動の中で、自分で考え行動することの大切さを学んでいる」(小泉健さん/教育学科 2年)と実感がこもる。

HP:http://www.toyo.ac.jp/fd (東洋大学FD推進センター) Mail:mlstudentfd@toyo.jp

FD(Faculty Development)とは 一般的には「授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取り組み」の総称を指す。実際は、単に授業内容・方法にとどまらず、広く教育の改善ととらえ、カリキュラムの改訂や編成なども含み学生の学習意欲の向上と教育の質の向上を図りながら、教育目標の実現を目的とするものだ(2008年度より各大学の学部・学科においてFDは法律で義務化)。 長らく教員主体のものとして捉えられてきたが、近年ではその享受者である学生自身が参画することの必要性とその効果が注目され、「学生FD」と呼ばれる活動が立ち上がり始めている。各大学によりさまざまな取り組み方があるが、教員-職員-学生の協働がカギとなる。

学生が、大学を変えてゆく力となる。そのために新しく芽生えたチーム。

ミーティングのたびに丁寧に作成しているレジュメも、すでに10数回を重ねた。12月には

『しゃべり場♪』と題するニュースレターも発行。これから手がけてみたいことが山ほど!

以前からFDに関心を持ち、学外で活動していた関根美祈さん(生命科学科4年)は、2010年に発足した法政・青山学院・立教・東洋の4大学から成る「HART*コミュニティ」(※)の学生スタッフメンバー。今では曽根さん、山形さんも加わり、「HART*」という他大学との交流の場で得た学びを、学内での学生FD活動の研究に活かしている。

(※)他大学学部生・大学院生とのコミュニケーションや、大学間を越えた学生・職員・教員の協働コミュニティ活動(各種FD企画の開催・参加など)を通して、「教育改善」や「より良い学びの場」を考えることを目的としている。

チーム発足の原点となった「学生FDサミット2010夏」にて。

チームが主催した「交流会」(2010年12月9日)にて。

学生FD研究チームToyo Student's FD Research Team

vol.03

2月3日のミーティングでは春合宿を企画中。合宿ではテーマを決めて議論する予定だ。「実践を重ねて、プレゼン能力が向上するといいね~」

 学生生活を送っている中で、悩みを抱えたり、危険な事件・事故に巻き込まれたりしてしまうこともある。そこで今年度、朝霞キャンパスでは

「Let's Enjoy Campus Life」をスタートさせた。各機関のプロフェッショナルから「自分の身は自分で守る」ためのテクニックを伝授してもらい、4年間という貴重なキャンパスライフを楽しく、充実した時間にしてもらうための全 6回のプログラムだ。 第 1回目は「女子学生必見!ザ・護身術!(入門編)」。埼玉県朝霞警察署生活安全課の警察官を講師に迎え、「なぜ護身術が必要なのか」「どのような時に使うのか」を、実演・実例を交えながら講演。今までと比べ行動範囲の広がるキャンパスライフで、女性にとっては危険回避の方法を心得ておくのも大切だろう。なかなか教わる機会のない護身術を体験した学生からは、「もっと護身術を学んでみたい」との意見が

あがり、第5回目の護身術(中級編)は学生の声が反映され、実施されたものだ。 学生の声から生まれたもう一つのプログラムは、第 4回目の「アロマ体験してみませんか?」。アロ

プロから伝授!自由参加型プログラム

朝霞キャンパス学生生活

Let's Enjoy Campus Life

Focus on Seminor Vol.3

マテラピスト・インストラクターの講師を招き、日常生活に取り入れるアロマテラピーのレッスンを受けた。学生は自分のお気に入りのアロマオイル(精油)を選び、そのオイルを使って腕や手をトリートメント。「友達と興味本位で参加したが、参加して正解」「今までアロマテラピーに触れる機会がなかったが、とても良い経験になった。手のマッサージを友達や親にやってあげようと思う」と大人気だった。 他にも、本学相談員と一緒にストレスチェックや、音楽・アロマ・ハーブティーでのリラクセーションを体験。また、友人にも相談しにくい悪徳商法やデートDV(ドメスティックバイオレンス)の正しい知識や対策方法を学べるプログラムも実施。 「自分に限って…」と思いがちだが、いざというときのために備えようという意識が大切だ。今回、どのプログラムも参加した学生から好評を得ており、2011年度はより学生に身近な企画していく予定。友人を誘ってぜひ参加してみよう!

 本学に在籍する留学生のうち大半を占める中国人留学生。日本人学生に母国を知ってもらえるきっかけになればと、留学生が講師や運営スタッフを務めた中国語の講座が、2010年度は春学期に2回、秋学期に4回の合計 6回白山キャンパスで開催された。 中国語を学びたい人にとって、どのような学習法が最適なのかわかりにくいもの。特に中国語の場合は英語に比べ、学習法に関する書籍や情報が少ないので、ネイティブに教わる機会は大変貴重である。講習会では、中国語を母国語とする留学生から一人ひとり丁寧に発音の基礎から教わるため、受講者は講習会が終わるころには自己紹介レベルの簡単な会話ができるように。同世代の講師ということもあり、和やかな雰囲気で学べるのも魅力の一つだ。

 また、講師が実際に伝統衣装のチャイナドレスを着て登場したり、中国の王宮文化や食べ物などを紹介。母国に親しみを感じてもらおうと内容に毎回変化をつけ、さまざまな工夫を凝らしている。

学内留学!? 言葉を交わして輪を広げよう

外国人留学生による母国語講習会

~中国語編~

 なかでも中国の歌を紹介するコーナーでは、テンポのいい「愛(歌手:小虎隊)」や、友情をテーマに歌った「朋友」など選曲にもこだわりが。

「歌は学習が楽しくなる」との参加者の声もあり、最終回は全員で歌い、踊り、大盛況で幕を閉じた。 講習会で単に語学を教えるだけでなく、“母国の良さ”を伝えるにはどうしたらいいか。一から実施内容を構成することは、留学生の日本語勉強にもなり、そして大きな達成感にも繋がっているそうだ。こういった経験を通して、慣れない異国の地での生活に自信を持つことができる講習会は、講師を務める留学生にとっても有意義なものとなっているのだ。 言語を習うにはネイティブスピーカーから教わるのが一番。そのネイティブをマンツーマンで教えてもらえるチャンスが学内にある。日本人学生と留学生のコミュニケーションの場を利用し、語学力の向上と学内で留学気分を体験してみることで、今まで見えなかった世界や友人と出会えるかもしれない。これからも留学生による母国語講習会を予定しているので、お楽しみに。

普段の生活に取り入れやすいアロママッサージ。身体の接触による精神面の癒し効果も大きいとされている。女性に大好評。

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