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松仁会医学誌 58 ⑴:1 ~ 9,2019 総  説 多発性骨髄腫の診療 2018 黒田純也 京都府立医科大学大学院医学研究科 血液内科学 要旨:多発性骨髄腫(Multiple myeloma)は,造血器悪性腫瘍において 2 番目に高頻度であり,高齢 化社会における罹患率の増加,多彩な臨床症状から多くの診療科,あるいはメディカルスタッフによ る診療機会が増加している.MMは完治困難な疾患ではあるが,近年,プロテアソーム阻害剤,免疫 調節薬,モノクローナル抗体薬など多くの新規薬剤が開発・臨床導入され,治療成績は改善の一途に ある.こうした進歩の過程にあっては,遅滞なき正しい診断の可否,各種新規薬剤の効果と有害事象 の特性に基づいた最適治療の選択,適切な支持療法の実施の有無が,予後改善において益々,重要性 を増しており,携わる医療者の診療力がより問われることとなる.本稿では,common diseaseとし てのMMについて,幅広く様々な分野の医療職の方々に 2018 年時点での標準的知見を共有すべく, その病態,診断,治療,支持療法について概説する. キーワード:多発性骨髄腫,病態,診断,治療,支持療法 Common diseaseとしての多発性骨髄腫 (Multiple myeloma;MM) MMは,全悪性腫瘍の約 1 %を占め,造血器腫 瘍では悪性リンパ腫に次いで 2 番目に多い疾患で ある.高齢化社会において患者数は年々増加傾向 にあり,罹患率は人口10万人あたり5人を超えた. 骨髄腫細胞は発生母地である形質細胞が有するガ ンマグロブリンや,各種のケモカイン,サイトカ インなどの産生・分泌能が保存されているため, その腫瘍性増殖は,単クローン性免疫グロブリン (M蛋白)や各種液性因子の過剰をもたらす.その 結果,MMに伴う自他覚症状は多臓器,多種多様 にわたるものとなり,医療現場では血液内科に留 まらず,様々な診療科,多職種のメディカルスタッ フによる横断的な関わりが必要となる.本稿では 幅広い分野の医療職の方々とMM診療の現状を共 有すべく,病態と診療のカレント・スタンダード を概説する.くわえて,京都府立医科大学血液内 科の関連施設で構成する京都血液臨床研究グルー プ(Kyoto Clinical Hematology Study Group; KOTOSG)におけるMMを対象とした臨床研究に ついても紹介する. MMを疑うべき症状と検査値異常 MMでは腫瘍細胞由来のケモカインによる赤芽 球やリンパ球の分化抑制,破骨細胞の活性化や骨 芽細胞抑制による骨溶解亢進,M蛋白成分の各種 臓器への沈着により,多彩な臓器症状を合併する. 代表的な症状・臓器症状としては,高カルシウム 血 症(Calcium increase), 腎 機 能 障 害(Renal insufficiency),貧血(Anemia),骨病変(Bone disease)や,過粘調症候群,アミロイドーシス, 免疫不全に伴う易感染性など,その他の症状 (Others)が挙げられ,これらの症状は総称して CRAB(O)症状とも呼ばれる(図1).これらの症 状の有無は症例毎に十人十色であり,実際の診療 2018 年 7 月 19 日受付 連 絡 先:〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町 465 番地 京都府立医科大学大学院医学研究科 血液内科学(黒田純也) E-mail: [email protected] TEL: 075 -251 -5740,FAX: 075 -251 -5743 利益相反:ヤンセンファーマ,セルジーン, ブリスト・マイヤー ズ スクイブ,小野薬品工業(講演料) セルジーン, ブリスト・マイヤーズ スクイブ,小野 薬品工業(委託研究費・助成金) 小野薬品工業(寄付金)

058 1 01...いは,くすぶり MM(smoldering MM:SMM)) と定義し,前者を治療対象とし,後者では慎重な 経過観察が基本とされてきた.しかしながら,近

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Page 1: 058 1 01...いは,くすぶり MM(smoldering MM:SMM)) と定義し,前者を治療対象とし,後者では慎重な 経過観察が基本とされてきた.しかしながら,近

松仁会医学誌 58 ⑴:1 ~ 9,2019

総  説

多発性骨髄腫の診療 2018

黒田純也

京都府立医科大学大学院医学研究科 血液内科学

要旨:多発性骨髄腫(Multiple myeloma)は,造血器悪性腫瘍において 2 番目に高頻度であり,高齢化社会における罹患率の増加,多彩な臨床症状から多くの診療科,あるいはメディカルスタッフによる診療機会が増加している.MMは完治困難な疾患ではあるが,近年,プロテアソーム阻害剤,免疫調節薬,モノクローナル抗体薬など多くの新規薬剤が開発・臨床導入され,治療成績は改善の一途にある.こうした進歩の過程にあっては,遅滞なき正しい診断の可否,各種新規薬剤の効果と有害事象の特性に基づいた最適治療の選択,適切な支持療法の実施の有無が,予後改善において益々,重要性を増しており,携わる医療者の診療力がより問われることとなる.本稿では,common diseaseとしてのMMについて,幅広く様々な分野の医療職の方々に 2018 年時点での標準的知見を共有すべく,その病態,診断,治療,支持療法について概説する.

キーワード:多発性骨髄腫,病態,診断,治療,支持療法

Common diseaseとしての多発性骨髄腫 (Multiple myeloma;MM)

MMは,全悪性腫瘍の約 1 %を占め,造血器腫瘍では悪性リンパ腫に次いで 2 番目に多い疾患である.高齢化社会において患者数は年々増加傾向にあり,罹患率は人口10万人あたり5人を超えた.骨髄腫細胞は発生母地である形質細胞が有するガンマグロブリンや,各種のケモカイン,サイトカインなどの産生・分泌能が保存されているため,その腫瘍性増殖は,単クローン性免疫グロブリン

(M蛋白)や各種液性因子の過剰をもたらす.その結果,MMに伴う自他覚症状は多臓器,多種多様にわたるものとなり,医療現場では血液内科に留まらず,様々な診療科,多職種のメディカルスタッ

フによる横断的な関わりが必要となる.本稿では幅広い分野の医療職の方々とMM診療の現状を共有すべく,病態と診療のカレント・スタンダードを概説する.くわえて,京都府立医科大学血液内科の関連施設で構成する京都血液臨床研究グループ(Kyoto Clinical Hematology Study Group; KOTOSG)におけるMMを対象とした臨床研究についても紹介する.

MMを疑うべき症状と検査値異常

MMでは腫瘍細胞由来のケモカインによる赤芽球やリンパ球の分化抑制,破骨細胞の活性化や骨芽細胞抑制による骨溶解亢進,M蛋白成分の各種臓器への沈着により,多彩な臓器症状を合併する.代表的な症状・臓器症状としては,高カルシウム血 症(Calcium increase), 腎 機 能 障 害(Renal insufficiency), 貧 血(Anemia), 骨 病 変(Bone disease)や,過粘調症候群,アミロイドーシス,免疫不全に伴う易感染性など,その他の症状

(Others)が挙げられ,これらの症状は総称してCRAB(O)症状とも呼ばれる(図 1 ).これらの症状の有無は症例毎に十人十色であり,実際の診療

2018 年 7 月 19 日受付連 絡 先:〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町 465 番地 京都府立医科大学大学院医学研究科 血液内科学(黒田純也) E-mail: [email protected] TEL: 075-251-5740,FAX: 075-251-5743利益相反: ヤンセンファーマ,セルジーン, ブリスト・マイヤー

ズ スクイブ,小野薬品工業(講演料) セルジーン, ブリスト・マイヤーズ スクイブ,小野薬品工業(委託研究費・助成金) 小野薬品工業(寄付金)

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黒 田 純 也2

図 1  MMに伴う臓器障害

現場における訴えは「口渇」,「易疲労」,「むくみ」,「息切れ」,「体力低下」,「腰痛」など,高齢者がしばしば訴える非特異的な訴えであって,必ずしもMMを即座に連想するものではない.また,アミロイドーシス合併例では,心・腎不全症状,嘔気,食欲不振や下痢,便秘など消化器症状,唾液分泌障害,起立性低血圧による立ちくらみ,手根管症候群や末梢神経障害によるしびれ,皮下結節など,より多彩な症状として表出されうるが,いずれも血液内科以外の診療科を初診として全く不思議のない症状ばかりである.あらゆる診療科においてMMの初診に遭遇する可能性があり,その頻度の増加も想定されることから,日常診療における鑑別疾患のひとつとしてMMの重要性は増していると言えよう.

血液・尿検査値異常も診断の契機となる.実際,MM症例の約 20 %では,健診や人間ドックなどでのMM関連検査値異常の偶発的発見が診断の契機となっている.約 3/4 の症例では,骨髄腫細胞が産生する完全型M蛋白によって高グロブリン血症となる一方,Bence-Jones型や非分泌型では完全型M蛋白が産生されず,むしろ低グロブリン

血症となる.MMではM蛋白以外のタンパク成分が減少するので,前者では高タンパク・高グロブリン・低アルブミン状態となる一方,後者では低タンパク・低グロブリン・低アルブミン状態となり,これに連動してアルブミン/グロブリン比も異常となる.このように血清タンパクの量・質的異常を認めた場合には,免疫電気泳動,免疫固定法などによる血清M蛋白,尿Bence Jones蛋白や血清遊離軽鎖(Free light chain:FLC)の検討が必要である.また,一般に成人の貧血は,80-90 %が鉄欠乏性貧血による小球性低色素性貧血であるが,MMでの貧血は赤芽球分化抑制が主因であることから,原則的に「正球性正色素性」貧血となる.成人における「非小球性低色素性」貧血は何らかの造血器疾患の存在を念頭に置くべきであり,なかでも高齢者の正球性正色素性貧血ではMMの鑑別が必要である.一方,高齢者では加齢性に,あるいは生活習慣病の合併症として腎機能低下がしばしば観察されるが,原因不明の腎機能悪化ではMMの鑑別を要する.その他,骨折を契機とした整形外科受診や,時には救急受診が契機となることもある.

高 血症

血小板減少

貧血骨髄浸潤

白血球減少

骨融解

骨痛 病的骨折

破骨細胞活性化因子

蛋白

蛋白

腎不全

アミロイドーシス過粘稠症候群

血小板機能異常

凝固因子異常出血

血栓

心不全、不整脈(時に致死的)、腎障害、

消化管障害(下痢、便秘、下血)、皮下結節、肝障害、アミロイドーマ、

感染症正常 抑制

サイトカイン・ケモカイン異常

脊髄圧迫症状

神経障害(末梢・自律)、手根管・肘管症候群、

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3多発性骨髄腫の診療 2018

MM・形質細胞腫の診断と治療介入基準の考え方

形質細胞性腫瘍の確定診断には細胞・病理学的診断が不可欠であり,骨髄に腫瘍性形質細胞を10 %以上認める場合をMM,骨もしくは髄外に組織学的に形質細胞の腫瘍性増殖を確認した場合には前者を骨形質細胞腫,後者を髄外性形質細胞性腫と診断する 1).診断に際して染色体異常,免疫学的形質(細胞表面マーカーなど),分子遺伝学的異常の検討を併行して行う.

MMは発症初期の進行はしばしば緩徐であり,症例によっては年余にわたって無症状・非進行状態が継続する場合もある.このことから,従来,CRAB(O)症状の少なくとも一つを有する場合を症候性MM,認めない場合を無症候性MM(あるいは,くすぶりMM(smoldering MM:SMM))と定義し,前者を治療対象とし,後者では慎重な経過観察が基本とされてきた.しかしながら,近年の多くの新規薬剤の導入により,かつての無症候性MMのクライテリアの中でも,早期の症候性MMへの進行が予測される高リスク例に対しては,治療介入が予後改善をもたらす可能性が示唆されている 2).こうした経緯から,欧米のガイドラインでは,CRAB症状が不在の場合も「診断から 2 年以内に 80 %以上の頻度でMM関連臓器障害が出現する患者を抽出するバイオマーカー」とされる「骨髄のクローナルな形質細胞が 60 %以上」,「血清FLC比(M蛋白成分のFLCと非M蛋白成分のFLCの比が 100 以上」,「MRIで局所性骨病変(5mm以上)数が 2 個以上」の 3 項目のうちの 1つ以上認めるものを症候性MMとすることに改め,積極的な治療介入が推奨されている 2).一方,こうした症例について,本邦のガイドラインでは

「臨床試験での治療介入に留めるべき」,もしくは「慎重なフォローアップによって進行傾向が認めた場合のみの治療適応に限定」と慎重な対応がとられてきた経緯があり,今後のエビデンスの積み重ねに伴う変化が注目される 1,3,4).なお,M蛋白を有するものの骨髄中のクローン性形質細胞が10 %未満である「意義不明の単クローン性グロブリン血症(Monoclonal gammopathy of undeter-mined significance:MGUS)」はMMの前病変であり,60 歳では人口の約 100 人に 1 人,80 歳では約 20 人に 1 人の頻度とされる.MGUSから

MMへの進行率は 1 %/年,生涯におけるMMへの進行率は 10 ~ 15 %とされ,年に 1 ~ 2 度の進行の有無について経過観察を行う.

MMの細胞遺伝学的・分子生物学的異常と 診療における意義

MMの病態形成は,発生母地となった形質細胞において,多種多様な細胞遺伝学的異常(染色体異常)や分子生物学的異常(遺伝子異常,エピジェネティック異常,細胞シグナル異常など)が経時的に重複して加わる多段階進行の過程による.概して 1 症例あたり約 7500 もの塩基変異,約 35 のアミノ酸変異,約 20 の染色体異常を有するとされ 6),それらのなかには症例を通じて繰り返し観察されるものもあるが,染色体・遺伝子異常の組み合せの全容は症例毎に異なるほか,個々においてもオリジナルクローンに付加的異常が加わることで派生したサブクローンが概して 4 ~ 6 クローン以上,存在する 6,7).

染色体異常のなかには,治療反応性や予後との関連など,臨床的意義が明確なものがある.例えば,染色体数が 48-75 に増加する高 2 倍体異常(HRD)はMMの 45-55 %を占め,主に奇数番染色体が増加し,増加染色体上のがん遺伝子の増幅が病態成立に寄与するが,比較的,予後良好である.他方,染色体 14q32 に座する免疫グロブリン重鎖遺伝子(IGH)をパートナーとした種々のタイプの染色体転座がMMの約半数で認められる.t(4;14)転座ではIGHの転座パートナー遺伝子である受容体型チロシンキナーゼFGFR3 とヒストンメチルトランスフェラーゼMMSETが脱制御によって過剰発現するほか,t(14;16)転座では転座パートナーであるMAF転写因子の過剰発現,t(11;14)転座ではCyclin D1 過剰発現が誘導され,それぞれ病態形成を担う 6,7).なかでも,前 2 者は予後不良であるが,プロテアソーム阻害剤(proteasome inhibitor:PI)による予後の改善が期待できることが大規模臨床試験 8),ならびに我々の実診療においても確認されている 9).一方,1q増幅,17p欠失などは疾患進行とともに獲得される二次的染色体異常であり,予後不良と関連する(表 1 )5-8).このように,染色体異常は,予後や治療薬選択と密接な関連において診療上の重要な指標となる.

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黒 田 純 也4

MMの治療薬と治療戦略

症候性MMの全生存期間(OS)中央期間は,1900 年代終わりまでの古典的化学療法剤のみ による治療に留まった時代には約 2.8 年程度と されてきた.しかし,今世紀となって,ボルテゾミ ブ(Bortezomib;BTZ), カ ー フ ィ ル ゾ ミ ブ

(Carfilzomib;CFZ),イキサゾミブ(Ixazomib;IXZ)などのPIs,サリドマイド(Thalidomide;THAL),レナリドマイド(Lenalidomide;LEN),ポマリドマイド(Pomalidomide;POM)などの免疫 調 節 薬(Immunomodulatory drugs;IMiDs),CD38 やSLAMF-7 を標的としたモノクローナル抗体(Monoclonal antibody;MoAb)であるダラツムマブ(Daratumumab;DARA)やエロツズマブ(Elotuzumab;ELO)など,多くの新規薬剤が導入されたことにより,QOLを保ちつつ,より長期の生存を目指すことが可能となった.骨髄腫細胞は正常細胞に比べ,PIsによるプロテアソーム阻害によって誘導される小胞体ストレスやアポトーシスシグナル,細胞増殖シグナル,エネルギー産生,レドックスなど多彩な細胞環境変化に対し

て高感受性である.LENやPOMなどのIMiDsは,E3 ユビキチンリガーゼ複合体CUL4-RBX1-DDB1-CRBN(CRL4CRBN)の一部であるセレブロン(CRBN)に結合し,骨髄腫細胞においてIkaros,Eiolosなど重要分子の分解促進に伴う抗腫瘍効果を発揮する一方,腫瘍環境におけるT細胞やNK細胞の活性化,骨髄腫細胞の増殖を促進するサイトカインの分泌阻害などのメカニズムによる抗MM効果を発揮する.DARAやELOは,骨髄腫細胞への結合を介してNK細胞による抗体依存性細胞障害効果,マクロファージによる抗体依存性貪食効果を誘導するほか,DARAはアポトーシス誘導や補体依存性細胞障害効果などによる直接的抗腫瘍効果,抑制系免疫担当細胞の抑制効果などを有する.また,65 ~ 70 歳以下を目安に臓器機能や活動性など生物学的年齢から若年と判断される症例では,自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(HDCT/ASCT)が適用可能であり,無増悪生存期間(PFS)やOS延長に寄与しうる重要な治療戦略の一つとして確立している.

執 筆 時 点 で は, 本 邦 に お い て 未 治 療MM (Newly diagnosed MM;NDMM)に対する既承

表 1  MMにおける染色体異常と臨床的意義

染色体異常

頻度 (%) 再構成遺伝子 臨床的・細胞生物学的・分子生物学的特徴 予後因子としての意義

MGUS

くすぶり MM MM

サイクリン D (CCND) グループ

t(11;14)(q13;q32)

10~30 15~30 CCND1 ・小リンパ球様細胞 ・CD20 発現パターン、遺伝子発現プロファイルによる CD1、CD2 の 2 タイプ ・非分泌型、IgM 型、IgE 型が比較的高頻度 ・AL アミロイド―シスが比較的高頻度 ・溶骨性病変しばしば

・HDT/ASCT における予後良好因子 ・新規薬剤療法における標準リスク ・BCL2 阻害剤(ベネトクラックス)に高感受性 t(12;14)(p13;q32) - <2 CCND2

t(6;14)(p21;q32) - 3~5 CCND3

大 MAF グループ

t(14;16)(q32;q23)

2~5 2~6 c-MAF

WWOX

・CCND2 発現 ・APOBEC3 誘導 ・高頻度に 13q 欠失あり ・溶骨性病変は稀

・予後不良

t(14;20)(q32;q11) 2 2~3 MAFB

t(8;14)(q24;q32) 稀 稀 MAFA

MMSET グループ

t(4;14)(p16;q32) 2~10 5~15 MMSET (100%)

FGFR3 (75%)

・高頻度に 13q 欠失、1q21 増幅あり ・IgA 型が比較的高頻度 ・CCND2 発現 ・溶骨性病変は稀

・予後不良 ・プロテアソーム阻害剤で予後改善

その他

t(8;14)(q24;q32) - 10 (NDMM)

45~50 (RRMM) c-MYC

PVT-1

・約 65%が高 2 倍体 ・kataegis が高頻度に関連

・予後不良の可能性

t(6;14)(p25;q32)

- 5~20 IRF4

t(14;17)(q32;q21) - <2 NIK ・NF- B 経路の活性化

t(1;14)(q21;q32)

稀 稀 IRTA2

13q 欠失 FISH 20~40 30~55

(Rb, DIS3) ・85%が 13 モノソミー、15%が 13q14 欠失 ・高頻度に IGH 転座を有する

G-banding ─ 10~20

17p 欠失

1~8 5~10 (NDMM) (TP53) ・約 40%に TP53 変異 ・高度予後不良 ・髄外病変、中枢病変、白血化

1q 増幅

0 (MGUS) 45 (SMM)

40~50 (NDMM) 70~ (RRMM)

(CKS1B, BCL9,

MUC1, PDZK1,

IRTA1, IRTA2)

・4 コピー以上に増幅した場合には予後不良

κ

NDMM;未治療MM,RRMM;再発・難治性MM.

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5多発性骨髄腫の診療 2018

認新規薬剤はBTZとLENに限定されている.移植適応症例ではBTZ,LEN,デキサメタゾン

(Dexamethasone;DEX)を併用したBLD療法や,BTZ,シクロフォスファミド(Cyclophosphamide;CPA),DEXを併用したBCD療法など,迅速に深い奏効を期待でき,かつ,自家造血幹細胞採取効率に悪影響を与えない新規薬剤を含む導入療法を行い,そのうえで大量メルファラン(Melphalan;MEL)療 法 を 前 処 置 と し たHDCT/ASCTを 実 施 す る. こ れ に よ っ て, 完 全 奏 効(complete response;CR)など良好な奏効を獲得することが長期のPFS,OS獲得に寄与する.さらに近年は,ASCT後にLEN,DEX併用によるLD療法やBLD療法による地固め療法,ならびにLENによる維持療法の有効性が多くの臨床研究で示されており,実診療においても実施される傾向にある.ただし,地固め療法や維持療法としての最適レジメンや実施期間は未確立であるほか,OS延長効果の有無,薬剤耐性化や二次がんの発症を含めた有害事象など未解決課題も残ることから,本邦での診療指針上は「臨床試験においての実施が推奨される治療法」,あるいは「慎重な適応の判断を要する治療法」として扱われるに留まっている 10,11).移植非適応症例においても,BTZ,MEL,プレドニゾロン(Prednisolone;PSL)を併用したMPB療法やBLD療法,LD療法など新規薬剤を含む化学療法により,高い奏効率,CRなど深い奏効の達成率が増加し,PFS,OSの延長が実現されて

いる(表 2 )12,13).遠くない将来にMoAbであるDARAのNDMMに対する投与が承認見込みであり,その併用によって,より良好な初期治療成績の実現が期待されている.近年,これらの強力な治療戦略によって,治療によって骨髄中における残存腫瘍細胞を 10-4~-6 レベルまで極端に減少することが可能となり,予後に直結するバイマーカーとなることが示されている.フローサイトメトリーや次世代シーケンサーを用いた微小残存病変の評価の一般化が課題となっている.

MMでは再燃・再発は不可避であるが,再発・抵抗性MM(Relapsed/Refractory MM;RRMM)に対しては,前治療の内容や奏効の程度と期間,有害事象,MM臓器障害の状況,染色体異常のタイプなどを包括的に鑑みたうえで治療を選択し,二次,三次治療と治療を紡ぐなかで,それぞれの治療におけるPFSと,その合算であるOSの延長を目指すことが第一義となる(図 2 ).ただし,元来,不治の病であるほか,高齢者の多いMMでは,緩和的治療と積極的治療との優劣を随時,慎重に判断することが重要である.近年,RRMMに対する二次治療以降に投与可能な治療薬の選択肢は大きく拡大し,BTZ,LENや既存の古典的抗がん剤に加え,CFZやIXZ,POM,DARA,ELOなどを用いた各種の併用療法が実施可能である.CFZとDEX併用療法やDARA,BTZ,DEX療法のBTZとDEX併 用 療 法 に 対 す る 優 越 性 14,15),CFZ,LEN,DEX併用療法やIXZ,LEN,DEX併

BTZ BiW/ MEL/ PSL

(n=344)

BTZ BiW/ MEL/ PSL

(n=66)

BTZ QW/ MEL/ PSL

(n=66)

BTZ/ CPA / DEX

(n=42)

BTZ/ PLD/ DEX

(n=35)

BTZ /LEN/ DEX

(n=242)

LEN/ DEX (n=535)

MEL/ PSL/ THAL (n=547)

患者背景 年齢中央値 75 歳以上 (%) ISS III 期(%) CrCl < 30 ml/min (%) 高リスク染色体異常 (%)

71 31 35 6

15.5

72 30 33 -

34

71 26 27 -

24

76 -

42.8 -

16.6

65 -

42.9 - -

63 -

32 5 (Cre>2)

33

73 34.8 40.4 8.4

17.3

73 34.4 41.0 10.1 18.6

治療成績

全奏効率 (%) 74 87 80 95.2 71.4 81.5 75.1 62.3 完全奏効 (%) 33 27 23 19.0 20.0 15.7 15.1 9.3 非常に良好な部分奏効 (%) 8 26 26 57.1 8.6 27.8 28.4 18.8 部分奏効 (%) 33 34 31 19.0 42.9 38.0 31.6 34.2 治療効果出現までの期間中

央値(月) 1.4 - - - 1.0 - 1.8 2.8

効果持続中央期間(月) 19.9 - - - NR 52 35.0 22.3 無増悪生存中央期間(月) 21.8 25.2 22.2 22.4 - 43 25.5 21.2 全生存中央期間(月) 56.4 65.5 50.2% (5 年) 38.0 NA 75.0 59.4% (4 年) 51.4% (4 年)

表 2  NDMMに対する新規薬剤を含む多剤併用療法による治療成績

BiW;twice weekly,QW;once weekly,BTZ;ボルテゾミブ,MEL;メルファラン,PSL;プレドニゾロン,CPA;シクロフォスファミド,DEX;デキサメサゾン,PLD;ペグ化リポゾーマルドキソルビシン,LEN;レナリドミド,THAL;サリドマイド, ISS;国際ステージングシステム. 文献 15 より改変

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用療法 16,17),DARA,LEN,DEX併用療法,ELO,LEN,DEX等のLD療法に対する優越性が大規模第 3 相臨床試験において示されており 18,19),さらなる新規薬剤を含む治療を選択するうえでの判断根拠の一助となる.尚,これらの臨床試験は,それぞれ適格基準が異なっており,各々の試験結果の解釈には対象症例の背景,特に前治療歴についての確認が重要である.

MMにおける有害事象管理と支持療法

治療法の決定においては,高齢者ゆえの脆弱性,すなわち,Performance status (PS)の低下や身体機能,臓器予備能の低下,疾患由来の臓器症状や既往症と,各薬剤の有害事象プロファイルの関係性に関する検討を要する.高齢者では薬物代謝機能の低下にくわえ,ひとたび有害事象が生じればダメージが重篤となり,治療継続が困難になったり,生活の質の甚大な障害に繋がる可能性が懸念される.このため,高齢者において忍容性低下が想定される状況では,薬剤の意図に富む減量・調整が重要である.また,腎障害を有する場合に

はBTZやCFZなどPIsは薬物代謝において影響を受けないうえ,早期の腎障害改善効果が高率に期待できるが,一方で間質性肺疾患,末梢神経障害が存在する場合はBTZの投与は回避すべきであるほか,75 歳以上の高齢者,心疾患や高血圧などの既往がある場合にはCFZ投与による心不全など循環器系有害事象の合併に十分な注意が必要である.実際,KOTOSGにおけるRRMMでのBD療法の検討では,末梢神経障害は全グレードで 58 %,グレード 3 以上を 25 %に認めており,本邦でのリアルワールドでの実態は欧米での臨床試験データに比して高率,かつ重篤である可能性がある 20).また,KOTOSGでは,前方向視的にCFZ治療における循環器系有害事象の実態とリスク因子を検討するための観察研究を実施中である.一方,腎機能低下症例ではLENの血中濃度上昇による血液毒性などの有害事象増加を回避すべく,投与量調整を必要とする.また,いずれのIMiDsも血栓症対策が必要である.MoAb療法では,いずれも輸注反応に注意が必要であるほか,感染症の増加,DARAでは血液毒性への注意が必要である.

支持療法としては,骨病変対策としてのビスホ

図 2  MMの治療の流れと治療戦略決定因子

ASCT;自家末梢血幹細胞移植,CTx;化学療法,HDT;大量化学療法.

MM

疾患リスク ・国際予後指数 ・疾患関連症状 ・染色体異常 ・遺伝子異常 ・髄外病変 ・高LDH ・遺伝子発現プロファイル

患者背景

・年齢 ・Performance Status ・住環境 ・認知機能

疾患リスク 患者背景. + 前治療のタイプ・奏効度

・効果持続期間

HDT /ASCT2

3rd CTx.

4th CTx.

2nd line CTx.

3rd CTx.

再発 再燃

3rd CTx.

3rd CTx.

4th CTx.

4th CTx.

4th CTx.

1st CTx.

移植 適応

移植 非適応 標準リスク

MM

高リスク MM

再発 再燃

再発 再燃

再発再燃

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7多発性骨髄腫の診療 2018

スホネート製剤であるゾレドロン酸(Zoledronic acid;ZOL)の併用は,骨痛や病的骨折などの骨関連事象の低減のみならず,OS延長効果も期待できる.また,抗RANKLモノクローナル抗体であるデノスマブもZOLに劣らない骨関連事象の低減効果を有することが示されており,なかでも腎障害のある場合などZOLが投与しづらい場合には有用である.ただし,デノスマブは重篤な低カルシウム血症をきたすことがあり,カルシウム濃度の注意深い管理を要する.また,いずれの製剤も顎骨壊死の合併に注意が必要であり,歯科医による定期的指導が原則である.限局性の溶骨病変や病的骨折による除痛,脊髄や神経根圧迫が懸念される椎体病変に対しては局所放射線照射が有効であるほか,薬物による癌性疼痛対策としては,MMでは潜在的腎障害が存在する可能性が高く,例え見かけ上,腎機能が正常であっても出来る限り非ステロイド系解熱鎮痛薬の処方は回避すべきであり,アセトアミノフェン,ならびにオピオイド系鎮痛薬の適材適所での使用が必要となる.また,病的骨折予防のため,椎体に負荷がかかりにくいような日常生活における起き上がり方や寝返り方,座り方,過負荷を回避しつつ筋力低下を防止する運動方法,適切な補助具の指導なども重要である.中等度以上に悪化した貧血に対しては,エリスロポエチン製剤の投与が一助となるほか,好中球減少に対してはG-CSFが有用である.感染予防としての感染予防行動(マスク着用,手洗い,うがい)の指導が必要であるほか,抗真菌薬やST合剤の投与,ならびにPIs治療においては帯状疱疹対策としてアシクロビルの予防投与が必要である.

ま と め

MMの診療には病態と症候の理解に基づいた診断力,エビデンスの理解と日常診療における課題への対応の調和による治療設計,化学療法や造血幹細胞移植の適切な実施と全身管理,種々の支持療法,社会的サポートまで,医療に関わる全ての要素が集学的に求められる.本稿が日々の診療の一助となれば幸いである.

文  献

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7 ) 「多発性骨髄腫の診療指針,第 4 版」編集委員会.II 臨床所見と初診時検査:7)染色体・遺伝子.日本骨髄腫学会編.多発性骨髄腫の診療指針 第 4 版.東京:文光堂:2016.p.20-24 .

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黒 田 純 也8

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9多発性骨髄腫の診療 2018

Current standards for multiple myeloma in 2018

Junya Kuroda

Division of Hematology and Oncology, Department of Medicine, Kyoto Prefectural University of Medicine

Multiple myeloma (MM) is the second most frequent hematological malignancy. Due to the increase in elderly patients and numerous disease-oriented symptoms, the incidence of MM has increased in all fields of daily practice. Although MM is incurable, treatment outcomes have been greatly improved by the advent of new agents such as proteasome inhibitors, immunomodulatory drugs, and monoclonal antibodies. Therefore, quick and correct diagnosis, appropriate use of new agents based on the drug characteristics for efficacy and adverse events, and supportive therapy are highly important. To under-stand MM as a common disease, this review summarizes the current standards for MM practice, i.e., pathophysiology, diagnostic methodology, treatments, and supportive therapy, for a wide range of readers in varying fields of medical practice.

Key Words: multiple myeloma, pathophysiology, diagnosis, treatment, supportive care