28
6-1 6 章 ひびわれに関する文献調査 6-1 調査目的 平成 20 年度と平成 21 年度の 2 年間にわたり、長期性能に影響を及ぼす要因として、クリ ープ、ひびわれ、耐火、へりあき等に関して、幅広く文献を調査してきた。平成 22 年度で は、その後アメリカの American Concrete Institute より新たに接着系アンカーの認証規 ACI355.4-10 および設計指針 ACI318-11 Appendix D が発行され、さらに日本でも日 本建築学会「各種合成構造設計指針・同解説」が改定されたのを受けて、長期性能に著しい 影響を与える因子のひび割れに特化して調査した。 6-2 調査概要 1.先付けアンカーを含め、コーン破壊する金属系アンカーの場合、ひびわれ低減係数は 0.7 としている。 2.接着系アンカーにおいて付着強度の低減係数は 0.5 とするのが大勢であるが、定着長を大 きくして鋼材破壊にすることで、ひび割れの影響を回避できる。ただし最新の ACI 案では 0.3 ときびしくしている。 6-3 調査結果 ACI 318-011 Appendix D によれば ひびわれコンクリートに対応した基準付着応力度τcr は、 ACI355.4-10 に従った実験結果の 5%フラクタイル値とする。 以下の条件を満足する場合には表 D.5.5.2 の最小保障付着応力度を採用してよい。 (a)アンカーが ACI355.4-10 の規定を満足する。 (b)アンカー用穿孔はロータリーハンマードリルまたは削岩機を使用する。 (c)アンカー施工時のコンクリート強度は 2500psi17.5N/mm 2 )以上とする。 (d)アンカー施工時のコンクリート材令は 21 日以上とする。 (e) アンカー施工時のコンクリート温度は 50°F10℃)以上とする。 D.5.5.2 最小保障付着応力度 供用期間でのコンク リート最高温度 τcr τuncr 施工および使用環境 アンカー施工時のコ ンクリート含水程度 °F () psi (N/mm 2 ) psi (N/mm 2 ) 屋外 乾燥ないし湿潤 175 (79.4) 200 (1.38) 650 (4.48) 屋内 乾燥 110 (43.3) 300 (2.07) 10006.70持続引張荷重に対しては 0.4 の低減係数を適用する。 註:τcr τuncr を比較すると、ひびわれの低減係数は 0.3 となっている。

1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

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Page 1: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-1

第 6章 ひびわれに関する文献調査 6-1 調査目的

平成 20年度と平成 21年度の 2年間にわたり、長期性能に影響を及ぼす要因として、クリ

ープ、ひびわれ、耐火、へりあき等に関して、幅広く文献を調査してきた。平成 22年度で

は、その後アメリカの American Concrete Institute より新たに接着系アンカーの認証規

準 ACI355.4-10 および設計指針 ACI318-11 Appendix D が発行され、さらに日本でも日

本建築学会「各種合成構造設計指針・同解説」が改定されたのを受けて、長期性能に著しい

影響を与える因子のひび割れに特化して調査した。

6-2 調査概要 1.先付けアンカーを含め、コーン破壊する金属系アンカーの場合、ひびわれ低減係数は 0.7

としている。 2.接着系アンカーにおいて付着強度の低減係数は 0.5とするのが大勢であるが、定着長を大

きくして鋼材破壊にすることで、ひび割れの影響を回避できる。ただし最新の ACI 案では

0.3ときびしくしている。 6-3 調査結果

ACI 318-011 Appendix Dによれば ひびわれコンクリートに対応した基準付着応力度τcrは、ACI355.4-10に従った実験結果の

5%フラクタイル値とする。 以下の条件を満足する場合には表 D.5.5.2の最小保障付着応力度を採用してよい。 (a)アンカーが ACI355.4-10の規定を満足する。 (b)アンカー用穿孔はロータリーハンマードリルまたは削岩機を使用する。 (c)アンカー施工時のコンクリート強度は 2500psi(17.5N/mm2)以上とする。 (d)アンカー施工時のコンクリート材令は 21日以上とする。 (e) アンカー施工時のコンクリート温度は 50°F(10℃)以上とする。 表 D.5.5.2 最小保障付着応力度

供用期間でのコンク

リート最高温度

τcr τuncr 施工および使用環境 アンカー施工時のコ

ンクリート含水程度

°F (℃) psi (N/mm2) psi (N/mm2)

屋外 乾燥ないし湿潤 175 (79.4) 200 (1.38) 650 (4.48)

屋内 乾燥 110 (43.3) 300 (2.07) 1000(6.70)

持続引張荷重に対しては 0.4の低減係数を適用する。

註:τcrとτuncrを比較すると、ひびわれの低減係数は 0.3となっている。

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6-2

日本建築学会 各種合成構造設計指針 2010によれば

22年度 ひびわれ文献リスト 1.CEB 図書番号 206

Fastening to Reinforced Concrete and Masonry Structures

State-of-art report 1991 CEB-Task Group Ⅵ/5, Chairman: R.Eligehausen

Page 3: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-3

2.Anchorage in Concrete Construction

Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn出版 2006発行 3.あと施工アンカー設計指針(案)・同解説 (JCAA) 4.fib Design Guide ,Part3

Characteristic Resistance of Fastenings with Bonded Anchors and Connections with

Post-installed Reinforcing Bars

5.ACI 318-11(draft)

Building Code Requirements for Structural Concrete and Commentary

Appendix D –Anchoring to Concrete

6.CEB 226 Design of Fastenings in Concrete CEB 図書 226、1995 7.欧州技術認証規格 EOTA TR029 Design of Bonded Anchors 8.Behavior of Fasteners Loaded in Tension in Cracked Reinforced Concrete

ACI Structural Journal No.92-S35/May-June 1995

Rolf Eligehausen, Tamas Balogh 9.コンクリートに埋め込まれたボルトの引き抜き耐力にひびわれが及ぼす影響

日本建築学会大会学術講演梗概集 21394,2004 稲田 扶、 滝口克己 10.欧州技術認証規格 EOTA TR023

Assessment of post-installed rebar connections

11.DD CEN/TS 1992-4-5:2009

Design of fastenings for use in concrete. Post-installed Fasteners. Chemical

systems 12.AIJ各種合成構造設計指針 2010改定版 13.ACI 355.4-10

Acceptance Criteria for Qualification of Post-installed Adhesive Anchors in Concrete

Page 4: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-4

文献要約 文献名 ひびわれ低減係数(Δw=0.3 mm時) CEB 226

Design of Fastenings in Concrete ひびわれ影響係数(割増係数)

ひびわれコンクリートの場合

ひびわれのないコンクリートの場合

Anchorage in Concrete

Construction

Rolf Eligehausen、Rainer Mallee,

John F.Silva 、Ernst & Sohn出版

2006

引張:25~80%に分布し、平均的には 50% へりあき寸法と埋込み深さが十分確保されていれば破

壊モードは鋼材破壊となり耐力への影響も少ない

あと施工アンカー設計指針

(案)・同解説 (JCAA) ひび割れ幅が 0.3mm 以下の場合にはひび割れ係数を

0.5とするのがよい fib Design Guide ,Part2

コンクリートコーン破壊耐力を最大耐力とすると、最大

付着強度は以下となる。 これによればひびわれの影響は約 70%となる。

ACI 318-011 Appendix D

Anchoring to Concrete

表 D.5.5.2 最小保障付着応力度 供用期間で

のコンクリ

ート最高温

τcr τuncr 施工 およ

び使 用環

アンカー

施工時の

コンクリ

ート含水

程度 °F (℃) psi

(N/mm2)

psi

(N/mm2)

屋外 乾燥ない

し湿潤

175 (79.4) 200

(1.38)

650

(4.48)

屋内 乾燥 110 (43.3) 300

(2.07)

1000

(6.70)

持続引張荷重に対しては 0.4の低減係数を適用する。

地震力に対しては、τcrへは 0.8, τuncrへは 0.4の低減係数を適用する。

註:τcrとτuncrを比較すると、ひびわれの低減係数は 0.3

となっている。

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6-5

CEB 226

Design of Fastenings in Concrete ひびわれ影響係数(割増係数)

ひびわれコンクリートの場合

ひびわれのないコンクリートの場合

欧州技術認証規格 EOTA TR029

Design of Bonded Anchors 付着強度

はひびわれコンクリートの場合の と、ひびわれ

のないコンクリートの を、欧州技術認証書に記載

のものを採用する。 せん断耐力の場合には、

ひびわれコンクリート ひびわれのないコンクリート

Behavior of Fasteners Loaded in

Tension in Cracked Reinforced

Concrete

ACI Structural Journal

No.92-S35/May-June 1995

頭付きスタッド ひびわれ幅 0.3mmにおける耐力低減率は 0.7程度にと

どまっている。

コンクリートに埋め込まれたボ

ルトの引き抜き耐力にひびわれ

が及ぼす影響 日本建築学会大会学術講演梗概

集 21394、2004 稲田 扶、 滝口克己

先付け

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6-6

欧州技術認証規格 EOTA TR023

Assessment of post-installed

rebar connections

試験結果によれば、先付け鉄筋のひびわれコンクリート

における付着強度は、ひびわれのないコンクリートの場

合と比較して約 75%である。あと施工鉄筋の場合には、

この低減率は約 50%とみなされる。 欧 州 標 準 規 格 DD CEN/TS

1992-4-5:2009

Design of fastenings for use in

concrete. Post-installed

fasteners. Chemical

systems

付着強度

はひびわれコンクリートの場合の と、ひびわれ

のないコンクリートの を、欧州技術仕様書に記載

のものを採用する。 せん断耐力については、ひびわれのないコンクリートに

対する割増係数 ひびわれコンクリート

各種合成構造設計指針 2010改定版

アンカー筋の埋込み長さが 10da未満と短い場合には、 ひび割れが生じている母材 コンクリートにアンカーボルト を施工する場合には、平均 付着強度τaを適切に低減して 引張支持力を評価することも 必要と考えられる。

ACI355.4-10

Acceptance criteria for

qualification of post-installed

adhesive anchors in concrete

表 10.2 認証製品の許容最小付着応力度τ k,min

(MPa) 屋外使用 屋内使用 註: この表からひびわれ低減係数は 0.3としている。

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6-7

平成 22年度ひびわれ文献レビュー 文献番号 1 区分 アンカー性能全般 アンカー分類 アンカー全般 題目 Fastening to Reinforced Concrete and Masonry Structures

State-of-art report, Part 1 and Part 2 著者 CEB-Task Group Ⅵ/5, Chairman: R.Eligehausen

出典 CEB図書番号 206,1991 研究目的 コンクリート定着技術の最新情報をとりまとめた 内容 13章 ひび割れコンクリートにおける接着系アンカーの性能。

ひび割れ幅Δwと引張耐力 Nuとの関係では次の実験結果が得られている。 ひび割れ幅Δwとせん断耐力Vuとの関係で

は次の実験結果が得られている。 ひび割れ幅が大きくなっても、低減率は

40~55%以下にはならない。

Vu,crack/ Vu,uncracked

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6-8

文献番号 2 区分 アンカー性能全般 アンカー分類 アンカー全般 題目 Anchorage in Concrete Construction

著者 R.Eligehausen, R.Mallee, John F.Silva

出典 Ernst & Sohn出版 2006発行 研究目的 コンクリート定着技術の最新情報をとりまとめた。 内容 6.2章:ひび割れコンクリートにおける性能

ひびわれコンクリートにおける接着アンカー引張耐力の低減係数を図 6.42 に示す。この中には主剤が不飽和ポリエステル、ビニルエステルおよびハイブリッド樹

脂(ビニルエステル+セメント)で、カプセル方式および注入方式の接着アンカーが含まれる。コンクリートのヘアラインクラック部にアンカーを定着してから、所

定の幅までひびわれを開き載荷した。 試験結果はかなり大きくばらついているが、これはひびわれの位置が必ずしもアン

カー軸と一致するとは限らず、その相対位置の不均一によるところが大きい。 低減係数が 0.8を超えるデータは、ひびわれの影響が部分的にしか及んでないと考えられるので除外すれば、ひびわれ幅Δw=0.3~0.4 mm における低減係数は

25~80%に分布し、平均的には 50%といえる。

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6-9

せん断耐力の低減係数を図 6.44に示す。 ひびわれが接着アンカーの剛性に及ぼす影響 は大したことはなく、へりあき寸法と埋込み深

さが十分確保されていれば破壊モードは鋼材

破壊となり耐力への影響も少ない。 コンクリート端部破壊荷重の低減率は、頭付き

スタッド等に比べて少し大きくなっている。

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6-10

文献番号 3 区分 設計法 アンカー分類 アンカー全般 題目 あと施工アンカー設計指針 著者 日本建築あと施工アンカー協会 出典 あと施工アンカー設計指針(案)・同解説 研究目的 限界状態設計法を提案 内容 2.2.2 耐力の低減係数

設計用耐力を算定するための低減係数は、下記の1)から5)による。

1)材料係数γm1は、材料特性値の性質および材料強度や剛性等の材料特性の変

動を考慮して設定する。 2)劣化係数γm2は、材料特性値の時間的変化やその他の要因による劣化等によ

る材料強度や剛性等の材料特性の劣化を考慮して設定する。 3)ひび割れ係数γcrは、母材に発生した、または発生する可能性のあるひび割

れがあと施工アンカーの耐力および変形に与える影響を考慮して設定する。 4)施工係数γcoは、あと施工アンカーの施工難易度を考慮して設定する。 5)耐力係数γSは、あと施工アンカーの耐力のばらつきや、耐力算定法式の精度

等を考慮して設定する。 (3)ひび割れ係数γcr ひび割れによる影響は(2.1)、ひび割れ幅の大きさ、ひび割れの深さ、ひび割れ

からの距離などにより変化し、その要因が複合的であり、影響度合の判断も困難

であると思われる。そのため、ひび割れを考慮する場合には、ひび割れ幅が

0.3mm以下場合にはひび割れ係数を 0.5とするのがよい(解図 2.2.1参照)。

解図 2.2.1 ひび割れ幅と引張耐力低下の関係(Fuchs, Eligehausen(1989))

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6-11

文献番号 4 区分 設計法 アンカー分類 接着系アンカー 題目 Characteristic Resistance of Fastenings with Bonded Anchors and Connections

with Post-installed Reinforcing Bars

著者 fib

出典 Design Guide Part-Ⅱ/Ⅲ 2010 研究目的 接着系アンカーおよびあと施工鉄筋接合の設計法を提案 内容 接着系アンカーの耐力特性値(群アンカー)は 16.2-1式で評価できる。

この中で、アンカー単体の基準耐力は、基本的に付着強度で評価する。

=認証書に与えられた値、または認証試験結果より得られる値とす

る。 コンクリートコーン破壊耐力は

コンクリートコーン破壊耐力を最大耐力とすると、最大付着強度は以下となる。 これによればひびわれの影響は約 70%となる。

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6-12

文献番号 5 区分 設計法 アンカー分類 接着系アンカー 題目 Anchoring to Concrete

著者 ACI

出典 ACI 318-011 Appendix D (draft)

研究目的 アメリカにおける接着系定着法設計指針である。 内容 D5.5 接着系アンカーの付着強度

式(D-22) ひびわれコンクリートに対応した基準付着応力度τcrは、ACI355.4-10 に従った実

験結果の 5%フラクタイル値とする。 以下の条件を満足する場合には表 D.5.5.2の最小保障付着応力度を採用してよい。

(a)アンカーが ACI355.4-10の規定を満足する。 (b)アンカー用穿孔はロータリーハンマードリルまたは削岩機を使用する。 (c)アンカー施工時のコンクリート強度は 2500psi(17.5N/mm2)以上とする。 (d)アンカー施工時のコンクリート材令は 21日以上とする。 (e) アンカー施工時のコンクリート温度は 50°F(10℃)以上とする。 表 D.5.5.2 最小保障付着応力度

供用期間でのコンク

リート最高温度

τcr τuncr 施工および使用環境 アンカー施工時のコ

ンクリート含水程度

°F (℃) psi (N/mm2) psi (N/mm2)

屋外 乾燥ないし湿潤 175 (79.4) 200 (1.38) 650 (4.48)

屋内 乾燥 110 (43.3) 300 (2.07) 1000(6.70)

持続引張荷重に対しては 0.4の低減係数を適用する。

地震力に対しては、τcrへは 0.8, τuncrへは 0.4の低減係数を適用する。

註: τcrとτuncrを比較すると、ひびわれの低減係数は 0.3となっている。

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6-13

文献番号 6 区分 設計法 アンカー分類 金属系アンカー 題目 Design of Fastenings in Concrete (Draft CEB Guide)

著者 CEB

出典 CEB 図書 226、1995 研究目的 国際的な金属系アンカーの最初の設計指針案 内容 2.2.4 コンクリートコーン破壊

コンクリートコーン破壊に対応した、アンカー群の引張耐力特性値は

ここで

ひびわれコンクリート中で、へりあきやピッチの影響のない単独アン

カーの特性耐力

へりあきやピッチの影響を考慮した水平投影面積比

コンクリート部材の端部近傍におけるコンクリート中の応力分布を考

慮する係数

アンカーに作用する引張応力の偏心を考慮する係数

定着長の小さい アンカーについては、鉄筋間隔が

150mm 以下の場合にかぶりコンクリートの剥離により強度が減少す

ることを考慮する係数

コンクリートひびわれの影響係数

a) へりあきやピッチの影響のない単独アンカーの特性耐力は次式で与えられる。

単独アンカーの水平投影面積 は次図のとおり矩形で評価する。

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6-14

へりあき影響係数

ひびわれ影響係数

ひびわれコンクリートの場合 ひびわれのないコンクリートの場合

2.3.4 せん断特性耐力

ここで

ひびわれコンクリート中で、へり部に直交するせん断応力を受ける単独

アンカーの特性せん断耐力

へりあき、ピッチおよび部材厚の影響を考慮した側面投影面積比

コンクリート部材厚の影響を考慮する係数

載荷方向に平行な端部の影響を考慮する係数

定着長の小さい アンカーについては、鉄筋間隔が

150mm 以下の場合にかぶりコンクリートの剥離により強度が減少する

ことを考慮する係数

せん断応力の作用角度を考慮する係数

ひびわれおよび配筋の影響を考慮する係数

単独アンカーの特性せん断耐力は

側面投影面積

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6-15

部材厚の影響係数

載荷方向に平行な端部の影響係数

せん断応力の作用角度を考慮する係数

ひびわれおよび配筋の影響を考慮する係数

ひびわれコンクリートで配筋がない場合

ひびわれコンクリートで、端部に沿ってストレート筋(12φ以上)

がある場合

ひびわれコンクリートで、端部鉄筋と密な肋筋(≦100mm)が

配筋されている場合。溶接ワイアメッシュ(ds≧8mm,s≦

100mm)が配筋されている場合。ひびわれのないコンクリート。

組み合わせ応力評価

と が鋼材破壊に支配される場合 上記以外のすべての破壊モードに適用 略算的に扱う場合

Page 16: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-16

文献番号 7 区分 設計法 アンカー分類 接着系アンカー 題目 Design of Bonded Anchors

著者 欧州技術認証規格 出典 EOTA TR029 2007

研究目的 接着系アンカーの設計指針 内容 5.2.2.3 抜け出し/コンクリートコーン破壊の複合破壊に対する引張特性耐力

特性付着強度 は ETA認証書による。 水平投影面積

係数 はへりあきの影響係数

係数 は群アンカーにおける破壊表面の影響係数

ひびわれコンクリート ひびわれのないコンクリート

係数 は載荷点の重心からの偏心の影響係数

偏心距離

Page 17: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-17

表面剥離係数 (密な配筋がある場合)

5.2.2.4 コンクリートコーン破壊に対する引張特性耐力

ひびわれコンクリート ひびわれのないコンクリート 係数 はへりあきの影響係数

係数 は表面剥離係数

係数 は偏心影響係数

5.2.3.4 せん断特性耐力

ひびわれコンクリート ひびわれのないコンクリート

Page 18: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-18

側面投影面積

係数 はへりあき影響係数

係数 は母材厚影響係数

係数 は荷重方向係数

係数 は偏心係数

係数 は配筋影響係数

端部に配筋がない場合 端部にストレート筋がある場合 端部に密な肋筋がある場合

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6-19

文献番号 8 区分 ひび割れコンクリートに

おける性能 アンカー分類 アンカー全般

題目 Behavior of Fasteners Loaded in Tension in Cracked Reinforced Concrete

著者 Rolf Eligehausen, Tamas Balogh

出典 ACI Structural Journal No.92-S35/May-June 1995

研究目的 ひび割れコンクリートにおけるあと施工アンカー性能 内容 各種アンカーのひびわれコンクリートにおける性能に関する既往の文献結果を解

説した。 アンダーカットアンカーおよび頭付きスタッド ひびわれ幅 0.3mmにおける耐力低減率は 0.7程度にとどまっている。

頭付きスタッドとアンダーカットアンカーはほぼ同様のひびわれ性能を示してい

る。

Page 20: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-20

締付け方式金属系アンカー ひびわれ幅 0.3mmにおける耐力低減率は 0.6程度とみられる。

埋め込み深さが大きくなると耐力のばらつきも拡大する傾向がみられる。

Page 21: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-21

接着系アンカー ひびわれの影響が大きく、またばらつきが大きい。 穴の清掃不良の影響が極端に認められる。 ひびわれにより樹脂の付着が孔壁面で一部破壊されて、耐力低減が著しいものと判

断される。また清掃等の施工不良の影響がかなり大きいことがわかる。

Page 22: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-22

文献番号 9 区分 ひび割れコンクリートに

おける性能 アンカー分類 金属系アンカー

題目 コンクリートに埋め込まれたボルトの引き抜き耐力にひびわれが及ぼす影響 著者 稲田 扶、 滝口克己 出典 日本建築学会大会学術講演梗概集 21394、2004 研究目的 先付けアンカーボルトの引抜耐力におよぼすひび割れの影響 内容 M16先付けアンカーボルトを埋込み長 50mmで引張試験を実施

ひびわれのないコンクリーと、一方向ひびわれ、および直行ひびわれの 3条件につ

いて比較した。 ひびわれをおこすための載荷は図 2のように行った。 アルミプレートをひびわれ誘発材として設けた。 ひびわれ測定結果を表 2に示す。

Page 23: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-23

実験結果 AIJ式と ACI式による計算値との比較

Page 24: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-24

文献番号 10 区分 ひび割れコンクリートにお

ける性能 アンカー分類 接着系アンカー

題目 あと施工鉄筋接合の評価方法 著者 EOTA

出典 TR023

研究目的 あと施工鉄筋接合の技術基準 内容

Page 25: 1. · 6-3 2.Anchorage in Concrete Construction Rolf Eligehausen、Rainer Mallee, John F.Silva Ernst & Sohn 出版 2006 発行 3.あと施工アンカー

6-25

文献番号 11 区分 ひび割れコンクリートにお

ける性能 アンカー分類 接着系アンカー

題目 Design of fastenings for use in concrete.

Post-installed Fasteners. Chemical systems

著者 欧州標準規格 出典 DD CEN/TS 1992-4-5:2009

研究目的 接着系アンカーの設計指針 内容 接着系アンカーの付着耐力

(2)

はひびわれコンクリートの場合の と、ひびわれのないコンクリートの

を、欧州技術仕様書に記載のものを採用する。

τRk,max =d

8cubeckeffh , (8)

これまでの経験より、 ひびわれコンクリートでは k8=7.2 ひびわれのないコンクリートでは k8=10.1である。 コンクリートコーン破壊耐力

NRk,c0 = kcr ⋅ fck,cube . hef

1.5 [N] (5.2a)

これまでの経験より kcr=7.2または 8.5

特定のアンカーに対する kcrの値は欧州技術認証書による。 せん断耐力については、 ひびわれのないコンクリートに対する割増係数 ひびわれコンクリート

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文献番号 12 区分 アンカーボルト設計指針 アンカー分類 接着系アンカー 題目 アンカーボルトの設計 著者 日本建築学会 出典 各種合成構造設計指針 2010改定版 研究目的 接着系アンカーの付着強度に及ぼすひびわれの影響 内容

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文献番号 13 区分 ひび割れコンクリートにお

ける性能 アンカー分類 接着系アンカー

題目 Acceptance Criteria for Qualification of Post-installed Adhesive Anchors in Concrete

著者 ACI355委員会 出典 ACI 355.4-10

研究目的 接着系アンカーの認証基準 内容 10.4.5.3.2

基準付着応力度 は公称付着強度 に低減係数を乗じて求める。

10.4.5.6.1

10-12 式により求めた付着応力度が表 10.2 の許容最小付着応力度に達しない場合

には、その製品は認証されない。 表 10.2 認証製品の許容最小付着応力度τk,min (MPa)

屋外使用 屋内使用 註: この表からひびわれ低減係数は 0.3としている。

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6-4 まとめ

長期特性のうち、クリープ性能についてはアメリカでは特に厳しくなっていて、

ACI355.4-10の認証規準では、たとえ短期用途であっても、製品認証にはクリープ試験の実

施が義務付けられている。またその試験結果の評価方法は、ICC ES AC308 および

ETAG001 Part5 に同じように建物の供用期間に対応した予想クリープ変位を制限する方

法が示されている。

耐火性能については、加熱時間とコンクリートかぶり厚の関数として耐力が求められるが、

製品ごとに性能が異なるため、加熱試験方法が ASTM E1512および EOTA TR020に示

されている。設計方法としては、試験結果に基づき、適用耐火構造体の耐火区分に対応し

た許容応力度を設定するやり方が ICCES AC58および EOTA TR020に示されている。

ひびわれ幅 0.3mmまでのひびわれ性能については、低減係数がコンクリートコーン破壊に

対しては 0.7、付着破壊に対しては 0.5とする文献が多いが、ACI318-11 AppendixDでは

0.3となっている。

ヘリあき性能については、AIJ各種合成構造設計指針が低減係数として を与

えている一方、ACI318-11Appendix Dでは と異なる式を提案している。