50
1 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 2 P Q 3 R S T R S T P 80 50 60 Q 90 40 70 ˆ 80 50 60 90 40 70 ! 行列 成分 1 2 ··· 1 2 ··· ˆ 8 5 6 9 4 7 ! 1 2 第第第 1 2 3 列列列 m n m n 列の行列 m × n 行列 n × n n 次の正方行列 1.1 ˆ 8 5 6 9 4 7 ! 2 3 ˆ 2 -6 0 8 ! 2 × 2 2 1 さくらの個別指導 (さくら教育研究所)

1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

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第 1 章 行列

1.1 行列の演算

1.1.1 行列

A 行列

右の表は,2つの店P,Qにおける 3種類の商品R,S,Tの単価を示したものである.この表から,数値だけを同じ並びのまま抜き出して,両側をかっこで囲んで,右のように書くことにする.

  R S T

P店 80円 50円 60円Q店 90円 40円 70円

(80 50 60

90 40 70

)

このように,いくつかの数を長方形状に書き並べ,両側をかっこで囲んだものを行列といい,かっこの中のそれぞれの数を,この行列の成分という.

行列において,成分の横の並びを行といい,上から順に,第 1行,第 2行,· · · という.また,成分の縦の並びを列といい,左から順に,第 1列,第 2列,· · · という.

 (

8 5 6

9 4 7

)← 第 1行← 第 2行

↑ ↑ ↑第 第 第1 2 3列 列 列

行数がm,列数が nの行列を,m行n列の行列またはm × n行列という.とくに,n× n行列をn次の正方行列という.

例 1.1

(8 5 6

9 4 7

)は,2行 3列の行列である.

(2 −6

0 8

)は,2× 2行列,すなわち 2次の正方行列である.

1

さくらの個別指導 (さくら教育研究所)

Page 2: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

2 第 1章 行列

練習 1.1 次の行列は何行何列の行列か.また,正方行列はどれか.

(1)(

3 7 5)

(2)

2 4 −7

−3 5 0

1 6 9

(3)

(1

4

)

行列の中でも,(

3 7 5)のように行が 1行だけの行列を行ベクトル,

(1

4

)の

ように列が 1列だけの行列を列ベクトルということがある.

行列は大文字A,Bなどで表し,成分は小文字a,b,cなどで表すことが多い.また,成分については,第 i行と第 j列の交点にあたる成分を (i, j) 成分という.

 

A =

(a b

c d

)(1, 2)成分

練習 1.2 練習 1.1(2)の行列について,次の成分をいえ.

(1) (3, 2)成分 (2) (1, 3)成分 (3) (3, 3)成分

B 行列の相等

行列A,Bが,同じ行数,同じ列数をもつとき,AとBは同じ型であるという.また,AとBが同じ型の行列で,しかも対応する (i, j) 成分がすべて一致するとき,A

とBは等しいといい,A = B と書く.たとえば,2次の正方行列では,次のようになる.¶ ³

A =

(a b

c d

),B =

(p q

r s

)のとき

A = B ⇐⇒ a = p, b = q, c = r, d = sµ ´

練習 1.3 次の等式が成り立つとき,x,y,z,wの値を求めよ.

(1)

(4 −3

x 3y

)=

(2z w

−5 −6

)(2)

(2x + y

x− 3y

)=

(1

4

)

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Page 3: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.1. 行列の演算 3

1.1.2 行列の加法・減法と実数倍

A 行列の和と差

2つの行列A,Bは同じ型であるとする.このとき,A,Bの (i, j)成分の和を (i, j)

成分とする行列を,AとBの和といい,A + Bと書く.また,A,Bの (i, j)成分の差を (i, j)成分とする行列を,AとBの差といい,A − Bと書く.

[注意]型の異なる 2つの行列については,和,差を定義しない.

2次の正方行列では,和と差は次のようになる.行列の和と差¶ ³

(a b

c d

)+

(p q

r s

)=

(a + p b + q

c + r d + s

)

(a b

c d

)−

(p q

r s

)=

(a − p b − q

c − r d − s

)

µ ´

例 1.2 A =

(1 3

−2 5

),B =

(4 0

2 −1

)のとき

A + B =

(1 + 4 3 + 0

−2 + 2 5 + (−1)

)=

(5 3

0 4

)

A−B =

(1− 4 3− 0

−2− 2 5− (−1)

)=

(−3 3

−4 6

)

練習 1.4 次の計算をせよ.

(1)

(7 4

−3 1

)+

(−2 5

8 −1

)(2)

(2 9

−6 7

)−

(5 6

4 −2

)

(3)

(6 −5 2

0 4 −3

)+

(−4 3 −7

1 8 6

)(4)

(0

4

)−

(3

−1

)

さくらの個別指導 (さくら教育研究所)

Page 4: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

4 第 1章 行列

行列Aの各成分の符号を変えた数を成分とする行列を−Aで表す.2次の正方行列では,次のようになる.¶ ³

A =

(a b

c d

)について −A =

(−a −b

−c −d

)

µ ´

練習 1.5 次の行列Aについて,−AおよびA + (−A)を求めよ.

(1) A =

(2 −5

4 0

)(2) A =

(2

−1

)

成分がすべて 0である行列を零行列という.

たとえば,

(0 0

0 0

),

(0

0

),

(0 0

)などは,どれも零行列である.これらは,

同じ型ではないが,同じ文字Oで表すことにする.

B 加法についての性質

行列の和の定義より,行列の加法について,次のことが成り立つ.加法についての性質¶ ³

1 A + B =B + A 交換法則

2 (A + B) + C =A + (B + C) 結合法則

3 A + (−A)=O

4 A + O =A

µ ´2が成り立つので,この 3つの行列の和を A + B + C と書く.また,次のことが成り立つ.¶ ³

A + (−B) = A − B A − A = Oµ ´

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Page 5: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.1. 行列の演算 5

練習 1.6 次の計算をせよ.

(1)

(1 3

2 4

)+

(−3 4

0 −2

)+

(5 −2

−4 3

)

(2)

(2 0

1 −3

)+

(4 −2

5 −1

)−

(3 −1

−6 2

)

C 行列の実数倍

kを実数とするとき,行列Aの各成分の k倍を成分とする行列を kA と書く.2次の正方行列では,次のようになる.行列の実数倍¶ ³

kを実数とするとき k

(a b

c d

)=

(ka kb

kc kd

)

µ ´

練習 1.7 A =

(2 −4

−3 6

)のとき,次の行列を求めよ.

(1) 2A (2)1

2A

(3) (−3)A (4) (−1)A

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Page 6: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

6 第 1章 行列

行列の実数倍の定義から,次のことが成り立つ.¶ ³1A = A (−1)A = −A 0A = O kO = O

µ ´また,行列の実数倍について,次のことが成り立つ.実数倍についての性質¶ ³

k,lは実数とする.

1 k(lA) = (kl)A 2 (k + l)A = kA + lA

3 k(A + B) = kA + kB

µ ´前ページに示した行列の実数倍についての性質 1,2,3 が成り立つことを,2次

の正方行列で確かめてみよう.

練習 1.8 行列A =

(a b

c d

),B =

(p q

r s

)と k = 2,l = 3について,次の行列

を求めよ.

(1) k(lA), (kl)A

(2) (k + l)A, kA + lA

(3) k(A + B), kA + kB

行列A,Bなどを含む加法,減法,実数倍の計算については,これまで調べた性質から,ふつうの文字式の計算と同じように行うことができる.

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Page 7: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.1. 行列の演算 7

例題 1.1 行列A =

(2 4

3 6

),B =

(−2 0

1 4

)に対して,次の等式を満たす行列

Xを求めよ.

2(A + X) = A + 3B

【解】2(A + X) = A + 3B から 2X = −A + 3B

よって X =1

2(−A + 3B)

=1

2

{(−2 −4

−3 −6

)+

(−6 0

3 12

)}

=1

2

(−8 −4

0 6

)

=

(−4 −2

0 3

)

練習 1.9 行列A =

(7 −1

3 2

),B =

(5 4

0 1

)に対して,次の等式を満たす行列

Xを求めよ.

(1) 2A + 3X = B (2) 3(A + X) = X + 2B

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Page 8: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

8 第 1章 行列

1.1.3 行列の乗法

A 行列の積

一般に,行列

(a b

c d

)と列ベクトル

(x

y

)の積を次の式で定める.

¶ ³(

a b

c d

)(x

y

)=

(ax + by

cx + dy

)

µ ´1ページに示した 2つの店 P,Qで,商品

Rを 2個,商品 Sを 3個買うとき,P店,Q

店での合計代金は,それぞれ

80× 2 + 50× 3 = 310 (円)

90× 2 + 40× 3 = 300 (円)

 (

a b

c d

)(x

y

)=

(ax + by

cx + dy

)

(a b

c d

)(x

y

)=

(ax + by

cx + dy

)

R S

P店 80円 50円Q店 90円 40円

である.上に定義した行列と列ベクトルの積を用いれば,これらの計算を,まとめて次のように書くことができるのである.

(80 50

90 40

)(2

3

)=

(310

300

)

例 1.3

(3 1

4 2

)(5

−6

)=

(3·5 + 1·(−6)

4·5 + 2·(−6)

)

=

(9

8

)

練習 1.10 次の積を計算せよ.

(1)

(1 5

4 6

)(2

3

)(2)

(3 1

0 −2

)(−1

4

)

(3)

(2 7

5 4

)(1

0

)(4)

(−1 4

5 −3

)(0

1

)

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Page 9: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.1. 行列の演算 9

B 2次の正方行列

2次の正方行列の積を次の式で定める.¶ ³(

a b

c d

)(p q

r s

)=

(ap + br aq + bs

cp + dr cq + ds

)

µ ´(a b

c d

)(p q

r s

)=

(ap + br aq + bs

cp + dr cq + ds

)

(a b

c d

)(p q

r s

)=

(ap + br aq + bs

cp + dr cq + ds

)

例 1.4

(1 2

3 4

)(5 7

6 8

)=

(1·5 + 2·6 1·7 + 2·83·5 + 4·6 3·7 + 4·8

)=

(17 23

39 53

)

練習 1.11 次の積を計算せよ.

(1)

(1 0

2 3

)(6 5

7 4

)

(2)

(1 2

−3 4

)(3 −1

2 1

)

(3)

(3 0

0 3

)(2 1

4 −5

)

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10 第 1章 行列

C 一般の行列の積

Aが l ×m行列,Bがm× n行列のとき,積ABは,Aの第 i行とBの第 j列の成分を順に掛けて加えたものを (i, j)成分とする l× n行列であると定める.行列A

の列数と行列Bの行数が一致しない場合は,AとBの積を定めない.

例 1.5 (1)

1 2 3

4 5 6

7 8 9

x

y

z

=

x + 2y + 3z

4x + 5y + 6z

7x + 8y + 9z

(2)(

3 −4)( 5

2

)= 3·5 + (−4)·2 = 7

← 3× 3 行列と

3× 1 行列の

積は 3× 1 行列

← 1× 2 行列と

2× 1 行列の

積は 1× 1 行列

[注意](2)のように,1× 1行列はかっこを省略することが多い.

練習 1.12 次の積を計算せよ.

(1)

1 0

3 4

2 5

(−6 3

7 5

)

(2)(

2 3 5)

x

y

z

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1.1. 行列の演算 11

1.1.4 行列の乗法の性質

A 乗法の計算法則

行列の乗法について,次の計算法則が成り立つ.行列の乗法の計算法則¶ ³

1 (AB)C =A(BC) 結合法則

2 (A + B)C =AC + BC}分配法則

A(B + C)=AB + AC

3 (kA)B = A(kB) = k(AB) kは実数µ ´

1のことから 3つの行列A,B,Cの積をABCと書く.また,3が成り立つので,(kA)Bと k(AB)を区別せずに kABと書く.上の計算法則が成り立つことを,2次の正方行列で確かめてみよう.

練習 1.13 A =

(a b

c d

),B =

(p q

r s

),C =

(x y

z w

)と実数 k = 3 につい

て,次の行列を求めよ.

(1) (AB)C, A(BC)

(2) (A + B)C, AC + BC

(3) A(B + C), AB + AC

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Page 12: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

12 第 1章 行列

(4) (kA)B, A(kB), k(AB)

B 積ABと積BAの違い

上で示したように,行列の乗法についても,数の場合と同様に結合法則,分配法則が成り立つ.数の乗法では,交換法則も成り立つ.では,行列の乗法でも交換法則が成り立つのだろうか.このことについて調べてみよう.

例 1.6 A =

(1 3

2 4

),B =

(2 −1

0 3

)について

AB =

(2 8

4 10

), BA =

(0 2

6 12

)

したがって,この行列A,Bについては,AB 6= BA である.

上の例 1.6からもわかるように,次のことがいえる.¶ ³正方行列の乗法では,交換法則は一般には成り立たない.

µ ´[注意]行列A,Bについて,AB = BA となる場合もある.このとき,AとBは

交換可能であるという.

練習 1.14 A =

(0 2

3 1

),B =

(1 2

3 x

)について,AとBが交換可能であるよ

うに,xの値を定めよ.

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Page 13: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.1. 行列の演算 13

C 単位行列と零行列

2次の正方行列

(1 0

0 1

)を,2次の単位行列といい,Eで表す.

この単位行列Eと任意の 2次の正方行列A =

(a b

c d

)について

AE = EA = A

が成り立つ.

また,

1 0 0

0 1 0

0 0 1

を 3次の単位行列といい,これもEで表す.

練習 1.15 Eを 3次の単位行列,Bを任意の 3次の正方行列とするとき,次のことが成り立つことを確かめよ.

BE = EB = B

一般に,2次または 3次の正方行列において,次のことがいえる.¶ ³Aを任意の正方行列とし,Aと同じ次数の単位行列をE,零行列をOとすると

AE = EA = A AO = OA = Oµ ´上の性質から,行列のEとOは,数の世界の 1と 0に相当すると考えられる.

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14 第 1章 行列

数の乗法では,次の性質が成り立つ.

a 6= 0, b 6= 0 ならば ab 6= 0

ところが行列では,A 6= O,B 6= Oであっても,AB = O となることがある.具体的に示そう.

例 1.7 A =

(1 2

2 4

),B =

(2 −4

−1 2

)について AB =

(0 0

0 0

)= O

練習 1.16 A =

(2 4

1 2

),B =

(4 a

a b

)のとき,AB = O であるように,a,bの

値を求めよ.

D 行列の累乗

正方行列Aの積AAをA2と書き,AAAをA3と書く.一般に,正方行列Aの n個の積をAnと書く.

例 1.8 A =

(0 −1

1 0

)のとき

A2 =

(0 −1

1 0

)(0 −1

1 0

)=

(−1 0

0 −1

)

A3 = A2A =

(−1 0

0 −1

)(0 −1

1 0

)=

(0 1

−1 0

)

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1.1. 行列の演算 15

練習 1.17 例 1.8の行列Aについて,次の行列を求めよ.

(1) A4 (2) A5 (3) A6

練習 1.18 次の行列Aについて,A2,A3,A4を,それぞれ求めよ.

(1) A =

(0 −2

2 0

)

(2) A =

(1 0

0 2

)

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Page 16: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

16 第 1章 行列

(3) A =

(a 0

0 b

)

例題 1.2 行列A =

(a b

0 1

)について,A2 =

(4 −3

0 1

)となるように,a,bの値

を定めよ.

【解】 A2 =

(a b

0 1

)(a b

0 1

)=

(a2 ab + b

0 1

)

よって

(a2 ab + b

0 1

)=

(4 −3

0 1

)

成分を比較して

{a2 = 4 · · · 1©ab + b = −3 · · · 2©

1©から a = ±2

a = 2 のとき 2©から b = −1

a = −2 のとき 2©から b = 3

(答) a = 2, b = −1 または a = −2, b = 3

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Page 17: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.1. 行列の演算 17

練習 1.19 行列A =

(a 3

2 b

)について,A2 =

(7 0

0 7

)となるように,a,bの値

を定めよ.

練習 1.20 行列A =

(a 0

0 b

)について,A3 =

(1 0

0 8

)となるように,a,bの値

を定めよ.ただし,a,bは実数とする.

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Page 18: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

18 第 1章 行列

E ハミルトン・ケーリーの定理

2次の正方行列について成り立つ興味深い等式を示そう.

応用例題 1.1 任意の 2次の正方行列A =

(a b

c d

)について,等式

A2 − (a + d)A + (ad− bc)E = O

が成り立つ.このことを証明せよ.¶ ³

考え方 左辺を直接計算してもよいが,ここでは変形した次の等式を証明してみる.

A2 + (ad− bc)E = (a + d)A

µ ´

[証明] A2 =

(a b

c d

)(a b

c d

)=

(a2 + bc ab + bd

ac + cd bc + d2

)

(ad− bc)E =

(ad− bc 0

0 ad− bc

)

であるから

A2 + (ad− bc)E =

(a(a + d) b(a + d)

c(a + d) d(a + d)

)

= (a + d)

(a b

c d

)

= (a + d)A

よって A2 − (a + d)A + (ad− bc)E = O [証終]

[注意]上で示した事柄を,ハミルトン・ケーリーの定理という.

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Page 19: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.1. 行列の演算 19

練習 1.21 行列A =

(a b

c d

)について,次のことが成り立つことを,応用例題 1.1

の等式を用いて証明せよ.

(1) a + d = 0, ad− bc = 0 ならば A2 = O

(2) a + d = 0, ad− bc = −1 ならば A2 = E

1.1.5 補充問題

1 A =

(2 −3

1 4

),B =

(1 2

−2 3

),C =

(3 5

1 −2

)のとき,次の計算を

せよ.

(1) 2A− 3B + C (2) 2(A + B)− (B − 3C)

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Page 20: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

20 第 1章 行列

2 次の積を計算せよ.

(1)

(4

3

)(−2 1

)(2)

(2 3

)( 1 −4

−2 3

)

3 2次の正方行列において,次の等式が成り立つかどうかを調べよ.

(1) (A + B)2 = A2 + 2AB + B2

(2) (A + E)2 = A2 + 2A + E ただし,Eは単位行列

【答】

1 (1)

(4 −7

9 −3

)(2)

(14 11

3 5

)

2 (1)

(−8 4

−6 3

)(2)

(−4 1

)

3 (1) 成り立たない (2) 成り立つ

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Page 21: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.2. 行列の応用 21

1.2 行列の応用

1.2.1 逆行列

A 逆行列

行列において,数 aの逆数 a−1に相当する行列を考えてみよう.Aを 2次の正方行列,Eを 2次の単位行列とするとき,

AX = XA = E を満たす正方行列X が存在するならば,この X を Aの逆行列といい,A`1

で表す.この定義から,(A`1)`1 = A である.

 ¶ ³AA`1 = A`1A = E

µ ´

行列A =

(a b

c d

)の逆行列を求めてみよう.

ハミルトン・ケーリーの定理によると,次の等式が成り立つ.

(a + d)A− A2 = (ad− bc)E

よって,B = (a + d)E − A =

(d −b

−c a

)とおくと

AB = BA = (ad− bc)E · · · 1©

[1]ad− bc 6= 0 のとき1

ad− bcBがAの逆行列である.

[2]ad− bc = 0 のとき 1©より AB = O となる.

Aが逆行列をもつとすると,AB = O の両辺に左からA−1を掛けて

A−1AB = O すなわち B = O ← A−1AB=EB=B

よって,a = b = c = d = 0 となり,A = O である.

すると,任意の正方行列Xに対して AX 6= E となり,Aが逆行列をもつことに矛盾する.したがって,このときAは逆行列をもたない.

2次の正方行列の逆行列¶ ³

A =

(a b

c d

)について,∆ = ad− bc とおく.

∆ 6= 0 のとき,Aは逆行列をもち A`1 =1

(d −b

−c a

)

∆ = 0 のとき,Aは逆行列をもたない.µ ´

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Page 22: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

22 第 1章 行列

例 1.9 (1) A =

(2 1

4 3

)について ∆ = 2·3− 1·4 = 2 6= 0

よって,Aは逆行列をもち A−1 =1

2

(3 −1

−4 2

)

(2) B =

(2 1

6 3

)について ∆ = 2·3− 1·6 = 0

よって,Bは逆行列をもたない.

練習 1.22 次の行列は逆行列をもつか.もつ場合は,その逆行列を求めよ.

(1) A =

(2 2

3 4

)

(2) B =

(5 3

2 1

)

(3) C =

(−1 2

−2 4

)

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Page 23: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.2. 行列の応用 23

例題 1.3 行列

(a 3

1 a− 2

)が逆行列をもたないように,aの値を定めよ.

【解】行列が逆行列をもたないのは,∆ = 0 のときである.

∆ = a(a− 2)− 3·1 = a2 − 2a− 3 = (a + 1)(a− 3)

よって (a + 1)(a− 3) = 0

これを解いて a = −1, 3

練習 1.23 次の行列が逆行列をもたないように,aの値を定めよ.

(1)

(a 4

3 2

)(2)

(a 4

2 a + 2

)

B 等式AX = Bを満たすX

2次の正方行列A,Bに対して,等式 AX = B を満たす正方行列Xを求めよう.Aが逆行列をもつとき,AX = B の両辺に左からA−1を掛けると

A−1AX = A−1B

が成り立つ.左辺は

A−1AX = EX = X

となるから,次のことがいえる.¶ ³Aが逆行列をもつとき,等式 AX = B を満たす行列Xは

X = A`1Bµ ´[注意] Aが逆行列をもつとき,等式 Y A = B を満たす行列 Y は,等式の両辺に右

からA−1を掛けて,Y = BA−1 となる.

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Page 24: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

24 第 1章 行列

例題 1.4 2つの行列A =

(3 1

7 2

),B =

(4 0

6 5

)について,等式 AX = B を満

たす行列Xを求めよ.

【解】Aについて ∆ = 3·2− 1·7 = −1 6= 0

よって,Aは逆行列をもち

A−1 =1

−1

(2 −1

−7 3

)=

(−2 1

7 −3

)

したがって,等式 AX = B を満たす行列Xは

X = A−1B =

(−2 1

7 −3

)(4 0

6 5

)=

(−2 5

10 −15

)

練習 1.24 2つの行列 A =

(2 1

3 2

),B =

(2 4

5 7

)について,等式 AX = B を

満たす行列Xを求めよ.また,等式 Y A = B を満たす行列 Y を求めよ.

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Page 25: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.2. 行列の応用 25

1.2.2 連立1次方程式と行列

A 連立 1次方程式と行列

連立 1次方程式

{ax + by = p

cx + dy = q· · · 1©

は,行列を用いると,次の式で表される.(

a b

c d

)(x

y

)=

(p

q

)· · · 2©

2©で,A =

(a b

c d

),X =

(x

y

),P =

(p

q

)とおくと, 2©は

AX = P · · · 3©

と表される.この行列Aを,連立 1次方程式 1©の係数行列という.

練習 1.25 次の連立 1次方程式を行列を用いて表せ.

(1)

{2x + 3y = 4

5x + 4y = 3(2)

{x + 2y = −1

4x− 7y = 6

Aが逆行列をもつとき, 3©の両辺に左からA−1を掛けると,前ページと同様にして,X = A−1P が得られる.したがって,次のことが成り立つ.連立 1次方程式の解¶ ³

A =

(a b

c d

),X =

(x

y

),P =

(p

q

)とする.Aが逆行列をもつとき,

方程式 AX = P の解Xは X = A−1Pµ ´一般に,x,yの連立 1次方程式 1©がただ 1組の解をもつのは, 3©において,係数行列Aが逆行列をもつときに限られる.

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26 第 1章 行列

例題 1.5 行列を用いて,次の連立 1次方程式を解け.{5x + 2y = 8

3x + y = 6

【解】行列を用いて表すと

(5 2

3 1

)(x

y

)=

(8

6

)

係数行列

(5 2

3 1

)について ∆ = 5·1− 2·3 = −1 6= 0

ゆえに,係数行列は逆行列をもち

よって

(5 2

3 1

)−1

=1

−1

(1 −2

−3 5

)=

(−1 2

3 −5

)

(x

y

)=

(5 2

3 1

)−1(8

6

)=

(−1 2

3 −5

)(8

6

)=

(4

−6

)

したがって x = 4,y = −6

練習 1.26 行列を用いて,次の連立 1次方程式を解け.

(1)

{2x + y = 3

5x + 3y = 7

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Page 27: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.2. 行列の応用 27

(2)

{3x + 7y = 10

x + 4y = 5

B 係数行列が逆行列をもたない場合

25ページにおいて, 3©の係数行列Aが逆行列をもたないときは,連立 1次方程式1©は解を無数にもつか解をもたないかのいずれかである.

例 1.10 解を無数にもつ連立 1次方程式{

2x + 3y = 1

4x + 6y = 2←

{2x + 3y = 12x + 3y = 1

係数行列

(2 3

4 6

)について,∆ = 2·6− 3·4 = 0 である.

よって,係数行列は逆行列をもたない.解は 2x + 3y = 1 を満たす x,yの組すべてであり,無数にある.

例 1.11 解をもたない連立 1次方程式{

2x− y = 1

4x− 2y = 3

係数行列

(2 −1

4 −2

)について,∆ = 2·(−2)− (−1)·4 = 0 である.

よって,係数行列は逆行列をもたない.2x− y = 1 のとき 4x− 2y = 2 6= 3 となるので,解はない.

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Page 28: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

28 第 1章 行列

応用例題 1.2 連立 1次方程式

{3x + y = kx

2x + 4y = kyが x = 0,y = 0 以外にも解をもつ

ように,定数 kの値を定めよ.¶ ³

考え方 解を無数にもつことになる.x,yの項をすべて左辺に移項して,係数行列が逆行列をもたない条件を求める.

µ ´【解】与えられた連立 1次方程式は,次のように表される.

{(3− k)x + y = 0

2x + (4− k)y = 0すなわち

(3− k 1

2 4− k

)(x

y

)=

(0

0

)

この方程式が,x = 0,y = 0 以外の解をもつのは,係数行列が逆行列をもたないときである.

よって,∆ = 0 より (3− k)(4− k)− 1·2 = 0

整理すると k2 − 7k + 10 = 0 ← (k−2)(k−5)=0

これを解いて k = 2, 5

[注意]上の連立 1次方程式の解は,k = 2 のとき x + y = 0 を満たす x,yの組すべて,k = 5 のとき 2x− y = 0 を満たす x,yの組すべてである.

練習 1.27 連立 1次方程式

{2x + 2y = kx

5x− y = kyが,x = 0,y = 0 以外にも解をもつよ

うに,定数 kの値を定めよ.

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1.2. 行列の応用 29

1.2.3 点の移動と行列

A 点の対称移動と行列

座標平面上の点は,2つの実数の組 (x, y)で表される.ここでは,座標平面上の点の移動を行列で表現する方法を調べよう.

点 (x, y)を,x軸に関して対称移動し,移動後の座標を (x′, y′)で表すとき,{

x′ = x

y′ = −y

すなわち{

x′ = 1·x + 0·yy′ = 0·x + (−1)·y

という関係が成り立つ.

 

O

y

x

(x, y)

(x,−y)

この式を行列を用いて表すと,次のようになる.(

x′

y′

)=

(1 0

0 −1

)(x

y

)

練習 1.28 点 (x, y)を次のように対称移動する.移動後の点の座標を (x′, y′)で表すとき,点の座標の関係を上のように行列を用いて表せ.

(1) y軸に関して対称移動する.移動後の点の座標は (−x, y)

(2) 原点に関して対称移動する.移動後の点の座標は (−x,−y)

(3) 直線 y = x に関して対称移動する.移動後の点の座標は (y, x)

 

O

y

x

y = x

(y, x)

(x, y)(−x, y)

(−x,−y)

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30 第 1章 行列

B 1次変換

座標平面上の各点に対応して,同じ平面上の点がただ 1つ定まるとき,この対応を座標平面上の変換といい,点Pに対して点Qが定まるとき,点Qをこの変換による点 Pの像という.変換は記号 f,gなどを用いて表すことにする.

座標平面上の変換 f によって,点 P(x, y)が点Q(x′, y′)に移されるとする.これらの点の座標の関係が,a,b,c,dを定数として

{x′ = ax + by

y′ = cx + dy· · · 1©

という式で表されるとき,この変換 f を 1次変換という.

 

O

y

x

P(x, y)

f

Q(x′, y′)

1©を行列で表すと,(

x′

y′

)=

(a b

c d

)(x

y

)である.そこで,この 1次変換 fを,

行列

(a b

c d

)の表す 1次変換という.

x軸,y軸,原点,直線 y = x に関する対称移動は,どれも 1次変換である.これらを表す行列は,それぞれ次のようになる.

x軸 y軸 原 点 直線 y = x(

1 0

0 −1

) (−1 0

0 1

) (−1 0

0 −1

) (0 1

1 0

)

例 1.12 行列

(3 2

4 −5

)の表す 1次変換による点 (5, 1)の像は,

(3 2

4 −5

)(5

1

)=

(17

15

)より,点 (17, 15)である.

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Page 31: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.2. 行列の応用 31

練習 1.29 次の行列の表す 1次変換による与えられた点の像を求めよ.

(1)

(2 4

3 1

),点 (1, 2) (2)

(−1 2

3 −4

),点 (4, 1)

(3)

(3 −2

6 −4

),点 (−3, 5) (4)

(1 0

0 1

),点 (3,−4)

練習 1.30 行列

(a b

c d

)の表す 1次変換について,次のことを確かめよ.

(1) 点 (1, 0)の像は,点 (a, c)である.

(2) 点 (0, 1)の像は,点 (b, d)である.

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32 第 1章 行列

C 1次変換の性質

単位行列

(1 0

0 1

)の表す 1次変換を,とくに恒等変換という.

恒等変換では,任意の点 Pの像は,点 P自身である.

また,任意の行列

(a b

c d

)について

(a b

c d

)(0

0

)=

(0

0

)

が成り立つ.よって,1次変換による原点(0, 0)の像は常に原点である.

例 1.13 点 (1, 0)の像が点 (2, 4),点 (0, 1)の像が点 (1, 5)であるような 1次

変換を表す行列Aを求める.

A =

(a b

c d

)とすると

(a b

c d

)(1

0

)=

(2

4

),

(a b

c d

)(0

1

)=

(1

5

)

よって a = 2, c = 4, b = 1, d = 5

したがって A =

(2 1

4 5

)

一般に,1次変換について次のことが成り立つ.¶ ³点 (1, 0)を点 (a, c)に,点 (0, 1)を点 (b, d)に移す 1次変換を表す行列は,(

a b

c d

)である.

µ ´

練習 1.31 点 (1, 0)を点 (−2, 3)に,点 (0, 1)を点 (1,−4)に移す 1次変換を表す行列を求めよ.

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1.2. 行列の応用 33

一般に,点 (p, r)を点 (a, c)に,点 (q, s)を点 (b, d)に移す 1次変換を表す行列

を Aとすると,A

(p

r

)=

(a

c

),A

(q

s

)=

(b

d

)が成り立つ.このことは,

A

(p q

r s

)=

(a b

c d

)が成り立つことと同じである.

例題 1.6 点 (2, 1)を点 (4,−2)に,点 (5, 3)を点 (7, 1)に移す 1次変換を表す行列Aを求めよ.

【解】条件から,次の等式が成り立つ.

A

(2 5

1 3

)=

(4 7

−2 1

)· · · 1©

行列

(2 5

1 3

)について ∆ = 2·3− 5·1 = 1 6= 0

よって,逆行列は

(2 5

1 3

)−1

=

(3 −5

−1 2

)

したがって, 1©より

A =

(4 7

−2 1

)(2 5

1 3

)−1

=

(4 7

−2 1

)(3 −5

−1 2

)=

(5 −6

−7 12

)

練習 1.32 点 (1, 0)を点 (2, 5)に,点 (3, 4)を点 (−6, 7)に移す 1次変換を表す行列Aを求めよ.

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34 第 1章 行列

応用例題 1.3 直線 y = 2x に関する対称移動 f は 1次変換である.このことを示し,f を表す行列を求めよ.¶ ³

考え方 2点 P,Qが直線 `に関して対称なとき,`は線分 PQの垂直二等分線であることを用いる.

µ ´【解】直線 y = 2x を `とし,`に関して点P(x, y)

と対称な点をQ(x′, y′)とする.直線 PQは `に垂直であり,また線分 PQの中点が `上にあるから

2·y′ − y

x′ − x= −1

y + y′

2= 2·x + x′

2

 

O

y

x

P(x, y)

Q(x′, y′)

` y = 2x

よって

{x′ + 2y′ = x + 2y

−2x′ + y′ = 2x− y

すなわち

(1 2

−2 1

)(x′

y′

)=

(1 2

2 −1

)(x

y

)

(1 2

−2 1

)−1

=1

5

(1 −2

2 1

)であるから

(x′

y′

)=

(1 2

−2 1

)−1(1 2

2 −1

)(x

y

)

=1

5

(1 −2

2 1

)(1 2

2 −1

)(x

y

)

=1

5

(−3 4

4 3

)(x

y

)

したがって,f は 1次変換で,求める行列は1

5

(−3 4

4 3

)

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1.2. 行列の応用 35

練習 1.33 直線 y = 3x に関する対称移動 f は 1次変換である.このことを示し,f

を表す行列を求めよ.

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36 第 1章 行列

1.2.4 合成変換と逆変換

合成変換

1次変換 f,gを表す行列を,それぞれA,Bとする.f によって点 P(x, y)が点Q(x′, y′)に移され,さらに gによって点Q(x′, y′)が点R(x′′, y′′)に移されるとすると

(x′

y′

)= A

(x

y

),

(x′′

y′′

)= B

(x′

y′

)

であるから,次のことが成り立つ.(

x′′

y′′

)= B

(A

(x

y

))= BA

(x

y

)

 

O

y

x

P(x, y)

Q(x′, y′)

R(x′′, y′′)

fg

g◦f

よって,行列BAは,点P(x, y)に点R(x′′, y′′)を対応させる 1次変換を表す.この変換を,f と gの合成変換といい,g‹f で表す.¶ ³

1次変換 f,gを表す行列を,それぞれA,Bとすると,合成変換 g◦f も 1次変換で,g◦f を表す行列はBAである.

µ ´

例 1.14 1次変換 f,gを表す行列を,それぞれA =

(2 1

3 0

),B =

(0 2

1 0

)

とするとき,合成変換 g◦f を表す行列は

BA =

(0 2

1 0

)(2 1

3 0

)=

(6 0

2 1

)

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Page 37: 1 章 行列 - blankskredu.mods.jp/a01/gyoretu.pdf第1 章 行列 1.1 行列の演算 1.1.1 行列 A 行列 右の表は,2つの店P,Qにおける3種 類の商品R,S,Tの単価を示したもので

1.2. 行列の応用 37

練習 1.34 1次変換f,gを表す行列を,それぞれ A =

(1 2

0 3

),B =

(−1 0

2 −3

)

とするとき,次の合成変換を表す行列を求めよ.

(1) g◦f

(2) f ◦g

(3) f ◦f

B 逆変換

1次変換 fによって,点P(x, y)が点Q(x′, y′)

に移されるとする.fを表す行列Aが逆行列A−1

をもてば,

A

(x

y

)=

(x′

y′

)から

(x

y

)= A−1

(x′

y′

)

が得られる.よって,行列A−1は,点Q(x′, y′)に点P(x, y)

を対応させる 1次変換を表す.この変換を f の逆変換といい,f`1で表す.

 

O

y

x

P(x, y)

Q(x′, y′)

f

f−1

¶ ³1次変換 f を表す行列をAとするとき,Aが逆行列をもてば,f の逆変換 f−1が存在する.f−1を表す行列はA−1である.

µ ´

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38 第 1章 行列

例題 1.7 1次変換 fを表す行列を A =

(3 1

2 1

)とするとき,fによって点Q(2, 4)

に移されるもとの点 Pの座標を求めよ.

【解】行列Aについて ∆ = 3·1− 1·2 = 1 6= 0

よって,Aは逆行列をもち A−1 =

(1 −1

−2 3

)

これが f の逆変換 f−1を表す行列である.

A−1

(2

4

)=

(1 −1

−2 3

)(2

4

)=

(−2

8

)

したがって,もとの点 Pの座標は (−2, 8)

練習 1.35 練習 1.34における 1次変換 f,gについて,次の問いに答えよ.

(1) f−1,g−1を表す行列を,それぞれ求めよ.

(2) f によって点Q(4,−1)に移されるもとの点 Pの座標を求めよ.

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1.2. 行列の応用 39

1.2.5 回転移動と1次変換

A 回転移動

座標平面上で,点P(x, y)を原点Oを中心として一定の角 θ 1だけ回転移動する変換を考えよう.点 Pの像を点Q(x′, y′)とする.OP = r とし,動径OPと x軸の正の向きをなす角を αとすると

x = r cos α, y = r sin α · · · 1©

が成り立つ.点Qの座標は

x′ = r cos(α + θ), y′ = r sin(α + θ)

 

O

y

x

θ r

αP(x, y)

Q(x′, y′)

である.三角関数の加法定理により

x′ = r(cos α cos θ − sin α sin θ)

y′ = r(sin α cos θ + cos α sin θ)

1©を代入すると,次の式が成り立つ.{

x′ = x cos θ − y sin θ

y′ = x sin θ + y cos θ

すなわち

(x′

y′

)=

(cos θ − sin θ

sin θ cos θ

)(x

y

)

したがって,次のことが成り立つ.原点Oの周りに角 θだけ回転する移動¶ ³

原点Oを中心とし,回転角が θの回転移動は 1次変換であり,

それを表す行列は

(cos θ − sin θ

sin θ cos θ

)である.

µ ´

1角 θは数学 IIで扱われている一般角とする.

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40 第 1章 行列

例題 1.8 原点の周りに 30◦だけ回転する 1次変換を表す行列Aを求めよ.また,この回転によって点 P(2, 4)が移る点Qの座標を求めよ.

【解】 A =

(cos 30◦ − sin 30◦

sin 30◦ cos 30◦

)=

√3

2−1

21

2

√3

2

=

1

2

( √3 −1

1√

3

)

また1

2

( √3 −1

1√

3

)(2

4

)=

( √3− 2

1 + 2√

3

)

よって,点Qの座標は (√

3− 2, 1 + 2√

3)

練習 1.36 原点の周りに 45◦だけ回転する 1次変換を表す行列Aを求めよ.また,この回転によって点 P(0, 2)が移る点Qの座標を求めよ.

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1.2. 行列の応用 41

B 回転移動と逆変換

原点の周りに角 θだけ回転する 1次変換 f に対して,逆変換 f−1は,原点の周りに角−θだけ回転する 1次変換である.よって,f−1を表す行列は

(cos(−θ) − sin(−θ)

sin(−θ) cos(−θ)

)

=

(cos θ sin θ

− sin θ cos θ

)

である.

 

O

y

x

−θ P

Q

f−1

[注意]

(cos θ − sin θ

sin θ cos θ

)−1

=

(cos θ sin θ

− sin θ cos θ

)である.

練習 1.37 原点の周りに 60◦だけ回転する 1次変換を fとするとき,逆変換 f−1を表す行列を求めよ.

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42 第 1章 行列

研究¶ ³

変換の合成の応用

原点を通り,x軸の正の向きとなす角がθである直線 `に関する対称移動を表す変換 hを考えてみよう.右の図のように,直線 `に関して点Pと対称な点をQとする.また,点P,Qを原点の周りに−θだけ回転した点を,それぞれP′,Q′とする.このとき,P′とQ′は x軸に関して対称である.よって,原点の周りに−θだけ回転する変換を f,x軸に関して対称移動する変換を gとすると,原点の周りに θだけ回転する変換はf−1であるから,変換hは

f−1◦(g◦f)

で表される.

 

O

y

x

P

Q

`

θ

O

y

x

Q′

P′

ゆえに,この変換 hは 1次変換であり,それを表す行列は(

cos θ − sin θ

sin θ cos θ

)(1 0

0 −1

)(cos θ sin θ

− sin θ cos θ

)

=

(cos θ sin θ

sin θ − cos θ

)(cos θ sin θ

− sin θ cos θ

)

=

(cos2 θ − sin2 θ 2 sin θ cos θ

2 sin θ cos θ sin2 θ − cos2 θ

)

となる.すなわち,

(cos 2θ sin 2θ

sin 2θ − cos 2θ

)である.

µ ´

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1.2. 行列の応用 43

1.2.6 補充問題

4 2次の正方行列A,Bがともに逆行列をもつとき,積ABも逆行列をもち,次の等式が成り立つことを証明せよ.

(AB)−1 = B−1A−1

5 1次変換 f,gを表す行列を,それぞれA =

(1 1

2 −1

),B =

(2 0

−3 1

)と

するとき,合成変換 f ◦gによる点 (2,−3)の像を求めよ.

6 点P(3, 1)と x軸に関して対称な点をQとし,Qを原点の周りに 150◦だけ回転した位置にある点をRとする.Rの座標を求めよ.

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44 第 1章 行列

【答】

4 [(AB)(B−1A−1) = E,(B−1A−1)(AB) = E を示す]

5 点 (−5, 17)

6

(1− 3

√3

2,

3 +√

3

2

)

1.3 章末問題

1.3.1 章末問題A

1 次の計算をせよ.

(1)

(3 4

5 8

)(3 −2

0 1

)+

(3 4

5 8

)(1 2

0 3

)

(2)

(1 2

−2 1

)(1 1

1 1

)(3 1

1 3

)

(3)

(cos θ sin θ

− sin θ cos θ

)(cos θ − sin θ

sin θ cos θ

)

(4)

(1 3

0 1

)4

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1.3. 章末問題 45

2 行列 A =

(3 −2

1 5

)が等式 A2 + xA + yE = O を満たすとき,x,yの値を

求めよ.ただし,Eは 2次の単位行列,Oは 2次の零行列とする.

3 2次の正方行列 A,B はともに逆行列をもち,A−1 =

(−1 3

2 −5

),B−1 =

(1 −3

−2 7

)であるという.行列A−1B−1およびABを求めよ.

4 A =

(0 2

−2 4

),E =

(1 0

0 1

)のとき,行列A− kEが逆行列をもたないよ

うに,実数 kの値を定めよ.

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46 第 1章 行列

5 点 (1, 2)を点 (7, 4)に,点 (2,−1)を点 (4, 3)に移す 1次変換を表す行列Aを求めよ.

6 A =

(3 a

b −a

)で表される 1次変換を f とする.合成変換 f ◦f を表す行列が

A自身であるとき,a,bの値を求めよ.

7 原点の周りに 30◦だけ回転して点 (2, 4)に移されるもとの点の座標を求めよ.

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1.3. 章末問題 47

1.3.2 章末問題B

8 2次の正方行列A,Bについて,A + B =

(3 −2

1 1

),A−B =

(1 2

1 3

)で

あるとき,A2 −B2を求めよ.

9 行列 A =

(x 3

−2 y

)が等式 A2 − 7A + 12E = O を満たすとき,x,yの値を

求めよ.ただし,Eは 2次の単位行列で,Oは 2次の零行列とする.

10 行列 A =

(x −1

3 y − 4

)の逆行列がA自身であるように,x,yの値を定めよ.

また,A3を求めよ.

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48 第 1章 行列

11 2次の正方行列において,次の命題は真であるか.真であるときは証明し,真でないときは反例をあげよ.ただし,Eは単位行列とする.

(1) Aが逆行列をもつとき,XA = Y A ならば,X = Y である.

(2) A2 − 2A + E = O ならば A = E である.

12 行列 A =1

2

(1 −√3√3 1

)の表す 1次変換を f とする.

(1) f はどのような 1次変換を表すか.

(2) 逆変換 f−1はどのような 1次変換を表すか.

(3) 合成変換 f ◦(f ◦f)はどのような 1次変換を表すか.また,A3を求めよ.

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1.3. 章末問題 49

ヒント¶ ³

8 関係式から,AとBを求める. 10 A−1 = A から A2 = E

12 f は原点の周りの回転移動を表す.39ページの行列を参照する.µ ´【答】

1 (1)

(12 16

20 32

)(2)

(12 12

−4 −4

)(3)

(1 0

0 1

)(4)

(1 12

0 1

)

2 x = −8,y = 17[

A2 + xA + yE =

(7 + 3x + y −16− 2x

8 + x 23 + 5x + y

)より

7 + 3x + y = 0,−16− 2x = 0,8 + x = 0,23 + 5x + y = 0

]

3 A−1B−1 =

(−7 24

12 −41

),AB =

(41 18

16 7

)

[後半は,まず行列A,Bを求める]

4 k = 2[A− kE =

(−k 2

−2 4− k

)について ∆ = −k(4− k)− 2(−2) = 0

]

5

(3 2

2 1

)

[求める行列をAとすると A

(1 2

2 −1

)=

(7 4

4 3

) ]

6 a = 2,b = −3

[A2 = A より 9 + ab = 3,3a− a2 = a,3b− ab = b,ab + a2 = −a ]

7 点 (√

3 + 2,−1 + 2√

3)[(cos(−30◦) − sin(−30◦)sin(−30◦) cos(−30◦)

)(2

4

)]

8

(3 0

4 3

)

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50 第 1章 行列

[2A =

(4 0

2 4

)から A =

(2 0

1 2

),

2B =

(2 −4

0 −2

)から B =

(1 −2

0 −1

) ]

9 x = 1,y = 6 または x = 6,y = 1[

A =

(x 3

−2 y

)を等式に代入して

x2 − 7x + 6 = 0,y2 − 7y + 6 = 0,x + y − 7 = 0 から]

10 x = 2,y = 2 または x = −2,y = 6,

A3 =

(2 −1

3 −2

)または A3 =

(−2 −1

3 2

)

[A−1 = A より A2 = E, A2 =

(x2 − 3 −x− y + 4

3x + 3y − 12 −3 + (y − 4)2

)]

11 (1) 真 (2) 真でない A =

(2 1

−1 0

)は反例

[(2) ハミルトン・ケーリーの定理を利用する.A =

(a b

c d

)について,

A2 − (a + d)A + (ad− bc)E = O が成り立つから,a + d = 2,ad− bc = 1 で

あればよい.]

12 (1) 原点の周りに 60◦だけ回転する 1次変換

(2) 原点の周りに−60◦だけ回転する 1次変換

(3) 原点に関して対称移動する 1次変換,A3 =

(−1 0

0 −1

)

[(1) A =

(cos 60◦ − sin 60◦

sin 60◦ cos 60◦

)(3) 60◦ × 3 = 180◦ より

]

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