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【1】 皆さん、こんにちは。ただ今、 ご紹介いただきました西村日出 男です。この総合庁舎の地元の滝 ノ町に住んでいますので、この前 を通って通勤しています。 今日は「誰もが誰もの成長に関 わることの出来る地域社会」とい うテーマで体験的にお話しさせ ていただきます。 右のカットはこの乙訓教育局 の元職員の方が、「親育ネットお とくに」協議会の為に描かれたも ので、3 世代の家族が仲良く繋が って、竹のように「すくすく」と 成長していく姿が表現されてい ます。 左の写真はオナガドリですが、 今年の干支に因んで私の所属し ています「長岡京市環境の都づく り会議」のメンバーが竹や木など で作ったものです。名前はこれも 干支に因んで「ひのととり」とし ました。手塚治虫の「火の鳥」で はありません。お手元の「環境の 都ニュース」にもあります。 【2】 自己紹介させていただきます。 スライドは今年度の名刺です。 私の専門は学校教育の要とも 言うべき「道徳教育」です。大学 では学校の先生を目指す学生に、 道徳教育論を講義しています。教 授を退職してからも、非常勤で道 徳教育論を担当しています。来年 度は 6 つの大学で道徳教育論を担 当することになっています。 これは教科書の表紙です。 中学や高校の講師として英語 や歴史を担当していましたし、珍 しく「道徳」も中学で 16 年間担 当していました。従いまして、私 は学校教育の専門家ではありま すが、社会教育の専門家ではあり ません。 しかし、結婚して長岡京市に住 むようになってから 45 年、地域 の様々な活動に参加・参画してき ました。今日はそのような活動の 体験発表になることをお許し下 さい。 名刺の裏には、主なボランティ ア活動と、2 つのモットーを書い ています。その 1 つは、「ふれあ いは わずらわしいも 笑いあ り」です。地域活動の難しさと、 楽しさを表現しています。 もう1つは、「この地をば のちあふれる まほろばに」です。 「この地」の「地」は「地球」の 「地」と「地域」の「地」を掛け ています。「まほろば」とは「古 事記」の中で日本武尊が述べたよ うに、「素晴らしいところ」とい う意味です。 【3】 社会教育は学校教育以外の教育 を言うようですので、非常に幅広 い教育活動を指しています。これ は私がこれまで関わって来まし た主な社会教育の活動です。 ④、⑤、⑥は現在も責任者の一人 として活動をしています。 【4】 我が家では 3 人の子育てをしな がら、1981 年に「西村子ども新 聞」を創刊して、16 年間、毎月 発行していました。これは我が家 の子育ての記録であり、三世代の 交流の記録でもあります。子ども 達が大学生になって遠隔地に下 宿しても記事を集めて、発行して いました。 1)子ども達には記事を書いても らい、原稿料を払います。これが 子どものお小遣いになります。 2)祖父母にも原稿を書いてもら い、みんなで読み合いました。 3)家族のコミュニケーションを 促進したように思います。子ども 達は嫌がっていた時期もありま した。 4)私の兄弟や親せきにも送り、 コミュニケーションの輪を広げ ました。

【1】 自己紹介させていただきます。...のDVD を送ってきます。 このときの新聞づくりのノウ ハウが、後に大変に役に立ってい ます。私は今もいくつもの会のニ

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  • 【1】

    皆さん、こんにちは。ただ今、

    ご紹介いただきました西村日出

    男です。この総合庁舎の地元の滝

    ノ町に住んでいますので、この前

    を通って通勤しています。

    今日は「誰もが誰もの成長に関

    わることの出来る地域社会」とい

    うテーマで体験的にお話しさせ

    ていただきます。

    右のカットはこの乙訓教育局

    の元職員の方が、「親育ネットお

    とくに」協議会の為に描かれたも

    ので、3世代の家族が仲良く繋が

    って、竹のように「すくすく」と

    成長していく姿が表現されてい

    ます。

    左の写真はオナガドリですが、

    今年の干支に因んで私の所属し

    ています「長岡京市環境の都づく

    り会議」のメンバーが竹や木など

    で作ったものです。名前はこれも

    干支に因んで「ひのととり」とし

    ました。手塚治虫の「火の鳥」で

    はありません。お手元の「環境の

    都ニュース」にもあります。

    【2】

    自己紹介させていただきます。

    スライドは今年度の名刺です。

    私の専門は学校教育の要とも

    言うべき「道徳教育」です。大学

    では学校の先生を目指す学生に、

    道徳教育論を講義しています。教

    授を退職してからも、非常勤で道

    徳教育論を担当しています。来年

    度は6つの大学で道徳教育論を担

    当することになっています。

    これは教科書の表紙です。

    中学や高校の講師として英語

    や歴史を担当していましたし、珍

    しく「道徳」も中学で 16 年間担

    当していました。従いまして、私

    は学校教育の専門家ではありま

    すが、社会教育の専門家ではあり

    ません。

    しかし、結婚して長岡京市に住

    むようになってから 45 年、地域

    の様々な活動に参加・参画してき

    ました。今日はそのような活動の

    体験発表になることをお許し下

    さい。

    名刺の裏には、主なボランティ

    ア活動と、2 つのモットーを書い

    ています。その 1 つは、「ふれあ

    いは わずらわしいも 笑いあ

    り」です。地域活動の難しさと、

    楽しさを表現しています。

    もう1つは、「この地をば い

    のちあふれる まほろばに」です。

    「この地」の「地」は「地球」の

    「地」と「地域」の「地」を掛け

    ています。「まほろば」とは「古

    事記」の中で日本武尊が述べたよ

    うに、「素晴らしいところ」とい

    う意味です。

    【3】

    社会教育は学校教育以外の教育

    を言うようですので、非常に幅広

    い教育活動を指しています。これ

    は私がこれまで関わって来まし

    た主な社会教育の活動です。

    ④、⑤、⑥は現在も責任者の一人

    として活動をしています。

    【4】

    我が家では3人の子育てをしな

    がら、1981 年に「西村子ども新

    聞」を創刊して、16 年間、毎月

    発行していました。これは我が家

    の子育ての記録であり、三世代の

    交流の記録でもあります。子ども

    達が大学生になって遠隔地に下

    宿しても記事を集めて、発行して

    いました。

    1)子ども達には記事を書いても

    らい、原稿料を払います。これが

    子どものお小遣いになります。

    2)祖父母にも原稿を書いてもら

    い、みんなで読み合いました。

    3)家族のコミュニケーションを

    促進したように思います。子ども

    達は嫌がっていた時期もありま

    した。

    4)私の兄弟や親せきにも送り、

    コミュニケーションの輪を広げ

    ました。

  • 5)子どもや家族の貴重な記録と

    して残っています。今日的には家

    族のポートフォリオと言えそう

    です。

    家族で共同して何かを作り、残

    していくことは、家族の絆が強ま

    り、「家風」が形成されると思い

    ます。「家風」は少し古い言葉か

    もしれませんが、その家族ひとり

    ひとりの人格形成に大きな影響

    を与えると思います。1997 年 4

    月に休刊してから、かれこれ 20

    年になります。

    原稿料が安いと抗議文を掲載

    した長男が、今では毎月、大阪か

    らビデオレターとして2人の孫

    の DVDを送ってきます。

    このときの新聞づくりのノウ

    ハウが、後に大変に役に立ってい

    ます。私は今もいくつもの会のニ

    ュースや機関誌の発行などに関

    わっています。私は些細な活動で

    も記録に残し、出来ればまとめて

    公開するのが良いと思っていま

    す。公開は紙媒体でも良いし、最

    近では SNS や HP などもよいか

    と思います。

    【5】

    また同じころ、地元の小学校や

    中学校では PTA の会長をさせて

    いただきました。長岡第十小学校

    の PTA では「おやおや会」を毎

    月開催し、2年間続けました。そ

    のネーミングは「親がおや?」っ

    と思うことを話し合いましょう

    という取り組みです。まとめ集も

    2冊発行しました。

    「おやおや会」の構想は、PTA

    の「教育懇談会」に参加した時か

    ら考えていました。「教育懇談会

    は毎年同じ事の繰り返しだ。」と

    の批判もありましたし、「学級懇

    談会とはちがった異学年の保護

    者の方々の意見や経験が聞きた

    い」との声もありましたので、会

    長になった時に企画しました。

    30 年前になります。当時は育友

    会でした。

    【6】

    「おやおや会」ではテキストも

    使いました。「PET」です。「PET」

    と 言 い ま す の は 、 Parent

    Effectiveness Training の略で、

    「親業」と訳されています。アメ

    リカのトマス・ゴードンが始めた

    取り組みで、プロの親を育成しよ

    うというプログラムです。

    私は大学院では教育哲学を勉

    強していましたが、3人の子ども

    を抱えて、親として具体的に何を

    したらいいのか。自分の子育てに

    は悩んでいました。そんな時に出

    会ったのが、この『親業』です。

    この本には具体的な実践例が数

    多く書かれています。そして、非

    常に単純な方法、原理が書かれて

    います。私はこの本から非常に多

    くのことを学び、実践してきまし

    た 。 Active Listening や

    I-messageは今でも心がけていま

    す。この本は一言で言いますと、

    「親と子の上手なかかわり方」を

    示した本です。

    【7】

    「西村子ども新聞」の編集経験

    を活かして、中学校の記念誌や所

    属していました「テニスクラブ」

    記念誌の編集もしました。このど

    ちらも、私が記事を入力し、編集

    をしました。無償です。もちろん、

    印刷、製本は外注しました。

    このように PTA などの活動を

    通して、みなさんのお役に立てる

    ことはさせて頂こうと言う心が

    育って来たのだと思います。心理

    学的にはこうした行動を「向社会

    的行動」pro・social behaviour

    と言うようですが、今日的にはボ

    ランティア活動と言えるかもし

    れません。

    【8】

  • 2 人の娘は西乙訓高等学校に通

    いましたので、私は 2年間本部役

    員を引き受けました。その役員が

    今だに年 2~3 回集まっています。

    たまには旅行もしています。「コ

    スモス会」の名前で 20 年以上続

    いています。ちょっとしたことで

    すが「集まりに名前を付けること」

    は長続きの秘訣だと思います。

    この写真はちょうど 1 年前に、

    このすぐ近くの「ふうせんかずら」

    での会食です。この時はインフル

    エンザのため少人数になってし

    ましました。今日のテーマであり

    ますこのような「人と人とのつな

    がり」は、個人にとっても宝物で

    すし、地域にとっても宝物です。

    つながりは「力」になります。防

    災や災害時にその力が発揮され

    ます。防犯の力にもなります。社

    会教育はこの「つながり・ネット

    ワーク」を作り、維持、運用する

    役割もあると考えています。

    【9】

    先ほど自己紹介しましたよう

    に私は滝ノ町の自治会員です。滝

    ノ町自治会は、スローガンとして

    「元気ふれあい滝ノ町」を掲げ、

    「ふれあい」を大切にし、多くの

    行事を実施しています。

    私は 2000 年から 2010 年まで

    副会長をさせていただきました。

    その間、多くの新たな事業を提案

    し、組織し、活動を始めました。

    赤丸の事業は今も続いています。

    もちろんこれ以外にも、「滝ノ町

    祭」「盆踊り」「レクリエーション」

    「敬老の集い」「パトロール」「溝

    掃除」「防災訓練」などの事業も

    以前から毎年実施されています。

    自治会活動が大変活発な地域で

    す。

    ここでは、チェックの 2つだけ

    を紹介させていただきます。

    【10】

    一つは「滝ノ町ふれあい文化サ

    ロン」です。これは自治会の月例

    会議に提案した企画書です。目的

    にも上げましたように、滝ノ町地

    域の文化興隆と住民交流を目指

    して実施してきました。語呂合わ

    せが好きなもんで。私は交渉役と

    して、「大型自己紹介と、ご自分

    の得意なお話しをしてください」

    と言って、町内をまわりました。

    3000 人の自治会員の中には実に

    多彩な方々がおられます。その人

    材を発掘するのは大変に楽しい

    ものです。断られた方もたくさん

    おられますが、その都度、ふれあ

    いの機会を持つことが出来たこ

    とは確かです。

    上の写真は、町内にある和菓子

    屋さん(長錦)による和菓子つく

    りの実習です。この時は菊と山茶

    花の和菓子を作りました。

    中の写真は、自治会館内の参加

    者の様子です。

    下の写真は、細川流盆石の体験

    です。「盆石」と言いますのは黒

    いお盆の上に、白い砂で絵を描く

    のです。これは室町、戦国時代の

    武将であり、文人であった細川幽

    斎に起源を持つ伝統芸術です。そ

    の全国の宗匠(土居)が滝ノ町に

    お住まいなので、お願いしに行き

    ました。この方は全国を回って指

    導されています。これは私ですが、

    非常に貴重な体験をしたと思っ

    ています。

    【11】

    2004 年には全国雑誌『社会教

    育』でも大きく取り上げられまし

    た。執筆者は桜美林大学の瀬沼先

    生ですが、この原稿の資料はすべ

    て私が提供しました。

    その中で瀬沼先生はこのよう

    に表現されています。「世帯数約

    1,000 戸の住宅地でも、やる気に

    なると、毎月住民から発表者を依

    頼して、4年間にわたって講座が

    出来るという実例である。講師料、

    受講料、会場使用料すべて無料の、

    三タダ主義の運営である。」と驚

    かれています。長岡京市の生涯学

    習課の方もよく視察に来られて

    いました。今も続いているので、

    4年ではありません、16年以上に

    なります。私は役を退いています

    が、現在も役員の方々の努力で続

    けられています。今年の 1 月で

  • 185回になりました。

    【12】

    第 100回記念の「滝ノ町ふれあ

    い文化サロン」の様子が、京都新

    聞に掲載されました。こうありま

    す「地域住民が講師になり、自身

    の専門や関心のある分野につい

    て話す「滝ノ町ふれあい文化サロ

    ン」が 23日 100回を迎え、長岡

    京市滝ノ町の自治会館で過去の

    講演者らがサロンの歩みを振り

    返った。」とあります。

    私はこのような組織運営には 3

    つの点が重要だと思っています。

    1 つは、歴史と言いますか、伝統

    と言いますか、先人、先輩を大切

    にすることです。讃えることです。

    もう 1つは、現在の組織を大切に

    すること、具体的には会長などの

    中心者の思いを大切にし、実現す

    るように働きかけることです。

    そしてもう1つは、将来、未来に

    対する方針、展望、夢を持つこと

    だと思います。簡単に言えば、過

    去、現在、未来を大切にすること

    です。

    【13】

    2008年 9月の第 100回の時には、

    市長も教育長も参加され、祝辞を

    頂き、記念写真を撮りました。

    この冊子は、100回、毎回のお知

    らせと、文化サロンを紹介された

    新聞記事などを冊子にした記念

    誌の表紙です。私がデザインして、

    編集しました。ご覧ください。

    【14】

    もう一つは「滝ノ町ふれあい音

    楽祭」です。コーラスを結成した

    のをきっかけに、中古の電子ピア

    ノを自治会で購入しました。ピア

    ノがあるならと、私は「音楽祭」

    を企画しました。町内にあるピア

    ノ教室の子どもたちの発表の場

    となりますし、もちろんコーラス

    の発表の場にもなります。他にも

    町内には、尺八の演奏家やギター

    の演奏家もおられます。それらの

    方に演奏を披露して頂ければ、立

    派な音楽祭になります。

    スライドの第5回の時には

    中国残留孤児の女性はきれいな

    中国語でイエライシャンを披露

    されました。音楽隊経験者による

    クラリネット、ギターとウクレレ

    の間のギタレレを演奏、第5回記

    念なので虚無僧の装いで琴古流

    尺八の演奏、混声合唱とは別に私

    が男性合唱団を結成しました。そ

    して特別ゲストとして、長十小学

    校の先生には、モンゴルの馬頭琴

    の演奏とホーミーを披露してい

    ただきました。

    毎年 11月 23日の勤労感謝の日

    に開催されてきました。昨年の 11

    月には第 13 回が開催され、これ

    には2人の孫もピアノを演奏しま

    したので、私も鑑賞しました。子

    どもが出演すれば、親、祖父母が

    来場します。毎年、自治会館は超

    満員です。

    【15】

    2004 年に滝ノ町ふれあいコー

    ラスを結成したのをきっかけに、

    自治会の歌を作りました。募集を

    かけ、十数編の詩が集まりました。

    役員を中心に選定委員会を立ち

    上げ、応募された詩のフレーズを

    抽出、検討し、歌詞を決定しまし

    た。作曲は音楽が専門の元校長先

    生で、長年PTAのコーラスを指

    導されてきた塩見さんにお願い

    しました。塩見さんは自治会コー

    ラスの指導者であり、後には自治

    会長にもなっていただきました。

    この歌には滝ノ町の年間行事、歴

    史、風景、モットーなどが歌われ

    ています。作曲者の塩見さんが亡

    くなられた時には、葬儀の出棺に

    際し、みんなでこの「滝ノ町賛歌」

    を合唱しました。

  • 【16】

    2011年の京都新聞のコラム「凡

    語」には、滝ノ町の文化サロンや

    音楽祭が紹介されました。こうあ

    ります。「自治会館に住民の合唱

    や楽器演奏が響いた。23 日に長

    岡京市の滝ノ町という自治会が

    音楽祭を開いた。どこにでもあり

    そうな光景だが、寄合所帯の自治

    会を考えるうえで、この町の足跡

    は示唆に富む」と。そしてまた

    「互いを知る地道で小さな積み

    重ねこそ、自治の底力につながる

    ことを物語っている」と結ばれて

    います。今も、役員の方々は地域

    の発展の為に並々ならぬ尽力を

    されています。

    【17】

    「ふれあい」は「つながり」の

    切っ掛けです。何かの取り組みや

    行事を実施しなければ、「ふれあ

    い」も「つながり」も出来ません。

    確かに、行事を企画、運営するの

    は役員が大変です。「ふれあい」

    や「つながり」は、わずらわしい

    面もありますが、「教育」は「ふ

    れあい」や「つながり」が基本で

    す。特に社会教育はそうだと思い

    ます。私のモットーの一つは「ふ

    れあいは わずらわしも わら

    いあり」で、少し語呂合わせの感

    もありますが、「わずらわしい」

    の中に笑が含まれているでしょ

    う。私はこうした「わずらわしさ」

    を楽しもうと思っています。「苦

    は楽の種」という諺もあります。

    社会教育に携わる皆様方が何か

    されようとすると、きっとわずら

    わしさに直面されると思ますが、

    どうぞその「わずらわしさ」を楽

    しんで下さい。きっと楽しい地域

    社会が出来ると思います。

    社会教育や生涯学習において

    は「場づくり」がきわめて大切だ

    と思います。場づくりには組織や

    システムは必要ですが、何より運

    用する人の熱意が不可欠だと思

    います。また運営には資金があっ

    た方がいいのですが、資金にあま

    り頼ると、金の切れ目は何とかで、

    取り組みは衰退してしまいます。

    しかしこれらは社会教育の宿命

    かもしれません。

    【18】

    私は 15年前からは、「長岡京市

    環境の都づくり会議」のメンバー

    として活動しています。これは 10

    周年の時に発行した記念誌の表

    表紙と裏表紙です。私が編集しま

    した。現在は 15 周年記念誌を編

    集中です。今回は専門の方に援助

    して頂いています。

    私は高校時代から「自然」に関

    心が有り、大学でも「教育と自然」

    を勉強しました。世間では公害問

    題から環境問題へと視点が変化

    していきました。今や地球の温暖

    化など地球規模の自然環境が危

    機に晒されています。使い捨てや

    無駄の多い生活をしている我々

    自身が、環境破壊の加害者である

    ということを自覚しなければな

    りません。その自覚を促すのはや

    はり教育です。

    【19】

    そんな中で、地域において学び

    合う場を持とうとして、環境教育

    プロジェクトを立ち上げ、隔月に

    「環境教育ミーティング」を開催

    してきました。長岡京市立中央公

    民館の共催を得て、現在も続けて

    います。

    日本が大きく関わった「ESD」

    すなわち「持続可能な発展のため

    の教育」が、なかなか広がりを見

    せていません。学校教育もさるこ

    とながら、地域において地域の

    方々と協力して運動を進めて行

    くことが重要であるとされてい

    ます。そこで 1月の第 89 回「環

    境教育ミーティング」は「ESD

    と道徳教育」と題して私が話題提

    供をしました。更に、今、世界の

    動向は SDGsです。つまり国連の

  • 「持続可能な開発目標」を推進す

    ることです。

    次回の第 90 回は、長岡京市立

    中央公民館で「生きものの移り変

    わりから小畑川を見つめよう!」

    と題して 3月 16 日に開催いたし

    ます。長Pや府Pの会長もされた

    柊(ひいらぎ)さんが講師です。お

    時間が許せば、是非お越し下さい。

    右は隔月に発行してきました

    「環境の都ニュース」最新の 90

    号です。たまたま私が巻頭言を書

    かせていただきました。その下に

    は、私が作成しました「新春クロ

    スワードパズル」も掲載していま

    す。お手元の「環境の都ニュース」

    をご覧いただき、挑戦してみて下

    さい。

    【20】

    3 年前から「長岡京環境検定」

    を実施しています。これは長岡京

    市の第2期環境基本計画に即して、

    私が提案した市民参画協働の取

    り組みです。昨年の 9月には第 3

    回を実施しました。広報誌「長岡

    京」から出題していますので、広

    報誌の活用にもなり、地域をもっ

    とよく知ってもらう狙いもあり

    ます。誰でも参加できる取り組み

    を計画することが私の考え方で

    す。第3回の環境検定には、9歳

    の児童、83 歳の高齢者、臨月の

    妊婦さんも受検して頂きました。

    また滝ノ町の老人会は何回か勉

    強会をして集団で受検して頂き

    ました。長岡京市の内外を問わず、

    誰でも受検できますし、無料です。

    是非、今年は挑戦してみて下さい。

    私の夢は「長岡京環境検定」を

    「長岡京検定」にして、市民大学

    を設立することです。これは校舎

    の無い大学です。いわば社会教育、

    生涯学習の大学です。実現は簡単

    ではありませんが、10 年以上前

    から夢は持ち続けています。他の

    自治体にはあるところもありま

    す。みなさん、一緒にやりません

    か。

    【21】

    ところで「きょういく」を漢字

    で表現しますと一般的にはこの

    「教育」ですが、他に②から⑦の

    「きょういく」などとも書けます。

    或いはⒶからⒺの「きょういく」

    などとも書けます。多少、私の好

    きな駄洒落のようにも思われま

    すが、あながちそうでもありませ

    ん。

    【22】

    例えば「共育」は「親も子も教師

    も、そして地域社会の人々も共に

    育つ」意味合いが感じられます。

    これはまさに社会教育そのもの

    と言えるかもしれません。

    この「共育」が使われている例

    をいくつか挙げてみましょう。

    まず、長篠の合戦で有名な愛知

    県の新城(しんしろ)市では「共

    育(ともいく)」を教育理念とし

    て掲げています。

    福岡市や三重県の尾鷲市でも

    「PTAで共育を」と訴えておられ

    ます。

    一昨年の日本 PTA 全国協議会

    の福岡市大会では、スローガンと

    して「今こそ深めよう!学校・家

    庭・地域の絆。共に感じ、共に学

    び、共に育つ、共感、共学、共育」

    が掲げられていました。

    共に育つには、連携、つながり、

    ネットワークが不可決です。

    【23】

    「社会」は漠然と存在するもの

    ではありません。人のつながり・

    関係のことです。そのつながり・

    関係は動きがあり、変化がありま

    す。人間関係のネットワークが社

    会だと思います。英語の「ネット

    ワーク」とは、よく言ったものだ

    と思います。「ネット」は網を意

    味していますし、イメージも湧く

    と思います。私はゴミのカラス避

    けネットや野球場のバックネッ

    トをイメージします。

  • 「ネットワーク」の「ワーク」は

    漠然と「作られたもの」を意味し

    ているようですが、私は「働かせ

    る」とか「作動させる」と言った

    「動き」を感じます。私のネット

    ワークのイメージは「電話網」と

    か「道路交通網」とか「神経網」

    などです。今日のインターネット

    もそうです。

    ネットワークは活性化させな

    いと意味が有りません。社会のネ

    ットワークは人で繋がっていま

    すので、ネットワークを活性化す

    るためには個人を活性化しなけ

    ればなりません。具体的には、声

    を掛けること、手を差し伸べるこ

    と、活動の場を提供することです。

    つまり今日のテーマの「つながり」

    「支え合う」ことだと思います。

    地域社会は地縁による人のつな

    がりであります。ネットワークを

    活性化することこそ今日ご参加

    の皆様方の役割ではないでしょ

    うか。

    【24】

    「親育ネットおとくに」協議会

    は、名前に「ネット」を掲げてい

    ます。地域の誰もが育つ環境づく

    り、ネットワークを通して、とり

    わけ「親が健全に育つ」ことを願

    ってつけられた名称です。

    私は 10 年前からは「親育ネッ

    トおとくに」協議会のメンバーに

    加えていただき、現在、座長をさ

    せて頂いています。今年度は 10

    周年の節目です。約 10 年前

    (2006/10/22)の長岡京市での幼児

    虐待死事件がきっかけとなり、親

    が少しでも健全な子育てが出来

    るように、地域で出来ることは何

    か無いかと考え抜かれた結果、組

    織されたのが「親育ネットおとく

    に」協議会です。全国に誇れる取

    り組みです。地域の様々な団体が

    繋がりながら、その力を発揮して、

    「地域総がかりで子育てを」が当

    初からのテーマです。そして年 1

    回「乙訓親まなびフォーラム」を

    開催してきました。これは、乙訓

    在住の就学前から小中学校在学

    の子どもを持つ親と、学校関係者、

    地域の皆様にご参加をいただき、

    子育て・親育ちを考えることを目

    的に、毎年開催しているものです。

    昨年 11 月には「乙訓親まなびフ

    ォーラム」も、10 回目を数えま

    した。

    ここで「親育ネットおとくに」

    協議会の今年度の活動を纏めて

    頂きました映像を見ていただき

    ます。

    【25】

    これは政府の資料による「放課

    後子ども総合プラン」の全体像で

    す。もともとこのプランは、少子

    化対策、子どもの居場所作りとし

    て地域の人々による子育て支援

    を目指していましたが、この新た

    な総合プランでは、さらに「学校

    施設を徹底活用した実施促進」を

    謳っています。

    昨年度より、京都府教育委員会

    でも「放課後子ども総合プラン」

    に関する部会を立ち上げ、私もそ

    れに加わっています。

    長岡京市ではこの活動を「すく

    すく教室」として実施、促進し、

    多くの小学校がこの「すくすく教

    室」を始めて今年で 10 年になり

    ます。

    【26】

    私は 10年前の 2007年から、長

    岡第十小学校の「放課後子ども教

    室・すくすくキッズテン」のコー

    ディネーターをしています。この

    スライドは、私のアイディアによ

    るシンボルマークをあしらった

    旗を背景に、活動目標を表示して

    います。

    「地域の力を発揮して、子ども

    達とふれあい、文化と伝統を伝え

    よう」です。各教室は学習指導員

    と安全サポーターがチームを組

    んで運営します。指導員もサポー

    ターもほとんどがこの小学校区

    のおじさん、おばさん、お爺さん、

    お婆さんです。

    私は出来るだけ多くの地域の

    方が、子どもたちに関わってもら

    いたいと思って、コーディネート

    しています。これまで約100名

    の地域の方々に関わっていただ

  • いています。

    【27】

    2007 年(平成 19 年)、すくす

    くキッズテンが産声をあげた時

    の様子です。当初は 7つの教室で

    した。英語と、クラシックバレエ

    は指導の申し出がありましたが、

    後は私の人脈で依頼しました。

    実は「ペタンク」と「百人一首」

    は、その前年に滝ノ町が京都府教

    育委員会から委託された「京のわ

    くわく探検」事業として実施して

    いましたものを、「すくすくキッ

    ズテン」に移行した形です。

    第1回は「バレエ」と「ペタン

    ク」の2つの教室。 第2回は「囲

    碁」と「英語」と「百人一首」の

    3つの教室。

    第3回はこれらに「科学あそび」

    を加え、英語を発達別に2つの教

    室に分けました。

    私はコーディネータを依頼さ

    れた時から、2つの方針を決めて

    いました。

    一つは、子供たちには学校では

    できないようないろんな経験、体

    験をしてもらおう、ということで

    す。多用な経験や体験は子どもた

    ちの興味を喚起し、学力の基盤を

    形成します。暗記だけの学力では

    なく、経験や体験に基づく興味は

    生活を豊かにする学力となり、教

    養となります。

    【28】

    先ほどの「きょういく」の漢字

    で言いますと、「興育」となりま

    す。私はこの「興育」には大変に

    関心が有ります。この「興育」は

    「興味を育てる営み」あるいは

    「興味で人を育てる」と言う意味

    です。英語で興味のことを

    interest と言います。これは自分

    と或るモノとの「間にあって惹き

    つけるもの」という意味です。ア

    メリカに J.Dewey(1859-1952)と

    いう教育学者がいましたが、彼の

    教育理論の重要なキーワードの

    一つに「興味」があります。子ど

    もたちの興味を引き出し、興味を

    育てるには子ども達に経験させ

    ることが一番です。人は何かに興

    味を持てば、それに関わろうとし

    ます。それが経験です。興味や経

    験は知識を実感或るモノ、身につ

    いた知識、教養にしてくれます。

    こうした知識や教養は、老後の人

    生を豊かにしてくれます。だから

    子ども達には多様な興味を喚起

    し、多様な経験をしてもらいたい

    と思っています。私はこれを「す

    くすくキッズテン」の運営方針の

    一つにしています。

    【29】

    もう一つの方針は指導員やサ

    ポーターを極力、小学校区あるい

    は地域の方々に依頼しよう言う

    ことです。つまり、地域の大人た

    ちと子供達とのつながる場を多

    くしたいというのがもう一つの

    運営方針です。

    これを私は「郷育」と呼んでい

    ます。「郷育」の「郷」は郷土の

    郷です。「郷育」はいろいろと考

    えられますが、一つは「郷土の人

    が育てる」という意味です。

    実は子どもたちの住んでいる

    地域・郷土には実に多彩な方々が

    おられます。その方々の特技や経

    験を、あるいは今まで学んでこら

    れた事を、子ども達に教えてもら

    いたいと考えて、お願いしてきま

    した。

    「すくすくキッズテン」の開催

    場所は学校ですが、学校の教員は

    原則関わりません。すべて地域の

    われわれで運営しています。子ど

    も達は指導員やサポーターを「先

    生」と呼びます。指導員からは「道

    であったらすくすくの先生やと

    言ってあいさつされて、嬉しいで

    すわ」とよく聞きます。

    また、多くの地域の方々が子ど

    も達と関わることは「地域総がか

    りの子育て支援」になります。

  • 【30】

    先にもお話ししましたように、

    これまで 50 以上の教室を開設し

    てきました、現在も約 30 の教室

    を実施、運営しています。これは

    その主なものです。

    今後、考えています教室は、マ

    ットや跳び箱などの「体操」、校

    区にあるお寺の「お坊さんの話

    し」、藁で「しめ縄つくり」、中国

    残留孤児二世の「中国語教室」、

    退職教員による「放課後学習教

    室」、「和菓子作り」などです。宛

    てはありますが、これらは私一人

    では決めていません。6人の役員

    が何度も話し合って、決めていま

    す。これだけ多くの教室を運営す

    るには、役員の連携が不可欠です。

    役員は常にインターネットで連

    絡や意見交換をしますし、時には

    私の家で夜遅くまで話合うこと

    もあります。

    次に、いくつかを紹介させてい

    ただきます。全部の教室を紹介出

    来ないのが残念です。

    【31】

    クッキング教室です。この方は

    現役の会社員で、料理とは関係あ

    りません。栄養士などの資格を持

    っておられるわけでもありませ

    ん。数年前に PTA の役員をされ

    た時の他の役員の女性方と組ん

    で、料理を担当して頂いています。

    包丁を使うので、4年生以上に限

    定しています。材料費として 200

    円を徴収しています。

    4年女子の感想です。「今日料

    理でギョウザをつくりました。エ

    ビとレンコンを入れたのでいつ

    もとちがうおいしいギョウザに

    なりました。とってもとってもお

    いしくてほっぺがおちそうにな

    りました。中身を作る時も包むと

    きもたのしくできました。よくや

    けていてぱりぱりしていておい

    しかったです。」

    【32】

    これは「手話教室」です。「あ

    いさつ」や「うた」それに「劇」

    などを通して、みんな楽しそうに

    活動しています。自己紹介の時は

    競いあって前に出てきます。指導

    者はこの方ですが、こちらの方は

    生まれた時から聴覚に障害を持

    っておられます。「広報・長岡京」

    で大きく紹介されたこともあり

    ます。サポーターとしていつも来

    ていただいています。

    6年女子の感想です。「自分の

    名前や歌などが簡単に覚えられ

    てよかった。」次に4年女子の感

    想です。「すくすくの手話にきて

    から手話ができるようになった。

    いろんな手話で楽しんでいます。

    友達の名前で、手話ができるよう

    になりました。」

    【33】

    これは「竹炭・竹あそび教室」

    です。これは私も所属しています

    「長岡京市環境の都づくり会議」

    のメンバーが管理している竹林

    で、竹にまつわる環境のお話や竹

    あそび、竹細工、竹炭焼き体験な

    どをし、たき火でお餅などを焼き、

    食べたりしています。唯一学校外

    で実施していますので、低学年は

    保護者同伴にしています。短時間

    ですが、子ども達は大満足してい

    ます。環境の都づくり会議のメン

    バーの多くは退職後、それまでで

    きなかった地域貢献活動として

    環境保全活動を始められました。

    このように、地域活動が教育活動

    と結びつくことは素晴らしい事

    だと思います。

    【34】

  • バレエ教室です。姿勢から始まり、

    基本的な動作を繰り返し、練習し

    ています。私は毎回写真を撮って

    いますと、スキップの出来なかっ

    た児童が笑顔で出来るようにな

    ったと自慢してきます。記念文化

    会館で催されるバレエの発表会

    に子供達は招待されて、本物のバ

    レエも見ています。

    3年女子の感想です。「私はバ

    レエがあるときに、ぜったいにき

    ます。むずかいしわざでもがんば

    りたいです。でもちょっとめんど

    くさいな、とおもうときもあるけ

    ど、がんばっていまーす。バレエ

    が、すくすくで一ばんすきです。」

    【35】

    これは友禅染です。子ども達は

    自分のハンカチ、世界で一つのマ

    イハンカチを染め上げました。友

    禅のたくさんの工程があること

    を子ども達は身をもって学んだ

    と思います。他の校区のコーディ

    ネータに友禅の伝統工芸士がお

    られますので、お願いしましたら、

    快く引き受けていただきました。

    【36】

    これは日本の伝統文化の聞香、

    つまり御香です。そのアピール文

    によりますと「聞香(もんこう)

    と言われると、何か難しいことを

    するようですが、そんなことはあ

    りません。「香りの当てっこ」を

    しますので、ゲーム感覚で楽しみ

    ましょう。当たっても当たらなく

    ても、遊びながら聞香の意味を感

    じていただけたら幸いです。保護

    者の方のみの参加も歓迎いたし

    ます。」とあります。

    実はこの聞香の先生はこの乙訓

    教育局に紹介して頂いた方です。

    参加した(5年女子)の感想で

    す「いろんな香りがきけて(かげ

    て)さいしょは「これぜんぶいっ

    しょちゃう?」などと話していま

    した。けどなれてくるにつれ、ち

    がうことが分かってきました。そ

    して、びっくりしたことは「にお

    いをかぐ」ではなくて「においを

    きく」といったことです。」

    【37】

    これは「親子で動くおもちゃ作

    り」です。文字通り親子で、段ボ

    ールの動くオフロード・ダンプカ

    ーを作る教室です。カッターナイ

    フを使うので、必ず親も参加して

    もらいました。この指導者は向日

    市の方ですが、新聞に大きく掲載

    されていたのを見て、友人に紹介

    して頂き、自宅までお願いに上が

    り、綿密な打ち合わせと準備をし

    て実施しました。この方は会社勤

    めを辞めてからは、バードカービ

    ング・鳥の彫刻を始められました。

    その合間をぬって、孫の為にと段

    ボールで、ダンプカーやクレーン

    車など何十種類、何百台の乗り物

    を作られ、幼稚園や保育所に贈呈

    されてきました。この隣の向日町

    郵便局にも数台が今も展示され

    ています。

    子ども達は体を動かすのも好

    きでが、自分の作ったものが動く

    のはもっとワクワクするようで

    す。3年保護者の感想です。「と

    ても楽しく工作できました。子供

    には難しかったですが、その分出

    来栄えには満足できたようです。

    大人も久しぶりの工作で楽しく

    熱中しました。」終わってから、

    親子が手をつないで協働作品を

    持って帰る姿に、私は胸が熱くな

    りました。

    【38】

    出来るだけ多くの経験をしても

    らうために、学期ごとに 10 教室

    以上に参加したら「キッズテン・

  • バラエティ賞」を授与しています。

    また休まず参加したら「キッズテ

    ン賞」を授与しています。HP に

    は活動の様子を写した写真が多

    数アップされています。以上の様

    な活動の写真を撮って、ホームペ

    ージを更新するのも、私の役割で

    す。是非、「すくすくキッズテン」

    で検索してアクセスしてみて下

    さい。スマホでも見れます。たく

    さんの写真や感想文などが掲載

    されています。

    【39】

    また、私は毎朝、登校の小学生の

    「見守り隊」として、このように

    通学路に立って、あいさつをし、

    交通整理をしています。ボランテ

    ィア活動です。子ども達は「アッ、

    すくすくの先生や」と言って、あ

    いさつをしてくれたり、ハイタッ

    チをしてくれます。3人の孫も登

    校班で会い、あいさつをします。

    この方は、孫が遠くにいて世話で

    きないから、近所の子どもたちの

    見守りをしたら、孫も守られると

    思う、と言って立っておられます。

    子ども達と積極的に関わろうと

    されている姿勢に頭が下がりま

    す。「すくすくキッズテン」では

    百人一首を担当して頂いていま

    す。

    ボランティア活動は「すきま活

    動」だと思います。少しの時間を

    見つけて、貢献活動を自発的に行

    うことです。この見守りタイは朝

    の 15分間だけです。私はこの後、

    大学に出かけます。

    【40】

    1996 年に欧州共同体委員長の

    ジャック・ドロール氏は 21 世紀

    の教育及び学習を提言する報告

    書をユネスコへ提出しました。そ

    の表題が「学習:秘められた宝

    (Learning :The Treasure

    within)でありました。表題は

    ラ・フォンテーヌの寓話あるいは

    イソップ寓話の「農夫とその子供

    達」に由来しています。

    「死期を覚ったある農夫が、働か

    ない 3人の息子たちに「裏の畑に

    宝物を隠してあるから、収穫を終

    えたら深く掘り返してみなさい」

    と遺言して亡くなりました。息子

    たちは言い付けどおり隈なく深

    く掘り返してみましたが、宝物は

    見つかりませんでした。しかし、

    翌年の収穫は、畑がよく耕されて

    いたので、今までにない豊作に恵

    まれました。」という内容です。

    これは労働こそが宝であり、労働

    の大切さを教訓としていますが、

    ドロールは労働を学習に置き換

    え、生涯学習の大切さを表現して

    います。私はこの寓話が大好きで

    す。

    この寓話にはもう一つ教訓が

    あるように思います。それはこの

    農夫が亡くなる直前まで、教育活

    動をしたということです。

    【41】

    私が目指しているのは「誰もが

    誰もの成長に関わることの出来

    る地域社会」の構築です。私たち

    が関わるのは子ども達だけでは

    ありません。今日のこの場も教育

    の場です。皆さん方も学ばれます

    し、私も今日の為に多くの事を学

    びましたし、この後の話合いでも

    学べることを楽しみにしていま

    す。人は学べば成長します。「成

    長に関わるのが教育」です。これ

    を私は「新生涯教育」と呼んでい

    ます。

    3 人の息子はブドウの豊作を通

    して、労働の大切さを学び、成長

    しました。それは亡くなった農夫

    が教育したのです。

    1965 年にポール・ラングラン

    によって、新たな教育の枠組みが

    提唱されました。それが 1980 年

    代から日本では「生涯学習」と言

    われるようになりました。

    そして、2001 年1月、政府の

    省庁再編の時、新しくなった文部

    科学省におきまして、「生涯学習

    政策局」が「初等中等教育局」つ

    まり「学校教育局」よりも上位に

    なりました。これは国としても

    「生涯学習」を最重要の課題とし

    ている現われだと思います。大い

    に結構です。

    しかし、私はその「生涯学習」

  • を前提にしながら、更に積極的に

    地域住民が、教育活動に関わるこ

    とを「新生涯教育」と呼んでいま

    す。つまり、自分の経験や学習成

    果、あるいは、その地域の歴史や

    文化を伝えるという教育活動を

    通して、青少年の成長に関わって

    いくということです。つまり、「誰

    もが誰もの成長に関わることの

    出来る社会」そのような社会を構

    想しています。

    【42】

    先にも紹介しましたが「郷育」

    と言う言葉は意外とたくさん使

    われています。「さといく」と読

    ませるところもあります。

    ①番の岩手県北上市では、これを

    「郷育」(さといく)と読んで、

    知育、徳育、体育に食育を加え、

    さらに郷育を教育の重要な柱と

    考えておられます。

    ②番の新潟県村上市では、「村上

    市教育基本計画」(平成 22年~平

    成 28 年)にもとづき、子どもも

    大人も共に育つ「まち」、「郷育(き

    ょういく)のまち・村上」を目指

    し、学校教育や社会教育、文化・

    スポーツなど、市の教育の振興に

    努めておられます。

    ③番の常陸大宮市では、「郷育立

    市を基軸とした、まちづくり、ひ

    とづくり、しごとづくり」を掲げ

    て、「未来を拓くまちづくりプラ

    ン」に取り組んでおられます。

    ④番の長野県では、「信州ふるさ

    と郷育ネットワーク」を結成して、

    環境型社会の土壌育成”をめざし

    て活動しておられます。

    ⑤の埼玉県では「郷育」(さとい

    く)と称して、一つ、地球と子供

    達に優しい暮らしの実践、 二つ、

    「ありのままの自分」を大切にす

    る生き方・働き方の探求、三つ、

    ともに育ちあう「つながり」づく

    り この 3点を活動の柱に、2014

    年の設立以来、さいたま市を拠点

    に、埼玉県全域で 15 以上のイベ

    ントを開催しておられます。

    ⑥番の「郷育フォーラム」は甲府

    青年会議所により、「思いやりあ

    ふれる環境創造都市」の実現につ

    なげようとの思いを一にする地

    域の市民団体、企業や行政などと

    ともに 2007 年より毎年開催し

    てこられました。

    ⑦番の奈良女子大学の「やまと共

    創郷育センター」では、地域が一

    体となってやまと再生に取り組

    む「共創」、自治体・企業との連

    携・協働により学生を育てる「郷

    育」を目指しています。

    このように「郷育」と言いまし

    ても、様々な意味で使われていま

    す。

    【43】

    私は先に「郷育」を「郷土の人

    が育てる」と言いましたが、もう

    一つあります。それは「郷土が人

    を育てる」という意味です。

    英語の cultureを今は文化や教

    養と訳すことが多いですが、元は

    ラテン語で「そこに住んで耕す」

    という意味です。農夫の 3人の息

    子たちがブドウ畑を耕したよう

    に、私たちも身近な郷土を深く耕

    してみることです。「郷土を耕す」

    とは、どうすることでしょうか。

    私はこう思います。

    つまり、一つは地域の人を知る

    ことです。いろんな人と会って、

    話しを聞くことです。人とつなが

    ることです。つまり人材の発掘で

    す。

    もう一つは、地域にある施設や

    システム、あるいは文化や伝統や

    歴史を知ることです。あるいはそ

    れらを新たな視点で見直すこと

    です。

    今日的な表現をすれば、地域資

    源の発掘です。確かにこのように

    郷土を耕しても、金銀財宝は出て

    きませんが、その一つ一つは宝物

    の種です。多くの人がその種に気

    づくと、その種から芽が出て、そ

    の地域すなわち郷土は大豊作に

    なると思います。

    知ることは、自分の郷土を耕す

    ことになります。そして、その豊

    かな郷土と言う場がそこに住む

    人を育てるのです。地に足の付い

    た人間に育てます。

    私は農夫の息子が1人ではな

    く、3人で耕したということにも

    意味があると思います。みなさん、

    3人が耕しながら、何を考え、何

    を話したか、想像してみて下さい。

    後で話し合いのテーマの一つに

    してもらえれば幸いです。小中学

    校であれば、アクティブ・ラーニ

    ングとして、役割演技をしてもら

  • うところです。

    先に申しました cultureですが、

    16 世紀の頃から、人間の内面を

    耕す意味に転用されてきます。こ

    れが今日の文化であり、教養です。

    郷土を耕すことは、自分を耕すこ

    とになります。自分が今、ここに

    住んでいる生活を豊かにしてく

    れます。学習すれば誰もが豊かな

    生活を送ることが出来ます。

    更に「郷育」にはもう一つの意

    味が考えられます。これは奇妙な

    表現ですが「郷土を人が育てる」

    と言うことです。それは言い換え

    ますと「郷土を愛し、郷土の発展

    に努める」ということです。

    【44】

    私も高齢者の仲間に入りしま

    すと、寓話の農夫のように自分の

    死を実感として捉えます。それは

    「ここが竟の棲みか」という実感

    でもあります。私は当地に住んで

    45 年になります。恐らくこの乙

    訓、あるいは長岡京市は「竟の棲

    みか」と覚悟しています。すなわ

    ち私にとってはここが聖地なの

    です。私は「ここ・この私の聖地」

    を「素晴らしいところ・まほろば」

    にしたいと思って活動していま

    す。

    1 年前の 2 月 27 日です。乙訓

    の医師会や乙訓の 2市 1町が共催

    で「人生最後の過ごし方シンポジ

    ウム」がバンビオで開催されまし

    た。あの広い 3階のホールが満杯

    で、私は入れませんでした。後か

    ら送られてきたDVDを見せて

    いただきました。つまり非常に多

    くの方々が人生の最後を真剣に

    考えておられるということです。

    死ぬということは決して忌む

    べきことではなく、常に考えなけ

    ればならない事だと思います。私

    はその最後の活動に教育を加え

    てもらいたいと思っています。農

    夫が息子たちを教育したように

    です。これが新生涯教育です。

    最後に私の専門の道徳教育の

    話をさせて下さい。一昨年、新た

    になりました『中学校学習指導要

    領』の道徳編にはこうあります。

    「郷土の伝統と文化を大切にし、

    社会に尽くした先人や高齢者に

    尊敬の念を深め、地域社会の一員

    としての自覚をもって郷土を愛

    し、進んで郷土の発展に努めるこ

    と」とあります。小中学校の道徳

    教育ではこのように子ども達に

    対して「地域社会の一員」として

    の自覚を促し、郷土愛を促す指導

    もすることになっています。

    私がコーディネータをしてい

    ます「すくすくキッズテン」では、

    子ども達にはこのようなことを

    実感し、実践してほしいと期待す

    る一方、地域の方々には「社会教

    育的な関わり」を子ども達とどん

    どん持ってもらいたいと思って

    います。私はそのような関わり、

    つながり、ふれあいの場をこれか

    らも機会ある毎に作っていきた

    いと思っています。みなさんもご

    自分の地域で、ご自分の立場でそ

    のような場をいろんな方と協力

    して是非作ってください。一人で

    はなかなかできませんが、幸い私

    たちは一人ではありません。3人

    以上はいます。皆様方は社会教育

    委員などの役職を頂いておられ

    ますので、社会教育に関する取り

    組みを計画したり、教育委員会に

    助言するなど、かなり重要な役割

    や活動が期待されていると思い

    ます。是非、積極的に計画を立案

    し、教育委員会や身近な組織に場

    づくりを提案してください。そう

    したら、その地域はきっと素晴ら

    しい所・まほろばになると思いま

    す。それが今日のテーマの「人と

    人とがつながり、支え合う地域づ

    くり」ではないでしょうか。

    以上で発表を終わります。長時

    間、御清聴有難うございました。