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1 電気用品安全法の事故事例等を受けた政省令改正について 平成22年5月24日 経済産業省製品安全課 1. 改正の経緯 電気用品からの事故未然防止の観点から、近年事故が散見される製品及び今後急速な普 及が見込まれる製品である以下の品目について、規制対象化とするための政省令等の改正 を行う。 (1)「家庭用テーブルタップコードセット」(仮称)( 規制対象として新規追加) (2)「電気掃除機」(規制対象範囲を拡大) (3)「リチウムイオン蓄電池」(規制対象範囲を拡大) (4)「電子発光体ランプ」(仮称)及び「電子発光体照明器具」(仮称)( 規制対象として新 規追加) (1) 、(2) 、(4) は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE )が事故事例等の分析を 行い、本年3月に報告書を提出したものである。そのうち、(1) 、(4) は、電気用品調査 委員会(事務局:日本電気協会)で技術基準等の改正案を検討し、本年3月に同委員会が 報告書を提出したものである。 (3) については、平成20年5月の消費経済審議会製品安全部会において、2年後を 目処に追加規制の方向性が示されているものである。 以上を踏まえ、関連する電気用品安全法の政省令の改正案を作成し、パブリックコメ ント等所要手続きを経て、本年度中を目途に政省令改正を行う予定。 2. 改正の概要 2.1. 「家庭用テーブルタップコードセット」(仮称) 2.1.1 目的 複数の電気製品又はコンセントから離れた場所にある電気製品を接続するために用い るテーブルタップや延長コード( 別添の写真参照)は、その構成部品である「差込プラグ」 資料3-6

1. - nite · 2020-03-23 · 【共通事項 】 既存 の配線器具 に共通 の技術基準 (材料 、構造 、部品及 び附属品 、雑音 の強さ、表示 )を 適用

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電気用品安全法の事故事例等を受けた政省令改正について

平成22年5月24日

経済産業省製品安全課

1. 改正の経緯

電気用品からの事故未然防止の観点から、近年事故が散見される製品及び今後急速な普

及が見込まれる製品である以下の品目について、規制対象化とするための政省令等の改正

を行う。

(1) 「家庭用テーブルタップコードセット」(仮称)(規制対象として新規追加)

(2) 「電気掃除機」(規制対象範囲を拡大)

(3) 「リチウムイオン蓄電池」(規制対象範囲を拡大)

(4) 「電子発光体ランプ」(仮称)及び「電子発光体照明器具」(仮称)(規制対象として新

規追加)

(1)、(2)、(4)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が事故事例等の分析を

行い、本年3月に報告書を提出したものである。そのうち、(1)、(4)は、電気用品調査

委員会(事務局:日本電気協会)で技術基準等の改正案を検討し、本年3月に同委員会が

報告書を提出したものである。

(3)については、平成20年5月の消費経済審議会製品安全部会において、2年後を

目処に追加規制の方向性が示されているものである。

以上を踏まえ、関連する電気用品安全法の政省令の改正案を作成し、パブリックコメ

ント等所要手続きを経て、本年度中を目途に政省令改正を行う予定。

2. 改正の概要

2.1. 「家庭用テーブルタップコードセット」(仮称)

2.1.1 目的

複数の電気製品又はコンセントから離れた場所にある電気製品を接続するために用い

るテーブルタップや延長コード(別添の写真参照)は、その構成部品である「差込プラグ」

資料3-6

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「コード」「マルチタップ」(「コードコネクタボディ」又は「その他の差し込み接続器」)

単体はそれぞれ特定電気用品である。

しかし、組立品全体は規制対象になっていない。家庭内のコンセントの数が限られてい

る状況で、使用される家電製品の数が増加したことにより、テーブルタップコードセット

は一般家庭で広く用いられており、これに起因する事故の数も年々増加傾向にある(別添

のグラフ参照)。主な事故原因は、消費者の誤使用(コードの損傷、定格容量を超える使用

等)によるものである。このため、組み立てた状態での性能・検査を規定し、所用の試験を

第三者検査機関で検査されるよう、組立品を特定電気用品に指定し、事故の未然防止を図

るべく政省令を改正するものである。

2.1.2 事故件数

255件(内、消費者の誤使用 175件)

(H22.3.1 時点から過去10年間。NITE 調べ。)

2.1.3 事故事例

①コードが繰り返し椅子の下敷きとなったことにより、コード内の芯線が半断線状態と

なり発熱し、被覆を溶かして異極間でスパークし、発火・延焼した。

②定格容量を大きく超える複数の家電製品を接続して使用したため、コードが発熱し出

火に至った。

2.1.4 規制範囲

一般家庭で使用される平行刃の差込み口に対応した一体成形タイプであって、定格電圧

が100~125V、定格周波数が50又は60Hz、かつ、定格電流が15Aのものを対象とすべく政

令を改正し品目指定する。

※器具に固定して用いるアース線付きの業務用タップ・OAタップはコードが二重被覆

で事故もほとんど無いため、規制対象から除く。また、大量生産に向かない組立て式

のものは除く。

2.1.5 技術基準概要

【共通事項】

既存の配線器具に共通の技術基準(材料、構造、部品及び附属品、雑音の強さ、表示)を

適用する。

【個別要求事項】

省令を改正し、新たに定格容量の固定化、コードの二重被覆化、電源接続部強度、改造

防止、差込みプラグ材料の耐トラッキング化、電線接続部分の温度上昇値、屈曲試験、及

び表示(定格容量を超えた機器の接続禁止及び束ね使用禁止)等を義務化する。

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2.2. 「電気掃除機」

2.2.1 目的

これまで、業務用でしかなかった消費電力が 1000W を超える大出力の電気掃除機(別添

の写真参照)が一般家庭にも普及してきている。大出力の電気掃除機、特に海外仕様(230V

等)の製品を我が国の配電電圧(100V)に合わせて変更したものは、同じワット数の場合、電

源電線に約2倍以上の電流が流れるためコードが発熱しやすい。

そのためコードの被覆が軟化しやすく、その状態でコードに外力が加わったことにより

被覆が破れて異極間でスパークするという不具合が多発しており、使用者がやけどを負う

事故も二十数件報告されるなどここ数年事故が散見されている(別添のグラフ参照)。そこ

で、1000W を超える電気掃除機を規制対象に加え、既存の電気掃除機に適用されている機

械的外力に強い電源電線(キャブタイヤコード)の使用及び電源電線の屈曲試験等を適用し、

事故未然防止を図るべく政令を改正する。

2.2.2 事故件数

33件(いずれも手に軽いやけど、発煙等の非重大製品事故。)

(H22.3.1 時点から過去10年間。NITE 調べ。)

2.2.3 事故事例

①電気掃除機の電源が入らなくなり、差込みプラグを抜いた際に軽い火傷を負った。

②使用中の電気掃除機の差込みプラグ付近から火花が発生して発煙し、プラグを抜こう

とした際に軽い火傷を負った。

2.2.4 規制範囲

電気掃除機の規制の上限値である消費電力1000W を一般家庭用のものに限り撤廃するよ

う政令を改正する。

2.2.5 技術基準概要

【共通事項】

既存の電気製品に共通の技術基準(材料、構造、部品及び附属品、消費電力等の許容量、

雑音の強さ、電圧変動による運転性能、二重絶縁構造、始動特性、漏洩電流測定、表示)

を適用する。

【個別要求事項】

既存の電気掃除機の技術基準(キャブタイヤケーブル義務化、絶縁性能試験、平常温度

上昇試験、吸込口全閉試験等)を適用する。

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2.3. 「リチウムイオン蓄電池」

2.3.1 目的

ノートPC、携帯電話等でリチウムイオン蓄電池から発火する事故が多発したことを受

け、同種の外郭容器を有する「リチウムイオン蓄電池」を特定電気用品以外の電気用品と

して平成20年11月20日から新たに規制対象とした。

他方、携帯音楽プレーヤー、電気シェーバー等に使用されている外郭容器を持たない特

殊な構造の電池(別添の写真参照)については、同様の事故発生リスクがあることから、外

郭容器を有しているリチウムイオン蓄電池を規制してから2年後を目処に規制対象とする

方針が平成20年の消経審製品安全部会で示された。そこで、今回特殊な構造の電池につ

いて、規制対象とし、事故未然防止を図るべく政省令を改正する。

2.3.2 事故件数

25件(H22.3.1 時点から過去10年間。NITE調べ。)

※いずれの事故も、規制の基準値である体積エネルギー密度、輸入方式(機器に装着し

た状態での輸入は規制対象外)が不明のため、今回の規制対象になるか不明。

2.3.3 事故事例

①海外製携帯音楽プレーヤーの充電中に異常発熱による変形・やけど、発火。

②携帯DVDプレーヤーで充電中又は使用中に電池が膨張、液漏れ、発火。

2.3.4 規制範囲

外郭容器や端子を持たない特殊な構造の電池を新たに対象とする。

※これまでどおり、単電池一個当たりの体積エネルギー密度が四〇〇ワット時毎リット

ル以上のものに限り、自動車用、原動機付自転車用、医療用機械器具用及び産業用機

械器具用のものを除く。

2.3.5 技術基準概要

省令を改正し、外郭容器のある電池を対象とした技術基準(絶縁及び配線、内圧低下機

構、温度又は電流の管理、端子接続部、組電池への単電池組込み、連続定電圧充電時、運

搬中の振動時の安全、温度変化時の安全、外部短絡時の安全、落下時の安全、衝撃時の安

全、異常高温時の安全、圧壊時の安全、低圧時の安全、過充電時の安全、強制放電時の安

全、高率充電時の安全、強制的な内部短絡時の安全、過充電の保護機能、機器落下時の組

電池の安全、高温下での組電池容器の安全)のうち、特殊な構造の電池に適用できる項目を

適用し、消費者の交換を意図したものの適切な外郭容器の義務化を追加する。

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2.4. 「電子発光体ランプ」(仮称)及び「電子発光体照明器具」(仮称)

2.4.1 目的

ここ数年各社から、既存の白熱電球(白熱電灯器具)や蛍光ランプ(放電灯器具)と比べ、

高い省エネ性能を有している LED ランプ(LED 照明器具)(別添の写真参照)が相次いで発売

されている。

これらの製品は今後急速な普及が見込まれることから(別添のグラフ参照)、新たに特定

電気用品以外の電気用品として規制対象とし、事故未然防止を図るべく政省令を改正する。

2.4.2 規制範囲

LED照明だけでなく有機EL照明等の新世代の照明を含めた電子発光体を有する定格電圧

が100~300V、かつ、定格周波数が50又は 60Hz のランプ及び照明器具を対象とする。

※「電子発光体ランプ」について、一般照明用の電球形であって、安定に点灯するため

の装置を有し、定格消費電力が1ワット以上のものに限る。

※安定器を内蔵しない「蛍光ランプ」について、最近のインバーター式のものは上記の

定格電圧及び定格周波数の範囲外のものがあるので、本改正に併せて安定器を内蔵し

ない「蛍光ランプ」をこの範囲から除き、規制対象であることを明確化する。

2.4.3 技術基準概要

【共通事項】

既存の電気製品に共通の技術基準(材料、構造、部品及び附属品、消費電力等の許容量、

雑音の強さ、電圧変動による運転性能、二重絶縁構造、始動特性、漏洩電流測定、表示)

を適用する。

【個別要求事項】

省令を改正し、既存の照明(器具)の規準を踏まえ、「電子発光体ランプ」にあっては、

口金の耐腐食性、口金のねじり強さ、口金の寸法等、「電子発光体照明器具」にあっては、

重量による構造制限、引きひもの強度、絶縁性能等を適用する。また、LED 等に特有の長

寿命特性等を踏まえた性能規定を追加する。

3. スケジュール

� パブリックコメント(30日間):第2四半期(予定)

� WTO/TBT 通報(60日間):第2四半期(予定)

� 公布:今年度第4四半期(予定)

� 施行:公布から半年又は1年後(予定)

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(1)「家庭用テーブルタップコードセット」(仮称)について

テーブルタップの例 延長コードの例

「家庭用テーブルタップコードセット」の例

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60

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100

120

テーブルタップ受付件数

(件数)

(年度)

テーブルタップの事故件数(NITE 調べ)

コード

コードコネクター

ボディ

差込みプラグ

コード

差込みプラグ

マルチタップ

←特定電気用品のマーク

:830件

別添

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(2)「電気掃除機」について

消費電力が1000W を超える電気掃除機の例

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件数(件)

消費電力が1000W 超える電気掃除機の事故件数の推移(NITE 調べ)

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(3)「リチウムイオン蓄電池」について

オーディオプレーヤー用 電気かみそり用

特殊な構造の「リチウムイオン蓄電池」の例

(4)「電子発光体ランプ」(仮称)及び「電子発光体照明器具」(仮称)について

「電子発光体ランプ」の例

電球形LEDランプ

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「その他の電子発光体照明器具」の例

有機EL照明(天井全面)

LED照明(天井埋込形) LED照明(天井埋込ベースライト)

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蛍光ランプ

白熱電球(一般

照明用)

電球形LEDランプ

(百万個)

電球形LEDランプ(2009年度)200万個

電球類の国内出荷数量推移((社)日本電球工業会自主統計)

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HID照明器具

蛍光灯器具

白熱灯器具

LED照明器具

(千台)

LED照明器具(2009年度)127万台

照明器具の国内出荷数量推移((社)日本照明器具工業会自主統計)