9
日本のバイエル企業広報誌 No. 101 May 2018 BAYER : A LIFE SCIENCE COMPANY コンシューマーヘルス部門 4 年目の展望 健康を望むすべての 女性に寄り添い、その力になる

101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

日本のバイエル企業広報誌

No.101M a y 2 0 1 8

B AY E R : A L I F E S C I E N C E C O M PA N Y

コンシューマーヘルス部門 4年目の展望

健康を望むすべての 女性に寄り添い、その力になる

Page 2: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

FEATURE 1

Empowering Women

健康を望むすべての女性に寄り添い、その力になる

コンシューマーヘルス部門4年目の展望2014年にコンシューマーヘルス部門が新設されて 4年。若い部門は次々とイノベーティブな施策に

チャレンジし、早くから実績を重ねてきた。「2025年までにコンシューマーヘルス市場でトップ 10入り」を目標に掲げる部門の現状とこれからの展望をリポートする。

“Empowerment”をキーワードに

 コンシューマーヘルス部門の躍進は目覚ましい。プレナタル*1サプリメント「エレビット®」は産婦人科・婦人科医師推奨No.1*2を獲得、販売は前期比700%にまで急伸した。腟カンジダの再発治療薬「エンペシド® L」*3も、短期間のうちにカテゴリー

におけるマーケットシェアNo.1の座を獲得。女性の悩みに耳を傾け、その健康とQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目指したさまざまな取り組みには、社会的反響も大きかった。部門設立と同時に代表に就任した植田あゆみは、4年を振り返ってこう語る。 「日本の市場を見たとき、特に女性の健

康に関して、消費者が満足していない未充足のニーズがあることに気づきました。例えば腟カンジダという頻繁にみられる感染症がありますが、これについて女性に向けた情報が不足していました。一人で悩んだり、不快や不安な思いを引きずったまま生活している人が少なくなかった。私たちは女性が十分な情報を得て主体的

日常に潜む健康の不安を正しく自分で解決できる――そんな社会の実現を目指します

コンシューマーヘルス日本代表

豪・クイーンズランド大卒。2006年にオーストラリアのバイエル入社、2010年にコンシューマー事業ニュージーランド代表就任、2012年シンガポールでリージョン代表、2014年 7月バイエル薬品株式会社コンシューマーケア事業部長。2016年 1月から現職。

植田あゆみ

Pr o f i l e

It has been four years now since the Consumer Health Division was first established in 2014. The fledgling division has shown good early results by tackling a string of innovative initiatives. Here we report on the current state and future aspirations of the division, which has the goal of top ten in the Consumer Health market by 2025.

“Empowerment” is Key The progress of the Consumer Health Division has been nothing short of remarkable. The prenatal supplement Elevit is the No. 1 recommended supplement by obstetricians and gynecologists, and sales have risen sharply, by as much as 700% year on year. Empecid L, a treatment for vaginal yeast infections, has also captured the top share in its category in a short period of time. The division listens closely to the concerns of women, and its various initiatives to enhance health and quality of life have been very well received by the general public. Ayumi Uyeda, who was appointed General Manager of the division when it was established, reflects on the

past four years. “In looking at the Japanese market,” she says, “We noticed there were areas in which consumers were not satisfied and where there were unmet needs in the market, particularly in areas of women’s health. For example, vaginal yeast infections can be quite common, but there was a lack of information available to women, and many women were leading their lives with unresolved discomfort and anxiety, and were alone in their concern. We realized there was a need to create an environment to enable women to obtain adequate information on their own, act for themselves and solve the problem, so ‘Empowering Women’ (providing all women with the ability to take charge of their health and help their families to lead healthy, happy lives) became our keyword.” Bayer worked to create a culture of directly addressing and discussing vaginal yeast infections while also actively incorporating unique initiatives not used previously in the Japanese market.

2 1 0 1 M a y 2 0 1 8

に判断し、自らアクションを起こして解決していける環境をつくろうと考え、“Empowering Women”(健康を望むすべての女性に寄り添い、その力になる)が、私たちのキーワードになりました」 これまで日本の市場では取り組まれたことのなかったユニークな施策も積極的に取り入れながら、バイエルでは、正面から腟カンジダを取り上げ、それを語る文化をつくり上げようとしていった。

消費者ニーズをベースに考える

「タブーを打ち破ること、それを躊ちゅうちょ

躇したことはありません」と植田は振り返る。「健康の悩みを、多くの日本人女性が自分の中に抱え込んでいます。私たちのコンシューマーヘルス事業は、ウィメンズヘルスというカテゴリーに貢献できるし、それをしなければならないと思いました。婦人科に行きにくいとか、デリケートなことは口にできないといったことがよくある状況で、私

たちは日本の女性たちが情報を得るための他の方法を模索しました」 加えて日本のコンシューマーヘルス市場は、カテゴリーの売上額が小さければ、マーケットとして重要視しないという傾向があった。そこにも違和感があったという。 「日本での主なカテゴリーは鎮痛剤や風邪薬です。確かに売り上げ規模は大きい。しかし私たちは、今の売り上げではなく消費者のニーズをベースに市場を捉え、将来の成長をみていきました。ウィメンズヘルスは、今は小さなカテゴリーかもしれませんが大きく伸び、拡大していく可能性があると思いました」

“Can Do Attitude” やればできる

“Empowerment”というコンセプトは、消費者に向けられているだけではなかった。コンシューマーヘルスを担う組織づくりにおいても、この考え方が重要だと植田

は考えてきた。部門の一人一人が力をつけ、自信を持って主体的に業務に取り組むところに、新しい発見や事業の前進があるからだ。 「私たちは“Can Do Attitude”というマインドで歩いてきました。そういう人がチームに加わってくれました。大事なのは考え方です。不可能にみえる状況でも挑戦し、いろいろ試してみようという気概で取り組んでいく職場環境を整えること。日本におけるコンシューマーヘルス事業を成功させるためには、私たちにとっても“Empowerment”は重要なキーワードです」 2025年までにコンシューマーヘルス市場でトップ 10を目指すバイエル。女性の健康を改善していくために、その歩みをさらに力強く進めていく。* 1 妊娠準備期間および妊娠期間*2 2017年 3月 当社インターネット調査  調査対象:産婦人科・婦人科医師 170人*3 第 1類医薬品 製造販売元:佐藤製薬株式会社

コンシューマーヘルス部門のリーダーシップチームのメンバー(2018年 1月現在)。国籍や、これまで活躍した業界など、社員たちが持つさまざまなダイバーシティ(多様性)が部門の大きな力に

Considering Consumer Needs “We did not hesitate to break taboos,” Uyeda recalls. “Many Japanese women have health concerns that they keep to themselves. We in the consumer health business are able to contribute to women’s health and we felt we had an obligation to help women. Finding it difficult to go to the gynecologist or to speak about delicate matters is quite common, so we had to find other ways to get the information to women.” In addition, there was a tendency in Japan’s consumer health market to ignore categories with limited sales, but this also didn’t seem right, Uyeda says. “The large categories in Japan are analgesics and cold medicines, and sales here are substantial, but we saw the potential for future growth by considering consumer needs rather than current sales. Women’s health may be a small category now, but it has the potential for significant growth and expansion.”

Can-Do Attitude and Mindset The concept of “Empowerment” is not only directed at consumers, but also within our organization. This same approach is important, because new discoveries and progress in business are the product of each division member being empowered to confidently and independently engage in their work. “We proceeded with a can-do attitude and mindset, and others of this mindset were added to the team. The approach is everything. We wanted a workplace infused with an experimental spirit and a willingness to take on challenging situations even when they seem impossible. To make the consumer health business successful in Japan, ‘Empowerment’ will continue to be the key for us ”. Bayer is aiming to be in the top ten in the consumer health market by 2025 and plans to push forward even more powerfully with the purpose of improving the health of women.

31 0 1 M a y 2 0 1 8

Page 3: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

「恥ずかしいこと」ではない

 世界のマーケットで大きな成功をもたらしている腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることはほとんどなかった。なぜこの薬が生かされないのか――コンシューマーヘルス部門のシニアブランドマネジャー栗原宏枝は「エンペシドL」担当として改めて考えていた。 「腟カンジダの原因となるカンジダ菌は、健康な人の皮膚や粘膜にも必ず存在する常在菌です。これが疲労やストレスなどの要因で、腟内で異常増殖すると腟カンジダを発症します。常在菌ですから、誰もが持っており、実際、10代から 50代女性の約5人に 1人は腟カンジダを経験しているという調査もあります。ところが、日本では恥ずかしいという気持ちが先行し、婦人科の診察を受けることにも抵抗があり、友人にも言えないという状況があります。このカルチャーを変えなければ、いくら『エンペシドL』を露出しても女性とはつながりません。私のミッションは『エンペシドL』を売ることではなく、腟カンジダについて語りにくいという社会状況を変えることにありました」

自分の体にきちんと向き合うために

 一人で好きな時間に読むことができるWEBコンテンツは非常に有効だと栗原は感じていた。「腟カンジダ」に関連してどんな検索や書き込みが行われているのか、それ

を分析して、あらゆる回答を用意した。ページデザインも、大人の女性を意識しながら、明るく落ち着いたトーンでまとめた。さらに、女性に人気の高い漫画家、花津ハナヨさんを起用して漫画を企画・製作。誰もが身近に受け止めることができるストーリーに、伝えたいと思うさまざまな情報を乗せた。「WEBサイトには非常に多くのアクセスがあり、すぐに検索サイトで最上位にランクされました。月間ページビューも 100万の大台に乗り、

反響は想像以上でした」 続いて栗原は、テレビコマーシャルの製作に取り組む。上品な大人の女性を意識して舞台女優、岩井七世さんを起用。他方では医師に執筆を依頼し『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』を出版した。さらにこれらと並行して、かわいらしいキャラクター「キャンディーダと愉快な仲間たち」を考案。常在菌として誰の体にもい

る仲間であることをアピールすることが狙いだ。「テレビでは上品に、WEBサイトではわかりやすく、書店では専門的に、そしてキャラクターでコミカルに親しみやすく……さまざまな手法を組み合わせ、腟カンジダを身近なものとして示し、リテラシーを高めてもらうことを考えました。パッケージデザインも女性に親しみやすいものに変えています」。間もなく「エンペシドL」の販売は急カーブで上昇。カテゴリーNo.1の地位を獲得した。

コミュニケーションの必要性

 医療機関で診断を受けた人は、処方された薬を服用しながら健康体を取り戻していく。医薬品の果たす役割は大きい。他方で、医療機関の受診を躊躇したり、OTC医薬品(一般用医薬品)の購入や使い方に不安があるという一般の消費者が存在している。医師に出会わない人たちとコミュニケーションを取り、的確な情報や知識を伝えられるのは誰なのか?「病院で診

療を受ける前の人にアプローチできるのは、消費者との広い接点を持っているコンシューマーヘルス部門です。女性が自分の体のことを深く知り、自信を持って行動していける――そういう社会をつくりたいと思っています」と栗原。 さまざまなタブーに果敢に挑戦する「エンペシドL」プロジェクト。それは、コンシューマーヘルス部門の任務とは何かということを、改めて示すものでもあった。

Working to Create a New Culture Empecid, a treatment for vaginal yeast infections, had succeeded on the global market but was struggling in Japan. Hiroe Kurihara, Senior Brand Manager in the Consumer Health Division, thought about why. “Candida, which causes the infection, occurs in healthy people in the skin and mucous membranes. But because of overwork and stress, candida overgrowth can occur and cause a vaginal infection. Everyone has candida, but in Japan women would sometimes be embarrassed to tell their gynecologist or even their friends. We had to change the culture.” Kurihara thought easily accessible online content would be effective.

The team analyzed searches and posts related to “vaginal yeast infection” and prepared every conceivable response. In addition, Hanayo Hanatsu, a manga artist popular with women, was hired to produce a manga series. Key facts were put into a story familiar to everyone. The website was a huge success, and monthly page views exceeded one million. The team next produced TV commercials, books and a mascot. “In good taste on TV, clear on the web, specialized in books, and comical for the mascot—we combined approaches and presented candida as a familiar presence while raising literacy.” In no time sales of Empecid L increased sharply and ranked No. 1 in the category.

私たちは新たなカルチャーの創造を目指している

左/WEB漫画『ひとりで、できる。』のひとコマ。右/「エンペシドL」のWEBサイトのトップページ

4 1 0 1 M a y 2 0 1 8

1 コンシューマーヘルス部門のマーケティング部長のマーク・ホファとシニアブランドマネジャーの栗原宏枝。 2 女性視点でパッケージを改良。ピンクや赤といった明るい色合いを基調に「きちんとした大人の女性」をイメージしてデザインを考案。 3 専門的な情報の啓発を目的として制作した書籍。 4 漫画家、花津ハナヨ先生が描く漫画の下絵を確認しながら、リクエストを書き込んでいく。誰もが共感できるストーリーと伝えたい情報を盛り込むことが大切になる。 5 キャンペーングッズとして考案した「あぶらとり紙」。 6 WEB漫画『ひとりで、できる。』は、大きな反響を得た。 7 書籍に登場するキャラクター「キャンディーダ」。 8 日々のケアに大切な「乳酸菌」もキャラクターにして親しみやすく表現。 9 キャンペーングッズの缶バッジ。「女性の 5人に 1人が感染する腟カンジダ症」の情報をおしゃれなデザインで発信。 10 市場の成長をパートナー企業と共有するエンゲージメントキャンペーン

1 2

3

4

56

9

8

10

7

51 0 1 M a y 2 0 1 8

Page 4: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

“常識”を変え、タブーに挑む

「常識への挑戦」は、コンシューマーヘルス部門の基本的なスタンスだ。「エレビット」の成功も、医師と流通と、そして私たちの常識を変えることによって可能になったものだった。「エレビット」は、妊活・妊娠中に必要な 18種のビタミン・ミネラルを配合したマルチサプリメントとして世界中で高い支持を得ている。しかし日本での販売にはいくつかの困難があった。例えばサプリメントに有効な販売チャネルである独自のオンラインショップを持っていなかった。しかしバイエルは産婦人科や婦人科の医師との信頼関係が厚い。当然、医師のサポートを得ながらの販売推進が有力な手段になるのだが、問題は「エレビット」が医薬品ではなく予防効果を持つサプリメントであるということだった。「医師が予防サプリメントを扱うのか?」「それを医師にお願いするのか?」――医師にも、そして営業側にも抵抗感があった。だが、二分脊椎症を含む神経管閉鎖障害の発生原因のひとつに葉酸の不足があり、葉酸の摂取が発症リスクの低減に寄与することは明らかになっている。しかも、米国やドイツなど欧米諸国では減少傾向にある二分脊椎症が、日本においては 2010年において 10,000人当たり 6人近く(0.06%)と、発症率の低下傾向はみられていない。部門では、二分脊椎症予防の意義を医師に丁寧に伝える活動を展開した。そうすることによって「予防」「サプリメント」には関知しないという医師のマインドセットを徐々に変えることに成功した。現在「エレビット」は、医師推奨No.1

のマルチサプリ **として販売実績を劇的に伸ばしている。 * 妊娠準備期間および妊娠期間** 2017年 3月 当社インターネット調査 調査対象:産婦人科・婦人科医師 170人

独自の視点で新しい市場を開拓するコンシューマーヘルス部門。部門の特性を読み解く、

5つのキーワードをご紹介。

Diversity01

02

Changing the Mindset

ダイバーシティ

チェンジング ザ マインドセット

議論はいつも白熱し、そして前に進む

 コンシューマーヘルス部門には、さまざまな国のさまざまな企業で、多くの成功体験を得てきた人たちが集まっている。ダイバーシティ(多様性)は、この部門の大きな特長だ。オーストラリア、中国、韓国、スイス、アメリカなど国籍は多岐にわたり、男女比も 60%対 40%と拮抗している。出身業界も、薬品や化粧品、食品に限られるのではなく、ファッション、テクノロジー、広告など、あらゆるところに広がっている。当然、考え方やアプローチの仕方、ビジネスモデルなど、バックグラウンドもまったく異なる。「だからおもしろい」と、部門のメンバーは口をそろえる。「『これをやってみたら?』という提案に『前例がない』『きっと反対される』というネガティブな言葉は決して返ってきません。『おもしろそうだね』『やってみよう』と、議論は白熱しながら前に進んでいきます」 メンバーは違いを認め合い尊重し合っているからこそ、対立することもあるが、感情的になる場面はない。むしろ違いを発見することは喜びであり、対立は新しいものの誕生のきっかけになる。そしてこの多様性を支え、ひとつにまとめているのが“実現したい”という強い意思と理念だ。日本におけるヘルスリテラシーの向上を図る――そのためにチームは固く結束している。

1月 17日に行われたコンシューマーヘルス部門のタウンホールミーティングのひとコマ。戦国時代の鎧を模したコスチュームをまとい、チームに分かれてミニゲームを開催。部門のメンバーが全員参加する貴重な機会となり親睦を深めた

プレナタル*サプリメント「エレビット」

6 1 0 1 M a y 2 0 1 8

日本市場に合わせた柔軟な販売戦略

 コンシューマーヘルス部門の販売におけるキーワードはパートナーシップだ。製品の製造から販売までのバリューチェーンをみたとき、強力な研究開発と製造拠点と製品群があり、それ

見えていないニーズに照準を当てる

 バイエルの医薬品が、徹底した安全管理の下、質の高い研究開発プロセスを経て市場に投入されていることは言うまでもないが、コンシューマーヘルスビジネスという視点では別の要素も必要になる。それは「顕在化した症状に対する治療薬」ではなく、「まだ決定的に顕在化していない不満や不安、あるいはありたい自分とのギャップ」といった、消費者の心の中にあるアンメットニーズに応えることだ。見えていないもの、不確実なものに対してスポットライトを当て、そこにニーズを設定し、バイエルの膨大なグローバルアセットから、的確に応えられるものを構想していく。そのことが求められている。“引き算 ”で要素を絞りながら、同時に日本の規制に合わせて製品を新たに設計し、きれいな“クリスタル”として仕上げていくということだ。部門ではアイディエー

ションプロセスと呼んでいる。これこそ、コンシューマーヘルス部門における製品開発の基本的なスタイルである。

世界のマーケットでバイエルは第2位

 バイエルは世界のOTC医薬品(一般用医薬品)市場で第 2位のポジションを占める。鎮痛剤「アスピリン®」「Aleve™」をはじめ、点鼻薬「Afrin™」、皮膚薬「Bepanthen™」、足のケアブランド「Dr. Scholl’s™」やスキンケア「Coppertone™」などを保有。さらに胃腸薬や風邪薬、インフルエンザ関連の幅広いOTC製品群を持っている。これらの強力なグローバルアセットの中には、日本のメジャープレーヤーである製薬会社が必要とするソリューションも含まれている。強力なポートフォリオを武器に、マーケティングや販売チャネルに工夫を加えながら、コンシューマーヘルス部門は日本におけるビジネスをさらに強力に推進していこうとしている。

を輸入するルートを確保していても、マーケティングを進め、消費者とコミュニケーションを取りながら販売していくという最終場面で、まだその力は十分ではない。日本の市場に参入して 4年の歴史しか有さず、市場におけるプレゼンスは決して大きくはないため、それをいかに補完するか――そこで重要視しているのが国内医薬品会社とのパートナーシップだ。アレルギー性疾患治療剤「クラリチン ®」などはパートナー会社と販売提携している。バイエルの高品質で価値の高いOTC医薬品(一般用医薬品)をいかに早く日本の消費者の元に届けるか、そこで生きるのがパートナーシップだ。

B a y e r G l o b a l P r o d u c t s f r o m C o n s u m e r H e a l t h

03

05

04

Ideation Process

Partnership

Global Asset

アイディエーションプロセス

パートナーシップ

グローバルアセット

アレルギー性疾患治療剤「クラリチン」の日本版パッケージと海外版パッケージ

71 0 1 M a y 2 0 1 8

Page 5: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

デジタル酪農の進化牛の体調を“見える化”する健康管理ツール

バイエルが手掛ける、乳牛を対象とした酪農家へ向けたアプリ「BCS Cowdition」。スマートフォンひとつで牛の体調を評価できる乳牛管理のサポートツールを提供している。

そして 2017年、このアプリの機能が革新的にアップデートされた。

乳牛の健康状態を評価する

 “BCS”とは、ボディ・コンディション・スコアリングの略称である。ボディ・コンディション・スコアリングは、乳牛の痩せ具合、太り具合を表す指標で、酪農の生産サイクル全体にわたり確実に乳牛群(以下、牛群)の健康を評価する方法として取り入れられ、牛群の健康管理において非常に重要な位置を占めている。ボディ・コンディションの指標が良くない牛はさまざまな代謝性疾患リスクに加え、生殖能力への有害作用リスクが高まる。こういった状態は生産性の損失と乳牛の健康状態への悪影響を引き起こす大きな原因となっている。それゆえ、牛群全体を対象としたボディ・コンディション・スコアの監視は、健康状態に加え、生産性と収益性を確保する重要な第一歩となっている。

健康管理をサポートするアプリ

 2014年にドイツ・バイエル社から発表されたアプリ「BCS Cowdition」。革新的な「フォト-アンド-ラインフィットシステム」を用いたことにより、人間の目視によるボディ・コンディション・スコアリング評価の差異を抑えることができる。スマートフォンで牛単体の正確かつ標準化された評価を行うことができるようになった。このアプリは、すでに 14言語*で利用されており、90カ国超の酪農専門家がさらに効率的に牛の健康管理を行えるようになった。

革新的なアップデート

 そして 2017年の革新的なアップデートによる新機能では、ボディ・コンディション・スコアが最適以下の評価となった牛にはアラートが出され、農場ですでに適用されている牛群管理システムと同期した総合ダッシュボードが提供されるようになった。さらに、世界中の獣医師、遺伝子コンサルタント、飼料コンサルタン

トなどの酪農家向けのデータサービスを専門としているデイリーデータウェアハウス(DDW**)社とバイエルが提携したことで、このダッシュボードでさらに、外部ソースから「ビッグデータ」を取り込み、酪農専門家が牛群の健康状態に関してより詳しい情報を得られるようになった。

大切な牛たちの健康を守る

 ドイツ・バイエル社動物用薬品事業部のグローバルマーケティングディレクターで乳牛を担当するリンゼ・ボースマ

は次のように語る。 「バイエルでは牛の健康維持に取り組み、革新的な方法を用いて目標を達成することに情熱を傾けています。アプリ『BCS Cowdition』の新たな機能に加え、

DDW社と提携することでアプリの利便性が新しいレベルにまで高められました。この結果、牛群の健康を効率的に監視して管理するとともに、既存の牛群データからも多くの知見を得ることがで

きます。牛単体のデータ、問題のある個体に対するアラートおよび疾患リスクに関する追加情報から、効果的なソリューションが酪農専門家に提供されます。酪農家や獣医師が世話をしている大切な牛の健康を向上できるよう、このような技術を実用化できることを喜ばしく思っています」

※本記事は 2017年 1 1 月23日ドイツ・バイエル社発行のニュースリリースの抄訳です。以下のQRコードから原文を読むことができます。

FEATURE 2

世界のバイエルから

B AY E RG L O B A L

*日本語未対応 ** Dairy Data Warehouse

8 1 0 1 M a y 2 0 1 8

Bayer’s BCS Cowdition app for dairy cattle provides tools for herd management that allow dair y farmers to assess the body condition of their cows with only a single smartphone. New, innovative features were added to the app in 2017.

Assessment of Dairy Herd Health BCS stands for Body Condition Scoring, which is a method for accurately assessing the health of dairy herds during the dairy production cycle with indicators for the degree of weight gain and loss by individual cows. BCS plays an important role in herd health management. When a cow’s body condition is less than optimal, there is an increased risk of various metabolic diseases and negative effects on fertility. These conditions can cause productivity loss and adversely affect cow health, so monitoring body condition scores across a herd is a very important first step in ensuring the cows’ optimal health and well-being. The BCS Cowdition app was released by Bayer in 2014. It uses an innovative photo-and-line fit system to minimize variations in body condition scoring caused by inherently subjective visual inspections, and this allows

features with our BCS Cowdition app and our partnership with Dairy Data Warehouse takes the convenience of the app to a whole new level. This offers greater opportunity for dairy professionals to efficiently monitor and manage the health of their herd, as well as the unprecedented ability to garner insights from existing herd data. Through this partnership the app can offer tailored and specialized solutions to each cow. Individual cow data, alerts about problem animals and additional information on disease risks provide dairy professionals with the tools to tackle those problems effectively. We are pleased to be able to offer such a practical application of technology to help farmers and veterinarians improve the health of the animals they care for."

for accurate and standardized assessment of individual cows using only a smartphone. The app is already in use in 14 languages (Japanese not yet supported), enabling dairy professionals in over 90 countries to more efficiently manage the health of their herds. The new, innovative features added to BCS Cowdition in 2017 enable the app to give alerts for cows with sub-optimal body condition scores that require attention. There is also a comprehensive dashboard that can be synchronized with a farm’s existing herd management system. The dashboard makes use of “big data” from external sources to offer dairy professionals further insights into the health condition of the herd, a function made possible through Bayer’s partnership with Dairy Data Warehouse, a specialist in data services for veterinarians, genetic consultants, feed consultants and other dairy professionals around the world. Protecting the Health of the Herd Rinse Boersma, Global Marketing Director for Dairy Cattle at Animal Health, Bayer, discusses the updated app: "We are committed to cattle health and we are passionate about achieving this in innovative ways. The new

The BCS Cowdition App

14:34

バイエルでは世界中の酪農家に牛群の健康をよりよく管理できる革新的なソリューションを提供している。費用のかかる疾患治療、牛乳の生産量の低下および繁殖力の低下は、今日全ての酪農家が直面している三大課題となっている。

アプリ「BCS Cowdition」により、酪農専門家がさまざまな疾患のリスクアセスメントを行えるようになり、牛群の全生産力の管理が容易になるため、適切な措置が取れるようになった。このアプリはすでに 90カ国を超える 4万人以上の酪農専門家に利用されている。

デイリーデータウェアハウス(DDW*)社との連携を通じて、アプリ「BCS Cowdition」のアップデートが行われ、牛群のより良い健康管理のために目的に合った専門的なソリューションが可能になるデータが取り込まれるようになった。またこのアプリでは、ユーザーが牛群管理システムから既存データをインポートすることが可能だ。

バイエルのアプリ「BCS Cowdition」は、14言語*

で提供されApp StoreとGoogle Playから無料でダウンロードできる。 *日本語未対応

* Dairy Data Warehouse

91 0 1 M a y 2 0 1 8

Page 6: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

The Bayer Cross has been given a makeover, taking on a more refined look while maintaining the basic design created 114 years ago. Along with the Bayer brand, repositioned to emphasize “life”, the new Bayer Cross will shine even more brightly as we pursue our new journey as a life science company.

The Bayer Cross & Branding Identity For over 150 years, Bayer has constantly endeavored to improve people’s lives through innovative solutions to the challenges facing society. However, recent analysis revealed that our brand was perceived as

being rather cold, inward-looking, and too science-focused, despite our contribution in healthcare and agriculture that tackles two of the world’s most pressing challenges today, health and nutrition. This January, our brand identity was reshaped to shift the focus from “science” to “life”—namely, the real positive impact we have on human lives. At the same time, the Bayer Cross, a longstanding symbol of Bayer competence, quality, and trust, has been subtly redesigned and the palette of corporate colors expanded to twelve warm, vibrant hues in order to reflect that shift while adapting our logo to the digital age. The result is branding that says we are visionary, optimistic, and passionate about providing a better life.

FEATURE 3

Bayer's New Look

進化するブランドとバイエルクロス“life”をより強く打ち出す新しいブランディング

バイエルのコーポレートロゴ(バイエルクロス)が変わった。誕生から 114 年の歴史をもつバイエルクロスの基本デザインはそのままに、より洗練された形に。人や生活との結びつきを

より強調したブランディングと共に、新しい時代のバイエルのシンボルとして、一層の輝きを放つ。

時代と企業の変化に合わせて

 バイエルは、150年以上の長い歴史の中で、常に社会の課題に応える革新を続け、一貫して人々のより良い暮らしの実現に貢献してきた企業である。しかし近年行われた分析調査では、サイエンス感の強いビジュアルを多用したバイエルのブランド・イメー

ジは冷たい印象を与え、人との結びつきを感じづらい、と認識されていることが指摘された。実際のバイエルは、ヘルスケアと農業関連分野で世界をリードするライフサイエンス企業として、世界が直面する最大課題のふたつ「医療」と「食糧安定供給」に本格的な取り組みを続けてきた。こうした企業姿勢をより強く打ち出

し、時代のトレンドを見据える形で、2018年1月よりブランドアイデンティティが刷新された。 世界で最も有名な企業ロゴのひとつとされているバイエルクロスは、能力、品質、信頼の代名詞となってきた。新たなブランドアイデンティティを打ち出すにあたり、バイエルクロスもカラフルな 12色の

“life” をより強く打ち出す、新しいブランディング

バイエルクロスと併せて使用するロゴタイプも刷新

From a Science focus To a life focus

1 0 1 0 1 M a y 2 0 1 8

As CEO Werner Baumann explains, “Our brand is our most important distinguishing feature. People from all over the world have been placing their trust in Bayer for more than 150 years.” Bayer will continue leveraging its exceptional, time-honored strengths in science to help build a healthier world free of hunger. Accordingly, the new branding calls on all employees to keep drawing inspiration from the fact the solutions we create today will advancing life tomorrow, and help people to thrive. This is why we must firmly embed the message of the new branding in our daily communications. These days, strong corporate brands play a more important role than

ever in a company’s commercial success. Over the past ten years, Bayer has dramatically transformed its strategy and realigned its portfolio to pave the way to further growth in the years to come. And, as we change, so should our logo, the widely visible symbol of the value that Bayer offers to internal and external stakeholders. The evolution of Bayer brand is evident in all areas: in online and offline media, in the legendary Bayer Cross logo, and in the color scheme, photographic style and font. Digitalization is transforming our lives and entire industrial sectors. Now more than ever, one thing remains clear: Successful businesses must constantly move forward and evolve.

コーポレートカラーと共に、デジタル時代によりフィットした形に進化した。 新たなブランディングは、常により良い明日を追求し、世界の人々により良い暮らしを届けることを使命とするバイエルの姿勢を体現するものとして、グローバル市場調査を含む、徹底的なプロセスを経て決められた。

ブランドアイデンティティのシフト

 進化したバイエルのブランディングは、ダイナミックでオープン、かつ人との結びつきを大切にしたもので、“life”をより強く打ち出し、未来に対して前向きで、使命への熱意を表現し、あくなき探究心で人類と地球のために建設的な変化を起こし続けるというビジョンに基づいたイメージとなっている。ドイツ・バイエル社社長ヴェルナー・バウマンは、「ブランドとは、バイエルを際立たせる最も重要な資産です。150年以上の長きにわたり、世界中の人々がバイエルに寄せてきた信頼の証しなのです」と語る。 バイエルにとって、健康と食糧関連の分野における科学の卓越した専門性が伝統的な強みであることに今も変わりはない。大切なのは、バイエルで働く人々にとって、“今日バイエルが生み出すソリューションが、人々の明日の暮らしをより良いものとし、

人類と地球の豊かさを支えている”という思いが、モチベーションの源であること。そして、これを具現化した新たなブランディングが、日々のコミュニケーションの中で実践されていくことである。ドイツ・バイエル社のコミュニケーションズ&

パブリックアフェアーズ本部長マイケル・プロイスは「今日、ビジネスの成功において、強い企業ブランドを持つことが、かつてないほど重要な役割を担っています」と話す。

前進し進化し続けるのが成功の証し

 なぜ今バイエルの「外観=ブランディング」を変える必要があるのだろうか? バイエルクロスは、企業シンボルであり、社内外のステークホルダーが抱く企業イメージを具現化するものである。過去10年、バイエルの戦略は進化し、ポートフォリオも大きく変わってきた。一大多国籍企業となった今日のバイエルを体現し、デジタル時代におけるオンライン・オフラインのさまざまなメディアに対応すべく進化したバイエルクロス。これに伴って、カラースキーム、フォント、写真やグラフィックのスタイルも、人の息吹がより感じられるオープンマインドでありつつも、よりダイナミックなものへと進化し、日本でのみ使用が認められて

いるカタカナのバイエルロゴも刷新された。 「予測を超えた可能性をもたらし得るゲノム編集やデジタリゼーションといったテクノロジーは、私たちの生活、そして産業自体に変革を呼び込むものです。今日、いまだかつてないほど明確なのは、絶えず前進し進化し続けることこそが、成功する企業の証しであるということです」とプロイスは語っている。

新ロゴに伴い新しいコーポレートカラーが選ばれた。従来の青と緑も生かしながら、以前よりも、さらに力強く生き生きしたものに変化を遂げた。特筆すべきは色のラインアップだ。新たなコーポレートカラーは、青、緑、紫系からなる 1 2 色+白で構成されている。色のバリエーションが増えたことによって、クリエーティビティが高まり、より生き生きと人々の暮らしに寄りそうデザインが可能となるばかりでなく、時流にマッチしたバイエルのブランド・イメージを発信することが可能となる。

NEW COLORS

色鮮やかなコーポレートカラー

青、緑、紫系の 3グループに分けることができる

1 11 0 1 M a y 2 0 1 8

Page 7: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

Career KOSHIEN is one of the largest business plan promotion tournaments in Japan for high school students, and Bayer has participated the last two years as a Theme Sponsor.

Encouraging Young Potential to Change the Future Career KOSHIEN was launched in 2014 by Mynavi Corporation, and

Bayer has been involved as a Theme Sponsor since 2016. Last year, the Crop Science Division submitted a theme on agriculture and global food security, and the team representing this theme, KOMETTO, won the Grand Prize. This year, Bayer’s Employer Brand project team submitted the theme “Passion to Innovate | Power to Change ~ Think about innovation to produce global talent from Japan to shine within multinational companies.”

FEATURE 4

For the Future of Young Generat ions

未来を変える若き力を応援バイエルが参画する「キャリア甲子園」の取り組み

日本最大級の高校生向けビジネス・アイデア・コンテスト「キャリア甲子園 2017」の決勝戦が3月 18日に開催された。バイエルは昨年に引き続き、今年もテーマスポンサーとして参画。

無限の可能性を秘めた若き視点

 2014年よりマイナビ主催でスタートした「キャリア甲子園」に、2016年度からバイエルは、テーマスポンサーとして参画している。昨年はクロップサイエンス部門が「世界の食糧安定供給に、日本農業が貢献するための施策を考える」というテーマを出題し、日本の高校生に広く農業や食糧問題について考えてもらう機会を提供。そして、バイエルのテーマを代表したチーム「米ット。」が見事「キャリア甲子園2016」の総合優勝を果たした。海陽中等教育学校(愛知県)の男子校生4人からなるチーム「米ット。」のメンバーは、昨年の大会と優勝後の一年を振り返る。 「自分たちには全く身近ではなかった“農業”や“食糧問題”について学び、バイエルの姿勢を理解することは、とても刺激的でした。世界に飢餓人口が 8億人もいて、それを解決するアプローチも農業の大切な側面であるこ

とに驚かされました。1年経って改めて、大会に臨む過程でのたくさんの出会いや、いろいろな経験を通して、視野が広がり、さまざまな物事を多面的に見る力を身につけられたと実感しています」

高校生と共に築く未来への礎

「キャリア甲子園2017」のメインテーマは

「MY REVOLUTION!!」。そして、テーマ協賛7企業が出題したテーマにエントリーした 3,000人を超える高校生たちによって大舞台の幕が開かれた。今回バイエルは、エンプロイヤー・ブランドのプロジェクトが中心となり「多国籍企業の中でグローバルに活躍する人材を日本から輩出するための Innovationを考えよ。

2017年の 3月に開催された「キャリア甲子園 2016」の決勝の舞台でプレゼンテーションを披露するチーム「米ット。」

チーム「米ット。」のメンバー 3人が、2017年 3月に日本のバイエルの東京オフィスを訪問

12 1 0 1 M a y 2 0 1 8

The team La Mer was the finalist that represented the theme, and while they did not win, they gained an invaluable experience. Mr. Keiichiro Hata of Mynavi says, “During times of change, our aim is to lead students to think on their own and to create new approaches. The competition is meant to give students a formative, moving experience.” Bayer employees recruited to judge the submissions saw firsthand the

students’ passionate, sincere engagement with the theme and receptivity to feedback. The project was significant in terms of branding as well. As the project leader says, “We hope to continue the project in the coming years because it provides Bayer with broad exposure to young people and because it internally transcends divisional boundaries.”

Passion to Innovate |Power to Change」というテーマを出題した。エンプロイヤー・ブランドとは、働く場としてのバイエルを表すスローガンであり、会社から従業員への約束を示すものでもある。このテーマに取り組み決勝戦に出場したのは、豊島岡女子学園(東京都)の女子校生4人からなるチーム「ラ・メール」。残念ながら優勝はできなかったが、大会を通して得たものは、これからの人生にとってかけがえのない財産となった。「ラ・メール」のメンバーは、大会終了後に次のように語った。 「こんなに悔しいと思う自分に戸惑っています。この気持ちを忘れずに、向上心に変えて将来に生かしていきたいです。大会に臨む過程では、プレゼンの内容について、自分たちの目線では気づかなかったことを、バイエルさんからのフィードバックによって気づかされ、視野を広げることができま

した。成長する機会をいただけたことに、感謝しています。普段の勉強だけではない――ここまで夢中になれるものに出合えたことも、私たちにはとても大きかったです」

自ら考え、生み出す力を身につける

「キャリア甲子園」を主催するマイナビの羽田啓一郎さんは、より良い大人になるための土台づくりの場として、開催の狙いをこう語る。「世の中の仕組みが大きく変わる中、自ら考え、新しい仕組みを生み出す力を養ってほしい。また、勝ち負けのつく戦いを通じて、感情が揺さぶられる原体験を提供していきたい。一生忘れられない感情が次なるステップにつながるはずですが、こうした感情は、本人が狙って生み出せるものではないと考えています」

 バイエルでは、ビデオ審査から決勝大会までをプロジェクト化し社内公募で集まったメンバーで審査に取り組んできた。テーマや、フィードバックのひと言ひと言に真剣に向き合う高校生の情熱を目の当たりにしたメンバーからは、ブランディングの意味でも、部門の枠を超えた取り組みとしても有意義な機会であるとの声が聞かれた。「やがて大人になる高校生たちに広くバイエルという企業を知ってもらうため、また垣根を越えた全社プロジェクトという観点からも次年度以降も継続していけたらと考えています」

※『HARMONY』のWEBサイトでは、「米ット。」「ラ・メール」のインタビューなど、さらに詳しい情報を紹介。

株式会社マイナビが手掛ける高校生向けのビジネス・アイデア・コンテスト。協賛企業から出題されたテーマを高校生が自由に選択し、2~4人のチームを組んで企業からのお題に挑戦。審査はテーマ企業ごとに行われ、最終的に各企業が選んだ企業代表チーム同士が決勝戦で競い合う。「キャリア甲子園 2017」には、資生堂、自民党、TBSラジオ、JAL(日本航空)、帝人、レオパレス 21、バイエルの 7社がテーマ協賛企業として参加。決勝審査は、主催者に加え経済産業省、BBT大学、大塚製薬が行った。高校生のエントリーも過去最多の 3,014人だった。 http://careerkoshien.mycampus.jp/

キャリア甲子園とは?

「キャリア甲子園 2017」の決勝戦で、バイエルの出題テーマを代表してプレゼンテーションを行ったチーム「ラ・メール」

2018年 3月に開催された「キャリア甲子園 2017」の決勝戦の様子

1 31 0 1 M a y 2 0 1 8

Page 8: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

知ることの大切さを伝える

 日本には約6,000 人の血友病の患者さんがいる *。血友病は血液を固める働きをするタンパク質「凝固因子」が生まれつき不足していることで、出血すると止血に時間を要する病気だ。血友病の患者さんには「ケガをしてはいけない」という意識があり、スポーツを敬遠する傾向がある。しかし昨今では血液凝固因子製剤を体内に定期投与する「定期補充療法」が普及してきたことで健常者と変わらない生活を送ることができ、血友病であっても適切な準備があればスポーツを日常生活に取り入れることができるのだ。血友病治療専門医である東京医科大学医学部医学科臨床検査医学分野教授の天野景裕先生は「運動のための正しい準備を知ることは病気のことを正しく知ることと同じくらい大切」と話す。

子どもたちのチャレンジを応援

 2017年 1 1 月、バイエルは血友病の子どもたちにもスポーツを身近なものと感じ、日常生活に取り入れていただくことを目的に、同世代の子どもたちが一緒にスポーツ

を楽しむ機会をつくる「ハッピーシェア プロジェクト フットサル・ミーティング2017」を神戸市で開催した。2回目となる今回のプログラムは、元サッカー日本代表の北澤 豪さんの指導による「フットサル教室」をはじめ、天野先生と同じく血友病治療専門医の兵庫医科大学血液内科助教の德川多津子先生による模型や実験を通した「血友病のお話」、そして兵庫医科大学病院リハビリテーション部理学療法士の梶原和久先生による「準備・整理体操」が行われた。また、本企画に賛同した武庫川女子大学健康・スポーツ科学部より、スポーツやヘルスケアに関係する職業を目指す学生がサポートスタッフとして協力した。 イベントには血友病患者さんを含む小学生 21 人が参加。児童全員が同じフィールドで同じようにボールを追いかけ、走り回り、保護者たちは声を出してエールを送った。会場の雰囲気はイベントが進むにつれて熱を帯び、スポーツを通じて全員が一体感を共有した。

笑顔あふれる一日に

 患者さんの保護者からは「病気と付き合いながらフットサルをしている。(この機会を通じて)自分の体のことを詳しく知って

ほしくて応募した」という声や「補充療法をしていてもケガをしたときのことを考えると団体スポーツには不安があるが、周りの理解と準備があればできることが分かり、(参加して)

とてもよかった」など、知ることの大切さとスポーツへの前向きな意見が聞かれた。 北澤さんはイベント終了後「全員平等なのがスポーツ。今日は子どもたちみんなが平等にスポーツをする環境をつくれたことが、子どもたちのいっぱいの笑顔につながったのだと思う」と一日を振り返った。 子どもたちが共通体験を通じて体感できる「楽しかったね!」という“ ハッピーな体験のシェア”――バイエルは、このようなイベントを通して、子どもたちの夢をあきらめない気持ちを応援していく。

子どもたちの夢をあきらめない気持ちを応援していく

血友病患者さんにおける運動・スポーツのベネフィット **

筋肉などの支持組織を強化して関節内出血の減少

筋肉骨格の健全な発達、肥満防止

自信・自尊心の醸成、

協調性の向上

* 2016年度血液凝固異常症全国調査より**兵庫医科大学血液内科助教 德川多津子先生監修 「血友病患者における運動と出血リスク」より

14

2017

8月 August

15-17 体験型学習イベント「理科っ子になる夏! バイエル サイエンス・ファーム」を開催

9月 September

1 犬用コクシジウム・線虫類駆除薬 「プロコックス ®」を新発売

19-22 バイエルがプラチナスポンサーとして協賛した 第 26 回アジア太平洋雑草科学会議

2017年で 50年目を迎え、京都で開催 1967年の設立以来、アジア各国で 2年に一度開かれている「アジア太平洋雑草科学会議」。9月 19日から 22日の 4日間にわたり京都で開催され、2017年で 50年目を迎えた。18社の企業が参加し、総参加者は 440人。バイエルはプラチナスポンサーとして協賛した。本会議は、アジアパシフィックが重要市場である「カウンシル®」と「Alion

(BecAno)™」(日本未発売)のプロモーションの場となり、計 6題の研究発表が行われた。また、グローバルで進める総合雑草防除のコンセプト(Bayer IWM=バイエル インテグレーテッド・ウィード・マネジメント)を紹介した展示ブースでは、京都色を加え好評を博した。除草剤抵抗性に関するセッションでは、フランクフルト除草剤研究所でも活躍するバイエルの研究者ボド・ピーターズが登場。「カウンシル」のセミナーでは、開発本部生物開発部除草剤開発マネジャーの杉浦健司、除草剤グローバルプロダクトディベロップメントマネジャーのラミシス・フルジェンシオ、除草剤アジアパシフィック・プロダクトディベロップメントマネジャーのミンシク・パクが登壇し、アジア各国での実績を紹介した。「カウンシル」の有効性とともに、コストパフォーマンスの良さや適応範囲の広さ、日本をはじめとするアジアの農家のニーズをかなえる製品であることが伝えられ、参加者からの積極的な質問から、本剤に対する関心の高さがうかがえた。

10月 October

9-13 「世界若者農業サミット」開催。    3つの食糧安定供給プロジェクトに資金提供

10 インキュベーションラボ「CoLaborator Kobe」を    2018年上半期に開設予定を発表

18 「妊活・妊娠と夫婦に関する 実態調査」を実施

11月 November

15 犬猫用腎臓健康サポートサプリメント 「カリナール ®コンボ」を新発売

16 ぺプチドリーム株式会社と 創薬共同研究開発契約を締結

27・28 理科実験教室「わくわく実験びっくり箱」 15年目を迎え、佐賀と長崎で初開催

28 「バイエル ライフ イノベーション アワード 2017」大賞受賞企業が決定

12月 December

5 血友病A治療薬「コバールトリイ ®」製品箱が 日本(8月)、そして世界のコンテストで入賞

17 澤 穂希さんも参加、「バイエル カラダのミカタ   高校生シンポジウム」を開催

21 今日マチ子さんの描き下ろしWEB妊活漫画 「エレビット ®」ブランドサイトで連載開始

2018

1月 January

21 助成プログラム「第4回Grants4Apps Tokyo」の    最優秀賞が決定 

2月 February

1 動物病院専用犬猫用スキンケアシャンプー 「ヒノケア ® forプロフェッショナルズ」新発売

9 新規作用機構を有する殺線虫剤 「ビーラム™粒剤」を販売開始

26 かんしょ専用の新アドマイヤー粒剤 「アドマイヤー ®イーモ粒剤」を販売開始

新製品から各部門の活動、グローバル情報までバイエルの最新情報をダイジェストでお届けします。詳しい内容は、『HARMONY』の WEB サイト(ht tp ://harmony.bayer. jp)でご紹介しています。

BAYER TOPICSバイエル通信 Pharma-

ceuticalCrop

ScienceGlobalAnimal

HealthEventConsumer

Health

日本バイエル代表交代のお知らせ

日本バイエル代表ハンスディーター・ハウスナーは、約 40年にわたる勤務を経て、2018年 7月 31日付で定年退職の予定です。後任には、ドイツ・バイエル社コーポレートファンクション/戦略本部長であるトーマスペーター・ハウスナーが 2018年 8月 1日付で就任します。次号の『HARMONY』では、新任の日本バイエル代表をご紹介する予定です。

1 51 0 1 M a y 2 0 1 8

Page 9: 101「恥ずかしいこと」ではない 世界のマーケットで大きな成功をもたら している腟カンジダ治療薬「エンペシド」。しかし、日本で女性の手に取られることは

発行 日本のバイエル発行人 荻上敬子編集デスク 小原葉子 編集委員 松本陽一 髙島 健 山田亜希子

バイエル ホールディング株式会社 広報本部〒100-8268 東京都千代田区丸の内1-6-5  編集部 TEL: 03-6266-7255 FAX: 03-5219-9705

制作協力 株式会社ハースト婦人画報社表紙写真 ゲッティ イメージズ創刊 1986年1月

PUBLICATION BAYER IN JAPAN

PUBLISHER KEIKO OGIUE

MANAGING EDITOR YOKO OHARA

EDITORIAL BOARD YOICHI MATSUMOTO KEN TAKASHIMA  AKIKO YAMADA 

BAYER HOLDING LTD. COMMUNICATIONS

1-6-5 MARUNOUCHI, CHIYODA-KU, TOKYO 100-8268   EDITORIAL DEPARTMENT TEL: 03-6266-7255 FAX: 03-5219-9705

PRODUCTION COOPERATION HEARST FUJINGAHO CO., LTD.

COVER PHOTOS GETTY IMAGES

FIRST ISSUE PUBLISHED JANUARY 1986

転載転写ご希望の際は、必ず発行人までご連絡ください。

w w w.bayer. jp

N o. 1 0 1 M a y 2 0 1 8

C O N T E N T S

F E AT U R E 3 » P.1 0Bayer's New Look進化するブランドとバイエルクロス

F E AT U R E 1 » P. 2Empowering Women健康を望むすべての女性に寄り添い、その力になる

F E AT U R E 2 » P. 8The BCS Cowdition Appデジタル酪農の進化

R E P O RT » P.1 4 Happy Share Project ハッピーシェア プロジェクト

F E AT U R E 4 » P.1 2For the Future of Young Generations未来を変える若き力を応援

ONLINE “ HARMONY” NEWS

『HARMONY』のWEBサイトでは、オンライン限定コンテンツも発信しています

誌面で紹介した記事に加え、特別インタビューやムービーなどオンライン限定コンテンツもお楽しみ

いただけます。また日本のパラスポーツ支援の一環として、今年からバイエル社員となった国内トッ

プクラスのアスリート2人の活躍を紹介するコンテンツもスタート。ぜひアクセスしてください。

http://harmony.bayer.jp

健康を望むすべての 女性に寄り添い、その力になる

No

. 101 M

ay 20

18 発

行:日本のバイエル 

ww

w.b

ayer.jp  L

.JP.CO

M.0

4.2

018

.128

9