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1 2008 2008年度後期 年度後期 経済学部講義 経済学部講義 国際農政論 国際農政論 (1 1) 1) オルタナティブ農業の展望① オルタナティブ農業の展望① フェアトレードの可能性と課題 フェアトレードの可能性と課題~ 200 2009.1.13 .1.13 S.Hisano .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 , Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 はじめに はじめに 今日のグローバル・フードシステムにおけるパラドクス 今日のグローバル・フードシステムにおけるパラドクス 多くの消費者が、迅速・安価・簡便な食品を提供するメインストリー 多くの消費者が、迅速・安価・簡便な食品を提供するメインストリー ムのフードシステム(寡占化を強めるスーパーマーケットや外食 ムのフードシステム(寡占化を強めるスーパーマーケットや外食 チェーン)の恩恵を受けている一方で、 チェーン)の恩恵を受けている一方で、 そうした食品が生産され流通している社会的諸条件(農業生産者、 そうした食品が生産され流通している社会的諸条件(農業生産者、 とくに途上国の生産者が置かれている状況、農業生産が環境に及 とくに途上国の生産者が置かれている状況、農業生産が環境に及 ぼす影響、加工・流通の現場で働く労働者が置かれている状況な ぼす影響、加工・流通の現場で働く労働者が置かれている状況な ど)への関心を高めている。 ど)への関心を高めている。 グローバルに展開するアグロフードシステムの主要なアクターであ グローバルに展開するアグロフードシステムの主要なアクターであ る多国籍企業は、そうした社会的関心の高まりを受けて、何らかの る多国籍企業は、そうした社会的関心の高まりを受けて、何らかの 対応を迫られている。 対応を迫られている。 Î 倫理的調達( 倫理的調達(Ethical Sourcing Ethical Sourcing)= )=Fair trade Fair tradeEthical trade Ethical trade

(11) オルタナティブ農業の展望①hisano/documents/agpolicy2008_11.pdf1 2008年度後期経済学部講義国際農政論 (11) オルタナティブ農業の展望① ~フェアトレードの可能性と課題~

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20082008年度後期年度後期 経済学部講義経済学部講義 国際農政論国際農政論

((111) 1) オルタナティブ農業の展望①オルタナティブ農業の展望①

~~フェアトレードの可能性と課題フェアトレードの可能性と課題~~

20020099.1.13.1.13

SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

はじめにはじめに

今日のグローバル・フードシステムにおけるパラドクス今日のグローバル・フードシステムにおけるパラドクス

多くの消費者が、迅速・安価・簡便な食品を提供するメインストリー多くの消費者が、迅速・安価・簡便な食品を提供するメインストリームのフードシステム(寡占化を強めるスーパーマーケットや外食ムのフードシステム(寡占化を強めるスーパーマーケットや外食チェーン)の恩恵を受けている一方で、チェーン)の恩恵を受けている一方で、

そうした食品が生産され流通している社会的諸条件(農業生産者、そうした食品が生産され流通している社会的諸条件(農業生産者、とくに途上国の生産者が置かれている状況、農業生産が環境に及とくに途上国の生産者が置かれている状況、農業生産が環境に及ぼす影響、加工・流通の現場で働く労働者が置かれている状況なぼす影響、加工・流通の現場で働く労働者が置かれている状況など)への関心を高めている。ど)への関心を高めている。

グローバルに展開するアグロフードシステムの主要なアクターであグローバルに展開するアグロフードシステムの主要なアクターである多国籍企業は、そうした社会的関心の高まりを受けて、何らかのる多国籍企業は、そうした社会的関心の高まりを受けて、何らかの対応を迫られている。対応を迫られている。

倫理的調達(倫理的調達(Ethical SourcingEthical Sourcing)=)=Fair tradeFair trade//Ethical tradeEthical trade

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フェアトレードとはフェアトレードとは

一般的な理念一般的な理念

主流(現状)の貿易形態、すなわち経済至上主義的開発/市場主主流(現状)の貿易形態、すなわち経済至上主義的開発/市場主義的自由貿易への対置義的自由貿易への対置

公平・公正な交易を通じて、とくに熱帯一次産品の輸出に依存す公平・公正な交易を通じて、とくに熱帯一次産品の輸出に依存する生産者の社会的自立と環境負荷の軽減を目指すとともに、企業る生産者の社会的自立と環境負荷の軽減を目指すとともに、企業の社会的責任や消費のあり方までも視野に入れた取り組みの社会的責任や消費のあり方までも視野に入れた取り組み

社会的関係性社会的関係性

環境的多様性環境的多様性

持続可能性持続可能性

SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

フェアトレードとはフェアトレードとは

さまざまな定義さまざまな定義

小農民:民主的・参加型の協同組合小農民:民主的・参加型の協同組合oror組織に組織に

加盟/労働者:賃金水準、労働組合加入権、加盟/労働者:賃金水準、労働組合加入権、良好な住居/取引業者:価格プレミアム、前良好な住居/取引業者:価格プレミアム、前払い、長期計画的契約払い、長期計画的契約

小農民および小農民およびプランテーショプランテーション労働者の生ン労働者の生活向上活向上

Fairtrade Fairtrade Foundation Foundation (UK)(UK)

民主的運営、再生産保証の最低価格、前払民主的運営、再生産保証の最低価格、前払いまたは融資機会、長期安定契約などいまたは融資機会、長期安定契約など

FLOFLO

情報公開、全関与者の主体的力量の向上、情報公開、全関与者の主体的力量の向上、公正価格設定、女性の地位向上、生産者労公正価格設定、女性の地位向上、生産者労働環境の向上、環境負荷の少ない生産など働環境の向上、環境負荷の少ない生産など

南の貧困軽減南の貧困軽減IFATIFAT

南の生産者:意思決定過程への参加、生産南の生産者:意思決定過程への参加、生産者組合の強化/北の消費者:中間業者の排者組合の強化/北の消費者:中間業者の排除、公正な価格の支払い(一部前払い)除、公正な価格の支払い(一部前払い)

生産者-消費生産者-消費者チェーンの者チェーンの短縮短縮

EFTAEFTA定義・条件定義・条件目的目的組織名組織名

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フェアトレードとはフェアトレードとは

FINEFINE(国際フェアトレード団体の連合体)の定義(国際フェアトレード団体の連合体)の定義

Fair trade is a Fair trade is a trading partnershiptrading partnership, based on dialogue, , based on dialogue, transparency and respect that seeks transparency and respect that seeks greater equitygreater equity in in international trade. international trade. It contributes to It contributes to sustainable developmentsustainable development by offering better by offering better trading conditions to, and securing the rights of, trading conditions to, and securing the rights of, marginalized marginalized producers and workersproducers and workers –– especially in the South. especially in the South. Fair trade organizations (backed by consumers) are Fair trade organizations (backed by consumers) are engaged engaged activelyactively in supporting producers, awareness raising and in in supporting producers, awareness raising and in campaigning for campaigning for changes in the rules and practice of changes in the rules and practice of conventional international tradeconventional international trade..

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フェアトレードの歴史フェアトレードの歴史

形成期(形成期(19401940年代~年代~19601960年代)年代)

当初は宗教団体や慈善団体が中心となって途上国における自助当初は宗教団体や慈善団体が中心となって途上国における自助努力の支援に力点努力の支援に力点 途上国からの製品輸入が主要形態に途上国からの製品輸入が主要形態に

19461946=米国=米国 Ten Thousand VillagesTen Thousand Villages、、SERRVSERRV19641964=英国=英国 OxfamOxfam設立設立

19619677=オランダ=オランダ Fair Trade Fair Trade OrganisatieOrganisatie設立設立

19681968==UNCTADUNCTAD第第22回会合で「援助よりも貿易を」回会合で「援助よりも貿易を」

19691969=オランダ=オランダ Third World ShopThird World Shop設立設立

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フェアトレードの歴史フェアトレードの歴史

発展期(発展期(19701970年代~年代~19801980年代)年代)

女性の自立や自由貿易批判といった理念を掲げる社会的連帯運女性の自立や自由貿易批判といった理念を掲げる社会的連帯運動が合流動が合流

総じて、途上国生産者との顔の見える提携を重視していたという総じて、途上国生産者との顔の見える提携を重視していたという意味で、「提携型」フェアトレードが模索された時期意味で、「提携型」フェアトレードが模索された時期

19731973=オランダ=オランダ FTOFTOが工芸品に加えてコーヒーの輸入を開始が工芸品に加えてコーヒーの輸入を開始

19851985=英国=英国 TWINTWIN(第三世界情報ネットワーク)設立(第三世界情報ネットワーク)設立

19861986=日本=日本 ネグロスキャンペーン委員会+オルタートレード社ネグロスキャンペーン委員会+オルタートレード社

19881988=イタリア=イタリア CTMCTM(第三世界協同組合)設立(第三世界協同組合)設立

19881988=米国=米国 Global ExchangeGlobal Exchange設立設立

19911991=日本=日本 グローバル・ビレッジ設立グローバル・ビレッジ設立

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フェアトレードの歴史フェアトレードの歴史

市場拡大・前期(市場拡大・前期(19801980年代末~年代末~19901990年代)年代)

個別に活動していたフェアトレード組織のネットワーク化と認証ラベ個別に活動していたフェアトレード組織のネットワーク化と認証ラベルの導入ルの導入

フェアトレード商品の市場拡大が志向されたという意味で、「ラベルフェアトレード商品の市場拡大が志向されたという意味で、「ラベル型・市場メカニズム利用型」フェアトレードの時期型・市場メカニズム利用型」フェアトレードの時期

19881988=オランダ=オランダ MaxMax HavelaarHavelaarマークの発行マークの発行

19891989==IFATIFAT(国際オルタナティブトレード連盟)結成(国際オルタナティブトレード連盟)結成

19901990==EFTAEFTA(ヨーロッパ・フェアトレード連合)結成(ヨーロッパ・フェアトレード連合)結成

19931993=日本=日本 トランスフェア・ジャパン(トランスフェア・ジャパン(TFJTFJ)設立)設立 20042004に改名に改名

19941994==NEWSNEWS(第三世界ショップ・ネットワーク)結成(第三世界ショップ・ネットワーク)結成

19941994=米国=米国 Fair Trade FederationFair Trade Federation設立設立

19971997==FLOFLO(国際フェアトレード・ラベリング機構)設立(国際フェアトレード・ラベリング機構)設立

19981998=米国=米国 TransfairTransfair USAUSA設立設立

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フェアトレードの歴史フェアトレードの歴史

市場拡大・後期(市場拡大・後期(20002000年~)年~)

各国で順調にフェアトレード商品の市場拡大が進む各国で順調にフェアトレード商品の市場拡大が進む一方、多国籍アグリビジネスが参入一方、多国籍アグリビジネスが参入

20002000==StarbucksStarbucksががFTFTコーヒーの販売開始コーヒーの販売開始

20032003==McDonaldMcDonald’’s Swisss SwissががFTFTコーヒーの採用開始コーヒーの採用開始

20032003==DunkinDunkin’’s Donutss DonutsががFTFTコーヒーの採用開始コーヒーの採用開始

20042004=イオン・グループが=イオン・グループがFTFTコーヒー(トップバリュー)の販売開始コーヒー(トップバリュー)の販売開始

20052005==CostcoCostcoががFTFTコーヒーの販売開始コーヒーの販売開始

20052005==McDonaldMcDonald’’s s 米国北東部で米国北東部でFTFTコーヒー採用コーヒー採用

20052005==ChiquitaChiquitaのバナナ(ホンジュラス)に認証取のバナナ(ホンジュラス)に認証取

得の計画持ち上がる得の計画持ち上がる 台風でプランテーション破壊台風でプランテーション破壊

されたため頓挫されたため頓挫

20052005==NestlNestlééががNestcafNestcaféé PartnersPartners’’ BlendBlendのの販売を発表販売を発表

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フェアトレードの歴史フェアトレードの歴史

転換期(現在)転換期(現在)

多国籍企業の参入を受け、フェアトレード認証のあり方をめぐって多国籍企業の参入を受け、フェアトレード認証のあり方をめぐって大きな転換期に大きな転換期に

20042004==IFATIFATががFair Trade OrganizationFair Trade Organizationマークを導入マークを導入

20042004==TWINTWIN設立設立2020周年の公開討論会で「岐路に立つ周年の公開討論会で「岐路に立つ

フェアトレード:どの道へ進むのか」を議論フェアトレード:どの道へ進むのか」を議論

EUEUの域内政策への反映の域内政策への反映

20062006=欧州議会が「フェアトレードと開発」に関する決議採択=欧州議会が「フェアトレードと開発」に関する決議採択

持続的発展や企業の社会的責任の観点から公共政策の中心に持続的発展や企業の社会的責任の観点から公共政策の中心に

社会的・環境的・資源管理的な認証基準の統一化社会的・環境的・資源管理的な認証基準の統一化

19991999==ISEALISEAL((International Social and Environmental International Social and Environmental Accreditation and Accreditation and LabellingLabelling)連合の結成)連合の結成

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フェアトレードの到達点フェアトレードの到達点

FLOFLO((Fairtrade Fairtrade LabellingLabelling Organizations InternationalOrganizations International))Fairtrade Certification Fairtrade Certification MMarkarkを認証する国際統括組織を認証する国際統括組織

2200の認証団体との認証団体と33つの生産者ネットワークで構成つの生産者ネットワークで構成

20072007年までに、年までに、5858ヵ国のヵ国の632632生産者団体(約生産者団体(約115050万の農民および万の農民および労働者労働者 波及効果は波及効果は750750万人万人)を認定)を認定

認証を交付された組織=認証を交付された組織=20052005年年11,,483483(( 前年前年11,,151151、、++29%29%))米国米国534534、英国、英国193193、カナダ、カナダ160160、フランス、フランス106106、ドイツ、ドイツ8787、、、、、、日本日本2424

販売価格=販売価格=20020077年年2323..88億億€€(( 0606年年16.216.2 0505年年11.411.4 0404年年8.38.3億億€€))米国米国7.37.3億、英国億、英国7.07.0億、スイス億、スイス1.61.6億、フランス億、フランス2.12.1億、ドイツ億、ドイツ1.41.4億億、、、、、、日本日本626200万万

販売量(販売量(20020077年年 20022002年年))コーヒーコーヒー 3.93.9倍倍バナナバナナ 6.46.4倍倍紅茶紅茶 4.34.3倍倍カカオカカオ 4.44.4倍倍

SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

フェアトレードの到達点フェアトレードの到達点

IFATIFAT((International Fair Trade AssociationInternational Fair Trade Association))Fair Trade Organization MarkFair Trade Organization Markを認証を認証

329329(途上国(途上国205205、先進国、先進国124124)組織を認定()組織を認定(OxfamOxfam、、Third World Third World ShopsShops、、CafCaféédirectdirect、、PeopleTreePeopleTree、、Pesticide Action NetworkPesticide Action Network等)等)

20052005年年246246組織(組織(162162、、8484)) 20002000年年149149組織(組織(8888、、6161)) 19951995年年8787組織(組織(3838、、4949)) 19891989年年3636組織(組織(00、、3636))地域別にグループ化(アフリカ地域別にグループ化(アフリカCOFTACOFTA、アジア、アジアAFTFAFTF、ラテンアメリカ、ラテンアメリカIFATIFAT--LALA、北米・太平洋、欧州、中東)、北米・太平洋、欧州、中東)

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フェアトレードの到達点フェアトレードの到達点

EFTAEFTA((European Fair Trade AssociationEuropean Fair Trade Association))欧州欧州99ヵ国のフェアトレード(輸入・販売)ヵ国のフェアトレード(輸入・販売)1111団体で構成団体で構成

加盟組織=加盟組織=約約200200(( 20002000年年9797))基本的に基本的にFLOFLO認証商品を扱っている認証商品を扱っている

途上国の供給元組織=途上国の供給元組織=約約370370(うち食品(うち食品180180))販売額=販売額=20020044年年2.02.0億億€€ 20020033年年1.91.9億億€€ 20022002年年1.71.7億億€€

NEWS!NEWS!((Network of European Network of European WorldshopsWorldshops))欧州欧州1313ヵ国の約ヵ国の約2,5002,500店舗店舗ののWorld ShopsWorld Shopsで構成される関連で構成される関連1515団体の連合体団体の連合体

運動団体(運動団体(advocacy/campaignadvocacy/campaign)としても活動)としても活動

2004~072004~07年はカカオとサッカーボールをめぐる児童労働問題年はカカオとサッカーボールをめぐる児童労働問題

FINEFINE(以上の国際4団体の連絡組織)(以上の国際4団体の連絡組織)・・・・・・19981998年~年~

SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

フェアトレードの到達点フェアトレードの到達点

FTFFTF((Fair Trade FederationFair Trade Federation)・・・北米の連合体)・・・北米の連合体

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フェアトレード認証のしくみフェアトレード認証のしくみ

認証ラベルの導入認証ラベルの導入

提携型フェアトレード提携型フェアトレード

生産者と消費者の対等な関係、人間的な結びつきまでを追求生産者と消費者の対等な関係、人間的な結びつきまでを追求

価値観を共有できる限定された消費者への販売を重視するため、限価値観を共有できる限定された消費者への販売を重視するため、限定性、閉鎖性を免れえない定性、閉鎖性を免れえない

ATJATJ(オルタートレードジャパン)・・・「民衆交易」(オルタートレードジャパン)・・・「民衆交易」

認証型フェアトレード認証型フェアトレード

多数の消費者への販売を通じた「公正な貿易」の拡大を追求多数の消費者への販売を通じた「公正な貿易」の拡大を追求

市場メカニズムを利用するため、一般商品との差別化を図る必要か市場メカニズムを利用するため、一般商品との差別化を図る必要から認証ラベルを導入ら認証ラベルを導入

19891989年=オランダ年=オランダ Max Max HavelaarHavelaar19971997年=年=1717ヵ国のフェアトレード組織がヵ国のフェアトレード組織がFLOFLOを結成、国際的に統一を結成、国際的に統一

された認証ラベルを発行された認証ラベルを発行

SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

フェアトレード認証のしくみフェアトレード認証のしくみ

フェアトレード基準(フェアトレード基準(FLOFLO))

生産者からの買取価格生産者からの買取価格

最低価格(例=コーヒー:約最低価格(例=コーヒー:約300300円円//kg kg 市場価格約市場価格約140140円円kgkg))報奨金(例=紅茶:報奨金(例=紅茶:110110円円/kg/kg、サッカーボール:輸出業者買取価格、サッカーボール:輸出業者買取価格のの15%15%))

生産者の社会的な発展生産者の社会的な発展

生産者組合が透明性のある、民主的な活動をしていること生産者組合が透明性のある、民主的な活動をしていること

収益の一部が生産者組合の社会発展事業のために使われているこ収益の一部が生産者組合の社会発展事業のために使われていること(例=学校建設や水道設備など)と(例=学校建設や水道設備など)

生産者の経済的な発展生産者の経済的な発展

生産物が輸出品質基準を満たしていること生産物が輸出品質基準を満たしていること

収益の一部が経済発展活動(設備投資等)に運用されていること収益の一部が経済発展活動(設備投資等)に運用されていること

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フェアトレード認証のしくみフェアトレード認証のしくみ

生産者の労働環境と労働条件生産者の労働環境と労働条件

ILOILOに準拠した安全な労働環境が守られていることに準拠した安全な労働環境が守られていること

強制労働・児童労働の禁止が守られていること強制労働・児童労働の禁止が守られていること

労働者の団結権・団体交渉権が守られていること労働者の団結権・団体交渉権が守られていること

生産地の環境保全生産地の環境保全

薬品使用制限、水質保全、森林保全、土壌保全、廃棄物処理等に薬品使用制限、水質保全、森林保全、土壌保全、廃棄物処理等について国際規約を遵守していることついて国際規約を遵守していること

SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

フェアトレード認証のしくみフェアトレード認証のしくみ

認証の手順認証の手順

生産から販売に至るすべての当事者を登録生産から販売に至るすべての当事者を登録

認証団体(認証団体(FLOFLO等)と国レベルの組織(フェアトレード・ラベル・ジャ等)と国レベルの組織(フェアトレード・ラベル・ジャ

パン等)が、フェアトレード基準の遵守状況を監査パン等)が、フェアトレード基準の遵守状況を監査

生産者団体・・・監査で確認を受け、認定生産者団体に登録生産者団体・・・監査で確認を受け、認定生産者団体に登録 定期定期的(原則として年的(原則として年11回)に査察を受ける回)に査察を受ける

輸出業者・・・取引価格等の基準の遵守輸出業者・・・取引価格等の基準の遵守 取引実績を報告取引実績を報告 生産者生産者

団体からの報告、輸入・販売業者からの報告と照合団体からの報告、輸入・販売業者からの報告と照合

輸入・販売業者・・・取引価格等の基準の遵守輸入・販売業者・・・取引価格等の基準の遵守 販売実績を報告し監販売実績を報告し監査を受ける査を受ける ラベル使用料を国レベル組織に支払うラベル使用料を国レベル組織に支払う

国レベル組織・・・ラベル使用料を人件費等の運営費に充当国レベル組織・・・ラベル使用料を人件費等の運営費に充当 収入収入

に応じて国際組織に拠出金を支払うに応じて国際組織に拠出金を支払う

国際組織・・・認証機関の基準(国際組織・・・認証機関の基準(ISO65ISO65)に従い、国レベルの組織から)に従い、国レベルの組織から

の拠出金と政府・財団等からの補助金で運営の拠出金と政府・財団等からの補助金で運営

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SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

フェアトレード認証のしくみフェアトレード認証のしくみ

認証ラベルの利点認証ラベルの利点

一般の小売店や外食チェーンで販売されるため市場が拡大一般の小売店や外食チェーンで販売されるため市場が拡大

市場拡大により、より多くの生産者が参加できる市場拡大により、より多くの生産者が参加できる

生産者は認定生産者リストに登録されることで、一つの取引先に生産者は認定生産者リストに登録されることで、一つの取引先に依存しない安定した経営が可能になる依存しない安定した経営が可能になる

消費者はラベルの保証により、安心して商品を購入できる消費者はラベルの保証により、安心して商品を購入できる

スーパーなど身近に目にすることで、一般消費者への啓発を促スーパーなど身近に目にすることで、一般消費者への啓発を促進するとともに、実際に購入アクセスが良くなる進するとともに、実際に購入アクセスが良くなる

例えば、例えば、

生産者団体・・・生産者団体・・・AALAAALA諸国諸国4040ヵ国のヵ国の276276団体、約団体、約8080万世帯万世帯

英国・・・コーヒーの英国・・・コーヒーの14%14%スイス・・・バナナのスイス・・・バナナの25%25%

フェアトレードのフェアトレードの「「メインストリーム化メインストリーム化」」

SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

フェアトレード認証の課題フェアトレード認証の課題

フェアトレードの評価フェアトレードの評価(辻村英之)(辻村英之)

センの不正義論からの評価センの不正義論からの評価

「不正であるような具体的な諸事象を一つ一つ確定しながら、それら「不正であるような具体的な諸事象を一つ一つ確定しながら、それら

を除去するための具体的ルールを積み重ねていこうとするもの」(鈴を除去するための具体的ルールを積み重ねていこうとするもの」(鈴村興太郎・後藤玲子)村興太郎・後藤玲子)

現実のコーヒー価格形成における不公正さをフードシステム分析を現実のコーヒー価格形成における不公正さをフードシステム分析を通じて解明し、フェアトレードによる価格形成がそれを除去・回避でき通じて解明し、フェアトレードによる価格形成がそれを除去・回避できるか否かで、その具体的な意義と課題を導出るか否かで、その具体的な意義と課題を導出

辻村の結論辻村の結論

「このフェアトレードの評価の相対的基準となる、従来の貿易の不正「このフェアトレードの評価の相対的基準となる、従来の貿易の不正義・不公正さについての理解が、・・・認証型フェアトレードに欠けてい義・不公正さについての理解が、・・・認証型フェアトレードに欠けてい

ると感じることが多い」ると感じることが多い」

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フェアトレード認証の課題フェアトレード認証の課題

最低輸出価格の設定について最低輸出価格の設定について

意義意義

NYNY先物市場(アラビカ種)ないしロンドン先物市場(ロブスタ種)先物市場(アラビカ種)ないしロンドン先物市場(ロブスタ種)

先物価格の低迷時先物価格の低迷時 フェアトレードでは、生産コストを差し引いてもフェアトレードでは、生産コストを差し引いても生産者に利益が残る水準に最低輸出価格(生産者に利益が残る水準に最低輸出価格( 生産者価格)を固定生産者価格)を固定

※※中米・アフリカ水洗式アラビカ種=約中米・アフリカ水洗式アラビカ種=約121121~125~125セントセント//lblb

同様の基準から貿易価格の安定帯を定めた、国際コーヒー協定の同様の基準から貿易価格の安定帯を定めた、国際コーヒー協定の輸出割当制(停止)が再興する可能性が低い以上、フェアトレードの輸出割当制(停止)が再興する可能性が低い以上、フェアトレードの「最低輸出価格の設定」はその後継として大きな意義「最低輸出価格の設定」はその後継として大きな意義

課題課題

輸出割当制度をカバーするには、現在の低普及率では限界輸出割当制度をカバーするには、現在の低普及率では限界

最低輸出価格は最低限の支払義務とすべきであり、国や地域で異最低輸出価格は最低限の支払義務とすべきであり、国や地域で異なる生産者の具体的な必要性(生産費と生活費)を、自ら積み上げなる生産者の具体的な必要性(生産費と生活費)を、自ら積み上げて決定できる価格形成の仕組みが必要て決定できる価格形成の仕組みが必要

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フェアトレード認証の課題フェアトレード認証の課題

フェアトレード・プレミアム(報奨金)の還元フェアトレード・プレミアム(報奨金)の還元意義意義

消費地における販売利益の一部を、生産地における社会開発プロ消費地における販売利益の一部を、生産地における社会開発プロジェクト等の経費として還元(実際には輸出価格に上乗せ)ジェクト等の経費として還元(実際には輸出価格に上乗せ)

生産者価格と消費者価格の格差拡大を改善生産者価格と消費者価格の格差拡大を改善※※中米・アフリカ水洗式アラビカ種=約中米・アフリカ水洗式アラビカ種=約5~105~10セントセント//lblb19981998年度タンザニア産キリマンジャロ(ドル年度タンザニア産キリマンジャロ(ドル/kg/kg)・・・生産者価格)・・・生産者価格1.61.6((=1=1))対日平均輸出価格対日平均輸出価格3.33.3((2.12.1倍)倍) 輸入価格輸入価格4.04.0((454454円、円、2.52.5倍)倍) 袋入焙袋入焙煎豆価格煎豆価格33.733.7((767767円円/200g/200g、、20.820.8倍)倍) 喫茶店コーヒー価格喫茶店コーヒー価格367.7367.7((419419円円//杯、杯、227.0227.0倍)倍)

800800円円/200g/200gの焙煎豆の焙煎豆 38.538.5円が生産者、円が生産者、79.079.0円が生産国円が生産国

11杯杯450450円のコーヒー円のコーヒー 2.02.0円が生産者、円が生産者、4.14.1円が生産国円が生産国

具体的な生産者支援の内容を、消費者に伝えやすい具体的な生産者支援の内容を、消費者に伝えやすい

課題課題このプレミアムが生産地でいかに利用されたかについて、このプレミアムが生産地でいかに利用されたかについて、FLOFLO等の認等の認証団体は消費者に十分に伝えられていない(監査も十分になされてい証団体は消費者に十分に伝えられていない(監査も十分になされていない)という現実ない)という現実

逆に、認証を受けていない提携型フェアトレードで数々の実績(後述)逆に、認証を受けていない提携型フェアトレードで数々の実績(後述)

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フェアトレード認証の課題フェアトレード認証の課題

多国籍企業による生産者からの買い叩きを回避・緩和す多国籍企業による生産者からの買い叩きを回避・緩和することはできるのか?ることはできるのか?

意義意義

社会的責任格付投資(社会的責任格付投資(SRISRI)システムが整備され、ソーシャル・マー)システムが整備され、ソーシャル・マー

ケティングの一環として大手企業に受け入れられれば、「市場取引ケティングの一環として大手企業に受け入れられれば、「市場取引の公正化」が点の公正化」が点 線線 面へと面へと進む可能性進む可能性

課題課題

企業によるフェアトレードは、ソーシャル・マーケティングが目的で企業によるフェアトレードは、ソーシャル・マーケティングが目的であっても、事業継続のために相当量の販売を条件とするあっても、事業継続のために相当量の販売を条件とする

フェアトレード商品の価格競争力を謳うケースも(イオンフェアトレード商品の価格競争力を謳うケースも(イオンGG))

生産者支援を目的とし、販売・利益より生産者との連帯・交流を重視生産者支援を目的とし、販売・利益より生産者との連帯・交流を重視

する提携型フェアトレードの事業と理念・行動が大きく異なるする提携型フェアトレードの事業と理念・行動が大きく異なる

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フェアトレード認証の課題フェアトレード認証の課題

フェアトレード製品の「新しい質」と「新しい消費者」フェアトレード製品の「新しい質」と「新しい消費者」

フェアトレードの理念に照らした評価の基準フェアトレードの理念に照らした評価の基準

慈善かビジネスか?慈善かビジネスか?

規模が限定的・閉鎖的か市場拡大的か?規模が限定的・閉鎖的か市場拡大的か?

生産者・生産国の経済的・社会的条件が改善されたか?生産者・生産国の経済的・社会的条件が改善されたか?

消費者をはじめとする各主体がフェアトレード商品の「品質」を理解・認消費者をはじめとする各主体がフェアトレード商品の「品質」を理解・認

識できるか?識できるか?

製品を差別化する「高い品質」製品を差別化する「高い品質」

製品志向の品質・・・香味等の官能面や栄養面(物質的使用価値)製品志向の品質・・・香味等の官能面や栄養面(物質的使用価値)

プロセス志向の品質・・・有機、トレーサビリティプロセス志向の品質・・・有機、トレーサビリティ

消費者志向の品質・・・消費者の価値観やライフスタイルに対応消費者志向の品質・・・消費者の価値観やライフスタイルに対応

社会的貢献志向の品質・・・生産者の経済的・社会的支援社会的貢献志向の品質・・・生産者の経済的・社会的支援 フェアトフェアト

レードが目指すもの(社会的使用価値)レードが目指すもの(社会的使用価値)

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フェアトレードの具体的事例フェアトレードの具体的事例

東ティモール(アイナロ県マウベシ郡)東ティモール(アイナロ県マウベシ郡)アジア太平洋センターアジア太平洋センターPARCPARC+オルタートレード・ジャパン+オルタートレード・ジャパンATJATJ20022002年に独立、人口年に独立、人口8080万人のうち約万人のうち約2020万人がコーヒー生産に従事するも、万人がコーヒー生産に従事するも、多くの生産農家の収入は年多くの生産農家の収入は年200200ドル未満ドル未満

インドネシア支配下では軍高級官僚の私企業が独占販売、インドネシア支配下では軍高級官僚の私企業が独占販売、9494年には年にはUSAID/USAID/NCBANCBAの支援で生産者組合が組織され海外市場に出荷されたが、未処の支援で生産者組合が組織され海外市場に出荷されたが、未処理買付のため低生産者価格理買付のため低生産者価格

生産者組合の組織化・・・生産者組合の組織化・・・20032003年年3636世帯から世帯から200200世帯へ、さらに集落ごとに世帯へ、さらに集落ごとに小グループを組織小グループを組織 加工機材を提供、生豆前処理して日本に輸出加工機材を提供、生豆前処理して日本に輸出 収収入が入が22倍以上に倍以上に

売上代金の一部をグループで貯蓄、それを原資に収穫シーズンではない売上代金の一部をグループで貯蓄、それを原資に収穫シーズンではない雨期に野菜を栽培するなど農業多角化を促進雨期に野菜を栽培するなど農業多角化を促進

20052005年に年にNCBANCBAががStarbucksStarbucks向けにフェアトレード・コーヒーの提供を開始向けにフェアトレード・コーヒーの提供を開始価格高騰に翻弄価格高騰に翻弄 フェアトレードの脆さ、コーヒー依存からの脱却、フェアトレードの脆さ、コーヒー依存からの脱却、

「モノとモノの交易」に留まらない結びつきの重要性を認識「モノとモノの交易」に留まらない結びつきの重要性を認識

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フェアトレードの具体的事例フェアトレードの具体的事例

ラオス(チャンパサック州パクソン郡カトアット村)ラオス(チャンパサック州パクソン郡カトアット村)Oxfam AustraliaOxfam Australia+オルタートレード・ジャパン+オルタートレード・ジャパンATJATJ対象とする生産者は、対象とする生産者は、20012001年よりラオス政府のコーヒー試験場、普及年よりラオス政府のコーヒー試験場、普及センセンター及びター及びOxfamOxfamにより実施されている研修を受けにより実施されている研修を受け、高、高品質豆を生産するま品質豆を生産するまでになでになったったが、有機認証やフェアトレード認証がないため海外市場を探が、有機認証やフェアトレード認証がないため海外市場を探せせずず

ATJATJの東ティモールでの活動を知ったの東ティモールでの活動を知ったOxfamOxfamががATJATJに買付け可能性を打診に買付け可能性を打診ATJATJは、数度の現地調査を経は、数度の現地調査を経てて2002004/04/055年年産産より輸入を開始より輸入を開始

ラオスの生産者が海外の団体と直接契約し、生豆を輸出した初めての事ラオスの生産者が海外の団体と直接契約し、生豆を輸出した初めての事例例。。ATJATJは長期の買付けを保証、同時に倉庫・脱穀場建設を支援は長期の買付けを保証、同時に倉庫・脱穀場建設を支援

2004/052004/05年産は年産は101101名名 2005/062005/06年産は年産は5959名・・・名・・・4242名の脱落の背景に国名の脱落の背景に国際価格相場の改善際価格相場の改善

「長期買付契約による価格相場低下時のメリットを説明しても、日々の生活がか「長期買付契約による価格相場低下時のメリットを説明しても、日々の生活がかかっている生産者には理念でしかなかった・・・」かっている生産者には理念でしかなかった・・・」

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フェアトレードの具体的事例フェアトレードの具体的事例

エクアドル(インタグ地方フニン村)エクアドル(インタグ地方フニン村)AACRIAACRI(インタグ有機コーヒー生産者組合)+㈱ウインドファーム、(インタグ有機コーヒー生産者組合)+㈱ウインドファーム、ぐらぐらすするーるーつつ等等

エクアドル政府とエクアドル政府とJICAJICAの大規模銅山開発計画(の大規模銅山開発計画(19921992)に反対して「持続可)に反対して「持続可能な地域づくり」を目指した地域住民が、現地の環境保護団体能な地域づくり」を目指した地域住民が、現地の環境保護団体DECOINDECOINのの提案を受け、提案を受け、19981998年に無農薬コーヒー栽培を組織化、年に無農薬コーヒー栽培を組織化、350350名の会員生産名の会員生産者、輸出業務を含む販売・管理、生産技術指導など者、輸出業務を含む販売・管理、生産技術指導など 19991999年からウイン年からウインドファームが直接輸入ドファームが直接輸入

買値(輸出価格)は国際相場の買値(輸出価格)は国際相場の2~2~33倍だが、中間業者がまったく介在しな倍だが、中間業者がまったく介在しないので消費者販売価格はいので消費者販売価格は700700円円/200g/200g買取価格の半額を前払い買取価格の半額を前払い 苗購入など苗購入など

販売収益の販売収益の5%5%ををDECOINDECOINの活動資金(エコツアー+ホテル建設の活動資金(エコツアー+ホテル建設PP、小規、小規模水力発電模水力発電PP、植林、植林PP、環境教育、有機農業・アグロフォレストリーの推進、環境教育、有機農業・アグロフォレストリーの推進など)・・・但し政府による開発圧力は継続など)・・・但し政府による開発圧力は継続

SS.Hisano.Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008

フェアトレードの具体的事例フェアトレードの具体的事例

フィリピン(ネグロス島など)フィリピン(ネグロス島など)ネグロスキャンペーン委員会+オルタートレード・ジャパンネグロスキャンペーン委員会+オルタートレード・ジャパンATJATJネグロス島=世界的な砂糖産地、ネグロス島=世界的な砂糖産地、19801980年代の国際価格暴落で深刻な飢年代の国際価格暴落で深刻な飢饉饉 緊急援助終了後の緊急援助終了後の19871987年に民衆交易としてマスコバド糖の輸入を年に民衆交易としてマスコバド糖の輸入を柱とする運動の立ち上げ柱とする運動の立ち上げ

日本市場に出回っているバナナの大半は、ミンダナオ島で多国籍企業が日本市場に出回っているバナナの大半は、ミンダナオ島で多国籍企業が栽培・・・労働者の頭上から禁止農薬を空中散布;輸送途中のポストハー栽培・・・労働者の頭上から禁止農薬を空中散布;輸送途中のポストハーベスト農薬;プランテーション労働者の低賃金・長時間労働・・・こうした実ベスト農薬;プランテーション労働者の低賃金・長時間労働・・・こうした実態がしだいに明らかになったのも態がしだいに明らかになったのも19801980年代年代 ネグロス島の人々の自立ネグロス島の人々の自立支援と、安全なバナナを求める生協運動との出会い支援と、安全なバナナを求める生協運動との出会い 19891989年に無農薬年に無農薬バランゴン・バナナの輸入を開始バランゴン・バナナの輸入を開始

紆余曲折・・・台風被害、連作障害、品質不安定など紆余曲折・・・台風被害、連作障害、品質不安定など 産地の多角化と産地の多角化と環境循環型栽培、品質改善などを模索環境循環型栽培、品質改善などを模索