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のっぴき ならない 遊動: 間はなぜ創作するのか。本展覧会は、黒宮の素朴でありかつ根源的な問いを基に 形作られています。約10万年前にアフリカ大陸を出発した人類は、長い時をかけて 4万8000年前頃までに現在のアジア地域まで拡散しました。人類が遊動してゆく中で生ま れた祭祀や儀式といった活動が、現代に生きる私たちの創造と繋がっているとも考えられ ます。生存とは異なる次元で、表現することへの純粋な欲求を、私たち人類はもともと持 ち得ていたのではないでしょうか。 今回出展する3名の作家は、人間の「身体」についてそれぞれ異なるアプローチで活動し ています。黒宮は人間の輪郭を描きながらも、滲みや暈かしを用いることで、むしろ身体 そのものの存在を曖昧にしてゆく絵画表現を展開しています。シンメトリーの画面が宗教 的な要素を連想させると同時に、明滅する液晶画面上のイメージのようでもあり、観る者 の感覚を強かに揺さぶります。二藤は、自身が直接世界に触れることを軸とした、新たな 彫刻表現の可能性を追及しています。手触りや質量といった人や物質が存在することへ の問いが、一見ユーモラスに、かつ切実に私たちの目前に投げかけられます。自らの身体 を確固たる表現媒体とする若木は、世界各地のマラソンを走破することを実践の一つとし ています。その記録映像には、作家なのかアスリートなのかといった議論が最初から吹き 飛ぶような、祝祭性を帯びたしなやかな魅力があります。 彼らの創作に共通するのは、目の前の現実を各々の方法で咀嚼し、確かめようとする実 直な姿勢です。そしてそれは、かつて遊動を始めた過去の人類にとっても、同じことだった のかもしれません。この瞬間が、10万年前から続いている今日だということを改めて実感 する機会に、どうぞご期待ください。 京都芸術センターは今年度より、アーティストとの連携を強化して創作・発表の場を広げるべくKAC TRIAL PROJECT / Co-programを始動。昨年12月に、カテゴリーA「共同制作」 (公演事業) 、カテゴ リーB「共同開催」 (展覧会事業) 、カテゴリーC「共同実験」 (リサーチ、レクチャー、ワークショップ等) 、カテゴ リーD「KAC セレクション」 (舞台芸術の分野での発表に限定した支援) の4つの枠組みの中でプランを募集 しました。 カテゴリーB (展覧会事業) では、京都を拠点に活動する黒宮菜菜のプラン『のっぴきならない遊動-黒 宮菜菜・二藤建人・若木くるみ』を選定し、ギャラリー北・南そして和室「明倫」と場所を拡張しながら、 若手作家3名によるグループ展を行います。 黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ TOPIC 01 今までの人生で7回ほど引っ越しをしていますが、じっとしているのが苦手な自分は移動欲求が知らず知らず身体に残ってい るのかも…。 平野春菜 (アートコーディネーター) 『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』 会期:5月25日 (木) -7月2日 (日) 10:00-20:00 ※5月29日 (月) -31日 (水) は休館 会場:ギャラリー北・南、和室「明倫」 ※入場無料 企画:黒宮菜菜 主催:「のっぴきならない遊動」展実行委員会、京都芸術センター [関連企画] アーティスト・トーク 日時:5月25日 (木) 18:30-20:00 会場:ギャラリー北・南、和室「明倫」を巡回 集合:ギャラリー南 ※入場無料・事前申込不要 レセプション・パーティ 日時:5月25日 (木) 20:00-21:30 会場:フリースペース ※入場無料・事前申込不要 レクチャー「のっぴきならない探検家に聞きたい!」 日時:6月17日 (土) 14:00-15:30 会場:京都芸術センター内 登壇:関野吉晴 (探検家・医師・武蔵野美術大学教授) 料金:無料 (要事前申込) ※イベント情報 (P2) もご覧ください 黒宮菜菜《女性と浴槽》2016 黒宮菜菜 (くろみや なな) 1980年東京都生まれ、京都市在住。「滲み」や「暈かし」といった描 写痕跡を不鮮明にする絵画技法を用いて、身体の輪郭の曖昧さや 希薄さをテーマに絵を描く。油彩絵画の制作に加え、近年では、画 仙紙や水墨画用紙といった和紙素材にも着目し、染料を描画材とし ながら独特なマチエールを有した絵を制作する。主な展覧会に『黒 宮菜菜展 夜—朧げな際』 (京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都、 2016) 、『極並佑・黒宮菜菜・三好彩 展』 (渋谷ヒカリエ 8/CUBE 1,2,3、 東京、2012) 、『黒宮菜菜展-流彩の幻景-』 (INAXギャラリー2、東京、 2010) など。「京都市芸術新人賞」 (2017) 、「トーキョーワンダーウォー ル賞」 (2014) 二藤建人 (にとう けんと) 1986年埼玉県生まれ、同県在住。接触や運動の新たなバリエー ションを提案しながら、人類史上淘汰・忘却された事象の数々を意 識した「生」への思想的アプローチを作品化している。自身が一枚 布の雑巾となり、世界各地の街を拭き上げながら全身で都市を知 覚し、その身に蓄積させていく「雑巾男」シリーズや、他者の重みを 真下から両足で踏みしめる装置としての作品「誰かの重さを踏みし める」などがある。主な展覧会に『凍てつく雲のふわふわ』 (gallery N 神田社宅 、東京、2017) 、『NEW VISION SAITAMA Ⅴ 迫り出す身体』 (埼玉県立近代美術館、埼玉、2016) 、「あいちトリエンナーレ2016」 (岡 崎会場、愛知、2016) など。 二藤建人《私の愛は私の重さである。》2015 若木くるみ《耳なし芳ニ》2014 若木くるみ (わかき くるみ) 1985年北海道生まれ、京都市在住。後頭部を用いて他人のアイデ ンティティや物語を自分の身体に取り入れる作品を制作する。また、 強靭な身体と「走る」というシンプルな行為を用い、人間の可能性と コミュニケーションの可能性を拡大する活動を行う。主な走歴に「環 花東超級マラソン333km 女子優勝」 (台湾、2013) 、「スパルタスロ ン246km 日本人女子1位 世界女子9位」 (ギリシャ、2016) など。主 な展覧会に、『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展』 (アーツ千代田 3331、東京、2017) 、「轟」 (川崎市岡本太郎美術館、神奈川、2015) 、「さっ ぽろアートステージ2014」 (北海道、2014) 、『若木くるみの制作道場』 (坂本善三美術館、熊本、2013) など。主なパフォーマンスに「全刈りな のにハンガリーに行く」 (ハンガリー、2007) など。 05 May 2017 Vol.204 発行│京都芸術センター 2017 4 20 1

1703 KACNEWS1705 - 京都芸術センター...日時: 料金:4月29日(土・祝)14:00-15:30 会場: 学生前売2,000円/当日2,500円談話室 講師: (京都工芸繊維大学助教)多田羅景太

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Page 1: 1703 KACNEWS1705 - 京都芸術センター...日時: 料金:4月29日(土・祝)14:00-15:30 会場: 学生前売2,000円/当日2,500円談話室 講師: (京都工芸繊維大学助教)多田羅景太

のっぴきならない遊動:

人間はなぜ創作するのか。本展覧会は、黒宮の素朴でありかつ根源的な問いを基に

形作られています。約10万年前にアフリカ大陸を出発した人類は、長い時をかけて

4万8000年前頃までに現在のアジア地域まで拡散しました。人類が遊動してゆく中で生ま

れた祭祀や儀式といった活動が、現代に生きる私たちの創造と繋がっているとも考えられ

ます。生存とは異なる次元で、表現することへの純粋な欲求を、私たち人類はもともと持

ち得ていたのではないでしょうか。

今回出展する3名の作家は、人間の「身体」についてそれぞれ異なるアプローチで活動し

ています。黒宮は人間の輪郭を描きながらも、滲みや暈かしを用いることで、むしろ身体

そのものの存在を曖昧にしてゆく絵画表現を展開しています。シンメトリーの画面が宗教

的な要素を連想させると同時に、明滅する液晶画面上のイメージのようでもあり、観る者

の感覚を強かに揺さぶります。二藤は、自身が直接世界に触れることを軸とした、新たな

彫刻表現の可能性を追及しています。手触りや質量といった人や物質が存在することへ

の問いが、一見ユーモラスに、かつ切実に私たちの目前に投げかけられます。自らの身体

を確固たる表現媒体とする若木は、世界各地のマラソンを走破することを実践の一つとし

ています。その記録映像には、作家なのかアスリートなのかといった議論が最初から吹き

飛ぶような、祝祭性を帯びたしなやかな魅力があります。

彼らの創作に共通するのは、目の前の現実を各々の方法で咀嚼し、確かめようとする実

直な姿勢です。そしてそれは、かつて遊動を始めた過去の人類にとっても、同じことだった

のかもしれません。この瞬間が、10万年前から続いている今日だということを改めて実感

する機会に、どうぞご期待ください。

京都芸術センターは今年度より、アーティストとの連携を強化して創作・発表の場を広げるべくKAC TRIAL PROJECT / Co-programを始動。昨年12月に、カテゴリーA「共同制作」(公演事業)、カテゴリーB「共同開催」(展覧会事業)、カテゴリーC「共同実験」(リサーチ、レクチャー、ワークショップ等)、カテゴリーD「KAC セレクション」(舞台芸術の分野での発表に限定した支援)の4つの枠組みの中でプランを募集しました。カテゴリーB(展覧会事業)では、京都を拠点に活動する黒宮菜菜のプラン『のっぴきならない遊動-黒宮菜菜・二藤建人・若木くるみ』を選定し、ギャラリー北・南そして和室「明倫」と場所を拡張しながら、若手作家3名によるグループ展を行います。

黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ

TO P I C 01

今までの人生で7回ほど引っ越しをしていますが、じっとしているのが苦手な自分は移動欲求が知らず知らず身体に残っているのかも…。 平野春菜(アートコーディネーター)

『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』 会期: 5月25日(木)-7月2日(日)10:00-20:00 ※5月29日(月)-31日(水)は休館

会場: ギャラリー北・南、和室「明倫」 ※入場無料

企画: 黒宮菜菜 主催:「のっぴきならない遊動」展実行委員会、京都芸術センター [関連企画] アーティスト・トーク日時: 5月25日(木)18:30-20:00 会場:ギャラリー北・南、和室「明倫」を巡回集合: ギャラリー南 ※入場無料・事前申込不要

レセプション・パーティ日時: 5月25日(木)20:00-21:30 会場:フリースペース ※入場無料・事前申込不要

レクチャー「のっぴきならない探検家に聞きたい!」日時: 6月17日(土)14:00-15:30 会場:京都芸術センター内登壇:関野吉晴(探検家・医師・武蔵野美術大学教授) 料金:無料(要事前申込)

※イベント情報(P2)もご覧ください

黒宮菜菜《女性と浴槽》2016

黒宮菜菜 (くろみや なな)

1980年東京都生まれ、京都市在住。「滲み」や「暈かし」といった描

写痕跡を不鮮明にする絵画技法を用いて、身体の輪郭の曖昧さや

希薄さをテーマに絵を描く。油彩絵画の制作に加え、近年では、画

仙紙や水墨画用紙といった和紙素材にも着目し、染料を描画材とし

ながら独特なマチエールを有した絵を制作する。主な展覧会に『黒

宮菜菜展 夜—朧げな際』(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都、

2016)、『極並佑・黒宮菜菜・三好彩 展』(渋谷ヒカリエ 8/CUBE 1,2,3、

東京、2012)、『黒宮菜菜展-流彩の幻景-』(INAXギャラリー2、東京、

2010)など。「京都市芸術新人賞」(2017)、「トーキョーワンダーウォー

ル賞」(2014)。

二藤建人 (にとう けんと)

1986年埼玉県生まれ、同県在住。接触や運動の新たなバリエー

ションを提案しながら、人類史上淘汰・忘却された事象の数々を意

識した「生」への思想的アプローチを作品化している。自身が一枚

布の雑巾となり、世界各地の街を拭き上げながら全身で都市を知

覚し、その身に蓄積させていく「雑巾男」シリーズや、他者の重みを

真下から両足で踏みしめる装置としての作品「誰かの重さを踏みし

める」などがある。主な展覧会に『凍てつく雲のふわふわ』(gallery N

神田社宅 、東京、2017)、『NEW VISION SAITAMA Ⅴ 迫り出す身体』

(埼玉県立近代美術館、埼玉、2016)、「あいちトリエンナーレ2016」(岡

崎会場、愛知、2016)など。

二藤建人《私の愛は私の重さである。》2015

若木くるみ《耳なし芳ニ》2014

若木くるみ (わかき くるみ)

1985年北海道生まれ、京都市在住。後頭部を用いて他人のアイデ

ンティティや物語を自分の身体に取り入れる作品を制作する。また、

強靭な身体と「走る」というシンプルな行為を用い、人間の可能性と

コミュニケーションの可能性を拡大する活動を行う。主な走歴に「環

花東超級マラソン333km 女子優勝」(台湾、2013)、「スパルタスロ

ン246km 日本人女子1位 世界女子9位」(ギリシャ、2016)など。主

な展覧会に、『ソーシャリー・エンゲイジド・アート展』(アーツ千代田

3331、東京、2017)、「轟」(川崎市岡本太郎美術館、神奈川、2015)、「さっ

ぽろアートステージ2014」(北海道、2014)、『若木くるみの制作道場』

(坂本善三美術館、熊本、2013)など。主なパフォーマンスに「全刈りな

のにハンガリーに行く」(ハンガリー、2007)など。

05May 2017Vol.204発行│京都芸術センター2017 年 4 月 20 日

1

Page 2: 1703 KACNEWS1705 - 京都芸術センター...日時: 料金:4月29日(土・祝)14:00-15:30 会場: 学生前売2,000円/当日2,500円談話室 講師: (京都工芸繊維大学助教)多田羅景太

各種イベント申込方法 (別途記載のあるもの、共催事業、制作支援事業は除く)

催し名・住所・氏名・電話番号を添えて、ウェブサイト申込フォーム、TEL、FAXで事前にお申込ください。チケット窓口でも受け付けます。※ 印の公演は、京都芸術センター友の会のご招待券・ご優待割引対象公演です(制作支援事業は京都芸術センターチケット窓口取扱公演のみご優待。共催事業はご優待対象外) その他、友の会特典詳細についてはウェブサイトをご覧ください※各種年齢別・学生料金は要証明書呈示

美術

『Lリーン

EAN Iイシューズ

SSUES』日本とデンマークの国交樹立150周年を記念し開催する、デンマークを拠点に活躍するアーティスト10組による展覧会。会期: 4月15日(土)-5月14日(日)

10:00-20:00 ※会期中無休・入場無料会場: ギャラリー北・南、和室「明倫」ほか出品作家:ぺルニレ・カッペル・ウィリアムズ、

マッズ・リンドベリ、バンク アンド ロウ、トルベン・リベ、トゥミ・マグヌッソン、ヤコブ・キルケゴー、モリー・ハスルンド、トルビヨン・ベックマン、ヘンリック・メンネ、トーベ・ストルク

[関連企画]

レクチャー 「アートと産業の狭間で―デンマーク近代家具デザインを一例に―」量産品でありながら美術工芸品としての側面も持ち合わせるデンマーク近代家具デザインの魅力を紹介しながら、ものづくりにおける効率性とムダの関係について考えます。日時: 4月29日(土・祝)14:00-15:30会場: 談話室 講師: 多田羅景太(京都工芸繊維大学助教)

定員: 40名※入場無料・事前申込不要

『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』Co-program カテゴリーB(展覧会事業)採択企画。会期: 5月25日(木)-7月2日(日)

10:00-20:00 ※5月29日(月)‐31日(水)休館 ※入場無料会場: ギャラリー北・南、和室「明倫」企画: 黒宮菜菜主催:「のっぴきならない遊動」展実行委員会、

京都芸術センター

[関連企画]

アーティスト・トーク日時:5月25日(木)18:30-20:00会場: ギャラリー北・南、和室「明倫」を巡回 ※ギャラリー南に集合進行: 平芳幸浩(京都工芸繊維大学美術工芸資料館

准教授)

※入場無料・事前申込不要

レセプション・パーティ日時: 5月25日(木)20:00-21:30会場: フリースペース ※入場無料・事前申込不要

レクチャー 「のっぴきならない探検家に聞きたい!」日時: 6月17日(土)14:00-15:30会場: 京都芸術センター内登壇: 関野吉晴(探検家・医師・武蔵野美術大学教授)

料金: 無料(要事前申込)

※Topic01(P1)もご覧ください

東アジア文化都市2017京都「京都の文化力事業」京都いけばなプレゼンテーション2017

〈自然と造形〉華道発祥の地・京都を拠点に活動する34流派から60名を超える華道家が出品するいけばな展。今回は、東アジア文化都市2017京都のプログラムとして、東アジアの花材を用いた作品などの特別企画も実施します。日時: 6月3日(土)10:00-20:00 4日(日)10:00-18:00 ※入場無料 ※いけこみ公開 6月2日(金)13:00-18:00会場: 講堂、大広間ほか

[関連企画]

いけばな体験「いけばなの日、お稽古はじめ」日時: 6月4日(日)①11:00- ②14:00-料金: 1,000円(花材代)

定員: 15名(先着順/要事前申込)

アーティストトーク(華道家による解説)

日時: 6月3日(土)16:00-中村展山(小松流家元)

4日(日)12:00-尾㟢豊雅(小原流京都支部長)

会場: 大広間※入場無料・事前申込不要

明倫茶会

様 な々分野で活躍している方々が席主となって、開催するお茶会です。席主によって趣向が異なるので、毎回新たな楽しみを見出せるのが魅力です。

「共通感覚論」日時: 4月30日(日)

11:00/14:00/15:00/16:00会場:ミーティングルーム2席主: 吉岡洋(京都大学こころの未来研究センター特

定教授)、末冨綾子(画家)

内容: 煎茶定員: 各回20名(先着順/要事前申込)

料金: 1,000円

[関連企画]

末冨綾子公開制作会期:4月20日(木)-29日(土・祝)

11:00-17:00 ※会期中無休・入場無料会場: ミーティングルーム2

トークイベント吉岡洋と末冨綾子がゲストとともにトークイベントを行います。日時:4月25日(火)17:00-18:30ゲスト:中原豊(中原中也記念館館長)

会場:ミーティングルーム2定員:30名(当日先着順)

※入場無料・事前申込不要

「将軍慶喜と外交官たちのデザート」佐野真由子の企画により、慶応三年に行われた将軍拝謁式をテーマとしたお茶会を開催します。日時: 5月28日(日)10:30/13:30/16:00会場: 大広間(待合:講堂)

席主: 佐野真由子(国際日本文化研究センター准教授)

内容: お菓子とコーヒー料金: 1,000円定員: 各回30名(先着順/要事前申込)

※Topic02(P4)もご覧ください

ダンス

京都国際ダンスワークショップフェスティバル 2017 国際的に活躍する振付家、ダンサーらを講師として招聘。ビギナーからプロのダンサーまで様々なレベルのクラスを設けたワークショップ。受講者以外にもオープンな成果発表等のプログラムも開催します。日時: 4月14日(金)-5月7日(日)

会場: 講堂、フリースペースほか講師: アビゲイル・イェーガー、フランチェスコ・

スカベッタ、カティア・ムストネン、坂本公成、森裕子、イスマエラ(石井丈雄)、チョン・ヨンドゥ、パウラ・ロソレン、エリック・ラムルー、森井淳、秋津さやか

※ワークショップ各クラスの詳細と日程、料金については、ウェブサイトをご覧ください

[ショーイング]

チョン・ヨンドゥ日時: 4月27日(木)19:00-20:30会場: フリースペース

エリック・ラムルー日時:5月7日(日)20:00-21:30会場: 講堂※入場無料・申込不要

明倫ワークショップ

京都芸術センター制作室で創作活動を行うアーティストによるワークショップ(参加無料・要事前申込)

※詳細はウェブサイトをご覧ください

笑の内閣「物語を別の国に置き換えるワークショップ」自分の好きな物語を別の国に置き換える作業をやってみましょう。日時:5月12日(金)19:00-20:30会場: 制作室3定員: 10名

劇団しようよ「『あゆみ』東京公演に向けてのフィードバック公開稽古」通し稽古後にフィードバック座談会を実施。日時: 5月24日(水)19:00-21:00会場: 制作室12定員: 10名

てんこもり堂「シェイクスピアを旅する」セリフを繰り返し声に出してシェイクスピアの世界へ旅をしませんか? 3回連続ワークショップで、今回は『ヴェニスの商人』を取り上げます。日時: ①5月28日(日)14:00-17:00 ②6月23日(金)19:30-21:30 ③7月26日(水)19:30-21:30会場: ①制作室1 ②制作室3 ③制作室6定員: 各回8名対象: シェイクスピア作品に興味のある方※単発での参加も可

K ACセレクション

イメージフォーラム・フェスティバル2017作家性、芸術性、創造性の高い映像作品を世界中から集めて上映する映像アートの祭典。日本初公開の新作のほか、「特集:タンジブル・ドリーム 触れることのできる夢」を上映。会期: 5月12日(金)-20日(土)

会場: フリースペース料金:[1回券]前売800円/当日1,000円   [4回券]2,500円   [フリーパス]4,500円主催・問合せ:イメージフォーラム TEL:03-5766-0116

akakilike公演『家族写真』写真家と演出家の共同制作企画として昨年上演した同作の「家族」が再び集まり、テーブルを囲みます。「家族」のほんの些細な「続き」。日時: 5月19日(金)-21日(日)

会場: 講堂料金: 前売2,500円/当日3,000円 学生前売2,000円/当日2,500円主催・問合せ:akakilike TEL:090-7860-1936

ペトロフピアノ・コンサート明倫小学校より受け継がれたペトロフ社(チェコ)

のピアノによるコンサート。日時: 5月26日(金)開場18:30 開演19:00会場: 講堂料金: 1,000円出演: 加藤文枝(チェロ)、天本麻理絵(ピアノ)

主催・問合せ:明倫ペトロフの会 E-mail:[email protected]

制作支援事業

劇団しようよ『あゆみ』『TATAMI』日時: 5月10日(水)19:00『あゆみ』 12日(金)、13日(土)14:00『あゆみ』

19:00『TATAMI』 14日(日)14:00『TATAMI』

19:00『あゆみ』 15日(月)11:00『あゆみ』

16:00『TATAMI』会場: アトリエ劇研(左京区)

料金: 一般前売2,300円/当日2,800円 U25前売2,000円/当日2,500円 高校生以下 1,000円(前売・当日共)ほか問合せ:フリンジシアタープロジェクト TEL:075-276-5779 E-mail:[email protected]

むらたちひろ個展会期: 5月16日(火)-5月28日(日)

12:00-19:00 ※5月22日(月)休廊 ※最終日は12:00-17:00会場: ギャラリー揺(左京区)

 TEL:075-752-0242 E-mail:[email protected]

第24次 笑の内閣『日・韓・米 春のツレウヨまつり』日時: 5月17日(水)-29日(月)

※22日(月)は休演。詳細は劇団ウェブサイトをご確認下さい。

会場: アトリエ劇研(左京区)

料金: 一般前売3,300円/当日3,500円 U25前売2,800円/当日3,000円ほか ※5月7日まで先得チケット販売問合せ:笑の内閣 TEL:090-2075-0759(9:00-20:00)

 E-mail:[email protected] WEB:http://warainonaikaku.sitemix.jp/

升田学とセレノグラフィカの新しい試み『夜のことば3』ダンスという枠に囚われず、新しい可能性を追求する「夜のことば」シリーズ第三弾です。日時: 5月20日(土)-23日(火)

開場18:40 開演19:00 ※5月22日(月)休演

会場: 伊丹市立伊丹郷町館 旧岡田家住宅 (兵庫県伊丹市)

料金: 前売1,500円/当日2,000円 問合せ:伊丹郷町館 TEL:072-222-5959(10:00-18:00) ※月曜休

 E-mail:[email protected]

応募資格:・ パフォーミング・アーツ分野の新進芸術

家または研究者で、京都に滞在し制作・調査研究などを行う理由が明確な方。国籍不問

支援内容:・ 滞在期間中(3ヵ月以内)の宿泊場所の提供・ 制作場所の提供・ 居住地から関西国際空港または大阪国

際空港までの往復航空券・ 制作費として1件につき(個人・グループ問

わず)10万円(内税)の補助・ 広報協力・ アートコーディネーターによるサポート締切:6月30日(金)〔必着〕

詳細は京都芸術センターで配布中の募集要項および応募用紙をご確認ください。ウェブサイトからもダウンロード可。応募方法:応募用紙に必要事項を記入の上、必要書類とともに同センターまで送付または持参(持参の場合は締切

日の20時まで)。

東アジア文化都市2017 京都-アジア回廊-「現代美術展」インターン募集大規模国際展の現場でアートマネジメントを学びたいインターンを募集します。キュラトリアルコースと広報コースあり。活動期間:採用日-10月末展覧会開催期間:8月中旬-10月中旬締切:4月30日(日)〔消印有効〕

※研修詳細は公式ウェブサイトをご覧ください

応募方法:下記リンクの応募フォームから必要事項を記入し送信、または応募用紙をダウンロードの上、下記まで郵送

応募フォーム:https://www.kac.or.jp/20566/応募先:東アジア文化都市2017 京都 実

行委員会 現代美術部門担当 インターン係

〒604-8156 京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2 京都芸術センター内E-mail:[email protected]

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2017インターンシップ募集10月14日(土)-11月5日(日)に開催する京都発の国際舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT」の運営事務局でのインターンシップを募集します。研修期間:6月中旬-12月中旬締切:5月5日(金・祝)〔消印有効〕

研修コース:舞台芸術祭の準備期間から終了までの運営等に携わる長期実践型プログラムですA. 事務局運営コースB. 舞台技術コースC. 広報宣伝コース※会場受付・監視・アテンド等のサポー

トスタッフ(ボランティア)、および短期インターンシップは、6月より別途募集開始予定

応募資格・応募方法・応募先:公式ウェブサイト(www.kyoto-ex.jp)よりご確認の上ご応募ください

問合せ:KYOTO EXPERIMENT事務局TEL:075-213-5839(受付時間:平日

11:00-17:00)

E-mail:[email protected]

KAC Performing Arts Program 2017 / Contemporary Dance国際共同製作『RE/PLAY DANCE Edit』ワークショップ・オーディション参加者募集多田淳之介の演劇作品『再/生』をもとに、カンボジア・日本・シンガポール3カ国のアーティストがダンス作品として共同創作。日程: 5月8日(月)-10日(水)

クリエーション・公演期間:11月16日(木)-26日(日)

会場: 講堂対象: ダンサー、振付家締切: 5月5日(金・祝)〔必着〕

主催: 京都芸術センター、特定非営利活動法人Offsite Dance Project、

RE/PLAY Dance Edit実行委員会※Topic03(P4)もご覧ください

フェルトシュテルケ・インターナショナル -東アジア文化都市2017-

「東アジア文化都市 2017京都」公式プログラムの一つとして、日中韓3ヶ国の学生・若手アーティスト等を対象とした国際文化交流プロジェクト。各都市に5日~1週間ずつ滞在し、協同制作の可能性を探ります。日程: 6月17日(土)-22日(木)

 湖南大学(長沙市/中国)

6月23日(金)-27日(火)

テグ・アート・ファクトリー(大邱広

域市/韓国)

7月2日(日)-9日(日) 京都芸術センター ※すべての期間に参加必須対象: 20歳以上の芸術活動に携わる学生

もしくは20歳以上30歳未満のアーティスト、企画者、研究者

募集人数:各国5名参加料:30,000円選考:[一次選考]書類審査   [二次選考]面接(5月中旬)

※選考結果は5月中旬に発表予定締切:4月30日(日)[必着]

トラディショナル・シアター・トレーニング(T.T.T.)2017 受講生募集T.T.T.は、舞台芸術に携わる方を対象とした3週間の伝統芸能トレーニングです。期間: 7月18日(火)-8月8日(火)

応募条件:演劇・ダンスなど、舞台芸術に関わる表現活動もしくは研究活動を行っている方。原則として、オリエンテーションから発表会までのすべてのスケジュールに参加できる方。伝統芸能を積極的に学ぶ意欲のある方。国籍・年齢・性別は不問

定員: 24名(能・狂言・日本舞踊 各コース8名程度)

受講料:一般90,000円/学生85,000円 ※その他割引あり締切: 4月30日(日)〔必着〕

アーティスト・イン・レジデンスプログラム2018パフォーミング・アーツ部門募集京都芸術センターで滞在制作を行うアーティスト・イン・レジデンスプログラム。2018年度はパフォーミング・アーツ分野から募集します。滞在期間:2018年4月1日(日)-

2019年3月31日(日)(3ヵ月以内)

第246回市民狂言会日時: 6月9日(金)開場18:30 開演19:00会場: 京都観世会館(左京区)

演目: 昆布売、蛸、左近三郎、狐塚出演: 茂山七五三、千五郎、あきら、千三郎

ほか料金: 前売2,500円/当日3,000円チケット取扱:京都芸術センター、大丸京

都店、高島屋京都店、チケットぴあ(Pコード:457-176)

※平成29年度年間席札8,000円(先着順)、団体券2,200円(20名以上)は京都芸術センターにて取扱

※その他のチケット窓口取扱公演:主催事業および印の共催事業・制作支援事業

チケットぴあで取扱いのチケットは、電話、ぴあ窓口、コンビニエンスストア(セブン・イレブン、サークルKサンクス)の専用端末などからご利用いただけます。WEB:http://t.pia.co.jpTEL:0570-02-9999

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Page 3: 1703 KACNEWS1705 - 京都芸術センター...日時: 料金:4月29日(土・祝)14:00-15:30 会場: 学生前売2,000円/当日2,500円談話室 講師: (京都工芸繊維大学助教)多田羅景太

杉浦篤_無題

撮影:前谷開

『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』

『のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ』

[関連企画]アーティスト・トーク&レセプションパーティ

明倫茶会「将軍慶喜と外交官たちのデザート」

[明倫WS]てんこもり堂「シェイクスピアを旅する」①

『Lリーン

EAN Iイシューズ

SSUES』(4/15-5/14)

京都国際ダンスワークショップ フェスティバル 2017 (4/14-5/7)

京都国際ダンスワークショップ フェスティバル 2017[ショーイング]エリック・ラムルー

[明倫WS]笑の内閣「物語を別の国に置き換えるワークショップ」

[明倫WS]劇団しようよ 「『あゆみ』東京公演に向けてのフィードバック公開稽古」

[共催]イメージフォーラム・フェスティバル2017

KAC Performing Arts Program 2017 / Contemporary Dance国際共同製作『RE/PLAY DANCE Edit』ワークショップ・オーディション

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31302928tuemon mon mon monwed wed thu fri frithusat satwed wed wedtue tue tue tue

京 都 芸 術セ ン タ ー

コ ラ ム

芸術作品の主体・客体、日常・非日常とは何か、環世界

やオートポイエーシス、あるいは禅の主客一体や親鸞

の他力思想にも通じる奥深い企画である。このような

臨床的な創作・鑑賞を通じて感じるのは、無為、無意

識、無口、無心、無名という「無私」であった。

無私な芸術で想起する芸術概念と言えば、赤瀬川

原平の「超芸術」である。超芸術とは、作り手が創作意

図を持たずに無意識に作り、観察者によって発見され

ることで芸術となる「作品」を指す。都市の路上に見ら

れる無用な物件に「芸術」を見出す超芸術トマソンや路

上観察学会などは都市をフィールドに芸術と非芸術の

ボーダーを問う「観察的創造力」の実践だった。

本展の協働的な作品や近年のアール・ブリュットの

隆盛は、作品の質の高さに由来するだけでなく、日常

の中に「自分たちの感覚を蘇生させる」ものを観察・発

見する「超芸術」だからではないだろうか。障害者や

虫、植物や人工知能はコミュニケーション不全ではな

く、トマソン物件ならぬ恣意を超えた無私が生み出す

「創造性」に遅まきながら私たちは気づいたのだ。

だが、作品の創造に虫や植物、AIが介在・協働した

としても、「超芸術」を観察、発見する行為は人間にし

かなしえない。見るという営みが私たち人間の日常で

あってこそ「超芸術」はあるのだ。今日も名もなき「超芸

術」は私たちの発見を待っている。

目に刺さるほど白い衣装の少女たちが踊る。まるで

競うように踊る。一連の踊りを終えて一呼吸し、座って

次を待っている。彼女たちの表情は、今にも千切れそう

なほど張り詰め、観ているこちらも粛然とした気分にな

る。全篇美しく構成されたダンス作品であり、ダンサー

は長時間の緊張を強いられている。後ろから見えない

力で立たされ、恐ろしい何かに突き動かされるように踊

る少女たち。元・立誠小学校講堂の広い空間で、彼女

たちは繰り返し繰り返し、いくつかの連なりの振付を再

現し続ける。単純な振付で、そのぶん必死だ。

彼女たちの抑圧は、それぞれ何か別のものに変質し、

各々のはけ口を求める。例えば以下のシーンだ。中盤、

舞台中央に数人が集まり、横たわっている一人のダン

サーの腹を、別のもう一人のダンサーが強く蹴ったのだ。

公演情報には「一部暴力的な表現を含んでいます」とい

う注意書きがあるが、それがこのシーンだろう。私はこ

の瞬間、因果について考えずにはいられなかった。悪意

がなく、また恨みも発散もない。ただただ暗いところに

閉じ込められて日の目を見ない臓器の働きが、彼女をし

てそうさせずにはいられなかったのだろうか。

自分が世界でたった一人であることに気付く時、淋

しさと高揚感が彼女の頬を撫でていく。混乱に満ちた

外の世界から隔離され、しんと静まった講堂。少女たち

の生が交錯し、静かな時間がとめどなく流れる。ふと

akakilike 『シスターコンプレックスシンドローム』3月3日(金)-5日(日)

元・立誠小学校 講堂(京都市中京区)

関西圏の公演•展覧会について、若手レビュアーが月替りで執筆します。

E V E N T C A L E N D A R 5 / 1 ▲ 5 / 31

感傷

ダンス

高橋良明

気付いた。そこにいるのは、何も持たない、言われたよ

うに踊る事以外何も出来ない裸の少女だ。だから一切

の嘘が無い。嘘をついたり、他人や自分を騙したりす

る必要などないからだ。そこが分かってしまうのがひと

しおに辛い。どうして彼女たちがこんな境遇に遭ってい

るのか、半分哀れになってしまった。そうしてまで踊る

彼女たちの事を理解出来ないのだ。

いや、本当は分かる。

命じられたからだ。

この作品の後、彼女たちが、自分の意志を持つ事を

祈っている。

それにしても、彼女たちは何者だったのだろうか。彼

女たちは立ち位置を奪い合っているかのように見えた

し、また、お互いを愛し、同胞として信じ尽くしている

かのようにも見えた。舞台の上での長い時間を経てよ

うやく立ち位置を獲得した彼女たちの、精一杯の笑顔。

だが最後まで、他の子を慈しむような表情は見出だせ

なかったような気がする。彼女らの多数は華 し々く紙吹

雪の向こうに消えていった。残されたのは、うずくまっ

た少女。立ちすくんだ女。所在無げな女。そして、無表

情の女。何かを確認するかのように、もう一度、蹴りが

始まる。 (3月3日19時の回鑑賞)

たかはし よしあき/インタビュアー●Netfl ixという動画サイトに登録し、昔の海外ドラマ、「フルハウス」を改めて見返しています。何だか、このドラマの奥底には重要なものが埋まっている気がしてしょうがないです。http://www.intvw.net

ひらた たけし/美術批評●寺町竹屋町のASSEMBLAGES KAKIMOTOでピスターシュとタルトフロマージュバニーユを頂きました。大いなるケーキでした。

「吾輩は猫である。名前はまだない」で始まる夏目漱

石の『吾輩は猫である』(1905)は、中学教師の家に飼

われている猫の眼から人間世界が風刺的、文明批評

的に綴られる漱石最初の長編小説である。人間や世

界を人間以外の視点から眺めると、世界の見え方が変

わるのは現在も同様だろう。

障害のボーダーを超えた作品を紹介してきたボーダ

レス・アートミュージアムNO-MAで開催されたキュレー

ター公募企画展「大いなる日常」(キュレーター・田中みゆ

き)は、創造する「我輩」とは誰なのかを問う7作家の作

品が展示された。

トーマス・リバティニーは、蜂の習性を利用して花瓶

を作らせ、AKI INOMATAはミノムシにファッションブ

ランドのハギレを与えて新しい蓑=ファッションをまと

わせ、人間の衣服を着る行為=習性を重ね見る。銅金

裕司はランの葉の表面に流れる生体電位を音に変換

して可聴化し、やんツーは人工知能によって文字のよ

うな絵のような落書きを書かせた。

一方、糸と布で玉結びや小さいパーツを膨大に作る

吉本篤史。旅先や風景、家族の記念写真を河原の小

石のように角が丸くなるまで触り続ける杉浦篤。暗号

のようなコードを使って日記を書く戸來貴規らの作品

は、日常の習慣を周囲にいる施設職員などが観察・発

見することで見出された作品である。

これらの作品に共通するのは「自分で作るのではな

く他の人や生命・知能が作った」こと、「自分の知らな

いところで出来てしまった」ことである。展示を通じて、

キュレーター公募企画展『大いなる日常』2月18日(土)-3月20日(月・祝)

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA(滋賀県近江八幡市)

大いなる超日常

美術

平田剛志

京都芸術センターの事業すべてを見て楽しんでいる人はいない。

自分の好みのものばかりではないし、来るたびに印象が違う。いろ

んなことが次々おこなわれているから、どんなものかわからずに見る

ことも多いし、よかったとしても誰かに勧めることも難しい。けれど、

それが心地よいんだと思う。

今年の正月明け、ふたつのギャラリーでは村山明(木工)と伊勢信子(彫刻)の展覧会をしていた。それぞれの分野の伝統を感じながら

現代の創造活動に触れる。南館3階ではマヤ・ワタナベが映像作品

の展示、阪神大震災の時期に《EARTHQUAKES》という作品名は

ぎょっとしたけれど、日系ペルー人がセンターの講堂で撮影、制作し

たミニチュアの世界であった。北館スロープと南館4階の茶室では、

山崎阿弥が音による展示をしている。指先で感じる繊細な声、日が

暮れたあとの元小学校のスロープでの不思議な声、いずれも日常

生活では耳にするものではない。帰ろうとしたら、玄関横で、冬休み

に小学生が作った「写真をとって、俳句をつくる教室」での作品が展

示されていた。センターの中で自分で撮影した写真の横に五七五の

言葉が付いている。なんと多彩な展示だ。玄関横の二宮金次郎像も

びっくりしているに違いない。

3月には、滞在していたミカエル・モーリッセンが振り付けをした

ダンス公演『Selfhood』をフリースペースで見た。京都で撮影された

映像が、薄い垂れ幕に幾重にも投影される中を歩くと、風景の中に

入ったようだ。その中を歩く人がだんだん踊りはじめ、視線が景色か

らダンサーに移っていく。目の前で踊る人間の肉体の動きを凝視す

る。なにか抽象的なもの、でも自分の身体とつながっているものを見

ている気分になる。アフタトークによると、公演タイトルは、自分自身

を示す「Self」と、ご近所さんなど人々のつながりを示す「hood」をつ

なぎ合わせた英単語らしい。わかったようなわからないような。でも

身体が軽くなったような気分で帰る。

京都芸術センターはこの17年間で、京都の、そして世界の芸術文

化と接する場所になり、その活動によって、京都をおもしろい、ハッ

ピーな街にしてきたと思う。そこでは、ふらっと立ち寄って日常生活

をリセットしている人もいれば、ふだん使わない感性に刺激を受け

ている人もいる。そして数十年後にも、なんかへんなの見たなぁと思

い出し、帰ってこれる場所であってほしい。

槇田盤2006-2010年、通信紙「明倫art」音楽レビュー執筆

2012年-現在、 通信紙「明倫art」編集長

KAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC ColumnKAC Column京 都 芸 術セ ン タ ー

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『Selfhood』 撮影:前谷開

臨時休館

期間

5月29日(月)│31日(水)

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Page 4: 1703 KACNEWS1705 - 京都芸術センター...日時: 料金:4月29日(土・祝)14:00-15:30 会場: 学生前売2,000円/当日2,500円談話室 講師: (京都工芸繊維大学助教)多田羅景太

TO P I C 02

田や、きたまりとともに、出演者自身が自分の振付を創

作します。繰り返し、繰り返し、ただただ踊る。そのなか

で自分の踊りと向き合い、誰かの身体と向き合い、新た

な作品をともに創りだしていく方をお待ちしています!

音楽が流れる中を、ただただひたすらに踊る。や

がて踊りは終わる。一瞬の静寂の後、出演者

たちはそれを全く同じように繰り返そうとする。2011

年、演出家・多田淳之介率いる東京デスロックが発表

した『再/生』という作品の構造はあまりにも単純な

ものです。それゆえにこの作品は、上演を重ねるごと

に、人間がそこにいることや運動することの意味を暴

き出してきました。

この作品のダンスバージョンである『RE/PLAY』は

2012年、振付家・ダンサーのきたまりのディレクション

による「We dance 京都2012」で上演されました。愚

直に運動を反復しようとする出演者たちの姿は、ダン

スとは何かという問いを軽 と々飛び越えて、観るもの

に人間の生そのものの謎を突き付けます。

京都芸術センターでの再制作は、これまでシンガ

ポール、カンボジアでこの作品に取り組んできたダン

サーたちと共に、クリエイションに参加するダンサーや

振付家を募集します。ダンスのジャンル、キャリア、年

齢は問いません。今回のクリエイションでは、演出の多

疲弊する身体。繰り返そうと試み続ける人々。露骨なまでに暴力的な構造をもとに、人間の生 し々いありさまを引き出してきた話題作、『再/生』のダンスバージョンを、11月に国際共同製作で再制作上演します。

違う身体、同じ身体。さまざまなバックグラウンドが、まざまざと晒される作品になるのでは、と期待しています。

谷竜一(アートコーディネーター)

TO P I C 03

国際共同製作 『RE/PLAY DANCE Edit』

将軍慶喜と外交官たちのデザート

KAC Performing Arts Program 2017 / Contemporary Dance

明倫茶会

今回の明倫茶会は、国際日本文化研究センター准教授の佐野真由子氏を席主にお迎

えします。テーマは、「将軍慶喜と外交官たちのデザート」。大政奉還から150年を迎える今年度にはぴったりのテーマです。

慶喜が英・仏・蘭・米の外交官を大坂城に迎えて拝謁儀礼を行ったのは慶応三年(1867年)。正式な将軍拝謁式に先立って、本式のフランス料理がふるまわれたといいます。

今回は、京都ホテルオークラの協力を得て、当時の記録からデザートメニューの再現を試みます。当時の拝謁式に思いを巡らせながら、お菓子とコーヒーでお楽しみください。

それぞれが国家を背負って臨む外交儀礼とはいかにもスケールの大きな話ですが、伝統的なしつらえや作法に従うだけでなく、相手や状況に応じてふさわしいものを作り上げていくおもてなしの

儀礼であったという点では、お茶会とも通じるものがあります。どのようにもてなし、もてなされるのか。その取り組みは、どのように国や歴史を動かしたのでしょうか。佐野真由子氏のお話を通して、幕末外交の様子を垣間見ることができそうです。

芸術、学術、産業など、各分野で活躍する方が席主となってお客様との一期一会を演出する明倫茶会。席主それぞれが趣向を凝らしてお客様をお迎えするこの茶会は、現代の文化芸術を再発見する機会となっています。

150年前の大坂城で将軍慶喜と外交官たちが対面した晩餐会は、いったいどのような様子だったのでしょうか。お茶会を通して幕末外交の機微を追体験できるのか、とても楽しみです。

當間芽(アートコーディネーター)

明倫茶会「将軍慶喜と外交官たちのデザート」日時:5月28日(日)

10:30/13:30/16:00 会場: 大広間(待合:講堂)

席主: 佐野真由子 (国際日本文化研究センター准教授)

内容: お菓子とコーヒー定員: 各席30名料金: 1,000円定員:各回30名(先着順・要事前申込)

お菓子再現協力:京都ホテルオークラ※イベント情報(P2)もご覧ください

佐野真由子 (さの まゆこ)ケンブリッジ大学国際関係論専攻MPhil課程修了、東京大学博士

(学術)。国際交流基金、ユネスコ本部勤務、静岡文化芸術大学文化政策学部准教授などを経て現職。幕末を中心とした「外交の文化史」を研究するとともに、文化政策関連の活動に従事している。著書に、『幕末外交儀礼の研究』(思文閣出版)、『万国博覧会と人間の歴史』(編著、思文閣出版)、『オールコックの江戸』(中公新書)など。現在、京都文化芸術都市創生審議会委員、京都文化芸術コア・ネットワーク・チーフ。

PROFILE

席主からひとこと大政奉還から遡ること約半年、慶応3(1867)年春の大坂城で、徳川第15代将軍慶喜は英・仏・蘭・米の外交代表を迎えて拝謁式を挙行し、絢爛たるフランス料理でもてなしました。日本初の公式晩餐会を再現……とまではまいりませんが、デザートをひとくちおすそ分け……幕末外交のお話に花を咲かせながら、楽しんでいただければと存じます。 (佐野 真由子)

KAC Performing Arts Program 2017 / Contemporary Dance国際共同製作『RE/PLAY DANCE Edit』ワークショップ・オーディション日時: 5月8日(月)-10日(水)

1次:5月 8日(月)16:00-18:00、19:00-21:00 9日(火)11:00-13:00、14:00-16:00 2次:5月10日(水)13:00-15:00クリエーション・公演期間:11月16日(木)-26日(日)

会場: 講堂対象: ダンサー、振付家締切: 5月5日(金・祝)〔必着〕

主催: 京都芸術センター、特定非営利活動法人Offsite DanceProject、RE/PLAY Dance Edit実行委員会

※イベント情報(P2)もご覧ください※詳細はウェブサイトの募集要項をご覧ください

英紙に掲載されたイギリス公使パークスの将軍慶喜拝謁の模様(Illustrated London News, 24 Aug.1867)

プノンペン公演 Photo by Kong Vollak

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交通案内○市営地下鉄烏丸線「四条」駅/

阪急京都線「烏丸」駅22番出口・24番出口より徒歩5分。○市バス「四条烏丸」下車、徒歩5分。

開館時間○ギャラリー・図書室・情報コーナー・

談話室・チケット窓口      ……… 10:00-20:00

○カフェ ……………………………………………… 10:00-21:30○制作室、事務室 ……………………………… 10:00-22:00

休 館 日12月28日から1月4日*設備点検のため臨時休館することがあります。

〒604-8156京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2TEL:075-213-1000 FAX:075-213-1004E-mail:[email protected] URL:http://www.kac.or.jp/  twitter:@Kyoto_artcenter  http://www.facebook.com/kyotoartcenter  twitter:@Kyoto_artcenter

アーティストインタビューやイベント情報などトピックが満載!