7
U.D.C.る21.892.098 タービン油の化学的組成と二,三の物理化学的特性 Chemical Structures and Some Physico-ChemicalProperties of Turbine Lubricating Oils. 弘* Yoshibiro Moniwa 治* YoshiharuIionma 内外のタービン抽について,シリカゲルクロマト分析,赤外線吸収スペクトル分析により化学的組成を検討 し,二,三の物理化学的特性との関連性を調べた。この結果タービン油の芳香族成分含‾石畳は約8~15%のも のと,約20~28%のものとの2群に大別でき,赤外線吸収スペクトルによってその含有量を推定できること を明らかにした。 芳香族成分含有量と95℃酸化安定度試験結果とは関連性があり,約12%以下のものがすぐれた結果を与え た。また芳香族成分含有量と比重,油の加熱試験に二別ナる着色度との関鼠 赤外線吸収スペクトルにおける CH3(CH2)n▼のCH2横ゆれ振動に基づく吸収と流動点,粘度指数との関連性,および酸化防止剤DBPCに関 する吸収などについて検討した。 1.緒 タービン拙についてはさきに6篇にわたって内外油の比較試験結 果を発表し(い(6),次いで昭和34年に「最近のタービン潤滑油+と 題して再検討した結果を発表した〔この間JIS規格の改訂をみてお り,いわゆる添加タービン油の性能,試験方法などについての考え 方はかなり統一されたようである。他方舶用タービン機関用として 耐極圧性を与えたEPタービン油が出現し,タービン油に対する新 しい考え方が出てきている。この問題についても筆者らの検討結果 を発表し,使用者としての立場から今後解明が望まれる事項を指摘 した(7)(8)。 これらの報告がわが国におけるタービン油の改良,進歩に多少と も参考され有用とされたことは望外の喜びであり,今後とも油の使 用者と製造老は互いに協力してゆかねばならないと考えている。わ が国のタービン油はいまや外国製l罷に比し遜色がなく,むしろこれ にまさる性能を示すものが出ていると思うが,その後の状況を確認 するため筆者らは三たび内外市販の添加タービン油をとりあげ種々 検討を加えてきた。その結果得られた一一般性状については別の機会 に報告するが,特に国産油の場合着色度が減少しホワイトカ‾イルに 近いものまで出現しており,基仙の精製度がかなり高度になってい るように思われる。一方外国製■一正1では従来と同程度の着色度をホ し,精製度に対する考え方は多少違うような気がする。また外国で は一部で気相さび止めタービン油が検討されており,仙のさび止め 能力が重要視される傾向もある。この種のタービン仙はいまだ上市 されてはいないらしいが,すでにASTMでは早くからさび止め能 力の重要性に着日していたのであり(9),かつこオtに関連すると考え られるタービンの大きな部故も報告されているのでり0ノ,筆名らも さび止め能力をさらに高めることを必要と考えるものである。 このようにタービン油に対する考え方は決して固定したものでは なく,今なお新しい観ノ曳に克つ検討が進められている。 また実際の火力,水力タービンにおいて油に関連する問題はいろ いろあり,トラブルを解決するためにほ従米から行なわれている油 の特性試験だけでは不十分な場合が多い。この‾ためタービン州こつ いてその化学的組成を明らかにしておく必要が焔感されるが,いま だこれを明らかにしたものがない状態なので,三作者らほ内外「打仮の 添加タービン油40余種について,シリカゲルクロマト分析,赤外 線吸収スペクトル分析を試みた。このような分析手段のみではもと 日立製作所日立研究所 より完ぺきを畑ルえないが,この分析結児から若十の知見を得たの で以下に概要を報告するゥ 2.潤滑油の組成概要 検討結果を述べるに先だち石油系潤絹イ由の一般的組成について若 干触jtておくことにする。 石油系潤献血の主成分は炭化水素であり,鎖状のパラフィン系炭 化水素,環状のナフテン系,芳香族系炭化水素その他が含まれてい る。これらの個々の炭化水素についてはAPI(AmericanPetroleum Institute)ResearchProjectNo.6によりF.D.Rossini上 り詳細に分離研究している(11)。しかし,炭化水素がどのように結合 されているのか,その梢造の詳細については不明の点が多いようで ある。一般にC20以上の炭化水素からなるといわれているが,それ ぞれ各炭化水素の分析値から構造を決定するにほ,異性体の問題が あるのできわめて困難である。 たとえばJ.B.Hill上モ(12)らはC3。の分丁で芳香族環2個,ナフテ ン環2個を有するものとして次のような構造例をあげている。 CH3 1 ・〆1/十cHく…: …:…〉cHノ\ハノ\/ . l \\_/\〆 CH3 1 CコH5 CH3 CH3-CIi-C- 11 /\/\ し---\ノ CII2--CH-CH3 1 〆\ /-\‖ノ 〆】㌔ CH2-(Ct王2)8【CH2 /\〆\ lll \//㌔/ /\/タン\ l ll \/\ヽ/ CIi2-(CH2)i6CH3 〆\/■㌔/\/\ l!ll】l ㌔/\〆′\/\/ -22-

日立評論1964年10月号:タービン油の化学的組成と二, … · タ ー ビン油の化学的組成と二,三の物理化学的特性 1615 第1衷 Panca原綿潤滑抑留分の平均約成(11)

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U.D.C.る21.892.098

タービン油の化学的組成と二,三の物理化学的特性Chemical Structures and Some Physico-ChemicalProperties of

Turbine Lubricating Oils.

茂 庭 喜 弘*Yoshibiro Moniwa

本 間 吉 治*YoshiharuIionma

内 容 梗 概

内外のタービン抽について,シリカゲルクロマト分析,赤外線吸収スペクトル分析により化学的組成を検討

し,二,三の物理化学的特性との関連性を調べた。この結果タービン油の芳香族成分含‾石畳は約8~15%のも

のと,約20~28%のものとの2群に大別でき,赤外線吸収スペクトルによってその含有量を推定できること

を明らかにした。

芳香族成分含有量と95℃酸化安定度試験結果とは関連性があり,約12%以下のものがすぐれた結果を与え

た。また芳香族成分含有量と比重,油の加熱試験に二別ナる着色度との関鼠 赤外線吸収スペクトルにおける

CH3(CH2)n▼のCH2横ゆれ振動に基づく吸収と流動点,粘度指数との関連性,および酸化防止剤DBPCに関

する吸収などについて検討した。

1.緒 言

タービン拙についてはさきに6篇にわたって内外油の比較試験結

果を発表し(い(6),次いで昭和34年に「最近のタービン潤滑油+と

題して再検討した結果を発表した〔この間JIS規格の改訂をみてお

り,いわゆる添加タービン油の性能,試験方法などについての考え

方はかなり統一されたようである。他方舶用タービン機関用として

耐極圧性を与えたEPタービン油が出現し,タービン油に対する新

しい考え方が出てきている。この問題についても筆者らの検討結果

を発表し,使用者としての立場から今後解明が望まれる事項を指摘

した(7)(8)。

これらの報告がわが国におけるタービン油の改良,進歩に多少と

も参考され有用とされたことは望外の喜びであり,今後とも油の使

用者と製造老は互いに協力してゆかねばならないと考えている。わ

が国のタービン油はいまや外国製l罷に比し遜色がなく,むしろこれ

にまさる性能を示すものが出ていると思うが,その後の状況を確認

するため筆者らは三たび内外市販の添加タービン油をとりあげ種々

検討を加えてきた。その結果得られた一一般性状については別の機会

に報告するが,特に国産油の場合着色度が減少しホワイトカ‾イルに

近いものまで出現しており,基仙の精製度がかなり高度になってい

るように思われる。一方外国製■一正1では従来と同程度の着色度をホ

し,精製度に対する考え方は多少違うような気がする。また外国で

は一部で気相さび止めタービン油が検討されており,仙のさび止め

能力が重要視される傾向もある。この種のタービン仙はいまだ上市

されてはいないらしいが,すでにASTMでは早くからさび止め能

力の重要性に着日していたのであり(9),かつこオtに関連すると考え

られるタービンの大きな部故も報告されているのでり0ノ,筆名らも

さび止め能力をさらに高めることを必要と考えるものである。

このようにタービン油に対する考え方は決して固定したものでは

なく,今なお新しい観ノ曳に克つ検討が進められている。

また実際の火力,水力タービンにおいて油に関連する問題はいろ

いろあり,トラブルを解決するためにほ従米から行なわれている油

の特性試験だけでは不十分な場合が多い。この‾ためタービン州こつ

いてその化学的組成を明らかにしておく必要が焔感されるが,いま

だこれを明らかにしたものがない状態なので,三作者らほ内外「打仮の

添加タービン油40余種について,シリカゲルクロマト分析,赤外

線吸収スペクトル分析を試みた。このような分析手段のみではもと

日立製作所日立研究所

より完ぺきを畑ルえないが,この分析結児から若十の知見を得たの

で以下に概要を報告するゥ

2.潤滑油の組成概要

検討結果を述べるに先だち石油系潤絹イ由の一般的組成について若

干触jtておくことにする。

石油系潤献血の主成分は炭化水素であり,鎖状のパラフィン系炭

化水素,環状のナフテン系,芳香族系炭化水素その他が含まれてい

る。これらの個々の炭化水素についてはAPI(AmericanPetroleum

Institute)ResearchProjectNo.6によりF.D.Rossini上毛らがかな

り詳細に分離研究している(11)。しかし,炭化水素がどのように結合

されているのか,その梢造の詳細については不明の点が多いようで

ある。一般にC20以上の炭化水素からなるといわれているが,それ

ぞれ各炭化水素の分析値から構造を決定するにほ,異性体の問題が

あるのできわめて困難である。

たとえばJ.B.Hill上モ(12)らはC3。の分丁で芳香族環2個,ナフテ

ン環2個を有するものとして次のような構造例をあげている。

CH3

1

・〆1/十cHく…:3く;:;…:…〉cHノ\ハノ\/. l\\_/\〆 CH3

1CコH5

CH3

【CH3-CIi-C-

11/\/\

し---\ノ

CII2--CH-CH3

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/-\‖ノ

〆】㌔

CH2-(Ct王2)8【CH2

/\〆\

lll\//㌔/

/\/タン\l ゝ ll\/\ヽ/

CIi2-(CH2)i6CH3

〆\/■㌔/\/\

l!ll】l㌔/\〆′\/\/

-22-

タ ー

ビン油の化学的組成と二,三の物理化学的特性 1615

第1衷 Panca原綿潤滑抑留分の平均約成(11)(1分子当たりの炭素原子数25~35)

留分!書聖群書腎

透 明 泊

(ウォータ

ーホワイ

ト抽)

抽 出 油

ろ う 分

車l

35

22

35

分 子

1ナフテン環+パラ

2ナフテン環+パラ

3ナフナン環+パラ

組 成

1ナプチン環十1芳香族環+/ミラ

2ナフナン環十1芳香族環+パラ

2ナフナソ環+パラ

3ナプチン環+パラ

2ナプチン環+1芳香族喋+/てラフ

3ナ7テン喋+1芳香族環+パラ7

2ナプチン塀+2ラ言杏族環十パラフ

1ナプチソ環+3芳香族環+パラフ

■i‾E-パラフィン+未知少:口二の分枝状パラフィン

1,2または3ナプチン環+パラフィン倒鎖

1,2または3プープテン環+1芳香族環十/ミラ

フィン側鎖

il話肢折合多環芳香族,水素%ほきわめて低く

非炭化水素物質を伴う

第2表 電気絶縁拙の巌適組成く32)

各留分に

おける%

92‡…≡8

3

25

67(…三39

53

8

(%Wt)

成 分 添加剤入り油 無 添 加 油

和飽 成 分 70~80

成成成

族族族

香香香

芳芳芳

環環環

艶T2

3

含硫黄, 合しL素醸

分芸㌃

17~22

3~5

0.2{一0.5

0.5~1.5

70~80

12~18

5~7

0.5~1.0

1~2

/CH2\〆\/\/㌔ /\

HllC5-1㌔ノー⊥しメl--+-C6H13またR.K.Frolich(13)は粘度指数からみて下記のような折合ナフ

テン現に相モー■う長い/ミラフィンあ当をもつものを推定している。

l

′/\/\】】ll\/\/\

ll l

これらは相当古い報告であるが,その後も構造の詳抑こついては

明らかにされていないようである。なおF.D.Rossini(11)らはPanca

原油の潤桐油国分を種々の方法で分離を試み弟1表に示す結果を得

ている。第1表の透明油は各精製工程を経て製造される潤緋山の主

体をなすものであるとしており,芳香族成分は単環成分にナフテン

環およびパラフィン側鎖のついたもののみである。しかし実際には

これほどまでには精製されず2環,3環芳香族および非炭化水素も

含まれるはずである。J.L.Jezlらは諸性能からみた最適組成の電

気絶縁油として第2表を提示しているが(32),これには2環,3環

成分が含まれている。

他方柚の精製度と酸化安定度についてしばしば議論されており,

精製度を増せば酸化安定度ほ上辻好になるが,あまり精製を進めると

逆に悪くなるといわれている(14)(15)。また潤滑油の酸化安定度ほ油

中の芳香族成分の種類と量によると考えられており,いわゆる鼓適

芳香族性なる概念がある(16)。しかし芳香族性だけからでは説明で

きない面があり天然酸化防止剤が問題にされており,たとえば

R.E.Berry(17)らの報告がある。一刀介成酸化防止剤の研究が進め

られ,今日では多くの潤滑油に酸化防iヒ剤が添加されている。酸化

防止剤の効果は某油の精製度に関連することが知られており,精製

度の高い油に添加されるのが通例である。

いわゆる添加ターピソ油には酸化防止剤,さび止め剤などが添加

第3表 シリカゲルクロマト分析結果(添加剤入りタービン油)

試 料

金名 柄*

内・円内内内内内内外外外

B

B

D

E

E

F

G

H

C

D

E

)

)

一、ノ、ノー

)

(一一(

〓川〓3妬〓〓%川〓2

飽和成分

(%Wt)

88.1

72.9

91.2

74.3

70.6

90.9

91.9

76.9

76.1

74.7

87,1

芳香族成分

(%Wt)

11.7

26.6

8.5

25.3

28.7

8.4

8.3

22.8

23.5

24.8

12.5

回収成分ほいずれも全回収率に対する%で示した。

【ノっ:国産油,外:輸入油 数字:50℃におけるレ

アルファベット:製造会社別

樹〃カ月忌言l諾

ドゥッド粘度

されているが,基油の化学的組成については明らかでない。タービ

ン油に対しては特に高度な化学的安定性が要求され,酸化安定度試

験は重要な試験として注目されているが,その結果は抽銘柄により

相違する。この相違ほ抽の化学的組成と関係があろう。またその他の

物理化学的特性も柵の化学的組成により変わってくるほずである。

3.タービン油のシリカゲルクロマト分析

3.1分 析 方 法

油の化学的組成を吟味する方法にはいろいろあるが,本稿ではシ

リカゲルクロマト分析と赤外線吸収スペクトル分析結果について記

す。シリカゲルクロマト分析ほ(33),Davison社製の粒度20~200メ

ッシュのシリカゲルを220℃で4時間加熱処理したものを用い,

20mm¢×500mmの吸着塔に充てん(約100g)した後,通常の手法

により実施した。すなわち石油エーテル,ベンゼソ,メタノールを

用いて油をそれぞれ飽和成分,芳杏族成分,桝脂分に分離した。

3.2 分 析 結 果

第3表に示す。芳香族成分の量に江口すると約8~15%のもの

と,約20、28%のものとの2群に大別される。同表にユニオン色

相を併記したが,色相と芳香族成分%との関係は不定である。ま

た同じ銘柄油でも粘度が異なると芳香族成分%は著しく違うもの

がある。芳香族に関してはさらに単項か多環かにつき検討する必要

があるが,これは別の機会にとりあげたいと思う。

4.タービン油の赤外線吸収スペクトル分析

以下の赤外線吸収スペクトルは岩塩セル(0.05mmまたは0.1mm

スぺ-サ)によりEPI-2形日立赤外分光光度計を用いて測定したも

のである。

4.1各種タービン油における相違

入手しえた内外各社のタービン油40余種について吟味した。弟

1図は波数約4,000~600cm‾1における代表的測定例である。油の

種頸により波数約1,600cm‾1,約810cm‾1に顕著な相違が認めら

れる。舞2,3図はシリカゲルタロマト分析における飽和成分と芳香

族成分との赤外スペクトルである。これらから明らかなように披数

的1,150,980~920,860~855,780~720cm▼1の吸収は油によって異

なる。また約3,610cm‾1あたりの吸収にも差があることは後述する

とおりである。すべての試油についてこれらの吸収を検討すると,

タービン油の種類によって特長があることを指摘できるが,個々の

タービン油に関する詳細については紙数の関係で省略する。Be11a-

my(18),島内(19),Cross(20),西宮(21),岩倉氏(22)その他の著書を参

考におもな吸収について帰属を推定すると第4表のようになる。

ー23-

1616

100

80

諒60讃40

20

昭和39年10月

(1)芳香族成分の少ないタービン抽

立 評 論 第46巻 第10号

3,000 2,000 1,800 1,600

100

80

60

40

20

(2)芳香族成分の多いタービン抽

1,400 l,200 1,000

液 数(cIⅥ¶1)

試料:内200E′

3,000 2,000 1,800 1,600

90

0

0

ハU

8

7

6

(芭

斎頸照

1,400 1,200 1,000 800

波数(em‾1)

第1図 タービン油の赤外線吸収スペクトル

石油エーテル展開分

(飽和成分)

/

/

\ /

/

ベンゼン展開分(芳香ち~油分)

未処理タ〉1ビン油

試料:内90F(芳香族成分の少ミ・いもの)

l,600 1,550 1,000 900 800

700

波 数(cm‾1)

第2図 シリカゲルクロマト展開分の赤外線吸収スペクトル

90

80

哀70

沓60

宇ヨ

サ恐 50

40

丁、へ\

ベンゼン展開分り;ニ斤肘J丈分)

了川Ⅰエ・・テ′しむ土間分

(胞仙戊分)

未処理タービン油

試料‥外200C(芳否族成分の多いもの)

1,600 1,550 1,000 900 800

波 数 (cm‾1)

第3図 シリカゲルグロマト展開分の赤外線吸収スペクトル

第4表 タービン油における赤外線吸収スペクトル

波 数(cm‾1)

720~770

740~880

約810

890~960

約1,030

1,160~1,17()

1,370~1,385

1,445~1,475

約1,600

2,840~2,980

強 度l 帰

S,m.

W

m,W

WW

m一ⅦⅦ

m.W

CIi3(CH2)n‾

ベンゼン置換体

ベンゼソ置換体

CH2横ゆれ

CH面外変角

CH面外変角

飽和炭化水素(ナフテン,パラフィン),環C-C骨格

ベンゼン匠換体 CH面外変角

側鎖メチル CH3横ゆれ

ーCCH3,-C(CH3)2-3,CH変角CCH3,-CH2-,CH変角

ベンゼン環

VS J -CH3, -CH2

C=C面内

CH伸縮

4.2 芳香族成分含有率の推定

芳香族成分に関する吸収として特に顕著なのは1,600,飢Ocm-1

付近の吸収である。油によっては860~855cm‾1に特長のある吸収

nV

<U

爪U

O

O

nU

9

∩六U

7

亡U

5

4

(芭

発増

90

80

70

謝- 60

▲雫

兜 50

40

30試料:内140G

1,700

芳香族成分0%(シリカゲルタロマトの飽和成分)

芳香族成分10%

芳香族成分15%

芳香族成分21%

芳香族成分100%(シリカゲルタロマトの芳香族成分)

J1,600 1,500 1,400

波 数(cmト1)

第4図 芳香族成分含有量による差異

芳香族成分0%(シリカゲルクカケルタロマトによる飽和成分)

芳香族成分10%単二東こ七たd・∠ゝ1F/)ノ芳香族虐

二!た:末:

こ族成分15%芳香族成分21%

/芳香族成分100%.

シリカゲルタロマトによ

試料:内140G †1,200 1,100・ 1,000 900. 800

波 数(em▼】)

第5図 芳香族成分含有量による差異

40

35

▲U

5

0

3

り▲

2

(;垂て台繋ぎ艇蛍

Al=343.6Dl+0.5

(1,600cm‾1)

Az=182.7D2+5.1

(810em-1)

● ●

U O.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14

吸 光 度 p

第6図 芳香族成分%と吸光度の関係

を示すが,これはDBPC(Di-ねγ才一butylrクーCreSOl)と呼ばれる酸化

防止剤に起因するものと考えられる(23)。基油における芳香族成分

含有率を赤外スペクトルから推定を試みるため,シリカゲルクロマ

ト分析によって得られる芳香族成分を飽和成分中に濃度を変えて添

加すると舞4,5図のようになる。そこで各試油の1,600,810cm▼1

における吸光度と,シリカゲルクロマト分析による芳香族成分%と

の関係を求めると第る図のようになる。ばらつきがあるので回帰直

線を求め,その有意性を検討した結果

Al=343.6上)1+0.5.

A2=182.7β2+5.1‥…(1)

‥(2)ただし,Al:波数1,600cmJlにおける吸光度β1から求められ

る芳香族成分%wt

-24-

タ ー

ビン油の化学的組成と二,三の物理化学的特性

試料銘板 =::::コ810cm‾1からの推定値塁≡国司1,600cm‾lからの推定値

内 90A

内140A

内200A

一内90B

内140B

内200B

内 90C

内140C

内200C

内 90D

内 90D

内140D

J勺200D

内 90E

内140E

内200E

内 90E■\\\\、、、∴'∴\\\\)\八\\二ヾ\\\\\\\\\\\人\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\ゝ\\\\\\\\\‾・∴\\\\\\\\\\\\、\V

l勺140E'

J勺200E'

内 90F l

内140F

√勺200F

内 90G

内140G

内200G内 90H

内140H

J勺200H外 90A l

外140A l

外200A

外 908 l

外140B

外200Bl

外90C

外140C l

外90D

外140Ⅰ) l

外200D m\\\\\\\Nヽ\\\\\\\\m\N\\氾

外 90E

外140E

外20DE l外140F

n、、、、、、、、、、、、、ゝ、、、、、、、"、、、、b■

0 5 10 15 20 25 30

甥秀族成 分(%lVt)

第7図 各種タービン油巾の芳香族成分推定立

A2= 波数810cm‾1における吸光度β2から求められる

芳香族成分%wt

により赤外スペクトルから芳香族成分含有率を推定することができ

る。この推定値とシリカゲルクロマト分析値との差は,1,600cm【1

の場合は平均±1.3%,810cm‾1の場合は平均±2.1%である。

なお1,600cIn‾1の吸収は芳香族環のC=C面内振軌飢Ocm-1の

吸収ほベンゼン置換体のCH面外変角振動に基づくものとして帰属

されている。

タービン油には芳香環をもつ添加剤,たとえばアルキルフェノー

ル摸その他が加えられるが,これらは微量であり一般に上記の誤差

範囲(約±1~2・%以内)と考えられる。

(1),(2)式から推定した各種タービン油中の芳香族成分%は

弟7図のようである。外国産タービン油は外200C油を例外とし,

一般に芳香族成分は約15%以下である。他方わが国のタービン油

は約10%以下のものと約20~28%のものとがある。そして前者ら

は外国抽に比較しさらに芳香族成分が少なく,特にホワイトオイル

に近い内D社の油ほ約7%前後である。

4・3 酸化防止剤に関連する吸収

タービン油(24)(25),電気絶縁油(26)などには,酸化防止剤として一

般に広くフェノール系の添加乱 すなわちDBPCが使用される。

OH

(C=3)3C一+〆'\・-C(CH3)31

㌔ノ】CH3(DBPC)

ただし,タービン油の場合はDBPC単独ではなくアミン系酸化防

止剤,その他の酸化防止剤との併用,あるいはDBPCを用いずは

(芭鯨禦照 抑OH3C¢C(CH3)

CH-

し⊥_⊥

4,000 3,000 2,000 1,800 1,600 1,400

沌 数 (cm‾1)

1617

(KBr蚤E刑法)

_ _▲ ___+

1,200 1,000 800

第8岡 憤化防止剤:DBPCの赤外線吸収スペクトル

1.0

OU

6

JT

2

0

0

ハU

ハU

(盲芭h哨晦巾

//

//

)■こ29.6D+0.17

ロ 0.004 0.008 0.012 0.016 0.020

吸 光 度 D

第9図 DIiPC含有量と吸光度との関係

かのものによることもある。またDI∋PCのアルキルを多少変えた

ものを用いることもある。

フェノール系酸化防止剤に基囚する吸収として注目されるのほ,

OHに関する吸収とベンゼン置換体に関するCH面外変角によるも

ので,タービン油では一般に3,610cm‾1付近および870~850cm-1

あたりにあらわれる。手もとにあるDBPCの赤外スペクトルを弟

8図に示す。DBPCの吸収のうち油に添加した場合,抽の吸収に影

響されない吸収はE・Potiらによると(27)3,676,1,232,1,160,862,

775cm】1といわれているが,Eestman Kodak Metbod(28)では

DBPCの定量に用いるものとして3,650cm‾1の吸収をとりあげてい

る。しかし本報で扱ったものでは3,610cm‾1あたりに出る。吸収位

置のずれについては検討を要するが別の機会にゆずり,約3,610cm‾1

の吸収に着日して添加剤を含まない油中に各種ガのDBPCを加え,

DBPCの%と吸光度との関係を求めた結果を示せば弟9図のよう

である。これよりDBPC(%wt)=吸光度×29.6+0.17の関係が得

られる。この式を用いて各種タービン油の吸光度からDBPC含有

量を推定すると舞10図のようになる。

筆者らは別に酸化安定度試験を行ない(29),コンデンサ部分に析出

する添加剤の赤外スペクトルを調べたが,多くはDBPCとまった

く同じ赤外スペクトルを与えるものであった。ある種のタービン油

でほやや異なるスペクトルを与えるものもあったが,全体の吸収は

類似しておりDIiPC系とみなされる。Df主PCと同じフェノール糸

でもtertプチル基のつく位置,メチル基の部分などを変成したもの

もあるので,タービン抽における3,610cm▼1の吸収だけでDBPC

と断定するのはもちろん早計である。したがって弟10図の結果の

うちある種のタービン油についてほ参考値にとどまる。ただこの結

果に検討の余地があるとしても,タービン油に対するDBPCの使

い方はほぼ明らかであり,一般に0.2~1.0%程度添加しているよう

である。またある種のタービン油ではDBPCを使用しておらず,

ほかの酸化防止剤によっていると考えられる。

添加剤に関連する赤外スペクトル的知見ほ他にも若干あるが,こ

こに議論しうるほど解析するに至っていないので,それらについて

は省略する。

-25-

1618 昭和39年10月 日

試料銘板 0 0.25 0.5 0.75 1.0

内 90A 淋※さ※ホ$※$※$※やさきミや‡さS:ミ;丈泣;ま;文】■

内140A 丈ヾミヾ※ホ※菜ホ※さ薄まミミミミ漆※ミキさ斗さ三ミミ¥ヨ

内200A ※泣‡ギミミミべ$さミ*ミラき泣…柑鞍‡ミこごミ洲】

内 90B Wささ:額浮立ミ諜ミ分き‡ミミやさ迷iミや穀や治・ご∵、.ナ\1

内140B W※ミミミミミや淑ミ汰ミやさ‡Wご、ヂ亨∴\'、\‥\、さて】

内200B 彰汰:う栄ギミ芯;ミ栄÷潔ヾ銭怒やだSミさ※ミ*ききふ‡ミJ∵、羊‡、、\\1、J‾_1

r勺90C 丈キ派手や※ミ賛き忘ミ瀾

渕内140C 範方きさW※洲さミモミヾさ;ミき‡寸

内200C ※芯ヾ三ゼ㌢洲内90D … l

内90D ゞミ寸ミミ来さ治ミや※粕淵 l

l勺140D 沿N主薄ミヾキミ渕 l

内200D …】

内 90E 】

l

l勺140E l

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l

内9DE' 1\:、ニニ÷汚ミ慈父沐…ま㌣†取捌

内140E■ ‡、、\、\御衣くやミ洛※ミだふこ、∴二、、㌧\・q

内200E一 \∴、、く、∴・∴ヾニ÷;‡ゝ:-ふ乞う:※t、公、斗ミ㌣∴∴ぺ】

rノ190F \1こト\、■\㌣ごミ1 】

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「Iぅ90G ■勺ンゞ、や■\∴∴\こニニ熊:、榔与】円140G 淋さで敬ゝさでミニこ・\‡棚ミミミミ吋鞍ミも、、ニ士き瑚Pづ200G ㍍缶状ミおここゝさミニゴ‡さこ\.・ポたがWぎ放べ;;ミミぶ肘1

内 90H l

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l

l勺200H l

外 90A

外140A

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外140B mミミ渕

外2008 ※沐汝ン八ギガ虫※こ洪う、Yや※寸丈‡附さミ)、ミニ∵1

外90C ㌫ややきさ※偶浮Wぷ】i

外140C 淋シぺ斗丈ミもヾミキミミIl

外200C \丈‡沫ミさ、瀾鈷1渕 l

外90D 没ミさ淋ゝく-、ぺ斗こ…

外140D …

…外200D

外90E 附さささづ1や】

外140E \柑ミや較、・ぶ‡さき;ミさミミ1

外200E ※ミ津ミ泳こ、二渕

外140F 淋ミキ磁、淡ヾこ_‡:ミト~、:ヌ、1

0 0.25 0.5 0.75 1.

推定 含有 二追(%wt)

第10図 3,610cm‾1付近の吸光度に基づく

DBPC推定含有量

3妬

レ乃

2

‥乃

1

2

(八女‥エ

0印 国産油

●印外国油

‥-・

0

0

00

。。.㈱m

O

0

0

0

立 評 論 第46巻 第10号

Cu Slrip5×75×0.1t共存

1400c,19h加熱.油壷15ぐぐ

0印国産油

●印 外国油

く:〉0

0

の00):〕

4

(人七‥エ

d

0

0 0

例外f】(J

5 10 15 20 25 30

溝=杏族成分(%lVt)

第12図 加熱による着色と芳香族成分含有率との関係

0.91

0.90

0

(UO

(UO寸\m亡

0.86

0.85

0000

00

印国産抽

印外H油

●一皿

.違0 亀00

0

0{的外例

10 15 20

芳香族成分(%wt)

25 30

第13図 比重と芳香族成分含有率との関係

5 10 15 20 25 30

芳香族成分(%wt)

第11囲 色相と芳香族成分含有率との関係

5.化学的組成と物理化学的性状との関連性

5.1色相と芳香族成分含有量との関係

第11図に色相(ユニオン)との関係を′示したが明確な関係はな

い。外国油では色相と芳香族成分量との関係ほ不定である。国産柵

では芳香族成分の少ないものが色相小なる傾向があるように思われ

るがあまりはっきりしたものではない。

なお140℃×19時間の銅板腐食試験における着色状況との関係は

第12図のようであり,上記と同様の傾向にある〔

5.2 比重と芳香族成分含有量との関係

周知のとおり油の比重は一般にパラフィン,ナフテン,芳香族系

【一■竹

112

110

108

106

104

102

100

98

96

94

92

90

88

0上三】J)プ別i主成分15%wt以‾い

・川 井糾う三成分15%wt以_卜

()

0●

()

0 0

3hq.17.ナ■7テンーJJ三宗抽

n.25 0.30 0.35 0.40 ().45 0.50 0.55

720cm▼】の吸北.r.聖l)

第14図 粘度指数と720cm‾1の吸光度との関係

の順に大きくなる。ただし芳香族環1個を有するものとナフテン環

3個を有するものとでは,後者のはうが比重大といわれている。本

報ではナフテン系成分の量を明らかにしていないので詳細を吟味す

ることはできないが,芳香族成分%と比重との関係を求めると第

-26-

\・、l

タ ー ビ ン 油の化学的組成 と二,三の物理化学的特性

5,nO()

一1.ODO

5,000

AO

1619

-5

10

15

20

(Uし

廿l有賀

【25

-30

0印

・印

芳禿族成分15%lVt以‾

芳杏姓拭うH5%、Vt以

D=0.17.ナ7テン甚系油例外的●

巾0

ごト勺0.25 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.55

720cm▲1の吸光度D

第15図 流動点と720cm-1の吸光度

との関係

(叫\HO出切∈寸.〇蜃髄珊南)

(上)胎、舵兜町り穐咄仙状嚇空糾肛UUのか

1叫り、

・ト\

.q\

…≠

0

10 15 20 25 30

偶lヾtl

第16図 酸化安定度と芳香族成分含有率

との関係

13図のようになる。

5.3 粘度指数と720cm‾1の吸光度との関係

一般にはパラフィン成分に富む油の粘度指数は大きい。よって赤

外スペクトルにおける720cm‾1のCH3(CH2)”:乃≧6に帰属される

吸収の吸光度と粘度指数との関係を求めてみると第14図のように

なる。ばらつきは大きいが芳香族成分15%以下のものと15%以上

のものに分けてみると720cm‾1の吸光度が大きいものほど,粘度

手持数が大きい傾向にある。

5.4 流動点と720cm-1の吸光度との関係

一般に直鎖状パラフィンは流動点が高く,炭素環に直鎖7ルキル

基CH3(CH2),Z‾が結合した場合もそのアルキル基が長いほど流動点

が高くなることが知られている(3ロ)。そこで720cm‾1における吸光

度と流動点との関係を求めてみると弟15図のようになる。この場

合もばらつきは大きいが傾向的に多少の関連性を認めることができ

よう。内E社の油は他の多くの油に比較し,流動点が相当低いにも

かかわらず720cm‾1の吸光度が大きい。他の測定結果たとえば前

記した比重の測定値も異常であり,他の油とは異なったなんらかの

添加剤を加えてあるのではないかと思われる。

5.5 酸化安定度と芳香族成分含有量との関係

95℃の酸化安定度試験結果(29)と芳香族成分%との関係は第柑

図のようになり,芳香族成分約12%以下の油が良好な結果を与え

る。またさきに推定した酸化防止剤DBPCの含有量との関係を吟

味すると弟】7図に示すように,酸化安定度との関係は不定である。

もちろんタービ/油の酸化防止剤としてはDBPCのみが使われる

わけでほないので,弟17図の結果をそのままうのみにしてはなら

ない。ここではただ基油の芳香族成分の多少が酸化安定度に影響を

及ぼし重要と考えられることを指摘しておきたい。G.W.Dolby&

W.A.Ko8=e氏(31)らはDBPC添加タービン油についてヨウ素価と酸

化安定度との関係を吟味し,両者は直線的関係になることを示し,

かつDBPCの油に対する添加量の多少とはほとんど無関係なこと

を明らかにしている。すなわち筆者らの結果と似た結果である。

る.結 口

現市販の内外タービン抽について,シリカゲルクロマト分帆 赤

外線吸収スペクトル分析を行ない,化学的組成と物理化学的性状と

の関連性を吟味したが,これによってタービン油の現状を考えると

次のようなことが指摘できる。

(1)タービン狛中の芳香族成分の含有量は約8-、28%である。

外国油では15%前後のものが多く,国産油では約10%以

3、。。

00

。。。

(叫\HO出切∈吋.〇卓越北南)

(占)奄舵蕗柘嘲睨琳ど澄pのの

00

0

00

VO O.2 0,4 0.6 0.8 1.0

3,600cm‾1付近の硯光度にもとづ〈推定含有量(%wt)(D8pC)

第17図 酸化安定度とDBPC推

定含有造との関係

下のものと約20~28%のものとの2群に大別できる。

(2)タービン油中の芳杏族成分含有量ほ赤外線吸収スペクトル

から推定できる。

(3)願化防止剤DBPCに関しても赤外線吸収スペクトルから

含有量を推定でき,約0.2~1.0%添加されている。大部分

のタービン油にはこの系統の酸化防止剤が添加されている

が,これを添加していないものも若干ある。

(4)タービン油中の芳香族成分含有量は,最も広く行なわれて

いる95℃酸化安定度試験の結果と関連性があり,芳香族

成分の少ないほうが長寿命を示す。酸化安定度はもちろん

酸化防止剤の有無により大きく変わるが,本報では酸化防

止剤を加えた油のみを扱っており,酸化防止剤のきき方が

基軸の化学的組成によって変わることを示すものと考えら

れる。この点についてはすでにほかの油について報告があ

り,本報の結果ほそれらの報告における結論と同様である。

その他化学的組成と一般物理化学的特性との関係も若干吟味した

が,それらの結果は常識的なものといえる。

一方各種銘柄の油を比較検討すると化学組成l二伽こ若干の差異があ

り,赤外線吸収スペクトルによって銘柄の推定が可能である。もち

ろん今日の油は必ずしも明日の油ではないから,現在のデータで将

来の油をも割り切ることはできない。またこの研究結果から現在の

タービン油にほ,酸化防止剤,さび止め剤のほかに特殊な添加剤を

加えたものもあることが推定できる。

以上のことから外国と口木とではタービン油の製造上に考え方の

相違があるように思われるが,これほ原油の問題,製造原価なども

関係し,かつ実際_Lタービン油にほどういう性能を要求すべきかに

よって変わるものであり,一率に論じえないと思う。ただ国産油の

場合著しく精製度をあげ酸化安定度をよくした油もあるが,酸化安

定度の向上iこのみ重点をおきすぎほしないかと思われる点がある。

使用者の立場では使用寿命が長いほどよいのはもちろんであるが,

化学的に安定で劣化しにくければそれでよいというものでもない。

劣イヒはしないがさびを起こしやすいとすれば,安定度にすぐれてい

てもその実用意義ほ蒔くなる。添加タービン油が実用化されてから

すでに長く,実績も豊富なはずである。実用上酸化安定度ほどこま

で要求すればよいのか,ほかに問題ほないのかを検討する時期にき

ていると思う。他力気相さび止めタービン油が検討されつつあるこ

とにも注[ヨすべきであって,油の使用者においても要求すべき性能

について再検討を加え,油の製造者も現実のl‾と目題を十分認識して,

部分的な性能にのみ固執せず,より現実にあったバランスのとれた

-27-

1620 昭和39年10月 日 立 評 論 第46巻 第10号

油の確立につとめる必要があるのではないかと考える。

なおタービン油の化学的組成についてほさらに検討の余地がある

ので,今後関係方面においてもとりあげられることを期待する。こ

れによって得られる知見ほタービン油の実用上有用なものである。

終わりに本研究に対してご援助をいただいたわが国各石油会社の

関係各位に厚くお礼申し上げる。またご指導,ご激励くださった日

立製作所日立工場綿森副工場長,および設計関係者,日立製作所中

央研究所高橋部長,日立製作所日立研究所中牟田部長の各位に深甚

の謝意を表する。

参 勇 文 献

1

2

3

4

5

6

700

9

高橋,茂庭:目立評論3占,905(昭29-5)

高橋,茂庭:日立評論3る,993(昭29-6)

高橋,茂庭:目立評論3る,1171(昭29-7)

高橋:日立評論37,1333(昭30-9)

高橋:日立評論37,1679(昭30-12)

高橋:目立評論別冊12,95(昭31)

茂庭,本間:潤滑8,85(昭38)

茂庭:潤滑8,313(昭38)H.M.Lurton et al:ASTM STP No.321 "Symposiuln

On turbine oils”67(1962)(10)A.L.G.Lindley,F.H.S.BrolVn:Proc.Inst.Mecb.En臥,

172,627(1958)

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Reinbold(1953)

(12)J.B.Hill:Ind.Eng.Chem.,45,1399(1953)

登録新案弟729666号

(18)

(19)

(20)

1

2

3

4

5

6

7

(パ)

9

0

1

2

2

2

2

2

2

2

2

2

3

3

R.K.Frolich:Ind.Eng.Chemリ30,916(193S)L.L.Davis et al:Ind.Eng.Chem.,33,339(1941)黒沢:工化誌4占,391(1934)G.H.Von Fuchs et al:Ind.

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L.J.Bellamy:TheInfrared

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Spectra of Complex Mole-

Cules,Methuen(1954)島内:赤外線吸収スペクトル解析法,南江堂刊(1960)

A.D.Cross(名取,千原訳):赤外線吸収スペクトル入門,化

学同人社刊(1960)

西宮:石油化学,産業国書刊

岩倉:最近の物理化学実験法

S.A.Francis:Anal.Chem”

R.G.Mastin:ASTM STP

Steam Turbine Oils”(1956)

S.L.Mcdoniel

関:電力47,

E.Potiet al:

Sci.Lub.,14,

:Lub.Eng.,

36(昭38-9)

Anal.Chem.,

23(1962)

(昭34)

第1集,南江堂刊(昭32)

28,1171(1956)No.211"Symposium on

18,483(1962)

25,1461(1953)

JIS K2515(1956)

堀口:潤滑油化学,三共出版刊(昭37)G.W.Dolby.W.A.Koぽe:ASTM STP No.321"Sympo-

sium on Turbine Oil”1(1962)

(32)J.L.Jezlet al:Power Appratus and Systems,No.38

715(1958)

(33)藤田:昭石技報1,99(1957)

新 案 の 紹 介 ∈妻コ

小形電磁リレーにおけるアーマチュアの支持装置

この考案は,小形電磁リレーにおける駆動系の特にアーマチュア

の支持装置に関するもので,アーマチュア3の支点部6は,コアー1

の面に対して凸になるように緩く折り曲げられており,かつその部

分に小穴7があけられており,それにブラケツト4に設けられた軸

8が緩挿され,アーマチュア3の前後左右の位置ぎめが行なわれる。

さらにアーマチュア3の支点部6は軸8にそう入したコイルバネ9

により,一定の圧力で下向きに加圧され,上下方向の位置が規制され

る。駆動コイル2を励磁すれば,アーマチュア3はコアー1に吸引

され アーマチュア3と係合するカードを下方に移行させて接点バ

ネを作動する。駆動コイル2の励磁を断てば,アーマチュア3はカ

ードが復Iロバネにより上方に移行させられることにより復旧する。

このようにアーマチュア3の支点部はコア-1面に向かって凸にな

っているから,アーマチュア3の回動は最小の抵抗で行ないうる。またコイルバネ9はステフネスを十分に下げうるので,必要にして

十分な最小の圧力をばらつき少なくうることができる。(後藤)

-28一

9 6 7 8 2 3

JWす

森 U_J寛 美

小形電磁リレーにおけるアーマチュアの支持装置