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社会学概論 1.イントロダクション 2015.4.9 長谷川 公一 東北大学大学院文学研究科教授 k-‐[email protected]
© K. HASEGAWA
無断での引用・改変 ・配布等を禁じます
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ときどき気まぐれアンケート第1回 • 学部、学籍番号、出身高校、名前 1. 2015年は君自身にとってどういう意味を持っているのか? 2. 2030年の君自身を、できるだけ具体的に想像してみよう。 1)年齢(2030年4月1日時点) 2)職業 3)独身か、既婚か、子どもはいるかどうか 4)住んでいる場所 5)生きがい 6)社会・世界の状況 3. 2050年の君自身を、できるだけ具体的に想像してみよう。 1)年齢(2050年4月1日時点) 2)職業 3)独身か、既婚か、子どもはいるかどうか 4)住んでいる場所 5)生きがい 6)社会・世界の状況 4. この講義への学問的期待・注文(ハイレベルなことを記す) 5. 文(法・経)学部生として、東北大で学んできた感想は? 6. ひとこと自己アピール(何でもよい)
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自己紹介• 主な専門分野�環境社会学・社会運動論・社会変動論・市民社会論
• 主な著書� 『核燃料サイクル施設の社会学—青森県六ヶ所村』(共著),有斐 閣, 2012.� �『脱原子力社会へ—電力をグリーン化する』岩波新書, 2011.��『脱原子力社会の選択—新エネルギー革命の時代 増補版』新曜 社, 2011(原著1996). Constructing Civil Society in Japan: Voices of Environmental Movements, Trans Pacific Press, 2004. �『環境運動と新しい公共圏—環境社会学のパースペクティブ』有斐 閣, 2003. 『新幹線公害—高速文明の社会問題』(共著),有斐閣, 1985. ほか
© K. HASEGAWA
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自己紹介(続き)
MELON !公益財団法人!
みやぎ・環境とくらし・ネットワーク!理事長!!東北大学大学院文学研究科教授!国際社会学会「環境と社会」研究分科会会長!一般社団法人地球温暖化防止全国ネット理事長 !日本環境会議代表理事!環境社会学者!����������������������������������とうこう !
地球市民・俳人 長谷川冬虹�!!長谷川 公一 [email protected]
嬲
放射能雨
安達太良
憤怒
雷鳴
須賀川
仮設
庭
大牡丹
https://twitter.com/kohase54
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講義予定
• 講義題目 現代社会論
• 第1回 イントロダクション • 第2〜5回 社会運動と社会構想(16章) • 第6〜8回 環境と技術(8章) • 第9〜11回 組織とネットワーク(4章) • 第12〜14回 国家とグローバリーゼーション(10章) • 第15回 まとめ
テキスト 長谷川公一ほか『社会学』有斐閣(生協書籍部)
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この講義の基本的な価値前提
• 「価値からの自由」をめぐって 「価値理念や価値判断をできるだけ鮮明に(とりわけ自分自身に対して鮮明に)させることによってそれを自覚的に自己統制することを意味する」(安藤英治 『マックス・ウェーバー研究』151頁,未来社)
• この講義の基本的な価値前提 持続可能な社会をめざす(環境社会学者として) 活力ある市民社会をめざす(社会運動研究者として) 社会的公正・自己決定・連帯を重視する(社会学者として) 正義・自由・博愛に対応
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本日の講義のポイント
私たちが問われていること • 「戦後70年」とどう向き合うのか • 震災復興および福島原発事故とどう向き合うのか • 世界に向けて、将来世代に向けて、何を発信するのか
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2015年(平成27年)の意味は?
• 社会学的想像力(Sociological Imagination) Wright Mills の言葉→ 長谷川ほか(2007:512) 巨大な歴史の流れと個々人の生活史との結節点を同時に把握する
• 個人にとって(長谷川の場合) 1954年生まれ、1984年10月1日に東北大教養部に着任 60年間の後半の30年を仙台で • 君たち自身にとっての2015年の意味は?
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被災者にとって
• 被災者にとって−−−− 東日本大震災・福島原発事故から5年目、避難ぐらしも5年目 • 2015年3月:約23万人が避難生活を継続
• 福島県の避難者 約11万9000人 • 仮設住宅等への入居状況
8万7635戸 (出典:朝日新聞(2015.3.11))
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複眼的思考 • マクロな、大局的な、大づかみな把握(鳥の眼)と 細部への着目(虫の目) • 多層的・重層的なシステムと、行為者・当事者中心の視点と • 多面的な機能(正機能・逆機能、顕在的機能・潜在的機能) • 時間軸と水平軸 • 論理と直観・感性・ひらめき • 一面的な把握の弊害からどう脱却するか?
• 参考 苅谷剛彦『知的複眼思考法』(2002年、講談社+α文庫)
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戦後70年とどう向き合うのか? • 1945年の敗戦から70年 参考・白井聡『永続敗戦論』太田出版(2013年) • 「戦後」日本社会をどのように評価するか? 「平和」を維持できたのはなぜか? 「国際社会において、名誉ある地位を占め」ているか? 私たちには、〈戦後責任〉がある メルケル訪日時(2015.3)のメッセージ • 憲法を改「正」すべきか 転換点としての2016年参院選 2014年12月総選挙がもった意味
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翁長知事発言から(2015.4.5 菅官房長官に対して) http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241475-storytopic-3.html
今日まで沖縄県が自ら基地は提供したことはないということを強調しておきたい。普天間飛行場もそれ以外の取り沙汰される飛行場も基地も全部、戦争が終わって県民が収容所に入れられている間に、県民がいる所は銃剣とブルドーザーで、普天間飛行場も含め基地に変わった。 私たちの思いとは全く別に全て強制接収された。自ら奪っておいて、県民に大変な苦しみを今日まで与えて、そして今や世界一危険になったから、普天間は危険だから大変だというような話になって、その危険性の除去のために「沖縄が負担しろ」と。「お前たち、代替案を持ってるのか」と。「日本の安全保障はどう考えているんだ」と。「沖縄県のことも考えているのか」と。こういった話がされること自体が日本の国の政治の堕落ではないかと思う。 日本の国の品格という意味でも、世界から見ても、おかしいのではないかと思う。この70年間という期間の中で、基地の解決に向けてどれぐらい頑張ってこられたかということの検証を含め、そのスピードから言うと先にはどうなるのか。これもなかなか見えてこないと思う。
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分岐点としての2014〜6年 改憲か、護憲か
• 「いよいよ憲法改正に向かって 後のスイッチが押される時が来た。(中略)2016年7月に次の参院選がある。2年後に国民投票を行い、憲法改正を達成しなければならない」
(衛藤晨一首相補佐官の10月1日の演説から、朝日新聞デジタル(2014.10.1)) 集団的自衛権容認へ
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社会にとっての2015年 • 東海道新幹線開業から51年 1964年=高度経済成長のピーク 東京オリンピック開幕 本格的な高速交通時代へ 仙台ー気仙沼間は実質3倍遠くなった! 新幹線の光と影(騒音・振動公害) 東京圏一極集中化の進行 個人化の進行(複数での出張から、個人での出張へ)
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近代日本社会を二分してみると
• 1868年 明治維新(137年後、近代日本社会) • 近代日本社会の前半67年 日清・日露・第1次大戦・日中戦争(1931年満州事変〜1945年)・太平洋戦争
• 近代日本社会の後半70年 戦後日本社会
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2014年さまざまの100年
1914年(大正3年) • 阿部次郎『三太郎の日記』第一刊行から100年 • 漱石『こころ』連載から100年 1916年12月9日満49歳没 『吾輩は猫である』(1905年) • 宝塚少女歌劇団第一回公演から100年 • 東京駅竣工100年 • 三越呉服店新装開店から100年
• 近代的な都市の小市民的な文化の本格的な幕開けの時代
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『三太郎の日記』から
• 「自分は自分の過去のために、小さい墓を建ててやるような心持でこの書を編集した。自分は自分の心から愛しかつ心から憎んでいる過去のために墓誌を書いてやりたい心持でいっぱいになっている」(『合本』11頁、以下、引用頁はいずれも2008年刊の新版による、88文字に「自分」が4回も言及される)。
• 「自分は自分の悲哀から、憂愁から、希望から、失望から、自信から、羞恥から、憤激から、愛から、寂寥から、苦痛から促されてこれらの文章を書いた」(『合本』11頁)。
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第1次世界大戦勃発から100年
• 1914年6月28日 サラエボ事件により勃発 ベルエポック(19世紀末から1914年6月まで) • 2014年ウクライナ情勢 G7対ロシア 新しい冷戦の時代へ • 「イスラム国」をめぐる緊張
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日本が直面する諸課題
• 東日本大震災からの復興 • 少子高齢化への対応 • 地域再編、人口再編をどう考えるか • 中国・韓国・北朝鮮との関係改善をどうはかるか • 国際社会における日本の地盤沈下をどう食い止めるか 円安 ソニーの危機 • 気候変動問題への対応 京都議定書第2約束期間(2013年以降)からの離脱 温暖化対策の低い目標
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東日本大震災の特質と復興の困難さ いずれも、阪神・淡路大震災に比べて、復興を困難にし、復興のペースを大幅に遅らせている • 被災地域の広域性 • 過疎、人口減、高齢化、交通の不便などに悩んで来た沿岸地域の被災
• 原発事故の影響、複合性 指定廃棄物処分場建設問題 • 平成の広域合併の負の影響 運命共同体としての「浜」 • 暮らしと生業の再建をどうするのか 防潮堤建設・建築制限(高台移転)が先行
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復興に立ちはだかる行政的な壁
• 基礎自治体の疲弊 役場の被災、自治体職員の死亡、広域合併による定員削減
• 縦割り行政 復興庁の問題性 寄り合い世帯的 「査定庁」にならざるをえない • 集権的な行政 国ー県ー市町村 地方交付税頼り 一律的。地域の実情にあわせた柔軟な対応の困難・欠如
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震災は何を提起しているのか?
• 「科学・技術」が足りなかったのか? より高度な科学・技術があれば、津波被害は予測でき、そして防げたのか? 福島原発事故は防げたのか?……「技術中心主義」の考え方
• 「自然」への怖れを忘れていた私達への教訓ではないのか? 「自然」は征服できない、完全にコントロールすることはできない。「自然」の声に耳を傾け、「共生」していくしなかない。 ……「「自然」への怖れ論」の考え方
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復興についての考え方
• 震災を契機に、集約化をはかり、国際競争力を高めることこそ、「創造的復興」だ。
• 伝統的な農の論理、浜の論理、生活の論理をふまえることなくして、真の「復興」はありえない。
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福島第一原発事故とどう向き合うか • 福島第一原発事故とどう向き合うかが、東日本大震災後の日本社会のあり方、エネルギー政策、放射性廃棄物問題を考える基本前提である。
• 安倍首相が3月14日に仙台で開催された「国連防災世界会議」の演説で原発事故についてわずかに「東日本大震災と福島第一原発事故を踏まえ、長期的視点に立ってさらなる防災投資に取り組んでいます」(http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0314statement.html)としか言及しなかったのは、きわめて遺憾である。
• 元国連関係者によれば、政権交代後、現政権側は今回の「国連防災世界会議」で原発事故を扱わないようにと国連側に要請した(「環境・原発災害と防災に関するシンポジウム」(3月16日仙台で開催)でのフロアーからの発言)。
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