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耐震解析の解説書 - モデル化
12 - 1
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1.1.1.1. 解析モデルの作成解析モデルの作成解析モデルの作成解析モデルの作成
動的解析でのモデル化にあたっては、着目する構造物の振動特性を表現できるようにすることが基本となる。
ここでは複雑なモデル化ではなく、骨組みモデルの格点に有限個の質点を設けた「質点-バネ系(離散系)」で梁
要素を基本としたモデルのみを対象とする。
以下具体的なモデルに対して格点の設定方法を説明する。
1)震度法レベルのモデル化
震度法での動解は、設計水平震度を求めるための固有周期算出が中心となる。そのため複雑な振動モ-ドでは
なく1次モ-ドの挙動を表現できる程度のモデル化であれば良いことになる。1次モ-ドは構造物全体が同じ方
向に振動するような振動モ-ドであるため、下図にあるような程度の格点と質点程度で良い。不用意に格点を増
やしたところで1次モ-ドであれば、誤差は無視できる程度と考えられる。
基本的に等断面で等重量の部材は1本の梁でその中心に質点を設定する。またフ-チングのモデル化はその重心位
置に質点を設定し剛梁で設定する。上部構造は支間中央に格点を設定する程度で良い。
上部工の慣性力作用位置(桁のモデル化)は橋軸・橋直で以下の様に異なってくるため、解析方向によって上
部工の桁位置を変える必要がある。
橋軸方向モデルで脚天端位置
橋軸直角方向で上部工重心位置
橋軸方向 橋直方向
慣性力作用位置
:質点位置
:格点位置
: 剛部材
耐震解析の解説書 - モデル化
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鋼製脚の場合は、全断面有効と考えて剛性を算出するのが基本となる。ただし、充填コンクリ-トがある場合
にはコンクリ-トの重量は見込み剛性は寄与しないと考えて算出する。
震度法レベルで固有周期 T(秒)を算出する場合は、固有値解析により直接固有周期を算出するか、あるいは
次式に従って静的な水平荷重(慣性力)を載荷したときの変位から算出する方法の2通りがある。
T = ⋅2 01. δ
ここで
Ui (m)は各質点の変位
Wi (tf)はその質点の荷重
また、δは変位を表しており次式で求められる。
( )
( )δ =
⋅
⋅
∑
∑i
i i
ii i
W u
W u
2
この算出方法は、1次モ-ドのみを見るのが目的なので構造物を1自由度系に置き直したモデル化に対応してい
る。
以上の設定で得られた固有周期により道示Ⅴでは次式により設計水平震度を算出することになる。
K c Kh z h= ⋅ 0
ここで
Kh 震度法に用いる設計水平震度
Kh0 震度法に用いる設計水平震度の標準値
Cz 地域別補正係数
得られた固有周期と地盤種別に応じて設計水平震度の標準値 Kh0 が決まり、地域別補正係数Cz で補正すること
により設計水平震度が求まることになる。
鋼材+充填コンクリートの重量
鋼のみの曲げ剛性
耐震解析の解説書 - モデル化
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鋼 I 桁の場合、設計は面内剛性のみで良いが、動的解析ではそれ以外の剛性も必要となるため、通常は以下の
方法で剛性を算出して。
Es (tf/m2) = 2.1×107 鋼のヤング係数
Gs (tf/m2) = 8.1×107 鋼のせん断弾性係数
Ec (tf/m2) = 2.5×106 コンクリートのヤング係数
Gc (tf/m2) = Ec/2.3 コンクリートのせん断弾性係数
1)軸方向剛性の算出
鋼材と床版の断面積をともに考慮する。
E A E A E As s c c⋅ = ⋅ + ⋅
2)ねじり剛性の算出
鋼材を無視し床版を矩形断面と考えて算出する。
G J G Jc c⋅ = ⋅
ここで
{ ( ) }J ab ba
bac = − −34
4163
3.36 112
a>b
3)面外剛性の算出
鋼材と床版の剛性をともに考慮する。
E I E I E Is s c c⋅ = ⋅ + ⋅
ここで
I b hc =
⋅ 3
12 ( h = a )コンクリ-トの剛度
I A ysi
si i= ×∑ 2 鋼の剛度
また、yi は上部工を1本でモデル化した時の位置から各 I桁までの距離とする。つまり、y1=y4=C/2、y2=y3=C/6 。
2b(m)
C(m)
2a(m)
A1(㎡) A2(㎡) A3(㎡) A4(㎡)
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2)保耐法レベルのモデル化
保耐法レベルで設計水平震度を算出する場合は、基本的なモデル化は震度法の場合と同様に設定することがで
きる。震度法 レベルで対象とする地震動は最大で 300(gal)程度であるが、保耐レベルではタイプⅠで約 1000
(gal)、タイプⅡでは約 2000(gal)なので、このように大きな地震動が構造物に作用すれば弱点部分の断面
では塑性化すると考えられる。このように塑性化すると考えられる弱点部分の断面では、震度法レベルでの剛性
ではなく塑性化を考慮した小さ目の剛性を用意しなければ現実にそぐわないと考えられる。そのため道示Ⅴでは
降伏剛性と呼ばれる次式から剛性を設定することになっている。
KP
yyy
=δ
ここで
Py : 降伏時の耐力(降伏水平耐力とも言う)
δy : 降伏時の慣性力作用位置での水平変位(降伏水平変位とも言う)
この定義は、慣性力作用位置での水平力を増加させていった時、基部断面がちょうど降伏した時の水平力が Py
(tf)で変位がδy (m)であった場合の降伏剛性に対応する。
コンクリ-トを充填した鋼製脚の場合、震度法では考慮しなかったコンクリ-トの剛性を保耐時では考慮する
ことになる。また、上部工は塑性化しないと考えられるため、通常降伏剛性は用いないが、塑性化するような特
殊な場合には降伏剛性を考慮する必要がある。
降伏剛性から曲げ剛性を求める方法として、下図のような脚を対象とする場合であれば片持梁の公式から以下
のように算出することができる。
δyyP h
E I=
⋅⋅ ⋅
3
3
∴ E IP h K hy
yy⋅ =
⋅⋅
=⋅3 3
3 3δ
さらに梁部分を剛と考えた場合は次式で与えられる。
+−
⋅
⋅⋅=⋅ hh
hhhhK
IE y 333 0
200
ここで
h : 基部から慣性力作用位置までの高さ(m)
h0 : 基部から梁下端位置までの高さ(m)
h
h0
載荷位置
剛部材
EI
h
Py
δy
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3)鋼製脚の非線形動解用モデル(コンクリ-トを充填した単柱)
コンクリ-トを充填している鋼製橋脚に対しては、基本としては基部が最初に塑性化するように(脚の弱点)
設計しなければならない。モデル化では下図のようにコンクリ-ト部との境界で M –θバネで設定する方法と鋼
断面部を弾性部材として設定する2通りがある。
鋼断面を弾性部材として設定する場合では、解析後に設定したように弾性域でとどまることを確認しなければ
ならない。また、M –θバネとして設定する場合にはその設定に関して注意を要する。この意味は、コンクリ-
トが充填されてない鋼断面部分の復元力特性に関しては、終局の設定が十分検討されてないため2次勾配をどの
ように設定すれば良いのかと言う問題と、どこまでの塑性化を許すのかと言う問題が残っているためである。
コンクリ-ト充填部は保耐計算で得られた M-φ関係を用いてバイリニア型の復元力特性を設定することがで
きる。
また、非線形動解の解析ソフトには、非線形の評価位置として、部材の端と中央の2通りがある。部材中央で
評価する場合であれば、モデル化で格点の設定は重要となってくる。例えば、脚基部の非線形性を見る場合には
基部の部材を短くしなければ正しく基部での曲げモ-メントを得ることはできなくなる。そのため、例えば 10
(cm)程度の短い梁部材を設定することでこの問題を回避しなければならない。
2 m 1 m 評価点
評価点?
⇒ 格点の追加
上部構造
鋼断面
コンクリ-ト
基礎・地盤
M -θ
M -φ
弾性部材
M -φ
剛部材
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4)鋼製脚の非線形動解用モデル(コンクリ-トを充填しない単柱)
繰り返し載荷実験より得られた復元力特性により下図にあるような1自由度系モデルが基本となる。
あるいは、基部に M –θバネを用意し P-δ関係と整合性を取れる様にする方法もある。
繰り返し載荷実験で得られた復元力特性と許容塑性率はあらゆるタイプに対してのデ-タではないため、幅厚
比や細長比等により復元力特性と許容塑性率が決められるような補間式が必要となる。
コンクリ-ト充填をしてない鋼断面に関しては注意を要する。
5)RC 部材の非線形動解用モデル
RC 部材に関しては「道路橋の耐震設計に関する資料 平成10年1月」を参考にすると M –θバネと M-φ関係の組
み合わせで設定することができる。
P-δ関係
M -θ
鋼断面
基礎・地盤
上部構造
塑性ヒンジ長 M –θバネ
M-φ関係
M –θバネ
塑性ヒンジ長
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ここで塑性ヒンジ長 Lp 範囲には M-θバネを設定するものとする。
M-θ、M-φ関係ともにトリリニア型を仮定する。この設定は道示Ⅴで与えられている保耐計算より得られる
M-φ関係を基本に作成することができる。
ここで、M-φ関係関係から M-θバネの設定をするためには、ひび割れや初降伏時での回転バネによる上部構造
での慣性力作用位置での変位が道示Ⅴ9.3 で規定される上部構造での慣性力作用位置で生じるひび割れや初降伏
時での変位にそれぞれ一致すると言う方針で求めてある。
具体的には、保耐で得られる M-φ関係から以下の式で求められることになる。
cppc MM ⋅β= p
ppcpc L
β⋅α+
⋅⋅φ=θ2
1 2
00 yppy MM ⋅β= p
pppypy L
β⋅α⋅γ+
⋅⋅φ=θ2
100
upu MM = ( ) pyupypu L⋅φ−φ+θ=θ 0
ここで
h
Lpp −=α 1
h
Lpp ⋅
−=β2
1
′
−
⋅
φφ−
+
φφ=γ
LLp
yc
yc
p 1100
hMML
yc ⋅
−
=′
01
Mc φc ひびわれ時の曲げモ-メント(tfm) 曲率 (1/m)
My0 φy0 初降伏 曲げモ-メント(tfm) 曲率 (1/m)
My φy 降伏曲げモ-メント(tfm) 曲率 (1/m) φy = φy0(Mu/My0)
Mu φu 終局曲げモ-メント(tfm) 曲率 (1/m)
非線形回転バネについては添え字 p をつけてある。
Lp 弾塑性回転バネ M-θバネ
θ
M
Mpu
Mpy0
Mpc
θpc θpy θpu φ
M
Mu
My0
Mc
φc φyo φu
⇒
変更
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RC の場合はタイプⅠとⅡで M-φ関係が異なるため、非線形動的解析では2種類の設定を必要とする点が、鋼
材と異なっている。参考として、RC 部材でのM-φ関係から M-θ関係を設定する例を示す。
保耐計算によりひび割れ、初降伏、終局での M-φ関係を得る。
Mc tfm 4947.9 ひび割れ
φc 1/m 5.25E-05
My0 tfm 16124.0 初降伏
φy0 1/m 0.000614
Mu tfm 19446.1 終局
φu 1/m 0.013066
M-θ関係の設定に必要な緒元
塑性ヒンジ長 Lp m 2.00
基部から慣性力作用位
置までの距離
H m 15.197
αp 0.8684
βp 0.9342
γp 1/m 0.8264
補正係数
L’ tfm 10.5335
M-θ関係
Mc tfm 4622.3 ひびわれ
θc rad 9.86E-05
My0 tfm 15063.0 初降伏
θyc rad 0.001129
Mu tfm 19446.1 終局
θu rad 0.025779
M-φ関係
0
5000
10000
15000
20000
25000
0 0.004 0.008 0.012 0.016
曲率φ(1/m)
曲げ
モ-
メン
トM
(tf
m)
M-θ関係
0
5000
10000
15000
20000
25000
0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03
回転角θ(rad)
曲げ
モ-
メン
トM
(tf
m)
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具体的な格点の設定に関しては、上部工では1~3次モ-ドを表現できるように下図程度とする。
ラ-メン橋の橋軸方向の脚については、脚の高さの 1/2 を6分割、脚全体で12 分割程度とする。
1本柱の橋脚とラ-メン橋の橋軸直角方向については、脚の高さの 1/2 より下を6分割、上は 4 分割程度とす
る。
これはあくまでも参考なので、橋脚高さが 70m 以上や変断面等ではさらに分割しなければならない。
L2
L2/10
10 等分の分割
10 等分の分割
を更に 2 分割
6 分割
6 分割
塑性ヒンジ領
塑性ヒンジ領
4 分割
6 分割
塑性ヒンジ領域
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12 - 10
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2.2.2.2. 回転質量回転質量回転質量回転質量
構造物をモデル化する場合に格点数を減らすために、数本の桁を1つにするような下図のようなモデル化が行
われる場合がある。
また、フ-チングのように横に広く重量のある部分であっても梁部材でモデル化が行われている。
この様なモデル化には注意を必要とする。
例えば、下図のように実際のフ-チングを回転させようとする場合と重心位置に質量を付加したモデルで比較
すると、実際のフ-チングは回転に対して大きく抵抗するが、右のモデルでは抵抗しないことになる。そのため
動的解析を行なうとこのようなモ-ドに対しては異なる結果を与える可能性がある。
そのため、このような回転に対する挙動を等価にするため回転質量 J(tfs2m)と呼ばれる次式で定義される物
理量を考慮する必要がある。質量は並進運動に対するしずらさを表す物理量であるが、回転に対してのそれは回
転質量と呼ばれる物理量で表される。
回転質量は次式で定義される。
2kk
krmJ ⋅≡∑
ここで
kr k 部分の回転の中心からの距離
km k 部分の質量
質量 m
回転質量 J
→
質量 2m 回転質量 2mr2
質量 m
↓
m
m
r
2m 2mr2
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以下具体的な形状で回転質量を求める。まず、質量 M の等断面の一本棒(長さ 2A)の回転質量を求めると
23
23
2322
AM)A(A
Mdxx)A
M(JA
A=××=⋅= ∫
+
−
従って
J M A=3
2
次に、質量 M の3つの辺が各々(2A、2B、2C)の長さの直方体の回転質量を求める。考え方として、軸方向
から見た下図の形状を横にx軸、縦にy軸を設定し微少区間で回転質量を求め寄せ集めることで構造物の回転質
量が得られる。
)BA(M
BAABABM
dxdy)yx()BA
M(JB
B
A
A
22
33
222
3
223
2234
22
+⋅=
××+××
⋅=
+⋅×
= ∫∫+
−
+
−
従って
J M A B= +3
2 2( )
この関係は、フ-チング等の構造物を質点で表現する場合にしばしば利用される。
回転質量 J を持つ系の運動は、通常の運動方程式と回転方程式と呼ばれる2つの方程式が基礎方程式となる。
運動方程式とは並進に対する制限式で、回転方程式は回転に対する制限を与える方程式と見ることができる。こ
の方程式より、質量 m は並進運動に対するし難さ表す物理量、回転質量 J は回転運動に対するし難さを表して
いることが分かる。
まず、質点 m に対する運動方程式は
)( xkLxzm ⋅−=θ⋅++⋅ &&&&&&
2A
dx
z x Lθ
θ
θ
m
J
L KH
K
2C
2B
2A
2A
2B
dy
dx
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剛体 J に対する回転方程式は
( ) θ⋅−θ⋅++⋅−=θ⋅ HkLxzmJ &&&&&&&&
この2つの方程式を比較すると
m ⇔ J
x ⇔ θ
が対応していることが分かる。これらの方程式を解くことでこの系の運動を知ることができる。この方程式を行
列で表現すると
zL/Jm
mmm
Lx
L/kk
Lx
L/Jmm
mm
R&&
&&
&&⋅
⋅
+
=
θ⋅
⋅
+
θ⋅
⋅
+ 0
100 222
となる。この方程式より固有値や固有ベクトルが得られ、刺激係数等も算出することができる。
ここで用いた回転方程式は運動方程式から導くことができる。次にこの導出を説明する。例として2次元平面
での運動方程式から出発する。
Frdtdm
rr=⋅ 2
2
質点 m の位置ベクトルで両辺ベクトル積をとると
Frrdtdrm
rrrr×=×⋅ 2
2
ここで、各運動量 L と外力のモ-メント N を用いて変形すると
( )
( )
Ldtd
prdtd
rrdtdmrrmrrmr
dtdrm
r
rr
&rr&r&r&&rr&rr
≡
×≡
×⋅=×⋅+×⋅=×⋅=左辺
NFrrrr
≡×=右辺
従って、回転の方程式は
NLdtd rr
=
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運動方程式を、運動量 p を用いて表すとその対応関係が良く分かる。
FPdtd rr
=
次に、平面問題では x、y 座標より極座標で表現するとすっきりと表現できる場合が多々あるため、座標を変換
しておく。
θ⋅= cosrx
θ⋅= sinry
とおくと、角運動量は
( )( )θ⋅⋅=
θ⋅θ+θ⋅⋅=
θ⋅θ⋅⋅θ⋅+θ⋅θ⋅θ⋅⋅=
⋅−⋅
⋅=
&
&
&&
2
222
rm
sincosrm
sinrsinrcosrcosrm
dtdxy
dtdyxmL
この関係を回転方程式に用いると、
( ) Nrmdtd =θ⋅⋅⋅ &2
ここで、回転質量 J を定義すると
2rmJ ⋅≡
回転方程式は次のように回転質量を用いて表現できる。
( ) NJdtd =θ⋅⋅ &
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3.3.3.3. 復元力特性復元力特性復元力特性復元力特性
鋼製脚では、バイリニア型やトリリニア型であっても共に移動硬化則を用いることが多いが、RC 造の繰り返
し載荷実験では鋼の場合と異なり、剛性が繰り返しにより大きく劣化するため、剛性低下型と呼ばれるタイプの
復元力特性を用いる場合が多い。特に、通常の RC 部材では武田、武藤モデル、PC では原点指向型を推奨する
報告もある。
ここでは、これらの履歴法則について概要を説明することにする。
1)バイリニア + 移動硬化則
骨格をバイリニアとして移動硬化側を用いた場合は下図のように、平行四辺形の形状になるような履歴に従う。
降伏~
戻り勾配は初期勾配 K1に従う。
2)トリリニア + 移動硬化則
骨格をトリリニアとして移動硬化側を用いた場合は下図のような履歴となる。
降伏~
戻り勾配は初期勾配 K1、2次勾配 K2に従う。
K1
K1 K2
K2
K3
K3
K1
K2
M
φ
M
φ
K1 K1 K1
K2
K2
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3)武田モデル(バイリニア)
骨格曲線がバイリニアで履歴法則は下図のようになる。
4)Clough モデル(バイリニア)
骨格曲線がバイリニアで履歴法則は下図のようになる。
武田モデル
-12000
-8000
-4000
0
4000
8000
12000
-0.040 -0.020 0.000 0.020 0.040
変位δ(m)
水平
力P(
tf)
Cloughモデル
-12000
-8000
-4000
0
4000
8000
12000
-0.040 -0.020 0.000 0.020 0.040
変位δ(m)
水平
力P(
tf)
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5)武藤モデル(トリリニア)
このモデルは剛性低下型トリリニアモデルの一つである。
ひび割れ~降伏
原点を目指して減少する原点指向型となる。
この間で残留変位を生じることはない。
降伏~
降伏剛性 EIp で減少
曲げモ-メントがゼロの軸を横切ってからは、過去の最大点・最小点を目指す
武藤モデル
-40000
-30000
-20000
-10000
0
10000
20000
30000
40000
-0.006 -0.004 -0.002 0.000 0.002 0.004 0.006 0.008
回転角θ(rad)
曲げ
モ-
メン
トM
(tf
m)
残留変位を生じない 戻り勾配は同じ
EIp EIp
φ
M
降伏
ひび割れ
φmax
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武田モデル
-30000
-20000
-10000
0
10000
20000
30000
40000
-0.006 -0.004 -0.002 0.000 0.002 0.004 0.006 0.008
回転角θ(rad)
曲げ
モ-
メン
トM
(tf
m)
残留変位を生じる 戻り勾配は同じ
6)武田モデル(トリリニア)
このモデルは剛性低下型トリリニアモデルの一つである。
ひび割れ~降伏
反対側の第1折れ点を目指して減少する。曲げモ-メントがゼロの軸を横切ってからは、過去の最大
点・最小点を目指す
この間で残留変位を生じる。
降伏~
塑性化に応じて以下の戻り剛性 EIdで減少する(負側はφmin となる)
EId = EIs ・|φmax/φy|-β
ここで
EIs 第2折れ点での戻り剛性
φy 降伏時曲率
β 剛性低下指数(通常は 0.4)
曲げモ-メントがゼロの軸を横切ってからは、過去の最大点・最小点を目指す
EId EIs
φ
M
降伏
ひび割れ
φmax
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7)原点指向モデル
骨格曲線はトリリニアモデルで、履歴法則は下図のように、除荷時には原点に向かう直線上にのるようになっ
ている。
8)最大点指向モデル
骨格曲線はトリリニアモデルで、履歴法則は下図のように、過去の最大点に向かう直線上にのるようになって
いる。
M
φ
残留変位は生じない
M
φ
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9)軸力変動モデル
ラ-メン構造等のように地震動により軸力が生じこの軸力により降伏曲げモ-メントが変わることが知られて
いる。このような構造を扱うためには軸力変動を考慮した復元力特性が必要になる。
この復元力特性は、下図のような M-N 相関と呼ばれる軸力と降伏曲げモ-メントの関係を用意し対象として
いる部材の軸力が N1 であれば、その時の降伏曲げモ-メントがMy(N1)となり、軸力 N2 であれば降伏曲げモ
-メントがMy(N2)とになると言う履歴に従うことになる。
骨格曲線としては初期の勾配と2次の勾配を設定しておけば必要な情報は足りることになる。
また、バイリニア以外でも同様の考え方を拡張することもできる。
軸力変動を考慮することで、構造物の塑性化する部分の順番が変わるため軸力を考慮しない場合とくらべ応答
値が大きくなる場合もある。
10)ファイバ-モデル
ファイバ-モデルとは、梁を複数のファ-バ-(繊維)の集合体と見なして、各ファイバ-を等価な直バネに
置き直し軸力と曲げモ-メントの連成を考慮できるようにしたモデルである。
ただし、この計算では図心軸に垂直な平面を保持すると言う仮定を置くことになる。
M-φモデル等では非線形性を荷重 P や曲げモ-メント M と言った断面力で指定していたが、ファイバ-モデ
ルでは、各要素に応力-ひずみ関係を指定することになる。
また、平面保持を仮定しているため、軸力変動に対しては敏感になり易いと言う問題点が知られている。
φ
My(N2)
My(N1)
M
M
N(圧縮)
My(N1) My(N2)
N1
N2
yi
各ファイバ-(i)に Ei、Ai を設定する
I端
J 端
ファイバ-要素
耐震解析の解説書 - モデル化
12 - 20
(C) 2002 鋼橋ネットサービス
11)2パラメ-タモデル(宇佐美モデル)
コンクリ-トを充填した鋼製橋脚に対して、剛性低下αと強度劣化βを用いて局部座屈と P-Δ効果を考慮した
復元力特性を用いる。
骨格曲線は以下の様に定義される。
初期剛性 K0は以下のように定義される。
y
yHK
δ≡0
ここで、Hy はフランジ板の局部座屈を考慮した梁-柱の極限強度照査式から求められる荷重であり、δy はせん
断変形を含んだ次式で定義される。
002
31 yy
y
wy H
H
hAGIE δ⋅⋅
⋅⋅
⋅⋅
+≡δ
h
MH y
y ≡0
IE
hHyy ⋅⋅
⋅≡δ
3
30
0
ここで、
Hy0 は軸力が作用せず水平力のみが作用した場合の初期降伏荷重
δy0 は Hyo に対応する水平変位
My0 は降伏モ-メント
h は柱の高さ
E は弾性係数
Iは断面2次モ-メント
G はせん断弾性係数
Aw はウエブの断面積
K0
K1
K2
δy δm
-δm -δy
H
Hm
Hy
-Hy
-Hm
δ
耐震解析の解説書 - モデル化
12 - 21
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硬化域剛性 K1 は、最大荷重 Hm およびδm で決められるが、これらの値は、単調載荷実験により得られた最
大荷重を使用するのが望ましい。
劣化域剛性 K2は以下のように定義される。
( ) λ⋅+⋅⋅−=δ
⋅y
fy
yPP.R.
HK 109250 2
0
02 無補剛断面
( ) ( ) λ⋅+⋅⋅γγ−⋅−=
δ⋅
yf
y
yPP.R
*.
HK 10102780 2
0
02 補剛断面
ただし、適用範囲は、1≦ γ/γ* ≦ 5 であり、3≦ γ/γ* ≦ 5 の時は、γ/γ* = 3 とする。また、
( )
2
2
4112π⋅
ν−⋅⋅σ
⋅⋅
=Etn
bR yf
Er
h yσ⋅
π⋅=λ 12
ここで、
b はフランジ板幅
b はフランジ板厚
σy は降伏応力
n 補剛材で囲まれたサブパネル数
r 断面2次半径
P/Py は準静的実験中に載荷した軸力 P と軸力のみが載荷された時の全断面降伏軸力 Py の比
(Py = Aσy で A は橋脚基部の断面積)
履歴法則は、箱型断面の局部座屈強度を支配するフランジの幅厚比パラメ-タ Rf、柱の全体座屈強度を規定す
る細長比パラメ-タλの各パラメ-タ値により3つのタイプに分類され、それぞれに対して履歴法則が規定され
ている。
A タイプ 無補剛箱形断面で Rf>0.6
補剛箱形断面で Rf>0.5
B タイプ 無補剛箱形断面で Rf≦0.6 、 λ > 0.4
補剛箱形断面で Rf≦0.5 、 λ > 0.4
B タイプ 無補剛箱形断面で Rf≦0.6 、 λ < 0.4
補剛箱形断面で Rf≦0.5 、 λ < 0.4