49
2 2 地域公共交通の現状 (1) 地域の概況及び地域公共交通の現状 ここがポイント! 近年、地域公共交通を取り巻く環境は大変厳しい状況にあります。 まず、全国の社会経済情勢を見ますと、人口減少・少子高齢化が進展しており、2050 年 には総人口が 1億人以下、高齢化率(人口における 65 歳以上人口の割合)は約 40%にもな ると推計されています。このような人口減少・少子高齢化は、都市圏と地方圏で傾向が異な り、地方圏から三大都市圏へ著しく人口が流出しているために、地方圏における人口減少・ 少子高齢化は特に深刻な状況となっています。また、地方圏では自家用車の利用が増え、公 共交通機関のシェアは近年低下している状況です。 地方圏における地域公共交通は、利用者が減少することにより、交通事業者の経営状況が 圧迫され、赤字路線を廃止せざるを得ない等、維持が困難な状況にあります。地域鉄道は約 8 割の事業者が赤字を抱え、乗合バス交通は民間事業者の約 7 割、公営事業者の約 9 割が赤 字となっています。このように、地方圏における交通事業者は厳しい経営状況に陥ってお り、地域公共交通はますます衰退し、今後必要な公共交通サービスを受けることのできない 地域住民が増加する等、危機的な状況にあります。 地方圏の自動車交通の特徴として、自ら自動車を運転する高齢者の割合が多く、高齢者の 交通事故が増加しています。車を運転することができない高齢者は、日常生活において不便 な思いをしていることが多く、例えば買い物をするために非常に不便な思いをする「買い物 難民」の増加等が問題視されています。 このような、地方圏の交通不便地域に住む高齢者等に向けて、地域公共交通による移動支 援が喫緊の課題となっています。

2 地域公共交通の現状 - mlit.go.jp2 2 地域公共交通の現状 (1) 地域の概況及び地域公共交通の現状 ここがポイント! 近年、地域公共交通を取り巻く環境は大変厳しい状況にあります。

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Page 1: 2 地域公共交通の現状 - mlit.go.jp2 2 地域公共交通の現状 (1) 地域の概況及び地域公共交通の現状 ここがポイント! 近年、地域公共交通を取り巻く環境は大変厳しい状況にあります。

2

2 地域公共交通の現状

(1) 地域の概況及び地域公共交通の現状

ここがポイント!

近年、地域公共交通を取り巻く環境は大変厳しい状況にあります。

まず、全国の社会経済情勢を見ますと、人口減少・少子高齢化が進展しており、2050 年

には総人口が 1 億人以下、高齢化率(人口における 65 歳以上人口の割合)は約 40%にもな

ると推計されています。このような人口減少・少子高齢化は、都市圏と地方圏で傾向が異な

り、地方圏から三大都市圏へ著しく人口が流出しているために、地方圏における人口減少・

少子高齢化は特に深刻な状況となっています。また、地方圏では自家用車の利用が増え、公

共交通機関のシェアは近年低下している状況です。

地方圏における地域公共交通は、利用者が減少することにより、交通事業者の経営状況が

圧迫され、赤字路線を廃止せざるを得ない等、維持が困難な状況にあります。地域鉄道は約

8 割の事業者が赤字を抱え、乗合バス交通は民間事業者の約 7 割、公営事業者の約 9 割が赤

字となっています。このように、地方圏における交通事業者は厳しい経営状況に陥ってお

り、地域公共交通はますます衰退し、今後必要な公共交通サービスを受けることのできない

地域住民が増加する等、危機的な状況にあります。

地方圏の自動車交通の特徴として、自ら自動車を運転する高齢者の割合が多く、高齢者の

交通事故が増加しています。車を運転することができない高齢者は、日常生活において不便

な思いをしていることが多く、例えば買い物をするために非常に不便な思いをする「買い物

難民」の増加等が問題視されています。

このような、地方圏の交通不便地域に住む高齢者等に向けて、地域公共交通による移動支

援が喫緊の課題となっています。

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3

ア 交通を取り巻く社会経済情勢の変化 (ア) 人口減少と高齢化の進展 日本の総人口はこれまで増加してきましたが、2005年を境に減少局面にあり、 今後、さらに人口減少が進むことが予想されます。2045年には1億人程度となるという

見通しが立てられています。

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,00019

50

1955

1960

1965

1970

1975

1980

1985

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

2030

2035

2040

2045

2050

2055

0~14歳 15~59歳 60~64歳 65~69歳

70~74歳 75歳以上

(千人)

出典:国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(H18.12) 中位推計

また、少子高齢化も急速に進行しており、2050年には総人口の約40%が65歳以

上になる見通しとなっています。今後さらに増加する高齢者の移動を支えることが非常に

重要となります。

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

2024

2025

2026

2027

2028

2029

2030

2031

2032

2033

2034

2035

2036

2037

2038

2039

2040

2041

2042

2043

2044

2045

2046

2047

2048

2049

2050

総人口

15歳未満割合

65歳以上割合

(総人口:千人) (15歳未満率)(65歳以上率)

(年)

2005年約20.0%

2023年約30.0%

2050年約40.0%

2005年約1.27億人

2024年約1.20億人

2045年約1億人

2050年約9500万人

2005年約14.0% 2025年

約10.0%

2050年約8.5%

(2005~2009年:総務省「人口推計」、2010~2050年:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(中位推計))

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4

(イ) 地方から都市部への人口流出 三大都市圏及び地方圏における人口移動を見ると、地方圏から三大都市圏への人口流出

が断続的に続いており、近年も止まらない状況となっています。人口移動に伴い都市圏と

地方圏の公共交通サービスの格差が大きくなっており、地方圏では自家用車がなければ自

由に移動することができない等の問題が発生しています。

三大都市圏と地方圏の人口増減率を 2005 年からの推移で見ると、人口減少は地方圏にお

いて顕著に見られます。

三大都市圏と地方圏の人口増減率(推計) 増減率(%)

0.4

▲ 0.8 ▲ 2.7

▲ 5.2

▲ 8.3

▲ 4.1

▲ 7.1

▲ 10.6

▲ 14.5

▲ 18.5

▲ 20.0

▲ 15.0

▲ 10.0

▲ 5.0

0.0

5.0

2005 2015 2020 2025 2030 2035

三大都市圏

地方圏

出所:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所

「日本の都道府県別将来推計人口(平成19年5月推計)」により国土交通省作成三大都市圏:東京圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)名古屋圏(岐阜・愛知・三重)関西圏(京都・大阪・兵庫・奈良)地方圏:三大都市圏以外

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(ウ) 地方部の人口流出と経済活動の停滞 転入超過人口は、東京圏への一極集中が続いている状況であり、一方の経済面におい

ては、地域別 GDP の推移を見ると、三大都市圏以外の地方圏において GDP が伸び悩ん

でいます。地方圏の人口減少及び経済活動の衰退に伴い、地域公共交通を支える基盤が

失われつつあり、更なる衰退が懸念されます。

転入超過数の推移 地域別GDPの推移

-200,000

-150,000

-100,000

-50,000

0

50,000

100,000

150,000

200,000

東京圏 名古屋圏 大阪圏 地方圏

転入超過数(

人)

(マイナスは転出超過)

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

三大都市圏計 地方圏計

(%)

(出典)総務省「住民基本台帳人口移動報告」、内閣府「国民経済計算」をもとに国土交通省公共交通政策部作成。

(注)上記の地域区分は以下のとおり。

東京圏:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県 名古屋圏:岐阜県、愛知県、三重県

大阪圏:京都府、大阪府、兵庫県、奈良県

三大都市圏:東京圏、名古屋圏、大阪圏 地方圏:三大都市圏以外の地域

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(エ) 都道府県別の将来人口推移 都道府県ごとの将来人口の推移を見ると、30年後には東京と沖縄しか現在の人口を維持

することができない見通しとなっています。

10年後の都道府県別人口増減(対H17)

-10.0

-9.0

-8.0

-7.0

-6.0

-5.0

-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

北海道

青森県

岩手県

宮城県

秋田県

山形県

福島県

茨城県

栃木県

群馬県

埼玉県

千葉県

東京都

神奈川県

新潟県

富山県

石川県

福井県

山梨県

長野県

岐阜県

静岡県

愛知県

三重県

滋賀県

京都府

大阪府

兵庫県

奈良県

和歌山県

鳥取県

島根県

岡山県

広島県

山口県

徳島県

香川県

愛媛県

高知県

福岡県

佐賀県

長崎県

熊本県

大分県

宮崎県

鹿児島県

沖縄県

[%]

30年後の都道府県別人口増減(対H17)

-35.0

-30.0

-25.0

-20.0

-15.0

-10.0

-5.0

0.0

5.0

北海道

青森県

岩手県

宮城県

秋田県

山形県

福島県

茨城県

栃木県

群馬県

埼玉県

千葉県

東京都

神奈川県

新潟県

富山県

石川県

福井県

山梨県

長野県

岐阜県

静岡県

愛知県

三重県

滋賀県

京都府

大阪府

兵庫県

奈良県

和歌山県

鳥取県

島根県

岡山県

広島県

山口県

徳島県

香川県

愛媛県

高知県

福岡県

佐賀県

長崎県

熊本県

大分県

宮崎県

鹿児島県

沖縄県

[%]

※国立社会保障・人口問題研究所「日本の都道府県別将来推計人口(H19.5月推計)」より作成

(オ) 市町村ごとの人口の推移 市町村レベルの過去 10 年の人口推移を見ると、ブロック中枢都市や都道府県庁所在都

市では人口が増加する一方、小規模の市町村における人口減少は深刻なものとなっていま

す。

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(カ) 地方の高齢化の進展 高齢化率は平成 17 年時点で全国平均 20%を超えており、地方圏では都市圏に比べ、よ

り高齢化が進行している状況にあります。

S50

高齢者人口の割合■: 5%以下■: 5~10%■:10~20%■:20~30%■:30~40%■:40%超~

H17

高齢者人口の割合■: 5%以下■: 5~10%■:10~20%■:20~30%■:30~40%■:40%超~

S50 H17 差(H17-S50)

全国 7.9% 20.1% 12.2%

都市圏内 7.4% 19.2% 11.8%

都市圏外 11.2% 27.7% 16.5%

表 圏域別の高齢化率の推移

注)高齢者人口とは、65歳以上人口。注)都市圏は、「都市・地域レポート2005」により設定された85都市圏を用

い、平成18年度末の市町村合併により、既に都市圏に編入された区域を合わせて都市圏と整理した。 出典:国勢調査・地域メッシュ統計(総務省)

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イ 都市・地域内の公共交通の概況 (ア) 交通手段別の利用率の変化 地域別に交通手段利用率の変化をみると、三大都市圏においては、特に鉄道が重要な役

割を有しており、地方都市圏においては、バスを除く自動車による運送が重要度を増して

います。一方で、地方都市圏においては公共交通機関のシェアが小さくなっており、三大

都市圏においても、特に休日において公共交通のシェアが低下している状況です。自動車

の利用割合が増え、公共交通機関の利用が減少している今日の状況を踏まえ、自動車を運

転することのできない高齢者等の交通手段の確保が重要な課題となっています。

鉄道 バス 自動車 二輪車 徒歩・その他

12.1

14.2

14.0

13.8

33.6

38.7

42.1

44.7

22.9

19.2

19.3

18.5

27.4

24.1

21.4

20.3

2.8

3.2

3.9

3.9

0% 20% 40% 60% 80% 100%

S62

H4

H11

H17

全国

7.7

8.0

7.8

7.5

45.6

53.4

59.6

63.0

21.8

17.5

15.8

13.2

21.8

18.6

14.7

14.7

1.7

2.1

2.6

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

S62

H4

H11

H17

全国

22.4

25.6

23.9

23.3

26.3

29.0

33.4

33.7

19.7

16.9

18.2

18.5

28.3

25.2

21.7

22.0

2.5

2.8

3.2

3.3

0% 20% 40% 60% 80% 100%

S62

H4

H11

H17

三大

都市

14.5

15.0

13.3

12.6

37.6

44.4

52.2

53.9

20.6

16.8

16.0

14.3

24.2

21.4

16.4

17.6

3.0

2.4

2.2

1.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

S62

H4

H11

H17

三大

都市

2.5

2.9

3.3

3.6

40.5

48.2

51.4

56.4

25.9

21.4

20.4

18.5

26.7

22.9

21.1

18.5

3.0

3.8

4.5

4.5

0% 20% 40% 60% 80% 100%

S62

H4

H11

H17

地方

都市

1.9

1.9

2.2

2.1

52.4

61.2

67.2

72.6

22.7

18.1

15.5

12.0

19.7

16.1

13.0

11.6

3.3

2.7

2.1

1.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

S62

H4

H11

H17

地方

都市

全国

三大都市圏

地方都市圏

平日

平日

平日

休日

休日

休日

出典:「都市における人の動き-平成17年全国都市交通特性調査の結果から-」(平成19年5月 ) 図 都道府県別の交通手段分担率の推移

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9

国勢調査における通勤通学時の交通手段利用率を見ると、全交通手段に対する自家用車

の分担率は全国的に上昇しており、地方圏においてその傾向が顕著に見られます。ほとん

どの県で、自家用車の分担率が 3%以上上昇しています。公共交通手段(鉄道・バス)の分

担率の増減は、自家用車とは逆の傾向を示しており、都市圏は高く、地方圏は低くなって

います。このように、通勤通学時に自家用車を利用することで、公共交通利用者が減少し、

公共交通事業者の経営状況がさらに圧迫され、路線を廃止せざるを得ない状況に陥るとい

う悪循環が懸念されます。

H22 年国勢調査の交通手段分担率は速報値

公共交通分担率の増減(平成 12 年⇒平成 22 年)

自家用車分担率の増減(平成 12 年⇒平成 22 年)

【凡例】分担率の推移

【凡例】分担率の推移

出典:国勢調査より算出

(通勤通学の総数のうち、

自家用車を利用する率)

出典:国勢調査より算出

(通勤通学の総数のうち、

鉄道またはバスを利用する

率)

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ウ 鉄道・バス事業者の経営状況の概要 (ア) 地域鉄道をめぐる危機的状況 全国の地域鉄道は平成 22 年 4 月 1 日現在で中小民鉄 50 社、第三セクター鉄道 42 社が

ありますが、これらの鉄道事業者も利用者の減少等により経営状況が悪化しています。鉄

道の輸送人員は逓減傾向にあり、約8割の事業者が赤字を抱える状況です。このままさら

に利用者の減少が進めば、鉄道事業者にとって赤字路線を維持することは困難となり、廃

止路線の増加が懸念されます。現に、平成 12 年度以降に廃止された鉄軌道は全国で 33 路

線・634.6 ㎞(東京-八戸間に匹敵)におよび、地域鉄道の経営状況は危機的状況にあると

いえます。

・ そ  の  他  :上記以外で、事業構造の変更に伴って第三セクター化した鉄道事業者

 ・ 転換鉄道等  :旧国鉄のローカル線又は旧国鉄の工事凍結線で日本鉄道建設公団により建設された路線の経営を承継した鉄道事業者

・ 並行在来線  :整備新幹線の開業に伴い、JR旅客鉄道株式会社から分離される並行する在来線の経営を承継した鉄道事業者

秋田内陸縦貫鉄道

三陸鉄道

青い森鉄道

IGRいわて銀河鉄道

山形鉄道

阿武隈急行

会津鉄道

野岩鉄道

わたらせ渓谷鐵道

しなの鉄道

北越急行

由利高原鉄道

鹿島臨海鉄道

真岡鉄道

いすみ鉄道

長良川鉄道

樽見鉄道

北近畿タンゴ鉄道

天竜浜名湖鉄道

明知鉄道

若桜鉄道

智頭急行錦川鉄道

井原鉄道

伊勢鉄道

愛知環状鉄道

信楽高原鐵道

平成筑豊鉄道

土佐くろしお鉄道

阿佐海岸鉄道

北条鉄道

甘木鉄道

松浦鉄道

南阿蘇鉄道

くま川鉄道

肥薩おれんじ鉄道

のと鉄道

万葉線

富山ライトレール伊賀鉄道

えちぜん鉄道

ひたちなか海浜鉄道

  

上 田 電 鉄

和歌山電鐵

一 畑 電 車

神 戸 電 鉄土佐電気鉄道

十和田観光電鉄

一畑電車

養老鉄道

流 鉄

第三セクター鉄道42社 位置図 【H22.4.1現在】

中小民鉄50社 位置図 【H22.4.1現在】

赤字:76社(83%)

黒字:16社(17%)

経常収支平成21年度(鉄軌道業)

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11

(年度)

(キロ)

北海道ちほく高原鉄道(平成18年4月)

下北交通(平成13年4月)

南部縦貫鉄道(平成14年8月)

くりはら田園鉄道(平成19年4月)

日立電鉄(平成17年4月)

京福電気鉄道永平寺線(平成14年10月)

JR西日本可部線一部(平成15年12月)

西日本鉄道宮地岳線一部(平成19年4月)

高千穂鉄道(平成20年12月)※一部は平成19年9月で廃止済

南海電気鉄道和歌山港線(一部)

(平成14年5月)

鉄道

島原鉄道一部(平成20年4月)

三木鉄道(平成20年4月)

名古屋鉄道岐阜市内線・美濃町線・田神線

(平成17年4月)

名古屋鉄道モンキーパーク・モノレール線

(平成20年12月)

有田鉄道(平成15年1月)

桃花台新交通(平成18年10月)

長野電鉄河東線(一部)(平成14年4月)

のと鉄道七尾線一部(平成13年4月)

能登線(平成17年4月)北陸鉄道

石川線(平成21年11月)

軌道

西日本鉄道北九州線(平成12年11月)

鹿島鉄道(平成19年4月)

神岡鉄道(平成18年12月)

名古屋鉄道竹鼻線・八百津線・揖斐線一部・

谷汲線(平成13年10月)三河線一部(平成16年4月)

揖斐線(平成17年4月)

(※)東京駅-八戸駅間東北新幹線営業キロ631.9km

0

100

200

300

400

500

600

700

12 13 14 15 16 17 18 19 20 21

【平成12年度以降の全国廃止路線長の推移】

鉄道事業者は、バスなど他の交通機関と異なり、インフラ施設(土地、線路、駅等)を

セットで自ら保有することが通例であるという特色を持っています。その経費を見ると、

施設保有に係る経費は全体の 45%(平成 19 年度決算)を占め、この比率は、鉄道事業者が

取り組んできたワンマン化・無人化等の合理化により、近年増加傾向にあり、施設保有に

係る経費がコスト構造上の経営圧迫要因となっています。

図 地方鉄道のコスト構造 出典:平成 19 年度鉄道統計年報

なお、鉄道事業者の経営状況について詳しくは、「コラム2 地域鉄道事業者の経営状態、経費

構成等や確保・維持のあり方」(392ページ以降)をご覧下さい。

平成 12 年以降に廃止された鉄軌道 33 路線

施設保有に

係る経費45%

輸送に直接

必要な経費42%

その他の経

費13%

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12

(イ) バス交通をめぐる危機的状況 乗合バス事業者において民間事業者の約7割、公営事業者は約9割が赤字となっており、

特に地方部において輸送人員の減少に歯止めがかからない状況です。輸送人員の減少に伴

い、バス事業者の倒産、路線廃止が相次ぎ、毎年 2000km(東京-石垣島間の直線距離に匹

敵)程度のバス路線が完全に廃止となっています。バス路線の廃止や減便に伴って、移動

手段を確保することが困難な地域住民が増加し、地方社会経済活動の衰退が進展するとい

った深刻な問題が発生しています。

乗合バス事業者の収支(H21年度)

(保有車両30両以上の事業者)

輸送人員の推移(H12年度を100とした場合)

97

9594

91

91

92 92

91

95

91

88

86

84

8282

81

100

96

93

92

89

88 88 88

87

75

80

85

90

95

100

105

12 13 14 15 16 17 18 19 20

三大都市圏

その他地域

合計

(年度)

31%

69%黒字

赤字

民間事業者

公営事業者8%

92%

黒字

赤字

廃止路線キロ

18年度 2,999

19年度 1,832

20年度 1,911

21年度 1,856

計 8,598

(※)東京-石垣島間の距離は約1,957キロメートル

(石垣市教育委員会ホームページより)

乗合バスの路線廃止状況(高速バスを除く)

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13

(ウ) コミュニティバス・乗合タクシーの導入拡大 全国各地でバス交通が危機的な状況になる一方で、コミュニティバスや乗合タクシーの

導入は進んでいる状況です。しかし、コミュニティバスについては、導入が増える一方で

既存路線バスとの競合問題を抱えている状況です。 また、コミュニティバスの輸送実績を見ますと、収支率(運送支出に対する運送収入の

割合)が 40.1%と低く、財政負担が大きい状況にあるため、持続可能な地域公共交通を形

成するためには効率的な運営計画を立て、収支率を向上させる工夫も必要です。 平成20年度の乗合バス輸送実績

(単位:億人)

8871087 1099 1130

1549

19632207

2390

0

500

1000

1500

2000

2500

18 19 20 21

導入市町村数

コミュニティバス数

コミュニティバスの導入状況 乗合タクシーの導入状況

路線バス(30両以上の事業者)

高速バス

路線バス(29両以下)

コミュニティバス・乗合タクシー

40.1 1.11.0 0.8

93.2% 2.6%2.3% 1.9%

年度年度

※個別調査による。

総計43億人

※個別調査による。事業者数は、団地型・過疎型等の形態により重複しており、延べ数。

※一般乗合旅客運送事業の輸送実績報告書から集計。

事業種別 系統数 輸送人員

コミュニティバス 4,314系統 77百万人

乗合タクシー 232区域 3百万人

1619

23022168

2377

813927 895 919

0

500

1000

1500

2000

2500

18 19 20 21

コース数

事業者数

あり

42.4%

なし50.7%

未回答6.9%

路線バス撤退予

定2.2%

路線バス

縮小予定25.4%

コミバス撤退予

定3.4%コミバス縮

小予定4.3%

現状維持15.0%

検討中・未定5.6%

コミバス増設0.2%

無回答43.9%

項目 単位 値 参考:路線バス

系統数 系統 4,314 41,861走行キロ 千キロ 96,927 1,945,490輸送人員 千人 76,767 4,067,692輸送人員キロ 人キロ 363,617 18,044,6881人平均乗車キロ km 4.7 4.5平均乗車密度 人 3.8 9.4運送収入 百万円 14,096 721,601運送支出 百万 35,179 840,552収支率 % 40.1 85.8

903 1,188

1,008

1,727

0 200 400 600 800

1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000

平成11年以前 平成12~14年度 平成15~17年度 平成18~20年度

○コミュニティバスの導入時期(系統数) ○輸送実績

○路線バスとの競合の有無 ○競合路線の今後の対応

出典:社団法人日本バス協会「バスネットワークの実態分析調査報告書」

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(エ) 福祉タクシー・自家用有償旅客運送の拡大 近年、福祉タクシーの導入が進んでいます。自家用有償旅客運送の団体数については市

町村運営有償運送による福祉運送が減少していますが、NPO 等の団体による福祉有償運

送及び過疎地有償運送が増加しています。導入車両については市町村の福祉運送以外は毎

年増加しており、必要性の大きさが伺えます。

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(オ) デマンド交通の導入状況 デマンド交通とは、電話予約など利用者のニーズに応じて柔軟な運行を行う公共交通の

一形態で、地方部の交通空白地域を中心に持続的な生活交通確保策として注目を集めてい

ます。デマンド交通は需要が分散している場合に適している運行形態ですが、運行システ

ムの選定にあたっては、多くのパターンがあるため、地域の実情に合った最適なものを選

定することが、持続的な運行のためには必要となります。 平成 21 年 12 月時点での導入状況は、全国の 158 地域において導入されており、それら

の事例を参考に、導入地域に適した運送形態をしっかりと検討することが重要となりま

す。

デマンド交通システムの選定

PCでデータ管理、配車情報通信、運行計画作成などを実施

PCを活用せず、タクシー無線での配車等を実施

需要(利用人数)が多い場合

需要(利用人数)が少ない場合

◆ IT活用型が適する ◆ 非IT型が適する

IT活用型 非IT型

電話予約など利用者のニーズに応じて柔軟な運行を行う公共交通の一形態

まとまった需要がある場合

定時定路線のバスが適する デマンド交通が適する

交通手段の選択

送迎

電話予約

需要に応じた運行が可能だが予約が必要

決まった時刻にバス停に行けばバスに乗れる

◆路線バス・コミュニティバス ◆デマンド交通

概 念

需要が分散している場合

配車

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図 デマンド交通の主な導入状況

利用者登録

自治体

商工会

社会福祉協議会

あり

なし

あり

なし

全域

一部

中型or小型バス

ジャ

ンボタクシー

セダン型タクシー

均一制

ゾー

ン制

制限なし

自治体住民限定

65歳以上限定

必要

1 山形県川西町 ● ● ▲ ● ● ● 3 ● ●

2 広島県安芸太田町 ● ● ■ ● ● 8 ● ● ●

3 滋賀県東近江市 ● ● ■ ● ● 4 ● ●

4 和歌山県みなべ町 ● ● ■ ● ● ● 2 ● ●

5 山形県高畠町 A社 ● ● ● ● ● 3 ● ● ●

6 長野県飯綱町 B社 ● ● ● ● ● 4 ● ● ●

7 島根県斐川町 ● ● ● ● ● 4 ● ● ●

8 茨城県神栖市 ● ● ▲ ● ● 9 ● ● ●

9 宮城県女川町 ● ● ● ● ● ● 5 ● ● ● ●

10 福島県南相馬市 ● ● ● ● ● ● 4 ● ● ●

11 福島県只見町 ● ● ● ● ● ● 4 ● ● ●

12 千葉県酒々井町 ● ● ● ● ● ● 4 ● ● ●

13群馬県前橋市(大胡・宮城・ 粕川地区)

E社 ● ● ● ● ● 4 ● ●

IT活用型

配車シート手渡方式

C社

配車情報通信方式

D社

運行エリア 車輌サイズ 運賃 対象者

非IT型

配車シート手渡方式 -

タクシー無線活用方式 -

車輌台数

導入地域 システム方式 開発・販売元

運営主体 基本ダイヤ  基本路線▲:目的地限定■:迂回型

<デマンド交通の例>(国土交通省調べ)

神奈川県 鎌倉市

和歌山県 みなべ町

有田市

福島県 伊達市 南相馬市

双葉町 本宮市

浪江町 会津美里町

国見町 大熊町

田村市 新地町

二本松市 只見町

中島村

岩手県 雫石町

奥州市

一戸町

宮城県 角田市

栗原市

丸森町

女川町

東松島市

加美町

気仙沼市(大島)

登米市

北海道 帯広市

伊達市

富良野市

士別市

初山別村

山形県 川西町 三川町

高畠町 遊佐町

飯豊町 鶴岡市

庄内町 酒田市

白鷹町

青森県 八戸市

岡山県 和気町

倉敷市

総社市

岡山市

真庭市

高梁市

熊本県 菊池市 美里町

熊本市 阿蘇市

人吉市 宇城市

大津町 上天草市

植木町 山鹿市

島根県 雲南市

斐川町

出雲市

吉賀町

浜田市

佐賀県 嬉野市

小城市

長崎県 大村市

大分県 大分市

日田市

奈良県 五條市

東京都 渋谷区 目黒区

檜原村

埼玉県 騎西町福井県 高浜町

栃木県 芳賀町

佐野市群馬県 前橋市

愛知県 江南市

小牧市

豊田市

三好町

稲沢市

岐阜県 郡上市

飛騨市

多治見市

揖斐郡大野町

静岡県 富士宮市

山梨県 身延町 増穂町

茨城県 古河市 筑西市

石岡市 城里町

笠間市 東海村

桜川市 行方市

神栖市 利根町

常総市 常陸大宮市

千葉県 いすみ市

南房総市

酒々井町

滋賀県 東近江市

米原市

栗東市

湖南市

長浜市

甲賀市

彦根市

湖北町

西浅井町

石川県 宝達志水町

金沢市

富山県 富山市

長野県 安曇野市

上田市

東御市

佐久穂町

富士見町

飯綱町

長野市

木曽町兵庫県 朝来市

宍粟市

広島県 三原市

安芸太田町

世羅町

庄原市

安芸高田市

神石高原町

三次市

北広島町

呉市

山口県 周南市

下関市 京都府 舞鶴市

綾部市

福知山市

宮津市

木津川市

伊根町香川県 まんのう町

高知県 四万十市

いの町

愛媛県 四国中央市

伊方町

鳥取県 鳥取市

倉吉市

北栄町

江府町

伯耆町

日野町

福岡県 八女市

新潟県 胎内市

秋田県 仙北市

秋田市

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(カ) 一般路線バスの維持費用の負担状況 従来は黒字路線、高速バス等の内部補助が相当程度行われていましたが、マイカーの普

及等を背景に、事業の収益性が低下し、内部補助が困難となっています。

黒字路線

・マイカーの普及、少子化等に伴う輸送人員の減少

(特に地方の郡部は深刻)等

高速バス

貸切バス

・ツアーバスとの競争激化 等

・新規参入の増加に伴う競争の激化 等

余力低下

運送費用

運送収入

公的補助

内部補てん※

赤字系統の赤字

【20年度】約28,000系統

▲約2,700億円

【16年度】約24,000系統

▲約2,400億円

兼営事業の利益

(内部補助)(広義)

黒字系統の黒字(内部補助)(狭義)

【20年度】約10,000系統/約1,100億円【16年度】約10,000系統/約1,200億円

行政の補助

【20年度】約600億円【16年度】約500億円

20年度 (16年度)うち、国庫 80億円(73億円)

都道府県 142億円(157億円)市区町村 393億円(246億円)

地方分(※)

535億円(403億円)

補てん不足額(欠損)

【20年度】

約1,000億円

【16年度】

約700億円

内部補助

内部補助

路線廃止や経営破たんの原因に

減少

減少

減少

減少

(※)地方負担分の8割については国が財政措置を講じている。

一方、乗合バス事業の収支構成をみると、経費の多くは運転者などの人件費が占めてい

る典型的な労働集約産業です。近年は運送収入の減収や燃料油脂費等の増加に対し、人件

費削減で対応している状況ですが、このような人件費を中心とするコストカットにも限界

があり、公的支援の充実なしには路線・便数を維持することが困難な状況となっていま

す。

運送収入

その他収入

人件費

その他経費

燃料油脂費

収支差

平成16年度

7,420億円(95.4%)

360億円(4.6%)

5,356億円(63.7%)

2,505億円(29.8%)

545億円(6.5%)

7,780億円(100%)

8,405億円(100%)

△625億円

平成20年度

7,112億円(95.4%)

343億円(4.6%)

4,547億円(56.4%)

2,744億円(34.1%)

769億円(9.5%)

7,456億円(100%)

8,060億円(100%)

△604億円

▲308億円(0.0P)

▲16億円(0.0P)

▲809億円

(△7.3P)

224億円

(+3.0P)

240億円

(+4.3P)

年度差

収入

費用

備考:30両以上の事業者 なお、バス事業の経営状況について詳しくは、「コラム1 バス事業者の経営状態、経

費構成等」(384ページ以降)をご覧下さい。

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エ 離島航路及び離島航空路の現状 離島の人口の減少等により、離島航路の輸送人員は減少し、欠損が拡大しています。バ

スや鉄道に比べて割高な運賃も課題となっています。 離島航路及び離島航空路については、詳しくは6章(213ページ以降)で詳しく解説して

います。

40

50

60

70

80

90

100

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000 欠損額 輸送実績

12

11

10

13

14

輸送人員(百万人)

輸送人員は減少

補助航路の輸送実績と欠損の推移欠損額(百万円)

欠損は拡大 62

40

21

0

10

20

30

40

50

60

70

離島航路 地バス JR

(円/km)

運賃水準の比較

割高な運賃

※標準的なもので比較したもの(実際の航路・路線、距離により差あり)

また、離島航空路線における旅客数は減少傾向であり、全体の5割近くが赤字路線とな

っています。

運航会社ごとの離島路線経常収支(平成22年度)は11社中6社が赤字である。

黒字5社・・・ジャルエクスプレス、日本エアコミューター、日本トランスオーシャン航空、琉球エアーコミューター、スカイマーク

赤字6社・・・全日本空輸、北海道エアシステム、新中央航空、オリエンタルエアブリッジ、日本航空インターナショナル、第一航空

離島路線全体の経常収支(平成22年度)は約30億円の赤字である。

離島航空路線 旅客数(千人) 運航便数(千便)

平成20年度 63 4,890 91

平成21年度 64 4,666 89

平成22年度 66 4,589 93

黒字路線・・・36路線赤字路線・・・30路線

平成11年度 66 5,040 104

(参 考)

離島航空路線における路線数、旅客数及び運航便数の推移

離島66路線の経常収支 運航会社ごとの離島路線経常収支

補助対象路線・・・14路線

最も日常性を有する都市との間で、船舶等では2時間以上要する単独の路線であって、赤字を計上しているもの。

(全体の約45%が赤字路線)

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オ 交通をとりまく環境指標の推移 (ア) 自動車保有台数 乗用車の保有台数は5814万台で、全自動車保有台数のうち約7割を占めています。平成

23 年には、乗用車以外の自動車は特種(殊)車を除き前年から減少しています。乗用車は

近年も増加していますが、増加率は低く、保有台数の伸びが鈍化している状況にあります。

かつてモータリゼーションといわれていた時代は転換を迎えつつあり、新たな交通体系と

して、公共交通の必要性は今後ますます高まっていくものと考えられます。

51.22 52.45 53.49 54.47 55.29 56.29 57.10 57.51 57.55 57.68 57.90 58.14

18.42 18.06 17.73 17.34 17.02 16.86 16.71 16.49 16.26 15.86 15.53 15.14

0.24 0.24 0.23 0.23 0.23 0.23 0.23 0.23 0.23 0.23 0.23 0.23 1.71 1.75 1.75 1.72 1.67 1.64 1.62 1.60 1.58 1.53 1.51 1.65 2.99 3.02 3.07 3.12 3.18 3.25 3.34 3.40 3.46 3.50 3.52 3.51

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90(百万台)

自動車保有台数の推移

二輪車

特種(殊)車

乗合車

貨物車

乗用車

-4

-2

0

2

4

6

8

10(%) 自動車保有台数増減率の推移

二輪車

特種(殊)車

乗合車

貨物車

乗用車

※増減率は平成 12 年を基準に前年度比を算出

出典:財団法人 自動車検査登録情報協会

「保有台数統計データ」より算出

出典:財団法人 自動車検査登録情報協会

「保有台数統計データ」より算出

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●世帯あたりの自家用車普及台数は地方部で多い 世帯当たりの自家用乗用車普及台数を見ると、東京・神奈川・京都・大阪・兵庫といった

大都市近郊では世帯当たり普及台数が 1 台を下回っているものの、他の道県では世帯当た

り1台以上の自家用乗用車を保有しています。特に東北、北関東、北陸、中部などは全国的

に見ても世帯当たり自家用乗用車普及台数が多く、自家用乗用車依存型の交通体系であるこ

とが伺えます。

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1.40

1.60

1.80

2.00

北海道

青森岩手宮城秋田山形福島茨城栃木群馬埼玉千葉東京神奈川

山梨新潟富山石川長野福井岐阜静岡愛知三重滋賀京都大阪奈良和歌山

兵庫鳥取島根岡山広島山口徳島香川愛媛高知福岡佐賀長崎熊本大分宮崎鹿児島

沖縄

都道府県別 世帯当たり自家用乗用車普及台数(平成23年3月時点)

出典:財団法人 自動車検査登録情報協会

「自家用乗用車の世帯当たり保有台数」より算出

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●乗用車台数の増減は依然として地方部で高い 都道府県別の乗用車保有台数は、東京都以外の全都道府県において平成 12 年から増加

していますが、東京及び大阪の大都市近郊では比較的増加率が低くなる傾向があります。

地方部においては、ほとんどの都道府県で 15%以上の増加が見られます。東京、大阪、福

岡等の大都市圏に隣接する都道府県においても、20%を超える増加が見られます。

乗用車保有台数の推移(平成 12 年~平成 23 年)

【凡例】乗用車保有台数の増減率

出典:財団法人 自動車検査登録情報協会

「保有台数統計データ」より算出

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(イ) 高齢化と運転免許 運転免許保有者数は年々増加していますが、増加率は近年低下していることから、運

転免許保有者数の伸びは止まりつつあります。

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

7000

7200

7400

7600

7800

8000

8200

8400

(%)(万人)運転免許保有者数の推移

運転免許保有者数

増減率

運転免許の保有状況と自動車の運転状況は、三大都市圏と地方都市圏で傾向が異なって

おり、65歳以上の高齢者では、運転免許保有状況にはそれほど差が見られませんが、免許

を持っていて運転している人は地方都市圏の方がおよそ 7%多い状況にあります。高齢者

の運転は、高齢による判断力の低下や注意力の低下等により交通安全上危険であるため、

高齢者が自ら運転しなくても移動することができるように地域公共交通の整備が必要で

す。

○年齢区分別・都市圏別運転免許の保有状況

出典:平成17年全国都市交通特性調査

出典:平成 22 年運転免許統計より算出

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(ウ) 交通事故発生件数と死者数 近年は交通事故の発生件数及び死者数は減少していますが、発生した死亡事故におい

て、第 1 当事者となる高齢者の比率は増加しています。運転操作が不適切なために起き

た死亡事故の比率は、高齢者と高齢者以外で約 7%の差があります。このように高齢化

により、自動車を運転する高齢者が増加することで、高齢者の交通事故増加という問題

も発生しています。高齢者の身体能力低下等による交通事故発生のリスクが高まる一方

で、公共交通がないために、高齢になっても自動車を利用せざるを得ないといった状況

があります。

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0

10

20

30

40

50

60

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80

90

100死者数(百人)発生件数(万件) 交通事故発生件数と死者数

発生件数

死者数

5.0%

7.0%

9.0%

11.0%

13.0%

15.0%

17.0%

19.0%

21.0%

11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21

全体に占める高齢

者(第1当事者)死

亡事故比率

高齢者(65歳以上)

高齢者以外

運転操作が不適切なため

に起きた死亡事故の比率

・「全体に占める高齢者(第1当事者)死亡事故比率」=全体の死亡事故件数のうち、高齢者が第1当

事者となる死亡事故件数の比率 ・「高齢者(65歳以上)」=全体の死亡事故件数のうち、運転操作が不適切なために起きた死亡事故で

あって、かつ、高齢者(65歳以上)が第1当事者となった死亡事故件数の比率 ・「高齢者以外」=全体の死亡事故件数のうち、運転操作が不適切なために起きた死亡事故であって、

かつ、高齢者以外が第1当事者となった死亡事故件数の比率

出典:交通事故統計

出典:交通事故統計

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(エ) 環境と交通の関係 輸送機関別の CO2 排出量をみると、自家用乗用車自家用車の普及に伴って CO2 排出量

が増え、2009 年にはおよそ半分が自家用乗用車からの排出となっています。自動車依存

型の交通体系では、環境への影響も大きいため、地球環境を考える上でも地域公共交通の

活性化は重要な課題となります。

1990年

2009年

自家用乗用車

(85百万トン)

39%

タクシー

(5百万トン)

2%バス

(5百万トン)

2%鉄道旅客

(7百万トン)

3%

旅客船

(4百万トン)

2%

航空旅客

(6百万トン)

3%

営業用貨物車

(34百万トン)

16%

自家用貨物車

(60百万トン)

28%

鉄道貨物

(1百万トン)

0%

内航海運

(9百万トン)

4%

航空貨物

(1百万トン)

1%

51%

(5.8%増)

自家用乗用車

(115百万トン)

50%

タクシー

(4 百万トン)

2%バス

(4万トン)

2%

鉄道旅客

(7百万トン)

3%

旅客船

(4百万トン)

2%

航空旅客

(8百万トン)

4%

営業用貨物車

(39百万トン)

17%

自家用貨物車

(39百万トン)

17%

鉄道貨物

(0.5百万トン)

0%

内航海運

(7百万トン)

3%

航空貨物

(2百万t)1%

62%

1990年度排出量合計 2億1737万トン

国内からのCO2排出量の20.5% 2009年度

排出量合計 2億2994万トン

国内からのCO2排出量の21.4%

都市構造とCO2排出量の関係について、都市の集約性との関係を都市別に見た場合、人

口密度が高くなると交通部門の1人当たり自動車 CO2排出量が小さくなる傾向があり、密

度が低いほど1人当たり自動車 CO2排出量が増加する傾向です。

我が国の諸都市における人口密度と1人当りガソリン消費量の関係

出典:谷口守:都市構造から見た自動車CO2排出量の時系列分析、

都市計画論文集 No.43-3、2008年10月

出典:国土交通省資料((環境省)温室効果ガス排出・吸収目録より算定)

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カ 交通不便地域の概況 (ア) 公共交通空白地域の拡大 交通空白地域の可住面積は 36,433km2(九州島(※)に匹敵する面積)となっており、ま

た、交通空白地域への居住割合は、高齢者の方がより高い状況にあります。

日本全体交通空白地域(バス停600m・

鉄道駅1km圏外)

交通空白地域の割合

可住面積(総面積)

117,600㎞2

(377,915㎞2)36,433㎞2 30.9%

(9.6%)

全体人口 127,768千人 2,423千人 1.9%

高齢者人口 27,470千人 731千人 2.7%

(※) 九州島の面積は36,749km2 (出典)平成17年国勢調査結果及び「バスネットワークの実態分析調査報告書」(社団法人日本バス協会)より国土交通省作成

●交通不便地域・空白地域について

交通不便地域・空白地域については明確な定義は定められておらず、各地域各地域が

それぞれの地域の実情に合わせて定義しているものです。定量的に判断するために、例

えば鉄道駅やバス停から半径何百メートル以上というように、範囲を指定している例が

多いですが、道幅や坂道の勾配など、交通機関の使いやすさを決める要因は多々あるた

め、地域の実情に合わせた定義が必要です。

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(イ) 人口密度と交通機関の選択 人口密度が高いほど公共交通利用率が高いが、人口密度が低いほど、自動車利用率が高

く、その増加スピードも速くなっています。

人口密度と公共交通利用率・自動車利用率の相関

人口密度と公共交通・自動車の相関

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

0 20 40 60 80 100 120 140 160

市街地(DID)人口密度(人/ha)

利用率

H11自動車 H17自動車 H11公共交通 H17公共交通

資料)国土交通省「全国都市交通特性調査」(平成17年)

人口密度が高いほど、

公共交通利用率が高い人口密度が低いほど、

自動車利用率が高く、

その増加スピードも速い

※全国41都市に対する調査結果:千葉市、東京区部、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、所沢市、松戸市、堺市、奈良市、岐阜市、春日井市、宇治市、札幌市、仙台市、広島市、北九州市、福岡市、塩竃市、呉市、宇都宮市、金沢市、静岡市、熊本市、鹿児島市、弘前市、盛岡市、郡山市、松江市、徳島市、高知市、山梨市、海南市、安来市、南国市、湯沢市、上越市、今治市、人吉市

出典:国土交通白書(平成20年度)

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(ウ) 地方における公共交通の課題 非人口集中地区(非 DID 地区)においてはバスの収支率は 50%程度と推定され、当該地

域においては公的支援なくしては、運行の確保・維持は困難な状況となっています。

バス事業の収支率と非人口集中地区(非DID地区)の関係(全国207生活圏ごとの地域内の非DID地区居住者割合とバス事業の収支率をクロス)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

160%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

地域内における非DID地区に居住する者の割合

収支率

※DID地区とは、国勢調査基本単位区等が、原則として人口密度4000人/km2以上が隣接しかつ隣接した地域の人口が国勢調査時に5000人以上を有する地域。それ以外の地域が非DID地区である。

●買い物難民 「買い物難民」は、自動車車等の移動手段を持たないため、食料品や生活必需品の買い

物に困っている身体的にも経済的にも対応が難しい高齢者等のことを指します。そのよう

な買い物に不自由を感じる買い物難民が600万人を超える状況と推計されています。買

い物難民は、商店に行くための交通費が買い物の値段よりも高かったり、交通手段がない

ために 1 時間以上歩いて買い物に行くなど、非常に厳しい状況に置かれている方もいま

す。

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

日常の買い物に不便 通院に不便 交通事故に遭いそうで心配

13年

17年

16.6% ×

3700万人(60歳以上の人口)

↓600万人

「買い物難民」の推計値

※全国の60歳以上の男女に対する調査結果

出典:「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会報告書(平成22年5月)」

出典:平成17年度国勢調査及び国土交通省調べ

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●病院への移動の困難さ 自動車を利用する方が公共交通を利用するより病院への移動(アクセス)がしやすい傾

向にあります。アクセシビリティという指標を用いた評価では、病院へ行くまでの費用を

時間に換算した一般化費用所要時間を用いて評価を行なっていますが、公共交通と同じ所

要時間で移動可能な距離が自動車の方がかなり大きくなっています。 このように、自動車を利用することは、公共交通に比べて便利であるという面がありま

すので、公共交通の利用促進にあたっては、より便利で利用しやすい工夫をする必要があ

ると言えます。 ○自動車利用による病院へのアクセシビリティ ○公共交通利用による病院へのアクセシビリティ

※アクセシビリティ指標は、値が小さいほど、アクセスが良いことを示す

※居住地から病院(病床20床以上)2カ所までの一般化費用の平均

出典:国土交通政策研究所資料

凡例 アクセシビリティ指標

一般化費用所要時間(分)

自動車・移動距離例(km)

公共交通・移動距離例(km)

0-400 0-1.68 0.0-0.8km 0.0-0.1km (徒歩のみ)

401-500 1.68-3.68 0.8-1.8km 0.1-0.3km (徒歩のみ)

501-600 3.68-5.68 1.8-2.8km 0.3-0.5km (徒歩のみ)

601-900 5.68-11.68 2.8-5.8km 0.5-1.2km (うち、バス0-0.7km)

901-1,200 11.68-17.69 5.8-8.8km 1.2-2.7km (うち、バス0.7-2.2km)1,201-1,500 17.69-23.69 8.8-11.8km 2.7-4.3km (うち、バス2.2-3.8km)1,501-1,800 23.69-29.70 11.8-14.9km 4.3-5.8km (うち、バス3.8-5.4km)1,801- 29.70 14.9km- 5.8km-

※時間価値 50円/分※公共交通利用は、メッシュ中心からバス停までの距離を240m(3分)と仮定した場合の移動距離

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(エ) 公共交通に関する国民のニーズ ●まちの拡散 郊外化により自然の近くでゆっくり暮らすことができると考える人が多い一方、車を運

転できない人にとっては不便になってしまうと考える人も多くいます。

16.575

22.75

10.075

17.5

15.025

17.425

13.55

27.625

55.05

55.375

35.875

34.9

39.1

35.525

36.825

36.15

12.9

11.025

30.45

23.6

24.075

22.325

26.3

16.65

6.875

4.7

16.25

15.125

12.525

15.525

11.975

12.225

8.6

6.15

7.35

8.875

9.275

9.2

11.35

7.35

0

0

0

0

0

0

0

0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

より安くて広い手頃な住宅を手に入れることができる

自然の近くでゆっくり暮らすことができる

利便性の高い暮らしができる

空き店舗が増加するなどまちの中心部が衰退してしまう

自動車を利用することが多くなり地球環境に負荷をかけてしまう

農地や林が開発され、環境に負荷をかけてしまう

公共施設やインフラの整備が必要になり自治体の財政負担が増えてし

まう

高齢者など車を運転できない人にとっては不便になってしまう

■これまで、日本のまちは、郊外や農村部などまちの周辺部へ徐々に拡大していきました。まちが

拡大し、人々が広い範囲に拡散して居住することについては、次の項目のような利点や欠点が一

般に指摘されています。あなたは、人々が広い範囲に拡散して居住することについて、次のそれぞれの項目に対して、どのくらい共感できますか。

共感できる どちらかといえば共感できる どちらかといえば共感できない 共感できない わからない 無回答 出典:国土交通白書(平成21年度)

●暮らしの中でのニーズ 都市の規模が小さくなるほど、公共交通機関で移動しにくいとの評価が大きくなる傾向

にあります。公共施設や店舗等の施設の立地に対する意見に比べて、公共交通に対する意

見は、都市の規模別の差が大きく、公共交通機関の整備状況が都市の規模に比例している

ことが分かります。

0 10 20 30 40 50

店舗・商店が集積していない

金融機関、役所、病院等が集

積していない

公共交通機関で行きずらい

200万都市

大都市

中都市

小都市

町村

(※)大都市:200万都市を除く人口100万人以上の政令指定都市

中都市:人口10万人以上の都市小都市:人口10万人未満の都市

出典:国土交通白書(平成20年度)

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●公共交通に関する満足度 公共交通に関する満足度を見ると、三大都市圏においては「満足」「ほぼ満足」とする割

合が多い一方で、過疎地では、「不満」とする割合が約半数を占め、公共交通の満足度に

おける地域差は大きなものとなっています。

0 20 40 60 80 100

過疎地

地方圏

三大都市圏

満足

どちらかと言えば満足

どちらとも言えない

どちらかと言えば不満

不満

わからない

●暮らしの中で移動に関わることに関する改善方策 今ある公共交通サービスの利便性向上や新たな交通サービス提供に対するニーズが大き

いことが分かります。

○地方圏(※)における日々の移動を便利にするための方策

42.2%

50.8%

38.7%

11.3%

14.4%

19.3%

28.8%

1.0%

13.6%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

1.中心市街地に様々な施設を集めるとともに、そこへのアクセスを向

上させる

2.鉄道やバスの増便や路線の工夫などで今ある公共交通サービスの

利便性を向上させる

3.福祉タクシー、乗合タクシー、コミュニティバスなど、小回りが利く自

由度の高い交通サービスを実現させる

4.道路と鉄道・水路などどちらでも走行できるような新しい乗り物の技

術開発をする

5.移動中に携帯電話で自分の位置や目的地までの経路を確認したり

運行や乗換え等の情報を取得したりできる技術開発

6.外出しなくてもよいように宅配サービスや訪問診療等を充実させる

7.少ない移動で済む場所に、役所の出先施設や商店等を配置させる

8.その他

9.わからない

(※)三大都市圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)以外の道県のこと。

出典:国土交通白書(平成20年度)

(※)三大都市圏:東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋圏(岐阜県、愛知県、三重県)、大阪圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)

地方圏:三大都市圏以外過疎地:過疎地域自立促進特別措置法第2条及び第33条に該当する区域

出典:国土交通白書(平成20年度)

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(2) 公共交通関連の関係法律や制度の枠組み

ア 乗合バスを取り巻く法制度の解説

(ア) これまでの公共交通に関する政策について 平成 10 年6月の運輸政策審議会総合部会の答申を踏まえ、平成 12 年度より度重なる関

係法令の改正に基づく各事業の規制緩和を行うとともに、平成 19 年地域公共交通の活性

化及び再生に関する法律の施行や地域公共交通の活性化のための支援策を実施していま

す。

○H10年 6月:「交通運輸における需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について」(運輸政策審議会総合部会 答申)

○H12年 2月:貸切バス事業(道路運送法)、国内航空運送事業(航空法)の規制緩和

○同 3月:旅客鉄道事業(鉄道事業法)の規制緩和

○同 10月:国内旅客船事業(海上運送法)の規制緩和

○H14年 2月:乗合バス事業・タクシー事業(道路運送法)の規制緩和

○H18年10月:自家用有償旅客運送の登録制度の創設(道路運送法)

○H19年10月:「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」施行

○H20年 :「地域公共交通活性化・再生総合事業」創設

○H23年 :「地域公共交通確保維持改善事業(生活交通サバイバル戦略)」創設

各事業の規制緩和等

地域公共交通活性化のための支援策

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イ 道路運送法の概要及び各会議体の位置づけと概要

(ア) 道路運送法の体系 有償で、自動車を使用して「旅客」を運送する行為は『道路運送法』で規定されていま

す。有償で旅客を運送する事業は、道路運送法第2条の「旅客自動車運送事業」に定義さ

れており、国土交通省の許可を必要とします。使用する車両は、「事業用自動車」と呼ば

れ、ナンバープレートは緑色(軽自動車は黒色)となります。 旅客自動車運送事業は、「運送する対象者」によって次の2つの事業に区分されます。 ・誰でも乗せる場合 → 一般旅客自動車運送事業 ・特定の範囲の人を乗せる場合 → 特定旅客自動車運送事業※ ※なお、「特定旅客自動車運送事業」とは、特定の人(特定できる施設の利用者等)を特

定の場所(工場、病院、介護施設等の特定の場所)に、運送する事業のこといいます。 さらに、「一般旅客自動車運送事業」は、「運送のしかた」によって次の3つの事業に

区分されます。 ・一般乗合旅客自動車運送事業(路線バス・乗合タクシー) ・一般貸切旅客自動車運送事業(観光バス・貸切バス) ・一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー<乗車定員 10 名以下の貸切>)

法=道路運送法省=道路運送法施行規則

具体例

旅客自動車運送事業(法§2)

一般旅客自動車運送事業(法§3)

一般乗合旅客自動車運送事業(法§3)

路線定期運行(省§3の3)

・一般バス・コミュニティバス・定時定路線型乗合タクシー・高速バス・定期観光バス

路線不定期運行(省§3の3)

・コミュニティバス

区域運行(省§3の3)

・デマンド型乗合タクシー

一般貸切旅客自動車運送事業(法§3)

・観光バス・スクールバス

一般乗用旅客自動車運送事業(法§3)

・ハイヤー・タクシー・福祉タクシー

特定旅客自動車運送事業(法§3)・特定の事業所への通勤用等の送迎バス

国土交通大臣の許可を受けた場合等における、貸切バス事業者、タクシー事業者による乗合旅客の運送(法§21)

・工事期間中の鉄道代行バス・イベント送迎シャトルバス

自家用自動車による有償の旅客運送(法§78)

自家用有償旅客運送(法§78)

市町村運営有償運送(省§51)

過疎地有償運送(省§51)

福祉有償運送(省§51)

国土交通大臣の許可を受けて行う運送(法§78) ・幼稚園送迎バス

災害のため緊急を要するときに行う運送(法§78)

ツアーバス

・スクールバス

・デマンド型乗合タクシー

一般路線バス

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●平成 18 年の道路運送法の改正と一般旅客自動車運送事業、自家用有償旅客運送制度 乗合旅客について、平成 18 年以前は、定時定路線によるものが乗合事業で、それ以外

のものが貸切事業と区分されてきましたが、平成 18 年の道路運送法の改正により、定時

定路線か否かにかかわらず、乗合旅客の運送を行うものを全て乗合事業と区分することに

なりました。 こうした乗合事業の対象範囲の拡大により、乗車定員 10 名以下の少人数が利用するコ

ミュニティバスやデマンド交通、乗合タクシー等もすべて乗合バス事業ということになり

ました。 また、過疎地域における住民の生活交通や移動制約者の移動手段など、バス・タクシー

事業者によることが困難であり、地方公共団体、バス・タクシー事業者、地域住民など地

域の関係者が必要と同意した場合、市町村、NPO等による運送サービス提供が可能とな

るよう自家用有償旅客運送制度(登録制)が創設されました。

4条貸切

<4条乗合及び4条乗用以

外の一般旅客自動車運送

事業>

4条乗合

<路線を定めて定期に運

行する自動車により乗合

旅客を運送する一般旅客

自動車運送事業>

4条貸切

<4条乗合及び4条乗用以

外の一般旅客自動車運送

事業>

4条乗用

<一個の契約により乗車

定員十人以下の自動車を

貸し切って旅客を運送す

る一般旅客自動車運送事

業>

4条コミバス

乗合タクシー

21 条貸切乗合

条コミバス

デマンド交通

鉄道工事運休代替バス

定員

10 人超

定員

10 人以下

乗合以外 乗合

21

一般旅客自動車運送事業(旧制度) 自家用自動車による有償運送

法 80 条(許可制)

例外許可

自家用自動車による有償運送

4条乗合

[乗合旅客を運送する

一般旅客自動車運送事

業]

4条貸切

[一個の契約により国

土交通省令で定める乗

車定員以上の自動車を

貸し切つて旅客を運送

する一般旅客自動車運

送事業]

4条乗用

[一個の契約により国土

交通省令で定める乗車定

員未満の自動車を貸し切

つて旅客を運送する一般

旅客自動車運送事業]

コミュニティバス

条貸切乗合

鉄道工事運休代替バス

定員

11人以上

定員

11 人未満

乗合以外 乗合

21

デマンド交通

プティバス

運賃:上限認可→ 事前届け出

地域の関係者が 合意している場合

一般旅客自動車運送事業(現行制度)

自治体バス

過疎地有償運送

福祉有償運送

市町村運営有償運送

(交通空白輸送、

市町村福祉輸送)

過疎地有償運送

福祉有償運送

法 79 条(登録制)

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●道路運送法改正(平成 18 年)の概要

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(イ) 地域公共交通会議の仕組み 地域のニーズに即した乗合運送サービスの運行形態(市町村運営バスの必要性を含む)、

サービス水準、運賃等について協議し、必要に応じて地域の交通計画を策定する組織とし

て、道路運送法に基づいて設置するものです。 地域の実情に応じた適切な乗合旅客運送の態様及び運賃・料金等に関する事項、市町村

運営有償運送の必要性及び旅客から収受する対価に関する事項、その他これらに関し必要

となる事項を協議するものです。平成 23年4月現在、全国で 1,035の市町村等で地域公共

交通会議が設置(開催)されています。

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(ウ) 運営協議会のしくみ タクシー等の公共交通機関によって、住民、要介護者や身体障害者等に対して十分な運

送サービスが確保できない場合には、特定非営利活動法人等による実費の運送サービス

(過疎地有償運送、福祉有償運送)を行うことができます。運営協議会は、こうした過疎

地有償運送及び福祉有償運送の必要性、旅客から収受する対価その他の自家用有償旅客運

送を実施するに当たり必要となる事項を協議するために市町村が設置し、交通事業者、利

用者代表、NPO 等の代表などで構成される会議です。 自家用自動車による過疎地・福祉有償運送の必要性、対価等について運営協議会で協議

を行い合意を得られた場合、NPO等は、国に登録した上で運送を行うことが可能となり

ます。

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(エ) 地域協議会 「地域協議会」は、 乗合バスの需給調整規制の廃止を内容とする改正道路運送法が平成

14 年 2 月 1 日に施行されたことに伴い、都道府県内における乗合バスの路線退出等にかか

る地域住民の生活交通の確保方策に関して、国、都道府県、市区町村及びバス事業者が協

議を行うために設置するものです。 バス路線を休廃止する際に、その後の対応を協議する場としても位置づけられていま

す。

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ウ 地域公共交通活性化・再生法の考え方、これまでの取組概要及び実績 (ア) 地域による地域のための公共交通の活性化・再生を目指して 地域の公共交通の利用者は長期的に減少傾向にあり、危機的状況にありますが、少子高

齢化・人口減少時代の到来、地域の自立・活性化、地球温暖化をはじめとする環境問題等、

昨今の我が国の大きな構造変化と重要な諸課題への的確な対応のためにも、地域の公共交

通サービスの活性化・再生は喫緊の課題となっています。 しかし、地域公共交通の活性化・再生は、交通事業者の経営努力や利用者の追加的負担

だけでは限界があり、また、公共交通に対するニーズは多種多様であることから、地域の

関係者が地域公共交通のあり方について主体的に考え、それに基づく取組みや創意工夫を

総合的かつ一体的に推進するための仕組みづくりが必要です。

高齢者等の地域住民の移動手段の確保

まちづくりとの連携

観光振興による地域活性化

地球温暖化等の環境問題への対応

・自家用乗用車の普及等により、日常生活における自家用乗用車への依存が高まっており、長期的に公共交通の利用者は減少傾向

公共交通からマイカーへシフト

・地方鉄軌道事業者の約8割が赤字・乗合バス事業者の約7割が赤字・一般旅客定期航路事業者の約7割が赤字 (平成17年度)

交通事業者の大半が赤字

地域公共交通に関する施策展開の目標

地域公共交通の現状と課題

福祉・文教施策との連携

地域公共交通の活性化・再生が喫緊の課題

・地方都市、過疎地域における交通空白地帯の出現

・都市部における交通渋滞等によるバスの走行環境の悪化 等

公共交通サービスの低下

横安江町商店街のトランジットモール(石川県金沢市)

観光の目玉の一つの坊っちゃん列車(愛媛県松山市)

CO2排出量の自家用乗用車との比較

○バス-約3/10○鉄道-約1/9福祉有償運送(長野県中川村)

自家用乗用車等による交通渋滞 平成19年4月に廃止された鹿島鉄道

安全・安心で質の高い輸送サービスの提供

富山ライトレール(富山県富山市)

地域公共交通の活性化・再生に向けた今後の取組みのあり方

本年5月に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が成立。本法律を活用して地域の関係者による合意形成やこれに基づく取組みを推進。

住民、NPO、企業等の多様な主体が、地域づくりの担い手となり、行政との協働により、「公共的価値を含む私の領域」や「公と私の中間的な領域」に活動を広げることが期待される。

産学官民の連携

「活力」を有する「産」、「制度」を有する「官」、「知識」を有する「学」、さらには住民が連携することが重要。

「新たな公」による取組み地域の関係者の合意形成のための新たな仕組みの活用

国市町村・都道府県 交通事業者

利用者・住民等 商業施設、事業所、病院、学校等

学識経験者等

多 様 な 主 体

○ 地域のニーズは多種多様であり、市町村を中心に、公共交通事業者、地域住民等地域の関係

者が地域公共交通について総合的に検討し、当該地域にとって最適な公共交通のあり方について合意形成を図り、合意に基づき各主体が責任を持って推進することが重要。

○ 国は、公共交通を積極的に活用していく取組みを、国民運動となるよう総合的に支援。

施策展開の基本的方向性

多様な主体の連携・協働

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(イ) 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律 上記を踏まえ、地域公共交通の活性化及び再生のため、地域公共交通の活性化及び再生

を一体的かつ効率的に推進するために定められた「地域公共交通の活性化及び再生に関す

る法律」が施行されました(平成 19 年 10 月 1 日施行)。この法律では、地域の関係者の

協議を踏まえた市町村による地域公共交通総合連携計画の作成、地域公共交通特定事業の

実施に必要な関係法律の特例のほか、複数の旅客運送事業に該当し、同一の車両または船

舶を用いて一貫した輸送サービスを提供する新地域旅客運送事業の円滑化を図るための鉄

道事業法に係る事業許可の特例等について定めています。

活力ある都市活動、観光振興

地域公共交通の活性化・再生の必要性

住民の足の確保、ユニバーサル社会の実現 環境問題等への対応

基 本 方 針 (国のガイドライン)

関連交通事業法の事業許可等の手続きの合理化等

1.計画の作成・実施

スキーム概要

市町村 公共交通事業者※ 道路管理者 住民*

協議会

主務大臣(国土交通大臣・総務大臣)は、地域公共交通の活性化及び再生に関する基本方針を策定

注1 LRT(Light Rail Transit)低床・バリアフリー設計の新車の投入、屋根付きの快適な停留所、高速・定時性の確保等を組

み合わせた機能を備えた次世代型路面電車システム注2 BRT(Bus Rapid Transit)輸送力の大きなノンステップバスの投入、バス専用レーン、公共車両優先システム等を組み合

わせた高次の機能を備えたバスシステム注3 公有民営※地方公共団体が鉄道線路を保有し、これを運行事業者に無償で使用させるもの

港湾管理者 公安委員会* ※鉄道、軌道、バス、タクシー、旅客船等

2.新たな形態による輸送サービスの導入円滑化

IMTS(インテリジェント マルチモード トランジット) 水陸両用車

DMV(デュアル モード ビークル)・軌道と道路の両方の走行が可能な車両 ・磁気誘導による専用

道路部分と一般道路

の両方を走行する車両

※国家公安委員会、環境大臣に協議

・協議会の参加要請応諾義務(*公安委員会、住民は除く)

・計画策定時のパブリックコメント実施・計画作成等の提案制度・協議会参加者の協議結果の尊重義務

・計画策定経費支援・関係予算を可能な限り重点配分、配慮・地方債の配慮・情報、ノウハウの提供・人材育成 等

予 算 等

法律上の特例措置・LRT整備に関する軌道事業の上下分離制度の導入・LRT車両購入費、BRTの車両購入費、オムニバスタウン計画に基づく施設整

備事業等について自治体助成部分の起債対象化・鉄道再生実施計画作成のための廃止予定日の延期・鉄道事業における「公有民営」方式の上下分離を可能とする特例※

・関連交通事業法の事業許可等の手続きの合理化 等

【地域公共交通特定事業】・LRTの整備 ・BRTの整備、オムニバスタウンの推進

・海上運送サービスの改善 ・乗継の改善 ・地方鉄道の再構築

※は第169国会で成立した一部改正に関する部分(平成20年10月1日施行)

乗合タクシーやコミュニティバス

鉄道活性化 乗継円滑化

海上運送高度化

LRT整備

BRT整備

地域の関係者が地域公共交通について総合的

に検討し、地域のバス交通の活性化や地方鉄道の活性化など地域住民の移動手段の確保、都市部におけるLRTやBRTの導入や、バスの定時性・速達性の向上、乗継の改善等、地域公共交通のあらゆる課題について、当該地域にとって最適な公共交通のあり方について合意形成を図り、合意に基づき各主体が責任を持って推進。国は、これを総合的に支援。

地域公共交通総合連携計画

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(ウ) 地域公共交通活性化・再生総合事業(平成 20 年度~22 年度) 活性化・再生法の成立を受け、地域公共交通の維持方策に試行的に取り組み、本格導入

を目指す地域の協議会に対して補助する制度として地域公共交通活性化・再生総合事業

(平成 20 年度~22 年度)が創設されました。

◇ 鉄道、バス・乗合タクシー、旅客船等の実証運行(航)・ 鉄道の増便・ダイヤ変更等の実証運行・ コミュニティバス・乗合タクシーの導入、路線バス活性化の実証運行・ 空港アクセス改善(空港アクセスバスの実証運行等)・ 旅客船の航路再編・増便・ダイヤ変更等の実証運航 等

◇ 車両関連施設整備等・ バス車両購入費、車両・船舶関連施設整備、バス停等待合環境整備、

デマンドシステムの導入、LRV(低床式軌道車両)の導入 等

◇ スクールバス、福祉バス等の活用◇ 乗継円滑化等

・ 乗継情報等の情報提供、ICカード導入、P&R・C&Rの推進 等

◇ 公共交通の利用促進活動等・ レンタサイクル、イベント、広報、乗継割引運賃・周遊切符等の

システム設計 等

◇ 新地域旅客運送事業の導入円滑化◇ その他地域の創意工夫による事業

(例)地域公共交通活性化・再生総合事業計画 (3年)

<制度の特徴>【計画的取組の実現】・計画に対する補助で、計画的な事業実施が可能

【協議会の裁量確保】・事業をパッケージで一括支援・メニュー間、年度間における柔軟な事業の実施

【地域の実情に応じた支援の実現】・地域の実情に応じた協調負担の実現

【事業評価の徹底】・成果を事後評価し、効率的・効果的な事業実施を確保

地域公共交通の活性化及び再生に関する法律 (平成19年10月1日施行)

・ 協議会の参加要請応諾義務・ 計画策定時のパブリックコメント実施・ 計画作成等の提案制度・ 協議会参加者の協議結果の尊重義務

地域公共交通の活性化及び再生を総合的かつ一体的に推進するための計画

市町村が策定

市町村 公共交通事業者 地元企業 住民 等学校・病院等

<制度の特徴>

法定協議会

地域公共交通総合連携計画(法定計画)

うち協議会が取り組む事業

地域公共交通活性化・再生総合事業による支援

①「地域公共交通総合連携計画」(法定計画)策定経費 定額

②総合事業計画に定める事業に要する経費・実証運行(航) 1/2・実証運行(航)以外の事業 1/2※

※政令市が設置する協議会の取り組む事業 1/3

協議会が策定

策定支援

取組支援

●市区町村における総合連携計画策定の取組みの現状

平成22年度末時点での総合連携計画策定件数は460件(全市町村の約38%が関係)

となっており、策定件数は年々増加しています。 連携計画を策定するに至った社会的条件としては、「集落地等における生活交通の確保」

が約63%と最も多くなっています。

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(エ) 活性化・再生法に基づく法定協議会、地域公共交通会議、運営協議会及び地域協議会

の位置づけ 「法定協議会」は、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」第5条第1項に基づ

く「地域公共交通総合連携計画」を市町村が作成する場合に設置される協議会です。なお、

この法定協議会は、「地域公共交通会議」又は「運営協議会」の特性(コミュニティバス

の運行、自家用車の有償運送等)を活用する場合、各々の会議を網羅する構成員で法定協

議会を設立し、各々の会議・協議会を兼ねる会議とすることも考えられます。 「地域公共交通会議」とは、地域住民の生活に必要な旅客運送を確保する目的で、地域の

実情に応じた適切な乗合旅客運送の態様及び運賃・料金等に関する事項、市町村運営有償

運送の必要性及び旅客から収受する対価に関する事項等について協議するために地方公

共団体が主宰するもので、道路運送法に基づいて設置されます。 「運営協議会」とは、特定非営利法人等が運行主体となる場合において、「過疎地有償運

送」及び「福祉有償運送」の必要性、旅客から収受する対価その他の自家用有償旅客運送

を実施するにあたり必要となる事項を協議するために地方公共団体が主宰するもので、道

路運送法に基づいて設置されます。 「地域協議会」とは、地域住民の生活交通のあり方を審議するためや広域幹線を中心とし

た生活交通確保のための計画の策定を目的に都道府県が主宰するもので、道路運送法に基

づいて設置されます。 地域公共交通確保維持改善事業国費補助金交付要綱に定める協議会は、構成員の要件を満

たせば、既存の類似協議会(地域公共交通活性化・再生法の法定協議会等)の見なし措置

を行いますので、その場合改めて新たな協議会を立ち上げることは必須ではありません。 なお、従前の「地域公共交通活性化・再生総合事業」については、平成 22 年度を持って

終了しましたが、活性化・再生法に掲げた理念及び同法に基づく法定協議会の枠組みは引

き続き有効です。この法定協議会は、 ①公共交通事業者等に対する協議会への参加要請応諾義務 ②協議会参加者の協議結果の尊重義務 ③公共交通事業者や利用者等による連携計画の作成・変更の提案制度 などを定めており、こうした仕組みを活用することで、地域の多様な関係者による合意形

成や協働の取組みをより効率的・効果的かつ確実に行うことが可能となります。各自治体

におかれましては、活性化・再生法の理念に基づき、地域に必要な交通の確保に努めるこ

とが望まれます。 互いの会議が独立している場合は、一方の会議で決められた内容を別の会議で承認をとる

必要性は生じませんが、情報の共有など必要に応じて連携を図ります。

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表 公共交通に関係する各会議体の比較

道路運送法 道路運送法

(道路運送法施行規則第9条の3) (道路運送法施行規則第51条の8)

目的

地域公共交通総合連携計画(連携計画)を策定計画実施の主体となる

・地域の実情に応じた適切な乗合旅客運送の態様及び運賃・料金等に関する事項、市町村運営有償運送の必要性及び旅客から収受する対価に関する事項、その他これらに関し必要となる事項の協議を行う・地域の交通計画を策定(任意)

過疎地有償運送及び福祉有償運送の必要性、旅客から収受する対価その他の自家用有償旅客運送を実施するに当たり必要となる事項の協議を行う

メリ

ット

(協議

が調

った場

・計画実施への許認可手続き簡略化等の特例措置を受けることができる

・コミュニティバス、乗合タクシーの許可等に関する特例の適用を受けることができる(運賃を上限認可から届出に緩和、

処理期間の短縮等)

・自家用車での福祉有償運送及び過疎地有償運送の運行実施が可能・協議会での合意が得られれば、 自家用車の有償旅客運送の登録、運行が可能となる

対象交通

モー

ド多様なモード

バス・タクシー(乗合)、自家用有償旅客運送(市町村運営有償運送)

自家用有償旅客運送(NPO等による過疎地有償運送及び福祉有償運送)

主宰 市町村(複数可)市町村(複数可)または都道府県

市町村(複数可)または都道府県

○地域公共交通総合連携計画を作成しようとする市町村○関係する公共交通事業者等、道路管理者、港湾管理者その他地域公共交通総合連携計画に定めようとする事業を実施すると見込まれる者○関係する公安委員会及び地域公共交通の利用者、学識経験者その他の当該市町村が必要と認める者

○地域公共交通会議を主宰する市町村長又は都道府県知事その他の地方公共団体の長○一般乗合旅客自動車運送事業者その他の一般旅客自動車運送事業者及びその組織する団体○住民又は旅客○地方運輸局長○一般旅客自動車運送事業者の事業用自動車の運転者が組織する団体

○運営協議会を主宰する市町村長又は都道府県知事その他の地方公共団体の長○一般旅客自動車運送事業者及びその組織する団体○住民又は旅客○地方運輸局長○一般旅客自動車運送事業者の事業用自動車の運転者が組織する団体○運営協議会を主宰する市町村長又は都道府県知事の管轄する区域内において現に過疎地有償運送又は福祉有償運送を行っている特定非営利活動法人等

【必要に応じて以下の構成員を含めることが出来る。】

【必要に応じて以下の構成員を含めることが出来る。】

・路線を定めて行う一般乗合旅客自動車運送事業または市町村運営有償運送について協議を行う場合には道路管理者及び都道府県警察・学識経験を有する者その他の地域公共交通会議の運営上必要と認められる者

・学識経験を有する者その他の運営協議会の運営上必要と認められる者

構成員の要件

法定協議会 地域公共交通会議 運営協議会

根拠

法令

地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(第6条)

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※「地域公共交通確保維持改善事業国費補助金交付要綱に定める協議会」は、生活交通ネットワーク計画作成のために新たに設

置する必要はなく、必須となる構成員を新たに協議会の構成員として加える等既存の協議会の活用等による効率的な運用が可能。

(参考)

地域協議会

道路運送法

(道路運送法施行規則第15条の4)

目的

・生活交通の確保に関する地域における枠組みづくりその他の生活交通のあり方一般に関する審議・具体的な路線に係る生活交通の確保に関する計画(一定の期間ごとの見直しを前提)の策定についての調整及び決定

地域の特性・実情に応じた最適の移動手段の提供、バリアフリー化やより制約の少ないシステムの導入等移動に当たっての様々な障害の解消等を図るための取組についての計画(生活交通ネットワーク)を作成するための議論・調整・合意を行う

メリ

ット

(協

議が

調

った

場合

・路線バス休廃止の届出期限「原則6ヶ月前ま

で」を「30日前まで」に緩和される

・地域間幹線系統確保維持費国庫補助金、地域内フィーダー系統確保維持費国庫補助金、車両減価償却費等国庫補助金、離島航路運営費等補助金、離島航路構造改革補助金、バリアフリー化設備等整備事業、利用環境改善促進等事業、鉄道軌道安全輸送設備等整備事業の補助金を受けることが出来る

対象交通

モード

バス(乗合)

バス・タクシー(乗合)、自家用有償旅客運送(市町村運営有償運送(交通空白輸送に限る。)、過疎地有償運送)、海事、航空、鉄軌道

主宰 都道府県 都道府県または市区町村(複数可)

○都道府県知事○市町村長○地方運輸局長○関係事業者

○都道府県又は市区町村○交通事業者又は交通施設管理者等○地方運輸局等又は地方航空局○その他地域の生活交通の実状、その確保・維持・改善の取組に精通する者等協議会が必要と認める者

【必要に応じて以下の構成員を含めることが出来る。】

・その他協議会が必要と認める者

構成員の要件

地域公共交通確保維持改善事業国費補助金交付要綱に定める協議会

根拠

法令

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エ 確保維持改善事業の構成と考え方、補助スキームの概要

(ア) 地域公共交通確保維持改善事業~生活交通サバイバル戦略~(23年度新規) 地域公共交通確保維持改善事業 ~生活交通サバイバル戦略~ は、生活交通の存続が危

機に瀕している地域等において、地域の特性・実情に最適な移動手段が提供され、また、

バリアフリー化やより制約の少ないシステムの導入等移動に当たっての様々な障害(バリ

ア)の解消等がされるよう、地域公共交通の確保・維持・改善を支援するものです。

地域公共交通確保維持事業

・ 存続が危機に瀕している生活交通のネットワークについて、地域のニーズを踏 まえた最適な交通手段であるバス交通、

デマンド交通(注)、離島航路・航空路の確保維持 のた め、地域の多様な関係者による議論を経た地域の交通に関する

計画等に基づき実施される取組みを支援

<効率運行(航)を前提に、事前に算定された収支差を補助。離島航路や、離島航空路 の島民割引運賃の取組等も補助>

○都道府県を主体とした 協議会の取組みを支援

: 地域をまたがる幹線バス交通ネットワーク、離島航 路・航空路の確保・維持 等

○市町村を主体とした協議会の取組みを支 援

: 幹線バス交通等幹線交通ネ ットワークと密接な地域内のバス交通・デマンド交通等の確保・維持 等

○東日本大震災被災地域における幹 線バス交通ネットワーク 等の確保・維持の取組について、特例措置により支 援

地域公共交通バリア解消促進等事業

・ 個別のモードごとの支援 から公共交通のバリアフリー化等を一体的に支援する制 度

バリアフリー化 利用環境の改善 地域鉄道の安全性の向上

バス、タクシー、旅客船、

鉄道駅、旅客

ターミナルの

バリアフリー化

等を支援

地域鉄道の安全性向上に資する設備

整備等を支援

バリアフリー化されたまちづくりの

一環として、LRT、BRT、ICカード

の導入等公共交通

の利用環境改善

を支援

・ 地域の公共交通の確保・

維持・改善に資する調査の支援等

・ 東日本大震災被災地域

における地域内の生活

交通の確保・維持のあり

方について、特例措置に

より支援

(※)東日本大震災の被災地域におけるバス交通等生活交通の確保・維持のため、復旧・復興対策に係る経費として、復興庁に計上される26億円を含む。

地域公共交通調査事業

(注) 利用者の個別の需要(デマンド)に応じて、需要を集約した上で、ドア・ツー・ドア型輸送サービスを提供する形態の乗合輸送

『地域公共交通確保維持改善事業』 ~生活交通サバイバル戦略~

24年度 332億円(前年度比1.09)生活交通の存続が危機に瀕している地域等における地域最適な移動手段の提供と、駅のバリアフリー化等移動に当たっての様々な障害を解消

新規

新規

(※)

(※)

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(イ) 生活交通ネットワーク計画 地域公共交通確保維持改善事業に基づく補助を受けるにあたり、地域の協議会の議論を

経て策定される補助対象ネットワーク交通等に関する計画を「生活交通ネットワーク計画」

として取りまとめることが必要です。 生活交通ネットワーク計画(以下「ネットワーク計画」という。)は、地域の特性・実

情に応じた最適の移動手段の提供、バリアフリー化やより制約の少ないシステムの導入等

移動に当たっての様々な障害の解消等を図るための取組についての計画であって、その策

定にあたっては、都道府県、市区町村、交通事業者又は交通施設の管理者等からなる協議

会又は都道府県若しくは市区町村が、地域の生活交通の実情やニーズを的確に把握しつつ、

当該協議会での議論を経て作成するものです。 策定にあたっては、協議会の設置が必要でありますが、ネットワーク計画作成のために

新たに設置する必要はなく、これまでの法定協議会、地域公共交通会議、地域協議会等の

組織であっても、「地域公共交通確保維持改善事業費補助金交付要綱」に記載の構成員の

要件を満たし、議論・調整・合意を行う等実質的な計画作成がなされていればよいとされ

ています。

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