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バスケットボールにおける状況判断力の向上を意図した授業研究
広島大学大学院 教育学研究科生涯活動教育学専攻 健康スポーツ教育学専修
教職高度化プログラム1年 竹内 俊介
2010/1/28(木)
0.発表の流れ
1.研究の背景2.リサーチ・クエスチョン3.先行研究4.仮説の設定5.授業計画の概要6.結果と考察7.課題と展望
引用参考文献
1.研究の背景
「中学校学習指導要領(文部科学省,2002) 」
「チームの課題や自己の能力に適した課題をもって次の運動を行い,その技能を身に付け,作戦を生かした攻防を展開して
ゲームができるようにする。」
「チームの課題や自己の能力に適した課題の解決を目指して,ルールを工夫したり作戦を立てたりして練習の仕方やゲーム
の仕方を工夫することができるようにする。」
技能
学び方
1.研究の背景
生徒に任せっきりのゲーム中心の授業
個人的な技術指導中心の授業
作戦を考えさせ,実施させるような指導が少ない
状況判断チームの作戦に
ついての意思統一
2.リサーチ・クエスチョン
子ども達が、状況判断を基にプレーするようになるにはどうすればよいか
状況判断の定義
ボールキープパスシュート
ボール保持者の状況判断
3.先行研究
3.1. 「瞬間的で適切な判断」
(知覚トレーニング)
3.2. 「チームの作戦についての意思統一」
(認知的トレーニング)
3.1.瞬間的で適切な判断(知覚トレーニング)
知覚トレーニングでは、競技中の視点から撮影された映像を学習者に呈示しながら、予測手掛かりと最終的な結果の関係を教示する。これにより、予測手掛かりと最終的な結果の関係が学習され、予測の早さや正確性が向上することが明らかにされている(中本浩輝ら、2005)。
判断根拠判断根拠
判断の速さや正確性が向上
判断根拠
(ディフェンスの有無)
(デイフェンスの位置)
知覚トレーニングの問題例(3対3のパス)
パス
3.2.チームの作戦についての意思統一
(認知的トレーニング)
「プロなどの試合のビデオを途中で止め,その後,各プレーヤーがどのように動くべきかについてグループディスカッションを行い,最後にグループで出された意見を全体で発表し,お互いに考えている戦術やアイデアを知り,チームの作戦についての意思統一を行う効果をもつものである。」(下園博信,2005)
A
B
C
認知的トレーニングで用いるパフォーマンス課題
この状況下においてオフェンスはどのような動きをするか?図で示しなさい。
オフェンス
ディフェンス
ボール
ラン
パス、シュート
ドリブル
4.仮説の設定
仮説1
知覚トレーニングを実践することにより,子ども達の瞬間的で適切なボール保持者の状況判断力(シュート・パス・ボールキープの3種類のプレーを選択する力)が向上するのではないか。
瞬間的で適切な判断
仮説2
認知的トレーニングを実施することによって,子ども達がチームの作戦について意思統一することができるのではないか。
チームの作戦についての意思統一
5.授業計画の概要対象:中学1年男子39名単元:バスケットボール
主な指導内容 調査内容
1 オリエンテーション
単元のねらいと流れを理解チーム分け
認知的トレーニング<前>
戦術的状況判断テスト<前>(鬼沢陽子ら,2004)
パフォーマンス課題<前>
2 ゲーム<前> ゲーム<前> ゲームパフォーマンス評価法(GPAI)
3・4 練習①
タスクゲーム③鬼ごっこ(3対1)③2人のパッシングゲーム③2対2④3対1のパッシングゲーム④1対1のピボット④2対2
5 ゲーム<中> ゲーム<中> ゲームパフォーマンス評価法(GPAI)
6 リフレクション① 認知的トレーニング<中> パフォーマンス課題<中>
7・8 練習②
タスクゲーム⑦Vカット⑦2対2⑧3人のパッシングゲーム⑧3対3
戦術的状況判断テスト<中>
9 リフレクション② 認知的トレーニング<後> パフォーマンス課題<後>
10・11 練習③
タスクゲーム⑩3対2⑩3対3⑪3対2⑪3対3
12 ゲーム<後> ゲーム<後>戦術的状況判断テスト<後>
ゲームパフォーマンス評価法(GPAI)
知覚トレーニング
6. 結果と考察
6.1.<仮説1>・戦術的状況判断テストの結果
・ゲームパフォーマンス評価法(GPAI)の結果
6.2.<仮説2>・パフォーマンス課題
6.1.戦術的状況判断テストの結果
全問題(20問)
シュートの問題(8問)
パスの問題(8問)
ボールキープの問題(4問)
単元前 16.61±4.92 83% 6.74±2.16 84% 6.39±2.37 80% 3.47±1.01 87%単元中 19.09±2.86 95% 7.75±1.08 97% 7.56±1.13 95% 3.78±0.79 95%単元後 19.41±2.48 97% 7.85±0.81 98% 7.77±0.93 97% 3.79±0.80 95%
t値 -4.234 *** -3.728 *** -3.859 *** -2.086 *
※平均点±標準偏差 *:p<.05 **:p<.01 ***:p<.001
Total シュート場面
パス場面
ボールキープ場面
単元前
直面回数適切なプレー数
98回41回
20回11回
43回24回
35回6回
適切なプレー割合数 41.8% 55.0% 55.8% 17.1%
単元中
直面回数適切なプレー数
104回72回
19回15回
52回40回
33回17回
適切なプレー割合数 69.2% 78.9% 76.9% 51.5%
単元後
直面回数適切なプレー数
105回83回
15回13回
44回35回
46回35回
適切なプレー割合数 79.0% 86.7% 79.5% 76.1%
6.1.ゲームパフォーマンス評価法(GPAI)の結果
6.2.パフォーマンス課題(チーム1)生徒1 生徒2 生徒3
単元中 なし まず,Cが走って,そこにパスをする。
そして,Cがドリブルしていく。その間に,Aが走って,パスをしてそのままシュート。
まず,BがAにパスをして右斜めに移動し,その間AはボールキープをしてBにパスをして,その次またCにパスをして,Aはまっすぐ上に走りCからボールをもらいシュートする。
単元後
オフェンスAは,パスをもらうためにディフェンスを抜くようにパスが貰える位置へ。オフェンスBは,Cにパスができるよ
うにディフェンスに邪魔。
オフェンスAは,ハイポストに走って
いってパスをもらう。それから,ドリブルして,シュート。
オフェンスBは,Cにパス。オフェンスCは,ディフェンスを振り
切って,出て来て,パスをもらう。そして,Aにパス。
オフェンスAは,ディフェンスをよけるために急に走る(右45度ぐらいの所)。Cが近くに走ってきてパスする。
オフェンスBは,まず,A(右45度ぐらいの所)にパスをする。できるだけゴールの近くに行くために左0度ぐらいの所に走る。シュートする。オフェンスCは,Aの近くに走る。ゴ
ールの近くに行くためにゴールの近くにドリブルをする。Bにパスする。
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
6.2.パフォーマンス課題(チーム2)生徒4 生徒5 生徒6
単元中 図のように動く。 Aが内側に入り込み,その間にCがBに
パスをもらいに来て,BがパスをしてそのままAにパスをしてシュート。
Aが移動してBからボールをもらう。その間にCが移動してボールを受け取りやすい位置まで行く。AがCにパスをしてドリブルをする。BがあがっていってCからボールを受け取りシュートする。
単元後
オフェンスAは,Cのパスを受けるために動く。その後,シュート。オフェンスBは,Cへパスを送る。オフェンスCは,Bのパスを受けるために動く。その後,Aにパスをする。
オフェンスAは,自分についている
マークマンを振り切りパスをもらいに走る。そして,すぐにBにパス。オフェンスBは,パスをもらいに来た
Cにパスをして,自分はゴールの近くまで走ってパスをもらいシュート。オフェンスCは,VカットしてBからパ
スをもらい,そのままAにパスをする。
オフェンスAは,シュートができる位置までいってCからパスをもらいシュートする。オフェンスBは,ボールをCに渡す。オフェンスCは,ボールをもらえる位
置までいってボールをもらう。ディフェンスが来るのでドリブルで進みAにボールを渡す。
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
7.課題と展望
Off the ballの状況判断
認知的トレーニングのパフォーマンス課題がゲームにどのくらい影響を与えているか
1. Griffin,L.,S.Mitchell,and J.Oslon [著]・高橋健夫・岡出美則[監訳](1999)ボール運動の指導プログラム―楽しい戦術学習の進め方―.大修館書店.
2. 文部科学省(2002)中学校学習指導要領3. 中本浩輝・杉原隆・及川研(2005)知覚トレーニングが初級打者の予測
とパフォーマンスに与える効果.体育学研究,50:581-591.4. 鬼澤陽子・高橋健夫・岡出美則・吉永武史(2004)バスケットボールの攻
撃の映像を用いた戦術的状況判断テスト作成の試み.体育科教育学研究,20(2):1-11.
5. 鬼澤陽子・小松崎敏・吉永武史・岡出美則・高橋健夫(2008)小学校6年生のバスケットボール授業における3対2アウトナンバーゲームと3対3イーブンナンバーゲームの比較―ゲーム中の状況判断力及びサポート行動に着目して―.体育学研究,53:439-462.
6. 鬼澤陽子・岡出美則・小松崎敏・高橋健夫(2007)アウトナンバーゲームを取り入れたバスケットボール授業における状況判断力の向上―小学校高学年児に対する戦術的知識テスト,状況判断テストの分析と通して―.スポーツ教育学研究,26(2):59-74.
7. 下園博信(2005)判断力・予測力を養う練習法. 教養としてのスポーツ心理学 大修館書店:101-103.
引用・参考文献
bl =ベースライン w =ウイング p =ポイント
lp =ローポスト hp =ハイポスト
p
lp bl
hp
w
lpbl
hp
w
1.研究の背景
「評価規準の作成,評価方法の工夫改善のための参考資料(中学校)―評価規準,評価方法等の研究開発(報告)―」(国立教育政策研究所教育課程研究センター,2002)
「ルールを工夫したり作戦を立てたりして練習の仕方やゲームの仕方を工夫している」
「作戦を生かした攻防を展開してゲームができる」
思考・判断
技能