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67 67 スタートさせました TUFS ビブリオ〉 【日本語で書かれた図書 ベスト 10 Rank Title/Author 請求記号 1 日本語のシンタクスと意味 /寺村秀夫著 A/a6/58/1 2 みんなの日本語/スリーエーネットワーク編著 A/a7/515352/2 3 カラマーゾフの兄弟 /ドストエフスキー著 ; 亀山郁夫訳 A/9S-8/D724-8/1 4 想像の共同体 : ナショナリズムの起源と流行/ベネディクト・アンダー ソン著 ; 白石さや , 白石隆訳 A/311/356a 5 英語音声学入門/竹林滋 , 斎藤弘子共著 K/a1/629694 6 日本語動詞のアスペクト/金田一春彦編 A/a5/48 ア 7 罪と罰/ドストエフスキー著 ; 亀山郁夫訳 文庫 /23-1/ ト 1-7 8 ことばの科学 : 言語学研究会の論文集/言語学研究会編 A/a9/31/1 イ 9 語用論への招待/今井邦彦著 A/810/500710 10 日本語音声学入門/斎藤純男著 A/a1/608234 【日本語以外の言語で書かれた図書 ベスト5 Rank Title/Author 請求記号 1 Aspect : an introduction to the study of verbal aspect and related problems / Bernard Comrie ★アスペクト研究入門【英語】 K/815/32 2 A handbook of Japanese usage / Francis G. Drohan ★日本語用法ガイド【英語】 A/a6/523992 Linguistic anthropology / Alessandro Duranti ★言語人類学【英語】 K/810/57/288 4 Discourse politeness in Japanese conversation : some implications for a universal theory of politeness / Usami Mayumi ★日本語のポライトネス理論【英語】 K/810/521419 5 Vowels and consonants : an introduction to the sounds of languages / Peter Ladefoged ★母音と子音(音声学概論)【英語】 K/811/620974 ほか 6 点 2010 年貸出ランキング 2010 年 4 月 1 日~ 2011 年 2 月 18 日の附属図書館貸出ランキングです。日本語で書かれ た図書では、日本語学をはじめ言語学関係が上位を占めますが、亀山学長訳のドストエフスキー も目を引きます。日本語以外の言語で書かれた図書では、英語で書かれた言語学関係図書が並 びました。なお、日本語図書第1位は118回貸出されています(図書館に複数部あり)。 立石博高

2010年貸出ランキング TUFS–ビブリオ〉 スタートさせました · 2 みんなの日本語/スリーエーネットワーク編著 A/a7/515352/2 ... 6 日本語動詞のアスペクト/金田一春彦編

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をスタートさせました〈TUFS–ビブリオ〉

【日本語で書かれた図書 ベスト10】Rank Title/Author 請求記号

1 日本語のシンタクスと意味 /寺村秀夫著 A/a6/58/1

2 みんなの日本語/スリーエーネットワーク編著 A/a7/515352/2

3 カラマーゾフの兄弟 /ドストエフスキー著 ; 亀山郁夫訳 A/9S-8/D724-8/1

4 想像の共同体 : ナショナリズムの起源と流行/ベネディクト・アンダーソン著 ; 白石さや , 白石隆訳 A/311/356a

5 英語音声学入門/竹林滋 , 斎藤弘子共著 K/a1/629694

6 日本語動詞のアスペクト/金田一春彦編 A/a5/48 ア

7 罪と罰/ドストエフスキー著 ; 亀山郁夫訳 文庫 /23-1/ ト 1-7

8 ことばの科学 : 言語学研究会の論文集/言語学研究会編 A/a9/31/1 イ

9 語用論への招待/今井邦彦著 A/810/500710

10 日本語音声学入門/斎藤純男著 A/a1/608234

【日本語以外の言語で書かれた図書 ベスト5】Rank Title/Author              請求記号

1 Aspect : an introduction to the study of verbal aspect and related problems / Bernard Comrie     ★アスペクト研究入門【英語】 K/815/32

2

A handbook of Japanese usage / Francis G. Drohan★日本語用法ガイド【英語】 A/a6/523992

Linguistic anthropology / Alessandro Duranti  ★言語人類学【英語】 K/810/57/288

4Discourse politeness in Japanese conversation : some implications for a universal theory of politeness / Usami Mayumi

★日本語のポライトネス理論【英語】K/810/521419

5Vowels and consonants : an introduction to the sounds of languages / Peter Ladefoged  ★母音と子音(音声学概論)【英語】 K/811/620974

ほか 6 点

2010 年貸出ランキング

 2010 年 4月 1日~ 2011 年 2月 18日の附属図書館貸出ランキングです。日本語で書かれた図書では、日本語学をはじめ言語学関係が上位を占めますが、亀山学長訳のドストエフスキーも目を引きます。日本語以外の言語で書かれた図書では、英語で書かれた言語学関係図書が並びました。なお、日本語図書第1位は 118回貸出されています(図書館に複数部あり)。

立石博高 

本学は、二学部への学部改組を目指すとともに、

「グローバルな地域研究に関する教育拠点」へと

大きく変貌しようとしています。国際共通言語と

地域社会言語という複言語についての高度な言語

運用能力を有し、かつ言語文化と国際社会に関わ

るそれぞれの専門分野に精通した人材を育成しよ

うとするものです。そのために入学した皆さんに

まず求められるのは、なんでしょうか。外国映画

字幕翻訳者の戸田奈津子さんが次のように語っ

ていました。「語学ができることはスタートライ

ンでしかない。問われるのはむしろ日本語の力」。

昨年亡くなられた作家の井上ひさしさんも「日本

語という思考の根拠地がなくなる。根拠地なしで

はものごとを深く考えることができない。そんな

国民に未来はありません」と言い切っていました。

そうなのです、「語学好き」の皆さんにもっとも

大事にしていただきたいのは、母語で語れる中身

を豊かにし、表現力を高めていくことなのです。

 

したがって、本学の改組にあたっては、入学者

が前期課程においていかに「世界教養」を身につ

けるかに工夫を重ねています。本学図書館もまた、

〈TUFS–

ビブリオ〉というコンセプトのもと

に、「言語、文学、文化」分野から「歴史、社会、

政治、経済」分野、さらには「自然科学」分野の

基本文献紹介コーナーをWEB上に設けることに

しました。本学図書館ホームページにリンクボタ

ンがあります。

 

まずは、皆さんが手軽に触れることのできる文

庫・新書に絞って上述の諸分野の基本文献ガイド

を掲載し、次いで本学で専攻語として学ばれる諸

言語の辞書ガイドを掲載する手はずになっていま

す。さらに、地域社会ごとに区分した研究入門を

順次掲載する予定です。これらの書物の中で本学

図書館に所蔵があるものは、本学図書館Oオ

ーパック

PAC

の所蔵情報にリンクしています。ちなみに井上ひ

さしさんの小説『吉里吉里人』も、基本文献の一

冊に挙げられています(本学図書館所蔵)。〈TU

FS–

ビブリオ〉が有効に活用されることを願っ

てやみません。

(たていし・ひろたか 東京外国語大学附属図書館長)

※立石図書館長は、二〇一一年四月一日

付けで副学長に転じました。

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●出版実務研修(九月)

 

出版界を志望する本学学生向けに、本学出版会による

「出版実務研修」が行われていますが、今回初めて図書

館職員三名が講師に加わりました。出版界と図書館の関

わり、電子書籍の話題、目録と古典籍の話などを取り上

げました。出版の世界と図書館とは隣り合っているよう

で実はそれほど互いを良く知らないという率直な話もし

ましたが、受講生には興味深く聞いてもらえたようでし

た。

●特別展示会(一一~一二月)

 

外語祭の季節に毎年行っている貴重書等の特別展示、

担当者の知恵の絞りどころです。今回は、当館の誇る「維

新前後外国語図書」コレクションを一〇年ぶりに取り上

げてみることとなり、担当メンバーの「『○○いろは』っ

てたくさんあるけどこれ何でしょうね?」という疑問

から、「横文字いろは――幕末・明治初期の西洋語紹介」

の企画が膨らみました。この分野の研究者がちょうど本

学で授業を持っておられたのも幸運でした(屋や

名な

池いけ

誠・

慶応義塾大学教授)。展示の注目度はまずまずだったよ

うです(特別展示会について、詳しくは附属図書館ホー

ムページをご参照ください)。

●学生利用者アンケート(一~二月)

 

大学図書館界では、最近、「学習支援機能の強化」が

課題に挙げられています。長時間学習できる空間や、学

習支援カウンターを設ける「ラーニングコモンズ」の動

きも目立ちます。当館でもそのニーズを探るため、学生

利用者アンケートを五年ぶりに実施しました。アンケー

トのお礼に「図書館オリジナル外語祭カレンダー(二月)」

を配布したのも話題を呼んだようです。アンケートの結

果は今後お知らせします。

●電動集密書架増設(二~三月)

 

地味な話題になりますが、図書館を苦しめる永遠の課

題がスペース問題です。一階の雑誌架を取り払って、電

動集密書架に入れ替える工事を行いました。これで収蔵

量が五万冊増えますが、それでも早ければ五年で図書館

が満杯になります。人文社会科学系で多言語に渡る本学

では蔵書の廃棄は困難で、頭の痛いところです。将来、

電子化が進んで状況が変わる日は来るのでしょうか? 

今はまだ、誰も確かなことは言えないのでしょう。

●図書館OPAC(オーパック)更新(四月~)

 

オンライン目録OPACが新しくなり、オンライン

サービスM

y Library

へのログインが便利になったほか、

貸出履歴一覧など新機能が増えました。携帯版OPAC

も開始しています。

 

図書館システムの更新は数年に一度の大きな出来事

で、契約手続やデータ移行、動作テストなど裏方の苦労

も多いのですが、今回の更新は利用者サービスに直結す

る点が多くやりがいがありました。ご活用ください。

●情報リテラシー科目授業(四・六月)

 

一年生の必修科目「情報リテラシー」のうち、二コマ

を図書館職員が担当しています。学生の皆さんには、図

書館の使い方や文献・情報の探し方をしっかりと身につ

けてほしいと思います。自由参加の「図書館オリエンテー

ション」も実施していますので、他の学年の方も気軽に

ご参加ください。

 

図書館職員にとっては、学生の前でじっくり話ができ

る貴重な機会で、慣れないうちは緊張するものですが、

利用者からのさまざまな質問が職員を成長させますの

で、ぜひ質問してみてください。お互い勉強しましょう。

●選書委員会(六・七・一一・二月)

 

図書館はどうやって本を選んでいるのか、実によく聞

かれます。外大では多言語に渡る各国の蔵書があるので、

さらによく聞かれます。

 

購入図書の選定は選書委員会(教員三名と担当職員)

で行っていますが、リクエスト(教員推薦や学生希望)

は早く対応する必要がありますので、選定方針に従って

判断できるものは委員会を待たずに決定しています。選

書委員会で選定するのは主に学部前期学生向けの図書

で、国内の日本語で書かれた図書が大多数になります。

担当職員が調査しリストアップした図書を中心に、新刊

情報誌を見ながら選んでいきます。平成二二年度は四回

開催しました。

 

専門図書や外国図書は別枠で、主に教員推薦により購

入しています。

一見地味に見える図書館にも、実はさまざまな動きがあ

ります。この一年の出来事から話題を拾ってみました。

図書館この一年 二〇一〇年四月~二〇一一年三月

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学外の展示で活躍した、附属図書館の資料を紹介します

 図書館の資料は、いろいろなところに展示や取材で借り出されているのをご存じでしょうか。当館の場合、2010 年度はちひろ美術館・東京の「ポーランドの絵本画家たち展」(展示期間:2010/3/2-5/9)と、一燈園資料館「香倉院」(京都)の「没後 100 周年記念 トルストイ展―平和主義の源流―」(2010/9/11-12/5)で附属図書館の資料が展示されました。今回は、そうした学外の展示で活躍した資料の一部をご紹介します。

「どうして大学の図書館に絵本があるの?」と素朴な疑問を持たれる方も、いらっしゃるかもしれません。実は、児童文学やブックスタートⅰなどを研究分野としている大学では、意外に絵本の収集に力を入れています。たとえば白百合女子大学の図書館ⅱは、国際こども図書館の児童書総合目録ⅲにも登録されているほど、たくさんの児童書・絵本を所蔵しています。本学では、日本語以外の言語の絵本を言語学習や民俗学・美術・文学の研究のため所蔵しています。 ちひろ美術館では、当館の資料で、有名なポーランド絵本画家たちの作品 30 点あまりを展示していただきましたが、実は!まだまだたくさんの絵本たちがいたるところで眠っています。絵本の文章は簡単なものが多く、また、絵を見ているだけでも、その国の文化を楽しむことができます。ぜひ、この機会に附属図書館で「絵本探し」をしてみませんか?

『ポーランドの絵本画家たち展』

『没後百周年記念 トルストイ展』─平和主義の源流─

【開催】ちひろ美術館・東京(2010/3/2 ~ 5/9)http://www.chihiro.jp/tokyo/

【開催】一燈園資料館「香倉院」・京都(2010/9/11~12/5)http://www.ittoen.or.jp/map/kosoin/kosoin.htm

『しずくたち、位置について!雨のしずくのお話』ボフダン・ブテンコ(絵)“Krople na start! : bajka o deszczowych kropelkach” / ilustrował Bohdan Butenko

(請求記号:S61/726/567915)

戦後、結婚し、子供をもうけたピエールとナターシャの絵.P.322

『 戦 争 と 平 和  第 3 巻 』 “Война и миръ”/Л.Н. Толстой

(請求記号:S/9S-8/T654-18/3)

 ロシアの文豪レフ・トルストイ(1828-1910)の没後 100 周年を記念し、京都の一燈園資料館では、当館所蔵のトルストイのデビュー作『幼年時代、少年時代、青年時代』をはじめ、20 世紀初頭にロシアのスィーティン出版社が作成した著作集が展示されました。 19 世紀ロシアは、トルストイ自身が『アンナ・カレーニナ』で描いているように、「あらゆるものがひっくり返った」時代です。農奴解放、ナロードニキ運動、産業革命といったこれまでの日常を変えてしまう出来事が、次々と起こりました。トルストイは激動の時代を写実的に描きながら、国家権力の暴力性・自身の貴族という立場を批判し、平和主義を訴え続けました。その思想はロシア国内にとどまらず、インドのガンディー、そして日本の白樺派にまで影響を与えています。『戦争と平和』ではナポレオン戦争の話が描かれるなど、他の著書も内容が濃く、量も多いので、敬遠しがちなトルストイの作品ですが、中編小説や童話・民話といった親しみやすい作品も数多くあります。また、19 世紀にスィーティン出版社を立ち上げた、イワン・スィーティンの伝記ⅳを読むと、トルストイの素朴な人柄を感じることもできます。もちろん、ドストエフスキーの作品と読み比べてみても面白いかもしれませんね。

[注]ⅰブックスタートは、赤ちゃんと保護者が一緒に絵本を読むことで親子関係や新生児教育に役立てようとする

運動で、イギリスを中心に発展してきています。ⅱ白百合女子大学図書館 HP:http://sclib1.shirayuri.ac.jp/ ⅲ児童書総合目録は、国際子ども図書館、国立国会図書館のほか、日本国内で児童書を所蔵する主要類縁機関

が所蔵する児童書・関連資料の所蔵情報をまとめて検索できる目録です。(検索ページ:http://kodomo3.kodomo.go.jp/web/ippan/cgi-bin/fKJN.pl?act=KW)

ⅳ 『本のための生涯 』イワン・スイチン著 ; 松下裕訳(請求記号:17.1/H/Sy11)

美術館・博物館への貸出資料

展示のカタログはこちら『ポーランドの絵本画家たち展』松方路子 , 宍倉恵美子 , 屋代亜由編

(請求記号:A/726/656564)

『没後百周年記念トルストイ展目録・解説』宮田昌明編

(請求記号:A/9S-4/665119)

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だいたいわたしには書物の文化がそれほど簡単に衰退して

しまうとは思えないのです。自分たちがいいと思い、支え

にしている知や感受性に正直に寄り添っていくかぎり、そ

れほど人間は大きな間違いはおかさないでしょう。だから

目先のことにとらわれるよりも、自分の直観を信頼したい

と思います。同時にわたしたち出版会は、「危機だ、危機だ」

と言われる風潮に少しばかり抗う気持ちで、昨年度から東

京外国語大学の春学期のカリキュラムのなかに、「日本の

出版文化」という授業を組み入れることにしました。これ

は、出版会として按配する半年間のリレー講義です。「抵

抗」といってもささやかなものにすぎませんが、外大生に、

本を作るという仕事とそれがもっている魅力や伝統の厚み

について見通しをもってもらいたい、そこからわたしたち

自身も、凪の無力感から抜け出る予感を探りたい、と思っ

たのでした。授業では、第一回目にわたしが「人文学の危

機と転換期の大学」について講義したあと、毎回かわるが

わる、出版の現場で活躍している編集者や営業マン、さら

に著名な装丁家やカリスマ書店員までを招いて、よそでは

聴けない授業をしていただきました。出版史などについて

も、近世史の専門家である吉田ゆり子副編集長の手を借り

て、得難いレクチャーを提供することができました。一連

の講義を通じて、書物をめぐる多面的な事情を浮かび上が

らせようという仕掛けは、当初はつつましい規模の教室で

こっそり企むつもりだったのですが、結局は学生が大教室

に入りきれない日もある大盛況の授業となりました。教場

で行なわれる講師と学生のやりとりを聞いたり、回収した

レスポンスシートを読んだりしていると、授業に参加して

いる学生たち自身にも出版文化の危機、人文書の危機に対

する憂いがすでに共有されているようなのです。かれらか

らも、この授業を通して、どこに突破口があるだろうか

と、ともに悩み考える切実さが伝わってきました。この授

業は二〇一一年度も、総合科目『日本の出版文化』(春学期、

水曜日三時限目)として、講師陣をさらに充実させて続け

るつもりです。今度は、できれば「日本の……」という制

約を克服して、東アジアにおける出版メディアの問題にま

で考えを広げていきたいものです。

 

ともあれ、こんな「じたばた」も含めて、結局は書物と

の当たり前の対話を続けていくなかにしか、出版の未来に

通じる活路はないのでしょう。その点では、東京外国語大

学出版会は堂々とアナクロ路線を行くぞ、と思っているの

でした。

(いわさき・みのる 

東京外国語大学出版会編集長)

 

東京外国語大学出版会が立ちあがり、わたしが初代の編

集長を務めるようになって三年目に入りました。国立大学

法人という制度のなかに出版会を作る、それもたんに大学

の教育や研究の成果を公開するだけではなく、小さくても

ちゃんと哲学をもった版元として立っていけるようにした

い、と始めたことですから、その先に有形無形の難題が控

えていることは覚悟していました。それでも、発足以来た

くさんの方々の御助力や御助言もいただいて、わたしたち

の活動は少しずつ形をなしつつあるようです。

 

二年余のあいだによく耳にしたことのひとつは、「出版

産業そのものが構造不況にあるときに、いったいなぜわざ

わざ出版会なの? 

発想がアナクロじゃない?」というご

指摘でした。たしかに、この事業を始めてみてすぐに、本

を作って読者に届けるまでの環境が予想以上にやっかいに

なっていると感じました。真剣な問いかけの詰まった本で

あればあるだけ、なかなか読んでもらえない、買ってもら

えない、関心をもってもらえない、世の中での置きどころ

がない、という具合です。もし本当にそうだとすると、出

版という営みの基盤が傷み始めているのかもしれません。

その傍らでは、昨年からiPad

やKindle

の端末が具体的に

話題になり、まるでグーテンベルク・ギャラクシーの命数

がいまにも尽きるかのように、電子書籍元年だ何だと騒が

れてもいます。しかし、今の状況のやっかいさは、たとえ

て言えば、逆風がびゅんびゅんと吹きつけてきてつぶされ

てしまうというよりは、むしろ押しても引いても手ごたえ

のない長い凪のなかに閉じ込められてしまったというべき

でしょうか。それだけに、なおさら問題の根は深いのかも

しれません。

 

もっとも、こうした事態にはどんな特効薬も妙案もない

でしょうし、いたずらに嘆いていてもなんともなりません。

岩崎

アナクロ路線で行くぞ! 三年目を迎える出版会

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 トップ 3 はいずれも全国の大学生協で売り上げ 1 万冊を超えています。『思考の整理学』は、断トツのロングセラー。発行から 20 年余り経っていますが、「考えることへの入門書」として、大学生に絶大な人気を誇っています。13 位にランクインしている『知的複眼思考法』も同じようなジャンルです。東外大生協では、特に新入生の方にこれらの本をオススメしています。 2 位の『告白』は映画化された人気ミステリーの文庫版です。文芸書は、文庫化されないと高くて買えない、という人が多いなか、この本は文庫化される前からミステリー好きを中心に売れていました。『1Q84』も単行本ですが、こちらはさすが村上春樹、といったところ。 注目すべきは 3 位の『これからの「正義」の話をしよう』です。昨年刊行された中では、全国の大学生協でもっとも話題になった本です。現代社

読書マラソン

東外大生協で売れている本は?

 学生のみなさま、ご入学、ご進級おめでとうございます。2011 年度もこの東外大において、価値のある貴重な経験を積まれていくものと思います。東外大生協では今年度も、教科書、文具、パソコンから旅行、検定まで、みなさまの大学生活がより良いものになるよういっそう努力し、質の高いバックアップをしてまいります。 さて今回は大学生活において重要な要素である「本」について、昨年東外大生協で話題になったものをランキングで発表します。もしその中で読んでいない本やジャンルがありましたら、この機会に読ん

でみて下さい。そして読み終わりましたらぜひ「読書マラソン」に参加し、読書の輪を広げていって下さい。この記事を読むことによって、より読書に興

味をもって頂けましたら幸いです。          東外大生協 購買書籍部 辻 大佑

会の歪みや世界情勢にも密接に関わっているので、東外大でこの本が人気を博したのは必然といえるのではないでしょうか。本書は、哲学を身近なものだと考えさせてくれるだけでなく、自分自身の目線や考え方を再認識させてくれます。文芸書だけでなく、こういった本がランキングに入ってくるのも、大学生協ならではです。 以降は、かなり東外大のカラーが濃く出た結果となりました。

『罪と罰』『武装解除』はもちろん東外大の先生方の訳書・著作です(『ハングルの誕生』の野間先生も、ご退職されましたが、東外大の先生でした)。これらは文庫や新書で手に取りやすかったというのも人気の要因でした。専攻が違っていたとしても、まだ読んでいない方はぜひ読んでみて下さい。特に亀山学長先生の『罪と罰』は 2 年連続のランクイン。わかりやすい新訳で、ぐいぐい引き込まれます。東外大生協のロングセラーで、書籍コーナーには欠かせない本となりました。昨年 9 月に刊行された新訳の『悪霊』も好評です。 東外大出版会の本も、2 点ランクインしました。どちらも新刊で、注目度の高さが窺えます。 意外なものとしては 14 位の『日本人の知らない日本語 2』があげられます。日本と外国のカルチャーギャップを面白く読ませる、という本は数多くありますが、この 1 冊は語学に焦点をあてています。この本がランクインしているのも、東外大ならではと言えます。また、レポート、論文関連の本も健在です。この手のものもかなり多く刊行されていますが、定番となるものは限られています。新しければ良い、というわけでもないようです。やはり信頼性でしょうか。 全体を通して見ると、ジャンルとしては、文芸書が 15 位中 6 点。論文やレポート、整理術といった実用書が4 点。専門、学術書が 5 点となりました。うち、東外大関連は全体で 5 点。とてもバラエティに富んでいます。また、15 位中なんと 9 点が文庫や新書でした。特に新書は、前述のように手頃なサイズでわかりやすいものが多く、専門の知識が少なくてもすんなり理解できる点が好評で、学生の知的好奇心を満たすのにはピッタリです。 若者が本を読まなくなった……と言われて久しいですが、ランキングの結果を見る限り、まるでバランスの良い食事のようです。どうやら東外大生にその心配はなさそうです。新入生のみなさまも「バランスの良い読書」を心がけてみて下さい。

「読書マラソン」は、本を継続的に読み、大学生活 4 年間で100 冊以上を目指そう、という生協全体の企画です。東外大生協では 2005 年からこの取り組みを行っています。 ただ読むだけでなく、感想文(コメントカード)を書くことによって理解を深めることができます。またそのカードを展示することで、その本を他の人にも紹介することができ、知識の共有と、コミュニケーションを広めることにもつながります。

 生協では、朝日新聞社協力のもと、全国コメント大賞を年に 1 回実施しています。 これは全国の生協から応募されたコメントの中から、優れたコメントカードの No.1 を決めるものです。2009年度は、東外大生が銅賞を受賞しました。また、2009 年度から、全国のコメント大賞と並行して、東外大独自のコメント大賞も開催しています。こちらは「学長賞」「図書館長賞」など、多くの方々にご協力をいただいております。

多くの方に、もっと本を読んでもらいたい。生協は今後もいっそうの努力のもと、進んでまいります。たくさんの「知識」と「興味」にあふれたハッチポッチに、是非ご来店下さい。

東京外国語大学生活協同組合購買書籍部ハッチポッチTEL042-354-3062 URL http://tufscoop.jp/

●東京外国語大学生活協同組合 購買書籍部●

ハッチポッチへようこそ!

東外大生協書籍ランキング BEST15  2010 年 1 月〜 2011 年 1 月 教科書除く

読書マラソンとは

全国コメント大賞と東外大独自賞について

① 思考の整理学 筑摩書房(文庫) 外山滋比古② 告白 双葉社(文庫) 湊かなえ③ これからの「正義」の話をしよう 早川書房 マイケル・サンデル / 訳 鬼澤忍④ 1Q84 Book3 新潮社 村上春樹⑤ ノルウェイの森 上 講談社(文庫) 村上春樹⑥ 大学生の為のレポート・論文術 講談社(新書) 小笠原喜康⑦ 罪と罰 1 光文社(文庫) ドストエフスキー / 訳 亀山郁夫⑧ Field + 4 東京外国語大学出版会 編 東京外国語大学アジア・アフリカ

  言語文化研究所⑨ 武装解除 講談社(新書) 伊勢崎賢治⑩ ハングルの誕生 平凡社(新書) 野間秀樹⑪ 夜は短し歩けよ乙女 角川書店(文庫) 森見登美彦⑫ 豊饒なるエジプト 1841-44 東京外国語大学出版会 編 東京外国語大学アジア・アフリカ

  言語文化研究所⑬ 知的複眼思考法 講談社(文庫) 苅谷剛彦⑭ 日本人の知らない日本語 2 メディアファクトリー 海野凪子⑮ 論文の教室 NHK 出版 戸田山和久

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◆亀山郁夫先生

『礎のロシア─スターリンと芸術家たち』

亀山郁夫著 

岩波書店 

二〇一〇年一一月 

一四〇七円

恐怖の詩神スターリンと対話した芸術家

と表現の運命。証言や作家の遺作から死

の真相に迫る。その他二〇一〇年九月に

は『悪霊(一)』(光文社)を翻訳出版、

二〇一〇年六月には『ドストエフスキー

との59の旅』(日本経済新聞出版社)を

出版。

◆川口裕司先生

『一冊目のトルコ語』

川口裕司著 

東洋書店 

二〇一〇年九月 

二五二〇円

文字と発音・母音調和・使える基本フレー

ズ・体系的な文法など、トルコ語のすべ

て。

◆菊池陽子先生

『ラオス史』マーチン・スチュアート・フォック

ス著 

菊池陽子訳 

めこん 

二〇一〇年一一月 

三六七五円

ラーンサーン王国の勃興と衰退から近年

の動向までを描いたラオス通史。その他

二〇一〇年一二月には『ラオスを知るた

めの60章』(明石書店)を編著者として

出版。

◆金富子先生

『証言

未来への記憶

アジア「慰安婦」証言集

Ⅱ─南・北・在日コリア編

下─ (証言

未来

への記憶

アジア「慰安婦」証言集)』アクティ

ブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」、西

野瑠美子、金富子編 

明石書店  

二〇一〇年五月 

三一五〇円

個々の体験と被害に向き合うことで「慰

安婦」制度の実態をとらえ直すための証

言集。

◆工藤光一先生

『全体を見る眼と歴史学

(二宮宏之著作集

1巻)』二宮宏之著 

工藤光一、福井憲彦、林田伸一

編 

岩波書店  

二〇一一年二月 

八八二〇円

歴史学のあり方を鋭く問う論文、現代歴

史学の諸潮流を論じた論考を収録。

◆桑田光平先生

『ロラン・バルト 

中国旅行ノート』

ロラン・バルト著 

桑田光平訳 

筑摩書房 

二〇一一

年三月 

一二六〇円

一九七四年、毛沢東政権下の北京・上海・

南京を訪れたバルトの記録。本邦初訳。

その他二〇一〇年一一月には『フレンチ・

セオリー─アメリカにおけるフランス現

代思想』(エヌティティ出版)を共訳者

として出版。

◆酒井啓子先生

『〈中東〉の考え方』酒井啓子著 

講談社 

二〇一〇

年五月 

七九八円

中東情勢に関わる問題を国際政治と現代

史の視点から読み解く。その他二〇一〇

年七月には『紛争解決

暴力と非暴力』(ミ

ネルヴァ書房)を共著で出版。

◆佐藤公彦先生 

『清末のキリスト教と国際関係─太平天国か

ら義和団・露清戦争、国民革命へ』佐藤公彦

著 

汲古書院 

二〇一〇年六月 

一二六〇〇円

清末のキリスト教と、義和団をめぐる諸

問題について精緻に論考した大作。

◆椎野若菜先生 

『「シングル」で生きる─人類学者のフィー

ルドから』椎野若菜編 

御茶の水書房 

二〇一〇年

一〇月 

一八九〇円

文化人類学の立場から、世界各国の「シ

ングル」問題を自分との関わりで考える。

◆鈴木聡先生

『未知へのフィールドワーク─ダーウィン以

後の文化と科学』ジリアン・ビア著 

鈴木聡訳

東京外国語大学出版会 

二〇一〇年一二月 

四四一〇

一九世紀から二〇世紀にかけての自然科

 この一年間(二〇一〇年四月~二〇一一年

三月)に出版された外語大の先生の著書・訳

書のなかから主なものを紹介します。(先生

のお名前の五十音順)

※書名/著編者名(訳者名)/出版社名/刊行年

月/税込価格            (編集部)

◆新井政美先生

『織田信忠─父は信長』

新井政美著 

学陽書房 

二〇一〇年三月 

八四〇円

織田信長の嫡子・信忠の成長を、主従た

ちの心情とともに詩情豊かに描いた傑作

小説。

◆荒川洋平先生

『とりあえず日本語で

もしも…あなたが外国

人と「日本語で話す」としたら』荒川洋平著 

スリーエーネットワーク 

二〇一〇年五月 

一二六〇

「対外日本語コミュニケーション」の様々

な場面での接し方について、問題点や解

決法を探る。

◆粟屋利江先生

『人の移動と文化の交差(ジェンダー史叢

第7巻)』粟屋利江、松本悠子編著 

明石書店 

二〇一一年一月 

五〇四〇円

人間の移動の歴史を、ジェンダー史の視

点から分析。既存の歴史理解・記述を読

み直す。

◆伊勢崎賢治先生

『国際貢献のウソ』 

伊勢崎賢治著 

筑摩書房 

二〇一〇年八月 

八四〇円

「国際貢献」の美名のもとのウソやデタ

ラメを、武装解除のプロが語り尽くす。

その他二〇一一年三月には『紛争屋の外

交論─ニッポンの出口戦略』(NHK出

版)を出版。

◆今井昭夫先生 

岩崎稔先生 

『記憶の地層を掘る─アジアの植民地支配と

戦争の語り方』今井昭夫、岩崎稔編 

御茶の水書

房 

二〇一〇年一一月  

二七三〇円

アジア太平洋戦争期の占領、再植民地化、

抵抗と独立戦争…。積み重ねられた各層

の記憶からの問い。

◆岩崎稔先生 

『ノーマ・フィールドは語る─戦後・文学・

希望』ノーマ・フィールド、岩崎稔、成田龍一著

岩波書店 

二〇一〇年四月 

五二五円

日米の社会で少数派に寄せ続ける共感の

根には、自らの戦後経験と、文学への希

望がある。

◆受田宏之先生 

『開発援助がつくる社会生活─現場からのプ

ロジェクト診断』受田宏之、青山和佳、小林誉明

編著 

大学教育出版 

二〇一〇年五月 

二五二〇円

学際・学融的な分析から、国際開発援助

制度を見る代替的な視点を提案する。

◆加藤陽子先生

『話し言葉における引用表現─引用標識に注

目して』加藤陽子著 

くろしお出版 

二〇一〇年六月

三九九〇円

引用標識「ト」「ッテ」などで発話が終

了する場合の表現効果、機能、使用の意

義について。

◆金指久美子先生 

『中級チェコ語文法』金指久美子著 

白水社 

二〇一〇年一一月 

三九九〇円

丁寧な解説でチェコ語の世界を読み解

く、もっとも詳しい文法書。初級を終え

た学習者に。

外語大の先生の新刊棚

Page 7: 2010年貸出ランキング TUFS–ビブリオ〉 スタートさせました · 2 みんなの日本語/スリーエーネットワーク編著 A/a7/515352/2 ... 6 日本語動詞のアスペクト/金田一春彦編

7879

◆西谷修先生

『フォト・ドキュメント

骨の戦世(イクサユ)

─65年目の沖縄戦』西谷修、比嘉豊光編 

岩波書

店 

二〇一〇年一〇月 

八四〇円

再開発が進む沖縄の激戦地跡から発見さ

れる遺骨。「骨」と「戦後」をめぐる論

考集。その他二〇一〇年一二月には『普

天間基地問題から何が見えてきたか』(岩

波書店)を共著出版。

◆博多かおる先生

『地球のかたちを哲学する』ギヨーム・デュプ

ラ著 

博多かおる訳 

西村書店 

二〇一〇年六月 

二九四〇円

古今東西、人々がイメージした地球の形

を解説した絵本作品。その他二〇一〇年

八月には『バルザック 

芸術/狂気小説

選集2 

ガンバラ他 

音楽と狂気篇』(水

声社)を共訳者として出版。

◆藤縄康弘先生

『シチュエーション 

ユミと一緒にドイツ語

を学ぼう!』藤縄康弘、Claudia Ham

ann

、 Vincenzo Spagnolo

著 

朝日出版社 

二〇一一年一月 

二九四〇

医学部生のユミと一緒に、ドイツでの日

常生活に必要な語彙や言葉遣いを自然に

学ぶ。

◆舩田クラーセンさやか先生

『アフリカ学入門─ポップカルチャーから政

治経済まで』舩田クラーセンさやか著 

明石書店

二〇一〇年七月 

二六二五円

さらに「身近なアフリカ」を発見し、ア

フリカに接近するための総合的なガイド

ブック。

◆三宅登之先生 

全民先生

『そのまま使える! 

中国語会話表現集』

三宅登之、全民著 

東洋書店 

二〇一〇年五月 

一六八〇円

さまざまな場面でそのまま使える中国語

表現。会話例はすべてCDに。発音練習

にも便利。

◆村尾誠一先生

『藤原定家』村尾誠一著 

笠間書院 

二〇一一年三

月 

一二六〇円

日本の代表的歌人の秀歌を堪能。「コレ

クション日本歌人選」全六〇冊の第一回

配本。

◆柳原孝敦先生

『映画に学ぶスペイン語─台詞のある風景』

柳原孝敦著 

東洋書店 

二〇一〇年六月 

一九九五円

スペイン語圏の名画三四本から記憶に残

る名台詞の文化背景や文脈、文法的な解

説も。その他二〇一〇年四月にはロベル

ト・ボラーニョ『野生の探偵たち』(上下、

白水社)を共訳者として出版。

◆山口裕之先生

『ベンヤミン・アンソロジー』ヴァルター・ベ

ンヤミン著 

山口裕之編訳 

河出書房新社 

二〇一一

年一月 

一〇五〇円

ベンヤミンの新訳。「暴力の批判的検討」

「技術的複製可能性の時代の芸術作品(第

三稿)」「歴史の概念について」など究極

のセレクト。

◆山下美知子先生

『ニューエクスプレス 

フィリピノ語』

山下美知子著 

白水社 

二〇一〇年一二月 

二五二〇

タガログ語を母体としたフィリピンの国

語、フィリピノ語の入門書にして決定版。

◆和田忠彦先生

『開かれた作品〔新・新装版〕』ウンベルト・エー

コ著 

篠原資明、和田忠彦訳 

青土社 

二〇一一年二

月 

二五二〇円

現代芸術の可能性を切り拓く、ウンベル

ト・エーコの記念碑的労作。

学と人文科学の相互関係を、英文学・文

化研究の泰斗が探究する。

◆関口時正先生

『フォーラム・ポーランド2009年会議録』

関口時正、田口雅弘著 

ふくろう出版 

二〇一〇年

一〇月 

一五〇〇円

ショパンをテーマに掲げたフォーラムの

会議録。後半にポーランド語訳も収録。

その他二〇一〇年八月には『私たちが子

どもだったころ、世界は戦争だった』(文

藝春秋)を亀山郁夫先生ほかと共訳で出

版。

◆善如寺俊幸先生

『漢字系統樹で学ぶ 

漢字イメージトレーニ

ング500』善如寺俊幸著 

三恵社 

二〇一〇年

一〇月 

二四六〇円

漢字がさらに身近なものに。日本語学習

者と教師のための漢字学入門書。

◆高垣敏博先生

『「食」のスペイン語』高垣敏博著 

東洋書店 

二〇一〇年一〇月 

一九九五円

料理限定の語学書。レストランでの注文

からレシピまで「食」に纏わるスペイン

語を網羅。

◆武田千香先生

『ポルトベーロの魔女』パウロ・コエーリョ著 

武田千香訳 

角川書店 

二〇一一年一月 

七〇〇円

ルーマニアの孤児院からベイルートの夫

婦に引き取られたアテナの半生を描く傑

作小説。

◆千葉敏之先生

『西洋中世奇譚集成 

聖パトリックの煉獄』

マルクス、ヘンリクス著 

千葉敏之訳 

講談社

二〇一〇年五月 

八八二円

一二世紀、ヨーロッパを席巻した冥界巡

り譚「聖パトリキウスの煉獄」ほかを収

録。中世人の死生観を熟読玩味する。

◆趙義成先生

『訓民正音』趙義成訳注 

平凡社 

二〇一〇年一一

月 

二七三〇円

一四四六年にハングルの創製を宣布した

「訓民正音」とその「解例」ほか、ハン

グル創製の原理・思想・背景のすべてを

明らかに。東洋文庫の第八〇〇巻。

◆津田浩司先生

『「華人性」の民族誌─体制転換期インドネシ

アの地方都市のフィールドから』津田浩司著

世界思想社 

二〇一一年二月 

五四六〇円

スハルト体制崩壊前後の、インドネシア

華人をとりまく状況の変化を描く。

◆友常勉先生

『脱構成的叛乱 

吉本隆明、中上健次、ジャ・

ジャンクー』友常勉著 

以文社 

二〇一〇年五月 

三三六〇円

民衆的な想像力による表現=脱構成的叛

乱をめぐる問題を精緻に追及する。

◆中澤英彦先生

『一冊目のロシア語〔改訂版〕』中澤英彦著

東洋書店 

二〇一〇年四月 

一九九五円

入門から体系的な学習までできると大好

評の『一冊目のロシア語』をより丁寧に

全面改訂。

◆長沼君主先生

『英単語

語源ネットワーク』長沼君主、クリ

ストファー・ベルトン著 

渡辺順子訳 

コスモピア

二〇一〇年五月 

一八九〇円

語源を最大限に利用して、ネットワーク

的に語彙を増やしていくための方法。そ

の他二〇一〇年一一月には『日本と諸外

国の言語教育におけるCan

‐Do

評価─

ヨーロッパ言語共通参照枠(C

EFR

)の

適用』(朝日出版社)を編む。

外語大の先生の新刊棚