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ややややややややややややや 20121120

20121120 検査と臨床判断

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Page 1: 20121120 検査と臨床判断

やる夫で学ぶ検査と臨床判断

20121120

Page 2: 20121120 検査と臨床判断

W 合衆国 K 州立中央病院救急診療・集中治療科

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55 歳男性 ?みぞおち辺りが痛い ?胃がムカムカする感じ ?

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おいらが学生実習で回った時に、こういう場合…

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こんなときは造影 CT 撮ってトロッカーいれて困ったらメロペン足しておけばおkだったおさっそく指示出して…

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無駄なことやりすぎ

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やる夫、お前は鑑別・検査・診断・治療という医療行為の流れが全くわかってないぞ。というわけでスライド節約しながら説明していくぞ。

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「鑑別」とは、目の前の患者の情報・状態から、考えられる病気を自分の頭の中にリストアップすることだ。

今、例として、この世に胃癌か胃潰瘍しか病気がないと仮定しよう。「鑑別」ではこの病気を脳内にリストアップする。なお、一人の患者は原則ひとつの病気しか持っていることにして今後は話を続ける。つまり、この患者は胃癌 / 胃潰瘍 / 病気なしの状態しかとらない。

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0% 100%

胃癌である可能性0% 100%

胃潰瘍である可能性

「リストアップ」といいながら、この段階でみんながしているのは、「この病気を挙げたはいいけど、そんなに無さそう」「いやもうこれしか考えられないけど」という順位付けだ。これは、病気の事前確率や自身の経験値に応じて無意識に行われている。今回は胃癌 10% 、胃潰瘍 10 %、病気でない 80 %くらいに適当に設定した。

10% 10%

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「検査」とは、診断にいたるために、病気の可能性を上げたり下げたりする行為のことだ。これには問診・診察・機械を使ったものなど、様々な行為を含むものとする。

今回の勉強会の主なテーマ「全ての検査には感度・特異度があって、われわれの臨床判断にどう影響するか。そしてわれわれはどう考えればいいか」を学んで帰って欲しい。

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0% 100%

胃癌である可能性0% 100%

胃潰瘍である可能性

「検査」を 1 回するごとに、鑑別で挙がった病気の確率は変化する。これを事後確率という。有能な検査は、 1 回で事前確率を大きく変えうるものであるが、現実的には費用や侵襲度などが絡んでくる。一般に問診や身体診察などお金のかからないものは性能が劣るがいくらやってもいい ( こともない場合もあるけど ) 、機械は性能はいいけどお金・侵襲度が大きいのはご存知の通り。

問診 1

GIF

CT

PET

問診 2

問診 3

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「診断」とは、数ある病気のなかから、いま目の前の患者が困っている最大の病気を決定することだ。

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0% 100%

胃癌である可能性0% 100%

胃潰瘍である可能性

いま、いくつか「検査」を行なって、頭の中の病気確率はこんな感じになった。さて、このとき、この患者の病気は何か「決定」しなければならない。胃癌 95 %、胃潰瘍 4 %、病気でない 1 %、としよう。

95% 4%

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こんなん「絶対」に「胃癌」しか考えられないお

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これはよくある勘違いだな jk…確かに胃癌の可能性は 95 %あるが、ここでなぜ診断が胃癌に至ったか、それを整理すると「 100 %のものはない」←あったら確実「 100 %がないので、最もそれらしいものを選びたい」「患者の状態は 3 つしかないので、比較したら… ? 」という思考があったのだ。これは胃癌 vs 胃癌でない、胃潰瘍 vs 胃潰瘍でない、という比較を行った結果、「胃癌」が頭の中でトップにきた、ということになる。つまりこれはオッズを考えていて、胃癌オッズ: 0.95/(1-0.95)=19胃潰瘍オッズ: 0.04/(1-0.04)=0.042さらに、胃癌と胃潰瘍でのオッズ、つまりオッズ比を考えている19/0.042=452

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「治療」とは、いま患者が困っている病気がわかって、それを治すために薬や手術などの処置を行うことだ。

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100%

胃癌である可能性

また、「診断」が決まっても、最適な「治療」がどれかを決めるために、また「検査」をすることがある。治療法の決定にも、鑑別から検査に至った過程と同じように、「絶対にいい治療」ではなく、「数ある中から選ぶならこれ」というものを選んでいる。

0% 100%

ESD で治る胃癌の可能性

0% 100%

腹腔鏡で治る胃癌の可能性

0% 100%

抗癌剤で治る胃癌の可能性

更に検査

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ここでみんなに意識して欲しいのは鑑別→ ( 確率的思考 )→ 検査→ ( 確率的思考 )→ 診断→ ( 確率的思考 )→治療という思考過程を経ていることだ。今回はこの確率過程を定量化しながら考えることで、医療行為をより確固たる証拠のもと行なっていると自覚して欲しい。原則、意思決定 ( 診断・治療方針 ) に影響を及ぼさない検査はしてはいけない。

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そういうみなさんのために、今回は手っ取り早く臨床判断ができるようになるための計算問題をいくつか解いて勉強することにしよう。というわけで次の患者に、とある診断キットを使ってみよう。

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あるインフルエンザ迅速診断キットは、感度 / 特異度が60%/90% なのか…とりあえずなんかそれっぽい患者が来たから使ってみるお…

感度・特異度の話は事前確率に依存するのは説明が面倒なので飛ばして、 3 つの状況でそれぞれやってみよう。この手の計算は、総数を 200 とか 2000 でやるのがコツ。

病気 (+) 病気 (-) 総数検査 (+) 感度 1- 特異度 検査 (+) となった人検査 (-) 1- 感度 特異度 検査 (-) となった人総数 事前確率 1- 事前確

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事前確率 50 % 病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+)

検査 (-)

総数

事前確率 10 % 病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+)

検査 (-)

総数

事前確率 80 % 病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+)

検査 (-)

総数

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事前確率 50 % 病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 60 10 70

検査 (-) 40 90 130

総数 100 100 200

事前確率 10 % 病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 12 18 30

検査 (-) 8 162 170

総数 20 180 200

事前確率 80 % 病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 96 4 100

検査 (-) 64 36 100

総数 160 40 200

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事前確率50 %

病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 60 10 70

検査 (-) 40 90 130

総数 100 100 200事前確率

10 %病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 12 18 30

検査 (-) 8 162 170

総数 20 180 200事前確率80 %

病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 96 4 100

検査 (-) 64 36 100

総数 160 40 200

ここでみんなが気になるのは「検査 (+) のとき、病気である確率」なので、それは下の計算で行う。

60/70 = 86%

12/30 = 40%

96/100 = 96%

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事前確率50 %

病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 60 10 70

検査 (-) 40 90 130

総数 100 100 200事前確率

10 %病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 12 18 30

検査 (-) 8 162 170

総数 20 180 200事前確率80 %

病気 (+) 病気 (-) 総数

検査 (+) 96 4 100

検査 (-) 64 36 100

総数 160 40 200

ついでに、検査 (+) だけども病気 (-)検査 (-) で病気 (-)検査 (-) だけども病気 (+)について計算しよう。

病気 (+) 病気 (-)

検査 (+) のとき

60/70=86% 10/70=14%

検査 (-) のとき

40/130=31% 90/130=69%

病気 (+) 病気 (-)

検査 (+) のとき

12/30=40% 18/30=60%

検査 (-) のとき

8/170=5% 162/170=95%

病気 (+) 病気 (-)

検査 (+) のとき

96/100=96% 4/100=4%

検査 (-) のとき

64/100=64% 36/100=36%

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0% 100%

0% 100%

0% 100%

50% 検査 (+) なら 86%検査 (-) でも 30%

10% 検査 (+) なら 40%

80%検査 (-) でも 64%

5%

96%

確率はそれぞれの場合、このように推移する。検査前に、インフルエンザである可能性はそうでない場合よりどれくらい多いのか、という気持ちには、オッズで答えることができて、事前確率 50% : 1 → 6.1事前確率 10% : 0.11 → 0.67事前確率 80% : 4 → 24となる。

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いやオッズとか事後とか言われてもよくわからないんだお…日本語でお k

OK わかった…

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病気である、病気でない、検査陽性、検査陰性 とすると、事前確率、感度、特異度 である。ここで、われわれが気にしているのは、検査後の病気確率 だが、これはと書くことができる。ここで、 を用いると、 となる。 は陽性尤度比と言われるもので、これを計算すれば事前確率オッズから事後確率オッズが計算できる。また、オッズは となることを使うと、 となるので、これをプロットすると下図になる。

pre probability

LR [log2]

post probability

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なるほどわからん

そんなときのための近似値というものがある。LR が 2, 5, 10 のとき、確率がそれぞれ 15%, 30%, 45%(1/2, 1/5, 1/10 のとき、 -15%, -30%, -45%)増加すると覚えておけばおk。

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あるインフルエンザ迅速診断キットは、感度 / 特異度が60%/90% なのか…とりあえずなんかそれっぽい患者が来たから使ってみるお…ちなみに陽性尤度比は 0.6/(1-0.9)=6

確率計算は独立の時、足していいとかいううろ覚えな数学の知識を使うと、 6=2*3 にばらして、 2 は 15% 、 3 は 20%くらいに考えると、 15%+20%=35% になる。 5 のとき 30%を考えると、こんなもんか。

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すると検査後確率はそれぞれ (真の計算結果 )事前確率 50%→85% (86%)事前確率 10%→45% (40%)事前確率 80%→100% (96%)になったお

実際の臨床現場では、電卓や計算用紙があるわけではないから、尤度比 ( 感度と特異度 ) と上の近似値と事前確率さえ覚えておけば、簡単に推定ができる。正確である必要はない。ノモグラムを使う必要もない。じゃあもう数例やってみよう。

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40 歳男性が急性発症の強い前胸部痛を訴えて来院した。いつもの通り出勤し、仕事を始めたとたんに痛みにおそわれた。その時、特に強い労作はなかったという。以前に1度類似の痛みはあったが、これほどひどくはなく、我慢していると 10 分ほどで軽快した。今回の痛みは 30 分以上続いている。170cm 、 78kg 。喫煙歴は1日 20本、 20年。血圧正常。他に特記すべき既往歴や家族歴はない。

感覚的には 50% くらいで AMI を疑うだろうな…常識的に考えて。さて、ここで CK を測定したら、80IU で感度 93% 、特異度 87% (陽性尤度比 7.2)280IU で感度 42% 、特異度 99% (陽性尤度比 42)と文献にある。それぞれでこの患者の AMI の可能性はどのくらいだろうか。

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80IU だと 7.2=3.6*2=25%+15%=40% くらいの上昇か…280IU だと 42=4.2*10=25%+45%=70% くらいの上昇か…つまり 80IU では 90% 、 280IU ではほぼ 100% の確率だお

まじめに計算すると、80IU で 87.7% 、 280IU で 97.7% になる。いい感じだな。そうこうしている間にまた来たぞ。一気に 3 人だ。

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P1: 55 歳男性の高血圧患者。労作時に胸骨下の絞扼感を4週間繰り返す。痛みは、あごと左肩から上腕に放散することもある。階段昇降によって生じることが多く、 3 から 5 分にて自然軽快する。P2: 30 歳男性、これまでは健康で、冠動脈のリスク要因はない。 6週間前より、安静時に胸骨下方から上腹部にかけて絞るような痛みが続いていた。痛みは、食後仰臥位で安静時に起こることが多いという。P3: 45 歳男性、特に既往歴と冠動脈のリスク要因はない。 3週間前より前胸部と胸骨下の疼痛を繰り返す。痛みは刺すような感じだが、時には絞扼感を生じる。労作時にも安静時にも生じる。胸部診察で、胸部肋軟骨部に特に圧痛があるが再現性に乏しい。

感覚的には P1: 90% 、 P2: 5% 、 P3: 50% くらいで AMI を疑うだろうな…常識的に考えて。さて、ここで性能が感度 60% 、特異度 90% の検査を行ったところ、全員陽性となった。この患者たちが AMI である可能性はどのくらいだろうか。また、陰性となった場合はどうだろう。陰性尤度比は (1- 感度 )/ 特異度で計算できる。

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陽性尤度比は 0.6/(1-0.9)=6 ~ 40% の上昇陰性尤度比は (1-0.6)/0.9=0.44 ~ 20% の低下くらいだろうか…とすると

まじめに計算すると、

患者 事前 陽性 陰性P1 90% 99.9% 70%

P2 5% 45% 0.01%

P3 50% 90% 30%

患者 事前 陽性 陰性P1 90% 98.2% 80%

P2 5% 24% 0.023%

P3 50% 85.7% 30.8%

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ここで、注目して欲しいのが、事前確率が高すぎるまたは低すぎる場合は、検査をしても事後確率があまり変化してくれないことだ。

患者 事前 陽性 陰性P1 90% 98.2% 80%

P2 5% 24% 0.023%

P3 50% 85.7% 30.8%

事前確率が 20%~ 80% くらいのときにいい感じになるくらいだな。常識的に考えて。まあこれも目安だが。あと、 LR はどうがんばっても 10 または 1/10 を超えることは少ない。これを超えるような感度・特異度をもつ検査はかなり有能と言われているらしい。常識的に考えて。

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尤度比を考えると、 SnNOut と SpPIn の話がよく分かる。さてここで、肺血栓塞栓症に対する D-dimer測定について考えてみよう。ちなみに PE 時の D-dimer測定の感度 / 特異度は 95%/44% らしい。

陽性尤度比は 0.95/(1-0.44)=1.70 ~ 12% の上昇陰性尤度比は (1-0.95)/0.44=0.11 ~ 45% の低下ということで、確率を下げる効果のほうが大きいのか…

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そうだな。つまり感度が高い→除外に有用 SnNOut特異度が高い→確定診断に有用 SpPInというのが : が大きいと LR(+) が無限に大きくなる : が大きいと LR(-) が無限に小さくなることで確認できる。常識的に考えて。

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これでもう検査には困らないお

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~完~