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川崎病院は1936年(昭和11年)1月6日、当時の川崎造船所平生釟三郎社長の「協同 互助」の精神のもと、全川崎関係企業の職員と家族の福利厚生のために設立されました。 当時の未熟な健康保険法では会社の職員しかカバーしていませんでしたので、職員の家 族の診療も業務として取り上げたのは画期的なことであります。平生釟三郎社長は病院 と同時に東山学校と給食所を設立しました。東山学校は造船所の工員さんの教育のため の学校でした。給食所は工員さんの弁当のおかずがたくあん二切れというような状況に あることに気づき、栄養改善のために給食を開始したとのことです。川崎病院はこの平 生社長の理念から生まれた三つの職員の福利厚生事業の一つとして誕生しました。これ らの事業の範囲が企業の労働者とその家族に限られていたとはいえ、当時の社会情勢や 日本人の生活水準を考慮に入れると、医療・福祉・教育の重要性を認知した非常に先進 的な高い理念の元で川崎病院が誕生したことを私は誇りに思っております。 そして、創立以来80年が経過しました。この間、日本の政治や社会、経済状態、人 口動態の変化などの影響を受けて、川崎病院は時には大きな、時は小さな変革と変遷を 重ねて現在に至っております。この80年の歴史の中で特筆するべき事項は1950年(昭 和25年)の医療法人への移行です。敗戦処理ための財閥解体の結果、企業病院から医療 法人に改組され、診療の範囲が川崎重工関係の職員・家族から地域の人々に拡がり、兵 庫区を中心とした神戸市街西部の地域住民のための病院となりました。以来、川崎病院 は地域の人々から信頼されるように努力を重ねて参りました。 現在の川崎病院のミッションは何でしょうか。現在の日本は高齢化社会へ急速に変化 しています。川崎病院は神戸市の中でも高齢化が最も進行している地域に位置していま す。兵庫区や長田区などの高齢化率は30%を超えて全国のトップクラスです。このよ うな地域で川崎病院は今後どのような役割を果たすべきでしょうか。今までのように急 性期病院としての機能は、高齢化がどれだけ進んでも必須の機能であります。加えて、 今後は施設や在宅医療を受けている高齢者の急変時における迅速な対応が大きな使命と なってきます。近年は地震や台風、洪水などの自然災害が多発しています。川崎病院は神戸市の「災害対応病院」に指定されています。 災害時には高齢者の多い地域という特性の中で救急医療に当たる覚悟です。 医療の内容にも大きく変化が求められます。まず、高齢者の医療は完治することはまれです。それよりもその後の生活をどのよう に充実させるかを重点に考えなければなりません。医療はより低侵襲で患者さんの苦痛をいかに軽減するかが求められるでしょう。 医療内容の高齢化への対応は今後の川崎病院の課題です。 急性期を過ぎた患者さんのその後の生活環境も考えなければなりません。すでに存在する在宅医療支援室や地域医療連携室は、急 性期を過ぎた患者さんをスムースに地域の帰っていただくための重要な病院機能です。逆に在宅や介護施設の患者さんの急変時の受 け入れも重要な任務です。これがうまく機能するためには在宅医療や介護の施設との円滑な協力関係の構築は必須です。私たちは創 立時の「協同互助」の精神を現在に生かさねばなりません。現代の「協同互助」は地域の医療機関や介護施設、福祉関係の人々との協働 作業により、お互いに助け合って共存共栄をはかり、地域の人々が安心して暮らせる環境の整備、街作りに力を尽くすことではない でしょうか。行政が提案する「地域包括ケアシステム」の一員として、川崎病院は急性期医療を受け持つことにより、地域の人々が安 心して生活する空間をこの地に共に構築し運営することが今のミッションです。創立時の「協同互助」の精神に立ち返り、多くの高齢 者がお住まいである地域の人々の生活を支える存在になれるよう努力したいと存じます。 開院当時の川崎病院 現在の川崎病院 川崎病院開院 80 周年を迎えて 理事長 市原 紀久雄 歯科口腔外科 部長代行 後 藤  育 子 専門分野または得意分野 口腔外科一般 資 格 口腔外科学会認定医 メッセージ これまでの経験をいかし、地域医療に貢献できるよう努めてまいります。謙虚さを忘 れず、患者さんの立場に立って対応できる医療を目指していきます。また竹野々先生 はじめ諸先輩方が築いてきた川崎病院歯科口腔外科をさらに発展させられるよう努 めてまいりますので、ご指導、ご鞭撻よろしくお願いいたします。 歯科口腔外科 部長代行就任ご挨拶 ※竹野々医師は非常勤医師として、引き続き手術を担当してまいります。 川崎病院通信 川崎病院通信 http://www.kawasaki-hospital-kobe.or.jp/ 2016年 3月発行 発行責任者 病院長 中村 正 編集責任者     浦野 聖史  Vol. 26

2016年3月発行 川崎病院通信·崎病院...2016年3月発行 発行責任者 病院長 中村 正 編集責任者 浦野 聖史 Vol. 26 その他、各診療科にて力を注いでいる疾患・治療

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Page 1: 2016年3月発行 川崎病院通信·崎病院...2016年3月発行 発行責任者 病院長 中村 正 編集責任者 浦野 聖史 Vol. 26 その他、各診療科にて力を注いでいる疾患・治療

 川崎病院は1936年(昭和11年)1月6日、当時の川崎造船所平生釟三郎社長の「協同互助」の精神のもと、全川崎関係企業の職員と家族の福利厚生のために設立されました。当時の未熟な健康保険法では会社の職員しかカバーしていませんでしたので、職員の家族の診療も業務として取り上げたのは画期的なことであります。平生釟三郎社長は病院と同時に東山学校と給食所を設立しました。東山学校は造船所の工員さんの教育のための学校でした。給食所は工員さんの弁当のおかずがたくあん二切れというような状況にあることに気づき、栄養改善のために給食を開始したとのことです。川崎病院はこの平生社長の理念から生まれた三つの職員の福利厚生事業の一つとして誕生しました。これらの事業の範囲が企業の労働者とその家族に限られていたとはいえ、当時の社会情勢や日本人の生活水準を考慮に入れると、医療・福祉・教育の重要性を認知した非常に先進的な高い理念の元で川崎病院が誕生したことを私は誇りに思っております。 そして、創立以来80年が経過しました。この間、日本の政治や社会、経済状態、人口動態の変化などの影響を受けて、川崎病院は時には大きな、時は小さな変革と変遷を重ねて現在に至っております。この80年の歴史の中で特筆するべき事項は1950年(昭和25年)の医療法人への移行です。敗戦処理ための財閥解体の結果、企業病院から医療法人に改組され、診療の範囲が川崎重工関係の職員・家族から地域の人々に拡がり、兵庫区を中心とした神戸市街西部の地域住民のための病院となりました。以来、川崎病院は地域の人々から信頼されるように努力を重ねて参りました。 現在の川崎病院のミッションは何でしょうか。現在の日本は高齢化社会へ急速に変化しています。川崎病院は神戸市の中でも高齢化が最も進行している地域に位置しています。兵庫区や長田区などの高齢化率は30%を超えて全国のトップクラスです。このような地域で川崎病院は今後どのような役割を果たすべきでしょうか。今までのように急性期病院としての機能は、高齢化がどれだけ進んでも必須の機能であります。加えて、今後は施設や在宅医療を受けている高齢者の急変時における迅速な対応が大きな使命となってきます。近年は地震や台風、洪水などの自然災害が多発しています。川崎病院は神戸市の「災害対応病院」に指定されています。災害時には高齢者の多い地域という特性の中で救急医療に当たる覚悟です。 医療の内容にも大きく変化が求められます。まず、高齢者の医療は完治することはまれです。それよりもその後の生活をどのように充実させるかを重点に考えなければなりません。医療はより低侵襲で患者さんの苦痛をいかに軽減するかが求められるでしょう。医療内容の高齢化への対応は今後の川崎病院の課題です。 急性期を過ぎた患者さんのその後の生活環境も考えなければなりません。すでに存在する在宅医療支援室や地域医療連携室は、急性期を過ぎた患者さんをスムースに地域の帰っていただくための重要な病院機能です。逆に在宅や介護施設の患者さんの急変時の受け入れも重要な任務です。これがうまく機能するためには在宅医療や介護の施設との円滑な協力関係の構築は必須です。私たちは創立時の「協同互助」の精神を現在に生かさねばなりません。現代の「協同互助」は地域の医療機関や介護施設、福祉関係の人々との協働作業により、お互いに助け合って共存共栄をはかり、地域の人々が安心して暮らせる環境の整備、街作りに力を尽くすことではないでしょうか。行政が提案する「地域包括ケアシステム」の一員として、川崎病院は急性期医療を受け持つことにより、地域の人々が安心して生活する空間をこの地に共に構築し運営することが今のミッションです。創立時の「協同互助」の精神に立ち返り、多くの高齢者がお住まいである地域の人々の生活を支える存在になれるよう努力したいと存じます。

開院当時の川崎病院

現在の川崎病院

川崎病院開院80周年を迎えて 理事長 市原 紀久雄

歯科口腔外科 部長代行 後 藤  育 子専門分野または得意分野 口腔外科一般資 格 口腔外科学会認定医

ご と う い く こ

メ ッ セ ー ジ

これまでの経験をいかし、地域医療に貢献できるよう努めてまいります。謙虚さを忘れず、患者さんの立場に立って対応できる医療を目指していきます。また竹野々先生はじめ諸先輩方が築いてきた川崎病院歯科口腔外科をさらに発展させられるよう努めてまいりますので、ご指導、ご鞭撻よろしくお願いいたします。

歯科口腔外科 部長代行就任ご挨拶

※竹野々医師は非常勤医師として、引き続き手術を担当してまいります。

川崎病院通信川崎病院通信http://www.kawasaki-hospital-kobe.or.jp/

2016年3月発行発行責任者 病院長 中村 正編集責任者     浦野 聖史 

Vol. 26

Page 2: 2016年3月発行 川崎病院通信·崎病院...2016年3月発行 発行責任者 病院長 中村 正 編集責任者 浦野 聖史 Vol. 26 その他、各診療科にて力を注いでいる疾患・治療

その他、各診療科にて力を注いでいる疾患・治療 学会などの諸事情により代診、休診になる場合もあります。

標榜科 専   門 医師名および診療曜日 標榜科 専   門 医師名および診療曜日

内科

糖 尿 病 市原 紀久雄(金曜 午前)大塚 章人(月曜 午前)

消化器内科

悪性疾患(膵臓癌、胆管癌等)により黄疸が出た時のステント減黄術

前田 哲男(月曜 午前/水曜 午前)野村 祐介(火曜 午前/木曜 午前)

西田 悠(金曜 午前)多田 秀敏(火曜 午前/金曜 午前)※内科2診で診察消化器癌の早期発見と

内視鏡治療

肥満、高脂血症、痛風 中村 正(月曜 午前/水曜 午前)

循環器内科冠動脈疾患

全医師が対応致します

血    液 飯田 正人(月曜 午前/水曜 午前/木曜 午前)

末梢動脈疾患

腎    臓 辻尾 成人(月曜 午後)

整形外科

小 児 全 般戸祭 正喜

(月曜 午前/金曜 午前)耳鼻咽喉科

睡眠時無呼吸症候群

下屋 聡子(月、水、木、金、土 午前)土曜日は第3・5のみ

手 全 般

中 耳 炎

スポーツ障害全般

アレルギー性鼻炎

形成外科

眼瞼下垂鼻の手術

永井 宏治(月、火、木、金 午前)

副 鼻 腔 炎

顔面骨骨折美容医療

良性・悪性の皮膚腫瘍

扁 桃 炎

歯科口腔外科

感 染 症

全医師が対応致します

声帯ポリープ

腫瘍(悪性、良性)

突発性難聴

顎 骨 骨 折

顔面神経麻痺

インプラントおよびインプラントのための骨再生

眼科 涙 道 手 術 松場 眞弓(火、水、金 午前)

  電話 078-511-3133 / FAX 078-511-3297ご予約は地域医療連携室まで電話またはFAXにてお申し込み下さい。

専 門 特 殊 外 来 担 当 医 表

(注)心臓血管外科外来では、心臓弁膜症などの疾患に対する外科的治療について検討を行い、手術適応症例については大阪大学心臓血管外科(患者さんの希望によっては近隣病院)に紹介致します。

診 療 科 月 火 水 木 金 土(第2・4は休診)

内  科

午前 市原 紀久雄【糖尿病外来】大塚 章人

【糖尿病外来】

久保 聡子【糖尿病外来】

大塚 章人【糖尿病連携合併症外来】

・・・・・

・・・・・

大塚 章人【糖尿病外来】

関谷 博顕【神経内科外来】

村井 潤【糖尿病外来】

桐生 辰徳【呼吸器外来】 ・・・・・

午後 粕本 博臣【腎臓外来】

【リンパ浮腫外来】要外来受診

徳永 俊太郎【呼吸器外来】

粕本 博臣【腎臓外来】

茶屋原 菜穂子【腫瘍外来】

桑迫 祟裕【予防接種外来】

中村 正(第1・3・5)横田 真二(第2・4)【禁煙外来】

飯田 正人【血液外来】 ・・・・・

循環器内科午後

・・・・・

・・・・・

仲村 輝也【心臓血管外科外来】(注)

(第1・3)【ペースメーカ外来】

・・・・・・・・・・ ・・・・・

・・・・・・・・・・

午前

午前

・・・・・柴北 宗顕

【直腸肛門外来】10:00~

柴北 宗顕【便失禁外来】9:30~

(第1・3)【直腸肛門機能外来】

柴北 宗顕【直腸肛門外来】14:00~

・・・・・

木許 健生【乳腺外来】

・・・・・ ・・・・・ ・・・・・

外  科

午後阪尾 淳

【乳腺外来】13:30~

柴北 宗顕【直腸肛門外来】

14:00~

柴北 宗顕【直腸肛門訓練外来】

14:00~

・・・・・

・・・・・ ・・・・・

整形外科 午前 ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・

形成外科午前 ・・・・・

・・・・・

・・・・・

戸祭 正喜【スポーツ外来】

耳鼻咽喉科 午後

午後

・・・・・

・・・・・

・・・・・

・・・・・

・・・・・

・・・・・ (第1・3・4・5)【補聴器外来】要外来受診【フットケア外来】

・・・・・ ・・・・・

・・・・・

・・・・・ ・・・・・ ・・・・・

(第2・4)【ストマ外来】14:00~

学会などの諸事情により代診、休診になる場合もあります。専門特殊外来は原則、予約(または一般外来の受診)が必要です。

  電話 078-511-3133 / FAX 078-511-3297ご予約は地域医療連携室まで電話またはFAXにてお申し込み下さい。

家族性高コレステロール血症(FH)は、単独で冠動脈疾患発症リスクの極め

て高い病態であり、早期診断および厳格な治療が推奨されています。しかし、

FHは見逃されやすい疾患とされ、FH患者のうち診断が確定しているのは

全体の15-20%程度で、適切な治療を受けているのは10%に過ぎません。

40歳未満の心筋梗塞発症者にはFHが潜んでいる可能性が高く、積極的に

FHを疑い診断することが重要です。

高コレステロール血症やFH(あるいは早期性冠動脈疾患)の家族歴などがあ

り、家族性高コレステロール血症が疑われる患者さんがいらっしゃいまし

たら、当院内科までご紹介ください。中村院長(日本動脈硬化学会動脈硬

化専門医・指導医)が中心となり診察させていただきます。

当院は             の紹介可能施設です家族性高コレステロール血症

心筋梗塞発症に占めるFHの割合