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平成28年度農業ICT標準化推進事業報告書(概要版)
2017年3月31日
慶應義塾大学SFC研究所
KEIO University 2017. 1
農業ICT標準化推進事業の目的とメリット
• 目的– 農業分野におけるICT利活用の際に用いられるデータの標準化の推
進
• ユーザ(農業従事者)側のメリット– 【データの相互利用】異なるベンダーを利用した場合でも蓄積
データの比較や組み合わせた分析が可能
– 【ベンダーロックの解消】農機メーカ、クラウドサービス、センサーメーカーを自由に乗り換え可能になり、交換後にもデータのやりとりが可能
• ベンダー(農機メーカ、システムベンダー等)側のメリット– 【データの活用】異なる環境・作柄等のデータを地域やベンダー
の垣根を超えて比較し、自社サービスの向上に資する
– 【開発費用の抑制】クラウドサービス、センサーメーカーが、標準仕様に対応するだけで他サービスやセンサーとの連携が可能となり、個別対応するための開発負担を削減可能
KEIO University 2017. 2
実証システム構成
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データ蓄積先
標準化データの蓄積データベース
標準化データの蓄積データベース
環境センサB環境センサA
クラウド側 標準化データAPI
NEC 営農指導支援システム
ベンダー別 標準化データAPI ベンダー別 標準化データAPI
データ蓄積先
データAPI
OGALモニター
OGALセンサー(ハウス)
標準化データの蓄積データベース
環境センサC
ベンダー別 標準化データAPI
フィールドルータ(露地)
OGALセンサー(露地)
※OGALは、Keyware Solutions社が提供する農業用モニタリングシステム
標準化ガイドラインの運用、普及における課題
• ユーザ(農業従事者)側の課題– 【メリットの享受】ガイドライン普及が遅れることによりメ
リットを享受できない可能性
• ベンダー(農機メーカ、システムベンダー等)側の課題– ガイドライン、規約の保守、運用
• 【体制整備】各ガイドラインへの問い合わせ対応や、バージョン管理等のメンテナンスに対応する体制が必要
– ガイドラインの普及• 【ガイドラインのさらなる整備】現状では、記載が不十分な点が存在する。クラウド側標準化データAPI、ベンダー別標準化APIの設計では、ガイドラインを理解し、不明点を確認する必要がある。
• 【認証制度】標準化が着実に進むためには、標準化準拠を保証(担保)するための認定制度の存在が必要ではないか(Bluetooth等の過去の通信規格等の事例を踏まえ)。ただし、運営コスト増が懸念(ISOやG-GAP等)
• 【初期コスト】ガイドラインに対応するためには多くの初期コストが必要であり普及の妨げとなる事が懸念。初期コストを削減し、ガイドラインを普及させるためには、システム設計ガイド(設計の手引きやサンプルとして、システム機能構成、データベース設計、サーバスペック要件、ネットワーク構成 など)を提供すること等が必要。
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農作業名称の当てはまり度合いの検証等
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1. 農作業名称の標準仕様の当てはまり度合い2016年度アグリプラットフォームコンソーシアム(APC)幹事会員6社のうち、農業ICT製品・サービスをリリースしている下記5社の協力を得て、「農業ITシステムで用いる農作業名称に関する個別ガイドライン」の当てはまり度合いを検証することにより、標準仕様に係る課題を整理した。
実装協力企業
表 サンプルデータの概況とサンプルデータにおける標準仕様の農作業名称(中項目)との適合率
サンプルデータの種別
圃場数登録された農作業名称数
(登録された農作業名称レコー ド 数)
標準仕様の農作業名称(中項目)との適合率(%)
機械判別 人為判別
レコードベースのデータ
1 11(60) 100.0 27.3 72.7
55 13(532) 92.3 30.8 61.5
農作業名称別のサマリーデータ
非開示 44 88.6 9.1 79.5
非開示 168 76.2 0.6 75.6
平均 89.3 16.9 72.4
標準仕様の農作業名称に係る課題
①索引性:品目・時系列等に係わらず大項目分類毎に中項目は五十音順で一覧化されており索引性が低い
②網羅性:栽培管理の観点で網羅性は担保されているが、経営管理・労務管理等の観点での項目が不足している
③機械判読性:農作業名称の公開・配布方法において、二次利用を考慮した機械判読性が担保されていない
他生産者比較環境における生産者へのメリット提供課題異なる圃場条件の取扱い方法や、農作業時間数の記録対象等、目的に応じた分析の対象や手法、その判読の検証を、十分な標本データを蓄積した上で実施することが必要である
他生産者比較環境における生産者のメリット
農作業名称の当てはまり度合いの検証等
KEIO University 2017. 6
2. 作業効率の見える化による生産者のメリット「1.農作業名称の標準仕様の当てはまり度合い」で標準仕様の農作業名称の紐付けを行ったサンプルデータを用いて、異なるシステム間では困難であった複数経営体間の作業効率について見える化を図り、他生産者比較環境における生産者のメリットと、その提供課題を整理した。
692
90 45 45
188
52 25 26
192
55 22 29 17
482
0
100
200
300
400
500
600
700
800
全農作業
(平均389分/10a)
耕起整地
(平均66分/10a)
は種・定植
(平均31分/10a)
収穫
(平均29分/10a)
A_40.0a
B1_40.3a
B2_60.0a
C_60.0a
D_圃場規模非開示
(分/10a)
図 異なるサービスベンダー間の作業効率の見える化
①作業効率の気付きを得られる自経営体内における分析や農業経営統計調査結果との比較だけでは把握しきれない、生産現場における特性や課題、改善のポイントが分かり、科学的な経営評価ができるようになる
②経営計画の目安を得られる
農業への新規参入や、新たな品目への作付転換時等、自経営体内においてデータ蓄積が無くとも、農作業者や機器割り当て検討時に指標を見出すことができるようになり、より現実的な経営計画が立てられるようになる
農業ICT関連企業の標準化について
KEIO University 2017.
1. 農業ICT標準化ガイドラインに係る認知・対応検討状況等2016年度アグリプラットフォームコンソーシアム(APC)幹事会員6社のうち、農業ICT製品・サービスをリリースしている下記5社を対象に農業情報の相互運用性・可搬性の確保を目的として標準化を行う「個別ガイドライン」の認知・対応検討状況等について、ヒアリングを実施した。
表 各社の農業情報活用の実態と農業ICT標準化ガイドラインの認知・対応検討状況等
業態 農機メーカー ITベンダー
社名
農業情報の流通・活用
実態
•機械稼働状況・土壌情報・位置情報・収量情報等を農機から自動取得
• FAMICデータをマスタ登録
•機械稼働情報を農機から自動取得
• FAMICデータ(農薬)をマスタ登録
•機械稼働状況• FAMICデータ(農薬)をマスタ登録
•気象情報を購入し表示
•複数メーカーの環境センサーをプロトコル改編により接続
• JPP-NETを購入しマスタ登録/独自の農薬マスタ登録も併用可能
•気象情報を購入し表示
•複数メーカーの環境センサーを個別開発により接続
• FAMICデータをマスタ登録
•気象情報を購入し表示
ガイドライン認知状況
いずれの企業も、APC及び国庫補助事業等への参画、国が実施する調査事業等への協力により、情報を入手し、社内で共有している状況にある
対応検討状況
と対応時期
•実装が必要と考える
•対応時期について検討中
•何れ実装が必要になることは開発部門と共有している
•次期システム更新時の実装が想定される
•実装可能範囲を検討している
•農作業名称は、標準名称が確定するのであれば、実装できる
•市場動向を伺っているが、具体的な実装には至っていない
•サービス利用者メリットが高まれば、検討を加速する
•農作業名称は新規ユーザーのマスター登録時に参照資料として活用しているが、具体的な実装検討には至っていない
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農業ICT関連企業の標準化について
KEIO University 2017.
2.農業ICT標準化ガイドラインの実装要件
① 本当に生産者のためになる実装であること
• 標準化実装によるユーザーインタフェースや操作の変更等の影響を抑制する必要がある
• 主要なメーカー・ベンダーが足並を揃えて標準化実装を行い、目的に応じて生産者が情報を統合・利用できるシステムとする必要がある
• 生産者へのメリット、サービス提供者へのメリット、ベンダーへのメリットがビジネスモデルとして確立されている必要がある
② ガイドラインをルールとして昇華させること
• 政策影響を及ぼす統計情報として活用されるなど、標準化実装後のデータ活用法を明確にする必要がある
• ルール化を検討する際に、本当に生産者のためになる実装とするためにも、日本農業法人協会等の生産者団体の介在が必要である
• ISO取得、国際規格化を目指す必要がある
• ガイドラインの継続的な運用が保証されることが必要である
• ガイドライン更新時にライブラリが用意され、システム化されるなど、標準化実装負担が軽減されることが必要である
■農業ICT普及のために農作業の記録については、記録の自動化・定型化・簡素化等、入力に係る負荷を低減する必要がある
規格化
使われ方
運用体制
ビ ジ ネスモデ ル
ニー ズ マッチ
使い勝手
8
農業ICT関連企業の標準化について
KEIO University 2017.
3.農業ICT標準化を推進するための国による取組への期待
① 国等が自ら標準化実装に取り組むこと
• 国の研究機関等の実証圃場で利用される設備・機器の調達仕様・納品仕様として、標準化実装データであることを要件とする
– 現状、補助事業等公募要領においては、ガイドラインの活用を促す程度に留まっている
② 一元管理された農地情報のデータ整備と提供
• 農業情報は農地情報(位置情報)と対応付けることにより意味のある分析が出来るようになる
– 現状、農地ナビのデータと地方自治体が持つ農地台帳等のデータが一致しない
– 単収等、生産者が経営指標とする分析項目への影響が大きい
③ 気象庁の観測記録データへの標準化の実装と提供
• 気象庁の観測記録データを農業ICTシステムに取り込みたいというユーザーニーズは高い
– 現状、取得可能なデータの使い勝手が悪い
④ 農薬情報のデータ整備と提供
• 農薬の登録、使用基準の確認・チェック機能に対するユーザーニーズは高い
– 現状、FAMICデータはマシンリーダブルな形式で提供されておらず、更新チェックに手間が掛かる。JPP-NETデータは有料であり、変更情報が辿り難い構成となっている
⑤ 肥料情報のデータ整備と提供
• 肥料の登録、成分や利用用途の確認、施肥設計への活用等、ユーザーニーズは高い
– 現状、届出肥料の成分等の情報が得難い
⑥ 統計利用等、農業ICT標準化データが政策判断に用いられること
– 標準化実装に取り組む意義の高揚を図ることが必要
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平成30年度平成29年度
スマート農業のロードマップ等に基づく研究開発や実証、実用化の推進
普及方針の策定
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実装検証を踏まえ、当該事業において、“平成30年度までに国内15者以上のICT関連企業が標準化の取組に参画するとともに、3種類以上の標準化技術仕様がICT関連企業によって採用されることを目指し”、国内において農業ICT標準化を普及するための方針を策定した。
平成28年度
3
種類以上の標準化技術仕様の採用
国内15者以上のICT関連企業の標準化の取組参画
目標
農作業名称の当てはまり度合いの
検証
作業効率の見える化による生産者のメリットの提示
農作業名称、農作物名称、環境情報のデータ項目及びデータ交換イ
ンタフェースの実装検証
国の取組
個別ガイドライン等の策定・見直し及び普及促進
センサー接続情報及びセンサー仕様・測定条件の問い合わせインタ
フェースの実装検証
施設園芸で使用されるセンサーメーカーを含む3社、5種類以上の環境データ項目
ガイドライン改訂への提言
当該事業の取組
普及方針の
策定 標準化実装のモチベーション
アップを図る施策案の検討普及方針の更新
活動成果に基づく標準仕様への
フィードバックとその実装
有識者招聘による意見交換
APC幹事会社のうち農業ICT製品・サービスをリリースしている5社
実装検証への協力農業情報の流通・活用の実態把握標準化実装の意思・条件の確認
環境情報を取り扱うセンサーメーカー、APC構成員等の5社
標準化実装のモチベーションアップを図る施策案の評価
国際標準化に向けたグランドデザインとロードマップ検討
標準化実装のモチベーションアップ
を図る施策の具現化に向けた取組
環境情報を取り扱う農業ICT関連企業5社