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2018年10月23日第5回
(12:30-14:00)
掘削工学基礎・ロータリー掘削
・泥水、坑井内の圧力制御
・ケーシング
1
掘削
石油・天然ガス・メタンハイドレートなどの炭化水素エネルギー資源は、貯留岩まで掘削した井戸(坑井)を通じて評価し、生産する
ビットを回転させることで岩石を破砕し、掘削流体の循環によって掘屑を取り除きながら地層を掘り進むロータリー掘削が現在の主流• 1844年の英国での特許が起源といわれ、石油の掘削には1895年頃米国テキサス州で初めて使用
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その1), 石油開発時報, No. 148 (06・02)
2
ロータリー掘削
ビット
• 地層や岩石を破砕し、坑井を掘削していくためのツール
ドリルストリング
• 先端にビットを取り付けた、中空の鋼管(ドリルパイプ等)をつなぎ合わせたもの
掘削流体
• 泥水(でいすい)とよばれる比重調整された流体
1. ドリルストリングの自重を利用し先端のビットを地層に押し当てる
2. ドリルストリングごと回転させることでビットを回転させ地層を破砕する
3. ドリルストリング内を通りビットから噴出させた掘削流体で掘屑を地表に運搬する
4. ドリルパイプを継ぎ足すことで掘り進む
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その1), 石油開発時報, No. 148 (06・02) 3
ビット
ローラー(コーン)ビット• ベアリング機構を介して自由に回転できるコーンを持つビット
フィックストカッタービット• 回転部分を持たないビット
https://www.bakerhughes.com/products-and-services/drilling/drill-bit-systems/tricone-roller-cone-drill-bits
http://www.glossary.oilfield.slb.com/Terms/f/fixed-cutter_bit.aspx
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その1), 石油開発時報, No. 148 (06・02) 4
ドリルストリング
ケリー、ドリルパイプ(掘管)、ドリルカラーからなる一連のパイプ
ケリー• 駆動軸となる、断面の外形が六角また
は四角形をした鋼管。ロータリーテーブルの回転をドリルストリングに伝える。
ドリルパイプ• 先端にねじ切りを備えた1本9 m程度の
継ぎ目なしパイプ
ドリルカラー• ビットに荷重を加えるためにドリルパイ
プとビットの間に挟んで使用される肉厚のパイプ
http://www.t-s-c.com/products-services/equipment-for-onshore-offshore-rigs/drill-floor-equipment/rotary-table/
ロータリーテーブル
ドリルパイプ(左端)とドリルカラー
http://www.glossary.oilfield.slb.com/Terms/d/drillpipe.aspx
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その1), 石油開発時報, No. 148 (06・02) 5
周辺技術:トップドライブシステム
ロータリーテーブルによってケリーを回転させる方式に代わる方式
•スイベル部分(回転できる接続部)にドリルストリングの回転駆動装置を内蔵
•ケリーを介さず、直接ドリルパイプを接続してドリルストリングを回転
•ドリルパイプを3本単位のスタンドで継ぎ足しながら掘削できる等のメリット
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その1), 石油開発時報, No. 148 (06・02)
トップドライブシステム
6
周辺技術:パイプハンドリングシステム
パイプラックとの間や、やぐら下でのパイプ類の移動などのハンドリングを自動で行う装置
船体の動揺や厳しい海象条件にさらされる海洋掘削リグで比較的早くから導入
パイプハンドリングシステムを備えた「ちきゅう」のやぐら下の様子
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その1), 石油開発時報, No. 148 (06・02) 7
周辺技術:アイアンラフネック
ラフネックとは石油業界で掘削作業員のこと
通常人力で行うパイプ類の接続を自動で行う、レール上を自走可能な台車フレーム上に油圧で作動するレンチを搭載した装置
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その1), 石油開発時報, No. 148 (06・02)
人力によるねじの締め戻し作業 Varco社製アイアンラフネック
8
掘削流体(泥水)
ベントナイト等により比重調整された流体
掘屑を運搬する役割• ドリルストリング内部を通ってビットのノズルから坑底に向かって噴出され、掘
屑とともにドリルストリング外側と坑井との間の隙間(アニュラス)を通って地上(海上)に戻った後、掘屑が分離され再びドリルストリング内部へ圧入
掘屑の運搬のほか、以下の役割を持つ• 坑井内の圧力制御(地下流体の噴出防止)
• 坑壁の保護、地層の崩壊防止(ベントナイト等の泥水中の成分が坑壁に蓄積し、薄い壁を形成)
• 坑井内機器の冷却• ドリルストリングと坑壁との摩擦低減• 地下情報の取得(泥水検層)
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その1), 石油開発時報, No. 148 (06・02) 9
ビット・掘削流体の動きと掘屑の運搬
https://www.energyfunders.com/works-oil-patch/https://www.globalspec.com/learnmore/specialized_industrial_pro
ducts/mining_equipment/shale_shakers
Shale shaker
http://www.drilling-mud.org/shale-shaker-problem-due-to-drilling-
mud/
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坑井内の圧力制御
11長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その3), 石油開発時報, No. 150 (06・08)
摩擦圧力損失や掘削によって発生した掘屑の濃度上昇による密度の増加を加味して、泥水循環中の圧力勾配を導出
この圧力を地層圧より高く、地層の破壊圧より低く保つ• 地層圧:地層の孔隙を満たしている流体に作用している圧力
• 地層の破壊圧:地層に亀裂が生じる圧力
ケーシング
掘削したままの坑井(裸坑)の坑壁が崩壊するのを防ぐため、鋼管(ケーシングパイプ)を挿入し、地層との間をセメントで固定
坑壁の防護のほか、地層流体の坑井内への意図しない流入や、掘削流体の地層への影響を防ぐ効果
12長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その3), 石油開発時報, No. 150 (06・08)
https://en.wikipedia.org/wiki/Casing_(borehole)
ケーシング設置深度の選定の図式解法
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その3), 石油開発時報, No. 150 (06・08) 13
海洋掘削
海上の掘削リグと海底面との間には海水しか存在しないため、海底面と掘削リグの間をマリンライザー*と呼ばれる管で接続
泥水はドリルパイプとマリンライザーの隙間(アニュラス)を通り循環
*ライザー:海底から海面上の設備まで流体が流れるパイプ
http://www.jdc.co.jp/business/offshore/drilling.php
14長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その4), 石油開発時報, No. 151 (06・11)
ライザーレス掘削・ライザー掘削
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu5/006/siryo/06041108/006/002.htm
海洋掘削では、ライザーを使用しない掘削(ライザーレス掘削)と使用する掘削(ライザー掘削)がある
石油天然ガス・鉱物資源機構 用語辞典https://oilgas-info.jogmec.go.jp/termsearch/index.html
15
「ちきゅう」における自動船位保持装置(DPS:Dynamic Positioning System)
掘削用ライザーパイプの傾きは最大2度までが作業許容範囲
DPSを運用するのは「DPオペレーター」という専門の資格を持った航海士
16
「ちきゅう」船底には船首側に3基、船尾側に3基、合計6基のアジマススラスタと、船首部に1基のサイドスラスタを搭載
人工衛星によるGPS(全地球測位システム)と、音響測位システムを使い位置情報を取得
http://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/magazine/graphic/no12/index.html
「ちきゅう」における自動船位保持装置(DPS:Dynamic Positioning System)
設定した位置、船首方位で各スラスタの消費電力の合計が最少となるように、自動でスラスタの向きを制御
17http://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/magazine/graphic/no12/index.html
地上掘削と海洋掘削の違い
18
地層圧
地層破壊圧
地表
海底
海面
地層圧
地層破壊圧
海面が基点
海底が基点
地表が基点
差が小さい
海洋掘削では泥水圧の設定幅が小さく、より多くのケーシングが必要
長縄成実, 最新の坑井掘削技術(その4), 石油開発時報, No. 151 (06・11)
まとめ
坑井はロータリー掘削と呼ばれる手法で掘削される
海洋掘削には地上掘削とは異なる課題があるが、ライザー掘削と呼ばれる手法を用いることで大水深・大深度の掘削を可能にしている
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