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2019年度 日系社会次世代育成研修 (大学生招へいプログラム) 報告書 20199独立行政法人国際協力機構(JICA)中南米部 公益社団法人青年海外協力協会

2019年度 日系社会次世代育成研修 (大学生招へいプログラム) · ディスカッション、関連施設の見学等を通して学習しました。 3つのテーマとは、「日系人のポテンシャル」「日系人のアイデンティティ」「日系人と架

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2019年度日系社会次世代育成研修(大学生招へいプログラム)

報告書

2019年9月独立行政法人国際協力機構(JICA)中南米部

公益社団法人青年海外協力協会

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もくじ

Ⅰ 日系社会次世代育成研修(大学生招へいプログラム)概要・・・・・・・・・ 1Ⅱ 研修員名簿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4Ⅲ プログラム日程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5Ⅳ プログラム内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6Ⅴ 研修員所感・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17Ⅵ 総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

【参考】添付資料(募集要項)

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Ⅰ 日系社会次世代育成研修(大学生招へいプログラム)概要

1.研修の目的

中南米の日系社会では世代交代が進み、2世、3世以降が今後の日系社会を担う存在となっています。本研修は、今後の日系社会を担う世代に対する本邦での研修を通して日本との関係強化や移住先社会の発展に貢献できるような人材を育成することを目的としています。本研修では、将来の日系社会の発展に貢献するのに十分素質のある日系子弟の大学生が日本

人の海外移住の歴史に関する学習、本邦大学での研修、その他の各種研修を通じて、自分たちのルーツと日本に対する理解を深め、さらに自らの日系人としてのアイデンティティを強化することをねらいとしています。

2.研修期間

来日日:2019年6月26日(水) 離日日:2019年7月19日(金)

3.研修員

(1)人数:20名

(2)出身国:ブラジル(9名)、ボリビア(2名)、パラグアイ(2名)、ペルー(2名)、アルゼンチン(2名)、メキシコ(2名)、ドミニカ共和国(1名)

(3)研修員名簿:4ページを参照

4.各プログラムの目的

カテゴリー 目 的 講義等

導入 この研修のねらいと背景について学ぶ。 日系社会支援・連携事業

移住学習

日本文化を学び、日本に対する理解を深める。 日本文化講座ワークショップ

日系人がどのような可能性を秘めているのか等を考える。

日系人のポテンシャル

日系人としてのアイデンティティを考え、強化する。日系人のアイデンティティ

時代ごとの海外移住の歴史、背景等を学ぶ。自分の家族の移住の歴史について理解を深める。

日系人と架け橋としてのニッケイ

海外移住資料館見学

大学研修

日本の大学での生活を体験する。日本の学生と交流する。

大学研修(全体研修)

自分の専攻分野に関連した講義等を体験する。 大学研修(個別研修)

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カテゴリー 目 的 講義等

研修旅行

(1)神戸の「移住ミュージアム」を訪れ、日本人がどのように移住の準備を進めていたかを学ぶ。

(2)平和記念資料館等を見学し、平和について考える。

(3)広島の「広島所蔵資料館常設展示~近代広島の歩みと海外移民~」のパネルを通し、広島県の移住について学ぶ。

(4)ホームステイ先の仕事(農業等)を手伝いながら一緒に過ごし、日本の習慣や職業を体験する。

その他

リーダーとしての資質を学ぶ。日本で起業されている日系人の方からの講話、学園等の視察

現代日本の技術や文化を学ぶ。 施設見学

発信力や自己表現力を高める。 プレゼンテーションスキル講座

日本へ留学するための情報を得る。 日本への留学

各カテゴリーの実施内容については、以下のとおりです。

(1)移住学習について

移住学習では、本研修全体の目的達成のために3つのテーマを設け、各講義や研修員同士のディスカッション、関連施設の見学等を通して学習しました。3つのテーマとは、「日系人のポテンシャル」「日系人のアイデンティティ」「日系人と架

け橋としてのニッケイ」です。研修員たちは講義中、積極的に質問をしたり、グループディスカッションで互いに意見交換や情報共有を行い、理解を深めました。また、最終発表では5つのグループに分かれ、グループ発表を行いました。テーマは移住学

習を中心とし、「日系人のポテンシャル」「日系人のアイデンティティ」「日系人と架け橋としてのニッケイ」「日本文化」「日本の習慣」の中からテーマを各班で1つ選択し、グループ発表を行いました。

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(2)大学研修について

大学研修では、全員で同じ大学を訪問する「全体研修」と、それぞれの研修員の大学の専攻(文系、理系、農業系、医療系、美術系)に分かれて大学を訪問する「個別研修」を実施しました。

〈全体研修〉7月5日(金):慶應義塾大学7月8日(月):横浜国立大学

〈個別研修〉日 程:7月4日(木)、9日(火)実施大学:東海大学(文系)、横浜国立大学(理系)、東京農業大学(農業系)、

慶應義塾大学(医療系)、東京医科歯科大学(医療系)、多摩美術大学(美術系)、武蔵野美術大学(美術系)

(3)研修旅行について

日程:7月11日(木)~7月13日(土)

訪問先 場所 宿泊地

7月11日(木) ・神戸移住ミュージアム見学 兵庫県 広島県中区

7月12日(金)

・広島平和記念資料館の見学・広島平和記念公園の散策・平和所蔵資料館見学~近代広島の歩みと海外移民~

・安芸太田町ホームステイと家業体験・日本文化「神楽」鑑賞及び体験

広島県広島県山県郡安芸太田町

7月13日(土) 厳島神社見学 広島県 JICA横浜

目的:①神戸にある移住ミュージアムを見学し、日本人がブラジルへ移住する前の生活について理解を深めます。

②平和記念資料館等を見学し、平和について考えます。③安芸太田町にホームステイをし、町の人たちと交流しながら日本の田舎暮らしや伝統文化を体験します。

(4)その他

「移住学習」「大学研修」「研修旅行」の他、「日本で起業されている日系人の方の講話」「施設見学」「プレゼンテーションスキル講座」「日系人留学生との交流」を実施しました。

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1 SATO Mario Tsukassa佐藤 司 マリオブラジルINSPER大学経営学部

11 ASATO Masaki安里 将貴ボリビアウプサ大学経営学部

2 SHIMADA Heitor Hideki嶋田 英樹 エイトルブラジルサンパウロ大学農学部

12 CONTRERA IBUKI Sakura Amandaコントレーラ 伊吹 さくら アマンダパラグアイ国立アスンシオン大学ポリテクニック学部

3 HISSANO Wendy Saory久野 沙織ブラジルアニェンビ・モルンビ大学マーケティング学部

13 YOSHIMURA Toshimitsu善村 利光パラグアイ国立アスンシオン大学工学部

4 YAMADA Fabiana Lumy山田 ルミ ファビアナブラジルサンパウロ大学薬学部

14 OGUSUKU HIGA Narumi Cristina大城 比嘉 成美 クリスティーナペルー私立カトリカ大学コミニュケーション学部

5 WASANO Yoshie Debora和佐野 良恵 デボラブラジルサンパウロ大学建築学部

15 FURSHIO GUZMAN Piero Naoki古庄 グスマン ビエロ ナオキペルー国立サンマルコス大学経営学部

6 MISUMI Alex Kojiブラジル三住 浩司 アレックスサンパウロ大学工学部

16 NAKAMURA Leonardo中村 レオナルドアルゼンチン国立ラプラタ大学工業デザイン学部

7 SASAKI Debora Yumi佐々木 由美 デボラブラジルピタゴラス大学歯学部

17 GASHA Rodrigo Andrés我謝 ロドリゴ アンドレスアルゼンチン国立ブエノスアイレス大学経営学部

8 IGARI CAVAMURA Luiz Henrique Hideki川村猪狩ルイス エンリケ 秀樹ブラジルブラジリア大学電気工学部

18 CASTILLO NAKAMURA Luis Ito Rodionカスティージョ 中村 ルイス イト ロディオンメキシコメキシコ国立自治工科大学国際学部

9 ICHIHARA RABELO Daniel市原ラベロ ダニエルブラジルCESUPA大学経営学部

19 MATSUDA Misaki松田 美咲メキシコイベロアメリカ大学建築学部

10 INCHAUSTE KOTORIY Micaela Akemiインチャウステ コトリイ ミカエラ アケミボリビアサン・シモン大学グラフィックデザイン学部

20 HERRERA JOA Gabriela Sayuriエレラ ホア ガブリエラ さゆりドミニカ共和国UNPHU大学建築学部

Ⅱ 研修員名簿

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日 曜日 午前 午後

6/26 水 到着日

27 木 開講式 アイスブレイク 昼休み オリエンテーション、施設案内

28 金プレゼンテーション

(自国紹介)昼休み

大学研修オリエン

テーション

日系社会支援

連携事業

29 土 休日

30 日 休日

7/1 月 日系人のポテンシャル 昼休み 日系人のアイデンティティ

2 火 施設見学(1)ティー・エス学園

3 水 施設見学(2)放送ライブラリー 昼休み 日系人と架け橋としてのニッケイ

4 木

大学研修 個別研修

(東海大学、横浜国立大学、東京農業大学、慶應義塾大学、東京医科歯科大学、

多摩美術大学、武蔵野美術大学)

5 金 大学研修 全体研修(慶應義塾大学) 昼休み 施設見学(3)TEPIA先端技術館

6 土 休日

7 日 休日

8 月 大学研修 全体研修(横浜国立大学)

9 火

大学研修 個別研修

(東海大学、横浜国立大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京農業大学、

慶應義塾大学、東京医科歯科大学)

10 水研修旅行オリエン

テーション書道 昼休み

報告書オリエン

テーション

振り返り

ディスカッション

11 木 研修旅行(横浜→神戸→広島)

12 金 研修旅行(安芸太田町)

13 土 研修旅行(安芸太田町→広島市内→横浜)

14 日 休日

15 月 休日

16 火 報告書作成 昼休み 日本への留学

17 水帰国オリエン

テーション最終発表準備 昼休み 最終発表リハーサル

18 木 最終発表 閉講式 懇親会 帰国準備

19 金 離日日

Ⅲ プログラム日程

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Ⅳ プログラム内容

1日目6/26 到着日

7か国(ブラジル9名、ボリビア2名、パラグアイ2名、ペルー2名、アルゼンチン2名、メキシコ2名、ドミニカ共和国1名)から研修員20名が来日しました。

2日目6/27 開講式

JICA横浜の殿川次長による挨拶、スタッフの紹介後、研修員が自己紹介をしました。

アイスブレイク

研修員同士が互いをよく知ることができるようにゲームを用いてアイスブレイクを行いました。互いの顔を見て、体を動かしながらジェスチャーすることで、少しずつ打ち解けていくのを感じたようでした。最後には笑顔が広がっていました。

3日目6/28 プレゼンテーション(自国紹介)

パワーポイントを使って、研修員が住んでいる町や日系社会についてプレゼンテーションをしました。研修員たちは自身が通っている日本語学校や、自身が参加している太鼓や日本舞踊、柔道などのサークル活動、家族について発表しました。

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講義 日系社会支援・連携事業

本研修の目的と背景について学ぶ講義を受講しました。JICAが日系社会や日系人に対して数多くの支援や連携事業を行っていることを知り、研修員からは「JICAの事業内容がよくわかり、日本と海外を繋ぐ重要な役割を担っていることを知った。」「講義の中で『中小企業との連携に関して、アイディアが欲しい』と言っていたのを聞いて、自身の専攻を活かして協力してみたい。」と話していました。

6日目7/1 講義 日系人のポテンシャル

日系人がどのような可能性を秘めているかを考察しました。また、大学卒業後に目を向け、研修員の今後の社会的責任と役割について話し合いました。そして、今後、どのように母国と日本へ貢献できるか、各班で発表を行いました。講義を終えて、「周りに流されず、自信を持つことが重要だと気づかされた。」「自身の住

む町の日系人のイメージをよくしていくために、これまで以上に頑張って日系団体で活動したい。」と話していました。研修員同士、自身の考えや意見を述べることで、研修員ひとりひとりが日系人としての可能性を感じ始めました。

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講義 日系人のアイデンティティ

アイデンティティは一つであるように感じていた研修員たちも、この講義を受けることで、実は様々なアイデンティティがあること、また、アイデンティティは時代や職業等によって変化していくことを学びました。研修員たちはこれまでの生活の中で、「日系人=〇〇である」という固定観念に縛られることが多かったようで、講師の話を聞き、驚いたり、安堵した表情を見せたりしていました。研修員からは、「複数の国の血統を持っているため、今までアイデンティティについて悩んでいたが、講師からのアドバイスをもとに自身のアイデンティティを見つけていきたい。」「アイデンティティを重荷として感じる必要はなく、うまく活用していけばよいことが分かった。」と話していました。

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7日目7/2 施設見学 ティー・エス学園

現在、関東地方で農業と教育で日本と自国の架け橋となり、社会貢献をされている日系人の方に講話をしていただきました。経営者としての視点や、日系人としての立ち位置でどのような形で社会貢献をしているのか、そして「リーダーの資質」とは何か等、実体験をもとに分かりやすくお話しくださいました。研修員たちは、移住学習で学んだことを踏まえながら、「自分だったら、大学で培った知識と技術を使って、何ができるのか。」と、真剣に耳を傾ける様子が見受けられました。また、講師の方が経営されている学園の視察や、工場見学も行い、日本で生活をする日系人の

方々の様子を知るきっかけとなりました。

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講義 日系人と架け橋としてのニッケイ

この講義では、日本人の海外移住の歴史と、「日系人」と「ニッケイ」の違いについて教わりました。講義を受けながら「家族の歴史や、聞いていた話を思い出していた。」と言い、涙をこらえる研修員の姿も見受けられました。研修員たちの多くは、「おかげさまで」の意味に感銘を受けたと話していましたが、中には

「家族から日本文化を受け継いだが、それを誰かに伝えようとは思わなかったので、いつも積極的に日系団体で活動している人たちに引け目を感じていた。でも、『おかげさまで』の意味を知り、家族に感謝し、誇りに思う気持ちがあれば、自分自身も日系人として活動に関わっても良いのだと感じた。」と話す者もいました。

移住学習や日本で社会貢献されている日系人の方からの講話を通じて、ひとりひとりが日系人としての自分に自信がつき、日本と自国の架け橋として、どのように貢献ができるかを考える第一歩となったようでした。

8日目7/3 施設見学 放送ライブラリー

この施設では、テレビ局に勤めるアナウンサーと記者の経験を持つ職員の方から、効果的なプレゼンテーションの方法を学びました。与えられた時間内で聞き手にインパクトを与える技術や緊張のほぐし方等を教わり、後のグループディスカッションや最終発表に活かしていました。講師の「あなたの話した言葉が、人を動かす。」という言葉に勇気づけられ、最終発表では堂々と自身の目標を語る姿が見受けられました。講座終了後、施設見学を行いました。ニュース番組のアナウンサーや現場リポーター等の番

組出演を体験できるコーナーがあり、講師の話を念頭に置きながらアナウンサー体験をし、楽しみながら放送について学びました。

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9日目・14日目7/4、7/9 大学研修(個別研修)

東海大学、横浜国立大学、東京農業大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京医科歯科大学、慶應義塾大学(薬学部)

個別研修では各研修員の専門分野やそれに近い分野について学習ができるよう、7つの大学に分かれて講義を受講しました。特別講義や病院での実習、研究室等の見学をはじめ、学部生や留学生とのプレゼンテーションや交流会、柔道を通し、研修員たちは大いに刺激を受けていた様子でした。研修員の中には、ほかの研修員の専攻分野にも触れたことで、「視野を広げ、様々な知識を得ることで自身の専攻にも活かされるのではないかと感じた。」と話していました。

10日目7/5 大学研修(全体研修)慶應義塾大学

研修員20名全員で、慶應義塾大学のキャンパスを訪れ、慶應義塾大学の学部生や留学生の方とワークショップを受けました。ワークショップのテーマは2つあり、ひとつは「異文化」についてでした。研修員たちは日本

人のお詫びの事例を聞き、学部生や留学生の方とディスカッションする中で自国との違いが明確となり、関心が深まったようでした。また、もうひとつのテーマである「文化と価値観」では、同じ中南米の研修員同士ではほぼ同

じ価値観を持ち合わせているのに対し、日本人の学生は全く異なる価値観を選んでいることが分かり、驚いていました。日本文化や習慣が個性に影響していることが興味深かったようです。

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施設見学 TEPIA先端技術館

講師から教わったAIの技術が、日本社会ではどのように取り入れられているのかを見学しました。年齢や性別を判断するモニターや、重たい荷物を軽々と持ち上げてくれるロボット、プログラミング等、展示品に触れながら学びました。研修員たちは、実際にどのように利用されているのかを体感し、理解すると同時に、日本の先端技術に驚いたようでした。

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13日目7/8 大学研修(全体研修)横浜国立大学

横浜国立大学では、午前の部、午後の部の2部構成で大学研修が行われました。午前中はキャンパスツアーを、午後の部では学部生と留学生による「アイデンティティ」「日本の学校に通えない子供たち」をテーマとしたプレゼンテーションと、グループディスカッションをしました。プレゼンテーションの中で、多くの研修員が強い関心を示したのが、日本のいじめの問題です。中南米といじめの質や対処法が異なるため、研修員たちは学生たちに質問をしながら、どうすれば解決できるのかを一緒に考えました。自国の問題解決策を例に挙げながら日本に適応できないかと話し合い、各グループで発表を行いました。

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15日目7/10 日本文化ワークショップ 書道

書道を通して日本文化に触れました。研修員の中には日本語学校で書道をしたことがある者、初めて筆を持つ者と様々でしたが、どの研修員も一生懸命練習をしていました。美しい字を書くために講師から熱心な指導を受けながら、最後は色紙に好きな言葉を清書しました。「完成した色紙は家族へのお土産にする。」と講師に伝え、自身の書に満足する様子が伺えました。

振り返りディスカッション

これまで移住学習等で学んだことを念頭に、日系社会が抱える問題や課題をチームで解決する方法をディスカッションしました。各グループには様々な国から来た研修員がいるため、まずは自身の地域や国の課題を挙げ、意見を述べました。研修員たちはグループディスカッションを通じ、「課題解決のために、自分たちの持つ強みが生かされるのではないかと感じた。ひとりでは難しいかもしれないが、チームなら解決の道に近づけるかもしれないと思った。」「国は違っても共通点があることに気づいた。みんなで話し合い様々なアイディアが出たが、どれも興味深く、自分にはない発想もあって面白い。」と各グループで解決方法を提案し、帰国後、日系社会で活動する上でのヒントを得たと話していました。

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16日目7/11 研修旅行1日目 神戸ミュージアム見学

ブラジルへの移住者が渡航前の研修や準備を行う施設として実際に使われ、現在も当時のままの姿で残る「移住ミュージアム」を訪問しました。多くの研修員たちの家族は神戸港から海を渡ったため、当時の移住前の家族の様子を想像しながら説明に耳を傾けていました。ミュージアム見学後、実際に移住者が歩いた道を辿り、移住船が出港した神戸港へ向かいまし

た。向かう途中、当時の町の様子やブラジルへ渡る人たちがどんな気持ちでこの道を通ったのか、各自思いを馳せていました。

17日目7/12 研修旅行2日目 広島平和記念資料館と平和記念公園、広島所蔵資料館 常設展示の見学

午前中は広島平和記念資料館と平和記念公園、そして今年オープンした広島所蔵資料館常設展示の3か所を訪れました。平和記念資料館では多くの研修員が涙を流し、「当時の広島の人たちの苦しみや絶望感は想像することができない。もう二度と戦争をしてはいけないと思った。」「資料館を訪れ、戦争や核爆弾がもたらす影響についてより深く考えるようになったのは、今までにない経験であった。」と改めて平和を願う姿が見られました。その後、戦前から戦後の広島の移住について展示している所蔵資料館を見学しました。この資

料館は原爆投下時、避難場所として使われていた場所でもあることから、「短時間で戦前から戦後の広島の歴史を勉強できた。」と話していました。最終発表時には、涙を流しながら反戦の意を表していました。

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安芸太田町にてホームステイ、神楽鑑賞

研修旅行2日目は、安芸太田町へ移動し、3~4名のグループ毎にホームステイをしました。自身が住んでいる町が大都会のため、安芸太田町に広がる豊かな田園風景に感動した研修員がいる一方で、「自国でも安芸太田町のように山に囲まれた生活をしている人々がいるが、水道や電気が通っていない。安芸太田町では快適な暮らしができると知って驚いた。」と話す者もいました。ホストファミリーの方々は研修員を温かく迎え、浴衣の着付け、流しそうめんや押し寿司づく

りといった食文化体験、畑仕事やお寺の鐘つきといった家業体験等、安芸太田町ならではの体験をし、日本の夏の思い出となりました。また、夜は町内にある神社で神楽鑑賞を行いました。研修員たちは、力強い神楽の舞や、色鮮

やかな衣装に目を奪われました。

18日目7/13 研修旅行3日目 お別れ会、厳島神社の見学、宮島散策

3日目の午前中、ホストファミリーの方々がお別れ会を開いてくださいました。1泊2日という短い滞在時間だったにも関わらず、ホストファミリーの方々と研修員の間には絆が生まれ、涙を流しながら別れを惜しみました。安芸太田町の方々に見送られ、その足で厳島神社へ向かいました。この日は朝から雨が降って

いましたが、「雨の中で見る朱色の鳥居は幻想的で、綺麗だ。」と話す研修員もいました。そして、「これまでに幾多の自然災害や火災に遭ってきても修理し、再建され、昔と変わらない姿で建っているのか。」と驚きながら、何枚も写真を撮っていました。

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21日目7/16 報告書作成

本研修で何を学んだか、そして帰国後、これからの日系社会をリードするために、どのように活かし発信していくのかを考え、各自報告書にまとめました。

日本への留学についての説明と、日系人留学生との交流

日本への留学制度である「JICA日系社会リーダー育成事業」「日本財団日系スカラーシップ」ついて説明を受けました。そして、実際に制度を利用し、来日している現役の留学生から生活等について話を聞きました。

研修員たちは日本への留学により関心を深めた様子で、先輩方から情報を得ていました。

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22日目最終発表準備

翌日の最終発表に向けてグループごとに準備をし、リハーサルを行いました。

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23日目7/18 最終発表

最終発表では、本研修を通じて学んだこと、経験したことをグループごとにまとめ、発表しました。そして、各研修員より今後の日系社会との関わりと将来の目標を宣言しました。

閉講式

JICA横浜の熊谷所長による挨拶の後、修了書授与を行い、研修員代表の挨拶をもって締めくくりました。

懇親会

最終発表、閉講式に出席した関係者や研修員と歓談しました。最後は研修員有志によるサプライズの歌を歌い、再会の約束を交わしていました。

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24日目7/19 離日日

別れを惜しみながら、研修員全員、無事に帰国の途につきました。

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Ⅴ 研修員所感

1.SATO Mario Tsukassa ブラジル

佐藤 司 マリオ INSPER大学経営学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まりましたか」研修前は「日系ブラジル人」とだけ思っていましたが、講義を受け、新しい自分と出会うことができました。今は自身のことをブラジル人であり、日本人であり、日系人であり、アイヌ民族の血を受け継ぐ者でもあることに気づき、アイデンティティが強まるのを感じました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」ブラジルへ移住してきた日本人の方々に恩返しをするために、日本舞踊と太鼓の腕を磨き、所属グループをまとめて日本文化を広め、活躍していきたいです。また、ビジネス面では、自国と日本企業のコンサルティングサービスを行いたいです。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」大学進学後、日本文化にあまり触れていなかったせいか、以前来日したときよりも自身がブラジル人気質になっていることに気づいたことです。今後は日本文化の良さを理解し、それを活かしてブラジルの社会に貢献できればと思っています。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」全てがとてもためになりましたが、一番良かったことは、日系人の友人ができ、交友を深めたことです。研修中、人間関係が広まり、互いの話を聞くことで視野が広まったし、青春を楽しむことができました。とても満足しています。

2.SHIMADA Heitor Hideki ブラジル嶋田 英樹 エイトル サンパウロ大学農学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まりましたか」講義や日本で社会貢献されている日系人の方から話を聞くことで、日系人とは何かを考え、理解し、アイデンティティが強まりました。自身も日系人としての能力や可能性を活かし、自国と日本の架け橋になりたいです。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」農業に従事する日系人の方と交流していこうと考えています。農業を通じて、日系社会をはじめとする自国の農業を発展させていきたいです。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」広島平和記念資料館等で学んだ平和と原爆の残酷さ、そしてあの悲劇を乗り越えて美しい町に蘇らせた人々の力です。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」多くのことを学ぶことができただけではなく、日本で活躍されている日系人の方や視察先の学園の生徒、安芸太田町の町民、青年海外協力隊のOG等、様々な立場の方々と話す機会を多く持てたことです。それにより、日系人の定義や役割について考え、自身が思う「日系人」を確立できたと思います。

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3.HISSANO Wendy Saory ブラジル

久野 沙織 アニェンビ・モルンビ大学マーケティング学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まりましたか」表面的にしか知らなかったことや全く知らなかったことが、研修を受けることで明らかになり、日系人としてのアイデンティティが強まるのを感じました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」前年度研修を受けた研修員と共に、サンパウロで青年会を立ち上げます。また、自身が活動しているNGOで価値観等を教えたいと思います。日系社会の知名度が上がるよう、サポートしていきたいです。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」ひとつは、日系人に対する概念とアイデンティティです。日系人としての可能性や役割を考えさせられました。もうひとつは、広島の平和記念資料館です。資料を見たり、証言ビデオを観たりして心を動かされ、泣かずにはいられませんでした。二度とあのような戦争が起こらないことを望みます。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」全て有益でしたが、特に日系人の可能性について教えられたことは非常に有益でした。講義を受け、重要なことは私たち自身が可能性を信じることだと分かりました。

4.YAMADA Fabiana Lumy ブラジル

山田 ルミ ファビアナ サンパウロ大学薬学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まりましたか」非常にそう思います。研修前までは、自身のアイデンティティについてあまりよくわかりませんでしたが、研修を受けることでいろいろと考えるようになり強まりました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」研修で学んだことを、自身が参加している日系社会の青年会や太鼓部に共有し、活かしていきます。また、この研修について多くの人たちに伝え、次の世代にもつなげていきたいと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」「日系人のポテンシャル」の講義です。この講義をきっかけに、自身が日系人として何ができるのかが分かり始めたからです。また、安芸太田町のホームステイでは、とても貴重な経験が出来、印象に残っています。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」多くの貴重な経験をしたことです。例えば、大学研修では日本の病院を見学し、薬剤師の仕事を間近で見ることができました。研修旅行では、平和記念資料館の見学やホームステイ、伝統文化の神楽を鑑賞しました。様々な経験を通してたくさんのことを学びました。

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5.WASANO Yoshie Debora ブラジル

和佐野 良恵 デボラ サンパウロ大学建築学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まりましたか」研修前はアイデンティティについて知らなかったし、「私は誰なのか」と混乱することが多

かったです。でも、研修を受けたことで「私は日系人です」と誇りを持っていうことができるようになり、アイデンティティが確立しました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」帰国後、大学の個別研修で学んだ情報を自国の大学で共有しようと思います。また、自身の日系社会の会館等で、絵のクラスを開講したいと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」特に「日系人と架け橋としてのニッケイ」の講義が印象的でした。日本の海外移住の歴史を学

ぶことができ、祖先がどのような経験をしてきたかを理解することができました。「おかげさまで」の意味を理解することで、祖先や自身を支えてくれる全ての人々に感謝の念を抱きました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」最も有益だったことは、日本をはじめ、自身のこと、日系社会について多くのことを学ぶこと

ができたことです。全ての講義とJICAのサポートなしには情報を得ることができなかったでしょう。帰国後、ブラジルの日系社会に共有していきます。

6.MISUMI Alex Koji ブラジル

三住 浩司 アレックス サンパウロ大学工学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まりましたか」移住学習で行われた3つの講義は非常に興味深く、講義を受けたおかげでアイデンティティを

より深めることができました。この研修で自身が勇気づけられたように、私も町の日系社会を勇気づけていきたいと思います。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」多くのブラジル人が持っている、日系人に対する間違った見方を変えていきたいと思います。

そのためには、まず周囲からなぜ誤った考え方をしているのかを聞き、相手の考えを理解するよう努めていこうと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」最も印象に残ったのは、広島平和記念資料館です。強い衝撃を受け、改めて平和について考えさせられた場所となりました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」この研修で出会った他国の研修員や、講師、日本の大学生や留学生との出会いが最も有益なも

のとなりました。

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7.SASAKI Debora Yumi ブラジル

佐々木 由美 デボラ ピタゴラス大学歯学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」この研修で様々な経験をし多くの知識を得ることで、日系人としてのアイデンティティが強まりました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」地域の日系団体や日本語学校の行事等へ、積極的に参加したいと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」最も印象的だったのは「日系人と架け橋としてのニッケイ」の講義です。この講義を受けることで、私の地域の日系社会を活性化させるためには何が必要かを考えさせられました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」日系人としての自分を受け入れること、また自身も「架け橋」として貢献できると分かったことが、私にとって非常に有益でした。

8.IGARI CAVAMURA Luiz Henrique Hideki ブラジル

川村 猪狩 ルイス エンリケ 秀樹 ブラジリア大学電気工学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」この研修を受けることで、自身の日系人としてのアイデンティティがはっきりと確立されました。研修前は「日系人」と「ニッケイ」の違いが分からず、日系人の役割も考えたことがありませんでした。帰国後は学んだことを活かし、ベストを尽くしたいと思います。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」若い世代の日系人に向けて、日系人の役割を理解してもらえるよう活動をしていきたいです。私はピアノを弾くので日本の曲を演奏し、音楽を通じて日本に興味を持ってもらえたらと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」どの講義も素晴らしかったですが、特に講義を通じて自身の祖先について学ぶことができたのが非常によかったです。大学研修中も日本の優秀な研究者の方と出会い、話を聞くことができたのは、大変貴重な経験となりました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」中南米諸国の日系人の研修員と友好を深めることができたことは、かけがえのない経験となりました。帰国後もずっと交流していきたいと思います。

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9.ICHIHARA RABELO Daniel ブラジル

市原ラベロ ダニエル CESUPA大学経営学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」私は日本文化や価値観を誇りに思っており、来日前から日系人として意識をしてきましたが、研修で講義を受けたり実際に目の当たりにしたりすることで、より一層アイデンティティが強まったと感じています。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」自身の町の日系社会を活性化させるために、研修で得た知識を共有していきたいですし、JICAがこのような研修を行っていることも広めていきたいです。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」3つあります。一つはホームステイで、ホストファミリーを通じて日本文化について多くのことを学ぶことができました。二つ目は、広島平和記念資料館です。とても衝撃的で、被爆者の方々の心の深い痛みを感じ、泣いてしまうほどでした。三つ目は、大学研修です。自身の夢は日本へ留学することなので、全体研修や個別研修で日本の大学を訪れ、夢の一部が叶ったようで満足しています。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」大学研修です。日本の大学で講義等を受けたこと、また、大学研修中も日本人の学生や留学生と交流し、友人ができたことが一番有益でした。大学研修で素晴らしい時間を過ごすことができました。

10.INCHAUSTE KOTORIY Micaela Akemi ボリビア

インチャウステ コトリイ ミカエラ アケミ サン・シモン大学グラフィックデザイン学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」今まで自国で日系人や日系社会との関わりが少なく孤独を感じ、自身のアイデンティティが分からずにいましたが、この研修で他国の日系人の研修員と出会うことで自身とよく似た境遇の日系人がいることに気づき、安心しました。そして、講義を受けることでアイデンティティが強まりました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」地域の日系社会で活動している人たちに、研修で得た情報や経験を共有し、ともに「架け橋」となれるよう促していきたいと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」移住学習で学んだ3つの講義と、広島平和記念資料館への訪問が最も印象に残りました。それにより、祖先が夢見たであろう平和な世界を生きていること、祖先のおかげで今の自分たちの生活があることを知り、感謝するのを忘れないでいることが大切だと思うようになりました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」特に「日系人のアイデンティティ」と「日系人のポテンシャル」の講義が有益だと思います。なぜなら、その講義を受けることで新しい視点から日系人について考えることができるようになったからです。

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11.ASATO Masaki ボリビア

安里 将貴 ウプサ大学経営学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」もともとアイデンティティが強い方だと思っていましたが、講義を受けることで、よりアイデ

ンティティが強まりました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」自身の地域では、移住65周年を迎えました。移住してきた人たちが多くの困難を乗り越えてき

たからこそ、今の日系社会があると思います。先人たちへの感謝の気持ちを忘れず、今後は自分たち若い世代が守っていけるよう、学んだことを活かして活動していきたいです。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」安芸太田町でのホームステイが印象的でした。ホストファミリーの自宅はお寺でお堂を見せて

もらったり、鐘を突かせてもらったりと、貴重な経験をさせてもらいました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」他国の日系人の研修員と出会い、講義等で彼らとグループディスカッションをしたことです。

互いに意見交換をし、理解を深められたことは非常に有益でした。

12.CONTRERA IBUKI Sakura Amanda パラグアイ

コントレーラ 伊吹 さくら アマンダ 国立アスンシオン大学ポリテクニック学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」研修を通して、日系人がどれほど特別な存在であるかに気づかされ、自身のアイデンティを強

めることができました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」パラグアイの日系社会に積極的に関わり、研修で学んだ知識や自身の経験を広めていこうと思

います。若い世代の日系人に、この研修では同世代の中南米の日系人と出会えること、そしてともに日系人や日系社会について学ぶ貴重な機会を得られることを伝えていきたいです。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」研修員との絆と、情熱と意欲を与えてくれた講師陣、そして広島平和記念資料館が最も印象的

でした。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」他国の日系人の研修員や、大学研修で出会った日本人の学生や留学生との交流が有益だったと

思います。

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13.YOSHIMURA Toshimitsu パラグアイ

善村 利光 国立アスンシオン大学工学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」講義を受け他国の研修員と意見交換をすることで、違う視点で日系人のアイデンティティを考えることができ、アイデンティティが強まったと思います。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」行事等を通して地域の日系社会の若者に交流の場を作り、つながりを深めたいと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」他国の個性的な日系人の研修員と出会い、仲の良い友人ができたこと。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」プレゼンテーションスキル講座を受け、講義等でディスカッションを繰り返すことで人前で話すことのコツを得たことと、日系人の友人ができたことです。

14.OGUSUKU HIGA Narumi Cristina ペルー

大城 比嘉 成美 クリスティーナ 私立カトリカ大学コミニュケーション学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」今回の研修で、よりアイデンティティについて考えさせられ、日系人が持つ様々な可能性について学ぶことができ、アイデンティティが強まりました。自国では時々、日系人であることは不利であったり、理不尽な思いをすることもありますが、ポジティブに考えることや自国の文化と日本文化を調和させることが大事だと気づかされました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」研修前は自国の日系社会で歌を通じて関わりを持ってきましたが、研修を受けたことを機に日本文化を教えたり、アイデンティティについて話す機会も作りたいと思いました。同世代の人たちに興味を持ってもらえるよう、SNS等をうまく利用すれば広く周知することができるのではないかと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」研修旅行が印象的でした。平和記念資料館では数々の衝撃的な絵や写真、遺品等を見て、とても心が痛みました。平和を守り続けるためには、このような出来事を伝え続けなければならないのだと考えさせられました。また、安芸太田町のホームステイは楽しい経験でした。私たちのためにいろいろと考えていただき、流しそうめんや浴衣、花火を体験しました。ホストファミリーにとてもよくしてもらい、嬉しかったです。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」大勢の人との出会いです。「日系人」ということが共通点である他国の研修員や、講師や大学研修をはじめとする研修先で出会った人たちは、それぞれ違った世界の見方をしていました。そのような人たちと出会い、情報や意見交換することで毎日刺激を受けました。そのことが一番有益だったと思います。

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15.FURSHIO GUZMAN Piero Naoki ペルー

古庄 グスマン ビエロ ナオキ 国立サンマルコス大学経営学部国際ビジネス学科

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」講義を受けることで、アイデンティティについての知識を得、強まるのを感じました。また、

日系人のアイデンティティは個人差があり、環境によって変化することが分かりました。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」自身が指導を行っている日本語学校の教員たちに情報共有をし、ひとりひとりの中にある日系

人の可能性を引き出すきっかけをつくりたいです。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」日系人の研修員たちとの出会いです。研修前までペルーの他に日系人がこれほど多くいるとは

思ってもみませんでした。他国の研修員たちとの出会いは、自身の視野を広げ、新たな挑戦や目標を見出してくれました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」日系人としての可能性や強みを知ることができたことです。これを活かして、自国と日本の架

け橋になれるのだと気づくことができました。また、講義や大学研修で意見交換をできたことも有益でした。

16.NAKAMURA Leonardo アルゼンチン

中村 レオナルド 国立ラプラタ大学工業デザイン学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」講義を受け、自身を日系人だと強く感じていますし、日系人であることに強い誇りを持ってい

ます。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」JICA研修についてもっと広めていきたいです。国によってはあまり周知されておらず、応募数

が少ないところもあると聞きました。僕は全ての日系人がこの研修を受け、学ぶべきだと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」「日系人のポテンシャル」の講義が非常に印象的でした。講師と同じ日系アルゼンチン人なの

で、似たような経験を持っており、講義を受けていると深いつながりを感じました。また、日本で活躍する日系人の方と話すことで、日系人の可能性や架け橋としての役割を理解

し、自身のことを考えることができました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」国や大学、年齢は違うけれど、似たような目標や精神力を持つ同世代の日系人の研修員と出会

えたことです。また、大学研修を通じて日本人の学生と出会い、共通点を見つけられたことが有益でした。

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17.GASHA Rodrigo Andrés アルゼンチン

我謝 ロドリゴ アンドレス 国立ブエノスアイレス大学経営学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」研修を受けるまで「日系人」と「ニッケイ」の違いを知りませんでしたが、講義を受け、それは知らなければならないことだと思いました。今は誇りを持って、自身は日系人だということができます。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」自国と日本の「架け橋」になりたいと思っています。若い世代が日系社会に参加する意欲を起こさせるためにも、この研修の応募を促したいと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」「日系人のポテンシャル」「日系人のアイデンティティ」の講義から、新しいことを学ぶことができたことが印象的でした。また、平和記念資料館の訪問は、沖縄のひめゆりの塔のことを思い出し、感情的になりました。原爆という悲惨な出来事に胸を痛めると同時に、戦後の復興の早さに感銘を受けました。そして、ホームステイ先のホストファミリーの優しさがとても印象に残りました。家族の一員のように接してもらい、とても嬉しかったです。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」この研修でしか得られない、日系人に関する講義や、日本の様々な側面を発見することができたことです。また、様々な大学への訪問は自身の国の教育システムや学生を比較することができ、有益でした。

18.CASTILLO NAKAMURA Luis Ito Rodion メキシコ

カスティージョ 中村 ルイス イト ロディオン メキシコ国立自治工科大学国際学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」他の中南米の国から来た年齢の近い研修員たちと共に研修を受け、情報や意見を交換することで、自身の日系人としてのルーツを思い出させてくれました。そのことで、自身のアイデンティティは強まったと感じています。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」在学する大学の中にも日本との交流がありますが、行事等で日系団体の助けとなれるよう、積極的に努力していきたいと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」この世界は決して大きなものではなく、私たちは何らかの形でつながっていることを感じたことです。また、講義で得た情報と知識や大学研修等で出会った方々等、どれも心に残っています。そして、他国の日系人の研修員と交流し、様々な経験を共有できたのも印象的でした。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」奨学金制度を利用し、日本へ留学している日系人の先輩方と出会い、生活について話を聞くことができたことや、様々な大学を訪問できたことはとても有益でした。日本への留学を視野に入れいているので、今後の参考にしたいと思います。

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19.MATSUDA Misaki メキシコ

松田 美咲 イベロアメリカ大学建築学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」この研修でアイデンティティは自国と日本の価値観や伝統、習慣によって構成されることが分

かり、理解を深めることができ、自身のアイデンティティが強まったと思います。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」自身が活動している二つの日系団体へ参加し続け、日系人のアイデンティティ等について共有

していきたいと思います。そして、この研修で経験したことを共有し、他の若い世代の日系人にも参加するよう勧めていきたいと思います。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」講義や研修旅行、日本で活躍される日系人の方の話と学園の訪問が印象に残りました。講義等

を受けることで視野が広まり、新しい視点で考えるようになれたのは喜ばしいことです。また、研修旅行で日本文化や生活習慣等、多くのことを学び、自身のルーツを繋げることがで

きました。そして、日系人の方が自身の可能性を活かし、日本と自国の「架け橋」として活躍されている

よい事例だと感じ、印象に残っています。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」講義と横浜国立大学での大学研修です。講義では、自身が日系人であることを深く理解するこ

とができ、新たな気づきを与えてくれました。また、横浜国立大学での大学研修は、自国と日本の建築スタイルやデザイン、技術について学

ぶことができ、とてもよかったです。

20.HERRERA JOA Gabriela Sayuri ドミニカ共和国

エレラ ホア ガブリエラ さゆり UNPHU大学建築学部

「日系人としてのアイデンティティは、どのように強まったと思いますか」研修を受け、アイデンティティを定義する正しい方法を見つけることができました。祖先のお

かげで今の自分がいること、そして自身の可能性に気づき、これまでの人生で一番、自分に誇りを持つことができています。

「帰国後、日系社会に対してどのように関わっていきたいですか」若い世代の人たちと共に日本文化を広めるプロジェクトを作り、日系社会を発展させていきた

いです。そのためにも、自国で日本文化センターを設立することを提案していきたいです。

「研修中で最も印象的だったことは何ですか」広島平和記念資料館の訪問は衝撃的でした。資料や展示品を見終え、私は深い悲しみを感じな

がら資料館を後にしました。平和記念公園では他の研修員達と黙祷を捧げましたが、それだけでは十分ではないように感じ、平和への誓いを新たにしました。

「研修で一番有益だったと思うことは何ですか」この研修で得た経験全てです。ここで学んだことや得た知識は、帰国後、地域や国の日系社会

の発展のために役立たせることができると思うからです。

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Ⅵ 総評

本研修は、①日本の海外移住の歴史、自分たちのルーツ、日本文化、習慣等を学び、日本に対する理解を深めることで、日系人としてのアイデンティティを考えること、②日本での様々な経験や交流を通じて、自分の考えを発信する機会をもつこと、③本研修で得た知識、研修の成果をもとに、これからの日系社会をリードする発信力のある人材を育成することを目的として実施され、7か国20名の研修員が来日しました。本研修は、移住学習、大学研修、研修旅行の三つのプログラムを軸としています。

移住学習では、多角的な視点で「日系人」について考察するために、「日系人のポテンシャル」「日系人のアイデンティティ」そして「日系人と架け橋としてのニッケイ」をテーマに講義を設けました。来日してすぐに移住学習が行われましたが、研修員たちは環境の変化にも負けず、非常に意欲的に学ぼうとする様子が見られました。また、日本で起業をし、日系人としての立場で社会貢献をしている方から話を聞くことで、今後、どのように日系社会との関わっていくか、日本と自国の架け橋となるにはどうしたらよいか等、自身が置かれている立場や役割を少しずつ考え始める姿が見受けられました。

大学研修に関しては、全員で同じ大学を訪問し研修を受ける「全体研修」と、それぞれの研修員の専攻分野(文系、理系、農業系、医療系、美術系)によって別の大学で研修を受ける「個別研修」を実施しました。全体研修では、同世代の日本人の学生だけではなく研修先の留学生も同席され、特別講義を受けました。互いの国の文化や価値観、課題点等を話題にディスカッションを行うことで、中南米の日系人と日本をはじめとするアジアのそれとの違い等、多くの気づきを与えられました。個別研修では学部生や大学院生の講義に出席するほか、ゼミナールの見学もし、そこで得た情報やインスピレーションをすかさずノートに書き記し、一つでも多くのことを吸収しようとする姿が見られました。また、病院での実習や研究室での実験等も行われ、大学研修で学んだ知識や技術を自身

が通う大学で共有し、活かしていきたい、と話していました。

研修旅行では、家族が中南米へ移住する際、研修や渡航準備を行っていた施設を訪れました。自身の家族の歴史に触れ、「今の自分がいるのは、家族が日本から自国へ移住し、苦労を乗り越えて生活してきたおかげだ。」と家族への感謝の念を抱きながら見学をしていました。平和学習のために訪れた広島平和記念資料館や平和記念公園、そして、戦前から戦後の移住について学んだ広島所蔵資料館では、短時間の中で広島の歴史を知ることができました。資料館を後にした研修員の中には、その日、SNSを利用して戦争の恐ろしさと、平和への新たな誓いを自国の人たちへ向け発信する姿が見られました。ホームステイをした安芸太田町では、今年もホストファミリーの方々が温かいおもてな

しで研修員を迎えてくださいました。「この町でしかできないことや、日本の夏を思いっきり満喫してほしいから。」とたくさんの経験を与えていただき、日本人の習慣や地域に伝わる文化を学ぶことができました。

最終発表では、「日系人のポテンシャル」「日系人のアイデンティティ」「日系人と架け橋としてのニッケイ」「日本文化」「日本の習慣」をテーマに、各グループで本研修で学んだことや、日本で過ごした中で体験したこと、自身の意見を織り交ぜながら発表をしました。移住学習を担当した講師は、「研修を通して、研修員たちの成長が感じられる。」とコメントし、研修終了時のアンケートには、「日系人に対する可能性を感じ、大切なことに気づかされた。今後の日系社会での活動に役立てたい」という声が多くありました。また、期を越えて、前年度に参加した研修員とともに、自身の町で新たな青年会を立ち上げ、日系社会をリードしていくという決意表明もありました。日本から中南米に移住して一世紀を越える国や地域が増える中、若者たちの日系社会離

れや、次世代を担う人材育成が問われています。今後、本研修で同世代の日系人と共に学び、経験してきたことを周囲と共有するとともに、自身の可能性を信じ、成長しながら、それぞれの場所で仲間と共に活躍していくことを期待します。

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【参考】添付資料(募集要項)

2019年度「日系次世代育成研修(大学生招へいプログラム)」募集要項

1.研修の目的中南米の日系社会では世代交代が進み、2世、3世以降が今後の日系社会を担う存在となっています。本研修は、今後の日系社会を担う世代に対する本邦での研修を通して日本との関係強化や移住先社会の発展に貢献できるような人物を育成することを目的としています。本研修では、将来の日系社会の発展に貢献するのに十分な素質のある日系子弟の大学生が日本人の

海外移住の歴史に関する学習、本邦大学での研修、その他の各種研修を通じて、自分たちのルーツと日本に対する理解を深め、さらに自らの日系人としてのアイデンティティを強化することをねらいとしています。

2.研修員対象国および受入計画数9ヵ国20名

3.研修期間(予定):24日間来日日:2019年6月26日(水) 離日日:2019年7月19日(金)

4.研修概要 ※プログラムの内容は変更となる可能性があります。

5.宿泊(研修旅行期間を除く)JICA横浜もしくは周辺ホテルを予定しています。

対象国 人数 対象国 人数

ブラジル 9名 ベネズエラ 1名

ボリビア 2名 コロンビア 1名

パラグアイ 2名 メキシコ 1名

ペルー 2名 ドミニカ共和国 1名

アルゼンチン 1名 合計 20名

プログラム 内容 研修場所

移住学習 海外移住資料館等の見学移住に関する講義、ワークショップ

各研修員の出身国、移住地の日系移民についての歴史や文化の報告

JICA横浜史跡、博物館等

大学における研修 各専門分野別の講義、研修日本の大学生との交流等

首都及び神奈川県内の大学(予定)

日本文化体験 日本の文化体験 JICA横浜(予定)

研修旅行 日本の産業界との交流日本の社会・職業文化の理解

未定

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6.応募資格要件

応募者は、次の要件をすべて満たしていなければなりません。(1)海外移住者及び概ね日系3世までの海外移住者の子孫(※)であること。

※日本人移住者の血統を引く者を指します。※事業対象国に定住していること(主たる生活基盤があること)。

(2)研修参加時点で、本事業対象国の高等教育機関(大学)に所属しており、かつ年齢が18歳以上30歳以下であること。

(3)親権者または保証人の同意が得られること。(4)日常生活に支障のない日本語能力を有すること。また、日本の大学での講義を日本語

または英語で受講し、かつ議論に参加できるレベルの能力を有すること。(5)心身とも健康で、本邦での集団生活に耐えられること。(6)原則、来日から帰国までJICA指定の全日程に参加できること。

7.応募書類(1)JICAが指定する以下の様式を使用して応募してください。

ア.身上書…正本1通 (様式第2号)和文、英文のどちらか一つを提出してください。氏名:この書類に書かれた氏名の表記(漢字・ひらがな・カタカナの区別も含みます)

にしたがって、ビザ申請に必要な身元保証書、受入証明書をJICAが作成します。また、 研修修了証書の作成も身上書の氏名の表記を使います。読みやすい字で記入してください。

氏名アルファベット:この氏名により、航空券の予約の確認等を行います。読みやすい字で、渡航の際に使用するパスポートに書かれているとおりに記入してください。スペル、名字と名前の順番、ミドルネームの有無に注意して記入してください。

国籍:来日に使うパスポートの国籍を記入してください。2重国籍の場合でも、今回の研修の来日に使う方のパスポートの国籍だけ記入してください。さらに、日本以外のパスポートを使用する場合は、日本国籍の有無についても記載してください。

イ.写真…2枚最近6ヶ月以内に撮影したもの。(縦4cm×横3cm、上半身、正面、脱帽、裏目に氏名・国名を記入)※1枚は身上書に貼付してください。

ウ.健康診断書…正本1通 (様式第3-A号又は第3-B号)和文、英文のどちらか一つを提出してください。※全ての項目を受診し、記入されているかどうか確認をしてください。未受診項目や記入漏れがある場合は受け付けられません。(既往症、レントゲン写真番号、服用中の薬など、特に留意してください。)

※記入事項に虚偽のものがあると判明した場合には、研修に参加できなくなる可能性があります。

エ.誓約書…正本1通 (様式第4号)和文を提出してください。(英文は参考資料です。)※共同親権が法制化されている国では、全親権者のものが必要となります。

オ.作文「本研修の参加目的と計画」 (様式第5号)和文、英文のどちらか一つを提出してください。※「本研修になぜ参加しようと思ったのか。どのような目標を持っているか。帰国後、本研修の経験をどのように活かしたいか。」について、日本語又は英語で 作文してください。

(2)各団体・教育機関から以下の書類を取り付け、応募と同時に提出してください。ア.所属日系団体からの推薦状…正本1通

※所属団体がない場合は提出不要ですが、応募を機会に近辺の日系団体とコンタクトを取っておくことが望ましいです。

イ.大学在籍証明書…正本又は写しの公正証書1通ウ.大学の成績証明書…正本又は写しの公正証書1通

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(3)所有していれば、以下の書類も応募と同時に提出してください。ア.日本語能力試験認定書等日本語能力に関する証明書類…写し1通

※公的試験等を受けたことがない場合は提出不要。イ.TOEIC、TOEFL等英語能力に関する証明書類…写し1通

※公的試験等を受けたことがない場合は提出不要。ウ.来日に使うパスポートの写し(査証や出入国記録が記されている全てのページ)

(注1)上記(1)のア、エ、オの書類は必ず本人が作成してください。。(注2)上記(1)から(3)までの書類がすべて完全かつ正確に記載されていない場合、またすべて

の書類が募集締切日(各国によって異なる)までに完全に揃っていない場合は受理しません。(注3)提供された個人情報は、①合否の判定、②研修受入の手続き、③事業実績の取りまとめ等の

統計資料の作成のみに利用します。

8.募集期間JICA在外事務所への応募書類提出締切日は各在外事務所が決めます。各在外事務所の指示に従っ

てください。

応募の時点でパスポートを持っていない応募者は、ただちにパスポート取得の手続きを開始することをお勧めします。合格通知を受けてからパスポートの手続きを始めると、来日に必要なビザ取得が間に合わない可能性があります。ビザ取得が間に合わない場合には、研修への参加ができなくなることがあります。※ただし、合否に関わらず、パスポート取得経費についてJICAは負担しません。

9.所要経費の支給JICAは規程に基づいて次の経費を負担します。

(1)指定する経路の往復航空運賃(ただし、航空券の現物支給とし、現金の支給は行いません。航空券取得に必要な税金等、国際空港施設使用料もJICAが負担します。)

(2)本邦国際空港と宿泊施設の移動に係る経費(3)本邦滞在中及び乗継のための第三国滞在中の生活費(食費)(4)宿泊施設の利用料金(5)海外旅行保険(往路・研修期間・帰路に係る期間)

※原則として、居住国の国際空港を出発した時から帰国した日の国際空港到着時点までが保険対象期間です。

※本邦滞在中は、技術/日系研修の研修員と同様、メディカルカードを作成します。研修中の傷病については、研修スタッフが同行しメディカルカードが使える病院に行きますので、研修員に診療費の支払が生じることはありません。なお、既往歴や歯の治療は対象外です。

(6)所外研修、大学での研修、研修旅行のために必要な交通費(7)研修先に対する研修経費

10.研修報告研修員は研修修了時に本研修について報告書を提出するものとします。(製本の上、受入大学な

どの研修先やJICA在外事務所に配布します。)また、帰国後に日系団体等での報告会を行い、実施報告書をJICA在外事務所に配布してください。

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11.研修員の資格取消研修員が次の事項に該当する場合、JICAはその資格を取り消すことがあります。この場合、

(6)および(8)の事項を除き帰国に必要な経費は研修員の自己負担とします。(1)JICAの規則、指示および決定に従わなかったとき(2)研修先の規則に違反した場合(3)日本国の法令に違反した場合(4)本人の故意、重大な過失または怠慢等により、研修を継続することが困難と認められるとき(5)本人の都合により研修を中断したとき(6)心身の著しい障害、傷病等のために研修を継続することが困難と認められるとき(7)応募書類の記載事項に虚偽が発見されたとき(8)その他JICAがやむをえないと認める事由があるとき

12.その他の留意事項家族の同伴は認められません。原則として、往路・復路とも研修員が集合し、集団で渡航します。

フライトスケジュールについてはJICAが決定の上、合格者に対して連絡します。滞在延長や帰路変更は認められません。研修終了後はJICAが定めるスケジュールで帰国します。応募者は、事業対象国の国籍を有すること(あるいは日本の国籍を有すること)が望ましいです。合格者は「肖像権使用承諾書」を提出してください。本研修期間中、JICAが契約するカメラマン

又は委託先が、広報(各種報告書含む)用として写真及び動画の撮影を行いますので、写真及び動画の使用目的等について確認のうえ、署名してください。

以上

別紙:「日系社会次世代育成研修(大学生招へいプログラム)」応募書類様式身上書(様式第2号)健康診断書(様式第3-A号:和文、様式第3-B号:英文)誓約書(様式第4号)「本研修の参加目的と計画」(様式第5号)

※様式第1号はJICA在外事務所が作成する書類なので、本募集要項には添付していません。