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2011 8 8 2011 7 25 29 2010 1 3 8 7 2 4 2011 2011 2011 2011 7 25 25 25 25 Circular Quay Chifley Plaza 2 http://www.jpf.org.au/ 3 The Current State of Japanese Language Education in Australian Schools (Anne de Kretser & Robyn Spence-Brown, 2010) i 2000 16 NSW 43

203A.docx) - Tokyo University of Foreign Studiesô-úû R ixy Y ZÌ O ix Z VWX Z ô- ø 21 ùRúû Wc ¢ém`Y ý` ï Rx Z ACT Z NSW Z Vic iY úû R Wg Z Qld Z SA Z WA Z NT ` XY W X

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国際日本研究センター 海外の大学の日本語教育・日本研究調査 (オーストラリア・シドニー地区)出張報告書 2011 年 8 月 8 日

1.出張者 宮城 徹(国際連携部門)

2.出張経費 特別研究経費

3.出張日程 2011 年 7 月 25 日~29 日

4.訪問先 国際交流基金シドニー日本文化センター

マッコ―リー大学 シドニー大学

ニューサウスウェールズ大学

筆者が行う同調査としては、2010 年7月(ちょうど 1 年前)に行なったオーストラリア・メルボルン地区の大学に続くもので、今回はシドニー地区の 3 大学を調査した。昨年度の反省(8 月は先方は学期初めで、多忙である)を踏まえ、7 月末(シドニー地区の大学では、2 学期が始まる直前に当る)に調査を予定し、国際交流基金シドニー日本文化センターの清田とき子所長に各大学担当者をご紹介いただいた(なお清田所長については、本学留学生日本語教育センターの荒川洋平氏にご紹介いただいた)。清田所長からの事前のご連絡により、各大学担当者からは快諾を得ることができ、日程を調整した。当初は、4 大学を調査対象として準備していたが、西シドニー大学へは当日双方の都合が合わなくなり、訪問を断念した(後述)。

2011201120112011 年年年年 7777 月月月月 25252525 日日日日 (国際交流基金シドニー日本文化センター) シドニーには早朝に到着。宿泊先に荷物を預け、国際交流基金シドニー日本文化センターに向かった。センターはシドニー中心部、Circular Quay 近く、瀟洒な Chifley

Plaza という高層ビル内 2 階にある(http://www.jpf.org.au/)。センターでは、清田所長、中島豊副所長、徳満小百合マネジャー(本学出身)の 3 名からシドニー地域の日本語教育の現状等について概略の説明を受けるとともに、東日本大震災後の日本の留学生の状況、本学国際日本研究センター等における日本語教育・日本研究の動向について説明した。 ご説明を受けた中で、気になった点を一点挙げておく。昨年公刊された The Current

State of Japanese Language Education in Australian Schools (Anne de Kretser &

Robyn Spence-Brown, 2010)iに詳述されているように、オーストラリアにおける日本語教育は、重大な岐路に立たされているという点である。この報告書の中では、たとえば以下のような指摘がある。 ・学習者人口は 2000 年以降約 16%の減少がみられる。これは NSW 州で最も顕著であり、約 43%の減少である。

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・学習者減少が顕著であるのは、小学校レベルであり、国全体として、プログラム数及び学習者数の約 21%が減少した。これには州によりばらつきがあり、ACT、NSW、Vic では減少が著しく、Qld、SA、WA、NT においては増加している。 ・セカンダリーでのコースは一般的にテキストベースである。言語的要素の導入は秩序立って行われているが、実際使用やスキルを磨く練習は限られている。文化・異文化間能力の開発のための方法は無秩序でその場しのぎのものが多い。 ・日本語プログラムでいったいどこまでを到達目標とするのかの合意が得られていない。現実的な目標の設定と条件、そしてそれに到達するための方法、それらを教師に徹底させるための働きかけが必要である。

さまざまな意味で、オーストラリアにおける初等、中等、高等教育各レベルでの日本語教育に暗雲が立ち込めており、東日本大震災、福島原発事故問題以降の日本経済のさらなる停滞も日本語教育への悪影響が予想されるのである。この点については、交流基金側からも厳しい見方が語られた。それでも日本に関心を持つ若者は多いのは事実であり、彼らのニーズと現況の日本語教育の形のミスマッチが存在すると考えられ、そこにどういうアプローチをするかが今後の課題になるのではないかと考えさせられた。

日本文化センターに向かう途中のハイドパークにて 国際交流基金シドニー日本文化センター清田とき子所長

(マッコ―リー大学) シドニーセンターから Wynyard駅に向かい、そこから電車で北方に約 30分、マッコ―リー大学駅で下車すると、Koyama Tomoko 先生が雨の中出迎えてくれた。駅の外はすぐにキャンパスである。建物の説明を受けながら、Japanese Studies のオフィスに向かう。小山先生の専門は筆者と同じく異文化間コミュニケーションであり、オーストラリアの日本語教育畑で異文化間コミュニケーションをしていることに強く関心を抱いた(イギリス系の教育内容に近いこの国では、異文化間コミュニケーションを専門とする教員はさほど多くない)。

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Asian Studiesの建物に着くと、多くの先生が揃って歓待して下さったのに驚かされた。Bryce Mio先生、チャワリーン サウェッタナン先生、名刺をいただかなかったが、中澤先生、キャサリン先生などである。さらにわざわざ私の訪問のためにパワーポイント資料を用意してくださっていた。それが内容的にたいへん面白かった。ここではいわゆる「日本人の日本語」を目標とするのではなく、異文化間コミュニケーション(理解)のための日本語を教えようとしているという。つまり、最近英語教育や社会言語学でいわれている World Englishes 的な発想なのだろうか。「変な日本語を使えば日本人から変に思われ、うまい日本語を使ったら使ったで、日本人とは同一視されないのであれば、オーストラリア人としての日本語を広めよう」ということのようである。もう少しこの部分をじっくりと聞きたかった。 さらに授業内容的にもこれまでの「日本で行われてきた日本語教育」から見直しが重ねられ、今では、市販のテキストの内容を精査しつつも、そのまま使用せず、オーストラリアの大学における日本語教育、異文化間コミュニケーション重視の日本語教育にあったものをプリントなどで実施しているそうだ。これには内容の精査、改訂などに時間と労力がかかるが、自分達の学生にあった内容の授業にできること、学年や担当教師によって違う教科書を使って接続がうまくいかなかったり、文法の呼び方や整理の仕方が異なったりという混乱を最小限にすることができるといったメリットもあるという。 授業内容を見ていないが、その教育方針は明確であり、オーストラリアにおける外国語教育、国際理解教育の方向性と合致しており、新しい方向性を示しており、たいへん興味深く、今後も定期的に訪れて、学ばせていただきたいと伝えた。 また Bryce 博士によれば、現在マッコーリー大学では、学生に半期以上の海外留学を奨励しており、提携校が不足しているので、ぜひ本学にも前向きかつ早急な検討をお願いできないか、との要請があったことを記しておく。 http://www.asianlang.mq.edu.au/japanese/

マッコ―リー大学構内 日本語科スタッフの方々

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ブライス博士によるコース説明 左嵜遥香さん:新築の図書館前にて (左嵜遥香さん) マッコーリー大学の日本語科でのミーティングの直後、東京外国語大学大学院修士課程で日本語教育学を修め、その後オーストラリアの中等教育機関での教員資格を得るために、マッコ―リー大学教育学部ディプロマコースで学んでいる左嵜さんと再会した。まだ 2学期の授業は始まっていないが、高校での教育実習に励んでいるとのこと。授業では教育心理学や哲学も学ばなければならず、1学期は大変苦労したが、やっと慣れたという。 現在オーストラリア人の夫と夫婦寮に入っているが、今週は旦那さんの両親も来ているとのことで、一緒にコリアンタウンに韓国料理を食べに出かけた。左嵜さんは英語も達者で、3人と堂々と渡りあっている様子が大変たくましく、これならば当地の高校でも、堂々と教えられるだろうとの印象を持った。

7 月 26 日 (シドニー大学) シドニー大学はシティー中心部からはバス 400 番台ならどれでも行ける(ということがわかるまでに 3人に聞く必要があった)。バスの乗車時間そのものは 10分程度で、その気になれば歩ける距離であった。 シドニー大学はさすがの一言である。景色の良い丘の上に荘厳な本館校舎が訪問者を迎え入れる。メルボルン大学が薄っぺらに思える。 Dr. Ansart Oliver(アンサール・オリビエ博士)は Brennan MacCallumという建物内の日本語科の一番奥にオフィスがあった。爽やかなシャツを着た博士はフランス出身。早稲田大学を経て、シドニー大学に 8年ほど前に着任したとのこと。18,19 世紀の日本の政治学、政治史が専門である。約 1 時間に渡って、シドニー大学の日本語、日本研究の現状、交換留学、東外大との交流協定の可能性、国際日本研究センターへの招待などを行った。

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① 本学の日本語科の問題は、大学自体が中国を向いてしまっていること、日本語学習者は初級レベルが 300人と多いが、ポップカルチャーには関心があっても、続ける者、大学院、特に博士課程に進んで研究者になろうとする者、伝統、歴史、古文、文語に感心のある者が少ないということなどである。その一方で、オーストラリアの大学自体に日本語日本研究のポジションが減ってしまっていることもあって、教員としても博士号を目指すことを進めにくい現状がある。ここ 2,3年に博士課程を修了した 3人はまだ就職できていない。 ②さらに学習者ではアジア系、特に中国人留学生が、点数稼ぎに初級を取ることが多く、それも問題と言える。 ③週に 4 時間程度のコンタクトアワーはヨーロッパ、アメリカの大学が、週に 10 時間程度と比べると半分以下であることも、上級者の生まれない理由でもあるだろう。 ④ シドニー大学の教員(10人)の特徴は日本語教育以外の日本研究を専門にしている者が多く、研究業績を毎年積み上げている active researcherが多いことである。他の学科では週に 6~8時間程度の授業担当が平均だが、日本語を始め語学科目担当者は9時間程度である。中国語学科で研究をしていない教員の中には 13 時間授業している者もいる。 ⑤交換留学で日本に行く者は減っている。それにはいくつかの理由があるが、日本からの留学生が少ないために不均衡が生じ、協定関係が維持できなくなる大学があること、成績が良くないと行けないのだが、がんばってトライする学生が減っていること、3年ほど前まで留学する学生には経済的補助を与えていたが、適正な使用をしない者もいてそれが中止され、学生の負担が増えたことなどが考えられる。しかし留学の機会が増えれば、潜在的希望者は少なくない。東京外国語大学と大学間協定が結べれば、双方の大学にとって、学生、教員双方にとっても発展が期待できる。 ⑥ご存じのように、オーストラリアの大学には個人研究費、旅費がないので、日本での調査には苦労している。国際日本研究センターでの発表や共同研究の機会が与えられれば、喜ばしいことで、同僚にそういう可能性があることを伝えておく。 シドニー大学は、やはり格式ある大学であり、大学自体(そして多くの研究者)は教育(特に言語教育)よりも研究を志向しているのだが、多くの学生は日本語を学びたい初級者であり、教員は専門外である日本語教育に追われる日々を送っているというのが、実情のようであった。これは日本語を学ぼうとする学生にとっても、日本研究を進めようとする大学教員にとっても、ある意味気の毒なことであると思わざるを得なかった。

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荘厳な造りのシドニー大学 アンサール博士の研究室にて 7777 月月月月 27272727 日日日日 (ニューサウスウェールズ大学) 宿の前の Hyde Parkから 377Cogee beach行のバスに乗り、途中の Randwickという街の Belmore Rd, opposite Arthur Stで降り、500メートルほど歩き、GATE9から大学に入った。 木下トムソン先生の研究室を訪ねた。先生とお会いするのは 10年ぶり位である。UNSWでも日本語教育事情は他大学同様大変厳しいようである。以下は聞き取りの一部である。 ・Artsの 41コースの中で日本語を専攻している学生数は英語、歴史、国際関係についで 4 番目に多い。 ・現在 1年生は 500人程度のエンロールがあり、講義は 250人クラスを 2つ行っている。しかしその後の減少率は他の語学と比べても高く、3年次に日本語を専門とする者は 30名程度、上級まで日本語をとっている者(他学科のものも含む)も 30名程度である。 ・テキストは Hatasa & Hatasa の Nakamaである。このテキストを使っている一つの理由は、ウェッブリソースが豊富であることだ。1年で 1冊を終わらせ、2年で初級が終わるのだが、ここでは 2年次を intermediateと呼んでいるが、恥ずかしい限りである。 ・日本に限らず、オーストラリアでも学生の質の低下は明らかであり、問題となっている。 ・初級を中心に学習者のほとんどはアジア系で留学生も多い。漢字圏、特に中国からの留学生は点が取りやすいとだけ考えて取る者は初級ではあまり漢字能力が関係ないことに後で気づき、後悔する場合もある。 ・教員は最多時(90年代か?)11人いたが、今年度 1名が退職し、現在 5名で行っている。

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・少数の教員が研究をしないでティーチングオンリーポジションとなってしまうと、日本語セクション自体が大学から低く見られてしまうことになるため、それを受け入れないように努力してきている。 ・ ARCグラントを得て、中途で日本語学習をやめてしまう学生の調査を行った。そこで明らかになって来たことは、自分が主専攻とする科目の制約から、日本語を続けることが難しくなるということである。中にはダブルディグリー専攻とする者もいるが、それはかなり負担となる。一方、各学部で近年盛んになってきたのは、international studies in BA (science)といったもので、これを取ると長く日本語が学べ、必ず半年から 1年間留学することが条件となる。その結果として、卒業まで 4年かかることになる。 ・本学の日本語教育の特徴は、「「「「実践実践実践実践コミュニティコミュニティコミュニティコミュニティ(communities of practice)(communities of practice)(communities of practice)(communities of practice)iiiiiiii」」」」という考え方である。250人の学生に講義を行っているだけでは学習の効果も実感できないし、動機付けも生まれない。そこで、居場所を見つけて交流できる仕組みを作り上げている。 その背景にある考え方は、(ネウストプニーが広めた)日本人ビジターセッションでは、コンタクト状況は確かに作り出せるが、今の言語学習の考え方では、日本人ネイティブは学習者のモデルにならない、ということである。そこで先輩を活用し、near peer role modelとしての機能を期待しているのである。 ・初級の講義には先輩にも参加してもらい、刺激を与えてもらったり、sempai sessionとして junior senseiという呼び名で授業手伝いをしてもらったりして、1年生のチュートリアルを手伝わせ、それをプロジェクトの点にカウントするのである。これによって日本語プログラム全体が実践コミュニティとして機能するようにさせることができる。 ・さらに最近同窓生の facebookを作成し、日本語で書かせて、学年を超えたつながりあう日本語コミュニティを目指しているiii。 ・ 近々学部主体で Capstoneivというコースを作ることになった。これは 3年生の 2学期、つまり最終段階で、日本語レベルが異なる学生全員が同じ「日本研究」という科目を取り、2年生にも協力させてビデオ取りをしたり、レポートを書かせたりし、それを Maharavというソフトを使って、e-portfolioを作らせ、自分がどこまでできるようになったかを第三者(就職希望先)にも見せられる履歴書代りにすることを目指している。これはインターネット上にアップされており、本人が見せたい人に 許可をすることができるようになっている。 ・(東京外国語大学との提携協定の可能性について)十分にある。日本留学の枠が不足していて困っている。 ・(SS プログラムについて)昨年から立命館のウィンタープログラムに何人か参加しているが、もし可能性があればぜひ知らせて欲しい。 「実践コミュニティを通しての日本語教育」の試みはたいへん興味深いし、今後の日本国外での日本語教育の在り方の一つとして、注目すべき方向性と考えるべきであろ

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う。さらに、方法は異なるが、マッコ―リー大学で試行している異文化間コミュニケーションとしての日本語教育とも、大きな方向性では一致しているとも言え、オーストラリアにおける日本語教育の現状と未来の中に光明を見出した気になった。 なおご著書論文を 3 本いただいたので、そのタイトルを挙げておきたい。必要であれば報告者に請求願いたい。 Thomson, Chihiro K., ‘A Classroom Without Walls: The Future of Japanese Language Education in Australia’, Japanese Studies, 28:3 (2008): 317-327 Thomson, Chihiro K., ‘Who Is To Say ‘Your Japanese Is Incorrect’? Reflection on ‘Correct’ Japanese Usages by Learners of Japanese’, Japanese Studies, 30:3 (2010): 428-441 トムソン木下千尋 (2010)「オーストラリアの日本語学習者像を探る」『オーストラリア研究紀要』36:157-170

ニューサウスウェールズ大学ゲート 9 アーツ・アンド・サイエンスビル (西シドニー大学) Liu 博士とは渡豪以前には連絡が取れず、面会の約束ができたのはシドニーに着いてからであった。7月 27日の午後、3 時過ぎに Liu 博士を訪ねる予定を立てて、UNSWを2 時過ぎに出ることにした。しかしセントラル駅に着いたのが 2 時半過ぎ、チケットを買ってホームに向かうと電車は行ったところであった。次の電車は 25分後、その電車で終点の駅まで行き、そこでまたバスを待ち、大学に向かうとどう考えても大学に着くのが 4 時前後になってしまう。そこで Liu 博士に電話を入れ、謝罪と共に遅れることを伝えると、どうしても 4 時半までに帰る必要があるとのこと。翌日はどうかと尋ねたが、1 日会議が入っているということで、訪問は残念ながら中止となってしまった。やはり中心地から距離のある西シドニー大学への訪問には 1 日を確保しておかなければいけなかったということがわかった。電話でお話をした限り、Liu 博士はミ

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ーティングが実現しなかったことを大変気にしておられるようであったので、次回はなんとか最初にアレンジしたいと思う。 わずか 4 日間の滞在であったが、シドニー周辺の 4 機関を巡り、シドニーの大学における日本語教育の問題点と新たな方向性について、目の当たりにし、様々なことを考えさせられた。ご協力いただいた先生方に深く感謝申し上げるとともに、今後もぜひ国際日本研究センターの活動にご協力いただけるよう連絡を取り合っていきたい。

i 本報告書全文は、以下のサイトで閲覧可能である。 http://www.deewr.gov.au/Schooling/NALSSP/Pages/Resources.aspx また本報告書は筆者が抄訳し、「東京外国語大学大学院言語応用課程 GP 報告集」に掲載されているので、合わせて参照されたい。 ii この概念は、Lave & Wenger (1991) Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation. Cambridge: Cambridge University Press. によるものである。そこでは、伝統的な徒弟制度における学習はその多くが、職人や上級徒弟間の相互交流によって行われていると分析し、「学習は実践コミュニティへの参加の過程である」とされている。 iii この部分についての理論と実践については、木下トムソン著「学習者主体の日本語教育」ココ出版 に詳しいとのこと。 iv 冠石、頂点、最高点の意。ここでは、「最高学年の総仕上げ」ほどの意味か。 v ニュージーランドで開発されたオープンソースの e-portfolio (インターネット上のポートフォリオ)作成ソフトである。http://mahara.org/