Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
119
2.4. 横浜市の基本構想案による国際園芸博覧会開催によってもたらされる効果に関する調査・分析
2.4.1. 国際園芸博覧会による花き需要等への影響
⼤阪花の万博のインパクト整理/評価
アジアで初めて開催された国際園芸家協会(AIPH)の国際園芸博覧会で、博覧会国際事務局 (BIE) 認定の国際博覧会でもある。会場⾯積は約 140ha で、略称は「花の万博」「花博」「EXPO'90」。「花と緑と⼈間⽣活のかかわりをとらえ 21 世紀へ向けて潤いのある豊かな社会の創造をめざす」をテーマとし、⽇本を含む 83 カ国と 55の国際機関、212 企業・団体が参加した。総来場者数は 2312 万 6934 名で、特別博覧会史上最⾼を記録した。
⼤阪花博は「ガーデニングブーム」の起点
⼤阪花博(1990 年開催)は、その後に起こった「ガーデニングブーム」の起点となったと考えられる。⼤阪花博後のガーデニングの広がり(1990-2002)は、花壇苗需要の増加に⼤きなインパクトを与えた。その⽣産量は 1989 年の 5 千 5 百万株から2002 年の 9 億株と 12 年で 16 倍に増加した。ガーデニングブームは、以下の4段階があったとされている。
(1) 萌芽期︓⼤阪花博の開催による押し上げ(1990-92) (2) 浸透期︓メディアが注⽬しガーデニング特集が急増(1993 以降) (3) ブーム期(1996-2000) (4) 成熟期︓ピーク(2002)から緩やかな減少〜現在
図 40 花壇苗の出荷量と作付⾯積、⼤阪花博以後のガーデニングブームの推移
0
200400600800
1000120014001600
18002000
0
100200300400
500600700800
9001,000
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
2016
���� ��� ������
71
����
��� ����
9
������������ �
9 71
71
120
ブームの盛り上がりは各種メデイアによる「園芸特集」
カーデニングブームの経緯から、ブームの盛り上がりは各種メデイアが「園芸」を積極的に取り上げたことによる効果が極めて⼤きかったとの指摘がなされている。複数の研究論⽂において、⼥性インテリア雑誌が、1993 年以降に英国⾵イングリッシュガーデニングを取り上げたことが、ガーデニングブームの誘因となったとの⾒⽅をしている 。また、1995 年に英国のチャールズ皇太⼦の庭が紹介され、⼿袋を泥だらけにして、庭造りに励む皇太⼦の姿はスクープものである旨報道し、ブームのきっかけとなったとしている。⼤阪花博は、注⽬を集める起点ではあったが、ブームそのものが拡⼤していったのは花博終了後のメディアの動きであった。
横浜国際園芸博覧会への教訓〜望まれる早期からの戦略的メディア広報
横浜国際園芸博覧会では、開催準備期間を含めた早期からの戦略的・計画的なメディアの活⽤が望まれる。⼤阪花博の経験が⽰すのは、「メディアは強⼒だが効果が⾒えるまで時間が必要」ということである。⼤阪花の万博からガーデニングブームへの流れが本格化するタイミングまでは、3〜7 年のタイムラグがある。先に挙げた通り、花博開催後の 1993 年以降にメディアが取り上げたことから広がり始めた。花壇苗の⽣産がもっとも⼤きく拡⼤したのは、1997 年に「ガーデニング」が新語・流⾏語⼤賞に選ばれた後である。
またインターネットの普及とネットメディアの影響⼒の拡⼤についても念頭に置く必要がある。とりわけ、多様化する消費⾏動へのネットメディアの浸透⼒は⼤きい。また、紙媒体の出版と放送という、発信型の「マスメディア」が中⼼であった 1990年代とは異なり、ネットメディアでは双⽅向の情報の流れが重視される。主催者からの「トップダウン」な情報提供だけでは効果が上がらないことが予想される。
以上の点から、横浜国際園芸博覧会では以下の点に留意しつつメディア連携を検討することが望ましい。
準備期間からの戦略的・計画的な連携︓横浜国際園芸博においては、開催準備期間を含めた早期からの戦略的・計画的なメディアとの連携・活⽤が望まれる。その際には、インターネットの普及とネットメディアが浸透する現在の状況を⼗分に⽣かす⽅法をとることが望ましい。
⾃由なアイデアと発信を促す︓主催者側は AIPH などが定めた基本となるガイドラインを⽰す⼀⽅で、実際に情報発信する⼈たちにはできる限り注⽂をつけない、⾃由なアイデアと発信を促す。消費の変化と同様に、個別化、多様化、細分化が進んでいることから、連携はできるだけ幅広く、かつ、多様で⾃由な発信を後押しすることが望ましい。
121
これまでに開催された国際園芸博覧会の概要
これまでに、AIPH の公認を受けて⽇本で開催された園芸博は三回あった。その概要は以下の表にまとめた通りであった。
これまでの最⼤規模のものは、1990 年に⼤阪で開催された「花の万博」であった。今回、2027 年開催を⽬指している横浜国際園芸博覧会は、⼤阪の「花博」と同じ最⾼ランクの A1 クラスで開催される⾒込みである。
表 28 過去に⽇本で開催された国際園芸博 花の万博、花博、EXPO'90 淡路花博 2000 浜名湖花博 2004
正式名称 国際花と緑の博覧会 The International Garden and Greenery Exposition, Osaka, Japan, 1990
ジャパンフローラ 2000 しずおか国際園芸博覧会「パシフィックフローラ 2004」、「第 21回全国都市緑化しずおかフェア」
開催時期 1990 年 4 ⽉ 1 ⽇〜9 ⽉ 30⽇ (183 ⽇間)
2000 年 3 ⽉ 18 ⽇〜9 ⽉ 17 ⽇ (184 ⽇間)
2004 年 4 ⽉ 8 ⽇〜10 ⽉ 11 ⽇ (187 ⽇間)
博覧会種別
国際園芸博覧会 (A1 クラス)
A2B1 A2B1
テーマ 「花と緑と⼈間⽣活のかかわりをとらえ 21 世紀へ向けて潤いのある豊かな社会の創造をめざす」
「⼈と⾃然のコミュニケーション」
「花・緑・⽔~新たな暮らしの創造~」
開場時間 4 ⽉ 1 ⽇〜4 ⽉ 26 ⽇︓午前9 時 30 分〜午後 10 時 4 ⽉ 27 ⽇〜9 ⽉ 30 ⽇︓午前9 時〜午後 10 時 30 分
9 時 30 分〜18 時(7 ⽉ 1 ⽇〜9⽉ 3 ⽇は 21 時 30 分まで)
(データなし)
会場 鶴⾒緑地 (⼤阪府⼤阪市鶴⾒区・守⼝市)⼤阪都⼼から東へ約 8km。 ⾯積約 140ha
兵庫県淡路島(淡路町・東浦町)、主会場は国営明⽯海峡公園(淡路地区)、淡路夢舞台など ⾯積約 96ha
静岡県浜松市浜名湖ガーデンパーク ⾯積約 56ha 博覧会終了後に再整備をされたのち、2005 年 6 ⽉ 5 ⽇に博覧会の⼀部を残す形で静岡県営の植物園型都市公園浜名湖ガーデンパークが供⽤開始。
⼟地利⽤の変化と思想
1969 年に⼤阪市内の廃棄物処分場の⽤途が付与され、1973 年度までその機能を有した⼟地に整備された公園緑地。それが、⼤阪花博の会場⽤地。
跡地の公園開発計画と⼀体化して実施。構想が浮上した当初から,1992 年に策定され た淡路公園島構想をベース。⼟砂採取跡地が⼤半を占めている北部荒地の⾃然回復と公園化が計画された。
浜名湖を埋め⽴て造成した平坦な農地。この⼟地は,1994 年,静岡県内での国際園芸博覧会開催について検討され始めた 2 年後に候補地として決定しており,貴重な⽔環境を⽣かした新たな県営公園「浜名湖ガーデンパーク」として開催後も継承されることが当初から構想されていた
122
花の万博、花博、EXPO'90 淡路花博 2000 浜名湖花博 2004
⼊場料 ⼤⼈普通⼊場券 2,990 円 中⼈普通⼊場券 1,550 円 (1990 年 4 ⽉ 1 ⽇現在で満15 歳以上 18 歳未満の者) ⼩⼈普通⼊場券 820 円 ⼤⼈特別割引⼊場券 1,550円(⾝障者のみ) すべて消費税(当時は税率3%)込。 夜間⼊場料は、上記の半額。
⼤⼈ 2,900 円 シルバー2,000 円 ⾼校⽣ 1,500 円 ⼩・中学⽣ 800 円 幼児 400 円
(データなし)
主催 財団法⼈国際花と緑の博覧会協会
国際園芸・造園博「ジャパンフローラ 2000 ⽇本委員会」、財団法⼈夢の架け橋記念事業協会
静岡県浜松市、静岡国際園芸博協会
出展数 83 カ国(⽇本を含む)と 55の国際機関 212 企業・団体
(資料なし) 20 カ国超
来場者数 2,313 万⼈ 695 万⼈ 545 万⼈ 花の量 350 万株 150 万株 500 万株 最寄駅 ⼤阪市営地下鉄鶴⾒緑地駅。
会場への交通⼿段として、京橋駅と鶴⾒緑地駅を結ぶ⼤阪 市営地 下鉄鶴⾒ 緑地 線(現・⼤阪メトロ⻑堀鶴⾒緑地線)が建設された。
(該当せず) (該当せず)
直通バス ⼤阪国際空港、JR 新⼤阪駅、JR ⼤阪駅、JR 茨⽊駅、阪急南茨⽊駅、京阪守⼝市駅、近鉄荒本駅の 7 箇所から直通シャトルバス
(該当せず) シャトルバス - 浜松駅、舞阪駅、清⽔駅、静岡駅、豊橋駅、名鉄バスセンター、岐⾩駅 ⽔上バス - 弁天島海浜公園、浜名湖今切パーク海湖館、浜名湖パルパルマリンゲート、浜名湖レークサイドプラザ
出所:「大阪国際花と緑の博覧会」を中心とした国際園芸博覧会に伴う土地利用変化とその背景、ランドスケープ研究 76 (5),
2013。井原 縁、奈良県立大学, 地域創造学部, 教授。
123
2.4.2. 横浜市の基本構想案による国際園芸博覧会開催がもたらす効果
経済波及効果の試算
横浜市の基本構想案による国際園芸博覧会開催によってもたらされる効果のうち、新規追加需要によってもたらされる経済効果を試算した。試算結果は、以下に⽰す通りである。
出所: IDCJ による一次波及効果の試算。新規需要の大きさについては横浜市基本構想案の想定を使用。経済波及効果は
2015 年産業連関表統合大分類(37 部門)と横浜市産業連関表で算出。
78 0 1• a 68• 68
0 1•
0 1• a 68• 68
0 1
• 9• h (
) ,
) ,
• (• )
) , ,
�����) , ,
�����
,
)
,
)()
3 , 9
24( ) ( )
) , , ) , ,
)
(
(1,400 1,470
421 20
654
537 (
537 )(
7 77 7
7 7%
9 4
6
6
6 6
6
2 01 9 4 5 8 7
6 6 6
/0 , F1 % % 1
5 67 2F a 2
/0 , 4F 1
1 567 2
()
0 1 ()
124
その他の効果〜⼟地利⽤の変化
国際園芸博覧会のその他の効果として、会場⽤地の⼟地利⽤の変化が挙げられる。これまでに⾏われた 3 つの国際園芸博覧会における実績と、横浜国際園芸博覧会で期待される⼟地利⽤の変化は以下の通りである。
(1)〜(3)についての引用資料:「大阪国際花と緑の博覧会」を中心とした国際園芸博覧会に伴う土地利用変化とその背景、ラン
ドスケープ研究 76 (5),2013。井原 縁、奈良県立大学, 地域創造学部, 教授。
(4) 出典:横浜市ホームページ https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-
kankyo/toshiseibi/jokyo/sonota/kamiseya/kamiseysa.html (2019 年 9 月 18 日閲覧
) ( 021
3 021
A ) ( 021
• •
h 6 7 51 973 97
• 5
• 5 4
•• 5•
•• 57• 5• 57a7
0 5
5
9 B
A
•
• 5 4
82
• 0 440 4h 0 4
• a 81
A 2 0 1 (
) 4 7