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平成27年度未利用エネルギー等活用調査 (発電用火力設備に関する保安技術等動向調査) 報告書 平成28年3月 みずほ情報総研株式会社

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平成27年度未利用エネルギー等活用調査

(発電用火力設備に関する保安技術等動向調査)

報告書

平成28年3月

みずほ情報総研株式会社

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目次

1 はじめに .......................................................................................................................... 1

2 調査目的及び調査内容 .................................................................................................... 2

2.1 調査の目的 ............................................................................................................... 2

2.2 調査内容 ................................................................................................................... 2

3 実施体制及び調査実施工程 ............................................................................................. 4

3.1 実施体制 ................................................................................................................... 4

3.2 調査実施工程............................................................................................................ 6

4 日本、米国及び欧州の規格の比較 .................................................................................. 7

4.1 調査概要 ................................................................................................................... 7

4.2 JSME 規格及び EN 規格の主な相違点 ................................................................... 8

4.3 JSME 規格、ASME 規格(SecⅧ div2)及び EN 規格の主な相違点 ................ 15

5 小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する動向調査 ........................................ 22

5.1 調査概要 ................................................................................................................. 22

5.2 バイオマスを活用した発電設備の概要 ................................................................. 23

5.3 小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する事例等の調査 ......................... 26

5.3.1 国内調査.......................................................................................................... 26

5.3.2 海外調査.......................................................................................................... 36

5.4 欧州の発電設備設計に係る規制動向 ..................................................................... 64

5.4.1 欧州の技術基準の体系 .................................................................................... 64

5.4.2 欧州圧力機器指令の概要 ................................................................................ 66

5.4.3 欧州の発電設備における設計 ......................................................................... 74

5.4.4 構造設計の相違点 ........................................................................................... 80

5.4.5 廃熱ボイラーの適用について ......................................................................... 82

5.4.6 安全装置に求められる技術基準 ..................................................................... 84

5.4.7 バイオマスボイラー等の発電設備の事故事例と対策 .................................... 85

5.5 欧州の保安規制に係る動向調査 ............................................................................ 86

5.5.1 発電設備の遠隔監視等の運転条件 ................................................................. 86

5.5.2 定期検査.......................................................................................................... 88

5.5.3 管理者資格 ...................................................................................................... 89

6 欧州の発電設備の技術基準適合性について ................................................................. 91

6.1 検討概要 ................................................................................................................. 91

6.2 欧州のバイオマスボイラー等の発電設備に係る技術基準適合性の実態調査 ....... 92

6.2.1 バイオマスボイラー ....................................................................................... 93

6.2.2 蒸気タービン ................................................................................................. 111

6.2.3 往復機関......................................................................................................... 118

6.2.4 バイオマスガスを利用した発電設備 ............................................................ 125

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ii

6.3 欧州の発電設備の技術基準に関する評価結果の整理及び課題抽出 .................... 144

7 おわりに ...................................................................................................................... 148

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1 はじめに

みずほ情報総研株式会社は、平成 27 年 10 月 20 日に、経済産業省商務情報政策局商務流

通保安グループ電力安全課より「平成27年度未利用エネルギー等活用調査(発電用火力

設備に関する保安技術等動向調査)」を受託し、「発電用火力設備に関する保安技術等動向

調査委員会」を立ち上げ、当該委員会のご意見を踏まえつつ、調査・検討を行った。

本報告書は、その調査・検討結果を取りまとめたものである。

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2 調査目的及び調査内容

2.1 調査の目的

我が国の火力発電設備については、「発電用火力設備に関する技術基準を定める省令」(以

下、「火技省令」という。)を満たすよう、維持、管理、運用することが求められている。

近年、国内外で高効率な発電用火力設備が開発されているが、電気事業制度改革や固定

価格買取制度(以下、「FIT」という。)等の活用により、我が国で使用されるバイオマス発

電設備の導入が増え、残材やバーク材等といった低品質なバイオマス燃料も利用可能な欧

州で製造されたバイオマス発電設備に対するニーズがあるが、材料、設計、安全率等が異

なるため、電気事業法で定める技術的要件を満たす仕様になっておらず、国内への導入の

障壁になっているといった文献も存在する。

一方で、欧州で製造されたバイオマス発電設備の中には、必ずしも輸出を前提とした設

計にはなっておらず、自国法規に遵守していることをもって十分な保安水準を確保してい

るといった評価を下すには技術的根拠が乏しく、また、国の委託事業において安全率の国

際整合化について調査・検討を行っているが、欧州統一規格(以下、「EN 規格」という。)

が採用している安全率2.4を取り入れても問題ないという報告はなされていない。

そこで、科学的かつ合理的な規制の検討に向けて、一定の保安水準を担保しつつ、バイ

オマス発電を初めとした高効率火力を活用した設備の設置の促進等を図るべく、高効率火

力発電設備に関する規制の合理化のため、欧州における保安技術等動向調査を行うことを

目的とする。

2.2 調査内容

上記調査目的を踏まえ、以下の (1) から (3) の項目について調査を実施した。

(1) 海外規格の相違点等の比較分析

(2) 小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する動向調査

(3) 欧州の発電設備の技術基準適合性の評価検討及び課題抽出

(1) 海外規格の相違点等の比較分析

EN 規格と安全率 3.5 を取り入れている米国機械学会規格(以下、「ASME 規格」という。)

の技術的要件等に関する相違点等について比較分析を行い、整理した。

(2) 小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する動向調査

欧州で実施又は検討されている小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する事例及

び適用されている規制内容について調査を実施した。また、欧州で普及している高分子有

機媒体を蒸発させて利用する有機ランキンサイクルシステム(以下、「ORC」という。)で

は、例えば、電気事業法とは異なり常時監視を不要としている事例が存在することから、

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欧州の保安規制ではどのようにして安全対策を講じているのかについて調査した。また、

欧州における熱源が排熱であるボイラーにおいて、どのように安全性を担保しているのか

について調査した。

(3) 欧州の発電設備の技術基準適合性の評価検討及び課題抽出

(2)において調査対象として抽出した欧州の小規模バイオマスボイラー及び ORC 等の発

電設備について、(1)の整理結果を踏まえながら、材料、設計及び安全率等が異なる当該設

備を日本国内に輸入しても火技省令及び発電用火力設備の技術基準の解釈(以下「火技解

釈」という。)で定める技術的要件を担保しているかについて評価・検討を行い、課題抽出

を行った。

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3 実施体制及び調査実施工程

3.1 実施体制

本事業を推進するため、エネルギーシステム等の分野における研究者や有識者等から構

成される「発電用火力設備に関する保安技術等動向調査委員会」を設置した。

本事業は、文献調査及びヒアリング調査を実施し、その結果を踏まえて、本委員会にお

いて計 3 回評価・検討を行った。

なお、本事業における実施体制を図 3.1 に、委員等名簿を表 3.1 に示す。

図 3.1 本事業の実施体制

経済産業省

商務情報政策局

商務流通保安グループ 電力安全課

発電用火力設備に関する保安技術等動向調査委員会

みずほ情報総研株式会社

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表 3.1 「発電用火力設備に関する保安技術等動向調査委員会」

委員等名簿(順不同、敬称略)

委員長

天野 嘉春 早稲田大学 基幹理工学部 教授

委員

西口 磯春 神奈川工科大学 創造工学部 自動車システム開発工学科

教授

福田 隆文 長岡技術科学大学 大学院技術経営研究科 システム安全

専攻 教授

木村 一弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構 環境・エネルギー材

料部門 材料信頼性評価ユニット長

竹村 文男 国立研究開発法人産業技術総合研究所 省エネルギー研究

部門 副研究部門長

磯村 俊雄 高圧ガス保安協会 機器検査事業部

熊崎 実 一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会 会長

筑波大学 名誉教授

中井 裕丈 一般財団法人発電設備技術検査協会 検査業務室 技術グル

ープリーダー

沼田 明 一般社団法人日本内燃力発電設備協会 技術部長

須藤 浩人 一般社団法人日本ボイラ協会 技術普及部 次長

杉田 吉広 テュフ ラインランド ジャパン株式会社 産業サービス部

部長

久木 裕 株式会社バイオマスアグリゲーション 代表取締役

オブザーバ

野田 悦朗 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課 業務第2係主任

(平成 27 年 12 月 31 日まで)

国澤 幸平 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課 機械班

(平成 28 年 1 月 1 日より)

岡本 利彦 株式会社トモエテクノ 代表取締役

中川 秀樹 三洋貿易株式会社 執行役員

経済産業省

堀 宏行 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ

電力安全課 課長補佐(火力担当)

高橋 建多 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ

電力安全課 火力係長

潰瀧 孟 経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ

電力安全課 電気保安企画係

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3.2 調査実施工程

本事業の実施工程を図 3.2 に示す。

図 3.2 本事業の実施工程

国内における調査

諸外国における調査

欧州における発電設備の火技省令・火技解釈への適合調査

国内における調査

諸外国における調査

欧州における発電設備の火技省令・火技解釈への適合調査

(3)海外規格の相違点等の比較分析

文献調査

海外規格の相違点等の比較分析

(4)報告書の作成

報告書の作成

▲ ▲ ▲

2月 3月

平成28年作業項目

10月

平成27年

委員会の運営

11月 12月 1月

(1)小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する動向調査・検討

(2)有機ランキンサイクルに関する動向調査・検討

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4 日本、米国及び欧州の規格の比較

4.1 調査概要

本事業においては、欧州の小規模バイオマスボイラー等の発電設備を対象に、電気事業

法で定める技術的要件を満たしているかどうかについて、調査を実施した。調査を実施す

るにあたり、日本においても ASME 規格に準じた※日本機械学会規格(以下、「JSME 規格」

という。)がエンドースされたことから、JSME 規格と、EN 規格の対比を行い、その相違

点について、比較分析を行った。

また、今後 ASME 規格で設計された発電設備が日本に輸入される機会が増えるものと思

われる。それら輸入品に向け、ASME 規格においても欧州規格と同等の安全率である、

ASME Boiler and Pressure Vessel Code-Section.Ⅷ Div.2 Pressure Vessels(以下、「ASME

SecⅧ div2」という。)及び EN 規格と、JSME 規格との対比を行い、その主要な相違点に

ついて比較分析を行った。

本章における EN 規格としては、以下の規格について分析を実施した。また参考に欧州

圧力機器指令(Directive 97/23/EC Pressure Equipment Directive、以下「PED」という。)

についても整理した。

・シェルボイラー規格 EN12953(以下、「EN12953」という。)

・火なし圧力容器(Unfired Pressure. Vessels)規格 EN13445(以下、「EN13445」と

いう。)

※JSME 規格においては、動力ボイラーの ASME 規格である ASME Boiler and Pressure

Vessel Code-Sec.1 Power Boilers(以下、「ASME SecⅠ」という。)及び圧力容器規格の

ASME 規格である ASME Boiler and Pressure Vessel Code Section Ⅷ Division1

Pressure Vessels(以下、「ASME SecⅧ div1」という。)に準じている。

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4.2 JSME 規格及び EN 規格の主な相違点

表 4.1 に JSME 規格及び EN 規格の比較を示す。

また以下に、JSME 規格及び EN 規格における設計手法等の相違点について整理する。

① 耐圧設計

· JSME 規格においては、現行の火技解釈と同様に、0MPa を超える圧力を受ける部

分を耐圧設計の対象としている。

· EN 規格では 0.05MPa を超える圧力を適用範囲としている。

· 今後、EN 規格で設計された設備については、0MPa を超える圧力を受ける部分につ

いて耐圧設計を行われた設備であるかどうか確認する必要がある。

② 材料の種類

· JSME 規格は、JIS 規格材料、火技解釈材料及び ASME 材料を規定している。

· PED では、EN 規格等の整合規格において規定された材料、「European Approval of

Materials」に規定されている材料又は公認検査機関によって PED 相当の要求を満

たすと認定されている材料等を活用することが可能である。しかし EN 規格材料に

おいては、材料の化学的成分や求めている降伏応力が JIS規格材料と異なっている。

そのため、欧州の設備を日本国内に輸入する際は、適用する材料が、「安全な化学的

成分及び機械的強度を有するもの」であることを示す必要がある。そのため、適用

している材料に関する規格とそれに相当する日本の規格を把握し、化学的成分の確

認及びミルシートを活用した機械的強度の把握を行い、JSME 規格で規定している

基準を満たすかどうかを示す必要がある。

(火技省令:第五条)

容器及び管の耐圧部分に使用する材料は、最高使用温度において材料に及ぼす化学的及び

物理的影響に対し、安全な化学的成分及び機械的強度を有するものではなければならない。

(火技解釈:第2条)

省令第5条に規定する「安全な化学的成分及び機械的強度を有するもの」とは、溶接性、

引張強さ、延性、靱性及び硬度等に優れたものをいい、別表第1-1(鉄鋼材料)及び別

表第 2 に記載されている材料はこれらを満足するものと解釈される。

③ 許容応力

· JSME 規格においては、許容応力として実質的に引張強さの 1/3.5 の値が用いられて

いる。

· EN 規格では、許容応力として実質的に降伏点の 1/1.5 の値が用いられている。ただ

し、ただし、EN 規格においては、EN12953 に詳細な設計ルールの場合に適用する

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旨の注意書きがある。

· オーステナイトステンレス鋼においては、許容応力は同等程度となる可能性がある

が、フェライト鋼では、EN 規格での許容応力が大きくなる傾向にあるものと思われ

る。

· 以上のことから、EN 規格を用いた設備については、日本における許容応力を用いた

部材厚さ設計を行い、日本での基準を満たしているかどうか確認する必要がある。

④ 部材厚さの規定

· JSME 規格及び EN 規格では、簡易式による部材厚さの算定式が明記されており、

これが用いられているものと思われる。

⑤ 疲労解析

· JSME 規格及び EN12953 では、疲労解析の規定はない。

· EN13445 では疲労解析は要求事項となっている。

· EN13445 では、小さい安全率を適用することが可能な基準であるが、安全性を担保

するための方法として、疲労解析を要求しているものと推察される。

⑥ 溶接継手

· 溶接継手について、溶接継手の非破壊試験の方法、溶接継手の種類、溶接後熱処理

方法等において、日本国内の規定を満たしているか確認する必要がある。

⑦ 耐圧試験圧力

· JSME 規格においては、設計圧力の 1.3 倍の試験圧力である。

· EN 規格では、設計圧力の 1.43 倍と最大許容温度における圧力の 1.25 倍の大きい値

である。

· 上記に示す耐圧試験の考え方は、過剰な圧力により、構造物が塑性崩壊を起こさな

い適切な圧力で試験を行うためにも、単純な荷重値の比較とはならないことに留意

する必要がある。

⑧ 溶接士及び非破壊試験検査員の資格

· 米国、日本及び欧州では、溶接士及び非破壊検査員の資格は異なるものの、それぞ

れの国において、資格が必要であることは、明記されている。

⑨ 評価手法

· 欧州においては、PED に基づく評価モジュールが存在する。電気事業法では、これ

らの評価システムは存在しないが、事業者が提出する工事計画の届出が必要となり、

この中においては、必要事項について文書化する必要がある。

· 日本国内に輸入する場合は、電気事業法に基づく工事計画で必要となる項目につい

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て、製造者が事業者に情報提供を行う必要がある。

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表 4.1 JSME 規格及び EN 規格の比較

項 目 JSME 規格 EN 規格 ご参考

欧州圧力機器指令

ASME SecⅠ及び ASME Sec

Ⅷ div1 に準じた規格 EN12953-2011 EN13445:2009 PED 97/23/EC

圧力範囲

0MPa を超える圧力 0.05MPa を超える範囲、上限

についての制限はない

(加えて容量 2L 以上、110℃

以上の最大設計温度)

0.05MPa を超える圧力、上限に

ついての制限はない

0.05MPa を超える圧力、上限

についての制限はない

温度範囲 クリープ温度域を含む クリープ温度域を含む クリープ温度域を含む 温度領域における適用外範囲

はない

定量的な制限についてはクリ

ープ温度未満で与えられ、クリ

ープ温度域について定量的制

限はない

材料の種類 鉄鋼材料及び非鉄金属材料

で、具体的には、JIS 規格材料

(鉄鋼材、非鉄鋼材)、火技解

釈材料及び ASME 規格材料

(鉄鋼材、非鉄材)等

EN10028、EN10216、EN102

17、EN10222 等に規定されて

いる材料である、P235GH、

P235 TR1 等の適用を推奨

欧州で規定されていない材料

の場合は、欧州材料データシ

ート(EMDS)が必要

鉄鋼材料並びに Al 及び Al 合金 EN 規格等の整合規格におい

て規定された材料、「European

Approval of Materials」に規

定されている材料又は公認検

査機関によって PED相当の要

求を満たすと認定されている

材料等

許容引張応力

(鉄鋼材料でクリープ未満の場

合)

σu/20: 材料の室温での引張強

σu/t :材料の設計温度での引張

強さ

σy/t :材料の設計温度での降伏

min (σu/t

3.5;σy/t

1.5) min (

σu/20

2.4;σy/t

1.5)

※詳細な設計ルールに基づく

場合との注意書きあり

フェライト鋼の場合

min (σu/20

2.4;σy/t

1.5)

A.フェライト鋼:

min (σu/20

2.4;σy/t

1.5)

B.オーステナイト鋼:

1.破断伸び率 30%超の場合

σy/t

1.5

2.破断伸び率 35%超の場合

min (σu/t

3;

σy/t

1.2)

.非合金、低合金及びアルミ等

について別途規定あり

材料の最大厚さの制限 制限なし(材料規格による) 制限なし 試験グループ及び適用材料に

応じて最大厚さを制限

例)炭素鋼の場合

試験グループ 1:

制限なし

試験グループ 2:

50mm

試験グループ 3:

50mm

試験グループ 4:

12mm

制限なし

最小部材厚さ 6.35mm 径が 1000mm 以上の場合(低

圧ボイラーを除く):6mm

径が 1000nn 未満の場合及び

低圧ボイラー:4mm

規定なし 規定なし

材料衝撃試験規定

σu:材料の規定最小引張強さ

1) 衝撃試験は強制要求

ただし、材料の種類と最低設

計金属温度に応じて衝撃試験

の免除を規定

2) 評価基準は板厚及び材料

強度に応じた衝撃吸収エネル

ギー

ただし、高強度鋼及びステン

レス鋼について横膨出

3)試験温度は原則最低設計金

属温度に同じ

EN288-3:1992 に従う

試験見本の靱性は base metal

の横靱性を下回ってはいけな

1) 衝撃試験は強制要求

防止規定として、経験則による

方法、経験則と破壊力学の組み

合わせ、破壊力学による方法の

3 方法を規定

2) 評価基準

フェライト鋼の場合

27J 40J⁄

3) 経験則による方法の場合は、

試験温度は最低設計温度に同

経験則と破壊力学の組み合わ

せによる場合、板厚と最低設計

温度を用いて線図より試験温

度を決定

鉄の延性要求において、衝撃試

験に関する要求があり、通常の

ISO-V notch 試験において、

20℃以下かつ運用最低温度以

下の温度において衝撃吸収エ

ネルギー27J 以上が要求

また、鉄には 14%以上の破断

伸び率が要求

耐圧試験圧力

P:設計圧力

t:板厚

c:腐れしろ

σt σd⁄ :許容応力の温度補正

1.5Pσt

σd

max (1.43P; 1.25Pσt

σd)

1) 試験グループ 1,2,3

max (1.43P; 1.25Pσt

σd)

2) 試験グループ 4

炭素鋼又はオーステナイ

ト系ステンレス鋼で試験

圧力を区分

max (1.43P; 1.25Pσt

σd)

耐圧試験時の制限

Pm:一次一般膜応力

Pb:一次一般曲げ応力

σy:材料の降伏点

規定なし 規定なし 水圧試験温度で応力は0.95σy

(試験グループ 4 の場合は

0.9 × 0.95σy)以下のこと

規定なし

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項 目 JSME 規格 EN 規格 ご参考

欧州圧力機器指令

ASME SecⅠ及び ASME Sec

Ⅷ div1 に準じた規格 EN12953-2011 EN13445:2009 PED 97/23/EC

気圧試験圧力

(記号の説明は”耐圧試験圧力”

の項に同じ)

耐圧試験が実際的でない場合

に適用

1.25Pσt

σd

規定なし 耐圧試験が実際的でない場合

に適用

試験圧力は耐圧試験圧力に同

規定なし

気圧試験時の制限

(記号の説明は”耐圧試験圧力”

の項に同じ)

規定なし 規定なし 1) 試験場所、遠隔モニタリン

グ、試験温度(衝撃試験温度

+25℃)等の安全対策を要

2) 昇圧後、圧力をPσt

σdまで低

減して検査を実施

規定なし

気密試験圧力

P:設計圧力

規定なし 規定なし 当 事 者 間 の 協 議 に よ る

min (0.1P; 0.05)

規定なし

非圧力荷重の評価 設計に考慮すべき荷重は規定

しているが、評価方法の規定

はない

規定なし 1)胴に圧力と地震・風荷重の組

み合わせが作用

2)胴の外力が作用

ノズルに外力が作用

3)圧力容器支持部等の応力評価

方法を推奨規定として規定

評価の際に考慮すべき因子を

挙げているが、評価方法の規定

はない

円筒胴の必要厚さ t

P:設計圧力

Di:内径

Do:外径

η:継手効率

σa:許容応力

y:温度係数

C:最小付加厚さ

<ボイラー>

𝑡 =

PDi

2σaη − 2P(1 − y)+ 𝐶

<ボイラー>

t =PDi

(2σa − P)η

<圧力容器>

t =PDi

2σaη − 1.2P

規定なし

<圧力容器>

t =PDi

2σaη − 1.2P

応力解析 規定なし 応力解析は強制要求ではない

1) 応力解析は強制要求ではな

2) 公式による設計規定のない

場合、また公式による設計の代

替として使用

3) 解析手法として、

・直接ルートによる方法

・応力分類による方法

(ASME Sec.VIII/Div.2 の方法

と同等)

の 2 方法を規定

また、応力解析に加えて、実験

による設計手法を 2009 年に追

1) 応力解析は強制要求ではな

2) 公式による設計、破壊力学

による手法の選択も可能

疲労解析 規定なし 規定なし 1)疲労解析は強制要求

ただし、全圧力サイクルが 500

回以下の場合は疲労解析は不

2)簡便評価方法と詳細評価方法

の二つの方法を規定

母材部と溶接継手部を個別に

評価し、溶接継手部は継手形状

に応じて強度区分され、設計疲

労曲線を区分ごとに規定

疲労解析は強制要求ではない

成形加工後の機械試験 規定なし 規定なし 1) 成形加工後の熱処理が不要

な場合は機械試験不要

2) 機械試験は引張試験(溶接部

は溶金引張)及び衝撃試験

規定なし

成形加工後の熱処理 材料の種類、成形方法、成形

による伸び率、設計条件等に

応じて熱処理の要否を規定

エンドプレートなどについて

規定あり

材料の種類、成形方法、成形に

よる伸び率等に応じて熱処理

の要否を規定

規定なし

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13

項 目 JSME 規格 EN 規格 ご参考

欧州圧力機器指令

ASME SecⅠ及び ASME Sec

Ⅷ div1 に準じた規格 EN12953-2011 EN13445:2009 PED 97/23/EC

溶接継手の効率η

RT:放射線透過試験

UT:超音波深傷試験

RT 試験の割合に応じ、

100%RT:η = 1.0

SpotRT: η = 0.85

行わない:η = 0.7

η = 1.0及び

η = 0.85

各溶接継手効率に対し、部品、

継手の形式と溶接場所に応じ

て非破壊検査を受ける溶接長

さ割合が、規定されている

試験グループ(非破壊試験の割

合を規定)に応じ、

試験グループ 1,2:

η = 1.0

試験グループ 3:

η = 0.85

試験グループ 4:

η = 0.7

以下の値を超えてはいけない:

機器が非破壊及び破壊検査の

対象となる場合、全て継手につ

いて:

η = 1.0

ランダムに非破壊検査の対象

となる場合:

η = 0.85

目視検査のみで非破壊検査実

施しない場合:

η = 0.7

突合せ溶接継手の非破壊試験

RT:放射線透過試験

UT:超音波探傷試験

MT:磁粉探傷試験

PT:浸透探傷試験

1) 容器の用途、継手の形式と

材料の種類と板厚に応じて

RT、UT、MT 又は PT が必要

な継手を規定

100%RT の例:

・毒性物質を含む場合

・炭素鋼でt>32mm 等

2) RT の代替としての UT を

規定

部品、継手の形式と溶接場所

に応じて RT 若しくは UT、

MT若しくはPTの試験割合を

規定

1)試験グループごと及び継手の

形式ごとに RT 又は UT、MT

又は PT の試験割合を規定

長手継手の RT 割合:

試験グループ 1:

100%

試験グループ 2:

100%

試験グループ 3:

25/10%

試験グループ 4:

なし

2)板厚に応じて RT または UT

のいずれの試験方法を用いる

か規定

規定なし

溶接継手の種類

(長手継手及び周継手)

完全溶込み突合せ両側溶接、

突合せ片側溶接、せぎり溶接、

両側隅肉重ね溶接等の継手形

状に応じて制限を規定

継手の位置に応じて適用可能

な継手形状を規定

(基本は完全溶け込み溶接)

継手の位置に応じて適用可能

な継手形状を規定

規定なし

突合せ溶接継手の機械試験 衝撃試験の要否のみを規定 溶接手法の認証に、引張、継

手引張、曲げ、溶接金属の衝

撃試験を要求し、各試験を

EN288 などで規定

再試験の方法についても規定

あり

材料及び板厚に応じて必要な

機械試験を規定

1) 試験は継手引張、曲げ、溶金

引張、衝撃、ミクロ、マクロ及

び硬度試験

2) 全体的には、

・板厚が 12mm 以下では継手引

張、曲げ及びマクロ試験が主体

・12mm を超えると衝撃試験、

溶金引張試験が追加される

規定なし

溶接後熱処理温度及び時間(炭

素鋼の場合)

t:板厚

1) 板厚:32mm 超え

2) 温度:595℃以上

3) 時間(h)

t≦50mm:1h/25mm,最小 15分

t>50mm:2h+0.25h/25mm

1) 板厚:15mm 以上 60mm 以

2) 温度:550~600℃

3) 時間(分)

30 分下限、120 分上限で

2t 分

1) 板厚:35mm 以上

2) 温度:550~600℃

3) 時間(分)

35≦ t <90mm:t-5

t>90mm:40+0.5t

規定なし

溶接士の資格 JSME 規格第Ⅶ章に規定され

た溶接士による

EN287による有資格者の従事

自 動 溶 接 士 に つ い て は

EN1418 に基づく認定

PED にもとづき、危険カテゴ

リーII,III,IV に分類される機

器については、認定された溶

接士を要求する

1) EN287 による有資格者の従

2) 溶接スーパーバイザの自社

雇用及び役割についても規定

圧力がかかる重大な部分につ

いては、認定された溶接士が適

切な工法で施工することを要

危険性に応じた圧力機器分類

において、危険性のある機器の

カテゴリーII, III, IV に分類さ

れた機器については、第三者機

関による溶接士の認定とその

工法の認定が要求

非破壊試験検査員の資格 JSME 規格第Ⅵ章 T-120 に規

定する者

EN473による有資格者の従事 1) EN473 による有資格者の従

2) 試験スーパーバイザの役割

についても規定

高い危険性を有する機器カテ

ゴリーIII,IV に分類された機

器については、加盟各国におけ

る第三者機関で認定された者

による検査が必要

安全装置 第Ⅲ章ボイラ PG-67~73にお

いて、安全弁に関する要求事

項の規定あり

また、第Ⅴ章配管にボイラ外

部の配管の安全弁について規

定あり

EN12953-6に安全弁に関する

規定あり

また、EN12953-8 の4章に

EN ISO 4126-1 に準拠した加

圧防止のための安全装置につ

いて規定あり

本調査では未確認 過圧防止装置、温度モニターに

関する条項、安全装置全体に関

する規定あり

サージ圧は最大許容圧力の

10%超まで

給水装置 第Ⅲ章ボイラ PG-61 におい

て、給水装置に関する規定あ

EN12953-6に給水装置に関す

る規定あり

また、給水タンクのレベルが

閾値を下回った場合には、熱

供給を停止する規定あり

規定なし 規定なし

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項 目 JSME 規格 EN 規格 ご参考

欧州圧力機器指令

ASME SecⅠ及び ASME Sec

Ⅷ div1 に準じた規格 EN12953-2011 EN13445:2009 PED 97/23/EC

計測装置 第Ⅲ章ボイラ PG-60.1 に水位

計、PG-60.6 に圧力系につい

て規定

EN12953-5 に、給水タンクレ

ベル、圧力、温度について規

EN13445-3 に、圧力、温度につ

いて規定

温度、圧力の計測について規定

適合性評価 電気事業法に基づく適合性評

(PED に基づく) (PED に基づく) 5.4.2 章参照

出典:一部を除く ASME SecⅧ div2 及び EN13445:2009 については、「ASME の基準・認証ガイドブック 改定版」(一般社団法人日本規格

協会)より引用

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15

4.3 JSME 規格、ASME 規格(SecⅧ div2)及び EN 規格の主な相違点

表 4.2 に JSME 規格、ASME SectionⅧ div2 及び EN 規格の比較を示す。

また以下に、JSME 規格、ASME SectionⅧ div2 及び EN 規格における設計手法等の相

違点について整理する。

① 耐圧設計

· JSME 規格においては、現行の火技解釈と同様に、0MPa を超える圧力を受ける部

分を耐圧設計の対象としている。

· ASME SecⅧ div2 では、0.1MPa 以上の圧力を適用範囲としている。

· EN 規格では 0.05MPa を超える圧力を適用範囲としている。

· 今後、ASME SecⅧ div2 で設計された設備や、EN 規格で設計された設備について

は、0MPa を超える圧力を受ける部分について耐圧設計を行われた設備であるかどう

か確認する必要がある。

② 材料の種類

· JSME 規格においては、JIS 規格材料、火技解釈材料及び ASME 規格材料を規定し

ている。

· ASME SecⅧ div2 では ASME SecⅧ div1 に規定した材料を制限して適用可能とし

ている。そのため、JSME 規格で規定されている材料は、適用可能である。

· PED においては、EN 規格等の整合規格において規定された材料、「European

Approval of Materials」に規定されている材料又は公認検査機関によって PED 相当

の要求を満たすと認定されている材料等を活用することが可能である。しかし EN

規格材料においては、材料の化学的成分や求めている降伏応力が JIS 規格材料と異

なっている。そのため、欧州の設備を日本国内に輸入する際は、適用する材料が、「安

全な化学的成分及び機械的強度を有するもの」であることを示す必要がある。その

ため、適用している材料に関する規格とそれに相当する日本の規格を把握し、化学

的成分の確認及びミルシートを活用した機械的強度の把握を行い、JSME 規格で規

定している基準を満たすかどうかを示す必要がある。

(火技省令:第五条)

容器及び管の耐圧部分に使用する材料は、最高使用温度において材料に及ぼす化学的及び

物理的影響に対し、安全な化学的成分及び機械的強度を有するものではなければならない。

(火技解釈:第2条)

省令第5条に規定する「安全な化学的成分及び機械的強度を有するもの」とは、溶接性、

引張強さ、延性、靱性及び硬度等に優れたものをいい、別表第1-1(鉄鋼材料)及び別

表第 2(非鉄材料)に記載されている材料はこれらを満足するものと解釈される。

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③ 許容応力

· JSME 規格においては、許容応力として実質的に引張強さの 1/3.5 の値が用いられて

いる。

· ASME SecⅧ div2 と EN 規格は、許容応力として実質的に降伏応力の 1/1.5 の値が

用いられている。ただし、EN 規格においては、EN12953 に詳細な設計ルールの場

合に適用する旨の注意書きがある。

· オーステナイトステンレス鋼においては、許容応力は同等程度となる可能性がある

が、フェライト鋼では、ASME SecⅧ div2 や EN 規格での許容応力が大きくなる傾

向にあるものと思われる。

· 以上のことから、ASME SecⅧ div2 や EN 規格を用いた設備については、日本にお

ける許容応力を用いた部材厚さ設計を行い、技術基準の規定を満たしているかどう

か確認する必要がある。

④ 部材厚さの規定

· JSME 規格及び EN 規格では、簡易式による部材厚さの算定式が明記されており、

これが用いられているものと思われる。

· 一方、ASME SecⅧ div2 においては規定がないこと、基本的に大きい圧力がかかる

設備に適用していることから、数値解析等による詳細検討により求められているも

のと思われる。

⑤ 疲労解析

· JSME 規格及び EN12953 では、疲労解析の規定はない。

· ASME SecⅧ div2 及び EN13445 では疲労解析は要求事項となっている。

· ASME SecⅧ div2 及び EN13445 では、小さい安全率を適用することが可能な基準

であるが、安全性を担保するための方法として、疲労解析を要求しているものと推

察される。

⑥ 溶接継手

· 溶接継手について、溶接継手の非破壊試験の方法、溶接継手の種類、溶接後熱処理

方法等において、日本国内の規定を満たしているか確認する必要がある。

⑦ 耐圧試験圧力

· JSME 規格においては、設計圧力の 1.3 倍の試験圧力である。

· ASME SecⅧ div2 や EN 規格では、設計圧力の 1.43 倍と最大許容温度における圧

力の 1.25 倍の大きい値である。

· 上記に示す耐圧試験の考え方は、過剰な圧力により、構造物が塑性崩壊を起こさな

い適切な圧力で試験を行うためにも、単純な荷重値の比較とはならないことに留意

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17

する必要がある。

⑧ 溶接士及び非破壊試験検査員の資格

· 米国、日本及び欧州では、溶接士及び非破壊検査員の資格は異なるものの、それぞ

れの国において、資格が必要であることは明記されている。

⑨ 評価手法

· 米国では、公認検査機関による ASME に適合した認定証(U スタンプ等)や事業者

の品質管理システム(以下、「QC システム」という。)が存在し、欧州では、PED

に基づく評価モジュールが存在する。電気事業法では、これらの評価システムは存

在しないが、事業者が提出する工事計画の届出が必要となり、この中に必要事項に

ついて文書化する必要がある。

· 日本国内に輸入する場合は、電気事業法に基づく工事計画で必要となる項目につい

て、製造者が事業者に情報提供を行う必要がある。

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18

表 4.2 JSME 規格、ASME SectionⅧ/Div2 及び EN 規格の比較

項 目 JSME 規格 ASME 規格 EN 規格 ご参考

PED ASME SecⅠ及び ASME

SecⅧ div1 に準じた規格 ASME SecⅧ div2 EN12953:2011 EN13445:2009

圧力範囲

0MPa を超える圧力 0.1MPa 以上、上限につい

ての制限はない

ただし、68.95MPa を超え

る場合は Div.3 の考慮を要

0.05MPa を超える範囲、

上限についての制限はな

(加えて容量 2L 以上、

110℃以上の最大設計温

度)

0.05MPa を超える圧力、

上限についての制限はな

0.05MPa を超える圧力、

上限についての制限はな

温度範囲 クリープ温度域を含む クリープ温度域を含む クリープ温度域を含む クリープ温度域を含む 温度領域における適用外

範囲はない

定量的な制限について

は、クリープ温度未満で

与えられ、クリープ温度

域について定量的制限は

与えられていない

材料の種類 鉄鋼材料及び非鉄金属材

料で、具体的には、JIS 規

格材料(鉄鋼材、非鉄鋼

材)、火技解釈材料及び

ASME 規格材料(鉄鋼材、

非鉄材)等

鉄鋼材料及び非鉄金属材

ただし、Div1 より適用材

料を制限

EN10028 、 EN10216 、

EN10217、EN10222 等に

規定されている材料であ

る、P235GH、P235 TR1

等の適用を推奨

欧州で規定されていない

材料の場合は、欧州材料

データシート(EMDS)

が必要

鉄鋼材料並びに Al 及び

Al 合金

EN 規格等の整合規格に

おいて規定された材料、

「European Approval of

Materials」に規定されて

いる材料又は公認検査機

関によって PED 相当の

要求を満たすと認定され

ている材料等

許容引張応力

(鉄鋼材料でクリープ

未満の場合)

σu/20: 材料の室温で

の引張強さ

σu/t :材料の設計温度

での引張強さ

σy/t :材料の設計温度

での降伏点

min (σu/t

3.5;σy/t

1.5) min (

σu/t

2.4;σy/t

1.5) min (

σu/20

2.4;σy/t

1.5)

※詳細な設計ルールに基

づく場合との注意書きあ

フェライト鋼の場合

min (σu/20

2.4;σy/t

1.5)

A.フェライト鋼:

min (σu/20

2.4;σy/t

1.5)

B.オーステナイト鋼:

1.破断伸び率 30%超の

場合 σy/t

1.5

2.破断伸び率 35%超の

場合min (σu/t

3;

σy/t

1.2)

.非合金、低合金、アルミ

等に別途規定あり

材料の最大厚さの制

制限なし(材料規格による) 試験グループ及び適用材

料に応じて最大厚さを制

例)炭素鋼(P1 Gr.1/2)

の場合

試験グループ 1:

制限なし

試験グループ 2:

50mm

試験グループ 3:

50mm

制限なし 試験グループ及び適用材

料に応じて最大厚さを制

例)炭素鋼の場合

試験グループ 1:

制限なし

試験グループ 2:

50mm

試験グループ 3:

50mm

試験グループ 4:

12mm

制限なし

最小部材厚さ 6.35mm 規定なし 径が 1000mm以上の場合

( 低 圧 ボ イ ラ ー を 除

く):6mm

径が 1000nn 未満の場合

及び低圧ボイラー:4mm

規定なし 規定なし

材料衝撃試験規定

σu:材料の規定最小引

張強さ

1) 衝撃試験は強制要求

ただし、材料の種類と最低

設計金属温度に応じて衝

撃試験の免除を規定

2) 評価基準は板厚及び材

料強度に応じた衝撃吸収

エネルギー

ただし、高強度鋼及びステ

ンレス鋼については横膨

3)試験温度は原則最低設

計金属温度に同じ

Div.1 にはほとんど類似の

規定

EN288-3:1992 に従う

試験見本の靱性は base

metal の横靱性を下回っ

てはいけない

1) 衝撃試験は強制要求

防止規定として、経験則

による方法、経験則と破

壊力学の組み合わせ、破

壊力学による方法の 3 方

法を規定

2) 評価基準

フェライト鋼の場合

27J 40J⁄

3) 経験則による方法の

場合は、試験温度は最低

設計温度に同じ

経験則と破壊力学の組み

合わせによる場合、板厚

と最低設計温度を用いて

線図より試験温度を決定

する

鉄の延性要求において、

衝撃試験に関する要求が

あ り 、 通 常 の ISO-V

notch 試験において、

20℃以下かつ運用最低温

度以下の温度において衝

撃吸収エネルギー27J 以

上が要求

また、鉄には 14%以上の

破断伸び率が要求

耐圧試験圧力

P:設計圧力

t:板厚

c:腐れしろ

σt σd⁄ :許容応力の温

度補正

1.5Pσt

σd

max (1.43P; 1.25Pσt

σd) max (1.43P; 1.25P

σt

σd)

1) 試験グループ 1,2,3

max (1.43P; 1.25Pσt

σd)

2) 試験グループ 4

炭素鋼又はオーステナイ

ト系ステンレス鋼で試験

圧力を区分

max (1.43P; 1.25Pσt

σd)

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19

項 目 JSME 規格 ASME 規格 EN 規格 ご参考

PED ASME SecⅠ及び ASME

SecⅧ div1 に準じた規格 ASME SecⅧ div2 EN12953:2011 EN13445:2009

耐圧試験時の制限

Pm:一次一般膜応力

Pb:一次一般曲げ応力

σy:材料の降伏点

規定なし 水圧試験温度で、

1) Pmの制限

Pm ≦ 0.95σy

2) Pm+Pbの制限

・Pm ≦ 0.67σyの場合

Pm+Pb ≦ 1.43σy

・ 0.67σy < Pm ≦ 0.95σy の

場合

Pm+Pb ≦ 2.43σy-1.5Pm

規定なし 水圧試験温度で応力は

0.95σy (試験グループ 4

の場合は0.9 × 0.95σy )以

下のこと

規定なし

気圧試験圧力

(記号の説明は”耐圧

試験圧力 ”の項に同

じ)

耐圧試験が実際的でない

場合に適用

1.25Pσt

σd

耐圧試験が実際的でない

場合に適用

1.15Pσt

σd

規定なし 耐圧試験が実際的でない

場合に適用

試験圧力は耐圧試験圧力

に同じ

規定なし

気圧試験時の制限

(記号の説明は”耐圧

試験圧力 ”の項に同

じ)

規定なし 気圧試験温度で、

1) Pmの制限

Pm ≦ 0.8σy

2) Pm+Pbの制限

・Pm ≦ 0.67σyの場合

Pm+Pb ≦ 1.20σy

・0.67σy < Pm ≦ 0.8σyの場

Pm+Pb ≦ 2.20σy-1.5Pm

規定なし 1) 試験場所、遠隔モニタ

リング、試験温度(衝撃試

験温度+25℃)等の安全

対策を要求

2) 昇圧後、圧力をPσt

σdま

で低減して検査を実施

規定なし

気密試験圧力

P:設計圧力

規定なし 規定なし 規定なし 当事者間の協議による

min (0.1P; 0.05)

規定なし

非圧力荷重の評価 設計に考慮すべき荷重は

規定しているが、評価方法

の規定はない

胴について内圧に加えて

軸力、曲げモーメント及び

せん断力が作用する場合

の評価方法を規定

規定なし 1)胴に圧力と地震・風荷

重の組み合わせが作用

2)胴の外力が作用

ノズルに外力が作用

3)圧力容器支持部等の応

力評価方法を推奨規定と

して規定

評価の際に考慮すべき因

子を挙げているが、評価

方法の規定はない

円筒胴の必要厚さ t

P:設計圧力

Di:内径

Do:外径

η:継手効率

σa:許容応力

y:温度係数

C:最小付加厚さ

<ボイラー>

𝑡 =

PDi

2σaη − 2P(1 − y)+ 𝐶

規定なし <ボイラー>

t =PDi

(2σa − P)η

<圧力容器>

t =PDi

2σaη − 1.2P

規定なし

<圧力容器>

t =PDi

2σaη − 1.2P

応力解析 規定なし 1) 公式による設計に代え

て応力解析による設計方

法を選ぶこともできる

2) 解析手法として、応力

分類による評価、極限解析

による評価、弾塑性解析に

よる評価等を規定してい

応力解析は強制要求では

ない

1) 応力解析は強制要求

ではない

2) 公式による設計規定

のない場合、また公式に

よる設計の代替として使

3) 解析手法として、

・直接ルートによる方法

・応力分類による方法

(ASME Sec.VIII/Div.2 の

方法と同等)

の 2 方法を規定

また、応力解析に加えて、

実験による設計手法を

2009 年に追加

1) 応力解析は強制要求

ではない

2) 公式による設計、破壊

力学による手法の選択も

可能

疲労解析 規定なし 1)疲労解析は強制要求

ただし、

・類似機器の運転の経験

・変動の合計繰り返し回数

に対する制限(条件 A)

・設計疲労曲線より安全側

に繰り返し回数・変動範囲

を予想した条件を満足(条

件 B)

による疲労解析の免除規

定を設けている

2) 設 計 疲 労 曲 線 は

EN13445 の規定のように

母材部及び溶接継手部で

区別

規定なし 1)疲労解析は強制要求

ただし、全圧力サイクル

が 500 回以下の場合は疲

労解析は不要

2)簡便評価方法と詳細評

価方法の二つの方法を規

母材部と溶接継手部を個

別に評価し、溶接継手部

は継手形状に応じて強度

区分され、設計疲労曲線

を区分ごとに規定

疲労解析は強制要求では

ない

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20

項 目 JSME 規格 ASME 規格 EN 規格 ご参考

PED ASME SecⅠ及び ASME

SecⅧ div1 に準じた規格 ASME SecⅧ div2 EN12953:2011 EN13445:2009

成形加工後の機械試

規定なし 規定なし 規定なし 1) 成形加工後の熱処理

が不要な場合は機械試験

不要

2) 機械試験は引張試験

(溶接部は溶金引張)及び

衝撃試験

規定なし

成形加工後の熱処理 材料の種類、成形方法、成

形による伸び率、設計条件

等に応じて熱処理の要否

を規定

材料の種類、成形方法、成

形による伸び率、設計条件

等に応じて熱処理の要否

を規定

エンドプレートなどにつ

いて規定あり

材料の種類、成形方法、

成形による伸び率等に応

じて熱処理の要否を規定

規定なし

溶接継手の効率η

RT:放射線透過試験

UT:超音波深傷試験

RT 試験の割合に応じ、

100%RT:η = 1.0

SpotRT: η = 0.85

行わない:η = 0.7

試験グループ(非破壊試験

の割合を規定)に応じ、

試験グループ 1,2:

η = 1.0

試験グループ 3:

η = 0.85

η = 1.0及び

η = 0.85

各溶接継手効率に対し、

部品、継手の形式と溶接

場所に応じて非破壊検査

を受ける溶接長さ割合

が、規定されている

試験グループ (非破壊試

験の割合を規定)に応じ、

試験グループ 1,2:

η = 1.0

試験グループ 3:

η = 0.85

試験グループ 4:

η = 0.7

以下の値を超えてはいけ

ない:

機器が非破壊及び破壊検

査の対象となる場合、全

て継手について:

η = 1.0

ランダムに非破壊検査の

対象となる場合:

η = 0.85

目視検査のみで非破壊検

査実施しない場合:

η = 0.7

突合せ溶接継手の非

破壊試験

RT:放射線透過試験

UT:超音波探傷試験

MT:磁粉探傷試験

PT:浸透探傷試験

1) 容器の用途、継手の形

式と材料の種類と板厚に

応じて RT、UT、MT 又は

PT が必要な継手を規定

100%RT の例:

・毒性物質を含む場合

・炭素鋼でt>32mm 等

2) RT の代替としての UT

を規定

1)試験グループごと及び

継手の形式ごとに RT又は

UT、MT または PT の試験

割合を規定

長手継手の RT 割合:

試験グループ 1:

100%

試験グループ 2:

100%

試験グループ 3:

25/10%

2)RT の代替としての UT

を規定

部品、継手の形式と溶接

場所に応じて RT 若しく

は UT、MT 若しくは PT

の試験割合を規定

1)試験グループごと及び

継手の形式ごとに RT 又

は UT、MT 又は PT の試

験割合を規定

長手継手の RT 割合:

試験グループ 1:

100%

試験グループ 2:

100%

試験グループ 3:

25/10%

試験グループ 4:

なし

2)板厚に応じて RT また

は UT のいずれの試験方

法を用いるか規定

規定なし

溶接継手の種類

(長手継手及び周継

手)

完全溶込み突合せ両側溶

接、突合せ片側溶接、せぎ

り溶接、両側隅肉重ね溶接

等の継手形状に応じて制

限を規定

継手の位置に応じて適用

可能な継手形状を規定

継手の位置に応じて適用

可能な継手形状を規定

(基本は完全溶け込み溶

接)

継手の位置に応じて適用

可能な継手形状を規定

規定なし

突合せ溶接継手の機

械試験

衝撃試験の要否のみを規

衝撃試験の要否のみを規

溶接手法の認証に、引張、

継手引張、曲げ、溶接金

属の衝撃試験を要求し、

各試験を EN288 などで

規定

再試験の方法についても

規定

材料及び板厚に応じて必

要な機械試験を規定

1) 試験は継手引張、曲

げ、溶金引張、衝撃、ミ

クロ、マクロ及び硬度試

2) 全体的には、

・板厚が 12mm 以下では

継手引張、曲げ及びマク

ロ試験が主体

・12mm を超えると衝撃

試験、溶金引張試験が追

加される

規定なし

溶接後熱処理温度及

び時間 (炭素鋼の場

合)

t:板厚

1) 板厚:32mm 超え

2) 温度:595℃以上

3) 時間(h)

t≦50mm:1h/25mm,

最小 15 分

t>50mm:2h+0.25h/25mm

1) 板厚:32mm 超え

2) 温度:595℃以上

3) 時間(h)

t≦50mm:1h/25mm,

最小 15 分

t>50mm:2h+0.25h/25mm

1) 板 厚 :15mm 以 上

60mm 以下

2) 温度:550~600℃

3) 時間(分)

30 分下限、120 分上限で

2t 分

1) 板厚:35mm 以上

2) 温度:550~600℃

3) 時間(分)

35≦ t <90mm:t-5

t>90mm:40+0.5t

規定なし

溶接士の資格 JSME 規格第Ⅶ章に規定

された溶接士による

ASME Sec.IX に従って格

付けされていること

EN287による有資格者の

従事

自動溶接士については

EN1418 に基づく認定

PED にもとづき、危険カ

テゴリーII,III,IV に分類

される機器については、

認定された溶接士を要求

する

1) EN287 による有資格

者の従事

2) 溶接スーパーバイザ

の自社雇用及び役割につ

いても規定

圧力がかかる重大な部分

については、認定された

溶接士が適切な工法で施

工することを要求

危険性に応じた圧力機器

分類において、危険性の

ある機器のカテゴリーII,

III, IV に分類された機器

については、第三者機関

による溶接士の認定とそ

の工法の認定が要求

Page 25: 平成27年度未利用エネルギー等活用調査 (発電用火力 · PDF file平成27年度未利用エネルギー等活用調査 (発電用火力設備に関する保安技術等動向調査)

21

項 目 JSME 規格 ASME 規格 EN 規格 ご参考

PED ASME SecⅠ及び ASME

SecⅧ div1 に準じた規格 ASME SecⅧ div2 EN12953:2011 EN13445:2009

非破壊試験検査員の

資格

JSME規格第Ⅵ章T-120に

規定する者

文書化された自社認定シ

ステムに基づき認定され

た有資格者であること

EN473による有資格者の

従事

1) EN473 による有資格

者の従事

2) 試験スーパーバイザ

の役割についても規定

高い危険性を有する機器

カテゴリーIII,IV に分類

された機器については、

加盟各国における第三者

機関で認定された者によ

る検査が必要

安全装置 第Ⅲ章ボイラ PG-67~73

において、安全弁に関する

要求事項の規定あり

また、第Ⅴ章配管にボイラ

外部の配管の安全弁につ

いて規定あり

過圧防止装置に関する規

定あり

EN12953-6に安全弁に関

する規定あり

また、EN12953-8 の4章

に EN ISO 4126-1に準拠

した加圧防止のための安

全装置について規定あり

本調査では未確認 過圧防止装置、温度モニ

ターに関する条項、安全

装置全体に関する規定が

存在

サージ圧は最大許容圧力

の 10%超まで

給水装置 第Ⅲ章ボイラ PG-61 にお

いて、給水装置に関する規

定あり

規定なし EN12953-6に給水装置に

関する規定あり

また、給水タンクのレベ

ルが閾値を下回った場合

には、熱供給を停止する

規定あり

規定なし 規定なし

計測装置 第Ⅲ章ボイラ PG-60.1 に

水位計、PG-60.6 に圧力系

について規定

本調査では未確認 EN12953-5 に、給水タン

クレベル、圧力、温度に

ついて規定

EN13445-3 に、圧力、温

度について規定

温度、圧力の計測につい

て規定

適合性評価 電気事業法に基づく適合

性評価

ASME 審査に基づく QC

システム及び U2スタンプ

を有し、製品は AI が検査

(PED に基づく) (PED に基づく) 5.4.2 章参照

出典:一部を除く ASME SecⅧ div2 及び EN13445:2009 については、「ASME の基準・認証ガイドブック 改定版」(一般社団法人日本規格

協会)より引用

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22

5 小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する動向調査

5.1 調査概要

欧州の小規模バイオマスボイラー等の発電設備を対象に、国内外の情報を収集し、設備

設計や保安技術等の動向調査を実施した。

まず初めに、本事業では、小規模バイオマスボイラー等の発電設備の調査規模として、

間伐材由来の木質バイオマスを活用したバイオマス発電設備を用いて発電した買取価格の

閾値である 2,000kWe 未満を目安とする。

平成 27 年度のバイオマス発電の買取価格を表 5.1 に示す。

表 5.1 バイオマス発電の買取価格(平成 27 年度)

メタン

発酵ガス

間伐材由来の木質

バイオマス

一般木質

バイオマス

農作物残渣

建設資材

廃棄物

一般

廃棄物

2,000kWe

未満

2,000kWe

以上

調達価格 39 円 40 円 32 円 24 円 13 円 17 円

出典:資源エネルギー庁ホームページ(平成 28 年 2 月 23 日時点)

次に、調査方法として、まずは、国内に導入されている若しくは導入予定がある、欧州

のボイラー等の発電設備メーカー及び国内代理店に関する情報を、過去の類似調査に関す

る報告書等を通して収集した。次に、入手した欧州のボイラー等の発電設備メーカー及び

国内代理店の情報を基に、入手したボイラー等の発電設備メーカーのホームページ等を活

用して調査するとともに、国内代理店へのヒアリング調査を行った。その調査結果を基に、

日本での導入実績の件数が多い又は今後日本への導入を積極的に検討している欧州のボイ

ラー等の発電設備メーカーを抽出した。そして、抽出した欧州のボイラー等の発電設備メ

ーカーを対象に、現地調査を実施した。

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23

5.2 バイオマスを活用した発電設備の概要

バイオマス燃料を活用した発電設備は、主に 3 つの技術方式に分類される。

バイオマス燃料を直接燃焼する方式は、高分子有機媒体を蒸発させて利用する ORC を利

用した蒸気タービン発電又はスターリングエンジン発電を行っている事例がみられる。直

接燃焼する方式は、直接燃焼にて得た熱により蒸気を発生させ、通常の蒸気タービンで発

電する方法があるが、小型で製品化された発電設備に関する情報は見つからなかった。ス

ターリングエンジンは、発電出力が小規模(1~数十 kWe)の設備であるため、FIT での活

用は行わないものと思われる。一方で、欧州ではバイオマス燃料を直接燃焼するバイオマ

スボイラーを熱源とした ORC 発電設備が普及している。欧州において、小型のバイオマス

ボイラーは熱供給事業で活用される場合が多く、熱需要には変動があることから、蒸気ボ

イラーを活用した蒸気タービンに比べて、負荷変動に対する追随性の高い発電設備である

ORC を利用した蒸気タービンの方が、発電効率が高いことから、普及しているものと思わ

れる。

バイオマス燃料の熱分解ガス化やメタン発酵ガス化技術を活用した場合には、主にガス

エンジン発電方式を適用している。また、熱分解ガス化、メタン発酵ガス化技術を活用し

た場合は、ガスタービン方式を適用した発電設備についても想定されるが、欧州における

ガスタービンを活用した小型の製品化された発電設備の情報は見つからなかった。

以上のことから、本事業では欧州にて普及している以下の 3つの設備を調査対象とする。

・バイオマスボイラー

・ORC を利用した蒸気タービンの発電設備

・バイオマスガスを利用した発電設備

3 つの主な発電設備の技術分類を表 5.2 に示す。

表 5.2 主な発電設備の技術分類

技術 主な原料 発電方式

直接燃焼 木質系バイオマス

ORC を利用したタービン

スターリングエンジン

熱分解ガス化 木質系バイオマス

農業系バイオマス

下水汚泥

ガスエンジン

メタン発酵ガス化 家畜排せつ物

食品加工残さ

下水汚泥等

ガスエンジン

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24

(1) 直接燃焼方式の発電設備

直接燃焼方式の発電設備の概要を図 5.1 に示す。

直接燃焼方式の発電設備では、主に木質バイオマス燃料を燃焼させて高温ガスを抽出し、

高温ガスから熱交換により中間媒体(飽和温度未満で利用)を加熱し、更にこの中間媒体

から熱交換により作動媒体(飽和温度以上で利用)を加熱して、蒸気の状態にして蒸気タ

ービンを回転させることで発電を行う。

本事業では、主な構成機器のうち、バイオマスボイラーと ORC を利用したシステムにつ

いては製品化したものが存在することから、これらの設備を調査対象とした。

図 5.1 直接燃焼方式の発電設備の概要図

(2) バイオマスガスを利用した発電設備

バイオマスガスを利用した発電設備として、熱分解ガス方式の発電設備とメタン発酵ガ

ス化方式の発電設備がある。図 5.2 に熱分解ガス化方式の発電設備の概要図、図 5.3 にメ

タン発酵ガス化方式の発電設備の概要図を示す。

熱分解ガス化方式の発電設備では、ガス化炉でバイオマス燃料から高温のガスを発生さ

せて、ガスエンジンを通じて発電を行う。当該発電設備は、ガス化炉、ガスエンジン及び

発電機をユニット化した機器の構成となる。

メタン発酵方式の発電設備は、発酵槽でガスを発生させて、ガスエンジンを通じて発電

を行う。ガスを取り出すまでの設備は別途導入して、ガスエンジンと発電機が一体となっ

た設備と組み合わせて使用する構成である。

燃料熱交換器

蒸気

蒸気タービン

:熱の流れ

中間媒体

作動媒体

発電機

発電設備

熱交換器

熱供給 熱供給熱供給

高温ガス

ボイラー

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25

図 5.2 熱分解ガス化方式の発電設備の概要図

図 5.3 メタン発酵ガス化方式の発電設備の概要図

ガス化炉

(不完全燃焼による熱発生)

バイオマス

空気

燃料

熱交換器

温水熱供給:熱の流れ

:ガスの流れ

ガスエンジン

(燃焼)

不純物

発電機ガスフィルタ

ガスクーラー

電力供給

熱供給

混合機

発酵槽

ガスエンジン

(燃焼)

発電機脱硫フィルタ

電力供給

熱供給

原料供給

:熱の流れ

:ガスの流れ

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26

5.3 小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する事例等の調査

小規模バイオマスボイラー等の発電設備に関する事例及び規制内容の調査にあたり、国

内に導入されている若しくは導入予定のある欧州のバイオマスボイラー等の発電設備メー

カー及び国内代理店の情報について国内調査を実施した。その調査結果を参考に、日本で

の導入実績が多い又は日本での導入を積極的に検討している欧州の発電設備メーカーを抽

出した。国内で得られる情報には限りがあるため、抽出した欧州のバイオマスボイラー等

の発電設備メーカー等について現地調査を行い、事例及び規制内容に関する調査を実施し

た。

5.3.1 国内調査

国内調査では、過去の類似調査に関する報告書より欧州のバイオマスボイラー等の発電

設備メーカー及び国内代理店の情報を入手した。次いで、入手したバイオマスボイラー等

の発電設備メーカーのホームページを活用した調査及び国内代理店へのヒアリング調査を

実施した。その調査結果を基に、日本での導入実績が多い又は日本への導入を積極的に検

討している欧州の発電設備メーカーを抽出した。

(1) バイオマスボイラーについて

本事業では、バイオマスボイラーの出力規模として、間伐材由来の木質バイオマスを活

用したバイオマス発電設備の買取価格の閾値である 2,000kWe 未満に適用可能な設備を調

査対象とした。バイオマスボイラーと ORC 発電設備を組み合わせた発電設備の概要図を図

5.4 に示し、バイオマスボイラー設備の外観と遠隔制御のイメージをエラー! 参照元が見つ

かりません。に示す。

小規模発電設備と接続している若しくはその予定をしている欧州のバイオマスボイラー

について、ヒアリング等の調査より入手した欧州のバイオマスボイラーに関する情報を表

5.3 に示す。

海外において発電設備と組み合わせた実績があるバイオマスボイラーメーカーとして、A

社、B 社及び C 社がある。国内調査では、表 5.3 に記載した設備以外にも、発電設備と組

み合わせた実績のあるバイオマスボイラーが存在するとの情報を得たが、具体的な情報を

得ることはできなかった。

欧州においてバイオマスボイラーは、温水又は蒸気ボイラーによる熱供給事業として多

数活用しているが、発電用としての実績は少ない。日本で導入実績のある欧州製のボイラ

ーには、圧力をかけない無圧式ボイラーや、内部を真空(負圧)にして沸点を下げて、加

熱により蒸気を取り出すボイラーがあるが、いずれも労働安全衛生法が適用されるボイラ

ーである。

発電機と組み合わせる場合は、ORC 発電設備又はスターリングエンジンが想定される。

本設備は、電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)に当てはめると、【ボ

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27

イラー等及びその附属設備】に該当する。

日本で導入実績のあるバイオマスボイラーは、スイスに本社のある A 社の設備が 200 台

以上と、他のボイラーメーカーの設備と比較して多数導入されている。A 社は、海外では発

電設備での活用実績も多数あり、発電設備として日本での導入も検討しているとのことだ

った。また、ボイラーメーカーである C 社は日本での導入を検討しているとのことだった。

国内調査では欧州での規制等に関する情報が少ないことから、A 社及び C 社について、欧

州での現地調査を行い、欧州での規制等の遵守状況に関する情報を収集することとした。

図 5.4 バイオマスボイラーと ORC の発電設備を組み合わせた発電設備の概要図

燃料

蒸気

蒸気タービン

:熱の流れ

ボイラー

中間媒体

作動媒体

発電機

発電設備

熱供給 熱供給熱供給

高温ガス

熱交換器

熱交換器

ボイラー及びその附属設備 蒸気タービン及びその附属設備

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表 5.3 欧州のバイオマスボイラーに関する情報

会社名、国名

会社名 A 社 B 社 C 社 国名 スイス オーストリア オーストリア

国内代理店の有無 有り 有り 有り

設備概要

出力(熱) ・100kWth-6MWth ・300kWth~30MWth ・400kWth~15MWth

出力(電気) - - - 使用温度(ボイラー) - - -

使用圧力(ボイラー) ・0.5MPa(最大使用圧力)

- -

利用可能なバイオマスタイプ

・生チップ、乾燥チップ、ペレット

・木質系バイオマス(ペレット、おがくず、ウッドチップ、バーク材等)、

・トウモロコシ、馬糞等

・木質チップ、カット木材(燃料中の水分10~60%(重量比))

設備の特徴 ・ボイラーは無圧式 ボイラー

・ラムダ・コントロー ル(O2 センサー)搭 載により燃料の樹種 や含水率に自動的に 対応

・ストーカー炉

・階段式ストーカー炉 ・水平式ストーカー炉

・階段式ストーカー炉

接続実績のある発電機の情報

発電機システムの 構成

・ボイラー+ORC 発電設備(想定システム)

・ボイラー+スターリングエンジン発電設備

・ボイラー+ORC 発電設備

・主にボイラーのみ ・ボイラー+ORC 発電設備(想定システム)

・ボイラー+小型バイナリー発電設備

発電機システム メーカー

・D 社

・D 社

・D 社 ・国内事例の発電設備は日本製

作動媒体の種類 ・シリコンオイル -

・シリコンオイル ・国内事例の発電設備は、代替フロン

寿命、監視体制

想定寿命 ・20 年以上 ・20 年以上(主要部) ・20 年 年間稼働時間

- ・年間 350 日の運転実績

監視体制 - - -

リモート監視での モニタリング項目

- - -

保守内容、間隔 - - - トラブル事例 ・パウダー状の燃料の

場合、着火時に粉じん爆発の懸念

・伝熱面、煙管にタール、すすが付着すると、引火火災発生の懸念

・急な停電時等に、逆火現象による火災の懸念

- -

実績

販売開始時期 ・1935 年 ・不明 ・1990 年頃 出荷台数 ・不明 ・40 台以上 ・不明

出荷国 ・欧州(スイス、ドイツ、イギリス等)、日本

・欧州(オーストリア、ドイツ等)、日本

・欧州(オーストリア、イタリア、スロベニア等)、日本

日本への納入状況 ・約 200 台 ・発電事業への利用実績は 1 例

・複数台納入済み ・発電事業への利用実績は不明

・1 台 ・発電事業への利用実績は 1 例

その他

情報収集手段 ・国内代理店へのヒアリング、国内 Web 情報、メーカーHP

・国内代理店への電話ヒアリング、国内Web 情報、メーカーHP

・国内でのヒアリング、メーカーHP

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29

(2) ORC 発電設備について

ORC 発電設備のメーカーに関するシェアは、台数ベースではイタリアの企業である D 社

のシェアが高く、出力ベースでは米国の企業である E 社のシェアが高い。また、出力が小

規模(2MWe 以下)の発電設備については、D 社の発電設備がシェアが高いことがわかっ

た。

また、ホームページ及びヒアリング等の調査より入手した欧州の ORC 発電設備に関する

情報を表 5.4 に示す。この中で、G 社から K 社については、ホームページ上から一部の情

報を得ることはできたが、具体的な設計情報及び日本での導入計画を確認することはでき

なかった。

国内の文献調査によると、欧州の ORC 発電設備のメーカーの中で、発電出力が 2MWe

以下の発電設備の日本での導入実績として、D 社の発電設備が用いられる事例があること

が分かった。また、ノルウェーの企業である F 社が積極的に日本へ導入したいという情報

を得たことから、欧州での動向調査は、D 社と F 社について実施した。

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30

(a) タービン式の ORC 発電設備

タービン式 ORC 発電設備の概要図を図 5.5 に示す。

ORC 発電設備では、高分子有機媒体を加熱して発生させた蒸気を利用した発電設備であ

り、図 5.5 に示すように、熱源と作動媒体との間に、中間媒体を介するタイプの発電設備

である。これらの発電設備は、日本国内において地熱や廃熱等を熱源としたバイナリー発

電設備として普及してきており、中間媒体として温水、作動媒体として代替フロン等の不

活性ガスが用いられている例が多い。

欧州の ORC 発電設備では、熱源にバイオマスボイラーを利用した設備があり、それは中

間媒体にサーマルオイル(315℃程度)を用いて、熱交換器とタービンの間の作動媒体とし

て飽和温度以上に加熱したシリコンオイル(作動環境での飽和温度:240~320℃程度)を

用いている。

本設備は、電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)に当てはめると、熱

源から熱交換器までが【ボイラー及びその附属設備図 5.5】で、蒸気タービンが【蒸気ター

ビン及びその附属設備】に該当する。

図 5.5 タービン式 ORC 発電設備の概要図

熱源

(バイオマスボイラー)

熱交換器

蒸気

蒸気タービン

:熱の流れ

中間媒体

作動媒体

発電機

有機ランキンサイクル発電設備

蒸気タービン及びその附属設備ボイラー及びその附属設備

熱交換器

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31

(b) 往復機関式の ORC 発電設備

往復機関式の ORC 発電設備の概要図を図 5.6 に示す。

ORC 発電設備は、一般的に蒸気タービンを用いる事例が多いが、本設備はフロン系や炭

化水素系等の蒸気を作動媒体とする往復動式膨張機を用いた発電設備である。

本設備の熱源の温度は 80~215℃であり、熱源の種類として、バイオマス、地熱及び廃

熱等が利用できる。この発電システムは、ボイラー及び熱交換器を介して加熱した蒸気で

往復動式膨張機を動かして発電するものであって、1 ユニットあたりの出力が 10kWe 程度

の小型の設備であるが、複数のユニットを組み合わせて販売している。また、作動媒体の

圧力は 3MPa である。

本設備は、往復動式膨張機を用いた発電設備であり、現行の電気事業法で定める技術基

準(火技省令及び火技解釈)では、蒸気タービン及び内燃機関のいずれにも該当しないこ

とから、特殊設備に該当する。なお、昭和 40 年代の火技省令においては、「往復機関」と

いう形式の発電設備が規定されていた。

図 5.6 往復機関式の ORC 発電設備の概要図

熱源

(バイオマス、地熱、廃熱等)

熱交換器

蒸気

往復動式膨張機

:熱の流れ

中間媒体

作動媒体

発電機

有機ランキンサイクル発電設備

特殊設備ボイラー及びその附属設備

熱交換器

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32

表 5.4 欧州の ORC 発電設備に関する情報

会社名、国名

会社名 D 社 E 社 F 社 G 社 H 社 I 社 J 社 K 社 国名 イタリア 米国ネバダ州 ノルウェー ドイツ オランダ フランス フランス イタリア

国内代理店の有無 有り 有り 現在検討中 不明 不明 不明 不明 不明

設備概要

設備種別 ・ORC を利用した発電機 ・ORC を利用した発電機 (主に地熱)

・ORC を利用した発電機 ・ORC を利用した発電機 ・ORC を利用した発電機 ・ORC を利用した発電機 ・ORC を利用した発電機 ・ORC を利用した発電機

出力(熱) - - - - - - - -

出力(電気) ・200kWe~15MWe ・単体の場合で、 250kWe~20MWe

・60kWe(15kWe×4) ・数 kWe~3MWe ・165kWe ・500kWe~3MWe ・500kWe~5MWe ・100kWe~50MWe

使用温度(発電機) ・240~320℃ - - - - - - - 使用圧力(発電機) - - ・3MPa - - - - -

利用可能な熱源の種類 ・地熱、バイオマス、廃熱、太陽熱、廃棄物発電等

・地熱、廃熱等 ・バイオマス、地熱、廃熱等

・バイオマス ・バイオマス、バイオマスガス等

・バイオマス、地熱、廃熱等

・バイオマス、地熱、廃熱等

・バイオマス、地熱、廃熱

熱源の温度 ・100~1000℃ - ・80~215℃ ・~950℃ ・350~530℃ ・150~200℃ ・85~330℃ ・90~260℃(地熱) 発電機システムの構成 ・タービンを含む発電設

備 ・タービンを含む発電設備

・蒸気内燃機 ・タービンを含む発電設備

・タービンを含む発電設備

・タービンを含む発電設備

・タービンを含む発電設備

・タービンを含む発電設備

作動媒体の種類 ・シリコンオイル、フロ ン系、炭化水素系(熱 源の供給温度により、 作動媒体を選定)

・フロン系、炭化水素系

- -

・フロン系 ・フロン系、炭化水素系

設備の特徴 ・タービンは軸流多段式で、毎分 3000 回転

・蒸気タービンを往復機関に変更したシステム

・エンジンはドイツのメーカー製

・中間媒体を使わない直接蒸発方式

- -

・ラジアルタービンを使用

寿命、監視体制

想定寿命 - - ・80000 時間(約 10 年) - - ・20 年(設計寿命) - -

年間稼働時間 ・定期メンテナンス期間以外は稼動

- ・8000 時間

- -

監視体制 - -

・リモートモニタリング監視

・リモートモニタリング監視

・無人運転が可能 ・運転員の常時配置不要 - -

リモート監視でのモニタリング項目

- - - - - - - -

保守内容、間隔 - - - - - - - -

トラブル事例 - - - - - - - -

実績

販売開始時期 ・1980 年 - ・2014 年 - - - - ・2010 年

出荷台数 ・306 台 - ・12 基 - - - - ・41 台 出荷国 ・欧州(ドイツ、イタリ

ア、オーストリア、スペイン等)、カナダ、日本

・欧州(ノルウェー、ドイツ等)、アメリカ、南アフリカ

・欧州(オランダ、チェコ、イタリア、イギリス等)

・欧州(フランス)、中国

・欧州(イタリア、フランス等)、トルコ等

日本への納入状況 ・1 台(地熱発電) ・タービンは D 社製、そのほかは ASME 規格品若しくは JIS 規格品を使用

・E 社の設備が導入されている発電所として、3箇所(地熱発電)確認

・なし

- - - - -

その他 情報収集手段 ・ヒアリング、国内 Web

情報、メーカーHP ・国内 Web 情報、メーカ

ーHP ・ヒアリング、メーカー

HP ・メーカーHP ・メーカーHP ・メーカーHP ・メーカーHP ・メーカーHP

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33

(3) バイオマスガスを利用した発電設備について

ホームページ及びヒアリング等の調査より入手した日本で導入又は今後導入を検討して

いる欧州のバイオマスガスを利用した発電設備に関する情報を表 5.5 に示す。これらに示

す発電設備は、内燃機関を用いた発電設備であって、表 5.5 において CHP と記載があるも

のは、熱電併給装置(以下、「CHP」という。)を指している。

バイオマスガスを利用した CHP は、熱分解ガス化やメタン発酵ガス化技術を用いてガス

化を行い、このガスを利用して、温水等の熱利用とガスエンジン等による発電を行うもの

である。これらの設備は、欧州では地域熱供給事業で活用されている設備である。しかし、

日本では地域熱供給事業を実施している地域が少なく、冬季に熱需要がある地域が限定さ

れ、その他にも熱インフラが既に整備されていること等が必要であるため、日本での活用

事例は限られているものと思われる。

国内調査により、メタン発酵ガス化技術を活用した発電設備は既に日本での導入が進ん

でいるのに対し、熱分解ガス化発電設備は日本での導入が開始された段階であることから、

欧州での動向調査は、熱分解ガス化発電設備の日本への導入に積極的な発電設備メーカー

のうち、ドイツで普及している L 社について実施した。

熱分解ガス化発電設備とメタン発酵ガス化発電設備の概要を以下に示す。

(a) 熱分解ガス化発電設備の概要

熱分解ガス化発電設備の主な構成機器は、ガス化炉、ガス熱交換器、ガスフィルター、

ガスクーラー、ガス圧縮機(フィルターのクリーニング用)及びガスエンジン等である。

熱分解ガス化発電設備の概要図を図 5.7 に示す。

本設備は、電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)に当てはめると、ガ

ス化炉、ガス熱交換器及びガスフィルター等の設備については【ガス化炉設備】で、ガス

エンジンは【内燃機関及びその附属設備】に該当する。

図 5.7 熱分解ガス化発電設備の概要図

ガス化炉

(不完全燃焼による熱発生)

バイオマス

空気

燃料

熱交換器

温水熱供給

:熱の流れ

:ガスの流れ

ガスエンジン

(燃焼)

不純物

発電機ガスフィルタ

ガスクーラー

電力供給

熱供給

発電、熱供給ユニットガス化装置

内燃機関及びその附属設備ガス化炉設備

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34

(b) メタン発酵ガス化発電設備の概要

バイオマスガスを利用したメタン発酵ガス化発電設備の構成機器は、ガスエンジンと発

電機である。ガスエンジンに供給されるガスは、メタンガス及び天然ガス等である。メタ

ン発酵ガス化発電設備の概要図を図 5.8 に示す。

バイオマスガスを発生させる発酵槽等が既に存在するには、ガスエンジン発電システム

を追加することが可能である。

本設備は、電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)に当てはめると、バ

イオマスガス発生設備は【ガス化炉設備】で、ガスエンジンは【内燃機関及びその附属設

備】に該当する。

図 5.8 メタン発酵ガス化発電設備の概要図

ガスエンジン

(燃焼)

発電機 電力供給

熱供給

:熱の流れ

:ガスの流れ

発電、熱供給ユニット

バイオマスガス(メタン発酵等)

内燃機関及びその附属設備ガス化炉設備

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35

表 5.5 欧州のバイオマスガスを利用した発電設備に関する情報

会社名、国名

会社名 L 社 M 社 N 社 O 社 P 社 Q 社 R 社 国名 ドイツ フィンランド ドイツ オーストリア ドイツ ドイツ ドイツ

国内代理店の有無 有り 有り 有り 有り 不明 有り 不明

設備概要

設備種別 ・CHP(木質ガスを利用) ・CHP(木質ガスを利用) ・CHP(木質ガスを利用) ・CHP(木質ガスを利用) ・CHP(バイオマスガスを利

用) ・CHP(バイオマスガスを利用)

・CHP(バイオマスガスを利用)

出力(熱) ・270 / 260 kWth ・100kWth ・73kWth~108kWth ・4.5MWth~6.2MWth ・115kWth~563kWth ・43kWth~2MWth ・166~587kWth 出力(電気) ・180 / 165 kWe ・40kWe ・30kWe~45kWe ・2MWe~5MWe ・100kWe~525kWe ・20kWe~2MWe ・100~500kWe

使用温度(発電機) - - - - - - - 使用圧力(発電機) - - - - - - -

利用可能な燃料 ・木質ペレット(約 110kg/

時間) ・木質チップ(含水率 18%以下)4.5m3/日

・木質チップ ・150mm 以下の木質チップ(水分:20~50%)

・バイオマスガス、天然ガス ・バイオマスガス、天然ガス ・バイオマスガス、天然ガス、木質ガス、プロパンガス

発電機システムの構成 ・ガス化ユニットと発電機の組み合わせ

・ガス化ユニットと発電機の組み合わせ

・ガス炉と発電機の組み合わせ

・ガス化炉、ガスエンジン、発電機の組み合わせ

・ガスエンジンと発電機の組み合わせ

・ガスエンジンと発電機の組み合わせ

・ガスエンジンと発電機の組み合わせ

作動媒体の種類 ・木質ガス ・木質ガス ・木質ガス ・木質ガス ・バイオマスガス、天然ガス ・バイオマスガス、天然ガス ・バイオマスガス、天然ガス、

木質ガス、プロパンガス

設備の特徴

・ガス化炉はアップドラフト流動床方式

・ガスエンジンはドイツのメーカー製

・ガス化炉はダウンドラフト方式

・ガスエンジンはフィンランドのメーカー製

・ガス化炉はダウンドラフト方式

・水蒸気を注入することで、低タールを実現したガス化設備

・ガスエンジンは現在自社製・コジェネシステムの設計、製作も実施

寿命、監視体制

想定寿命 - - - - - - - 年間稼働時間 ・7788 時間 - ・7000~8000 時間 - - - -

監視体制 ・アラーム情報のメール転送機能

・遠隔操作による運転及び設定変更も可能

- - - -

・遠隔監視ソフトが標準装備 ・ドイツのサービスセンターへ常時データを転送して、24 時間体制で全システムをサポート

リモート監視でのモニタリング項目

・燃料、空気供給量 ・ガス化炉の温度、圧力 ・木質ガス組成(CO,CO2,CH4 等)

・配管圧力・温度 ・エンジンの温度、圧力 ・発電量 ・温水配管温度

- - - -

・ガスセンサー(メタン) ・発熱量

保守内容、間隔 ・CHP の保守(21 日に 1 回) ・ガス化炉内部のクリンカー除去(4~6 週間ごとに 1回)

・ガス化炉インサート交換(1年に 1 回)

・エンジン交換(5 年に 1 回)

- - - -

・3 ヶ月に 1 回に定期メンテナンス

・6 万時間(7-10 年)に 1回主要部品を交換 -

トラブル事例 - - - - - - -

実績

販売開始時期 ・2009 年 -

・2008 年 ・2001 年頃 ・1992 年 ・1995 年 ・1976 年(ガスエンジン販売)

出荷台数 ・120 台 ・20 台 ・500 台 ・3500 台 ・4000 台以上 ・500 台

出荷国 ・欧州(ドイツ、イタリア)や日本

・カナダやオーストラリア ・欧州(ドイツ、イタリア、スロバキア、オーストリア、ポーランド、ラトビア、スロベニア)や日本

・欧州(フランス、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、オランダ、イタリア)やブラジル

・欧州(フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、オランダ等)、アメリカ、カナダ、ホンジュラス及び日本

日本への納入状況 ・1 台

・なし ・1 台

・なし ・1 台

・43 台 ・1 台

その他 情報収集手段 ・国内代理店へのヒアリン

グ、パンフレット、メーカーHP

・国内代理店へのヒアリング、パンフレット、メーカーHP

・国内 Web 情報、メーカーHP

・国内 Web 情報、メーカーHP

・国内 Web 情報、メーカーHP

・国内代理店へのヒアリング、国内 Web 情報、メーカーHP

・国内 Web 情報、メーカーHP

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36

5.3.2 海外調査

国内調査の結果を参考に、日本での導入実績が多い又は日本での導入を積極的に検討し

ている欧州ボイラーメーカーを抽出して、その欧州ボイラーメーカー及び欧州で設置され

ている発電設備について、現地調査を行い、事例及び規制内容の調査を実施した。

(1) バイオマスボイラーメーカーへの調査

バイオマスボイラーについて、スイス及びオーストリアのボイラーメーカー(合計 2 社)

へのヒアリングを通して、設備概要、適用している規制、規格及び保安動向について調査

を実施した。ヒアリングを実施したメーカーを表 5.6 に示す。

表 5.6 ヒアリングを実施したボイラーメーカー

メーカー名 国名 概要

A 社 スイス 日本での導入台数が 200 台を超えるバイオマ

スボイラーメーカー

C 社 オーストリア 含水率の高い木質チップを燃料とすることが

できるバイオマスボイラーメーカー

バイオマスボイラーメーカーへのヒアリング等の調査より入手した情報を表 5.7 に示す。

A 社及び C 社のバイオマスボイラーを用いた発電設備の概要図を図 5.9 に示す。また、A

社及び C 社のバイオマスボイラーを図 5.10 及び図 5.11 に示す。

① 設備概要

A 社の設備は欧州や日本を中心に多数の販売実績があり、C 社の設備はオーストリア、イ

タリア及びスロベニア等で販売され、日本でも導入事例がある。これらの設備は、欧州で

は発電用ボイラーとして活用されているが、日本では発電用ボイラーではなく、給湯目的

の温水ボイラーとして活用されており、労働安全衛生法の適用範囲である。また、いずれ

のボイラーメーカーも欧州及び日本の市場を対象としているが、米国への市場展開につい

ては消極的であった。

A社やC社の設備は、発電用ボイラーとしての活用実績は、D社のORC発電設備が多い。

バイオマスボイラーと ORC 発電設備を接続する際には、ボイラーの燃焼炉から発生する約

900℃以上の高温ガスを、サーマルオイルとの間で熱交換をして、サーマルオイルを約315℃

に加熱する。その温度では液体であり、加圧水等の媒体よりも高い温度であることから、

ボイラーから発生する熱を液体の状態で受け取ることが可能といった利点がある。また、

サーマルオイルは ORC 発電設備の蒸気タービンの作動媒体であるシリコンオイル(作動条

件下での沸点 230℃又は 280℃)を加熱するのに用いられている。サーマルオイルの最高使

用温度として、メーカーは 345℃程度で使用することを推奨していた。

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欧州では、バイオマスボイラーとしての代表的な利用方法は、地域熱供給事業が事業主

体であって、発電事業は副業の位置づけである。従って、熱需要の規模に応じてボイラー

が選定されるため、小型の発電設備を活用して発電事業(主に FIT を活用した売電)を行

う場合、季節などの需要変動に応じた部分負荷運転が可能な発電設備の導入が検討される。

欧州の蒸気タービン発電設備の場合、最小負荷が 70%程度と高いため、40%程度の負荷で

運転が可能な ORC 発電設備が普及している。また、部分負荷の問題以外に、蒸気タービン

においては公的資格を有する管理者を配置する必要があるのに対して、サーマルオイルを

利用したボイラーの場合には公的資格を有する管理者の配置を求められていないといった

点も、欧州で ORC 発電設備が普及している理由の1つである。

② 適用している規制及び規格

欧州のバイオマスボイラーは、PED に準拠しており、EU 加盟国へ輸出する際には、安

全基準条件を満たすことを証明するマーク(以下、「CE マーク」という。)を貼付すること

で、これらの設備は欧州各国へ輸出することができる。

適用する規格としては、ドイツ、スイス及びオーストリアでは、サーマルオイルを利用

するバイオマスボイラーの場合は、ドイツ規格協会(Deutsches Institut für Normung)が

制定するドイツの国内規格(以下、「DIN 規格」という。)の1つである DIN4754(Heat

transfer installations working with organic heat transfer fluids - Safety requirements,

test)の規定に従って熱輸送に関する設計がされている。また、構造設計はドイツ圧力容器

協会が作成した圧力容器に関する民間規格のAD2000圧力容器規格(AD-Merkblatter 2000)

を適用している。また、溶接の品質については、AD 2000-Merkblatt HP0 及び EN 規格の

溶接に関する品質要求である EN ISO 3834 の認証を公認検査機関から受けている。

公認検査機関によるボイラーの検査では、ドイツの蒸気ボイラーの木質燃焼システムに

関する技術的な規則である Technische Regeln fur Dampfkessel 414(以下、「TRD 414」

という。)を参照している。ただし、TRD 414 は近年更新されていないため、最近の技術に

は適応していない点には注意を要する。

③ 材料

今回調査したバイオマスボイラーメーカーで使用している材料は炭素鋼が主流であって、

例えば、EN10025-2 に規定された材料である S235JRG2(一般構造用圧鋼材(JIS G3101)

の SS330 に相当)、EN10028-2 に規定された材料である P265GH(ボイラー及び圧力容器

用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板(JIS G3103)の SB410 に相当)が用いられている。また、

ASME 規格に基づく設計は可能であるものの、ASME 規格材料を使用することは高コスト

になるため、欧州のボイラーメーカーは ASME 規格に対応した設備の開発には消極的であ

った。

④ 保安動向

・自動停止機能

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38

発電設備においては、温度や圧力等が計測されており、これらの計器が異常値を示した

場合には、ボイラーを含む発電設備が自動停止する。ボイラーでは、燃焼炉へ供給される

空気を遮断することで、ボイラーを鎮火させる。熱交換器は、自動停止機能が働いた場合

でも燃焼炉からの余熱により媒体を加熱し続けるため、非常用冷却装置により媒体を冷却

する機能を有している。非常用冷却装置は、蒸気ボイラーでは EN12953 で、サーマルオイ

ルを用いたボイラーは DIN4754 で規定されている。

・管理及び監視体制

蒸気ボイラー又は加圧水(110℃以上かつ 0.05MPa を超えるもの)を熱媒体として用い

るボイラーは、欧州では有資格者(専門的な研修を受講した者)による管理が必要となる。

サーマルオイルを飽和温度以下で用いるボイラーは、公的資格を有する管理者による管

理は必要ない国がある一方で、イタリアのように、全てのボイラーに対して公的資格を有

する管理者が必要な国もある。

オーストリアでは、管理者がボイラー設備の制御盤にあるボタンを一定時間押さない状

態が続くと、ボイラー設備が自動停止する機能があり、無人運転が可能な時間は限られる。

ヒアリング調査では、ドイツやスイスでも、同様の機能があるとのことだった。

⑤ 事故事例

サーマルオイルを用いたバイオマスボイラー設備に関する大きな事故事例として、オイ

ルの漏えいに起因する火災の事例が 2~3 例挙げられた。1 件は、配管のフランジからの漏

えいであり、残りの事例はポンプのシール部からの漏えいであった。フランジからの漏え

いの事例では、漏えいにより断熱材内部に染み込んだオイルに含まれる酸素が原因で火災

に至ったものである。

フランジからの漏えいは、基本的に配管を溶接し、フランジの一部も、断熱材に漏えい

したオイルが染み込まない対策を行っている。ポンプの漏えいは、シールを必要としない

マグネット式のポンプを用いる対策を行っている。また、これらの部位からオイルが漏れ

ないかを、ガス濃度の測定により監視している事業所もあった。以上のことから、火災が

原因となる事象は、現在では技術的に対応が可能である。

⑥ その他

スイスのボイラーメーカーへのヒアリング調査によると、ボイラーメーカーの責任とし

ては、設備自体(設計条件とそれに対応した設備)に責任を持ち、メーカーの要求の検査

や部品交換等が実施されれば、10 年間の保障を約束しているとのことであった。しかし、

運用時に要求どおりに適切な検査や部品交換が行われていない場合には、メーカー側の製

品に対する保障が適用されないため、設置者にも適切な運用を実施することが求められて

いる。

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図 5.9 A 社及び C 社のバイオマスボイラーを用いた発電設備の概要図

燃料

蒸気

タービン

:熱の流れ

ボイラー

中間媒体

作動媒体

発電機

発電設備

熱供給 熱供給熱供給

高温ガス

熱交換器

熱交換器

ボイラー及びその附属設備 蒸気タービン

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図 5.10 A 社のバイオマスボイラー

図 5.11 C 社のバイオマスボイラー

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表 5.7 バイオマスボイラーに関するヒアリング結果(1/3)

会社名、国名

会社名 A 社 熱交換器メーカーS 社 (Heat11 社)

C 社

国名 スイス ドイツ オーストリア

設備概要

出力(熱) ・100kWth-6MWth

・400kWth~15MWth (温水、蒸気) ・3.3MW~12MWth (サーマルオイル)

使用温度(ボイラー)

・~98℃(温水) ・~120℃(熱水) ・~200℃(蒸気) ・~315℃(サーマルオイ ル)

・燃焼温度:950℃

・~110℃(温水)、 ・~200℃(熱水) ・~450℃(蒸気) ・150~315℃(サーマルオイル)

・燃焼炉内の温度は 900℃、警告温度は 1050℃

使用圧力(ボイラー)

・1.6MPa(温水、蒸気) ・1.0MPa(サーマルオイル)

- ・0.05~4MPa(蒸気ボイラー)

利用可能なバイオマスタイプ

・生チップ、乾燥チップ、 ペレット

・木質チップ、カット木 材(燃料中の水分 20~ 60%(重量比))

・窒素、硫黄、塩素の含 有量に制限あり

材料 ・S235JRG2(SS330 相当)

・P265GH(SB410 相当) ・S235JRG2(SS330 相当)等

・P235GH(SB410 相当)を主に使用

・配管は P235GH+N ・EN10216-2 に材料の規格の記載あり

設備の特徴 ・無圧式ボイラー ・ラムダ・コントロール(O2

センサー)搭載により燃料の樹種や含水率に自動的に対応

・ストーカー炉

・階段式ストーカー炉 ・燃焼ガスを吸気ファンで吸引しているため、50~100hPa の負圧である

・熱交換器は、使用圧力1.3MPa、検査圧力3.3MPa

接続実績のある発電機の情報

発電機システムの構成

・ボイラー+ORC 発電設備(想定システム)

・ボイラー+スターリングエンジン発電設備

・ボイラー+蒸気タービン

・主にボイラーのみ ・ボイラー+ORC 発電設備(想定システム)

・ボイラー+小型バイナリー発電設備

発電機システムメーカー

・D 社 ・G 社(倒産し、現在実質的な活動はない)

- ・D 社 ・日本での設置設備は日本製

作動媒体の種類

・シリコンオイル(他の媒体もあるが、効率的にはシリコンオイルが有利)

- ・シリコンオイル ・日本での設置設備は、代替フロン

実績

販売開始時期

・1935 年 -

・1990 年頃

出荷台数 ・不明 - ・不明

出荷国 ・欧州(スイス、ドイツ、イギリス等)や日本 -

・欧州(オーストリア、イタリア、スロベニア等)や日本

日本への納入状況

・約 200 台 ・発電事業への利用実績は 1

・プロセス用の設備であるが、日本への輸入実績あり

・1 台 ・発電事業への利用実績は 1

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表 5.7 バイオマスボイラーに関するヒアリング結果(2/3)

会社名 A 社 熱交換器メーカーS 社 (Heat11 社)

C 社

国名 スイス ドイツ オーストリア

寿命、監視体制

想定寿命 ・20 年以上 ・30 年以上 ・20 年

年間稼働時間

・8000 時間(定期メンテナンス以外はほぼ稼働)

・8000 時間(定期メンテナンス以外はほぼ稼働)

・定期メンテナンス以外は稼動

監視 ・蒸気タービンは公的資格が必要

・ORC は法律では定められていないが、メーカーの指定した研修を受けた人間により管理

・昼間は社員管理者が常駐するが、深夜、休日は監視なし

・現地以外の事務所でも遠隔監視を実施

・トラブル時は 30 分以内に管理者が現地に赴く

・法律では定められていないが、メーカーの指定した研修受講者により管理

・本社に、緊急ホットラインを設け、各設置場所からの相談に対応

・ドイツ、オーストリア、スイスでは、各国の規定により詳細は異なるが、一定時間内に点検しないと停止する機能あり

モニタリング項目

・温度、圧力等を遠隔監視が可能

・ユーザーの熱利用についても遠隔監視を実施

・モニタリング項目はインターネットを介し、どこでも確認が可能

・温度、圧力、発熱量、特に、熱交換器の壁面近傍の膜温度(film temperature)

・インターネット経由で、本社でもモニタリング項目データは入手可能

定期点検、間隔

・法律で定められた定期検査を 2 年に 1 回実施

・検査項目はドイツに比べると少ない

・法律で定められた定期検査を 2 年に 1 回実施

・ドイツでは、定期点検時には制御系システム、熱交換器の肉厚等が確認される

保守内容、間隔

- -

・熱交換器については、スラグが発生しない設備では年に 1 回点検

・スラグが発生する設備では、定期的にブラシング等で除去する必要あり

トラブル事例

・A 社ではないが、火災事例について 2 事例あり

・1 件は配管からのサーマルオイルの漏えいによる火災、もう1件はポンプのシール部からのオイルの漏えいによる火災

・サーマルオイルポンプのベアリングからオイル漏れによる火災が 2 事例あり

適用法令等

適用される法律、規格

<圧力機器> ・PED(カテゴリーI) ・AD2000 <サーマルオイル> ・DIN4754 <蒸気ボイラー、加圧水ボイラーの場合>

・EN12953

同左 <圧力機器> ・PED(カテゴリーII) ・AD2000 <サーマルオイル> ・DIN4754 ・VDI3033 ※ <溶接> ・AD2000 HP0 ・EN ISO 3834-2 ・EN287、EN288 <寸法> ・DIN2448 <検査> ・TRD414

※VDI3033 は、ドイツ技術者協会(Verein Deutscher Ingenieure:VDI)が定めたサーマ

ルオイルに関する技術基準。近年更新されていないが、公認検査機関の検査で使われ

ている。

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表 5.7 バイオマスボイラーに関するヒアリング結果(3/3)

会社名 A 社 熱交換器メーカーS 社 (Heat11 社)

C 社

国名 スイス ドイツ オーストリア

その他

その他 ・PED に規定されている許容応力の安全率は、厳密な設計計算を行った場合の安全率であり、実際には PED の規定以上の安全率を適用

・ASME 規格での設計は可能であるが、ASME規格材料の入手は高コスト

・欧州では、熱源に対する規制はないため、廃熱の利用が可能

・ドイツの熱交換器メーカーで A 社とのヒアリングに同席

・ASME 規格での設計事例あり

・樹皮を含む燃料の場合、エコノマイザに不純物やスラグ状の灰分が付着し過熱を起こすことが原因となり、火災発生の可能性が高まる

・管内の十分な清掃効果を持つシステムの構築と灰分(ash)を含む高温ガスが通過する管の膜温度(film temperature)管理が重要

・フランジはパッキングを耐火材料にして防火対策を実施

・ASME 規格品を使用する予定はなし

・保険会社のHDI-Gerling がサーマルオイルの使用ガイドラインを発行

・サーマルオイルについて、欧州の統一規格がまだ完成していないが、必要性の認識あり

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(2) ORC 発電設備メーカーへの調査

ORC 発電設備について、イタリア及びノルウェーの ORC 発電設備メーカー(合計 2 社)

へのヒアリングを通して、設備概要、適用している規制、規格及び保安動向について調査

を実施した。ヒアリングを実施した ORC 発電設備メーカーを表 5.8 に示す。

表 5.8 ヒアリングを実施した発電設備メーカー

メーカー名 国名 概要

D 社 イタリア 導入台数が 300 台を超える ORC 発電設備のメー

カー

F 社 ノルウェー 往復機関式の ORC 発電設備を製造しているメー

カー

ORC発電設備メーカーへのヒアリング等の調査より入手した情報を表 5.9に示す。また、

D 社のタービン式 ORC 発電設備の概要図を図 5.12 に、F 社の往復機関式 ORC 発電設備

の概要図を図 5.14 に示す。また、D 社のタービン式 ORC 発電設備を図 5.13 に示す。

(a) タービン式の ORC 発電設備

① 設備概要

今回現地視察した地域(ドイツ、スイス、オーストリア及びイタリア)で普及している

ORC 発電設備は、D 社が製造している設備であった。

D 社の発電設備と接続する主なバイオマスボイラーは、A 社、B 社及び C 社の設備のほ

かに、イタリアやオーストリア等のバイオマスボイラーメーカーとの設備も実績があった。

今回現地視察した地域以外では、フランス、スペインにも、ORC 発電設備のメーカーが

あるとのことだった。しかし、イタリア、ドイツ、スイス及びオーストリアでは D 社以外

の ORC 発電設備に関する情報は、会社名も含めて得られなかった。

蒸気タービンと比較して、ORC 発電設備の利点は、水を過熱する(super heating)プロ

セスがないため、シンプルなシステムであり、タービンブレードにエロージョン(機械的

な作用による材料表面の磨耗)が生じることがないため、設備の寿命が長くなること等が

挙げられる。

タービン方式の ORC 発電設備を作動させる有機媒体はシリコンオイルであり、オクタメ

チルトリシロキサン(MDM)(作動条件下での沸点 280℃)やヘキサメチルジシロキサン

(MM)(作動条件下での沸点 230℃)が用いられている。シリコンオイルを加熱する媒体に

は、作動条件下でのシリコンオイルの沸点を考慮して、バイオマスボイラーの燃焼ガスに

より 315℃程度に加熱されたサーマルオイルが用いられている。

② 適用している規制及び規格

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D 社の発電設備は PED に準拠しており、CE マークを貼付した設備であり、適用規格と

しては EN13445 に整合している。可燃性物質と空気との混合濃度が爆発限界内の状態であ

る爆発性雰囲気については、欧州の爆発のおそれのある雰囲気で使用される設備に関する

指令である防爆指令 ATEX Directive No.94/9/CE(以下、Directive 94/9/CE(ATEX)とい

う。)や、EN 規格の EN1127-1:爆発性雰囲気- 爆発の予防と防護 Annex B(以下、「EN1127-1

Annex B」という。)等が適用している。

欧州各国における国内規制は、例えば、イタリアの場合は、Raccolta VSR(圧力容器規

制)等の国内規制を適用し、ドイツの場合は、Verordnung uber Sicherheit und

Gesundheitsschutz bei der Verwendung von Arbeitsmitteln (Betriebssicherheitsveror-

dnung – BetrSichV):設備使用の安全・労働衛生に関する規則(産業安全衛生規則)(以

下、「産業安全衛生規則」という。)を適用している。

ただし、タービン方式のORC発電設備については、欧州では適用される基準がないため、

D 社が自ら、製造とテストの規約(プロトコル)を定めている。

北米ではカナダへの輸出実績があり、この場合は、ASME 規格に適合した ORC 発電設備

を設計し、製造したとのことだった。圧力機器は ASME SecⅧ div1 の適用を受けて、配管

部分はプロセス配管に関する規格である ASME Boiler and Pressure Vessel Code B31.1

(以下、「ASME B31.1」という。)の適用を受けている。更に、爆発性雰囲気については、

Directive 94/9/CE(ATEX)や、EN1127-1 Annex B 等の適合を受けている。

③ 材料

欧州において D 社の発電設備を納入する場合、タービンブレードを含め、基本的には欧

州で入手が可能な炭素鋼を用いて製造している。再生器は、銅とニッケルの合金で製造し

ている。

ASME 規格の材料は、欧州においても、ASME B36.10(溶接及びシームレス錬鋼管)や

ASME B16(弁、フランジ、管継手及びガスケット)等が適用可能であるとのことであっ

た。

更に、降伏応力については、日本国内で一般的に用いられている耐力評価方法である 0.2%

オフセット耐力を欧州でも使用しているとのことだった。

④ 保安動向

・自動停止

発電設備は、温度や圧力等が計測されており、これらの計器が異常値を示した場合には、

発電設備が自動停止する。そのため、管理者が現場に駆けつけて操作を行う必要はない。

また、例えば、外部電源と非常用ディーゼル発電機若しくはバッテリーのように異なる電

源を有する非常用冷却ポンプが複数あって、停電時等においても確実に冷却できる。

・管理及び監視体制

ORC 発電設備にはタービンが含まれるが、蒸気タービンではないため、蒸気タービンに

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関する法規の対象外となる。従って、公的な資格を有する管理者に関する規定はないが、

発電設備メーカーは 24 時間おきの目視確認を推奨しており、現地調査では月曜日から金曜

日までの平日は管理者が常に駐在している事例が多数見られた。

⑤ 事故事例

D 社の ORC 発電設備では、重大な事故事例はなかった。熱源となるサーマルオイルの漏

えいに起因する火災事例でも、D 社の ORC 発電設備への延焼の被害は免れていた。

⑥ 廃熱を直接利用する事例

ヒアリングでは、サーマルオイルのような中間媒体を介さずに、廃熱を直接利用した ORC

発電設備の設置事例があるとの情報を得た。

また、廃熱を直接利用する場合、熱源となる排ガス高温対策を 2 段階で実施している。

・希釈空気を空気ファンにより混合させて、排ガスの温度が規定(550~600℃程度)の

温度になるように下げる。

・この希釈空気対策でも、更に温度が上昇するような異常事態となった場合は、熱交換

器の保護のため、排ガスを熱交換器からバイパスさせるようにダンパー等により切り

替える。

更に、排ガス中の硫黄化合物による低温腐食を防ぐために、熱交換器出口の排ガス温度

は、酸露点温度を最低温度として制限している。

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図 5.12 D 社のタービン式 ORC 発電設備の概要図

図 5.13 D 社のタービン式 ORC 発電設備

熱源

(バイオマスボイラー)

熱交換器

蒸気

蒸気タービン

:熱の流れ

中間媒体

作動媒体

発電機

有機ランキンサイクル発電設備

蒸気タービン及びその附属設備ボイラー及びその附属設備

熱交換器

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(b) 往復機関式の ORC 発電設備

① 設備概要

往復機関式の ORC 発電設備として、ノルウェーの F 社が開発した設備では、蒸気を作動

媒体とした往復動式膨張機を用いて発電し、エンジンはドイツのメーカーが設計している。

F 社の設備は、1 台あたり 10~15kWe と小型の設備であり、4 台1組で1つのパッケー

ジとして販売し、2014 年度は、10kWe のデモ機 18 基を製造し、このうち 12 基を導入し、

6 基をテストに使用した。2015 年度は、合計 40kWe(10kWe×4 台)のパッケージを 25 セ

ット、10kWe の設備を 10 基導入している。2016 年度は、4 台1組のパッケージを 250 セ

ット以上導入することを計画している。

導入実績のある国は、米国、ドイツ、ノルウェー及び南アフリカであり、今後は日本に

も導入する予定であるとのことだった。

② 適用している規制及び規格

PED の適用を受けた設備ではあるが、圧力容器に関する EN 規格の適用はないとのこと

である。

③ 材料

設備に使用している材料は、主に炭素鋼、アルミニウム、ねずみ鋳鉄であるとのことで

あったが、詳細な材料規格に関する情報までは得られなかった。

④ 保安動向

・自動停止

発電設備にトラブルが生じた場合には、バイパスラインへ逃がす弁が開くことで、圧力

低下を図り、自動停止させる機能を有しているとのことだった。

・管理及び監視体制

圧力 3.2MPa 以上又は容量が 1000L 以上若しくは圧力×容量の積が 300MPa・L 以上で

あれば、72 時間に 1 回の監視が必要であるが、F 社の設備は圧力が小さく、これらの要件

に該当しないため、72 時間に 1 回の監視は必要ではないとのことだった。

⑤ 事故事例

大きな事故に関する事例はないとのことだった。

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図 5.14 F 社の往復機関式 ORC 発電設備の概要図

熱源

(バイオマス、地熱、廃熱等)

熱交換器

蒸気

往復動式膨張機

:熱の流れ

中間媒体

作動媒体

発電機

有機ランキンサイクル発電設備

特殊設備ボイラー及びその附属設備

熱交換器

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表 5.9 ORC 発電設備に関するヒアリング結果(1/2)

会社名、国名

会社名 D 社 F 社 国名 イタリア ノルウェー

設備概要

出力(電気) ・200kWe~15MWe ・60kWe(15kWe×4) 使用温度(発電機) ・240~320℃ ・215℃(250℃を超えると自動停止)

使用圧力(発電機) ・1.0MPa ・3.0MPa 利用可能な熱源の種類

・地熱、バイオマス、廃熱、太陽熱及び廃棄物発電等

・バイオマス、地熱及び廃熱等

熱源の温度 ・100~1000℃ ・80~215℃

発電機システムの構成

・蒸気タービンを含む発電設備 ・蒸気内燃機

作動媒体の種類 ・シリコンオイル、フロン系、炭化水素系(熱源の供給温度により、作動媒体を選定)

・シリコンオイルとして、オクタメチルトリシロキサン(MDM)(作動条件下での沸点 280℃)、ヘキサメチルジシロキサン(MM) (作動条件下での沸点 230℃)を使用

・フロン系又は炭化水素系

材料 ・タービン、熱交換器、配管に使用される主な材料は炭素鋼

・再生器は、銅とニッケルの合金

・炭素鋼、ステンレス鋼及びねずみ鋳鉄

設備の特徴 ・タービンは軸流多段式で、毎分 3000回転、圧力は 1.0MPa

・タービンブレードの大きさは、5cm~12cm

・水を過熱する(super heating)プロセスが不要なため、蒸気タービンと比較してシンプルなシステムとなる

・タービンブレードのエロージョンの心配がないため、設備の寿命が長い

・蒸気タービンを往復動式膨張機に変更したシステム

・エンジンはドイツのメーカー製品

実績

販売開始時期 ・1980 年 ・2014 年 出荷台数 ・306 台 ・12 基(2014 年)

・2016 年度は 250 セット以上の販売を計画

出荷国 ・欧州(ドイツ、イタリア、オーストリア、スペイン等)、カナダ及び日本

・ノルウェー、ドイツ、米国及び南アフリカ

日本への納入状況 ・1 台(地熱発電) (出力:5MWe) ・タービンは D 社製、その他は ASME規格品若しくは JIS 規格品を使用

・なし

寿命、監視体制

想定寿命 ・25 年以上 ・80000 時間(約 10 年) 年間稼働時間 ・定期メンテナンス期間以外は稼動 ・8000 時間

監視体制 ・蒸気タービンに関する法規の対象外となるため、公的資格を有する管理者による監視の要求はなし

・9 時から 17 時の間であれば、本社から遠隔監視が可能

・夜間、週末は無人となり、携帯などでアラームを受信

・インターネット経由で、顧客との対応が可能

・24 時間おきに 10 分程度の目視を推奨

・リモートモニタリング監視を想定 ・圧力 3.2MPa 以上、容量 1000L 以上、

圧力×容量=300MPa・L 以上であれば、72 時間に 1 回の監視が必要であるが、圧力が小さいため、監視は不要

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表 5.9 ORC 発電設備に関するヒアリング結果(2/2)

会社名 D 社 F 社 国名 イタリア ノルウェー

寿命、監視体制

モニタリング項目 <サーマルオイル> ・サーマルオイルの温度が規定温度よりも高くなると、自動停止

<発電機> ・潤滑油の温度 ・振動 ・フランジ周辺ではガスアナライザーにより漏えいの検出を行う

・問題が発生したときは、自動的に緊急遮断し、安全確認後に、再起動を行う

・温度、圧力及び出力等

定期点検、間隔 - ・メーカー推奨では 8000 時間に 1 回 保守内容、間隔 ・定期的なメンテナンスは、1 年に 1

回が基本であるが、6 ヶ月に 1 回の頻度で実施する項目もあり

・タービンのベアリングは 2 年に 1 回交換

トラブル事例 ・オランダのバイオマスプラントで火災が発生したことがあるが、ORC 発電設備は問題なし

・なし

適用法令等

適用される法律、規格

【欧州】 <圧力機器> ・PED ・EN13445 <爆発性雰囲気> ・Directive 94/9/CE(ATEX) ・EN1127-1 Annex B <溶接> ・EN15607、EN287-1 等 【イタリア国内規則】 <圧力機器> ・Raccolta VSR 等 【ドイツ国内規則】 <産業安全衛生> ・BetrSichV 【カナダでの事例】 <圧力機器> ・ASME SecⅧ div1 <配管> ・ASME SecII B31.3 <爆発性雰囲気> ・Directive 94/9/CE(ATEX) ・EN1127-1 Annex B ・IEC 60079-10-1 ※1 <その他> ・NFPA70 ※2

<圧力機器> ・PED <機械安全性> ・EN ISO 12100:2010 ・EN ISO 13849-1:2008/AC:2009 ・EN ISO 13850:2008 ・EN ISO 1997+A1:2009 ・EN 1037:1995+A1:2008 ・EN 60204-1:2006/AC:2010 <その他> ・EN ISO 3746:2010 ・EN ISO 13732-1:2008

その他

その他 ・蒸気タービンではないため、蒸気タービンに関する法規の対象外と認識

・電源が異なる(外部電源及び非常用DG 等)冷却系非常用ポンプが複数台設置

・バイオマスボイラーを供給するメーカーの組み合わせとしては、A 社、B社、C 社のほか、イタリアやオーストリア等のメーカー製品の実績あり

※1:IEC 60079-10-1 は、国際電気標準会議が定めた爆発性雰囲気に関する規格。

※2:NFPA70 は、全米防火協会が電気の使用から生じる危害が人命及び財産に及ぶこと

を保護することを目的として定めた米国電気工事基準。

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(3) バイオマスガスを利用した発電設備メーカーへの調査

バイオマスガスを利用した発電設備について、ドイツの発電設備メーカーへのヒアリン

グを通し、設備概要、適用している規制、規格及び保安動向について調査を実施した。ヒ

アリングを実施したメーカーを表 5.10 に示す。

表 5.10 ヒアリングを実施した発電設備メーカー

メーカー名 国名 概要

L 社 ドイツ 木質ペレットを燃料とする熱分解ガス化発電設備の

メーカー

バイオマスガスを利用した発電設備メーカーへのヒアリング等の調査より入手した情報

を表 5.11 に示す。L 社のバイオマスガスを利用した発電設備の概要図を図 5.15 に示す。

また、L 社のバイオマスガスを利用した発電設備を図 5.16 に示す。

① 設備概要

スイスやオーストリアではバイオマスガスを利用した発電設備は普及していないが、ド

イツやイタリアでは実績があり、普及しつつある。

L 社の設備は、ドイツやイタリアを中心に普及しており、現在までに 120 台程度導入さ

れていて、今後さらなる導入が見込める様子であった。

② 適用している規制及び規格

ガス化炉は負圧で設計されており、発電設備全体としても大気圧程度の非常に小さい圧

力で設計されているため、PED の適用対象外(0.05MPa 以下)の設備であり、発電設備メ

ーカーの責任で品質保証を行っている。また、ガスを発生させる設備のため、安全性に配

慮して、配管は 1.0MPa 相当、熱交換器は 0.6MPa 相当の圧力設計を行い、公認検査機関

の認証を受けている。

③ 材料

設備に使用している材料は、ガス化炉の内側はステンレス鋼、その他は鉄鋼材料である

との情報は得られたが、詳細な材料情報は非公表であった。

④ 保安動向

・自動停止

緊急事態が発生した場合、管理者が規定時間内に設備に到着する時は、管理者が停止操

作を行うが、規定時間を超えると、自動停止機能により停止する。

CO を含むガスを発生させる設備であるため、システムを自動停止させるための CO 検知

濃度は、一般的に危険とされる濃度よりも低い数値に設定されており、人体に与える影響

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が大きいことを考慮した安全面に配慮した措置が取られていた。

・管理及び監視体制

監視体制は、管理者を配置して、目視により安全確認を行っていた。メーカー側では、

ガスエンジン部分は 1 日に 1 回の安全確認が必要であるが、1 日に 2 回の安全確認を推奨し

ているとのことだった。

⑤ 事故事例

ガス化炉については、人的過誤による火災事例は確認されているが、設備に起因する重

大な事故事例はないとのことだった。

⑥ その他

ヒアリングによると、ドイツでは正常に機能していないガス化炉も存在するため、装置

が正常に作動することを認証するシステム(Certification System)を検討しているとのこと

だった。

また、スイスの木質バイオマスコンサルタントによると、ドイツにおけるガス化炉で安

定的な稼働や、効率の面で成功しているメーカーとしては、L 社や N 社等であるとのこと

だった。

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図 5.15 L 社のバイオマスガスを利用した発電設備の概要図

図 5.16 L 社のバイオマスガスを利用した発電設備

ガス化炉

(不完全燃焼による熱発生)

バイオマス

空気

燃料

熱交換器

温水熱供給

:熱の流れ

:ガスの流れ

ガスエンジン

(燃焼)

不純物

発電機ガスフィルタ

ガスクーラー

電力供給

熱供給

発電、熱供給ユニットガス化装置

内燃機関ボイラー及びその附属設備

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表 5.11 バイオマスガスを利用した発電設備に関するヒアリング結果(1/2)

会社名、国名

会社名 L 社 国名 ドイツ

設備概要

出力(熱) ・270 / 260 kWth 出力(電気) ・180 / 165 kWe

使用温度(発電機) - 使用圧力(発電機) -

利用可能な熱源の種類

・木質ペレット約 110kg/時間

反応炉の温度 ・800℃ 発電機システムの構成

・ガス化ユニット+発電機

作動媒体の種類 ・木質ガス

材料 ・反応炉の内側はステンレス鋼、その周囲を断熱材で囲み、外側は鉄鋼材 ・配管は鉄鋼材を使用

設備の特徴 ・ガス化炉はアップドラフトの流動床方式、ガスエンジンはドイツメーカー製を使用

販売開始時期 ・2009 年

実績

出荷台数 ・120 台 出荷国 ・欧州(ドイツ、イタリア)、日本

日本への納入状況 ・1 台 想定寿命 ・パーツを定期的に交換すれば、継続して使用可能

寿命、監視体制

年間稼働時間 ・7788 時間 ・定期メンテナンス期間以外は稼動

監視体制 ・管理者を配置して、目視で安全を確認 ・ガスエンジンは 1 日に 1 回は安全確認する必要があり、メーカー側では、

1 日に 2 回の安全確認を推奨 ・緊急事態の場合、管理者が規定時間内に設備に到着すれば、管理者が停止操作を行うが、規定時間を超える場合は、自動停止

・アラーム情報のメール転送機能あり ・遠隔操作による運転及び設定変更も可能

モニタリング項目 <重点チェック項目> ・CO 濃度(人体に与える影響が大きいため、システムを自動停止させるための CO 検知濃度は一般に危険とされる濃度よりも低く設定)

・ガス炉(下部から上部まで)の温度 ・ガス炉からフィルターまでの温度 ・メタン濃度 ・ガスエンジンの状態等 <モニタリング項目> ・燃料、空気供給量 ・ガス化炉の圧力 ・木質ガス組成(CO,CO2,CH4 等) ・配管圧力・温度 ・エンジンの温度、圧力 ・発電量 ・温水配管温度

定期点検、間隔 -

保守内容、間隔 ・CO 濃度センサーは 6 月に 1 回更正を実施 ・メーカーは、シリンダーヘッド、エンジンヘッドの交換及びピストン及びバルブのチェックを実施

・設置者はエンジンオイルの交換を実施 ・CHP の保守(21 日に 1 回) ・ガス化炉内部のクリンカー除去(4~6 週間ごとに 1 回) ・ガス化炉インサート交換(1 年に 1 回) ・エンジン交換(5 年に 1 回)

トラブル事例 ・推奨外のエンジンオイルを用いたことによる故障事例あり ・本社工場では、オイルの置き忘れによる火災が 2 事例あり

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表 5.11 バイオマスガスを利用した発電設備に関するヒアリング結果(2/2)

会社名 L 社 国名 ドイツ

適用法令等

適用される法律、規格

<圧力機器> ・圧力 0.05MPa 以下の設備であることから PED の適用対象外であり、

メーカー責任で品質保証を実施 <配管> ・配管は公称圧力 1.0MPa(PN10)で設計及び検査を実施 <熱交換器> ・熱交換器は、公称圧力 0.6MPa(PN6)で設計及び検査を実施 <その他> ・欧州機械基準(European Machine Standard)

その他

その他 ・ドイツでは機能していないガス化炉が存在しているため、装置が正常に作動することを認証するシステム(Certification System)を検討

・ガス炉の停止については、以下の措置を実施 ・ソフトウェアでの停止制御 ・PLC(Safety PLC) ・上記の制御が働かない場合、高温を感知する熱センサーが作動して、 安全タンクのバルブを開き、水が装置内に送られることにより停止

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(4) 発電事業者への調査

欧州での発電設備(3 か国、6 箇所)への視察を行い、ヒアリングを通し、欧州における

保安動向について調査を実施した。

ヒアリング調査を実施した発電事業者を表 5.12 に示す。

表 5.12 ヒアリングを実施した発電事業者

発電所名 国名 設備概要

a 発電所 スイス A 社ボイラー設備+G 社発電設備

b 発電所 スイス A 社ボイラー設備+D 社発電設備

c 発電所 スイス A 社ボイラー設備+D 社発電設備

d 発電所 イタリア U 社ボイラー設備+D 社発電設備

e 発電所 ドイツ L 社発電設備

f 発電所 イタリア C 社ボイラー設備+D 社発電設備

発電事業者へのヒアリング等の調査より入手した情報を表 5.13 に示す。発電所の状況を

図 5.17 から図 5.24 に示す。

① 発電事業者の概要

本事業では、小規模のバイオマスボイラー等の発電事業者への調査を実施したが、事業

主体はバイオマスボイラーやガス化炉を導入した地域熱供給事業であり、発電事業は副業

という位置づけであった。事業主体である熱供給事業では、必要とされる熱供給量が季節

や日によって変動する。そのため、発電設備は熱供給量の変動に追従した部分負荷運転が

可能であることを求められることから、バイオマスボイラーに発電設備を追加する場合に

は、部分負荷運転においても高効率が発揮される ORC 発電設備が選択されてきた。

今回調査した ORC 発電設備は、タービンを作動させる媒体はシリコンオイルであるが、

それを加熱する媒体には、作動条件下でのシリコンオイルの沸点(230℃又は 280℃)を考

慮して、バイオマスボイラーの燃焼ガスにより 315℃程度に加熱されたサーマルオイルが用

いられていた。

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② 遠隔監視

平日の昼間は、管理者が発電所に常駐しているほかに、ドイツやスイスでは、発電所と

は別に、事務所で遠隔監視を実施している。また、無人運転を行っている深夜にトラブル

が発生した場合には、プラントは自動停止し、管理者が 10~30 分程度で現地に到着して対

応を行う。また、10 分から 30 分程度で現地に到着して対応することは、特に法令等で規定

されている訳ではなく、発電事業者が自ら決定する事項であった。

発電設備メーカーのサービスセンターでも、インターネット経由でデータ転送が行われ

て遠隔監視を実施しているが、通信機能を利用して遠隔監視側からプラントの停止や起動

といった重要な操作は行われていなかった。

③ 定期検査

ヒアリング調査によると、スイス、イタリア及びドイツにおいては国内法により、1 年か

ら 2 年に 1 回程度の定期的な検査が求められており、検査の内容として制御装置の稼働状

況や熱交換器の肉厚測定等が規定されている。

④ 管理者資格

スイスでは、蒸気ボイラーは有資格者による管理が必要であるが、サーマルオイルを利

用したボイラー及び ORC 発電設備は、特に資格は必要ではないとのことだった。

イタリアでも、ボイラーは、有資格者による管理が必要であり、資格を取得するには、

配管、電気、水質管理、煙突や燃料等に関する 1 年間の研修と試験に合格することが求め

られるとのことであった。

⑤ 事故事例

大きな事故として、サーマルオイルを用いたボイラー設備において、オイルの漏えいに

起因する火災の事例が 2~3 例挙げられた。1 件は配管のフランジからの漏えいであり、残

りの事例はポンプのシール部からの漏えいであった。フランジからの漏えい事例では、断

熱材内部に染み込んだオイルに含まれる酸素が原因で火災に至ったものである。

フランジからの漏えいについては、基本的に配管を溶接し、フランジの一部も、断熱材

に漏えいしたオイルが染み込まない対策を行っている。ポンプの漏えいは、シールを必要

としないマグネット式のポンプを用いる対策を行っている。また、これらの部位からのオ

イル漏れがないかを、ガス濃度測定による監視を行っている事業所もあった。以上のこと

から、火災の原因となる事象については、現在では技術的な対策が実施されている。

熱分解ガス化炉については、人的過誤による火災事例があるとの情報を得たが、対策が

必要となる重大な事故は確認されていない。

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⑥ 設置者責任

スイスのボイラーメーカーへのヒアリング調査によると、ボイラーメーカーの責任とし

ては、設備自体(設計条件とそれに対応した設備)に責任を持ち、メーカーの要求の検査

や部品交換等が実施されれば 10 年間の製品保障を約束しているとのことだった。しかし、

運用時に要求どおりに適切な検査や部品交換が行われていない場合には、ボイラーメーカ

ー側の製品保障は適用されないことから、設置者にも適切な運用を実施することが求めら

れている。

⑦ その他

L 社の発電設備では、木質ペレットに関する EN 規格である EN Plus A1 を満たした木質

ペレットを使用しており、f 発電所の設備でも樹皮をほとんど含まない良質な木質チップを

使用している。その木質チップを燃料として用いて、適切な管理がなされている場合には、

定期的なメンテナンス期間を除いて、安定的な稼動状態が維持される。

一部のボイラーメーカーは、バーク材や樹皮を含む低品質な木材でも燃焼可能なバイオ

マスボイラーではあるが、低品質な木材を燃焼させた際に発生する不純物により、設備の

寿命が短くなることや、燃焼炉出口の温度が設計温度よりも低温になり設計どおりの性能

が発揮できないため、低品質な木材を使用することを推奨していないとのことだった。

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・発電所の状況

ヒアリング調査において訪問した発電所の状況を以下に示す。

① a 発電所(スイス)の状況

図 5.17 木質バイオマスの保管状況

図 5.18 非常用冷却装置の 2 台のポンプ

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図 5.19 G 社の ORC 発電設備

② b 発電所(スイス)の状況

図 5.20 公認検査機関の認証を受けた安全装置

図 5.21 圧力計測装置(単位:bar)

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図 5.22 温度計測装置(単位:℃)

図 5.23 発電所での監視状況(遠隔でも同様の画面により確認可能)

図 5.24 発電所での監視状況(遠隔でも同様の画面により確認可能)

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表 5.13 設置者に対するヒアリング結果

発電所名、国名

設置場所 a 発電所 b 発電所 c 発電所

d 発電所 e 発電所 f 発電所

国名 スイス イタリア ドイツ イタリア

設置者情報 ・熱供給事業者 ・熱供給事業者 ・L 社本社、 熱供給管理組合

・利用者共有 (the user-co-op ownership model)

設備概要

メーカー(ボイラー、 ガス化炉)

・A 社 ・イタリアメーカー ・L 社 ガス化ユニット:5 台

・他に、バイオマスボイラー オイルボイラー等

・C 社

メーカー(発電機) ・G 社 (1 箇所) ・D 社 (2 箇所)

・D 社 ・L 社 CHP:5 台

・天然ガスの CHP :1 台

・D 社

出力(熱) ・不明 ・6MWth ・約 1.7MWth(発電所全体) ・11-12MWth 出力(電気) ・各プラントとも約 600kWe ・1MWe ・約 3.2MWe(発電所全体) ・1.5MWe

使用温度(発電機) ・不明(作動媒体) ・250~315℃(中間媒体)

- - -

使用圧力(発電機) ・0.8MPa ・1.0MPa ・不明 ・不明 利用可能な熱源の種類 ・木質チップ ・木質チップ ・木質ペレット ・木質チップ

熱源の温度 ・900℃ ・900℃ - ・900℃ 発電機システムの構成 ・ORC ・ORC ・ガスエンジン ・ORC

作動媒体の種類 ・シリコンオイル ・シリコンオイル ・木質ガス ・シリコンオイル 設置時期 ・不明 ・2014 年 ・2005 年 ・1995 年(ボイラー設置)

・2003 年(発電機設置)

寿命、監視体制

稼働状況 ・定期メンテナンス以外は稼動

・定期メンテナンス以外は稼動

・定期メンテナンス以外は稼動

・定期メンテナンス以外は稼動

監視体制 ・月曜日から金曜日は管理者が常駐

・事務所においても別途他の担当者が遠隔監視を実施

・夜間、週末は無人となるが、管理者は携帯などでアラームを受信

・蒸気ボイラーであれば、有資格者の管理が必要であるが、ORC の場合は、資格の必要はない

・月曜日から金曜日は管理者が常駐

・9時から 5時の間であれば、D 社の本社から遠隔監視も可能

・夜間、週末は無人となるが、管理者は携帯などでアラームを受信

・管理者を配置して、目視で安全を確認

・ガスエンジンは 1 日に 1 回はチェックする必要があり、メーカー側では、1 日に 2 回のチェックを推奨

・緊急事態の場合、管理者が規定時間内に設備に到着すれば、管理者が操作するが、規定時間を超える場合は、自動停止が作動

・月曜日から金曜日は常時監視

・8 時間交代で合計 3 人体制にて監視、バックアップに2 人を配置

・警報が出た後、10 分以内に管理資格者の 1 人が現場に赴く

・C 社の本社でも遠隔監視可能

モニタリング項目 ・温度、圧力、運転状況及びユーザーの利用状況等

<ボイラー> ・サーマルオイルの温度 (サーマルオイルの温度が高くなると、自動停止)

<発電機> ・潤滑油の温度 ・振動 ・フランジまわりではガスアナライザーにより、オイル漏えいの検出を実施

・問題が発生したときは、自動的に緊急停止が作動

・人的な安全確認実施後、再起動

<重点チェック項目> ・CO 濃度 (人体に与える影響が大きいため、システムを自動停止させるためのCO検知濃度は一般に危険とされる濃度よりも低く設定)

・ガス炉(下部から上部まで)の温度

・ガス炉からフィルターまでの温度

・メタン濃度 ・ガスエンジンの状態等

以下の項目について、毎日確認を実施

<ボイラー> ・燃焼炉の状態、温度及び圧力の確認

・16 個のチャネルへ、サーマルオイルが均一の流量の状態になっているかの確認

<発電機> ・タービン、発電機及びベアリングからの油もれがないこと、シリコンオイルに水が含まれていないことを確認

<その他> ・外部へ排気するガス成分濃度(環境規制対応)

・コンデンサーの水質検査 ・温水の熱交換器から水漏れがないことを確認

(シリコンオイルに水が混入すると効率が落ち、更にキャビテーションを起こすとポンプに悪影響を与えるため)

定期点検 ・法令点検は 1 年に 1 回実施(ドイツの法令点検は 2年に 1 回)

・法令点検はスイスの国内法で規定されており、内容的にはドイツに比べ簡易な点検

- -

・イタリアの法律では、2016年から、圧力機器壁の厚み検査と安全弁の交換を 2年に 1 回実施

保守内容、間隔 ・メーカーのメンテナンスは1 年に 1 回

・タービンのベアリングは 2年に 1 回交換

・CO 濃度センサーは 6 月に1 回更正を実施

・メーカーが行うのは、シリンダーヘッド、エンジンヘッドの交換、ピストン及びバルブの点検

・運用者はエンジンオイルの交換を実施

・メーカーのメンテナンスは1 年に 1 回

トラブル事例 ・特になし ・特になし (・本社工場では、オイルの置き忘れによる人的過誤を原因とする火災事例あり)

・2012 年にポンプでのサーマルオイルもれによる火災事例あり

その他

・DIN4754 に基づき設計されているため、非常用冷却系が設けられており、緊急停止時には、これが稼働

・同規格により、非常用冷却系には、異なる電源の複数のポンプを設置

・サーマルオイルの冷却系には、スタンバイ、バックアップ用に複数のポンプを用意

・消火システムは欧州機械指令を遵守

・リスク分析などは各地域の消防署のルールに従い評価を実施

・ボイラー管理の資格が必要 ・管理資格取得には、配管、電気、水質管理、煙突、燃料等について、1 年間の研修と試験に合格することが要求される

・蒸気ボイラーについては、上位資格の蒸気ボイラー管理の資格が必要

・ORC 発電設備については、管理資格は不要

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64

5.4 欧州の発電設備設計に係る規制動向

5.4.1 欧州の技術基準の体系

EU の統一市場の構築を目的とした EU 運営条約 114 条(旧 EC 条約 95 条)を選択して

いる欧州指令(PED、機械指令等)では、国内法制化にあたって各国の裁量権を認めてい

ないことから、すなわち PED の要求は国内法の要求と同等となる。また、PED に基づき、

設計、製作、検査して、CE マーキングを貼付したものであれば、EU 加盟国内での流通が

可能である。

以上のことから、本調査対象設備は全て圧力機器であることから、PED に準拠した設備

であることが分かった。しかし、適用する技術基準については、国や設備の種類により異

なることが分かった。

今回調査した設備に対する適用する技術基準を図 5.25 に、ドイツ国内法及び圧力機器指

令に基づき製作される圧力容器の法体系を図 5.26 に示す。

※DIN4754 や AD2000 はドイツ国内規格であるが、スイスやオーストリアのメーカーは

市場の大きいドイツへの輸出を検討していることから、DIN4754 や AD2000 に適合し

た設備を開発している。また、これらの規格に適合した設備は、自国でも流通するこ

とが可能であるとのことだった。

図 5.25 調査対象の設備に対して適用する技術基準

PED

(今回調査した全ての設備に適用)

特別法

DIN4754、

AD2000※

熱媒体としてサーマルオイルの場合のボイラーに適用する整合規格

熱媒体として蒸気、加圧温水の場合のボイラーに適用する整合規格

EN12952(水管ボイラー規格) EN12953(シェルボイラー規格)

技術

基準

熱分解ガス化炉 低圧設計のため適用する規格はない

EN13445 (圧力容器)

ORC 発電設備の耐圧部に適用される整合規格

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65

図 5.26 ドイツ国内法及び圧力機器指令に基づき製作される圧力容器の法体系

出典:「平成 24 年度未利用エネルギー活用調査(バイオマス発電)報告書」(平成 25 年 3

月,ティフ・ラインランド・ジャパン株式会社)

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66

5.4.2 欧州圧力機器指令の概要

5.4.1 項に示したように、今回調査した発電設備は、PED に準拠していることから、この

節では PED の概要を示す。

(1) 適用範囲

PED は、最高使用圧力 0.05MPa を超える圧力機器に対する設計、製造及び適合性評価

を示すものである。また、対象となる機器は、容器、配管、安全設備、圧力設備及びこれ

らの組み立て品であり、タービンやエンジンは対象外となっている。

(2) 重要な安全性要求事項

PED の附属書Ⅰでは、安全性に関する重要な要求事項が示されている。具体的には、設

計(荷重、設計計算方法等)、材料、製造時の遵守事項、許容応力等が規定されている。た

だし、これらについては一部を除いて具体的な数値的な要求はなく、性能規定となってい

る。

PED において示された許容応力の安全率を表 5.14 に示す。

PED では、フェライト鋼とオーステナイトステンレス鋼で異なった安全率を適用してい

る。また、バイオマスボイラー等の発電設備は、フェライト鋼が用いられており、引張強

度には安全率 2.4 が、降伏応力には安全率 1.5 がそれぞれ適用されており、この中で小さい

値を許容応力として用いることとなる。

表 5.14 PED に示す許容応力の設定方法

PED(フェライト鋼の場合) PED(オーステナイト鋼の場

合、伸び率 30%超えの場合)

PED(オーステナイト鋼の場

合、伸び率 35%超えの場合)

min (σu/20

2.4;σy/t

1.5)

σy/t

1.5 min (

σu/20

3;σy/t

1.2)

※上記に示すフェライト鋼やオーステナイト鋼以外の鋼種に対する許容応力の規定もあ

る。

ここで、σu/20: 材料の室温(20℃)での引張強さ

σu/t :材料の設計温度(t℃)での引張強さ

σy/t :材料の設計温度(t℃)での降伏点

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67

(3) 評価テーブル

PED の附属書Ⅱでは、使用する流体の種類(危険流体/その他の流体)、流体の状態(ガ

ス/液体)、容器/配管及び圧力機器のもつ流体エネルギーの大きさ(圧力 PS(bar)と容

積 V(L)又は配管径(DN)の積)に応じ、適合させる評価モジュールのカテゴリーが決

定する。上位のモジュールへの変更は可能である。

以下にカテゴリー別の評価モジュールを示す。また、次頁以降の図に、使用する流体の

種類と適合させるカテゴリーを示す。

表 5.15 PED におけるカテゴリーと評価モジュールの関係

カテゴリー 評価モジュール

Ⅰ A

Ⅱ A1、D1、E1

Ⅲ B1+D、B1+F、B+E、B+C1、H

Ⅳ B+D、B+F、G、H1

なお、カテゴリーの決定に用いる流体の分類方法は、2016 年 7 月 16 日より施行される

PED の改訂版である Directive 2014/68/EU Pressure Equipment Directive(以下

「PED2014 版」という。)の Article 13 に記述された内容に変更され、2015 年 6 月 1 日よ

り強制施行されている。具体的な変更内容は、危険流体として分類される Group1 の流体は、

PED においては「爆発性、可燃性、有毒性及び酸化性の流体」と記載があったものが、

PED2014 版では、「主に可燃性、爆発性、酸化性、自触媒反応性(自触媒反応とは、化学

反応において反応生成物が、自らその反応を促進する触媒の役割をする反応。以下、同様。)

及び有毒性等の性質を有する流体」と変更され、それらは PED2014 版 の Article 13 では

Regulation (EC) No 1272/2008(物質及び混合物の分類、標示及び包装に関する規則)に

基づき分類されるようになった。

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68

・圧力容器に含まれる流体がガス、液化ガスや圧力がかかった溶存ガス又は最高使用温度

において 0.5bar(0.05MPa)を超える飽和蒸気圧を有する液体及びその蒸気である場合

の分類(縦軸が圧力(bar)、横軸が容器の体積(L))を図 5.27 の①及び②に示す。

①含まれる流体が Group1(危険流体)の場

②含まれる流体が Group2(その他の流体)

の場合

・圧力容器に含まれる流体が、液体であって、最高使用温度において 0.5bar(0.05MPa)

以下の飽和蒸気圧を有する場合の分類(縦軸が圧力(bar)、横軸が容器の体積(L))を

図 5.27 の③及び④に示す。

③含まれる流体が Group1(危険流体)の場

④含まれる流体が Group2(その他の流体)

の場合

図 5.27 PED 附属書Ⅱにおける適合性カテゴリー分類(1/3)

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

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69

・過熱又はオーバーヒートにより蒸気や 110℃以上の過熱水を生じるリスクのある容器又は

全ての圧力調理器具に関する分類(縦軸が圧力(bar)、横軸が容器の体積(L))を図 5.27

の⑤に示す。

⑤過熱又はオーバーヒートを伴う流体の場合

・配管に含まれる流体が、ガス、液化ガスや、圧力がかかった溶存ガス又は最高使用温度

において飽和蒸気圧が 0.5bar(0.05MPa)を超える液体及びその蒸気の場合の分類(縦

軸が圧力(bar)、横軸が配管の呼び径(DN))を図 5.27 の⑥及び⑦に示す。

⑥含まれる流体が Group1(危険流体)の場

⑦含まれる流体が Group2(その他の流体)

の場合

図 5.27 PED 附属書Ⅱにおける適合性カテゴリー分類(2/3)

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70

・配管に含まれる流体が液体であり、最高使用温度において飽和蒸気圧力が 0.5bar

(0.05MPa)以下の液体の場合の分類(縦軸が圧力(bar)、配管の呼び径(DN))を図 5.27

の⑧及び⑨に示す。

⑧含まれる流体が Group1(危険流体)の場

⑨含まれる流体が Group2(その他の流体)

の場合

図 5.27 PED 附属書Ⅱにおける適合性カテゴリー分類(3/3)

各図とも左側に「Article3 paragraph3(第 3 条 3 項)」(PED2014 版では、「Article4

paragraph3(第 4 条 3 項)」に変更されている)と記載があるが、これは、この範囲の機

器については、メーカーの製品保証により流通が可能な設備であり、この評価プログラム

の対象外の設備である。また、この領域の設備については、CE マークを貼付することがで

きない。

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71

(4) 評価手順

PED の附属書Ⅲでは、附属書Ⅱに示したカテゴリーに応じて、A~H 並びに A1、B1、

D1、E1 及び H1 の 13 種類の評価モジュールが規定されている。附属書Ⅲでは、製造者及

び認証機関の役割が詳細に規定されており、原則として設計段階のモジュールと製造段階

のモジュールに分けられている。

表 5.16 に適合性評価モジュールを示す。

(5) CE マーキングと適合宣言

製造者は、全てのカテゴリーでも、製造した圧力機器がPEDに適合したと判断した場合、

CE マーキングを自ら全ての圧力機器に貼付しなければならない。その上で、製造者は、製

品が PED に適合した旨の宣言を書面で行わなければならない。また公認検査機関が検査に

関与する場合、公認検査機関が固有の番号を貼付するか製造者に CE マーキングを貼付させ

なければいけない。

表 5.16 PED の適合性評価モジュール

主な特徴

A 製造業者自身の責任の下に製造される。

A1 製造業者自身の責任であるが、最終評価は公認検査機関によって監視される。

B 製造業者は、公認検査機関による EC 型式検査証明書を作成する。

B1 製造業者は、公認検査機関による EC 設計検査証明書を作成する。

C1 公認検査機関によって監視される製造について EC 型式検査証明書に適合するた

めになされる。

D 製造業者は、承認された品質システムを使用し、かつ EC 設計検査又は EC 型式検

査証明書のいずれかに従う。

D1 製造業者は、承認された品質システムを使用し、かつ EC 設計検査証明書又は EC

型式検査証明書を使用しないで従う。

E 製造業者は、承認された品質システムを使用し、かつ EC 型式検査証明書に従う。

E1 製造業者は、EC 型式検査証明書なしに、承認された品質システムを使用する。

F 公認検査機関によって調査される各々の圧力機器に関する EC 型式又は設計の何

れかの検査証明書についてなされる。

G 製造業者が公認検査機関を選ぶ。公認検査機関は、各圧力機器について検査を実

施する。

H 製造業者は、各圧力機器について承認された品質システムを使用する。

H1 製造業者は、承認された品質システムを使用する。公認検査機関は、EC 設計検査

証明書を発行し、かつ圧力機器の最終評価に参加する。

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72

なお、PED2014 版では、カテゴリー・評価モジュールに関する変更点がある。具体的に

は、評価モジュールの名称変更(A1 が A2 に、C1 が C2 に変更になる。B と B1 が一つの

モジュール名 B として統一し、それぞれ B(EU-type examination production type)及び B

(EU-type examination design type)に名称が変更。)及び品質管理として取り扱うモジュ

ールに関する若干の要求事項が増えたが、上記モジュールの主な特徴(表 5.16)に大きな

変更はない。また、カテゴリーの分類に関する規定も変更はない。

(6) 今回海外調査を実施した設備における評価カテゴリー

今回調査を実施した設備における評価カテゴリーは以下の通りであった。

· バイオマスボイラー(ORC 発電設備と連携した場合):カテゴリーⅠ又はⅡ

· バイオマスボイラー(蒸気ボイラー):カテゴリーⅣ

· ORC 発電設備(タービン式):カテゴリーⅣ

· ORC 発電設備(往復機関式):カテゴリーⅡ

· バイオマスガスを利用した発電設備:カテゴリー対象外であるが、設計上は耐圧設

計を行って、公認検査機関が検査を実施。

上記のカテゴリーⅠ又はⅡの設備においても、顧客の要望に応じて上位のカテゴリーⅣ

相当とみなし、外部の認証機関が検査を実施する場合もある。適合性評価モジュール表を

表 5.17 に示す。

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73

表 5.17 適合性評価モジュール表

出典:F 社提供資料を基にみずほ情報総研株式会社が翻訳

I

A A1 (1) D1 E1H

(型式)H (3)(製品)

G H1(2)

A A1 D1 E1 B1 D B1 F B E B C1 H H B D B F G H1材料 材料の認証 M M M M NB NB NB NB NB NB NB NB NB NB

設計品質保証システム検査 I I I製造品質保証システム検査 I I I I I I最終検査と検査品質保証システム検査

I I I I I I I I

EC設計試験 M M M M I I I I M M I I I IEC型式試験 M M M I I I IEC設計試験認証証明書 I I IEC型式試験認証証明書 I I M M I I溶接士の認証 M TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP溶接及び非破壊試験手法の認証

M TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP

非破壊試験士の認証 M M M M TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TP TPM M M M M M M M M M M M M M

最終検査及び最終文書検査 M M/I M/I M/I M/I I M/I M/I M/I M/I M/I I I M/I圧力試験 M M/I M/I M/I M/I I M/I M/I M/I I M/I I I M/I安全装置設置検査 M M/I M/I M/I M/I I M/I M/I M/I M/I M/I I I M/I適合宣言書 M M M M M M M M M M M M M M適合証明書 I I I

NB:公認検査機関が実施(1)最終検査には監査を伴う(2)設計試験及び最終検査の特別監督を伴う(3)一度限りの容器と機器の製造に対しては、  公認検査機関が各容器および機器に対し最終検査を実施

I:検査に割り当てられた公認検査機関が実施

M:製造者が実施

TP:第三者検査機関もしくは公認検査機関が実施

B+C1 B+D

III

B+F

IV

B1+F B+E

製造とテスト

最終検査

CEマーキング/適合証明書

II

B1+D

カテゴリー

適合性評価モジュールの組み合わせ

モジュール

品質保証システム

設計・型式試験

継手

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74

5.4.3 欧州の発電設備における設計

今回調査した発電設備に関する技術基準及び設計について、設計や製造に係る適用する

技術基準を整理し、この技術基準を用いた場合の圧力容器の部材厚さの試算を行って、

ASME規格及び火技解釈における試計算結果並びにPEDやEN規格等の欧州規格において

策定されている規格(以下、「欧州規格」という。)における試計算結果と対比して、その

相違点について分析した。

(1) 設計・製造に係る技術基準

今回の調査対象であるバイオマスボイラー、このボイラーを利用した ORC 発電設備及び

バイオマスガスを利用した発電設備に関する設計や製造に係る技術基準を以下に示す。今

回の調査では、実際に適用する技術基準に関する調査を行うことはできたが、実際に適用

する許容応力、安全率及び設計部材厚さは、技術ノウハウであること等の理由により詳細

な情報を得ることができなかった。

(a) バイオマスボイラーの設計・製造に係る技術基準

バイオマスボイラーは、一般的に PED に準拠している設備であり、ドイツ、スイス及び

オーストリアでは、蒸気ボイラーや温水ボイラーは、技術基準として EN12952(水管ボイ

ラー)及び EN12953 等の EN 規格が適用されているが、ORC 発電設備用において熱媒体

としてサーマルオイルを利用するバイオマスボイラーは、熱媒体の設計に DIN4754 が用い

られ、構造設計にドイツの民間規格である AD2000 が適用されている。

DIN4754 については、主に熱媒体の設計(熱交換器の最大温度、熱伝達係数や熱流体の

密度の計算方法が規定されており、系統図の概略や非常用冷却系統の説明が記載されてい

る)に用いられている。

サーマルオイルを用いた ORC システム(タービンを除く、図 5.4 に示す「ボイラー及び

その附属設備」に該当する部分)に適用できる基準は、欧州内では DIN4754 のみであり、

統一規格は存在しない。

(b) ORC 発電設備の設計・製造に係る技術基準

ORC 発電設備の蒸気タービン(図 5.4 に示す「蒸気タービン及びその附属設備」に該当

する部分)における耐圧部分の設計は、EN13445 が適用されている。

また、ORC 発電設備メーカーである D 社は ASME SecⅧ div1 に準拠した設計開発の実

績がある。しかし、他の企業は、ASME 基準に基づいた設計は可能であるが、ASME 基準

を満たす材料を使用して設備を製造するのは材料が高い等の理由により高コストになるた

め、ASME 基準に対応した設計開発には消極的であった。

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75

(c) バイオマスガスを利用した発電設備に係る技術基準

ガス化炉は、負圧で設計され発電設備全体としても非常に小さい圧力で設計されている

ため、PED の適用範囲外である 0.05MPa 以下の設備になることから、発電設備メーカー

の製品保証により設計・製造している。しかし、ガスを発生させる設備であるため、安全

性に配慮して、配管は 1.0MPa 相当、熱交換器は 0.6MPa 相当の圧力で設計を行い、公認

検査機関の認証を受けている。

(d) 適用する許容応力

適用している許容応力は、A 社から回答があったが、それ以外の発電設備メーカーからは

詳細な情報を得られなかった。A 社によると、詳細な設計(細かい荷重条件を組み合わせた

数値解析等を実施するように設計)を行った場合、PED で規定される安全率を用いれば適

用可能ではあるが、経験則に基づいて更に高い安全率を適用しているとのことだった。

(e) 適用する金属材料

今回調査対象としたバイオマスボイラーでは、使用している鉄鋼材料はフェライト鋼が

主流であって、EN12953に記載されているEN規格材料S235JRG2(一般構造用圧鋼材(JIS

G3101)の SS330 に相当)や P265GH(ボイラー及び圧力容器用炭素鋼及びモリブデン鋼

鋼板(JIS G3103)の SB410 に相当)が使用されている。D 社の発電設備は、タービンブ

レードも含めて基本的にはフェライト鋼が使用されている。ガス化炉では、ガス化炉の内

側はステンレス鋼を、内面以外は鉄鋼材を使用しているとのことだったが、詳細な材料情

報は非公表との回答であった。ただし、ガス化炉は、設計圧力が 0.05MPa 以下の設備であ

るが、配管や熱交換器等の設計では、それぞれ 1.0MPa 相当や 0.6MPa 相当の圧力で設計

を行い、公認検査機関の認証を受けている。

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76

(2) 材料の許容応力や安全率等の比較分析

今回の調査では、適用している技術基準、具体的な設計条件及び設計肉厚の情報は得ら

れなかった。そのため、ここでは一般的な欧州の許容引張応力の考え方、圧力容器の肉厚

の設計方法と火技解釈における許容引張応力の考え方、圧力容器の肉厚の設計方法を用い

て試計算を行うことにより、欧州の基準で設計された設備が日本国内での技術的要件を満

たすかどうか評価・検討を行った。

(a) 許容引張応力及び計算板厚の算定方法

日本、米国及び欧州の各規格で用いられている許容引張応力の計算方法、容器の胴の最

小厚さを表 5.18 及び表 5.19 に示す。

ASME SecⅠや ASME SecⅧ div1 及び火技解釈では、許容引張応力では、引張強さの

1/3.5(安全率 3.5)と降伏点の 1/1/5(安全率 1.5)の値のうち最小のものを許容引張応力と

して設計に用いている。この場合、許容引張応力は一般的には引張強さの 1/3.5(安全率 3.5)

が最小になることから、本節では、ASME SecⅠ及び ASME SecⅧ div1 を ASME3.5 版と

呼ぶ。一方で、PED は鋼種により安全率が異なるが、バイオマスボイラー等の EN 規格で

用いられているフェライト鋼は、引張強さの 1/2.4(安全率 2.4)と降伏点の 1/1.5(安全率

1.5)の値のうち最小のものを許容引張応力として設計に用いている。フェライト鋼は、EN

規格を使用した場合、許容引張応力は一般的には降伏点の 1/1.5(安全率 1.5)が最小とな

る。このように、許容引張応力は、ASME3.5 版と EN 規格を比較すると、降伏点の安全率

は同等であるが、引張強さの安全率が異なることが分かった。

また、容器の胴の最小厚さも、ASME3.5 版と EN 規格では異なる計算式を用いている。

表 5.18 各規格における許容引張応力の計算方法

火技解釈・ASME3.5 版

(ASME SecⅠ及び ASME SecⅧ div1)

欧州規格

(PED、EN12953 及び EN13445)

min (σu/t

3.5;σy/t

1.5) min (

σu/20

2.4;σy/t

1.5)

ここで、σu/20: 材料の室温(20℃)での引張強さ

σu/t :材料の設計温度(t℃)での引張強さ

σy/t :材料の設計温度(t℃)での降伏点

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77

表 5.19 各規格における容器の胴の最小厚さの計算方法

火技解釈・ASME3.5 版

(ASME SecⅠ及び ASME SecⅧ

div1)

EN 規格

(EN12953 及び EN13445)

ボイラー t =

PDi

2σaη − 2P(1 − k)+ 𝑎1

※ASME SecⅠ、火技解釈より

t =PDi

(2σa − P)η+ 𝑐1 + 𝑎1

※EN12953 より

圧力容器 t =

PDi

2σaη − 1.2P

※ASME SecⅧ div1 より

t =PDi

2σaη − P

※EN13445 より

ここで、P:設計圧力

Di:内径

Do:外径

t:計算上必要となる厚さ

η:継手効率

σa::許容引張応力

k:使用温度に対する係数で、480℃未満の場合は、k=0.4

a1:付け代(火技解釈では 1mm 以上、EN12953 では板厚 30mm を超える場合

は 0mm、板厚 30mm 以下は 0.75mm 以上)

c1:寸法公差

(b) 許容引張応力の試算

欧州でバイオマスボイラー等の発電設備として普及している代表的なボイラー、圧力容

器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板 SB410 の降伏点・引張強さ、火技解釈及び欧州規格にお

ける板厚 16mm 以下の場合における温度別の許容引張応力を表 5.20 及び表 5.21 に示す。

表 5.21 に示すように、バイオマスボイラー等の発電設備で用いられているフェライト鋼

で、かつ板厚が薄いもの(16mm 未満)は、室温での設計は許容引張応力が 1.5 倍程度異

なるものの、最高使用温度を 300℃程度とした場合には、ほぼ同等の許容引張応力となるこ

とが分かった。

以上のことから、欧州でバイオマスボイラー等の発電設備として普及している代表的な

ボイラー、圧力容器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板は、室温条件下では、欧州規格におけ

る許容引張応力の値が 1.5 倍程度高いが、欧州規格の許容引張応力は、降伏点ベースで許容

引張応力が決定されることから、温度が高くなると欧州規格の許容引張応力は火技解釈の

値と大きな違いはなかった。

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78

表 5.20 各規格の各温度における降伏点・引張強さ及び許容引張応力の試算表

出典:JIS 材 SB410 の許容引張応力は、平成 28 年 2 月 25 日付けで改正した火技解釈別

表1-1(鉄鋼材料の各温度における許容引張応力)を引用。

:EN 材 P265GH の降伏点及び引張強さは EN 10028-2 より引用。許容引張応力の

値は PED、EN12953 及び EN13445 におけるフェライト鋼の許容引張応力算定式

を用いてみずほ情報総研株式会社が試算。

表 5.21 各火技解釈及び EN 規格における許容引張応力値の比較

設計温度

火技解釈の許容引張応力

(N/mm2)

EN 規格の許容引張応力

N/mm2

20 118 171(1.45)

100 118 161(1.36)

200 118 137(1.16)

300 114 115(1.01)

400 90 100(1.11)

※上記の EN 規格の許容引張応力は t≦16mm の値を使用。

※( )内の値は、火技解釈の値を 1.0 とした場合の EN 規格における比率

規格 材料 温度 許容引張応力

℃ N/mm2

JIS G 3103 SB410 6 < t ≦ 200 0 -250 118

火技解釈 6 < t ≦ 200 300 114

6 < t ≦ 200 350 108

6 < t ≦ 200 400 90

6 < t ≦ 200 450 62

6 < t ≦ 200 500 32

6 < t ≦ 200 538 17

EN 10028-2 P265GH ≦ 16 室温 ≧ 265 410 - 530 171

16 < t ≦ 40 室温 ≧ 255 410 - 530 170

40 < t ≦ 60 室温 ≧ 245 410 - 530 163

60 < t ≦ 100 室温 ≧ 215 410 - 530 143

100 < t ≦ 150 室温 ≧ 200 400 - 530 133

150 < t ≦ 250 室温 ≧ 185 390 - 530 123

≦ 16 50 ≧ 256 171

≦ 16 100 ≧ 241 161

≦ 16 150 ≧ 223 149

≦ 16 200 ≧ 205 137

≦ 16 250 ≧ 188 125

≦ 16 300 ≧ 173 115

≦ 16 350 ≧ 160 107

≦ 16 400 ≧ 150 100

225 410

410 - 530

厚さ 降伏点 引張強さmm N/mm2 N/mm2

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79

(c) 構造板厚の試計算

今回の調査対象とした ORC 発電設備において、ガスが通過する部分は、運転圧力は

0.2MPa 程度で、容器の径は 2000mm 程度であることから、この条件で必要な部材厚さを

求めた。表 5.22 に火技解釈及び EN 規格の試算結果を示す。また、最高使用温度は確認で

きなかったことから、最高使用温度を 200℃~400℃と仮定して試算を行った。

本条件下では、火技解釈と EN 規格は、計算上必要な厚さの計算式が異なるが、設計圧

力 P が小さい値であることから、対象設備の場合の計算上必要な厚さは、許容引張応力の

逆数の比で決定することになる。そのため、火技解釈で必要となる部材厚さと欧州規格の

部材厚さの比は、許容引張応力の比で決定されることになる。

表 5.22 に示すように、200~300℃の範囲で計算板厚は 1.5mm~2.2mm 程度になり、全

ての温度条件で火技解釈の計算板厚の方が大きくなり、EN 規格の計算板厚は、その 0.86

~0.99 倍程度の板厚であることが分かった。そのため、条件によっては 15%程度計算板厚

が異なる可能性があることが分かった。

しかし、ORC 発電設備は、高温ガスが通過する熱交換器では、最高使用圧力が 0.2MPa

と小さく、サーマルオイルが通過する配管も最高使用圧力が 0.8MPa と小さい。また、火

技解釈では最小板厚を用いているが、欧州では最小板厚又は発電設備メーカーが制定して

いる最小板厚の経験値を基に設計している。

表 5.22 火技解釈と EN 規格の計算厚さの比較

最高使用

温度

外径

Do

設計圧力

P

溶接効率

η

許容引張

応力

σa

計算厚さ

t

℃ mm MPa MPa mm

200 火技解釈 2,000 0.2 1 118 1.70(1.00)

EN13445 2,000 0.2 1 137 1.46(0.86)

300 火技解釈 2,000 0.2 1 114 1.76(1.00)

EN13445 2,000 0.2 1 115 1.74(0.99)

400 火技解釈 2,000 0.2 1 90 2.23(1.00)

EN13445 2,000 0.2 1 100 2.00(0.90)

※( )内の値は、火技解釈の値を 1.0 とした場合の EN 規格における比率

※上記の値は付け代、公称壁厚の許容誤差は考慮していない板厚である。火技解釈の場

合、付け代 1mmを付加する必要があり、EN規格の場合は付け代として 0.75mmの他、

寸法公差が考慮される。

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80

5.4.4 構造設計の相違点

火技解釈、ASME3.5 版及び欧州規格においては、材料、許容引張応力、容器の胴の計算

上必要な厚さの算定式、最小厚さに相違点があることが確認された。バイオマスボイラー

等の発電設備については、一般に圧力が小さい設備であることから、許容引張応力の逆数

に比例した厚さで、計算上必要な厚さが決定する。そのため、最高使用温度により異なる

が、今回の試算において許容引張応力が 1.0~1.5 倍程度異なることから、欧州の技術基準

で設計・製造された設備は、計算上必要な厚さは、火技解釈に比べ薄い設計となっている

可能性がある。そのため、PED に準拠し、EN 規格等の規格を満たした設備においても、

国内の技術的要件を必ずしも満たしたものではない可能性があることが分かった。

しかし、一方で今回調査対象のバイオマスボイラー等の発電設備については、設計圧力

が小さいことから、表 5.23 に示す計算式を用いて設計した場合には、計算板厚が薄くなる

ことが想定されることが分かった。そのため、設計においては、最小板厚やメーカーの経

験での板厚での設計、更に最高使用圧力より大きい圧力を想定した設計が行われているも

のと思われる。

以上のことから、小規模のバイオマスボイラー等発電設備については、許容引張応力や

板厚計算ではなく、最小厚さで設計条件が決定されるものと思われる。そのため、欧州の

発電設備を日本国内に導入する設置者は、実際の最小板厚に関する設計思想や、材料に関

する情報を収集し、表 5.23 に示す ASME3.5 版相当の設備、若しくは火技省令及び火技解

釈を満たした設備かどうかを確認することが必要である。

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表 5.23 ASME3.5 版及び欧州規格における設備設計情報

ASME3.5 版

(ASME SecⅠ、ASME SecⅧ div1)

欧州規格

(PED、EN12953、EN13445)※

材料 ASME 規格で規定された材料 EN10028、EN10216、EN10217 及

び EN10222 等で規定された材料

許容引張応

力 min (

σu/t

3.5;σy/t

1.5) min (

σu/20

2.4;σy/t

1.5)

ボイラー 𝑡 =

PDi

2σaη − 2P(1 − k)+ 𝑎1

※ASME SecⅠより

t =PDi

(2σa − P)η

※EN12953 より

圧力容器 t =

PDi

2σaη − 1.2P

※ASME SecⅧ div1 より

t =PDi

2σaη − P

※EN13445 より

最小板厚

(ボイラー)

6.35mm

※ASME SecⅠ

外径が 1000mm 以上の場合(低圧

ボイラーを除く):6mm

外径が 1000mm 未満の場合及び低

圧ボイラー:4mm

※EN12953 より

最小板厚

(圧力容器)

1.58mm

※ASME SecⅧ div1 より

最小板厚の規定はなく、計算による

板厚が最小板厚である

※EN13445 より

ここで、σu/20: 材料の室温(20℃)での引張強さ

σu/t :材料の設計温度(t℃)での引張強さ

σy/t :材料の設計温度(t℃)での降伏点

P:設計圧力、Di:内径、Do:外径、t:最小厚さ、η:継手効率

σa::許容引張応力、k:係数、a1:付け代で 1mm 以上

低圧ボイラー:最高飽和温度 120℃の蒸気ボイラー又は最高出口温度 120℃及び

最高許容圧力 1.0MPa の温水発生器

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5.4.5 廃熱ボイラーの適用について

本調査では、熱源が廃熱であるボイラーに関する日本と欧州の規制の比較分析を行い、

その相違点を整理した。

電気事業法、労働安全衛生法及び PED に関する廃熱利用の考え方を以下に示す。

① 労働安全衛生法における廃熱ボイラーの規制について

労働安全衛生法における廃熱ボイラーについては、ボイラーの区分(小型ボイラー・簡

易ボイラー等の区分)等を決定する伝熱面積に 1/2 を乗じた値を当該ボイラーの伝熱面積と

する等の規制を設けている。

② 電気事業法における廃熱ボイラーの規制について

電気事業法においては、ボイラーの定義としては、以下の記述があり、ボイラーの熱源

としては、火気、燃焼ガス、その他の高温ガスとしており、廃熱についてはその他のガス

に含まれることから、廃熱ボイラーも規制を受けているが、労働安全衛生法の適用を受け

ているものは除かれる(ただし、定期事業者検査を 24 か月に延長するための条件において

は、場合によっては腐食対策が求められる)。

火気、燃焼ガスその他の高温ガス若しくは電気によって水等の熱媒体を加熱するものであ

って、当該加熱により当該蒸気を発生させこれを他の設備に供給するもの又は当該加熱(相

変化を伴うものを除く。)により当該水等の熱媒体を大気圧力における飽和温度以上とし、

これを蒸気タービン若しくはガスタービンに供給するもののうち、ガス化炉設備(石炭、

石油その他の燃料を加熱し、酸素と化学反応させることによりガス化させ、発生したガス

をガスタービンに供給する容器(ガス化炉)、そのガスを通ずることによって熱交換等を行

う容器及びこれらに附属する設備のうち、液化ガス設備(液化ガスの貯蔵、輸送、気化等

を行う設備及びこれに附属する設備)を除く。)を除く。

従って、小規模のバイオマスボイラーを日本国内に設置する際に、複数の用途で使用す

る場合は、労働安全衛生法、電気事業法及びその他の法令等のどれが適用されるのかを設

置者はあらかじめ確認する必要がある。

③ 欧州の廃熱ボイラーに関する規制について

欧州では、ボイラーの熱源に係る規制はないが、PED 評価カテゴリーでは、熱源・熱媒

体に危険性流体(PED2014 版では、主に可燃性、爆発性、酸化性、自触媒反応性及び有毒

性等の性質を有する流体)を用いる場合は、図 5.27 に示すように評価カテゴリーのランク

が上がることが分かった。具体的には、危険流体には含まれないその他の流体が対象であ

れば、圧力 P と容積 V の積が 200bar・L 未満であれば製造者の責任で製品保証を行うこと

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83

が可能であるが、危険流体を用いる場合は、圧力 P と容積 V の積が 50 bar・L 以上になる

と、外部の公認検査機関等の検査が必要になる。

以上に示すように、労働安全衛生法では、熱源に廃熱を利用する場合には、その区分等

を決定する伝熱面積が 1/2 とすることにより、規制レベルを上げて安全性を担保している。

一方で、欧州では、適用する流体が危険流体であるか否か、また、更に圧力 P と容積 V の

積で決定するカテゴリー毎に閾値を設けて、製造者が自らの責任で製造するのか、外部の

公認検査機関の検査を必要とするのかを分類し、安全性を担保している。両者では、その

安全性を担保する考え方は異なるけれども、廃熱が安全な流体に比べて一定程度の制限が

必要であるという考えは一致している。

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5.4.6 安全装置に求められる技術基準

EN12953-6:ボイラー装置の要求事項における「保護システムに求められる技術基準」

には、以下の記述がある。

熱供給及びその補助設備のための電気的な制御装置と同様に、電気的な安全回路のアプ

リケーション設計と設置は、EN 50156-1 規格※1に従わなければいけいない。

各々のリミッターデバイスの機能及び実装された機能安全の適切なレベルについて、ハ

ザード分析を実施しなければならない。

注1:ボイラーを保護するシステムのための典型的な安全度水準(SIL)※2の要件は、

2 以上のこと。

注2:遮断弁、緊急遮断、火災感知器などの、ボイラーの外側に付加した装置により、

ボイラーを停止することが可能でなければならない。

※1:EN 50156-1 規格:炉及び電気機器の設置と設計要件

※2:安全度水準とは、システムの安全性能を表す尺度のことであり、IEC 61508 では 4

段階に分類され、表 5.24 に示すように、それぞれの安全度水準に対応した機能失敗平

均確率が規定されている。原子力分野で用いられる確率論的リスク評価(PRA)や、

化学プラントで用いられる HAZOP(Hazard and Operability study)の評価で得られ

るものである。具体的な安全度水準と機能失敗平均確率を以下に示す。

表 5.24 安全度水準(SIL)毎の機能失敗平均確率

SIL 低頻度作動要求モード運用

(作動要求あたりの機能失敗平均確率)

高頻度作動要求または連続モード運用

(単位時間あたりの機能失敗平均確率)

(単位は、1/時間)

1 10-2 以上 10-1 未満 10-6 以上 10-5 未満

2 10-3 以上 10-2 未満 10-7 以上 10-6 未満

3 10-4 以上 10-3 未満 10-8 以上 10-7 未満

4 10-5 以上 10-4 未満 10-9 以上 10-8 未満

非常用冷却装置等の安全設備に係る制御装置等の設計は、安全度水準(SIL)2 以上の水

準が要求されている。安全度水準 2 に適した制御装置には、公認検査機関が同等以上の水

準であることを認証したものが用いられている。また、制御系全体でも、製造者が安全度

水準を計算して安全度水準 2 以上であれば、公認検査機関の検査を受けて同等以上の水準

であるという認証を受けることが要求されている。

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5.4.7 バイオマスボイラー等の発電設備の事故事例と対策

サーマルオイルを用いたボイラー設備における大きな事故事例として、オイルの漏えい

に起因する火災の事例が 2~3 例挙げられた。1 件は配管のフランジからの漏えいであり、

残りの事例はポンプのシール部からの漏えいであった。フランジからの漏えいの事例では、

断熱材内部に染み込んだオイルに含まれる酸素の漏えいが原因で火災に至ったものである。

フランジからの漏えいは、基本的に配管を溶接し、フランジの一部も、断熱材に漏えい

したオイルが染み込まない対策を行っている。ポンプの漏えいについては、シールを必要

としないマグネット式のポンプを用いる対策を行っている。また、これらの部位からのオ

イル漏れがないかについて、ガス濃度の測定を監視している事業所もあった。以上のこと

から、火災が原因となる事象は、現在では技術的に対応可能である。

サーマルオイルを熱媒体として利用する ORC 発電設備を日本国内に設置する際には、上

記に示す事故事例やその対策を考慮して設計することが望まれる。

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86

5.5 欧州の保安規制に係る動向調査

欧州で発電設備に関する保安規制について、現地(ドイツ、スイス、オーストリア及び

イタリア)にてヒアリング調査を行うとともに、一部の情報については、各国の法令等を

確認した。その調査結果として、発電設備の遠隔監視等の運転条件、定期検査及び管理者

資格について整理する。

5.5.1 発電設備の遠隔監視等の運転条件

(1) 無人運転

バイオマスボイラー及び ORC 発電設備等の設備について、ドイツやスイスでは、平日の

昼間は管理者が発電所に常駐しているが、深夜は無人運転を行っている。無人運転中の深

夜にトラブルが発生した際には、プラントは自動停止し、管理者は 10~30 分程度で現地に

到着して対応を行う。イタリアでは、平日は 24 時間(3 交代)で管理者が発電所に常駐し

ているが、休日は無人運転を行っている。管理者が不在の状態でのプラント運転について

は、蒸気ボイラーは、EN12953 やドイツの蒸気ボイラー技術規則である TRD 604(以下、

「TRD604」という。)に規定があり、その要件を満たすと最大 72 時間の無人運転が可能と

なる。

オーストリアでは、蒸気ボイラー設備の制御盤にあるボタンを管理者が押下しない状態

が一定時間継続すると、蒸気ボイラー設備が自動停止する機能があるため、無人運転が可

能な時間は一定時間に制限される。

オーストリアでは、管理者が蒸気ボイラー設備の制御盤にあるボタンを一定時間押さな

い時間が続くと、蒸気ボイラー設備が自動停止する機能があり、無人運転が可能な時間は

限られる。オーストリアの国内法である Verordnung des Bundesministers für Wirtschaft,

Familie und Jugend über den automatisierten Betrieb von Dampfkesseln(蒸気ボイラー

の自動運転に関する、経済・家族・青少年省規則)において、管理者が常時監視せずに蒸

気ボイラーを運転する規定(Betrieb von Dampfkesseln ohne ständige Beaufsichtigung

(BosB))が定められている。ヒアリング調査では、ドイツ、スイスでも、オーストリアと

類似の機能により、無人運転が可能な時間は制限されるとの情報があった。

(2) 遠隔監視

発電設備メーカーのサービスセンターでは、プラントの状況について遠隔監視を実施し

ているが、ドイツ、スイスの発電所でも、発電所と離れた場所にある事務所でも遠隔監視

を行っている。プラントの状況に関するデータはインターネット経由で転送される。ただ

し、通信機能を利用して遠隔監視側より、プラントの停止、起動のような重要な操作は行

われていない。通信状況が不調の際にトラブルが発生した場合でも、遠隔操作が可能か否

かに関わらず、プラントが自動停止するので、設備の安全性は担保されている。

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(3) 自動停止機能

バイオマスボイラー及び ORC 発電設備等の設備では、無人運転と遠隔監視に対する安全

対策として、自動停止機能が備わっている。

サーマルオイルを用いた ORC 発電設備では、温度や圧力等で異常な数値を検知した際に

は、自動停止機能が働いてプラントは停止する。例えば、ボイラーで自動停止機能が作動

すると、燃焼炉へ供給される空気が遮断され、燃焼炉内での燃焼が停止する。一方で、サ

ーマルオイルを用いた熱交換器は、自動停止機能が作動しても燃焼炉の余熱で媒体が加熱

し続けるため、非常用冷却装置により媒体を冷却する機能を有している。非常用冷却装置

には、電源の異なるポンプが複数台設置され、計画外停止や停電にも対応した設備になっ

ている。非常用冷却装置については、蒸気ボイラーは EN12953、サーマルオイルを用いた

ボイラーは DIN4754 に規定されている。

欧州における発電設備の保安規制を、表 5.25 に整理する。

表 5.25 欧州における発電設備の保安規制

項目 該当機種

法令、規格

内容 EN 規格

国内法令、

国内規格

無人運転

蒸気ボイラー EN12953 ― ・最長 72 時間の有人監視不要

― TRD604

(ドイツ)

・最長 72 時間の有人監視不要

国内規則

(オースト

リア)

・管理者が最長 72 時間以内に

制御機能確認を実施しない

場合に自動停止

非 常 用 冷

却装置

蒸気ボイラー EN12953 ―

・固体燃料の場合、炉を冷やす

緊急冷却装置が必要

サーマルオイル

を用いた装置 ―

DIN4754

(ドイツ)

・非常用冷却装置として、電源

の異なるポンプ 2 台が必要

※上記の内容は、EN12953、DIN4754 及びオーストリア国内規則はヒアリング及び文献

調査の結果、TRD604はヒアリング調査の結果を基にみずほ情報総研株式会社が整理。

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5.5.2 定期検査

ドイツでは、PED 附属書Ⅱに準じて設備毎の適合性カテゴリーに分類して、適合性カテ

ゴリーに応じた定期検査の要求事項を決定しており、その詳細は産業安全衛生規則に規定

されている。

同規則では、PED 附属書Ⅱにおける評価モジュールと同様に、圧力、容積、圧力×容積

の積で決定する適合性カテゴリー、流体の種類、火の有無の種別により分類され、検査間

隔(1~10 年)や検査実施者(設置者又は公認検査機関の別)が適合性カテゴリーに応じて

規定されている。例えば、蒸気ボイラー又は加圧水(110℃以上かつ 0.05MPa を超えたも

の)を熱媒体に用いるボイラーでは、圧力×容積の積が 50bar・L(5MPa・L)以下のボイラ

ーの場合には、設置者が自ら外観検査、開放検査及び圧力試験(強度検査)を行うことが

できる。一方で、圧力が 32bar(3.2MPa)、容積が 1000L、圧力×容積の積が 3000bar・L

(300MPa・L)のいずれかを超えたボイラーの場合には、公認検査機関が外観検査、開放

検査及び圧力試験(強度検査)を行うとともに、検査間隔も短くなる。

ヒアリング調査によると、スイスやイタリアでも国内法により、1~2 年に 1 回程度の定

期的な検査が求められており、検査の内容は制御装置の稼働状況や熱交換器の肉厚測定等

が含まれているとのことであった。

欧州における発電設備の定期検査の概要について、表 5.26 に整理した。

表 5.26 発電設備の定期検査

国名 法令、規則 検査間隔 実施者 検査内容

ドイツ 産業安全衛

生規則

外観検査 1~5 年

開放検査 3~5 年

圧力試験 5~10 年

設置者又は

公認検査機

関のいずれ

・外観検査、開放検査(熱交換器の

肉厚測定を含む)、圧力試験

・上記の検査のほか、制御装置の稼

働状況の確認[1]

スイス 国内法 1 年 ―

・制御装置の稼働状況、熱交換器の

肉厚測定等

イタリア 国内法 2 年 ―

・制御装置の稼働状況、熱交換器の

肉厚測定等

※上記の内容は、ドイツはヒアリング及び産業安全衛生規則を調査した結果、スイスや

イタリアはヒアリングの結果を基にみずほ情報総研株式会社が整理。

[1]:ヒアリング調査対象事業者の回答によるもの。

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5.5.3 管理者資格

(1) 蒸気ボイラー及び加圧水ボイラー

ヒアリング調査によると、蒸気ボイラー又は加圧水(110℃以上かつ 0.05MPa を超えた

もの)を熱媒体に用いるボイラーは、欧州では有資格者(例えば、専門的な研修を受講し

た者)による管理が必要であるとのことだった。

(2) サーマルオイルを飽和温度以下で用いるボイラー

ヒアリング調査によると、サーマルオイルを飽和温度以下で用いるボイラーは、公的資

格を有する管理者による管理を規定していない国がある一方で、イタリアでは、全てのボ

イラーについて公的資格を有する管理者による管理が必要である国もあるとのことだった。

サーマルオイルを飽和温度以下で用いるボイラーでは、公的資格を有する管理者による

管理を規定していない理由として、以下の点が挙げられた。まずは、蒸気ボイラーは、使

用圧力が高く、圧力と容量の積で評価する適合性カテゴリーが高くなるのに対して、加熱

媒体にサーマルオイルを用いる場合は、蒸気ボイラーよりも低い圧力で熱交換を行うため、

圧力と容量の積で評価する適合性カテゴリーが蒸気ボイラーより低くなる。次に、蒸気タ

ービンの場合は、腐食の影響を考慮して蒸気や水の管理が必要であるのに対して、加熱媒

体にサーマルオイルを用いる場合は、腐食の心配がなく、加熱媒体の管理が容易となる。

(3) ORC 発電設備

ヒアリング調査によると、欧州において ORC 発電設備は蒸気タービンに関する規制の対

象外になるため、公的資格を有する管理者による管理を規定していないとのことだった。

ただし、ORC 発電設備メーカーは、24 時間おきの目視で確認することを推奨している。

欧州における発電設備の管理者資格を、表 5.27 に整理する。

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90

表 5.27 欧州における発電設備の管理者資格の概要

設備 国名 内容

蒸気ボイラー及び

加圧水(110℃以上か

つ 0.05MPa を超えた

もの)を用いるボイラ

ドイツ、スイス、

イタリア

・公的資格を有する管理者である必要はない

が、専門的な研修を受け、管理資格を有する

管理者が必要

サーマルオイルを飽

和温度以下で用いる

ボイラー

ドイツ、スイス ・公的資格を有する管理者に関する規定なし

イタリア ・公的資格を有する管理者が必要

ORC 発電設備 ドイツ、スイス、

イタリア

・公的資格を有する管理者に関する規定なし

※上記の内容は、ヒアリング調査の結果を基にみずほ情報総研株式会社が整理。

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91

6 欧州の発電設備の技術基準適合性について

6.1 検討概要

本調査によると、欧州のバイオマスボイラー等の発電設備は、欧州における法令に相当

する PED に準拠していることが確認された。また、ORC 発電設備と連携しているバイオ

マスボイラーは、欧州整合規格である DIN4754 や AD2000 に適合し、蒸気タービンにおけ

る耐圧部は、EN13445 に適合していることを確認した。一方で、蒸気ボイラーは、EN12953

に適合するように設計していることを確認した。しかし、欧州で製造されたバイオマスガ

スを利用した発電設備は、圧力が 0.05MPa 以下であることから、欧州整合規格に適合した

設備ではないということが分かった。

以上のことから、本節では、PED や EN 規格等の欧州規格で設計された調査対象設備が

電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)と比較して、技術基準に適合して

いる事項と相違点を逐条ごとに整理し、調査対象設備を日本国内で設置する際の留意点を

まとめた。

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92

6.2 欧州のバイオマスボイラー等の発電設備に係る技術基準適合性の実態調査

本事業で調査した欧州のバイオマスボイラー、ORC 発電設備及びバイオマスガスを利用

した発電設備について、電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)の適合性

を調査して逐条毎に整理した。

なお、本整理は、欧州現地視察において入手したヒアリング結果及び提供資料等の基に

比較分析を行ったものであり、必ずしも具体的な設計条件、設計計算書及び系統図で得ら

れる情報を確認して精緻に分析したものではないことに留意されたい。そのため、日本国

内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するもので

あるか判断する必要がある。

表 6.1 発電設備の種類と対応する火技省令・火技解釈の章

発電設備の種類 対象メーカー及び製品 火技省令・火技解釈の章

バイオマスボイラー A 社、C 社 第二章 ボイラー等及びそ

の附属設備

ORC 発電設備:蒸気タービ

ン型

D 社 第三章 蒸気タービン及び

その附属設備

ORC 発電設備:往復機関型 F 社 第十一章 雑則(特殊設備

※)

バイオマスガスを利用した

発電設備

L 社 第五章 内燃機関及びその

附属設備

第八章 ガス化炉設備

※往復機関は過去に火技省令で規定されていたが、その後利用されなくなり削除された

ため、現行の火技省令では特殊設備に該当する。そのため、本調査では、火技省令(昭

40・6・15 省 60)の「第四章 往復機関およびその附属設備」及び発電用火力設備に関

する技術基準の細目を定める告示(昭 40・6・15 告 270)を基に材料等の規定は現行の

火技解釈(平成 28 年 2 月 25 日改正)に読み替えて比較分析を行った。

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93

6.2.1 バイオマスボイラー

バイオマスボイラー等の発電設備として、A 社及び C 社のバイオマスボイラーを対象に

電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)適用性の調査結果を取りまとめた。

本節では、両社及び発電事業者へのヒアリング調査(提供のあった関連資料及び現地視察

で確認した系統図)等を基により評価・検討したものであり、具体的な設計条件、設計計

算書及び系統図を必ずしも全て確認している訳ではない。そのため、日本国内に設置する

際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断す

る必要がある。

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94

(1) 第二章 ボイラー等及びその附属設備(火技省令第五条 ボイラー等の材料)

内容

火技省令 (ボイラー等の材料)

第五条 ボイラー(火気、燃焼ガスその他の高温ガス若しくは電気によって水等の熱媒体を

加熱するものであって、当該加熱により当該蒸気を発生させこれを他の設備に供給するも

の又は当該加熱(相変化を伴うものを除く。)により当該水等の熱媒体を大気圧力におけ

る飽和温度以上とし、これを蒸気タービン若しくはガスタービンに供給するもののうち、

ガス化炉設備(石炭、石油その他の燃料を加熱し、酸素と化学反応させることによりガス

化させ、発生したガスをガスタービンに供給する容器(以下「ガス化炉」という。)、その

ガスを通ずることによって熱交換等を行う容器及びこれらに附属する設備のうち、液化ガ

ス設備(液化ガスの貯蔵、輸送、気化等を行う設備及びこれに附属する設備をいう。以下

同じ。)を除く。以下同じ。)を除く。以下同じ。)、独立過熱器(火気、燃焼ガスその他の

高温ガス又は電気によって蒸気を過熱するもの(ボイラー、ガスタービン、内燃機関又は

燃料電池設備に属するものを除く。)をいう。以下同じ。)又は蒸気貯蔵器(以下「ボイラ

ー等」という。)及びその附属設備(ポンプ、圧縮機及び液化ガス設備を除く。)に属する

容器及び管の耐圧部分に使用する材料は、最高使用温度において材料に及ぼす化学的影響

及び物理的影響に対し、安全な化学的成分及び機械的強度を有するものでなければならな

い。

火技解釈 (ボイラー等の材料)

第2条 省令第5条に規定する「耐圧部分」とは、内面に 0MPa を超える圧力(ゲージ圧力

をいう。以下同じ。)を受ける部分をいう。

2 省令第5条に規定する「安全な化学的成分及び機械的強度を有するもの」とは、溶接性、

引張強さ、延性、靭性及び硬度等に優れたものをいい、別表第1-1(鉄鋼材料)及び別

表第2(非鉄材料)に記載されている材料はこれらを満足するものと解釈される。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:欧州でも耐圧部分は、最高使用圧力を超える設計圧力を

規定して設計を行うという基本的な考え方は、火技省令と同様であった。PED では、

0.05MPa を超える圧力の設備には耐圧設計を求めており、本調査対象の設備はこの考え

が考慮されていることを確認した。材料には、EN 規格等の整合規格に記載された材料

「European Approval of Materials」に規定されている材料又は公認検査機関によって

PED 相当の要求を満たすと認定されている材料が使用されている。また、EN12953 は、

シェルボイラーに適用する材料規格として、EN10028、EN102161、EN10217 及び

EN10222 等の規格があり、P265GH(JIS G3103 における SB410 相当)等の材料が使用

されている。設計圧力に対して安全な材料を規定するという基本的な考え方は、火技省令

と同様であった。

・耐圧部分に関する火技解釈との相違点:PED では、0.05MPa を超える設備について耐圧

設計を行うことになっているが、火技解釈では 0MPa を超える部分を耐圧部分と解釈し

ているといった相違点がある。ORC 発電設備では、設計圧力は 1.0MPa 又は 1.3MPa(た

だし運転圧力はガスで 0.2MPa、オイルで 0.8MPa 程度)であることから、欧州でも耐圧

設計は行われている。

・材料に関する火技解釈との相違点等:材料は、欧州規格の S235JR 及び P265GH を使用

しており、これらは JIS 規格の SS330 及び SB410 に相当するものである。成分的には

JIS 規格とほぼ同等であったが、欧州での降伏点は火技解釈の降伏点及び引張強さと異な

る。日本国内で当該設備を使用する場合には、設置者が自ら JIS 規格と欧州規格の材料の

化学的成分やミルシート等により適切な材料であるかどうかを確認する必要がある。

製品毎の評

価結果

(ボイラーメーカー:A 社、C 社)

・A 社:耐圧部分は、設計圧力 1.0MPa として耐圧設計を実施しており、通常の運転圧力は

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ガスが通ずる部分で 0.2MPa、オイルが通ずる部分で 0.8MPa であることから、運転圧力

よりも高い圧力で設計していることが分かった。材料は S235JR(JIS G 3101 SS330 相

当)及び P265GH(JIS G3103 SB410 相当)が用いられており、火技解釈の別表第 1-1

で規定している鋼材に相当するものを使用している。日本で設置する際には、JIS 規格と

の対比を行い、JIS 規格に相当する材料との化学的成分を確認するほか、ミルシート等に

より機械的安全性について確認する必要がある。

・C 社:耐圧部分は、設計圧力 1.3MPa として耐圧設計を実施している。材料は P265GH

(JIS G 3103 SB410 相当)が用いられており、火技解釈の別表第 1-1 で規定している鋼

材に相当するものを使用している。日本で設置する際には、JIS 規格との対比を行い、JIS

規格に相当する材料との化学的成分を確認するほか、ミルシート等により機械的安全性に

ついて確認する必要がある。

・当該メーカーに係る設備は、両社とも最高使用圧力を規定して設計を行っており、EN 規

格に規定された材料選定を行っている。この考え方は火技省令と同様であるが、最高使用

圧力の考え方や材料の規格が火技解釈とは異なることから、具体的な適合性評価は、詳細

な設計条件を確認する必要がある。

留意事項 欧州のバイオマスボイラーを日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・最高使用圧力及びその設計思想

・選定材料と JIS 規格における相当材料の化学的成分の比較

・ミルシート等を活用した機械的強度の確認

(2) 第二章 ボイラー等及びその附属設備(火技省令第六条 ボイラー等の構造)

内容

火技省令 (ボイラー等の構造)

第六条 ボイラー等及びその附属設備(液化ガス設備を除く。以下この章において同じ。)の

耐圧部分の構造は、最高使用圧力又は最高使用温度において発生する最大の応力に対し安

全なものでなければならない。この場合において、耐圧部分に生ずる応力は当該部分に使

用する材料の許容応力を超えてはならない。

火技解釈 (ボイラー等の構造)

第3条 省令第6条に規定する「安全なもの」とは、次の各号に適合するものとする。

一 第6条から第14条に定める構造を有するもの。ただし、形状、穴の位置等によりこ

れによりがたい耐圧部分であって、その最高使用圧力が日本工業規格 JIS B

8280(2003)「非円形胴の圧力容器」の「附属書2(規定)検定水圧試験」により試験

を行って求めた検定圧力以下であるものにあっては、この限りでない。

二 第5条の水圧に係る性能を有するもの。

2 前項第一号ただし書において、日本工業規格 JIS B 2311(2009)「一般配管用鋼製突合せ

溶接式管継手」、日本工業規格 JIS B 2312(2009)「配管用鋼製突合せ溶接式管継手」、日

本工業規格 JIS B 2313(2009)「配管用鋼板製突合せ溶接式管継手」又は日本工業規格 JIS

B 2316(2007)「配管用鋼製差込み溶接式管継手」に適合する管継手にあっては、その最高

使用圧力が当該管継手の当該規格に定める水圧試験圧力から求めた検定圧力以下である

場合は、検定水圧試験を省略することができる。

(材料の許容応力)

第4条 省令第6条に規定する「許容応力」のうち許容引張応力は、次の各号に掲げるもの

をいう。

一 別表第1-1(鉄鋼材料)及び別表第2(非鉄材料)に掲げる材料の許容引張応力に

あっては同表に規定する値。

二 別表第1-1及び別表第2に規定されていない材料の許容引張応力にあっては、次に

掲げる値のうち最小のものとする。ただし、鉄鋼材料のうち、鋳鋼品にあってはその値

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の 2/3、非鉄材料のうち、静置鋳造品にあってはその値の 0.8 倍、遠心鋳造品にあって

はその値の 0.85 倍とする。

イ クリープ温度領域未満での許容引張応力

(1)室温における規定最小引張強さの 1/3.5

(2)当該温度における引張強さの 1/3.5

(3)室温における規定最小降伏点又は耐力の 2/3

(4)当該温度における降伏点又は耐力の 2/3

ただし、オーステナイト系ステンレス鋼鋼材にあって、水管、過熱器管、再熱器管、

節炭器管、熱交換器及びこれらに類するものに使用される部材に対しては、降伏点又

は耐力の 0.9 倍、室温未満の温度における許容引張応力は、(1)又は(3)の小さい

方とする。

当該温度における引張強さ及び降伏点又は耐力は、次の計算式により算出する。当

該温度における引張強さ = 1.1σtRt

当該温度における降伏点又は耐力 =σyRy

ここに、

σt:室温における規定最小引張強さ

σy:室温における規定最小降伏点又は耐力

Rt :(当該温度における引張強さの実績値/室温における引張強さの実績値)の平均

Ry :(当該温度における降伏点又は耐力の実績値/室温における降伏点又は耐力の実

績値)の平均値

ロ クリープ温度領域での許容引張応力

(1)当該温度において 1,000 時間に 0.01%のクリープを生ずる応力の平均値

(2)当該温度において 100,000 時間でクリープラプチャーを生ずる応力の最小値の

0.8 倍

(3)当該温度において 100,000 時間でクリープラプチャーを生ずる応力の平均値の

0.67 倍

2 省令第6条に規定する「許容応力」のうち許容圧縮応力及び許容せん断応力は、それぞ

れ前項に規定する許容引張応力の値の 1 倍及び 0.85 倍の値とする。

(水圧試験)

第5条 ボイラー等及びその附属設備の耐圧部分の耐圧に係る性能は、次の各号に適合する

ものとする。

一 最高使用圧力の 1.3 倍の水圧(附属設備であって、水圧で試験を行うことが困難であ

る場合は、最高使用圧力の 1.1 倍の気圧)まで昇圧した後、適切な時間保持したとき、

これに耐えるものであること。

二 前号の試験に引き続き最高使用圧力以上の水圧(附属設備であって、水圧で試験を行

うことが困難である場合は、最高使用圧力以上の気圧)で点検を行ったとき、漏えいがな

いものであること。

三 試験に用いる水は、凍結及び加圧時の脆性破壊が生ずるおそれのない温度であること。

(容器の胴)

第6条 容器の胴(長方形管寄せの胴を除く。以下この条において同じ。)の形は、次の各号

によるものであること。

一 円筒形又は図1から図5までに示す円すい形(ボイラー等及び独立節炭器に係る容器

にあっては、図1及び図2に示すものに限る。)であること。

二 円筒形又は同軸円すい形の胴にあっては、軸に垂直な同一断面における最大内径と最

小内径との差は、当該断面の基準内径の 1%以下であること。

2 容器の胴の厚さは、次の各号に掲げる値のいずれか大きいもの以上であること。ただし、

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管をころひろげにより取り付ける管座の部分は、10mm 以上であること。

一 ボイラー等及び独立節炭器に属するものにあっては日本工業規格 JIS B 8201(2005)

「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.1.1 胴の最小厚さの制限」に規定されている値、ボイラ

ー等及び独立節炭器以外のものに属し、かつ、溶接継手を有するものにあっては炭素鋼鋼

板又は低合金鋼鋼板の場合は 3mm、その他の材料の場合は 1.5mm

二 円筒形の胴にあっては日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の

「6.1.2 内圧胴の最小厚さ」に規定されている計算式により算出した値、円すい形の胴に

あっては日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.1.11 円すい

胴の最小厚さ」に規定されている計算式により算出した値(偏心円すい胴にあっては、偏

心円すいとそれに接続する円筒のなす角度の最大値を半頂角として算出した値)、ただし、

ボイラー等及び独立節炭器以外のものに属する容器の胴にあっては、計算式における付け

代は 0 とする。

3 前項の長手継手の効率は、溶接継手の効率とし、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸

用鋼製ボイラ-構造」の「8.2.3 溶接継手の効率」に規定されている値とする。この場合

において、「放射線試験を行うもの」とは次の各号のものをいう。

一 ボイラー等及び独立節炭器に属する容器及び管にあっては、第125条及び第127

条第2項第一号の規定に準じて放射線透過試験を行い、同条第3項第一号の規定に適合す

るもの

二 前号に掲げるもの以外のものにあっては第143条及び第145条第2項第一号の規

定に準じて放射線透過試験を行い、同条第3項第一号の規定に適合するもの

4 第2項の連続した穴がある場合における当該部分の効率は、当該部分を第5項の規定に

準じて補強する場合は 1、その他の場合は日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボ

イラ-構造」の「6.1.5 長手方向に配置された管穴部の強さ」から「6.1.9 管穴が不規則

に配置された場合の効率」の規定によるものとする。

5 容器の胴に穴を設ける場合は、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構

造」の「6.6.9 補強を必要としない穴」から「6.6.14 強め材の強さ」まで及び「8.2.6 管

台、強め材などの溶接」に従って補強すること。ただし、「6.6.12 補強に有効な面積」の

「tnr」は、「6.1.2 内圧胴の最小厚さ」を求める算式と同じ算式を用い、付け代αは 0 と

する。

6 円すい形の胴と円筒形の胴とを接続する場合、大径端部及び小径端部は、次の各号によ

ること。

一 円すい形の胴と円筒形の胴との接続は、第1項第一号の図1から図5に示すように行

うこと。

二 大径端部及び小径端部は、日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附

属書 E(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「E.2.4 円すい胴」の「b)大径端部」及び「c)

小径端部」によること。

(長方形管寄せ)

第7条 長方形管寄せの胴の厚さは、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-

構造」の「6.7.13 長方形管寄せ」によって算出した値(胴に穴を設けた場合であって、

次項において準用する前条第5項の規定により補強した場合にあってはη2を 1 として算

出した値)以上とする。ただし、管をころひろげにより取り付ける管座の部分の厚さは、

10mm 以上とすること。

2 前条第5項の規定は、長方形管寄せについて準用する。この場合において、「胴の内径」

とあるのは「長方形管寄せの胴の当該穴のある側面の方向の内のり」と、「胴の外径」と

あるのは「長方形管寄せの胴の当該穴のある側面の方向の外のり」と、「胴板の面に垂直

な任意の平面に現れる断面」とあるのは「胴板の面に垂直な長手方向の平面に現れる断面」

と読み替え、係数 F は、1 とする。

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(容器の鏡板)

第8条 容器の鏡板の形は、次の各号に掲げるもののいずれかによるものとする。

一 皿形であって、次に適合するもの

イ 外径が中央部における内面の半径以上であること。

ロ すみの丸みの内半径が厚さの 3 倍及び外径の 0.06 倍(50mm 未満の場合は、

50mm)以上であること。

ハすき間が日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「7.5 皿形鏡

板又は半だ円体形鏡板のすき間」によるもの。

二 全半球形

三 半だ円体形であって、次に適合するもの

イ 内面における長径と短径との比が 2 以下であるもの。

ロ すき間が日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「7.5 皿形鏡

板又は半だ円体形鏡板のすき間」によるもの。

2 容器の鏡板の厚さは、前項各号に定める鏡板の形及び圧力を受ける面に応じ日本工業規

格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.2.3 中低面に圧力を受けるステー

がない皿形又は全半球形鏡板の最小厚さ」の「a)穴がない場合」、「6.2.4 中低面に圧力を

受ける半だ円体形鏡板の最小厚さ」の「a)穴がない場合」及び「6.2.6 中高面に圧力を受

けるステーがない皿形鏡板の最小厚さ」によって算出した値以上とする。ただし、胴に重

ね継手とするフランジ部分については、その値の 0.9 倍までに減ずることができるものと

し、継手の効率ηについては、第6条第3項の規定を準用する。また、付け代αは、ボイ

ラー等及び独立節炭器に属する容器の鏡板にあっては 1mm、その他のものにあっては 0

とする。

3 容器の鏡板に穴を設ける場合は、その部分を補強するものとする。ただし、穴の径が

200mm 以下で、かつ日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.6.9

補強を必要としない穴」の「b)鏡板に設けられる穴」に適合する穴である場合は、この限

りでない。この場合において、「6.6.9 補強を必要としない穴」の「b)鏡板に設けられる穴」

2)における、「水柱管への連絡管取付け穴」は「監視計器、薬品注入管、連続吹出し管等

を設けるための穴であって、内径が 20mm 以下のもの」と読み替えるものとする。

4 前項の規定により補強する場合は、次の各号によるものとする。

一 穴の周囲にフランジを折り込んで補強する場合は、次によるものであること。

イ 穴の形は、円形又はだ円形であること。

ロ フランジの高さは、次の計算式により算出した値以上であること。

h = 0.96√tr + 0.5t

h は、穴の直径に沿って鏡板の外面にあてた平板面からのフランジ

の高さ(mm を単位とする。)

t は、鏡板の計算上必要な厚さ(mm を単位とする。)

r は、次の計算式により算出した値(mm を単位とする。)

2

tbar

a 及び b は、穴が円形である場合はその長半径及び短半径、穴が円

形である場合は半径(mm を単位とする。)

ハ 鏡板の厚さは、次の値にその 0.15 倍(3mm 未満の場合は、3mm)を加えた値以上

とすること。

(イ)皿形鏡板にあっては、鏡板の中央部における内面の半径がフランジ部分の内径

の 0.8 倍未満の場合は、鏡板の中央部における内面の半径をフランジ部分の内径

の 0.8 倍の値として第2項の計算式により算出した値、その他の場合は第2項の

計算式により算出した値

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(ロ)全半球形鏡板にあっては、鏡板の中央部における内面の半径をフランジ部分の

内径の 0.8 倍の値として第2項の計算式により算出した値

(ハ)半だ円体形鏡板にあっては、次の計算式により算出した値

+αησ 0.2P-2

1.77PRt

a

t は、鏡板の計算上必要な厚さ(mm を単位とする。)

P は、中低面に圧力を受ける鏡板にあっては最高使用圧力、中高面

に圧力を受ける鏡板にあっては最高使用圧力の 1.67 倍(MPa を

単位とする。)

R は、鏡板のフランジ部分の内径の 0.8 倍の値(mm を単位とす

る。)

σa は、材料の許容引張応力(N/mm2 を単位とする。)

η は、鏡板を継ぎ合わせて作る場合における継手の効率。この場合

において、継手の効率については、第6条第3項の規定を準用す

る。

α は、付け代でボイラー等及び独立節炭器に属する容器の鏡板にあ

っては 1mm、その他のものにあっては 0

二 穴の周囲に溶接した強め材を取り付けて補強する場合は、第6条第5項の規定に準じ

て補強すること。この場合において、強め材の必要面積は、日本工業規格 JIS B 8201

(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.6.10 補強の計算」の「6.6.10a) 胴板、皿形、

全半球形、半だ円体形鏡板又は管寄せの場合」の「1)穴の周囲に強め材を取り付けて補

強する場合」1.1)により算出した値以上とし、また、係数 F の値は 1 とする。

(容器の平板)

第9条 容器の平板の厚さは、次の各号に掲げる板の区分に応じ、それぞれ当該各号に定め

る値以上とする。ただし、付け代は、ボイラー等及び独立節炭器に属する容器の平板にあ

っては 1mm、その他のものにあっては 0 とする。

一 溶接によって取り付けられる平鏡板 日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の

設計」の「附属書 E(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「E.3.6 溶接によって取り付け

る平鏡板(平板)」によって溶接継手効率η を 1.0 として算出した値

二 ボルト締め平ふた板 日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属

書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.3.2 ボルト締め平ふた板の計算厚さ」によって

算出した値

三 はめ込み形円形ふた板 日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附

属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.4.2 はめ込み形円形平ふた板の計算厚さ」に

よって算出した値

四 周囲が自由支持されているマンホールの平ふた板 日本工業規格 JIS B 8201(2005)

「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.6.8 マンホールカバーの最小厚さ a)」によって算出し

た値

2 容器の平板に穴を設ける場合は、次の各号により補強すること。この場合において、日

本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「図 6.7 平板の取付け」で規

定されている「平板の取付方法によって決まる定数」C は、前項の規定の値を用いるも

のとする。

一 穴の径が日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 E(規定)

圧力容器の胴及び鏡板」の「図 E.8 溶接によって取り付ける平鏡板の形状」及び日本

工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた

板」の「図 L.1 ボルト締め平ふた板の構造」に示すφdの値の 0.5 倍以下である場合

は、次のいずれかによること。

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100

イ 第6条第5項の規定に準じて補強すること。この場合、補強に必要な面積は、日本

工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.6.10 補強の計算」の

「6.6.10b) 平板の場合」の「1)穴の周囲に強め材を取り付けて補強する場合」の計

算式により算出した値以上であること。

ロ 平板の厚さは、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.6.9

補強を必要としない穴」の「c)平板に設けられる穴」2)で算出した値以上であること。

二 穴の径が日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 E(規定)

圧力容器の胴及び鏡板」の「図 E.8 溶接によって取り付ける平鏡板の形状」及び日本

工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた

板」の「図 L.1 ボルト締め平ふた板の構造」に示すφdの値の 0.5 倍を超える場合は、

日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.2.8 ステーがなく穴

がある平鏡板の最小厚さ」b)によって平板の厚さを算出すること。この場合において、

平板をボルト締めフランジとして計算は行わないものとする。

(容器のフランジ付き皿形ふた板)

第10条 容器のふた板であって、締め付けボルトで取り付けるフランジをもつものは、内

圧を受けるものとし、その場合におけるふた板の形状は日本工業規格 JIS B 8267(2008)

「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1 フランジ付皿形

ふた板の構造」の「図 L.3 フランジ付皿形ふた板」a)から d)までによること。

2 前項のふた板(フランジを除く。)の厚さは、次の各号に掲げる値以上であること。

一 前項の附属書 L 図 L.3 a)に示すふた板にあっては、日本工業規格 JIS B 8267(2008)

「圧力容器の設計」の「附属書 E(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「E.3.3 皿形鏡板」

の内径基準の計算式で算出した値

二 前項の附属書 L 図 L.3 b)から d)までに示すふた板にあっては、それぞれ日本工業規

格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の

「L.5.2 フランジ付皿形ふた板の計算厚さ」の「L.5.2.1 鏡板の部分の計算厚さ」の「b)

図 L.3 の b)、c)及び d) に示すふた板」の「1)内圧を保持する場合」の計算式で算出し

た値

三 前号の場合において、継手の効率ηについては、第6条第3項の規定を準用する。

3 第8条第3項及び第4項のうち皿形鏡板に係る部分の規定は、第1項のふた板について

準用する。

(容器の管板)

第11条 容器の管板(丸ボイラーの管板を除く。)は、次の各号によるものであること。

一 管板の構造は、日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 K(規

定)圧力容器の管板」の「K.3.2 管板の構造」に適合するものであること。

二 管板の厚さは、日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 K(規

定)圧力容器の管板」の「K.4.2 管板の計算厚さ」によって算出した値(10mm 未満

の場合にあっては 10mm)以上であること。

(管及び管台)

第12条 円筒形の管(管フランジ及びレジューサの部分を除く。)の厚さは、次の各号に掲

げる値のいずれか大きいもの以上の値であること。この場合、材料の許容引張応力は、内

部の流体が熱を吸収する管にあっては管壁の平均温度、内部の流体が熱を放出する管にあ

っては流体の温度における値とする。

一 水管、過熱管、再熱管、節炭器管(鋳鉄管を使用するものを除く。次号及び第五号に

おいて同じ。)、下降管、上昇管及び管寄せ連絡管であって、外径が 127mm 以下のも

のにあっては、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.7.2

水管、過熱管、再熱管、エコノマイザ用鋼管などの最小厚さ」に規定されている計算式

により算出した値。この場合において、ころ広げをするもの以外の付け代α は、0 と

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101

する。

二 水管、過熱管、再熱管、節炭器管、下降管、上昇管及び管寄せ連絡管であって、外径

が 127mm を超えるもの及び蒸気管にあっては、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸

用鋼製ボイラ-構造」の「6.7.4 蒸気管の最小厚さ」に規定されている計算式により、

付け代α を 0 として算出した値。ただし、最高使用圧力 P は、0.7MPa 未満の場合

であっても 0.7MPa とすることを要しない。

三 給水管にあっては、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.7.7

給水管の最小厚さ」及び「11.1 給水管の最小厚さ」に規定されている計算式により、

付け代α を 0 として算出した値。ただし、最高使用圧力 P は、0.7MPa 未満の場合

であっても 0.7MPa とすることを要しない。

四 ボイラーから吹出し弁(2 個以上ある場合は、ボイラーから最も遠いもの)までの吹

出し管にあっては、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.7.9

ブロー管の最小厚さ」に規定されている計算式により、付け代α を 0 として算出した

値。ただし、最高使用圧力 P は、0.7MPa 未満の場合であっても 0.7MPa とすること

を要しない。

五 水管、過熱管、再熱管、節炭器管、下降管、上昇管及び管寄せ連絡管であって、炭素

鋼鋼管を使用するもの(ころ広げ等の機械的接合により容器等に接合されるものに限

る。)にあっては、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.7.3

煙管、水管、過熱管、再熱管、エコノマイザ用鋼管などの厚さの最小厚さの制限」に規

定された値

六 鋳鉄管を使用する節炭器管にあっては、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボ

イラ-構造」の「6.7.11 エコノマイザ用鋳鉄管の最小厚さ」に規定されている計算式

により算出した値

七 第一号から第四号及び第六号に規定する管以外のものにあっては、次の計算式により

算出した値

0.8P2

Pdr

aη+σ

t は、管の計算上必要な厚さ(mm を単位とする。)

P は、管の内側の最高使用圧力(MPa を単位とする。)

d は、管の外径(mm を単位とする。)

σa は、材料の許容引張応力(N/mm2 を単位とする。)

η は、長手継手の効率

2 管のうちレジューサの部分にあっては、第6条第2項の規定中円すい形に係る部分を準

用する。ただし、水管、過熱管、再熱管、節炭器管(鋳鉄管を使用するものを除く。)、下

降管、上昇管、管寄せ連絡管並びにボイラーに最も近い給水止め弁からボイラーに最も近

い蒸気止め弁までの部分の蒸気管及び給水管にあっては付け代を管の外径の 0.005 倍と

する。

3 管は、次の各号に規定する場合を除き、管の中心線に直角な断面で溶接したものである

こと。

一 管の中心線の交角が 30 度以下で、かつ、管の厚さが前項の規定により必要とされる

厚さに次の計算式により算出した値を乗じた値以上である場合

r-R

0.5r-R

R は、管の中心線の曲率半径(mm を単位とする。)

r は、管の内半径(mm を単位とする。)

二 管を取付け溶接する場合

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102

4 第1項の規定は、管台の厚さについて準用する。ただし、いかなる場合でも管台の最小

厚さは、鋳鋼の場合は 8mm、鋳鉄の場合は 11mm より小さくないこと。

5 第6条第5項の規定は、管及び管台について準用する。

6 管に取り付ける平板の厚さは、差し込み閉止板以外のものにあっては第9条に掲げる計

算式により算出した値以上、差し込み閉止板にあっては次の計算式により算出した値以上

であること。

a

B

Pd

σ16

3t

t は、差し込み閉止板の最小厚さ(mm を単位とする。)

P は、管の内側の最高使用圧力(MPa を単位とする。)

σa は、材料の許容引張応力(N/mm2 を単位とする。)

d𝐁 は、次の図 1 から図 3 中に定める方法によって測った当該差し込み

閉止板の径(mm を単位とする。)

(フランジ)

第13条 フランジは、次の各号のいずれかに適合するものであること。ただし、日本工業

規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 G(規定)圧力容器のボルト締め

フランジ」に規定されている計算方法による場合はこの限りではない。この場合において、

σf、σnの値は材料の許容応力であって第4条の定めるところによる。

一 日本工業規格 JIS B 2220(2012)「鋼製管フランジ」(材料に係る部分を除く。)及び

日本工業規格 JIS B 2239(2004)「鋳鉄製管フランジ」(材料に係る部分を除く。)

二 THE AMERICAN SOCIETY OF MECHANICAL ENGINEERS ASME B16.5-2009

「PIPE FLANGE AND FLANGED FITTINGS」(フランジ付継手及び材料に係る部分

を除く。) 及び ASMEB16.47a-2006「LARGE DIAMETER STEEL FLANGES」(材

料に係る部分を除く。)

三 石油学会規格 JPI-7S-15-2011「石油工業用フランジ」(材料に係る部分を除く。)及び

石油学会規格 JPI-7S-43-2008「石油工業用大口径フランジ」(材料に係る部分を除く。)

2 第10条第1項のフランジの厚さは、次の各号によるものであること。

一 第10条第1項の日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L

(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1 フランジ付皿形ふた板の構造」の「図 L.3 フ

ランジ付皿形ふた板」a)に示す形のフランジにあっては、前項の管フランジの厚さ、又

は、日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容

器のふた板」によること。

二 第10条第1項の日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L

(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1 フランジ付皿形ふた板の構造」の「図 L.3 フ

ランジ付皿形ふた板」b)、c)及び d)に示す形のフランジにあっては、それぞれ日本工業

規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」

によること。

(丸ボイラー)

第14条 丸ボイラーの管板、火室、炉筒、控え及びこれによって支えられる板並びに煙管

は、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」の「6.3 管板」、「6.4 火

室及び炉筒」、「6.5 ステー構造」及び「6.7.1 煙管の最小厚さ」に適合するものであるこ

と。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:EN 規格における部材厚さの算定式において最高使用温

度及び最高使用圧力が考慮されていること、材料の許容応力は、PED 及び EN 規格等に

規定されており、最高使用温度、最高使用圧力及び材料に応じた許容引張応力を規定して

安全設計を行うという基本的な考え方は、火技省令と同様である。

・材料の許容応力に関する火技解釈との相違点等:材料の許容引張応力は、降伏点の 1/1.5

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103

が適用されている。一方で、火技解釈では、引張強さの 1/3.5 及び降伏点の 1/1.5 のうち

小さい値が適用されており、一般的には引張強さの 1/3.5 の方が小さい値になることが多

い。そのため、欧州で設計・製造されたボイラーの方が小さい許容応力で設計されている

可能性がある。一方で、本調査対象設備においては、欧州の規制は降伏点の 1/1.5 である

が、実際の詳細な設計解析を行う際にはこの値以上の安全率を用いているとのことであっ

た。

・水圧試験に関する火技解釈との相違点等:水圧試験は、PED では設計圧力の 1.43 倍と最

大許容温度における圧力の 1.25 倍のうち大きい値を用いる。一方で、火技解釈は設計圧

力の 1.3 倍(温度補正なし)以上になっている。そのため、水圧試験は、その閾値を比較

すると、PED の規定は火技解釈を満たすものとなるが、一方で、過剰な圧力設定となる

懸念があることから、単純に適用できるものではない。

・部材厚さ等の設計方法に関する火技解釈との相違点等:部材厚さ等の設計方法は、継手効

率の考え方、穴の補強の考え方等は同様のものもあるが、胴の板厚の計算式、形状等の相

違点や長方形の管寄せ等は、EN12953 では規定がなかった。また、本調査では、実際の

設計板厚までは確認することができなかった。一方で、最小板厚の考え方は、火技解釈で

は JIS B8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」に準拠し、「内径 900mm 以下」のものは

6mm、「900mm を超え 1350mm 以下」のものは 8mm、「1350mm を超え 1850mm 以下」

のものは 10mm、「内径 1850mm を超える」ものは 12mm であるのに対し、EN12953 で

は、「外径 1000mm 以上で低圧ボイラー以外のもの」は 6mm、「1000mm 未満及び低圧

ボイラー」は 4mm であった。一方で、本調査では、詳細な板厚までの情報は確認するこ

とができなかった。

製品毎の評

価結果

(ボイラーメーカー:A 社、C 社)

・A 社:最高使用温度(ガス:約 950℃、オイル:315℃)及び最高使用圧力(1.0MPa)に

配慮した設計が行われていることは確認したが、実際に適用している部材厚さについては

確認できなかった。また、部材厚さを試算した場合には、圧力が小さいことから、計算に

より求められる部材厚さは火技解釈を満たす可能性がある。しかし、最小部材厚さの考え

方は異なることから、国内への導入には、最小部材厚さ及び形状等が火技解釈に適合する

か確認する必要がある。

・C 社:最高使用温度(ガス:約 1050℃、オイル:315℃)及び最高使用圧力(1.3MPa)

に配慮した設計が行われていることは確認したが、実際に適用している部材厚さについて

は確認できなかった。また、部材厚さを試算した場合には、圧力が小さいことから、計算

により求められる部材厚さは火技解釈を満たす可能性がある。しかし、最小部材厚さの考

え方は異なることから、国内への導入には、最小部材厚さ及び形状等が火技解釈に適合す

るか確認する必要がある。

・当該メーカーにおける設備は、両社とも最高使用温度及び最高使用圧力を設定し、これに

配慮した設計を行っており、部材厚さを決定している。このことから、火技省令と同様に、

構造について配慮した設計を行っている。しかし、最高使用温度及び最高使用圧力の考え

方が火技解釈と異なること、具体的な板厚や形状が火技解釈で求めている要件を満たして

いるかどうかまでは確認することができなかった。そのため、日本国内に設置する際には、

設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要

がある。

留意事項 欧州のバイオマスボイラーを国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・最高使用温度、最高使用圧力及びその設計思想

・使用する材料及び許容応力並びに設計板厚

・火技解釈を満たした形状であるか

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104

(3) 第二章 ボイラー等及びその附属設備(火技省令第七条 安全弁)

内容

火技省令 (安全弁)

第七条 ボイラー等及びその附属設備であって過圧が生ずるおそれのあるものにあっては、

その圧力を逃がすために適当な安全弁を設けなければならない。この場合において、当該

安全弁は、その作動時にボイラー等及びその附属設備に過熱が生じないように施設しなけ

ればならない。

火技解釈 (安全弁)

第15条 省令第7条に規定する「過圧が生ずるおそれのあるもの」とは、次の各号に掲げ

るもの以外のものをいう。

一 蒸気貯蔵器及びボイラー等の附属設備であって、最高使用圧力の 1.06 倍の圧力を超

えるおそれのないもの

二 第2項第七号の管の低圧側並びに第2項第九号の蒸気貯蔵器及びボイラー等の附属設

備であって、これらがボイラー等又は蒸気タービンに直接接続されていない場合であっ

て、それぞれ当該各号に定める安全弁と同等の容量及び吹出し圧力を有する逃がし弁を

有するもの

三 前二号に掲げるものの他、工学的に最高使用圧力を超えるおそれのないもの

2 省令第7条に規定する「適当な安全弁」とは、次の各号により設けられた安全弁をいう。

一 安全弁は、第3項に適合するばね安全弁又はばね先駆弁付き安全弁であること。ばね

先駆弁付き安全弁を使用する場合にあっては、ばね先駆弁付き安全弁の容量の合計は、

第二号から第九号までの規定による安全弁の容量の所要合計の 1/2 を超えないこと。

二 過熱器のある循環ボイラーにあっては、次によること。

イ ドラム及び過熱器の出口にそれぞれ 1 個以上設けること。

ロ 第6項に掲げる計算式により算出した安全弁の容量の合計は、ボイラーの最大蒸発

量以上であること。この場合にあっては、ドラムに設ける安全弁の容量の合計はボ

イラーの最大蒸発量の 75%以上、過熱器の出口に設ける安全弁の容量の合計は当該

過熱器の温度を設計温度以下に保持するのに必要な容量(当該ボイラーの最大蒸発

量の 15%を超える場合は、当該ボイラーの最大蒸発量の 15%)以上であること。

ハ ロの場合にあっては、自動燃焼制御装置及びボイラーの最高使用圧力の 1.06 倍以

下の圧力で急速に燃料の送入を遮断する装置を有するボイラーにあっては、ボイラ

ーの最高使用圧力以下の圧力で自動的に作動する圧力逃がし装置の容量(ボイラー

の最大蒸発量の 30%を超える場合は、ボイラーの最大蒸発量の 30%)を安全弁の容

量に算入することができる。

ニ ドラムに設ける安全弁の吹出し圧力は、次によること。

(イ)安全弁が 1 個の場合は、ボイラーの最高使用圧力以下の圧力。ただし、当該

ボイラーにボイラーの最高使用圧力以下の圧力で自動的に作動する圧力逃がし

装置がある場合は、ボイラーの最高使用圧力の 1.03 倍以下の圧力とすることが

できる。

(ロ)安全弁が 2 個以上の場合は、1 個は(イ)の規定に準ずる圧力、他はボイラー

の最高使用圧力の 1.03 倍以下の圧力

ホ 過熱器に設ける安全弁の吹出し圧力は、ドラムに設ける安全弁に先行して動作する

圧力であること。

三 過熱器のない循環ボイラーにあっては、前号ニの規定に準ずるほか、次によること。

イ ドラムに 2 個以上設けること。ただし、加熱面積が 50m2 以下のボイラーにあっ

ては、1 個以上とすることができる。

ロ 第6項に掲げる計算式により算出した安全弁の容量の合計は、ボイラーの最大蒸発

量以上であること。

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105

四 貫流ボイラーにあっては、次によること。

イ ボイラーの出口及び蒸気流通部(再熱器を除く。)にそれぞれ 1 個以上設けること。

ただし、加熱面積が 50m2 以下のボイラーにあっては、ボイラーの出口に 1 個以上

とすることができる。

ロ 第6項に掲げる計算式により算出した安全弁の容量の合計は、ボイラーの最大蒸発

量以上であること。この場合において、過熱器のあるボイラーにあっては、ボイラ

ーの出口に設ける安全弁の容量の合計は、当該過熱器の温度を設計温度以下に保持

するのに必要な容量(当該ボイラーの最大蒸発量の 15%を超える場合は、当該ボイ

ラーの最大蒸発量の 15%)以上であること。

ハ ロの場合において、自動燃焼制御装置及びボイラーの出口の最高使用圧力の 1.06

倍以下の圧力で急速に燃料の送入を遮断する装置を有するボイラーにあっては、ボ

イラーの出口の最高使用圧力以下の圧力で自動的に作動する圧力逃がし装置又は起

動バイパス装置の容量(ボイラーの最大蒸発量の 30%を超える場合は、ボイラーの

最大蒸発量の 30%)を安全弁の容量に算入することができる。

ニ 安全弁の吹出し圧力は、次によること。

(イ)最高使用圧力が同じである箇所に設ける安全弁が 1 個の場合は、当該箇所

の最高使用圧力以下の圧力。ただし、出口の圧力が臨界圧力未満のボイラーで

あってボイラーの出口の最高使用圧力以下の圧力で自動的に作動する圧力逃が

し装置又は起動バイパス装置を有するものにあっては当該箇所の最高使用圧力

の 1.03 倍以下、出口の圧力が臨界圧力以上のボイラーであって自動燃焼制御装

置、ボイラーの出口の最高使用圧力の 1.06 倍以下の圧力で急速に燃料の送入を

遮断する装置及びボイラーの出口の最高使用圧力以下の圧力で自動的に作動

し、かつ、容量が当該ボイラーの最大蒸発量の 10%以上である圧力逃がし装置

又は起動バイパス装置のいずれか 1 個以上(圧力逃がし装置又は起動バイパス

装置に元弁を設ける場合は、2 個以上)の装置を有するもの(以下この条にお

いて単に「超臨界圧ボイラー」という。)にあっては当該ボイラーの出口の最高

使用圧力の 1.16 倍以下の圧力とすることができる。

(ロ)最高使用圧力が同じである箇所に設ける安全弁が 2 個以上の場合は、1 個

は(イ)の規定に準ずる圧力、他は当該箇所の最高使用圧力の 1.03 倍(超臨界圧

ボイラーにあっては、その出口の最高使用圧力の 1.16 倍)以下の圧力

ホ 起動用止め弁を有する超臨界圧ボイラーにあっては、当該止め弁の入口側の圧力を

記録する装置を設けること。

五 再熱器にあっては、次によること。

イ 入口及び出口にそれぞれ 1 個以上設けること。

ロ 第6項に掲げる計算式により算出した安全弁の容量の合計は、再熱器の最大通過蒸

気量以上であること。ただし、再熱器入口管に合流する管(再熱器と同一の最高使

用圧力であって安全弁が設けられる管に限る。)がある場合は、再熱器の最大通過蒸

気量から合流する管の最大通過蒸気量を除くことができる。なお、いずれの場合に

おいても、出口に設ける安全弁の容量の合計は、当該再熱器の温度を設計温度以下

に保持するのに必要な容量(当該再熱器の最大通過蒸気量の 15%を超える場合は、

当該再熱器の最大通過蒸気量の 15%)以上であること。

ハ ロの場合において、自動燃焼制御装置及び再熱器の最高使用圧力の 1.06 倍以下の

圧力で急速に燃料の送入を遮断する装置を有するボイラーの再熱器にあっては、再

熱器の最高使用圧力以下の圧力で自動的に作動する圧力逃がし装置の容量(再熱器

の最大通過蒸気量の 30%を超える場合は、再熱器の最大通過蒸気量の 30%)を安全

弁の容量に算入することができる。

ニ 入口に設ける安全弁の吹出し圧力は、次によること。

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106

(イ)安全弁が 1 個の場合は、当該再熱器の最高使用圧力以下の圧力。この場合に

あっては、当該再熱器にその最高使用圧力以下の圧力で自動的に作動する圧力

逃がし装置がある場合は、その最高使用圧力の 1.03 倍以下の圧力とすることが

できる。

(ロ)安全弁が 2 個以上の場合は、1 個は(イ)の規定に準ずる圧力、他は当該再熱

器の最高使用圧力の 1.03 倍以下の圧力

ホ 出口に設ける安全弁の吹出し圧力は、入口に設ける安全弁に先行して動作する圧力

以下であること。

六 独立過熱器にあっては、前号の規定に準ずること。

七 減圧弁を設ける場合にあって、低圧側及びこれに接続する機器が高圧側の圧力で設計

されていない管にあっては、第二号ニの規定に準ずるほか、次によること。

イ 減圧弁の低圧側にこれと接近して 1 個以上設けること。

ロ 第6項に掲げる計算式により算出した安全弁の容量の合計は、減圧弁が全開したと

き管の低圧側及びこれに接続する機器の圧力をそれぞれ当該部分の最高使用圧力の

1.06 倍以下に保持するのに必要な容量以上であること。

八 最高使用圧力が異なる場合にあって、それぞれに設ける安全弁のうち吹出し圧力が最

も低いもの相互の吹出し圧力の差が低い方の吹出し圧力の 0.06 倍以上である 2 個以

上のボイラー等を連絡する部分にあっては、次によること。

イ 当該 2 個以上のボイラー等の蒸気の合流箇所の近くに 1 個以上設けること。

ロ 第6項に掲げる計算式により算出した安全弁の容量の合計は、高圧側から低圧側に

流入するおそれがある蒸気の最大通過蒸気量以上であること。

ハ 安全弁の吹出し圧力は、次によること。

(イ)安全弁が 1 個の場合は、当該 2 個以上のボイラー等の最高使用圧力のうち最

も低いもの以下の圧力

(ロ)安全弁が 2 個以上の場合は、1 個は(イ)の規定に準ずる圧力、他は当該 2 個

以上のボイラー等の最高使用圧力のうち最も低いものの 1.03 倍以下の圧力

九 蒸気貯蔵器及びボイラー等の附属設備(管並びに第六号及び前号に掲げるものを除

く。)であって、圧力がその最高使用圧力の 1.06 倍を超えるおそれがあるものにあっ

ては、次によること。

イ 適当な箇所に 1 個以上設けること。

ロ 第6項に掲げる計算式により算出した安全弁の容量の合計は、当該附属設備に蓄積

される水又は蒸気並びにガスの量以上であること。

ハ 安全弁の吹出し圧力は、次によること。

(イ)安全弁が 1 個の場合は、当該附属設備の最高使用圧力以下の圧力

(ロ)安全弁が 2 個以上の場合は、1 個は(イ)の規定に準ずる圧力、他は、当該附

属設備の最高使用圧力の 1.03 倍以下の圧力

3 第2項第一号の規定により設けるばね安全弁の規格は、日本工業規格 JIS B 8210(2009)

「蒸気用及びガス用ばね安全弁」の「5.1 構造一般」、「5.3 ばね」、「7 材料」及び「8.1

耐圧性」によること。

4 第2項第一号の規定によるばね先駆弁付安全弁の規格は、次の各号によること。

一 先駆弁がその取付け箇所の蒸気の圧力によって作動する構造のものであること。

二 材料は、日本工業規格 JIS B 8210(2009)「蒸気用及びガス用ばね安全弁」の「7 材

料」に適合するものであること。

三 先駆弁のばねは、日本工業規格 JIS B 8210(2009)「蒸気用及びガス用ばね安全弁」

の「5.1 構造一般」及び「5.3 ばね」に適合するものであること。

四 先駆弁の弁座口の径は、20mm 以上であること。

五 先駆弁と安全弁とは、内径 12mm 以上の管で直接連絡されているものであること。

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107

六 安全弁の入口圧力が吹出し圧力の 70%以上に達したときに手動で安全弁を開くこと

ができる装置を有すること。

5 第2項第二号から第七号までの規定により設ける圧力逃がし装置及び同項第四号の規定

により設ける起動バイパス装置の規格は、次の各号によること。

一 電気、圧縮空気、蒸気、加圧水及びその他の動力源によって弁を開閉するものであっ

て、検出部の蒸気圧力が規定吹出し圧力に達した時に弁が自動的に、かつ、速やかに開

くものであること。

二 弁は、蒸気圧力の変化のみを検出する装置を個別に有するものであること。

三 圧力逃がし装置にあっては大気に、起動バイパス装置にあっては大気又は低圧容器に

排気を放出する構造のものであること。

6 第2項第二号から第九号までの規定により設ける安全弁の容量の計算式は、次の各号に

よること。

一 蒸気用の安全弁にあっては、日本工業規格 JIS B 8210(2009)「蒸気用及びガス用ば

ね安全弁」の「附属書 JA(規定)安全弁の公称吹出し量の算定方法」の「JA.1 蒸気

に対する公称吹出し量」によること。

二 空気その他のガス用の安全弁にあっては、日本工業規格 JIS B 8210(2009)「蒸気用

及びガス用ばね安全弁」の「附属書 JA(規定)安全弁の公称吹出し量の算定方法」の

「JA.2 ガス用に対する公称吹出し量」によること。

三 蒸気用のばね先駆弁付き安全弁であって、弁が開いた場合における弁座口の蒸気通路

の面積がのど部の面積の 1.25 倍以上、弁の入口及び管台の蒸気通路の面積がのど部の

面積の 1.7 倍以上のものの場合にあっては、日本工業規格 JIS B 8210(2009)「蒸気

用及びガス用ばね安全弁」の「附属書 JA(規定)安全弁の公称吹出し量の算定方法」

の「JA.1 蒸気に対する公称吹出し量 b)」における全量式安全弁の場合を準用する。

四 水用の安全弁にあっては、日本工業規格 JIS B 8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」

の「10.1.3 温水ボイラの逃し弁又は安全弁の大きさ」によること。

7 第2項第二号から第七号までの規定により設ける圧力逃がし装置及び同項第四号の規定

により設ける起動バイパス装置の容量の計算式は、その構造に応じ日本工業規格 JIS B

8210(2009)「蒸気用及びガス用ばね安全弁」の「附属書 JA(規定)安全弁の公称吹出

し量の算定方法」の「JA.1 蒸気に対する公称吹出し量 a)」の計算式を準用する。この

場合において、当該蒸気用圧力逃がし装置が取り付く管台及び止め弁の蒸気通路の面積

が、のど部又は弁座口の蒸気通路の面積のいずれか小さい方の 1.7 倍以上の場合にあって

は、公称吹出し係数は、0.75 とする。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED においては、過圧防止装置、温度モニター、安全

装置全体に対する規定があり、また EN12953 においては、EN ISO4126-1(過大な圧力

に対する保護のための安全装置:第 1 部:安全バルブ)に準拠した過圧のための安全装置

に関する規定がある。また、EN12953 及び DIN4754 等の規格において安全弁の取付け

位置等について系統図を示し例示されており、安全弁により過圧防止を行うという基本的

な考え方は、火技省令と同様である。

・ORC 発電設備における安全弁:欧州の ORC 発電設備においては、熱媒体・作動媒体にオ

イルを用いていることから、オイルと高温ガスの熱交換部分について、高温ガスを逃がす

安全弁は設けられていて、熱媒体・作動媒体側においては、圧力を逃がすためのバイパス

を開放する空気作動弁が設けられており、性能は満たす。ただし、この機能が火技解釈で

求めている安全弁の個数、吹出し圧力の関係及び容量等については、満たしているかどう

かについては、確認することができなかった。

製品毎の評

価結果

(ボイラーメーカー:A 社、C 社)

・A 社:圧力を逃がすための弁が設けられているが、火技解釈で求める弁の個数、吹出し圧

力の関係及び容量等であるかまでは確認はできなかった。

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108

・C 社:圧力を逃がすための弁が設けられているが、火技解釈で求める弁の個数、吹出し圧

力の関係及び容量等であるかまでは確認はできなかった。

・当該メーカーの設備は、安全弁に配慮した設計が行われていることは確認したが、具体的

な安全弁の個数、吹出し圧力及び容量等の詳細な設計条件までは確認できなかった。その

ため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満

足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州のバイオマスボイラーを日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・安全弁の個数、吹出し圧力及び容量

(4) 第二章 ボイラー等及びその附属設備(火技省令第八条 給水装置)

内容

火技省令 (給水装置)

第八条 ボイラーには、その最大連続蒸発時において、熱的損傷が生ずることのないよう水

を供給できる給水装置を設けなければならない。

2 設備の異常等により、循環ボイラーの水位又は貫流ボイラーの給水流量が著しく低下し

た際に、急速に燃料の送入を遮断してもなおボイラーに損傷を与えるような熱が残存する

場合にあっては、当該ボイラーには、当該損傷が生ずることのないよう予備の給水装置を

設けなければならない。

火技解釈 (給水装置)

第16条 省令第8条に規定する「急速に燃料の送入を遮断してもなおボイラーに損傷を与

えるような熱が残存する場合」とは、循環ボイラーの水位又は貫流ボイラーの給水流量が

著しく低下した際に、自動で急速に燃料の送入を遮断する装置を有しないもの、急速に熱

の供給が停止できないもの又はストーカだきボイラー(スプレッダストーカだきボイラー

を除く。)をいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:蒸気ボイラーは、EN12953 において給水装置に関する

規定が存在し、最小水位を下回る場合(水位計は 2 箇所に設置)には、自動停止を行うシ

ステムであることから安全性を担保している。

・ORC 発電設備に関する給水装置:ORC 発電設備は、燃焼炉で高温ガスを発生させて、熱

交換器でその高温ガスと熱交換を行うシステムであることから、燃焼炉には給水装置が設

けられていない。しかし、圧力や温度が異常値となった際には、自動停止する。また、燃

焼炉は、自動的に空気や燃料の遮断を行い、熱媒体は非常用冷却装置を稼働させることに

より、冷温停止するシステムがあり、そのシステムを稼働するための給水装置が設けられ

ていることを確認した。なお、非常用冷却装置の設置は、ドイツの技術基準である

DIN4754 に規定がある。

製品毎の評

価結果

(ボイラーメーカー:A 社、C 社)

・A 社:非常用冷却装置に給水装置が設けられている。

・C 社:非常用冷却装置に給水装置が設けられている。

・当該メーカーの設備は、非常用冷却装置として給水装置を設けていることを確認した。

留意事項 欧州のバイオマスボイラーを日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・給水装置の有無

※DIN4754 に規定があることから、ドイツに流通している設備には、給水装置が設けられ

ていると思われるが、欧州全土で給水装置を設置するという考えが統一しているかまでは

確認できないことから、日本国内に輸入する際には留意が必要である。

(5) 第二章 ボイラー等及びその附属設備(火技省令第九条 蒸気及び給水の遮断)

内容

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109

火技省令 (蒸気及び給水の遮断)

第九条 ボイラーの蒸気出口(安全弁からの蒸気出口及び再熱器からの蒸気出口を除く。)は、

蒸気の流出を遮断できる構造でなければならない。ただし、他のボイラーと結合されたボ

イラー以外のボイラーから発生する蒸気が供給される設備の入口で蒸気の流路を遮断す

ることができる場合における当該ボイラーの蒸気出口又は二個以上のボイラーが一体と

なって蒸気を発生しこれを他に供給する場合における当該ボイラー間の蒸気出口にあっ

てはこの限りでない。

2 ボイラーの給水の入口は、給水の流路を速やかに自動で、かつ、確実に遮断できる構造

でなければならない。ただし、ボイラーごとに給水装置を設ける場合において、ボイラー

に最も近い給水加熱器の出口又は給水装置の出口が、給水の流路を速やかに自動で、かつ、

確実に遮断できる構造である場合における当該ボイラーの給水の入口又は二個以上のボ

イラーが一体となって蒸気を発生しこれを他に供給する場合における当該ボイラー間の

給水の入口にあってはこの限りでない。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:今回の調査において本条文に相当する規格については確

認することができなかった。

・ORC 発電設備における給水装置:ORC 発電設備の場合は、ボイラー側のサーマルオイル

の熱により、作動媒体側のシリコンオイルを蒸発させている。サーマルオイル側のループ

については、飽和温度以下の温度となるように制御し、また基本的に閉じたループとして

いることで蒸気の流出を遮断している。ボイラー側の給水については、非常用冷却装置に

おける給水装置に該当するが、この構造については確認することができなかった。

製品毎の評

価結果

(ボイラーメーカー:A 社、C 社)

・A 社:サーマルオイルは飽和温度以下の温度となるように制御しているため、蒸気は通常

発生しない。蒸気の遮断は、蒸気は閉じたループの中で作動していることから、蒸気の流

出は遮断されている。また、非常用冷却装置の給水装置の具体的な構造までは確認できな

かった。

・C 社:サーマルオイルは飽和温度以下の温度となるように制御しているため、蒸気は通常

発生しない。蒸気の遮断は、蒸気は閉じたループの中で作動していることから、蒸気の流

出は遮断されている。また、非常用冷却装置の給水装置の具体的な構造までは確認できな

かった。

・当該メーカーの設備では、蒸気の遮断機能を有していることは確認したが、給水の遮断機

能までは確認できなかった。

留意事項 欧州のバイオマスボイラーを日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・蒸気の遮断は、一般的に ORC 発電設備は閉じたループになっていると思われるが、その

ような構造であるかを設置者は確認する必要がある。

・給水装置は、給水の流路を速やかに自動で、かつ、確実に遮断できる構造であるかどうか

を設置者は確認する必要がある。

(6) 第二章 ボイラー等及びその附属設備(火技省令第十条:ボイラーの水抜き機能)

内容

火技省令 (ボイラーの水抜き装置)

第十条 循環ボイラーには、ボイラー水の濃縮を防止し、及び水位を調整するために、ボイ

ラー水を抜くことができる装置を設けなければならない。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

本調査対象設備では、循環ボイラーに該当する設備は該当しないことから対象外。

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110

製品毎の評

価結果 ―

留意事項 ―

(7) 第二章 ボイラー等及びその附属設備(火技省令第十一条 計測装置)

内容

火技省令 (計測装置)

第十一条 ボイラー等には、設備の損傷を防止するため運転状態を計測する装置を設けなけ

ればならない。

火技解釈 (計測装置)

第17条 省令第11条に規定する「運転状態を計測する装置」とは、次の各号に掲げる事

項を計測するものをいう。

一 循環ボイラーにあっては、次の事項

イ ドラム内の水位

ロ ドラム内の圧力

ハ 過熱器及び再熱器の出口における蒸気の温度

二 貫流ボイラーにあっては、次の事項

イ 過熱器の出口における蒸気の圧力

ロ 過熱器及び再熱器の出口における蒸気の温度

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED では、圧力や温度に関する制限と計測に関する規

定があることから、計測装置を設置するという基本的な考え方は、火技省令と同様である。

・計測装置に関する火技解釈との相違点等:本調査対象設備は、循環ボイラー及び貫流ボイ

ラーに該当するものはないことから、対象外。

製品毎の評

価結果

(ボイラーメーカー:A 社、C 社)

・A 社:計測装置を設置して計測していることを確認した。

・C 社:計測装置を設置して計測していることを確認した。

・当該メーカーの設備では、計測装置を設置して計測していることを確認した。

留意事項 欧州のバイオマスボイラーを日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・計測装置の有無

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111

6.2.2 蒸気タービン

欧州で普及している蒸気タービン型式の ORC 発電設備について、D 社の発電設備を対象

に電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)の適合性を調査して逐条毎に整

理した。なお、本調査は、欧州現地視察において入手したヒアリング結果及び提供資料等

の基に比較分析を行ったものであり、必ずしも具体的な設計条件、設計計算書及び系統図

で得られる情報を確認して精緻に分析したものではないことに留意されたい。そのため、

日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足する

ものであるか判断する必要がある。

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112

(1) 第三章 蒸気タービン及びその附属設備(火技省令第十二条 蒸気タービンの附属設備

の材料)

内容

火技省令 (蒸気タービンの附属設備の材料)

第十二条 蒸気タービンの附属設備(ポンプ、圧縮機及び液化ガス設備を除く。)に属する容

器及び管の耐圧部分に使用する材料は、最高使用温度において材料に及ぼす化学的影響及

び物理的影響に対し、安全な化学的成分及び機械的強度を有するものでなければならな

い。

火技解釈 (蒸気タービンの附属設備の材料)

第18条 省令第12条に規定する「耐圧部分」とは、第2条第1項の規定を準用するもの

をいう。

2 省令第12条に規定する「安全な化学的成分及び機械的強度を有するもの」とは、第2

条第2項の規定を準用するものをいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:欧州でも耐圧部分は、最高使用圧力を超える設計圧力を

規定して設計するという基本的な考え方は、火技省令と同様である。PED では、0.05MPa

を超える圧力の設備について耐圧設計を求めており、本調査対象の設備はこれに含まれて

いる。材料は、EN 規格等の整合規格に記載された材料「European Approval of Materials」

で規定されている材料又は公認検査機関によって PED 相当の要求を満たすと認定されて

いる材料が使用されている。設計圧力に対して安全な材料を規定するという基本的な考え

方は、火技省令と同様である。

・耐圧部分の考え方に関する火技解釈との相違点:PED では、0.05MPa を超える設備につ

いて耐圧設計を行うことになっているが、火技解釈では耐圧部分は 0MPa を超える部分

と解釈していることから、耐圧部分の考え方が異なる。ORC 発電設備では、設計圧力が

1.0MPa 程度(オイルで 0.8MPa 程度)であることから、欧州でも耐圧設計は行われてい

る。

・材料に関する火技解釈との相違点等:EN 規格材料と JIS 規格材料では化学的成分や機械

的性質が異なる。本調査の中で、調査対象設備で使用している材料を確認することはでき

ず、北米に輸出する設備では ASME 規格が用いられているとのことであったが、調査対

象設備以外の設備も ASME 規格で設計されていることまでは確認できていない。

製品毎の評

価結果

(ORC 発電機メーカー:D 社)

・耐圧部分は、設計圧力 1.0MPa として耐圧設計をしており、通常の運転圧力は 0.8MPa

であることから、運転圧力より高い圧力で設計していることを確認した。材料は、欧州に

輸出する際には EN 規格材料を使用し、北米に輸出する際には ASME 規格材料を使用し

ている。

・当該メーカーの設備では、最高使用圧力を考慮した設計を行っており、ASME 規格に準

拠した設備の設計及び製造をしていることは確認したが、化学的成分や機械的性質までは

確認できなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件

を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の蒸気タービン型式の ORC 発電設備で、ASME SecⅧ div1 に準拠していない設備を

日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・最高使用圧力及びその設計思想

・選定材料と JIS 規格における相当材料の化学的成分の比較

・ミルシート等を活用した機械的強度の確認

(2) 第三章 蒸気タービン及びその附属設備(火技省令第十三条 蒸気タービン等の構造)

内容

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113

火技省令 (蒸気タービン等の構造)

第十三条 蒸気タービンは、非常調速装置が作動したときに達する回転速度に対して構造上

十分な機械的強度を有するものでなければならない。

2 蒸気タービンは、主要な軸受又は軸に発生しうる最大の振動に対して構造上十分な機械

的強度を有するものでなければならない。

3 蒸気タービンの軸受は、運転中の荷重を安定に支持できるものであって、かつ、異常な

摩耗、変形及び過熱が生じないものでなければならない。

4 蒸気タービン及び発電機その他の回転体を同一の軸に結合したもの(蒸気タービン及び

発電機その他の回転体を同一の軸に結合しない場合にあっては蒸気タービン)の危険速度

は、調速装置により調整することができる回転速度のうち最小のものから非常調速装置が

作動したときに達する回転速度までの間にあってはならない。ただし、危険速度における

振動が当該蒸気タービンの運転に支障を及ぼすことのないよう十分な対策を講じた場合

は、この限りでない。

5 蒸気タービン及びその附属設備(液化ガス設備を除く。第十六条において同じ。)の耐圧

部分の構造は、最高使用圧力又は最高使用温度において発生する最大の応力に対し安全な

ものでなければならない。この場合において、耐圧部分に生ずる応力は当該部分に使用す

る材料の許容応力を超えてはならない。

火技解釈 (蒸気タービン等の構造)

第19条 省令第13条第1項及び第4項に規定する「非常調速装置が作動したときに達す

る回転速度」とは、非常調速装置が作動した時点よりさらに昇速した場合の回転速度を含

むものをいう。

第20条 省令第13条第2項に規定する「最大の振動」とは、タービンの起動時及び停止

過程を含む運転中の振動のうち、最大のものをいう。

第21条 省令第13条第3項に規定する「異常な摩耗、変形及び過熱が生じないもの」と

は、次の各号に掲げる装置を有するものをいう。ただし、10,000kW 以下の蒸気タービン

にあっては第3号に掲げる装置を有するものであることを要しない。

一 通常運転時に蒸気タービンに給油を行うための主油ポンプ

二 主油ポンプの出口圧力が著しく低下した場合に自動的に蒸気タービンに給油を行うた

めの補助油ポンプ

三 主油ポンプ及び補助油ポンプが故障した場合に蒸気タービンを安全に停止するための

非常用油ポンプ又は手動補助油ポンプ

四 蒸気タービンの停止中において通常運転時に必要な潤滑油をためるための主油タンク

五 潤滑油を清浄に保つための装置

六 潤滑油の温度を調整するための装置

2 1,000kW 以下の蒸気タービンにおいて、軸受の発熱及び蒸気からの伝熱に対し、十分な

冷却構造を有する自己潤滑方式の軸受潤滑装置を設置する場合は、前項の規定によらない

ことができる。

第22条 省令第13条第4項に規定する「調速装置により調整することができる回転速度

のうち最小のもの」とは、誘導発電機と結合する蒸気タービン以外の蒸気タービンにあっ

ては、速度調定率で定まる回転速度の範囲のうち最小のものをいい、誘導発電機と結合す

る蒸気タービンにあっては、誘導発電機が接続される系統の周波数で発電することができ

る最小の回転速度をいう。

2 省令第13条第4項に規定する「十分な対策を講じた場合」とは、2 次以上の振動モー

ドにおいて共振倍率を下げる等の対策によって十分な安全性が実証されている場合をい

う。

第23条 省令第13条第5項に規定する「安全なもの」とは、次の各号に掲げるものをい

う。

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114

一 蒸気タービン及びその附属設備に属する容器(蒸気タービン車室、弁箱、復水器胴及

び復水器水室を除く。)及び管にあっては、第3条、第4条及び第6条から第13条ま

で(第12条第1項第一号及び第六号並びにボイラー等に係る部分を除く。)を準用し

た規定に適合するもの

二 蒸気タービン及びその附属設備にあっては、第5条を準用した規定に適合するもの

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:本調査では、蒸気タービンの構造を規定している規格は

確認できなかった。ただし、蒸気タービンに附属する配管や容器等の耐圧部分は PED が

適用される。欧州でも耐圧部分は、最高使用圧力を超える設計圧力を規定して設計すると

いう基本的な考え方は、火技省令と同様である。

・蒸気タービンの構造は、回転速度、振動、潤滑油の温度、漏えい等の問題が生じた際には、

自動停止するシステムとなっていること、また、耐圧設計については、ASME SecⅧ div1

に従い実施していることから、安全性を担保していることは確認できたが、火技解釈で求

める「異常な摩耗、変形及び過熱が生じないもの」に関する装置であることまでは確認で

きなかった。

製品毎の評

価結果

(ORC 発電機メーカー:D 社)

・蒸気タービンの構造は、回転速度、振動、潤滑油の温度、漏えい等の問題が生じた際には、

自動停止するシステムとなっていることから、安全性を担保していることは確認できた

が、火技解釈で求める「異常な摩耗、変形及び過熱が生じないもの」に関する装置である

ことまでは確認できなかった。

・当該メーカーにおける設備は、火技省令に示す構造に配慮した設計は行われていることは

確認したが、火技解釈で求める具体的な設計条件までは確認することができなかった。そ

のため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を

満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の蒸気タービン型式の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意す

る必要がある。

・最高使用圧力と耐圧部分の設計

・タービンの型式と非常用調速装置の有無

・回転速度、振動、潤滑油の温度、圧力及び漏えい等の問題が生じた場合の対応方法

・異常な摩耗、変形及び過熱への対応方法

(3) 第三章 蒸気タービン及びその附属設備(火技省令第十四条 調速装置)

内容

火技省令 (調速装置)

第十四条 誘導発電機と結合する蒸気タービン以外の蒸気タービンには、その回転速度及び

出力が負荷の変動の際にも持続的に動揺することを防止するため、蒸気タービンに流入す

る蒸気を自動的に調整する調速装置を設けなければならない。この場合において、調速装

置は、定格負荷(定格負荷を超えて蒸気タービンの運転を行う場合にあっては、その最大

の負荷)を遮断した場合に達する回転速度を非常調速装置が作動する回転速度未満にする

能力を有するものでなければならない。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:本調査では、蒸気タービンの調速装置を規定している規

格は確認できなかった。

・火技省令で求めている調速装置は、タービンに流入する熱媒体を自動的に調整する装置が

設けられており、定格の回転速度となるような制御が行われている。

製品毎の評

価結果

(ORC 発電機メーカー:D 社)

・火技省令で求めている調速装置は、タービンに流入する熱媒体を自動的に調整する装置が

設けられており、定格の回転速度となるような制御が行われているが、設置者は当該設備

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115

を導入する際には、再度確認することが必要である。

留意事項 欧州の蒸気タービン型式の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意す

る必要がある。

・調速装置の有無

(4) 第三章 蒸気タービン及びその附属設備(火技省令第十五条 警報及び非常停止装置)

内容

火技省令 (警報及び非常停止装置)

第十五条 四十万キロワット以上の蒸気タービンには、運転中に支障を及ぼすおそれのある

振動を検知し警報する装置を設けなければならない。

2 蒸気タービンには、運転中に生じた過回転その他の異常による危害の発生を防止するた

め、その異常が発生した場合に蒸気タービンに流入する蒸気を自動的かつ速やかに遮断す

る非常調速装置その他の非常停止装置を設けなければならない。

火技解釈 (警報及び非常停止装置)

第24条 省令第15条第1項に規定する「運転中に支障を及ぼすおそれのある振動」とは、

定格出力が 400,000kW 以上の蒸気タービン又はこれに接続するその他の回転体を同一

の軸に結合したものにおいて、主要な軸受又はその付近の軸において回転中に発生する振

動の全振幅の最大値が、次の表の左欄に掲げる測定場所及び中欄に掲げる定格回転速度に

応じ、それぞれ同表の右欄に掲げる警報値を超えた場合をいう。

測定場所 定格回転速度

警報値

回転速度が定格回

転速度未満の時

回転速度が定格回

転速度以上の時

軸受 3,000 回毎分又は 3,600 回毎分 0.075mm 0.062mm

1,500 回毎分又は 1,800 回毎分 0.105mm 0.087mm

軸 3,000 回毎分又は 3,600 回毎分 0.15mm 0.125mm

1,500 回毎分又は 1,800 回毎分 0.21mm 0.175mm

第25条 省令第15条第2項に規定する「過回転」とは、蒸気タービンの回転速度が定格

の回転速度を超えた場合をいい、「その他の異常」とは、次の各号に掲げる場合をいう。

一 容量が 10,000kVA 以上の発電機の内部に故障を生じた場合

二 定格出力が 10,000kW を超える蒸気タービンの復水器の真空度が著しく低下した場

三 定格出力が 10,000kW を超える蒸気タービンのスラスト軸受が著しく摩耗し又はそ

の温度が著しく上昇した場合

2 省令第15条第2項に規定する「速やかに」とは、蒸気タービンの回転速度が定格の回

転速度を超えた場合にあっては定格の回転速度の 1.11 倍を超える以前の時点をいい、その

他の場合にあっては異常が発生した時点をいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:本調査では、蒸気タービンの非常用調速装置を規定して

いる規格を確認することはできなかった。

・警報及び非常停止装置に関する考え方:欧州の蒸気タービンは EN12953 等に、ORC 発

電設備は DIN4754 に基づいて設計されており、それらの規格には自動停止機能に関する

規定があることから、異常時において自動停止する機能は有している。

製品毎の評

価結果

(ORC 発電機メーカー:D 社)

・警報及び非常停止装置は、振動及び回転数に異常が生じた際に、タービンバイパス等を介

して自動停止することで熱媒体を冷却する装置が設けられているが、火技解釈で求めてい

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116

る定格の回転速度の 1.11 倍を超える場合まで設定されていることまでは確認できなかっ

た。

・当該メーカーの設備は、警報及び停止装置に配慮した設計であるが、警報及び非常用停止

装置が作動する条件が火技解釈を満足するものであるかを、設置者は自ら確認する必要が

ある。

留意事項 欧州の蒸気タービン型式の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意す

る必要がある。

・警報装置及び非常停止装置

・上記の稼働条件が火技解釈を満たしているか

(5) 第三章 蒸気タービン及びその附属設備(火技省令第十六条 過圧防止装置)

内容

火技省令 (過圧防止装置)

第十六条 蒸気タービン及びその附属設備であって過圧が生ずるおそれのあるものにあって

は、その圧力を逃がすために適当な過圧防止装置を設けなければならない。

火技解釈 (過圧防止装置)

第26条 省令第16条に規定する「過圧」とは、通常の状態で最高使用圧力を超える圧力

をいう。

2 省令第16条に規定する「適当な過圧防止装置」とは、蒸気タービンにあっては、その

排気圧力の上昇時に過圧を防止することができる容量を有し、かつ、最高使用圧力以下で

動作する非常大気放出板又は大気放出弁をいい、蒸気タービンの附属設備にあっては、第

15条(ボイラー等に係る部分を除く。)の規定を準用するものをいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED では、過圧防止装置、温度モニター及び安全装置

全体に関する規定があり、また、EN12953 及び DIN4754 等の規格では安全弁の取付け

位置等が例示されており、安全弁により過圧防止を行うという基本的な考え方は、火技省

令と同様である。

・過圧防止装置は、圧力に異常が生じた際に、タービンバイパス等を介して自動停止する装

置や熱媒体を冷却する装置が設けられており、また、安全弁も設けられていることから、

大気放出も可能な設備となっている。

製品毎の評

価結果

(ORC 発電機メーカー:D 社)

・圧力に異常が生じた際には、タービンバイパス等を介して自動停止する装置や熱媒体を冷

却する装置が設けられており、また、安全弁も設けられていることから、大気放出も可能

な設備となっている。しかし、火技解釈で求める安全弁の個数と吹出し圧力の関係や容量

等までは確認できていない。

・当該メーカーの設備は、火技省令に示す安全弁に配慮した設計としているが、具体的に、

安全弁の個数と吹出し圧力の関係や容量等の詳細な設計条件であることを設置者は確認

する必要がある。

留意事項 欧州の蒸気タービン型式の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意す

る必要がある。

・過圧防止装置の有無

・安全弁の個数、吹出し圧力及び容量が火技解釈を満たしているか

(6) 第三章 蒸気タービン及びその附属設備(火技省令第十七条 計測装置)

内容

火技省令 (計測装置)

第十七条 蒸気タービンには、設備の損傷を防止するため運転状態を計測する装置を設けな

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117

ければならない。

火技解釈 (計測装置)

第27条 省令第17条に規定する「運転状態を計測する装置」とは、次の各号に掲げる事

項を計測するものをいう。ただし、第七号に掲げる事項にあっては、定格出力が 10,000kW

以下の蒸気タービンに係るものはこれを除き、定格出力が 400,000kW 以上の蒸気タービ

ンに係るものはこれを自動的に記録するもの(電子媒体による記録を含む。)に限る。

一 蒸気タービンの回転速度

二 主蒸気止め弁の前及び再熱蒸気止め弁の前における蒸気の圧力及び温度

三 蒸気タービンの排気圧力

四 蒸気タービンの軸受の入口における潤滑油の圧力

五 蒸気タービンの軸受の出口における潤滑油の温度又は軸受メタル温度

六 蒸気加減弁の開度

七 蒸気タービンの振動の振幅

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED では、圧力や温度に関する制限と計測に関する規

定があることから、計測して運転時に安全性に配慮するという基本的な考え方は、火技省

令と同様である。

・計測装置に関する火技解釈との相違点等:回転速度、温度、圧力及び振動等について計測

していることは確認したが、具体的な計測箇所までは確認できなかった。

製品毎の評

価結果

(ORC 発電機メーカー:D 社)

・計測項目については、火技解釈に適合していることを確認したが、計測箇所までは確認で

きなかった。

・当該メーカーに関する設備は、火技省令に示す計測装置に配慮した設計であることは確認

したが、設置者は自ら計測箇所等の条件までは確認できなかった。そのため、日本国内に

設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものである

か判断する必要がある。

留意事項 欧州の蒸気タービン型式の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意す

る必要がある。

・計測装置の有無と計測項目

・計測実施個所が火技解釈を満たしているか

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118

6.2.3 往復機関

バイオマスボイラー等の発電設備の中で、欧州で今後普及する可能性があって、日本国

内にも積極的に輸出を検討している往復機関を用いているORC発電設備メーカーであるF

社の発電設備を対象に電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)の適合性を

調査して逐条毎に整理した。なお、本調査は、欧州現地視察において同社及びエンジンを

開発したメーカーから入手したヒアリング結果及び提供資料等の基に比較分析を行ったも

のであり、必ずしも具体的な設計条件、設計計算書及び系統図で得られる情報を確認して

精緻に分析したものではないことに留意されたい。そのため、日本国内に設置する際には、

設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要が

ある。

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(1) 火技省令(昭 40・6・15 省 60)第四章 往復機関及びその附属設備(第二十四条 安全

性)

内容

火技省令 (安全性)

第二十四条 往復機関は定格負荷を遮断するときに達する速度においても、安全なものでな

ければならない。

現行の火技

解釈に読み

替える際に

考慮した内

・現行の火技解釈(蒸気タービン、内燃機関)と整合させた場合には、以下の項目を満たす

必要がある。

○非常調速装置が作動した時点よりさらに昇速した場合の回転速度が生じた場合の安全

性。

○最大の振動が生じた場合の安全性

○異常な摩耗、変形及び過熱が生じないもの

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:本調査において、内燃機関の安全性を規定している規格

を確認することはできなかった。一方で、内燃機関に附属する配管や容器等の耐圧部分は

PED が適用される。

・内燃機関の構造は、回転速度、エンジンの温度、圧力等の問題が生じた際には、自動停止

するシステムになっていることは確認できたが、火技解釈で求める潤滑油の有無、「異常

な摩耗、変形及び過熱が生じないもの」に関する装置であることまでは確認できなかった。

製品毎の評

価結果

(往復機関の ORC 発電設備:F 社)

・設計上の回転速度に対して、異常時には自動停止するシステムとしているが、潤滑油の有

無、「異常な磨耗、変形及び過熱が生じないもの」の装置の有無については確認できなか

った。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技

術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の往復機関の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要が

ある。

・非常用調速装置の有無

・回転速度、振動、潤滑油の温度、漏えい等の問題が生じた場合の対応方法

・異常な摩耗、変形及び過熱への対応方法

(2) 火技省令(昭 40・6・15 省 60)第四章 往復機関及びその附属設備(第二十五条 往復

機関の附属設備の構造)

内容

火技省令 (往復機関の附属設備の構造)

第二十五条 往復機関の附属構造物(ポンプ及び圧縮機を除く。)に属する容器及び管の耐圧

部分の構造は、別に告示する規格に適合するものでなければならない。

現行の火技

解釈に読み

替える際に

考慮した内

・現行の火技解釈(蒸気タービン、内燃機関)と整合させた場合には、以下の項目を満たす

必要がある。

○耐圧部分について「材料に及ぼす化学的影響及び物理的影響に対し、安全な化学的成分

及び機械的強度を有するもの」。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:材料は、EN 規格等の整合規格に記載された材料、

「European Approval of Materials」に規定されている材料又は公認検査機関が PED 相

当の要求を満たすものと認定している材料を使用している。安全な材料を規定するという

基本的な考え方は、火技省令と同様である。

・耐圧部分のに関する火技解釈との相違点:PED では、0.05MPa を超える設備については

耐圧設計を行うことになっているが、火技解釈では耐圧部分を 0MPa を超える部分と解

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釈しているといった相違点がある。往復機関の ORC 発電設備は、設計圧力は 3.0MPa 程

度である。

・材料に関する火技解釈との相違点等:EN 規格材料と JIS 規格材料は化学的成分や機械的

性質が異なることに留意する必要がある。本調査対象設備で使用している材料は確認する

ことができなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら材料の化学的

成分や機械的強度等を確認する必要がある。

製品毎の評

価結果

(往復機関の ORC 発電設備:F 社)

・耐圧設計を実施していることは確認できたが、使用している材料は非公表であったため、

確認できなかった。

・当該メーカーにおける設備では、最高使用圧力を超える設計圧力を規定して構造設計を行

っていることから、火技省令に示す構造に配慮した設計となっている。しかし、具体的な

使用材料までは確認できなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら

詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の往復機関の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要が

ある。

・最高使用圧力及びその設計思想

・選定材料と JIS 規格における相当材料の化学的成分の比較

・ミルシート等を活用した機械的強度の確認

(3) 火技省令(昭 40・6・15 省 60)第四章 往復機関及びその附属設備(第二十六条 計測

装置)

内容

火技省令 (往復機関の附属設備の構造)

第二十六条 往復機関には、次の号に掲げる計測に関する装置を施設しなければならない。

一 往復機関の速度

二 主蒸気止め弁の前における圧力及び温度

三 往復機関の排気圧力

現行の火技

解釈に読み

替える際に

考慮した内

調査対象設

備全体の評

価結果

・計測装置は、PED でも圧力や温度に関する制限及び計測に関する規定があることから、

計測して運転監視するという基本的な考え方は、火技省令と同様である。

・計測装置について火技省令との相違点等:速度、圧力及び温度について計測していること

は確認したが、往復機関の排気圧力までは確認することができなかった。そのため、日本

国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するもの

であるか判断する必要がある。

製品毎の評

価結果

(往復機関の ORC 発電設備:F 社)

・速度、温度及び圧力等を計測することを配慮した設計であることは確認したが、往復機関

の排気圧力までは確認することができなかった。そのため、日本国内に設置する際には、

設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要

がある。

留意事項 欧州の往復機関の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要が

ある。

・計測項目(特に、往復機関の排気圧力)

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(4) 火技省令(昭 40・6・15 省 60)第四章 往復機関及びその附属設備(第二十七条 準用)

内容

火技省令 (準用)

第二十七条 第四条の規定は、往復機関の附属設備(ポンプ及び圧縮機を除く。)について準

用する。

2 第六条及び第五条の規定は、往復機関及びその附属設備について準用する。

3 第七条第一項から第三項まで及び第十一号ならびに第二項の規定は、往復機関の附属設

備について準用する。

4 第十八号前段及び第二十一号第一項の規定は往復機関に準用する。

(5) 火技省令(昭 40・6・15 省 60)第二章 ボイラー及びその附属設備(第四条 ボイラー

等の材料)

内容

火技省令 (ボイラー等の材料)

第四条 ボイラー及びその附属設備(ポンプ及び圧縮機を除く。次条において同じ。)に属

する容器及び管のうち、内面に零キログラム毎平方センチメートルをこえる圧力を受ける

部分(以下「耐圧部分」という。)には、別に告示する規格に適合する材料を使用しなけ

ればならない。

2 前項の材料の許容応力は、告示で定める。

現行の火技

解釈に読み

替える際に

考慮した内

・現行の火技解釈に読み替える際には、現行の材料表に規定した材料が示す許容応力を適用

することになる。なお、現行の許容引張応力は、引張強さの 1/3.5 である。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:耐圧設計としては、EN 規格に部材厚さの算定式が規定

されていること、材料の許容応力は、PED 及び EN 規格等で規定されていることから、

最高使用圧力及び材料に応じた許容応力を規定して安全設計を行うという基本的な考え

方は、火技省令と同様である。

・材料の許容応力に関する火技解釈との相違点等:材料の許容応力は、降伏点の 1/1.5 が適

用されている。一方で、火技解釈では、引張強さの 1/3.5 及び降伏点の 1/1.5 のうち小さ

い値が適用されており、一般的には引張強さの 1/3.5 の方が小さい値になる場合が多い。

そのため、火技解釈で規定しているよりも小さい許容応力で設計されている可能性があ

る。

製品毎の評

価結果

(往復機関の ORC 発電設備:F 社)

・実際に使用している設計上の許容応力や部材厚さまでは確認することができなかった。そ

のため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を

満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の往復機関の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要が

ある。

・最高使用圧力及びその設計思想

・選定材料と JIS 規格における相当材料の化学的成分の比較

・ミルシート等を活用した機械的強度の確認

・使用する材料と許容応力及び計算上必要な厚さ

(6) 火技省令(昭 40・6・15 省 60) 第二章 ボイラー及びその附属設備(第五条 ボイラー

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等の構造、第六条:水圧試験)

内容

火技省令 (ボイラー等の構造)

第五条 ボイラー及びその附属設備に属する容器及び管の耐圧部分の構造は、別に告示する

規格に適合するものでなければならない。

(水圧試験)

第六条 ボイラー及びその附属設備の耐圧部分は、最高使用圧力の 1.3 倍の水圧で試験を行

なつたとき、これに耐え、かつ、漏えいがないものでなければならない。

現行の火技

解釈に読み

替える際に

考慮した内

・現行の火技解釈に読み替える際には、以下の項目を満たす必要がある。

○容器及び管の構造は、現行の火技解釈において、第3条から第14条に規定されている。

○なお、現行の火技解釈では、最高使用圧力の 1.3 倍の水圧に耐える強度を有することに

変更している。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:欧州でも耐圧部分は、最高使用圧力を超える設計圧力を

規定して設計するという基本的な考え方は、火技省令と同様である。また、耐圧部分の構

造は、EN 規格で規定されているが、本設備に適合する EN 規格はないとのことであった。

また、水圧試験は、PED により設計圧力の 1.43 倍と最高使用温度における圧力の 1.25

倍のうち大きい値を用いる。形状や設計水圧を規定して設計を行うという基本的な考え方

も、火技省令と同様である。

・水圧試験に関する火技解釈との相違点等:水圧試験は、PED では設計圧力の 1.43 倍と最

高使用温度における圧力の 1.25 倍のうち大きい値を用いる。一方で、現行の火技解釈は、

設計圧力の 1.3 倍(温度補正なし)以上と規定されている。そのため、水圧試験は、その

閾値を比較すると、PED の規定は火技解釈を満たすものとなるが、一方で、過剰な圧力

設定となる懸念があることから、単純に適用できるものではない。

・部材厚さ等の設計方法に関する火技解釈との相違点等:部材厚さ等の設計方法は、継手効

率や穴の補強の考え方等は同様であったが、胴の板厚の計算式、形状等及び長方形の管寄

せ等については、EN12953 では規定されていないものが存在する。また、最小厚さの考

え方は、火技解釈では JIS B8201(2005)「陸用鋼製ボイラ-構造」に準拠して、「内径

900mm 以下」のものは 6mm、「900mm を超え 1350mm 以下」のものは 8mm、「1350mm

を超え 1850mm 以下」のものは 10mm、「内径 1850mm を超える」ものは 12mm である

のに対し、EN12953 では、「外径 1000mm 以上で低圧ボイラー以外」は 6mm、「1000mm

未満及び低圧ボイラー」で 4mm であるが、本調査では、詳細な設計厚さまでの情報を確

認することができなかった。当該設備を日本国内に設置する際には、設置者は火技解釈で

規定している最小厚さ等であるかを確認する必要がある。

製品毎の評

価結果

(往復機関の ORC 発電設備:F 社)

・最高使用圧力を超える設計圧力を規定し設計を行うという基本的な考え方は、火技省令と

同様であったが、詳細の形状や板厚まで確認することができなかった。

・当該メーカーに関する設備は、耐圧設計が行われていることは確認したが、火技解釈で規

定された形状であるかどうかまでは確認できなかった。そのため、日本国内に設置する際

には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する

必要がある。

留意事項 欧州の往復機関の ORC 発電を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・最高使用圧力及びその設計思想

・使用する材料の許容応力と計算上必要な厚さの相関及び最小厚さ

・火技解釈を満たした形状であるか

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(7) 火技省令(昭 40・6・15 省 60)第二章 ボイラー及びその附属設備(第七条 安全弁)

内容

火技省令 (安全弁)

第七条 ボイラー及びその附属設備には、次の各号により安全弁を設けなければならない。

ただし、第九号の管の低圧側または第十一号のボイラーの附属設備については、これらが

ボイラーまたは蒸気タービンに直接接続されていない場合に限り、それぞれ当該各号に定

める安全弁と同等の容量及び吹出し圧力を有する逃し弁をもつて安全弁に替えることが

できる。

一 安全弁は、別に告示する規格に適合するバネ安全弁またはバネ先駆弁付き安全弁であ

ること。

二 バネ安全弁の弁軸は、鉛直とすること。

三 安全弁は、容易に検査できるように施設すること。

(四~八については、循環ボイラー、貫流ボイラー、再熱器及び独立加熱器に関する項目

であり、対象外であることから省略した。)

九 減圧弁を設け、かつ、低圧側およびこれに接続する機器が高圧側の圧力で設計されて

いない管にあつては、第四号二および第六号ホの規定に準ずるほか、次によること。

イ 減圧弁の低圧側にこれと接近して一個以上設けること。

ロ 安全弁の容量の合計は、減圧弁が全開したとき管の低圧側およびこれに接続する機

器の圧力をそれぞれ当該部分の最高使用圧力の〇.〇六倍以下に保持するのに必要

な容量以上であること。

十 最高使用圧力が異なり、かつ、それぞれに設ける安全弁のうち吹出し圧力が最も低い

もの相互の吹出し圧力の差が低い方の吹出し圧力の〇.〇六倍以上である二個以上のボ

イラーを連絡する部分にあつては、第六号ホの規定に準ずるほか、次によること。

イ 当該二個以上のボイラーの蒸気の合流箇所の近くに一個以上設けること。

ロ 安全弁の容量の合計は、高圧側から低圧側に流入するおそれがある蒸気の最大通過

蒸気量以上であること。

ハ 安全弁の吹出し圧力は、次によること。

(イ)安全弁が一個の場合は、当該二個以上のボイラーの最高使用圧力のうち最も

低いもの以下の圧力

(ロ)安全弁が二個以上の場合は、一個は(イ)規定に準ずる圧力、他は当該二個

以上のボイラーの最高使用圧力のうち最も低いものの一.〇三倍以下の圧力

十一 ボイラーの附属設備(管ならびに第八号及び前号に掲げのものを除く。)であって、

圧力がその最高使用圧力の一.〇六倍をこえるおそれがあるものにあつては、第六号ホ

の規定に準ずるほか、次によること。

イ 適当箇所に一個以上設けること

ロ 安全弁の容量の合計は、当該附属設備に蓄積される蒸気またはガスの量以上であ

ること。

ハ安全弁の吹出し圧力は、次によること。

(イ)安全弁が一個の場合は、当該附属設備の最高使用圧力以下の圧力

(ロ)安全弁が二個以上の場合は、一個は(イ)の規定に準ずる圧力、他は当該附

属設備の最高使用圧力の一.〇三倍以下の圧力

2 前項第四号から第十一号までの規定により設ける安全弁の容量の計算式は、告示で定め

る。

現行の火技

解釈に読み

替える際に

考慮した内

・現行の火技解釈に読み替える際には、以下の項目を満たす必要がある。

○安全弁は、現行の火技解釈では第15条で規定されている。

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調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED では、過圧防止装置、温度モニター及び安全装置

全体に関する規定があり、安全弁により過圧防止を行うという基本的な考え方は、火技省

令と同様である。

・往復機関型 ORC 発電設備は、安全弁が設けられていることを確認したが、安全弁の個数

と吹出し圧力の関係及び容量等までは確認できなかった。

製品毎の評

価結果

(往復機関の ORC 発電設備:F 社)

・過圧防止対策として安全弁が設けられているが、安全弁の個数と吹出し圧力の関係及び容

量等までは確認できていない。

・当該メーカーにおける設備では、過圧防止対策として安全弁が設置される設計であるが、

安全弁の個数と吹出し圧力の関係及び容量等まで確認できなかった。そのため、日本国内

に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであ

るか判断する必要がある。

留意事項 欧州の往復機関の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要が

ある。

・安全弁の個数、吹出し圧力及び容量

(8) 火技省令(昭 40・6・15 省 60) 第二章 ボイラー及びその附属設備(第十八条 調速装

置、第二十一条 潤滑油装置)

内容

火技省令 (調速装置)

第十八条 蒸気タービンには、その速度及び出力が負荷の変動の際にも持続的に動揺するこ

とを防止するため、蒸気タービンに入るエネルギーを自動的に調整する装置を設けなけれ

ばならない。この場合において、蒸気タービンに入るエネルギーを自動的に調整する装置

は、定格負荷をしや断したときに達する速度を非常調速装置が作動する速度未満にする能

力を有するものでなければならない。

(潤滑油装置)

第二十一条 蒸気タービンには、潤滑油装置を設けなければならない。

現行の火技

解釈に読み

替える際に

考慮した内

・現行の火技解釈に読み替える際には、以下の項目を満たす必要がある。

○潤滑油装置は、現行の火技解釈の第21条で規定されている。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:本調査において、内燃機関を規定している規格を調査す

ることができなかった。

・往復機関型 ORC 発電設備は、調速装置が設けられていることは確認したが、潤滑油装置

については確認できなかった。

製品毎の評

価結果

(往復機関の ORC 発電設備:F 社)

・調速装置が設けられていることを確認したが、潤滑油装置が設けられていることは確認す

ることができなかった。

・当該メーカーに関する設備では、調速装置があることは確認したが、潤滑油装置があるこ

とまでは確認できなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な

設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の往復機関の ORC 発電設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要が

ある。

・調速装置及び潤滑油装置の有無

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125

6.2.4 バイオマスガスを利用した発電設備

欧州で普及しているバイオマスガスを利用した発電設備として、L 社の発電設備を対象に

電気事業法で定める技術基準(火技省令及び火技解釈)の適合性を調査して逐条毎に整理

した。なお、本調査は、欧州現地視察において同社及びエンジンを開発したメーカーから

入手したヒアリング結果及び提供資料等の基に比較分析を行ったものであり、必ずしも具

体的な設計条件、設計計算書及び系統図で得られる情報を確認して精緻に分析したもので

はないことに留意されたい。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な

設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

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126

(1) 第五章 内燃機関及びその附属設備(火技省令第二十四条 内燃機関の附属設備の材料)

内容

火技省令 (内燃機関の附属設備の材料)

第二十四条 内燃機関の附属設備(ポンプ、圧縮機及び液化ガス設備を除く。)に属する容器

及び管の耐圧部分に使用する材料は、最高使用温度において材料に及ぼす化学的影響及び

物理的影響に対し、安全な化学的成分及び機械的強度を有するものでなければならない。

火技解釈 (内燃機関の附属設備の材料)

第36条 省令第24条に規定する「耐圧部分」とは、第2条第1項の規定を準用するもの

をいう。

2 省令第24条に規定する「安全な化学的成分及び機械的強度を有するもの」とは、第2

条第2項の規定を準用するものをいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:欧州でも、耐圧部分において最高使用圧力を超える設計

圧力を規定して設計を行うという基本的な考え方は、火技省令と同様である。PED では、

0.05MPa を超える圧力の設備には、耐圧設計を求めており、本調査対象設備はこれに含

まれている。材料は、EN 規格等の整合規格に記載された材料「European Approval of

Materials」に規定されている材料又は公認検査機関において PED 相当の要求を満たすと

認定されている材料が使用されている。設計圧力に対して安全な材料を規定するという基

本的な考え方は、火技省令と同様である。

・耐圧部分の考え方に関する火技解釈との相違点:PED では、0.05MPa を超える設備につ

いては耐圧設計を行うことになっているが、火技解釈では、耐圧部分を 0MPa を超える

部分と解釈していることから、耐圧部分の考え方が異なる。バイオマスガスを利用した発

電設備では、運転圧力は大気圧相当程度であったが、本調査対象設備では、熱交換器は設

計圧力 0.6MPa、配管は設計圧力 1.0MPa で設計し、公認検査機関の耐圧検査を受けたも

のであった。

・材料に関する火技解釈との相違点等:欧州において PED では、0.05MPa を超える設備は

耐圧設計を行うこととなっている。また、バイオマスガスを利用した発電設備は、設計圧

力は大気圧程度であって PED の適用対象外の設備であることから、メーカーの品質保証

によって流通しているものである。しかし、ガスを用いていることから、配管や熱交換器

等では安全設計が行われており、配管は 1.0MPa 相当、熱交換器は 0.6MPa 相当の圧力設

計が行われており、公認検査機関の検査を受けている。そのため、設計荷重については安

全な設計になっているものと思われるが、日本国内へ導入する際には、設置者は自ら JIS

規格と欧州規格の金属との化学成分やミルシート等により適切な降伏点であるかどうか

を確認して火技解釈を満足するものであるかを判断することが必要である。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・設計圧力を規定して耐圧設計を実施していることは確認したが、材料は非公表だったので、

確認することができなかった。

・当該メーカーに関する設備は、最高使用圧力を考慮した設計を行っていることから、火技

省令と同様の考え方であることは確認したが、使用している材料については確認できなか

った。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技

術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の内燃機関を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・最高使用圧力及びその設計思想

・選定材料と JIS 規格における相当材料の化学成分の比較

・ミルシート等を活用した機械強度の確認

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127

(2) 第五章 内燃機関及びその附属設備(火技省令第二十五条 内燃機関等の構造)

内容

火技省令 (内燃機関等の構造等)

第二十五条 内燃機関は、非常調速装置が作動したときに達する回転速度に対して構造上十

分な機械的強度を有するものでなければならない。

2 内燃機関の軸受は、運転中の荷重を安定に支持できるものであって、かつ、異常な摩耗、

変形及び過熱が生じないものでなければならない。

3 内燃機関及びその附属設備(液化ガス設備を除く。第二十八条において同じ。)の耐圧部

分の構造は、最高使用圧力又は最高使用温度において発生する最大の応力に対し安全なも

のでなければならない。この場合において、耐圧部分に生ずる応力は当該部分に使用する

材料の許容応力を超えてはならない。

4 内燃機関が一般用電気工作物である場合であって、屋内その他酸素欠乏の発生のおそれ

のある場所に設置するときは、給排気部を適切に施設しなければならない。

火技解釈 (内燃機関等の構造)

第37条 省令第25条第1項に規定する「非常調速装置が作動したときに達する回転速度」

とは、第19条の規定を準用するものをいう。

第38条 省令第25条第2項に規定する「異常な磨耗、変形及び過熱が生じないもの」と

は、次の各号に掲げる装置を有するものをいう。

一 通常運転時に内燃機関に給油を行うための主油ポンプ

二 内燃機関の停止中において通常運転時に必要な潤滑油をためるための油タンク

三 潤滑油を清浄に保つための装置

四 潤滑油の温度を調整するための装置

2 内燃機関が一般用電気工作物である場合には、前項の規定は適用しない。

第39条 省令第25条第3項に規定する「安全なもの」とは、次の各号に掲げるものをい

う。

一 内燃機関の附属設備に属する容器及び管にあっては、第3条、第4条及び第6条から

第13条まで(第12条第1項第一号及び第六号並びにボイラー等に係る部分を除く。)

を準用した規定に適合するもの

二 内燃機関及びその附属設備にあっては、第5条を準用した規定に適合するもの。ただ

し、次のいずれかに適合するものにあっては水圧試験を要しない。

イ 当該機種と同一の材料、構造を有する内燃機関ケーシングにおいて第5条を満たす

水圧試験の実績を有するもの

ロ 最高使用圧力の 1.3 倍の水圧に耐える強度を有することが強度計算等で確認され

たもの

三 第5条の規定は、一般用電気工作物である内燃機関について準用することができる。

この場合において、前二号の規定は適用しない。

四 内燃機関が一般用電気工作物である場合には、気体燃料が通る部分にあっては、次に

適合するものとし、前三号の規定は適用しない。

イ 正圧になる部分にあっては、4.2kPa の圧力において外部に漏えいがないこと。

ロ 負圧になる部分にあっては、通常の使用状態における圧力に対して十分な強度を有

すること。

ハ ガス閉止弁にあっては、停止状態において 4.2kPa の圧力におけるガスの漏えい量

が毎時 70ml 以下であること。

ニ 燃料を通ずる部分の管にあっては、燃料の遮断のための2個以上の自動弁を直列に

取り付けなければならない。この場合において、自動弁は動力源喪失時に自動的に

閉じるものでなければならない。

調査対象設 ・技術基準に相当する欧州規格等:本調査では、内燃機関を規定している規格を確認するこ

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128

備全体の評

価結果

とができなかった。ただし、内燃機関に附属する配管や容器等の耐圧部分は PED が適用

される。欧州でも耐圧部分は、最高使用圧力を超える設計圧力を規定して設計を行うとい

う基本的な考え方は、火技省令と同様である。

・耐圧部分に関する火技解釈との相違点:PED では、0.05MPa を超える設備について耐圧

設計を行うことになっているが、火技解釈では耐圧部分を 0MPa を超える部分と解釈し

ていることから、考え方が異なる。バイオマスガスを利用した発電設備は、運転圧力は大

気圧相当程度であるが、本調査対象設備は、熱交換器が設計圧力 0.6MPa、配管が設計圧

力 1.0MPa であり、公認検査機関の耐圧検査を受けている。

・内燃機関の構造は、回転速度、エンジンの温度、圧力及び潤滑油の状態等の問題が生じた

際には、自動停止するシステムとなっており、安全性を担保していることは確認できたが、

火技解釈で求める「異常な摩耗、変形及び過熱が生じないもの」であることまでは確認で

きなかった。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・設計上の回転速度や潤滑油等に対する安全性を担保した上で、異常時には自動停止するシ

ステムであることは確認したが、「異常な磨耗、変形及び過熱が生じないもの」であるこ

とまでは確認することができなかった。

・当該メーカーに関する設備は、火技省令に示す耐圧設計等を考慮した構造になっているこ

とは確認したが、「異常な磨耗、変形及び過熱が生じないもの」であることまでは確認で

きなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認

して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の内燃機関を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・最高使用圧力と耐圧部の設計

・非常用調速装置の有無

・回転速度、振動、潤滑油の温度及び圧力等の問題が生じた場合の対応方法

・異常な摩耗、変形及び過熱への対応方法

(3) 第五章 内燃機関及びその附属設備(火技省令第二十六条 調速装置)

内容

火技省令 (調速装置)

第二十六条 誘導発電機と結合する内燃機関以外の内燃機関には、その回転速度及び出力が

負荷の変動の際にも持続的に動揺することを防止するため、内燃機関に流入する燃料を自

動的に調整する調速装置を設けなければならない。この場合において、調速装置は、定格

負荷を遮断した場合に達する回転速度を非常調速装置が作動する回転速度未満にする能

力を有するものでなければならない。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

・調速装置は、内燃機関に流入するバイオマスガスを自動的に調整する装置が設けられてお

り、定格の速度になるような制御が行われていることを確認した。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・設計上の回転速度に対して安全性を担保した上で、異常時には自動停止するシステムとし

ていることを確認したが、「定格負荷を遮断した場合に達する回転速度を非常調速装置が

作動する回転速度未満にする能力を有するもの」であるかどうかまでは確認することがで

きなかった。

・当該メーカーに関する設備は、調速装置を設けていることは確認したが、「定格負荷を遮

断した場合に達する回転速度を非常調速装置が作動する回転速度未満にする能力を有す

るもの」であるかまでは確認することができなかった。そのため、日本国内に設置する際

には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する

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129

必要がある。

留意事項 欧州の内燃機関を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・調速装置の有無

(4) 第五章 内燃機関及びその附属設備(火技省令第二十七条 非常停止装置)

内容

火技省令 (非常停止装置)

第二十七条 内燃機関には、運転中に生じた過回転その他の異常による危害の発生を防止す

るため、その異常が発生した場合に内燃機関に流入する燃料を自動的かつ速やかに遮断す

る非常調速装置その他の非常停止装置を設けなければならない。

火技解釈 (非常停止装置)

第40条 省令第27条の規定は、一般用電気工作物である内燃機関及び定格出力が 500kW

を超える内燃機関に適用する。

2 内燃機関の定格出力が 500kW を超える場合には、省令第27条に規定する「過回転」

とは、内燃機関の回転速度が定格の回転速度を超えた場合をいい、「その他の異常」とは

冷却水の温度の異常な上昇又は冷却水の供給停止をいう。

3 内燃機関が一般用電気工作物である場合には、省令第27条に規定する「過回転」とは、

内燃機関の回転速度が定格の回転速度を超えた場合をいい、「その他の異常」とは、次の

各号のいずれかに該当することをいい、前項の規定は適用しない。ただし、潤滑油を非強

制潤滑方式で供給するものであって、潤滑油量が低下した場合に運転を自動停止するもの

については第三号の規定、移動用のものについては第四号の規定、潤滑油の温度を冷却水

の温度で管理するものについては、第六号の規定、気体燃料を用いるものであって、漏え

いした燃料が筐体内に滞留しない構造であるものについては第七号の規定は、適用しな

い。

一 原動機制御用圧油装置の油圧、圧縮空気装置の空気圧又は電動式制御装置の電源電圧

の異常な低下

二 冷却水の温度の異常な上昇又は冷却水の供給停止

三 内燃機関における潤滑油の圧力の異常な低下

四 制御回路の電圧の異常な低下

五 筐体内の温度の異常な上昇

六 内燃機関軸受の潤滑油の温度の異常な上昇

七 気体燃料の漏えい

4 省令第27条に規定する「速やかに」とは、内燃機関の回転速度が定格の回転速度を超

えた場合にあっては定格の回転速度の 1.16 倍を超える以前の時点をいい、その他の場合

にあっては異常が発生した時点をいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・非常停止装置には、内燃機関に流入するバイオマスガスを自動的に調整する装置が設けら

れており、定格の回転速度となるような制御が行われている。また、回転数、圧力及び温

度に異常が生じた際には自動停止が行われていることを確認したが、非常停止を行う際の

速度として、火技解釈で規定する全ての停止条件を満たしているかどうか、特に定格の回

転速度の 1.16 倍を超える以前の時点であるかどうかを確認することができなかった。そ

のため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を

満足するものであるか判断する必要がある。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・設計上の回転速度に対する安全性を担保した上で、異常時には自動停止するシステムであ

ることを確認したが、火技解釈で規定する全ての停止条件を満たしているかどうか、特に

定格の回転速度の 1.16 倍を超える以前の時点で停止するかどうかについては確認するこ

とができなかった。

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130

・当該メーカーに関する設備は、非常停止装置を設ける設計であることは確認したが、火技

解釈で求める詳細な規定を満足しているかどうかまでは確認できなかった。そのため、日

本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するも

のであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の内燃機関を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・非常停止装置の有無

・非常停止を行うための条件が火技解釈を満たしているか

(5) 第五章 内燃機関及びその附属設備(火技省令第二十八条 過圧防止装置)

内容

火技省令 (過圧防止装置)

第二十八条 内燃機関及びその附属設備であって過圧が生ずるおそれのあるものにあって

は、その圧力を逃がすために適当な過圧防止装置を設けなければならない。

火技解釈 (過圧防止装置)

第41条 省令第28条に規定する「過圧」とは、第26条第1項の規定を準用するものを

いう。

2 省令第28条に規定する「過圧が生ずるおそれのあるもの」とは、内燃機関にあっては、

シリンダーの直径が 230mm を超え、最高使用圧力が 3.4MPa 以上の内燃機関のシリン

ダー(ただし、気体燃料を用いるガス機関は除く。)及びシリンダーの直径が 250mm を

超える内燃機関の密閉式クランク室をいう。

3 省令第28条に規定する「適当な過圧防止装置」とは、内燃機関にあっては、当該シリ

ンダー又は密閉式クランク室の圧力の上昇時に過圧を防止することができる容量を有し、

かつ、最高使用圧力以下で動作する逃がし弁をいい、内燃機関の附属設備にあっては、第

15条(ボイラー等に係る部分を除く。)の規定を準用するものをいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED では、過圧防止装置、温度モニター及び安全装置

全体に対する規定があり、安全弁により過圧防止を行うという基本的な考え方は、火技省

令と同様である。

・過圧防止装置は、圧力に異常が生じた際には、ガス流量の制限や自動停止する装置が設け

られていることに加えて、安全弁も設けられていることから、大気放出も可能な設備にな

っている。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・過圧防止対策として、圧力に異常が生じた際には、ガス流量の制限や自動停止する装置が

設けられていることに加えて、安全弁も設けられていることから、大気放出も可能な設備

になっている。しかし、安全弁の個数と吹出し圧力の関係や容量等までは確認できていな

い。

・当該メーカーに関する設備は、過圧防止対策に配慮された設計であることは確認したが、

安全弁の個数と吹出し圧力の関係や容量等までは確認することができなかった。そのた

め、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足

するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の内燃機関を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・安全弁の個数及び吹出し圧力

(6) 第五章 内燃機関及びその附属設備(火技省令第二十九条 計測装置)

内容

火技省令 (計測装置)

第二十九条 内燃機関には、設備の損傷を防止するため運転状態を計測する装置を設けなけ

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131

ればならない。

2 内燃機関が一般用電気工作物である場合には、前項の規定は適用しない。

火技解釈 (計測装置)

第42条 省令第29条第1項に規定する「運転状態を計測する装置」とは、次の各号に掲

げる事項を計測するものをいう。ただし、潤滑油を非強制潤滑方式で供給するものについ

ては、第三号に係る計測を潤滑油量又は潤滑油面の計測に、潤滑油の温度を冷却水の温度

で管理するものについては、第四号に係る計測を冷却水の温度の計測に代えることができ

る。

一 内燃機関の回転速度

二 内燃機関の冷却水の温度

三 内燃機関の潤滑油の圧力

四 内燃機関の潤滑油の温度

2 内燃機関には、定格出力が 10kW 未満の場合であって、連系する電力系統に当該発電所

以外に電源がないときは、前項の規定にかかわらず、同項に掲げる事項のうち、冷却水の

温度が異常に上昇した場合にこれを警報する装置を施設するものにあっては同項第二号

に掲げる内燃機関の冷却水の温度を、潤滑油の量が異常に低下した場合にこれを警報する

装置を設置するものにあっては同項第三号に掲げる内燃機関の潤滑油の圧力及び同項第

四号に掲げる内燃機関の潤滑油の温度を計測する装置を施設することを要しない。

調査対象設

備全体の評

価結果

・計測装置は、PED では圧力や温度に関する制限と計測に関する規定があることから、計

測して運転監視するという基本的な考え方は、火技省令と同様である。

・計測装置に関する技術基準との相違点等:回転、温度及び圧力等について計測しているこ

とは確認したが、冷却水の温度、潤滑油の圧力及び温度を計測し、火技解釈を満たしてい

るかまでは確認できなかった。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・計測項目として、回転、温度及び圧力等について計測していることは確認したが、冷却水

の温度、潤滑油の圧力及び温度を計測しるかまでは確認できなかった。そのため、日本国

内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するもので

あるか判断する必要がある。

留意事項 欧州の内燃機関を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・計測装置の有無と計測項目

・計測実施個所が火技解釈を満たしているか

(7) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第五十五条 離隔距離)

内容

火技省令 (離隔距離)

第五十五条 ガス化炉設備(管及びその附属設備を除く。以下この条及び次条において同じ。)

は、その外面と発電所の境界線(境界線が海、河川、湖沼等に接する場合は、当該海、河

川、湖沼等の外縁)との間に、ガスの漏洩又は火災等による危害を防止するために、保安

上必要な距離を有するものでなければならない。

2 ガス化炉設備は、その外面から住居の用に供する建築物、学校その他別に告示する物件

との間に、ガスの漏洩又は火災等による危害を防止するために、別に告示する距離を有す

るものでなければならない。

火技解釈 (離隔距離)

第85条 省令第55条第1項に規定する「保安上必要な距離」とは、次の各号に掲げるも

のいう。

一 ガス化炉設備(最高使用圧力が 1MPa 以上のものに限る。以下この条において同じ。)

は、その外面から発電所の境界線(境界線が海、河川、湖沼等に接する場合は、当該海、

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132

河川、湖沼等の対岸)に対し、3m 以上の距離を有するものであること。ただし、次に

定めるものは、それぞれに定める距離を有するものであること。

イ 毒性ガスを通ずるガス化炉設備にあっては、20m 以上

ロ ガス化炉設備(イに規定する設備以外の設備に限る。)であって燃焼熱量の数値(次

号に掲げる式中の K と W の積をいう。以下同じ。)が 3.4×106 以上のものにあって

は、20m 以上

二 ガス化炉設備(その処理能力(1 日に処理することができるガス量を標準状態に換算

した値(m3 を単位とする。)をいう。)が 52,500m3 以下のものは除く。以下本号にお

いて同じ。)にあっては、その外面から発電所の境界線又は第50条第二号ハに定める

外縁に対し、次の計算式より算出した値以上とし、50m 未満の場合にあっては、50m と

する。ただし、ガス化炉設備に2以上のガスがある場合においては、それぞれのガスに

ついて K に W を乗じた値を算出し、その数値の合計により、L を算出するものとす

る。

L = 0.576 ・√KW3

L は、離隔距離(m を単位とする。)

K は、ガスの種類及び常用の温度の区分に応じて別表第5に定め

る値

W は、当該機器内のガスの質量(t を単位とする。)の値

発電用火力

設備に関す

る技術基準

の細目を定

める告示

(ガス化炉設備に係る保安物件)

第四条 省令第五十五条第二項の規定による物件は、保安物件をいう。

(ガス化炉設備に係る離隔距離)

第五条 省令第五十五条第二項に規定する距離は、次の表の上欄に掲げるガスのじょ限量及

び同表中欄に掲げる処理能力に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる離隔距離以上とする。

ガスのじょ限量 処理能力(立方メートルを

単位とする。)

離隔距離(メートルを単位と

する。)

百万分の一以下 千未満 10490

千以上一万未満 X4.090

一万以上 130

百万分の一超え百万分の

五十以下

千未満 10480

千以上一万未満 X4.080

一万以上 120

百万分の五十超え百万分

の二百以下

千未満 10470

千以上一万未満 X4.070

一万以上 110

(備考)X は、当該機器の処理能力

2 前項に規定する処理能力は、一日に処理することができるガス量を標準状態に換算した

値(立方メートルを単位とする。)

調査対象設

備全体の評

価結果

・本調査対象設備は、最高使用圧力が 1MPa 未満で、その処理能力は 52,500m3未満であっ

た。火技省令第 55 条第 2 項は、設置場所の周辺環境が特定されないから評価しない。

製品毎の評

価結果 「調査対象設備全体の評価結果」に記載のとおり

留意事項 欧州で製造されている小型のバイオマスガスを利用した発電設備は、一般的には設計圧力や

処理能力が小さいことから、対象外になることが多いが、日本国内に設置する際については、

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133

設置者は自ら技術基準を満足するものであるか確認する必要がある。

(8) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第五十六条 保安区画)

内容

火技省令 (保安区画)

第五十六条 ガス化炉設備は、ガスの漏洩又は火災等による危害を防止するために、設備の

種類及び規模に応じ、保安上適切な区画に区分して設置し、かつ、設備相互の間には保安

上必要な距離を有するものでなければならない。

火技解釈 (保安区画)

第86条 省令第56条に規定する「保安上適切な区画」とは、第52条第2項第一号、第

3項及び第4項の規定を準用する。

2 省令第56条に規定する「設備相互の間」とは、次の各号に定めるものをいう。

一 隣接した異なる保安区画に属するガス化炉設備の間

二 隣接した異なる保安区画に属するガス化炉設備と液化ガス設備の間

三 隣接した異なる保安区画に属するガス化炉設備とコンビナート等保安規則第5条第1

項第十号に規定する高圧ガス設備の間

3 省令第56条に規定する「保安上必要な距離」とは、第52条第6項を準用する。

調査対象設

備全体の評

価結果

・設置場所の周辺環境が特定されないことから評価しない。

製品毎の評

価結果 「調査対象設備全体の評価結果」に記載のとおり

留意事項 欧州で製造されている小型のバイオマスガスを利用した発電設備は、一般的には設計圧力が

小さく、液化ガスも利用していないことから、対象外になることが多いが、日本国内に設置

する際については、設置者は自ら技術基準を満足するものであるか確認する必要がある。

(9) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第五十七条 ガス化炉設備の材料)

内容

火技省令 (ガス化炉設備の材料)

第五十七条 ガス化炉設備(ポンプ及びガス圧縮機を除く。次条において同じ。)に属する容

器及び管の耐圧部分に使用する材料は、最高使用温度において材料に及ぼす化学的影響及

び物理的影響に対し、安全な化学的成分及び機械的強度を有するものでなければならな

い。

火技解釈 (ガス化炉設備の材料)

第87条 省令第57条に規定する「耐圧部分」とは、第2条第1項の規定を準用するもの

をいう。

2省令第57条に規定する「安全な化学的成分及び機械的強度を有するもの」とは、第2条

第2項の規定を準用するものをいい、ガスを通ずるものにあっては、特定設備検査規則の

機能性基準の運用について(平成 13・12・27 原院第 5 号。以下「特定設備の技術基準の解

釈」という。)第4条を準用することができる。なお、第2条第2項の規定を準用する場

合にあっては、「別表第1-1(鉄鋼材料)」とあるのは「別表第1-2(鉄鋼材料)」と

読み替えるものとする。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:欧州でも耐圧部分は、最高使用圧力を超える設計圧力を

規定して設計するという基本的な考え方は、火技省令と同様である。PED では、0.05MPa

を超える圧力の設備について耐圧設計を求めており、本調査対象の設備はこれに含まれて

いる。材料は、EN 規格等の整合規格に記載された材料「European Approval of Materials」

Page 138: 平成27年度未利用エネルギー等活用調査 (発電用火力 · PDF file平成27年度未利用エネルギー等活用調査 (発電用火力設備に関する保安技術等動向調査)

134

に規定されている材料又は公認検査機関によって PED 相当の要求を満たすと認定を受け

た材料が使用されている。設計圧力に対して安全な材料を規定するという基本的な考え方

は、火技省令と同様であった。

・耐圧部分の考え方に関する火技解釈との相違点:PED では、0.05MPa を超える設備につ

いて耐圧設計を行うことになっているが、火技解釈では 0MPa を超える圧力を受ける部

分を耐圧部分と解釈しているといった相違点がある。バイオマスガスを利用した発電設備

は、運転圧力は大気圧相当程度であって、本調査対象設備は、熱交換器は設計圧力 0.6MPa、

配管は設計圧力 1.0MPa で設計し、公認検査機関の耐圧検査を受けている。

・材料に関する技術基準との相違点等:欧州において PED では、0.05MPa を超える設備に

ついては耐圧設計を行うことになっているが、バイオマスガスを利用した発電設備は、運

転圧力は大気圧相当程度であって、PED の適用対象外の設備であるため、メーカーの品

質保証により流通しているものである。しかし、ガスを用いていることから、配管や熱交

換器等では安全設計が行われており、配管は 1.0MPa 相当、熱交換器は 0.6MPa 相当の圧

力設計が行われており、公認検査機関の検査を受けていることは確認した。設計荷重に対

しては安全な設計になっていると思われるが、日本国内で導入する際には、設置者は自ら

JIS 規格と欧州規格の材料の化学的成分やミルシート等により適切な降伏点であるかど

うかを判断する必要がある。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・設計圧力を規定して、耐圧設計を実施していることは確認できたが、材料は非公表情報と

いうことで確認することができなかった。

・当該メーカーの設備は、最高使用圧力を考慮した設計を行っていることから、火技省令と

同様の考え方であることは確認したが、使用している材料については確認できなかった。

そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準

を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州のガス化炉設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・最高使用圧力及びその設計思想

・選定材料と JIS 規格における相当材料の化学的成分の比較

・ミルシート等を活用した機械的強度の確認

(10) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第五十八条 ガス化炉設備の構造)

内容

火技省令 (ガス化炉設備の構造)

第五十八条 ガス化炉設備の耐圧部分の構造は、最高使用圧力又は最高使用温度において発

生する最大の応力に対し安全なものでなければならない。この場合において、耐圧部分に

生ずる応力は当該部分に使用する材料の許容応力を超えてはならない。

火技解釈 (ガス化炉設備の構造)

第88条 省令第58条に規定する「安全なもの」とは、第90条から第96条に定める構

造であり、第97条の耐圧及び気密に係る性能を有するものをいう。

2 第3条第1項ただし書及び第2項の規定は、ガス化炉設備の構造に準用する。

(材料の許容応力)

第89条 省令第58条に規定する「許容応力」のうち許容引張応力は、次の各号に掲げる

ものをいう。

一 別表第1-2(鉄鋼材料)及び別表第2(非鉄材料)の許容引張応力にあっては、同

表に規定する値。ただし、特定設備の技術基準の解釈第4条に規定する材料にあっては、

特定設備の技術基準の解釈第8条を準用することができる。

二 別表第1-2及び別表第2に規定されていない鉄鋼材料及び非鉄材料であって、水又

は蒸気を通ずるものにあっては、第4条第1項第二号を準用した値、ガスを通ずるもの

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135

にあっては、第58条第1項第四号を準用した値。ただし、第4条第1項第二号を準用

する場合にあっては、「室温における規定最小引張強さの 1/3.5」とあるのは「室温にお

ける規定最小引張強さの 1/4」と、「当該温度における引張強さの 1/3.5」とあるのは「当

該温度における引張強さの 1/4」と読み替えるものとする。

2 省令第58条に規定する「許容応力」のうち許容圧縮応力及び許容せん断応力は、水又

は蒸気を通ずるものにあっては、第4条第2項の規定を準用する。

(容器の胴)

第90条 容器の胴であって、水又は蒸気を通ずるものにあっては、第6条の規定を準用し、

ガスを通ずるものにあっては、第59条の規定を準用する。なお、第6条の規定を準用す

る場合にあっては、「日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 E

(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「E.2.4 円すい胴」の「b)大径端部」及び「c)小径端

部」」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造-一般事項」の「附

属書 E(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「E.2.4 円すい胴の計算厚さ」の「b)大径端部」

及び「c)小径端部」」と読み替えるものとする。

(容器の鏡板)

第91条 容器の鏡板であって、水又は蒸気を通ずるものにあっては、第8条の規定を準用

し、ガスを通ずるものにあっては、第60条の規定を準用する。

(容器の平板)

第92条 容器の平板であって、水又は蒸気を通ずるものにあっては、第9条の規定を準用

し、ガスを通ずるものにあっては、第61条の規定を準用する。なお、第9条の規定を準

用する場合にあっては、「日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属

書 E(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「E.3.6 溶接によって取り付ける平鏡板(平板)」」

とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造-一般事項」の「附属書

E(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「E.3.6 平鏡板(平板)の計算厚さ」」と、「日本工

業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」

の「L.3.2 ボルト締め平ふた板の計算厚さ」」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)

「圧力容器の構造-一般事項」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.3.2 ボル

ト締め平ふた板の計算厚さ」」と、「日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」

の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.4.2 はめ込み形円形平ふた板の計算厚さ」」

とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造-一般事項」の「附属書

L(規定)圧力容器のふた板」の「L.4.2 はめ込み形円形平ふた板の計算厚さ」」と、「日

本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 E(規定)圧力容器の胴及

び鏡板」の「図 E.8 溶接によって取り付ける平鏡板の形状」及び日本工業規格 JIS B 8267

(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「図 L.1 ボルト

締め平ふた板の構造」」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造

-一般事項」の「附属書 E(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「図 E.8 溶接又はねじ込

みによって取り付ける平鏡板の形状」及び日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の

構造-一般事項」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「図 L.1 ボルト締め平ふた

板の構造」」と読み替えるものとする。

(容器のふた板)

第93条 容器のふた板であって、水又は蒸気を通ずるものにあっては、第10条の規定を

準用し、ガスを通ずるものにあっては、第62条の規定を準用する。なお、第10条の規

定を準用する場合にあっては、「日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の

「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1 フランジ付皿形ふた板の構造」の「図

L.3 フランジ付皿形ふた板」a)から d)」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)

「圧力容器の構造-一般事項」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1 フラ

ンジ付皿形ふた板の構造」の「図 L.3 フランジ付皿形ふた板の構造」a)から d)」と、「日

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136

本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 E(規定)圧力容器の胴及

び鏡板」の「E.3.3 皿形鏡板」」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容

器の構造-一般事項」の「附属書 E(規定)圧力容器の胴及び鏡板」の「E.3.3 皿形鏡板

の計算厚さ」」と、「日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規

定)圧力容器のふた板」の「L.5.2 フランジ付皿形ふた板の計算厚さ」の「L.5.2.1 鏡板

の部分の計算厚さ」の「b) 図 L.3 の b)、c)及び d) に示すふた板」の「1)内圧を保持する

場合」」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造-一般事項」の

「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.2 フランジ付皿形ふた板の計算厚さ」の

「L.5.2.1 鏡板の部分」の「b)図 L.3 の b), c)及び d)の場合」の「1)内圧を保持する場合」」

と読み替えるものとする。

(容器の管板)

第94条 容器の管板は、第11条の規定を準用する。この場合において、「日本工業規格

JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 K(規定)圧力容器の管板」の「K.3.2

管板の構造」」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造-一般事

項」の「附属書 K(規定)圧力容器の管板」の「K.3.1 管板の構造」」と、「日本工業規格

JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 K(規定)圧力容器の管板」の「K.4.2

管板の計算厚さ」」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造-一

般事項」の「附属書 K(規定)圧力容器の管板」の「K.4.2 管板の計算厚さ」」と読み替

えるものとする。

(管及び管台)

第95条 管及び管台であって、水又は蒸気を通ずるものにあっては、第12条の規定を準

用し、ガスを通ずるものにあっては、第67条の規定を準用する。

(フランジ)

第96条 フランジは、第13条の規定を準用する。この場合において、「日本工業規格 JIS

B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 G(規定)圧力容器のボルト締めフランジ」」

とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造-一般事項」の「附属書

G(規定)圧力容器のボルト締めフランジ」」と、「日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧

力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1 フランジ付皿形ふた

板の構造」の「図 L.3 フランジ付皿形ふた板」a)」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265

(2010)「圧力容器の構造-一般事項」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1

フランジ付き皿形ふた板の構造」の「図 L.3 フランジ付皿形ふた板の構造」a)」と、「日

本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた

板」」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265(2010)「圧力容器の構造-一般事項」の「附

属書 L(規定)圧力容器のふた板」」と、「日本工業規格 JIS B 8267(2008)「圧力容器の

設計」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1 フランジ付皿形ふた板の構造」

の「図 L.3 フランジ付皿形ふた板」b)、c)及び d)」とあるのは「日本工業規格 JIS B 8265

(2010)「圧力容器の構造-一般事項」の「附属書 L(規定)圧力容器のふた板」の「L.5.1

フランジ付き皿形ふた板の構造」の「図 L.3 フランジ付皿形ふた板の構造」b)、c)及び

d)」と読み替えるものとする。

(耐圧試験及び気密試験)

第97条 ガス化炉設備の耐圧部分は、水又は蒸気を通ずるものにあっては、第5条の規定

を準用し、ガスを通ずるものにあっては、第72条及び第72条の2の規定を準用する。

なお、第5条の規定を準用する場合にあっては、「1.3 倍の水圧」とあるのは「1.5 倍の水

圧」と、「1.1 倍の気圧」とあるのは「1.25 倍の気圧」と読み替えるものとする。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:材料の許容応力は、PED 及び EN 規格等に規定されて

おり、最高使用温度、最高使用圧力及び材料に応じた許容引張応力を規定して安全設計を

行うという基本的な考え方は、火技省令と同様である。

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137

・ガス化炉設備の構造は、基本的に大気圧相当程度の構造であるが、ガスや温水を利用した

設備であることから、配管は 1.0MPa、熱交換器は 0.6MPa の設計圧力を用いており、耐

力に対して余裕のある設計が行われているものと思われる。

・材料の許容応力に関する火技解釈との相違点等:材料の許容応力は、炭素鋼の場合は、欧

州の規制は、引張強さの 1/2.4 又は降伏点の 1/1.5 の小さい値が適用されており、一般的

には降伏点の 1/1.5 の方が小さい値になることが多いが、一方で、火技解釈は、引張強さ

の 1/3.5 及び降伏点の 1/1.5 のうち小さい値が適用されており、一般的には引張強さの

1/3.5 の方が小さい値になることが多い。このように両者を比較すると、欧州規制の許容

応力の方が、小さくなることが多いが、一方で、本調査対象設備では、ガス化炉容器は負

圧設計であること、配管や熱交換器は最高使用圧力に対して余裕のある設計を行っている

ことから、実際の詳細な設計解析を行う際にはこの値以上の安全率を用いている可能性が

ある。

・水圧試験に関する火技解釈との相違点等:水圧試験は、PED では設計圧力の 1.43 倍と最

大許容温度における圧力の 1.25 倍のうち大きい値を用いる。一方で、火技解釈は設計圧

力の 1.3 倍(温度補正なし)以上になっている。そのため、水圧試験は、その閾値を比較

すると、PED の規定は火技解釈を満たすものとなるが、一方で、過剰な圧力設定となる

懸念があることから、単純に適用できるものではない。

・部材厚さ等の設計方法に関する火技解釈との相違点等:部材厚さ等の設計方法は、火技解

釈では JIS の圧力容器の規格を適用するが、欧州のバイオマスガスを利用した発電設備

は、設計圧力が小さいことから、メーカーの経験で必要厚さが設計された設備であるもの

と思われる。本調査では、ある程度余裕のある設計をしていることは確認したが、詳細な

部材厚さまでの情報を確認することができなかった。そのため、日本国内に設置する際に

は、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必

要がある。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・当該設備は、最高使用圧力が 0.05MPa 未満であるが、配管は 1.0MPa、熱交換器は 0.6MPa

で設計していることから、十分な安全性を確保している設備であるが、具体的な部材厚さ

が不明であって、許容応力の考え方も異なることから、火技解釈を満たすものであるかを

確認することはできなかった。

・当該メーカーに関する設備は、実際の使用圧力よりも高い圧力を設定して設計を行い、部

材厚さを決定していることから、火技省令と同様に、構造に配慮した設計を行っているこ

とは確認したが、最高使用温度や最高使用圧力の考え方が日本と異なること、具体的な部

材厚さや形状について火技解釈が求める条件を満たしているかどうかまでは確認するこ

とができなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計条件

を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州のガス化炉設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・最高使用温度、最高使用圧力及びその設計思想

・使用する材料の許容応力と計算上必要な厚さの相関及び最小厚さ

・火技解釈を満たした形状であるか

(11) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第五十九条 安全弁)

内容

火技省令 (安全弁)

第五十九条 ガス化炉設備であって過圧が生ずるおそれのあるものにあっては、その圧力を

逃がすために適当な安全弁を設けなければならない。この場合において、当該安全弁は、

その作動時に、安全弁から吹き出されるガスによる危害及びガス化炉設備の過熱が生じな

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138

いように施設しなければならない。

火技解釈 (安全弁)

第98条 省令第59条に規定する「過圧が生ずるおそれのあるもの」とは、第15条第1

項の規定を準用する。ただし、ガスを通ずるものにあっては、通常の状態で最高使用圧力

を超える圧力をいう。

2 省令第59条に規定する「適当な安全弁」とは、水又は蒸気を通ずるものにあっては、

第15条第2項の規定を準用し、ガスを通ずるものにあっては、第74条第2項の規定を

準用する。

3 前項の規定により設ける安全弁、圧力逃がし装置及び起動バイパス装置の規格は、次の

各号によること。

一 安全弁の規格は、水又は蒸気を通ずるものにあっては、第15条第3項及び第4項の

規定を準用し、ガスを通ずるものにあっては、第74条第5項の規定を準用する。

二 圧力逃がし装置及び起動バイパス装置の規格は、第15条第5項の規定を準用する。

4 第2項の規定により設ける安全弁、圧力逃がし装置及び起動バイパス装置の容量は、次

の各号によること。

一 安全弁の容量は、水又は蒸気を通ずるものにあっては、第15条第6項第一号、第三

号及び第四号の規定を準用し、ガスを通ずるものにあっては、第74条第3項第一号の

規定を準用する。

二 圧力逃がし装置及び起動バイパス装置の容量は、第15条第7項の規定を準用する。

5 第2項の規定により設ける安全弁であってガスを通ずるものの吹出し量決定圧力は、第

74条第4項第一号の規定を準用する。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED では、過圧防止装置、温度モニター及び安全装置

全体に対する規定があり、安全弁等により過圧防止を行うという基本的な考え方は、火技

省令と同様であった。

・当該設備には過圧する恐れのあるものには、安全弁が設けられており、火技省令で求めて

いる性能は有していると思われるが、火技解釈で求めている安全弁の個数、吹出し圧力及

び容量等までは、確認することができなかった。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・当該メーカーに関する設備では、過圧防止対策として安全弁が設けられており、大気放出

も可能な設備となっていることは確認したが、安全弁の個数、吹出し圧力及び容量等まで

は確認することができなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳

細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州のガス化炉設備を日本国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・安全弁の個数、吹出し圧力及び容量

(12) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十条 給水装置)

内容

火技省令 (給水装置)

第六十条 ガス化炉設備に属する容器(水等の熱媒体を加熱して蒸気を発生させるもの又は

水により熱的保護を行っているものに限る。以下この条、次条及び第六十二条において同

じ。)には、ガス発生量が最大状態である時の連続運転時において、熱的損傷が生ずるこ

とのないよう水を供給できる給水装置を設けなければならない。

2 設備の異常等により、前項の給水流量が著しく低下した際に、急速に燃料の送入を遮断

してもなお容器に損傷を与えるような熱が残存する場合にあっては、当該容器には、当該

損傷が生ずることのないよう予備の給水装置を設けなければならない。

火技解釈 (給水装置)

第99条 省令第60条に規定する「水により熱的保護を行っているもの」とは、ガス化炉

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139

で生成したガスを直接水と接触させることにより当該ガス化炉の保護を行うものをいう。

2 省令第60条に規定する「急速に燃料の送入を遮断してもなお容器に損傷を与えるよう

な熱が残存する場合」とは、当該容器の給水流量が著しく低下した際に、自動で急速に燃

料の送入を遮断する装置を有しないもの又は急速に熱の供給が停止できないものをいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

本調査対象設備は、バイオマスガスを用いたものであって、水等の熱媒体を用いていないこ

とから対象外。

製品毎の評

価結果 ―

留意事項 ―

(13) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十一条 蒸気及び給水の遮断)

内容

火技省令 (蒸気及び給水の遮断)

第六十一条 ガス化炉設備に属する容器の蒸気出口(安全弁からの蒸気出口及び再熱器から

の蒸気出口を除く。)は、蒸気の流出を遮断できる構造でなければならない。ただし、他

の容器若しくはボイラーと結合された容器以外の容器から発生する蒸気が供給される設

備の入口で蒸気の流路を遮断することができる場合における当該容器の蒸気出口又は二

個以上の容器若しくはボイラーが一体となって蒸気を発生しこれを他に供給する場合に

おける当該容器間の蒸気出口にあってはこの限りでない。

2 ガス化炉設備に属する容器の給水の入口は、給水の流路を速やかに自動で、かつ、確実

に遮断できる構造でなければならない。ただし、容器ごとに給水装置を設ける場合におい

て、容器に最も近い給水加熱器の出口又は給水装置の出口が、給水の流路を速やかに自動

で、かつ、確実に遮断できる構造である場合における当該容器の給水の入口又は二個以上

の容器若しくはボイラーが一体となって蒸気を発生しこれを他に供給する場合における

当該容器間の給水の入口にあってはこの限りでない。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

本調査対象設備は、バイオマスガスを用いたものであって、水等を熱媒体は用いていないこ

とから対象外。

製品毎の評

価結果 ―

留意事項 ―

(14) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十二条 ガス化炉設備の水抜き装置)

内容

火技省令 (ガス化炉設備の水抜き装置)

第六十二条 ガス化炉設備に属する容器には、水の濃縮を防止し、及び水位を調整するため

に、水を抜くことができる装置を設けなければならない。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

本調査対象設備は、バイオマスガスを用いたものであって、水等を熱媒体は用いていないこ

とから対象外。

製品毎の評

価結果 ―

留意事項 ―

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140

(15) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十三条 ガスの漏洩対策)

内容

火技省令 (ガスの漏洩対策)

第六十三条 ガス化炉設備には、当該設備からのガスが漏洩した場合の危害を防止するため

適切な措置を講じなければならない。

火技解釈 (ガスの漏えい対策)

第100条 省令第63条に規定する「適切な措置」とは、次の各号に掲げるものをいう。

一 可燃性ガスを通ずるガス化炉設備(管及びその附属設備並びに火気を取り扱うものを

除く。)は、その外面から火気を取り扱う設備(当該ガス化炉設備と一体となって供給

の用に供するものを除く。)に対し、8m 以上の距離を有するものであること。ただし、

次のいずれかの防護措置を講ずる場合は、この限りでない。

イ 当該ガス化炉設備の付近において、ガス漏えい検知器を設置し、かつ、ガスの漏え

いを検知したとき火気を取り扱う設備の火気を自動的に消火することのできる装置

を設けたもの

ロ 当該ガス化炉設備と火気を取り扱う設備との間に高さが 2m 以上の障壁を設け、か

つ、当該設備と火気を取り扱う設備とのう回水平距離を 8m 以上とするもの

二 可燃性ガス又は毒性ガスを通ずるガス化炉設備は、次に掲げる措置を講ずるものであ

ること。

イ 可燃性ガスを通ずる設備を設置する室は、当該ガスが漏えいしたとき、滞留しない

構造のものであること。

ロ 可燃性ガス又は毒性ガスを通ずる設備には、当該設備から漏えいしたガスが滞留す

るおそれがある場所に、当該ガスの漏えいを検知し、かつ、警報するための設備を設

けること。

三 ガス化炉設備は、ガスを安全な状態で放散するため、フレアースタック又はベントス

タックを設けなければならない。

イ フレアースタックは、次の基準に適合するものであること

(イ)その燃焼能力は、異常な事態が発生した場合に設備外に緊急に移送されるガ

スを安全に燃焼することができるものであること。

(ロ)その高さ及び位置は、当該フレアースタックにおいて発生するふく射熱が他

の設備に悪影響を与えないものであること。

(ハ)その材料及び構造は、当該フレアースタックにおいて発生する最大熱量に長

時間耐えることができるものであること。

(ニ)フレアースタックには、パイロットバーナーを常時点火する等フレアースタ

ックに係る爆発を防止するための措置を講ずること。

ロ ベントスタックは、次の基準に適合するものであること。

(イ)放出しようとするガスが毒性ガスである場合には、除害のための措置を講じ

た後行うこと。

(ロ)放出しようとするガスが可燃性ガスである場合には、放出された可燃性ガス

が地表面上で爆発限界に到達するおそれのあるときは、放出しないこと。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED 等において、ガスの漏えい対策に関する規定は確

認することができなかった。

・本発電設備については、ガスの漏えい検知として、CO 濃度の検知を行っており、メーカ

ーでは 6 ヶ月に 1 回の割合で、校正を実施することを推奨している。

・当該設備では、ガスフレアーが設置され、異常な事態が発生した場合にガスを安全に燃焼

させる装置が設置されていることは確認できたが、火技解釈で求められる要件を満足する

かどうかまでは確認することはできなかった。

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141

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・当該設備は、CO 濃度の検知に配慮した設備であり、ガス検知は行うが、「ガスの漏えい

を検知したとき火気を取り扱う設備の火気を自動的に消火することのできる装置を設け

たもの」であるかどうかは、確認することができなかった。

・ガス検知は、メーカー側の要求を確認の上、設置する国の労働基準法等に応じて実施する

必要がある。

・当該設備は、ガスフレアーが設置されていることは確認できたが、火技解釈で求められる

要件を満足するかどうかまでは確認することはできなかった。

留意事項 欧州のガス化炉設備を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・設置者が自ら十分な離隔距離を確保しているか、若しくはガス検知を実施し、さらにガス

の漏えいを検知したとき火気を取り扱う設備の火気を自動的に消火することのできる装

置を設けたものであるかどうかを確認する必要がある。

(16) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十四条 静電気除去)

内容

火技省令 (静電気除去)

第六十四条 可燃性ガスを通ずるガス化炉設備であって、当該設備に生ずる静電気により引

火するおそれがある場合にあっては、当該静電気を除去する措置を講じなければならな

い。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED 等において、静電気除去に関する規定は確認する

ことができなかった。

・当該設備は、静電気除去対策について確認することができなかった。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・当該設備は、静電気除去対策の有無については、確認することができなかった。

留意事項 欧州のガス化炉設備を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・静電気除去対策の実施

(17) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十五条 防消火設備)

内容

火技省令 (防消火設備)

第六十五条 ガス化炉設備(可燃性ガス、毒性ガス又は酸素を通ずるものに限る。)には、そ

の規模に応じて適切な防消火設備を適切な箇所に設けなければならない。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED 等において、防消火設備に相当する規定は確認す

ることができなかった。しかし、ドイツ国内法による設置時の検査において、防消火設備

の有無について確認されたとの情報があることから、ドイツの国内法においては、同様の

規定があるものと思われる。しかし、欧州の他国において、同様の規定があるかどうかは、

確認することができなかった。

・当該設備は、ドイツの発電所においては、防消火設備を設ける必要がある。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・当該設備は、国内に輸入する際は、防消火設備を設置する必要がある。

留意事項 欧州のガス化炉設備を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・防消火設備の設置

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(18) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十六条 計測装置)

内容

火技省令 (計測装置)

第六十六条 ガス化炉設備には、設備の損傷を防止するため運転状態を計測する装置を設け

なければならない。

火技解釈 (計測装置)

第101条 省令第66条に規定する「運転状態を計測する装置」とは、水又は蒸気を通ず

るものにあっては、第17条の規定を準用し、ガスを通ずるものにあっては、ガス化炉の

ガスの圧力及び温度を計測するものをいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:PED において、圧力や温度に関する制限と計測に関す

る規定があることから、計測することによって安全性を担保するという基本的な考え方

は、火技省令と同様である。

・計測装置に関する火技解釈との相違点等:ガス化炉等において圧力及び温度の計測を行っ

ていることを確認した。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・温度や圧力の計測を行い、異常時には自動停止する機能を有していることを確認した。PED

の規定により、計測装置の規定が設けられているが、日本国内に設置する際には、設置者

が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州のガス化炉設備を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・計測装置の有無と計測項目

・計測実施個所が火技解釈を満たしているか

(19) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十七条 警報及び非常装置)

内容

火技省令 (警報及び非常装置)

第六十七条 ガス化炉設備には、運転に支障を及ぼすおそれのあるガスの状態を検知し警報

する装置を設けなければならない。

2 ガス化炉設備には、運転中に生じた異常による危害の発生を防止するため、その異常が

発生した場合にガスの流出及び流入を速やかに遮断する装置を適切な箇所に設けなけれ

ばならない。

火技解釈 (警報及び非常装置)

第102条 省令第67条第1項に規定する「運転に支障を及ぼすおそれのあるガスの状態」

とは、ガス化炉のガスの圧力及び温度が異常に上昇した場合をいう。

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:本調査において、警報及び非常装置に関する規格がある

ことは確認することができなかった。しかし、EN12953 等において、自動停止に関する

規定が存在する。

・警報及び非常停止装置については、特に CO 濃度等について配慮した設計となっており、

異常時にはガスの流出及び流入を遮断する装置が設けられて自動停止することは確認し

た。また、圧力や温度に関する警報及び非常装置が設けられていることを確認した。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・当該設備では、運転設備に支障を及ぼすおそれのあるガスの状態を検知する装置を有して

いるかは確認することができなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が

自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

留意事項 欧州のガス化炉設備を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・運転に支障を及ぼすおそれのあるガスの状態を検知する機能の有無

・警報装置の有無

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(20) 第八章 ガス化炉設備(火技省令第六十八条 ガスの置換)

内容

火技省令 (ガスの置換)

第六十八条 ガス化炉設備のガスを通ずる部分は、不活性ガス等でガスを安全に置換できる

構造でなければならない。

火技解釈 ―

調査対象設

備全体の評

価結果

・技術基準に相当する欧州規格等:本調査において、ガスの置換に関する規格を確認するこ

とができなかった。

・ガスの置換に関する火技省令との相違点等:不活性ガスにより置換する機能が設けられて

いることを確認した。

製品毎の評

価結果

(バイオマスガスを利用した発電設備メーカー:L 社)

・不活性ガスにより置換する機能が設けられていることは確認したが、日本国内に設置する

際には、設置者が自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断す

る必要がある。

留意事項 欧州のガス化炉設備を国内に輸入する際には、以下の点に留意する必要がある。

・ガスを置換する装置の有無

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6.3 欧州の発電設備の技術基準に関する評価結果の整理及び課題抽出

本事業においては、PED や EN 規格等の欧州規格と電気事業法で定める技術基準(火技

省令及び火技解釈)との対比を示し、更に、今回調査した欧州のバイオマスボイラー等の

発電設備と技術基準との相違点について整理を行い、課題抽出を行った。

本整理により、欧州における小規模バイオマスボイラー等の発電設備は、材料、圧力機

器の構造、安全弁、計測装置、蒸気タービン及び内燃機関における構造、調速装置及び非

常用調速装置等の主な技術基準で定める規定について、配慮した設計であることが確認さ

れた。しかし、欧州における PED や EN 規格等においては、技術基準で示す詳細な条件が

規定されていないこと、バイオマスボイラー等の発電設備においては、統一された規格を

適用せず、国内規格等の技術基準を適用された設備であることから、規格の相違点を把握

することで、技術基準を満たしたものであるかを評価することが困難であった。またヒア

リング調査は実施したものの、設計図面及び設計計算書等を入手し、詳細な設計条件を把

握することができなかったため、設計情報から技術基準を満たした設備であるかどうかも、

全てを確認することができなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自

ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

以下に、主な技術基準項目別に欧州のバイオマスボイラー等の発電設備に対する技術基

準への適合性について示す。

① 材料

欧州の発電設備においても、耐圧部分は、最高使用圧力を超える設計圧力を規定し

設計を行うという基本的な考え方は、技術基準と同様である。大きな相違点としては、

欧州においては圧力は 0.05MPa 以下の設備は PED の適用対象外であることから、EN

規格に整合していない設備である。本調査においては、そのような発電設備は1例存

在した。この発電設備においては、ヒアリングによりガスを通ずる設備であることか

ら、安全性に配慮し、設備の大部分で負圧となるように設計を行い、熱交換器で 0.6MPa、

配管で 1.0MPa に対応した耐圧設計を実施しており、公認検査機関の認証を得た設備

であった。

また、材料については、全ての設備について確認することはできなかったが、一部

の設備について EN 規格に適合した材料を用いていることを確認した。このことから、

安全な材料を規定し適用するといった基本的な考え方は、火技省令と同様である。し

かし、4.4.3 章に示すように、JIS 規格と EN 規格では、その化学的成分や、降伏応力

が異なる材料であり、発電設備において適用した材料が、火技解釈で規定されている

「安全な化学的成分及び機械的強度を有する」を満たしたものであるかは不明である。

以上のことから、欧州の発電設備を輸入する際は、最高使用圧力の考え方や耐圧設

計の方針、特に使用される材料が JIS 規格に相当するものであるとか、化学的成分が

分かるミルシート等から材料がもつ機械的強度等について火技解釈を満たしているこ

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とを確認する必要がある。

② 圧力機器の構造

欧州の発電設備においても、最高使用圧力及び最高使用温度に応じて、許容応力を

設定し、設計を行うという基本的な考え方は、火技省令と同様である。大きな相違点

としては、EN 規格における許容応力は、室温における引張強さの 1/2.4 及び設計温度

における降伏点の1/1.5うち小さい値を許容応力として用いることとしているのに対し

て、火技解釈における許容応力は、設計温度における引張強さの 1/3.5 及び設計温度に

おける降伏点の 1/1.5 のうち小さい値である。一般にバイオマスボイラー等の発電設備

に適用されているフェライト鋼を例に挙げると、EN 規格では降伏点の 1/1.5 で決定す

るのに対して、火技解釈では引張強さの 1/3.5 で決定する場合が多い。そのため、EN

規格で適用される許容応力と、火技解釈で規定される許容応力とは異なる値となり、

かつ一般的に設計上の安全率が電気事業法より小さいため、欧州における守るべき許

容応力の方が小さい値となる。そのため、EN 規格に準拠した設備であったとしても、

必ずしも電気事業法上の技術基準を満たすことができないことが想定される。

設計厚さの算定式については、小規模のバイオマスボイラー等の発電設備において

は、設計圧力が小さいことから、算定式はほぼ同等となる。しかし、設計厚さは許容

応力の逆数に比例することとなり、火技解釈が求める必要な最低厚さに比べて、許容

応力を大きく設定できる EN 規格が求める必要な最低厚さの方が薄くなることが想定

される。このように小規模のバイオマスボイラー等の発電設備については、設計圧力

が小さいことから、計算上必要な厚さではなく、最小厚さで決定製作されることが想

定される。実際の厚さはバイオマスボイラー等の発電設備メーカーの設計思想により

決定されるものが多いものと思われる。

圧力容器の形状については、補強の考え方等が火技解釈と EN 規格で一致している

ものもあるが、相違点も存在する。

以上のことから、欧州の発電設備を輸入する際は、最高使用圧力、最高使用温度、

許容応力及び実際の設計厚さが火技解釈を満たしているか、また保安形状の考え方も

火技解釈と EN 規格では異なることから、火技解釈に規定された保安形状を満たして

いることを確認する必要がある。

③ 安全弁

欧州の発電設備においても、過圧防止対策として安全弁を用いることについて、PED

や EN 規格等に記載があることから、安全弁等を活用し、過圧防止対策を実施すると

いう基本的な考え方は、火技省令と同様である。しかし、火技解釈に規定された安全

弁の個数、吹出し圧力及び容量等については、EN 規格等では記載がない。

以上のことから、欧州の発電設備を輸入する際は、必要な安全弁の個数、吹出し圧

力及び容量等について火技解釈を満たしていることを確認する必要がある。

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④ 計測装置

欧州の発電設備においても、圧力及び温度等の計測の実施について、PED や EN 規

格等に記載があることから、計測を実施し、運転監視するという基本的な考え方は、

火技省令と同様である。しかし、火技解釈にて規定されている計測項目及び計測箇所

を全て満たしているかどうかまでは、確認することができなかった。

以上のことから、欧州の発電設備を輸入する際は、計測項目及び計測箇所について

火技解釈を満たしていることを確認する必要がある。

⑤ 蒸気タービン及び内燃機関における構造

欧州の発電設備について、蒸気タービン及び内燃機関の構造に対する EN 規格等の

規定は明確に確認することができなかった。しかし、今回個別に調査した発電設備(蒸

気タービン及び内燃機関)においては、異常時には自動停止する機能が設けられてい

ることが確認された。蒸気タービン及び内燃機関に対する構造の基本的な考え方は、

火技省令と同様である。しかし、火技解釈に規定されている「異常な摩耗、変形及び

過熱が生じないもの」等の機能が、満たされた設備構造であるかどうかは確認するこ

とができなかった。

以上のことから、欧州の発電設備を輸入する際は、「異常な摩耗、変形及び過熱が生

じない」等の構造に必要な条件について火技解釈を満たしていることを確認する必要

がある。

⑥ 調速装置

欧州の発電設備においては、蒸気タービン及び内燃機関の調速装置に対する EN 規

格等の規定は確認することができなかった。しかし、今回個別に調査した発電設備に

おいては、調速装置が設けられていることが確認され、調速装置を設け、過度な回転

が生じない運転に配慮するという基本的な考え方は、火技省令と同様である。しかし、

火技省令にて規定されている定格負荷を遮断したときに達する速度等に関する条件を

全て満たしているかどうかまでは、確認することができなかった。

以上のことから、欧州の発電設備を輸入する際は、定格負荷を遮断したときに達す

る速度等に関する条件等について火技解釈を満たしていることを確認する必要がある。

⑦ 警報及び非常停止装置

欧州の発電設備においては、蒸気タービン及び内燃機関の警報及び非常停止装置に

対する EN 規格等の規定は明確に確認することができなかった。しかし、今回個別に

調査した発電設備においては、非常停止装置が設けられていることが確認され、非常

停止装置を設け、安全な運転に配慮するという基本的な考え方は、火技省令と同様で

ある。しかし、火技解釈にて規定されている非常停止装置が作動する圧力レベル等の

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詳細な条件までは、確認することができなかった。

以上のことから、欧州の発電設備を輸入する際は、警報及び非常停止装置の有無、

非常用停止装置が作動する圧力レベルに関する条件等について火技解釈を満たしてい

ることを確認する必要がある。

⑧ その他

①~⑦に示す主な技術基準の項目のほか、ボイラー及びその附属設備における給水

装置の有無、蒸気及び給水の遮断に配慮した設計、ガス化炉におけるガス漏えい対策

及びその検知方法、静電気除去装置の有無、防消火設備の有無等について確認を行っ

た結果においても、それぞれの項目について配慮した設備設計が行われていることを

確認したが、技術基準に規定された全ての事項について満たしたものであるかまでは、

確認できなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が自ら詳細な設計

条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

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7 おわりに

本事業において、発電用火力設備を対象に、日本、米国及び欧州の技術基準等の規格の

比較分析を行い、欧州における小規模のバイオマスボイラー等の発電設備が技術基準(火

技省令及び火技解釈)で定める技術的要件を満たすかの評価を行った。評価を行った結果

としては、欧州現地視察を行い、提供資料、系統図を確認しヒアリング調査を行ったが、

設備の技術基準適合性を判断するための、具体的な設計条件、設計計算書及び詳細な系統

図までは確認することができなかった。そのため、日本国内に設置する際には、設置者が

自ら詳細な設計条件を確認して技術基準を満足するものであるか判断する必要がある。

また、今回の調査により我が国の発電設備に係る安全規制と欧州の安全規制の比較を行

った。欧州の発電設備では、例えば、EN 規格等に規定されている自動停止機能を設け、自

動停止を安全に行うための装置が設けられている。そのため、再起動時には管理者が赴く

必要があるが、遠隔監視を可能とした運用が行われている。

しかし、日本と欧州では設計に対する考え方や運用方法が異なることとともに、本事業

を通じてその事例も少ないことが分かり、また、EN 規格等に規定されている自動停止機能

並びに点検頻度や異常時の対応方法を技術基準に取り入れて主任技術者を不要とするまで

の安全性について十分なデータが得られておらず、安全性を担保するために人的な安全管

理が必要であることから、このような運用を直ちに取り込むのは時期尚早であると考えら

れる。