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2.7.2 臨床薬理の概要
Nihon Schering K.K.
2.7.2 臨床薬理の概要
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2.7.2 臨床薬理の概要
改訂版 01 Page 1 of 29
Nihon Schering K.K.
フルダラ錠
2.7.2 臨床薬理の概要の目次
2.7.2.1 背景及び概観.............................................. 4 2.7.2.1.1 ヒト生体試料を用いた in vitro 試験................... 4 2.7.2.1.1.1 報告書 AR39及び Reichelova V et al., Journal
of Liquid Chromatography 1995:18:1123-1135,
蛋白結合......................................... 4 2.7.2.1.1.2 報告書 AK65及び A07088,チトクローム P450 によ
る代謝........................................... 4 2.7.2.1.1.3 報告書 A04249,チトクローム P450 に対する阻害作
用............................................... 4 2.7.2.1.2 臨床薬理試験........................................ 5 2.7.2.1.2.1 報告書 A03430,国内第 I 相臨床試験................. 5 2.7.2.1.2.2 報告書 AT22,腎機能低下患者における海外臨床試
験............................................... 5 2.7.2.1.2.3 Danhauser L et al., Cancer Chemotherapy and
Pharmacology 1986:18:145-152,2F-ara-ATP の細
胞内動態......................................... 5 2.7.2.1.2.4 Gandhi V et al., Leukemia and Lymphoma
1993:10:49-56,2F-ara-ATP の細胞内動態............ 6 2.7.2.1.2.5 Gandhi V et al., Journal of Clinical Oncology
1993:11:116-124,細胞内における薬物動態学的薬
物相互作用....................................... 6
2.7.2.2 個々の試験結果の要約...................................... 7 2.7.2.2.1 ヒト生体試料を用いた in vitro 試験................... 7 2.7.2.2.1.1 報告書 AR39及び Reichelova V et al., Journal
of Liquid Chromatography 1995:18:1123-1135,
蛋白結合......................................... 7 2.7.2.2.1.2 報告書 AK65及び A07088,チトクローム P450 にお
ける代謝......................................... 7 2.7.2.2.1.3 報告書 A04249,チトクローム P450 における薬物相
互作用........................................... 7 2.7.2.2.2 臨床薬理試験........................................ 8 2.7.2.2.2.1 報告書 A03430,国内第 I 相臨床試験................. 8 2.7.2.2.2.2 報告書 AT22,腎機能低下患者における海外臨床試
験.............................................. 10 2.7.2.2.2.3 Danhauser L et al., Cancer Chemotherapy and
Pharmacology 1986:18:145-152,2F-ara-ATP の細
胞内動態........................................ 12
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2.7.2 臨床薬理の概要
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フルダラ錠
2.7.2.2.2.4 Gandhi V et al., Leukemia and Lymphoma
1993:10:49-56, 2F-ara-ATP の細胞内動態...........13 2.7.2.2.2.5 Gandhi V et al., Journal of Clinical Oncology
1993:11:116-124,細胞内における薬物動態学的薬
物相互作用 ......................................14
2.7.2.3 全試験を通しての結果の比較と解析.........................16
2.7.2.4 特別な試験...............................................26
2.7.2.5 付録.....................................................27
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2.7.2 臨床薬理の概要
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フルダラ錠
[薬物動態パラメータの略号と算出法]
薬物動態パラメータ:
リン酸フルダラビンの主代謝物 2-fluoro-9-β-D-arabinofuranosyl-adenine(2F-ara-A)の薬
物動態パラメータを算出した.
t1/2: 最終相の消失半減期
Cmax : 最高血漿中濃度の実測値(nmol/mL)
tmax : 最高血漿中濃度到達時間(h)
CL: クリアランス(mL/min/kg)
2F-ara-A の CL は,リン酸フルダラビンが完全に 2F-ara-A に代謝されると仮定し,
リン酸フルダラビンとしての投与量を 2F-ara-A に補正して算出した.
AUC: 血漿中薬物濃度-時間曲線下面積(nmol・h/mL)
AUC はゼロ時間から無限大まで外挿した AUCを,AUC0-Thはゼロ時間から T時間まで
の AUC をいずれも台形法により算出した.反復投与時の投与 T日目における 2F-ara-
A の蓄積係数は以下の式により算出した.
AUCA-ara-2F 1AUCA-ara-2FT
の日目の投与
の日目の投与蓄積係数 =
BA: バイオアベイラビリティ(%)
みかけの BA は個々の試験から以下の式により算出した.
100AUCA-ara-2F
AUCA-ara-2FBA ××=経口投与試験投与量
静脈内投与試験投与量
のる静脈内投与試験におけ
の経口投与試験における(%)みかけの
排泄率: 2F-ara-A の尿中排泄率は,リン酸フルダラビンとしての投与量を 2F-ara-A に補正し
て算出した.
IC50: IC50はそれぞれのチトクローム P450 分子種に特異的な酵素反応を 50%阻害するとき
のリン酸フルダラビン又は 2F-ara-A の濃度を示す.
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2.7.2 臨床薬理の概要
2.7.2.1 背景及び概観
リン酸フルダラビンの臨床薬理は,ヒト生体試料を用いた in vitro 試験及び薬物動態の検討を含
んだ臨床試験において評価した.リン酸フルダラビンはヒト血液中で脱リン酸化し,速やかに 2F-
ara-A に代謝されることが明らかにされていることから,評価対象は主に主代謝物 2-fluoro-9-β-
D-arabinofuranosyl-adenine (2F-ara-A)とした.日本人におけるリン酸フルダラビン錠(本剤)
を経口投与したときの薬物動態は本項に,外国人に本剤を経口投与したときの薬物動態は 2.7.1 の
生物製剤学及び関連する分析法に記載した.また臨床薬物動態/薬力学については,フルダラ特別
部会用資料概要又は公表文献からリン酸フルダラビン静脈内投与時の結果を引用して血漿中濃度又
は細胞内濃度と薬理学的作用との関連性を評価した.
2.7.2.1.1 ヒト生体試料を用いた in vitro 試験
2.7.2.1.1.1 報告書 AR39 及び Reichelova V et al., Journal of Liquid Chromatography
1995:18:1123-1135,蛋白結合
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p227,228
In vitro においてヒト血漿にリン酸フルダラビンの主代謝物 2F-ara-A を 0.7~17.5nmol/mL の濃
度で添加し,血漿蛋白との結合率を限外ろ過法により検討した.また 40mg/mL のヒト血清アルブミ
ン溶液に 2F-ara-A(1nmol/mL)を添加し,ヒト血清アルブミンとの結合率を平衡透析法により検討
した.
2.7.2.1.1.2 報告書 AK65 及び A07088,チトクローム P450 による代謝
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p230
5.3.2.2.2 A07088
In vitro で遺伝子工学的手法により作製したヒト肝ミクロソームの CYP3A4 及び 1A2 発現系(V79
細胞)を用いて,両分子種による[3H]2F-ara-A の代謝について検討した.またヒト肝ミクロソーム
及びヒトチトクローム P450 分子種(CYP1A2,2A6, 2C9, 2C19, 2D6, 2E1 及び 3A4)の特異的阻害剤
を用いて,これらの分子種による[14C]リン酸フルダラビン及び[14C]2F-ara-A(添加濃度はそれぞれ
25nmol/mL)の代謝について検討した.
2.7.2.1.1.3 報告書 A04249,チトクローム P450 に対する阻害作用
参照項目:5.3.2.2.3 A04249
In vitro でヒト肝ミクロソームを用いて,リン酸フルダラビン及び 2F-ara-A(添加濃度はそれぞ
れ 1~100nmol/mL)の 7 種のヒトチトクローム P450 分子種(CYP1A2,2A6, 2C9, 2C19, 2D6, 2E1 及
び 3A4)に対する阻害作用を検討した.各チトクローム P450 分子種の基質にはフェナセチン,クマ
リン,トルブタミド,S-メフェニトイン,デキストロメトロファン,クロルゾキサゾン及びテスト
ステロンをそれぞれ用いた.
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2.7.2 臨床薬理の概要
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2.7.2.1.2 臨床薬理試験
国内において低悪性度非ホジキンリンパ腫(低悪性度 NHL)患者を対象として,リン酸フルダラ
ビン経口投与時の薬物動態,安全性及び忍容性を検討するための第 I 相臨床試験を実施した.
また,海外において慢性リンパ性白血病(CLL)及び NHL 患者を対象として,リン酸フルダラビン
(静脈内投与)の安全性に及ぼす腎機能障害の影響を検討するための試験を実施した.
リン酸フルダラビンは静脈内投与後,血液中で速やかに 2F-ara-A に代謝される.その後 2F-ara-
A は細胞内に取り込まれ,活性代謝物である 2-fluoro-9-β -D-arabinofuranosyl-adenine
triphosphate(2F-ara-ATP)に代謝され,抗腫瘍効果を発揮すると考えられることから,ヒトにお
ける白血病細胞内の 2F-ara-ATP の薬物動態/薬力学との関係について,静脈内投与により検討され
た 2 つの公表論文により評価した.
2F-ara-A の構造類似体 1-β-D-arabinofuranosyl cytosine(ara-C)及びリン酸フルダラビンと
の相互作用について,静脈内投与により検討された公表論文により評価した.
2.7.2.1.2.1 報告書 A03430,国内第 I相臨床試験
参照項目:5.3.3.2.1 A03430
日本人の低悪性度 NHL 患者に,リン酸フルダラビン錠 30,40 及び 50mg/m2を 5 日間連日経口投与
したときの,2F-ara-A の薬物動態を検討した.
2.7.2.1.2.2 報告書 AT22,腎機能低下患者における海外臨床試験
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p245,246
CLL 及び NHL 患者を対象とした海外臨床試験において,クレアチニンクリアランス(CLcr)により,
患者集団を腎機能正常又は腎機能低下患者に分類し,リン酸フルダラビンを腎機能正常患者に
25mg/m2及び腎機能低下患者に 20mg/m2又は 15mg/m2を 5 日間連日静脈内投与したときの 2F-ara-A の
薬物動態を比較した.
2.7.2.1.2.3 Danhauser L et al., Cancer Chemotherapy and Pharmacology 1986:18:145-
152,2F-ara-ATP の細胞内動態
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p244,245
5.4.21 Danhauser L et al., Cancer Chemother Pharmacol 1986:18:145-152
種々の白血病患者を対象とした海外臨床研究において,リン酸フルダラビン 20~125mg/m2を静脈
内投与したときの末梢血及び骨髄から得た白血病細胞内における 2F-ara-ATP の細胞内動態について
検討した.
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2.7.2.1.2.4 Gandhi V et al., Leukemia and Lymphoma 1993:10:49-56,2F-ara-ATP の細胞
内動態
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p187,188
5.4.22 Gandhi V et al., Leuk Lymphoma 1993:10:49-56
CLL 患者を対象とした海外臨床研究において,リン酸フルダラビン 25 又は 30mg/m2を 1 日 1 回 5
日間静脈内投与したときの,白血病細胞内 2F-ara-ATP 濃度を測定し,濃度と反応(抗腫瘍効果)と
の関係を検討した.
2.7.2.1.2.5 Gandhi V et al., Journal of Clinical Oncology 1993:11:116-124,細胞内に
おける薬物動態学的薬物相互作用
参照項目:5.3.2.2.1 Gandhi V et al., J Clin Oncol 1993:11:116-124
急性骨髄性白血病(AML)を対象とした海外臨床研究において,シタラビン(ara-C)1g/m2を単独
で,又はリン酸フルダラビン 30mg/m2 を静脈内投与した後に単回静脈内投与したときの ara-C の血
漿中濃度及びその代謝物 ara-CTP の白血病細胞中濃度を測定し,ara-CTP の白血病細胞内の動態に
及ぼすリン酸フルダラビン前投与の影響を検討した.また同患者から採取した白血病細胞を用いて
in vitro で同様の検討を行った.
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2.7.2.2 個々の試験結果の要約
2.7.2.2.1 ヒト生体試料を用いた in vitro 試験
2.7.2.2.1.1 報告書 AR39 及び Reichelova V et al., Journal of Liquid Chromatography
1995:18:1123-1135,蛋白結合
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p227,228
In vitro で 2F-ara-A を最終添加濃度 0.7~17.5nmol/mL a)としたときのヒト血漿との蛋白結合率
は 19.3~29.4%であり,添加濃度によらずほぼ一定であった.また,2F-ara-A(最終添加濃度
1nmol/mL a))のヒト血清アルブミンとの結合率は,9.1±0.8%(平均値±標準偏差,n=3)であっ
た.
2.7.2.2.1.2 報告書 AK65 及び A07088,チトクローム P450 における代謝
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p230
5.3.2.2.2 A07088
In vitro で遺伝子工学的手法を用いてヒト肝ミクロソームの CYP3A4 及び 1A2 の発現系を作製し
2F-ara-A の代謝について検討したところ,2F-ara-A は両分子種では代謝されなかった.次に in vitro においてリン酸フルダラビン及び 2F-ara-A の代謝を,ヒト肝ミクロソームを用いて検討した.
ヒト肝ミクロソームに 2F-ara-A を 25nmol/mL の濃度で添加したところ,代謝物は認められなかった.
一方,リン酸フルダラビンを 25nmol/mL の濃度で添加したとき,添加量の約 3%にあたる 2F-ara-A
の生成が確認されたが,これは NADPH 依存的なものではなかった.加えてチトクローム P450 各分子
種の特異的な阻害剤を用いた検討から,その生成には CYP1A2,2A6, 2C9, 2C19, 2D6, 2E1 及び 3A4
のいずれも関与していないことが明らかとなった.
2.7.2.2.1.3 報告書 A04249,チトクローム P450 における薬物相互作用
参照項目:5.3.2.2.3 A04249
In vitro においてリン酸フルダラビン及び 2F-ara-A のチトクローム P450 分子種に対する阻害作
用を,ヒト肝ミクロソームを用いて検討した.リン酸フルダラビン及び 2F-ara-A を 1~100nmol/mL
の濃度で添加し,CYP1A2, 2A6, 2C9, 2C19, 2D6, 2E1 及び 3A4 それぞれのヒト肝ミクロソーム P450
酵素反応の典型的な基質の代謝に対する阻害率を算出した.その結果,臨床濃度 a)のリン酸フルダ
ラビン及び 2F-ara-A はともに各々の分子種における代謝経路を阻害することはなく,IC50は少なく
とも 100nmol/mL 以上であると考えられた(表 2.7.2.2.1.3- 1).
a) リン酸フルダラビン 40mg/m2を日本人の低悪性度NHL 患者に経口投与したときの Cmaxは約 1nmol/mLである.
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2.7.2 臨床薬理の概要
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フルダラ錠
表 2.7.2.2.1.3- 1 ヒト肝ミクロソーム P450 分子種に対する阻害作用
IC50(nmol/mL) 分子種 基質 酵素反応
リン酸フルダラビン 2F-ara-A
CYP1A2 フェナセチン O-脱エチル化 >100 >100
CYP2A6 クマリン 7-水酸化 >100 >100
CYP2C9 トルブタミド 4-水酸化 >100 >100
CYP2C19 S-メフェニトイン 4-水酸化 >100 >100
CYP2D6 デキストロメトロファン O-脱メチル化 >100 >100
CYP2E1 クロルゾキサゾン 6-水酸化 >100 >100
CYP3A4 テストステロン 6β-水酸化 >100 >100
最低 10名分の肝臓をプールしたヒト肝ミクロソームを用いて阻害作用を検討した.
2.7.2.2.2 臨床薬理試験
2.7.2.2.2.1 報告書 A03430,国内第 I相臨床試験
参照項目:5.3.3.2.1 A03430
日本人の低悪性度 NHL 患者に,リン酸フルダラビン 30,40 及び 50mg/m2を 5 日間連日経口投与し
たときの,主代謝物 2F-ara-A の血漿中濃度推移及び初回投与後及び 5 回投与後の薬物動態パラメー
タを図 2.7.2.2.2.1- 1及び表 2.7.2.2.2.1- 1に示す.
リン酸フルダラビン 30,40 及び 50mg/m2を初回投与したとき,2F-ara-A の血漿中濃度は投与 1~
2 時間後にそれぞれ最高濃度 1.27,1.01 及び 1.54nmol/mL に達した後,いずれも二相性に消失し,
最終相半減期(t1/2)はそれぞれ 12.0,13.2 及び 8.40 時間であった.みかけの総クリアランス
(CL/F)はそれぞれ 116,169 及び 171mL/min/m2であった.なお 30 及び 40mg/m2投与後の 2F-ara-A
の最終相における採血ポイント数はわずか 2 時点であったことより,両投与群の t1/2及び CL/F は推
定値として算出した.
リン酸フルダラビン 30,40 及び 50mg/m2を 5 日間連日経口投与したとき,5 回投与後の 2F-ara-A
の血漿中濃度は 30mg/m2の 1 症例(tmaxは投与 6 時間後)を除き投与 1~2 時間後にそれぞれ最高濃
度の 1.30,1.16 及び 2.03nmol/mL に達した後,いずれも二相性に消失し,最終相半減期はそれぞれ
12.0,14.0 及び 8.42 時間であった.CL/F はそれぞれ 89.3,122 及び 135mL/min/m2であった.30及
び 40mg/m2投与後の 2F-ara-A の t1/2及び CL/F は初回投与時と同様に推定値として算出した.
リン酸フルダラビン 30,40 及び 50mg/m2を 5 日間連日経口投与したとき,初回投与時及び 5 回投
与時の 2F-ara-A の AUC0-24hから算出した蓄積係数はそれぞれ 1.26,1.43 及び 1.29 であった.
本邦において実施された CLL 患者並びに成人 T細胞白血病(ATL)患者を対象に実施された第 I 相
試験におけるリン酸フルダラビン 15,20 及び 25mg/m2を 5 日間連日静脈内投与したときの 5 回投与
後の AUC0-24h(15mg/m2:7.68nmol・h/mL,20mg/m2:9.88nmol・h/mL,25mg/m2:13.87nmol・h/mL,
1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p236~238 参照)を用いて算出したみかけのバイオアベイ
ラビリティは 30mg/m2で 78.1%,40mg/m2で 58.2%及び 50mg/m2で 55.9%であった.
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2.7.2 臨床薬理の概要
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フルダラ錠
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
0 24 48 72 96 120
投与後時間 (h)
血漿
中2F-ara
-A
濃度
(nm
ol/
mL)
30mg/m (n=3)
40mg/m (n=6)
50mg/m (n=3)
2
2
2
図 2.7.2.2.2.1- 1 日本人の低悪性度非ホジキンリンパ腫患者にリン酸フルダラビン 30,40 及び
50mg/m2を 5 日間連日経口投与したときの 2F-ara-A の血漿中濃度推移
データは平均値±標準偏差を示す.
表 2.7.2.2.2.1- 1 日本人の低悪性度非ホジキンリンパ腫患者にリン酸フルダラビン 30,40 及び
50mg/m2を 5 日間連日経口投与したときの血漿中 2F-ara-A 濃度の薬物動態パ
ラメータ
投与量(mg/m2) 投与回数 パラメータ
30(n=3) 40(n=6) 50(n=3)
Cmax (nmol/mL) 1.27± 0.12 1.01± 0.29 1.54± 0.17
tmax (h) 1(1-2)1) 2 (1-2) 1) 2 (1-2) 1)
t1/2 (h) 12.0 ± 0.87 2) 13.2 ± 6.55 2) 8.40± 0.47
AUC0-24h (nmol・h/mL) 9.63± 1.43 8.74± 2.20 12.0 ± 1.28
AUC0-∞ (nmol・h/mL) 11.7 ± 1.75 2) 11.1 ± 1.82 2) 13.7 ± 1.43
1
CL/F (mL/min/m2) 116 ±17.3 2) 169 ±27.1 2) 171 ±18.9
Cmax (nmol/mL) 1.30± 0.31 1.16± 0.39 2.03± 0.89
tmax (h) 2(2-6) 1) 2 (1-2) 1) 2 (2-2) 1)
t1/2 (h) 12.0 ± 0.15 2) 14.0 ± 3.39 2) 8.42± 0.93
AUC0-24h (nmol・h/mL) 12.0 ± 1.14 11.5 ± 2.10 15.5 ± 3.25
AUC0-∞ (nmol・h/mL) 15.1 ± 2.08 2) 15.6 ± 3.54 2) 17.7 ± 3.33
CL/F (mL/min/m2) 89.3 ±12.4 2) 122 ±25.1 2) 135 ±25.0
BA(app) 78.1 58.2 55.9
5
蓄積係数 1.26± 0.17 1.43±0.57 1.29± 0.22
平均値±標準偏差,CL/F:みかけの総クリアランス,BA(app):みかけのバイオアベイラビリティ
1) 中央値(範囲)
2) t1/2が適切に算出できなかったため,推定値を掲載した.
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2.7.2 臨床薬理の概要
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フルダラ錠
日本人の低悪性度 NHL 患者に,リン酸フルダラビン 30,40 及び 50mg/m2を 5 日間連日経口投与し
たときの,2F-ara-A の尿中排泄率を表 2.7.2.2.2.1- 2に示す.
30,40 及び 50mg/m2を 1 日 1 回 5 日間連日経口投与したとき,投与期間中における 2F-ara-A の 1
日あたりの尿中排泄率は 28.0~45.2%であり,ほぼ一定の割合を示した.また,5 回投与後 24 時間
までの総投与量に対する 2F-ara-A の累積尿中排泄率は 30mg/m2 で 39.0%,40mg/m2 で 35.9%,
50mg/m2で 33.1%であり,いずれの投与群においても総投与量の約 30~40%であった.
表 2.7.2.2.2.1- 2 日本人の低悪性度非ホジキンリンパ腫患者にリン酸フルダラビン 30,40 及び
50mg/m2を 5 日間連日経口投与したときの 2F-ara-A の尿中排泄率
2F-ara-A の尿中排泄率(%) 時間(h)
30mg/m2 (n=3) 40mg/m2 (n=6) 50mg/m2 (n=3)
0-24 32.8±11.1 28.0±9.74 28.1±3.23
24-48 38.4±9.75 33.2±10.5 35.0±6.76
48-72 35.7±15.0 36.6±8.27 33.8±4.35
72-96 43.0±9.22 38.6±9.43 1) 32.4±11.9
96-120 45.2±6.42 41.4±6.42 1) 36.3±6.08
0-120 2) 39.0±9.38 35.9±8.67 33.1±6.22
平均値±標準偏差
1) n=5
2) 総投与量に対する%
2.7.2.2.2.2 報告書 AT22,腎機能低下患者における海外臨床試験
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p245,246
CLL 及び NHL 患者を対象とした海外臨床試験において,リン酸フルダラビンを腎機能正常患者
(クレアチニンクリアランス(CLcr):>70mL/min)に 25mg/m2 及び腎機能低下患者(CLcr:30~
70mL/min 又は<30mL/min)に 20mg/m2あるいは 15mg/m2を 5 日間連日静脈内投与したときの 2F-ara-
A の薬物動態を比較した.
腎機能正常患者における 2F-ara-A の腎クリアランス(CLr)は 54.8mL/min/m2,総クリアランス
(CLtot)は 93.0mL/min/m2であり,CLr は CLtot の約 60%であった.CLr 及び CLtot は腎機能低下
の程度に比例し,CLcr が 30~70mL/min の患者ではそれぞれ 40.6 及び 71.0 mL/min/m2,CLcr が
30mL/min 未満の腎機能低下患者ではそれぞれ 15.7 及び 41.2mL/min/m2であった.以上のように 2F-
ara-A の CLr 及び CLtot と CLcr との間には正の相関が認められた.一方,腎外クリアランスは腎機
能正常患者と腎機能低下患者との間で差はなかった(表 2.7.2.2.2.2- 1).投与量で補正した AUC
(単位投与量あたりの AUC)は,腎機能低下度がより大きい患者では,腎機能正常患者に比して最
大約 2 倍まで増加した(図 2.7.2.2.2.2- 1).
2F-ara-A の CLtot 及び CLcr の関係から,腎機能低下患者における 2F-ara-A の全身曝露を腎機能
正常患者と同等とするための投与量補正係数(FD)は FD=0.4+0.01×CLcr の式により算出されるこ
とが示された.
- 29 -
2.7.2 臨床薬理の概要
改訂版 01 Page 11 of 29
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表 2.7.2.2.2.2- 1 海外臨床試験において白血病の腎機能低下患者にリン酸フルダラビン 15,20
及び 25mg/m2を 1 日 1回 5 日間連日静注したときの血漿中 2F-ara-A 濃度の薬
物動態パラメータ
群 腎機能正常
(CLcr:>70mL/min)
腎機能低下
(CLcr:30~70mL/min)
腎機能低下
(CLcr:<30mL/min)
投与量(mg/m2/日) 25 20 15
n 9~10 8~9 2
CLcr (mL/min/m2) 61.5±26.5 47.5±11.2 14.1
t1/2 (h) 20.1±4.1 21.9±4.1 24.2
AUC0-24h (nmol・h/mL) 13.43±4.80 13.40±3.11 17.09
CLr (mL/min/m2) 54.8±22.0 40.6±10.0 15.7
CLnr (mL/min/m2) 36.6±21.1 33.5±13.1 25.5
CLtot (mL/min/m2) 93.0±36.9 71.0±18.4 41.2
平均値±標準偏差
CLcr:クレアチニンクリアランス
CLr:腎クリアランス
CLnr:腎外クリアランス
CLtot:総クリアランス
図 2.7.2.2.2.2- 1 海外臨床試験において白血病の腎機能低下患者にリン酸フルダラビン 15,20
及び 25mg/m2を 1 日 1回 5 日間連日静注したときの 2F-ara-A の AUC(投与量換
算)とクレアチニンクリアランスとの関係
19 症例のデータを示す.
- 30 -
2.7.2 臨床薬理の概要
改訂版 01 Page 12 of 29
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2.7.2.2.2.3 Danhauser L et al., Cancer Chemotherapy and Pharmacology 1986:18:145-
152,2F-ara-ATP の細胞内動態
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p244,245
5.4.21 Danhauser L et al., Cancer Chemother Pharmacol 1986:18:145-152
種々の白血病患者を対象とした海外臨床研究において,リン酸フルダラビン 20~125mg/m2 を 30
分間静脈内投与により単回投与したとき,白血病細胞内 2F-ara-ATP 濃度は投与 3.5 時間後に最高濃
度 33~169nmol/mL(各投与量の中央値)を示し,その後約 13.5~15.3 時間(各投与量の中央値)
の半減期で減少した(表 2.7.2.2.2.3- 1).細胞内における 2F-ara-ATP 濃度は血漿中 2F-ara-A 濃
度の約 20 倍高かった.白血病細胞内における 2F-ara-ATP の Cmax 及び AUC(いずれも中央値)は投
与量の増加に比例して直線的に増加し,半減期は投与量によらず一定であった.
また,リン酸フルダラビン投与 12~14 時間後に採取した白血病細胞を[methyl-3H]thymidine 存
在下でインキュベートし,細胞内の 2F-ara-ATP 濃度と DNA 合成能との関係を検討したところ,両者
は逆比例の関係にあり,2F-ara-ATP の濃度が高い白血病細胞では DNA への放射能の取り込みは低
かった.細胞内の 2F-ara-ATP 濃度が 90nmol/mL 以上の場合,DNA 合成能力は 20%以下であった(図
2.7.2.2.2.3- 1).
表 2.7.2.2.2.3- 1白血病患者を対象とした海外臨床研究においてリン酸フルダラビン 20~125mg/m2
を 30 分静脈内投与により単回投与したときの白血病細胞内 2F-ara-ATP 濃度
投与量
(mg/m2)
Cmax
(nmol/mL)
t1/2
(h)
AUC
(nmol・h/mL)
20(n=2),25(n=2) 33 (15~ 51) 15.3 (13.3~>24.0) 540 (220~ 840)
50 (n=4) 82 (47~147) 13.5 (10.7~>24.0) 1060 (700~2060)
100(n=2),125(n=2) 169 ( 1~757) 15.0 ( 5.2~>24.0) 3015 ( 10~6050)
中央値(範囲)
- 31 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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図 2.7.2.2.2.3- 1 細胞内 2F-ara-ATP 濃度と DNA 合成能力との関係
2.7.2.2.2.4 Gandhi V et al., Leukemia and Lymphoma 1993:10:49-56, 2F-ara-ATP の細胞
内動態
参照項目:1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p187,188
5.4.22 Gandhi V et al., Leuk Lymphoma 1993:10:49-56
CLL 患者を対象とした海外臨床研究において,リン酸フルダラビン 25 又は 30mg/m2を 1 日 1 回 5
日間連日静脈内投与したときの,白血病細胞内 2F-ara-ATP 濃度を測定した.
リン酸フルダラビンを静脈内投与したとき,白血病細胞内 2F-ara-ATP 濃度は,投与 4 時間後に最
大濃度(中央値,範囲)の 19nmol/mL(6~52nmol/mL)に達し,約 23 時間の半減期で減少した.リ
ン酸フルダラビンに対する反応(抗腫瘍効果)により,患者を完全寛解(CR,n=8),部分寛解(PR,
n=5)及び無効(F,n=10)のサブグループに分類し,細胞内 2F-ara-ATP のパラメータを比較したと
ころ,個体間変動が非常に大きく,奏効例(完全及び部分寛解)と無効例との間に差は認められな
かった(図 2.7.2.2.2.4- 1).
しかしながら CLL 患者から採取した白血病細胞を用いて細胞外の 2F-ara-A の曝露量と細胞内にお
ける 2F-ara-ATP 濃度との関係について,in vitro 試験から評価したところ,白血病細胞内におけ
る 2F-ara-ATP 濃度はインキュベーション時の細胞外 2F-ara-A 濃度とインキュベーション時間(濃
度×インキュベーション時間)に依存して直線的に増加した(図 2.7.2.2.2.4- 2).
細胞内 2F-ara-ATP濃度(nmol/mL)
放射能
の取
り込
み率
(%
)
- 32 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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図 2.7.2.2.2.4- 1 CLL 患者を対象とした海外臨床試験においてリン酸フルダラビン 25又は
30mg/m2を 1 日 1 回 5日間静脈内投与したときの白血病細胞内 2F-ara-ATP 濃度(初回投与時)と反
応(抗腫瘍効果)との関係
Cmaxが 5nmol/mL 以下の症例はすべてのパラメータの評価から除いた.
24 時間にCmaxを示した症例は t1/2及び AUC の評価から除いた
2F-ara-A (nmol・min/mL)
2F-a
ra-A
TP(n
mol
/mL)
図 2.7.2.2.2.4- 2 細胞内 2F-ara-ATP 濃度と細胞外 2F-ara-A 濃度及びインキュベーション時間と
の関係
2.7.2.2.2.5 Gandhi V et al., Journal of Clinical Oncology 1993:11:116-124,細胞内に
おける薬物動態学的薬物相互作用
参照項目:5.3.2.2.1 Gandhi V et al., J Clin Oncol 1993:11:116-124
急性骨髄性白血病(AML)患者(5 症例)を対象とした海外臨床研究において,ara-C 1mg/m2 を
単独で 2 時間静脈内投与した.投与終了 18 時間後にリン酸フルダラビン 30mg/m2を 30 分間で点滴
Cmax(nmol/mL)
t1/2(h)
AUC(nmol・h/mL)
- 33 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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静脈内投与し,引き続き,その 3 時間 30 分後に ara-C 1mg/m2を 2 時間静脈内投与した.ara-C の血
漿中濃度及び ara-CTP の白血病細胞内濃度を測定し,白血病細胞内 ara-CTP の動態に及ぼすリン酸
フルダラビン前投与の影響を検討した.
リン酸フルダラビン前投与により,血漿中の ara-C 及び ara-C の脱アミノ代謝物
arabinosyluracil(ara-U)の濃度推移に影響は認められなかった.一方,白血病細胞中における
ara-CTP の AUC はリン酸フルダラビンの前投与により ara-C 単独投与時の 1.8 倍(1.6~2.4 倍)ま
で有意に上昇した(p=0.004).ara-CTP の白血病細胞からの消失速度にはリン酸フルダラビン前投
与の影響は認められなかった.
- 34 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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2.7.2.3 全試験を通しての結果の比較と解析
(1) 吸収
1) リン酸フルダラビン経口投与時の薬物動態
外国人の低悪性度 NHL 又は CLL の患者において,クロスオーバー法により求めたリン酸フルダラ
ビン錠経口投与時における血漿中 2F-ara-A のバイオアベイラビリティは約 60%であった.経口投
与時及び静脈内投与時における血漿中 2F-ara-A の半減期に投与経路による差は認められなかった
(2.7.1.2.1.3 報告書 AN60,反復投与試験 参照).2F-ara-A の AUC は用量比に応じて上昇した.
また食事の影響はわずかであった(2.7.1.2.1.5 報告書 AZ85,単回投与試験(食事の影響)参
照).
2) 日本人及び外国人におけるリン酸フルダラビンの薬物動態の比較
リン酸フルダラビンは本邦では既に注射剤として承認されており,静脈内投与時における 2F-
ara-A の薬物動態パラメータを日本人と外国人との間で比較検討した結果,両者はほぼ同じであっ
た(1.13.3 フルダラ特別部会用資料概要 p236~244 参照).
今回,経口剤の申請に際して,日本人にリン酸フルダラビン 30,40 及び 50mg/m2を経口投与した
試験(2.7.2.2.2.1 報告書 A03430,国内第 I 相臨床試験 参照)から得られた薬物動態パラメー
タを外国人における 2 つの経口投与臨床試験における薬物動態パラメータと比較した.比較に用い
た臨床試験の概要を表 2.7.2.3- 1 に示す.
表 2.7.2.3- 1 日本人及び外国人にリン酸フルダラビンを経口投与したときの 2F-ara-A の薬物動
態パラメータを比較した臨床試験の概要
試験番号 304500 MEC*101/12 MED*079
報告書番号 A03430 AN611) AZ852)
実施場所 日本 英国 英国
被験者数 12 18 16
対象疾患 低悪性度 NHL B-CLL,
低悪性度 NHL
B-CLL,
低悪性度 NHL
腎機能 正常 正常 正常
投与量 30,40,50mg/m2 50,70,90mg 90mg
採血点数 7(24 時間まで) 14(24時間まで) 15(24時間まで)
分析法 HPLC,蛍光検出 HPLC,蛍光検出 HPLC,蛍光検出
薬物動態パラメータ
と算出法 AUC0-24h:台形法 AUC0-24h:台形法 AUC0-24h:台形法
NHL 非ホジキンリンパ腫
B-CLL B 細胞性慢性リンパ性白血病
1) 2.7.1.2.1.4 報告書 AN61,単回投与試験 参照
2) 2.7.1.2.1.5 報告書 AZ85,単回投与試験(食事の影響)参照
- 35 -*新薬承認情報提供時に置き換え
2.7.2 臨床薬理の概要
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比較には 2F-ara-A の AUC0-24hを用いた.日本人及び外国人の AUC0-24hと投与量(個々の体表面積で
補正)の関係を図 2.7.2.3- 1 に示す.
外国人にリン酸フルダラビン 22~64mg/m2 を経口投与したときの 2F-ara-A の AUC0-24h は,個体間
変動が非常に大きかったものの,ほぼ用量に比例して直線的に上昇した.一方,日本人では,本剤
30 及び 40mg/m2を経口投与したときの AUC0-24hの平均値は同程度であったが,個別データはすべて外
国人のデータの範囲内に分布したことから,これらは個体間変動の範囲内であると判断し,日本人
と外国人におけるリン酸フルダラビン経口投与後の薬物動態に相違はなく,日本人の場合にも AUC0-
24hは用量にほぼ比例して増加するものと考えられた.
リン酸フルダラビン錠を日本人患者に経口投与したときの薬物動態パラメータには大きな個体間
変動が認められたが,その変動の程度は,国内で B 細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)患者並びに
成人 T 細胞白血病・リンパ腫(ATL)患者を対象にリン酸フルダラビン注射剤を用いて実施された第
I 相試験での静脈内投与後の 2F-ara-A の薬物動態パラメータと同程度であった.またこの現象はリ
ン酸フルダラビンに特有のものではなく,全てのヌクレオシド類縁物質で見られるものである.
0
5
10
15
20
25
30
0 20 40 60 80
投与量(mg/m2)
AUC0-24h(nmol・h/mL)
図 2.7.2.3- 1 リン酸フルダラビンを単回経口投与したときの血漿中 2F-ara-A 濃度の薬物動態パ
ラメータにおける日本人と外国人との比較
●:報告書 A03430,□:報告書 AN61 白人,△:報告書 AZ85 白人
なお,本剤 30,40 及び 50mg/m2を経口投与したときのみかけのバイオアベイラビリティはそれぞ
れ 78.1,58.2 及び 55.9%であり,いずれも 50%以上の値を示したことから,経口剤 50mg/m2 以上
を用いた場合,注射剤での最大投与量 25mg/m2 と比較して全身曝露が大きくなる可能性が示唆され
た.30mg/m2 を経口投与したときのみかけのバイオアベイラビリティは 40 及び 50mg/m2 と比較して
高かったが,これは,30mg/m2群のすべての症例における AUC が外国人における AUC の上限に分布し
たためであると考えられる.一方,40 及び 50mg/m2 を経口投与したときのみかけのバイオアベイラ
- 36 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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ビリティは外国でリン酸フルダラビン錠を用いて実施された 2 つのクロスオーバー試験からそれぞ
れ算出されたバイオアベイラビリティ 57.1%及び 55.5~57.5%とほぼ同等の値を示した.
3) リン酸フルダラビンの体内動態に及ぼす腎障害の影響
リン酸フルダラビンは投与後,血液中で速やかに 2F-ara-A に代謝され主に尿中に排泄される.そ
こで腎機能障害が 2F-ara-A のクリアランスに及ぼす影響について検討した.
外国人の CLL 及び NHL 患者を対象とするリン酸フルダラビンの臨床試験において,クレアチニン
クリアランス(CLcr)で分類した腎機能正常患者(CLcr:>70mL/min)に 25mg/m2 及び腎機能低下
患者(CLcr が 30~70mL/min 又は<30mL/min)に 20 又は 15mg/m2を 5 日間連日静脈内投与したとき
の 2F-ara-A の薬物動態を比較したところ,2F-ara-A の総クリアランス(CLtot)及び腎クリアラン
ス(CLr)と CLcr との間には正の相関が認められた.すなわち CLcr の低下に伴って,CLtot 及び
CLr は低下した.また米国において L. Malspeis らが実施した白血病患者を対象とした試験におい
ても,同様の結果が示されている.この試験では腎機能低下患者(血清クレアチニン:>1.5mg/dL,
又は CLcr:<70mL/min)の CLtot は 51.82mL/min/m2(平均値 n=7)であり,腎機能正常患者の
73.52mL/min/m2(平均値 n=22)と比較して有意に低い値を示している 1).以上の結果から,腎機能
低下患者においては腎機能正常患者と 2F-ara-A の曝露量を等しくするため,腎機能の低下に応じた
投与量の減量を行う必要があると考えられる.腎機能低下患者における補正係数(FD:腎機能低下
患者における投与量/標準投与量)は FD=0.4+0.01×CLcr の式により算出可能であり(1.13.3 フ
ルダラ特別部会用資料概要 p245 参照),承認されている注射剤の添付文書には禁忌及び用法・用
量の項に関連した記述がある(図 2.7.2.3- 2).
図 2.7.2.3- 2 腎機能障害患者への投与に関するリン酸フルダラビン注射剤添付文書の記述
表 2.7.2.3- 2 に示した投与量減量基準は,静脈内投与時における 2F-ara-A の CLtot と CLcr の関
係式から算出されたものである.CLtot は全身循環血に入った総薬物量/AUC に対して定義されてい
るものであり,投与経路に依存しないため,経口投与時にも同じ関係式が利用可能である.投与量
減量の目安は表 2.7.2.3- 2 に示すとおりである.
1) Malspeis L et al., Semin Oncol 1990:17:18-32
- 37 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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表 2.7.2.3- 2 腎機能障害患者への経口投与時におけるリン酸フルダラビン投与量減量の目安
クレアチニンクリアランス(mL/分)
70 50 30
1 日用量
(1 日あたりの錠数)
0.45-0.73 0.53-0.86 0.65-1.05 20mg(2 錠)
0.74-1.01 0.87-1.20 1.06-1.47 30mg(3 錠)
1.02-1.30 1.21-1.54 1.48-1.88 40mg(4 錠)
1.31-1.58 1.55-1.88 1.89-2.30 50mg(5 錠)
1.59-1.87 1.89-2.21 2.31-2.71 60mg(6 錠)
1.88-2.16 2.22-2.55 2.72-3.13 70mg(7 錠)
体表面積
(m2)
2.17-2.44 2.56-2.89 3.14-3.54 80mg(8 錠)
4) リン酸フルダラビンの体内動態に及ぼす加齢の影響
CLL 及び本剤の適応症である低悪性度 NHL は高齢患者が多いとされる.4 つのバイオアベイラビリ
ティに関する試験(2.7.1 生物薬剤学及び関連する分析法の概要 参照)においては 90%の患者
が 50 歳以上,更に 40%以上の患者が 65 歳以上であった(表 2.7.2.3- 3).したがって,これまで
に集積されたヒトにおける薬物動態パラメータは主として高齢者から得られていることから,高齢
者集団を対象とした臨床試験は行われていない.
一般的に加齢による影響は肝代謝及び腎排泄過程に現れる可能性があるが,ヒト肝ミクロソーム
を用いた実験結果から,肝薬物代謝に関わる P450 分子種はリン酸フルダラビンの代謝に関与してい
ないことが明らかである(2.7.2.2.1.2 報告書 AK65 及び A07088,チトクローム P450 における代
謝 参照).一方でリン酸フルダラビンは血液中で速やかに主代謝物 2F-ara-A に脱リン酸化された
後,主に尿中へ排泄されることから,腎機能は主代謝物 2F-ara-A の消失過程に重要であり,前項
3)でまとめたように腎障害は 2F-ara-A のクリアランスに大きく影響する(2.7.2.2.2.2 報告書
AT22,腎機能低下患者における海外臨床試験 参照).高齢者に投与するときには患者個人のクレ
アチニンクリアランスを考慮することが推奨される.
表 2.7.2.3- 3 代表的な臨床試験における患者の年齢分布
試験番号
報告書番号
TB03-1105
A891
BL03-1109
AM95
KIB*133/MEB*204
AN60
MEC*101/1287
AN61
患者総数 12 17 19 27
40 歳未満 1 0 0 2
40~49歳 1 1 2 1
50~64歳 4 8 11 13
65 歳以上 6 8 6 11
平均年齢(範囲) 61(36~77) 64(43~79) 60(40~84) 61(38~75)
- 38 -*新薬承認情報提供時に置き換え
2.7.2 臨床薬理の概要
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(2) 分布
1) 活性代謝物 2F-ara-ATP の細胞内動態及び薬物動態/薬力学の関係
リン酸フルダラビンは投与後血液中で速やかに 2F-ara-A に代謝された後,細胞内に取り込まれ,
活性代謝物である 2F-ara-ATP に代謝され抗腫瘍効果を発揮すると考えられる. L.Danhauser らに
よる臨床研究において,2F-ara-ATP の白血病細胞内濃度はリン酸フルダラビンの用量依存的に上昇
した(2.7.2.2.2.3 Danhauser L et al., Cancer Chemotherapy and Pharmacology 1986:18:145-
152,2F-ara-ATP の細胞内動態 参照).また V.Gandhi らによる CLL 患者の白血病細胞を用いた in vitro 試験では,白血病細胞内における 2F-ara-ATP 濃度は細胞外の 2F-ara-A の曝露量(AUC:濃度
×インキュベーション時間)に依存して直線的に増加した(2.7.2.2.2.4 Gandhi V et al.,
Leukemia and Lymphoma 1993:10:49-56, 2F-ara-ATP の細胞内動態 参照).以上の結果は,リン
酸フルダラビンの投与量,血漿中 2F-ara-A 濃度及び細胞内 2F-ara-ATP 濃度の相関を示すものと考
えられた.また,細胞内の 2F-ara-ATP は血漿中の 2F-ara-A の約 20 倍高い値を示し,標的細胞にお
けるリン酸フルダラビンの活性代謝物 2F-ara-ATP の濃縮は明らかであった.
L.Danhauser らの臨床研究において,リン酸フルダラビン静脈内投与 12~14 時間後に循環血より
採取した白血病細胞における DNA への基質取り込み能は,細胞内 2F-ara-ATP 濃度に逆相関しており,
2F-ara-ATP 濃度が高い白血病細胞では基質の取り込み量が低かった.これはリン酸フルダラビンの
効力発現の前提条件として,細胞内の 2F-ara-ATP の濃縮が必要なことを示している.実際に,細胞
内における 2F-ara-ATP 濃度が約 90nmol/mL に維持された場合に,DNA 合成は最大 80%まで阻害され
て い た ( 2.7.2.2.2.3 Danhauser L et al., Cancer Chemotherapy and Pharmacology
1986:18:145-152,2F-ara-ATP の細胞内動態 参照).
一方,V.Gandhi らの臨床研究では,CLL 患者に治療域のリン酸フルダラビンを投与した後の白血
病細胞内における 2F-ara-ATP の動態と抗腫瘍効果との関係に関して検討した結果,Cmax及び AUC な
どの薬物動態学的パラメータは大きな個体間変動を示し,奏効例及び無効例の各グループ間で明ら
かな差は認められなかった(2.7.2.2.2.4 Gandhi V et al., Leukemia and Lymphoma 1993:10:49-
56, 2F-ara-ATP の細胞内動態 参照).
以上の結果から,血漿中における 2F-ara-A の AUC と細胞内における活性代謝物 2F-ara-ATP の蓄
積に相間が認められ,更に 2F-ara-ATP 濃度に対して,細胞内における DNA の合成能力が逆相関して
いたことは,リン酸フルダラビンの投与量,血漿中 2F-ara-A 濃度並びに細胞内 2F-ara-ATP 濃度と
薬理作用の関連性を明確に示すものであった.一方,細胞内における活性代謝物 2F-ara-ATP 濃度と
抗腫瘍効果については明確な関係は認められなかったことから,本剤の抗腫瘍効果は薬物動態とは
別の要因が関与する可能性が示唆されたが,検討された例数が少なく,詳細については明らかでは
ない.
2) 血漿蛋白結合
リン酸フルダラビンはヒト血漿中で速やかに 2F-ara-A に代謝されることから,2F-ara-A の血漿
蛋白結合率を測定したところ,0.7~17.5nmol/mL の範囲で,19.3~29.4%であった.ヒト血清アル
ブミン(1nmol/mL)との結合率は 9.1%であり,そのときの血漿蛋白との結合率は,14%であった
ことから,2F-ara-A の蛋白結合にはアルブミン以外の蛋白質の関与も推察された(2.7.2.2.1.1
報告書 AR39 及び Reichelova V et al., Journal of Liquid Chromatography 1995:18:1123-1135,
蛋白結合 参照).
- 39 -
2.7.2 臨床薬理の概要
改訂版 01 Page 21 of 29
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フルダラ錠
(3) 代謝
投与されたリン酸フルダラビンは,血液中で速やかに脱リン酸化され,2F-ara-A となる.2F-
ara-A はアデノシン輸送系により細胞内に能動的に取り込まれ,細胞内でデオキシシチジンキナー
ゼにより,一リン酸体に代謝され,最終的に三リン酸体となり DNA に取り込まれる.
2F-ara-A はこれまでに検討したすべての動物種における血漿/血清中の主代謝物であり,尿中に
排泄される.静脈内投与 24 時間後までに,ヒト(日本人:CLL 患者)尿中には投与量の 28.9~
64.0%が 2F-ara-A として排泄され、マウス,ラット及びイヌ(それぞれ投与量の 89.4,26.8~
38.5 及び 41.5%)と同様に,ヒト尿中においても主代謝物であることが明らかにされている a)
(2.6.4.5.3 推定代謝経路 参照).日本人の低悪性度 NHL 患者にリン酸フルダラビンを経口投与
したとき,投与 24 時間後までの尿中には,投与量の 28.0~45.2%が 2F-ara-A として排泄され
(2.7.2.2.2.1 報告書 A03430,国内第 I 相臨床試験 参照),これは経口投与時のバイオアベイ
ラビリティを考慮した場合,静脈内投与時とほぼ同等と考えられた.
また,ヒト尿中には静脈内投与 24 時間後までに,2F-ara-A のアデノシン 6 位のアミノ基が脱ア
ミノ化された代謝物 2-fluoro-9-β-D-arabinofuranosyl-hypoxanthine(2F-ara-Hx)が,投与量の
2.1~17.3%排泄された.2F-ara-Hx についても検討したすべての動物種における血漿/血清中に認
められ,マウス,ラット及びイヌでは,静脈内投与 24 時間後までに,尿中にそれぞれ投与量の
10.0,22.4~36.9 及び 44.2%が排泄されることが明らかになっている a)(2.6.4.5.3 推定代謝経
路 参照).2F-ara-Hx の尿中排泄率はラット及びイヌでは 2F-ara-A と同程度であり,尿中におけ
る主代謝物であったのに対して,ヒト及びマウスでは,2F-ara-A と比較して排泄率は低かった.
2F-ara-Hx は経口投与後のヒト尿中にも静脈内投与時と同様に排泄されていると考えられるが,静
脈内投与時の排泄率を超えることはないものと推察される.
マウス臓器中及びイヌ尿中にわずかに確認された 2F-adenine は,M. Hersh ら(NCI)による臨床
試験 1)において,7 例中 2 例の尿中に検出されたとの報告があるが,日本人の患者に静脈内投与し
たときの尿中には検出されなかった.
In vitro でリン酸フルダラビン及び 2F-ara-A の代謝をヒト肝ミクロソームを用いて検討したと
ころ,ヒト肝ミクロソームの関与は認められなかった.ミクロソームには CYP 分子種が存在してお
り,これら分子種は肝臓に加えて消化管にも存在し,経口剤のバイオアベイラビリティに大きく影
響することが良く知られている.しかしながら本剤の代謝には CYP 分子種は関与していなかったこ
とから,初回通過効果は小さいものと考えられた.
臨床試験及び非臨床薬物動態試験の結果から推定したリン酸フルダラビンの代謝経路を図
2.7.2.3- 3 に示す.
a) ヒトにおける尿中排泄率は 5日間連日投与期間中の各投与 24 時間後まで,マウス,ラット及びイヌにおける尿
中排泄率は単回投与 24時間後までの値を示す.
1) Hersh M et al., Cancer Chemotherapy and Pharmacology 1986:17:277-280(5.4.14 参照)
- 40 -
2.7.2 臨床薬理の概要
改訂版 01 Page 22 of 29
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フルダラ錠
図 2.7.2.3- 3 リン酸フルダラビンの推定代謝経路
N.D. 検出されず.
N
NN
NF
NH2
OH
HOH
H H
(HO)2OPO O
H
N
NN
NF
O
OH
HOH
H H
HO O
H
H
N
NN
NF
NH2
OH
HOH
H H
HO O
H
N
N N
NF
NH2
OH
HOH
H HH O
O
P O O
H
H O
O
P O
H O
O
P O H O
リン酸フルダラビン
(2F-ara-AMP)
尿中排泄率(投与量%)
マウス 1.1%(i.v.)
ラット N.D.(i.v. p.o.)
2.2-3.0%(i.v.)
イヌ 1.7%(i.v.)
2F-ara-A
尿中排泄率(投与量%)
マウス 89.4%(i.v.)
ラット 20.2-20.7%(p.o.)
26.8-38.5%(i.v.)
イヌ 41.5%(i.v.)
ヒト 28.0-45.2%(p.o.)
28.9-64.0%(i.v.)
2F-ara-Hx
尿中排泄率(投与量%)
マウス 10.0%(i.v.)
ラット 19.1-22.9%(p.o.)
22.4-36.9%(i.v.)
イヌ 44.2%(i.v.)
ヒト 2.1-17.3%(i.v.)
2F-ara-ATP
マウス 細胞内代謝物としてマウス
白血病細胞に高濃度に存在
ヒト 細胞内代謝物としてヒト白
血病細胞及び骨髄に高濃度
に存在
2F-adenine
尿中排泄率(投与量%)
マウス N.D.(i.v.)
ラット N.D.(i.v. p.o.)
イヌ 1.6%(i.v.)
ヒト 一部の臨床試験で確認
N
NN
NF
NH2
H
2F-adenosine 2F-ATP
マウス 細胞内代謝物としてマウス
白血病細胞に高濃度に存在
ホスファターゼ
デオキシシチジンキナーゼ
アデノシンデアミナーゼ
グリコシダーゼ
デオキシシチジンキナーゼ グリコシルトランスフェラーゼ
N
NN
NF
NH2
H
HOOH
H HHO
O
P O O
HHO
O
P O
HO
O
P OHO
N
NN
NF
NH2
OH
H
OH
H H
HO O
H
- 41 -
2.7.2 臨床薬理の概要
改訂版 01 Page 23 of 29
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フルダラ錠
(4) 排泄
腎臓は 2F-ara-A の排泄に関わる主要臓器である.ヒトにおける 2F-ara-A の尿中排泄について,
経口投与及び静脈内投与時における尿中排泄率のデータが得られている 2 つのクロスオーバー法に
よるバイオアベイラビリティ試験の結果から考察した(2.7.1.2.1.2 報告書 AM95,反復投与試験
及び 2.7.1.2.1.3 報告書 AN60,反復投与試験 参照).両者の尿中排泄率の結果を表 2.7.2.3- 4
に示す.
いずれの試験においても総クリアランス(CLtot)のおよそ 40%が腎クリアランス(CLr)にあた
り,投与経路によらず一定であった.
AM95 の試験(2.7.1.2.1.2 報告書 AM95,反復投与試験 参照)では,リン酸フルダラビン 5 回
投与後 24 時間までの定常状態における CLtot は 117mL/min,CLr は経口投与で 53mL/min 及び静脈内
投与で 46mL/min であった.2F-ara-A の血漿蛋白結合率は 19.3~29.4%であることから,非結合型
分率を 0.75 と仮定すると,非結合型の CLr は経口投与で 71mL/min 及び静脈内投与で 61mL/min に換
算でき,クレアチニンクリアランス(CLcr)の 67.2mL/min とほぼ一致した.したがって,2F-ara-A
の排泄は腎糸球体ろ過が主経路となっているものと推察された.腎機能障害患者におけるリン酸フ
ルダラビンの CLr が CLcr と相関していることもこれを支持するものである(2.7.2.2.2.2 報告書
AT22,腎機能低下患者における海外臨床試験 参照).
表 2.7.2.3- 4 クロスオーバー法による 2 つのバイオアベイラビリティ試験における経口投与及び
静脈内投与時の腎排泄クリアランス
試験番号 BL03-1109 KIB*133/MEB*204
報告書番号 AM95 AN60
実施場所 米国 ドイツ
被験者数 16 19
対象疾患 CLL, NHL,
頭頚部癌患者 CLL, 低悪性度 NHL
投与量(mg/日) 50 50
CLcr(mL/min) 67.2±25.0 -
投与経路 経口投与 静脈内投与 経口投与 静脈内投与
CLtot(mL/min) - 1) 117±40 - 145±35
CLr(mL/min) 53±26 46±18 66±27 63±20
尿中排泄率 (0-8 日)(%) - - 43.0±8.4 24.1±12.0
尿中排泄率 (5 日)(%) 25.5±8.5 40.4±14.6 - -
- 算出していない又は該当しない.
1) みかけの CLtot につき,ここでは記載しない.
(5) 薬物動態学的相互作用
リン酸フルダラビンの血漿中における主代謝物 2F-ara-A の血漿蛋白結合率はヒトで 19.3~
29.4%と低く,添加濃度によらず一定であること,リン酸フルダラビン及び代謝物 2F-ara-A はチト
- 42 -*新薬承認情報提供時に置き換え
2.7.2 臨床薬理の概要
改訂版 01 Page 24 of 29
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クローム P450 により代謝されず,また阻害作用も示さないことから,蛋白結合及び肝薬物代謝酵素
の競合/阻害による薬物動態学的相互作用が発現する可能性は低いものと考えられた.
一方,V.Gandhi らは,AML 患者を対象にした試験で,リン酸フルダラビンを前投与し,次いで
ara-C を静脈内投与したところ,白血病細胞内 ara-CTP 濃度の上昇が認められたと報告している
(2.7.2.2.2.5 Gandhi V et al., Journal of Clinical Oncology 1993:11:116-124,細胞内にお
ける薬物動態学的薬物相互作用 参照).また,AML 患者から採取した白血病細胞を用いた in
vitro での検討,更には K562 を用いて行った in vitro の検討結果 1)もリン酸フルダラビンの前処
置により,細胞内 ara-CTP 濃度が上昇することを示している.このとき細胞内 ara-CTP 濃度の消失
半減期はリン酸フルダラビンの前処理の有無によらず同じであったことから,リン酸フルダラビン
による細胞内 ara-CTP 濃度の上昇は,ara-CTP の消失の遅延ではなく,細胞内への蓄積が高まった
結果であると推察される.このようにリン酸フルダラビンの前処置により in vivo 及び in vitro の
両者で ara-CTP の白血病細胞内濃度の上昇が認められた.一方,ara-C 並びに脱アミノ化した代謝
物 ara-U の血漿中濃度推移にリン酸フルダラビン前処置の影響は認められなかった.
リン酸フルダラビンによる細胞内の ara-CTP 濃度上昇の推定経路を図 2.7.2.3- 4 に示す.2F-
ara-ATP はリボヌクレオチドリダクターゼ及び NTP シンセターゼを阻害し,細胞内のデオキシヌク
レオシド三リン酸(dCTP,dATP)及び核酸合成量を減少させる.その結果,dCTP 増加によるデオキ
シシチジンキナーゼのネガティブフィードバック機構が抑制され,デオキシシチジンキナーゼ活性
が高まり,ara-CTP の生成が促進されるものと考えられる.
以上より,リン酸フルダラビンは,デオキシシチジンキナーゼにより活性化される他のヌクレオ
シド誘導体の細胞内代謝物濃度を上昇させる可能性が示唆された.
1) Gandhi V et al., Cancer Research 1988:48:329-334
- 43 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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図 2.7.2.3- 4 リン酸フルダラビンにおける細胞内の ara-CTP 濃度上昇の推定調節機構
ara-CTP
ara-CDP
ara-CMP 2F-ara-AMP
2F-ara-A
リン酸フルダラビン
(2F-ara-AMP)
ara-C
ネガティブ
フィードバック
dADP
DNA
dATP
デオキシシチジン
キナーゼ
デオキシシチジン
キナーゼ
NTP シンセターゼ
リボヌクレオチド
リダクターゼ
デオキシシチジン
キナーゼ
2F-ara-ATP
2F-ara-ADP
dCTP
dCDP
CDP
CMP
Cytidine
ADP
AMP
Adenosine
- 44 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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2.7.2.4 特別な試験
該当なし.
- 45 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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2.7.2.5 付録
以下の表を示す.
表 2.7.2.5.1 臨床薬物動態試験の要約
- 46 -
2.7.2 臨床薬理の概要
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表 2.7.2.5.1 臨床薬物動態試験の要約
投与 試験薬の薬物動態学的パラメータ,
平均値(標準偏差) 試験番号
(国) 試験の目的
試験の
デザイン
被験者数
登録数/
完了数
対象疾患
試験薬 相互
作用薬
Cmax
(nmol/mL)
tmax
(h)
AUC0-24h
(nmol・h/mL)
t1/2
(h)
CL
(mL/min/m2)
試験報告書
添付場所
Vol./Section
30mg/m2 初回投与後
1.27
(0.12)
1
(1-2) 1)9.63
(1.43)
12.0
(0.87)
116
(17.3)
30mg/m2 5 回投与後
1.30
(0.31)
2
(2-6) 1)12.0
(1.14)
12.0
(0.15)
89.3
(12.4)
40mg/m2 初回投与後
1.01
(0.29)
2
(1-2) 1)8.74
(2.20)
13.2
(6.55)
169
(27.1)
40mg/m2 5 回投与後
1.16
(0.39)
2
(1-2) 1)11.5
(2.10)
14.0
(3.39)
122
(25.1)
50mg/m2 初回投与後
1.54
(0.17)
2
(1-2) 1)12.0
(1.28)
8.40
(0.47)
171
(18.9)
50mg/m2 5 回投与後
304500
(日本)
日本人における
経口投与時の
薬物動態
非盲検,
多施設 12/12
低悪性度
NHL
リン酸
フルダラビン
30-50mg/m2
1 日 1回,
5日間連日
経口投与
-
2.03
(0.89)
2
(2-2) 1)15.5
(3.25)
8.42
(0.93)
135
(25.0)
A03430
2/5.3.3.2.1
25mg/m2 CLcr 61mL/min/m2
- - 13.4
(4.8)
20
(4)
93
(37)
20mg/m2 CLcr 47mL/min/m2
- - 13.4
(3.1)
22
(4)
71
(18)
15mg/m2 CLcr 14mL/min/m2
BL03-
4107
(米国)
腎障害が薬物動態
に及ぼす影響
非盲検,
多施設,
静脈内投与
22/22 CLL,NHL
リン酸
フルダラビン
15-25mg/m2
1 日 1回,
5日間連日
静脈内投与
-
- - 17.1 24 41
AT22
既提出資料
- 47 -
2.7.2 臨床薬理の概要
改訂版 01 Page 29 of 29
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表 2.7.2.5.1 薬物動態試験の要約(続き)
投与 試験薬の薬物動態学的パラメータ、
平均値(標準偏差) 試験番号
(国) 試験の目的
試験の
デザイン
被験者数
登録数/
完了数
対象疾患
(平均年齢,
年齢範囲) 試験薬 相互
作用薬
Cmax
(nmol/mL)
tmax
(h)
AUC0-24h
(nmol・h/mL)
t1/2
(h)
CL
(mL/min/m2)
試験報告書
添付場所
Vol./Section
フルダラ錠
血漿中 2F-ara-A 濃度
- -
15,37
(50, 100-
125mg/m2)
7.76,
7.89
(50, 100-
125m)
-
細胞内 2F-ara-ATP濃度 臨床研究
(米国)
2F-ara-A の血中動
態及び 2F-ara-ATP
の細胞内濃度
- 19/12
AML,
ALL,
CLL 等
リン酸
フルダラビン
20-125mg/m2
1 日 1回,
5日間連日
静脈内投与
-
33, 82, 169
(20-25, 50,
100-125
mg/m2)
-
540, 1060,
3015
(20-25, 50,
100-125
mg/m2)
15.3, 13.5,
15.0
(20-25, 50,
100-
125mg/m2)
-
Danhauser L et
al., Cancer
Chemotherapy
and
Pharamacology
1986:18:145-152
既提出資料
6/5.4.21
臨床研究
(米国)
2F-ara-ATPの細胞
内濃度及び反応と
の関連性
- 24/23 CLL
リン酸
フルダラビン
25,30mg/m2
1 日 1回,
5日間連日
静脈内投与
- - 2) - - 2) - -
Gandhi V et
al., Leukemia
and Lymphoma
1993:10:49-56
既提出資料
6/5.4.22
細胞内 ara-CTP 濃度比(リン酸フルダラビン投与後/前)
臨床研究
(米国)
リン酸フルダラビンが
ara-C の薬物動態
に及ぼす影響
- 5/5 AML
リン酸
フルダラビン
30mg/m2
単回静脈内
投与
ara-C
1g/m2
単回静脈
内投与1.5-1.9 1) - 1.6-2.4 1) 0.8-1.2 1) -
Gandhi V et
al., Journal of
Clinical
Onclology
1993:11:116-124
1/5.3.2.2.1
-:記載されていない又は該当しない,AML:急性骨髄性白血病,ALL:急性リンパ性白血病
1):範囲を示す.
2):文献中に血漿中濃度が図示されているのみ.
- 48 -