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経済産業省資源エネルギー庁委託 平成 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業) 調査報告書 平成 30 3 一般財団法人日本自動車研究所

29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

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経済産業省資源エネルギー庁委託

平成 29 年度省エネルギー政策立案のための

調査事業

(自動車単体対策に係る調査検討事業)

調査報告書

平成 30 年 3 月

一般財団法人日本自動車研究所

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《研究担当者一覧》

担当部署: エネルギ・環境研究部

Project Manager: 平井洋

Project Chief: 鈴木徹也

第 1 章担当: 鈴木徹也

第 2 章担当: 平井洋、鈴木徹也、沖山清美

第 3 章担当: 鈴木徹也、沖山清美

第 4 章担当: 鈴木徹也、平井洋

第 5 章担当: 平井洋、鈴木徹也

第 6 章担当: 鈴木徹也

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目次

第 1 章 はじめに ............................................................................................................. 1

1.1 調査の背景および目的 .......................................................................................... 1

1.2 実施内容 ............................................................................................................... 1

第 2 章 自動車の 新状況の整理 .................................................................................... 4

2.1 様々なカテゴリー別での新車生産台数の推移 ....................................................... 4

2.2 諸元値と燃費との関係の解析 .............................................................................. 17

2.2.1 燃費に影響する因子の検討 ........................................................................... 17

2.2.2 燃費規制における基本指標の検討 ................................................................ 31

2.3 Well to Wheel 分析に関する基礎情報 ................................................................. 35

2.3.1 Well to Wheel 分析の概要 ............................................................................. 35

2.3.2 Well to Wheel 分析の主要原単位 .................................................................. 38

2.3.3 Well to Wheel 分析の主要文献 ...................................................................... 39

第 3 章 自動車に関する省エネ情報の提供の在り方の検討............................................ 43

3.1 自動車ユーザーの省エネ性能への関心 ............................................................... 43

3.2 自動車の商流における省エネ情報の提供状況 ..................................................... 44

3.2.1 WLTC モード燃費表示 .................................................................................. 45

3.2.2 次世代自動車の情報提供 .............................................................................. 52

3.2.3 店頭展示車のモード燃費表示 ....................................................................... 59

3.2.4 欧米における省エネ情報の提供状況 ............................................................. 65

3.3 自動車ユーザーへのより訴求力のある情報提供の在り方 ................................... 67

第 4 章 エコドライブ支援ツールによる行動変容の効果検証及びその継続性に関する

検討 .................................................................................................................. 69

4.1 燃費データの解析によるエコドライブ支援ツールの効果検証 ............................ 69

4.2 運転手のエコドライブ支援ツールの利用の継続性に関する検討 ......................... 86

第 5 章 「エコドライブ 10 のすすめ」見直しの検討 .................................................... 89

5.1 「第 2 章 自動車の 新状況の整理」結果の反映 ............................................... 89

5.2 「第 4 章 エコドライブ支援ツールによる行動変容の効果検証及びその継続性に

関する検討結果」の反映 .................................................................................... 91

5.3 「エコドライブ 10 のすすめ」見直しの検討まとめ ............................................ 93

第 6 章 まとめ ............................................................................................................... 94

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第1章 はじめに

1.1 調査の背景および目的

近年の内外におけるエネルギー消費量の著しい増加、国際的な地球環境問題への関心

の高まり等の状況の下、エネルギー消費と密接に関連する地球温暖化問題等の解決に向

け、エネルギー需要の伸びを低い水準で抑えていくことが喫緊の課題となっている。

平成 26 年 4 月に策定されたエネルギー基本計画において、「運輸部門については、自

動車に係るエネルギーの消費量がその大部分を占めており、その省エネルギー化が重要」

との記載が盛り込まれている。

平成 27 年 8 月 28 日に公表された「省エネルギー小委員会 取りまとめ」(以下、「取

りまとめ」という。)において、「欧米の国際動向(規制、国際調和排出ガス・燃費試験

方法(WLTP)の導入)及び乗用自動車等のモデルチェンジサイクルや次世代自動車の

技術開発状況等の調査を踏まえ、野心的な世界 高水準の自動車単体対策の実現を目指

すべき」とされており、引き続き次世代自動車も含めた運輸部門の省エネルギー対策に

取り組むことが必要である。

加えて、同取りまとめでは、実際の走行時の省エネ対策(エコドライブ)の普及促進

が必要であるとしており、自動車メーカー等においては、運転者に対してエコドライブ

を支援するツール(例えば、インジケータ表示やランキングの表示)が開発され、車体

に搭載が始まっており、エコドライブによる燃費向上が期待できる。

そこで、本調査では、自動車単体対策とエコドライブの効果について、国際的な動向

を踏まえつつ、野心的な世界 高水準の自動車単体対策とエコドライブの普及に向けた

調査・検討等を行うことを目的とする。

1.2 実施内容

上記の調査の背景および目的に基づいて、本件調査では以下の実施内容が仕様書にお

いて提示された。

(1)自動車の 新状況の整理

① 自動車の省エネルギー対策の検討に必要になる、2016年度までの新車生産台数(重

量区分別、ガソリン車/ディーゼル車/LPG車/EV/PHV/FCVの別、2WD/4WDの別、

軽自動車/登録車の別、従来車/ハイブリッド車の別、AT/MT/CVT/AMT・DCT の

別、自動アインドリングストップ、エネルギー回生、アダプティブ・クルーズ・

コントロール、タイヤ空気圧監視システム等の技術の搭載の別等)及び保有台数

について、既存の統計情報等を活用して整理する。その他、福祉車両、中古車、

リース車・レンタカーの観点についても整理すること。

② 従来車等の重量別や車幅別、輪距・軸距別等と燃費との関係を解析する。当該調

査の(5)の調査報告書の作成に当たっては、当該(1)②の部分を英訳し、別途

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ネイティブチェックする。なお、解析のための車の基礎データは、資源エネルギー

庁担当者より提供する。

③ 原動機が異なる車両のエネルギーの生産プロセスを考慮したエネルギー消費性能

について比較可能な同一の単位で整理・分析する。そのため、欧米・中国の規制

における運用方法(規制値及び達成判断の方法)や、各種エネルギー原単位等の

既存の論文等を整理し、その換算に用いる数値を複数検討し、メリット・デメリッ

ト等を整理する。

(2)自動車に関する省エネ情報の提供の在り方の検討

運輸部門の省エネルギー対策を推進するに当たり、製造事業者に対して省エネ性を確

保した自動車を積極的に販売させるだけではなく、消費者に対する省エネ性能の訴求や

自動車ユーザーにとって関心の高い省エネ性能を提供していくことが重要である。そこ

で、自動車ユーザーが省エネルギーの観点で乗用車を購入する際に、どのような情報提

供を必要とするかの整理を行う。

① 既存の情報等を用い、自動車ユーザーの省エネ性能への関心の大きさを整理する。

② 自動車の商流の整理(販路や販売店におけるカタログや展示車等での情報提供の

状況の整理)や、欧米の表示規制や表示に関する調査等の状況を整理する。

③ ①、②を踏まえ、自動車ユーザーにより訴求力のある、省エネ情報(ランニング

コストやセービングコストを含む)の具体的な情報提供の項目及び方式を検討す

る。なお、検討においては、自動車の販売に関わる業界団体にヒアリング調査等

を行うこと。

(3)エコドライブ支援ツールによる行動変容の効果検証及びその継続性に関する検討

① 燃費データの解析によるエコドライブ支援ツールの効果検証

テレマティクスデータ等を保有する企業等から、燃費に関するデータを入手し、

エコドライブ支援ツールの利用の有無による効果を検証する。検証に当たっては

「平成 28 年度省エネルギー設備導入等促進事業(エコドライブ普及推進事業)」を

踏まえて行う。入手するデータ数については、車種の違い、ドライバーの違い、

季節等の違いによる効果の変動やエコランキングなどのドライバー間に競争意識

やゲーム感覚を与えた場合の効果を捉えられる数とすること。

② 運転手のエコドライブ支援ツールの利用の継続性に関する検討

上述の効果検証作業の際、ドライバーの利用の継続性や効果の継続性に関し、既

存の研究やすでに実施されている取り組みの整理、自動車メーカー3 社程度へのヒ

アリング等をすることで、ユーザーの継続性を保つための方策を提案すること。

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(4)「エコドライブ 10 のすすめ」(平成 24 年度)見直しの検討

① (1)の結果の反映

自動アイドリングストップ機能の普及や次世代自動車の普及割合状況等から「エ

コドライブ 10 のすすめ」への追加等の検討項目を整理すること。なお、検討にお

いては、有識者 3 名程度へのヒアリング等をすること。

② (3)の結果の反映

「エコドライブ 10 のすすめ」の 10 番目「自分の燃費を把握しよう」について、上

記(3)で検討した結果から定量的な効果の記載を加える見直し案を提案すること。

(5)調査報告書等の作成

上記(1)から(4)で検討した事項を踏まえ、検討結果の公表用資料及び簡潔に調査

報告書を作成する。

以上の仕様書に則り本事業を推進した。ただし、外部からのデータの入手が一部不可

能になるなど当初の想定とは違う状況が事業実施中にいくつか生じたので、その都度、

資源エネルギー庁の担当官と協議し、先述の目的に合致するよう実施内容を調整して実

行した。詳細は各章を参照されたい。

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第2章 自動車の 新状況の整理

本章では、野心的な世界 高水準の自動車単体対策を検討する際の基礎データを整備

する。2.1 節では近年採用率が高まっている燃費向上技術などに着目して、様々なカテ

ゴリー別での新車生産台数の推移をまとめる。2.2 節では米国の燃費規制で反映されて

いるフットプリントを含めた各種諸元値と燃費の関係を解析する。2.3 節では Well to

Wheel 分析の考え方や主要な原単位などについてまとめる。

2.1 様々なカテゴリー別での新車生産台数の推移

資源エネルギー庁を通じて一般社団法人日本自動車工業会から統計を入手できた範囲

で、2016 年までの乗用車の新車生産台数(次世代自動車と福祉車両は新車販売台数)を

整理した。カテゴリーは以下の通りである。

・ 重量区分

・ 燃料(ガソリン、ディーゼル、LPG)

・ 次世代自動車(HEV、PHEV、EV、CDV(クリーンディーゼル車)、FCV)

・ 駆動(2WD、4WD)

・ 車格(軽自動車、登録車)

・ 燃費向上技術

ハイブリッド

トランスミッション(AT、MT、CVT、AMT・DCT)

自動アイドリングストップ

エネルギー回生

・ 福祉車両

重量区分別の新車生産台数の推移を示す。ガソリン乗用車は表 2.1-1、図 2.1-1、ディー

ゼル乗用車は表 2.1-2、図 2.1-2 である。重量は JC08 モードにおける重量区分の等価慣

性重量である。また、LPG 乗用車は表 2.1-3、図 2.1-3 である。重量は 10・15 モードに

おける重量区分の等価慣性重量である。

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表 2.1-1 重量区分別のガソリン乗用車の新車生産台数

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-1 重量区分別のガソリン乗用車の新車生産台数

(単位︓台)年度 800kg 910kg 1,020kg 1,130kg 1,250kg 1,360kg 1,470kg 1,590kg 1,700kg 1,810kg 1,930kg 2,040kg 2,150kg 2,270kg 2,500kg 計1996 403,771 605,066 378,515 505,882 476,338 527,900 564,496 651,384 272,945 190,765 29,840 35,142 3,492 3,977 173 4,649,6861997 311,897 639,371 461,588 362,928 413,685 401,867 487,013 532,957 328,437 182,685 48,656 77,212 24,735 14,670 4,850 4,292,5511998 204,160 662,407 549,140 423,482 372,896 335,747 432,366 581,570 264,637 169,530 38,021 54,317 27,989 5,910 8,864 4,131,0361999 139,834 812,936 627,710 475,266 341,714 323,930 323,286 498,348 393,112 179,788 32,891 49,120 44,436 6,951 7,265 4,256,5872000 136,181 764,033 666,258 589,868 440,466 347,948 332,156 508,622 387,710 251,603 77,488 29,081 39,026 16,028 7,788 4,594,2562001 87,520 848,995 554,288 630,052 358,689 325,529 280,392 571,253 411,282 201,022 44,005 31,208 32,573 14,362 5,708 4,396,8782002 72,321 877,122 558,926 749,193 513,402 303,652 273,979 454,637 322,139 144,328 27,787 87,007 62,329 18,198 7,008 4,472,0282003 87,610 774,069 612,814 535,330 550,066 365,461 326,389 381,791 282,072 258,382 28,060 100,855 54,753 15,825 5,498 4,378,9752004 99,502 746,255 710,388 525,640 613,641 363,094 274,562 358,453 288,164 270,552 26,554 130,096 47,953 23,798 5,064 4,483,7162005 113,936 749,618 599,743 548,885 614,500 361,297 199,562 360,968 301,692 332,133 21,240 129,444 56,388 24,225 4,889 4,418,5202006 105,333 774,132 687,414 508,213 550,987 386,112 211,085 264,081 258,844 292,620 31,606 117,789 58,535 19,016 2,802 4,268,5692007 90,321 653,583 646,256 535,634 426,959 416,289 209,377 261,684 255,271 346,383 32,899 97,584 33,460 24,500 13,000 4,043,2002008 91,275 675,059 660,717 532,072 372,516 400,720 117,748 175,337 339,835 95,308 56,135 88,864 33,694 6,817 7,310 3,653,4072009 96,425 606,260 632,437 534,697 450,896 371,963 396,358 206,439 407,123 101,168 60,633 100,325 29,144 14,993 4,447 4,013,3082010 76,715 531,109 642,315 467,091 396,126 306,498 354,048 173,032 346,205 95,156 44,095 94,879 28,799 10,742 4,568 3,571,3782011 156,086 557,055 612,444 472,940 445,569 289,137 347,410 290,504 324,924 89,908 42,827 79,250 26,316 17,946 4,733 3,757,0492012 181,111 720,868 691,902 572,787 566,283 219,026 299,539 250,676 236,594 160,955 48,284 87,571 27,434 22,973 6,150 4,092,1532013 188,721 881,927 701,144 536,162 567,402 222,941 255,320 272,846 251,707 203,080 87,810 86,889 28,899 20,573 6,507 4,311,9282014 168,707 793,290 754,567 540,356 523,397 267,447 201,466 206,423 358,736 179,040 78,544 52,912 28,845 19,278 5,130 4,178,1382015 179,167 597,853 603,624 406,936 422,919 212,845 264,283 158,817 330,963 172,605 66,864 49,674 55,098 37,529 8,134 3,567,3112016 157,973 479,858 720,166 406,226 367,677 223,883 436,573 225,903 296,972 167,308 64,709 73,104 56,367 29,418 7,678 3,713,815

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

900,000

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ガソリ

ン乗⽤

⾞の

新⾞

⽣産

台数

(軽+

普通

)

年度

800kg

910kg

1,020kg

1,130kg

1,250kg

1,360kg

1,470kg

1,590kg

1,700kg

1,810kg

1,930kg

2,040kg

2,150kg

2,270kg

2,500kg

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表 2.1-2 重量区分別のディーゼル乗用車の新車生産台数

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-2 重量区分別のディーゼル乗用車の新車生産台数

(単位︓台)年度 800kg 910kg 1,020kg 1,130kg 1,250kg 1,360kg 1,470kg 1,590kg 1,700kg 1,810kg 1,930kg 2,040kg 2,150kg 2,270kg 2,500kg 計2000 105 4,627 3,883 111 2,903 178 4,184 3,811 7,816 16,244 16,891 60,7532001 3,901 2,368 71 1,175 64 1,669 2,408 3,209 9,354 10,300 34,5192002 1,588 583 67 174 157 1,071 674 2,951 3,443 10,7082003 850 346 64 80 873 132 1,950 2,222 6,5172004 11 2 15 53 341 71 1,388 926 2,8072005 26 1,701 109 1,8362006 2,184 2,1842007 1,090 1,0902008 1,961 650 436 3,0472009 3,119 451 203 3,7732010 6,436 1,201 562 8,1992011 1,637 1,697 4,418 1,439 682 9,8732012 24,706 14,503 4,178 4,295 1,064 431 49,1772013 33,463 13,618 3,916 7,809 1,235 594 60,6352014 23,271 10,024 2,630 16,845 17,740 1,750 7,305 978 487 84,2972015 2,907 24,593 29,868 8,606 5,072 27,164 9,461 11,991 3,856 123,5182016 1,485 12,994 13,598 12,334 4,174 20,367 5,122 8,307 6,759 1,837 86,977

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

ディー

ゼル

乗⽤

⾞の

新⾞

⽣産

台数

年度

800kg

910kg

1,020kg

1,130kg

1,250kg

1,360kg

1,470kg

1,590kg

1,700kg

1,810kg

1,930kg

2,040kg

2,150kg

2,270kg

2,500kg

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表 2.1-3 重量区分別の LPG 乗用車の新車生産台数

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-3 重量区分別の LPG 乗用車の新車生産台数

(単位︓台)年度 750kg 875kg 1,000kg 1,250kg 1,500kg 1,750kg 2,000kg 2,250kg 2,500kg 計2004 1,005 27,557 28,5622005 736 27,044 27,7802006 643 24,159 24,8022007 502 23,340 23,8422008 410 19,458 19,8682009 518 12,161 12,6792010 6,487 6,4872011 10,076 10,0762012 13,383 13,3832013 13,919 13,9192014 15,161 15,1612015 10,471 10,4712016 12,126 12,126

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

LPG乗

⽤⾞

の新

⾞⽣

産台

年度

750kg

875kg

1,000kg

1,250kg

1,500kg

1,750kg

2,000kg

2,250kg

2,500kg

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8

燃料別(ガソリン、ディーゼル、LPG)の乗用車新車生産台数の推移を表 2.1-4、図

2.1-4 に示す。

表 2.1-4 燃料別の乗用車の新車生産台数

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-4 燃料別の乗用車の新車生産台数

(単位︓台)年度 ガソリン ディーゼル LPG1996 4,649,6861997 4,292,5511998 4,131,0361999 4,256,5872000 4,594,256 60,7532001 4,396,878 34,5192002 4,472,028 10,7082003 4,378,975 6,5172004 4,483,716 2,807 28,5622005 4,418,520 1,836 27,7802006 4,268,569 2,184 24,8022007 4,043,200 1,090 23,8422008 3,653,407 3,047 19,8682009 4,013,308 3,773 12,6792010 3,571,378 8,199 6,4872011 3,757,049 9,873 10,0762012 4,092,153 49,177 13,3832013 4,311,928 60,635 13,9192014 4,178,138 84,297 15,1612015 3,567,311 123,518 10,4712016 3,713,815 86,977 12,126

0500,000

1,000,0001,500,0002,000,0002,500,0003,000,0003,500,0004,000,0004,500,0005,000,000

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

乗⽤

⾞の

新⾞

⽣産

台数

年度

ガソリン

ディーゼル

LPG

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9

次世代自動車の販売台数の推移を表 2.1-5、図 2.1-5 に示す。

表 2.1-5 次世代自動車の販売台数

(出所)一般社団法人日本自動車販売協会連合会、一般社団法人全国軽自動車協会連合会

図 2.1-5 次世代自動車の販売台数

(単位︓台)年度 HEV PHEV EV CDV FCV 計2007 89,255 89,2552008 110,271 1,964 112,2352009 451,804 1,587 3,119 456,5102010 447,055 6,983 8,169 462,2072011 630,040 3,742 11,226 10,020 655,0282012 854,684 13,178 13,889 47,741 929,4922013 1,011,188 12,932 15,271 61,437 1,100,8282014 946,173 13,492 14,506 81,872 102 1,056,1452015 1,021,338 12,736 12,642 120,022 494 1,167,2322016 1,333,908 9,686 12,718 88,814 1,204 1,446,330

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1,400,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

次世

代⾃

動⾞

の新

⾞販

売台

年度

HEV

PHEV

EV

CDV

FCV

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10

ガソリン乗用車とディーゼル乗用車の新車生産台数における 2WD と 4WD の比率の

推移を表 2.1-6、図 2.1-6 に示す。

表 2.1-6 2WD と 4WD の比率

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-6 2WD と 4WD の比率

ガソリン乗⽤⾞ ディーゼル乗⽤⾞2WD 4WD 2WD 4WD

1991 90.3% 9.7%1992 88.7% 11.3%1993 88.1% 11.9%1994 82.6% 17.4%1995 79.6% 20.4% 46.8% 53.2%1996 77.5% 22.5%1997 77.6% 22.4% 42.2% 57.8%1998 77.2% 22.8%1999 77.7% 22.3% 37.3% 62.7%2000 78.3% 21.7% 40.3% 59.7%2001 77.5% 22.5% 43.6% 56.4%2002 80.1% 19.9% 46.0% 54.0%2003 80.2% 19.8% 47.1% 52.9%2004 81.3% 18.7% 26.7% 73.3%2005 79.8% 20.2% 0% 100%2006 79.9% 20.1% 0% 100%2007 81.0% 19.0% 0% 100%2008 83.0% 17.0% 0% 100%2009 86.1% 13.9% 0% 100%2010 85.3% 14.7% 0% 100%2011 84.3% 15.7% 16.6% 83.4%2012 84.1% 15.9% 50.8% 49.2%2013 83.0% 17.0% 56.7% 43.3%2014 82.1% 17.9% 67.1% 32.9%2015 80.6% 19.4% 56.7% 43.3%2016 81.0% 19.0% 58.2% 41.8%

年度

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

新⾞

⽣産

台数

の⽐

年度ガソリン_4WD ガソリン_2WD

ディーゼル_4WD ディーゼル_2WD

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11

軽自動車と登録車(普通車・小型車)の新車生産台数の推移を表 2.1-7、図 2.1-7 に示

す。

表 2.1-7 軽自動車と登録車の新車生産台数

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-7 軽自動車と登録車の新車生産台数

(単位︓台)年度 軽⾃動⾞ 登録⾞1996 951,557 3,698,1291997 911,409 3,381,1421998 1,058,182 3,072,8541999 1,268,161 2,988,4262000 1,278,181 3,316,0752001 1,290,774 3,106,1042002 1,280,268 3,191,7602003 1,324,491 3,054,4842004 1,365,493 3,118,2232005 1,413,964 3,004,5562006 1,555,077 2,713,4922007 1,377,218 2,665,9822008 1,404,768 2,248,6392009 1,256,734 2,756,5742010 1,185,114 2,386,2642011 1,262,844 2,494,2052012 1,599,724 2,492,4292013 1,792,596 2,519,3322014 1,800,501 2,377,6372015 1,417,155 2,150,1562016 1,292,054 2,421,761

0

500,000

1,000,000

1,500,000

2,000,000

2,500,000

3,000,000

3,500,000

4,000,000

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

新⾞

⽣産

台数

年度

軽⾃動⾞

登録⾞

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12

ガソリン乗用車の新車生産台数におけるハイブリッド技術採用率の推移を図 2.1-8 に

示す。

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-8 ガソリン乗用車のハイブリッド技術採用率

ガソリン乗用車とディーゼル乗用車の新車生産台数におけるトランスミッションの種

類別比率を表2.1-8、図2.1-9 ガソリン乗用車のトランスミッション種類別比率、図2.1-10

に示す。

0%0%0%0.6%

0.3%0.3%

0.6%0.3%

1.0%1.5%

1.4%2.1%

2.2%3.2%

11.6% 12.4%

17.7%20.4%

22.8%25.5%

30.8%

35.8%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%19

9519

9619

9719

9819

9920

0020

0120

0220

0320

0420

0520

0620

0720

0820

0920

1020

1120

1220

1320

1420

1520

16

ガソリ

ン乗⽤

⾞の

ハイブ

リッド採

⽤率

年度

Page 16: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

13

表 2.1-8 乗用車のトランスミッション種類別比率

(注)CVT:自動無段変速機、AMT:Automated Manual Transmission、 DCT:Dual Clutch Transmission

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-9 ガソリン乗用車のトランスミッション種類別比率

ガソリン乗⽤⾞ ディーゼル乗⽤⾞年度 MT AT CVT AMT/DCT 年度 MT AT CVT AMT/DCT1996 16.6% 79.6% 3.9% - 19961997 12.7% 82.5% 4.8% - 1997 10.1% 89.9% 0% 0%1998 11.3% 82.9% 5.7% - 19981999 9.9% 83.8% 6.3% - 1999 5.5% 94.5% 0% 0%2000 7.8% 84.3% 7.9% - 2000 5.6% 94.4% 0% 0%2001 6.3% 82.0% 11.7% - 2001 5.8% 94.2% 0% 0%2002 5.9% 80.1% 14.0% - 2002 5.4% 94.6% 0% 0%2003 5.1% 80.9% 14.0% - 2003 4.0% 96.0% 0% 0%2004 4.4% 76.2% 19.4% - 2004 0.1% 99.9% 0% 0%2005 3.9% 69.3% 26.7% - 2005 0% 100% 0% 0%2006 3.4% 66.1% 30.5% - 2006 0% 100% 0% 0%2007 3.2% 54.1% 42.5% 0.16% 2007 0% 100% 0% 0%2008 2.8% 49.3% 47.7% 0.15% 2008 64.4% 35.6% 0% 0%2009 2.4% 30.7% 66.9% 0.04% 2009 82.7% 17.3% 0% 0%2010 2.1% 23.8% 74.0% 0.04% 2010 10.8% 89.2% 0% 0%2011 1.6% 17.8% 80.5% 0.02% 2011 7.1% 92.9% 0% 0%2012 1.8% 10.6% 87.5% 0.02% 2012 3.0% 97.0% 0% 0%2013 1.4% 7.2% 88.9% 2.58% 2013 5.7% 94.3% 0% 0%2014 1.3% 5.2% 88.1% 5.40% 2014 7.1% 92.9% 0% 0%2015 1.8% 6.1% 87.2% 4.90% 2015 5.0% 95.0% 0% 0%2016 1.6% 7.1% 86.2% 5.07% 2016 4.0% 96.0% 0% 0%

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ガソ

リン乗

⽤⾞

のトラ

ンス

ミッシ

ョン種

類別

⽐率

年度MT AT CVT AMT/DCT

Page 17: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

14

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-10 ディーゼル乗用車のトランスミッション種類別比率

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

ディー

ゼル

乗⽤

⾞の

トラン

スミッ

ション

種類

別⽐

年度MT AT CVT AMT/DCT

Page 18: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

15

ガソリン乗用車の新車生産台数におけるアイドリングストップ採用率の推移を図2.1-11

に、エネルギー回生技術採用率の推移を図 2.1-12 に示す。

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-11 ガソリン乗用車のアイドリングストップ採用率

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-12 ガソリン乗用車のエネルギー回生技術採用率

0% 0.6%0.3%

0.3%0.6%

0.4%1.0%

1.5%1.4%

2.1%2.2%

3.3%

12.2% 15.8%

32.3%

56.5%

73.3%

85.2%87.0%

87.1%

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%19

9519

9619

9719

9819

9920

0020

0120

0220

0320

0420

0520

0620

0720

0820

0920

1020

1120

1220

1320

1420

1520

16

ガソリ

ン乗⽤

⾞の

アイドリ

ングスト

ップ採

⽤率

年度

17.4%

27.4%29.5%

35.7%

33.2%

33.7% 36.9%

41.9%

53.9%

68.4% 68.3% 68.0%68.6%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

ガソ

リン乗

⽤⾞

のエ

ネル

ギー

回⽣

技術

採⽤

年度

Page 19: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

16

福祉車両の販売台数の推移を表 2.1-9、図 2.1-13 に示す。福祉車両には、車いす移動

車、昇降シート車、回転シート車、運転補助装置付車、送迎車などがある。

表 2.1-9 福祉車両の販売台数

(出所)一般社団法人日本自動車工業会

図 2.1-13 福祉車両の販売台数

年度 普通・⼩型⾃動⾞ 軽⾃動⾞1995 3,032 7371996 4,986 1,5521997 7,901 2,1611998 11,857 1,9381999 17,200 4,0752000 20,353 5,3132001 21,807 7,8802002 24,234 8,8682003 27,821 9,7852004 27,502 9,4912005 27,595 9,2472006 26,072 8,9342007 23,276 8,3522008 22,184 8,1762009 21,925 8,1112010 21,856 8,7032011 23,090 9,4912012 25,129 14,0412013 24,366 15,4712014 25,004 18,5602015 23,398 15,8372016 24,380 13,796

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

福祉

⾞両

の販

売台

年度

軽⾃動⾞

普通・⼩型⾃動⾞

Page 20: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

17

2.2 諸元値と燃費との関係の解析

2.2.1 燃費に影響する因子の検討

2.2.1.1 理論的・工学的側面

ガソリンを燃料とする通常の内燃機関の乗用車(Conventional vehicle:CV、コンベ

車)とハイブリッド乗用車(HV)の燃費に影響を与える因子を工学的な観点から検討

した。ここで検討した因子は、自工会から提供を受けた諸元データセット(諸元データ

セット)から得られる以下の項目とその項目の組み合わせとした。

国内では、燃費は通常、km/L で表記されるが、この 2.2 節では、単位距離あたりの

使用エネルギーと相関の高い L/100km の単位で表記する。

表 2.2-1 諸元データセットから求められた項目

(1) 走行に必要なエネルギー

自動車の燃費は、走行に必要なエネルギー、エンジンの効率、駆動系の伝達効率、回

生機構のエネルギー変換効率によって定まる。

走行に必要なエネルギー(走行エネルギー)は、JC08 及び WLTC モード法において

は、加速に必要なエネルギー、転がり抵抗で消費されるエネルギー、空気抵抗で消費さ

れるエネルギーからなり、以下の式で表される。

走行エネルギー J m⁄ 車両質量 kg 加速度 m s⁄

転がり抵抗係数 車両質量 kg 重力加速度 m s⁄

+ 1 2 ρ kg m⁄⁄ C 前面投影面積 m 速度 m s⁄

この式から、走行エネルギーに影響する諸元データセットから得られる因子として、以

下のものがあげられる。

表記内容、表記単位ハイブリッド機構の有無 有/無 (有はマイルドハイブリッドを含む)

総排気量 cc

車両重量 kg

駆動方式 2WD/4WD

変速機 AT/MT/CVT/AMT/その他

全長 mm

全幅 mm

全高 mm

客室内側長さ mm

客室内側幅 mm

客室内側高さ mm

ホイールベース mm

トレッド(前) mm

トレッド(後) mm

最低地上高 mm

燃費(JC08モード) L/100km

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18

抵抗の種類 走行エネルギーに影響する因子

加速抵抗 車両質量1

転がり抵抗 車両質量

空気抵抗 前面投影面積、抗力係数(Cd)

なお Cd(Coefficient of drag)は、以下の因子により影響を受ける可能性がある。

Cd 「前面投影面積/全長」「全高/全長」「 低地上高」

(2) エンジンの熱効率

エンジンの熱効率は、以下の式で表される。

エンジンの熱効率 エンジン仕事量 J 燃料消費エネルギー J

エンジンの熱効率に影響する諸元データセットから得られる因子は、以下のものがあ

げられる。

エンジンの熱効率に影響する因子

エネルギー損失 総排気量

回転数・負荷の使用

領域

車両重量に対する総排気量(排気量/車両重量)、ハ

イブリッド機構の有無

(3) 駆動系の動力伝達効率

駆動系の動力伝達効率は、以下の式で表される。

駆動系の動力熱効率 変速機内の動力伝達効率 変速機以降の動力伝達効率

駆動系の動力伝達効率に影響を与える諸元データセットから得られる因子は、以下のも

のがあげられる。

駆動系の動力効率に影響する因子

変速機内の動力伝

達効率

変速機種類(AT,CVT など)

変速機以降の動力

伝達効率

駆動方式(2WD,4WD)

(4) 回生機構のエネルギー変換効率(回生機構の有無)

回生機構のエネルギー変換効率は、以下の式で表される。

回生機構のエネルギー変換効率

バッテリーエネルギー増加量 J 減少した運動エネルギー J

この式から、回生機構のエネルギー変換効率に影響を与える諸元データセットから得ら

1 車両質量:諸元に記載される車両重量は、車両質量が重力加速度を受けることによる力を表してお

り、単位は kgf である。そのため、ここでは正確を期して車両質量(kg)とした。車両質量と車両重量は

数値は同じなので、1.2 項以降は、諸元値の記載と一致させるため「車両重量」の表記とした。

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19

れる因子はない。そこで、回生機構の有無を、諸元データセットから得られる因子であ

るハイブリッド機構の有無と同じとした。

回生機構のエネルギー変換効率に影響する因子

回生機構の有無 ハイブリッド機構の有無を回生機構の有無

2.2.1.2 燃費影響因子の単回帰による燃費への影響の大きさの検討

(1) 燃費影響因子

JC08 モード燃費を目的変数とし、また、上述の工学的観点から燃費に影響を与え、

諸元データセットから得られる各因子を、説明変数とした。

説明変数とした各因子を表 2.2-2 に示す。

表 2.2-2 単回帰の説明変数一覧

(2) ガソリン車(コンベ車+HV)に関する検討

ガソリンを燃料とする車両の大部分を占めるコンベ車と HV に共通の燃費影響因子を

検討した2。

表 2.2-3 に各説明変数と燃費(目的変数)との決定係数の値(目的変数を何割くらい

説明しているかの値)と決定係数の大きさの順位を示す。総排気量、車両重量、前面投

影面積の順となった。

総排気量は、エンジン熱効率にかかわる因子であり、さらに走行エネルギーに強く影

響を与える車両重量とも相関が高い因子(決定係数 0.82)であることから、 も高い相

関(大きい決定係数)を持つと考えられる。車両重量は、走行エネルギーに強く影響を

与える因子であることから、高い相関を持ったと考えられる。前面投影面積は、空気抵

抗と関わる因子であり燃費に影響すると考えられるが、JC08 モードの平均速度を考慮

すると空気抵抗により燃費との相関を持ったのではなく、車両重量と高い相関(決定係

2 ここでは、変速機種類は AT と CVT のみ検討した。その他の変速機種類は、型式数の占める割合が

少ない(AMT:0.1%、DCT:0.9%、MT:2.7%)こと、変速機種類は燃費影響因子の上位に入らな

いこと、3 変数以上のダミー変数として設定するのが困難であることから分析から除外した。

車両重量 kg前面投影面積 m2

前面投影面積/全長全高/全長

最低地上高 m総排気量 cc

排気量/車両重量 cc/kg変速機 CVT=0,AT=1

駆動方式 2WD=0,4WD=1ハイブリッドの有無 無=0,有=1

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20

数 0.82)があることにより燃費と高い相関を持ったと考えられる。

表 2.2-3 JC08 燃費と各因子の決定係数とその大きさの順位(コンベ車+HV)

(3) ガソリン車(コンベ車)に関する検討

コンベ車と HV は、各燃費影響因子に対する燃費の回帰係数が異なる可能性があるた

め、ここではコンベ車のみについて、各燃費影響因子と燃費の関係を検討した。

表 2.2-4 に各説明変数と燃費(目的変数)との決定係数の値と決定係数の大きさの順

位を示す。(2)項の「コンベ車と HV」と同様に、総排気量、車両重量、前面投影面積の

順となった。コンベ車のみとしたことで、燃費の変動が小さくなったことにより、各燃

費影響因子の決定係数の大きさは、大きくなっている。各燃費影響因子別の決定係数の

大きさの順の理由は、(2)項の「コンベ車と HV」に関するものとほぼ同様と考えられる。

表 2.2-4 JC08 燃費と各因子の決定係数とその大きさの順位(コンベ車)

決定係数(対JC08燃費)

順位回帰係数(参考)

車両重量 kg 0.65 2 4.45E-03

前面投影面積 m2 0.58 3 4.88E+00

前面投影面積/全長 0.01 10 -3.64E+00

全高/全長 0.24 6 -1.85E+01

最低地上高 m 0.15 7 4.68E+01

総排気量 cc 0.67 1 2.13E-03

排気量/車両重量 cc/kg 0.45 4 4.88E+00

変速機 CVT=0,AT=1 0.39 5 4.14E+00駆動方式 2WD=0,4WD=1 0.02 9 7.68E-01ハイブリッドの有無 無=0,有=1 0.08 8 -1.92E+00

決定係数(対JC08燃費)

順位回帰係数(参考)

車両重量 kg 0.85 2 5.26E-03

前面投影面積 m2 0.66 3 5.24E+00

前面投影面積/全長 0.03 8 -8.08E+00

全高/全長 0.40 5 -2.54E+01

最低地上高 m 0.18 7 5.16E+01

総排気量 cc 0.87 1 2.52E-03

排気量/車両重量 cc/kg 0.63 4 5.89E+00

変速機 CVT=0,AT=1 0.40 6 4.05E+00駆動方式 2WD=0,4WD=1 0.02 9 7.78E-01ハイブリッドの有無 無=0,有=1

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21

(4) ガソリン車(HV)に関する検討

コンベ車と HV は、各燃費影響因子に対する燃費の回帰係数が異なる可能性があるた

め、ここでは HV のみについて、各燃費影響因子と燃費の関係を検討した。なおここで

HV は、マイルドハイブリッドを含む。

表 2.2-5 に各説明変数と燃費(目的変数)との決定係数の値と決定係数の大きさの順

位を示す。(2)項の「コンベ車と HV」および(3)項の「コンベ車」と異なり、車両重量、

総排気量、前面投影面積の順となった。各燃費影響因子の決定係数は、「コンベ車+HV」

「コンベ車」のケースより小さくなっている。

この理由は、ハイブリッド機構により、エンジン熱効率の良い回転数・トルクの領域

を使用可能となり総排気量による燃費悪化が抑制されることと、走行エネルギー(=1/2

×車両重量×速度の 2 乗)をある程度回収できることにより車両重量により燃費悪化を

抑制するためと考えられる。

各燃費影響因子別の決定係数の大きさの順の理由は、(2)項の「コンベ車と HV」およ

び(3)項の「コンベ車」に関するものと、車両重量と総排気量の順が入れ替わっているが、

これはハイブリッド機構による総排気量、車両重量による燃費悪化の抑制度合いが異なっ

たためと考えられる。

表 2.2-5 JC08 燃費と各因子の決定係数とその大きさの順位(HV)

(5) ガソリン車(軽自動車:HV を含む)に関する検討

軽自動車は、道路運送車両法により全長・全幅・全高・総排気量が制限3されており、

燃費に影響を与える因子の変動幅が小さいため、軽自動車のみについて燃費に影響を与

える因子について検討を行った。

表 2.2-6 に各説明変数と燃費(目的変数)との決定係数の値と決定係数の大きさの順

位を示す。変速機、車両重量、排気量/車両重量の順となった。

3 軽自動車:全長 3400mm 以下 全幅 1480mm 以下 全高 2000mm 以下 総排気量 660cc 以下

決定係数(対JC08燃費)

順位回帰係数(参考)

車両重量 kg 0.64 1 2.15E-03

前面投影面積 m2 0.41 3 2.29E+00

前面投影面積/全長 0.02 9 -2.37E+00

全高/全長 0.15 5 -7.05E+00

最低地上高 m 0.03 8 1.03E+01

総排気量 cc 0.58 2 1.02E-03

排気量/車両重量 cc/kg 0.24 4 1.91E+00

変速機 CVT=0,AT=1 0.03 7 1.18E+00駆動方式 2WD=0,4WD=1 0.11 6 7.96E-01ハイブリッドの有無 無=0,有=1

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22

軽自動車は、全長・全幅・全高・排気量に制限があるため、コンベ車・HV について

検討した(2)項、(3)項、(4)項で一般的に大きな燃費影響因子である総排気量、車両重量

の変動幅が小さくなり、大きな燃費変化の因子とならない。そのため駆動系の動力伝達

効率を決める変速機の種類が も大きい決定係数となった。次に車両重量は、走行エネ

ルギーに強く影響を与える因子であることから、高い相関を持ったと考えられる。排気

量/車両重量は、エンジンの熱効率と関係する因子であるが、エンジンの熱効率の影響

以上に、車両重量と高い相関(決定係数 0.98)ことにより、燃費と高い相関を持ったと

考えられる。

表 2.2-6 燃費基準指標候補と燃費との決定係数と順位

(6) 単回帰による燃費影響因子のまとめ

燃費と燃費影響因子の相関の大きさ(決定係数の大きさ)を表 2.2-7 に示す。軽自動

車以外では総排気量と車両重量、軽自動車では、変速機と車両重量が燃費と良い相関を

示す。

表 2.2-7 車種区分と燃費の相関の大きい因子

※決定係数 0.5 以下と相関が小さい因子はセルを灰色に着色した。

決定係数(対JC08燃費)

順位回帰係数(参考)

車両重量 kg 0.49 2 8.07E-03

前面投影面積 m2 0.43 6 3.72E+00

前面投影面積/全長 0.43 4 1.26E+01

全高/全長 0.43 5 1.86E+01

最低地上高 m 0.01 10 1.08E+01

総排気量 cc 0.04 7 5.44E-01

排気量/車両重量 cc/kg 0.47 3 -9.05E+00

変速機 CVT=0,AT=1 0.71 1 3.14E+00駆動方式 2WD=0,4WD=1 0.03 8 3.42E-01ハイブリッドの有無 無=0,有=1 0.03 9 -6.01E-01

1 2

コンベ車+HV 総排気量 車両重量

コンベ車 総排気量 車両重量

HV 車両重量 総排気量

軽自動車(HVを含む) 変速機 車両重量

燃費との相関の大きさ(決定係数の順位)

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23

2.2.1.3 重回帰を用いた燃費影響因子の組み合わせによる燃費への影響の大きさの検討

燃費を従属変数として、説明変数(燃費影響因子)を、下式で表記することにより、よ

り適切にモード燃費値への影響の大きさが得られるか検討を行った。

燃費 L 100km⁄ A 説明変数 定数

ここで Ai:偏回帰係数

説明変数は、表 2.2-8(表 2.2-2 再掲)の燃費影響因子とした。

表 2.2-8 燃費影響因子(表 2.2-2 再掲)

(1) ガソリン車(コンベ車+HV)に関する検討

重回帰分析に先立ち、多重共線性による精度低下を避けるため、説明変数間同士で高

い相関を持つ変数を除外した。説明変数間の決定係数を示す(表 2.2-9)。決定係数 0.7

以上の説明変数の組み合わせは、オレンジのセル色とした。

表 2.2-9 説明変数間の決定係数

車両重量 kg前面投影面積 m2

前面投影面積/全長全高/全長

最低地上高 m総排気量 cc

排気量/車両重量 cc/kg変速機 CVT=0,AT=1

駆動方式 2WD=0,4WD=1ハイブリッドの有無 無=0,有=1

車両

重量

kg

前面

投影

面積

m2

前面

投影

面積

/全

長 全高

/全

最低

地上

高 m

総排

気量

cc

排気

量/

車両

重量

cc/kg

変速

機C

VT=0,A

T=1

駆動

方式

2W

D=0,4

WD

=1

ハイ

ブリ

ッド

の有

無無

=0,有

=1

燃費

L/100km

車両重量 kg 1.00 0.77 0.07 0.49 0.12 0.85 0.53 0.12 0.02 0.02 0.65前面投影面積 m2 0.77 1.00 0.02 0.15 0.24 0.52 0.24 0.06 0.02 0.00 0.58前面投影面積/全長 0.07 0.02 1.00 0.71 0.06 0.17 0.34 0.00 0.02 0.06 0.01全高/全長 0.02 0.15 0.71 1.00 0.01 0.60 0.70 0.05 0.00 0.05 0.24最低地上高 m 0.12 0.24 0.06 0.01 1.00 0.08 0.03 0.04 0.08 0.00 0.15総排気量 cc 0.85 0.52 0.17 0.60 0.08 1.00 0.84 0.18 0.00 0.02 0.67排気量/車両重量 cc/kg 0.53 0.24 0.34 0.70 0.03 0.84 1.00 0.16 0.00 0.03 0.45変速機 CVT=0,AT=1 0.12 0.06 0.00 0.05 0.04 0.18 0.16 1.00 0.00 0.03 0.39駆動方式 2WD=0,4WD=1 0.02 0.02 0.02 0.00 0.08 0.00 0.00 0.00 1.00 0.00 0.02ハイブリッドの有無 無=0,有=1 0.02 0.00 0.06 0.05 0.00 0.02 0.03 0.03 0.00 1.00 0.08

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24

以下の因子は相互に高い相関(決定係数)をもつので説明変数から除外した。

車両重量、総排気量、前面投影面積: 車両重量のみ残した。

全高/全長、前面投影面積/全長: 全高/全長を残した。

表 2.2-10 に重回帰分析結果を示す(燃費に対して有意な影響のある(p 値<0.05)説

明変数のみ表示した。以下すべての解析で同様)。ここで、標準化偏回帰係数の正負は、

説明変数に対して、正の相関があるか負の相関があるかを示し、その大きさは、燃費に

対する影響の大きさ4を示す。したがって、車両重量が も燃費を悪化させる因子であり、

ハイブリッドの有無が燃費を も向上させる因子である。駆動方式、 低地上高の標準

化偏回帰係数の絶対値は小さく、燃費への影響は小さい。

表 2.2-10 重回帰分析結果:ガソリン車(コンベ車+HV)

表 2.2-10 で得られた偏回帰係数と定数を組み合わせた指標(燃費予測式)と燃費の散布

図を図 2.2-1 に示す。燃費との高い相関を持ち燃費基準の指標として活用可能と思われ

る。

4 燃費に対する影響の大きさ:説明変数が、平均から標準偏差だけ正または負に変化したときに、燃

費の変化する大きさを示す。

偏回帰係数標準化

偏回帰係数p値

車両重量 kg 3.56E-03 0.65 3E-16排気量/車両重量 cc/kg 2.44E+00 0.34 4E-16変速機 CVT=0,AT=1 1.63E+00 0.25 4E-16全高/全長 8.92E+00 0.23 3E-16駆動方式 2WD=0,4WD=1 1.93E-01 0.04 9E-16最低地上高 m 4.39E+00 0.04 0E+00前面投影面積 m2 1.88E-01 0.03 4E-03ハイブリッドの有無 無=0,有=1 -2.21E+00 -0.33 4E-16定数項 -6.56E+00 7E-16決定係数(調整済み) 0.96

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25

図 2.2-1 ガソリン車(コンベ車+HV)の燃費予測式と燃費の関係

(2) ガソリン車(コンベ車)に関する検討

重回帰分析に先立ち、多重共線性による精度低下を避けるため、説明変数間同士で高

い相関を持つ変数を除外した。説明変数間の決定係数を示す(表 2.2-9)。決定係数 0.7

以上の説明変数の組み合わせは、オレンジのセル色とした。

表 2.2-11 説明変数間の決定係数

以下の因子は相互に高い相関(決定係数)をもつので説明変数から除外した。

車両重量、総排気量、前面投影面積: 車両重量のみ残した。

表 2.2-12 に重回帰分析結果を示す。車両重量が も燃費を悪化させる因子であり、前

面投影面積/全長が燃費を も向上させる因子である。駆動方式、 低地上高の標準化

偏回帰係数の絶対値は小さく、燃費への影響は小さい。

y = 0.9221x + 0.4808R² = 0.9221

02468

101214161820

0 5 10 15 20

Fu

el C

onsu

mpt

ion

L/1

00km

Estimaton formula of F.C. L/100km

車両

重量

kg

前面

投影

面積

m2

前面

投影

面積

/全

長 全高

/全

最低

地上

高 m

総排

気量

cc

排気

量/

車両

重量

cc/kg

変速

機C

VT=0,A

T=1

駆動

方式

2W

D=0,4

WD

=1

ハイ

ブリ

ッド

の有

無無

=0,有

=1

車両重量 kg 1.00 0.83 0.05 0.49 0.16 0.86 0.56 0.17 0.01前面投影面積 m2 0.83 1.00 0.01 0.20 0.25 0.60 0.32 0.08 0.01前面投影面積/全長 0.05 0.01 1.00 0.67 0.04 0.13 0.29 0.01 0.01全高/全長 0.00 0.20 0.67 1.00 0.02 0.59 0.69 0.08 0.00最低地上高 m 0.16 0.25 0.04 0.02 1.00 0.12 0.06 0.06 0.09総排気量 cc 0.86 0.60 0.13 0.59 0.12 1.00 0.86 0.24 0.00排気量/車両重量 cc/kg 0.56 0.32 0.29 0.69 0.06 0.86 1.00 0.21 0.00変速機 CVT=0,AT=1 0.17 0.08 0.01 0.08 0.06 0.24 0.21 1.00 0.01駆動方式 2WD=0,4WD=1 0.01 0.01 0.01 0.00 0.09 0.00 0.00 0.01 1.00ハイブリッドの有無 無=0,有=1

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26

表 2.2-12 重回帰分析結果:ガソリン車(コンベ車)

前面投影面積は、空気抵抗を増大させ、燃費を悪化させる因子である。前面投影面積

が大きいほど燃費が向上するという結果は、納得しがたいが、同一車両重量で前面投影

面積の異なる車種の燃費平均値を取ると、前面投影面積が大きいほうが燃費が向上する

傾向があることが分かる(表 2.2-13、車両重量 1.5-2.0t の車両の燃費参照)。

表 2.2-13 同一車両重量で前面投影面積の異なる車両の平均燃費(L/100km)

表 2.2-12 で得られた偏回帰係数と定数を組み合わせた指標(燃費予測式)と燃費の散布

図を図 2.2-2 に示す。燃費との高い相関を持ち燃費基準の指標として活用可能と思われ

る。

偏回帰係数標準化

偏回帰係数p値

車両重量 kg 4.44E-03 0.78 4E-16全高/全長 1.38E+01 0.34 6E-16排気量/車両重量 cc/kg 2.48E+00 0.33 5E-16変速機 CVT=0,AT=1 1.51E+00 0.24 5E-16駆動方式 2WD=0,4WD=1 2.81E-01 0.05 0E+00最低地上高 m 3.40E+00 0.03 2E-15前面投影面積/全長 -4.30E+00 -0.10 2E-15定数項 -6.20E+00 6E-16決定係数(調整済み) 0.95

2.0-2.5 2.5-3.0 3.0-3.5 3.5-4.0

0.5-1.0 3.6 4.5

1.0-1.5 6.5 5.8 6.5

1.5-2.0 10.9 9.1 7.9 10.6

2.0-2.5 12.6 9.7 10.8

2.5-3.0 14.9

車両重量 t

前面投影面積 m2

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27

図 2.2-2 ガソリン車(コンベ車)の燃費予測式と燃費の関係

(3) ガソリン車(HV)に関する検討

重回帰分析に先立ち、多重共線性による精度低下を避けるため、説明変数間同士で高

い相関を持つ変数を除外した。説明変数間の決定係数を示す(表 2.2-14)。決定係数 0.7

以上の説明変数の組み合わせは、オレンジのセル色とした。

表 2.2-14 説明変数間の決定係数

以下の因子は相互に高い相関(決定係数)をもつので説明変数から除外した。

車両重量、総排気量: 車両重量を残した。

y = 0.9528x + 0.3075R² = 0.9528

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 5 10 15 20

Fu

el C

onsu

mpt

ion

L/1

00km

Estimaton formula of F.C. L/100km

車両

重量

kg

前面

投影

面積

m2

前面

投影

面積

/全

長 全高

/全

最低

地上

高 m

総排

気量

cc

排気

量/

車両

重量

cc/kg

変速

機C

VT=0,A

T=1

駆動

方式

2W

D=0,4

WD

=1

ハイ

ブリ

ッド

の有

無無

=0,有

=1

車両重量 kg 1.00 0.55 0.11 0.43 0.02 0.78 0.33 0.01 0.12前面投影面積 m2 0.55 1.00 0.10 0.01 0.23 0.18 0.00 0.01 0.13前面投影面積/全長 0.11 0.10 1.00 0.81 0.21 0.33 0.54 0.07 0.05全高/全長 0.05 0.01 0.81 1.00 0.06 0.62 0.70 0.05 0.00最低地上高 m 0.02 0.23 0.21 0.06 1.00 0.00 0.05 0.06 0.08総排気量 cc 0.78 0.18 0.33 0.62 0.00 1.00 0.75 0.09 0.03排気量/車両重量 cc/kg 0.33 0.00 0.54 0.70 0.05 0.75 1.00 0.16 0.01変速機 CVT=0,AT=1 0.01 0.01 0.07 0.05 0.06 0.09 0.16 1.00 0.00駆動方式 2WD=0,4WD=1 0.12 0.13 0.05 0.00 0.08 0.03 0.01 0.00 1.00ハイブリッドの有無 無=0,有=1

Page 31: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

28

前面投影面積/全長、全高/全長: 全高/全長を残した。

表 2.2-15 に重回帰分析結果を示す。車両重量が も燃費を悪化させる因子であり、前

面投影面積が も燃費を向上させる因子である。

表 2.2-15 重回帰分析結果:ガソリン車(HV)

ただし、前面投影面積は、空気抵抗を増大させ、燃費を悪化させる因子である。前面

投影面積が大きいほど燃費が向上するという結果は、納得しがたいが、同一車両重量で

前面投影面積の異なる車種の燃費平均値を取ると、前面投影面積が大きいほうが燃費が

向上する傾向があることが分かる(表 2.2-16、車両重量 2.0-2.5t の車両の燃費参照)。

表 2.2-16 同一車両重量で前面投影面積の異なる車両の平均燃費(L/100km)

表 2.2-15 で得られた偏回帰係数と定数を組み合わせた指標(燃費予測式)と燃費の散布

図を図 2.2-3 に示す。燃費との高い相関を持ち燃費基準の指標として活用可能と思われ

る。

偏回帰係数標準化

偏回帰係数p値

車両重量 kg 2.94E-03 1.09 0E+00全高/全長 1.29E+01 0.70 0E+00排気量/車両重量 cc/kg 1.79E+00 0.46 0E+00前面投影面積 m2 -4.43E-01 -0.12 9E-05定数項 -5.86E+00 7E-17決定係数(調整済み) 0.74

2.0-2.5 2.5-3.0 3.0-3.5 3.5-4.0

0.5-1.0 3.3 3.6

1.0-1.5 3.1 3.2

1.5-2.0 5.0 5.3

2.0-2.5 8.6 5.7 5.4

2.5-3.0

車両重量 t

前面投影面積 m2

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29

図 2.2-3 ガソリン車(HV)の燃費予測式と燃費の関係

(4) ガソリン車(軽自動車)に関する検討

重回帰分析に先立ち、多重共線性による精度低下を避けるため、説明変数間同士で高

い相関を持つ変数を除外した。説明変数間の決定係数を示す(表 2.2-17)。決定係数 0.7

以上の説明変数の組み合わせは、オレンジのセル色とした。

表 2.2-17 説明変数間の決定係数

以下の因子は相互に高い相関(決定係数)をもつので説明変数から除外した。

車両重量、総排気量/車両重量: 車両重量を残した。

前面投影面積、前面投影面積/全長、全高/全長: 前面投影面積を残した。

表 2.2-18 に重回帰分析結果を示す。変速機(AT であること)が燃費を悪化させる因

y = 0.7447x + 1.1741R² = 0.7447

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 5 10 15 20

Fu

el C

onsu

mpt

ion

L/1

00km

Estimaton formula of F.C. L/100km

車両

重量

kg

前面

投影

面積

m2

前面

投影

面積

/全

長 全高

/全

最低

地上

高 m

総排

気量

cc

総排

気量

/車

両重

量 c

c/kg

変速

機C

VT=0,A

T=1

駆動

方式

2W

D=0,4

WD

=1

ハイ

ブリ

ッド

の有

無無

=0,有

=1

車両重量 kg 1.00 0.65 0.65 0.65 0.01 0.03 0.98 0.14 0.10 0.01前面投影面積 m2 0.65 1.00 1.00 1.00 0.02 0.04 0.63 0.20 0.00 0.01前面投影面積/全長 0.65 1.00 1.00 1.00 0.02 0.04 0.63 0.20 0.00 0.01全高/全長 0.23 1.00 1.00 1.00 0.02 0.04 0.63 0.20 0.00 0.01最低地上高 m 0.01 0.02 0.02 0.02 1.00 0.01 0.01 0.04 0.00 0.04総排気量 cc 0.03 0.04 0.04 0.04 0.01 1.00 0.03 0.02 0.00 0.01総排気量/車両重量 cc/kg 0.98 0.63 0.63 0.63 0.01 0.03 1.00 0.12 0.10 0.01変速機 CVT=0,AT=1 0.14 0.20 0.20 0.20 0.04 0.02 0.12 1.00 0.00 0.01駆動方式 2WD=0,4WD=1 0.10 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.10 0.00 1.00 0.00ハイブリッドの有無 無=0,有=1 0.01 0.01 0.01 0.01 0.04 0.01 0.01 0.01 0.00 1.00

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30

子であり、前面投影面積が燃費を向上させる因子である(前面投影面積の燃費向上効果

については、(1)項を参照のこと)。 低地上高・駆動方式・ハイブリッドの有無による

標準化偏回帰係数の絶対値は小さく、燃費への影響は小さい。ハイブリッドの有無の燃

費への影響の小さい理由は、軽自動車ではストロングハイブリッドではなくマイルドハ

イブリッドが装備されていることによるものと考えられる。

表 2.2-18 重回帰分析結果:ガソリン車(軽自動車)

表 2.2-18 で得られた偏回帰係数と定数を組み合わせた指標(燃費予測式)と燃費の散

布図を図 2.2-4 に示す。燃費との高い相関を持ち、軽自動車単独の燃費基準の指標とし

て活用可能と思われる。

図 2.2-4 ガソリン車(軽自動車)の燃費予測式と燃費の関係

(5) 重回帰分析まとめ

表 2.2-19 に重回帰と単回帰による燃費決定精度の比較結果を示す。ここでは単回帰の

変数として車両重量を選択した。

偏回帰係数標準化

偏回帰係数p値

変速機 CVT=0,AT=1 2.74E+00 0.74 4E-16車両重量 kg 5.43E-03 0.47 5E-16総排気量 cc 6.75E-01 0.26 4E-16最低地上高 m 6.79E+00 0.08 3E-16駆動方式 2WD=0,4WD=1 3.19E-02 0.02 5E-04ハイブリッドの有無 無=0,有 -1.63E-01 -0.05 1E-15前面投影面積 m2 -6.54E-01 -0.12 3E-16定数項 -4.45E+02 5E-16決定係数(調整済み) 0.95

y = 0.9544x + 0.1808R² = 0.9544

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

0 5 10 15 20

Fu

el C

onsu

mpt

ion

L/1

00km

Estimaton formula of F.C. L/100km

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31

単一の説明変数(燃費影響因子)で燃費を定める単回帰より、複数の説明変数の組み

合わせにより燃費を定める重回帰の結果のほうが、決定係数が高く、精度の高い燃費基

準の設定が可能なことが分かる。

表 2.2-19 重回帰・単回帰による燃費決定精度の比較

2.2.2 燃費規制における基本指標の検討

2.2.1.2 節より、単一因子では、総排気量あるいは車両重量が燃費との相関が高いこ

とから燃費基準の指標に適していると考えられる5。また 2.2.1.3 節から複数因子を組

み合わせるとさらに燃費と相関の高い指標が得られるが、現時点で複数因子を用いる燃

費基準の前例はないため、さらなる検討はしない。

一方、燃費基準の施策の観点から米国ではフットプリントが燃費基準の指標に用いら

れている。また、自工会からは車室内容積も燃費指標の検討候補となりうることが示唆

されている。

以下、総排気量、車両重量、フットプリント、車室内容積を燃費基準の指標候補とし、

いずれが燃費基準の指標として適切かを検討する。

2.2.2.1 燃費との相関の大きさ

(1) ガソリン車(コンベ車+HV)に関する検討

表 2.2-20 に各説明変数と燃費(目的変数)との決定係数の値(目的変数を何割くらい

説明しているかの値)と決定係数の大きさの順位を示す。総排気量、車両重量、フット

プリント、車室内容積の順となった。フットプリントと車室内容積は、工学的には燃費

と関連性のあるとはいえない因子であり、決定係数が小さい結果は、当然である。

5 軽自動車においては、変速機も指標になりうるが、次の 2 点から検討から除外した。1)他の車種に

は適切な燃費基準の指標でないこと 2)AT と CVT の 2 種類の値しかないので、燃費基準値が 2 種類に

なってしまい、かつ MT、DCT などの型式数の少ない他の変速機の燃費基準の設定が難しいこと。

重回帰から得られた燃費基準指標

単回帰から得られた燃費基準指標(車両重量)

コンベ車+HV 0.96 0.67コンベ車 0.95 0.85HV 0.74 0.64軽自動車(HVを含む) 0.95 0.71

決定係数

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32

表 2.2-20 JC08 燃費と各因子の決定係数とその大きさの順位(コンベ車+HV)

(2) ガソリン車(コンベ車)に関する検討

表 2.2-21 に各説明変数と燃費(目的変数)との決定係数の値(目的変数を何割くらい

説明しているかの値)と決定係数の大きさの順位を示す。総排気量、車両重量、フット

プリント、車室内容積の順となった。フットプリントと車室内容積は、工学的には燃費

と関連性のあるとはいえない因子であり、決定係数が小さい結果は、当然と言える。

表 2.2-21 JC08 燃費と各因子の決定係数とその大きさの順位(コンベ車)

(3) ガソリン車(HV)に関する検討

表 2.2-22 に各説明変数と燃費(目的変数)との決定係数の値(目的変数を何割くらい説

明しているかの値)と決定係数の大きさの順位を示す。車両重量、総排気量、フットプ

リント、車室内容積の順となった。フットプリントと車室内容積は、工学的には燃費と

関連性のあるとはいえない因子であり、決定係数が小さい結果は、当然である。

表 2.2-22 JC08 燃費と各因子の決定係数とその大きさの順位(HV)

(4) ガソリン車(軽自動車)に関する検討

表 2.2-23 に各説明変数と燃費(目的変数)との決定係数の値(目的変数を何割くらい

説明しているかの値)と決定係数の大きさの順位を示す。車両重量、総排気量、フット

決定係数(対JC08燃費)

順位回帰係数(参考)

車両重量 kg 0.65 2 4.45E-03

総排気量 cc 0.67 1 2.13E-03

フットプリント m2 0.56 3 3.18E+00

室内容積 m3 0.26 4 9.67E-01

決定係数(対JC08燃費)

順位回帰係数(参考)

車両重量 kg 0.85 2 5.26E-03

総排気量 cc 0.87 1 2.52E-03

フットプリント m2 0.72 3 3.66E+00

室内容積 m3 0.27 4 1.01E+00

決定係数(対JC08燃費)

順位回帰係数(参考)

車両重量 kg 0.64 1 2.15E-03

総排気量 cc 0.58 2 1.02E-03

フットプリント m2 0.51 3 1.65E+00

室内容積 m3 0.23 4 4.71E-01

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33

プリント、車室内容積の順となった。軽自動車の総排気量は、ほぼ 660cc であり決定係

数が小さい結果は当然である。フットプリントと車室内容積は、工学的には燃費と関連

性のあるとはいえない因子であり、決定係数が小さい結果は、当然である。

表 2.2-23 JC08 燃費と各因子の決定係数とその大きさの順位(軽自動車)

(5) 単回帰による燃費影響因子のまとめ

燃費と燃費影響因子の相関の大きさ(決定係数の大きさ)を表 2.2-7 に示す。4 種の

車種区分においても、総排気量あるいは車両重量が燃費との相関が高く(決定係数が大

きい)、フットプリントと車室内容積は燃費との相関が低い(決定係数が小さい)。

表 2.2-24 車種区分と燃費の相関の大きい因子

※決定係数 0.4 以下の因子はセルを灰色に着色した。

2.2.2.2 燃費規制における基本指標としての重量の適合性まとめ

検討した4つの燃費基準の指標についてメリット、デメリットを検討した(表2.2-25)。

決定係数(対JC08燃費)

順位回帰係数(参考)

車両重量 kg 0.49 1 8.07E-03

総排気量 cc 0.04 2 5.44E-01

フットプリント m2 0.02 3 -2.71E+00

室内容積 m3 0.00 4 1.04E-01

1 2 3 4

コンベ車+HV 総排気量 車両重量 フットプリント 車室内容積

コンベ車 総排気量 車両重量 フットプリント 車室内容積

HV 車両重量 総排気量 フットプリント 車室内容積

軽自動車(HVを含む) 車両重量 総排気量 フットプリント 車室内容積

燃費との相関の大きさ(決定係数の順位)

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34

表 2.2-25 燃費基準の指標の比較

車両重量 総排気量 フットプリント 車室内容積

理論的に、走行エネルギに関わり燃費に影響を与える因子であり、車両重量により燃費が悪化することは必然のため(統計的にも燃費との相関が総排気量と並んでもっとも高い)。

理論的に、熱効率に関わり燃費に影響を与える因子であり、総排気量により燃費が悪化することは必然のため(統計的にも燃費との相関が車両重量と並んでもっとも高い)。

フットプリントが大きな車両は、車両重量、総排気量が大きい傾向があり、燃費が悪い傾向があるため。

車室内容積が大きな車両は、車両重量、総排気量が大きい傾向があり、燃費が悪い傾向があるため。

コンベ車+HV 0.65 0.67 0.56 0.26

コンベ車 0.85 0.87 0.72 0.27

HV 0.64 0.58 0.51 0.23

軽自動車 0.49 0.04 0.02 0.00

多様な車両重量の車両の製造販売に抵抗にならない。・車重の増加を伴う積載能力に関する多様性(間接的に荷室面積、車室内容積、乗車定員などと関係)を確保可能

多様な総排気量の車両の製造販売に抵抗にならない。・車重の増加を伴う(=間接的に総排気量の増加を伴う)積載能力に関する多様性(間接的に荷室面積、車室内容積、乗車定員などと関係)を確保可能

多様なフットプリントの車両の製造販売に抵抗にならない。・フットプリントの増加を伴う積載能力に関する多様性(荷室面積、車室内容積、乗車定員など)を確保可能

多様な車室内容積の車両の製造販売に抵抗にならない。・車室内容積の増加を伴う積載能力に関する多様性(荷室面積、乗車定員など)を確保可能

多様な車両重量の車両の製造販売に抵抗にならない。・車重の増加を伴う装備品の多様性(4WDなど)の確保可能

多様な総排気量の車両の製造販売に抵抗にならない。・車重の増加を伴う(=間接的に総排気量の増加を伴う)装備品の多様性(4WDなど)の確保可能

フットプリントは、車両重量のように工学的に燃費に影響を与える因子でないため、工学的に燃費を改善する因子すべてを改善するモチベーションを、メーカーが高く保つことができる(「車両重量」「総排気量」のデメリットの項参照)。

車室内容積は、車両重量のように工学的に燃費に影響を与える因子でないため、工学的に燃費を改善する因子すべてを改善するモチベーションを、メーカーが高く保つことができる(「車両重量」「総排気量」のデメリットの項参照)。

制限された寸法、排気量のカテゴリ内で有効な指標となる。・軽自動車において、総排気量、フットプリント、車室内容積は、ほぼ同一値であるが、車両重量はバリエーションがある。軽自動車内で、燃費基準をバリエーションをつけるためには、車両重量を指標とすることが必要である。

(コンベ車+HV共通の燃費基準の場合)HV化により車両重量が増加し、燃費基準値は緩和されるが燃費は改善される。メーカーにとっては、燃費基準値の緩和と車両の燃費向上の二重の意味で、HV化を推進し燃費向上の大きなモチベーションになる。

(コンベ車+HV共通の燃費基準の場合)HV化により燃費基準値は緩和されないが燃費は改善される。メーカーにとっては車両重量の指標よりもHV化を推進するモチベーションは小さい。

同左 同左

メーカーにとって、燃費改善のための因子である車両重量の低減のモチベーションが低下する。

ダウンサイジングによる燃費改善のメーカーのモチベーションを阻害する。

フットプリントと燃費の相関が、車両重量や総排気量と比較して低い分、いくつかのパラメータを組み合わせた規制は必要になる可能性がある。(例えば、セダン/ワンボックス別など)

車室内容積と燃費の相関が、車両重量,総排気量,フットプリントと比較して低い分、いくつかのパラメータを組み合わせた規制は必要になる可能性がある。(例えば、同一容積区分内の重量傾き設定など)

将来的な電動化(HV化)による燃費向上の推進のモチベーションとなるか

デメリット

燃費基準の指標

当該因子の変化で燃費基準値を変化させる理由

燃費との相関

(決定係数)

メリット1

メリット2

メリット3

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35

2.3 Well to Wheel 分析に関する基礎情報

2.3.1 Well to Wheel 分析の概要

自動車は、様々な形で社会や経済の発展に寄与し、我々の生活に必要不可欠なもので

ある。その一方で、自動車は大量のエネルギーを消費し、その結果として CO2 や様々な

大気汚染物質を排出している。今後も自動車を持続可能なモビリティとして活用してい

くためには、自動車の利便性を損なうことなく、省エネルギー・環境負荷削減に寄与す

る自動車技術および燃料の可能性を検討しておく必要がある。

このような検討には、製品の原材料調達から製造、使用、廃棄に至るライフサイクル

全体を対象として環境負荷を定量的に評価することが望ましい。なぜなら、自動車の燃

費性能が向上し環境負荷が軽減されても、自動車材料や燃料の生産による環境負荷増大

によりその効果が相殺されてしまったり、場合によっては後者の方が上回ってしまう可

能性があるからである。

ライフサイクル全体を対象とした環境負荷を定量的に評価する手法が、ライフサイク

ルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)である。一般に自動車の LCA では、

自動車の生産、使用、廃棄・リサイクルの 3 段階に大きく分けられる(図 2.3-1)。生産

段階には、原材料の採掘・輸送、素材・部品製造、車両組立が含まれ、使用段階には燃

料の採掘・精製・輸送・充填、車両走行(燃料燃焼)、保守(部品交換等)が含まれ、マ

テリアルフロー、エネルギーフロー、環境負荷が評価の対象となる。

しかしながら、将来の様々な燃料や動力源の方向性を見極める場合には、自動車 LCA

を実施するための様々な前提条件による不確実性(例えば、どこから材料を調達し、ど

この工場で製造し、どうやって廃棄するか)をできるだけ減らすことが望まれる。また、

自動車のようなエネルギー多消費機器は、使用時および使用時に必要なエネルギーの製

造時の影響が非常に大きい。例えば、生涯走行距離を 10 年間で 10 万 km としてガソリ

ン乗用車を分析した例では、使用段階(走行および燃料製造)でのエネルギー消費量は

ライフサイクルに対し約 80%を占める。よって、自動車のライフサイクルで も重要な

走行段階、すなわち Well to Tank(一次エネルギーの採掘から燃料タンクに充填される

まで)と Tank to Wheel(燃料タンクから車両走行まで、つまり燃費に相当)に焦点を

当てた Well to Wheel 分析を行うことが多い(図 2.3-1)。

図 2.3-2 に示すように燃料と車両技術の組合せは多種多様であり、分析の目的に応じ

てエネルギーパスを選定する。水素・燃料電池実証(JHFC)プロジェクトの中で実施

された Well to Wheel 分析6では、表 2.3-1 に示す燃料を対象としている。

6 財団法人日本自動車研究所:「総合効率と GHG 排出の分析報告書」(2011.3)

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36

図 2.3-1 自動車 LCA と Well to Wheel 分析のバウンダリー

図 2.3-2 燃料と車両技術の組合せ

一次エネルギーの供給 自動車LCAの範囲

WtW分析の範囲

石油採掘 石油輸送 燃料精製・燃料配送・充填 走行

石油探索

設備の廃棄・リサイクル

二次エネルギーの供給

鉱物採掘・輸送

素材製造 部品・車両製造

設備の廃棄・リサイクル

プラント建設

※大量生産では,通常,プラントの建設や廃棄は対象外.(環境負荷は,ライフサイクル全体の数%以下と考えられる.)

保守 解体廃棄

Well to Tank の範囲 Tank to Wheel の範囲

プラント建設

〔Well to Tank〕 〔Tank to Wheel〕

シェールガス⾰命

⽯炭

⼀次エネルギー源

枯渇性エネルギー

(在来) ⽯油

天然ガス

⾮在来⽯油

再⽣可能エネルギー

ウラン鉱

バイオマス

⾵⼒

太陽光

⽔⼒

地熱

(既存) ガソリン

(既存) 軽油

⼆次エネルギー(輸送⽤燃料)

FT軽油 (CTL, GTL)

バイオ軽油 (BTL)

電気

エタノール/ETBEメタノール, DME

LPGDMECNG

(圧縮) ⽔素

ガソリン⾞

ディーゼル⾞

LPG⾞

CNG⾞

ディーゼルハイブリッド⾞

ガソリンハイブリッド⾞

⾃動⾞

⽔素エンジン⾞

電気⾃動⾞

燃料電池⾞

DME⾞

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37

表 2.3-1 燃料選択の例

一次エネルギーの採掘から自動車の燃料タンクまで(Well to Tank)の典型的なエネ

ルギーパスを図 2.3-3 に示す。この範囲を全て含むデータを分析に用いないと CO2 排出

量やエネルギー消費量などを過小評価することとなる。特に電力は、データによってバ

ウンダリーが異なる場合が多く注意が必要である(図 2.3-4)。例えば、送電端の発電原

単位は、燃料調達などの上流側も含めて発電所から送電線に送る直前までが対象で、こ

れに送配電損失を考慮したのが使用端の発電原単位である。さらに EV に充電する際に

充電器側と車両側でさらに電力損失があるので、それも考慮する必要がある(ただし、

JC08 モード電費は充電効率を考慮した値なので、その場合の発電原単位は使用端の値

を用いる)。また、工業会が公表する原単位はその工業会が管轄する範囲だけ考慮するの

が一般的である。つまり電気事業連合会による発電原単位は送配電を考慮する使用端で

あるが、発電所の上流にあたる燃料調達は対象外のため、先述の使用端よりも小さい値

となる。このようにデータを引用する際は、バウンダリーに十分注意しなくてはならな

い。

図 2.3-3 一般的な Well to Tank のパス

⼀次エネルギー源 最終消費燃料原油 ガソリン,軽油,ナフサ,LPG ,電⼒,圧縮⽔素天然ガス 都市ガス,LPG,電⼒,メタノール,DME,

FT軽油(GTL),圧縮⽔素副⽣⽔素 圧縮⽔素再⽣可能エネルギー 電⼒,圧縮⽔素バイオマス バイオディーゼル(BDF),エタノール混合ガソリン,

ETBE混合ガソリン,メタン,圧縮⽔素

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38

(注)充電効率を Tank to Wheel 側(電費)で考慮する場合もある。

図 2.3-4 発電原単位のバウンダリーの違い

2.3.2 Well to Wheel 分析の主要原単位

水素・燃料電池実証(JHFC)プロジェクトの中で実施された Well to Wheel 分析は、

特に水素に注目し多種多様な水素製造を考慮したため、80 ものエネルギーパスを検討対

象とした。主要なパスについて Well to Tank でのエネルギー消費量および CO2 排出量

を図 2.3-5 に示す。これらは、燃料タンクに充填される(あるいは車載電池に充電され

る)単位燃料(あるいは電力)あたりの値として示される。以下に結果を整理する。

・ 水素製造のエネルギー消費量と CO2 排出量は、ガソリン、ディーゼル製造より大き

い。

・ 水の電気分解による水素製造と発電のエネルギー消費量、CO2 排出量は、ガソリン、

ディーゼル製造より大きい。

・ ガソリンとディーゼル燃料以外で比較的エネルギー消費量とCO2排出量が少ないの

は、オフサイトで天然ガス改質して圧縮水素で輸送するパスと、オンサイトでの都

市ガス改質のパス。

・ オフサイト改質による水素を液体水素にして輸送すると、圧縮水素を輸送・充填す

る場合よりエネルギー消費量、CO2 排出量が大きい。

Tank to Wheel の原単位は走行時の燃料消費性能(あるいは電力消費性能)のことで

ある。カタログ燃費を引用することが多いが、e 燃費などの実走行データからの引用、

実際に測定した実燃費、燃費シミュレーション結果なども用いられる。

以上の Well to Tank 値と Tank to Wheel 値をエネルギーパスに応じて組み合わせる

ことで(例えば、ガソリン給油+ガソリン車の燃費)、Well to Wheel での値が算出され

る。

燃料⽣産・輸送設備保守等 発電 電線

変電所 コンセント EV

発電時燃料燃焼

ライフサイクル(送電端)

ライフサイクル(使⽤端)

ライフサイクル(WtT)

[参考] 使⽤端@電事連

送電 配電 充電

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39

(注)オンサイト:水素製造装置を持つステーション

オフサイト:水素の集中製造基地などから水素を陸上輸送してそれを受け入れるステーション (出所)財団法人日本自動車研究所:「総合効率と GHG 排出の分析報告書」(2011.3)

図 2.3-5 Well to Tank エネルギー消費量および CO2 排出量

2.3.3 Well to Wheel 分析の主要文献

日本における代表的な文献は、先に示した JHFC プロジェクトでの Well to Wheel 分

析報告書であり、2011 年 3 月に発行されて以来改訂されていないが、現在でも頻繁に引

用される。近年の欧米の代表的な文献は、以下の 2 つである。

米国エネルギー省(DOE:Department of Energy)傘下のアルゴンヌ国立研究所

178 

182 

153 

173 

174 

108 

128 

129 

148 

125 

123 

108 

124 

130 

128 

142 

152 

20.8 

11.3 

8.7 

16.2 

2.87 

2.94 

2.64 

2.68 

2.57 

1.90 

1.95 

1.84 

2.65 

2.22 

2.18 

1.90 

1.86 

1.84 

1.82 

2.00 

2.46 

1.66 

1.20 

1.13 

1.21 

‐200 ‐150 ‐100 ‐50 0 50 100 150 200

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 6 6.5 7 7.5 8

922Jp:日本MIXPEM(@SS)CHG充填

922Ja:日本MIXアルカリ(@SS)CHG充填

922Ks:NG改質(@CP)LH輸送CHG充填

922ξ:LPG改質(@CP)LH輸送CHG充填

922Es:ナフサ改質(@CP)LH輸送CHG充填

922Js:NG改質(@CP)CHG充填

922ν:LPG改質(@CP)CHG充填

922Ds:ナフサ改質(@CP)CHG充填

922η:FT軽油改質(@SS)CHG充填

922N:DME改質(@SS)CHG充填

922M:MeOH改質(@SS)CHG充填

922I:都市ガス改質(@SS)CHG充填

922G:LPG改質(@SS)CHG充填

922F:灯油改質(@SS)CHG充填

922C:ナフサ改質(@SS)CHG充填

922A:ガソリン改質(@SS)CHG充填

931J:日本MIX充電

910:FT軽油給油

905:都市ガス圧縮充填

902:軽油給油

901:ガソリン給油

水電

解オ

フサ

イト

改質

オン

サイ

ト改

001: 原油 004cr: LPG(原油随伴) 002: 天然ガス 004ng: LPG(NG随伴)

003: 石炭 006: 原子力ペレット 011: 発電用水 CO2

単位車載エネルギーあたりCO2排出量[g‐CO2/MJ]

単位車載エネルギーあたり一次エネルギー投入量[MJ/MJ] 

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40

(Argonne National Laboratory)の GREET7モデルは、1995 年から開発が始まり、近

年は毎年更新され 新版は 2017 年 10 月に公開された。世界中で 23,000 人以上がユー

ザー登録している。対象とするエネルギーパスは原油、石炭、天然ガス、バイオマス、

原子力、風力、太陽光を由来とする 100 種類以上(図 2.3-6)、車両技術はガソリン車、

ディーゼル車、HEV、PHEV、EV、FCV を大分類として 80 種類以上をモデルに内包

している。また、燃料サイクル(Well to Wheel)モデルだけでなく車両サイクルモデル

も有するため、LCA の計算も可能である。

GREETモデルで対象とするバウンダリーを図 2.3-7に示す。これはガソリン車のWell

to Wheel を例にとったもので、原油採掘、原油輸送、ガソリン精製、ガソリン輸送・充

填、ガソリン燃焼と一連のプロセスを含む。細かい表現は異なるものの、図 2.3-3 で示

す JHFC プロジェクトでの分析で対象としたバウンダリーと考え方は同じである。

(出所)Michael Wang, “ Overview of the GREET Life-Cycle Analysis Model” (2015.10)

図 2.3-6 GREET で対象とする燃料

7 The Greenhouse gases, Regulated Emissions, and Energy use in Transportation Model http://greet.es.anl.gov/main

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41

(出所)Michael Wang, “ Overview of the GREET Life-Cycle Analysis Model” (2015.10)

図 2.3-7 GREET で対象とするバウンダリー(ガソリンの例)

欧州の産官研究コンソーシアム JEC8による Well to Wheel 研究プロジェクトは、2000

年から 2014 年にかけて実施され、 終成果である Ver.4 が 2014 年 4 月に公開された9。

対象とするエネルギーパスは原油、石炭、天然ガス、シェールガス、バイオマス、風力、

原子力を由来とする 150 種類以上、車両技術は現在(2010 年時点)と将来(2020 年以

降)のそれぞれにいて、ガソリン車、ディーゼル車、CNG 車、LPG 車、DME 車、HEV、

PHEV、REEV(レンジエクステンダーEV)、EV、FCV を対象としている(図 2.3-8)。

この分析で対象とする Well to Tank のバウンダリーを図 2.3-9 に示す。ここでは 5 つ

のプロセスに分類して整理しているが、図 2.3-3 で示す JHFC プロジェクトでの分析で

対象としたバウンダリーと考え方は同じである。

8 「JRC:Joint Research Centre of the European Commission」「EUCAR:European Council for Automotive R&D」「CONCAWE:Oil Companies' European Organisation for Environment, Health and Safety」による研究コンソーシアム http://iet.jrc.ec.europa.eu/about-jec/welcome-jec-website 9 http://iet.jrc.ec.europa.eu/about-jec/

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(出所)JRC, EUCAR, CONCAWE, "Well-To-Wheels Analysis of Future Automotive Fuels and Powertrains in the European Context" (2014.5)

図 2.3-8 JEC の分析で対象とする燃料と車両技術

(出所)JRC, EUCAR, CONCAWE, "WELL-TO-TANK Report Version 4.a" (2014.4)

図 2.3-9 JEC の分析で対象とするバウンダリー

Energy source FuelProduction and

conditioning at source

Transformation at source

Transportation to markets

Processing in EU

Conditioning and distribution

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43

第3章 自動車に関する省エネ情報の提供の在り方の検討

運輸部門の省エネルギー対策を推進するには、自動車メーカーが省エネ性能に優れた

自動車を積極的に販売するだけでなく、ユーザーに対する省エネ性能の訴求やユーザー

にとって関心の高い省エネ性能を提供していくことが重要である。そこで本章では、ユー

ザーが省エネの観点で乗用車を購入する際に、どのような情報提供が効果的であるかを

整理する。

3.1 自動車ユーザーの省エネ性能への関心

本節では、自動車ユーザーの省エネ性能に対する関心の大きさを整理する。

2016 年 12 月から 2017 年 2 月にかけて「e 燃費」登録ユーザー(6,554 件)を対象と

した Web アンケート調査10では、もともと燃費に関心がある層を対象にしているという

バイアスがかかっているものの、燃費に対する関心の高さが以下のように示された。

・ 「燃費の良さ・環境への配慮」は、小型ハッチバック、セダン系小型下級、SUV な

どで重視率が高い。

・ 燃費重視は、排気量は小さい方が(軽を除く)、使用頻度は高い方が燃費をより重視

する傾向にある。

カタログ燃費表記については、以下に示すように、できるだけ実燃費に近い表記を求

めている層が多い。

・ カタログ燃費は、全体の約 9 割のユーザーが認知(「具体的に知っている」+「おお

よそ知っている」)している。

・ カタログ燃費の表記方法については、「現状の表記(JC08 モード)よりも、実際の

燃費に近く、走行シーン別に表示すべき」が約半数を占め も多く、次いで「実際

の燃費と変わらない値とすべき」が約 2 割を占めており、大勢として現状表記より

実際の燃費に近づけるべきとの意見である。

・ 「カタログ燃費と実燃費の差」の不満度が高いことからも、「カタログ表記」の見直

しは満足度を向上させる上でも大きな課題となっている。

また、日本自動車工業会の市場動向調査11によれば、2015 年 8 月から 9 月にかけての

全国調査(訪問・留置併用)によって、四輪自動車保有世帯の中でハイブリッド車と電

気自動車の認知は 6 割を超えるものの、他の次世代自動車の認知は伸び悩むという結果

が出た(図 3.1-1)。

10 株式会社イード、「e 燃費アンケート 2016 調査分析報告書」(2017.4) 11 一般社団法人日本自動車工業会、「2015 年度乗用車市場動向調査」(2016.3)

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44

図 3.1-1 次世代自動車の認知と受容性

・ ハイブリッド車(HEV)と電気自動車(EV)の「名前+特徴」認知は全体では 6

割を超え、男性では 6 割、女性でも 5 割を超える。

・ 一方、プラグインハイブリッド車(PHEV)と燃料電池車(FCV)」の認知は 3 割

程度に止まり、女性では 2 割に満たないレベル。

・ 次世代自動車の受容層(購入を検討したい+やや検討したい)は HEV で 5 割弱、

EV 及び PHEV では約 2 割。FCV は 1 割に満たないレベル。

・ 次世代自動車内における購入検討順位の 1 位は HEV、以下 EV、PHEV と続く。

・ 各次世代自動車の購入検討した理由を見ると、HEV はガソリンで走れ、環境負荷が

少ない点。EV は家庭用コンセントで充電でき、 先端の技術である点。PHEV は

いざというときガソリンで走れ、家庭用コンセントで充電でき、長距離走行が可能

な点。

・ 次世代自動車の購入にあたっての懸念点は、各車とも「車両が高い」こと、次いで

高いのは EV では「1 回の充電での走行距離が短い」、HEV および PHEV では「維

持費面で不安」、EV および FCV では「充電(充填)施設の場所や数が心配」。

3.2 自動車の商流における省エネ情報の提供状況

本節では、販路や販売店におけるカタログや展示車等での省エネ情報提供の現状を、

販売店や自動車メーカーへのアンケート調査を通じて整理する。調査対象は 3 点で、

WLTC モード燃費表示、次世代自動車の情報提供、店頭展示車のモード燃費表示。加え

て欧米での燃費表示に関する現状を整理する。

97% 98%

63%68%

73%64%

69%

31%23% 27%

18%

45%

20%

8%14%

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%

100%

EV HEV PHEV FCV クリーンディーゼル

名前の認知 名前+特徴認知 受容性

n=3,716

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45

3.2.1 WLTC モード燃費表示

JC08 モードにより、それ以前の 10・15 モードよりも実燃費に近い値が示されるよう

になったが、依然としてカタログ燃費と実燃費に差があることに変わりはなく、より現

実的な燃費測定法が求められるようになった。加えて、全世界共通の軽量車テストサイ

ク ル を 策 定 す る と い う 世 界 の 流 れ も あ り 、 新 た に 採 用 さ れ た の が WLTC

(Worldwide-harmonized Light Vehicles Test Cycle)モードである。従来の 1 種類の燃

費表示ではなく、平均的な値となる WLTC モードに加え、「LMH 燃費」と呼ばれる 3

つを加えた 4 種類の燃費を表示する。L は市街地モード、M は郊外モード、H は高速モー

ドである。WLTC モード燃費は 2018 年 10 月以降に販売する新型車に対して表示が義

務化されるが、先行してマツダとホンダの一部の車両で WLTC モード燃費を採用してい

る。そこで、新モード燃費表示に関する現状を把握するため、両メーカー系列の販売店

を対象にアンケート調査を行った。

アンケートの実施概要は以下である。

・ 調査目的:自動車販売店における WLTC モード燃費表示に関する現状を把握する。

・ 調査対象:WLTC モード燃費表示を行っているマツダおよびホンダ系列の販売店。

・ 調査方法:一般社団法人自動車販売協会連合会を通して対象の販売店(系列ごとに

20~40 店程度を抽出)に E-mail にて調査票(ワード形式)を配布。回答後、自販

連を通して E-mail にて JARI に返送。

・ 調査期間:2018 年 1 月 23 日~2 月 2 日

・ 回収状況:有効回答 58 件、内訳は表 3.2-1 の通りである。

表 3.2-1 回答者の内訳(メーカー別、県別)

アンケート票を以下に示す。

マツダ ホンダ マツダ ホンダ マツダ ホンダ1:北海道 2 17:⽯川県 1 33:岡⼭県 12:⻘森県 1 18:福井県 34:広島県3:岩⼿県 19:⼭梨県 35:⼭⼝県4:宮城県 2 20:⻑野県 36:徳島県5:秋⽥県 21:岐⾩県 37:⾹川県 16:⼭形県 22:静岡県 1 38:愛媛県7:福島県 23:愛知県 39:⾼知県8:茨城県 1 24:三重県 40:福岡県 19:栃⽊県 25:滋賀県 41:佐賀県 110:群⾺県 26:京都府 1 42:⻑崎県11:埼⽟県 2 27:⼤阪府 43:熊本県12:千葉県 19 1 28:兵庫県 10 44:⼤分県13:東京都 10 29:奈良県 45:宮崎県14:神奈川県 1 30:和歌⼭県 46:⿅児島県15:新潟県 1 31:⿃取県 47:沖縄県16:富⼭県 32:島根県 1 合計 39 19

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46

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48

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49

以下にアンケート結果を示す。

JC08 モードから WLTC モードへの燃費表示内容変更紹介のリーフレットを使っ

ている販売店は全体の 29%である(図 3.2-1)。

図 3.2-1 リーフレットの使用状況

「①:使っている」と回答した 17 件から、リーフレットの活用方法について 16 件の

回答を得て(複数回答あり)、表 3.2-2 のように分類した。WLTC モード表示車種のカタ

ログ説明時に使用されているのが一番多かった。

表 3.2-2 リーフレットの活用方法

29.3% 70.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①︓使っている ②︓使っていない

n=58

n ⽐率1 社内勉強資料として使⽤ 2 10.5%2 ショールーム(商談テーブル、カウンター)に掲⽰ 3 15.8%3 WLTCモード表⽰⾞種のカタログ説明時に使⽤ 6 31.6%4 お客から実燃費の説明を依頼された時に使⽤ 2 10.5%5 ⾞の使い⽅に応じた燃費を説明する時に使⽤ 3 15.8%6 他⾞のハイブリッド⾞との⽐較検討時に使⽤ 1 5.3%7 カタログに添えたり、配布 1 5.3%8 無回答 1 5.3%

19 100%全体

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50

「②:使っていない」と回答した 41 件から、リーフレットを使っていない理由につ

いて回答得た(図 3.2-2)。そもそもリーフレットの存在を知らない人が 63%いた。

(注)その他:自社カタログ等でも触れている/店頭にて表示程度/変更時期が近づいたら使用予定

図 3.2-2 リーフレットを使っていない理由

リーフレットの改善点を全体 58 件に質問したところ 17 件の回答を得て、表 3.2-3 の

ように分類した。リーフレットを使用しているいないに拘わらず、「良くできていて改善

点なし」が一番多かった。試験法などの詳細情報を要望する回答も比較的多かった。

表 3.2-3 リーフレットの改善点

19.5% 2.4% 63.4% 14.6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①︓使わなくても適切に説明ができる②︓使い勝⼿が悪い③︓リーフレットの存在を知らない④︓その他

n=41

使⽤ 不使⽤1 ⽂字が多いのでイラスト等を増やし分かり易くしてほしい 3 5.2% 2 12 もう少し詳しい情報が欲しい 4 6.9% 0 4

 ・どのような試験を⾏ったか︖ ・なぜ試験時の⾞両重量が増加するのか︖ ・(特に10・15モードのイメージを持ちやすい年配向けに) 10・15→JC08→WLTCモードの変遷をわかりやすく)

3 情報が多岐にわたるので、情報誌として集約されたものがよい 1 1.7% 1 04 改善点なし(良くできている) 7 12.1% 3 45 リーフレット⾃体不要 1 1.7% 0 16 初⾒のため何とも⾔えない 1 1.7% 0 17 無回答 41 70.7% 11 30

58 100% 17 41全体

nリーフレット計 ⽐率

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51

WLTC 燃費表示を顧客に説明する際の工夫点について 19 件の回答を得て、表 3.2-4

のように分類した。 も多かったのは「車の使用状況を把握し、モードを使い分けて燃

費を説明」であった。

表 3.2-4 WLTC 燃費表示の説明時に工夫している点

WLTCモードへ燃費表示内容が変わったことに対する顧客の反応で も多かったもの

について、全体の 83%が肯定的な反応であった。

(注)その他:表示対象車両が限られていることもあり認知度は低い/何も反応がない/ 特別に意見はなかったが参考になったという反応あり/WLTC の単語が覚えにくい

図 3.2-3 WLTC 燃費表示に変わったことへの顧客の反応

n ⽐率1 ⾞の使⽤状況を把握し、モードを使い分けて燃費を説明 14 24.1%2 具体的な例を作って説明 1 1.7%3 実燃費を重視した質問のとき、WLTC燃費表⽰を説明 3 5.2%4 JC08と⽐較して説明 3 5.2%5 より実燃費に近い値であるが、使⽤状況によっては⼀律ではないことを説明 1 1.7%6 WLTC燃費表⽰のない他⾞のJC08燃費表⽰と⽐べるものではないことを説明 1 1.7%7 実燃費により近い燃費であると説明 7 12.1%8 カタログや電⼦カタログで説明 1 1.7%9 エコドライブとあわせ燃費向上を説明 1 1.7%10 お客様の⾞の使⽤状況を把握し、現⾞両と⽐較 3 5.2%11 特に⼯夫はしていない 3 5.2%12 特に説明していない 2 3.4%13 無回答 19 32.8%

58 100%全体

1.7%

15.5% 67.2% 5.2%

1.7%

8.6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①︓変える必要はなかった②︓実燃費に近づいて良かった③︓実燃費に近づいてかつ⾛⾏シーン別に表⽰され良かった④︓よくわからない⑤︓興味がない⑥︓その他

n=58

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52

以上をまとめると、

・ WLTC モード紹介リーフレットを使っているのは全体の 29%。

・ 具体的な活用方法で多かったのは「カタログ説明時に使用」。その他、「社内勉強資

料として使用」、「ショールームに掲示」等の回答あり。

・ 使っていない理由で も多かったのが「リーフレットの存在を知らない」で全体の

63%。

・ リーフレットの改善点で も多かった回答は、使用・不使用に拘わらず、「よくでき

ており改善点はない」。続いて多かったのが、「試験方法などのより詳しい情報の掲

載」、「イラスト等を増やしてわかりやすい表現」。

・ WLTC 燃費表示を顧客に説明する際の工夫点で も多かったのは、「車の使用状況

を把握し、モードを使い分けて燃費を説明」、続いて「実燃費により近い燃費である

と説明」。

・ WLTC 燃費表示に変わったことに対する顧客の反応で も多かったのは、「実燃費

に近づいてかつ走行シーン別に表示され良かった」で全体の 67%。肯定的な TOP2

の反応は 83%。

これらの結果を、一般社団法人自動車販売協会連合会の新車部会において説明し、各

系列販売店の委員に現状をヒアリングした。以下に主な発言を記す。

・ 近は自動ブレーキなど安心・安全に顧客の興味が向いており燃費に関する質問は

殆どないが、販売店からは運転の仕方で燃費が大幅に変わることを説明している。

・ WLTC モード燃費を顧客に説明すると、これと JC08 モード燃費と何が違うのかと

訊かれるが、モード間の細かい差異よりも結局実燃費とどれだけ違うのかという話

に収束することが多い。

3.2.2 次世代自動車の情報提供

3.1節で述べたように、次世代自動車の特徴認知率はHEVとEVで6割超となる一方、

PHEV と FCV クリーンディーゼル車の特徴認知率は 3 割程度に留まる。実際に購入を

検討したい層の割合は、両方の数値をさらに下回る。このような状況の中で、販売店が

どのように次世代自動車をユーザーにアピールしているかを把握するため、アンケート

調査を行った。

アンケートの実施概要は以下である。

・ 調査目的:自動車販売店における次世代自動車の情報提供に関する現状を把握する。

・ 調査対象:次世代自動車を販売している日産、トヨタ、ホンダ、三菱系列および外

車の販売店。

・ 調査方法:自販連を通して対象の販売店(系列ごとに 20 店前後を抽出)に E-mail

にて調査票(ワード形式)を配布。回答後、自販連を通して E-mail にて JARI に返

送。

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53

・ 調査期間:2018 年 1 月 23 日~2 月 2 日

・ 回収状況:有効回答 77 件、内訳を表 3.2-5 示す。(このほか 4 件の回答があったが、

現在次世代車を販売していないとのことで無効とした。)

表 3.2-5 回答者の内訳(メーカー別、県別)

アンケート票を以下に示す。

⽇産 トヨタ ホンダ 三菱 海外 ⽇産 トヨタ ホンダ 三菱 海外1:北海道 1 1 3 25:滋賀県 1 12:⻘森県 1 26:京都府 1 13:岩⼿県 27:⼤阪府 1 14:宮城県 1 2 28:兵庫県 1 15:秋⽥県 1 29:奈良県 3 16:⼭形県 2 1 30:和歌⼭県7:福島県 1 1 1 31:⿃取県 18:茨城県 1 1 32:島根県 19:栃⽊県 1 33:岡⼭県 1 110:群⾺県 2 34:広島県 1 111:埼⽟県 1 1 35:⼭⼝県12:千葉県 1 1 1 36:徳島県13:東京都 1 1 1 2 37:⾹川県 1 114:神奈川県 1 1 38:愛媛県15:新潟県 1 1 1 39:⾼知県 116:富⼭県 40:福岡県 1 1 1 117:⽯川県 1 41:佐賀県 1 2 118:福井県 42:⻑崎県 119:⼭梨県 43:熊本県20:⻑野県 44:⼤分県21:岐⾩県 1 45:宮崎県 122:静岡県 2 46:⿅児島県 123:愛知県 2 47:沖縄県24:三重県 1 2 合計 16 23 15 21 2

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54

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55

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56

アンケート結果を以下に示す。

販売店で取り扱っている次世代自動車を図 3.2-4 に示す。PHEV、EV、FCV の順で取

り扱いが多い。

図 3.2-4 取り扱っている次世代自動車

次世代自動車を顧客に勧める際、コンベ車(従来のガソリン車、ディーゼル車)およ

びハイブリッド車とのどのような違いをアピールしているかについて、回答を表 3.2-6

に示す。経済性や環境性能などアピールポイントは多岐に渡り、61%が 5 個以上のポイ

ントをアピールしていた。

表 3.2-6 次世代自動車を顧客に勧める際のアピールポイント

50.6%

72.7%

32.5%

1.3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①︓電気⾃動⾞

②︓プラグインハイブリッド⾞

③︓燃料電池⾞

無回答

n=77

n ⽐率①︓燃料代あるいは電気代が安くなる 60 77.9%②︓静粛性が⾼い 46 59.7%③︓⾃宅で充電できガソリンスタンドに⾏かなくて良い 32 41.6%④︓(災害時等に)家庭⽤電源になる 47 61.0%⑤︓補助⾦や減税の対象になる 59 76.6%⑥︓次世代⾞独特の⾛り(加速性能等) 50 64.9%⑦︓先進性 44 57.1%⑧︓排ガスの臭いがしない 11 14.3%⑨︓排ガス・CO2の排出がなく(少なく)環境に良い 52 67.5%⑩︓その他 5 6.5%無回答 3 3.9%

全体 77 100%

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57

上記のうち顧客に対し特に訴求力の上位 3 点を挙げてもらったのが図 3.2-5 である。

一番訴求力のあるのは、「燃料代あるいは電気代が安くなる」、次に「補助金や減税の対

象になる」、続いて「次世代車独特の走行性能」、「低環境負荷」であった。

図 3.2-5 顧客に対し訴求力のあるポイント(上位 3 つ)

次世代自動車を顧客に勧める際に比較している車両を図 3.2-6 に示す。

(注)その他:顧客の使用車/あまり他車競合・比較はしない/現在、量販車が無く、商売上の提案は 殆どない

図 3.2-6 次世代自動車を顧客に勧める際に比較している車両

40

2

1

9

9

6

6

1

3

6

10

7

10

15

11

7

8

3

8

3

5

10

14

10

6

16

5

54

13

14

21

38

30

19

0

30

1

11

0 10 20 30 40 50 60

①︓燃料代あるいは電気代が安くなる

②︓静粛性が⾼い

③︓⾃宅で充電できガソリンスタンドに⾏かなくて良い

④︓(災害時等に)家庭⽤電源になる

⑤︓補助⾦や減税の対象になる

⑥︓次世代⾞独特の⾛り(加速性能等)

⑦︓先進性

⑧︓排ガスの臭いがしない

⑨︓排ガス・CO2の排出がなく(少なく)環境に良い

⑩︓その他

無回答

1位

2位

3位

67.5%

53.2%

6.5%

41.6%

5.2%

2.6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①︓同⼀メーカーのコンベ⾞・HEV

②︓他メーカーのコンベ⾞・HEV

③︓同⼀メーカーの次世代⾞

④︓他メーカーの次世代⾞

⑤︓その他

無回答n=77

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58

上記の車両のうち顧客に対して も訴求力ある車両は、同一メーカーのコンベ車・HEV

であった(図 3.2-7)。

図 3.2-7 次世代自動車を顧客に勧める際に も訴求力のある車両

後に、次世代自動車を販売する際の工夫点を表 3.2-7 に示す。「試乗してもらう」が

一番多く、次に「補助金活用等資金面での提案」、続いて「災害時の家庭用電源としての

活用」や「充電インフラの説明」であった。

表 3.2-7 次世代自動車を販売する際の工夫点

46.8% 19.5% 14.3% 10.4%3.9%

5.2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①︓同⼀メーカーのコンベ⾞・HEV ②︓他メーカーのコンベ⾞・HEV③︓同⼀メーカーの次世代⾞ ④︓他メーカーの次世代⾞⑤︓その他 無回答

n=77

n ⽐率1 災害時の家庭⽤電源として活⽤できることをアピール(外部給電モード) 6 7.8%2 資⾦⾯提案(補助⾦活⽤、残価設定型ローン等) 9 11.7%3 環境アピール 4 5.2%4 充電の簡素化、インフラの説明 6 7.8%5 試乗体感実施(試乗コース延⻑、無料貸し出し、代⾞貸し出し) 24 31.2%6 ガソリン⾞との燃費⽐較 4 5.2%7 ⾃宅への充電設備設置⽀援 1 1.3%8 使⽤ユーザーの感想を情報誌として発信 1 1.3%9 イベント等での積極的な展⽰ 3 3.9%10 PHEVの特性アピール(充電切れてもHV⾛⾏できる) 2 2.6%11 次世代⾞の先進性能アピール(⾛⾏性能、安全装備等) 4 5.2%12 価格が⾼いので、主に法⼈へ提案 1 1.3%13 特に対応していない 2 2.6%14 販売実績なし 2 2.6%15 無回答 21 27.3%

77 100%全体

Page 62: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

59

以上をまとめると、

・ 回答者の 73%が PHEV、51%が EV、33%が FCV を取り扱っていた。

・ コンベ車・HEV とのどのような違いをアピールするかに関し、61%が 5 個以上のア

ピールポイントを示した。特に訴求力のあるのは、「燃料代あるいは電気代が安くな

る」、次に「補助金や減税の対象になる」、続いて「次世代車独特の走行性能」、「低

環境負荷」。

・ 主に比較車両とするのは、「同一メーカーのコンベ車・HEV」、「他メーカーのコン

ベ車・HEV」「他メーカーの次世代車」。「同一メーカーの次世代車」と比べる例は

少ない。比較車両で も訴求力のあるのは「同一メーカーのコンベ車・HEV」の

47%。。

・ 次世代車販売の際の工夫点で も多かったのは、「試乗してもらう」の 31%、次に

「補助金活用等資金面での提案」の 12%。続いて、「災害時の家庭用電源としての活

用」や「充電インフラの説明」。

これらの結果を、一般社団法人自動車販売協会連合会の新車部会において説明し、各

系列販売店の委員に現状をヒアリングした。以下に主な発言を記す。

・ EV は航続距離が重要なので、モードによらず使い方によってどれだけ航続距離が

変わるかを販売店からしっかりと伝えている。

・ 燃費(電費)が良いという単一の指標ではなく、外部給電など総合的な効果を考え

て顧客は EV の購入を検討している。

・ EV の普及が進めば、充電待ち行列が多発する恐れがあり、インフラの整備が重要

である。

3.2.3 店頭展示車のモード燃費表示

現在、省エネ法第 80 条に基づき、モード燃費値の展示車への表示が義務付けられて

いるが12、昨今はメーカーの Web サイトなど電子媒体での車両情報取得も広く行われて

いる。また、メーカーと販売店の取引形態が徐々に変化していることも考えられる。本

節では、国内外の乗用車メーカーを対象に、店頭展示車のモード燃費表示の現状をアン

ケート調査により整理した。

アンケートの実施概要は以下である。

・ 調査目的:自動車販売店における店頭展示車のモード燃費表示に関する現状を把握

する。

・ 調査対象:日本および海外の乗用車メーカー。

・ 調査方法:一般社団法人日本自動車工業会および日本自動車輸入組合を通して傘下

12 乗用自動車のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準

等(告示)2-2 遵守事項(3)に規定。 http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/summary/pdf/top_runner/toprunner_jouyousya.pdf

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60

の乗用車メーカーに E-mail にてアンケート票を配布。回答後、E-mail にて JARI

に返送。

・ 調査期間:2018 年 1 月 26 日~2 月 2 日

・ 回収状況:国内乗用車メーカー6 社、海外乗用車メーカー7 社より回答があった。

ただし、海外メーカーの 1 社は自社のショールームがなく情報提供していないとの

ことだったので、それを除く 12 社の回答を整理した。これは、2017 年新車販売台

数ベースで、国産車の 66%、輸入車の 55%に相当する。

アンケート票を以下に示す。

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61

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62

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63

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64

アンケート結果を以下に示す。

燃費情報を提供するタイミングは、新型車については発売時、既販車については型式

取得時であり、うち海外 1 社では年式変更による価格変更時も行うとの回答。提供方法

は、イントラネットに一括掲載や電子メールを一括送信といったデジタル手段で行う。

その他、カタログなど紙媒体でも提供しているとの回答が複数あった。

燃費を表示する媒体は、12 社全てスペックシートである。その他、カタログなど販促

材に表示という回答が複数あった。

スペックシート等への媒体に燃費を明瞭に表示するよう指示しているかとの質問に対

しては、12 社全て、一般社団法人自動車公正取引協議会(公取協)の規約等を踏まえた

スペックシートが使用されるため、販売店に対して特に指示を出していないとの回答で

あった。中には、販売店が独自にデータを修正しないようメーカーがデータを厳格に管

理していると補足する回答もあった。

店頭展示車において燃費が適切に表示されているかどのように確認しているかとの質

問に対し、国内 5 社と海外 1 社では(展示車両に燃費を記載したスペックシートを添付

するのは通常業務のため、)特に燃費表示の確認を行っていないとの回答であった。その

うち国内1社では正しい燃費表示を行うよう通達を行っているとの補足もあった。一方、

国内 1 社と海外 4 社は確認を行っているとの回答であった。国内 1 社では、販売店協会

から販売店に「CSR チェックリスト」を送付し、店頭展示車において燃費表示がなされ

ているかの確認を販売店自身が行い、点検結果は販売店協会およびメーカーにフィード

バックされている。海外 4 社では定期または不定期に販売店を訪問した際、燃費表示も

含めた展示物の確認を行っている。

販売店が展示車の燃費表示を怠った際に備えて何らかの契約を結んでいるかとの質問

に対し、国内 3 社は燃費表示の不備に関する契約を結んでおらず、残りの国内 3 社は燃

費表示を特定したものではないが、関連法規を遵守するよう販売店との取引基本契約の

中で明記しているとの回答。海外 2 社は燃費表示に特化した契約は結んでおらず、残り

の海外 4 社は販売店契約を締結、または販売店契約の中で展示方法の規定遵守を謳って

いる。つまり全体的に言うと、燃費表示に特化はしていないが、販売店契約の中で関連

法規の遵守を定めている。

以上より全体的な運用状況は、型式取得の度に燃費情報を電子媒体で販売店に展開し、

販売店は展示車のスペックシートに燃費情報を記載する。このスペックシートの表示は、

一般社団法人自動車公正取引協議会の規約等を踏まえている。そして、メーカーと販売

店の取引基本契約の中で、燃費表示に特化はしていないが関連法規を遵守するよう謳っ

ているので、当該制度は適切に運用されている。

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65

3.2.4 欧米における省エネ情報の提供状況

(1)米国

米国では、ユーザーが車両同士の燃費性能の比較と燃料の消費量を予測できるように

するため、燃費表示制度が導入されている。対象車両は乗用車、ライトデューティトラッ

ク(LDT)、ミディアムデューティ乗用車(MDPV)である。下記事項をラベルに表示

する。

・ 燃費(市街地燃費、ハイウェイ燃費、複合燃費)

・ 燃料消費率(100mile あたり)

・ 年間燃料代

・ 燃料節約額(5 年間の節約額)

・ 燃費・GHG Rating(10 段階表示)

・ スモッグ Rating(GHG 以外の排ガス性能を 10 段階で)

・ QR コード(EPA の燃費特設サイトの URL)

・ 航続可能距離(EV、PHEV、FCV、CNGV)

・ バッテリー充電時間(EV、PHEV)

ラベルの例を図 3.2-8、図 3.2-9、図 3.2-10 に示す。

(出所)EPA https://www.fueleconomy.gov/feg/label/docs/EPA_FE_Label-052311.pdf

図 3.2-8 米国の燃費ラベル例(ガソリン車)

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66

(出所)EPA https://www.fueleconomy.gov/feg/label/docs/EPA_FE_Label-052311.pdf

図 3.2-9 米国の燃費ラベル例(プラグインハイブリッド車)

(出所)EPA https://www.fueleconomy.gov/feg/label/docs/EPA_FE_Label-052311.pdf

図 3.2-10 米国の燃費ラベル例(電気自動車)

Page 70: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

67

(2)欧州

欧州では乗用車(M1 区分車)を対象に、新車販売時に燃費および CO2 排出量等を記

載したラベルを貼付または展示する必要がある(図 3.2-11)。ラベル表示内容の体裁は

各国が決定可能。また、各国に対し以下を義務づけている。

・ 各国で購入可能なモデルの燃費と CO2 排出量をまとめた冊子の年 1 回以上の発行

・ 燃費ランキングを掲載したポスターのショールームへの展示

・ 販売促進用媒体への燃費および CO2 排出量の表示

(注)左よりベルギー、ドイツ、フランス、イギリス (出所)Gary Haq, Martin Weiss, “CO2 labelling of passenger cars in Europe: Status, challenges, and future prospect”, Energy policy (2016.8)

図 3.2-11 欧州の燃費ラベル例

3.3 自動車ユーザーへのより訴求力のある情報提供の在り方

3.1 節の文献調査、3.2 節のアンケート調査、ヒアリング調査をもとに、自動車ユーザー

へのより訴求力のある情報提供の在り方を検討した。

WLTC モード燃費表示について。文献調査によると、新車購入時におけるユーザーの

燃費への関心は年々上昇しており、現状の JC08 モード燃費よりも、実燃費に近くかつ

走行シーン別に表記すべきとの意見が多数を占めている。アンケートでも実燃費に近く

かつ走行シーン別に表記していることに肯定的な反応が多数を占めており、ヒアリング

でもユーザーは実燃費とカタログ燃費の乖離に大きな関心を示している。よって、WLTC

モード燃費表示は、依然として実燃費と乖離があるものの乖離は小さくなり、多くのユー

ザーに肯定的に受け入れられると考えられる。ただし、JC08 モード燃費表示より複雑

になっていることは否めないので、ユーザーの理解を進めるため、関係省庁、自動車メー

カー、自動車ディーラーが連携してリーフレット等を活用して、適切な情報提供を行っ

ていくことが重要である。また、JC08 モード燃費と併存する期間があることを十分に

考慮し、自動車ユーザーの混乱を生じさせないよう留意する必要がある。

Page 71: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

68

次世代自動車の情報提供について。文献調査によると、EV は特徴認知率が 6 割と比

較的大きいものの受容率(購入を検討したい+やや検討したい)は 2 割に留まり、PHEV

と FCV の特徴認知率は 3 割で受容率は PHEV で 2 割、FCV で 1 割弱と小さい。次世

代自動車の購入にあたっての懸念点は、各車とも「車両が高い」こと、次いで高いのは

EV では「1 回の充電での走行距離が短い」、PHEV では「維持費面で不安」、EV および

FCV では「充電(充填)施設の場所や数が心配」である。これらの懸念点はアンケート

でユーザーに訴求力のあるポイントとして挙がっているもので、ヒアリングでも取り上

げられている。よって、次世代自動車の情報提供を行う際は、単に燃費(電費)だけで

はなく、以上に挙げた項目も丁寧に説明することが重要である。航続距離や燃料代、燃

料節約額はすでに米国では燃費ラベルに記載されている内容なので、ユーザーへのメリッ

トが大きければ日本においても記載を検討することが望ましい。

Page 72: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

69

第4章 エコドライブ支援ツールによる行動変容の効果検証及びその継続性に

関する検討

運輸部門の省エネルギー対策において、実際の走行時の省エネ対策(エコドライブ)

の普及促進が必要であり、自動車メーカー等においては、運転者に対してエコドライブ

を支援するツール(例えばインジケータ表示やランキングの表示)が開発され車体に搭

載が始まっており、エコドライブによる燃費向上が期待できる。そこで本章では、自動

車メーカーより燃費に関するテレマティクスデータを入手し、エコドライブ支援ツール

の利用の有無による効果をその継続性を検証する.

4.1 燃費データの解析によるエコドライブ支援ツールの効果検証

自動車メーカーから取得したテレマティクスデータの概要を以下に示す。

・ 車種:

CONV1:コンベ車(ミニバン)

CONV2:コンベ車(SUV)

HEV1:ハイブリッド車(セダン)

HEV2:ハイブリッド車(SUV)

・ 地域:

都心部:東京

郊外部:東北 2 県(宮城・山形)

・ データ期間:2017 年 1 月~12 月(1 年間)

・ データ項目:表 4.1-1 を参照

表 4.1-1 データ項目

(※1)トリップ距離 5km 未満のデータは除外。 (※2)エアコン使用状況および外気温は HEV2 のみ取得(通信環境等による欠損値あり)。

単位 備考⾞両ID 同⼀⾞両に同ID(英数字の⽂字列)を付与燃費 km/L 1トリップの燃費エコドライブ関連指標 エコランプ点灯率

HV ECOゾーンスコア 1トリップにおける数値ECOスイッチON率

平均⾞速 km/h 1トリップの平均⾞速(トリップ距離/⾛⾏時間)トリップ距離 ※1 km⾛⾏開始時刻・⾛⾏終了時刻 YYYY/MM/HH 分秒は切り捨て⾛⾏開始位置・⾛⾏終了位置 度 10進法表⽰,度分秒で10分未満は切り捨て登録住所 県名ソーク時間 HH/MM 前回エンジン停⽌時刻と今回エンジン始動時刻との差分時間⾞両登録年度 YYYY ⽉⽇は切り捨て⾞両総⾛⾏距離 km 100m単位以下は切り捨てエアコン使⽤状況 ※2 ON率 1トリップにおけるエアコン使⽤率

設定温度 ℃ 1トリップ平均の運転⼿席設定温度外気温 ※2 ℃ 1トリップの平均外気温

項⽬

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70

対象としたエコドライブ支援ツールは、①エコランプ点灯率、②HV エコゾーンスコ

ア(HEV のみ)、③エコモードスイッチ(エコスイッチ)、の 3 つである。それぞれの

概要を図 4.1-1 に示す。エコランプ点灯率と HV エコゾーンスコアは、運転手へリアル

タイムにエコドライブ状況を伝えるもので、運転手はそれに追従してエコドライブを継

続することが可能である。一方、エコスイッチは、スイッチの切替えにより車両をエコ

ドライブしやすく制御するもので、実際にエコドライブ状況にあるかどうかは運転手に

はリアルタイムに分からないし、運転特性に依存する状態(例えばアクセルをふかしす

ぎるなど)ではエコドライブにならない恐れがある。

図 4.1-1 エコドライブ支援ツールの概要

エコドライブ支援ツールの使用状況について、それぞれの指標の平均値を図 4.1-2 に

示す。コンベ車のエコランプ点灯率平均は 90 以上、ハイブリッド車のエコランプ点灯

率平均は 80~86 で、HV エコゾーンスコア平均は 59~66 である。エコスイッチ ON 率

の平均は 34~57 だが、実際は 0 または 100 に偏在している。つまり、1 トリップにお

いて常に ON か常に OFF の状態にある。

Page 74: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

71

(注)エラーバーは標準偏差を示す。

図 4.1-2 エコドライブ支援ツールへの追従度の平均

取得したデータから、通信状況等による欠損値を除去して表4.1-2のように整理した。

外気温の欠損値は、気象庁の全国時間別気温データより補完した。

表 4.1-2 欠損値除去後のデータ

(注)外気温の欠損値は気象庁の全国時間別気温データから補完し、全体の 112,520 件に合わせた。

92.9 90.7 86.0 79.665.9 59.356.4

47.3 49.534.2

-20-10

0102030405060708090

100110

CONV1 CONV2 HEV1 HEV2

エコランプ HVエコゾーン エコスイッチ

全体 外気温あり※ AC ON率あり 設定温度ありCONV1 コンベ⾞(ミニバン) 東京都 2,297 11,276 - - -

東北地区(宮城、⼭形) 272 3,075 - - -計 2,569 14,351 - - -

CONV2 コンベ⾞(SUV) 東京都 1,124 5,792 - - -東北地区(宮城、⼭形) 204 1,796 - - -

計 1,328 7,588 - - -HEV1 ハイブリッド⾞(セダン) 東京都 2,200 22,084 - - -

東北地区(宮城、⼭形) 347 6,080 - - -計 2,547 28,164 - - -

HEV2 ハイブリッド⾞(SUV) 東京都 1,788 85,000 76,774 72,667 20,236東北地区(宮城、⼭形) 296 27,520 23,532 22,338 5,418

計 2,084 112,520 100,306 95,005 25,6548,528 162,623 100,306 95,005 25,654合計

トリップ数ID ⾞種 地域 ⾞両ID数

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72

これらの整理したデータから分析に使用するデータセットを車両ごとに作成した(表

4.1-3)。HEV2 にだけエアコン ON 率とエアコン設定温度が一部のトリップに含まれる

ので、HEV2 のデータセットは 3 種類(HEV2-1、HEV2-2、HEV2-3)用意した。また、

今回使用した分析ソフトが 6 万件までしか重回帰分析できないため、6 万件を超える場

合は 6 万件を無作為抽出してデータセットにした。

表 4.1-3 分析に用いたデータセット

(注)6 万件までしか重回帰分析できない計算ソフトのため、HEV2-1・HEV2-2 についてはトリップ

を無作為抽出した。

上記のデータセットを重回帰分析して、エコドライブ支援ツールへの追従度を含めた

燃費影響因子の影響度を推計した。目的変数は燃費である。元データでは燃費の単位が

「km/L」だが回帰式のフィッティングをよくするため、「L/100km」に変換した。

説明変数については、まず燃費に影響する項目として、平均速度、暖気状態、補機類

負荷(エアコン、ライト)、車両劣化、地域による運転特性(都市/地方)、エコドライ

ブ支援ツールへの追従度を想定し、 終的に表 4.1-4 に示す変数を採用した。取得した

テレマティクスデータに含まれないものは、他の変数から算出、あるいは気象庁のデー

タより推計した。このほかにも燃費への影響が予想される因子があるが、取得したデー

タの制約やプレ分析で明らかとなった多重共線性等を考慮して 終的にこれらを選択し

た。

説明変数が多いため回帰分析において変数増減法を用いた。これは、説明変数を含ま

ない回帰式からスタートし、意味のある変数を追加して重回帰分析を行い、その中で不

要となった変数を除去することを繰り返して、基準を満たす変数のみを含む重回帰式を

算出する方法である。よって、分析によっては 終的に重回帰式に含まれない変数が発

生することもある。今回この追加と削除の基準を Pin = Pout = 0.05 とした。

HEV については、「エコランプ点灯率」に加えて「HV エコゾーンスコア」のデータ

があり、両者に多重共線性があることがプレ分析で判明したが、今回の分析はエコドラ

イブ支援ツールの効果検証が目的であるので両方の因子を説明変数として採用した。た

だし、同時に両方を因子とする分析は行わず、どちらか一方のみを含むデータセットを

それぞれ分析した。

ID ⾞種 ⾞両ID数 トリップ数 備考CONV1 コンベ⾞(ミニバン) 2,569 14,351CONV2 コンベ⾞(SUV) 1,328 7,588HEV1 ハイブリッド⾞(セダン) 2,547 28,164HEV2-1 ハイブリッド⾞(SUV) 2,056 60,000 「AC ON率」と「AC設定温度」両⽅を無視/112,520件より無作為抽出HEV2-2 ハイブリッド⾞(SUV) 2,065 60,000 「AC ON率」を考慮/95,005件より無作為抽出HEV2-3 ハイブリッド⾞(SUV) 2,084 24,940 「AC ON率」と「AC設定温度」両⽅を考慮

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73

表 4.1-4 重回帰分析に用いた説明変数

(注)○は全車種の全トリップ、△は HEV2 の一部のトリップでデータが提供されたことを示す。

重回帰分析の結果を表 4.1-5 に示す。網掛けはデータセットにもともと含まれていな

い変数、「-」は増減法により除去された変数を示す。修正済決定係数はコンベ車では

0.7 以上と当てはまりが良く、HEV では 0.4 前後~0.5 前後と中程度であった。P 値か

ら殆ど全ての変数は 1%有意で説明力があり、残りも 5%有意で説明力があると判断でき

る。多重共線性を示す VIF(Variance Inflation Factor)は一般に 10 以上だと多重共線

性が発生しているとされる。よって、平均速度と平均速度の 2 乗に多重共線性が見られ

るが、両者とも燃費を表現するのに重要な因子であることと、その他の因子、特にエコ

ドライブ支援ツールには多重共線性が見られないことから、これらの結果を採用した。

燃費に影響する項⽬ 分析に⽤いた説明変数 単位 データ提供 データ補完平均速度 平均速度 km/h ○

平均速度の逆数 (km/h)-1 平均速度より算出平均速度の2乗 (km/h)2 平均速度より算出

暖機状態 トリップ距離 km ○ソーク時間 s ○気温 ℃ △ ⽋損値は⾛⾏時間の中間時刻と気象庁の気温データより補完

補機類負荷(エアコン) AC ON率 △ ⽋損値の補完無しAC設定温度 ℃ △ ⽋損値の補完無し気温の3乗 ℃3 気温より算出⽇射量 MJ/m2 ⾛⾏時間の中間時刻と気象庁の⽇射量データより設定

補機類負荷(ライト) ライト点灯ダミー(OFF:0/ON:1) ⾛⾏時間の開始・終了時刻と気象庁の⽇出・⽇没データより設定⾞両劣化 総⾛⾏距離 km ○地域による運転特性 地域ダミー(東京:0/東北:1) ○エコドライブ⽀援ツールへの エコランプ点灯率(0〜100) ○追従度 HVエコゾーンスコア(0〜100) ○

エコSW ON率(0〜100) ○

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74

表 4.1-5 重回帰分析の結果

(a)CONV1

(b)CONV2

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.095 0.005 -0.409 P < 0.001 ** 30.597平均速度_逆数 92.080 1.024 0.713 P < 0.001 ** 3.554平均速度_2乗 0.001 0.000 0.349 P < 0.001 ** 23.3201トリップ距離 -0.018 0.001 -0.093 P < 0.001 ** 1.868ソーク時間 0.000 0.000 0.050 P < 0.001 ** 1.006気温 -0.124 0.003 -0.406 P < 0.001 ** 6.326気温_3乗 0.000 0.000 0.390 P < 0.001 ** 6.384総⾛⾏距離 0.000 0.000 -0.050 P < 0.001 ** 1.055AC ON率AC設定温度⽇射量 -0.116 0.014 -0.042 P < 0.001 ** 1.578ライト 0.107 0.027 0.020 P < 0.001 ** 1.509地域 - - - - - -エコランプ点灯率 -0.101 0.002 -0.293 P < 0.001 ** 1.082HV ECOゾーンスコアエコスイッチON率 -0.002 0.000 -0.039 P < 0.001 ** 1.002定数項 18.191 0.202 P < 0.001 **修正済決定係数 0.746 *︓P<0.05

**︓P<0.01

偏回帰係数の有意性の検定標準化されていない係数変数

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.085 0.008 -0.462 P < 0.001 ** 53.034平均速度_逆数 87.698 2.093 0.676 P < 0.001 ** 6.780平均速度_2乗 0.001 0.000 0.416 P < 0.001 ** 33.5021トリップ距離 -0.015 0.001 -0.108 P < 0.001 ** 2.097ソーク時間 0.000 0.000 0.024 P < 0.001 ** 1.002気温 -0.105 0.004 -0.386 P < 0.001 ** 6.345気温_3乗 0.000 0.000 0.346 P < 0.001 ** 6.435総⾛⾏距離 0.000 0.000 -0.031 P < 0.001 ** 1.025AC ON率AC設定温度⽇射量 -0.041 0.016 -0.017 0.0122 * 1.165ライト - - - - - -地域 -0.187 0.036 -0.036 P < 0.001 ** 1.245エコランプ点灯率 -0.049 0.001 -0.250 P < 0.001 ** 1.117HVエコゾーンスコアエコスイッチON率 -0.001 0.000 -0.025 P < 0.001 ** 1.011定数項 12.576 0.273 P < 0.001 **修正済決定係数 0.709 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

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75

(c)HEV1_エコランプ

(d)HEV1_HV エコゾーン

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.029 0.002 -0.379 P < 0.001 ** 45.895平均速度_逆数 23.950 0.639 0.419 P < 0.001 ** 5.780平均速度_2乗 0.000 0.000 0.495 P < 0.001 ** 29.5721トリップ距離 -0.008 0.000 -0.148 P < 0.001 ** 2.248ソーク時間 0.000 0.000 0.083 P < 0.001 ** 1.005気温 -0.091 0.001 -0.714 P < 0.001 ** 6.397気温_3乗 0.000 0.000 0.551 P < 0.001 ** 6.431総⾛⾏距離 - - - - - -AC ON率AC設定温度⽇射量 -0.075 0.006 -0.067 P < 0.001 ** 1.547ライト 0.029 0.013 0.013 0.0246 * 1.470地域 -0.082 0.013 -0.032 P < 0.001 ** 1.191エコランプ点灯率 -0.022 0.000 -0.305 P < 0.001 ** 1.140HVエコゾーンスコアエコスイッチON率 -0.001 0.000 -0.029 P < 0.001 ** 1.030定数項 6.598 0.079 P < 0.001 **修正済決定係数 0.392 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.034 0.002 -0.431 P < 0.001 ** 46.081平均速度_逆数 23.792 0.607 0.416 P < 0.001 ** 5.783平均速度_2乗 0.000 0.000 0.432 P < 0.001 ** 29.6991トリップ距離 -0.009 0.000 -0.164 P < 0.001 ** 2.254ソーク時間 0.000 0.000 0.083 P < 0.001 ** 1.011気温 -0.086 0.001 -0.676 P < 0.001 ** 6.419気温_3乗 0.000 0.000 0.535 P < 0.001 ** 6.434総⾛⾏距離 0.000 0.000 0.012 0.0096 ** 1.061AC ON率AC設定温度⽇射量 -0.068 0.006 -0.061 P < 0.001 ** 1.552ライト 0.031 0.012 0.014 0.0116 * 1.470地域 -0.040 0.012 -0.016 0.0011 ** 1.202エコランプ点灯率HVエコゾーンスコア -0.033 0.000 -0.440 P < 0.001 ** 1.368エコスイッチON率 0.000 0.000 -0.015 P < 0.001 ** 1.030定数項 6.984 0.075 P < 0.001 **修正済決定係数 0.452 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

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76

(e)HEV2-1_エコランプ

(f)HEV2-1_HV エコゾーン

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.035 0.003 -0.260 P < 0.001 ** 41.063平均速度_逆数 55.596 0.640 0.572 P < 0.001 ** 4.818平均速度_2乗 0.001 0.000 0.373 P < 0.001 ** 27.7581トリップ距離 -0.017 0.000 -0.171 P < 0.001 ** 2.387ソーク時間 0.000 0.000 0.102 P < 0.001 ** 1.017気温 -0.127 0.002 -0.515 P < 0.001 ** 6.434気温_3乗 0.000 0.000 0.447 P < 0.001 ** 6.441総⾛⾏距離 0.000 0.000 -0.011 P < 0.001 ** 1.045AC ON率AC設定温度⽇射量 -0.063 0.008 -0.028 P < 0.001 ** 1.553ライト 0.034 0.017 0.007 0.0409 * 1.468地域 -0.092 0.016 -0.019 P < 0.001 ** 1.221エコランプ点灯率 -0.034 0.000 -0.339 P < 0.001 ** 1.232HVエコゾーンスコアエコスイッチON率 -0.001 0.000 -0.013 P < 0.001 ** 1.034定数項 11.422 0.083 P < 0.001 **修正済決定係数 0.458 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.096 0.003 -0.719 P < 0.001 ** 43.109平均速度_逆数 49.085 0.629 0.505 P < 0.001 ** 4.851平均速度_2乗 0.001 0.000 0.626 P < 0.001 ** 27.9101トリップ距離 -0.020 0.000 -0.204 P < 0.001 ** 2.399ソーク時間 0.000 0.000 0.099 P < 0.001 ** 1.008気温 -0.123 0.002 -0.498 P < 0.001 ** 6.382気温_3乗 0.000 0.000 0.421 P < 0.001 ** 6.421総⾛⾏距離 - - - - - -AC ON率AC設定温度⽇射量 -0.073 0.007 -0.033 P < 0.001 ** 1.152ライト - - - - - -地域 -0.052 0.016 -0.011 P < 0.001 ** 1.194エコランプ点灯率HVエコゾーンスコア -0.050 0.000 -0.470 P < 0.001 ** 1.897エコスイッチON率 -0.001 0.000 -0.018 P < 0.001 ** 1.019定数項 13.323 0.087 P < 0.001 **修正済決定係数 0.481 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

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77

(g)HEV2-2_エコランプ

(h)HEV2-2_HV エコゾーン

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.040 0.002 -0.311 P < 0.001 ** 40.038平均速度_逆数 54.628 0.593 0.576 P < 0.001 ** 4.559平均速度_2乗 0.001 0.000 0.407 P < 0.001 ** 27.4931トリップ距離 -0.015 0.000 -0.160 P < 0.001 ** 2.438ソーク時間 0.000 0.000 0.100 P < 0.001 ** 1.014気温 -0.127 0.002 -0.516 P < 0.001 ** 6.582気温_3乗 0.000 0.000 0.432 P < 0.001 ** 6.712総⾛⾏距離 0.000 0.000 -0.016 P < 0.001 ** 1.043AC ON率 0.695 0.019 0.111 P < 0.001 ** 1.046AC設定温度⽇射量 -0.052 0.007 -0.023 P < 0.001 ** 1.164ライト - - - - - -地域 -0.166 0.016 -0.034 P < 0.001 ** 1.185エコランプ点灯率 -0.033 0.000 -0.335 P < 0.001 ** 1.237HVエコゾーンスコアエコスイッチON率 -0.001 0.000 -0.013 P < 0.001 ** 1.035定数項 10.965 0.080 P < 0.001 **修正済決定係数 0.487 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.100 0.002 -0.770 P < 0.001 ** 42.460平均速度_逆数 48.604 0.584 0.512 P < 0.001 ** 4.594平均速度_2乗 0.001 0.000 0.663 P < 0.001 ** 27.7581トリップ距離 -0.018 0.000 -0.190 P < 0.001 ** 2.454ソーク時間 0.000 0.000 0.098 P < 0.001 ** 1.014気温 -0.122 0.002 -0.497 P < 0.001 ** 6.587気温_3乗 0.000 0.000 0.404 P < 0.001 ** 6.719総⾛⾏距離 0.000 0.000 -0.009 0.0030 ** 1.044AC ON率 0.644 0.018 0.103 P < 0.001 ** 1.047AC設定温度⽇射量 -0.052 0.007 -0.023 P < 0.001 ** 1.164ライト - - - - - -地域 -0.120 0.015 -0.024 P < 0.001 ** 1.189エコランプ点灯率HVエコゾーンスコア -0.048 0.000 -0.462 P < 0.001 ** 1.964エコスイッチON率 -0.001 0.000 -0.018 P < 0.001 ** 1.026定数項 12.798 0.084 P < 0.001 **修正済決定係数 0.505 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

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78

(i)HEV2-3_エコランプ

(j)HEV2-3_HV エコゾーン

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.041 0.003 -0.358 P < 0.001 ** 36.216平均速度_逆数 55.096 0.676 0.663 P < 0.001 ** 3.692平均速度_2乗 0.001 0.000 0.463 P < 0.001 ** 26.0791トリップ距離 -0.010 0.001 -0.127 P < 0.001 ** 2.599ソーク時間 0.000 0.000 0.078 P < 0.001 ** 1.017気温 -0.125 0.003 -0.533 P < 0.001 ** 7.354気温_3乗 0.000 0.000 0.484 P < 0.001 ** 7.090総⾛⾏距離 0.000 0.000 -0.029 P < 0.001 ** 1.044AC ON率 0.652 0.050 0.056 P < 0.001 ** 1.024AC設定温度 -0.035 0.006 -0.027 P < 0.001 ** 1.178⽇射量 -0.050 0.010 -0.023 P < 0.001 ** 1.183ライト - - - - - -地域 -0.120 0.023 -0.024 P < 0.001 ** 1.152エコランプ点灯率 -0.029 0.000 -0.315 P < 0.001 ** 1.215HVエコゾーンスコアエコスイッチON率 - - - - - -定数項 11.336 0.189 P < 0.001 **修正済決定係数 0.553 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

標準偏回帰 多重共線性の統計量偏回帰係数 標準誤差 係数 P値 判定 VIF

平均速度 -0.089 0.003 -0.774 P < 0.001 ** 38.672平均速度_逆数 51.028 0.671 0.614 P < 0.001 ** 3.715平均速度_2乗 0.001 0.000 0.701 P < 0.001 ** 26.3501トリップ距離 -0.012 0.001 -0.156 P < 0.001 ** 2.619ソーク時間 0.000 0.000 0.076 P < 0.001 ** 1.017気温 -0.121 0.003 -0.516 P < 0.001 ** 7.355気温_3乗 0.000 0.000 0.462 P < 0.001 ** 7.089総⾛⾏距離 0.000 0.000 -0.023 P < 0.001 ** 1.049AC ON率 0.596 0.050 0.051 P < 0.001 ** 1.026AC設定温度 -0.037 0.006 -0.029 P < 0.001 ** 1.178⽇射量 -0.055 0.010 -0.025 P < 0.001 ** 1.183ライト - - - - - -地域 -0.082 0.023 -0.016 P < 0.001 ** 1.158エコランプ点灯率HVエコゾーンスコア -0.042 0.001 -0.426 P < 0.001 ** 2.047エコスイッチON率 0.000 0.000 -0.009 0.0365 * 1.030定数項 12.832 0.192 P < 0.001 **修正済決定係数 0.563 *︓P<0.05

**︓P<0.01

変数 標準化されていない係数 偏回帰係数の有意性の検定

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79

多重共線性に関連して相関行列を表 4.1-6 に示す。例として、HEV2-3 においてエコ

ランプ点灯率を因子として採用したデータの分析から得たものを示す。エコドライブ支

援ツールと他の因子に共線性がないことが確認できる。HV エコゾーンスコアでも同様

である。また他の車両でも同様である。

表 4.1-6 相関行列(HEV2-3、エコランプ点灯率の場合)

(注)網掛けは 0.7 以上。

各因子・各車種の標準偏回帰係数を表 4.1-7、図 4.1-3 に示す。標準偏回帰係数は、説

明変数および目的変数をそれぞれ標準化した値から算出される偏回帰係数である。重回

帰式の係数である通常の偏回帰係数ではその大小から各変数の重要性を判断することが

できないが、標準偏回帰係数どうしは比較可能である。燃費の単位は「L/100km」であ

るので、説明変数の符号が負で絶対値が大きいほど燃費向上への寄与度が大きい。

表 4.1-7 各因子・各車種の標準偏回帰係数

平均速度 平均速度_逆数 平均速度_2乗 1トリップ距離 ソーク時間 気温 気温_3乗 総⾛⾏距離 AC稼働率 AC設定温度 ⽇射量 ライト 地域 エコランプ エコSW 燃費平均速度 1.000 -0.735 0.966 0.761 0.036 -0.101 -0.108 0.151 0.013 -0.006 -0.094 0.047 0.209 -0.405 -0.011 -0.369平均速度_逆数 -0.735 1.000 -0.597 -0.477 -0.028 0.089 0.093 -0.116 -0.015 0.007 0.083 -0.067 -0.206 0.272 0.009 0.625平均速度_2乗 0.966 -0.597 1.000 0.777 0.034 -0.087 -0.095 0.142 0.013 -0.011 -0.084 0.031 0.165 -0.409 -0.013 -0.2501トリップ距離 0.761 -0.477 0.777 1.000 0.057 -0.064 -0.071 0.116 -0.030 -0.006 -0.067 0.013 0.058 -0.340 0.004 -0.250ソーク時間 0.036 -0.028 0.034 0.057 1.000 0.015 0.008 -0.091 -0.007 -0.031 -0.005 -0.031 -0.044 -0.025 0.019 0.062気温 -0.101 0.089 -0.087 -0.064 0.015 1.000 0.924 0.020 0.127 -0.365 0.334 -0.246 -0.174 0.039 -0.014 -0.020気温_3乗 -0.108 0.093 -0.095 -0.071 0.008 0.924 1.000 0.009 0.123 -0.308 0.358 -0.235 -0.143 0.049 -0.011 0.053総⾛⾏距離 0.151 -0.116 0.142 0.116 -0.091 0.020 0.009 1.000 0.036 0.003 -0.060 0.026 0.080 -0.056 -0.061 -0.104AC稼働率 0.013 -0.015 0.013 -0.030 -0.007 0.127 0.123 0.036 1.000 -0.076 0.041 -0.028 -0.013 -0.004 -0.049 0.044AC設定温度 -0.006 0.007 -0.011 -0.006 -0.031 -0.365 -0.308 0.003 -0.076 1.000 -0.186 0.151 0.014 0.011 -0.008 0.014⽇射量 -0.094 0.083 -0.084 -0.067 -0.005 0.334 0.358 -0.060 0.041 -0.186 1.000 -0.541 0.045 0.048 0.003 0.023ライト 0.047 -0.067 0.031 0.013 -0.031 -0.246 -0.235 0.026 -0.028 0.151 -0.541 1.000 -0.085 -0.021 0.007 -0.012地域 0.209 -0.206 0.165 0.058 -0.044 -0.174 -0.143 0.080 -0.013 0.014 0.045 -0.085 1.000 0.006 0.046 -0.152エコランプ -0.405 0.272 -0.409 -0.340 -0.025 0.039 0.049 -0.056 -0.004 0.011 0.048 -0.021 0.006 1.000 0.166 -0.135エコSW -0.011 0.009 -0.013 0.004 0.019 -0.014 -0.011 -0.061 -0.049 -0.008 0.003 0.007 0.046 0.166 1.000 -0.048燃費 -0.369 0.625 -0.250 -0.250 0.062 -0.020 0.053 -0.104 0.044 0.014 0.023 -0.012 -0.152 -0.135 -0.048 1.000

Page 83: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

80

図 4.1-3 各因子・各車種の標準偏回帰係数

エコドライブ支援ツールへの追従度(エコランプ点灯率・HV エコゾーンスコア)は

燃費向上に寄与し、その寄与度は他の因子と比べて比較的大きいことが明らかとなった。

一方で、エコスイッチも燃費向上に寄与するものの、前者 2 ツールと比べて寄与度が小

さい結果となった。

エコスイッチの燃費向上への寄与度が、他の 2 ツールと比べると小さかったので、別

のアプローチでエコスイッチの燃費向上効果を確認した。図 4.1-4 にエコスイッチ ON

(SW 100)とエコスイッチ OFF(SW 0)における燃費分布を示す。エコスイッチの使

用により燃費が向上していることがわかる。先述のようにエコスイッチは、穏やかな加

速がしやすくなると共に空調をエコモードで制御するものだが、特にヒーターを使う低

温ほど燃費向上に寄与する装置なので,気温域を変えて車両ごとに全トリップの平均燃

費を求めた。図 4.1-5 に示すように、実際のトリップでも、全温度で、1.2%から 3.3%

(平均 2.5%)、一方 5℃以下の低温で 1.7%から 5.2%(平均 3.5%)向上しており、エコ

スイッチの使用によって概して低温ほど燃費向上への寄与度は大きくなる。

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81

図 4.1-4 エコスイッチによる燃費分布の変化

図 4.1-5 エコスイッチによる平均燃費の変化

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

≦1

1.5-

22.

5-3

3.5-

44.

5-5

5.5-

66.

5-7

7.5-

88.

5-9

9.5-

1010

.5-1

111

.5-1

212

.5-1

313

.5-1

414

.5-1

515

.5-1

616

.5-1

717

.5-1

8

相対

度数

(%)

燃費 (L/100km)

[HEV2] SW 0SW 100

0%

4%

8%

12%

16%

20%

24%

≦1

1-1.

51.

5-2

2-2.

52.

5-3

3-3.

53.

5-4

4-4.

54.

5-5

5-5.

55.

5-6

6-6.

56.

5-7

7-7.

57.

5-8

8-8.

58.

5-9

9-9.

59.

5-10

相対

度数

(%)

燃費 (L/100km)

[HEV1] SW 0SW 100

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%≦

11.

5-2

2.5-

33.

5-4

4.5-

55.

5-6

6.5-

77.

5-8

8.5-

99.

5-10

10.5

-11

11.5

-12

12.5

-13

13.5

-14

14.5

-15

15.5

-16

16.5

-17

17.5

-18

18.5

-19

19.5

-20

相対

度数

(%)

燃費 (L/100km)

[CONV1] SW 0SW 100

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

≦1

1.5-

22.

5-3

3.5-

44.

5-5

5.5-

66.

5-7

7.5-

88.

5-9

9.5-

1010

.5-1

111

.5-1

212

.5-1

313

.5-1

414

.5-1

515

.5-1

616

.5-1

717

.5-1

818

.5-1

919

.5-2

0

相対

度数

(%)

燃費 (L/100km)

[CONV2] SW 0SW 100

nSW 0 6,181SW 100 8,027その他 143

計 14,351

nSW 0 3,907SW 100 3,462その他 219

計 7,588

nSW 0 14,026SW 100 13,672その他 466

計 28,164

nSW 0 71,905SW 100 36,214その他 4401

計 112,520

2.8%

4.0%

5.2%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

0123456789

101112

全て 10℃以下 5℃以下

燃費

減少

平均

燃費

(L/1

00km

)

SW0 SW100 燃費減少率

[HEV2-2]

1.2%

2.6%

4.0%

0%

1%

1%

2%

2%

3%

3%

4%

4%

5%

0123456789

101112

全て 10℃以下 5℃以下

燃費

減少

平均

燃費

(L/1

00km

)

SW0 SW100 燃費減少率

[CONV1]

3.3%

3.8%

3.0%

0%

1%

1%

2%

2%

3%

3%

4%

4%

5%

0123456789

101112

全て 10℃以下 5℃以下

燃費

減少

平均

燃費

(L/1

00km

)

SW0 SW100 燃費減少率

[CONV2]

2.7%

1.6%1.7%

0%

1%

2%

3%

0123456789

101112

全て 10℃以下 5℃以下

燃費

減少

平均

燃費

(L/1

00km

)

SW0 SW100 燃費減少率

[HEV1]

n 全て 10℃ 5℃SW0 6,181 1,611 535SW100 8,027 2,056 703

n 全て 10℃ 5℃SW0 3,907 1,125 360SW100 3,462 915 293

n 全て 10℃ 5℃SW0 14,026 3,700 1,168SW100 13,672 3,774 1,333

n 全て 10℃ 5℃SW0 60,728 13,431 2,356SW100 30,465 7,152 1,300

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82

エコドライブ支援ツールの燃費向上効果が異なる速度域でも発現するかを確認するた

め、4 つの速度域(0-20、20-40、40-80、80km/h 以上)に分けて重回帰分析を行った。

各車種とも概して速度域によらず各因子の影響度の分布は同様の傾向を示した(図4.1-6)。

つまり、エコドライブ支援ツール(エコランプ点灯率・HV エコゾーンスコア)への追

従による燃費向上への寄与度は、速度域によらず他の因子と比べて比較的大きい。また、

燃費向上へ寄与する絶対量を偏回帰係数より確認した(図 4.1-7)。コンベ車では低速域

ほど大きくハイブリッド車ではほぼ一定であった。

(注)HV エコゾーンを含むデータセットにおいても同様の傾向を示す。

図 4.1-6 異なる速度域でのエコドライブ支援ツールの効果

-1.0-0.50.00.51.0

平均速度平均速度_逆数

平均速度_2乗

1トリップ距離

ソーク時間

気温気温_3乗総⾛⾏距離

⽇射量

ライト

地域

エコランプ

エコSW

標準偏回帰係数(CONV1)

0-20km/h 20-40km/h40-80km/h 80-km/h

-1.0-0.50.00.51.0

平均速度平均速度_逆数

平均速度_2乗

1トリップ距離

ソーク時間

気温気温_3乗総⾛⾏距離

⽇射量

ライト

地域

エコランプ

エコSW

標準偏回帰係数(CONV2)

0-20km/h 20-40km/h40-80km/h 80-km/h

-1.0-0.50.00.51.0

平均速度平均速度_逆数

平均速度_2乗

1トリップ距離

ソーク時間

気温気温_3乗総⾛⾏距離

⽇射量

ライト

地域

エコランプ

エコSW

標準偏回帰係数(HEV1)

0-20km/h 20-40km/h40-80km/h 80-km/h

-1.0-0.50.00.51.0

平均速度平均速度_逆数

平均速度_2乗

1トリップ距離

ソーク時間

気温気温_3乗総⾛⾏距離

⽇射量

ライト

地域

エコランプ

エコSW

標準偏回帰係数(HEV2-1)

0-20km/h 20-40km/h40-80km/h 80-km/h

Page 86: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

83

図 4.1-7 エコランプ点灯率と HV エコゾーンスコアの速度域別偏回帰係数

ある 1 つの説明変数の燃費向上効果を確認するため、その説明変数だけを変化させ、

それ以外の説明変数を固定した場合の燃費の変化を求めた。固定値は中央値や平均値な

どを参考に表 4.1-8 のように設定した。平均速度、1 トリップ距離、気温、エコランプ

点灯率、HV エコゾーンスコア、エコスイッチ ON 率について結果を図 4.1-8 に示す。

表 4.1-8 説明変数の固定値と変化値

-0.14

-0.12

-0.10

-0.08

-0.06

-0.04

-0.02

0.00エコランプ点灯率の偏回帰係数

CONV1CONV2HEV1HEV2-1 -0.07

-0.06

-0.05

-0.04

-0.03

-0.02

-0.01

0.00HVエコゾーンスコアの偏回帰係数

HEV1HEV2-1

単位 固定値 変化値x1 平均速度 km/h 23 0.7〜130x2 平均速度の逆数 (km/h)-1 0.04 x1に対応x3 平均速度の2乗 (km/h)2 529 x1に対応x4 1トリップ距離 km 9 5〜400x5 ソーク時間 s 6,500x6 気温 ℃ 19 -8〜39x7 気温の3乗 ℃3 6,859 x6に対応x8 総⾛⾏距離 km 10,000x9 AC ON率x10 AC設定温度 ℃x11 ⽇射量 MJ/m2 0.93x12 ライト点灯ダミー(OFF:0/ON:1) 0x13 地域ダミー(東京:0/東北:1) 0x14 エコランプ点灯率(0〜100) 90 0〜100x15 HVエコゾーンスコア(0〜100) 67 0〜100x16 エコSW ON率(0〜100) 0 0〜100x0 《定数項》

説明変数

Page 87: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

84

(a)平均速度 (b)気温

(c)1 トリップ距離 (d)エコランプ点灯率

(e)HV エコゾーンスコア (f)エコスイッチ ON 率

図 4.1-8 ある 1 つの説明変数を変化させた時の燃費の変化

0

2

4

6

8

10

12

14

-10 -5 0 5 10 15 20 25 30 35 40

燃費

(L/1

00km

)

気温 (℃)

CONV1 CONV2HEV1 HEV2-1

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130

燃費

(L/1

00km

)

平均速度 (km/h)

CONV1CONV2HEV1HEV2-1

0

2

4

6

8

10

12

0 50 100 150 200 250 300 350 400

燃費

(L/1

00km

)

1トリップ距離 (km)

CONV1CONV2HEV1HEV2-1

02468

101214161820

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

燃費

(L/1

00km

)

エコランプ点灯率

CONV1CONV2HEV1HEV2-1

0

2

4

6

8

10

12

14

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

燃費

(L/1

00km

)

HVエコゾーンスコア

HEV1HEV2-1

0

2

4

6

8

10

12

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

燃費

(L/1

00km

)

エコスイッチON率

CONV1 CONV2HEV1 HEV2-1

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85

平均速度と燃費の関係について、エコランプと HV エコゾーンへの追従による変化を

図 4.1-9 に、全国の平均速度(31.5km/h)1における燃費向上効果(燃費減少率)を表

4.1-9 にそれぞれ示す。エコドライブ支援ツールへの追従でどの平均速度でも燃費が向

上する。エコランプ点灯率が 0 から 100 に変化した場合の燃費減少率は、全国の平均速

度において 33%~60%であり、コンベ車での効果がより大きい。エコランプ点灯率の平

均は 80~90%とすでに追従度が高く現状でも燃費向上に大きく寄与しているが、さらに

燃費を 6%~10%削減するポテンシャルがある。HV エコゾーンスコアにおいても同様の

傾向を示す。HV エコゾーンスコアが 0 から 100 に変化した場合の燃費減少率は、全国

の平均速度において 47%~58%である。HV エコゾーンスコアの平均は 60~66%とすで

に追従度が比較的高く現状でも燃費向上に大きく寄与しているが、さらに燃費を 27%~

32%削減するポテンシャルがある。

(a)エコランプ点灯率と HV エコゾーンスコアが 0 から 100 に変化した場合

(b)エコランプ点灯率と HV エコゾーンスコアが平均値から 100 に変化した場合

図 4.1-9 エコドライブ支援ツールへの追従による速度と燃費の関係の変化

1 国土交通省「平成 27 年度全国道路・街路交通情勢調査 一般交通量調査 集計結果整理表」、昼間 12時間平均旅行速度 http://www.mlit.go.jp/road/census/h27/data/pdf/syuukei05.pdf

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130

燃費

(L/1

00km

)

平均速度 (km/h)

HEV1_HVエコゾーン 0HEV1_HVエコゾーン 100HEV2-1_HVエコゾーン 0HEV2-1_HVエコゾーン 100

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130

燃費

(L/1

00km

)

平均速度 (km/h)

CONV1_エコランプ 0 CONV1_エコランプ 100CONV2_エコランプ 0 CONV2_エコランプ 100HEV1_エコランプ 0 HEV1_エコランプ 100HEV2-1_エコランプ 0 HEV2-1_エコランプ 100

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130

燃費

(L/1

00km

)

平均速度 (km/h)

CONV1_エコランプ 平均93 CONV1_エコランプ 100CONV2_エコランプ 平均91 CONV2_エコランプ 100HEV1_エコランプ 平均86 HEV1_エコランプ 100HEV2-1_エコランプ 平均80 HEV2-1_エコランプ 100

0

5

10

15

20

25

30

35

40

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130

燃費

(L/1

00km

)

平均速度 (km/h)

HEV1_HVエコゾーン 平均66HEV1_HVエコゾーン 100HEV2-1_HVエコゾーン 平均60HEV2-1_HVエコゾーン 100

Page 89: 29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 ( …平成29 年度省エネルギー政策立案のための 調査事業 (自動車単体対策に係る調査検討事業)

86

表 4.1-9 全国の平均速度(31.5km/h)における燃費減少率

以上より、エコドライブ支援ツールによる燃費向上効果を以下にまとめる。

・ 今回対象とした 3 つのエコドライブ支援ツールは燃費向上に寄与した。

・ エコランプ点灯率と HV エコゾーンスコアの燃費向上への寄与度は、他の因子と比

べて比較的大きかった。エコランプ点灯率と HV エコゾーンスコアが 0 から 100 に

変化した場合の燃費減少率は、全国の平均速度(31.5km/h)においてそれぞれ 33%

~60%、47%~58%であった(ただし、エコランプ点灯率の平均 80%から 90%、エ

コゾーンスコアの平均は 60%程度なので、平均的なユーザーの努力により可能な燃

費減少率は 0 から 100 に変化した場合より小さい範囲に留まる)。

・ エコスイッチ ON により、1.2%から 3.3%(平均 2.5%)燃費が向上する。ヒーター

稼働管理が重要となる低温域で、より大きな燃費向上(5℃以下の低温で 1.7%から

5.2%(平均 3.5%)向上)の傾向を示した。

・ エコドライブ支援ツールの燃費向上効果は、速度域によらず同様の傾向を示した。

・ エコドライブ支援ツールの燃費向上効果は、地域(東京と宮城・山形)によらず同

様の傾向を示した(地方によって速度・気温・運転者層による加速度の違いにより

燃費は異なるが、平均速度・気温・加速度(エコランプ点灯率など)など燃費に影

響する要因を概ね含んだ解析を行っており、それらの因子以外による燃費差(地域

による燃費差)はないはずなので、これが正しい結果と考えられる。ごくわずかに

差があるのは、勾配、スタッドレスタイヤ装着率による転がり抵抗の差、補機類の

使用率の差などが考えられる)。

4.2 運転手のエコドライブ支援ツールの利用の継続性に関する検討

前節において、エコドライブ支援ツールには燃費向上効果があり、図 4.1-2 に示すよ

うにエコドライブ支援ツールの利用率は高く、エコドライブ支援ツール搭載車は実際に

燃費向上に大きく寄与していることがわかった。本節ではこの効果に継続性があるかを

検討する。検討に際し、自動車メーカー3 社を交えた意見交換会で得られた内容も参考

CONV1 CONV2 HEV1 HEV2-193 91 86 80

燃費 エコランプ点灯率 0 16.89 11.70 5.43 10.51(L/100km) エコランプ点灯率 平均 7.46 7.27 3.56 7.79

エコランプ点灯率 100 6.74 6.82 3.26 7.09燃費減少率 0→100 60.1% 41.7% 40.0% 32.6%

平均→100 9.7% 6.2% 8.5% 9.0%ー ー 66 60

燃費 HV ECOゾーンスコア 0 ー ー 5.68 10.59(L/100km) HV ECOゾーンスコア 平均 ー ー 3.51 7.63

HV ECOゾーンスコア 100 ー ー 2.38 5.59燃費減少率 0→100 ー ー 58.1% 47.2%

平均→100 ー ー 32.1% 26.6%

HVエコゾーンスコア 平均

エコラン

プ点灯

率HV

エコゾ

ーンス

コアエコランプ点灯率 平均

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87

にした。

テレマティクスデータの対象期間である 2017 年 1 月から 12 月の 1 年間に、エコドラ

イブ支援ツールの利用率がどのように変化するかを確認した。エコランプ点灯率と HV

エコゾーンスコアの月別推移を図 4.2-1 に、エコスイッチ ON 率の月別推移を図 4.2-2

に示す。車両全体で見ると、年間を通してほぼ横ばいであり、エコドライブ支援ツール

は継続して利用されている。今回対象とした車両の登録年度は 2014 年度から 2017 年度

で、2016 年度が 52.8%と も多く、長期間の継続性については分析できないものの、新

車の状態で年間の変化が見られないので、これ以後も経年変化はないと言える。

図 4.2-1 エコランプ点灯率と HV エコゾーンスコアの月別推移

図 4.2-2 エコスイッチ ON 率の月別推移

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1⽉ 2⽉ 3⽉ 4⽉ 5⽉ 6⽉ 7⽉ 8⽉ 9⽉ 10⽉ 11⽉ 12⽉

エコラン

プ点灯

率/

HVエコ

ゾーン

スコア

CONV1_エコランプCONV2_エコランプHEV1_エコランプHEV2_エコランプHEV1_HVエコゾーンHEV2_HVエコゾーン

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1⽉ 2⽉ 3⽉ 4⽉ 5⽉ 6⽉ 7⽉ 8⽉ 9⽉ 10⽉ 11⽉ 12⽉

エコス

イッチ

ON率

CONV1CONV2HEV1HEV2

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88

エコスイッチは燃費向上効果があり、全体的に見ると利用している運転手は継続して

利用しているが、常に利用していない運転手も一定数いる。利用していない理由として、

①エコスイッチが装備されていることをそもそも知らない、②装備されているのは知っ

ているがスイッチをいじることが億劫またはよくわからず躊躇している、③エコモード

にしたくない、などが考えられる。③については如何ともしがたいが、①や②は行動変

容の可能性があるので、メーカーやディーラーからよりしっかりと情報提供するととも

に、「エコドライブ 10 のすすめ」に記載するなどして周知を図ることが望ましい。

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89

第5章 「エコドライブ 10 のすすめ」見直しの検討

5.1 「第 2 章 自動車の 新状況の整理」結果の反映

エコドライブ 10 のすすめの見直しを検討するにあたり、従来のコンベ車と異なるエ

コドライブ方法が必要となるアイドリングストップ機能を持つ車両(ISV)およびハイ

ブリッド車両などの次世代車の普及率を考慮する必要がある。ある程度の普及率の車両

については、技術的考慮を行い、これまでのエコドライブ 10 のすすめと異なるエコド

ライブ方法の提案が必要かどうか検討した。

これまでと異なるエコドライブ方法の設定の必要性があると思われる車両のガソリン

乗用車1に占める新車販売台数を、2.1 節のデータをもとに表 5.1-1 まとめた。

表 5.1-1 各種車両の新車販売台数割合(2016 年)

表 5.1-1 の車両のうち、アイドリングストップ車、エネルギー回生車、HEV の 3 車種

については、新車販売台数のうち 3 割を超過しているため検討した。また、「平成 28 年

度省エネルギー設備導入等促進事業(エコドライブ普及推進事業)報告書」には、エコ

ドライブインジケータ(エコランプ)は 9 割、エコスイッチ(エコペダルを含む)は 5

割以上の普及と考えられるため、検討した。

なお、早稲田大学理工学術院・大聖教授、京都大学エネルギー科学研究科・塩路教授、

早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科・草鹿教授、日本自動車工業会へのエコドラ

イブに関するヒアリングを行い、その内容を下記の検討について反映した。

(1) アイドリングストップ車

エコドライブ 10 のすすめの 5 番に「ムダなアイドリングはやめよう」が記載さ

れている。新車販売の 9 割を占める ISV では、アイドリングを行わないため、将来

的には、この項目は削除して問題ないと考えられる。ISV の新車販売割合が 2013

年にガソリン乗用車の販売台数の 7 割を超えたこと、乗用車の平均寿命が 12 年で

あること、車両の経年により新車時より年間走行距離が低下することを考慮すると、

今後 10 年程度(2028 年)で従来車の走行量は大幅に低下する。そのため「ムダな

1 全乗用車に占めるガソリン乗用車の占める割合は、97%と大部分であるため、以下の新車割合は、

ほぼ全乗用車に占める割合と考えられる。

新車台数割合アイドリングストップ車 87%

エネルギー回生車 69%HEV 36%EV 0.3%

PHEV 0.3%FCV 0.03%

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アイドリングはやめよう」の表記は、以下のように変更して問題ないと考えられる。

現行「待ち合わせや荷物の積み下ろしなどによる駐停車の際は、アイドリングはや

めましょう。10 分間のアイドリング(エアコン OFF 場合)で、130cc 程度の燃料

を消費します。また、現在の乗用車では基本的に暖機運転は不要です。エンジンを

かけたらすぐに出発しましょう。」

変更後(例)「現在の乗用車では基本的に暖機運転は不要です。エンジンをかけたら

すぐに出発しましょう。」(ただし、エアコンを使用するためのアイドリングの使用

を避ける記述を追加するべきかの検討は必要と考えられる)

(2) エネルギー回生車

エネルギー回生車は、減速時に運動エネルギーを電気エネルギーに変換し走行エ

ネルギーとして使用する。そのため、減速によるエネルギーの損失が少ないが、回

生、充電、駆動の各効率は 100%でないため、緩やかな加減速走行に比べ急な加減

速では、燃費が悪化する点は、従来車と同様である。

したがって、エネルギー回生車については、エコドライブ 10 のすすめ(とくに、

2 番目「車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転」、3 番目「減速時は

早めにアクセルを離そう」)を変更する必要はないと考えられる。

(3) HEV

・モーター走行時間率の増加

HEV(特にストロング HEV)は、エンジン駆動の時間を短くモーターのみで走

行する時間を長くする運転をすることで、エコドライブになる1。モーターのみで走

行することと加速度を小さくすることは、ほぼ同様であるため、エコドライブ 10

のすすめの1番目「ふんわりアクセル「e スタート」」、2 番目「車間距離にゆとりを

もって、加速・減速の少ない運転」と内容は類似する。項目数は変更せずに、モー

ター走行時間の長くすることが燃費向上につながるという意味の内容の追記で、良

いと考えられる。

これに関連し、特定のメーカーの HEV には、モーターのみの運転時間率に相関

する表示機能によるエコドライブ支援ツールが装備されており、このような車両に

装備された情報機能を活用することも考慮すべきと考えられる。

・回生エネルギーの回収率の向上

1 理由:車両の走行エネルギーを同一とした場合、同じエネルギーを発生するためのエンジン運転時

間を短くすることであり、そのことはすなわちエンジンを高負荷(高トルク)の熱効率の高い領域で

同一エネルギーを発生させる運転となるためである。

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(2)項エネルギー回生車の項と同様であり、回生したエネルギーを駆動に使用する

際の効率は 100%でないため、緩やかな減速走行に比べ急な減速では、燃費が悪化

する点は、従来車と同様である。エコドライブ 10 のすすめの 3 番目「減速時は早

めにアクセルを離そう」)を変更する必要はないと考えられる。

(4) エコドライブ支援ツール(エコランプ)

ドライバーにエコドライブ度合いの情報をリアルタイムに伝えるエコランプなど

エコドライブ支援ツールは、第 4 章 での検討結果より、燃費向上に効果があるこ

とが分かった。したがって、エコドライブ 10 のすすめへの記載を行うべきと考え

られる(5.2 節参照)。

(5) エコドライブ支援ツール(エコスイッチ)

車両のスイッチを ON にすることにより、燃費を向上させる車両制御を行うエコ

ドライブ支援ツール(エコスイッチ)は、第 4 章 での検討結果より、燃費向上に

効果があることが分かった。したがって、エコドライブ 10 のすすめへの記載を行

うべきと考えられる(5.2 節参照)。

5.2 「第 4 章 エコドライブ支援ツールによる行動変容の効果検証及びその継続性に

関する検討結果」の反映

(1) エコドライブ支援ツール

第 4 章 において検討した 3 種類のエコドライブ支援ツール(エコランプ、HV エコ

ゾーン、エコスイッチ)による燃費変化率を表 5.2-1 に示す。エコランプでは平均点灯

率から標準偏差の点灯率だけ乖離すると 8%燃費が変化し、HV エコゾーンでは同様に

11%変化する。エコスイッチ OFF に対して ON では 2%の燃費改善がある。これらは

エコドライブ 10 のすすめに記載されている他の項目による 2%から 12%の燃費向上率

と比べて無視できない燃費変化(改善)であり、エコドライブ 10 のすすめに記載すべ

き項目と考えられる。

これらの項目は、エコドライブ 10 のすすめの 10 番目「自分の燃費を把握しよう」の

一部として記載することも考えられるが、1 番目の「ふんわりアクセル『e スタート』」

と 2 番目の「車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転」の項に「エコラン

プやエコスイッチを活用することによっても 10%燃費を改善します」等の記載を追加す

べきと考えられる。さらに HEV については「ハイブリッド車では、モーター走行率を

表す表示を参考にした運転をすることによって 10%燃費を改善します」等の記載を追加

すべきと考えられる。

ただし、第 4 章 において得られたエコドライブ支援ツールの燃費改善効果は、特定

の 1 社の車両において得られたものであり、国内で走行している車両一般についても成

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り立つかを検証する必要がある。

表 5.2-1 エコドライブ支援ツールによる燃費変化率

(2) エコドライブ支援ツールによる行動変容の継続性

① エコランプ、HV エコゾーン

4.2 節において、エコランプ、HV エコゾーンの追従率の平均値は 9 割程度と十分に

高く、かつ継続性があった。したがって、エコランプ、HV エコゾーンのようなリアル

タイムでユーザーに情報をフィードバックするタイプのエコドライブ支援ツールの使用

の継続性に関して、エコドライブ 10 のすすめに追加記載の必要はないと考えられる。

② エコスイッチ

コンベ車1 コンベ車2 HEV1 HEV2 平均

JC08条件における燃費(L/100km)

9.5 9.0 4.0 8.6

燃費に対する偏回帰係数(L/100km)/%

-0.101 -0.049 -0.022 -0.034 -0.052

平均点灯率 % 93 91 86 80 87

点灯率(%)の標準偏差 7 11 15 21 13

標準偏差ケースでの燃費(L/100km)変化

-0.728 -0.555 -0.322 -0.705 -0.578

JC08条件における燃費(L/100km)に対する燃費変化率 %

-8 -6 -8 -8 -8

燃費に対する偏回帰係数(L/100km)/%

-0.033 -0.050 -0.042

平均スコア 66 59 63

スコアの標準偏差 14 20 17

標準偏差ケースでの燃費(L/100km)変化

-0.459 -0.986 -0.723

JC08条件における燃費(L/100km)に対する燃費変化率 %

-11 -11 -11

エコスイッチON時の燃費変化(L/100km)

-0.2 -0.1 -0.1 -0.1 -0.13

JC08条件における燃費(L/100km)に対する燃費変化率 %

-2 -1 -2 -1 -2

エコスイッチ

エコランプ

HVエコゾーンスコア

(0~100)

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93

4.2 節において、エコスイッチの継続性はあるものの、スイッチ ON 率は 5 割程度

である。エコドライブ 10 のすすめで、エコスイッチを運転前に ON にすることを喚起

する記載を加えることにより、ある程度の燃費の改善が考えられる。

5.3 「エコドライブ 10 のすすめ」見直しの検討まとめ

以上の検討からエコドライブ 10 のすすめについてアンダーラインで記載した加筆・

変更をすべきと考える。

1.ふんわりアクセル「e スタート」

発進するときは、穏やかにアクセルを踏んで発進しましょう( 初の5秒で、時速20km

程度が目安です)。日々の運転において、やさしい発進(注1、注 2)を心がけるだけで、

10%程度燃費が改善します。焦らず、穏やかな発進は、安全運転にもつながります。

(注 1)エコランプやエコスイッチを活用することでも、やさしい発進になります。

(注 2)ハイブリッド車では、モーター走行を多用するやさしい発進でさらに燃費向上

します。

2.車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転

走行中は、一定の速度で走ることを心がけましょう。車間距離が短くなると、ムダな

加速・減速の機会が多くなり、市街地では 2%程度、郊外では 6%程度も燃費が悪化しま

す。交通状況に応じて速度変化の少ない運転(注 3)を心がけましょう。

(注 3)エコランプやエコスイッチを活用することでも、加速・減速が少ない運転にな

ります。

3.減速時は早めにアクセルを離そう

4.エアコンの使用は適切に

5.ムダなアイドリングはやめよう(アイドリングストップ車の普及を考慮し 10 年程度

後をめどに廃止を検討)

6.渋滞を避け、余裕をもって出発しよう

7.タイヤの空気圧から始める点検・整備

8.不要な荷物はおろそう

9.走行の妨げとなる駐車はやめよう

10.自分の燃費を把握しよう

11.エコスイッチを活用しよう(エコスイッチは、1、2 項に入っているが、エコスイッ

チ ON 率が低いため、独立した項目として加えエコスイッチ ON 率を引き上げるべきか

要検討)

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第6章 まとめ

本調査では、自動車単体対策とエコドライブの効果について、国際的な動向を踏まえ

つつ、野心的な世界 高水準の自動車単体対策とエコドライブの普及に向けた調査・検

討を行った。各実施項目の結果を以下にまとめる。

(1)自動車の 新状況の整理

各種省エネルギー対策技術別に、2016 年までの乗用車の新車生産台数(または新

車販売台数)を整理した。(2.1 節)

ガソリンを燃料とする通常の内燃機関の乗用車とハイブリッド乗用車の燃費に影

響を与える因子を工学的な観点から検討した。その結果から、総排気量、車両重

量、フットプリント、車室内容積を燃費基準の指標候補とし、それらを燃費基準

の指標とする際のメリット・デメリットを整理した。なお、この部分(2.2 節)は

別に英訳版を作成した。

自動車のライフサイクルにおけるエネルギー消費量や CO2 排出量等を分析する手

法である Well to Wheel 分析の評価手法や主要文献の概要を整理した。(2.3 節)

(2)自動車に関する省エネ情報の提供の在り方の検討

既往文献からユーザーの燃費や次世代車への関心度を整理した。(3.1 節)

販路や販売店における省エネ情報提供の現状を把握するため、販売店や自動車メー

カーを対象に 3 件のアンケート調査(WLTC モード燃費表示、次世代自動車の情

報提供、店頭展示車のモード燃費表示)を実施し、自動車販売協会連合会の会合

で意見交換も行った。また欧米における燃費情報の提供状況について整理した。(3.2

節)

以上を踏まえ、ユーザーに訴求力のある情報提供の在り方を検討した。(3.3 節)

(3)エコドライブ支援ツールによる行動変容の効果検証及びその継続性に関する検討

自動車メーカーから入手したテレマティックデータを解析し、エコドライブ支援

ツールが燃費向上に寄与することを定量的に明らかにした。(4.1 節)

上記データ解析から、エコドライブ支援ツールの燃費向上効果に継続性があるこ

とを明らかにした。検討にあたっては自動車メーカー3 社との合同意見交換会での

内容も反映した。(4.2 節)

(4)「エコドライブ 10 のすすめ」見直しの検討

第 2 章で整理した次世代車の普及状況や第 4 章で実施したテレマティクスデータ

の分析結果を踏まえて、「エコドライブ 10 のすすめ」の見直しを検討した。検討

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にあたっては、大学の有識者および日本自動車工業会へのヒアリング結果を反映

した。(5.1、5.2 節)

以上を踏まえて、「エコドライブ 10 のすすめ」見直し案を提示した。(5.3 節)

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- 禁無断転載 -

経済産業省資源エネルギー庁委託

平成 29 年度省エネルギー政策立案のための調査事業

(自動車単体対策に係る調査検討事業)

調査報告書

平 成 30 年 3 月

発 行 一般財団法人 日本自動車研究所

〒305-0822 茨城県つくば市苅間 2530

TEL 029(856)1120