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1 Copyright © 2018 Accenture All rights reserved 平成29年度石油精製等に係る保安対策調査等事業 (産業保安・製品安全分野におけるデータ利活用に関する調査) 調査報告書 2018年3月30日 アクセンチュア株式会社

平成29年度石油精製等に係る保安対策調査等事業 (産業保安・製 … · 平成29年度石油精製等に係る保安対策調査等事業 (産業保安・製品安全分野におけるデータ利活用に関する調査)

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平成29年度石油精製等に係る保安対策調査等事業(産業保安・製品安全分野におけるデータ利活用に関する調査)

調査報告書

2018年3月30日アクセンチュア株式会社

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目次

1. はじめに

(1) 背景 ・・・ 4

(2) 目的 ・・・ 5

(3) 実施作業 ・・・ 6

2. データ利活用事例調査

(1) 調査対象事例のテーマ分類 ・・・ 8

(2) 調査対象事例 ・・・ 9

(3) 現地調査対象 ・・・ 11

(4) 事例調査から得られた示唆 ・・・ 15

3. データ利活用案の検討

(1) 検討アプローチ ・・・ 17

(2) 抽出された利活用案 ・・・ 18

4. 産業保安・製品安全分野における利活用の可能性

(1) 導入すべき利活用策の選定 ・・・ 25

(2) 利活用策詳細 ・・・ 31

(3) 導入に向けて必要な作業 ・・・ 44

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1. はじめに

(1) 背景 ・・・ 4

(2) 目的 ・・・ 5

(3) 実施作業 ・・・ 6

2. データ利活用事例調査

(1) 調査対象事例のテーマ分類 ・・・ 8

(2) 調査対象事例 ・・・ 9

(3) 現地調査対象 ・・・ 11

(4) 事例調査から得られた示唆 ・・・ 15

3. データ利活用案の検討

(1) 検討アプローチ ・・・ 17

(2) 抽出された利活用案 ・・・ 18

4. 産業保安・製品安全分野における利活用の可能性

(1) 導入すべき利活用策の選定 ・・・ 25

(2) 利活用策詳細 ・・・ 31

(3) 導入に向けて必要な作業 ・・・ 44

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(1)背景

業務効率化・高度化のため、現在貴省では産業保安・製品安全分野における電子申請システムの構築を推進中。同システムにより蓄積されるデータを中心とした、データ利活用に係る検討を本調査では実施した。

指導や立入検査における課題

産業保安等の分野における現状の課題

保安への意識・能力の低下

✓ 保安意識の低い電気工作物設置者の増加

施設数に比して職員数が少ない

✓ 監督部の担当職員数50人に対して、施設数電気工作物のみでも80万ヶ所

業務水準の低下に対する懸念

✓ ベテラン職員の「勘と経験」への依存

✓ 専門知識を有した職員の後継者問題

多くの業務が標準化・電子化されていない

✓ 多くが手作業であり、基準・方法が各監督部等にて非統一

✓ 保安に直結しない業務が多い

手続数に比して職員数が少ない

✓ 年間約27万件の手続に対し、監督部の担当職員は約50人

申請手続処理における課題

本省・監督部等の業務効率化・

高度化に対する必要性の高まり

事業者の意識低下

産業保安・製品安全分野における手続に係る電子申請システムの

構築

制度変更に伴う手続件数の増加

✓ 固定買取制度の導入・改正や電力・ガスの自由化に伴う設備増加により、手続数が増加

手続数の増加

申請手続処理業務によって

職員の業務量が膨大に

電子申請システムを前提としたデータ利活用

の検討

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(2)目的

本調査では、まず「他組織ではどのようなデータ利活用をしているのか」を明らかにした上で、産業保安・製品安全分野にて、「どのようなデータ利活用が可能か」、「どのようなデータ利活用策の導入が望ましいか」、「導入に向けて何を実施すべきか」を明らかにすることを目的とする。

本調査で明らかにすること

どのようなデータ利活用が可能か

どのようなデータ利活用策の導入が望ましいか

導入に向けて何を実施すればよいか

他組織ではどのようなデータ利活用をしているのか

国内外の企業・行政機関では、どのように業務にデータを利活用することで効率化・高度化を図っているのか

データの整備や分析モデルの検討、現場への導入の際にどのような工夫をしているのか

産業保安・製品安全分野では、解決すべき課題や政策の方向性等から、どのようなデータ利活用の案があり得るか

様々なデータ利活用の案から、産業保安・製品安全分野にて導入が望ましいデータ利活用策は何か

導入すべきデータ利活用策を実際に導入するに当たって、いつ、どのような作業を実施していくべきか

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(3)実施作業

データ利活用事例の調査結果も参考に、産業保安・製品安全分野でのデータ利活用案を網羅的に抽出し、その中から、導入が望ましい利活用策を選定の上、導入に向けて必要な作業を洗い出した。

本調査で明らかにすること(再掲)

どのようなデータ利活用が可能か

どのようなデータ利活用策の導入が望ましいか

導入に向けて何を実施すればよいか

他組織ではどのようなデータ利活用をしているのか

実施作業

データ利活用策の検討

データ利活用事例調査

分野・実施主体の属性(公共機関/民間企業)・国内外の別によらず、業務にデータを利活用することで効率化・高度化を図っている事例を調査

文献調査のみならず、現地調査も実施

データ利活用事例の調査結果も含め、多方面からの検討を経て産業保安分野での応用方法について洗い出し

各利活用案から産業保安・製品安全分野にて特に優先的に導入すべき利活用策を選定

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1. はじめに

(1) 背景 ・・・ 4

(2) 目的 ・・・ 5

(3) 実施作業 ・・・ 6

2. データ利活用事例調査

(1) 調査対象事例のテーマ分類 ・・・ 8

(2) 調査対象事例 ・・・ 9

(3) 現地調査対象 ・・・ 11

(4) 事例調査から得られた示唆 ・・・ 15

3. データ利活用案の検討

(1) 検討アプローチ ・・・ 17

(2) 抽出された利活用案 ・・・ 18

4. 産業保安・製品安全分野における利活用の可能性

(1) 導入すべき利活用策の選定 ・・・ 25

(2) 利活用策詳細 ・・・ 31

(3) 導入に向けて必要な作業 ・・・ 44

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(1)調査対象事例のテーマ分類

企業の諸活動におけるデータ利活用の類別から、産業保安・製品安全分野での応用が見込まれるものを調査事例のテーマ分類として6つ抽出した。併せて、データの取得や公開の方法の類別からも、2つ抽出した。

産業保安・製品安全分野への応用が見込まれるもの

凡例:

企画・営業・マーケティング 調達・製造 流通・販売(サービス提供) カスタマーサポート

人事・労務管理

会計管理

法務

人材可視化・最適配置人材・予算のリソース配分

需要予測・マーケティング余剰資材の減少

保安のトラブル検知・防止

余剰在庫の減少

歩留まり率低下

事業者の意識・感情分析

事業者の不正分析広告施策の効果試算 料金回収漏れの発生

内部のミス・不正を防ぐ

人材・予算のリソース配分

労務管理

内部のミス・不正を防ぐ

非構造データ・SNSの分析

ビッグデータの公開・活用

企業の諸活動における

データ利活用の類別

データ取得・

公開方法の

類別

A

B

C

D

E F

F D

G H

不正分析として統一

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選定されたテーマや、実施主体の属性や地域を網羅的に充足するよう、下記の20事例について調査を実施した。

(2)調査対象事例(1/2)

詳細はデータ利活用事例集参照

概要タイトル 実施主体テーマ

需要予測・

マーケ

ティング

保安の

トラブル

検知・防止

事業者の

意識・

感情分析

事業者の不正分析

商業銀行におけるリスク度合いに基づく融資先の分類

商業銀行(海外)

経済予測といった変動的な要素を踏まえた、より長期的な目線での融資妥当性を分析するモデルを構築

小売業における需要予測と最適価格の設定

小売業者(海外)

販売実績のない初回の売り出し商品の売上を最大化するために、回帰分析を用いて需要予測を立て、線形計画法によって最適な設定価格を算出

製造工程の課題発見と改善による製品の品質向上

電力会社におけるIoTデータを用いた異常検知

製造業(国内)

電力会社(海外)

機械学習を用いて、ある工程での品質のばらつきを生む要素を特定

PMU(電源管理ユニット)のデータから異常を発見するべき、管理図的な手法と機械学習手法をミックスした異常検知モデルを開発

クレーム内容から製品トラブルの根本原因を早期発見

製造業(海外)

顧客の不満や製品の問題要因の早期に検知をするためのデータ分析用のシステムを構築

顧客の感情分析によるネガティブ要因の抽出

小売業者(海外)

顧客の意見や問合せといったテキストデータから、ネガティブな感情を引き起こす要因となるキーワードを抽出することで、効果的な業務プロセス改善を実施

税申告の不正調査を効率化・高度化

国税局(海外) 税申告データを利用し、不動産購入・税務申告・ローン・銀行口座および雇用データなどを利用した脱税・不正リスク分析を実施

生活扶助制度の不正受給発見と調査の改善

公的扶助制度(海外)

公的扶助制度の不正検知プロセスの効率性を高めるため、不正受給者の傾向分析モデルを開発

業界内各社横断データの活用による不正の発見と防止

保険協会(海外)

ハイブリッド分析モデルを使用し、組織詐欺、過剰請求、サービスプロバイダ詐欺、内部詐欺など、複数の詐欺の種類を特定

機械学習による違反コンテンツの検出

デジタルコンテンツ配信会社(海外)

機械学習を用いて、コンテンツ提供者の不正検知の効率と精度を向上

A

B

C

D

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(2)調査対象事例(2/2)

概要タイトル 実施主体

詳細はデータ利活用事例集参照

テーマ

人材マッチングの自動化 IT企業(海外) 雇用主と求職者双方にリアルタイムで最適なポジションのリコメンデーションを行う人材マッチングのアルゴリズムを構築し、就職・採用活動の為のプラットフォームを提供

ローパフォーマーの特性分析による採用基準の改善

保険会社(国内)

量を重視した営業人員の増強を図った結果、生産性の低い社員を大量採用しつづけたことを契機に、「素養」のマッチングに着目し、採用におけるボーダーラインを再構築

需要予測によるレベニューマネジメントの実現と業務効率化

航空会社(国内)

アナリティクスの活用により将来運航便の需要予測や各種施策立案を行うことにより、収益改善と業務効率化を達成

投資銀行における全社横断的なコストの可視化

投資銀行(海外)

多岐に亘る事業をグローバルで展開するE銀行では、社内既存データを有効に組み合わせ、アジャイル開発により複数の分析を繰り返し実行

損傷程度の画像認識による事故車両の分類

国損害保険会社(海外)

事故車両の損傷度の計測にかかる人的・時間的コストを削減するために、事故車両の画像から損傷程度を認識する基礎モデルを構築

訪日外国人の北海道への来訪促進のための動態分析、SNS分析

北海道観光振興機構(国内)

主な国・地域の観光客の、観光先や周遊ルートなどの来訪の実態を分析(動態分析)。また、SNS投稿から、北海道の各地域の認知度や評価を分析(SNS分析)

公共データの開示によるアプリケーションやサービスの構築

NPO法人(海外)

自治体、市、州、国などの自治体が公開しているデータを用いて、様々なアプリケーションやサービスをリリース。他州での行政サービスの向上を目指し、ソースコードを公開

ボストン市におけるオープンガバメントの取り組み

ボストン市(海外)

市長管轄のアナリティクス部門が中心となり、市の部門間横断的なデータを活用できる体制を構築。大学や市民との連携によるオープンガバメントを目指し、ビッグデータを公開

会津若松市におけるデータを用いた市民サービス

会津若松市(国内)

データ分析やビッグデータを活用したオープンガバメントの実現、新たな地方創生モデルの創出

人材可視化・

最適配置

人材・予算の

リソース配分

非構造

データ・

SN

S

の分析

ビッグデータの公開・

活用

ニューヨーク市におけるビッグデータを活用した市政改革

ニューヨーク市(海外)

市長管轄のデータアナリティクス部門が中心となり、市の業務の効率性を向上し、透明性のある市政を実行することを目的として、市のビッグデータを活用

E

F

G

H

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(3)現地調査対象

調査事例の中から、先進的なデータ利活用を実施している3つの事例が集積しているアメリカ東部で現地調査を実施。調査対象事例の関係者に情報の深堀りを実施した。その他、先進的なアナリティクス技術や、それを用いたサービス、人材育成についての情報収集も実施した。

優良スタートアップのコワーキングオフィス先進的なアナリティクス技術についての情報収集

社会人向けのコーディング教室テクノロジー人材育成についての示唆を得る

コンピューターサイエンス学部の公開講座テクノロジー人材育成についての示唆を得る

ニューヨーク市の市長直属のITチーム事例の深堀り・現場の生の声の収集

アマゾンが運営するリアル書店データ分析を活用したサービスについての情報収集

MIT内のデジタル技術を専門とする研究所先進的なアナリティクス技術についての情報収集

マサチューセッツ工科大学(MIT) Media Lab

ケンブリッジイノベーションセンター

ローンチアカデミー

ハーバード大学データサイエンスセミナ―

ニューヨーク市 Mayor’s Office of Data Analyticsプロジェクト

Amazon Book

コーネルテック大学コーネル大学とイスラエル工科大学の共同設立テックキャンパス

テクノロジー人材育成についての示唆を得る

MITとアクセンチュアの協働プロジェクト事例の深堀り・現場の生の声の収集

小売企業Rue La La

ボストン

ニューヨーク

都市 訪問先 概要 訪問の目的

(凡例) :調査対象事例

ボストン市のITに係る全般を管理するチーム

事例の深堀り・現場の生の声の収集

ボストン市 イノベーション&テクノロジー課

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(参考) 現地調査 -先進的なデータアナリティクス技術の紹介

MIT Media Lab(メディアラボ)で視察した研究中の事例の内、産業保安分野での活用が考えられる3例を挙げる。

メールやインスタントメッセージの送信履歴、SNS上の投稿、撮影した写真、位置情報といったオンライン上の活動データを機械学習により分析することで、アプリケーション上にデジタル版の個人を構築

個人のノウハウや知恵を「アイデンティティ」として切り出すことで、チャットボット、音声ボット、バーチャルリアリティ上の3Dアバターといったあらゆる形で、指定したネットワーク内で他者に貸出可能とする(例えば弁護士の「アイデンティティ」を自分のアプリケーションに追加すれば、法律に関する他者からの問いにボットが回答してくれる、など)

「Augmented Eternity and Swappable Identities」(永続的に交換可能なアイデンティティ)

本省と監督部間のメールのやり取り、電子申請システム上で蓄積された、事業者からの問合せと監督部による回答履歴などの情報を蓄積したデータベースから、特定の法令や分野に精通した職員や、長年の経験や勘を兼ね備えたベテラン職員などの「仮想職員」をデジタル上に構築

事業者からの問合せ先に対し、上記の「仮想職員」が自動回答することで、適切な知見を持った職員の回答が可能になると共に、実施の監督部職員の対応工数を削減

出典:MIT Media Labクレジット:Hossein Rahnama

事例①

【プロジェクト名】

【概要】

【産業保安分野での活用イメージ】

アプリケーション画面のイメージ(画像1)

アプリケーション画面のイメージ(画像2)

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(参考)現地調査 -先進的なデータアナリティクス技術の紹介

事例②

事例③

「RFly」(RFIDと「飛行」という意味のFlyを掛け合わせた造語)

【プロジェクト名】

識別情報などのデータを格納した、Radio Frequency Identifier(RFID:無線ICタグ)から送受信される情報をドローンが回収

精緻な位置情報に加え、経年状況等を含めた在庫情報の一元管理を可能とし非効率な在庫回転や在庫配置のミスによるコストを削減

【概要】

同様の技術によって、電気やガスに関する製品等が輸入・保管される倉庫において、製品の経年状況把握や在庫管理に活用することで事業者側の管理コストを削減

【産業保安分野での活用イメージ】

2016~2017年に投稿された12万6千件のニュースを、6つの独立組織からの情報を元に、真実のニュースと虚偽のニュースに分類

それぞれのニュースの拡散速度や回数、広さを可視化し、虚偽ニュースの特性(比較的、情報鮮度が高い・拡散速度が高い・拡散範囲が広いなど)を把握

「Spread of False and True Information Online」(オンライン上の虚偽と真実の拡散)

【プロジェクト名】

【概要】

【産業保安分野での活用イメージ】 停電や災害、大規模な製品事故など有事の際に、SNS上の関連投稿を、公的機関による公式発表等と照合し、信憑性を区別 また、投稿種別による投稿のシェア回数や範囲等、特徴の可視化により、早く対策を打つべき対象やルートの特定に活用

ドローンによる倉庫内管理のイメージ

虚偽ニュース(赤)と真実のニュース(青)の拡散の可視化イメージ

出典:MIT Media Labクレジット:Peter Beshai and Soroush Vosoughi

出典:MIT Media Labクレジット:MIT Media Lab/Fadel Adib and Jimmy Day

(画像3)

(画像4)

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(参考)現地調査 –現場の生の声

円滑な導入を進めるためにはトップダウンによるプロジェクトの推進

が有効

内部人材だけでなく、外部のアナリティクス人材や教育機関との

連携が有効

過去データの活用は洞察力の獲得・向上に

有効

ニューヨーク市 ボストン市 小売企業Rue La La

明確な意思系統と予算の安定性がプロジェクトの成功要因だった。

外部のデータサイエンティストによる分析体制の確立後に、徐々に業務を内製化した。

過去データと位置情報等を掛け合わせることによって、市内の現状を把握し、段階的に洞察力を高めた。

市長からの呼びかけにより優秀な人材が集約されたことが成功要因だった。

周辺大学と連携することにより、新規人材の採用と並行して必要なスキルを補完できた。

過去データや既存データの名寄せすることからビッグデータプラットフォームの構築をスタートした。

モデル導入前に、役員層が納得する結果が得られることを証明した。

MITとコンサルティング企業の協力体制により、データ専門家の知見が結集された。

過去データを分析モデルと掛け合わせることで早期から十分な洞察を得ることができた。

示唆

現地調査では、データ利活用に係るプロジェクトの遂行や体制、及び、過去データの有用性についての示唆が得られた。

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(4)事例調査から得られた示唆

産業保安・製品安全分野への応用を念頭に、どのようなデータ利活用をどのように導入したかについて、事例調査から以下のような示唆を抽出した。

事例調査を通じて答えるべき問い

データ

収集

現場への

導入

人材・組織

分析手法

使用データはどのように決定したか?

有効なデータの組み合わせをどのように発見したか?

外部データを選択したメリットは何か?

新たな分析モデルを導入する際の基準は何か?

当初の仮説と異なる結果が得られた場合、それは何か?

導入されたシステムはどのように精度向上されたか?

分析チームはどのような構成だったか・外部人材をいかに取り入れたのか?

導入時のプロセスやマネジメント体制はどのようになっているか?

分析手法はどのように選定したのか?

先進的な手法をどのように取り入れているか?

➢有効なデータの組み合わせの仮説設定には、現場の経験や勘を活用

➢新たなモデルは、そのモデルの誤差が引き起こすリスクをどこまで許容できるかにより、導入是非を判断

➢分析モデルによる結果を鵜のみにするのではなく、現場の知見や専門家の意見を取り入れる

➢アナリティクスに関する専門知識を有した人を外部から招聘し、内部人材との混合でチームを編成

➢円滑な導入を進めるために、トップダウンによりプロジェクトを推進

➢データサイエンティストと、現場の業務担当者・部門の間の意思疎通を円滑に行うための体制作り

➢まずは利用可能な分析手法をスモールスタートで試し、複数の手法を適宜組み合わせていくことでモデルを最適化

➢先進的な手法は、本格適用の前に試験的導入を行い、効果のあった分析モデルの本格的な導入を検討

2

5

6

7

事例から得られた示唆

➢結果の即時性と正確性のどちらが求められているかによって、使用データの選定方法を決定

3

4

8

9

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1. はじめに

(1) 背景 ・・・ 4

(2) 目的 ・・・ 5

(3) 実施作業 ・・・ 6

2. データ利活用事例調査

(1) 調査対象事例のテーマ分類 ・・・ 8

(2) 調査対象事例 ・・・ 9

(3) 現地調査対象 ・・・ 11

(4) 事例調査から得られた示唆 ・・・ 15

3. データ利活用案の検討

(1) 検討アプローチ ・・・ 17

(2) 抽出された利活用案 ・・・ 18

4. 産業保安・製品安全分野における利活用の可能性

(1) 導入すべき利活用策の選定 ・・・ 25

(2) 利活用策詳細 ・・・ 31

(3) 導入に向けて必要な作業 ・・・ 44

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4方向からの多面的なアプローチでデータ利活用案を抽出した。

(1)検討アプローチ

データ利活用案の抽出アプローチ

データ利活用案

事例調査結果

政策目的からの議論

データサイエンティストの視点

現場の経験・勘

事故発生率の高い事業者の抽出

想定事故被害額の大きい事業者の抽出

異例値検知による要検査・指導ポイントの抽出

監督部内における業務改善点・改善方法の抽出

ボトムアップ・アプローチ

アナロジー・アプローチ

データドリブン・アプローチ

トップダウン・アプローチ

例:

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(2)抽出された利活用案(1/6)

タイトル 内容

性能規程化に伴う判断基準の明確化

3

事業者の表彰基準の明確化4

必要事項・添付資料が揃っていない手続の未受理自動処理

5

保安意識向上に向けた周知対象の自動識別

6

問合せに対する「電気用品安全法法令業務実施ガイド」等の自動回答

7

業務効率化促進

規制緩和要望の妥当性判断の自動化

2

各申請の記載項目と監督部等での確認結果を検索可能とするデータベースを構築し、新規の申請を審査する際にデータベースから過去の類似例を検索することで監督部での判断の負担を軽減する

各事業者の自己診断やヒアリングの結果に定量的な指標を掛け合わせることで、表彰の明確な基準を策定する

申請時に必要な事項が記載されており、添付資料も添付されている手続のみを受け取る様にシステムバリデーションチェックをかけることで、監督部での審査業務の負担を軽減する

保安意識向上に向けて本省監督部等から周知すべき対象者を、過去の申請内容や問合せの状況から自動で識別する

事業者から電気用品安全法に代表される製品安全関係法に関する問い合わせの際に「電気用品安全法 法令業務実施ガイド」等のどの部分が参考となるかをシステムで自動回答する

電子申請化後の手続における、各手続にて監督部等での判断が残る箇所について、過去の申請内容をDB化し検索可能とする他、それを用いた判断や問合せ回答の自動化をする

施行規則に紐づく各内規レベルまで網羅したデータをシステムに保持しておくことで、ある基準を変更する場合、どの法令が関連するか(どの法令のどのような内容が影響するか)を自動的に抽出する

1

法令活用実績の共有8

SNSデータを活用した大規模停電時の優先的復旧地域の特定

9

業務量に対する人的リソース配置の最適化

10

要員のスキルに合わせた配置の最適化

11

監督部等での申請者に対する対応(サービス)の改善策抽出

12

法令活用に関する本省の見解を随時イントラシステム等を通じて展開するなどにより、法令活用に関する本省の見解を共有する

停電等が発生した際のSNS上で発信される関連メッセージから大規模停電時の復旧地域の優先度付や、補助電源などの導入優先配備地区の選定を行う

法令・手続毎の申請件数やそれに必要となる想定業務量といったデータから、最適な要員配置計画を自動で生成できるようにする

各法令で保安規程を定める事業者が、該当の保安規程に定められた業務を遂行するのに、適切なスキル・知識・経験等を保持する保安業務従事者を採用しているかを、申請内容から判断する

問合せや、ヘルプデスク等に寄せられた音声ベースの内容を全てテキストに変換し、そこからネガティブな意見を抽出。その上で、ネガティブな問合せが発生している要因を解析し業務改善に活かす

本省・監督部等業務の効率化

分類

審査・確認プロセスでの歩留まり率の検証

13各法令の申請手続きのステップごとに、どのプロセスで申請者側/監督部等側の業務に時間がかかっているのかを計測すると共に、問合せ等の内容から、その要因を分析し、業務改善策に反映する

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(2)抽出された利活用案(2/6)

タイトル 内容

電力インフラ設備の更改必要性の把握

16

規制緩和の妥当性判断17

災害時協力体制の構築18

重点的訓練テーマの抽出19

経年管(経年劣化したガス管)交換の勧告基準とガス管データの照合

20

保安責任者の不適合性の特定

申請者と監督部等のコミュニケーション最適化

15

設備の年数や使用状況と、地理情報などのデータを用いて、設備に関するリスク(事故発生確率や、事故発生時の被害規模など)を可視化し、設備増強や改築の優先順位をつける

IoT化を進めることで業務上のデータが入手できる仕組みにし、規制が緩すぎるか厳しすぎるのかを定量的且つ客観的なデータに基づいて判断する

事業場の情報と地理データ、ならびに地震等の災害発生時の被害シミュレーションのデータ等をかけあわせ、災害発生時の非常用電源の共有等の協力に関する事業者間の体制を構築する

各法令にて、全国の事故情報や、その原因分析結果、立入検査結果等から、重点的に事業者が訓練すべき項目を抽出する

設備の状況に関するデータ(ガス管の埋蔵年・その地域の土壌など)と、腐食しやすい土壌のデータを組み合わせ、交換の必要性の高い経年管を所有する需要家へ自動的に勧告する

保安責任者の事故情報及び検査結果、並びに副保安責任者及び代理人情報から、適性の低い保安責任者の属性を特定する

問合せで頻出する事項や正確に返答が返ってくる問合せと、そうでない問合せの表現方法を分析し、表現の定型化・自動化等の適切なコミュニケーション方法を導出し、監督部の負荷軽減を図る

14

保安周知の最適化21

事故を起こす確率の高い事業者や、事故時に被害の大きい事業者の識別

22

事故後の指導ポイント・内容の自動抽出

23

電気工作物のライフサイクルを加味した適切なアクション・時期の自動抽出

24

リコール改修施策強化が必要な製造者/販売者・地域の特定

25

事業者や鉱山の種類、事故の状況、立入検査結果等を分析をすることで、特に重点的に強化すべき部分を抽出し、保安周知の優先順位付けや周知方法・内容の最適化をする

申請情報や過去の事故・違反履歴等を基に、これから事故を起こしそうな事業者や、事故発生時に被害の大きい恐れがある事業場・製品を特定し、立入検査対象等の判断の補助とする

過去の事業者属性別の事故情報から、新規の事例においても実施すべきと類推される指導内容を抽出

各設置者の届出・申請情報に基づき、事業場設立~廃止までのライフサイクルの中で、いつ、どういったアクションが必要となるか(例えば、工作物の切替(変更)タイミングなど)をリコメンドする

製品の製造場所、販売地域、利用地域等のデータと、ソーシャルメディア上におけるリコール周知・広告などへの反応を掛け合わせることで、リコール回収施策の強化に資する情報を抽出する

本省・監督部等業務の効率化

分類

粗悪製品・リコール対象製品の自動抽出

26電気製品などを販売するHPやECサイト等の製品案内情報やレビューの内容から、粗悪な商品販売やリコールを促すべき製品の存在を識別する

事故予測・防止

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タイトル 内容

SNSデータを活用した違反対応対象製品の抽出

29

業務効率の良い鉱山の特定30

規程文書と事故の関連性特定31

法令違反事項の抽出自動化32

事故発生のアラート通知33

画像診断による事故リスクの抽出

リアルタイムでの異常検知28

電気製品等を販売するECサイトや、ソーシャルメディア上の製品に対するコメント等から、不正・不備等が予想される該当製品を抽出し、違反対応をすべき製品を検知する

事業者数、事故履歴、鉱山種別から、事業の効率の高い(事故を起こさない)鉱山を特定する。

規程文書と事故を起こしたことのある事業所の関連性を抽出し、問題のある規程文書からリスクの高い事業所等を導出する

各法令における、過去の規制緩和事例などのデータを元に、事故の発生時に、その事故が規制緩和に紐づくものなのかを自動で判断する

SNSやニュース報道からの情報を分析し、事故の発生およびその状況をより早く把握できるようにする

申請時に提出されてくる構内図や単線結線図等の情報を画像認識し、事故リスクを算出する

各事業場の電気工作物の電力情報等をリアルタイムで収集するとともに、定期的な工事、改修等の情報を収集し、異常値発生時に、該当事業場の設置者や主任技術者へアラートを発信する

27

火薬類取締法の適応除外の妥当性の判断

34

事故報告漏れの自動検知35

画像診断による事故発生原因の特定

36

事故を起こした事業者の識別37

立入検査実施ポイントの自動抽出38

SNS分析や海外での類似製品の事故発生歴などのデータから、適応除外を検討中・もしくは適応除外したものの事故状況を確認し、適応除外判断や適応除外の効果検証に繋げる

労働基準監督署に提出された労災申請の情報(鉱業に限る)を基に、監督部に報告せずに労災申請だけ行っている事業者を抽出

過去に事故が発生した事業場における画像データとその事故原因、損害額等のサンプルデータを作成し、画像認識のアルゴリズムにより、事故発生原因、復旧までの想定リードタイム、必要となる機器を自動で判定するとともに、事故保有のの届出に必要となる情報を自動で作成する

過去に事故の起きた事業者を特定する

立入検査実施時に検査すべき箇所等を過去の申請情報から自動抽出する

分類

事故予測・防止

立入検査効率化

(2)抽出された利活用案(3/6)

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輸入事業者に対する立入検査等違反対応レコメンド機能

42

事業者による対策実施によるメリットの可視化

43

新技術導入による保安向上効果検証

44

保安に関する教育活動の効果測定45

公共施設における経年管の更改46

立入検査のルート最適化

立入検査項目の最適化41

製品安全における輸入事業者の新規事業届出に記載の製造元の製造事業者について、製品事故や違反が生じた際、同じ製造事業者を製造元とする輸入事業者への立入検査等をレコメンドする

製品安全対策を実施した場合とそうでない場合の、製品の信頼性や競争力遷移の中長期的予測を可視化し、事業者へコストではなく投資としての製品安全への注力の必要性を定量的に裏付ける

特定の新技術をパイロット導入した複数の事業場(鉱山等も含む)における点検結果と、全国の同規模の事業場(新技術未導入)における点検結果の平均値とを比較することで、今後重点的に導入を推進すべき新技術を選定する

保安に関する講習の受講有無や受講方法による、保安への知識度や取り組み度の効果を可視化することで、より効果的な教育方法の策定に繋げる

公共施設におけるガス管の状況(埋蔵年・交換年など)をオープンデータとして公開することで、需要家による自発的な経年管の交換を促す

立入検査実施時に疑義が残った事業場や、事故の発生があった事業場、前回の立入検査から時期があいている事業場の位置情報から、立入検査時のルートを最適化する

事故の原因と立入検査時のチェック項目を照らし合わせ、チェックの優先度が高いものを検査項目とし、検査項目の最適化を行う

40

事業者の規模に応じた保安体制の再最適化

47

事業場と関係者の位置が離れている場合の特別対応

48

技術基準を満たしていないリスクのある事業者の

抽出による自主保安促進49

取り扱う電力、ガス、火薬等の量(出力)に応じた保安体制を構築し、事故発生時のリスク回避を行う

事業場の位置と設置者の位置が極端に離れている場合、設置者の保安意識が薄れる可能性がある為、必要に応じて周知・研修を実施し、保安の意識を向上させる。また、主任技術者等の位置が離れている場合、リスク回避のために有事の際のオペレーション構築に役立てる

行政手続の申請情報により、技術基準適合維持の義務を果たしていないリスクある事業者を抽出し、行政指導を行うことで、自主保安の促進に繋げる。ただし実現に向けては、技術基準適合状況の抽出可否や情報の利用可否確認・調整が必要となる

自主保安促進・効果測定

立入検査効率化

立入検査省略インセンティブ付与先の選定自動化

39 検査を省略できるインセンティブ鉱山の選定を自動化

タイトル 内容# 分類

(2)抽出された利活用案(4/6)

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タイトル 内容# 分類

サービス提供

PCB(ポリ塩化ビフェニル)使用製品およびPCB廃棄物(以下、PCB製

品)の処理状況の把握51

経産省・環境省・自治体それぞれが管轄する申請データを連動することで、PCB製品の設置・廃棄・処分の状況を一貫して精緻に把握

申請者のモチベーション分析55

過去の届出情報の閲覧56

過去情報を用いた需要予測57

電力需給バランスの可視化58

事業継続性・需要の可視化59

公害リスクの事前回避

品質の高い保安規程を作成する関係者の特長の把握

54

監督部等からの問合せの確認までのリードタイムを分析することで、申請者のモチベーションを可視化する

申請者ごとに過去の届出・申請を一覧表示させ、横並びで確認可能とする

電気やガスなどにおいて、事業場や販売所が存在する地域の過去の需要傾向や代替製品の有無などから、該当地域の需要予測を行い、従事する要員数等の最適化を促す

電気工作物の需要・供給量を届出・申請情報から算出し、その需要・供給バランスに応じたインセンティブを付与する

消費者数や事業所・販売所の属性から、事業継続性の可視化を行い、安定性を把握する。また、事業場の位置や出力から、需要のある地域を抽出する

人口情報、気象情報、災害情報等から公害が発生する可能性のある地域を特定し、公害リスクを事前に回避する

保安統括者・管理者の属性と、規定文書から、品質の高い規定文書を作成する関係者の特徴を把握する

53

製品及び製造事業者のマーケティングに資するデータのオープン化

60

製品のサプライチェーンの把握61

製造事業者の属性、位置情報、及び製品の属性を分析し、製品・地域ごとのマーケティングに資するオープンデータを抽出する

製品のサプライチェーンを把握することで、法令違反があった際に、違反事業者と関連のある事業者への指導を可能とする

事業者情報管理

各法令関連事業の従事者の経済圏の把握

52事業者や製造施設の位置情報と保安責任者や主任技術者等の情報から、各事業従事者の経済圏を把握する

被検事業者の抽出支援50事業者の情報を一元管理し、実証実験の対象事業者の選定時、及び効果検証の際に活用する。地域や規模等所定の条件を基に実証実験実施対象の事業者を選定する。

(2)抽出された利活用案(5/6)

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新技術に対する制度改正の検討63

他法令における規制変更に関する効果・影響測定

64

主材料などの観点で海外(特に不足しているヨーロッパ)の規格情報を分析することで、新技術に対する制度改正の検討に活用する

各制度にて実施した規制変更について、規制変更前と変更後における経済的な効果(影響)や保安面の効果(影響)について測定し、それを基に他制度への展開是非を検討する

問合せ情報による施策立案支援65 工作物の属性ごとの問合せ件数を分析し、新たな施策の必要性を把握

監督部等側での不正検知66申請者による不正・事故等発生時に、該当申請者の届出・申請等の確認・審査記録を判定し、経産省職員側に不正等を見過ごした要因がないかを検知する

政策評価・立案

内部不正検知

事業場情報・需要家情報のオープン化

62事業場の施工情報(住所・施工担当者・時期等)やガス需要家の事故履歴をオープンデータ化することにより、問題があった事業場への一般市民からの通報促進及び保安法人等の顧客獲得支援に活用する

サービス提供

タイトル 内容# 分類

(2)抽出された利活用案(6/6)

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1. はじめに

(1) 背景 ・・・ 4

(2) 目的 ・・・ 5

(3) 実施作業 ・・・ 6

2. データ利活用事例調査

(1) 調査対象事例のテーマ分類 ・・・ 8

(2) 調査対象事例 ・・・ 9

(3) 現地調査対象 ・・・ 11

(4) 事例調査から得られた示唆 ・・・ 15

3. データ利活用案の検討

(1) 検討アプローチ ・・・ 17

(2) 抽出された利活用案 ・・・ 18

4. 産業保安・製品安全分野における利活用の可能性

(1) 導入すべき利活用策の選定 ・・・ 25

(2) 利活用策詳細 ・・・ 31

(3) 導入に向けて必要な作業 ・・・ 44

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①選定の観点

各アプローチから抽出された利活用案の中から、産業保安・製品安全分野での有用性の観点から利活用策を選定。データ利活用への理解醸成を目的として、早期からの導入が可能な利活用策も選定。合わせて10パターンの利活用策を選定した。

データ利活用案

トップダウン

アナロジー

データドリブン

ボトムアップ

選定の観点

導入可能時期

産業保安・製品安全分野での有用性

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② 導入すべき利活用策一覧

選定された利活用策の一覧を以下に示す。

業務量可視化 電子申請システムのダッシュボード機能等を用いて、各監督部での業務量を可視化2

事故・違反への指導内容の自動抽出

過去の事業者属性別の事故・違反情報から、新規の事例においても実施すべきと類推される指導内容を抽出3

事故・違反リスクの高さに係るKPIの策定

産業保安・製品安全に係るKPIとして、事故リスクの高さ(事故や違反を引き起こす要因を抽出し、設定)を定義し、政策に関する仮説検証のサイクルを短期化

5

市民の安心レベルに係るKPIの策定

産業保安・製品安全に係るKPIとして、市民の求める「安心」レベルの高さを定量化(例:SNSデータを元に停電発生時における「不安」の程度を定量化)

6

立入検査・指導実施先事業者の抽出

事業者の行動等を正確に把握し、事故発生・法令違反のリスクの高い事業者等を立入検査の対象として抽出4

災害・事故時における最適な対応の導出

地図上に事業場のデータをマッピングすることで、どこでどういった災害が起きた場合には、どういった対応を取るべきかの検討に役立てる

8

業務効率化促進 判断に迷うことの多い申請内容の自動判定、過去事例の検索、ベテラン職員へ振り分けることができる機能1

保安に関する教育活動の効果に係る効果の測定

保安に関する講習の受講有無・回数による、保安への知識度や取り組み度の効果を可視化7

技術者等の地域別需給状況の可視化

各地域にて、どの様な設備がどれだけ存在しているのか、またどの様な技術者等がどれだけ存在しているのかをそれぞれ可視化、地域別の技術者等の過不足の偏りを解消

9

事業者による対策実施によるメリットの可視化

産業保安・製品安全に関する対策を実施した場合とそうでない場合の、製品の信頼性や競争力遷移の中長期的予測を可視化し、事業者の自主保安の必要性を定量的に裏付ける

10

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③ 実現イメージ

本省

監督部・経産局

事業者

設置者 技術者等

指導・検査の高度化審査・確認

業務の効率化

情報公開による技能・自主保安の向上

証拠に基づく

政策立案

4

2

5 6

9

10

7

業務量可視化2

事故・違反への指導内容の自動抽出3

事故・違反リスクの高さに係るKPIの策定5

市民の安心レベルに係るKPIの策定6

立入検査・指導実施先事業者の抽出4

災害・事故時における最適な対応の導出8

業務効率化促進1

保安に関する教育活動の効果の測定7

技術者等の地域別需給状況の可視化9

事業者による対策実施によるメリットの可視化10

1

8 3

前頁にて一覧化された利活用策の実現イメージを以下に示す。

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実証の目的と一致していること

④ 導入時期 –電子申請システム導入までに実証すべきものの選定

取得するデータや用いる分析等の機能の面から、電子申請システム利用開始までに実証が可能であり、かつ本省や監督部等にてデータ利活用によるメリットを実感できたり業務に直結するものを、電子申請システム導入までに実証すべき利活用策として選定。

現在でも実証可能であること※ +

データ面:

➜ 実証に必要なデータが、現状でも、産業保安グループにて保有するシステム等から概ね収集・整備可能であること

機能面:

➜ 実証に必要な分析等の機能が、Excel・Access等のソフトを用いることで充足できること

目的①:本省や監督部等でのデータ利活用に対する理解の醸成

➜ 本省や監督部等でデータ利活用のメリットを実感できること

目的②:現場での本格的な導入に向けた課題の抽出

➜ 本省や監督部等での業務に直結すること

※:利活用策の全てではなく、部分的に実証可能なものも含む

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④ 導入時期 –検討結果一覧

②電子申請システム利用開始後

③追加開発完了後①電子申請システム

利用開始まで

導入

導入※過去の指導内容の検索

導入※指導内容の自動抽出

導入

導入

実証※一部法令(電気)のみ

導入

導入

導入

導入※過去の確認結果の検索

導入※過去の確認結果からの自動判定

導入

2 業務量可視化

3事故・違反への

指導内容の自動抽出

5事故・違反リスクの高さに係る

KPIの策定

6市民の安心レベルに係る

KPIの策定

4立入検査・指導実施先事業

者の抽出

8災害・事故時における最適な

対応の導出

7保安に関する教育活動の効果

の測定

9技術者等の地域別需給状況

の可視化

10事業者による対策実施による

メリットの可視化

1業務

効率化促進

知識共有・自動判定

難易度による振分

導入

電子申請システム開始後に、業務効率化の促進の一部や各種指標の策定を導入し、追加開発完了後に残りを導入。これらの導入に先駆け、業務量・難易度の可視化や立入検査対象の抽出等の本省・監督部など、業務に直結する利活用策はシステム利用開始前に一部実証し、データ利活用に対する現場での理解醸成を図る。

実証※必要作業時間は実測値でなくヒアリング等で抽出

導入

実証※難易度の可視化(振分不可)

実証※一部法令(電気)のみ

実証※電力のみ需給状況の数値化(マッピング不可)

自動判定化が進むにつれて、難易度・業務量による振分は縮退

実証※電力のみ技術者需給の数値化(マッピング不可)

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1. はじめに

(1) 背景 ・・・ 4

(2) 目的 ・・・ 5

(3) 実施作業 ・・・ 6

2. データ利活用事例調査

(1) 調査対象事例のテーマ分類 ・・・ 8

(2) 調査対象事例 ・・・ 9

(3) 現地調査対象 ・・・ 11

(4) 事例調査から得られた示唆 ・・・ 15

3. データ利活用案の検討

(1) 検討アプローチ ・・・ 17

(2) 抽出された利活用案 ・・・ 18

4. 産業保安・製品安全分野における利活用の可能性

(1) 導入すべき利活用策の選定 ・・・ 25

(2) 利活用策詳細 ・・・ 31

(3) 導入に向けて必要な作業 ・・・ 44

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各利活用策に関する記載項目

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

監督部

電子申請

システム

事業者A 事業者B

・・・

①② ③④

申請・届出

確認・問合せ

A

B

申請・届出

機能

電子申請システムにて構築

可能

追加開発が必要

データ

電子申請システム等から取

得可能

取得不可

構築予定の電子申請システムにて実現可能と想定される機能を列挙

現在産業保安グループが保有しているシステムにて蓄積されている、もしくは構築予定の電子申請システム(連携予定の法人インフォ等のシステムを含む)での蓄積が可能となることが想定されているデータを列挙

構築予定の電子申請システムにて実現不可であり、ツールの追加や、開発が必要となることが想定される機能を列挙

上述のシステムでの蓄積が困難であり、別のシステムからの取得が必要となるデータを列挙

利活用策にて解決する事が期待される課題や、導入後に得られる効果について記載

利活用策を実現するためのデータの流れや機能について図示(データ・機能に付記された番号・記号は右側と対応)

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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①-1 業務効率化促進(知識共有・自動判定)

監督部等の経験の浅い職員が申請・届出に対して審査・確認時に判断に迷う場合に用いる、過去の審査・確認結果の参照機能を構築する。また、過去の結果からシステム上で自動で判断する機能を電子申請システムに追加で構築する。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

監督部等の職員が申請・届出に対して審査・確認を実施する際、各職員の経験や勘に頼っている部分があり、経験の浅い職員には判断がつかない場合も存在

過去の審査・確認結果の参照機能や、それを基にした自動判断機能を電子申請システムに構築

監督部

電子申請

システム

事業者A 事業者B

・・・

①② ③④

申請・届出

確認・問合せ

A

B

申請・届出

過去の手続における審査確認結果や、問合せの有無・内容を検索可能に

過去の同様の手続における確認・問合せ結果から自動判定

A) 上記①・②のデータを検索項目として、同様の手続における③・④の内容を表示

① 各事業場の属性(施設種・工作物等)

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

②主任技術者等の属性

※電気は現状でも主任技術者DBから取得可能

③手続確認結果

④監督部等での問合せの有無・内容

機能

データ

電子申請システム等から

取得可能

電子申請シ

ステムにて

構築可能

追加開発

が必要

B) 上記①~④の内容を分析し、同様の手続での判定結果・問合せ内容を加味して協調フィルタリング等を用いて自動判定を実施

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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①-2 業務効率化促進(難易度による振分)

監督部等の職員が審査・確認業務上での所感を電子申請システムに入力。それを基にシステムが申請・届出の難易度を判断し、難易度の高い手続はベテラン職員が担当できる様に差配する機能を構築する。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

事業者の属性等によって申請・届出の審査・確認に関する難易度は異なるが、担当は各監督部等の職員の経験に因らず、地域といった画一的なルールにて割り当てられている

システムが申請・届出の難易度を判断し、難易度の高い手続はベテラン職員が担当できる様に差配する機能を構築

目的・実現イメージ

監督部等若手職員

・・・

電子申請

システム

事業者

監督部等ベテラン職員

① ②

③A

申請・届出

B A) 手続確認時の監督部等での所感から抽出される手続確認の難易度と、その際の事業場・主任技術者等の属性とを分析し、手続別の高難易度な手続を抽出

※ Excelを用いた分析でも代替可能

B) 難易度が高いと判断された手続についてのベテラン職員への振分機能

① 各事業場の属性(施設種・工作物等)

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

②主任技術者等の属性

※電気は現状でも主任技術者DBから取得可能

③手続確認時の監督部の所感

※現状でも一部サンプルであるがヒアリングにて取得可能

電子申請システム等から

取得可能

電子申請システムにて

構築可能

機能

データ

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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②業務量可視化

日々の電子申請システムを通じて取得される各審査担当職員の審査・確認業務に要する時間を集計し、業務量を可視化。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

一部の審査担当職員に業務負担が集中している可能性がある

業務負担の平準化を可能にするよう、業務量を可視化

目的・実現イメージ

担当者A・・・

電子申請

システム

事業者A

担当者B

事業者B

・・・

A

B

申請・届出

A) 監督部等におけるその日処理しなければならない審査・確認業務量の集計機能

※Excel等を用いた集計でも代替可能

B) 監督部等におけるその日処理可能な審査・確認業務量の集計機能

※Excel等を用いた集計でも代替可能

機能

① 手続種別の審査・確認件数

※現状でも実測しており取得可能

② 手続種別・要員別の1件当たりの審査・確認にかかる処理時間

※現状でも一部サンプルではあるが実測によって取得可能

データ

電子申請システム等から

取得可能

電子申請システムにて

構築可能

A

B

C・・・

手続種業務量

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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③事故・違反への指導内容の自動抽出

過去の事故・違反発生時の指導内容の参照機能を構築する。また、過去の事故・違反事例と紐づきの強い事例を基に、指導すべきポイントを自動抽出する機能を構築する。

実現に向けて必要なデータ・機能

① 各事業場の属性(施設種・工作物等)

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

②事業場・原因別の事故・違反発生有無・数

※鉱山・都市ガスは電子申請システムから取得可能

※電気・製安はNITE保有のDBから取得可能

③事故別の発生時の監督部等からの指導内容

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

事故・違反発生後の指導時に、事業者に対して何を重点的に指導すべきかについては、監督部等の職員の経験に応じて判断に差が生じている可能性がある

過去の事故・違反時の指導内容の参照機能や、それを基にした自動判断機能を電子申請システムに構築

監督部等

電子申請

システム

事業者等

① ③

申請・届出

A

過去の指導内容

B

類推された指導内容

事業場の情報を入力することで、一致する過去の指導内容を表示

申請・届出

指導内容

事業場の情報や事故・違反情報を入力することで、過去の事故から類推される指導

内容を表示

データ

電子申請システム等

から取得可能

取得不可

② 事業場・原因別の事故・違反発生有無・数※火薬・液石

A) 事業場の属性を入力した場合に、条件が一致する事業場における過去の事故事例とその際の指導内容を表示する検索機能

機能

電子申請シ

ステムにて

構築可能

追加開発

が必要

B) 過去の同様の事故や違反の事例を参考にした、指導すべきポイントの自動抽出機能

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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④立入検査・指導実施先事業者の抽出

事業者や関わる技術者の属性や監督部等での所感といった情報を基に、事故や違反を起こすリスクの高い事業者を、立入検査・指導を優先的に実施すべき対象として抽出する。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

監督部等の職員の数に比して、事業者の数が非常に多いため、全事業者への指導や立入検査の実施は不可能

事故や違反を起こすリスクの高い事業者に優先的に指導や立入検査を実施できる様、対象を自動抽出する機能を構築

監督部等

電子申請

システム

事業者

① ②

申請・届出

事業者に係る情報を基に、

事故・違反リスクの高い事業者を抽出し、

優先的に立入検査・指導を実施

手続確認時の所感

立入検査

実施時の所感

④ ⑤

リスクの高い事業者等

立入検査・指導

①各事業場の属性(施設種・工作物等)

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

②主任技術者等の属性

※電気は現状でも主任技術者DBから取得可能

③事業場・原因別の事故・違反発生有無・数

※鉱山・都市ガス

※電気・製安はNITE保有のDBから取得可能

④ 手続確認時の監督部の所感

※現状でも一部サンプルではあるがヒアリングによって取得可能

⑤立入検査実施結果

機能

データ

電子申請システム等から取得可能

取得不可

③ 事業場・原因別の事故・違反発生有無・数※火薬・液石

⑥ ECサイト上でのレビューなど

電子申請

システム

にて構築

可能

A) 上記の①~⑤の情報に含まれる要素を基に、事故や違反を起こすリスクの高さを数値化

※現状でもExcel等にて数値化可能

A

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

事業者

レビュー内容等

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⑤事故・違反リスクの高さに係るKPIの策定

事業者からの手続にて取得する情報や、監督部等での手続確認時や立入検査時の所感から、事故を起こす要因を導出し、それを新たな政策・施策の効果検証に用いる指標とする。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

事故発生件数や負傷者数等のみが産業保安等の分野での指標となっており、事故発生件数が減少するにつれて、政策・施策の効果検証が長期化している可能性がある

事故の発生要因を特定し、事故発生件数以外の新たな保安に係る指標として用いることで、検証期間を短縮すると共に、検証精度を向上させる

監督部等

電子申請

システム

事業者

① ②

申請・届出

事業者に係る情報や事故の情報を基に、

事故リスクを高める要因を抽出

手続確認時の所感

立入検査実施時の所感

④ ⑤

事故発生要因

①各事業場の属性(施設種・工作物等)

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

②主任技術者等の属性

※電気は現状でも主任技術者DBから取得可能

③事業場・原因別の事故・違反発生有無・数

※鉱山・都市ガス

※電気・製安はNITE保有のDBから取得可能

④ 手続確認時の監督部の所感

※現状でも一部サンプルではあるがヒアリングによって取得可能

⑤立入検査実施結果

機能

データ

電子申請システム等から取得可能

取得不可

③ 事業場・原因別の事故・違反発生有無・数※火薬・液石

追加開発

が必要

A) 上記の①~⑤の情報に含まれる要素を基にした、事故リスクに直結する要因の抽出

※現状でも手法は限定されるがExcel等にて要因を一部抽出可能

A

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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⑥市民の安心レベルに係るKPIの策定

SNS等の情報を基に、事故等が生じたときやその対応について、市民が感じる「不安」・「安心」の程度を定量化することで、政策・施策の立案に役立てる。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

産業保安等の分野では、「安全・安心」が政策の主な目的であるが、このうち、「安心」は定量化が難しく、政策の費用対効果を検証することが困難

市民の「安心」を定量化し、政策・施策へと活用

電子申請

システム

事業者

① ②

申請・届出

SNS等の情報を基に、事故等が生じたときに市民が感じる「不安の程度」を定

量化

④安心度

SN

S

(Twitte

r

等)

書込

①各事業場の属性(施設種・工作物等)

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

②事業場の地理情報

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

③事業場・原因別の事故・違反発生有無・数

※鉱山・都市

※電気・製安はNITE保有のDBから取得可

機能

データ

電子申請システム等

から取得可能

取得不可

③ 事業場・原因別の事故・違反発生有無・数※火薬・液石

④ 市民のSNS上での書込情報※SNS等他システムが公開しているAPIを用いた連携が必要

追加開発が必要

A) 上記の④で、事故発生時を含む、市民が不安を感じていると判断される書込みを抽出。その結果と①~③のデータを組合せ、事象や事故の程度によって、どの程度市民にとって不安が生じているかを分析

A

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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①監督部等での問合せの有無・内容

②手続確認時の監督部の所感

※現状でも一部サンプルではあるがヒアリングによって取得可能

③立入検査実施結果

④ 事業者別の保安に関する教育活動の受講有無・回数

⑦保安に関する教育活動の効果測定

産業保安グループで実施している、事業者への保安意識向上を目的とした教育活動の受講有無・回数と、事業者の保安に関する認知度との関係性とを検証し、よりよい教育活動の企画に活用する。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

事業者へ保安意識向上を目的とした教育活動を実施しているが、意識向上への効果の測定はされておらず、実施の継続是非や改善要否を判断するための基準がない

立入検査の結果や手続審査確認時の所感を用いて、教育活動の効果検証を実現

監督部等

電子申請

システム

④手続

確認時の所感

立入検査実施時の

所感

② ③

事業者別の保安

認知度①

事業者別教育活動受講回数

問合せ回数

比較

機能

データ

電子申請システム等

から取得可能

電子申請

システムにて

構築可能

A)①~③のデータから、問題なく保安への理解がなされていると判断できる事業者を抽出(問合せもなく、手続実施時の所感や立入検査実施時の所感にも問題がない事業者を抽出)し、④のデータとの関連性を確認

A

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

取得不可

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製造保管販売

⑧災害・事故時における最適な対応の導出

電力・ガス設備の発電量・供給量を地図上にマッピングすることで、災害発生時のインフラ復旧のシミュレーションを事前に行うなど、防災の検討に役立てる。また、製品安全分野における各製品の製造・輸入、保管・販売の流れを地図上にマッピングし、サプライチェーンを可視化することで、製品事故・違反発生時の対応を強化。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

申請情報から個々の設備の電力・ガスの発電量・供給量を把握し、マッピングすることで、災害発生時のインフラ復旧のシミュレーションを行い、防災の検討に役立てる

製品安全分野でも、各製品の製造・輸入、保管・販売の情報からサプライチェーンを把握することで、製品事故・違反発生時の対応を強化

電子申請

システム

事業者

①③ ②③

申請・届出(電気・都市ガス)

④⑤

供給

需要

申請・届出(製品安全)

A) 上記の①~③の情報に含まれる要素を基に、地域別の電力・ガスの需給双方の量を数値化

※現状でもExcel等にて数値化可能

B)Aの結果を地図上にマッピング

C) ④⑤の情報を基に、製品と、その製造・輸入施設から保管倉庫、販売施設の関連を紐づけ

※現状でもExcel等にて紐づけ可能

D)Cの結果を地図上にマッピング

①発電設備(非常用含む)の発電量・位置

※現状でも新自家用DBから取得可能

②ガス供給設備の供給量・位置

③需要設備の需要量

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

④製品の製造・輸入事業者の工場・倉庫等の位置

※現状でも製安四法DBから取得可能

⑤製品の販売場所の位置

※現状でも製安四法DBから取得可能

機能

データ

電子申請システム等から

取得可能

追加開発が必要

A C

B D

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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⑨技術者等の地域別需給状況の可視化

地域別の技術者の過不足に関する情報を可視化し、個々の技術者に、”より需要のある地域” を認識してもらうことで、技術者の移動を促し、地域による技術者の過不足の偏りを解消する。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

現在、地域間での技術者の数に偏りがあり、地域によっては設備数に比して技術者が不足している

地域別の技術者の過不足に関する情報を可視化し、”より需要のある地域”を伝えることで、技術者の移動を促し、地域による技術者の過不足の偏りを解消

①各事業場の属性(施設種・工作物等)

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

②各事業場の位置

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

③主任技術者等の属性(資格種別・年齢等)

※電気は現状でも主任技術者DBから取得可能

④主任技術者等の位置

※電気は現状でも主任技術者DBから取得可能

機能

データ

電子申請システム等から

取得可能

追加開発が必要

A) 上記の①~④の情報に含まれる要素を基に、各資格種別の主任技術者等の数と各事業場の施設種別の数とのバランスを数値化

※現状でもExcel等にて数値化可能

B)Aの結果をマッピング

電子申請

システム

事業者

①②③④

申請・届出

技術者数

設備数

A

B

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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⑩事業者による対策実施によるメリットの可視化

各事業場の事故発生有無や立入検査時の所感から抽出した保安向上施策の実施状況などの、「どれだけ保安に力を入れているか」の指標と、財務状況との関連性を分析し、保安対策実施によるメリットを可視化する。

実現に向けて必要なデータ・機能

実現イメージ

課題・目的

目的・実現イメージ

事業者が保安向上施策を実施した場合の事業者にとってのメリットが可視化されていないことが、事業者における自主保安向上の妨げの一因と考えられている

保安の向上と、財務情報等から導出されるメリットとの関係性を公開することで、事業者の自主保安意識を向上

電子申請

システム

事業者

① ②

申請・届出

産業保安向上と

メリットとの関係性

法人

インフォ等

財務状況・CSR報告書

①各事業場の属性(施設種・工作物等)

※電気は現状でも新自家用DBから取得可能

②事業場・原因別の事故・違反発生有無・数

※鉱山・都市

※電気・製安はNITE保有のDBから取得可

③財務状況データ※法人インフォから取得可能(想定)

④監督部での立入検査実施時の所感

機能

データ

電子申請システム等から

取得可能

取得不可

② 事業場・原因別の事故・違反発生有無・数※火薬・液石

⑤ 各事業者のCSR報告書全文

追加開発が

必要

A) 上記の①②④から導出される、保安向上施策や危険度の高さと、③⑤から導出される事業者での事業実施上でのメリットの大きさとの関係性を測定

NIT

E

等事故 公開

監督部等

A

凡例:現状電子にて一部でも取得可能と想定されるデータ

現状紙であれば取得可能と想定されるデータ

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1. はじめに

(1) 背景 ・・・ 4

(2) 目的 ・・・ 5

(3) 実施作業 ・・・ 6

2. データ利活用事例調査

(1) 調査対象事例のテーマ分類 ・・・ 8

(2) 調査対象事例 ・・・ 9

(3) 現地調査対象 ・・・ 11

(4) 事例調査から得られた示唆 ・・・ 15

3. データ利活用案の検討

(1) 検討アプローチ ・・・ 17

(2) 抽出された利活用案 ・・・ 18

4. 産業保安・製品安全分野における利活用の可能性

(1) 導入すべき利活用策の選定 ・・・ 25

(2) 利活用策詳細 ・・・ 31

(3) 導入に向けて必要な作業 ・・・ 44

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(3)導入に向けて必要な作業

導入に向けて必要となる作業と、各作業の2018年度~2020年度のスケジュールは以下の通り。

2018年度 2019年度 2020年度

産業保安システム設計・開発

追加開発機能要件定義

製品選定 追加機能設計・開発

分析用データ整備※電子申請システム導入後は自動的に蓄積される想定

分析用データ整備※先行

分析/モデル検討分析/モデル検討

※先行

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経済産業省委託調査産業保安・製品安全分野におけるデータ利活用に関する調査

データ利活用事例集

平成29年3月

アクセンチュア株式会社

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用語定義 ・・・3

調査対象事例選定方法 ・・・5

調査方法 ・・・6

事例調査から得られた示唆 ・・・7

テーマ別個票の一覧表 ・・・11

【A】需要予測・マーケティング ・・・12

(A-1)小売業者における需要予測と最適価格の設定 ・・・13

(A-2)商業銀行におけるリスク度合いに基づく融資先の分類 ・・・17

【B】保安のトラブル検知・防止 ・・・20

(B-1)製造工程の課題発見と改善による製品の品質向上 ・・・21

(B-2)電力会社におけるIoTデータを用いた異常検知 ・・・23

【C】事業者の意識・感情分析 ・・・26

(C-1)クレーム内容から製品トラブルの根本原因を早期発見 ・・・27

(C-2)顧客の感情分析によるネガティブ要因の抽出 ・・・29

【D】事業者の不正分析 ・・・32

(D-1)機械学習による違反コンテンツの検出 ・・・33

(D-2)業界内各社横断データの活用による不正の発見と防止 ・・・35

(D-3)生活扶助制度の不正受給発見と調査の改善 ・・・37

(D-4)税申告の不正調査を効率化・高度化 ・・・39

【E】人材可視化・最適配置 ・・・42

(E-1)人材マッチングの自動化 ・・・43

(E-2)ローパフォーマーの特性分析による採用基準の改善 ・・・45

【F】人材・予算のリソース配分 ・・・48

(F-1)需要予測によるレベニューマネジメントの実現と業務効率化 ・・・49

(F-2)投資銀行における全社横断的なコストの可視化 ・・・51

【G】非構造データ・SNSの分析 ・・・54

(G-1)損傷程度の画像認識による事故車両の分類 ・・・55

(G-2)訪日外国人の北海道への来訪促進のための動態分析、SNS分析 ・・・57

【H】ビッグデータの公開・活用 ・・・60

(H-1)会津若松市におけるデータを用いた市民サービス ・・・61

(H-2)公共データの開示によるアプリケーションやサービスの構築 ・・・63

(H-3)ニューヨーク市におけるビッグデータを活用した市政改革 ・・・65

(H-4)ボストン市におけるオープンガバメントの取り組み ・・・69

2

目次

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用語定義 1/2

3

アンサンブル学習 多数の分析モデルを作成し、分析モデルの結果を統合して最終的な分析結果とする分析手法

SNS分析 ソーシャルメディア上の投稿データを、自然言語処理等によって分析する手法

回帰木 ある連続する数値について推定するルールを樹形図の形で表したもの

機械学習 既知のサンプルデータからパターンを識別し、学習することで、新たな入力データに対し予測を行う分析手法

クラスタリング データの集合を、ある基準をもとに類似するもの同士にグループ分けする手法

K近傍法 ベクトル空間上に置いた学習データに基づき、新たなデータを最も距離の近い位置に配置することでクラス判別をする分析手法

K-means手法 標本をグループ分けする際に、基準を設定するために用いるクラスタリング手法の一種

構造化データ 特定の構造を持ち、定型的に扱えることで、データベースを利用して、データの整理や検索ができるデータ

最適化分析 データの集合の重心や中央値等を基準とし、統計的に有意な値をマッピングする分析手法

サポートベクターマシーン 多次元空間上での境界線(超平面)を用いてデータの分類を行う、代表的な分類器

弱学習器 相関性の分類能力の低い学習器

CNN分析(畳み込みニューラルネットワーク)

CNNはConvolutional Neural Networksの略。画像認識においては入力画像の一つ一つがニューラルネットへの入力となる。その入力を単純型細胞の動作をモデルにした畳み込み層と、複雑型細胞の動作をモデルにしたプーリング層によって繰り返し処理することで、最終的な分類結果を得る分析手法

決定木分析 データの集合を、最も効率よく分類できる独立変数によって分割していくことで整理する分析手法

時系列セグメンテーション 複数の人物やイベントのセグメンテーション(性質による分類)を時系列的に実施すること

自然言語処理 解釈が一通りである「コンピュータ言語」に対し、人が日常的に用いる言葉「自然言語」を処理する一連の技術

重回帰分析 複数のデータを基に、ある1つのデータを予測する分析手法

相関分析 あるデータとデータとの関係性の強さを分析する手法

用語(五十音順) 定義

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用語定義 2/2

4

用語(五十音順) 定義

特異スペクトル解析 観測信号からの主要な変動成分の分離・抽出、雑音除去、変化点や不規則点の検出などを目的に、構造変化そのものを解析する分析手法

特徴抽出 (TF-IDF) 文書中に含まれる特定の単語の重要度を、出現率によって評価する分析手法

トピック分類分析 TF-IDFによって重要な単語を識別し、文章の本質的な意味を認識する手法

ニューラルネットワーク 生体ニューロンをモデルに構築された数学モデル。過去の情報から一定の法則を学習し、新たな情報に対する判定を行う

ネットワーク分析 モノとモノ同士の関連性を、接続するリンクの集合によって構成されるネットワーク図に示し、隠れた関係性を明らかとする分析手法

非構造データ 文書データ・電子メール・写真・動画など、特定の構造を持たず、定型的に扱うことが難しいデータ

ビジネスルール分析 不正行動の検出に有効なルールを導き出す、既知の不正検出に優れた分析

要約統計量 データから算出される基本的な標本の分布の特徴を表す指標(値)のこと

予測分析 将来ある事象の起きる可能性を、過去データにもとづいて特定する分析手法

リアプノフ関数 時間により変動する値の変動性が、基準とする軌道との平衡点をもつ≒2つの関数が交差する値をもつことを導出する関数

リンク分析 複雑な構造内でのモノとモノとの関係を発見し、検証する分析手法

類似性分析 標本を、定義した類似性によって分けるクラスタリング手法の一種

ロジスティック回帰分析 複数の説明変数を掛け合わせることで、ある事象の発生確率を予測する分析手法

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調査対象事例選定方法

産業保安・製品安全分野への応用が見込まれるもの

凡例:

企画・営業・マーケティング 調達・製造 流通・販売(サービス提供) カスタマーサポート

人事・労務管理

会計管理

法務

人材可視化・最適配置

人材・予算のリソース配分

需要予測・マーケティング余剰資材の減少

保安のトラブル検知・防止

余剰在庫の減少

歩留まり率低下

事業者の意識・感情分析

事業者の不正分析広告施策の効果試算 料金回収漏れの発生

内部のミス・不正を防ぐ

人材・予算のリソース配分

労務管理

内部のミス・不正を防ぐ

非構造データ・SNSの分析

ビッグデータの公開・活用

企業の諸活動における

データ利活用の類別

データ取得・公開

方法の類別

A

B

C

D

E F

F D

G H

不正分析として統一

企業の諸活動におけるデータ利活用の類別から、産業保安・製品安全分野での応用が見込まれるものを調査事例のテーマ分類として6つ抽出した。併せて、データの取得や公開の方法の類別からも、2つ抽出した。

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調査方法

各事例の関係者より入手した文献資料、ヒアリング等を通じて得た情報から事例集個票を作成した。合わせて「小売業者『Rue La La』」「ボストン市」「ニューヨーク市」については、現地へ訪問し、関係者へのヒアリングおよび現場の視察を実施した。各テーマに合致する事例を2件以上、合計20件の調査を実施し、本事例集ではテーマ毎に事例個票

を編纂している。

民間機関国内

保安のトラブル検知・防止1

テーマ番号 テーマ名

国内もしくは海外の事例

民間もしくは公共機関の事例

各個票に掲載のテーマ種別 凡例

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事例調査から得られた示唆 1/4

7

データ収集に際しては、目的に応じた自組織・他組織のデータ利活用法、データ初期値設定の仮説策定の有効性についての示唆が得られた。

➢ 有効なデータの組み合わせの仮説設定には、現場の経験や勘を活用

各事例から得られた示唆の詳細

データ収集

➢ 結果の即時性と正確性のどちらが求められているかによって、使用データの選定方法を決定

• 早急な利活用が求められている環境では、まず自組織にあるデータのみを活用し、結果を出すべき

✓ 「初めに、社内の既存データの中から使えるデータは何であるか、またそれらのデータを分析することによって導き出される情報がクライアントの課題解決においてどのような効果を持ちうるのかの検討を行った」(F-2)

• 正確性の高い結果の導出には、Web上のデータやSNSデータ、日々更新されるデータなど他組織のデータも合わせて用いることが有効

✓ 「顧客アンケートでは、自社への好感度が高い顧客からの情報収集となり、偏りが生じているため、ソーシャルデータを利用することでより多様なユーザーセンチメントが収集可能となった」(C-1)

• データの選定の初期段階では、データサイエンティストの知識と、現場が保有する経験や勘を掛け合わせることが有効

✓ 「有効な初期値データの導出には、担当者の知見や勘が活用された。データサイエンティストは、それらの初期値データを元に、様々な掛け合わせで分析を実施。最適なデータの組み合わせを検討した」(A-1)

(カッコ内は対応する事例番号)

2

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事例調査から得られた示唆 2/4

8

分析手法においては、先進的/複雑な分析手法を用いなくとも、分析ツールを活用しスモールスタートによって最適手法を選定することで洞察力を高めることが有効であるとの示唆が得られた。

各事例から得られた示唆の詳細

分析手法

➢ まずは利用可能な分析手法をスモールスタートで試し、複数の手法を適宜組み合わせていくことでモデルを最適化

• 複数の分析手法を組み合わせることで、より目的に合致した精度の高い分析が可能

✓ 「分析には、それぞれ異なる不正パターンの検出に優れた、異なる分析を組み合わせることにより、多様な不正の分析を可能とするハイブリッドモデルを構築した」(D-2)

• 分析ツールの活用により、先進的/複雑な分析手法を用いなくとも、洞察力を高めることが可能

「専門知識が無くても直感的な操作が可能、全社規模で利用されることを想定した際に分析プラットフォームとして利用可能、工場データのリアルタイムでの自動分析の実現性が高いという理由から、分析ツールが採用された」(B-1)

➢ 先進的な手法は、本格適用の前に試験的導入を行い、効果のあった分析モデルの本格的な導入を検討

• AI(ディープラーニング)の進化によって、画像データの利用も可能となってきており、試験的導入で精度の高い結果の得られた事例では、今後本格導入を検討

✓ 「完成したモデルの正確度測定を行ったところ、最も優れたモデルでは、87.98%の確度で事故車両の損傷度を識別できた」(G-1)

(カッコ内は対応する事例番号)3

4

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事例調査から得られた示唆 3/4

人材・組織においては、外部アナリティクス人材の活用、トップダウンによるプロジェクトの推進、現場間の円滑な意思疎通を可能とする体制作りの重要性についての示唆が得られた。

各事例から得られた示唆の詳細

人材・組織

➢アナリティクスに関する専門知識を有した人を外部から招聘し、内部人材との混合でチームを編成

• 内部のアナリティクス人材不足の際には、理工系の高等教育機関より専門的知識を有する学生の活用も有効

✓ 「データサイエンティストについては、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学といった、ボストン近辺の優秀な大学からのフェローシップやPhD学生などのレジデンスプログラムを設け、人材を拡充していった」(H-4)

➢円滑な導入を進めるために、トップダウンによりプロジェクトを推進

• 明確な意思系統の確立や予算の安定性が成功要因である

✓ 「設立時より、市長からのトップダウンで意思決定しプロジェクトを進行。同時に現場へデータ利活用による業務改善の必要性や効果について指導を行うことで、円滑に実施できた」(H-3)

(カッコ内は対応する事例番号)

➢データサイエンティストと、現場の業務担当者・部門の間の意思疎通を円滑に行うための体制作り

• 現場の統括者は他部門との調整能力が長けていることが肝要

✓ 「分析体制は、社内のデータサイエンティストの他、業務知識の理解、業務部門との連携ができるコミュニケーションスキル、分析のための基礎のスキル、及び分析ツールを操作できる基本スキルを持つ担当によって構成された」(B-2)

• データサイエンティストを通じて現場の知見を共有できる体制が理想

✓ 「データサイエンティストへ、業務知識のほか予測対象となる顧客動向について、経験値をインプットしたことがプロジェクト成功の要因」(F-1)

6

7

5

9

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事例調査から得られた示唆 4/4

10

現場への導入に際しては、本格導入前に効果を試験的に測定することでリスク回避すること、導入後には定期的に精度向上を行うこと、分析モデルと人の知見を掛け合わせることが有効であることの示唆が得られた。

➢新たなモデルは、そのモデルの誤差が引き起こすリスクをどこまで許容できるかにより、導入是非を判断

➢分析モデルによる結果を鵜のみにするのではなく、現場の知見や専門家の意見を取り入れる

各事例から得られた示唆の詳細

現場への導入

8

9

• 分析モデルを使用する目的により、導入基準を策定

✓ 「高い正確性の求められる不正分析は、確実なものが出来てから導入する。リソース配分やマーケティングは多少の誤差に大きな影響が無いためモデルが出来たら比較的すぐに試してみる」(H-3)

• 分析結果を実運用において試験的に適用することで、効果を即座に測定し、改善とトライアルを繰り返すことで、迅速な精度向上が可能

✓ 「試験的に導入したパイロット版の成果を元に、本格的なモデルを開発・導入。その後、新モデルを開発・導入した」(D-3)

• 大量の情報処理が可能な分析モデルを活用し、重要な点のみに人の視点を注力することで、より精緻で迅速な結果の導出に繋げることが出来る

✓ 「分析により特定された、ローパフォーマーを有効に識別できる因子の組み合わせに対し、現場及び有識者へのヒアリング結果を反映することで、採用基準策定に係る新規方針の策定が可能となった」(E-2)

(カッコ内は対応する事例番号)

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テーマ別個票の一覧表

11

テーマ 実施主体の属性

記号

テーマ名 番号

タイトル国内/海外

公共/民間

業種 概要

A 需要予測・マーケティング

1 小売業における需要予測と最適価格の設定

海外 民間 小売 販売実績のない商品の売上最大化のための、需要予測と最適価格の算出

2 商業銀行におけるリスク度合いに基づく融資先の分類

海外 民間 銀行 長期的な目線での融資妥当性を分析するモデルの構築

3 デジタルユーザ獲得のための顧客生涯価値の検証

海外 民間 ゲーム 顧客生涯価値を算出し、収益性の高いユーザ獲得のための効果的な施策を検討

B 保安のトラブル検知・防止

1 製造工程の課題発見と改善による製品の品質向上

国内 民間 製造 機械学習を用いて、工程上の品質のばらつきを生む要素を特定

2 電力会社におけるIoTデータを用いた異常検知

海外 民間 電力 管理図的な手法と機械学習手法をミックスした異常検知モデルの開発

C 事業者の意識・感情分析

1 クレーム内容から製品トラブルの根本原因を早期発見

海外 民間 製造 顧客の不満や製品の問題要因を早期に検知するためのシステム構築

2 顧客の感情分析によるネガティブ要因の抽出

海外 民間 小売 顧客のネガティブな感情の要因を抽出し、効果的な業務プロセス改善を実施

3 リサイクルへの関与率向上のためのクラスタリングと感情分析の活用

海外 民間 リサイクル 市民・組織の感情を分析し、リサイクル関与率向上のための施策検討

D 事業者の不正分析

1 機械学習による違反コンテンツの検出

海外 民間 デジタルコンテンツ配信

機械学習を用いて、コンテンツ提供者の不正検知の効率と精度を向上

2 業界内各社横断データの活用による不正の発見と防止

海外 公共 保険協会 組織詐欺、過剰請求、サービスプロバイダ詐欺、内部詐欺など詐欺の種類を特定

3 生活扶助制度の不正受給発見と調査の改善

海外 公共 公的扶助制度 公的扶助制度の不正を効率的に検知するため、不正受給者の傾向を分析

4 税申告の不正調査を効率化・高度化

海外 公共 国税局 不動産購入・税務申告・ローン・銀行口座・雇用データなどから脱税・不正リスクを分析

E 人材可視化・最適配置

1 人材マッチングの自動化 海外 民間 IT 雇用主と求職者双方に最適なポジションを推薦する人材マッチングのアルゴリズムを構築

2 ローパフォーマーの特性分析による採用基準の改善

国内 民間 保険 社員の「素養」のマッチングに着目し、採用におけるボーダーラインを再構築

3 最適な候補者のスクリーニングシステム

海外 民間 テクノロジー 候補者を段階的に絞り込み、募集要項と応募者をマッチングする採用ポータルを導入

F 人材・予算のリソース配分

1 需要予測によるレベニューマネジメントの実現と業務効率化

国内 民間 航空 将来運航便の需要予測や各種施策立案により、収益改善と業務効率化を達成

2 投資銀行における全社横断的なコストの可視化

海外 民間 銀行 社内既存データを有効に組み合わせ、アジャイル開発により複数の分析を繰り返し実行

3 リソース計画の最適化とサービス水準の向上

海外 民間 エネルギー 高度な解析アルゴリズムを使用したアプリケーションの採用による、リソース計画の最適化

G 非構造データ・SNSの分析

1 損傷程度の画像認識による事故車両の分類

海外 民間 保険 事故車両の画像から損傷程度を認識するモデル構築により、コスト削減を目指す

2 訪日外国人の北海道への来訪促進のための動態分析、SNS分析

国内 公共 観光振興機構 観光客の動態分析と、SNS分析による北海道の各地域の認知度や評価の把握

H ビッグデータの公開・活用

1 会津若松市におけるデータを用いた市民サービス

国内 公共 地方自治体 オープンガバメントの実現、新たな地方創生モデルの創出

2 公共データの開示によるアプリケーションやサービスの構築

海外 公共 NPO オープンデータからアプリ・サービスをリリース、ソースコードの公開による他州行政への展開

3 ニューヨーク市におけるビッグデータを活用した市政改革

海外 公共 地方自治体 市のビッグデータを活用した、業務効率の向上とオープンガバメントの実現

4 ボストン市におけるオープンガバメントの取り組み

海外 公共 地方自治体 部門間横断的なデータの活用促進と、大学や市民との連携のためのビッグデータ公開

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需要予測・マーケティングA

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実施主体

小売業者 Rue La La

✓ 様々なメーカーやブランド商品を、期間限定の割引イベントによって販売するフラッシュセールを行う

目的・課題

「Rue La La」社をはじめとしたファッション業界には、最も高い売上を達成できる価格(最適価格)を設定するための方法論が確立されていない、という課題があった。価格設定のため、競合先のウェブサイトや店舗にて類似商品の価格を把握し、人の手によって1点1点の価格を設定していたが、非常に手間と時間がかかることに加え、“類似商品”の定義はあいまいであった。「Rue La La」社は、売上の大半を占め、かつ売上実績がないことから価格設定が特に難しい、初回売り出し商品を対象に、データ分析を用いた最適価格設定モデルの構築を目指した。

海外

需要予測・マーケティングA

民間機関

データ利活用の詳細

データ利活用の概要

①使用データ

✓初回売り出し商品の需要の影響する要因を解明

②分析内容<線形計画法>

✓商品のスタイル数、設定可能な価格の集合、全ての競合商品の価格の集合、在庫制約を示すランダム変数等から、最適価格を算出するためのアルゴリズムを構築

②分析内容<回帰木分析>

商品の価格

希望小売価格からの割引率

商品の価格

✓需要に大きく影響せずに、推奨価格を適用

✓最適価格設定モデルの推奨価格で販売したところ、全体の売上が約10%向上

売上UP

③結果

推奨価格 最適価格

回帰木分析

13

①使用データ

社内の有識者との討議によって導出された有効なデータの初期値を元に、データサイエンティストが様々な掛け合わせで分析を実施。最適なデータの組み合わせを解明。

有効なデータ編成の発見

売上を最大化するための最適価格設定には、初めに需要を予測する必要があった。需要に対して価格設定が高すぎれば、商品の売れ残りが発生するが、一方で需要に対して価格設定が低すぎても、イベントの初期に商品が完売してしまう。つまり、売上を最大化するためには、販売イベント期間終了時に、ちょうど全ての商品が売り切れるような価格の設定が肝要であった。

需要予測に有効な初期値データの導出には、「Rue La La」社の価格設定及び運用戦略担当副社長(VP of Pricing & Operations Strategy)の知見や勘が活用された。外部のデータサイエンティストとの検討の結果、「商品」と「イベント(時期や期間)」双方に係るデータ項目が、需要予測に適していると判断された。データサイエンティストは、商品価格、希望小売価格からの割引率、同イベント中に販売された同カテゴリ内のスタイル数といった初期値を元に、様々な掛け合わせで分析を実施。最適なデータの組み合わせを検討した。

過去調査により、顧客は購入時に同期間中に販売されている他社の商品の価格を参考とすることがわかっていたが、競合他社の商品価格設定に関する最新データを逐次入手することは困難であったため、内部で入手可能なデータが分析に用いられた。

(A-1)小売業における需要予測と最適価格の設定

初回売り出し商品の売上を最大化するため、回帰木分析を用いて需要予測を立て、線形計画法により最適価格を算出する分析モデルを構築。分析モデルによる推奨価格を元に、価格担当者が最適価格を策定する、人とテクノロジーの共存スタイルを確立した。

使用したデータ 入手元

構造化

商品価格

内部

希望小売価格からの割引率

同イベント中に販売された、同カテゴリ内のスタイル数

競合商品の価格

過去12か月間のブランドセール数

百貨店にて同タイミングで開催されている催事の数

外部

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②分析内容

分析モデルの導入においては、最適価格設定モデルの導入以前にも、価格設定を行ってきた販売管理担当者を割り当てた。こうすることにより、以下の事項を達成することができた。

①使用データ

需要予測をもとにした最適価格の設定には線形計画法が用いられた。「Rue La la」社では多くの格安小売業者同様、価格の末尾を4.90もしくは9.90としており、例えばある商品の妥当な価格帯が$24.90~$34.90だった場合、設定可能な価格は{$24.90,$29.90,$34.90}のいずれかとなる。各商品に対して最大収益が得られ且つ、このルールに則った最適価格を設定するためのアルゴリズムが構築された。

最適価格設定モデルは、日々、翌日のイベントに出品される全ての初回掲載商品の推奨価格を算出し、提案する。このモデルの実行には1時間から最大で4.5時間を要し、終了すると各商品の推奨価格に関する情報が、販売管理者に電子メールで送信される仕組みとなっている。

=$10.99

販売管理者

下記2点の理由から、最適価格設定モデルにおける需要の予測には回帰木分析が用いられた。✓ 需要予測を行いたい商品に関連する商品の、過去の販売実績の分類から需要を予測出来るため✓ 変動的な価格や需要関係でも分析出来るため

回帰木モデルは複数構築され、過去データを投入し最も良い結果の得られたモデルが採用された。

仮説設定及び検証

販売数量 価格

イベント期間

残商品数

商品カテゴリ

ブランド/メーカ 希望

小売価格

イベントの開始日時

需要に関わる変数の仮説設定に利用した候補例

割引率が30%以上か

回帰木分析による需要予測(イメージ)

YES NO

30%の商品が期間中に完売

60%の商品が期間中に完売

100%の商品が期間中に完売

YESNO

社内有識者&

データサイエンティスト

同じタイミングで販売中の代替商品との相対価格が90%以下か

従来の価格設定担当者の割り当てにより達成されたこと

達成されたこと

担当者に最適価格設定モデルによる価格設定が合理的であるという納得感を与える

最適価格設定モデル実行時の初期値を与える

自身の価格設定のスキルに自信を持っている、価格設定の担当者に対し、最適価格設定モデルによって推奨された価格を確認させ承認を得ることで、推奨価格が合理的であることを現場担当者に納得させた。

最適価格設定モデルを用いる際に、セール販売事業者として適切でない価格帯も含めた全範囲でアルゴリズムを適用するのではなく、従来価格を設定してきた担当者が導く推奨値をアルゴリズムを使用する際の初期値として使用することで、より効率的に推奨価格を導くことができた。

内容

需要予測に適していると判断されたデータ項目

✓ 部門

✓ 商品クラス

✓ 色の人気度

✓ サイズの人気度

✓ ブランド種別

✓ ブランド人気度

商品関連項目

イベント関連項目

✓ 年

✓ 月

✓ 曜日

✓ 時間

✓ イベント種別

✓ イベント期間

✓ 商品価格

✓ 希望小売価格からの割引率

✓ 同イベント中に販売された同カテゴリ内のスタイル数

✓ 競合商品の価格

✓ 過去12か月間のブランドセール数

✓ 同タイミングで開催されているイベントの数

価格最適化モデル(イメージ)

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成功のポイント

③結果

従来の方法によって価格を設定された商品が、初回の販売時にどれだけ売れたかを算出したところ、実は完売したのは全商品群のうち半分に留まっていることが判明した。一方で、最適価格設定モデルによる価格設定では、需要に大きく影響しない範囲で、売れている商品群についての価格を引き上げられることが判明した。結果として、初回販売時における全体の売上を約10%引き上げることに成功した。

データ分析の専門家であるデータサイエンティストを各部門に配属する体制が理想。一方で、実際の社内業務について一番理解している各現場の人員の協力によって、データサイエンティストに現場の知識を共有することが重要。組織内の各業務部門の知見や洞察力を、データサイエンティストを通じて連携できる体制を築くことが必要。

凡例 データサイエンティスト 現場の社員

現場の体制構築のポイント

以上のプロセスによって完成した分析モデルを本格導入する前に、4か月間の実地試験が行われた。分析モデルによる価格設定によって売り上げが減少しないことを立証することにより、一部商品がこれまでよりも価格向上することによる売上低下を懸念していた「Rue La La」社の経営層を納得させ、円滑な導入ができた。

現場の体制構築のポイント

データ利活用を業務に活用する際には、データのクオリティ、現場のデータ利活用の効果に対する理解、データ利活用の目的の認識統一の3点が特に重要である。

RLL(Rue La La社)では常時10万点の商品を扱っているが、テクノロジーの導入によって、より重要な部分のみに人の判断力を用いることが可能となったが、同様に、これまで人が行ってきた業務が全てテクノロジーに取って代わるのではなく、より人が必要な業務に注力できるようになるために、テクノロジーの力を活用しているという意識を持つことが必要である。

現場の全員が理数系の専門家である必要はなく、人間の知識をテクノロジーに統合することで、共有できる環境を構築している。

部門A

知見や洞察力

部門B

データサイエンティストを通じ、知見や洞察力を部門の垣根を超えて連携

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決定木分析を使って、融資先を均等なリスク集団に分類

各融資先を中長期的なリスク度合いに基づいて分類することで、より最適な融資額を決定

(A-2)商業銀行におけるリスク度合いに基づく融資先の分類

H銀行では、最適な融資額の決定のため、融資先のリスクを正確に把握する仕組みを必要としていた。経済予測といった変動的な要素を加味した、より長期目線で融資妥当性を判断するための分析モデルを構築した。

実施主体

H銀行

✓ ヨーロッパ某国にある、マーケットリーダ的存在の商業銀行

目的・課題

H銀行では主要な事業の一つとして、複数の国の商業不動産への融資を行っており、既存および新規の融資額配分を適切に判断したいと考えていた。現行のPDモデル(債務不履行に陥る率(=債務不履行率)を示すモデル)では、各国の経済変動といった流動的な要素を加味出来ておらず、予測可能性が限られていた。そこで、変動的なデータを含めた分析モデルによって、融資先をリスクの度合いに応じて分類することで、より長期的な目線での融資妥当性を判断することを試みた。

データ利活用の概要

①使用データ

データ利活用の詳細

リスク度合いに基づく融資先の分類には、「国別の人口統計情報」と「融資先別の信用情報」の2種類のデータを用いた。H銀行では、顧客となっている企業の格付け等の「信用情報」と、その企業の拠点がある国の人口推移といった「人口統計情報」が、顧客企業毎にデータベースへ保管されていた。これらの中から、今回の対象である商業不動産に係るデータ3年間分を使用した。

各融資先企業の債務不履行率算出には、 「各融資先の債務不履行履歴」 と「経済見通し情報」の2種類のデータを用いた。「各融資先の債務不履行履歴」 は、H銀行内で顧客企業別に蓄積されていた内部保有データから取得し、国別の経済成長率等を示す「経済見通し情報」については、国際金融専門機関や債券会社等から取得した。

①使用データ<決定木分析> ②分析内容<決定木分析> ③結果

分析モデル

債務不履行履歴と、経済の見通しから、各融資先の債務不履行率を予測

②分析内容<回帰分析>

債務不履行率=ax+yb・・・

海外

需要予測・マーケティングA

民間機関

17

使用したデータ 入手元

構造化国別の人口統計情報 外部

融資先別の信用情報 内部

①使用データ<決定木分析>

使用したデータ 入手元

構造化

各融資先の債務不履行履歴

内部

経済見通し情報 外部

中長期的な予測のために、現行の使用データ(=直近の経済環境下での債務不履行率)を見直し、各国および世界の経済“見通し”を分析データとして採用。

データの採択理由

各国の経済成長率や世界の経済の動きといった経済見通し情報は、国際金融専門機関や債券会社等から入手。

外部データの取得元

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1.セグメンテーション分析融資先を、そのリスクの度合いに応じて均質なリスク集団(セグメント)に分類した。このために用いられた分析手法は、決定木分析であった。多数のサンプルを分析し、そこから関連性が高いと考えられる要因を抽出した。

H銀行では、まず融資先となる商業用不動産を、どのような基準で分類していくのかに関する様々な仮説を立て、その仮説を決定木で表現し、妥当性を検証していった。検証段階では、分類基準の確実性を担保するために、特に「リスクが均質か」、「時間の経過に伴う変動的要素による影響を加味できているか」、「わずかな変化で分類結果が、大きく変化してしまうような不安定な基準になっていないか」という観点で、適切な分類が行われているかどうかを確認・検証した。

2.キャリブレーション分析リスク度合いによって分類された集団の、債務不履行率を算出した。まず債務不履行率はどのような因子によって説明可能であるかを検証するために、回帰分析を行った。これにより、債務不履行率は、過去の債務不履行率と経済の見通しの影響を受けることが導かれ、この観点を踏まえたモデルに則って、各リスク集団ごとの債務不履行率を算出する分析手法が採用された。

③結果

②分析内容

データ分析を用いた、高度化されたモデルの導入により、より細分化された基準で融資先を分類し、より高い精度で最適な融資額を計算することが可能になった。

また、完成した決定木分析による分類方法は、データ分析の専門家以外にとっても理解しやすいという評価が得られた。今後は、外部のデータ分析の専門家を現場に配置し、分析を行っていく予定である。今回開発したキャリブレーションモデルを用いて、引き続きリスク集団の分類基準の正確性を維持・向上させ続けるとともに、他の企業の分野における分析を支援するために活用することが期待されている。

分析は、以下の2ステップによって実施された。1. セグメンテーション分析

融資先をそのリスク度合いによって分類する2. キャリブレーション分析

分類された各リスク集団ごとに、過去の債務不履行履歴と経済の見通しを考慮したPDモデルを用いて、債務不履行率を算出する

既存PDモデル

経済の見通し情報

過去の債務不履行率

結果

債務不履行率はどのような因子によって説明可能か

回帰分析国別の人口統計情報

有識者の経験を基にリスク分類の仮説立て

仮説

仮説

1.セグメンテーション分析 2.キャリブレーション分析

××

これらの分析手法の検討には、H銀行の専門家として、「プログラムマネージャー」、「リスクデータスペシャリスト」、「資本配分マネージャー」が関わった。また外部人材として、データサイエンティスト4名が協力し、セグメンテーション分析とキャリブレーション分析における、定量的モデルの構築をサポートした。

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保安のトラブル検知・防止B

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(B-1)製造工程の課題発見と改善による製品の品質向上

複数のツールを用いたデータ分析により、製造過程上の問題発生の主要因を把握し、設備動作改善のための最適な設定情報を算出。製造工程の自動化により、人に依存したオペレーションからの脱却を目指した。

実施主体

国内製造業A社

✓ 従業員数万人を抱える製造メーカー

目的・課題

A社自社工場での製造工程は、人に依存するオペレーションが主となっており、製造品質のバラつきが課題となっていた。製造品質を均一にし、総合的に改善するため、製造過程上の問題発生の主要因を特定する必要があった。また、製造工程を自動化することにより、自社製品の製造販売のみに留まらず、顧客課題の監視・解決ソリューションプロバイダとしてのサービス事業の強化を目指した。

①使用データ

製品の品質向上には、装置IDや製品番号に紐づく、製造工程で得られる工程履歴、投入素材の特性データ、品質テストの項目や結果等のデータを用いた。製造プロセス上のデータは、PLC(制御装置)やMES(製造実行システム)、センシングを通じて、各工場にて

管理している生産データを本社へ連携することによって収集し、自社データベースへ蓄積した。

データ利活用の詳細

実際に運転している、建設・鉱山用車両・航空機の運転状況を入手し、自社製品の使われ方や、使用場所の条件に応じた劣化診断に活用。

外部データ採択のメリット

国内

保安のトラブル検知・防止B

民間機関

データ利活用の概要

✓ 要約統計量、相関分析、K近傍法、重回帰分析、ロジスティック回帰分析、決定木分析、ニューラルネットワーク等の手法により分析

✓ 分析結果を現場と連携し、効果実証と改善を反復

③結果

✓ Excelによる集計レポートレベルの解析から機械学習による要因発見、予測型への転換により、解析作業の時間を大幅短縮

✓ 特定の製品不良の件数や割合を削減

✓ 設備装置の最適な運転方法の導出により、製品品質の向上と、人に依存したオペレーションからの脱却

②分析内容①使用データ

工場データ

製品データ

また、製品の運転状況の把握のため、実際に運転中の建設・鉱山用車両・航空機といった製品の運転状況、自社製品がどのような環境下や用途・目的で使用されているかについてのデータを顧客から入手した。外部データとしては、建機メーカーより、各車両のタイヤ空気圧やエンジン、コンプレッサの情報のセンシング結果から、外部公開可能な部分を取得した。

21

使用したデータ 入手元

構造化

装置ID

内部

製品番号

工程履歴

素材特性

テスト項目

テスト結果

製品の運転状況 外部

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③結果

これまでは、Excelによる集計レポートによって、製造過程における課題の解析を行っていたが、分析ツールを駆使した、機械学習手法による分析が可能となったことにより、解析作業の時間が大幅に短縮された。また、特定の製品不良の件数や割合が削減された。設備装置の最適な運転方法を導出することで、製品品質を一律的に向上し、人に依存したオペレーションからの脱却が実現された。

②分析内容

3つの分析ツールによって、要約統計量、相関分析、K近傍法、重回帰分析、ロジスティック回帰分析、決定木分析、ニューラルネットワークといった様々な手法を用いた分析を実施した。✓ 情報の抽出・加工・分析・レポート作成に必要な機能を包括的に提供する「SAS Analytics Pro」✓ データ・ビジュアライゼーション・ソフトウェアである「SAS Visual Analytics」✓ 膨大なデータから高精度な予測/記述分析モデルを作成可能な「SAS Enterprise Miner」

上記の分析ツールが選択された理由は以下の通り。• コンピューターの操作対象が図や絵によって表現されていることで、直感的に操作が可能なこと• 全社規模で利用されることを想定し、分析プラットフォームとして利用可能なこと• 工場データのリアルタイムでの自動分析の実現性が高いこと

自社分析チームに加え、外部のデータサイエンティストやSEを2~3名派遣し、総勢10名程度で分析を実施することで、全社的なデジタル化を推進。

外部人材の取り入れ方

分析結果を実際の製造過程において試験的に業務適用することで、効果を即座に測定。結果を元に改善とトライアルを繰り返すことで、迅速にモデルの精度を向上。人に依存した製品の品質ばらつきが改善され、製造工程の自動化実現可能性を立証。

モデルの精度向上による効果

結果として、人に依存したオペレーションにより生まれていた品質のバラつきが低減し、自社工場における全工程の自動化に向けた取り組みの実現性が向上した。今後、構築した予測モデルを用いた製造工程の自動化処理の実装を予定している。

また、既に運転されている製品の摩耗や劣化を外部環境を踏まえて予測することで、自社製品の交換時期を提案することが可能となり、自社製品の製造販売以外のサービス事業が強化された。

22

高度なスキルを必要とせず、直感的に操作が可能な

分析ツール

自社工場から各製造プロセス上の

データを蓄積

H社

製造上の問題の主要因特定と改善

運転状況共有

劣化状況の予測

初めに、自社工場での各製造プロセスにおけるデータを分析することで、品質の差の原因となっている項目の特定を行った。次に、各項目が品質改善にどのような影響力を持つかを把握するため、各項目における設定情報を変化させたシミュレーションテストを実施することにより、推定される品質・性能値を算出した。

各分析結果は製造工程の担当者と連携され、即座に実際の現場で試験的に業務適用を行い、改善効果を検証した。

同様に分析結果の妥当性・有効性の評価と調整を繰り返し、業務に適用可能なレベルに到達するまで検証を重ねた。

また、各顧客先の自社製品について、製品毎の特性と、使用頻度や外部環境、用途や目的といった実際の使用環境下でのあらゆる要因を掛け合わせることで、使用場所の条件に応じた自社製品の劣化状況を推測することが可能となった。

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(B-2)電力会社におけるIoTデータを用いた異常検知

PMU(電源管理ユニット)のデータから異常を発見するため、管理図を用いた手法と機械学習手法をミックスした異常検知モデルを開発することで、異常発生前に警告を出す仕組みを構築。電圧の安定している状態と問題発生時の条件の把握を可能とした。

実施主体

海外電力会社B社

✓ 米国の複数の州で、発電、送配電、小売を提供するフルサービスの電力会社

✓ 数100万顧客の契約を有する

✓ 従業員は数万人

目的・課題

海外電力会社B社は電力・エネルギー事業を展開しており、過去に70~100億ドルのコストが発生したトラブルがあったことから、自社が抱えるビジネステーマ(電圧の安定性、リスク回避、盗電や検針の不正等の非技術的損失の低減等)に対する対策を行う必要があった。そこで、IoTやAIなどの技術を積極的に取り込みながらビジネスモデルの変革を行い、従来型の発電して電力を提供するというビジネスモデルからの脱却を試みた。

①使用データ

データ利活用の詳細

分析の為には、「リアルタイムでのイベント検知」及び「イベント識別・定量化」を実現する必要があった。リアルタイムイベント検知の為、リアルタイムで電力使用量・設備装置情報・気象情報等の内外からの構造化データを連携し、管理図手法や決定木のスコアリング処理を実施した。保修工事の情報やセンシングした電力の用途等の情報はデータクレンジング処理の上、イベントの識別及び定量化に利用した。

海外

保安のトラブル検知・防止B

民間機関

電力の用途が把握できれば、必要な需要の全量の計測や、設備機器に対する劣化影響の正確な把握が可能となる。

外部データの選択理由

データ利活用の概要

③結果

✓ 技術的問題に起因しない売上ロスの減少

✓ スマートグリッドの効率的な運営

✓ 設備保全における故障トラブルの減少

✓ データ分析の社内浸透により、データドリブンの経営を推進

✓ 分析結果を公開し、外部のフィードバックを得るサイクルの確立

②分析内容<イベント識別・定量化>

②分析内容<リアルタイムでのイベント検知>

管理図

決定木(電圧安定性)

データクレンジング

イベントの識別類似性分析

ERA分析

特異スペクトル解析

イベントの定量化リアプノフ関数

時系列セグメンテーション

23

使用したデータ 入手元

構造化

電力の使用量

内部

設備装置情報

気象情報 外部

①使用データ

①使用データ

使用したデータ 入手元

構造化

保修工事の情報等

内部

センシング情報等 外部

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③結果

②分析内容

分析にあたり、社内のデータサイエンティストや、有識者が保持する豊富な事例から方法が検討された。費用対効果の算出においては、分析リクエストがあった業務部門との連携によって分析結果をテスト的に業務に適用し、想定される効果を試算した。また、費用対効果やサービスへの活用における実現性と併せて、業務部門と連携し改善効果が見えるかどうか、新規ビジネス、サービスとして使用可能かどうかも含め、分析方法を評価。その結果、構造化データ分析によるリアルタイムイベント検知と、非構造化データの分析によるイベントの識別及び定量化がなされた。

分析の結果、リアルタイムイベントでの検知とイベントの識別、及び定量化が可能になったことから、盗電や検針の不正による売上ロスの減少・スマートグリッド(次世代送電網)の効率的な運営・設備保全における故障トラブルの減少といった成果が得られた。分析が社内に浸透したことから、データの経営への活用を推進することが可能となった。また、分析技術や各種の情報交換を行う社内SNSを立ち上げ、データ活用を推し進める風土、環境を醸成した。分析は自社が抱えるビジネステーマへの対策だけでなく、分析結果を近隣エリアの様々な大学・関連企業に情報を提供。分析結果を業務に活用した際のフィードバックを得ることで、精度を向上させるサイクルを確立した。

各データの分析には、「SAS Enterprise Miner」、「SASEvent Stream Processing 」、「Hadoop」等を使用し、管理図を用いた手法と機械学習手法を掛け合わせ、 PMUのデータから異常を検知するモデルを開発した。分析体制は、約20名の社内のデータサイエンティストの他、業務知識の理解、業務部門との連携ができるコミュニケーションスキル、分析のための基礎のスキル、及び分析ツールを操作できる基本スキルを持つ担当によって構成された。導入時には、ソフトウェア導入に必要なITスキル及び分析用データとデータベースの詳細情報を有する人材、及び分析業務に精通する人材の数名規模で利用しながら、分析者の育成と、利用環境の向上を実施し、段階的に全社へ浸透させていった。また分析結果を提供した業務部門からのフィードバックを随時入手しモデルの精度向上に利用した。

分析結果の妥当性、有効性を評価しつつ、チューニング作業を反復。業務に適用できるレベルに到達するまで、ターゲットに何らかの影響を与えると考えられる要素を検討。

有効なデータの組み合わせ発見方法

分析時の方法論・要約統計量・ベイズ分析・相関分析・K近傍法・協調フィルタリング・分散分析・重回帰分析・ロジスティック回帰分析・サポートベクターマシン 等

24

リアルタイム処理

管理図

決定木(電圧安定性)

アラート通知

バッチ処理

リアルタイムのデータでは識別できない傾向値を見るため、データを貯めてバッチ処理で分析を実施

データクレンジング

イベント識別類似性分析

ERA分析(※)

特異スペクトル解析

イベントの定量化

リアプノフ関数

時系列セグメンテーション

※ERA(Eigensystem realization algorithm)法とは、時間の経過にともなう波形の変化を行列操作によって振動数に変換し、振動特性を推定する分析方法

近隣エリアの大学との連携により、外部のノウハウを連携。

外部人材の取り入れ

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事業者の意識・感情分析C

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実施主体

海外電子機器メーカーLenovo社

✓ パソコンの開発・販売・サポート

✓ 100ヶ国で事業を展開し、30種類以上の言語をサポート

目的・課題

自他社製品の販売や、グローバル事業展開を行う中で、従来の手作業による顧客コメントの評価に限界が生じていた。特に顧客の不満や製品問題の原因を読み解くのが難しいという課題を抱えていた。

品質向上・製品開発・製品イノベーションに役立つ情報を現場に提供するため、品質問題の早期検出を目指した「Lenovo Early Detection(LED)」システムを構築。このシステムで収集される膨大なデータを分析する仕組みが必要となった。

データ利活用の概要

データ利活用の詳細

①使用データ ③結果

■工数削減効果

✓ 製品の問題検出に必要な時間が従来の保証分析手法と比べて3分の1に短縮

✓ 以前は検出が困難であった問題も検出できるようになったことで、保証対応コストが10~15%低減

■負担軽減効果

✓ ソーシャルメディアから得られた洞察に基づき付属文書を改良したことで、コールセンターへの問合せ数が30~50%減少

■リスク回避

✓ キーボードのデザイン変更等による販売への打撃を未然に回避

✓ コールセンターの記録と、SNSのコメント等、2,500万件のテキスト情報を利用

✓ テキスト分析により、トピックの自動抽出や分類ルールの自動作成。文書毎の顧客感情を自動判別

②分析内容<データ加工・分析>

✓ 顧客感情、保証、コールセンターに関する分析結果を可視化

②分析内容<調査・レポート>

27

海外

事業者の意識・感情分析C

民間機関

①使用データ

(C-1)クレーム内容から製品トラブルの根本原因を早期発見

顧客の不満や製品の問題要因の検知をするために、データ分析用のシステムを構築。製品に関する社内データ・コールセンターから収集のテキストデータ・2,500万件のソーシャルメディア投稿などを組み合わせて分析し、品質問題を早期に発見する仕組みを確立した。

コールセンターで収集された情報に加え、TwitterやFacebookなどのオンライン上のテキスト情報を収集した。ソーシャルメディアにおけるブロガーのポスト情報や、自社製品に関するフォーラム、製品に対する不満や質問及びそれらへの回

✓ 顧客アンケートでは、自社への好感度が高い顧客からの情報収集となり、偏りが生じているため、ソーシャルデータを利用することでより多様な顧客心理を収集可能。

✓ コールセンターに情報が届く前に、ソーシャルメディア上で、製品に関する反応・問題などの情報を入手することで事前対策が可能。

外部データの採択理由

答等の非構造化データを、Webサイトから情報収集し、自社データベース上に管理。

使用したデータ 入手元

構造化

製品データ 内部

非構造化

テキストデータ(コールセンター)

内部

テキストデータ(SNS)

外部

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SAS Contextual Analysis高度なアルゴリズムを自動適応することにより、大

量のテキストを短時間で容易に分析可能。インプットデータから用語を抽出し、センチメントのスコアリング・トピックの作成を実施し、カテゴリー毎に割り振ることが可能。また、機械学習と各分野の専門知識とを組み合わせることで、より精度の高い分析結果を得ることが可能。

28

③結果

②分析内容

データサイエンティスト、システムエンジニア、ソーシャルメディアに精通した担当を4人体制でアサインし、4カ月間ツールを導入した結果、30種類以上の言語のニュアンスを含めた感情分析を実施した。コールセンターでの問題検出から、対応までの時間削減効果を算出した結果、以前は検出が難しかった問題を検出し、保証対応コストが10%以上の低減に成功した。またソーシャルメディアから得られた洞察にもとづき付属文書を改良するなど、顧客の声に耳を傾ける文化が醸成された。

SAS Sentiment Analysis意見の経時的な変化をモニタリング:独自に組み合わせた統計的手法とルールベースの自然言語処理テクノロ

ジーにもとづいて、感情表現をリアルタイムまたは一定期間にわたって自動で抽出。また、感情表現の変化についてレポートを作成し、経時的に変化する反応を識別可能。噂や評判の発信元を割り出し、新たなターゲットの定義に役立てる:内部の要件とさまざまなSNSを積極的にモニタリングし、これまでに行ってきたリサーチ結果と照合することで、企業がどこでどのように話題に上がっているかを把握することで発信元ごとにフィルタリングし、戦略の変化とともに変化するセンチメントを追跡可能。改善の余地がある領域を特定し、戦略の効果を測定:あらかじめ定義した肯定的なフレーズと否定的なフレーズを電子コンテンツの中から検索し、コンテキスト・ルールを作成する。このコンテキスト・ルールを活用して、曖昧な表現や単語等を、定義したフレーズに関連するフレーズかどうかを識別可能。顧客、パートナー、サプライヤー、従業員が表現したセンチメントを理解できる:従来の情報プロバイダ、インターネット、新たなニュース・フィードから収集したい情報とその粒度の定義及び継続的な評価が可能。

SAS Text Miner意思決定までの時間を短縮し、より正確な組織ビューを提供:構造化データと非構造化データが結合され、デー

タ分析のプロセスが自動化されるため、ビジネスの全体的な方向性を正しく導く洞察を得ることが可能。企業の業績を改善:多くのソフトウェア・ベンダーが提供しているテキストマイニング・ツールは、1つのテキスト・フィールドを1つのクラスに入れる分類方法を採用しているが、SAS Text Minerでは複数の構造化フィールドおよび非構造化フィールドでの分類が可能。

顧客心理、及びトラブル根本原因究明には、テキスト分析技術が用いられた。SAS社が提供する、以下のツールにより、トピックの自動抽出や分類ルールの自動作成し、文書毎の心理を自動判別した。また、発見された事象をルール化して集約し、ルールで捉えられない未知の事象の予測が実施された。

SAS Visual Text Analytics

テキスト・アナリティクス:ソーシャルメディアやその他のテキストデータに含まれるホットトピックに関する洞察を獲得し、(会社や商品に対する)書き込みが肯定的か否定的かを識別可能。

SAS Visual Text Analytics 使用画面イメージ(①)

出典:SAS Institute Japan株式会社Copyright © 2018, SAS Institute Inc. All rights reserved.

出典:SAS Institute Japan株式会社Copyright © 2018, SAS Institute Inc. All rights reserved.

SAS Contextual Analysisアルゴリズムの自動適用(②)

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南アフリカ衣料小売業者A社

✓ 衣料・靴を専門とした、老舗の大手衣料小売業者

衣料小売業者A社(以下、A社)では、顧客体験の向上を目指していたが、顧客のA社に対するネガティブな感情の起因となっている要素が何であるかが見えないために、業務プロセス上の問題発見に繋がっていなかった。日々顧客から得られる大量の問い合わせメールや電話、またアンケートやソーシャルメディア上の投稿を、テキストマイニング、トピック分類の手法等を用いて分析することで、顧客の発言に隠れた真の感情、またネガティブな感情の要因を抽出することを目的とした。

データ利活用の概要

海外

事業者の意識・感情分析C

民間機関

データ利活用の詳細

①データ収集 ②分析手法 ③結果

顧客のネガティブ感情を引き起こす要因となっている問題について、「支払い残高」、「疑問」、「支払いの根拠」、「契約内容」、「接客態度」、「不適切サービス」といった主なキーワード毎に抽出し、マッピング

64,000件のデータ

【1】テキストマイニング

✓ サポートベクターマシーン✓ 自然言語処理

【2】トピック分類

✓ トピックモデル

29

①使用データ

(C-2)顧客の感情分析によるネガティブ要因の抽出

顧客体験の向上を妨げている根本的な要因を、全業務プロセスから発見するため感情分析を実施。顧客の意見や問い合わせといったテキストデータから、ネガティブな感情を引き起こす要因となるキーワードを抽出することで、効果的な業務プロセス改善を目指した。

顧客の感情を分析するために用いるデータには、顧客の意見・報告・問い合わせが用いられた。それらのデータは、総務部や問い合わせセンターへ寄せられたメールや電話の録音、アンケートやソーシャルメディアから入手し、それぞれCSVフォーマットにて非構造化テキストとして蓄積した。

データクレンジングでは、収集された75,000件のレコードのうち、特殊文字や空欄の含まれているものは初めに削除、また4語以下のものに関しては、感情の抽出が出来る量に達していないとの判断から排除。最終的には、64,000件のレコードが分析対象データとして有効と判断。

また、分析モデルを訓練させるためのトレーニングデータは、サンプルテキストを用いて作成した。

顧客からのあらゆる発言を、メールや電話の録音等からCSVフォーマットにて入手し、非構造化テキストとして蓄積。

データの収集・蓄積方法

実施主体 目的・課題

使用したデータ 入手元

非構造化

電話やメール、アンケートを通じて得られた、顧客の意見や報告、問い合わせ等の逐語データ

外部

ソーシャルメディアを通じて得られた、顧客の意見や報告の逐語データ

ソーシャルメディア上の情報を用いることで、電話やメールといった直接的な入手元に限らないデータの分析が可能。

外部データ採択のメリット

出典:アクセンチュア

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マッピングされたキーワードイメージ

30

③結果

②分析内容

本プロジェクトの目的である、顧客の意見やクレームの中から顧客の感情をネガティブにさせている要因を発見するため、分析は I.テキストマイニングと II.トピック分類の2フェーズで実行された。分析作業は、外部のアナリティクス専門家とコンサルタントの2名体制で

行われた。

分析の結果、ネガティブ感情を引き起こす要因となっている問題について、下記のようなキーワードが抽出された。それらのキーワードの頻出度によって色や大きさで可視化する手法を用いて、より重要な要素を把握した。

【2】 トピック分類【1】テキストマイニングのb.感情分類において、ネガティブ感情と

分類された文章に対して、ネガティブな感情を引き起こす要因となっているトピック(主題)を特定した。その結果、ネガティブ感情の主な起因のタイミングは、アカウントプロセスとカスタマーサポートにあることがわかった。アカウントプロセス上ではアカウントに紐づく支払い残高、操作等に関する疑問、アカウントの退会、購入のキャンセルや返金等に係る支払いの根拠、契約内容といった問題、カスタマーサポート上ではスタッフの接客態度やその他の不適切な顧客サービスに関する問題が、ネガティブ感情の引き金となっていることが明らかとなった。

コンサルティング会社、大学付属研究機関と協業し、外部のデータサイエンティスト2名が分析を担当。

外部人材の取り込み

複数の機械学習アルゴリズムをテストし、正確性、時空間計算といった点で良い結果が得られたサポートベクターマシーン(パターン識別手法のひとつ)を採用。

分析手法の選択方法

サポートベクターマシーン、トピックモデルの精度向上に用いられるトレーニングデータの生成は反復プロセスを要するため、正確性を数か月に一度確認。正確性に低下が見られた際にはデータ元を更新することで質を担保。

精度向上方法

ネガティブ感情 ニュートラル感情 ポジティブ感情

✓ R言語

用いた分析手法

✓ サポートベクターマシーン

✓ 自然言語処理

64,000件のレコード

賞賛0.001%

一般的な問合わせ

95%クレーム

5%見積り依頼0.0007%

a

b

13.92% 7.24% 38.60% 2.27%

CSV

支払いが反映されていない

支払い遅延履歴に誤りがある

サービス料が追加されている

会員登録が出来ない

店舗の電話に関する不正

問い合わせサービスについて

問い合わせへの支払い

入金の確認実際に支払った

承諾していない契約

遅延が示されている

同意していない数量

スタッフの誤った推薦

不愛想で手助けしてくれない

クレーム電話をした顧客

オンラインサービスの悪さ実際に間違っている

サービスへの不満

【1】 テキストマイニングa. カテゴリ分類:初めに、R言語を用いてデータクレンジング済の

64,000件のレコードを「賞賛」、「一般的な問い合わせ」、「クレーム」、「見積もり依頼」の4カテゴリに分類した。

b. 感情分類:次に、トレーニングデータを与えて訓練したサポートベクターマシーン、自然言語処理を用いて、各カテゴリに分類されたレコードを、 「ネガティブ感情」 、「ニュートラル感情」、 「ポジティブ感情」の3種類に分類したところ、ネガティブ感情は予想よりも割合が少ないことがわかった。

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事業者の不正分析D

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実施主体

デジタルコンテンツ配信サービスE社

✓ スマートフォン向けデジタルコンテンツ(アプリケーション・映画・音楽・書籍など)を配信

目的・課題

膨大なデジタルコンテンツを配信するE社では、不適切な内容等の含まれた違反コンテンツの審査に多くのコストがかかっていた。既存のルールベースの違反検知モデルは20以上存在していたものの、誤検知率が高いため審査完了までに時間を要し、結果として違反コンテンツを発見できる確率が低かった。また、違反コンテンツの開発者をコンテンツリリース前に検知することが困難であった。高性能の機械学習モデルを構築することによる検知率の向上、コストの削減を目指した。

①使用データ

データ利活用の詳細

違反コンテンツとの相関性の高いシグナルの例• 「前回_申請_拒否」のシグナル

データ利活用の概要

違反コンテンツと相関性の高いシグナルを分析することで、違反コンテンツのパターンを学習し、自動的に分類

①使用データ<ニューラルネットワーク> ②分析内容<ニューラルネットワーク>

数値計算を効率的に行うNumpy、ネットワーク可視化ツールGephi、その他E社オリジナルのリアルタイムビッグデータ処理ツールを用いて違反コンテンツ開発者を早期に特定

違反コンテンツ

違反でないコンテンツ

違反コンテンツへの対応力の向上、ネットワーク分析を用いた違反開発者の特定により、年間85万ドルのコスト削減

旧モデル 新モデル

200%増違反検知率

網羅性

審査速度

コスト削減&コンプライアンス向上

コンプライアンス向上

コスト削減

178%増

3%増

aaa_bbb

abc_abc

aab_ccd

①使用データ<ネットワーク分析> ②分析内容<ネットワーク分析>

33

(Gephiイメージ)

海外

事業者の不正分析D

民間機関

(D-1)機械学習による違反コンテンツの検出

デジタルコンテンツ配信サービス上の違反コンテンツの特定能力向上のため、既存のルールベースモデルから高性能な機械学習モデルへと移行し、違反検知率、網羅性、審査速度を改善。違反コンテンツの開発者の早期発見により、コンプライアンスの向上に加え、大幅なコスト削減が推定される。

既にコンテンツ配信サービス上に配信されている違反コンテンツを発見するためのニューラルネットワークには、デジタルコンテンツに紐づくシグナルが用いられた。膨大なシグナルの中から、変数解析によって違反コンテンツとの相関性を検討した結果、約480のシグナルで1以上のリフト値(相関性を発見の際に重要となる指標)が見られた。

シグナル リフト値

Previous_submission_rejected 4.95

Raw_doc_labels:content_rating 2.85

Publish_submission_labels:prev_non_skip 0.48

Publish_submission_labels:desription 0.12

使用したデータ 入手元

構造化

ログイン情報

外部広告配信識別用ID

クレジットカード情報

プログラムコード

使用したデータ 入手元

構造化

シグナル(情報伝達のために受送信される電気信

号)

内部

③結果

シグナルとリフト値の例

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③結果

①使用データ

②分析内容

34

違反コンテンツの開発者の特定には、配信サービスのユーザー登録・コンテンツ開発者登録を通じて入手され、社内で蓄積された情報を用いた。

中でも開発者、ユーザー、違反コンテンツの関連性を可視化するうえで最も有効なものとして、ログイン情報、広告配信識別用ID、クレジットカード情報、プログラムコードといったデータが用いられた。

違反開発者の特定に有効なデータは、配信サービス上でのログインや登録されたクレジットカード情報といった蓄積された会員情報を使用。

外部データの取得元

【1】既に配信サービス上にある違反コンテンツを分類するための「ニューラルネットワークを用いた分類モデルの構築」と、【2】違反コンテンツの配信を未然に防ぐための「ネットワーク分析」の2つの分析を実施した。

【1】 ニューラルネットワークを用いた分類モデルの構築機械学習を用いた分類モデル構築のため、有効な分析手法の候補としてニューラルネットワーク、ロジス

ティック回帰分析、ナイーブベイズ分析、再起分割分析が検討された。各分析手法の有効性は、真陽性率(正であるものを正と判断する割合)と偽陽性率(負であるものを正と判断する割合)を用いるROC曲線やAUCといった代表的な評価指標による検証の結果、最も良い数値を示したニューラルネットワークが選択された。

【2】ネットワーク分析既存の違反検知プロセスでは、デジタルコンテンツが登録された後で、1つ1つのコンテンツが違反であるか否

かの判断にかけられ審査が実施されている。しかしもともとE社では、個人、その家族・友人、ソーシャルコニュニティーに関する膨大なデータを保持しており、E社オリジナルのビッグデータ解析ツールを用いて不正行動の分析を行っていた。同様のツールに加え、数値計算を効率的に行うNumpyや、ネットワークを解析・可視化するGephi等のツールを用いることで、違反コンテンツの開発者を特定できると考えた。

既存のルールベースの違反コンテンツ検知モデルを、ニューラルネットワークを用いた分類モデルに差し替えることで、以下のような効果が見られた。

違反検知率の向上✓ 違反可能性があるとして審査対象とされたコンテンツの中で、実際に違反である確率が200%増加。網羅性の向上✓ 最終的に違反であると判断されたコンテンツの中で、用いたモデルによって特定された割合が178%増加。審査速度の向上✓ 違反可能性のあるコンテンツ数が、待ち時間なく審査に移行できる割合が3%増加。

データ分析を活用した本モデルの活用により、1週間で320時間相当の人件費を削減し、年間では850,000ドルのコスト削減に繋がることが推定される。将来的には、違反コンテンツ開発者を未然に特定することで、配信される違反コンテンツ数自体の減少を目指す。

既存のルールベースモデル

審査にかかるコスト大

新たに構築された機械学習モデル

コンテンツのシグナル

違反でないコンテンツ

違反コンテンツ

コンテンツ全体の12%うち実際の違反は8%

審査の効率向上

✓ ニューラルネットワークを用いてコンテンツを分類✓ 属人的ノウハウを人手でルール化 コンテンツ全体の25%を

違反に分類するが、実際の違反はわずか4%

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実施主体

某国保険協会 L協会

✓ 同国の保険会社は加盟を義務化

目的・課題

某国では、国外への再保険の規制緩和等により、保険業界の急成長に伴い保険の請求額が増加し、架空の請求や不正等の問題が起きていた。某国政府は、国内の保険会社が加盟する保険協会内への監査局設置を決定。各社からの情報の提供を義務付け、業界内各社のデータを一か所で分析することで、保険協会内部での不正の監査を可能とし、業界的課題の解決を目指した。

データ利活用の概要

①使用データ

データ利活用の詳細

①使用データ ②分析内容

✓異なる不正パターンの検出に優れたハイブリッドモデルを構築

⁃既知の不正検出に優れた「ビジネスルール」分析

⁃未知の不正検出に優れた「異常検知」

⁃複雑な不正検出に優れた「予測分析」

⁃組織的不正の検出に優れた「ネットワーク分析」

⁃複数の不正の関連性の検出に優れた「リンク分析」

✓保険業界横断的に不正を監視する保険監査局を設立

⁃不正検知率が、保険会社単体での検知率の5倍までに向上

⁃9か月で、約8,500万ドルの潜在的な不正を特定

⁃不正被害の削減により、各保険会社は保険料を見直すなど、保険契約者へのサービス向上が可能に

③結果

35

海外

事業者の不正分析D

公共機関

保険業界全体的な不正問題の解決のため、政府の指導の下、保険協会に加盟する某国内の保険会社は不正検知に必要となる情報の提出が義務付けられた。そのため用いたデータは政府が保持者となっている。

過去から現在までの請求情報、契約情報に係る保険領収証、申込書、保険金請求書といったデータは、各保険会社毎に保管しているシステムより抽出され、保険協会のデータマートへ蓄積された。次にデータ分析チームが、それらの既に提供されていたデータの中から、不正の検知に必要と判断されたデータへと絞りこみ、さらに壊れたデータや空欄その他、分析に有効でないデータを排除した。

日次では、7万5,000件の賠償保険データ、2万5,000件の自動車総合保障保険、10万件の生命系保険を利用した。

保険の不正分析に必要な情報は、各保険会社から提供された、過去から現在までの請求、契約に係るあらゆるデータの中から、データ分析の専門家が特に有効なデータを選択。

データの採択理由

政府の義務付けにより、各保険会社は必要なデータを保険協会へ提出し、保険協会内のデータベースへ保管。

データの収集・蓄積方法

使用したデータ 入手元

構造化

契約情報

外部

請求情報

(D-2)業界内各社横断データの活用による不正の発見と防止

某国では、保険業界の急成長を受け、保険協会内に財務省直属の機関である保険監査局を設置。財務省の指揮の下、各加盟保険会社から提出されたデータを元にハイブリッド分析を実施することで、協会内部での不正の検知や調査が短期間で可能となった。

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分析には、それぞれ異なる不正パターンの検出に優れた、異なる分析を組み合わせることにより、多様な不正の分析を可能とするハイブリッドモデルを構築した。✓ 既知の不正検出に優れた「ビジネスルール」分析✓ 未知の不正検出に優れた「異常検知」✓ 複雑な不正検出に優れた「予測分析」✓ 組織的不正の検出に優れた「ネットワーク分析」✓ 複数の不正の関連性の検出に優れた「リンク分析」

特にネットワーク分析では、各保険会社の情報を一元化して分析を行ったことにより、各保険会社を横断した複数の不正請求事例が、同一の請求に紐づく組織的犯罪であることを発見し、捜査へ繋げることが可能となった。ネットワーク分析とは、過去に不正と判断された請求に関わるエンティティ (実体となる人物、建物、車両等)の関係性を分析する手法である。

③結果

各保険会社からデータを集約

不正検知済の請求に関わるエンティティ例

エンティティ

人物 建物 車両

分析項目例

✓名前✓生年月日✓住所✓電話番号✓車両番号 など

人物A

複数の不正検知済の請求が人物Aに紐づいていることから、人物Aから請求された他の請求についても不正の可能性が高い

① 保険協会は財務省の監督下に位置② 財務省直属の機関として保険協会内に保険監査局を設置し、

協会内部で保険業界の監督・不正等の対応が出来る仕組みを構築

③ 保険会社は各々のシステムより、契約や請求に係るデータが提出され、保険協会内のデータマートへ蓄積

④ 保険監査局は、各保険会社の業務の監視、規制、不正やクレームへ対応

②分析内容

36

本プロジェクトは保険協会への保険監査局設置と同時並行で実施されており、保険協会内において自ら不正を分析できるモデルの構築が重要な目的であった。そのため、分析チームは、保険協会内ITチームのメンバー4~5名、プロジェクトを率いた受託企業のデータサイエンティスト3~4名、ベンダーのデータ専門家数名に加え、中央不正監査局設置を同時に担当した受託企業のコンサルティングチームとも日々連携することでプロジェクトを効果的に進行した。

保険協会内のITチームメンバーが中心となり、今回のプロジェクトを率いた受託企業のデータサイエンティスト、ベンダーのデータ専門家に加え、同時進行していた、中央不正監査局設置を担当していたコンサルタントが日々連携しプロジェクトを推進。

外部人材の取り込み

異なる不正パターンの検出に優れた、異なる分析を組み合わせることにより、多様な不正の分析を可能とするハイブリッドモデルを構築。

分析手法の選択方法

約半年の短期間で、保険監査局の設置と高度なデータ分析手法を用いたモデルの導入により、協会内部にて保険会社・再保険会社の業務活動の監督、規制、査察、クレーム処理等の対応が可能となるまでに至った。全く新しいパターンの不正や今まで知られていなかった不正ネットワークが発見され、不正検知率が、保険会社単体での検知率と比較して5倍に向上。また9か月で、約8,500万ドルの潜在的な不正を特定した。不正被害の削減により、各保険会社は保険料を見直すなど、保険契約者へのサービスを向上することが可能となった。

ネットワーク分析

保険監査局

③ ④

政府

保険協会

保険会社

ネットワーク分析の流れ

某国での保険監査局設置の流れ

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海外

事業者の不正分析D

公共機関

実施主体

アメリカ公的扶助制度

✓ 低所得者向けの生活扶助制度

目的・課題

アメリカの公的扶助制度では、指揮系統の一貫性、予算の最適性、及びプロセスの効率性を担保しつつ、制度の不正利用の調査能力を向上させることが課題となっていた。本プロジェクトでは、業務の効率化、利用者の行動と不正発見の鍵となる要素を発見するための洞察力の最大化を目指した。

データ利活用の概要

①使用データ

データ利活用の詳細

①使用データ

不正検知率向上

調査時間の短縮 調査能力の拡大

10%以下

ロジスティック回帰モデルの結果を元に、他の分析手法を用いた弱学習器(性能の低いモデル)を複数掛け合わせることで精度を向上させる学習モデルを構築

③結果②分析内容

ロジスティック回帰

弱学習器③

弱学習器②

弱学習器①

×

×

37

(D-3)生活扶助制度の不正受給発見と調査の改善

公的扶助制度の不正受給検知プロセスの効率性向上のため、不正受給者の傾向分析モデルを開発。不正発見率の増加、正確性の向上、調査時間の短縮に成功。また不正受給者がとる行動の特徴や、不正の新たなパターンが発見された。

使用したデータ 入手元

構造化

受給者情報

内部

世帯情報

磁気会員カード取引データ

外部犯罪履歴

※パイロットモデルのみ

モデル構築に向けたデータ収集には、2名のデータアーキテクトが不正傾向モデル開発のために必要となるデータ内容及びその組み合わせ等を検討した。その結果、データ管理会社より提供された、会員情報データベースと、会員が使用する磁気カードの取引データの2つのデータソース利用が有効だとわかった。

初めに入手したデータソースは、まず会員データ、世帯履歴、電子取引データに関して包括的にデータを有するもののみに限定され、今回の不正傾向モデル開発に用いるデータのみを収集したデータの組み合わせが用いられた。最終的にはその中から磁気カードの取引データも有するもののみに絞り込まれ、データソースが構成された。

なお、犯罪履歴データ等のデータは、分析開始1年目のモデルで不正予測に有効とされていたが、規制の変更により使用不可となった。

20.8%

-30%

受給者情報、世帯情報、磁気カードの電子取引履歴に関して包括的にデータを有するもののみに限定することで、今回の不正傾向分析モデル開発に最適なデータセットを確立。

有効なデータ編成の発見

磁気会員カードの取引データは、定型しているデータ管理会社のデータベースで保管していたデータを抽出し使用。

外部データの取得元

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③結果

②分析内容

38

分析モデルにより導出された違反世帯に共通する行動の特徴例(一部抜粋)

2013年1月にパイロット版の開発と試験的導入がなされ、パイロット版の成果を元に、2013年7月から2014年5月にかけて本格的なモデルを導入した。さらに2014年7月から2015年5月にかけて新モデルを開発・導入した。

分析に際しては、外部のデータサイエンティスト1人が担当し、モデルの構築後、3~4か月の頻度でデータを更新し、受給者が扶助制度の不正利用を行っているリスクがないかの指標(リスクスコア)を生成。モデルのパフォーマンスを測定することで、モデルの導入初期における有効性の担保を行った。

誤検知の削減・不正検知率の向上について、10%以上の不正検知率を目標としていたところ、パイロットモデルの実地試験において、20.8%にまで向上したことが確認された。調査にかかる人件費等リソースの削減について、不正と見られるケースの調査開始までのリードタイムを30%縮小した。また、違反世帯に共通する行動の特徴を特定することで、不正やエラーの新たなパターンが検知され、調査能力の向上に繋がった。

データの選定、モデルの構築、分析、導入、導入後の効果測定、モデルの精度向上までを、外部のデータサイエンティストが一貫して担当。

外部人材の取り込み

サポートベクターマシーン

決定木 ロジスティック回帰

ニューラルネットワーク

✓実装が容易✓不正検知実績多数✓ プロセスが明快

×

×

×

ロジスティック回帰を基本とした分析モデル

他の分析手法を用いた弱学習器①

他の分析手法を用いた弱学習器②

他の分析手法を用いた弱学習器③

...

一つのモデルの分析結果を用いて、次のモデルを構築

×

×

×

様々な分析手法の組合せの検討 アンサンブル学習を採択

選ばれたパイロットモデルには500件のサンプル事例が投入され、その操作性や不正検知率等のパフォーマンス性に関する実地試験が行われた。

パイロット版開発試験的導入

本格的なモデル導入

2013年1月 7月 2014年5月 7月

新モデルの開発・導入

2015年5月

運用

ロジスティック回帰、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシーン、決定木といった幅広い分析手法を組み合わせた分析モデルを複数構築し、最適な分析モデルを検討した。完成した複数のモデルは過去12か月以内に抽出された会員データにそれぞれ適用し、性能を比較検証した。その結果、比較的簡易に実装が出来、且つ不正検出において一般的に用いられる、ロジスティック回帰を基本とした分析モデルが構築された。ニューラルネットワークを初めとする他の分析手法は、予測の正確性では優れているもののプロセスがブラックボックス化してしまうのに対し、ロジスティック回帰によって生成される係数は、最終的なモデルに用いられる変数への変換が容易であった。

また、段階的に弱学習器(性能の低いモデル)を追加していくことで強学習器(性能の高いモデル)を構築する、アンサンブル学習と呼ばれる手法により、モデルの一貫性を担保した。

分析モデルの開発・導入のタイムラインイメージ

過去6か月以内のデータを用いた場合 過去12か月以内のデータを用いた場合

深夜から朝6時の間での取引履歴がある 世帯の中で収入のある者が複数いる

61歳以上の中高齢者がいる 1店舗で取引可能な制限数に達している

登録上の住所と実際の住所が異なる 電子カードをスワイプせずに実行された取引がある

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実施主体

某国国税局

✓ 税金の徴収、国家支援に係る一部支払い、および国の最低賃金等の管理を実施

✓ 数千万人の個人と数百万の企業を対象に、税を徴収・還付

目的・課題

某国国税庁では、個人向け税務を再設計し、より効率的かつ正確に税金の徴収を実施する必要があった。そこで、税務の根幹となる機能にアナリティクス技術を導入し、業務プロセスを再設計することで、税務プロセス全体からの収益の増加とともにコスト削減を実現した。結果として、約3カ月の実施期間で約330億円以上のコスト削減効果と約340億円増収をもたらし、全体で10倍のROIが実現された。

データ利活用の概要

データ利活用の詳細

②分析内容 ③結果

不正検知、徴収最適化な分析目的・税種別に応じて、最適な手法を選択✓ 不動産購入、税務申告、ローン、

銀行口座および雇用データなどを利用した脱税・不正リスク分析

各種情報

分析手法の選択

分析結果

ロジスティック回帰分析 最適化分析

クラスタリング 異常検知

ネットワーク分析

✓ 不正申告者の検知と納税者の行動を把握し、職員の調査レベルを向上

✓ 人員削減を行いつつ、税収の増減を実現

✓ 税種別に関わらず、国全体での不正リスク管理を行う体制の構築

✓ 組織的犯罪による未知の不正を発見

39

①使用データ

海外

事業者の不正分析D

公共機関

(D-4)税申告の不正調査を効率化・高度化

構造化データの分析により、脱税・不正調査の効率性と質を向上。2年間で約300億円以上のコスト削減効果に加え、追加税収として300億円以上を回収。違反者の検知と納税者の行動把握をすることで、職員の調査レベルを向上し、小規模でより多くの税収回収が可能となった。

そこで、個人の納税情報(収入・雇用種別・職業・還付金等)、及び会社の納税情報等といった内部データ、並びに海外税務当局からの情報、及び第三機関からの不動産情報(登記項目)や金融関連情報(口座・残高・保険等)といった外部データを収集することでデータ分析を実施した。

外部データの利用により納税者に紐づく情報が増えたことで、検知精度の向上、ネットワーク分析による調査レベルの向上に繋がった。

自組織及び他省庁、銀行等の第三者機関と連携し、データを入手。データの選択に当たっては、他国での分析ソリューション導入事例を参考とすることで、不正予測に効果的な項目を抽出。

データの収集方法と選択理由

某国国税庁では、個人や企業による納税回避、所得隠し、組織犯罪による不正行為といった、脱税・不正の被害が増加しており、不正調査にあたり、検知精度を高め、不要な調査を減らすことで、調査業務を効率化する必要があった。

使用したデータ 入手元

構造化

納税者の申告・還付データ

内部

法人情報

不動産情報

外部

金融取引情報

①使用データ

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③結果

②分析内容

分析手法の検討は、不正検知、徴収最適化など、分析目的・税種別に実施した。分析手法に応じた使用するデータの組み合わせは、統計分析機能の利用によってデータ変数の重要度を確認し、識別した。

分析方法の一例としては、不動産購入、税務申告、ローン、銀行口座及び雇用データなどを利用した、個人の脱税および不正リスクの分析が挙げられる。これはネットワーク分析やクラスタリング手法を用いて不正検知支援を行うものであり、ルール、予測モデル、ネットワーク分析等を組み合わせたハイブリッド検知による精度向上を図った。

分析体制は、業務担当職員、SASのデータサイエンティスト、及び外部システムベンダーを主体とし、ツールは「SAS Fraud Framework for Government」を利用した。ツールの選択理由は分析ツールだけでなく、そこに紐づく同業界事例のノウハウを参考とするためであり、公共向け不正検知ソリューションのため、データ準備・加工、分析、調査まで業務を網羅する同ツールを採用した。

これまで、銀行口座を使用した申告のない収入が収益損失の主要原因であったが、実際の口座保有者を納税者と一致させるため、金融機関からの外部データを使用することで、税申告前に税額の集計をすることが可能となった。登記情報等の外部データを取得することにより、公示されていない賃貸収入等も集計可能となり、家主と納税者

を紐付けることが出来た。これらの申告の無い銀行預金と、公示の無い賃貸収入を明らかにすることで、2年間の実施期間で約340億円の追加収入を実現した。

また、ネットワーク分析を用いることにより、不正申告者の検知と納税者の行動を把握。職員の調査レベルを向上させ業務最適化を実施した結果、人員削減と同時に追加税収が実現した。業務最適化により、2年間の実施期間で約330億円のコスト削減効果も得られ、データ分析の導入による全体のROIは10倍となった。

さらに、データ分析の導入で全体的なリスクの可視化が実現されたことにより、税種別に関わらず、国全体での不正リスク管理を行う体制の構築がなされ、未然に組織的犯罪による不正を検知可能とした。今後の展望としては、分析対象となる税種別を追加し、徴収最適化など税業務全体でのさらなる効果創出を狙っている。

目的 手法

ロジスティック回帰分析

最適化分析

クラスタリング

異常検知

ネットワーク分析

不正検知(法人)

不正検知(個人)

徴収最適化

使用データ

収入

雇用種別

還付金

会社の納税情報

職業

海外情報

不動産情報

税務申告

保険

口座

・・・

・・・

・・・

分析実施イメージ

関係省庁

金融機関

海外当局

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人材可視化・最適配置E

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✓ 求職者と求人情報をマッチングし、求職者が求人情報を見た回数と実際に応募した回数で効果測定を実施

✓ 複数のアルゴリズムによりマッチングパターンを組み合わせ、より応募率の高いマッチングを機械学習により導出

(E-1)人材マッチングの自動化

スペインでは失業者数の増加が社会問題化していたが、人材採用スキルを持つ人員の不足により、企業にとって新規人材採用はハイリスクだった。Jobandtalent社は人材採用にアナリティクスと機械学習を導入することにより、求職者、雇用主のマッチングを実施した。

国内

人材可視化・最適配置E

民間機関

jobandtalent社

✓ 2009年創立✓ 全世界に1000万人の

ユーザー

昨今のITテクノロジーの発達やペーパーレス化にかかわらず、多くの人事部門では紙の履歴書や手作業による属人的な採用が行われてきた。そこで、jobandtalent社は、雇用主と求職者双方にリアルタイムで最適なポジションのリコメンデーションを行う人材マッチングのアルゴリズムを構築し、就職活動及び採用活動の為のユーザーフレンドリーなプラットフォームを提供することで、1000万人を超えるユーザーを獲得した。

①使用データ

✓ FacebookのAPIを活用することで、SNSのプロフィール情報により、ユーザーと一意の職務経歴と紐づけを実施。

✓ 雇用主は求職者の職務履歴情報等を参照することが可能だが、SNS上のプライバシーにはアクセス不可。

データの収集・蓄積方法

スペインでは失業者数の増加が社会問題化しており、人事分野の効率化が求められていたが、大企業は多くのレガシーシステムを抱えている場合が多く、取り組むことが困難であった。そこで、2009年に創立したベンチャー企業のjobandtalent社は独自のアルゴリズムを開発し、「仮想ヘッドハンター」を利用できるプラットフォームとしてサービスを展開した。

データ利活用の概要

③結果②分析内容

応募 判断マッチング&学習 ✓ およそ2日間かかっ

ていた履歴書作成が不要となった

✓ 自動マッチングとロケーションフィルターで面接までのリードタイムを短縮

✓ 属人的に行われていた採用活動の大部分が自動化・標準化され、管理負担を削減

データ利活用の詳細

求職者はメールアドレスと氏名を登録、または自身のSNS情報を登録することによりプロフィールの作成が可能となる。アプリ上で職務履歴書を作成することで、最適な求人情報とのマッチングを自動的に実施できる。雇用主は法人情報と募集するポジション情報(役職、産業、作業場所、雇用形態、勤務時間等)を掲載することで、掲載した求人情報とマッチングする人材を参照することが可能である。

43

使用したデータ 入手元

構造化SNS登録情報

内部職務履歴情報

①使用データ

実施主体 目的・課題

使用したデータ 入手元

構造化法人情報

内部求人情報

①使用データ

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jobandtalent社は、データサイエンティストとエンジニアは、協調フィルタリングとクラスタリング(K-means手法)を用いてデータ分析を行うアルゴリズムを構築した。K-mean手法の活用に際し、求職者に一つまたは複数種類の職種情報を紐付け、求職者が興味を持った求人情報を関数的にマッピングしていくことにより、求人情報を正確なクラスターに振り分けることが可能となった。

アナリティクスを活用した人事テクノロジーにより、およそ2日間かかっていた履歴書作成が不要となったほか、自動マッチングとロケーションフィルターで面接までのリードタイムを短縮した。また、属人的に行われていた採用活動の大部分が自動化により標準化され、管理負担の削減を実現した。

人事部門は採用までのリードタイムを大幅に削減することで、より本質的で高付加価値な業務に注力可能となった。

特徴1 特徴2 特徴3 特徴4

Aさん ★★★★ ● 〇〇 空欄

Bさん ★ ●● 〇〇〇〇 ■

Cさん ★★★★ ● 〇〇 ■■■

Dさん ★★ ●●●● 〇〇〇〇 ■■

AさんとCさんが3つの特徴において相関性が高い場合、4つ目の特徴もほぼ同じとなる可能性が高いと判断

アルゴリズムの構築に資する分析データとして、8万件の求職者プロフィール、3万件のプロフィール上の空欄情報、及び100万通りのマッチングパターン情報があった。そこで、協調フィルタリングを活用し、求職者にとって余計な手間なく、迅速なマッチングを実施する為に、ユーザーが記入しなかったプロフィール情報を自動判断し、最適な求人情報とのマッチングを実現した。

K-means手法によるクラスタリングと協調フィルタリングによるデータの補完に加え、実際にマッチングした結果を自社作成の指標により効果測定し、機械学習の活用によって、より効果があったと認められたマッチングパターンを採用することで、常に最適化されたマッチングを実施することが可能となった。

③結果

②分析内容

44

K-means手法

① 初期状態✓ 標本がランダムに点在

している状態

② 基準計算✓ それぞれの種類(この

場合色)の重心の位置を算出

③ クラスタリング✓ それぞれの重心に近いも

のをグループ分けし、グループに変化がなくなるまで②、③を繰り返す

×

×

×

×

× ××

×

×

③ 完了✓ 重心から近い標本が確

定され、グループ分けが完了する

協調フィルタリング

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✓ ローパフォーマーを有効に識別できる8因子を特定

✓ 該当社員に関する方針を現場・有識者へのヒアリングにより策定可能に

✓ 社員の特性を30種類の因子にカテゴライズし、各因子と生産性の相関を分析

✓ 相関が強い要素を特定し、該当する社員を抽出

(E-2)ローパフォーマーの特性分析による採用基準の改善

某保険会社の営業部門では、量を重視した営業人員の増強を図った結果、パフォーマンスの低い人員(ローパフォーマー)を大量に採用する結果となった。これを契機に、「素養」のマッチングに着目し、アナリティクスを活用して採用におけるボーダーラインを再構築した。

人材の「素養」に関する因子を30種類にカテゴライズし、ローパフォーマーがもつ「素養」にまつわる有意性の高い因子を特定することで、採用のボーダーラインの再構築に用いた。さらに、営業人員に対して 「資質調査」を新たに実施し、識別されたローパフォーマーに対して、有意性の高い単一因子、および有意性のある因子の組み合わせパターンを抽出し、採用基準に反映することとした。

因子の例としては「内閉性」、「身体性」、「協調性」等があり、全30種類の因子と、人材の生産性との相関係数の調査を行い、ローパフォーマーを有効に識別できる因子の抽出を試みた。

国内

人材可視化・最適配置E

民間機関

実施主体

保険事業者A社

✓ 800名の営業人員が在籍

目的・課題

保険事業者A社では、営業人員の量的増強を図り、中途採用を進めてきた結果、ローパフォーマーが続出し、採用基準を再設計することが求められていた。そこで、ローパフォーマーが持つ「素養」にまつわる優位性の高い因子を特定し、採用のボーダーラインを再構築した。加えて、既存の営業人員に 「資質調査」を新たに実施し、識別されたローパフォーマーから抽出された有意性の高い因子、および因子の組み合わせパターンを、採用基準に反映することとした。

データ利活用の概要

①使用データ

データ利活用の詳細

①使用データ ③結果②分析内容

各因子の相関係数

仮説策定・調査

分析・検証

ブラッシュアップ

High

Middle

Low

45

使用したデータ 入手元

構造化

社員の特性情報

内部

社員の生産性情報

✓ 営業人員を対象人「資質調査」を実施。

✓ 識別されたローパフォーマーに対して、優位性の高い因子、および因子の組み合わせパターンを抽出。

データの収集・蓄積方法

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③結果

②分析内容

ローパフォーマーの特性分析には決定木分析、相関分析、及びクラスタリング手法が用いられた。調査対象となった営業部員の素養の特性を決定木で因子ごとに識別した後、 因子の相関を「ホワイト(相関の無い因子)・パターングレー(組み合わせにより相関のある因子)・短因子グレー(単一で相関のある因子)」に分類。これにより、ローパフォーマー全体の3割程度を識別可能な因子を新たなボーダーラインとして特定した。

分析の結果、業績と相関のある因子を抽出し、業績との相関の見られない因子を除外したいくつかの因子のうち、組み合せで見たときにローパフォーマーを有効に識別できる因子を特定した。因子を特定することで、現場・有識者へのヒアリング結果と合わせて、ローパフォーマー因子を考慮した採用活動をすることが可能となった。

相関分析では、生産性と各因子の相関係数を求め、因子ごとの生産性との相関を分析した。相関が見られない因子は排除し、生産性の低さと相関のある因子が、ノックアウトファクターなのか、組み合わせによって生産性の低さに繋がるローパフォーマンスパターンなのかを識別し、ボーダーラインをより正確に定める試みを行った。

46

ローパフォーマー傾向

✓ 各因子の偏差値と業績との間に、どの程度の相関があるかを見る⇒係数±0.1以下は「有意な相関が見られない」と判断

相関係数の意味

各因子と生産性の低さとの相関性を示す相関係数イメージ

因子1

因子3

因子6

因子8

因子10

因子12

因子14

因子15

因子16

因子17

因子29

因子30

因子2

因子4

因子7

因子9

因子11

因子13

因子5

0.20

-0.20

0.10

-0.10

相関が見られない

相関のある因子

因子1

因子2

因子7

因子3

因子4

因子8

因子9

ハイパフォーマー傾向

調査対象

➢ 因子7・8は組み合わせによってローパフォーマーとなる可能性のある「パターングレー」であり、精査が必要

➢ 因子9は単一因子でローパフォーマーとなり得る「短因子グレー」であり、ノックアウト要素

➢ パターングレー・短因子グレーに分類された因子を多く持つほどローパフォーマー傾向であると判断

分析イメージ

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人材・予算のリソース配分F

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(F-1)需要予測によるレベニューマネジメントの実現と業務効率化

航空会社F社では、輸送収入向上のために空席を減らしつつ、安売りによる機会損失を防ぐため、時期毎に販売価格のコントロールが必要とされる一方で、担当者による属人的な作業が実施されていた。データ分析の活用によって、運航便の需要予測や、それに基づいた各種施策立案が可能になることで、収益改善と業務効率化とを達成した。

実施主体

航空会社F社

✓ 国内の航空会社

航空会社では、固定費の比率が高く、輸送収入が収益全体に直結する。輸送収入向上のために空席を減らしつつ、かつ安売りによる機会損失を起こさないよう、時期による販売価格のコントロールが重要とされている。そこで、過去の便別の搭乗実績および予約実績を元に、季節性や券種を勘案した、将来運航便の需要予測を実施した。また、座席の販売計画作成や、乗員配置の参考情報として利用することで、これまで属人的に行われてきた各種計画策定の標準化を試みた。

目的・課題

①使用データ

データ利活用の詳細

需要予測に際し、予約システム及び自社システムより、過去の登乗実績、予約実績、運航便情報等を抽出し、分析ソフトへのファイル転送を行った。

データの抽出対象は、予測モデル構築時の予備分析の結果、有効と判断としたものとし、SASデータベース上で管理した。

また、基礎情報として需要動向を可視化し、複数の需要パターンに分類した。予測モデル構築の上では、利用可能なデータから変数を直接、または加工したうえで、需要予測に活用した。

データ利活用の概要

国内

人材・予算のリソース配分F

民間機関

✓ セグメンテーション手法の一つである自己組織化マップを使用し、1年分のデータを400セグメントに分類

✓ 日次で内部データ数十万件をそれらのセグメントにマッピング

✓ 収益が拡大し、担当者の生産性も数10%向上

✓ 属人的作業であった初期計画および計画後の修正作業の多くをシステム化し、担当者の育成期間を短縮

✓ 需要動向に応じた計画修正を自動で網羅的に実施することが可能に

✓ 一定精度の期待収益の事前把握が可能に。それをベースとした追加施策立案なども早期に着手可能に

③結果②分析内容<クラスタリング>

49

①使用データ

使用したデータ 入手元

構造化

搭乗実績

内部予約実績

運航便情報

SASデータベース

搭乗実績

予約実績

運航便情報

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③結果

分析システム導入後1年間で、収益拡大に繋がり、担当者の生産性も数10%向上した。また、属人的作業であった初期計画および計画後の修正作業の多くをシステム化し、担当者の育成期間を短縮。需要動向に応じた計画修正を自動で網羅的に実施することが可能となった。さらに、一定精度の期待収益を事前に把握することが可能となり、それに対する追加施策立案等を早期に着手できるようになった。プロジェクト成功の要因としては、データサイエンティストに業務知識の他、予測対象となる顧客動向についても、

経験値を基にインプットしたことや、SAS社による研修よって対象データに対する理解向上、データハンドリングスキルの向上、及び、全社的な事業・サービス内容の理解向上等が挙げられる。システム導入後、予測精度のさらなる向上と、会員システムとの連携によるキャンペーン強化に取り組んでいる。

②分析内容

分析手法には、クラスタリングが用いられた。ツールには、分析だけでなく、担当者の負荷軽減及び作業効率化を目的として「SAS Enterprise Guide」及び「SAS Enterprise Miner」が採用された。ニューラルネットワークを使用したクラスタリングによって多数の入力変数を解析。n×mの2次元マップ上に、航空券販売の需要を予測し、搭乗日までの予約数を日次でマッピングした。

マッピングした結果を顧客のセグメント毎に分析し、購買動向を分析・可視化した。

50

自己組織化マップの出力結果イメージ(①)

顧客のクラスターによる平均予約数のプロット結果イメージ(②)

出典:SAS Institute

出典:SAS Institute

XX

X

XX

XX

XX

(テストデータによるサンプル結果)

(テストデータによるサンプル結果)

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✓ 会社全体の経営方針と業務・部門を超えた包括的なコスト分布の双方の目線から、会社の戦略を立てることが可能に

手法設計&

モデル構築

手法設計&

モデル構築

✓ データ分析の一連の操作が可能な「Alteryx」やデータを高 速 で ビ ジ ュ ア ル 化 す る「tableau」等の分析ツールを用いたアジャイルアプローチを実施し、最適なモデルを確立

(F-2)投資銀行における全社横断的なコストの可視化

多岐に亘る事業をグローバルで展開するF社では、社内既存データを有効に組み合わせ、アジャイル開発により複数の分析を繰り返し実行。業務、部門を超えた包括的なコスト分布の把握により、最適なビジネス戦略策定、投資対効果の向上を実現した。

①使用データ

既存データベースの中から活用可能なものを設定し、ツールを用いて抽出した。

データ利活用の詳細

②分析内容

本プロジェクトでは、短期間で結果を出すため、最小単位の分析ツールを導入することで効果創出を図るアジャイル開発を実行した。初めに、社内の既存データの中から使えるデータは何であるか、またそれらのデータを分析することによって導き出される情報がクライアントの課題解決においてどのような効果を持ちうるのかを、データモデラー、ビジネス分析リード、デザインチーム、目的検討リード、価値実現リード、設計リードといった、それぞれに異なる専門性、役割を備えた専門家から構成したチームが検討を行った。

専門家チームによる検討の結果、社内の既存データの有効な組み合わせパターン、及び組み合わせパターンを分析することにより得られる情報が明確化された。また、それらの情報を分析することで期待できる効果についての仮説が導き出された。検討を実施した検討メンバー及びそれぞれの役割は、「表1:検討メンバーと各役割」の通り。また、検討対象

データの組み合わせ、組み合わせたデータによって得られる情報、及び得られる効果の仮説は「表2:データの組み合わせとデータ分析効果の仮説」の通りである。

海外

人材・予算のリソース配分F

民間機関

③結果②分析内容

・・・

ヨーロッパ投資銀行F社

✓ ヨーロッパに拠点を置く大手投資銀行

世界中に社員を抱えるF社では、会社全体での経営戦略策定をより高度化するために、多岐に亘る各事業へのコスト配分の妥当性を判断し予測できるようにしたいと考えていた。そこで、社内で入手可能データを活用し、プログラミングや特別なツールを必要としない分析ツールを用いることで、短期に複数の分析モデルを設計するアジャイル開発を行った。

実施主体 目的・課題

データ利活用の概要

①使用データ ②分析内容

51

使用したデータ 入手元

構造化

経理情報

内部ITインフラ運用

コスト情報

全国の人事データ

業務

「自組織が持つ情報を分析することによって、何を導くことができるか」という視点から、データ利活用の検討が開始されたため、データ収集は自組織内のデータベースから、分析対象データを抽出・蓄積。

データの収集・蓄積方法

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③結果

分析の結果、以下のような定性的効果がもたらされた。•ツールによって、費用、技術コスト、人件費データの総合的な分析が可能になった。•業務にかかるコスト及び社員を、体系的に分類できるようになった。また、これに伴い、A社の海外事業の業務運用において、本当に必要なコストが何か、明らかにすることができるようになった。•一貫性のある、確かなコスト情報をもとに施策の立案ができるようになった。•会社全体としてのテクノロジーと企業機能のコスト配分方法が把握しやすくなった。

定量的効果としては、分析ツールの導入後、間もなくして投資金額の60%を回収した。また、長期的なROIは、180%となることが見込まれている。

②分析内容

表2の仮説に従って、分析チームでは、既存の情報や分析ツールで加工した情報(事業に係るコスト配分情報、Alteryxによって処理されたデータ、データの分析・グラフ化ツールであるtableauによって作成されたダッシュボードなど)を用いて、この仮説のコンセプトや価値の検討を行った。

アジャイルアプローチを用いた分析方法の設計とモデル構築のプロセスでは、一連の手続きによってモデル化が完了すると、再び分析手法の設計が開始される。2回目、3回目の手法設計においては別の分析視点の検討や、データ範囲の見直しが行われる。こうして最終的には、ある特定の業務に必要なコストや社員を体系的に分類し、その関係性を可視化するとともに、コスト分析、人材戦略、コスト配分のレビュー、予測・追跡機能などの機能を備えたモデルが構築された。

表1:検討メンバーと各役割

表2:データの組み合わせとデータ分析効果の仮説

52

短いタイムサイクルで価値を発見するため、クライアントの課題をデザインシンキングで発掘し、最小単位の分析ツールを導入することで効果を図る、アジャイル開発を使用。

先進的手法の採択方法

業務 業務

出典:アクセンチュア

検討メンバ 役割

データモデラー データ利用のパターンを考え、データの精査を行う。

ビジネス分析リード ビジネス上の問題と解決策を定義し、どのようなデータ分析が必要か検討する。

デザインチーム デザインTableauソフトウェアを使用してデータを視覚化する。

目的検討リード 企業の各方面の担当者をとりまとめ、分析目的の定義と優先順位付けを行うための検討を行う。

価値実現リード ビジネスにおける長期的価値の実現に向けて、日々の業務にアナリティクスを取り入れるためのトレーニング方法や実現可能性の検討を行う。

設計リード 分析に求められるデータ品質と、ユーザアクセスコントロール※を検討する。※ツール使用やデータ閲覧をユーザごとに制限する機能のこと

データの組み合わせ 導かれる情報 得られる効果(仮説)

• 総勘定元帳• 原価配分ファイル

コストと収益の傾向、関連性 コスト、コスト配分、および銀行内のすべての部門における収益の透明性を高める。

• 請求・費用登録システムの登録情報

FTE※

※一人の職員が処理することのできる仕事率

従業員の階層化、統制の範囲および傾向など、銀行全体のリソース構成を理解する。

• 総勘定元帳• プロジェクトデータ• ITコスト配分データ

ITの運用コスト テクノロジのインフラストラクチャコストと銀行全体のアプリケーションのランニングコストを理解する。

• HRシステムの登録情報• 人件費戦略計画

人件費予測 銀行の人員戦略の変化が生じた際に影響分析支援が可能な予測ツールを提供する。

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非構造化データ・SNSの分析G

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海外

非構造化データ・SNSの分析G

民間機関

実施主体

米国損害保険会社N社

✓ 車や建物の修復サポート・保険サービスの提供

目的・課題

N社では、事故車両の損傷度の計測を、現場に派遣される職員が実施していたが、以下3点を目的に、アナリティクスを用いて損傷度の計測を行いたいと考えた。1. コスト削減2. サービスの向上(修理用の部品を自動で、迅速に注文する、等)3. 偽装の防止(申告された損傷理由や程度の虚偽申告の発見、等)

そこで、保険利用者から送られた事故車両の画像から、その損傷程度を計測するためのモデル開発が目指された。

データ利活用の概要

①使用データ

データ利活用の詳細

①使用データ

損傷無損傷中損傷大

②分析内容

✓ CNN分析(後述)を用いて、様々な事故車両の画像を元に、損傷度ごとの特徴を学習

✓ 新たな事故車両の画像が、どの損傷度に当てはまるかを推定

②分析内容

✓ 事故車両の画像から、その損傷度を3段階で判別可能に

③結果

55

(G-1)損傷程度の画像認識による事故車両の分類

事故車両の損傷度の計測にかかる人的・時間的コストを削減するために、事故車両の画像から損傷程度を認識する基礎モデルを構築した。

深層学習には、複数の事故車両の画像を基に、学習を繰り返す必要があった。学習に用いる画像データには、実際の事故をまねて損傷させた玩具車両の画像を使用した。なお、完成したモデルを実際に用いる際には、自動車事故発生後、自動車の持ち主(運転手)である被保険者から事故車両の画像を送ってもらうことで、データを入手することを想定している。

「損傷無し」「損傷度が中」「損傷度が大」の特徴を、コンピュータが認識できるようにするために、CNN(Convolutional Neural Networks-畳み込みニューラルネットワーク)アルゴリズムを利用した画像認識が用いられた。単純に、ある損傷度のサンプル画像と同一かどうかを比較するのではなく、画像の要素の一部をそれぞれ比較しながら、どの損傷度の画像に類似するかを分析する手法である。CNNは、多数の“実際の事故をまねて損傷させた玩具車両の画像”を取り込み、その傾向を学習しながら、「損傷無し」「損傷度が中」「損傷度が大」をより正確に分類するための比較観点探しを行った。

CNNの分類モデルを訓練するための画像には、実際の車ではなく、N社から提供された、実際の事故による損傷状態をまねた玩具の車を使用。

データの収集・蓄積方法

使用したデータ 入手元

非構造化

損傷させた玩具車両の画像

内部

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②分析内容

③結果

最も優れたCNNによる画像認識:87.98%(より識別しやすい銀色の車の場合、88.95%)

5つの優れたCNNの組み合わせ(アンサンブル学習)による画像認識:89.52%(より識別しやすい銀色の車の場合、90.61%)

56

CNNは、畳み込みとサブサンプリングと呼ばれる主に2つの工程の繰り返しで分析を行う。

分析手法の検討段階では、外部のデータサイエンティスト3名が、CNNを100パターン以上作成し、画像から損傷度を測るために有効な画像の分析パターンを検討した。(※一つのCNN作成の所要時間は、14時間程度)

分析手法の検討には、従来の損傷度測定方法である、人による損傷度の測定の際に使用していた、損傷度測定項目と各項目の基準値が参考とされた。また、CNNのパターンを作るために、損傷度別の、様々な車種と色の玩具の車の画像が使用された。

分析手法の検討の結果、5つの畳み込み階層と、サブサンプリング階層の組み合わせから成るCNNが最も有効であることが分かった。こうして、事故車両を、その画像から「損傷度大」「損傷度中」「損傷度無」に3分類するための手法が定義された。

完成した100パターン以上のCNNに対し、玩具車両を利用して、認識の正確度についての測定を行った。すると、最も優れたCNNでは、87.98%の確度で事故車両の損傷度を識別できた。さらに、いくつかのCNNを掛け合わせたアンサンブル学習を用いた場合は、更なる確度を得られた。

このプロジェクトでは、今までの見た目や造形の類似といった点で分類を行う従来の分類手法と異なり、畳み込みニューラルネットワークを用いたディープラーニングが、抽象的特徴を元に画像を分類できるということを証明した。なお、本プロジェクトでのモデルはアメリカ、オーストラリアにて特許を取得している。今後の展望としては、より細かいダメージの計測や、住宅に対する保険への適用を実現したいと考えている。

畳み込み サブサンプリング分析対象の画像

損傷度大のモデル画像

CNN分析(イメージ)

1.0 0.4 0.40.40.30.3

1.0 0.4 0.40.90.60.6

0.8 0.5 0.50.40.3

0.8 0.9

0.3

0.30.90.90.9

深層学習の有効性を検証する為、本プロジェクトでは、深層学習における標準的な特徴抽出の方法である「畳み込みニューラルネットワーク」アルゴリズムを用いたモデルを構築し、有効性を測定。

先進的手法の採択理由

CNNの1パターン(例)

※3つの畳み込み層とサンプリング層の組合せからなるCNNの場合

この車は損傷大

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✓ 北海道を訪れる外国人の観光の傾向・評価から、来道外国人数を増加させるための、実態に基づく有効な施策立案が可能に

実施主体

北海道観光振興機構

✓ 公益社団法人✓ 北海道の公式HPの運営、観

光戦略の推進、他地域や他産業との連携のコーディネート、マーケティングなどを行う

目的・課題

北海道観光振興機構は、訪日外国人の北海道への来訪促進における課題として、「国籍別のニーズや嗜好に沿った観光資源と観光商品の開発」、「来訪数の季節的、地域的な偏在の解消」、「リピーターの誘客」、「受入環境整備」が必要であると認識していた。そこで効果的な施策立案に繋げることを目的に、データ利活用によって、「来道外国人の道内での滞留・周遊状況」と「道内の観光資源や受入環境に係る認知度や評価」の把握を行うことを試みた。

データ利活用の概要

③結果

①使用データ

「来道外国人の道内での滞留・周遊状況の把握」を達成するため、来道外国人の動向を収集する必要があった。調査期間中に北海道にログを残した訪日外国人13,709人分について、ログ取得の許可を得た上で無料Wi-Fiアプリから位置情報ログを取得し、訪日外国人がどのように国内・道内を移動するかを季節(四半期)毎に調査した。抽出する情報の項目を分析チームで検討し、以下の通り定義された。

データ利活用の詳細

✓ 深層学習によってSNS投稿から評価を推定

✓ 評価サイトランキングで把握できない、関心・評価の高い観光地を明確化

②分析内容<SNS分析>

SNS 名所Aの情報

評価★5

知名度低

×

施策のヒント

データに基づいた、観光客を増やすための施策検討

人が来ないのは…宣伝が原因?交通の便が原因?

②分析内容<動態分析>

国内

非構造化データ・SNSの分析G

公共機関

✓ 無料Wi-Fiのデータに対して統計処理を実施

✓ 観光客の流動状況や滞在先の傾向などを可視化

57

(G-2)訪日外国人の北海道への来訪促進のための動態分析、SNS分析

北海道を訪れる主な国・地域の観光客の観光先や周遊ルートなどの実態を分析(動態分析)し、さらにSNS投稿から北海道の各地域の認知度や評価を分析(SNS分析)したことにより、訪日外国人に北海道への来訪を促進するための、より効果的な施策の検討・立案を可能とした。

アナリティクスとワイヤレスネットワークを活用し、ユーザに関する様々なレポートを無料Wi-Fiから入手。例:人工知能技術などによって推定された訪日外国人のユーザ属性情報

外部データの取得元

使用したデータ 入手元

構造化

来訪数、来訪場所

外部

宿泊数、宿泊数分布

滞在時間、滞在日数

周遊ルート

他都道府県訪問数

入国場所・出国場所

①使用データ<動態分析>

①使用データ<SNS分析>

使用したデータ 入手元

非構造化

外国人によって発信されたSNS

外部

抽出する情報の項目

収集項目 収集用途

来訪数 エリア内の市町村ごとの来訪数

来訪場所 主要空港周辺の通過・滞在場所

宿泊数 エリア内の市町村ごとの宿泊数

宿泊数分布 各エリアでの宿泊数の分布

滞在時間 道内とエリア別の滞在時間分布

収集項目 収集用途

滞在日数 道内とエリア別の滞在日数分布

周遊ルート 道内の市区町村単位の周遊状況

他県訪問数 同旅程中の他都道府県への来訪数

入国場所 入国都道府県を把握

出国場所 出国都道府県を把握

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③結果

分析の結果として、市場別(台湾、韓国、香港、シンガポール、欧米、リピータ層)の来訪数、宿泊数、滞在日数、周遊ルート、道内の市町村の認知度・評価、人気スポット等の傾向が明らかになった。例えば、口コミが高評価であるにも関わらず、訪問者数が少ない地域について、課題の発見やマーケティングの強化が必要であるという示唆を与えるなど、実態に基づいた観光促進施策案を導くことが可能となった。

①使用データ

②分析内容

<分析の切り口>✓ユーザ属性…国籍、新規/リピータ✓時間…四半期(春、夏、秋、冬)✓エリア属性…道内全体/地域ごと/その他

「SNS分析」では、投稿内容から観光地や受け入れ環境に関する評価等を多角的に分析し、現状の課題・要因を考察した。具体的に、「SNS分析」は、以下のように行われた。

1.キーワードのタグ付け検索したキーワードから、どのような項目が関連して抽出されたかを対応させた。

2.投稿評価推定深層学習の評価推定技術※を活用して、投稿内容をもとに、評価を定量的に推定した。

「道内の観光資源や受入環境に係る認知度や評価の把握」を達成するためには、外国人の観光地や受け入れ環境に関する評価を収集する必要があった。そこで、調査対象の市場を韓国と台湾に限定し、検索によって、外国人によるSNS投稿を収集した。(韓国:64,740件、台湾:28,545件)

SNS投稿の収集は、以下のステップで実施された。1.キーワード設計想定される観光コンテンツや、北海道全体の地理分布を考慮した上で検索の際に使用するキーワードを設計し、 キーワード一覧を作成。(例:カニ、スキー、時計台)

2.投稿データ抽出よく使われているSNS(TwitterやNAVER等)を国ごとに選定し、キーワードを利用して投稿データを抽出

市町村名を検索して出てきた内容は「地名の認知度・評価の分析対象投稿データベース」、キーワードを検索して出てきた内容は「観光コンテンツの認知度・評価分析対象データベース」に蓄積した。

A国からの来訪者に関する報告書(イメージ)

✓ 主な来訪場所✓ 主な閑散エリア✓ ピーク時の来訪先✓ 他国と比較したときの特徴、傾向(例)関東とセットでの来訪が多い

ピーク:2月,9月閑散期:6月,7月

季節

エリア

1週間前後の滞在者が約半数

滞在期間

(例)雪景色鑑賞/温泉への入浴等

主な来道目的

(例)XXエリアへの誘客認知度や交通アクセスに係る課題から誘客できていない。滞在期間を考慮したプランを提示することで来訪エリアの拡大を狙える可能性がある。

今後の施策案

※深層学習の評価推定技術評価付き投稿を採用している旅行情報サイトの投稿を用いて深層学習を行い、評価推定モデルを作成。このモデルを評価なし投稿に適応することで、投稿された文章中で語られている観光地を文章の内容からポイント評価。

58

0

5

10

15

春 夏 秋 冬

A地域 B地域 C地域

各地域への来訪数年間推移イメージ

(百人)

分析手法には、「動態分析」と「SNS分析」が用いられた。「動態分析」では、来道外国人の旅行中の道内での動きを振興局単位で分析し、季節とエリアの偏在状況を考察した。具体的には、データ収集時に定めた、来訪者や宿泊数などの項目に対して、分析の切り口を定めて、動態分析を行った。

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ビッグデータの公開・活用H

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(H-1)会津若松市におけるデータを用いた市民サービス

福島県会津若松市では、 市民・観光客・移住者・事業者を繋ぐデジタルコミュニケーションプラットフォームを構築し、データ分析やビッグデータを活用したオープンガバメントの実現、新たな地方創生モデルの創出を実施している。

国内

ビッグデータの公開・活用H

公共機関

データ利活用の概要

✓ 会津若松市は、日本初の専門的なコンピュータ教育・研究環境を持つ会津大学、及び同大学発の20社に及ぶベンチャー企業群が存在するIT集積地である。

✓ 地域の特性を活かしたオープンガバメント施策として、会津大学や震災復興事業を核に、先進デジタル技術などの研究開発拠点を誘致・集積している。将来のICT産業の発展を見据えた新事業の創出やアナリティクス人材を育成することにより、地方創生モデルの実現を目指す。

実施主体

会津若松市

目的・課題

首都圏に中枢が一極集中しており、地方の産業は工場やアウトソーシングが中心であった。企業の統括拠点の海外流出や、低コストの追求に伴い、産業の空洞化やコスト競争が課題となっていた。

61

取組の特徴

福島の目指す未来

➢ 各エリアの特性に合った、高付加価値を有する業務や成長産業の拠点を置くことで、福島県から他地域・全国へ競争力のあるサービスを展開する。

➢ 中でも会津大学を中心とした会津エリアでは、ビッグデータ・デジタル・IoT産業などデータに関連する産業の集積地として、アナリティクスを含めたBPOの拠点とすることを目指して、人材育成と新たな雇用を強化する。

➢ スキル・所得共に高水準であるIT戦略分野を担う会社・部門は首都圏に集中し、開発・営業等のソリューションを担う会社・部門は大都市に集中している。

➢ 一方、地方では工場、コールセンター等のアウトソーシング事業が中心となるが、低コストを追求するため、中国や東南アジアといった海外への流出が目立ち、さらなるコスト削減にせまられ、産業の空洞化が起きている。

会津エリアビッグデータ・デジタル・IoT

産業集積

福島県

再エネ・医療研究開発拠点

イノベーションコースト構想

産業の集中

コスト競争の圧力

首都圏

地方

産業空洞化

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事例の詳細②

事例の詳細①

デジタルコミュニケーションプラットフォームは、オープンデータ、ビッグデータの収集基盤を整備し、アナリティクス人材の育成、デジタル産業の集積や地元での人材採用によって、先端プロジェクトの誘致・推進を地域で実践する。同プラットフォームによって、市民・観光客・移住者・事業者をつなぐことにより、エネルギー・観光・医療など各分野を横断した地域産業、街づくりの活性化に貢献する。

62

エネルギー

観光

医療

教育

農業

第4次産業

フィンテック

交通

[(講義風景)出典:アクセンチュア]

公用車位置データ

DATA for CITIZEN

会津地域の天気データ

外部のデータソース

交通事故マップ

産学連携による実践的なアナリティクス人材育成講座

✓ 「DATA for CITIZEN」より入手されたオープンデータと、外部のデータソースより入手した天気データや交通事故位置情報をマッシュアップ。

✓ 前後加速度と左右加速度の変化の異常値がみられる位置情報を抽出。

✓ 会津若松市内で事故を起こしやすい場所の発見。

会津大学では、産学官連携によるアナリティクス寄附講座にて、会津若松市のオープンデータ利活用基盤である“DATA for CITIZEN”が保有するオープンデータを実際に用いることで、ビジネス領域に限らず公共に係るデータの分析に精通した「公共アナリティクス人材」の育成を実施している。大規模データを分析し、行政・地域産業の領域で活用することのできるアナリティクス人材の育成は、オープンデー

タに係る産業の活性化に不可欠である。

会津大学における「公共アナリティクス人材」育成

デジタルコミュニケーションプラットフォームの在り方

コミュニケーションプラットフォーム

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(H-2)公共データの開示によるアプリケーションやサービスの構築

アメリカにおけるCode For Americaをはじめとする公共データの開示に係る取組では、市、州、国などの自治体が公開しているビッグデータを用いて、様々なアプリケーションやサービスをリリースした。また構築したサービスのソースコードを公開することで、他州での行政サービスの向上に繋げている。

データ利活用の概要

海外

ビッグデータの公開・活用H

公共機関

取組の特徴

データ化

✓ 行政が公開している様々な公共データを利用するとともに、構築したサービスのソースコードを公開した。

利用するAPI

✓ CSVやXML、XLS、RDF形式などで公開されているデータを利用した。

双方向

✓ 現在、30の自治体が参加しており、2013年には27種類のアプリケーションまたはサービスがリリースされている。ボストン市で展開したサービスのソースコードを公開し、他州での行政サービスへの向上につなげている。

✓ 従来の公共サービスは、大手ITベンダーなどに発注する必要があり、大規模なコストと期間をかけて変革していかなければならなかった。しかし、オープンソースやフレームワークの入手が容易になった現在は、優秀なエンジニアであれば少人数のチームでも、公共サービスに係る業務改善に資するサービスを制作することができるようになった。

✓ 結果、Code For Americaを利用する事で自治体としてはサービスレベルを向上させただけでなく、大幅なコスト削減およびサービスの提供までのリードタイム短縮が可能となった。

実施主体

Code For America

目的・課題

2009年に設立されたNPO(民間非営利組織)であり、「オープンガバメントは地方にこそ必要である」との考え方から、市、州、国などの自治体にエンジニアを派遣し、都市課題の分析や、課題解決・行政サービスの向上につながるWebサービスを開発した。

63

Code for America公式ページ(①)

出典:Code for America

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事例詳細②

✓ “Fly On Time”(遅延発生予測アプリケーション)では、出発空港と到着空港を指定し、過去の実績データに基づき、航空会社別、天候別、曜日・時間帯別等で遅延確率や、平均遅延時間を検索するサービス

✓ どの航空会社が遅延が生じやすいか、どの曜日に移動すると遅延確率が低いか等を確認することが可能

事例詳細①

アメリカ国内では恒常的に飛行機到着遅延等が発生し、利用顧客に対する顧客満足度は総じて低下していたが、当該サービスを利用することで、より一層、航空関連企業の顧客満足度に対する行動を喚起。

顧客サービスの向上効果①

✓ “Adopt a hydrant”(消火栓担当振分アプリケーション)では、冬期に雪が積もって消火栓が見えなくなることを防ぐため、自治体より提供されている消火栓の位置情報をGoogleMapにマッピングし、雪が積もった際に掘り起こす有志の市民を募り、それぞれが分担する消火栓を登録した。

概要

「Adopt a Sidewalk(雪かき状況をチェックするアプリケーション)」を開発し、行政サービスの消費から、自ら行政に入り込み、かつ地域住民のコミュニケーションを活性化させるトリガーとなった。

地域コミュニティの形成効果②

同サービスのソースコードを公開した結果、ホノルル市が「Adopt a Siren(津波用のサイレンが電池切れを起こしていないかを市民が自分の分担を決めてチェックするアプリケーション)」を、フィラデルフィア市が「Adopt a StormDrain(嵐に備えて市民が自分の分担を決めて配水管をチェックするアプリケーション)」を、それぞれ開発するなど、各自治体で広く応用されている。

他地域・サービスへの波及効果①

“Adopt a hydrant”(消火栓担当振分アプリケーション)

“Fly On Time”(遅延発生予測アプリケーション)

航空会社 顧客満足度向上 顧客

アプリケーション展開

データ提供

自治体情報

消防管理情報(消火栓)

市民自ら消火栓に名前を付け自発的に管理

市民からの投稿

TomBob

市民

64

市民

アプリケーション展開

ユーザからの状況報告

データ提供

自治体情報

空港状況に関する情報

現在・過去の天候データ

航空機の到着実績データ

セキュリティチェックの待ち時間を、ユーザ ー か ら 集 め ( Web サ イ ト ま た はTwitterで投稿してもらう)、平均待ち時間(曜日・時間帯別)の情報を提供し、ユーザの利便性を向上。

利用ユーザの利便性向上効果②

リアルタイム反映

5分待ち

概要

Code forAmerica

Adopt a Hydrantページ(①)

出典:Adopt a Hydrant

www.DATA.GOV

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(H-3)ニューヨーク市におけるビッグデータを活用した市政改革

ニューヨーク市(NY市)では、2006年に発足した市長管轄のデータアナリティクス部門が中心となり、市の業務の効率性向上や、透明性のある市政の実行を目的として、市のビッグデータを活用している。

データ利活用の概要

海外

ビッグデータの公開・活用H

公共機関

事例の詳細(発足初期)

✓ 市のビッグデータを活用し、より効率的で市民へ開かれた市政を実行するため、ブルームバーグNY市長(当時)は、市長管轄のデータアナリティクス部門「Mayor’s Office of Data Analytics (MODA)」を2006年に発足。

✓ 市の行政サービス問い合わせ窓口「NYC311」を立ち上げ、このサービスを通じて入手されたデータを分析することからスタートした。

✓ 「NYC311」を通じて蓄積された情報や位置情報等のビッグデータを掛け合わせることで、予測や傾向把握等の高度な分析ができる環境を整備し、市民の生活を向上させるためにデータ分析を活用している。

実施主体

NY市Mayor’s Office of Data

Analytics

目的・課題

Mayor’s Office of Data Analytics (MODA)は、2006年にブルームバーグ前NY市長の指揮下で発足した市長管轄のデータアナリティクス部門。市の業務の効率性向上や、透明性のある市政の実行を目的として、市のデータを活用したプロジェクトを実施。

65

【MODA発足から4年目まで】

NY市でのデータ分析プロジェクトは、市の行政サービス問い合わせ窓口「NYC311」からスタート。これまで複数点在していた市の問合せ窓口を一本化し、電話番号を「311」番へ統一した。

市民からの全ての問合せやクレーム等、あらゆる情報を一つの窓口を通じて蓄積し、それらの市民情報・電話数・問合せ内容・それに対する回答・回答にかかった時間等を分析することで、「どこで何が起きているのか」を把握した。

また、初めの4年間は主に、これまで蓄積された過去データから、事業者の資格・助成金・申請状況等の管理に活用した。例えばゴミのリサイクルや回収の実施状況や、市から20億ドルもの予算が割かれている非営利組織等をデータを用いて管理した。

「B通りの道路が損傷している」

データ蓄積

データ分析

NYC311への問合せデータ活用例

「A通りの道路が損傷している」

NY市データベース

問合せ内容

回答内容

回答速度

分析項目

市民

A地区は対応が早いが、B地区は改善が必要

NYC311

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最適なツールによって構築された新たなモデル導入の際は、リスク許容度を判断基準とする。不正分析など高い水準での正確性が求められるものに関しては、確実なものが出来てから導入する。リソース配分やマーケティングは誤差があっても問題ないため、モデルが出来たら比較的すぐに試してみる。(同上)

66

事例の詳細(発足中期以降)

【MODA発足から5年目以降】

予測分析や傾向分析といったより高度なデータ分析を行うべく、市の内外から入手した、市に関するあらゆる情報を蓄積していくためのビッグデータプラットフォーム「DataBridge」を立ち上げた。

立ち上げ当初は、市の行政内部で保持していたデータベース約20種類によって構築した。その後に新たに入手されたデータも含め、現在では50~60のデータベースからデータを集約している。

ビッグデータによる解析では、特に「市内のどこで何が起きているのか」という、位置情報を中心とした分析に注力している。特に、「緊急対応の即時性の把握」「建物の保安」等、いかに市民の役に立つかを念頭においたプロジェクトを中心に実施したことで、ビッグデータ公開・利用について市民からの支持が得らえた。

「NYC311」より取得したデータの利活用例(建物の保安)

市内の建物での火事や死亡事故等の発生を受け、市民から立入要請のあった物件を「危険要素」によって優先付けし、最も危険な物件には48時間以内に職員を派遣する。

「立入検査してほしい」

データ蓄積

データ分析

「違法と見られる物件がある」

NY市データベース

1938年以前の建築

過去に火事発生の地域

差し押さえ物件

危険要素の判断項目

成功のポイント

新たなツールやモデル導入期のポイント

新たな分析ツール導入の際は、スモールスタートでプロトタイプやパイロットを多数実施し、最適なツールを選択する。(MODA現場担当責任者)

意思決定プロセスについてのポイント

市民

データサイエンティストは当初外部人材を登用。テクノロジー系大学のフェローシップ、インターン等、適性スキルを持った人材を短期契約で活用して人材を拡充。現在は内部人材で完結できる体制。

外部人材の取り込み設立時より、市長からのトップダウンで意思決定を進め、プロジェクトを進行。同時に現場へもデータ利活用による業務改善の必要性や効果について指導を行うことで、円滑に実施できた。(同上)

1週間で寄せられた立入要請225件のうち、16件が危険物件に該当

NYC311

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✓ NYC311ウェブサイトは9ヵ国語に対応。

✓ クレームや問合せには番号が付与され、ウェブサイト上で対応の進捗が確認できる。

✓ 各種支払いをウェブサイトを通じて行うことが出来、クレジットカード・デビットカード・電子小切手・プリペイドカードやギフトカードが使用可能。

✓ 「My Neighborhood」セクションでは、行政区・道路名・建物番号を入力すると、学区・ゴミの収集日・リサイクル改修日等、市民の生活に役立つあらゆる情報が確認出来る。

「311」にダイヤルすると、自動音声で英語・スペイン語・中国語・韓国語を選択するようにアナウンスされる。言語を番号で選択すると、音声チャットボットとの会話が実行される。

以下は、実際に「311」へダイヤルし、英語を選択して音声チャットボットとの会話を行った内容を日本語訳したものである。

311

:問合せ内容

:音声チャットボット回答内容

凡例

67

事例の詳細(N

YC

311の現在)

「どうしましたか。『お湯が出ない』『ヒーターがつかない』など教えてください」

「ヒーターがつかない」

「『ヒーターがつかない』ですね。公共アパートですか?」

「はい」

「どの自治区ですか」

「ブルックリン」

「『ブルックリン』ですか?」

「はい」

「メンテナンス事業者へお繋ぎします。このままお待ちください」

NYC311公式ページ 問合せトップ(①)

NYC311公式ページ 「My Neighborhood」セクション(②)

(参考)「NYC311」公式ページURLhttp://www1.nyc.gov/311/index.page

(出典:NYC311)

(出典:NYC311)

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(H-4)ボストン市におけるオープンガバメントの取り組み

ボストン市では、2015年に発足した市長管轄のアナリティクス・デジタル部門が中心となり、市の部門間で横断的にデータを活用できる体制を構築。また、ビッグデータを公開し、大学や市民と積極的に連携することによってオープンガバメントを目指している。

データ利活用の概要

海外

ビッグデータの公開・活用H

公共機関

事例の詳細(体制の構築)

✓ 日々の業務から蓄積されるビッグデータを効果的に活用する、部門間で連携した体制を構築するため、ウォルシュ市長 は 、 24 の チ ー ム か ら な る ア ナ リ テ ィ ク ス ・ デ ジ タ ル 部 門 「 イ ノ ベ ー シ ョ ン & テ ク ノ ロ ジ ー 本 部(DoIT: Department of Innovation & Technology)」を2015年に発足。

✓ テクノロジーの知識を問わずコミュニケーション能力を重視した極少人数体制で発足し、現在は18,000人の市の職員のうち200名がDoITに所属。

✓ ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学といった、ボストン近辺の優秀な大学からの人材をデータサイエンティストとして招き入れ、人材を拡充。

実施主体

ボストン市

イノベーション&テクノロジー本部(DoIT: Departmentof Innovation& Technology)

目的・課題

ボストン市DoITは、2015年にウォルシュ市長の呼びかけにより発足した、24のチームからなるアナリティクス・デジタル部門。日々の業務を通じたデータは蓄積されていたものの、いかに活用するべきかを検討するための仕組みが整っていなかった。DoITが中心となり、組織内外と連携することで効果的なデータ利活用できる体制を構築。

現在も現場を率いているマネージャー2名を含む、極少人数が発足メンバとなった。テクノロジーの背景や知識の有無を問わず、公共政策といった市全体のオペレーションに対する理解や、現場全体を管理し組織構築・運営を円滑に進めるための、コミュニケーション能力に長けた人材を集約した。

積極的な採用を行っており、現在は18,000人の市の職員のうち200名がDoITに所属。

データサイエンティストについては、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学といった、ボストン近辺の優秀な大学からのフェローシップやPhD学生などのレジデンスプログラムを設け、人材を拡充していった。

ボストン市の組織図(一部抜粋)

市長

教育本部 金融本部公共保安

本部・・・

・・・

・・・

・・・

インフォメーション&テクノロジー本部

分析チーム

ブロードバンド&ケーブル

デジタルチーム

DoIT

市の業務で用いるネットワーク、コンピューター、システムに 係 る 全 般 を 監視・管理。「分析チーム」等その他のチームの橋渡しを担っている。

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撮影:アクセンチュア

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中央図書館の電気使用料データ

街灯のロケーションデータ

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事例の詳細(ビッグデータハブの構築)

Analyze Bostonは、ボストン市のオープンデータを集約したオンラインサイト。もともと市にあったビッグデータに対し、個人情報を削除するなど必要なクレンジングを実施して公開しており、DoIT内部や他の本部、外部のソースから抽出された130種類以上のデータセットが、分析チームを介して日々アップロードされている。

現場の工夫

現場の協力体制の構築

設立より3年が経った今、最も重要と考えていることの一つがコミュニケーション・関係性の構築である。他の部門のデータも集約し活用していく上で、DoITに限らず、各部署にデータについて理解している「アンバサダー」的役割を配置し、円滑な連携を図っている。また、法律・人材・適切なプロセス設計という基礎の上で、初めてテクノロジーが機能するということを、全職員が理解するよう伝えている。

企画公募を取り扱う部署で、企画書の申請を電子化したが、そのシステム専属の担当者を明確に出来ていなかった。そのため、元々申請受理を担当していた職員が「デジタル化したから」という理由で、システムを放置した状態となり、申請への対応を怠っていた。その結果、今までの申請プロセスの3倍の時間がかかってしまった。電子化が進むと、それだけで自動的に人員削減されると思いがちだが、実際には今までよりも多くの人員が必要となる。電子化により一部門が担当する業務は今までよりも広範囲となるため、システムの管理者を含めた人材の確保に同時に取り組む必要がある。

Analyze Bostonのウェブサイトイメージ

Analyze Boston

600人が閲覧しました

5分毎に計測されている、ボストン公立図書館の電力負荷

市内の74,000以上の街灯の位置を含むデータセット

内部の環境本部から提供される中央図書館の電気使用量データは、24時間中6回更新。

内部の公共事業部から提供される街灯の位置等のデータ。

800人が閲覧しました

組織内外から収集されるデータ毎に、法律事務所やセキュリティ部門と密に連携を取り、ガイドラインを常に更新。また、市民のビッグデータ活用を積極的に支援しており、中央図書館と連携し、学生から社会人までを対象としたハッカソンイベント等も実施している。

積極的にベンチャーともパートナーシップを構築しているが、リスク回避のために必ず小さなパイロットからスタートしている。

新たな分析モデルの導入時のポイント

失敗から学んだこと

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(様式2)

頁 図表番号12 画像1

12 画像2

95 ①

95 ②

108 ①109 ①

112 ①

112 ②

報告書の題名 

平成29年度石油精製等に係る保安対策調査等事業(産業保安・製品安全分野におけるデータ

利活用に関する調査)調査報告書

平成29年度石油精製等に係る保安対策調査等事業(産業保安・製品安全分野におけるデータ

利活用に関する調査)委託事業名

タイトルアプリケーション画面のイメージ

アプリケーション画面のイメージ

自己組織化マップの出力結果イメージ顧客のクラスターによる平均予約数のプロット結果イメージ

二次利用未承諾リスト

受注事業者名 アクセンチュア株式会社

Code for America公式ページAdopt a Hydrantページ

NYC311公式ページ 問合せトップ

NYC311公式ページ 「My Neighborhood」セクショ