16
2 民事訴訟事件の審理の状況 128 2.4.6 行政事件訴訟の状況 行政事件訴訟の平均審理期間は15.7月であり,民事第一審訴訟事件全体の平均審理期間(8.2月)と 比べて長い。また,期日回数の増加に伴い審理期間が長くなる傾向にあり,期日間隔は民事第一審訴訟 事件全体の期日間隔より長くなっている。 行政事件訴訟は,おおむね人証数の増加によって平均審理期間が長くなる傾向を示しているといえる が,人証調べを実施した場合,口頭弁論期日回数及び争点整理期日回数の双方が増加することにより, 人証数を問わず,2年を超える平均審理期間となっている。 行政事件訴訟は,当事者数が多い事件ほど,平均口頭弁論期日回数が増加し,平均審理期間も長くな る傾向にある。このような傾向は,原告数が増加する場合の方が顕著である。また,原告数が多い事件 ほど人証数が多くなる傾向があり,これは,原告数の増加により平均口頭弁論期日回数が増加する傾向 と符合している。他方,平均期日間隔は,当事者数が増加しても,ほとんど変化が見られない。 行政事件訴訟における経年的変化を見ると,近年の事件増にもかかわらず,その平均審理期間は短縮 されている。この平均審理期間の短縮には,平均期日間隔の短縮よりも,平均口頭弁論期日回数の減少 の方が寄与している。  ○ 行政事件訴訟の概況 行政事件訴訟とは,行政事件訴訟法2条所定の訴訟であり,抗告訴訟,当事者訴訟,民衆訴訟及び機関訴 訟の四類型である(なお,国又は公共団体を被告とする国家賠償請求訴訟は,これに含まれない。)。 本件調査期間内に終局した民事第一審訴訟事件全体の件数が10万6553件であるのに対し,同時期に終局 した行政事件訴訟の件数は1336 件であり,民事第一審訴訟事件全 体の1.3%である。 【図225】は,平成6年から平 成16年までの行政事件訴訟の新 受件数を示したものである。行政 事件訴訟の新受件数は,平成6年 に1150件であったところ,平成 16年には1844件へと増加し,こ こ10年で約6割増となっている。 ○ 行政事件訴訟の審理期間 【図226】によれば,平成16年 の行政事件訴訟の平均審理期間は 15.7月であり,民事第一審訴訟事件全体の平均審理期間が8.2月であるのと比べて,7.5月長くなっている。 【表227】,【図228】により,審理期間別事件割合を見ると,行政事件訴訟においては,6月以内に終局し た事件の割合が最も高い(33.5%)ものの,民事第一審訴訟事件全体の同割合(60.3%)よりかなり低い。 その反面,審理期間の長いグループの事件の各割合は,民事第一審訴訟事件全体の各割合と比較して,いず れも高くなっており,審理期間が2年を超える事件の割合は22.3%になっている(民事第一審訴訟事件全 体の同割合は6.0%)。 【図225】新受件数の推移

2.4.6 行政事件訴訟の状況 2 民事訴訟事件の審理の状況 2 ...2 民事訴訟事件の審理の状況 130 2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

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  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    128

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  129

    2.4.6 行政事件訴訟の状況

     行政事件訴訟の平均審理期間は15.7月であり,民事第一審訴訟事件全体の平均審理期間(8.2月)と比べて長い。また,期日回数の増加に伴い審理期間が長くなる傾向にあり,期日間隔は民事第一審訴訟事件全体の期日間隔より長くなっている。 行政事件訴訟は,おおむね人証数の増加によって平均審理期間が長くなる傾向を示しているといえるが,人証調べを実施した場合,口頭弁論期日回数及び争点整理期日回数の双方が増加することにより,人証数を問わず,2年を超える平均審理期間となっている。 行政事件訴訟は,当事者数が多い事件ほど,平均口頭弁論期日回数が増加し,平均審理期間も長くなる傾向にある。このような傾向は,原告数が増加する場合の方が顕著である。また,原告数が多い事件ほど人証数が多くなる傾向があり,これは,原告数の増加により平均口頭弁論期日回数が増加する傾向と符合している。他方,平均期日間隔は,当事者数が増加しても,ほとんど変化が見られない。 行政事件訴訟における経年的変化を見ると,近年の事件増にもかかわらず,その平均審理期間は短縮されている。この平均審理期間の短縮には,平均期日間隔の短縮よりも,平均口頭弁論期日回数の減少の方が寄与している。 

    ○ 行政事件訴訟の概況 行政事件訴訟とは,行政事件訴訟法2条所定の訴訟であり,抗告訴訟,当事者訴訟,民衆訴訟及び機関訴訟の四類型である(なお,国又は公共団体を被告とする国家賠償請求訴訟は,これに含まれない。)。 本件調査期間内に終局した民事第一審訴訟事件全体の件数が10万6553件であるのに対し,同時期に終局した行政事件訴訟の件数は1336件であり,民事第一審訴訟事件全体の1.3%である。 【図225】は,平成6年から平成16年までの行政事件訴訟の新受件数を示したものである。行政事件訴訟の新受件数は,平成6年に1150件であったところ,平成16年には1844件へと増加し,ここ10年で約6割増となっている。

    ○ 行政事件訴訟の審理期間 【図226】によれば,平成16年の行政事件訴訟の平均審理期間は15.7月であり,民事第一審訴訟事件全体の平均審理期間が8.2月であるのと比べて,7.5月長くなっている。 【表227】,【図228】により,審理期間別事件割合を見ると,行政事件訴訟においては,6月以内に終局した事件の割合が最も高い(33.5%)ものの,民事第一審訴訟事件全体の同割合(60.3%)よりかなり低い。その反面,審理期間の長いグループの事件の各割合は,民事第一審訴訟事件全体の各割合と比較して,いずれも高くなっており,審理期間が2年を超える事件の割合は22.3%になっている(民事第一審訴訟事件全体の同割合は6.0%)。

    【図225】新受件数の推移

    1,018

    1,654

    1,856 1,844

    0

    200

    400

    600

    800

    1,000

    1,200

    1,400

    1,600

    1,800

    2,000

    H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16

    (件)

    1,1501,235

    1,337 1,318 1,305

    1,483 1,484

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    128

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  129

    ○ 期日回数及び期日間隔と審理期間の関係

     【図229】は全期日回数と平均審理期間の関係を,【図230】は口頭弁論期日回数と平均審理期間の関係を,【図231】は争点整理期日回数と平均審理期間の関係を,それぞれ示したものである。【図229】によれば,行政事件訴訟の平均審理期間は,全期日回数の増加に伴って長くなる傾向にあることが分かる。期日の内訳を見ると,口頭弁論期日回数の増加に伴い,平均審理期間も増加する傾向が認められる。他方,争点整理期日回数については,全体として見れば,一応,期日回数が増加すれば,平均審理期間も増加する傾向にあるといえるが,その傾向は口頭弁論期日回数の場合ほど明確ではない。 【図232】によれば,行政事件訴訟の平均期日間隔は2.5月であり,民事第一審訴訟事件全体の平均期日間隔(1.9月)に比べ,0.6月長くなっており,また,受理から第1回期日までの平均期間も

    事件の種類 行政事件訴 訟民事第一審訴訟事件全体

    事 件 総 数 1,336 106,553

    審理期間

    平均審理期間(月) 15.7 8.2

    審 

    理 

    期 

    間 

    別 

    事 

    件 

    6月以内447 64,251

    33.5% 60.3%

    1年以内290 20,110

    21.7% 18.9%

    2年以内302 15,818

    22.6% 14.8%

    3年以内191 4,056

    14.3% 3.8%

    5年以内81 1,916

    6.1% 1.8%

    5年を超える25 402

    1.9% 0.4%

    【表227】審理期間別事件数及び事件割合【図226】平均審理期間

    8.2

    15.7

    0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0

    民事第一審訴訟事件全体

    行政事件訴訟

    (月)

    【図228】審理期間別事件割合

    33.5

    21.7 22.6

    1.9

    60.3

    18.9

    1.8 0.40

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    6月以内 1年以内 2年以内 3年以内 5年以内 5年を超える

    (%)

    14.8 14.3

    3.8 6.1

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    【図229】全期日回数と平均審理期間     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    4.66.8

    8.210.8

    13.115.0

    19.3 18.421.1

    35.8

    2.4 4.15.7

    8.810.4 12.0

    14.216.3

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    35.0

    40.0

    45.0

    50.0

    0回 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 9回 10回以上

    (月)

    行政事件訴訟民事第一審訴訟事件全体

    1.7

    26.0

    2.4 7.2

    【図230】口頭弁論期日回数と平均審理期間     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    10.3

    24.2

    4.2

    15.8

    19.2

    23.214.5

    12.1

    6.0

    2.7

    19.2

    39.5

    29.5

    22.4

    21.3

    14.011.3

    2.50.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    35.0

    40.0

    45.0

    50.0

    0回 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 9回 10回以上

    (月)

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    17.2

    33.3

    17.3

    7.7

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    130

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  131

    2.4月と,民事第一審訴訟事件全体の同期間(1.7月)より0.7月長くなっている。 このように期日間隔が長いのは,行政事件訴訟では,訴訟要件具備の有無や行政実体法規の解釈適用が争点となることが多く,専門性の高い事件類型であることなどから,当事者が期日間の準備に時間を要する事件が多いことに起因するのではないかと推測される。

     【図233】は,審理期間別平均期日間隔を示したものである。行政事件訴訟の平均期日間隔は,審理期間6月以内の事件の平均期日間隔が3.3月と最も長く,そのほかの事件では2.3月から2.7月までの範囲で変動している。その平均期日間隔は,おおむね民事第一審訴訟事件全体の平均期日間隔よりも長くなる傾向が見られる。

    【図232】平均期日間隔等(行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    2.5

    1.6

    2.2

    1.7

    0.5

    1.0

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

    平均期日間隔

    受理~第1回期日

    弁論終結~終局

    弁論終結~終局(判決のみ)

    (月)

    1.9

    2.4

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    【図233】審理期間別平均期日間隔(行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    2.7

    2.5

    2.5

    2.3

    2.5

    3.3

    2.7

    1.9

    2.0

    1.6

    1.7

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

    6月以内

    1年以内

    2年以内

    3年以内

    5年以内

    5年を超える

    (月)

    1.9

    2.4

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    【図231】争点整理期日回数と平均審理期間     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    18.8

    27.8

    8.6

    13.715.6 17.0

    20.5

    30.6

    47.7

    24.224.3

    19.2 19.1

    25.5

    4.4

    10.011.9

    18.9

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    35.0

    40.0

    45.0

    50.0

    0回 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 9回 10回以上

    (月)

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    11.4

    7.3

    27.8

    30.9

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    130

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  131

     【図234】は,期日回数別平均期日間隔を示したものであるが,これによれば,全期日回数1回及び2回の場合を除き,行政事件訴訟の期日間隔はおおむね2.3月から2.8月までの範囲で変動していることが分かる。

    ○ 行政事件訴訟における争点整理期日及び口頭弁論期日の状況

     (期日の実施状況) 【図235】は平均全期日回数を,【図236】は平均口頭弁論期日回数を,【図237】は平均争点整理期日回数を,それぞれ示したものである。行政事件訴訟の平均全期日回数は6.3回であり,民事第一審訴訟事件全体の平均全期日回数(4.4回)より1.9回多くなっている。そのうち,平均口頭弁論期日回数は4.6回であり,民事第一審訴訟事件全体の平均口頭弁論期日回数(2.4回)より2.2回多くなっているのに対し,平均争点整理期日回数は1.7回であり,民事第一審訴訟事件全体の平均争点整理期日回数(2.0回)と比べて少なくなっている。 【図238】によれば,行政事件訴訟における争点整理実施率は27.0%であり,民事第一審訴訟事件全体の争点整理実施率(37.4%)と比べて少ない。これは,行政事件訴訟においては,通常の口頭弁論期日において争点整理が行われていることが原因ではないかと推測される。前述の平均口頭弁論期日回数が,民事第一審訴訟事件全体の平均口頭弁論期日回数と比較して,2回程度多いとの統計データ【図236】は,この推測を裏付けるものとみることもできよう。

    【図234】期日回数別平均期日間隔     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    4.6

    3.4

    2.7 2.72.6

    2.5

    2.8

    2.3 2.3 2.3

    2.4

    2.01.9 1.8 1.8 1.7 1.7

    1.8 1.8 1.8

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    4.5

    5.0

    1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 9回 10回以上

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    (月)

    【図236】平均口頭弁論期日回数(行政事件訴訟     及び民事第一審訴訟事件全体)

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    4.6

    2.4

    (回)

    【図235】平均全期日回数(行政事件訴訟及び     民事第一審訴訟事件全体)

    6.3

    4.4

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0(回)

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    132

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  133

     (人証調べについて) 【図239】,【図240】,【図241】によれば,行政事件訴訟の平均人証数は0.5人と,民事第一審訴訟事件全体の平均人証数(0.6人)をわずかに下回っているが,人証調べを実施した事件の割合は23.1%であり,民事第一審訴訟事件全体の同割合(21.2%)を若干上回っている。他方,人証調べ実施事件の平均人証数は2.3人であり,民事第一審訴訟事件全体の同平均人証数(2.7人)よりやや少なくなっている(【図242】)。

    実施

    21.2%

    実施せず78.8%

    【図241】人証調べ実施率(民事     第一審訴訟事件全体)

    実施

    23.1%

    実施せず76.9%

    【図240】人証調べ実施率     (行政事件訴訟)

     【図243】により,人証調べ実施事件の人証数別事件割合を見ると,行政事件訴訟においては人証数1人の事件の割合が43.4%と最も高くなっており,民事第一審訴訟事件全体の人証数別事件割合において,人証数1人の事件の割合が16.2%にとどまり,人証数2人の事件の割合が40.0%と最も高くなっているのと異なっている。行政事件訴訟においては,訴訟要件の具備の有無や行政実体法規の解釈適用が争点となる場合が多く,事

    【図242】人証調べ実施事件の平均人証数(行政     事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

    民事第一審訴訟事件全体

    行政事件訴訟

    (人)

    2.3

    2.7

    【図237】平均争点整理期日回数(行政事件訴訟     及び民事第一審訴訟事件全体)

    2.0

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    1.7

    (回)

    【図238】争点整理実施率(行政事件訴訟及び     民事第一審訴訟事件全体)

    37.4

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    40

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    (%)

    27.0

    【図239】平均人証数(行政事件訴訟及び     民事第一審訴訟事件全体)

    0.6

    0.5

    0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

    民事第一審訴訟事件全体

    行政事件訴訟

    (人)

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    132

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  133

    実認定を必要とする争点が少ない事件も相当数ある。人証調べを実施する場合でも,取調べ人証数が少なく済む事件が相当数あることから,行政事件訴訟においては,民事第一審訴訟事件全体と比べ,人証調べ実施率がやや高い反面,平均人証数がやや少ないという傾向が見られるものと推測される。 【図244】,【図245】,【図246】,【図247】は,人証調べ実施事件について,平均審理期間,平均全期日回数,平均口頭弁論期日回数,平均争点整理期日回数を示したものである。これによれば,行政事件訴訟で人証調べを実施した事件の平均審理期間は28.9月であり,行政事件訴訟全体の平均審理期間(15.7月)より13.2月長くなっている(【図226】,【図244】)。期日の状況を見ると,行政事件訴訟全体と比べ,人証調べ実施事件の平均全期日回数(12.4回)が6.1回多くなっているところ(【図235】,【図245】),その内訳は,平均口頭弁論期日回数(9.0回)が4.4回多く(【図236】,【図246】),平均争点整理期日回数(3.5回)が1.8回多くなっている(【図237】,【図247】)。人証調べ実施事件は,行政事件訴訟全体と比べ,平均口頭弁論期日回数及び平均争点整理期日回数の双方が増加する結果,平均全期日回数も多くなり,平均審理期間が増加しているといえる。

    【図243】人証調べ実施事件の人証数別事件割合     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    9.4

    40.0

    23.9

    7.1

    0.30.30.31.31.9

    12.0

    16.2

    0.80.30.90.9

    4.5

    10.9

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    40

    45

    50

    1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人以上

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    (%)

    43.4

    23.1

    2.4

    【図244】人証調べ実施事件の平均審理期間(行政     事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    28.9

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    35.0

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    18.3

    (月)

    【図245】人証調べ実施事件の平均全期日回数(行政     事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    12.4

    9.8

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    10.0

    12.0

    14.0

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    (回)

    【図246】人証調べ実施事件の平均口頭弁論期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    10.0

    12.0

    14.0

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    9.0

    5.3

    (回)

    【図247】人証調べ実施事件の平均争点整理期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    3.54.5

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    10.0

    12.0

    14.0

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    (回)

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    134

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  135

     なお,人証調べ実施事件の平均期日間隔は,2.3月であり,行政事件訴訟全体の平均期日間隔(2.5月)と比べると,0.2月短くなっている(【図232】,【図248】)。 【図249】は人証数別平均審理期間を,【図250】は人証数別平均全期日回数を,【図251】は人証数別平均口頭弁論期日回数を,【図252】は人証数別平均争点整理期日回数を,【図253】は人証数別平均期日間隔を,それぞれ示したものである。 行政事件訴訟においても,おおむね人証数の増加によって,平均審理期間が長くなる傾向を示しているといえる(【図249】。人証が7人以上の事件については,件数が少なく,個別の事件の特徴が強く現れている可能性が高い。以下同じ。)が,人証調べを実施した行政事件訴訟では,人証数を問わず,平均審理期間が2年を超えていることが特徴的である。

     平均全期日回数との関係を見ると,人証数が増加するに従って平均全期日回数も増加する傾向にあり(【図250】),平均口頭弁論期日回数及び平均争点整理期日回数も,ほぼ同様の傾向にあるといえる(【図251】,【図252】)。民事第一審訴訟事件全体と比較すると,平均全期日回数及び平均口頭弁論期日回数は民事第一審訴訟事件全体の平均全期日回数及び平均口頭弁論期日回数よりも,おおむね高い水準で変動しているのに対し,平均争点整理期日回数は,人証数6人までの事件では,民事第一審訴訟事件全体の平均争点整理期日回数よりも,おおむね低い水準で変動している(人証数7人及び8人の各事件では民事第一審訴訟事件全体の同平均争点整理期日回数より高い水準になっているが,前述のとおり,上記各事件のサンプル数が少ないことから,これを一般化することは困難である。)。 平均期日間隔は,おおむね民事第一審訴訟事件全体の平均期日間隔と比較して長い傾向にあるが,人証数7人,8人及び10人以上の各事件については,例外的に短くなっている。これらの事件を除けば,人証数別の平均期日間隔は,2.3月から2.7月までの間で変動している(【図253】)。

    【図248】人証調べ実施事件の平均期日間隔(行政     事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    2.3

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    1.9

    (月)

    【図249】人証数別平均審理期間     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    30.0 30.030.1

    25.6

    36.0

    26.4

    5.5

    26.7

    19.016.1

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    35.0

    40.0

    45.0

    50.0

    0人 1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人以上

    行政事件訴訟(月)

    13.2

    37.9

    28.4

    43.8

    38.4

    33.7

    11.8

    33.8

    22.2

    26.7

    47.0

    民事第一審訴訟事件全体

    48.0

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    134

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  135

    【図250】人証数別平均全期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    11.5

    4.4

    11.1

    14.9

    20.0

    16.0

    27.0

    15.914.4

    6.9

    10.411.9

    20.5

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    0人 1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人以上

    (回)

    8.8

    13.2 14.2 14.0 14.2

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    3.0

    18.0

    13.0

    17.9

    【図251】人証数別平均口頭弁論期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    16.0

    11.812.310.49.9

    8.28.16.0

    4.1

    8.0

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    0人 1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人以上

    (回)

    3.31.6

    5.47.3

    9.5

    12.9 13.0

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    4.7

    8.58.8

    13.9

    19.0

    【図252】人証数別平均争点整理期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    1.1

    3.05.1

    4.3

    8.3

    6.25.04.1 4.9

    5.9

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    30.0

    0人 1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人以上

    (回)

    2.7 2.84.5

    5.7 5.86.6

    1.4

    6.76.48.0

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    136

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  137

     このように行政事件訴訟においては,民事第一審訴訟事件全体と比べ,人証調べ実施事件の割合がやや高いものの,平均人証数は民事第一審訴訟事件全体の平均人証数より少なく,他方,人証調べを実施した事件の平均審理期間が著しく長くなり,人証調べを実施するような事件は,その平均審理期間が2年を超えるという特徴がある。

    ○ 当事者数との関係(付・代理人の選任状況との関係) (当事者数との関係) 【図254】,【図255】は当事者数別の事件割合を示したものであるが,行政事件訴訟では,原告が複数の事件の割合が民事第一審訴訟事件全体の同割合より若干高い点を除けば,ほぼ民事第一審訴訟事件全体の当事者数別の事件割合と同様の傾向を示しているといえよう。原告が複数の事件の割合が多いのは,原子炉設置許可処分の取消しを多数の周辺住民が求める訴訟,地方公共団体の住民多数が提起する住民訴訟等,行政事件訴訟には,原告多数の集団訴訟が多く見られることと符合する。

     【図256】,【図257】は当事者数別の平均審理期間を,【図258】,【図259】は当事者数別の平均全期日回数を,【図260】,【図261】は当事者数別の平均口頭弁論期日回数を,【図262】,【図263】は当事者数別の平均争点整理期日回数を,【図264】,【図265】は当事者数別の平均期日間隔をそれぞれ示したものである。

    【図253】人証数別平均期日間隔(行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    1.91.81.8

    2.52.4

    2.7

    2.1

    1.9

    2.12.12.0

    1.91.9

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    0人 1人 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人以上

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    (月)

    1.8 1.81.9

    1.8

    2.6

    2.32.3 2.3 2.3

    【図254】原告数別事件割合     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    0.2

    91.7

    2.0

    0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

    10人以上

    2人~9人

    1人

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    14.7

    83.3

    (%)

    8.1

    【図255】被告数別事件割合     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    0.5

    22.2

    1.0

    0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

    10人以上

    2人~9人

    1人

    24.7

    74.8

    (%)

    76.8

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    136

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  137

    【図256】原告数別平均審理期間     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    25.3

    7.7

    21.8

    32.2

    0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0

    10人以上

    2人~9人

    1人 行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    (月)

    14.3

    14.2

    【図257】被告数別平均審理期間     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    11.4

    7.9

    14.8

    22.1

    0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 30.025.0 35.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (月)

    9.418.8

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    【図258】原告数別平均全期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    4.2

    8.7

    14.1

    0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0

    10人以上

    2人~9人

    1人 行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    (回)

    5.7

    7.4

    11.6

    【図259】被告数別平均全期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    5.0

    5.0

    4.2

    7.2

    6.0

    0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (回)

    9.4

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    138

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  139

    【図260】原告数別平均口頭弁論期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    【図261】被告数別平均口頭弁論期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    2.7

    3.1

    2.3

    6.5

    5.4

    4.4

    0.0 2.0 4.0 8.06.0 10.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (回)

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    6.1

    2.34.3

    6.0

    0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (回)

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    3.5

    9.4

    【図262】原告数別平均争点整理期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    5.5

    4.0

    1.4

    0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (回)

    4.7

    1.9

    2.8

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    【図263】被告数別平均争点整理期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    1.7

    1.6

    0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (回)

    2.3

    2.9

    1.9

    2.0

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    138

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  139

    【図264】原告数別平均期日間隔     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    2.2

    1.8

    2.5

    2.5

    2.3

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (月)

    1.9

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    【図265】被告数別平均期日間隔     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    2.3

    2.3

    2.5

    2.6

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (月)

    1.9

    1.9

    行政事件訴訟 民事第一審訴訟事件全体

    【図266】原告数別平均人証数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    【図267】被告数別平均人証数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    0.7

    0.60.5

    0.8

    0.6

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

    10人以上

    2人~9人

    1人

    (人)0.9

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    1.0

    0.5

    2.2

    0.8

    0.5

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

    10人以上

    2人~9人

    1人 行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    (人)2.4

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    140

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  141

     行政事件訴訟でも,民事第一審訴訟事件全体と同様に,当事者数が多い事件ほど平均審理期間が長くなる傾向にあり,この傾向は,原告数が多い場合の方が顕著である(【図256】,【図257】)。期日の状況を見ると,平均全期日回数,平均口頭弁論期日回数,平均争点整理期日回数とも,当事者数が多い事件ほど期日回数が多くなる傾向があり,この傾向は原告数が多い場合の方が顕著であるが,被告数が多い場合も,民事第一審訴訟事件全体に比べれば,明確に期日回数が増える傾向が見て取れる(【図258】から【図263】まで)。 他方,当事者数別平均期日間隔を見ると,平均期日間隔は2.3月から2.6月までの間に収まっており,当事者数により大きな違いは認められない(【図264】,【図265】)。 このように,行政事件訴訟においては,当事者数が多い事件ほど,平均全期日回数が増加し,平均審理期間も長くなる傾向にある。期日の内訳を見ると,平均口頭弁論期日回数及び平均争点整理期日回数のいずれもが増加しているが,期日回数の増加の割合は,平均口頭弁論期日回数の方が大きい。このような当事者数の増加による平均審理期間,期日回数の増加傾向は,原告数が増加する場合の方が顕著である。他方,平均期日間隔は,当事者数が増加しても,ほとんど影響がない。行政事件訴訟におけるこれらの傾向は,民事第一審訴訟事件全体における傾向とほぼ同様のものである。 【図266】,【図267】は,当事者数別平均人証数を示したものである。これによれば,原告数が多い事件ほど人証数が多くなる傾向が認められる。人証調べは口頭弁論期日で実施されるから,このように,原告数の増加に従い平均人証数が増加する傾向があることは,前述のとおり,原告数の増加により平均口頭弁論期日回数が増加する傾向があることと符合している(ただし,人証調べのために平均口頭弁論期日回数が増加しているのか,それとも,人証調べを要するような事件は,事案が複雑困難な事件が多いため,争点整理のために口頭弁論期日を重ねているのかなどについて,統計数値からは明らかではない。)。

     (代理人の選任状況との関係) 【図268】は,代理人(訴訟代理人又は指定代理人を指す。以下同じ。)が選任された事件の割合を示したものである。 行政事件訴訟においては,原告側が代理人を選任する事件の割合は,民事第一審訴訟事件全体の同割合(75.7%)と比べて少なく,56.0%であり,いわゆる原告本人訴訟の比率が4割を超えていることが注目される。これに対し,被告側が代理人を選任する事件の割合は76.9%であり,民事第一審訴訟事件全体の同割合(44.6%)と比べて大幅に高くなっている。これは,被告とされる国,公共団体には,代理人として弁護士が選任されるほか,訟務検事などの指定代理人が指定されることが通常であることによるものであろう。

    【図268】代理人の選任状況(行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    48.9

    40.1

    35.6

    4.5

    19.7

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    双方代理人あり 原告側のみ代理人あり

    被告側のみ代理人あり

    双方代理人なし

    (%)

    16.0

    28.0

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    7.1

     なお,被告側が代理人を選任しない事件も一定数見られるが,それらの事件の多くは被告が応訴する前に事件が終局に至ったものである。

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    140

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  141

     【図269】は,代理人の選任状況別平均審理期間を示したものである。これによれば,平均審理期間は,当事者双方が代理人を選任した事件で23.2月と最も長く,以下,原告側のみ代理人を選任した事件(12.8月),被告側のみ代理人を選任した事件(10.7月),当事者双方に代理人が選任されていない事件(3.0月)の順に短くなっており,原告側のみ代理人を選任した事件の方が,被告側のみ代理人を選任した事件よりも平均審理期間が長くなっている点で,民事第一審訴訟事件全体のそれと異なっている。このような違いは,民事第一審訴訟事件全体の原告側のみ代理人を選任した事件には,欠席判決で終局する事件が多く含まれていると推測される一方,行政事件訴訟の同事件においては,被告欠席による欠席判決がほとんどないことに起因しているのではないかと推測される。 【図270】により,代理人の選任状況別平均全期日回数を見ると,前述の代理人の選任状況別平均審理期間とほぼ同じ傾向が見られる。 なお,当事者双方に代理人が選任されていない事件の平均全期日回数が極めて少ないが,これは,この種の行政事件訴訟は,民事訴訟法140条に基づく口頭弁論期日を経ない訴え却下判決がされるケースが多く,その場合の判決言渡期日は「口頭弁論期日」にカウントされないことによるものと推測される。 【図271】は,代理人の選任状況別平均期日間隔を示したものである。

    【図269】代理人の選任状況別平均審理期間     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    23.2

    3.0

    14.6

    2.7

    12.8

    10.7

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    双方代理人あり 原告側のみ代理人あり

    被告側のみ代理人あり

    双方代理人なし

    (月)

    4.1

    8.5

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    【図271】代理人の選任状況別平均期日間隔     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    2.4

    8.0

    1.8 2.0 1.82.1

    3.1

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    9.0

    双方代理人あり 原告側のみ代理人あり

    被告側のみ代理人あり

    双方代理人なし

    (月)

    2.5

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

    【図270】代理人の選任状況別平均全期日回数     (行政事件訴訟及び民事第一審訴訟事件全体)

    9.7

    0.4

    8.0

    2.1

    4.64.24.2

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    10.0

    12.0

    双方代理人あり 原告側のみ代理人あり

    被告側のみ代理人あり

    双方代理人なし

    (回)

    1.3

    行政事件訴訟

    民事第一審訴訟事件全体

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    142

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  143

     行政事件訴訟の平均期日間隔は,当事者双方に代理人が選任されていない事件が8.0月と一番長く,次いで原告側のみ代理人を選任した事件が3.1月,被告側のみ代理人を選任した事件が2.5月,当事者双方が代理人を選任した事件が2.4月となっている。行政事件訴訟においては,当事者双方又はその一方に代理人が選任されている事件の平均期日間隔は,民事第一審訴訟事件全体の同平均期日間隔と比較すると,総じて長くなっているといえる。 なお,当事者双方に代理人が選任されていない事件の平均期日間隔が8.0月と著しく長期化しているが,これは,この種の行政事件訴訟は,民訴法140条に基づく口頭弁論期日を経ないで訴え却下の判決がされるケースが多く,その場合の判決言渡期日は「口頭弁論期日」にカウントされないことによるものと推測される。

    ○ 審理期間等の経年的変化 【図272】から【図276】までは,審理期間等の経年的変化を,平成6年,平成9年及び平成16年(同年4月から12月まで)の各数値で見たものである。【図272】は平均審理期間を,【図273】は平均全期日回数を,【図274】は平均口頭弁論期日回数を,【図275】は争点整理の平均実施回数を,【図276】は平均期日間隔を,それぞれ示したものである。 行政事件訴訟の平均審理期間は,平成9年には21.9月であったが,平成16年(同年4月から12月まで)には15.7月へと短縮している。また,この間,平均全期日回数は,平成9年の8.1回から平成16年の6.3回に減少しているところ,その内訳を見ると,平均口頭弁論期日回数が,平成9年の8.0回から平成16年の4.6回へと大きく減少しているのに対し,平成9年にはほとんどなかった争点整理の平均実施回数が,平成16年には1.7回になっている(平成9年の数値は準備手続が実施された平均回数であり,平成16年の数値は準備的口頭弁論及び弁論準備手続が実施された平均回数である。)。他方,平均期日間隔は,平成9年の2.7月から平成16年の2.5月へと短縮している。 このように,経年的には,主として,平均全期日回数,特に口頭弁論期日回数が減少することにより,平均審理期間が短縮されたことが分かる。また,平均期日間隔の短縮も平均審理期間の短縮に寄与しているが,その寄与の程度は,期日回数に比べると小さいものと考えられる。

    【図272】行政事件訴訟における平均審理期間の比較

    19.7

    21.9

    15.7

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    20.0

    25.0

    平成6年 平成9年 平成16年

    (月)

    【図273】行政事件訴訟における     平均全期日回数の比較

    6.8

    8.1

    6.3

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    9.0

    平成6年 平成9年 平成16年

    (回)

    【図274】行政事件訴訟における 平均口頭弁論期日回数の比較

    8.0

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    9.0

    平成6年 平成9年 平成16年

    (回)

    6.7

    4.6

  • 2 民事訴訟事件の審理の状況

    142

    2.4 専門的な知見を要する訴訟等に関する考察

    2

    裁判の迅速化に係る検証に関する報告書  143

    【図275】行政事件訴訟における争点整理の     平均実施回数の比較

    【図276】行政事件訴訟における平均期日間隔の比較

    ※ 平成16年の平均期日間隔は前出(2.1.2統計データから見る民事訴訟手続像「民事第一審訴訟事件(地方裁判所)の概要」)のとおり。平成6年及び平成9年の平均期日間隔は,平均審理期間を平均口頭弁論期日回数と争点整理の平均実施回数の合計値で除した数値である。

    2.9

    2.7

    2.5

    2.3

    2.4

    2.5

    2.6

    2.7

    2.8

    2.9

    3.0

    平成6年 平成9年 平成16年

    (月)

    ※ 平成6年及び平成9年は「準備手続が実施された回数」の,平成16年は「準備的口頭弁論期日及び弁論準備手続期日が実施された回数」の,いずれも平均値である。

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    9.0(回)

    0.2

    平成6年 平成9年 平成16年

    0.1

    1.7