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工場管理 201711 17 本章ではトヨタ生産方式現場改善における本的事項についてべていきたい。 トヨタ生産方式の原点と2本柱 トヨタ生産方式 (TPS)は、づくりをベースに してつもので、カイゼン活動はそのうえで つものであるという図式りであ る。 ここでTPSの原点をおさらいしておきたい。 TPS の本柱にはニンベンのついた“自働化”が ある。豊田佐吉翁発明した自動織機由来する もので、それ以前自動織機れてもけるため、あとで不良品手直しをしたり最悪 場合廃棄しなければならないという問題があ った。そのために、自動機にもかかわらず、監視 機械にいなければならなかった。とこ ろが、佐吉翁発明した自動織機れたら 自動的機械停止する仕組みをんだので 不良品けることを排除することができた。 この発明由来して、異常があったら停止するを(ニンベンのついた) 自働化することにな り、監視不要になったため機械分離 ももたらすことになり、機械多数台持可能になった。このことが圧倒的生産性をもたらし、TPS の本柱つになっている。 TPS のもうつのはトヨタ自動車創業者ある豊田喜一郎社長したアイデアを大野 耐一氏具現化したものである。 すなわち、経営資源しい当時のトヨタ自動 が、圧倒的かで大規模生産量るGM やフォードに対抗して競争していくためには、かせる余裕がないので、在庫たずになものを必要なときに必要だけ生産して、 げたらすぐに資金回収する方式をとるし かなかった。その背景喜一郎社長大野氏にそ のようなやり開発するように指示をしたもの である。そして試行錯誤辿いたやりがジャスト・イン・タイムである。 自分で考える人づくり ところで、カイゼンにむのは、ならぬ である。そのが、やらされでカイゼンにんでも、やらされでやっているうちは本人 にとってもしくないため、本格的定着したにはならない。 改善活動定着させるためには、まず、「づく り」がかせない。「モノづくりはづくり」とわれるゆえんであり、「自分える」を育成ることからスタートする必要がある。失敗ている事例くは「自分えるづくり」が なく、からの指示によってやらされちな がらやっているからであるとえられる。「づく り」はいわば改善活動かせないインフラであ る。 かつて松下電器 パナソニック)の松下幸之助 が、「松下電器をつくっている会社ですか」 かれときに「松下電器をつくっておりま す。ついでに家電もつくっております」とえら れたという言葉相通ずるものがある。 したがって、「カイゼンの意志する適切きかけ」がめて重要である。当社起業して300 企業とおいをしてきたが、 図1 人づくりをベースにしたトヨタ生産方式 カイゼン活動 ニンベンのある自働化 ジャスト・イン・タイム TPS の 2 本柱 づくり(TPSに必要なインフラ) 第1章 2.カイゼンの心構え トヨタ生産方式のエッセンス基本要素と現場改善

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工場管理 2017/11 17

 本章ではトヨタ生産方式の現場改善における基本的な事項について述べていきたい。

トヨタ生産方式の原点と2本柱

 トヨタ生産方式(TPS)は、人づくりをベースにして成り立つもので、カイゼン活動はそのうえで成り立つものであるという図式は図1の通りである。 ここでTPSの原点をおさらいしておきたい。TPSの2本柱にはニンベンのついた“自働化”がある。豊田佐吉翁が発明した自動織機に由来するもので、それ以前の自動織機は糸が切れても織り続けるため、あとで不良品の手直しをしたり最悪の場合は廃棄しなければならないという問題があった。そのために、自動機にもかかわらず、監視の人が機械の側にいなければならなかった。ところが、佐吉翁が発明した自動織機は糸が切れたら自動的に機械が停止する仕組みを織り込んだので不良品を織り続けることを排除することができた。この発明に由来して、異常があったら停止する設備を(ニンベンのついた)自働化と称することになり、監視の人が不要になったため人と機械の分離ももたらすことになり、1人で機械の多数台持ちが可能になった。このことが圧倒的な生産性の向上をもたらし、TPSの2本柱の1つになっている。 TPSのもう1つの柱はトヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎社長の考え出したアイデアを大野耐一氏が具現化したものである。 すなわち、経営資源の乏しい当時のトヨタ自動車が、圧倒的に豊かで大規模な生産量を誇るGMやフォードに対抗して競争していくためには、資金を寝かせる余裕がないので、在庫を持たずに必要なものを必要なときに必要な数だけ生産して、売り上げたらすぐに資金を回収する方式をとるしかなかった。その背景で喜一郎社長が大野氏にそのようなやり方を開発するように指示をしたもの

である。そして試行錯誤の末に辿り着いたやり方がジャスト・イン・タイムである。

自分で考える人づくり

 ところで、カイゼンに取り組むのは、他ならぬ人である。その人が、やらされ感でカイゼンに取り組んでも、やらされ感でやっているうちは本人にとっても楽しくないため、本格的に定着した活動にはならない。 改善活動を定着させるためには、まず、「人づくり」が欠かせない。「モノづくりは人づくり」と言われるゆえんであり、「自分で考える人」を育成することからスタートする必要がある。逆に失敗している事例の多くは「自分で考える人づくり」がなく、上からの指示によってやらされ感を持ちながらやっているからであると考えられる。「人づくり」はいわば改善活動に欠かせないインフラである。 かつて松下電器(現パナソニック)の松下幸之助翁が、「松下電器は何をつくっている会社ですか」と聞かれときに「松下電器は人をつくっております。ついでに家電もつくっております」と応えられたという言葉と相通ずるものがある。 したがって、「カイゼンの意志に対する適切な働きかけ」が極めて重要である。当社は起業して以来、約 300社の企業とお付き合いをしてきたが、

図1 人づくりをベースにしたトヨタ生産方式

カイゼン活動

ニンベンのある自働化 ジャスト・イン・タイム

TPSの 2本柱

人づくり(TPSに必要なインフラ)

第1章

2.カイゼンの心構え

トヨタ生産方式のエッセンス─基本要素と現場改善

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Vol.63 No.14 工場管理18

カイゼンが成功している会社は、すべて経営トップが現場に関心を持ち、この意識で活動を展開している会社である。このようなモチベーションアップのサイクルが回っている(図2)。

基本にこだわる─神は細部に宿る

 改善活動が定着しない原因は何だろうか。特に手法は勉強したが、現場に定着していない場合は、小さな異常を「まあいいや」と見逃していないだろうか。または些細なことだからと「見て見ないふり」をしていないだろうか。 たとえば、整理・整頓の基本として、せっかく通路と作業場とモノの置き場を明確に区分して標

準状態を設定しても、通路に物を置いてもアクションが取られない現場や、水漏れがあっても「少しくらい問題ない」と見過ごされてしまう現場がある(写真1、写真2)。 一事が万事で、異常に対する反射神経が鈍ってくると安全・品質・生産性に影響することは、ハインリッヒの法則の示す通りである。 ハインリッヒの法則とは1:29:300の法則で、1件の重大災害は突然起こるのではなく、その裏には29件の軽災害と300件のヒヤリとしたりハッとしたりする経験がある。これは、労働災害だけでなく品質や失敗にも適用可能と言われている。 そもそも在庫を持たないトヨタ生産方式は異常があったらすぐ問題が顕在化する点で「反射神経

写真2 反射神経のある現場に

図2 モチベーションアップのサイクル

小さな成功体験を重ねて自信をつける

モチベーションアップのサイクル

小さな成功で達成感→良い点をほめる

楽しみながら改善に取り組む→失敗を叱らない

カイゼンを成功させるキーワードは、“カイゼンを楽しもう!”

自信

達成感挑戦

写真1 仕組みがあるので基本を守らないことが見える化された

通路と作業場の区分は明確化異常が見える化

水漏れ些細な異常も見逃さない!