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ここまでは、クラウドを取り巻く動向と業界の取り組みを見てきました。 この章ではクラウドを特徴付ける技術について学習します。

3 クラウド・コンピューティング特論 第2章 クラウドのアーキテクチャ

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Page 1: 3 クラウド・コンピューティング特論 第2章 クラウドのアーキテクチャ

ここまでは、クラウドを取り巻く動向と業界の取り組みを見てきました。この章ではクラウドを特徴付ける技術について学習します。

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クラウドによって提供される基盤サービスの利用イメージです。左にいる利用者(複数)が、右の物理的なICT資源を利用します。従来であれば、利用者の申請に対して管理者が、特定の物理的なサーバーやストレージを割り当て、ミドルウェアやアプリケーションを導入/設定した上で利用者に提供していました。クラウドでは、資源は「リソースプール」として仮想化され、ミドルウェアなどの組み合わせも「サービス」としてメニュー化されています。利用者は「サービスポータル」と呼ばれるWeb画面からこのサービスを選択し、必要な資源の量(CPUコア数やストレージ容量)を入力して申請を行います。クラウド・システムは申請内容に従ってリソースプールから必要な資源を切り出し、設定します(プロビジョニング)。

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前ページの申請~プロビジョニングの流れの舞台裏となっているシステム・アーキテクチャ例です。「クラウド環境」は、利用者からのサービスリクエストをワークフローに基づいて処理し、物理的な資源の集合であるリソースプールから、リクエストに沿った仮想化環境を切り出します(デプロイ)。

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クラウド・システムを支えるアーキテクチャをレイヤー・モデルとしたイメージです。下段のプラットフォームと上段のサービスに分離されていることが特徴です。従来の複雑なアーキテクチャを仮想化、標準化することで利用者にとっても管理者にとっても分かりやすく、将来の拡張や変更にも柔軟に対応できることが、クラウド・システムとして重要なコンセプトとなります。

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この章では、クラウド・システムになくてはならない、「仮想化」技術を学びます。

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クラウド・システムになくてはならない、ベースとなる技術が「仮想化」です。サーバー、ストレージ、ネットワークを仮想化することで管理が容易となり、物理的な制限にとらわれずに操作することができます。例えば、従来であればストレージ(ハードディスク)を物理的に増やせば、新たなドライブとして別管理、使い分けしなければなりませんが、仮想化ストレージであれば、ディスク容量が増えただけと認識することもできますし、実際の台数とは無関係に、都合のいい台数として管理することも可能です。

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仮想化にはさまざまなメリットがありますが、ここでは主な3点をご紹介しています。いずれも柔軟性、効率に大きく寄与し、クラウド・システムが従来システムの課題を解決するポイントとなっています。

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「VMware」や「Xen」により身近になってきたサーバー仮想化は、いくつかの手法によって実現されています。それぞれ一長一短がありますが、年々、バージョンアップにより使い勝手、性能、安定性が向上しています。ここでは実装レベルに基づく分類を紹介しています。

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サーバー仮想化の手法を、実装方法で分類しています。

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現在普及している主なサーバー仮想化ソリューションを、前ページの実装方法にマッピングした表です。

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ストレージ仮想化も、クラウド・システムにはなくてはならない技術の一つです。左の従来型・物理マッピングに対し、管理者がサーバをとおして見たストレージ構成と、実際の物理的な場所が異なっている、すなわち仮想化されています。

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ストレージ仮想化の主要なメリットをまとめてみました。サーバー仮想化と同様に、物理的な制約に縛られずに柔軟に利用できる点、効率的に運用/管理できることでコスト最適化にも寄与できる点が、クラウド・システムに適しています。

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ここでは、クラウドを特徴付けている機能である「サービス・マネージメント」を学びます。

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仮想化はクラウドの重要な要素ですが、仮想化だけであれば以前からある程度実現されていました。クラウドを特徴付けている機能として、「サービス・マネージメント」があります。これはクラウド・システムを運用・管理していく上でのルールや手順を「標準化」し、また可能な部分は「自動化」することで、ミスを減らすとともに処理のスピードアップを図るものです。

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「サービス・マネージメント」のデファクト・スタンダードとなっているガイドラインが「ITIL」です。ITILを適用してサービス・プロセスを設計・構築していくことで、サービスの提供者・利用者双方にとって明確で、将来の変化にも柔軟に対応できる、品質の高いプロセスを実現することが可能になります。ITILは日々の運用手法を記述した「サービスサポート」、中長期的なサービスの管理手法を記述した「サービスデリバリ」から成り、問題管理や変更管理、サービスレベル管理などを明文化、ライフサイクルにもとづいて管理できます。

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ITILの最新版、v3の特徴です。

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クラウド・システムは、複雑な物理リソースを仮想化、標準化して柔軟に管理します。そのためにはITILのようなサービス・マネージメントの考え方を導入することが重要で、さもなければ障害発生時などに原因の特定ができないなど、かえって対応が遅くなったりコストがかかったりする可能性があります。また、クラウドの特徴である再利用のしやすさや拡張のしやすさを実現するため、「ICTライフサイクル管理」の考え方に則ったプロセスが必要です。ICTライフサイクル管理とは、新たなニーズがあった際の設計→開発→導入→運用という一連の流れはもちろんのこと、最適化、改善によるフィードバックや破棄に至るプロセスに組み込み、効率やコストを絶えず最適に保つ手法のことです。

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クラウド・システムでは資源が仮想化されるため、サービスを利用するエンド・ユーザーは物理構成を意識せず柔軟なICT環境を享受することができます。反面、ICTライフサイクルにもとづいて環境を的確に維持していくためには、物理的な構成の把握や変更の履歴が重要となります。そのため、クラウド・システムには構成管理システムが必須となっています。

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ここまででご紹介してきたように、クラウド・システムでは仮想化によって実システムの複雑さを隠蔽して、利用者は「サービス」という形でICT資源を利用していきます。利用し終わった資源は返却、解放され、また次の申請時に使われていくことになります。サービス・マネージメントの考え方を導入することで、新しい物理リソースの追加やさらに使いやすいサービスのカタログへの追加などが円滑に回され、稼働しながら使いやすく改良することが可能になるのです。