52
3-1 運輸部門の現況の CO 2 排出量の算出方法 3-2 民生家庭部門の現況の CO 2 排出量の算出方法 3-3 民生業務部門の現況の CO 2 排出量の算出方法 3-4 みどり分野の現況の CO 2 吸収量の算出方法 3-5 将来 CO 2 排出量の算出〈現況趨勢(BAU)〉 3-6 将来 CO 2 排出量の算出〈CO 2 削減対策実施後〉 3-7 道内都市におけるシミュレーション 3-8 その他の CO 2 削減施策の効果 3 章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

3 章 CO 排出量の算出方法と削減効果 - Hokkaido...第3章 CO2排出量の算出方法と削減効果 37 本ガイドラインで示すCO2排出量等の算出方法(一覧)

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Page 1: 3 章 CO 排出量の算出方法と削減効果 - Hokkaido...第3章 CO2排出量の算出方法と削減効果 37 本ガイドラインで示すCO2排出量等の算出方法(一覧)

3-1 運輸部門の現況の CO2 排出量の算出方法

3-2 民生家庭部門の現況の CO2 排出量の算出方法

3-3 民生業務部門の現況の CO2 排出量の算出方法

3-4 みどり分野の現況の CO2 吸収量の算出方法

3-5 将来 CO2 排出量の算出〈現況趨勢(BAU)〉

3-6 将来 CO2 排出量の算出〈CO2 削減対策実施後〉

3-7 道内都市におけるシミュレーション

3-8 その他の CO2 削減施策の効果

第3 章 CO2排出量の算出方法と削減効果

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

36

第3 章 CO2排出量の算出方法と削減効果

本ガイドラインで対象とする CO2排出量

CO2 の排出源は多数ありますが、第1章で示したとおり都市活動に起因する「運輸部門」、「民

生家庭部門」、「民生業務部門」の合計は道内で排出される総 CO2 排出量の 60.7%を占めていま

す。よって、本ガイドラインでは、これら3部門に着目し CO2 排出量の算出方法を示すこととし

ます。

運輸部門 人や物の移動に伴い(主に自動車から)発生する CO2排出量

民生家庭部門 一般家庭での活動(家事、暖房等)に伴い発生する CO2 排出量

民生業務部門 企業等の事業活動に伴い発生する CO2 排出量 本ガイドラインで想定するケース

本ガイドラインでは、現況、将来①(現況趨勢)、将来②(対策実施後)の3ケースにおける

CO2 排出量の算出方法を示します。3つのケースを比較することで、排出量の増減、対策の効果

を把握することができます。

ケース 年次 説明

現況 2005 年 現時点の CO2 排出量

将来①

〈現況趨勢(BAU※1)〉 2030 年

CO2 削減対策を実施しない場合の CO2 排出量

(将来人口や将来交通量の自然増減のみ反映したもの)

将来②

〈CO2 削減対策実施後〉 2030 年

交通・都市構造分野の CO2 削減対策を実施した場合の CO2 排出量

(将来①に加え、対策の効果を反映したもの)

現況

将来①

第 3 章では都市からの CO2 排出量の算出方法について示します。また、第 2 章で整理したいくつかの低炭素

化の取組を行った場合の CO2 削減効果について、道内の都市を事例に行ったシミュレーションとして示します。 ※本ガイドラインで示すシミュレーション(CO2 排出量等)は、ある仮定、条件下でのものであり、ここで示す数値が必ずしも正確とは限

りません。排出量や削減効果に関するおおよその傾向、ボリュームを把握することで適切な対策の検討に活用することが重要となります。

表 3-1 本ガイドラインで対象とする CO2 排出量

表 3-2 本ガイドラインで想定する3つのケース

(※1) ある課題について特段の対策活動をしない場合の将来予測(Business As Usual)

CO2 排出量〈運輸部門〉2005 年

現況趨勢(BAU)

2030 年

将来②

対策実施後

2030 年

削減対策を実施しない場合 削減対策を実施した場合

CO2 削減対策(交通・都市構造分野の取組) 【1】人口集約による CO2 削減

【2】公共交通機関への転換による CO2 削減

人口や交通量の自然増減による影響

図 3-1 本ガイドラインで想定する3つのケース

CO2 排出量〈民生家庭部門〉 CO2 排出量〈民生業務部門〉

CO2 排出量〈運輸部門〉

CO2 排出量〈民生家庭部門〉

CO2 排出量〈運輸部門〉

CO2 排出量〈民生家庭部門〉

CO2 吸収量〈みどり分野〉

※本ガイドラインでは、民生業務部門の将来 CO2 排出量は算出していない

削減対策の効果

(CO2削減量)

将来①の

CO2排出量

将来②の

CO2排出量―

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

37

本ガイドラインで示す CO2排出量等の算出方法(一覧)

本ガイドラインで示す CO2 排出量等の算出方法は次のとおりです。

CO2 排出量の推計方法は、本ガイドライン以外にも「地球温暖化対策地方公共団体実行計画(区域施策編)策定マニュアル」(環

境省)等で示されており、按分法や積み上げ法など計算が簡易なものから複雑なものまで様々あります。本ガイドラインに示し

た推計方法は、将来推計に人口集約等の対策の効果を反映させるため、積み上げによる推計方法としており、使用する計算式の

変数に政策・地域性を反映可能なものとしています。推計方法を選択する際には、これらを踏まえ、活用する目的に応じて選択

することが重要となります。

現 況

運輸部門 【3-1参照】

民生家庭部門 【3-2参照】

民生業務部門 【3-3参照】

みどり分野〈CO2吸収量〉 【3-4参照】

将 来① -現況趨勢(BAU)- 【3-5参照】

運輸部門

民生家庭部門

将 来② -対策実施後- 【3-6参照】

交通・都市構造分野の取組

を実施した場合の CO2 排出量

CO2排出量 [kg-CO2/年]

交通量 [台/日]

CO2排出原単位 [kg-CO2/(台・km)]

=Σ ×移動距離

[km] × ×365

CO2排出量 [kg-CO2/年]

住宅床面積[㎡]

CO2排出原単位 [kg-CO2/(㎡・年)]

=Σ ×(1-空家率) ×

将来 CO2排出量(BAU) [t-CO2/年]

現況 CO2排出量 [t-CO2/年]

将来交通量[台] = ×

現在交通量[台]

CO2排出量[kg-CO2/年] 建物床面積[㎡] CO2排出原単位[kg-CO2/(㎡・年)]=Σ ×

CO2吸収量 [t-CO2/年]

都市公園の高木本数 [本]

CO2吸収原単位(吸収係数) [t-CO2/(本・年)]

= ×

将来 CO2排出量(BAU) [t-CO2/年]

現況 CO2排出量 [t-CO2/年]

将来人口[人]

= ×現在人口[人]

【1】人口集約後の CO2排出量

中心部及び公共交通沿道への

人口集約後の CO2 排出量

将来 CO2排出量(対策実施後)

運輸部門 [t-CO2/年]

将来 CO2排出量(対策実施後)

民生家庭部門 [t-CO2/年]

【2】公共交通転換による CO2削減量

自動車から公共交通機関への

転換による CO2 削減量

運輸部門の CO2排出量 [t-CO2/年]

運輸部門の CO2削減量 [t-CO2/年]

民生家庭部門の CO2排出量 [t-CO2/年]

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

38

3-1 運輸部門の現況の CO2排出量の算出方法 (1)算出方法の概要

運輸部門の総 CO2 排出量は、「内々交通」と「内外交通」からなります。

・「内々交通」:出発点・到着点ともに一つの都市内にある移動

・「内外交通」:出発点または到着点のどちらかが一つの都市外となる移動

本ガイドラインでは、都市の運輸部門の CO2 排出量は、自動車に起因するものが大半であるこ

とから、自動車からの排出量に着目して算出することとしています(鉄道などからの排出量は対

象としていません)。

また、本ガイドラインでは、都市構造や都市内の動きに着目し低炭素まちづくりを検討するこ

ととしていることから、運輸部門の CO2 排出量については、内々交通排出量を使用して対策の効

果を検証することとし、内々交通の排出量の算出方法について説明しています。

よって、総 CO2 排出量及び内外交通排出量については、参考として、算出に使用する資料等に

ついて紹介することにとどめています。

(2)内々交通における CO2排出量の算出方法

自動車に起因する運輸部門の CO2 排出量(内々交通)は次の式で算出されます。

土地利用状況や地域性などから、3ゾーンに分割された都市の場合、内々交通による都市の CO2 排出量

の計算の考え方は、以下のようになります。

CO2排出量

[kg-CO2/年]

交通量

[台/日]

CO2排出原単位

[kg-CO2/(台・km)] =Σ ×

移動距離

[km] ×

複数のゾーンに分割された都市

において、各ゾーンを往来する自

動車の台数

北海道共通の値

各ゾーン間の平均移動距離 1台の自動車の1km の走行で発

生する車種別のCO2排出量

都市別の値 都市別の値

×365

Ⅰ ゾーン

Ⅲゾーン

Ⅱ ゾーン

普通車 [Ⅰ→Ⅱへ移動の普通車 CO2] = [Ⅰ→Ⅱへの普通車交通量] × [Ⅰ~Ⅱへの移動距離] × [普通車原単位][Ⅰ→Ⅲ 〃 ] = [Ⅰ→Ⅲ 〃 ] × [Ⅰ~Ⅲ 〃 ] × [ 〃 ] [Ⅱ→Ⅰ 〃 ] = [Ⅱ→Ⅰ 〃 ] × [Ⅱ~Ⅰ 〃 ] × [ 〃 ] [Ⅱ→Ⅲ 〃 ] = [Ⅱ→Ⅲ 〃 ] × [Ⅱ~Ⅲ 〃 ] × [ 〃 ] [Ⅲ→Ⅰ 〃 ] = [Ⅲ→Ⅰ 〃 ] × [Ⅲ~Ⅰ 〃 ] × [ 〃 ] [Ⅲ→Ⅱ 〃 ] = [Ⅲ→Ⅱ 〃 ] × [Ⅲ~Ⅱ 〃 ] × [ 〃 ] [Ⅰゾーン内を移動の普通車 CO2] = [Ⅰゾーン内の普通車交通量] × [Ⅰゾーン内 〃 ] × [ 〃 ] [Ⅱゾーン内 〃 ] = [Ⅱゾーン内 〃 ] × [Ⅱゾーン内 〃 ] × [ 〃 ] [Ⅲゾーン内 〃 ] = [Ⅲゾーン内 〃 ] × [Ⅲゾーン内 〃 ] × [ 〃 ] 大型車 [Ⅰ→Ⅱへ移動の大型車 CO2] = [Ⅰ→Ⅱへの大型車交通量] × [Ⅰ~Ⅱへの移動距離] × [大型車原単位] ・ ・ ・

【合計】

内々交通による

CO2 排出量

〈考え方〉

運輸部門の総 CO2 排出量

※(4)で説明

内々交通排出量

(一つの都市内のみの移動)

※(2)で説明

内外交通排出量

(都市内~都市外の移動)

※(4)で説明

= +

図 3-2 運輸部門(内々交通)の CO2 排出量の求め方

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

39

「交通量」の求め方について

交通量については、次のような交通量調査で作成された起終点調査(OD調査)の結果を用い

ることができます。

いずれも、「現況交通量」と「将来交通量」が示されています。

調査の種類 調査実施

箇所

調査の

時期

ゾーンの

大きさ※5 CO2 排出量の分析への適用について

パーソントリップ調査※1

のOD交通量※3

比較的

大きな

都市圏※4

概ね

10 年

間隔

細かい

調査結果(OD表)をそのまま使用する

ことができるが、一部の都市圏しかデー

タが無い。

道路交通センサス※2

のOD交通量 全国

5年

ごと

粗い

全市町村のデータがあるが、ゾーン分割

が粗いため、都市内の交通の把握が難し

い場合がある。

そのため、人口分布等でゾーン内の交通

量を按分して都市内の仮想交通量を求め

るような作業が必要になる場合がある。

(※1) パーソントリップ調査:都市圏内に居住する人を対象とした、ある1日の交通の実態調査。

(※2) 道路交通センサス(全国道路・街路交通情勢調査):国により5年ごとに実施される全国の道路交通量の調査。

(※3) OD交通量:分割された各ゾーン間を移動する 起点(Origin)~終点(Destination)の交通量

(※4) パーソントリップ調査の北海道内での近年の調査実績

(※5) ゾーンの大きさは、パーソントリップ調査の場合、地域の交通特性ごとに都市を細かく分割したゾーンに

なっているが、道路交通センサスの場合、1市町村で1つのゾーンとなっている場合もある。

本ガイドラインでは、次の2つの交通量の求め方について説明します。

交通量の求め方① パーソントリップ調査等の詳細なデータを使用できる場合

交通量の求め方② 詳細な交通量データが無い場合(主に小都市で適用)

※既往の調査結果(道路交通センサス等)では、ゾーンが大きすぎて都市内の移動を

捉えられないため、大ゾーンを小ゾーンに分割し小ゾーン間の仮想交通量を求める手法

平成11年 函館圏、釧路圏、室蘭圏

平成14年 旭川都市圏

平成17年 帯広都市圏

平成18年 道央都市圏

平成21年 苫小牧都市圏

平成22年 釧路都市圏

〈交通量の把握に使用可能な調査の概要と適用〉

図 3-3 交通量の把握に使用できる調査

〈ある都市でのゾーン分割の例〉

○パーソントリップ調査のゾーン分割が細かく、都市内の

交通流動を調べることに適していることがわかる。

○都市内の詳細な交通流動が把握できない場合、コンパク

トシティ等の都市施策、公共交通への転換等の交通施策

の効果の把握も困難となる。

パーソントリップ調査のゾーン分割

道路交通センサスのゾーン分割

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

40

交通量の求め方① (パーソントリップ調査等の詳細なデータを使用できる場合)

交通量調査の結果は、次に示すような車種別のOD表という形で提供されます。

OD表を読み取って、任意のゾーン間を移動する車種別交通量を求めることができ、貨物車な

ども、車種別OD表を用いて、同様に求めることができます。

(車種別の OD 表)

ゾーン1 ゾーン2 の乗用車交通量

139 台

ゾーン1 → ゾーン1 の乗用車交通量 75台 (ゾーン1内のみ移動)

ゾーン1 → ゾーン2 の乗用車交通量 139台

ゾーン1 → ゾーン3 の乗用車交通量 79台 ・ ・ ・

0 1km

発\着 1 2 3 4 51 75 139 79 109 162 155 605 194 577 303 35 224 336 202 164 173 553 222 514 645 18 29 16 65 346 3 24 29 18 17 1 2 1 2 1

OD表(乗用車)

普通貨物

自動車OD

発\着 1 2 3 4 51 0 0 0 0 02 0 0 0 0 03 0 0 0 0 04 0 0 0 15 15 0 0 0 1 26 0 0 0 0 1

発\着 1 2 3 4 51 0 2 1 2 02 2 9 4 9 03 1 4 2 5 04 2 9 5 9 05 0 0 0 0 06 0 50 0 0 0

小型貨物

自動車OD

図 3-4 交通量の求め方①

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

41

パーソントリップ調査(PT 調査)は、昭和 42 年に広島都市圏で大規模に実施されて以来、既に 30

年を超える実績を日本各地で積み重ねています。

一定の調査対象地域内において「人の動き」(パーソントリップ)を調べる PT 調査は、交通に関する

実態調査としては も基本的な調査の一つとなっています。PT 調査を行うことによって、交通行動の起

点(出発地:Origin)、終点(到着地:Destination)、目的、利用手段、行動時間帯など 1 日の詳細

な交通データ(トリップデータ)を得ることができます。

「トリップ(Trip)」は、ある目的(例えば、出勤や買物など)を持って起点から終点へ移動する際の、

一方向の移動を表す概念であり、同時にその移動を定量的に表現する際の単位となります。このトリップ

は、リンクトトリップとアンリンクトトリップの 2 つに分類できます。

下図のような「人の動き」について、自宅から勤務先までの移動を「出勤」という一つの「目的」を達

成するためのトリップと捉える場合、この一連の移動をリンクトトリップ(目的トリップ)と言います。

一方、徒歩・バス・鉄道・徒歩による各トリップは、一つの「交通手段」による移動を単位としており、

これをアンリンクトトリップ(手段トリップ)と言います。

つまり、下図の場合は、1 リンクトトリップ(1 つの目的)が 4 アンリンクトトリップ(4 つの手段)

で構成されていることになります。

従来から行われている自動車交通などの一つの交通手段にターゲットを絞った調査に比べ、パーソント

リップ調査ではリンクトトリップについても把握できる点に特徴があります。

PT 調査を行うことによって、地域全体の交通量を数量的に扱うだけでなく、乗り換えを含めた交通手

段の分担等の検討が可能になります。

これにより、都市圏における複雑で多様な交通実態を把握・予測し、円滑な都市機能を確保するための

検討を行うことができます。

そして、その後の総合都市交通体系調査を踏まえて、総合的な将来交通計画・マスタープランを策定す

ることや都市交通における個別課題への対応、特定施設の計画に関する検討などに役立てることができま

す。

―〈参考〉パーソントリップ調査とは―(国土交通省ホームページより)

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

42

交通量の求め方② (細かい交通量データが無い場合)

■概要

交通量調査のデータは、都市によっては道路交通センサスしか入手できない場合があります。

しかしながら、道路交通センサスは集計単位のゾーンが大きく、内々交通量を求めるのが困難な

場合があります。

そこで、本ガイドラインでは、道路交通センサスの大ゾーンを小ゾーンに分割し、その小ゾー

ン間の交通量を仮想的に算出することで、都市内の交通流動の詳細を把握する手法を紹介します。

なお、この手法は、「平成 17 年国勢調査小地域の人口集計と CO2 排出量の算出」(平成 23 年

度/北海道開発局調査)にて実施したものです。

ここでは、都市内を移動する交通量は、住居と目的地との移動が大半を占めるものと仮定して、

昼間人口と夜間人口の比率に注目して、交通量の按分を行って、都市内の小ゾーン間の“仮想交

通量”を算出することとしています。

ここで使用する昼間人口や夜間人口などのデータは、国勢調査や経済センサス(旧事業所・企

業統計調査)などで調査されており、総務省統計局(政府統計の総合窓口(e-Stat))のホームページ

からダウンロードできます。

道路交通センサスでは、山地、農地、市街地

も1ゾーンにまとめてしまっている都市

道路交通センサスでは、

このゾーンの内部のみを移動する交通量が

示されている。(ゾーン内の内訳は不明)

●●台

道路交通センサスのゾーン

この都市を、小ゾーン(国勢調査の小地域エ

リア)に分割する

ここでは、分割した小ゾーン間を移動する交

通量を仮想的に求める。

??台

??台

??台 ??台

図 3-5 交通量の求め方②

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

43

■計算例

〈前提条件〉

・道路交通センサスでのBゾーン※は1つ。このゾーンの内々交通量:1,000 台。

・国勢調査の小地域のエリアは4つ。

・エリア別夜間人口、昼間人口は以下のとおり。

○小地域エリア別人口

エリア1 エリア2 エリア3 エリア 4 合計

夜間人口 150 人 300 人 450 人 600 人 1,500 人

昼間人口 300 人 500 人 100 人 100 人 1,000 人

(※) 道路交通センサスのBゾーン :道路交通センサスOD調査の集計単位の一つで、Bゾーンとは、

概ね市町村を数個に分割した大きさ(北海道内では、1市町村にBゾーン1つの場合もある)。

〈計算の流れ〉

(手順1)

・出発地(住居が主)の傾向を表す「夜間人口」

・到着地(職場や学校が主)の傾向を表す「昼間人口」

それぞれについて、小地域ごとの人口割合を算出する。

○小地域エリア別人口割合

エリア1 エリア2 エリア3 エリア 4 合計

夜間人口 10% 20% 30% 40% 100%

昼間人口 30% 50% 10% 10% 100%

(手順2)

・この人口割合を用いて、道路交通センサスのゾーン内交通量を按分

・出発地(Origin)は夜間人口割合を、到着地(Destination)は昼間人口割合を用い

てそれぞれ按分する。

○小地域エリア別 OD交通量

到着

出発

道路交通センサスの1ゾーン

合計

発生

集中

交通量

エリア1 エリア2 エリア3 エリア 4

30% 50% 10% 10%

道路交通

センサス

1ゾーン

エリア1 10% 30 50 10 10 100 400

エリア2 20% 60 100 20 20 200 700

エリア3 30% 90 150 30 30 300 400

エリア 4 40% 120 200 40 40 400 500

合計 300 500 100 100 1000 2000

交通量

エリア1エリア1 =道路交通センサスの

ゾーン内々交通量 ×エリア1の

出発地割合 × エリア1の

到着地割合

= 1000 (台/日) × 10% × 30%

= 30 (台/日)

夜間人口

の割合

昼間人口

の割合

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

44

「移動距離(ゾーン間距離)」の求め方 移動距離の求め方① (既往の調査結果のゾーン間距離表を使用できる場合)

パーソントリップ調査等では、各ゾーン間の交通量とともに各ゾーン間の距離も算出されてい

る場合があり、そのまま使用することができます。

移動距離の求め方② (各ゾーン間距離を新たに算出する場合)

ゾーン間距離が算出されていない場合には、次の方法で簡易的に算出することができます(な

お、各ゾーン間距離の求め方は、ここに記載している手法のほかにも様々な手法があります)。

■異なるゾーン間の距離の求め方

・各ゾーンの重心を求め、重心間の距離を求めます。

・重心位置や距離の算出には、地理情報システム

(GIS)等の活用が便利です。

・緯度、経度から距離を算出することもできます

(計算式等は国土地理院 測地部のホームページなど

で紹介されています)。

■同じゾーン内の距離の求め方

・同じゾーン内の距離は、ゾーン面積と同じ円の半

径として求めます。

発\着 1 2 3 4 51 0.227 0.516 0.551 0.893 2.446 2.2 0.516 0.321 0.691 0.57 2.117 1.3 0.551 0.691 0.35 1.246 2.807 2.4 0.893 0.57 1.246 0.453 1.57 1.5 2.446 2.117 2.807 1.57 0.335 0.6 2.176 1.748 2.426 1.293 0.677 0.7 1.428 1.143 1.82 0.575 1.02 0.

ゾーン間距離表

ゾーン2 ~ ゾーン3 の平均距離

0.691km

ゾーン

同じ面積

半径

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

45

■距離の補正について

・これは、重心間の直線距離と実際の道路網が大きく乖離し

ている場合、実際の移動距離との誤差が大きくなることか

ら、必要に応じて、重心間の直線距離を補正するものです。

・全ゾーン間について道路距離を算出できれば良いのですが、

大抵の場合はゾーン間の経路数が膨大で算出が困難な場合

が多いと思われます。

・そこで、ここでは、代表的なゾーン間距離のサンプル※を測定し、これを基に、

ゾーン間の移動距離の回帰式 (道路距離) = (補正率) × (直線距離) を作成する

方法を示します。

【手順1】サンプルとなるゾーン間の道路を測定します。

【手順2】サンプルのゾーン間の道路距離と

直線距離から、回帰式を求めます。

【手順3】回帰式から、他のゾーン間直線距

離を道路距離に変換します。

y(道路距離) = 1.366 χ(直線距離)

・この都市の例では補正率は 1.366 となります。

直線距離 道路距離

ゾーン1 ~ ゾーン2 L12 R12

ゾーン1 ~ ゾーン3 L13 R13

… … … …

… … … …

道路距離

直線 距離

直線距離 ≠ 道路距離

L12

R12 L13

R13

ゾーン 1

ゾーン 2

ゾーン 3

※必要なサンプル数について

ある都市の場合は、ゾーン間距離のサンプ

ルを20個程度抽出できれば、十分な精度

を確保することができました。

1.22

1.24

1.26

1.28

1.3

1.32

1.34

1.36

1.38

10 15 20 25 30

回帰

直線

の傾

データ数

ゾーン数と回帰直線の傾き補正率とサンプル数の関係

補正率

サンプル数

サンプルが20を超

えても、補正率は、

あまり変わらない。

これ以上の

サンプルは、

不要と判断

y = 1.366xR² = 0.8962

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 2 4 6

重心

道路

距離

(km

重心直線距離(km)

道路距離と直線距離 ゾーン数=20

交通ゾーン

線形 (交通ゾーン)

◆ 測定結果

━ 回帰直線

(直線距離)(道路距離) xy 366.1

〈ある都市における回帰直線〉

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

46

「CO2排出原単位」の求め方

運輸部門の CO2 排出原単位を次の式から求めます。これは、1台の自動車が1km の走行で排

出する CO2 排出量のことです。

(※1) 炭素と二酸化炭素の質量比(二酸化炭素の分子量=44、炭素の分子量=12)

本ガイドラインでの CO2 排出原単位の算出では、

・「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」(環境省)

・「自動車輸送統計調査・自動車燃料消費量調査」(国土交通省)※

の既往の資料を使用しています。 (※) 自動車の走行距離、燃料消費量が地方運輸局別に掲載されています。

平成21年度までは、自動車輸送統計調査の中に燃料消費量の調査結果が掲載されています。

平成22年度からは、自動車燃料消費量調査に移管されています。

■CO2排出係数

単位発熱量などから、燃料別に次のとおり求めます。

〈CO2 排出係数〉

ガソリン 軽油 LPG

単位発熱量※1 [GJ/kL] 34.6 37.7 29.5※3

炭素排出係数※2 [t-C/GJ] 0.0183 0.0187 0.0161

(二酸化炭素/炭素 質量比) 44/12 44/12 44/12

CO2 排出係数 [t-CO2/kL] 2.32 2.58 1.59

(※1) 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度、別表1 燃料種別の発熱量

(※2) 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度、別表2 燃料の使用に関する排出係数

(※3) LPGは、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度によると、50.8[GJ/t]との記載であり、

単位が異なるため、LPGの液体密度 0.531kg/L(プロパン含有率 70%、ブタン 30%、15℃、

日本LPガス協会 資料による) より、発熱量を kL あたりに換算したものである。

車種別 CO2

排出原単位 [t-CO2/km]

車種別燃料消費量 × 単位発熱量 × 炭素排出係数 × (44/12)※1

[kL] [GJ/kL] [t-C/GJ]

車種別走行距離 (km)

車種別燃料消費量 × CO2排出係数

[kL] [t-CO2/kL]

車種別走行距離

[km]

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

47

■車種別燃料消費量

自動車輸送統計調査の北海道運輸局管内の値を使用します。

(例)

■車種別走行距離

自動車輸送統計調査の北海道運輸局管内の値を使用します。

(例)

■CO2排出原単位の算出

CO2 排出係数、燃料消費量、走行距離から CO2 排出原単位を算出します。

車種 走行距離 使用

燃料

CO2

排出係数

燃料

消費量

CO2

総排出量

CO2排出

原単位

(車両種別ごと)

CO2排出

原単位

(車種ごと)

車両種別

[千 km] [t-CO2/kL] [kL] [t-CO2] [kg-CO2/km][kg-CO2/km]

乗用車

(バス含)

自家用乗用車 18,427,905ガソリン 2.32 1,797,195 4,172,476

0.2572 軽油 2.58 219,632 567,741

営業用乗用車 900,952

ガソリン 2.32 4,619 10,724

0.2676 軽油 2.58 3,221 8,326

LPG 1.59 139,411 222,000

乗合バス 192,129軽油 2.58 55,524 143,528 0.7470

貸切バス 108,574軽油 2.58 31,699 81,941 0.7547

自家用軽自動車 6,368,828ガソリン 2.32 416,716 967,473 0.1519

小計 25,998,388 ― ― ― 6,174,207 ― 0.2375

貨物車

小型貨物車

自家用小型貨物 3,008,904ガソリン 2.32 84,785 196,842

0.2579

軽油 2.58 224,014 579,068

営業用小型貨物 62,933ガソリン 2.32 720 1,672

0.2763 軽油 2.58 6,080 15,717

自家用軽自動車 1,887,803ガソリン 2.32 182,698 424,163 0.2247

営業用軽自動車 267,248ガソリン 2.32 25,068 58,199 0.2178

小計 5,226,888 ― ― ― 1,275,660 ― 0.2441

普通貨物車

自家用普通貨物 1,770,002

ガソリン 2.32 8,105 18,8170.4565

軽油 2.58 305,299 789,187

営業用普通貨物 2,808,868

ガソリン 2.32 87 2020.6642

軽油 2.58 721,617 1,865,353

小計 4,578,870 ― ― ― 2,673,559 ― 0.5839

小計(小型+普通) 9,805,758 ― ― ― 3,949,219 ― 0.4027

大雑把な車種

ごとの

交通量データ

しか無い場合

の原単位

北 海 道 30 777 294 192 129 108 574 900 952 18 427 905 4 778 906 6 368 828

表 3-3 運輸部門の CO2 排出原単位の算出 詳細な車両種別ごとの交通量データがある場合の原単位

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

48

(3)CO2排出量の算出例

これまでに求めた、交通量、移動距離、CO2 排出原単位のデータから、CO2 排出量を算出しま

す。

※CO2 排出量算定式(再掲)

CO2排出量[kg-CO2]= Σ { 交通量[台] × 移動距離[km] × CO2排出原単位[kg-CO2/台・km] }

= Σ { 走行台キロ[台・km] × CO2排出原単位 [kg-CO2/台・km] }

(計算例)

車種

排出原単位

走行台キロ

(1日)

CO2 排出量

年間(365 日)

CO2 排出量

[kg-CO2/km] [台・km/日] [kg-CO2/日] [t-CO2/年]

乗用車 0.2375 1,769,743 420,314 153,415

貨物車 0.4027 254,599 102,527 37,422

合計 --- 2,024,342 524,257 190,837

よって、この都市の場合、

運輸部門のうち、内々交通による CO2 排出量は、年間 約191千トン と計算される。

【貨物車】

【乗用車】

×

1,769,743

(台・km/日)

ゾーン1 ゾーン2 ゾーン3 ゾーン4 ・・・ゾーン1 0.495 0.852 0.763 1.192 ・・・ゾーン2 0.852 0.510 1.177 0.796 ・・・ゾーン3 0.763 1.177 0.428 0.935 ・・・ゾーン4 1.192 0.796 0.935 0.442 ・・・

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

移動距離 ゾーン1 ゾーン2 ゾーン3 ゾーン4 ・・・

ゾーン1 167.0 287.2 292.9 345.8 ・・・ゾーン2 208.8 137.3 201.3 208.5 ・・・ゾーン3 334.9 282.6 152.5 360.0 ・・・ゾーン4 317.2 230.0 345.1 138.7 ・・・

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

交通量(乗用車)

= ゾーン1 ゾーン2 ゾーン3 ゾーン4 ・・・

ゾーン1 82.7 244.7 223.4 412.4 ・・・ゾーン2 177.9 70.0 237.0 166.0 ・・・ゾーン3 255.4 332.7 65.4 336.7 ・・・ゾーン4 378.3 183.1 322.7 61.3 ・・・

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

走行台キロ(乗用車) 合計

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

49

(4)運輸部門の総 CO2排出量、内外交通 CO2排出量の求め方 【参考】

本ガイドラインにおいては、運輸部門の CO2 排出量については、これまで説明してきた内々交

通排出量を使用して対策の効果を検証することとしていますが、参考として、総 CO2 排出量、内

外交通排出量の算出にあたり参考となる資料を掲載します。

■総 CO2排出量

以下の既往の資料の値を使用することができます。

○「地球温暖化対策地方公共団体実行計画(区域施策編)」

「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき、地方公共団体は「地方公共団体実行計

画」を策定するものとされています。策定済市町村の場合は、ここに掲載の運輸部門の CO2

排出量の数値を使用できます。また、算出方法などは環境省のホームページで説明されて

います。

○「環境自治体白書 2010 年版(環境自治体会議 編)」

資料編に、全国自治体の CO2 排出量推計が掲載されています。

■内外交通 CO2排出量

これまでに求めた、内々交通排出量、総 CO2 排出量から、以下の式により求めることができま

す。

内外交通排出量 = 総 CO2排出量 - 内々交通 CO2排出量

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

50

3-2 民生家庭部門の現況の CO2排出量の算出方法

(1)算出方法の概要

民生家庭部門の現況の CO2 排出量は、次の式から算出されます。

住宅床面積

都市計画基礎調査(※)から求めます。都市計画基礎調査のデータがない場合は、固定資産課税

台帳等から求めることが可能です。CO2 排出原単位は建設年代別の値としても示しているため、

建設年代別の床面積があるとより詳細な CO2 排出量が算出可能です。

空家率

都市計画基礎調査のデータは空家を含めたものなので、住宅・土地統計調査の市町村別居住住

宅数・住宅総数から空家率を求め補正します(国のガイドラインでは空家は考慮していません)。

CO2排出原単位の求め方

CO2 排出原単位(住宅1㎡あたりの年間の CO2 排出量)は、住宅のエネルギー消費量を炭素

換算することにより、次の式から求められます。

「住宅単位面積当たりのエネルギー消費量」とは、住宅における灯油、LP ガス、都市ガス、電

気の各消費量ですが、本ガイドラインでは(地独)北方建築総合研究所による北海道内の調査結

果を使用しますので、得られる原単位は北海道共通の値として使用できます。都市別の各消費量

のデータがある場合は都市別の原単位とすることができます。

灯油

[L]

LP ガス

[m3]

都市ガス

[m3]

電気(北海道電力)

[kWh]

(※1) エネルギー換算係数[MJ/単位] 36.7 102.5 46.0 ―

(※2) 炭素換算値[kg-C/MJ](電気は[kg-C/kWh]) 0.0185 0.0161 0.0136 0.588

住宅単位面積当たり

のエネルギー消費量

エネルギー換算係数※1

[MJ/単位]

炭素換算値※2

[kg-C/MJ] ×(44/12)※3

CO2 排出原単位

[kg-CO2/㎡・年] = × ×

(※1)(※2)

出典:灯油、LP ガス、都市ガス 「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」〈H18 環境省・経済産業省〉

電気 「平成 22 年度の電気事業者ごとの実排出係数・調整後排出係数等の公表について」〈H24 環境省〉

(※3) 炭素と二酸化炭素の質量比(二酸化炭素の分子量=44、炭素の分子量=12)

CO2排出量

[kg-CO2/年]

住宅床面積

[㎡]

CO2排出原単位

[kg-CO2/(㎡・年)] =Σ ×(1-空家率)×

都市計画基礎調査などから

北海道共通の値

住宅・土地統計調査から

※国のガイドラインでは考慮

していない

住宅の㎡当たりの年間 CO2 排出量 ※北海道における住宅のエネルギー消費量

の調査結果を基に算出

(建設年代別に算出) 都市別の値 都市別の値

図 3-6 民生家庭部門の CO2 排出量の求め方

※都市計画法第 6 条に基づく調査。都市計画区域の建築物の用途、床面積等を調査するもの。

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

51

本ガイドラインで使用する CO2 排出原単位を次のとおり算出しました(図 3-7)。

原単位は、住宅の㎡当たりの排出量と、それに平均の延床面積を乗じた一世帯当たりの排出量

の2種類を記載していますので、適宜使い分けが可能です。一世帯当たりの CO2 排出量は、戸建

住宅で 7.0(t)、共同住宅で 4.66(t)となり、冬期の暖房、給湯に多くの燃料を消費する北海

道においては、国のガイドラインで示している全国値と比較して大きい値となっています。

建設年代

CO2排出原単位 [kg-CO2/(㎡・年)]

戸建 住宅

~1970

54.78

55.7

1971~80 53.5

1981~90 53.2

1991~2000 55.5

2001~ 52.4 共同 住宅

~1970

61.18

63.0※1

1971~80 60.5※1

1981~90 60.2※1

1991~2000 62.9※1

2001~ 59.3※1

(2)CO2排出量の算出例

ある都市における民生家庭部門の現況の CO2 排出量を求めると次の表のようになります。都市

全体で、年間 547.9 千 t の CO2 を排出していることになります。

分類 建築年 延床面積

[㎡]

空家率

[%]

延床面積合計

×(1-空家率)

[㎡]

CO2 排出原単位

[kg-CO2/(㎡・年)]

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

戸建住宅

及び

店舗併用住宅

~1970 1,365,117

9.487

1,235,604 55.7 68.8

1971~80 2,281,724 2,065,249 53.5 110.4

1981~90 1,805,619 1,634,314 53.2 86.9

1991~2000 1,909,148 1,728,021 55.5 96.0

2001~ 1,069,377 967,922 52.4 50.7

小計 412.8

共同住宅

~1970 272,157

34.776

177,511 63.0 11.2

1971~80 686,919 448,035 60.5 27.1

1981~90 952,240 621,088 60.2 37.4

1991~2000 793,936 517,836 62.9 32.6

2001~ 695,302 453,503 59.3 26.9

小計 135.1

合計 547.9

灯油 消費量

[L/㎡]

LP ガス 消費量

[m3/㎡]

都市ガス 消費量

[m3/㎡]

電気 消費量

[kWh/㎡]

13.00 0.3250 0.6793 33.66

12.68 0.2373 0.1886 34.05

12.28 0.2115 0.3312 34.99

10.02 0.0954 0.3523 49.65

6.86 0.0946 0.0315 58.90

9.15 0.5262 2.9774 48.28

排出原単位 [kg-CO2/(㎡・年)]

延床面積※2

[㎡/世帯]CO2 排出量

[t-CO2/世帯・年]

戸建住宅 54.78 127.84 7.00

共同住宅 61.18 76.23 4.66

〈住宅単位面積当たりのエネルギー消費量(実測値)〉

北方建築総合研究所調べ「新しい北方型住宅に関する研究」(H22)

図3-7 北海道における民生家庭部門の CO2 排出原単位

表3-4 民生家庭部門の現況 CO2 排出量の算出例

民生家庭部門の CO2 排出量

[参考]全国値(国のガイドラインによる)

戸建住宅:4.55 [t-CO2/世帯・年]

共同住宅:1.76 [t-CO2/世帯・年]

〈CO2排出原単位〉㎡当たり排出量 〈エネルギー消費量〉

炭素換算

北海道共通の値

〈CO2排出原単位〉一世帯当たり排出量

(※2) H20 住宅・土地統計調査(北海道における持家の値)

(※1) 戸建住宅の年代別推移と同レベルで推移したと仮定

北海道共通の値

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

52

3-3 民生業務部門の現況の CO2排出量の算出方法

(1)算出方法の概要

民生業務部門の現況の CO2 排出量は、次の式から算出されます。

民生家庭部門では住宅の空家率を考慮しましたが、非住宅には空家率のデータがないので考慮

しないこととします。

建物床面積

都市計画基礎調査から求めます。都市計画基礎調査のデータがない場合は、固定資産課税台帳

等から求めることが可能です。 CO2排出量原単位の求め方

(社)日本サスティナブル建築協会が非住宅建築物のエネルギー消費量の全国的な調査を実施

しており、「非住宅建築物の環境関連データベース」(DECC)として公表しています。その北海

道内の値を用いて建物用途別の CO2 排出原単位を求めます。ただし、DECC の建物用途分類と

都市計画基礎調査の建物用途分類が異なるため、近い用途の値を割り当てます。また、DECC の

値がない用途については、CASBEE(※)の値(全国値)を使用します。

建物用途 CO2 排出原単位

[kg-CO2/(㎡・年)]

CO2排出原単位

[kg-CO2/(㎡・年)]都市計画基礎調査

DECC の分類 分類 コード

DECC※1

(北海道の値)

CASBEE※2

(全国値)

地方国家施設 1 官公庁 94.2 108.9 94.2

自治体施設 2 官公庁 94.2 108.9 94.2

業務施設 11 事務所 113.5 108.9 113.5

集合販売施設 12 デパート・スーパー 374.2 182.3 374.2

宿泊施設 13 ホテル・旅館 164.7 167.5 164.7

興業施設 21 劇場・ホール 56.6 182.3 56.6

風俗営業施設 22 ― ― 182.3 182.3

遊技施設 23 ― ― 182.3 182.3

スポーツ施設 24 スポーツ施設 82.5 182.3 82.5

専用店舗施設 31 家電量販店 194.3 182.3 194.3

教育施設 51 小中学校 34.2 68.5 34.2

研究施設 52 ― ― 139.2 139.2

文化施設 53 ― ― 125.5 125.5

宗教施設 54 ― ― 125.5 125.5

記念施設 55 展示施設 63.6 125.5 63.6

医療施設 61 病院 143.6 139.2 143.6

運動施設 62 スポーツ施設 82.5 182.3 82.5

社会福祉施設 63 ― ― 139.2 139.2

厚生施設 64 ― ― 125.5 125.5

表3-5 北海道における民生業務部門の CO2 排出原単位

※ 建築環境総合性能評価システム。(一財)建築環境省エネルギー機構による建築環境の性能を総合的に評価するツール。

図3-8 民生業務部門の CO2 排出量の求め方

DECC の値

若しくは

CASBEE

の全国値

(※1) 非住宅建築物の環境関連データベース〈(社)日本サスティナブル建築協会〉 (※2) CASBEE 新築 2010 年度版

CO2排出量[kg-CO2/年] 建物床面積[㎡] CO2排出原単位[kg-CO2/(㎡・年)]=Σ ×

非住宅建築物の環境関連データベースなどから 北海道共通の値都市計画基礎調査などから 都市別の値

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

53

(2)CO2排出量の算出例

ある都市における民生業務部門の現況の CO2 排出量を求めると次の表のようになります。都市

全体で、年間 677.4 千 t の CO2 を排出していることになります。

建物用途 棟数 延床面積

[㎡]

CO2 排出原単位

[kg-CO2/(㎡・年)]

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

地方国家施設 71 88,693 94.15 8.4

自治体施設 106 115,349 94.15 10.9

業務施設 2099 851,432 113.46 96.6

集合販売施設 65 360,481 374.16 134.9

宿泊施設 236 528,062 164.69 87.0

興業施設 198 87,665 56.59 5.0

風俗営業施設 42 6,508 182.28 1.2

遊技施設 43 101,891 182.28 18.6

スポーツ施設 32 31,621 82.5 2.6

専用店舗施設 2295 795,562 194.33 154.6

教育施設 375 649,608 34.24 22.2

研究施設 12 15,439 139.15 2.1

文化施設 190 123,094 125.46 15.4

宗教施設 289 134,322 125.46 16.9

記念施設 7 8,154 63.58 0.5

医療施設 461 435,645 143.64 62.6

運動施設 5 10,103 82.5 0.8

社会福祉施設 261 263,926 139.15 36.7

厚生施設 4 3,496 125.46 0.4

合計 6791 4,611,051 677.4

表3-6 民生業務部門の現況 CO2 排出量の算出

民生業務部門の現況の CO2 排出量

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

54

3-4 みどり分野の現況の CO2吸収量の算出方法

(1)算出方法の概要

みどりによる CO2 の吸収量は、都市公園の高木本数と原単位から、次の式により算出します。

都市公園の高木本数

都市公園の高木本数を把握している場合はその値を使用します。その際、上記の吸収係数は

3m以上の樹木における値のため、ここでいう高木とは 3m 以上の樹木とします。

都市公園の高木本数を把握していない場合は、北海道の都市公園 1ha あたりの高木本数の値

(340.1 本/ha)と都市公園の面積から算出します。

CO2吸収原単位(吸収係数)

北海道の高木1本あたりの CO2 吸収量として、0.0356[t-CO2/(本・年)]を使用します。

(2)CO2吸収量の算出例

ある都市(都市公園の面積 606.7ha)の CO2 吸収量は次のとおり算出されます。

〈参考〉

都市公園の高木本数が把握できない場合や、都市公園以外の緑地については、下表の算定式から CO2 吸収量を

算出することもできます。

都市のみどり

の形態 条 件 CO2 吸収量の算定式

樹林地状の

様相を呈した

都市のみどり

全域で間伐更新や補植などの管理が行われていない場合 1.54[t-CO2/(ha・年)]×「区域面積」[ha]

全域で間伐更新や補植などの管理が行われている場合 4.95[t-CO2/(ha・年)]×「管理実施面積」[ha]

間伐や補植などの管理が部分的に行われている場合 1.54[t-CO2/(ha・年)]×「区域面積-管理実施面積」[ha]

+ 4.95[t-CO2/(ha・年)]×「管理実施面積」[ha]

新規樹林地 14.71[t-CO2/(ha・年)]×「区域面積」[ha]

都市公園など 単位緑化面積当たり 200 本/ha 以上のみどりの場合 9.78[t-CO2/(ha・年)]×「緑化面積」[ha]

単位緑化面積あたり 200 本/ha 未満のみどりの場合 実本数を把握し推計する。

北海道共通の値

CO2吸収量

[t-CO2/年]

都市公園の高木本数

[本]

CO2吸収原単位(吸収係数)

[t-CO2/(本・年)]

管理台帳などから求める(実数)

【高木本数が把握できない場合】

北海道の都市公園 1ha あたりの高木本数:340.1(本/ha)

(出典)京都議定書3条3及び4の下での LULUCF 活動に関する補足情報

0.0356[t-CO2/(本・年)]

北海道の高木1本あたり吸収量 (出典) 京都議定書目標達成計画全部改定 の参考資料2「都市緑化等の推進」(H20)

都市別の値

= ×

北海道共通の値 北海道共通の値

CO2 吸収量 = 都市公園面積 × 都市公園 1ha あたり高木本数 × 吸収係数

= 606.7[ha]× 340.1[本/ha] × 0.0356[t-CO2/(本・年)]

= 7.35[千 t-CO2/年]

※都市公園面積は、北海道建設部作成の「北海道の都市公園」を参照。

表3-7 都市のみどりによる CO2 吸収量の算出方法

出典:「低炭素都市づくりガイドライン」国土交通省(H22)

図3-9 みどり分野の CO2 吸収量の求め方

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

55

3-5 将来 CO2排出量の算出〈現況趨勢(BAU)〉

将来 CO2 排出量(BAU)は、現況 CO2 排出量から次のとおり推計します。BAU とは、CO2

排出量の削減対策を特に実施しない場合の将来予測のことをいいます。

(1)運輸部門

運輸部門の CO2 排出量は交通量に比例するため、将来 CO2 排出量(BAU)は、次の式のとお

り、現況 CO2 排出量を将来交通量の伸び率で補正して求めます。

なお、原単位は現況と変わらないものと仮定します。

※将来交通量は道路交通センサス調査等の予測値を使用します。

(計算例)

(2)民生家庭部門

民生家庭部門の CO2 排出量は住宅の床面積に比例します。住宅の床面積は人口の増減に大きく

影響するため、将来 CO2 排出量(BAU)は、次の式のとおり、現況排出量を将来人口の伸び率

で補正して求めます。

なお、原単位は現況と変わらないものと仮定します。

※将来人口は国立社会保障・人口問題研究所のデータ、現在人口は国勢調査などのデータが

活用できます。

(計算例)

(3)民生業務部門

民生業務部門の CO2 排出量は建物床面積に比例しますが、必ずしも将来人口と直接関係がある

とは言えず、その変動要因は市町村によって異なるため、本ガイドラインでは民生業務部門の将

来 CO2 排出量の算出方法は示していません。市町村の実情を踏まえ、必要に応じて検討すること

とします。

将来 CO2 排出量(BAU) = 現況 CO2 排出量 × 将来交通量(2030 年) / 現在交通量(2005 年)

= 150.0[千 t-CO2/年]× 290,832[台] / 330,823[台]

= 131.9[千 t-CO2/年]

将来 CO2 排出量(BAU) = 現況 CO2 排出量 × 将来人口(2030 年) / 現在人口(2010 年)

= 547.9[千 t-CO2/年]× 212,190[人] / 280,066[人]

= 415.1[千 t-CO2/年]

将来 CO2排出量(BAU)

[t-CO2/年]

現況 CO2排出量

[t-CO2/年]

将来交通量[台] = ×

現在交通量[台]

将来 CO2排出量(BAU)

[t-CO2/年]

現況 CO2排出量

[t-CO2/年]

将来人口[人] = ×

現在人口[人]

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

56

3-6 将来 CO2排出量の算出〈CO2削減対策実施後〉

CO2 排出量削減のための各種対策については第2章で示していますが、ここでは、低炭素化の

取組において特に重要となる「集約型都市構造への転換」に着目し、「交通・都市構造分野の取組

(コンパクトな都市構造の実現と交通対策)」を実施した場合の将来 CO2 排出量の算出方法につ

いて示します。

この将来 CO2 排出量を現況及び現況趨勢(BAU)の CO2 排出量と比較することにより、対策

による CO2 削減効果がどの程度あるのか把握することができます。

本ガイドラインでは、集約拠点への公共施設や住宅の誘導、公共交通機関の利便性向上などの

対策によって、都市の中心部及び公共交通沿道に人口が集中し、郊外の戸建て住宅から中心部の

共同住宅へ住み替えが図られたこと(以下「人口集約」という)、また、自動車から公共交通機関

への転換が図られたこと(以下「公共交通転換」という)による CO2 削減効果を算出します。

人口集約による効果は、郊外の人口が減ることに伴い郊外から中心部への自動車利用が減るこ

とによる運輸部門における CO2 削減と、集約する人口の多くが戸建住宅に比べて一世帯当たりの

CO2 排出量の少ない共同住宅に居住することによる民生家庭部門における CO2 削減の2つがあ

ります。また、公共交通転換による効果は、自動車利用の削減による運輸部門における CO2 削減

です。

図3-11 交通・都市構造分野における CO2 削減対策の考え方

図3-10 現況と対策実施後のイメージ

現況

将来(対策実施後)

・郊外からの自動車

利用の減少

・中心部の人口増加

・公共交通への転換

・郊外からの自動車利用

が多い

・郊外人口が多い

・公共交通の利用の減少

削減対策

〈方針1〉集約型都市構造の実現 ・対策メニュー1(集約型都市構造への転換)

〈方針2〉交通流対策の推進

・対策メニュー2(道路整備)

・対策メニュー3(自動車交通需要の調整)

〈方針3〉公共交通機関の利用促進

・対策メニュー4(公共交通の整備)

・対策メニュー5(公共交通の利用促進)

CO2削減対策の実施

都市の中心部及び公共交通沿道に人口が集中

【1】人口集約

郊外の戸建住宅から中心部や公共交通機関沿道の

共同住宅への住み替えが図られる

【2】公共交通転換

戸建住宅と比較して、

一世帯当たりの CO2 排

出量の少ない共同住宅

に住む世帯が増加

公共交通機関の利便性向上

自動車から公共交通機関への転換が図られる

郊外から中心部への

自動車利用が減る

民生家庭部門の

CO2削減

運輸部門の

CO2削減

運輸部門の

CO2削減

交通・都市構造分野の取組(コンパクトな都市構造の実現と交通対策)

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

57

(1)人口集約後の CO2排出量の算出方法

人口集約後の CO2 排出量を算出するための準備作業として、将来、どこにどれだけの人口が集

中するかを設定する必要があります。 ■エリアの設定と各エリアにおける将来人口の設定(準備作業)

エリア区分 用途地域等 面積

(ha)

現況〈2005 年〉 将来〈2030 年〉

人口(人) 人口密度(人/ha) 人口(人) 人口密度(人/ha)

中心市街地 商業

近隣商業 514 24,764 48.18 41,120 〈514ha×80 人/ha〉

公共交通

沿道市街地

第一種住居

第二種住居 1,044 71,664 68.64 62,640 〈1,044ha×60 人/ha〉

周辺市街地 その他 33,155 182,156 5.49

合計 行政区域全体 34,713

手順1 都市を3つのエリアに区分する

〈将来人口の設定例〉

都市計画の用途地域により、都市を「中心市街地」、「公共交通沿道市街地」、「周辺市街地」

の3つのエリアに区分します。

中心市街地:商業地域、近隣商業地域

公共交通沿道市街地:第一種住居地域、第二種住居地域

周辺市街地:その他の地域(行政区域から上記のエリアを除いた地域)

※本ガイドラインでは便宜的に上記のとおり設定しますが、都市の実情に応じて任意に設定可能。

※都市計画のない市町村の場合は、将来の土地利用構想などから任意にエリアを設定。

手順 2 各エリアの面積、現況人口を算出し、現況人口密度を求める

手順1で設定した各エリアについて、面積、人口を都市計画基礎調査等により算出し、現

況人口密度を求めます。

手順 3 「中心市街地」、「公共交通沿道市街地」の将来人口密度を設定する

「中心市街地」の将来人口密度:80 人/ha

・・・「都市計画運用指針」における「市街化区域の住宅用地の目標とする人口密度」

「公共交通沿道市街地」の将来人口密度:60 人/ha

・・・「都市計画運用指針」における「市街化区域の住宅用地の目標とする 低限の人口密度」

※本ガイドラインでは、「中心市街地」、「公共交通沿道市街地」の将来人口密度を上記のとおり設定

しますが、各都市の現況や将来目標など政策的な視点を踏まえ、任意に設定可能。

手順 4 各エリアの将来人口を算出する

「中心市街地」、「公共交通沿道市街地」の将来人口を将来人口密度と面積から算出します。 ※「周辺市街地」の将来人口は、2030 年の総人口(国立社会保障・人口問題研究所(社人研)のデータ)

から「中心市街地」、「公共交通沿道市街地」の人口を除くことで算出します。

※「周辺市街地」の将来人口密度は、将来人口と面積から算出します。

手順 1 手順 2 手順 4

8.03 278,584 5.79 200,883 〈社人研のデータ〉

2.93

60

80

〈200,833 人 -41,120 人-62,640 人〉

97,123

手順 3

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

58

運輸部門の CO2排出量(人口集約後)

以下に示す計算は、対策の効果を概略計算する目的で簡便な方法で算出しています。

パーソントリップ調査などで将来交通需要予測モデル等がある場合は、そちらの使用も検討して下さい。

人口集約により、住民の日常生活での移動距離が短くなることから、運輸部門の CO2 排出量が

削減できると考えられます。

ここでは、交通量調査等で作成された既存の将来 OD 表を元に、先に設定した人口集約後の将

来人口設定に合わせた将来 OD 表を作成します。また、人口集約による中心部や公共交通沿道地

域の土地利用形態と、既存の将来 OD 表で設定している交通ゾーンでの土地利用形態が合わなく

なることが想定され、人口集約後の交通流動を正確に反映できない可能性(※)があることから、

既存の交通ゾーンを細分化した将来OD表を作成します。

※たとえば、人口集約により極めて短距離のトリップの増加が見込まれるが、エリアの大きな交通ゾーンでひとくくりに

して考えると、極めて短距離のトリップも大きな交通ゾーンの内々移動の平均距離で代表されるため、人口集約の効果

である短距離移動の増加を反映できない可能性があります。 ■算出にあたっての設定条件

〈作業前の準備〉

〈設定条件〉 人口集約後の OD 表を作成するため、将来①と将来②について、交通ゾーンごとの人口を設定

します。

〈人口密度〉 中心市街地 50 人/ha

公共交通沿道市街地 40 人/ha その他 15 人/ha

〈人口密度〉※設定値 中心市街地 80 人/ha 公共交通沿道市街地 60 人/ha その他 10 人/ha

中心市街地

公共交通沿道市街地

周辺市街地

周辺市街地(緑地)

将来①(現況趨勢〈BAU〉) 将来②(人口集約後)

※住居を中心部に集約化したので、家庭用乗用車の走行距離のみが減少し、業務用車両などは、減少しないと仮定している。

交通 OD:Ⅰゾーン

交通 OD:Ⅲゾーン

交通 OD

Ⅳゾーン 交通

OD

Ⅱゾーン

人口:50 人

人口

160 人

人口:200 人

人口

90 人

交通 OD:Ⅰゾーン

交通 OD:Ⅲゾーン

交通 OD

Ⅳゾーン交通

OD

Ⅱゾーン

人口:30 人

人口

130 人

人口:280 人

人口

60 人

〈OD表【乗用】(業務除く)〉 発\着 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 発生

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

集中

〈OD表【乗用】(業務除く)〉 発\着 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 発生

Ⅰ 20 30 70 40 160Ⅱ 30 60 100 20 210Ⅲ 70 100 200 75 445Ⅳ 40 20 75 50 185

集中 160 210 445 185 1000

国勢調査の500mメッシュ人口と国立

社会保障人口問題研究所の将来人

口予測から交通ゾーンごとの将来

①の人口を算出

設定した将来人口密度から、500m

メッシュ及び交通ゾーンの将来②の人口

を算出(図では、便宜的に 1ha 当た

りの人口を 500m メッシュに割り当て

ている)。

現況の OD 表と将来交

通量の増減率から将来

①の OD 表を作成

将来①と将来②で、各交

通ゾーンの人口が変わ

るので OD も変わる

手順1へ

500mメッシュ

交通ゾーン

このエリアの全体人口:500 人

国勢調査のデータは、総務省統計局(政府統計の

総合窓口(e-Stat))からダウンロードできます。

細分化された交通を解析するため、GIS 等を用

いて既存の交通ゾーン、人口、土地利用を 500m

メッシュに重ね合わせ、500m メッシュを中心市

街地など3つのエリアに区分します。500m メッ

シュの位置情報と人口は国勢調査のデータを利

用します。

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

59

発\着 Ⅰ① Ⅰ② … Ⅰ⑤ Ⅱ① … Ⅲ④ Ⅲ⑤ … Ⅳ⑦ Ⅳ⑧ 発生

Ⅰ① 0 0 0 0 0 0 0 0

Ⅰ② 0 0.8 0.7 4.2 5.6 0.5 0.5 33

Ⅰ⑤ 98

Ⅱ① 0 0.7 0.8 3.3 4.4 0.1 0.1 24

Ⅲ④ 0 4.2 3.3 18 24 1.4 1.4 135

Ⅲ⑤ 0 5.6 4.4 24 32 1.9 1.9 180

Ⅳ⑦ 0 0.5 0.1 1.4 1.9 0.2 0.2 11

Ⅳ⑧ 0 0.5 0.1 1.4 1.9 0.2 0.2 11

集中 0 33 24 135 180 11 11

98 1019

交通 OD

Ⅳゾーン

人口

130 人

Ⅰ①

0 人

Ⅰ②

10 人

Ⅰ③

10 人

Ⅰ④

10 人

Ⅰ⑤

0 人

交通 OD:Ⅰゾーン 人口:30 人

Ⅱ①

10 人Ⅱ②

10 人Ⅱ③

10 人Ⅱ④

10 人

Ⅱ⑤

10 人

Ⅱ⑥

10 人

Ⅲ①

10 人Ⅲ②

60 人Ⅲ③

10 人

Ⅲ⑥

60 人

Ⅲ⑤

80 人

Ⅲ④

60 人Ⅳ①

10 人

Ⅳ⑤

10 人Ⅳ②

60 人

Ⅳ⑥

10 人Ⅳ③

10 人

Ⅳ⑦

10 人Ⅳ④

10 人

Ⅳ⑧

10 人

交通

OD

Ⅲゾーン

人口

280 人

交通

OD

Ⅱゾーン

人口

60 人

手順 1 人口集約後(将来②)の OD 表を作成する

●人口の変化 (各ゾーンの人口伸率)

Ⅰゾーン:50 人→30 人 30/50=0.6 倍 Ⅱゾーン: 90 人→60 人 60/90=0.67 倍

もともと Ⅰ→Ⅱ は、30 台 人口集約後 Ⅰ→Ⅱ は、30×0.6×0.67=12 台

OD 表(将来②)【乗用】 発\着 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 発生

Ⅰ 7 12 59 20 98

Ⅱ 12 27 93 11 143

Ⅲ 59 93 392 85 629

Ⅳ 20 11 85 33 149

集中 98 143 629 149 1019

発\着 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 発生

Ⅰ 7 12 59 20 98

Ⅱ 12 27 93 11 143

Ⅲ 59 93 392 85 629

Ⅳ 20 11 85 33 149

集中 98 143 629 149 1019

手順 2 人口集約後(将来②)の OD 表を細分化する

人口集約により、各交通ゾーン内

の都市構造が変化し、そのままでは

誤差が大きくなる可能性があるた

め、交通ゾーンを細分化(Ⅰ→Ⅰ①、

Ⅰ②…)するとともに、これに対応

する OD 表を作成します。細分化に

あたっては、国勢調査の 500m メッ

シュの位置情報と人口を使用し、

500m メッシュに細分化します。

●人口で按分

Ⅰ②ゾーン:10/30=0.3 倍 (Ⅰ②ゾーン人口/Ⅰゾーン人口)

Ⅲ⑤ゾーン:80/280=0.29 倍 (Ⅲ⑤ゾーン人口/Ⅲゾーン人口) ●Ⅰゾーン→Ⅲゾーン のOD交通量 59 台 ●Ⅰ②→Ⅲ⑤ は、59×0.3×0.29=5.6 台

〈OD 表(将来②)※手順1で作成したもの〉

手順 3 人口集約後の CO2排出量を算出する

〈人口集約後の土地利用形態に合わせた 500m メッシュ間の将来 OD 表〉

OD 表(将来①)【乗用】 発\着 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 発生

Ⅰ 20 30 70 40 160

Ⅱ 30 60 100 20 210

Ⅲ 70 100 200 75 445

Ⅳ 40 20 75 50 185

集中 160 210 445 185 1000

人口集約後の CO2排出量(運輸部門) 500mメッシュの将来OD表(手順2で作成したもの) 500m メッシュ間の距離 CO2排出原単位= × ×

次の式から、人口集約後の CO2 排出量を算出します。

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

60

民生家庭部門の CO2排出量(人口集約後)

設定した各エリアの将来人口をもとに、人口集約後の CO2 排出量を次のとおり算出します。

エリア

現況人口

2005 年

[人]

将来集約人口

2030 年

[人]

人口増減

(対現況)

[人]

③=②-①

共同

住宅率

一世帯当

たり人員

[人]

世帯数増減

(対現況)

一世帯当たり CO2

排出原単位[t/年・戸]

CO2 排出量増減(対現況)

[t-CO2/年]

共同住宅

⑥=③×④/⑤

戸建住宅

⑦=③×(1-④)/⑤

共同

住宅⑧

戸建

住宅⑨

共同住宅

⑩=⑥×⑧

戸建住宅

⑪=⑦×⑨

合計

⑫=⑩+⑪

中心市街地 24,764 41,120 16,356 80.0% 2.22 5,894 1,474 4.66 7.00 27,466 10,318 37,809

公共交通

沿道市街地

71,664 62,640 -9,024 80.0% 2.22 -3,252 -813 4.66 7.00 -15,154 -5,691 -20,860

周辺市街地 182,156 97,123 -85,033 30.7% 2.22 -11,759 -26,544 4.66 7.00 -54,797 -185,808 -240,736

計 278,584 200,883 -42,485 -181,264 -223,787

手順 1 手順 2 手順 3

手順 1 各エリアの人口増減を算出する

各エリアの現況人口と将来人口から、人口の増減を求めます。

手順 2 各エリアの世帯数の増減を算出する

※各都市の共同住宅率は、国のガイドラインに次のとおり示されています。

・増減人口を平均世帯人員(国勢調査による)で割ることで世帯数の増減を算出します。

・その際、共同住宅にどのくらいの世帯が居住するのかを設定する必要があるため、「共同

住宅率(人口比)」を設定します。

○共同住宅率(人口比)の設定

本ガイドラインでは共同住宅率を次のとおり設定します。 中心市街地・公共交通沿道市街地:80%(札幌都心レベル) 周辺市街地:30.7%(全国平均)

札幌市中央区 DID 78.2%

仙台市青葉区 DID 55.0%

東京都中央区 81.3%

東京都千代田区 71.5%

名古屋市中区 73.0%

大阪市中央区 75.8%

福岡市中央区 83.8%

全国平均 30.7% (H17 国勢調査による)

※本ガイドラインでは上記のとおり設定しますが、各都市の現況や将来目標等により任意に設定可能。

手順 3 CO2排出量の現況からの増減を算出する

増減する世帯数と一世帯当たりの CO2 排出量から、CO2 排出量の現況からの増減を算出し

ます。

民生家庭部門における現況からの CO2 削減量 223.7 [千 t-CO2/年]

〈CO2削減量の算出例〉

手順 4 人口集約後の CO2排出量を算出する

現況の CO2 排出量(3-2 で算出)及び手順 3 で算出した現況からの CO2 削減量から、次

のとおり人口集約後の CO2 排出量を算出します。

人口集約後の CO2排出量(民生家庭部門) 現況の CO2排出量 現況からの CO2削減量(手順 3 で算出)= ―

= 547.9 ― 223.7 = 324.2 [千 t-CO2/年]

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

61

札幌市(国土交通省ホームページ) 仙台市(国土交通省ホームページ)

名古屋市(国土交通省ホームページ)

大阪市(国土交通省ホームページ) 福岡市(福岡市ホームページ)

東京都(東京都ホームページ)

―〈参考〉全国主要都市の中心部―

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

62

(2)公共交通転換による CO2削減量の算出方法

ここでは、(1)の人口集約後の状態において、公共交通機関の利便性向上等により、自動車か

ら公共交通機関への転換が促進されたと仮定した場合の CO2 削減量を算出します。

CO2 削減対策実施後(将来②)の運輸部門の CO2 排出量は、(1)で算出した人口集約後の

CO2 排出量から、ここで算出する公共交通転換による CO2 削減量を差し引いた値として算出し

ます(P37 参照)。

■算出にあたっての設定条件

自動車通勤の人の一部が、公共交通機関の利便性改善やモビリティマネジメント※1 の実施

により、自動車から公共交通機関での通勤に変更することを想定します。

また、自動車から公共交通機関に転換する範囲と転換する割合を次のとおり仮定します。

※本ガイドラインでは、上記のとおり仮定しますが実際に算出する場合は、都市の実情に応じて任意

に設定可能。

(※1) モビリティマネジメントとは、多様な交通施策を活用し、個人や組織・地域のモビリティ

(移動状況)が社会にも個人にも望ましい方向へ自発的に変化することを促す取組みを指す。

(※2) 一般的には、バスの利用圏はバス停から300m程度、鉄道駅の利用圏は駅から500m

程度とすることが多い。今回の試算では、モビリティマネジメントの実施等で通常よりも公

共交通機関の利用意向が高まることを期待していること、また、500mメッシュのGIS

で作業を行うことから1kmの範囲としている。

(※3) モビリティ・マネジメントの検討に当たり実施した住民アンケートの結果、8%の住民が公

共交通機関への転換の意向を示したと想定(国のガイドライン資料での試算と同じ設定)。

公共交通機関から 1km の範囲※2 に住む住民のうち、自動車を利用する住民の8%が公

共交通機関利用に転換する※3

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

63

※使用する OD 表について

・現況の OD 表を使用すると現況からの削減量、将来(BAU)の OD 表を使用すると BAU からの削減量が算出可能。

・次の式から、CO2 削減量を求めます。

= 2[台]× 0.7[km]× 0.2375[kg-CO2/km]

= 0.33 [kg-CO2]

・都市全体の CO2 削減量は、バス路線から 1km 内の削減量

を合計して算出します。

発\着 Ⅰ① Ⅰ② … Ⅰ⑤ Ⅱ① … Ⅲ④ Ⅲ⑤ … Ⅳ⑦ Ⅳ⑧ 発生

Ⅰ① 0 0 0 0 0 0 0 0 Ⅰ② 0 0.8 0.7 4.2 5.6 0.5 0.5 33 …

Ⅰ⑤ 98Ⅱ① 0 0.7 0.8 3.3 4.4 0.1 0.1 24 …

Ⅲ④ 0 4.2 3.3 18 24 1.4 1.4 135 Ⅲ⑤ 0 5.6 4.4 24 32 1.9 1.9 180 …

Ⅳ⑦ 0 0.5 0.1 1.4 1.9 0.2 0.2 11 Ⅳ⑧ 0 0.5 0.1 1.4 1.9 0.2 0.2 11

集中 0 33 24 135 180 11 11 98 1019

500m

手順 1 500m メッシュ上に公共交通機関の路線を再現する

・人口集約後の運輸部門の CO2 排出量の算出において作成した 500m メッシュ上に、公

共交通機関の路線(鉄道やバス路線等)を再現します。

・再現した公共交通機関の路線から 1km 内の 500m メッシュを算出します。

〈500m メッシュ上にバス路線を再現〉 〈路線から 1km 内の 500m メッシュを算出〉

手順 2 500m メッシュ間の OD表を使用し削減台数を求め、公共交通転換による CO2削減量を算出する

・先に作成した「人口集約後の 500m メッシュ間の将来 OD 表」を使用し、手順1で算出

したバス路線から 1km 内 OD に転換率を乗じて、自動車の削減台数を求めます。

Ⅲ⑤ → Ⅲ④への移動(24 台)のうち、8%がバスに転換 24 × 8% = 2 台 の削減

CO2削減量 削減台数 500m メッシュ間の距離 CO2排出原単位= × ×

手順 3 対策実施後(将来②)の運輸部門の CO2排出量を算出する

手順 2 で算出した公共交通転換による CO2 削減量は、人口集約後の状態からの削減量であ

るから、対策実施後の運輸部門の CO2 排出量は次のとおり算出されます。

500m メッシュ バス路線 バス路線から 1km の範囲

対策実施後の CO2排出量(運輸部門) 人口集約後の CO2排出量(運輸部門) 公共交通転換による CO2削減量(手順 2 で算出)= ―

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

64

3-7 道内都市におけるシミュレーション

ここでは、これまで示してきた CO2 排出量等の算出方法に基づいて行った、道内の都市におけ

るシミュレーション結果を示します。

シミュレーションにあたっては、都市の構造、規模、人口密度などの違いによる比較、検討を

行うため、都市の規模や各市の取組状況などから道内の4つの都市を選定しています。

都市名 選定の理由等

旭川市 線引都市(都市計画法)。中核市であり、地球温暖化対策推進法に基づく新実行計画

の策定が義務付けられている。

函館市 線引都市(都市計画法)。中核市であり、地球温暖化対策推進法に基づく新実行計画

の策定が義務付けられている。

釧路市 線引都市(都市計画法)。コンパクトなまちづくりに向けた取組を積極的に進めてい

る。

稚内市 非線引都市(都市計画法)。環境関連の取組を積極的に進めている。

シミュレーション検討内容

想定ケース 算出した CO2 排出量等と算出根拠

現況

①運輸部門:パーソントリップ調査等のデータより算出

(旭川市 2002 年、函館市 1999 年、釧路市 2010 年、稚内市 2004 年)

②民生家庭部門:都市計画基礎調査(2010 年)の住宅床面積より算出

※空家率は、H20 住宅・土地統計調査のデータを使用

③民生業務部門:都市計画基礎調査(2010 年)の建物床面積より算出

④みどり分野:2010 年の都市公園面積より算出

将来①

現況趨勢(BAU)

2030 年

①運輸部門:現況の CO2 排出量を将来交通量(2030 年)の増減率で補正

※将来交通量は道路交通センサス調査(2005 年)のデータを使用

②民生家庭部門:現況の CO2 排出量を将来人口(2030 年)の増減率で補正

※将来人口は国立社会保障・人口問題研究所の人口予測値を使用

(注)CO2 排出原単位は、現況と変わらないと仮定

将来②

対策実施後

2030 年

交通・都市構造分野の取組を実施した場合の次の CO2 排出量等

【1】人口集約後の CO2 排出量

①運輸部門の CO2 排出量

②民生家庭部門の CO2 排出量

【2】公共交通転換による CO2 削減量

①運輸部門の CO2 削減量

■CO2排出量分布図の作成について

都市のどこからどの程度の CO2 が排出されているのか、その経年

変化を視覚的に把握するため、各都市の過去、現況、将来(対策実

施後)について、CO2 排出量分布図(過去、現況、将来②)を作成

しています。なお、分布図に反映する排出量は民生家庭部門と民生

業務部門とします。

表 3-8 本ガイドラインにおいてシミュレーションを行った道内の4都市

表 3-9 ミュレーションの検討内容

図 3-12 CO2 排出量分布図の例

Page 31: 3 章 CO 排出量の算出方法と削減効果 - Hokkaido...第3章 CO2排出量の算出方法と削減効果 37 本ガイドラインで示すCO2排出量等の算出方法(一覧)

第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

65

参考 ―シミュレーションに用いた 500m メッシュ図とバス路線図―

稚内市

図 3-13 シミュレーションを行った4都市の 500m メッシュ図とバス路線図

釧路市

〈500m メッシュ図〉 〈バス路線図〉

〈500m メッシュ図〉 〈バス路線図〉

函館市

〈500m メッシュ図〉 〈バス路線図〉

中心市街地

公共交通沿道市街地

周辺市街地

バス路線

バス路線から

1km の範囲

旭川市

〈500m メッシュ図〉 〈バス路線図〉

5km

5km

5km

5km

※合併前(旧釧路市)の区域

※合併前(旧函館市)の区域

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

66

(1)旭川市

シミュレーション結果

シミュレーションの結果、旭川市の現況、将来①(BAU)及び将来②(対策実施後)の CO2

排出量を表 3-10 のとおり算出しました。また、その際に設定した将来人口を表 3-11 に示しま

す。

運輸部門の CO2 排出量については、現況で 340.1 千 t、BAU で 308.8 千 t、対策実施後で

284.6 千 t(BAU からの削減量 24.2 千 t[7.8%])という結果となりました。

民生家庭部門の CO2 排出量については、現況で 775.6 千 t、BAU で 627.4 千 t、対策実施

後で 576.0 千 t(BAU からの削減量 51.4 千 t[8.2%])という結果となりました。

取組の分野 排出量の

部門

CO2 排出量

現況

(※1)

将来①

(BAU)

〈2030 年〉

将来②(対策実施後) 〈2030 年〉

現況からの

削減量

削減割合

(対現況)

BAU からの

削減量

削減割合

(対 BAU)

交通

・都市構造

運輸

(内々交通)

340.1 308.8 284.6 人口集約

+公共交通転換

-55.5

(※2)

-16.3% -24.2 -7.8%

エネルギー 民生家庭 775.6 627.4 576.0 人口集約 -199.6 -25.7% -51.4 -8.2%

民生業務 778.8 ― ―

みどり(※3) ― -8.4 ― -14.5 ―

(※1) 運輸部門は 2002 年のデータ、民生家庭部門・民生業務部門・みどり分野は 2010 年のデータを元に算出。

(※2) 人口集約による現況からの削減量は-52.0 千 t、公共交通転換による削減量(上乗せ分)は 3.5 千 t。

(※3) みどり分野は CO2 の吸収量。将来の吸収量は「旭川市緑の基本計画(H18)」における都市公園面積の将来目標値(2015

年)を元に算出。

エリア区分 用途地域等 面積(※1)

(ha)

現況〈2005 年〉 将来〈2030 年〉

人口(※2)

(人)

人口密度

(人/ha)

人口

(人)

人口密度

(人/ha)

中心市街地 商業

近隣商業 452 20,250 44.80 36,160 80

公共交通

沿道市街地

第一種住居

第二種住居 1,450 72,809 50.21 87,000 60

周辺市街地 その他 72,858 261,945 3.60 164,004 2.25

合計 行政区域全体 74,760 355,004 4.75 287,164(※3) 3.84

(※1) 「中心市街地」「公共交通沿道市街地」の面積は、2005 年度末時点での各用途地域面積の合計(出典:「北海道の都市計

画 H18.11」)。「合計」の面積は、2005 年 10 月 1 日現在の行政区域面積(出典:「北海道の都市計画 H18.11」)。「周

辺市街地」の面積は「合計」から「中心市街地」及び「公共交通沿道市街地」の面積を除いたもの。

(※2) 「中心市街地」「公共交通沿道市街地」の人口は 2005 年国勢調査人口をベースとした都市計画基礎調査の調査結果によ

る値。「合計」の人口は 2005 年国勢調査人口。「周辺市街地」の人口は「合計」から「中心市街地」及び「公共交通沿

道市街地」の人口を除いたもの。

(※3) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口(2008)」における2030年の人口予測値

表 3-10 現況、将来①(BAU)、将来②(対策実施後)の CO2 排出量 (単位:千 t-CO2/年)

表 3-11 将来人口の設定

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

67

CO2排出量分布図

1993 年 (過去)

2005 年 (現況)

2030 年 (将来②:対策実施後)

図 3-14 排出量分布図(旭川市)

人口減少・郊外から中心部への住み替えによる住宅の減少

郊外での住宅・工場・商業施設の増加

民生家庭

+民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

1,172

民生家庭

+ 民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

1,554

340 運輸

(内々交通)

民生家庭

+ 民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

1,355

285 運輸

(内々交通)

※「分布図(1993)」:都市計画基礎調査(1993 年)データを使用。ゾーンごとの住宅及び非住宅の床面積の合計に原単

位を掛けて、同ゾーンの面積で割ったもの

※「分布図(2005)」:都市計画基礎調査(2010 年)データを使用し、「分布図(過去)」と同様の方法で算出したもの

※「分布図(2030)」:分布図(2005)のデータに人口集約による削減効果を反映させたもの。よって、民生家庭部門の

削減効果が反映され、民生業務部門は現況排出量が反映されている。

※分布図には運輸部門の排出量は反映されていない

※分布図には運輸部門の排出量は反映されていない

0.05 - 1.54 0.04 - 0.050.03 - 0.04 0.02 - 0.03 0.01 - 0.02 0 - 0.01

(kg-CO2/年・㎡)

50 - 40 - 50 30 - 40

20 - 30

10 - 20

0 - 10

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

68

(2)函館市

シミュレーション結果

シミュレーションの結果、函館市の現況、将来①(BAU)及び将来②(対策実施後)の CO2

排出量を表 3-12 のとおり算出しました。また、その際に設定した将来人口を表 3-13 に示しま

す。なお、データ処理等の関係から、算出の範囲は合併前の旧函館市の市域としています。

運輸部門の CO2 排出量については、現況で 190.8 千 t、BAU で 158.6 千 t、対策実施後で

118.8 千 t(BAU からの削減量 39.8 千 t[25.1%])という結果となりました。

民生家庭部門の CO2 排出量については、現況で 547.9 千 t、BAU で 395.1 千 t、対策実施

後で 324.2 千 t(BAU からの削減量 70.9 千 t[17.9%])という結果となりました。

取組の分野 排出量の

部門

CO2 排出量

現況

(※1)

将来①

(BAU)

〈2030 年〉

将来②(対策実施後) 〈2030 年〉

現況からの

削減量

削減割合

(対現況)

BAU からの

削減量

削減割合

(対 BAU)

交通

・都市構造

運輸

(内々交通)

190.8 158.6 118.8 人口集約

+公共交通転換

-72.0

(※2)

-37.7% -39.8 -25.1%

エネルギー 民生家庭 547.9 395.1 324.2 人口集約 -223.7 -40.8% -70.9 -17.9%

民生業務 677.4 ― ―

みどり(※3) ― -7.3 ― -8.3 ―

(※1) 運輸部門は 1999 年のデータ、民生家庭部門・民生業務部門・みどり分野は 2010 年のデータを元に算出。

(※2) 人口集約による現況からの削減量は-69.4 千 t、公共交通転換による削減量(上乗せ分)は-2.6 千 t。

(※3) みどり分野は CO2 の吸収量。将来の吸収量は「函館市緑の基本計画(H12)」における都市公園面積の将来目標値(2015

年)を元に算出。

エリア区分 用途地域等 面積(※1)

(ha)

現況〈2005 年〉 将来〈2030 年〉

人口(※2)

(人)

人口密度

(人/ha)

人口

(人)

人口密度

(人/ha)

中心市街地 商業

近隣商業 514 24,764 48.18 41,120 80

公共交通

沿道市街地

第一種住居

第二種住居 1,044 71,664 68.64 62,640 60

周辺市街地 その他 33,155 182,156 5.49 97,123 2.93

合計 行政区域全体

(旧函館市) 34,713 278,584 8.03 200,883(※3) 5.79

(※1) 「中心市街地」「公共交通沿道市街地」の面積は、2005 年度末時点での各用途地域面積の合計(出典:「北海道の都市計

画 H18.11」)。「合計」の面積は、2004 年 4 月 1 日現在の合併前の旧函館市の行政区域面積(出典:「北海道の都市計

画 H16.8」)。「周辺市街地」の面積は「合計」から「中心市街地」及び「公共交通沿道市街地」の面積を除いたもの。

(※2) 「中心市街地」「公共交通沿道市街地」の人口は 2005 年国勢調査人口をベースとした都市計画基礎調査の調査結果によ

る値。「合計」の人口は 2005 年国勢調査における合併前の旧函館市の人口。「周辺市街地」の人口は「合計」から「中

心市街地」及び「公共交通沿道市街地」の人口を除いたもの。

(※3) 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の市区町村別将来推計人口(2008)」では2030年の人口予測値として、旧函館

市の値がないため、「2005年国勢調査人口(旧函館市の値)」に「2005年から2030年の人口減少率(合併後の値)」

を乗じて算出している。

表 3-12 現況、将来①(BAU)、将来②(対策実施後)の CO2 排出量 (単位:千 t-CO2/年)

表 3-13 将来人口の設定

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

69

CO2排出量の分布

図 3-15 排出量分布図(函館市)

人口減少・郊外から中心部への住み替えによる住宅の減少

民生家庭

+民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

917

民生家庭

+ 民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

1,225

191 運輸

(内々交通)

民生家庭

+ 民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

1,002

119 運輸

(内々交通)

※「分布図(1998)」:都市計画基礎調査(1998 年)データを使用。ゾーンごとの住宅及び非住宅の床面積の合計に原単

位を掛けて、同ゾーンの面積で割ったもの

※「分布図(2005)」:都市計画基礎調査(2010 年)データを使用し、「分布図(過去)」と同様の方法で算出したもの

※「分布図(2030)」:分布図(2005)のデータに人口集約による削減効果を反映させたもの。よって、民生家庭部門の

削減効果が反映され、民生業務部門は現況排出量が反映されている。

※分布図には運輸部門の排出量は反映されていない

※分布図には運輸部門の排出量は反映されていない

郊外での住宅・工場・商業施設の増加

1998 年 (過去)

2005 年 (現況)

2030 年 (将来②:対策実施後)

0.05 - 1.54 0.04 - 0.050.03 - 0.04 0.02 - 0.03 0.01 - 0.02 0 - 0.01

(kg-CO2/年・㎡)

50 - 40 - 50 30 - 40

20 - 30

10 - 20

0 - 10

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

70

(3)釧路市

シミュレーション結果

シミュレーションの結果、釧路市の現況、将来①(BAU)及び将来②(対策実施後)の CO2

排出量を表 3-14 のとおり算出しました。また、その際に設定した将来人口を表 3-15 に示しま

す。なお、データ処理等の関係から、算出の範囲は合併前の旧釧路市の市域としています。

運輸部門の CO2 排出量については、現況で 137.0 千 t、BAU で 108.4 千 t、対策実施後で

90.0 千 t(BAU からの削減量 18.4 千 t[17.0%])という結果となりました。

民生家庭部門の CO2 排出量については、現況で 372.8 千 t、BAU で 256.4 千 t、対策実施

後で 205.2 千 t(BAU からの削減量 51.2 千 t[20.0%])という結果となりました。

取組の分野 排出量の

部門

CO2 排出量

現況

(※1)

将来①

(BAU)

〈2030 年〉

将来②(対策実施後) 〈2030 年〉

現況からの

削減量

削減割合

(対現況)

BAU からの

削減量

削減割合

(対 BAU)

交通

・都市構造

運輸

(内々交通)

137.0 108.4 90.0 人口集約

+公共交通転換

-47.0

(※2)

-34.3% -18.4 -17.0%

エネルギー 民生家庭 372.8 256.4 205.2 人口集約 -167.6 -45.0% -51.2 -20.0%

民生業務 380.8 ― ―

みどり(※3) ― -4.7 ― -5.4 ―

(※1) 運輸部門は 2010 年のデータ、民生家庭部門・民生業務部門・みどり分野は 2010 年のデータを元に算出。

(※2) 人口集約による現況からの削減量は-45.8 千 t、公共交通転換による削減量(上乗せ分)は-1.2 千 t。

(※3) みどり分野は CO2 の吸収量。将来の吸収量は「釧路市緑の基本計画(H22)」における都市公園面積の将来目標値(2020

年)を元に算出。

エリア区分 用途地域等 面積(※1)

(ha)

現況〈2005 年〉 将来〈2030 年〉

人口(※2)

(人)

人口密度

(人/ha)

人口

(人)

人口密度

(人/ha)

中心市街地 商業

近隣商業 307 10,004 32.59 24,560 80

公共交通

沿道市街地

第一種住居

第二種住居 554 25,282 45.64 33,240 60

周辺市街地 その他 21,349 146,230 6.85 67,021 3.14

合計 行政区域全体

(旧釧路市) 22,210 181,516 8.17 124,821(※3) 5.62

(※1) 「中心市街地」「公共交通沿道市街地」の面積は、2005 年度末時点での各用途地域面積の合計(出典:「北海道の都市計

画 H18.11」)。「合計」の面積は、2004 年度末現在の合併前の旧釧路市の行政区域面積(出典:「北海道の都市計画

H17.9」)。「周辺市街地」の面積は「合計」から「中心市街地」及び「公共交通沿道市街地」の面積を除いたもの。

(※2) 「中心市街地」「公共交通沿道市街地」の人口は 2005 年国勢調査人口をベースとした都市計画基礎調査の調査結果によ

る値。「合計」の人口は 2005 年国勢調査における合併前の旧釧路市の人口。「周辺市街地」の人口は「合計」から「中

心市街地」及び「公共交通沿道市街地」の人口を除いたもの。

(※3) 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の市区町村別将来推計人口(2008)」では2030年の人口予測値として、旧釧路

市の値がないため、「2005年国勢調査人口(旧釧路市の値)」に「2005年から2030年の人口減少率(合併後の値)」

を乗じて算出している。

表 3-14 現況、将来①(BAU)、将来②(対策実施後)の CO2 排出量 (単位:千 t-CO2/年)

表 3-15 将来人口の設定

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

71

CO2排出量の分布図

図 3-16 排出量分布図(釧路市)

民生家庭

+民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

699

民生家庭

+ 民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

754

137 運輸

(内々交通)

民生家庭

+ 民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

586

90 運輸

(内々交通)

※「分布図(1993)」:都市計画基礎調査(1993 年)データを使用。ゾーンごとの住宅及び非住宅の床面積の合計に原単

位を掛けて、同ゾーンの面積で割ったもの

※「分布図(2005)」:都市計画基礎調査(2010 年)データを使用し、「分布図(過去)」と同様の方法で算出したもの

※「分布図(2030)」:分布図(2005)のデータに人口集約による削減効果を反映させたもの。よって、民生家庭部門の

削減効果が反映され、民生業務部門は現況排出量が反映されている。

※分布図には運輸部門の排出量は反映されていない

※分布図には運輸部門の排出量は反映されていない

郊外での住宅・工場・商業施設の増加

中心部の商業施設等の減少

人口減少・郊外から中心部への住み替えによる住宅の減少

1993 年 (過去)

2005 年 (現況)

2030 年 (将来②:対策実施後)

0.05 - 1.54 0.04 - 0.050.03 - 0.04 0.02 - 0.03 0.01 - 0.02 0 - 0.01

(kg-CO2/年・㎡)

50 - 40 - 50 30 - 40

20 - 30

10 - 20

0 - 10

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

72

(4)稚内市

シミュレーション結果

シミュレーションの結果、稚内市の現況、将来①(BAU)及び将来②(対策実施後)の CO2

排出量を表 3-16 のとおり算出しました。また、その際に設定した将来人口を表 3-17 に示しま

す。

運輸部門の CO2 排出量については、現況で 58.1 千 t、BAU で 49.7 千 t、対策実施後で 35.2

千 t(BAU からの削減量 14.5 千 t[29.2%])という結果となりました。

民生家庭部門の CO2 排出量については、現況で 85.4 千 t、BAU で 60.1 千 t、対策実施後

で 50.9 千 t(BAU からの削減量 9.2 千 t[15.3%])という結果となりました。

取組の分野 排出量の

部門

CO2 排出量

現況

(※1)

将来①

(BAU)

〈2030 年〉

将来②(対策実施後) 〈2030 年〉

現況からの

削減量

削減割合

(対現況)

BAU からの

削減量

削減割合

(対 BAU)

交通

・都市構造

運輸

(内々交通)

58.1 49.7 35.2 人口集約

+公共交通転換

-22.9

(※2)

-39.4% -14.5 -29.2%

エネルギー 民生家庭 85.4 60.1 50.9 人口集約 -34.5 -40.4% -9.2 -15.3%

民生業務 92.7 ―

みどり(※3) ― -2.0 ― -2.1 ―

(※1) 運輸部門は 2004 年のデータ、民生家庭部門・民生業務部門・みどり分野は 2010 年のデータを元に算出。

(※2) 人口集約による現況からの削減量は-22.4 千 t、公共交通転換による削減量(上乗せ分)は-0.5 千 t。

(※3) みどり分野は CO2 の吸収量。将来の吸収量は「稚内市緑の基本計画(H16)」における都市公園面積の将来目標値(2020

年)を元に算出。

エリア区分 用途地域等 面積(※1)

(ha)

現況〈2005 年〉 将来〈2030 年〉

人口(※2)

(人)

人口密度

(人/ha)

人口

(人)

人口密度

(人/ha)

中心市街地 商業

近隣商業 57 3,941 69.14 4,560 80

公共交通

沿道市街地

第一種住居

第二種住居 177 9,879 55.81 10,620 60

周辺市街地 その他 75,846 27,772 0.37 14,096 0.19

合計 行政区域全体 76,080 41,592 0.55 29,276(※3) 0.38

(※1) 「中心市街地」「公共交通沿道市街地」の面積は、2005 年度末時点での各用途地域面積の合計(出典:「北海道の都市計

画 H18.11」)。「合計」の面積は、2005 年 10 月 1 日現在の行政区域面積(出典:「北海道の都市計画 H18.11」)。「周

辺市街地」の面積は「合計」から「中心市街地」及び「公共交通沿道市街地」の面積を除いたもの。

(※2) 「中心市街地」「公共交通沿道市街地」の人口は、2005 年国勢調査人口(市全体)を 2010 年国勢調査人口をベースと

した都市計画基礎調査の調査結果で按分したもの。「合計」の人口は 2005 年国勢調査人口。「周辺市街地」の人口は「合

計」から「中心市街地」及び「公共交通沿道市街地」の人口を除いたもの。

(※3) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口(2008)」における2030年の人口予測値

表 3-16 現況、将来①(BAU)、将来②(対策実施後)の CO2 排出量 (単位:千 t-CO2/年)

表 3-17 将来人口の設定

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

73

CO2排出量の分布図

図 3-17 排出量分布図(稚内市)

民生家庭

+民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

145

民生家庭

+ 民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

178

58 運輸

(内々交通)

民生家庭

+ 民生業務

CO2 排出量

[千 t-CO2/年]

144

35 運輸

(内々交通)

※「分布図(1993)」:都市計画基礎調査(1993 年)データを使用。ゾーンごとの住宅及び非住宅の床面積の合計に原単

位を掛けて、同ゾーンの面積で割ったもの

※「分布図(2005)」:都市計画基礎調査(2010 年)データを使用し、「分布図(過去)」と同様の方法で算出したもの

※「分布図(2030)」:分布図(2005)のデータに人口集約による削減効果を反映させたもの。よって、民生家庭部門の

削減効果が反映され、民生業務部門は現況排出量が反映されている。

※分布図には運輸部門の排出量は反映されていない

※分布図には運輸部門の排出量は反映されていない

郊外での住宅・工場・商業施設の増加

人口減少・郊外から中心部への住み替えによる住宅の減少

1993 年 (過去)

2005 年 (現況)

2030 年 (将来②:対策実施後)

0.05 - 1.54 0.04 - 0.050.03 - 0.04 0.02 - 0.03 0.01 - 0.02 0 - 0.01

(kg-CO2/年・㎡)

50 - 40 - 50 30 - 40

20 - 30

10 - 20

0 - 10

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

74

(5)4都市の比較について

これまでに算出した4都市のシミュレーション結果を比較することで、各都市の特性と CO2 排

出量、削減効果の関係性をある程度把握することができます。都市の特性との関係性が把握でき

れば、CO2 排出量の削減に向けた、より効果的な対策を検討することもできます。

表 3-18 はシミュレーションにおける各都市の人口、表 3-19 は現況、BAU、対策実施後そ

れぞれの CO2 排出量のシミュレーション結果です。

現況の CO2排出量について

■運輸部門

運輸部門(内々交通)の現況の CO2 排出量(千人当り)は、稚内市が も多い 1.4 千 t、函館

市が も少ない 0.69 千 t となっています (表 3-19)。

運輸部門の CO2 排出量と人口密度には関係が見られ、一般に、人口密度が高い都市ほど運輸部

門の CO2 排出量が少ないといわれており、道内4都市についても同様の傾向となりました(図

3-18)。人口密度の低い拡散した都市では、自家用車の利用が多くなることから CO2 排出量が

多くなると考えられ、低炭素都市づくりにおいては、人口密度が高く集約化された都市構造への

転換が重要といえます。

また、公共交通機関が充実している都市では、自家用車の利用が減少し CO2 排出量が少なくな

ることから、函館市の CO2 排出量が他都市と比較して少ない結果となったのは、路面電車の影響

も考えられます。

運輸部門からの CO2 排出量削減のためには、低燃費化などの自動車個別技術の改良改善による

削減策に加え、公共交通機関の充実、利用促進と中心市街地及び公共交通沿道への人口の集約化

が重要と考えられます。

■民生家庭部門

民生家庭部門の現況の CO2 排出量(千人当り)は、旭川市が も多い 2.18 千 t、函館市が

も少ない 1.97 千 t となっています(表 3-19)。これは、一人当たりの住宅の床面積が大きいこ

とが理由と考えられます([参考]一人当たりの居住室の畳数:旭川市(15.42)、函館市(14.37)、

〈H20 住宅・土地統計調査〉)。

民生家庭部門の CO2 排出量は、住宅の床面積と原単位が関係することから、排出量の削減のた

めには、住宅の高気密・高断熱化に加え、ヒートポンプ設備など CO2 排出量の削減に効果のある

設備機器の導入などが重要となります。また、高齢者世帯が増加するなか、郊外の戸建住宅に住

む高齢者世帯の中心市街地の共同住宅への住み替え促進は、CO2 の削減にも有効であると考えら

れます。

■民生業務部門

民生業務部門の現況の CO2 排出量(千人当り)は、函館市が も多く 2.43 千 t となっており

(表 3-19)、一人当りの業務用床面積に比例して排出量も多くなる傾向が見られました(図

3-19)。民生業務部門の CO2 削減のためには、建築物の高断熱化に加えて、暖房・給湯・空調

設備等の CO2 削減に資する技術を導入することが重要ですが、今後、人口減少により一人当りの

業務用床面積が増加することを考慮すると、サービス水準を確保した上で、公共公益施設を効率

化、合理化していくことが重要になると考えられます。

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

75

表 3-18 4都市の人口

旭川市 函館市 釧路市 稚内市

現況[2005 年] (a) 355,004 人 278,584 人 181,516 人 41,592 人

将来[2030 年] (b) 287,164 人 200,883 人 124,821 人 29,276 人

増減率 (b/a) 81% 72% 69% 70%

表 3-19 4都市における CO2 排出量のシミュレーション結果(現況・BAU・対策実施後)

CO2 排出量 [千 t-CO2/年] [千 t-CO2/年・千人]

現況(2005 年) 将来①〈BAU〉(2030 年) 将来②〈対策実施後〉(2030 年)

総量 千人当り 総量※1 千人当り 総量※2 千人当り

旭川市

運輸

(内々交通)

340.1 0.96 308.8

(-9.2%)

1.08 284.6

(-16.3%) [-7.8%]

0.99

民生家庭 775.6

2.18 627.4

(-19.1%)

2.18 576.0

(-25.7%) [8.2%]

2.01

民生業務 778.8 2.19 ―

函館市

運輸

(内々交通)

190.8 0.69 158.6

(-16.9%)

0.79 118.8

(-37.7%)[-25.1%]

0.59

民生家庭 547.9 1.97 395.1

(-27.9%)

1.97 324.2

(-40.8%)[-17.9%]

1.61

民生業務 677.4 2.43 ―

釧路市

運輸

(内々交通)

137.0 0.75 108.4

(-20.9%)

0.87 90.0

(-34.3%)[-17.0%]

0.72

民生家庭 372.8

2.05 256.4

(-31.2%)

2.05 205.2

(-45.0%)[-20.0%]

1.64

民生業務 380.8 2.10 ―

稚内市

運輸

(内々交通)

58.1 1.40 49.7

(-14.5%)

1.70 35.2

(-39.4%)[29.2%]

1.20

民生家庭 85.4 2.05 60.1

(-29.6%)

2.05 50.9

(-40.4%)[-15.3%]

1.74

民生業務 92.7 2.23 ―

(※1) ( )内は現況からの削減割合。

(※2) ( )内は現況からの削減割合。[ ]内は BAU からの削減割合。

図 3-19 民生業務部門の CO2 排出量(現況)と

一人あたりの業務用床面積

図 3-18 運輸部門の CO2 排出量(現況)と人口密度

50 70 90 110 130 0.6

1.0

1.4

0.8

1.2

旭川市

函館市

稚内市

釧路市

人口密度(可住地)[人/ha]

運輸部門(内々交通)

排出量(千人当り)

[

千t -

/年・千人]

C O

2

C O

2

14.5 15.0 15.5 16.0 16.5 2.1

2.3

2.5

2.2

2.4

旭川市

函館市

稚内市

釧路市

一人当たり業務用床面積[㎡]

民生業務部門

排出量(千人当り)

[

千t -

/年・千人]

CO

2

CO

2

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

76

将来の CO2排出量について

■人口集約、公共交通転換による CO2削減効果

4都市における人口集約及び公共交通転換による CO2 削減量を表 3-20 に示します。

人口集約による BAU からの CO2削減量について、総量では函館市が-108.1 千 t で も多く、

稚内市が-23.2 千 t で も少ない値となっていますが、人口千人当りで比較すると、稚内市が

も多い-0.56 千 t、以下多い順に函館市(-0.39 千 t)、釧路市(-0.38 千 t)、旭川市(-0.20 千

t)という結果となりました。

人口集約による CO2 削減量は、「周辺市街地」から「集約エリア」(「中心市街地」及び「公共

交通沿道市街地」)への「集約人口(移動量)」に比例して増加すると考えられますが、今回のシ

ミュレーションにおいても、集約人口割合(2030 年人口に対する集約人口の割合)の大きい釧

路市、稚内市が比較的 CO2 削減量が多い結果となっています。

集約人口は、集約エリアの面積が大きいほど多く、また人口密度が低いほど多くなります。今

回の結果においても、集約エリアの面積(行政区域に対する割合)が比較的大きく、現況の人口

密度が も低い釧路市の集約人口割合が大きくなっています。

また、現況から 2030 年までの人口減少率が高いと集約エリアの人口密度が低くなるため、結

果として集約人口が大きくなります。旭川市以外の3都市の人口減少率は、いずれも 30%程度と

高い値となっており(表 3-18)、その3都市の集約人口割合及び CO2 削減量が多いのは、その

影響が考えられます。

公共交通転換による CO2 削減量は、公共交通沿道から中心市街地等への現況の交通量に比例し

て多くなります。削減量(人口当たり)の多い稚内市は、現況の中心市街地等への自家用車での

移動が多いと考えられます。

■CO2削減効果と人口密度との関係

前述のとおり、CO2 削減効果と人口密度には密接な関係があります。図 3-20 は、その関係を

視覚的に捉えるため、現況、BAU、対策実施後の各段階の運輸部門(内々交通)及び民生家庭部

門の CO2 排出量(千人当り)と集約エリアの人口密度(可住地)との関係を示しています。グラ

フの右下ほど人口密度が高く CO2 排出量が少ない状態で、集約型の都市構造を推進することによ

り、低炭素化(CO2 排出量の減少)を進められることがわかります。

一方、対策を実施しない場合(BAU)は、人口減少と人口密度の低下により、4都市ともに千

人当りの CO2 排出量が増加することがわかります。

4都市の中では、函館市の現況人口密度(集約エリア)が他の都市に比べて高くなっています

が、既に中心部の人口密度が高く、公共交通機関も充実した都市においては、CO2 排出量は少な

いレベルを維持できると考えられます。

■まとめ

集約型都市構造への転換が都市の低炭素化に特に重要であることは、4都市のシミュレーショ

ンからも把握できます。人口集約の対策を講じない場合、人口減少の影響で CO2 排出量の総量は

減少しますが、人口密度の低下から一人当たりの CO2 排出量は増加する結果となります。

また、現況の人口密度が低く、将来の人口減少も大きく見込まれる都市は、集約化による CO2

の削減効果が大きいといえます。

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

77

表 3-20 4都市の CO2 削減対策による削減量の比較

【1】

人口集約

【2】

公共交通転換

CO2 削減量

〈総量〉※1

[千 t-CO2/年]

CO2 削減量

〈千人当り〉※2

[千 t-CO2/年・千人]

集約エリア

の面積※3

[ha]

集約エリア

の人口

2005 年

(未集約)※4

[人]

集約エリア

の人口

2030 年

(BAU)※5

[人]

集約エリア

の人口

2030 年

(集約後)※6

[人]

集約人口

(移動量)※7

[人]

CO2削減量※8

[千 t-CO2/年]

(上段)現況からの CO2 削減量

(下段)BAU からの CO2 削減量

旭川市 -251.6 -0.71 1,902

(2.5%)

93,059

(26.2%)

75,275

(26.2)

123,160

(42.9%)

47,885

(16.7%)

-3.5

(-9.9)-72.1 -0.20

函館市 -293.1 -1.05 1,558

(4.5%)

96,428

(34.6%)

69,532

(34.6%)

103,960

(51.7%)

34,428

(17.1%)

-2.6

(-9.3)-108.1 -0.39

釧路市 -213.4 -1.18 861

(3.9%)

35,286

(19.4%)

24,264

(19.4%)

57,800

(46.3%)

33,536

(26.9%)

-1.2

(-6.6)-68.4 -0.38

稚内市 -56.9 -1.37 234

(0.3%)

13,820

(33.2%)

9,727

(33.2%)

15,180

(51.9%)

5,453

(18.6%)

-0.5

(-12.0)-23.2 -0.56

(※1) 人口集約による CO2 削減量(運輸部門と民生家庭部門の合計)

(※2) 2005 年人口における千人当りの値。

(※3) 「中心市街地」と「公共交通沿道市街地」の合計面積。( )内は行政区域全体に対する割合。

(※4) ( )内は 2005 年の市全体の人口に対する割合。

(※5) 2005 年人口に 2030 年までの人口増減率を乗じた値。( )内は 2030 年の市全体の人口に対する割合。

(※6) ( )内は 2030 年の市全体の人口に対する割合。

(※7) 「集約エリアの人口(集約後)」から「集約エリアの人口(BAU)」を引いた値。( )内は 2030 年の市全体の人口に対す

る割合(「集約人口割合」)。

(※8) ( )内は 2005 年人口における千人当りの削減量。単位は[t-CO2/年・千人]。

図 3-20 運輸部門(内々交通)+民生家庭部門の CO2 排出量の推移(現況→BAU・対策後)と人口密度

0 50 100 150

2.0

2.5

4.0

3.0

3.5

旭川市

函館市

稚内市

釧路市

集約エリアの人口密度(可住地)[人/ha]

運輸部門(内々交通)+民生家庭部門の

排出量(千人当り)

[

千t -

/年・千人]

C O

2 C O

2

現況(2005 年)

BAU(2030 年)

対策実施後(2030 年)

集約型都市構造の実現

による低炭素化の方向

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

78

3-8 その他の CO2削減対策の効果

第1章で示したとおり、北海道においては、積雪寒冷地であることによる冬季の暖房や広域分

散型の都市構造による乗用車の多用といった北海道特有のライフスタイルが大きな要因となり、

民生家庭部門、運輸部門の CO2 排出量が全国平均を上回っています。

また、豊富に存在する太陽光、風力、雪氷冷熱などの新エネルギーを積極的に活用することも重

要となります。

ここでは、これら北海道の特性に関連したいくつかの個別の CO2 削減対策とその効果について、

具体的な CO2 削減量を数字として示すことで、おおよそのイメージを捉えることを目的に、先に

シミュレーションを行った道内4都市における CO2 削減量の試算などを行います。

(1)運輸部門の CO2削減対策 アイドリング・ストップ

北海道では、気温が低いため車内やエンジンを暖めるためのアイドリング時間が長くなる傾向

がありますが、エンジン始動後早めに出発するなど配慮を行い必要 小限の暖機運転にすること

が CO2 排出量の削減につながります。

(試算)

全ての自動車移動で、1回の走行につき、アイドリングを3分間短縮すると想定します。

〈アイドリングによる CO2 排出量〉

アイドリング10分間当たり

CO2 排出量(炭素換算) (※1)

アイドリング1分間当たり

CO2 排出量 (※2)

乗用車(ガソリン車) 90 g 33.0 g

小型トラック(2トン車) 58~87 g 26.6 g

中型トラック(4トン車) 94~120 g 39.2 g

大型トラック(10 トン車) 160~220 g 69.7 g

(※1) 環境省ホームページ アイドリング・ストップ Q&A より

(※2) 1分間排出量は10分間排出量を10で割り、炭素の分子量=12、CO2 の分子量=44 として計算。

(厳密にはエンジン始動直後と安定後で CO2 排出量は異なるが、ここでは計算を簡単にするため、単

純に10で割ることとした。)

<計算の方法>

〈現況の交通量に対する CO2 削減量〉 (単位 [千 t-CO2/年])

旭川市 函館市 釧路市 稚内市

運輸部門【現況】CO2 年間排出量 340.1 190.8 137.0 58.1

3 分間のアイドリング・ストップによる削減量 26.5 15.3 11.0 4.0

削減割合 7.8% 8.0 % 8.0% 6.9 %

以上のことから、自動車での移動の際は、毎回、アイドリング時間を3分間短縮すること

により7%程度の CO2 排出量の削減につながる結果となりました。

アイドリングストップ

による CO2 削減量 (年間)

総トリップ数(車種別の

OD表から)

= ×アイドリング1分間

あたり CO2 排出量(上表より)

×3分間 (アイドリング

ストップ時間)

365

日×

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

79

自転車の利用

自転車は化石燃料による CO2 を排出しないことから低炭

素に大きく寄与する交通手段と考えられます。

また、距離によっては、自動車等より早く目的地に到着

することもあるなど、短距離移動では自転車が有利な場合

があります。

北海道においては、道路に堆雪スペースを確保するため

路肩を広く確保していることが多く、自転車の通行空間を

確保しやすい状況にあると思われます。一方で、北海道で

は冬期間は自転車を使用できません。

温暖な期間だけでも、自動車から自転車に転換が進んだ場合、CO2 の削減が期待できます。

(試算)

自動車移動のうち、温暖期の短距離移動の一部は、自転車利用に転換すると想定しました。

(寒冷期は、自動車使用のままとする。)

・温暖期は、ここでは便宜的に各都市の「桜の開花の平年日」から各都市の「初雪の平年日」とし、

気象庁ホームページを参考に夏季日数を設定。

・自転車への転換率は、右表のように仮定。

なお、自転車への転換率については、都市の状況により大きく異なると

想定されることから、実際の試算を行う場合には、事前にアンケート等

により転換可能性を調査することが望ましい。

<計算の方法>

〈現況の交通量に対する CO2 削減量〉 (単位[千 t-CO2/年])

旭川市 函館市 釧路市 稚内市

運輸部門【現況】CO2 年間排出量 340.1 190.8 137.0 58.1

夏季に自転車に転換したことによる削減量 4.9 3.0 2.3 0.7

削減割合 1.5% 1.6% 1.7% 1.1%

以上のことから、短距離移動の一部が自転車にシフトする場合、1%程度の CO2 排出量の

削減につながることがわかります。

移動距離 転換率

~1km 20.0%

1~2km 17.5%

2~3km 15.0%

3~4km 12.5%

4~5km 10.0%

乗用車

鉄道など

自転車

LRTなど

バス

移動距離

輸送力

5km

図 3-21 輸送力と移動距離からみた交通手段

自転車転換による

CO2 削減量 (年間)

OD表で

ゾーン間距離が

◇~○km の

トリップ数

= Σ車種別

CO2

排出

原単位

× ×

各ゾーン間

距離

×

自転車が使える

日数 (例)(桜開花日

~初雪の日数)

◇~○km

の転換率

×

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

80

(2)民生家庭部門の CO2削減対策

北海道では、住宅の省エネルギー化へ向け、これまでに様々な技術開発が行われ、それらの実

用化により、新築住宅においては次世代省エネルギー基準※に適合する住宅の割合が 70%を超え

ています。

しかし、以前に比べて住宅面積の増加、給湯や電化製品に要するエネルギーの増加、オール電

化の普及などにより、必ずしも住宅からの CO2 排出量が減っているとはいえません。

今後、住宅からの CO2 排出量を削減するためには、更なる高気密、高断熱化や暖房機器のエネ

ルギー消費効率の改善などが必要となります。

住宅の高気密・高断熱化

次世代省エネルギー基準の熱損失係数(Q 値)は 1.6(w/m2K)ですが、Q 値をさらに小さくす

ることで暖房エネルギーを削減することができ、それにより CO2 排出量の削減が期待できます。

(試算)

次世代省エネルギー基準からの CO2 の削減率は以下の通りとなります。

Q 値(W/m2K) 1.6 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 1.0

次世代省エネ基準からの CO2 削減率 ― 5% 11% 17% 22% 28% 33%

(北方建築総合研究所 試算)

※参考(熱損失係数 1.4、1.2、1.0 の場合の断熱仕様の例)

Q 値 1.4 1.2 1.0

外壁 高 性 能 GW16K-100+XPS

(b-3)50mm

高 性 能 GW16K-100+ 高 性 能

GW16K-100mm

高 性 能 GW16K-100+ 高 性 能

GW16K-200mm

天井 グ ラ ス ウ ー ル ブ ロ ー イ ン グ

250mm

グ ラ ス ウ ー ル ブ ロ ー イ ン グ

400mm

同左

基礎 基礎断熱 XPS(b-3)100mm 同左 基礎断熱 XPS(b-3)150mm+

水平 XPS(b-3)50mm

開口部 樹脂サッシペア Low-e ガラス 樹脂サッシトリプル Low-e2ガラ

ス+Ar ガス

同左

(北方建築総合研究所 作成)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1990 1994 1998 2002 2006 2010 2014 2018

次世代省エネ 新省エネ 省エネ 以外

北方建築総合研究所 推計

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020CO2排出量 推計CO2排出量

(万t・CO2)

北方建築総合研究所 試算

図 3-22 新築住宅の省エネルギー基準別の適合割合の推移 図 3-23 住宅からの CO2 排出量

※省エネ法の改正をうけ、平成 11 年に改正告示された「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断と基準」及び

「同設計及び施工の指針」

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

81

ヒートポンプによる暖房

暖房機器の燃料には、灯油、ガス、電気など様々なものがあり、同じ住宅を同じ温度に暖房す

る場合でも、使用する燃料等の違いにより排出する CO2 は大きく違ってきます。特に蓄熱式等の

電熱器による暖房は CO2 排出量が多く、近年のオール電化住宅の普及により、その影響が懸念さ

れます。

ヒートポンプによる暖房は、燃料に電気を使用しますが、蓄熱暖房機に比べて 2 倍近い効率で

あるため、オール電化住宅での CO2 削減に寄与するものといえます。

(試算)

電気蓄熱暖房を使用している世帯のうち、ある一定の割合がヒートポンプへ転換した場合

の CO2 削減量を試算します。

各設定値(実際に試算する場合、普及率はアンケート調査などの結果を用いるのが望ましい)。

電気蓄熱暖房の現在の普及率 5.8%

暖房エネルギー消費量(1世帯当たり、年間) 28,000 MJ/世帯・年

蓄熱式暖房機の効率 100%

ヒートポンプ式暖房機の成績係数(COP) 2.0

ヒートポンプの将来普及率 71.5%

「平成22年度チャレンジ 25 地域づくり事業報告書(北海道地域)」(環境省)による

1 世帯当たりの CO2 削減量

= 5.8[%] × 71.5[%] × (28,000 [MJ/世帯・年] / 100[%] - 28,000 [MJ/世帯・年] / 2.0)

÷3.6 [MJ/kWh] × 0.485 [kg-CO2/kWh]※1

= 78.22 [kg-CO2/世帯・年]

4都市における CO2 削減量は次のとおりです。1%程度の削減が見込まれる結果となって

います。

旭川市 函館市 釧路市 稚内市

世帯数※2 154,393 126,180 81,015 17,343

民生家庭部門 CO2 排出量(現況)

[千 t-CO2/年]

775.6 547.9 372.8 85.4

CO2 削減量 [千 t-CO2/年] 12.1 9.9 6.3 1.4

削減割合 1.6% 1.8% 1.7% 1.6%

(※1) 電力の CO2 排出原単位(「平成 22 年度の電気事業者ごとの実排出係数・調整後排出係数等の公表について(環境省)」)

(※2) H22 国勢調査

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

灯油ボイラ 蓄熱暖房機 空気熱源

ヒートポンプ

地盤熱源

ヒートポンプ

ガスコージェネ

(kgco2)

北方建築総合研究所 試算暖房 給湯 その他

図 3-24 暖房給湯設備別の1世帯あたり CO2 排出量

蓄熱給湯器

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

82

(3)新エネルギーの活用

北海道には多くの自然や産業等に由来する新エネルギーが存在します。北海道の都市の多くは、

都市域のすぐ近くに自然や農村が広がり、このような新エネルギーを活用しやすい環境にありま

す。

ここでは、新エネルギーとして、製材の過程等で生じる木質バイオマス、農村から生じる家畜

ふん尿、雪氷、太陽光、風力を活用した場合の CO2 削減量について試算します。

太陽光発電

北海道105,634,607,193MWh

平均の9.81倍

全国第1位

陸上風力発電

北海道1,073,861,698MWh

平均の13.78倍

全国第1位全国

3,663,697,140MWh

平均77,951,003MWh

洋上風力発電

北海道8,345,882,622MWh

平均の14.01倍

全国第1位全国

28,001,620,787MWh

平均595,779,166MWh

中小水力発電

北海道8,606,168MWh

平均の4.15倍

全国第3位全国

97,379,036MWh

平均2,071,894MWh

下水熱利用

北海道23,676GJ

平均の4.34倍

全国第3位

全国256,541GJ

平均5,458GJ

雪氷熱利用

北海道17,531,680,000GJ

平均の18.78倍

全国第1位

全国43,855,916,000GJ

平均933,742,894GJ

林地残材

北海道8,715,275GJ

平均の7.82倍

全国第1位

全国52,356,972GJ

平均1,113,978GJ

製材所廃材

北海道20,814,573GJ

平均の6.05倍

全国第1位

全国161,633,767GJ

平均3,439,016GJ

公園剪定枝

北海道160,576GJ

平均の5.28倍

全国第1位全国

1,428,843GJ

平均30,401GJ

農業残渣

北海道15,387,728GJ

平均の4.68倍

全国第1位全国

154,698,396GJ

平均3,291,455GJ

畜産廃棄物

北海道8,643,920GJ

平均の7.10倍

全国第1位全国

57,229,857GJ

平均1,217,657GJ

全国506,167,349,891MWh

平均10,769,518,083MWh

図 3-25 北海道における新エネルギー賦存量 (「再生可能エネルギー資源等の賦存量等の調査についての統一的なガイドライン」〈平成 23 年、緑の分権改革推進会議〉を基に作成)

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

83

木質バイオマス

北海道の森林面積は全国の 71%に当たる 554 万 ha

で、道民一人当たりでは全国平均の約5倍に当たる約

1ha となっています。

間伐や製材などから生じる木質チップ、ペレットなど

を灯油の代替燃料として使用することでCO2の削減が期

待できます。

(試算)

各設定値(実際に試算する場合、普及率はアンケート調査などの結果を用いるのが望ましい)。 暖房エネルギー消費量(1世帯当たり、年間) 35,000 MJ/世帯・年

ペレットストーブの普及率 3.9%

灯油の CO2 排出原単位 0.0678 kg-CO2/kWh

「平成22年度チャレンジ 25 地域づくり事業報告書(北海道地域)」(環境省)による

1 世帯当たりの CO2 削減量

= 3.9 [%] × 35,000 [MJ/世帯・年] × 0.0678 [kg-CO2/MJ] = 92.55 [kg-CO2/世帯・年]

4都市の CO2 削減量は次のとおりです。2%程度の削減が見込まれる結果となっています。 旭川市 函館市 釧路市 稚内市

世帯数(H22 国勢調査) 154,393 126,180 81,015 17,343

民生家庭部門 CO2 排出量(現況)[千 t-CO2/年] 775.6 547.9 372.8 85.4

CO2 削減量 [千 t-CO2/年] 14.3 11.7 7.5 1.6

削減割合 1.8% 2.1% 2.0% 1.9%

バイオガス

北海道の牛乳生産量は全国の約半数を占め、家畜ふん

尿の量は全国一となっています。家畜ふん尿から発生す

るバイオガスを発電や暖房の燃料に利用することで、

CO2 の削減に効果があります。

(試算)

鹿追町のバイオガス発電プラントの実績をもとに、家畜ふん尿が多い地域での CO2 削減量 を試算します。 ※鹿追町バイオガスプラントの稼働状況(鹿追町 H24)

年間 CO2 削減量

=2,384[kWh/日]×365[日]×0.485[kg-CO2/kWh]※1=0.42[千 t-CO2/年]

原料投入量 29.565 千 t/年

平均発電量 4,584 kWh/日

平均売電量 2,384 kWh/日

北海道 十勝 オホーツク 釧路 根室

家畜糞尿量 [千 t/年]※2 20,979 5,394 3,549 2,308 3,074

鹿追町型プラント数※3 710 182 120 78 104

CO2 削減量 [千 t-CO2/年] 298 76 50 33 44

〈CO2 削減量〉

(※1) 電力の CO2 排出原単位(「平成 22 年度の電気事業者ごとの実排出係数・調整後排出係数等の公表について(環境省)」)

(※2) 「北海道地域における地域循環圏の構築に向けた検討業務報告書」H23、北海道地方環境事務所

(※3) 各地域の家畜糞尿量から整備可能な鹿追町型プラントの数(家畜糞尿量÷鹿追町バイオガスプラントの原料投入量)

賦存量多

賦存量少

図 3-26 林地残材バイオマス賦存量

(「新エネルギー賦存量等推計支援ツール」平成 24 年、北海道経済部)

賦存量多

賦存量少

図 3-27 畜産系バイオマス賦存量

(「新エネルギー賦存量等推計支援ツール」平成 24 年、北海道経済部)

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

84

雪氷利用

北海道は豪雪地帯に属し、多くの積雪があります。また寒冷な時期が長く、冬の雪氷を夏まで

貯蔵しやすい環境にあります。積雪量が多い日本海側では雪利用が、冬季の 低気温が低い内陸

部では氷の利用が考えられます。

事業所等におけるガス冷房を雪氷冷房に転換することで、CO2 の削減が期待できます。

(試算)

4 都市における試算結果を示します。普及率を 4%程度としてもある程度の効果が見込まれ

ます。

各設定値(実際に試算する場合、普及率は実際のアンケート調査などの結果を用いるのが望ましい)。 事業所1件当たりの雪氷導入量 700 t/件

雪氷の利用可能率 70%

雪の融解潜熱 334 MJ/t

雪氷冷熱の普及率 4.3%

ガス吸収式冷温水機の成績係数(COP) 1.1

天然ガスの CO2 排出原単位 0.0513 kg-CO2/MJ

「平成22年度チャレンジ 25 地域づくり事業報告書(北海道地域)」(環境省)による 事業所1件当たりの CO2 削減量

= 4.3 [%] × 700 [t/件] × 70[%] × 334 [MJ/t] ÷ 1.1 × 0.0513 [kg-CO2/MJ] = 328.2 [kg-CO2/件]

〈CO2 削減量〉

旭川市 函館市 釧路市 稚内市

事業所数(H19 事業所・企業統計調査 総務省) 15,774 15,162 9,732 2,350

CO2 削減量 [千 t-CO2/年] 5.2 5.0 3.2 0.8

太陽光発電

北海道は日射こそ強くないものの、家と家の間隔が広

いため、 適な角度に太陽光パネルを取り付けても、日

影の影響が少ないという特徴があります。また、冬季の

晴天日数が多い太平洋側では、十分な日射が得られるこ

とからも、家庭用太陽光発電装置の導入による CO2 の削

減が期待できます。

(試算)

各設定値(実際に試算する場合、導入意向は実際のアンケート調査などの結果を用いるのが望ましい)。 道央圏 道南圏 道北圏 道東圏 十勝圏 オホーツク圏

太陽光発電の導入意向※1 12.5% 14.8% 13.3% 15.8% 17.8% 17.8%

年間発電量 [kWh/世帯・年]※2 3,374 3,263 3,160 3,630 3,630 3,425

電気の CO2 排出原単位※3 0.485 kg-CO2/kWh

〈CO2 削減量〉

旭川市 函館市 釧路市 稚内市

世帯数(H22 国勢調査) 154,393 126,180 81,015 17,343

年間発電量[kWh/年]※4 64,888,290 60,935,350 46,465,343 7,288,916

CO2 削減量[千 t-CO2/年]※5 31.5 29.6 22.5 3.5

民生家庭部門現況 CO2 排出量[千 t-CO2/年] 775.6 547.9 372.8 85.4

削減割合 4.1% 5.4% 6.0% 4.1%

(※1) 「平成22年度チャレンジ 25 地域づくり事業報告書(北海道地域)」(環境省)

(※2) 4kW/世帯、補正係数 0.065 で算出(出典は※1 と同じ)

(※3) 電力の CO2 排出原単位(「平成 22 年度の電気事業者ごとの実排出係数・調整後排出係数等の公表について(環境省)」)

(※4) 世帯数×導入意向×年間発電量(世帯当たり) (※5) 年間発電量×0.485

賦存量多

賦存量少

図 3-28 太陽光発電賦存量

(「新エネルギー賦存量等推計支援ツール」平成 24 年、北海道経済部)

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

85

風力発電

北海道の日本海側は日常的に風が強く、安定した

風力が得られます。安定した風力が得られるのは日

本海側と日高地方の一部になりますが、国内 大級

の風力発電施設「宗谷岬ウインドファーム」を擁す

る稚内市では、風力発電により市内の民生家庭部門

の CO2排出量とほぼ同等の CO2を削減しています。

(試算)

稚内市における風力発電による CO2 削減量の試算結果を示します。

〈CO2 削減量〉

施設名 設備容量

[kW]

※1

設備利用率

[%]

※2

電力の CO2 排出原単位

[kg-CO2/kWh]

※3

CO2 削減量

[千 t-CO2/年]

※4

宗谷岬ウインドファーム 57,000

26 0.485

63.0

さらきとまないウインドファーム 14,850 16.4

稚内市水道部風力発電所 1,980 2.2

稚内公園風力発電所 225 0.2

稚内風力発電所 2,300 2.5

合計 76,355 84.3

図 3-29 陸上風力の賦存量(風速)

(「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」平成 22 年、環境省)

(※1) 稚内市ホームページより

(※2) 平成21年度全道平均(「平成21年度北海道における風力発電の現状と課題」経済産業省)

(※3) 電力の CO2 排出原単位(「平成 22 年度の電気事業者ごとの実排出係数・調整後排出係数等の公表について(環境省)」)

(※4) 設備容量×設備利用率×0.485×24h×365 日

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第3章 CO2 排出量の算出方法と削減効果

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