43
38 3 章 土 圧 3土 圧 3.1 概 説 主働土圧および受働土圧の算定には,クーロンの土圧理論とランキンの土圧理 論が一般的に用いられている。クーロンの土圧理論は,1773 年にクーロンが「建 築における静力学的な問題に最大と最小の原理を適用することについてのノート」 という論文で発表した「くさび理論」に基づいている 1) 。この土圧理論を用いた土 圧算定法に試行くさび法,クーロン式 2) ,物部 3) ・岡部式 4) ,中畑式 5) GLEM 6),7) などがある。ランキンの土圧理論は,1856 年にランキンが「ゆるい土の安定につ いて」と題する論文で発表したものである。 擁壁の設計では,数値計算法である試行くさび法を用いることが多いが,擁壁 背面の盛土形状が一様な場合にはクーロン式あるいは物部・岡部式を,台形盛土 の場合には中畑式を適用できる。盛土勾配が一様な片持ばり式擁壁の仮想背面に 作用する土圧については,ランキン式が適用できる。これらの土圧公式を用いれ ば,試行くさび法よりも簡単に土圧を計算できる。 本章では,クーロンの土圧理論(くさび理論,クーロン式,物部・岡部式,中 畑式,GLEM),ランキンの土圧理論,改良試行くさび法 8),9) ,地震時土圧の新し い計算法 (修正物部・岡部式 10),11) ,松尾らの式 12),13) )について説明し,その後で各 種擁壁の設計実務で使用されている土圧算定法について説明する。 3.2 クーロンの土圧理論 3.2.1 くさび理論 (1) 主働土圧 擁壁が前方へわずかに移動すると,擁壁背後の盛土には図 3.1 に示すような 2 のすべり面が発生する。壁面に沿うすべり面 ab と盛土の内部を通過するすべり面 ac である。この 2 つのすべり面によって挟まれた土塊 abc が,それぞれのすべり 面に垂直な反力 N 1 N 2 とすべり面に沿う反力 F 1 F 2 によって支えられて,極限的 なつり合い状態(極限平衡状態)にあるとみなせば,水平方向と鉛直方向の力のつり 合い条件からそれぞれの 4 個の反力を求めることができる。壁面からの反力 N 2 39 F 2 が主は受働クーなせるしていず,すいるとでいる壁設計裏込面に発F F N 1 あるいあるとり,力V H R 土圧である。こ圧を算定する方ンのくさび理論は,壁面が滑らりすると,すべり り面を直線と見うことになる。,壁面の傾斜や実務で広く利用土のせん断抵抗するは摩擦力 F 1 = = δ φ tan tan 2 2 1 1 N F N F ········ F 1 の合力を RN 2 3.2 のようにれば,力の関係つり合い方程式V=0 より ) cos( φ ω A P R W H=0 より cos( ) sin( α φ ω A P R 3 ように,土くさび が,クーロンのく は,すべり面を直で鉛直な場合に限 面は理論的に曲線すと言うことは,ーロンのくさび理擦を考慮して土圧れている。 をφ,壁面の摩擦F 2 は,クーロン······························ F 2 の合力を P A くことができる。 3.1 あるいは図 3 次のようにたてら0 ) sin( = + δ α A ········ 0 ) ( = + δ α ·············· 3.1 クーロンのくさび の極限平衡状態かさび理論である。 と仮定する。すられる。壁面に摩なるはずである。 ーメントのつりは,このような算定することがをδとすれば,より次のように表····························· すれば,土塊に作らに,これらの力3.2 の多角形としてる。 ····························· ····························· 理論(主働土圧) 主働土圧あるい り面を直線と見 があったり傾斜 それにも関わら いが無視されて 学的矛盾を含ん きることから擁 限状態ですべり れる。 ················ ( 3.1) する力は図 3.1 つり合い状態に される。これよ ················ ( 3.2) ················ ( 3.3)

3 土 圧...42 第3 章 土 圧 3.2.2 クーロン式 (1) 主働土圧 図3.6 のように盛土面の勾配が一定であれば,微分法を用いて解析的に主働土圧 P

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  • 38

    第 3 章 土 圧

    第3章 土 圧

    3.1 概 説

    主働土圧および受働土圧の算定には,クーロンの土圧理論とランキンの土圧理

    論が一般的に用いられている。クーロンの土圧理論は,1773 年にクーロンが「建

    築における静力学的な問題に最大と最小の原理を適用することについてのノート」

    という論文で発表した「くさび理論」に基づいている 1)。この土圧理論を用いた土

    圧算定法に試行くさび法,クーロン式 2),物部 3)・岡部式 4),中畑式 5),GLEM6),7),

    などがある。ランキンの土圧理論は,1856 年にランキンが「ゆるい土の安定につ

    いて」と題する論文で発表したものである。

    擁壁の設計では,数値計算法である試行くさび法を用いることが多いが,擁壁

    背面の盛土形状が一様な場合にはクーロン式あるいは物部・岡部式を,台形盛土

    の場合には中畑式を適用できる。盛土勾配が一様な片持ばり式擁壁の仮想背面に

    作用する土圧については,ランキン式が適用できる。これらの土圧公式を用いれ

    ば,試行くさび法よりも簡単に土圧を計算できる。

    本章では,クーロンの土圧理論(くさび理論,クーロン式,物部・岡部式,中

    畑式,GLEM),ランキンの土圧理論,改良試行くさび法 8),9),地震時土圧の新し

    い計算法 (修正物部・岡部式 10),11),松尾らの式 12),13))について説明し,その後で各

    種擁壁の設計実務で使用されている土圧算定法について説明する。

    3.2 クーロンの土圧理論

    3.2.1 くさび理論 (1) 主働土圧 擁壁が前方へわずかに移動すると,擁壁背後の盛土には図 3.1 に示すような 2 つ

    のすべり面が発生する。壁面に沿うすべり面 ab と盛土の内部を通過するすべり面

    ac である。この 2 つのすべり面によって挟まれた土塊 abc が,それぞれのすべり

    面に垂直な反力 N1,N2とすべり面に沿う反力 F1,F2によって支えられて,極限的

    なつり合い状態(極限平衡状態)にあるとみなせば,水平方向と鉛直方向の力のつり

    合い条件からそれぞれの 4 個の反力を求めることができる。壁面からの反力 N2,

    39

    F2が主働

    は受働土

    クーロ

    なせるの

    していた

    ず,すべ

    いるとい

    でいるが

    壁設計の

    裏込め

    面に発生

    FF

    N1と

    あるいは

    あるとす

    り,力の

    ∑V

    ∑H R

    働土圧である。この

    土圧を算定する方法

    ロンのくさび理論で

    のは,壁面が滑らか

    たりすると,すべり

    べり面を直線と見な

    いうことになる。ク

    が,壁面の傾斜や摩

    の実務で広く利用さ

    め土のせん断抵抗角

    生するは摩擦力 F1,

    ⎭⎬⎫

    ==

    δφ

    tantan

    22

    11

    NFNF

    ········

    F1の合力を R,N2は図 3.2 のように描

    すれば,力の関係は

    のつり合い方程式が

    V=0 より )cos( −−− φω APRW

    H=0 より cos()sin( −− αφω APR

    第 3 章 土

    のように,土くさび

    法が,クーロンのく

    では,すべり面を直線

    かで鉛直な場合に限

    り面は理論的に曲線に

    なすと言うことは,モ

    クーロンのくさび理論

    摩擦を考慮して土圧を

    されている。

    角をφ,壁面の摩擦角

    F2は,クーロン則

    ······························

    と F2の合力を PAと

    描くことができる。さ

    は図 3.1 あるいは図 3

    が次のようにたてられ

    0)sin( =+ δαA ········

    0)( =+δα ··············

    図 3.1 クーロンのくさび

    土 圧

    の極限平衡状態から

    さび理論である。

    線と仮定する。すべ

    られる。壁面に摩擦

    になるはずである。

    モーメントのつり合

    論は,このような力

    を算定することがで

    角をδとすれば,極

    則より次のように表さ

    ·····························

    すれば,土塊に作用

    さらに,これらの力が

    3.2 の多角形として表

    れる。

    ·····························

    ·····························

    理論(主働土圧)

    ら主働土圧あるい

    べり面を直線と見

    擦があったり傾斜

    それにも関わら

    合いが無視されて

    力学的矛盾を含ん

    できることから擁

    極限状態ですべり

    される。

    ················ ( 3.1)

    用する力は図 3.1

    がつり合い状態に

    表される。これよ

    ················ ( 3.2)

    ················ ( 3.3)

  • 40

    未知量

    すると,

    P

    W はす

    ものとす

    次に,

    は水平に

    の仕事量

    J

    J を最

    (3.6)は P

    きる。

    式(3.4

    3.3 のよ

    そのとき

    量は R と PAそして

    主働土圧 PAが次の

    PA cos()sin(

    δαφωφω

    −−−−

    =

    すべり土塊の重量で

    する。

    最小仕事の原理を

    に対してα+δだけ傾

    量 J は次式で表され()cos( xPJ A −⋅+= δα

    最小化する PAが正解

    PAを最大化すること

    0=Jddω

    , 2

    2≥J

    ddω

    0=APddω

    , 2

    2

    APddω

    4)でωを種々変化さ

    ような凸型の曲線にな

    きの PAが正解の主働

    図 3.2 想定すべり

    第 3 章 土

    ωの 3 個である。式

    のように表される。

    W)δ

    ·····················

    である。地表面に載荷

    を適用する。擁壁が裏

    傾斜する。擁壁は前

    れる。 )x ·························

    解の主働土圧である

    とと同じ意味をもつ

    0 ··························

    0≤ ·······················

    させて PAを計算し,

    なる。PAを最大化す

    働土圧である。

    面(主働土圧) 図

    土 圧

    式(3.2)と式(3.3)を連立

    ·····························

    荷重がある場合には

    裏込め土を押す力は

    前方へ x だけ移動した

    ·····························

    。数式で表すと次の

    つので,式(3.7)のよう

    ·····························

    ·····························

    ωと PAの関係をグ

    するすべり角が主働

    図 3.3 すべり角と主働土

    立させて R を消去

    ················ ( 3.4)

    は,それも含めた

    は PAで,作用方向

    たとすると,擁壁

    ················ ( 3.5)

    のようになる。式

    うに表すことがで

    ················ ( 3.6)

    ················ ( 3.7)

    グラフに描くと図

    働すべり角ωAで,

    土圧の関係

    41

    第 3 章 土 圧

    【参考】 式(3.4)の誘導

    式(3.2)× )sin( φω − 0)sin()sin()cos()sin()sin( =−+−−−−− φωδαφωφωφω APRW ··············· ①

    式(3.3)× )cos( φω − 0)cos()cos()cos()sin( =−+−−− φωδαφωφω APR ·································· ②

    ①+②

    { } 0)sin()sin()cos()cos()sin( =−++−+−− φωδαφωδαφω APW ··············· ③ 三角関数の加法定理 βαβαβα sinsincoscos)cos( m=± を適用すると 0)cos()sin( =−−−−− βαφωφω APW ··················································· ④

    整理すると式(3.4)が得られる。

    (2) 受働土圧 擁壁が後方へ変位し,極限状態に達すると図 3.4 のようなすべり面が発生する。

    この状態を受働状態と呼ぶ。受働状態には,摩擦力が主働状態と逆向きに働くが,

    本書では図 3.4 のδの向きを正としている(擁壁工指針とは異なる)。土くさびに作

    用する力のつり合い条件を考慮すれば,式(3.8)が得られる。

    WPP )cos()sin(

    δαφωφω

    +−++

    = ································································· ( 3.8)

    ωを変化させて PPを計算し,ωと PPの関係をグラフに描くと図 3.5 のように下

    に凸の曲線になる。PPを最小化するすべり角が受働すべり角ωPで,そのときの

    PPが正解の受働土圧になる。

    図 3.4 受働土圧 図 3.5 すべり角と受働土圧の関係

    α

    ωP

    β

    a

    b

    変位

    RPP

    W

    φωΑδ

    c

    ωωP0

    PP

    PPmin(正解) 0=ωd

    dPP

  • 42

    第 3 章 土 圧

    3.2.2 クーロン式 (1) 主働土圧 図 3.6 のように盛土面の勾配が一定であれば,微分法を用いて解析的に主働土圧

    PAを求めることができる。式(3.9)は,1906年にミュラー・ブレスロー(Müller-Breslau)

    によって導かれたものであるが,一般にはクーロン式と呼ばれている 2)。

    図 3.6 クーロン式の説明 図 3.7 土圧分布

    ⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧

    −⋅+=

    )cos(coscos21

    21 2

    βαβα

    γγ

    HqKHP AA ·················································· ( 3.9)

    ここに,H は擁壁高,γは土の単位体積重量,q は地表載荷重,αは壁面の傾斜

    角,βは盛土面の傾斜角,KAは主働土圧係数で,式(3.10)で表される。

    ( )

    ( ) ( ) ( )( ) ( )

    22

    2

    coscossinsin1coscos

    cos

    ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧

    −+−+

    ++

    −=

    βαδαβφδφδαα

    αφAK ···················· ( 3.10)

    主働すべり面の角度ωAは式(3.11)で求めることができる。

    ( )( ) ( )( ) ( ) ( )

    ββαδφ

    βφβαδφδα

    βαδφω +

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    −++−−−++

    −++= −

    sin sincossincoscostan 1A ····················· ( 3.11)

    擁壁の天端から H の深さの主働土圧強度 pAは,式(3.9)を H で微分して求めるこ

    とができ,式(3.12)となる。

    RPA

    W

    α

    φωΑδ

    a

    b

    c

    q

    β

    αH

    q

    pA

    PA

    α+δα

    H

    pA

    PAα+δ

    (a)載荷重なし (b)載荷重あり

    43

    第 3 章 土 圧

    ⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧

    −+=

    )cos(coscos

    βαβαγ qHKp AA ···························································· ( 3.12)

    盛土面が水平(β=0)であれば,次のようになる。 )( qHKp AA += γ ············································································· ( 3.13)

    地表面に載荷重がない場合の土圧の分布は,三角形となる。載荷重があれば図

    3.7(b)に示すような台形になる。擁壁工指針では,載荷重の有無に関係なく土圧分

    布を図 3.7(a)のような三角形としている。これは,単に計算の簡便化を図るためと

    思われる。

    (2) 受働土圧 地表面の勾配が一定の場合には,式(3.14)で受働土圧 PP を求めることができる。

    21 2

    PP KHP ⋅⋅= γ ········································································· ( 3.14)

    ( )

    ( ) ( ) ( )( ) ( )

    KP =+

    − −+ +− −

    ⎧⎨⎪

    ⎩⎪

    ⎫⎬⎪

    ⎭⎪

    cos

    cos cossin sincos cos

    2

    2

    2

    1

    φ α

    α α δφ δ φ βα δ α β

    ························· ( 3.15)

    ( )

    ( ) ( )( ) ( ) ( )

    sin

    sincossincoscostan 1 β

    βαδφβφβαδφδα

    βαδφω +

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    +−−++−−+

    +−−= −P ··········· ( 3.16)

    式(3.15),式(3.16)では,図 3.4 に示すδの向きを正としている。擁壁工指針 14)

    とはδの符号が逆になるので注意が必要である。

    クーロンの土圧理論では,すべり面を直線と仮定しているが,壁面が傾斜して

    いる場合や壁面摩擦がある場合には図 3.11 のような曲線になる。直線として計算

    すると主働土圧は過小に,受働土圧は過大に与えられる。主働土圧の場合には,

    誤差が小さいため実用上問題になることはない。しかし,受働土圧は誤差が大き

    く,しかも危険側になる。傾斜角や壁面摩擦角を 0 として計算するなどの配慮が

    必要である。擁壁工指針 14)では,δ=0 とするものとしている。

  • 44

    3.2.3 物震度法

    の慣性力

    よび地

    ー・ブレ

    時期に発

    P

    ただし

    K

    物部・岡部式

    法に基づいた地震時

    力 khW を作用させる

    地盤を傾斜させて求

    レスロー式を拡張し

    発表されたことから

    AA KHP2

    21 γ= ·······

    し,

    2 cocoscos

    =

    αθ

    AK

    図 3

    δ=30゜

    PP

    第 3 章 土

    図 3.8 受働状態の

    時の主働土圧は,図

    るか,もしくは図 3.9

    求めることができ,式

    したこの式は,物部

    ら物部・岡部式と呼ば

    ······························

    2

    c1)os(

    (cos

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧

    +++

    δθα

    αφ

    3.9 震度法による地震時

    KP

    30゜

    ソコロフ

    土 圧

    のすべり面

    3.9(a)のようにすべ

    9(b)のように地震合成

    式(3.17),式(3.18)で3)と岡部 4)によって

    ばれ,世界的に知ら

    ·····························

    cos()cos(sin()sin(

    )

    ++−+

    αδθαβφδφ

    θα

    時の主働土圧の説明

    P=6.55

    KP=10.10

    13゜

    スキー

    クーロン

    り土塊に水平方向

    成角θだけ擁壁お

    表される。ミュラ

    1924 年のほぼ同

    られている。

    ··············· ( 3.17)

    2

    ))

    ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    −−

    βαθβ

    ( 3.18)

    45

    θ

    地震時

    ω

    当然の

    β=0,

    3.2.4 中(1) 常時盛土が

    すべり面

    た式(3.2

    ω

    P

    hk1tan−=θ ···········

    時の主働すべり角は

    αα

    ω

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    −+

    = −

    cos(cos(

    tan 1A

    のことではあるが,

    δ=0 とおけば,KA

    中畑式

    時主働土圧

    が図 3.10の形状をし

    面は ac のように盛土

    22)の中畑式 5)を適用

    βω

    cottan 1

    HhHh

    A −+

    ≤ −

    { tancos

    sin ψψ

    φ= aA

    WP

    第 3 章 土

    ······························

    は次式で求められる。

    θβφβδφδθ

    αδφ

    −−−−+++

    −++

    )sin())sin()

    cos(

    θ=0 とおけばクー

    は後述のランキン式

    し,主働すべり角ωA

    土の肩の後方を通る

    用して主働土圧を算

    αtanHH

    ···················

    }2tancot ηψφ −−+

    図 3.10 中畑式が適

    土 圧

    ·····························

    βαδφ

    β+

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    −++

    )sin(

    )

    ーロン式と一致する。

    式と一致する。

    が式(3.21)の条件を満

    る。その場合には,解

    算定することができる

    ·····························

    }2 ·························

    用できる条件

    ··············· ( 3.19)

    β+ ·········· ( 3.20)

    さらに,α=0,

    満たしていれば,

    解析的に求められ

    る。

    ··············· ( 3.21)

    ··············· ( 3.22)

  • 46

    第 3 章 土 圧

    ただし,

    ψηψφψ

    ωtan))(tancot(tan

    1tan 1−−+

    = −A ······································ ( 3.23)

    ( ) ( )

    ( )⎪⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪⎪

    +⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛+=

    +++=

    −=

    ++=

    βαγ

    γ

    γ

    αη

    δαφψ

    cottan22

    2

    tan

    2

    qhhW

    hHqhHW

    WW

    b

    a

    a

    b

    ················································· ( 3.24)

    (2) 地震時主働土圧 中畑が誘導したのは常時の主働土圧を算定する式であるが,地震時に簡単に拡

    張することができ,式(3.22),式(3.23)は,式(3.25),式(3.26)となる。

    { }2tan)cot(tancoscos

    )sin(ηψθφψ

    θψθφ

    −−−+−

    = aAWP ·························· ( 3.25)

    ただし,

    ψηψθφψ

    ωtan))}(tancot({tan

    1tan 1−−−+

    = −A ······························· ( 3.26)

    θは地震の合成角で,式(3.19)による。

    【計算例】 下図の重力式擁壁に作用する常時の主働土圧を,嵩上げ盛土が h=2m

    の場合と h=6m の場合について求めよ。

    【解答】

    1:2.0

    1:0.2

    H=3m

    h=2m,6m

    q=10kN/m2

    β

    α ωo

    γ=19kN/m3φ=30゜δ=20゜

    47

    第 3 章 土 圧

    a) 壁面および盛土の傾斜角

    壁面の傾斜角 2.0tan =α , ゜31.1120.0tan 1 == −α

    盛土の傾斜角 0.2cot =β , ゜57.260.2

    1tan 1 == −β

    b) かかとと盛土の肩を結ぶ線の角度

    αβω

    tancottan 10 Hh

    Hh−+

    = −

    h=2m のとき ゜8.552.030.22

    32tan 1 =×−×

    += −oω

    h=6m のとき ゜3.382.030.26

    36tan 1 =×−×

    += −oω

    c) h=2m のときの主働土圧 中畑式によって計算する。 ゜31.612031.1130 =++=++= δαφψ

    ( ) ( )hHqhHWa +++= 22γ kN/m5.287)23(10)23(

    219 2 =+×++×=

    ( )βαγ

    γ cottan22

    +⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛+=

    qhhWb ( ) kN/m6.1270.22.01910222

    219

    =+⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ ×+××=

    24.05.2876.1272.0tan −=−=−=

    a

    b

    WWαη

    071.2)244.0(827.1tan559.330cot827.1cottan

    827.131.61tantan

    =−−=−=+=+

    ==

    ηψφψ

    ψ

    ゜゜ 55.84.48827.1071.2559.3

    1tantan))(tancot(tan

    1tan

    0

    11

    =

  • 48

    第 3 章 土 圧

    d) h=6m のときの主働土圧 盛土勾配がβ=26.57゜で一様と仮定してクーロン式で計算する。

    主働すべり角

    ββαδφ

    βφβαδφδα

    βαδφω +

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    −++−−−++

    −++= −

    )sin()sin()cos()sin()cos(

    )cos(tan 1A

    57.2674.34sin

    43.3sin)26.15cos(50sin31.31cos74.34costan 1 +

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    −−

    ×= − =42.9゜>ωo=38.3゜

    すべり面が盛土肩の前方を通るので,クーロン式が適用できる。

    主働土圧係数

    ( )

    ( ) ( ) ( )( ) ( )

    22

    2

    coscossinsin1coscos

    cos

    ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧

    −+−+

    +−

    −=

    βαδαβφδφδαα

    αφAK

    ( ) ( )

    22

    2

    26.15cos31.31cos43.3sin50sin169.8cos31.11cos

    69.18cos

    ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧

    −××

    +×−×

    = =0.715

    主働土圧

    kN/m1.61715.031921

    21 22 =×××== AA KHP γ

    3.3 GLEM(一般化された極限平衡法)

    クーロンの土圧理論ではすべり面を直線と仮定している。この仮定が理論的に

    成り立つのは,壁面が鉛直,地表面が一様勾配,壁面摩擦角および壁面付着力が 0

    の場合に限られる。これ以外の条件では,壁面付近で主応力の回転が生じ,すべ

    り面は曲線を描く。

    49

    第 3 章 土 圧

    ここでは,すべり面の非線形性を考慮した主働土圧,受働土圧の算定法につい

    て説明する。この方法は,GLEM(Generalized Limit Equilibrium Method,一般化さ

    れた極限平衡法)と呼ばれる数値計算法であって,榎ら 6),7)によって提案されたも

    のである。

    従来,土圧,支持力,斜面安定問題は別個の問題として取り扱われてきたが,

    GLEM を適用すればクーロンの土圧理論を応用することによって土圧,支持力,

    斜面安定問題を同一の問題として取り扱うことができ,極めて平易に精度の高い

    解を求めることができる。

    3.3.1 主働土圧 (1) GLEM による計算法

    GLEM では,まず,図 3.11(a)のように,極限状態で想定されるすべり面 aedc を

    仮定し,すべり土塊 abcde を n 個(この例では n=3 個)の適当なブロックに分割し,

    各ブロックの形状寸法を定める。1 番目のブロック①に作用する荷重は,自重 W1,

    上載荷重 Q0である。これに対して,ブロック底面 cd には N1,T1,左側面 bd には

    Q1,S1の垂直力とせん断力が発生する。これら 4 つの力はいずれも未知力である

    が,クーロンの土圧理論の説明と同様に水平方向と鉛直方向でそれぞれ力のつり

    合い条件式をたてることができる。また,ブロック底面 cd と側面 bd はいずれもす

    べり面であるのでそれぞれ破壊条件式がたてられる。すなわち,未知量 4 個に対

    して 4 つの方程式がたてられるので,連立させて解けば 4 つの未知量全てを求め

    ることができる。2 番目のブロック②では,自重 W2および bd 面に作用するブロッ

    ク①からの力 Q1,S1が既知で,未知力は N2,T2,Q2,S2の 4 個であるのでブロッ

    ク①と同様に未知力を求めることができる。順次左隣のブロックへと同様の計算

    を進めていけば,最後のブロックの左側面力 Q3と S3が求められる。Q3と S3の合

    力 P が壁面 ab に作用する土圧合力である。

    ただし,最後のブロックの左側面(ab 面)だけは破壊条件式をたてるときにせ

    ん断抵抗角としてδ(壁面摩擦角,一般には 2/3φ),粘着力として cB(壁面付着力,

    一般には 0)を用いなければならない。

  • 50

    第 3 章 土 圧

    図 3.11 GLEM による主働土圧計算法

    すべり面とブロック分割を適当に仮定して求まった Q3 と S3の合力 P は,真の主

    働土圧合力ではない。すべり面の形状とブロック分割を種々変化(図 3.11 の場合

    では,c 点を左右に,d 点と e 点を上下左右に移動)させて計算し, Q3が最も大

    きくなる幾何形状を探索した時に得られる P がの真の(正解により近い)主働土

    圧合力である。

    この数値計算の精度は,分割数 n を多くするほど高まるが,分割数を多くすれ

    ば Q3の最大値を探索することが難しくなる。地表面が一様勾配であるような場合

    は n=5 程度で十分である。

    Q3を最大化する幾何形状を探索するのは,一見複雑そうに思えるが,例えば

    Microsoft Excel などの表計算ソフトに組み込まれているソルバー機能を利用すれ

    ば簡単に最適解を求めることができる。

    (2) 他の解析法による解との比較 地表面傾斜角がβ=20 ゚,0 ゚,壁面傾斜角がα=-20 ゚,0 ゚,20 ゚の場合について GLEM

    で主働土圧の算定を行った。その結果を表 3.1 および図 3.12 に示す。GLEM(分割

    数 n=5)で得られる主働土圧係数 KA をクーロン(Coulomb)解,すべり線法(SLM)

    b

    e

    a

    W3

    θ3

    T3

    N3

    Q2

    S2

    H3

    S3

    N3a

    b c

    d

    e

    ω1

    ω2

    ω3

    W1

    W2

    W3

    θ1θ2

    θ3

    Q0(上載荷重)

    T1

    N1

    N2

    T2

    T3

    Q1 S1Q2

    S2

    H3

    ②③

    b c

    d

    W1T1

    N1

    θ1

    S1Q1

    Q0

    H1

    b

    d

    e

    W2

    θ2

    T2

    N2

    S1 Q1

    S2

    Q2H2

    S3

    Q3(max)

    Q3(max)

    (a) ブロック分割 (b) 各ブロックに作用する力ω3

    ω2

    ω1

    固定する点

    変化させる点

    51

    第 3 章 土 圧

    によるソコロフスキ-(Sokolovski)4)の解,極限解析法(LAM)によるチェン(Chen)3)

    の解と比較すれば表 3.1 となる。

    クーロン解は,GLEM で n=1 とした場合と一致する。いずれの解析法を適用し

    ても大きな差異は見られないが,本解析はチェンの解とよく一致する。

    表 3.1 解析法による主働土圧係数 KA の比較 (φ=30 ゚)15)

    図 3.12 GLEM で分割数 n=5 とした場合の主働すべり面(φ=δ=30 ゚)15)

    壁面摩擦角 地表面傾斜角 壁面傾斜角 LEM SLM LAMδ (deg) β (deg) α (deg) Coulomb GLEM(n =5) Sokolovski Chen

    20 0.776 0.776 - 0.77620 0 0.424 0.426 - 0.425

    30 -20 0.227 0.239 - 0.23820 0.501 0.502 0.510 0.501

    0 0 0.297 0.303 0.310 0.302-20 0.168 0.182 0.195 0.17920 0.697 0.697 - 0.695

    20 0 0.415 0.415 - 0.41415 -20 0.239 0.245 - 0.245

    20 0.476 0.476 0.487 0.4750 0 0.301 0.303 0.300 0.302

    -20 0.180 0.190 0.206 0.189

    δH δ

    δ

    α=20゚

    δHδ

    PAδ

    (a) α=−20゚,β=20゚

    PA

    PAPA

    (b) α=0゚,β=20゚ (c) α=20゚,β=20゚PA

    PA

    (f) α=20゚,β=0゚(e) α=0゚,β=0゚(d) α=−20゚,β=0゚

  • 52

    第 3 章 土 圧

    また,ソコロフスキー解とも良い近似を示す。ただし,αが-20 ゚の場合,ソコロ

    フスキー解に比べ,本解析で n=5 とすると 7~8%主働土圧を小さめに評価するこ

    とになるが,工学的には許容される範囲であろう。α=−20゜の場合,クーロン式で

    得られる解はソコロフスキー解に比べ 14~16%小さくなる。壁面が後方へ傾斜し

    た擁壁にクーロン式を適用すると誤差が大きいといえる。

    図 3.12 は,β=0 とβ=20 の場合に,GLEM で分割数 n=5 として解析したときに得

    られる主働すべり面を描いたものである。裏込め土の内部には,すべり面が直線

    で表されるランキン塑性場とすべり面が曲線となる遷移場が出現する。αが大きく

    壁面が前方へ傾斜していると,ランキン場が広い範囲を占めるが,αが小さくなる

    に従って遷移場が拡大する。このことは,壁面傾斜角αが大きいとすべり面を直線

    で近似しても誤差は少ないが,αが小さく負になれば誤差が大きくなることを意味

    している。

    3.3.2 受働土圧 (1) GLEMによる計算法

    受働土圧の計算法も主働土圧の計算と同様に,極限状態で想定されるすべり面

    を仮定し,すべり土塊を n 個(この例では n=3 個)の適当なブロックに分割し各

    ブロックの形状寸法を定め, 1 番目のブロック①から順次左側のブロックへと計

    算を進めて行けば,壁面 ab に作用する垂直力 Q3とせん断力 S3が求められる.Q3 と S3の合力 P が壁面 ab に作用する土圧合力である。

    主働土圧の計算と異なるのは,せん断力 S,T の向きが逆になることと,Q3を幾

    何形状に対して最小化して求めるという点だけである。

    図 3.13 GLEM による受働土圧の計算法

    N3a

    b c

    d

    e

    ω1

    ω2

    ω3

    W1

    W2

    W3

    θ1θ2

    θ3

    Q0

    T1

    N1

    N2

    T2

    T3

    Q1 S1

    S3

    Q2

    S2

    H3

    ②③

    Q3(min)固定する点

    変化させる点

    53

    第 3 章 土 圧

    (2) 他の解析法による解との比較 GLEM で受働土圧係数 KPを計算し,クーロン解,ソコロフスキー15)解,チェン

    16)の解と比較した結果を表 3.2 に示す。また,本解析法で分割数 n=10 とした場合

    と n=1 とした場合のすべり面および受働土圧係数を図 3.14 に示す。なお,n=1 と

    した場合の解はクーロン解と同一である。主働土圧の場合と同様,本解析法はチ

    ェンの解と良く一致する.そして,ソコロフスキーの解に近似した結果を与える。

    図 3.14 GLEM による受働土圧の計算結果(β=0 ゚,φ=30 ゚)17)

    表 3.2 解析法による受働土圧係数 Kp の比較(φ=30 ゚,β=0 ゚)17)

    壁面摩

    擦角 δ(deg)

    壁面

    傾斜角

    α(deg)

    LEM SLM LAM

    Coulom

    b

    GLEM(n=5)

    GLEM(n=10) Sokolovski Chen

    30

    20 0

    -20

    4.76 10.10 72.56

    4.37 6.90 13.69

    4.37 6.87 13.42

    4.30 6.55 12.30

    4.41 7.10 14.40

    0

    20 0

    -20

    2.27 3.00 5.34

    2.27 3.00 5.09

    2.27 3.00 5.08

    2.16 3.00 5.06

    2.28 3.00 5.08

    δ=0 ゚の場合にはクーロン解でもソコロフスキー解にかなり近い値になる。しか

    し,壁面摩擦角δが大きくなればクーロンは土圧を過大に評価する。特に,壁面が

    後方に傾斜している場合(α

  • 54

    第 3 章 土 圧

    が小さくなるためである。特に,壁面が背後に傾斜(α0 ゚)や,壁面が背後に傾斜して

    いる場合(α

  • 56

    第 3 章 土 圧

    図 3.18 主働土圧のモール円

    φ

    φφφσσ

    sin1cos2

    sin1sin1

    13 +−

    +−

    = c ·························································· ( 3.28)

    ここで,式(3.29)の三角関数の公式を適用すると,式(3.28)は式(3.30)のように変

    形できる。

    ⎪⎪⎭

    ⎪⎪⎬

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ ±=

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ ±=

    ±

    245tan

    sin1cos

    245tan

    sin1sin1 2

    φφ

    φ

    φφφ

    m

    m ································································· ( 3.29)

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ −−⎟

    ⎠⎞

    ⎜⎝⎛ −=

    245tan2

    245tan213

    φφσσ c ··············································· ( 3.30)

    主働状態には鉛直応力が最大主応力σ1,水平応力が最小主応力σ3 になるので,

    式(3.30)でσ3=pA,σ1=γz+q とおけば,主働土圧 pA を求める式(3.31)が得られる。

    AAA KcKqzp 2)( −+⋅= γ ····························································· ( 3.31)

    ただし,

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ −=

    245tan2 φAK ·········································································· ( 3.32)

    粘着力があると z の小さい範囲で pAが負の値,つまり引張応力が発生すること

    になるが,土に亀裂が入れば引張力に抵抗できない。このため,pAが負となる範

    τ

    φ c

    τ f=c+σtanφ

    σ3=σ1KA

    σ1=γ z+q

    231 σσ +

    231 σσ −

    ccot=φ

    ωAA

    B

    CD E

    変位

    σ3=σ1KA

    σ1=γ z+q

    ωA

    q

    z

    H

    57

    第 3 章 土 圧

    囲には土圧が作用しないものとみなす。pA=0になる深さ zcは式(3.33)で与えられる。

    zcは粘着力による自立高さを意味する。

    γ

    φγγγ

    qcqKcz

    Ac −⎟

    ⎠⎞

    ⎜⎝⎛ +=−

    ⋅=

    245tan22 ·············································· ( 3.33)

    土圧合力は,土圧をその作用高の範囲で積分すればよく,次式となる。

    ( ) ( ){ } ( ) AcAccH

    z AAKzHcKqzHzHdzpP

    c−−+−−== ∫ 222

    1

    γ ··············· ( 3.34)

    主働すべり角ωAは,図 3.18 の∠BDC で表されるので次式となる。

    2

    45 φω +=A ··················································································· ( 3.35)

    (2) 受働土圧 受働状態の応力は,図 3.19 のようになるので,式(3.27)は式(3.36)のように変形

    できる。

    図 3.19 受働土圧のモール円

    φ

    φφφσσ

    sin1cos2

    sin1sin1

    31 −+

    −+

    = c ·························································· ( 3.36)

    受働状態には水平応力が最大主応力σ1,鉛直応力が最小主応力σ3 となるので,

    式(3.36)でσ1=pP,σ3=γz+q とおけば,主働土圧の場合と同様の方法で受働土圧

    pPを求める式(3.37)が得られる。

    PPP KcKqzp 2)( ++⋅= γ ····························································· ( 3.37)

    ただし,

    231 σσ −

    τ

    φ c

    τ f=c+σtanφ

    σ3=σ1KP

    σ1=γ z+qccot=φ

    ωPA

    B

    CD E

    q

    変位σ1=σ3KP

    σ3=γ z+q

    ωP

    H

    z

  • 58

    第 3 章 土 圧

    A

    P KK 1

    245tan 2 =⎟

    ⎠⎞

    ⎜⎝⎛ +=

    φ ································································· ( 3.38)

    受働土圧は式(3.37)を H で積分すればよく,次のように表される。

    PPH

    PP KcHKqHHdzpP 2)2(21

    0 ++== ∫ γ ·································· ( 3.39)

    受働すべり角ωPは,図 3.19 の∠BEC で表されるので,次式となる。

    2

    45 φω −=P ··················································································· ( 3.40)

    3.4.2 地表面が傾斜している砂質土(c=0) (1) モールの応力円と土圧係数 地表面がβの角度で傾斜している砂質土(c=0)の場合,主働状態の応力を表すモ

    ール円は図 3.20 となる。深さ z の位置で微小四辺形要素を考え,四辺形要素の鉛

    直を A 面,地表面に平行な面を B 面とすれば,A 面の応力はモール円上の A 点で,

    B 面の応力は B 点で表される。また,A 点を通り A 面に平行な線と B 点を通り B

    面に平行な線が交わる点を P とすると,この点がモール円の極になる。

    地表面から深さ z の位置の土被り圧はγz で表されるが,これは水平面に垂直な

    応力である。B 面はβの角度で傾斜しているので B 面に作用する鉛直応力は pv=γ

    zcosβとなる。モール円上では,pvは OB で表される。B 面に作用する地表面に平

    行な応力 pAは,モール円上の OA で表される。

    pAと pvの比は,次のように表される。ただし,C 点はモール円の中心 M から直

    線 OB に下した垂線の足で,線 PB の中点,つまり PC=CB である。また,OA=OP

    であることに注意する。

    PCOCPCOC

    OBOA

    cos +−

    ===βγz

    ppp A

    v

    A ······················································· ( 3.41)

    ここで,OC,PC の長さはそれぞれ次のようになる。

    βcosOMOC = , 22 (MC)MP)(PC −=

    平方根の中の MP,MC の長さは次のようになる。

    MP=MS1=OMsinφ,MC=OMsinβ

    したがって,PC の長さは,下記のように求められる。

    59

    第 3 章 土 圧

    図 3.20 地表面が傾斜した砂質土(c=0)の主働状態のモール円

    βφ 22 sinsinOMPC −=

    PC と前述の OC を式(3.41)に代入し,分子分母の OM を消すと式(3.42)となる。

    βφβ

    βφββγ 22

    22

    sinsincos

    sinsincoscos −+

    −−=

    zpA ···················································· ( 3.42)

    したがって,主働土圧係数 KAは次のようになる。

    βφβ

    βφββ

    γ 22

    22

    sinsincos

    sinsincoscos

    −+

    −−==

    zpK AA ·········································· ( 3.43)

    O M

    S1

    S2

    P(極)

    B

    A

    pA

    γzcosβ

    φ

    φ

    β

    β

    C

    B面

    A面

    地表面

    β

    zpv=γ・zcosβ

    p A

    σ1σ3 σ

    τ

    最大主応力面

    最小主応力面

    B面

    A面

    主働状態のモール円

    すべり面

    S 1

    すべり面

    S2

    90−φ

    ωΑ1ωΑ2

  • 60

    第 3 章 土 圧

    土圧作用高さを H とすると,主働土圧合力 PAは式(3.44)で表される。

    AA KHP2

    21 γ= ················································································ ( 3.44)

    (2) 主働すべり面と土圧分布 主働すべり面の方向は,図 3.20 のモール円より求めることができる。モール円

    はクーロンの破壊基準線と S1,S2で接触する。モール円の極は P 点であるので,P

    点と S1点および P 点と S2点を結んだ方向がすべり面の方向となる。

    すべり面 S1が水平面となす角ωA1とすべり面 S2が水平面となす角ωA2は,それ

    ぞれ式(3.45)となる。すべり面 S1と S2の挟角は地表面の傾斜角に関係なく 90-φで

    ある。

    図 3.21 地表面が傾斜している場合の主働すべり面と土圧分布

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    ⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛+−+=

    ⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛−++=

    φββφω

    φββφω

    sinsinsin

    2145

    sinsinsin

    2145

    12

    11

    A

    A

    ···················································· ( 3.45)

    主働すべり面および主働土圧分布を示すと図 3.21 となる。ランキンの土圧理論

    では,土圧は地表面に平行に作用することになる。

    β

    β

    90−φ

    ωA1ωA2

    H

    p A=γHK A

    P A=1/2γ

    H2 K A

    3HyA =

    a

    b

    c

    d

    すべり面

    S 1

    すべり面

    S2

    σ1

    σ1

    σ3σ3

    61

    3.4.3 試行試行く

    最大値を

    図 3.2

    ロンの破

    σ1であ

    に接する

    力)にな

    主働すべ

    すべり

    c’を通る

    土圧より

    試行く

    合い条件

    破壊基準

    行くさび法における想

    くさび法では,すべ

    を正解としている。

    22 は地表面から任意

    破壊基準線を描いて

    ある。モール円は b 点

    るモール円は主働状

    る。また,モール円

    べり面になる。

    り面①,③のように

    るモール円を描けば

    り小さく与えられる

    くさび法で,すべり

    件と破壊基準を同時

    準を満たしていない

    第 3 章 土

    想定すべり面の力学的

    べり面をいろいろと変

    このことの力学的意

    意深さ z の位置にお

    ている。σ軸上の b 点

    点から無数に描くこ

    状態を表し,モール円

    円とクーロンの破壊

    に任意のすべり面とク

    ば,それは破線の円弧

    ることになる。

    り面を変化させて求め

    時に満足させる主働土

    いということである。

    図 3.22 想定すべり面の

    土 圧

    的意味

    変化させて主働土圧

    意味について考えて

    ける地中応力を表す

    点は,深さ z 点の鉛

    ことができる。クー

    円の左端の a 点は主

    壊基準線の接点 c と a

    クーロンの破壊基準

    弧になり,主働土圧

    めた主働土圧の最大

    土圧であり,それ以

    の力学的意味 19)

    圧を計算し,その

    てみる。

    すモール円とクー

    鉛直応力(土被り圧)

    ロンの破壊基準線

    主働土圧σ3(水平応

    a 点を結ぶ線②は

    準線が交わる点 c”,

    圧σ3は正解の主働

    大値は,力のつり

    以外の主働土圧は

  • 62

    3.5 改

    3.5.1 概説片持ば

    ができる

    い場合に

    擁壁工

    土圧を算

    状が複雑

    と版の長

    本節で

    くさび法

    3.5.2 改良擁壁が

    り面が現

    は図 3.2

    適用すれ

    R

    R

    良試行くさび法

    ばり式擁壁の仮想背

    るが,ランキン式を

    に限られる。

    工指針では,台形状

    算定する手法を示し

    雑に折れている場合

    長さが短い場合の土

    では,このような条

    法 8),9)について説明す

    良試行くさび法

    が前方へ少し移動す

    現れ,土くさび acd

    24(a) の力の多角形

    れば,すべり面から

    2sin()sin(

    21

    21R −+

    −=

    φωωφω

    2sin()sin(

    21

    12R −+

    −=

    φωωφω

    第 3 章 土

    背面に作用する主働土

    を適用できるのは盛土

    状の嵩上げ盛土に対

    している。しかしなが

    合,(c)上載荷重が部分

    土圧算定法については

    条件に対しても合理的

    する。

    3.23 擁壁工指針が適

    すると,図 3.24 に示

    を形成するものと見

    として表すことがで

    らの反力 R1,R2が次

    )() 21

    WW + ·············

    )() 21

    WW +φ

    ···········

    土 圧

    土圧は,ランキン式

    土勾配が一様で,か

    しては,試行くさび

    がら,図 3.23(a),(b

    分的に載荷されてい

    は示していない。

    的に主働土圧が算定

    適用できないケース

    示すように ac,ad の

    見なす。土くさびに作

    できる。この力の多角

    次のように求められる

    ·····························

    ·····························

    式で算定すること

    かかと版が十分長

    び法によって主働

    b)のように盛土形

    いる場合,(d)かか

    定できる改良試行

    2 種類の直線すべ

    作用する力の関係

    角形に正弦定理を

    る 8),9)。

    ··············· ( 3.46)

    ··············· ( 3.47)

    63

    第 3 章 土 圧

    次に土塊 adc を仮想背面で二つに分割すると,各々の土塊に作用する力の多角形

    は,それぞれ図 3.24(b)と図 3.24(c)で表すことができる。どちらの土塊に着目して

    もよいが,土塊 abc に着目すれば,仮想背面に作用する力 PAは式(3.48)のように求

    められる。

    11

    cos)sin( RPA δ

    φω −= ········································································· ( 3.48)

    PAの傾斜角δは,図 3.24(c)の力の多角形の幾何学的関係から式(3.49)のように求

    められる。

    )sin(

    )cos(tan11

    1111

    φωφωδ

    −−−

    = −R

    RW ·························································· ( 3.49)

    くさびの重量 W1,W2は図 3.25 によって算定できる。

    以上の式で PAとδを求めるにはω1とω2を決定しなければならない。そこで,

    最小仕事の原理を適用する。擁壁が前方へ水平に u だけ変位したとすると, PAによる仕事; δcosAuP− R2による仕事; )sin( 22 φω −−uR

    となる。仕事量を負にしているのは,力の作用方向と変位の方向が逆向きになる

    ためである。

    図 3.24 改良試行くさび法の説明

    W=W1+W2

    R2

    R1ω1−φ

    ω2−φ

    W1

    W2PA

    PA

    R2

    R1

    δ

    ω1−φ

    ω2−φ

    (b) 土塊adbに 作用する力

    β

    ω1ω2

    h

    a

    b

    c

    d

    W1W2

    PA

    PAφ

    φR1

    R2

    δ

    仮想背面

    すべり面

    すべり面

    (a) 土塊adcに 作用する力 (c) 土塊abcに 作用する力

  • 64

    第 3 章 土 圧

    図 3.25 くさび土塊重量の算定式

    図 3.24(b)から明らかなように, δcosAuP− = )sin( 22 φω −−uR [PAによる仕事=R2による仕事]

    である。 PAが主働土圧合力であるためには,PAによる仕事を最小化,つまり δcosAP を最

    大化すればよい。

    q

    H0

    H

    W2W1

    ω1ω2

    β

    q

    L

    H0

    H

    W2 W1

    ω1ω2

    β

    q

    L

    H0

    H

    W2W1

    ω1ω2

    β

    q

    L

    H0

    H

    W2W1

    ω1ω2

    β

    L

    ( ) ( )⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧ +++= 0101 2

    cot HHqHHW γω

    ( ) ( )⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧ +++= 0202 2

    cot HHqHHW γω

    ( ) ( )⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧ +++= 0101 2

    cot HHqHHW γω

    ( ) ( )

    qHLHL

    LHW

    ⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛−+⎟⎟

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛−−

    ++

    ⋅=

    ββ

    βγ

    ββωβωγ

    tantan

    tan2

    tansin

    coscos2

    02

    0

    2

    2

    22

    ( )222

    2 sincoscos

    2 ωβωβγ

    +⋅= hW ( )βω

    βωγ+

    ⋅=2

    222 sin

    coscos2

    hW

    ( ) ( ) ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ +−

    ⎭⎬⎫

    ⎩⎨⎧ +++= 000101 2

    cot2

    cot hqhhhqhhW γβγω ( )βω

    βωγ−

    ⋅=1

    121 sin

    coscos2

    hW

    65

    第 3 章 土 圧

    重力式擁壁ではすべり面の一つが壁面に沿って現れるので,ω2を特定すること

    ができた。しかし,かかと版が付いた擁壁では 2 本のすべり面が共に盛土内部を通るので,ω1 とω2 の両方を変化させて δcosAP の最大値を見つける必要がある。

    ω1とω2の取り得る範囲は,式(3.50)で表される。ただし,この式が適用できるの

    は W1>W2のときである。W1

  • 66

    第 3 章 土 圧

    図 3.26 盛土形状が複雑な逆T型擁壁

    【計算例】

    下図の擁壁の仮想背面に作用する土圧を改良試行くさび法で求めよ。

    【解答】

    計算式

    11

    cos)sin( RPA δ

    φω −= ,

    )sin()cos(tan

    11

    1111

    φωφωδ

    −−−

    = −R

    RW, )(

    )2sin()sin(

    2121

    21 WWR +−+

    −=

    φωωφω

    λβω

    γ qhTW H +⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧

    −=tantan2

    20

    2

    1 , )sin(coscos

    2 22

    2

    2 ωβωβγ

    +=

    hW , βω

    λtantan

    0hTH −=

    計算結果

    表計算ソフト Excel のソルバー機能を用いて計算した結果を以下に示す。

    ω1=57.94 度,ω2=73.98 度,W1=331.63kN/m,W2=94.67kN/m,R1=303.91kN/m,

    δ= 23.6 度,PA=129.3kN/m

    q

    W1W2

    ω1ω2

    W1W2

    ω1ω2

    W1W2

    ω1ω2

    h=6.267m

    q=10kN/m2

    1:1.5

    PAδ

    ω1

    β=33.69゜

    H=5m

    H0=2m

    h0=0.733m

    ω2

    L=1.90m

    TH=7m

    γ=20kN/m3φ=35゜

    W1W2

    67

    3.5.3 右城盛土形

    想背面に

    これま

    ていたが

    ある。変

    h0

    hTH

    城・中畑法

    形状が図 3.28 のよう

    に作用する主働土圧

    までに説明した改良

    が,右城・中畑法は

    変数がδだけなので

    β

    q

    ω1

    PAδ

    ω2a

    b

    c

    PA

    e

    すべ

    すべり面

    仮想背面

    第 3 章 土

    3.27 改良試行くさび法

    うな台形をしている

    圧 PAを求めることが

    良試行くさび法では,

    は土圧の傾斜角δを変

    で解析が容易である。

    図 3.28 右城・中畑

    d

    −β c

    ω2

    すべり面

    すべり面

    土 圧

    法による計算結果

    ときには,右城・中

    ができる。

    ,2 つのすべり角ω

    変数として主働土圧

    畑法の説明

    b

    PA1

    PA2

    δ−δ

    b

    a

    a

    中畑法によって仮

    1,ω2を変数とし

    圧を求める方法で

    q

    β

    ω1

    すべり面

    de

  • 68

    第 3 章 土 圧

    すべり土塊を図 3.28 のように仮想背面 ab で分割し,分割された土塊によって発

    生する仮想背面の土圧について考えてみる。

    仮想背面の後方の土塊 abed による土圧 PA1は式(3.54)の中畑式で,前方の土塊 abc

    による土圧 PA2はクーロン式のδとβの符号を逆にした(3.55)でそれぞれ求められ

    る。

    ( ) ( ){ }21 tancottan )cos(sin2

    21 ηδφφδφ

    δφφ

    γγ −++++

    +⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛+=

    qTTP HHA ( 3.54)

    ( ) ( )

    coscossinsin1cos

    cos21

    2

    22

    2

    ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧ +−

    +

    =

    βδβφδφδ

    φγhPA ·································· ( 3.55)

    力のつり合い条件より 21 AA PP = ······················································································ ( 3.56)

    でなければならない。式(3.56)の条件を満たすδを見つければ,それが正解のδ

    となる。

    δが得られれば,それを式(3.54)または式(3.55)に代入することによって PAを求

    めることができる。

    3.5.4 かかと版が短い場合の土圧算定法 (1) 土圧作用面 『かかと版が長いと,かかと版上の土は図 3.29(a)のように擁壁と一体的に挙動

    するので鉛直の仮想背面ができ,短いと一体的に挙動しないので仮想背面はでき

    ない』と一般的に考えられている。しかしこれは正しくない。

    擁壁が前方へ移動すれば図 3.29(b)のように 2 種類のすべり面が出現する。かか

    と版の長短に関わらず擁壁と一体的に挙動するのは,すべり面 S2より下側の裏込

    め土だけである。仮想背面は土圧を算定するための基準面であって,すべり面で

    はない。仮想背面を鉛直としているのは,単に計算を簡単にするためである。

    かかと版のある擁壁の安定照査では,かかと版の長短に関係なく仮想背面に土

    圧を作用させて計算することができる。その場合,すべり面 S2より上の裏込め土

    もかかと版に乗っかっているので,当然ながら重量としてかかと版に作用する。

    69

    第 3 章 土 圧

    図 3.29 仮想背面の考え方

    (2) 土圧算定法 かかと版が短いと図 3.30 に示すようにすべり面 S2がたて壁に当たる。その場合

    には,たて壁からの反力 R0を考慮した式(3.57)~式(3.59)で仮想背面の主働土圧合

    力 PAを求めることができる。この式では地震時の慣性力も考慮している。

    ( )

    δφωθ

    cossintan 11 −+=

    RWPA ····························································· ( 3.57)

    )2sin(

    )cos()sin(sec)(

    21

    0202211 φωω

    αδφωθφωθ−+

    ++−+−−+=

    RWWR ·················· ( 3.58)

    ( )

    ( )φωθφωδ−+

    −−= −

    111

    1111

    sintancostanRW

    RW ······················································· ( 3.59)

    ここに,αはたて壁の壁面傾斜角,δ0は壁面摩擦角,θは地震合成角(θ=tan-1kh)

    である。

    図 3.30 かかと版長を考慮した改良試行

    移動

    すべり面

    仮想背面

    仮想背面

    移動

    すべり面

    S1S2

    (a)従来の考え方 (b)正しい考え方

    a

    b

    d

    c

    e

    すべり面S 1

    すべり面S2

    PA

    khW1

    W1W2

    khW2

    R1

    hw

    H

    L

    R2

    φ

    φ

    ω2

    ω1

    α

    R0δ0

    PA

    δ

    力の多角形

    ω1−φ

    ω2−φ

    δ0+α

    W2

    khW2

    W1

    khW1

    R1

    R2PA

    R0

    δ

  • 70

    R0はす

    である。

    ロン式あ

    h

    図 3.3

    土圧係数

    K

    ただし

    かかと

    って土圧

    かかと

    著しく複

    安全側に

    すべり面 S2がたて壁

    。この反力は,cd 間

    あるいは試行くさび

    )cos(cossin

    2

    2

    +−=

    αωαωHhw

    31 は盛土面が水平な

    数 KAの関係,および

    22HPK AA γ

    = ···········

    し,γ=20kN/m3,φ

    と版長が 0 のときは

    圧係数は増加し,L/

    と版が短いほど土圧

    複雑になる。実務で

    になり問題になるこ

    第 3 章 土

    壁に当たった点 c か

    間の高さ hw の範囲に

    び法で求めればよい。

    ( ) 0tan)

    ≥− αHL ·····

    な場合について,かか

    び L/H と土圧の傾斜

    ······························

    φ=35 ゚,δ0=2φ/3 と

    はクーロン式の値に一

    /H=0.6 付近でランキ

    圧は小さくなるが,か

    では,かかと版が十分

    ことはない。

    3.31 かかと版長と主働

    土 圧

    ら上の壁面 cd の区間

    に作用する主働土圧で

    。hw は式(3.60)で求

    ·····························

    かと長比 L/H と式(3

    斜角δの関係を示し

    ·····························

    として計算している

    一致する。かかと版

    キン式の値に一致す

    かかと版の長さを考

    分長いとみなして土

    働土圧係数の関係

    間に発生する反力

    であるので,クー

    められる。

    ··············· ( 3.60)

    3.61)で求めた主働

    ている。

    ··············· ( 3.61)

    る。

    版が長くなるに伴

    る。

    考慮すると解析が

    土圧を計算しても

    71

    3.5.5 模型 図 3.3

    実験であ

    擁壁を機

    察してい

    生し,そ

    図 3.3

    かと版が

    すべり

    型実験による検証

    32 は,1995 年に愛媛

    ある。裏込め土には

    機械式ジャッキで前

    いる。逆T型擁壁の

    それによって土くさ

    33 は,1934 年に,当

    が短い L 型擁壁の模

    り面の形状は,改良

    図 3.3

    図 3.33

    第 3 章 土

    媛大学工学部の八木

    は豊浦標準砂が用い

    前方へ変位させ,裏込

    のかかとから前方と後

    さびが形成されてい

    当時わが国の土圧理

    模型を用いて行った

    良試行くさび法で求め

    32 愛媛大学八木研究

    3 九州帝国大学の安蔵

    土 圧

    木研究室で行われた逆

    られている。鋼板で

    込め土内部に発生す

    後方の 2 方向に曲線

    ることが確認できる

    理論の大家であった安

    実験である 24)。

    められるものとほぼ

    究室の実験(φ=40゜)25)

    蔵善之輔による実験 25)

    逆T型擁壁の模型

    で製作した逆T型

    するすべり面を観

    線のすべり面が発

    る。

    安蔵善之輔が,か

    ぼ一致している。

  • 72

    第 3 章 土 圧

    3.5.6 仮想背面 片持ばり式擁壁では仮想背面を設定し,仮想背面に土圧が作用するものとして

    安定性の照査を行うのが一般的であるが,図 3.34 に示すようにいろいろな仮想背

    面の取り方が提案されており,設計の現場で混乱を生じている。中には,仮想背

    面と主働すべり面を混同したものもある。仮想背面は,単に土圧を算定する基準

    線であり,任意に設定することが可能である。

    地表面が水平でランキン理論が適用できる場合,主働状態には図 3.35 のように

    左右対称のすべり面 ac と ad が発生する。すべり面 ac,ad と鉛直仮想背面 ab で囲

    まれた土塊 acb に作用する力は,土塊自重 W,すべり面からの反力 R,仮想背面の

    内力 PAであり,これらの 3 力はつり合っている。仮想背面の右側の土塊 abd につ

    いても同様の力が作用しつり合い状態にある。また,W,R,PAの作用線は,すべ

    り面上の1点で交差するためモーメントに対するつり合い条件を満たしている。

    したがって,安定性の照査で図 3.36 に示す 3 種類のいずれを採用したとしても,

    全く同一の結果が得られる。

    図 3.37(a)のように,かかとと壁面上端を結んだ ae の仮想背面を考えた場合には,

    土塊 aeb に作用する自重は W+ΔW となる。ab 面に作用する土圧は図 3.35 の場合

    と同じ PAである。仮想背面 ae の反力を R,R が仮想背面の垂線となす角をδとす

    ると,図 3.37(b)の力の多角形よりδは式(3.62),R は式(3.63)となる。図 3.37(c)のよ

    うに仮想背面を考えた場合は R>PA,δ>φ,y>H/3 となることに注意する必要があ

    る。仮想背面に作用する土圧,壁面摩擦角,作用高さを正しく求めて計算すれば,

    仮想背面をどのように設定しようと同じ結果が得られることになる。

    図 3.34 建築基礎構造設計指針

    PAδ=φ

    δ=β

    β

    PA2

    δ=φ

    δc

    PA1

    a

    b

    a

    b

    c

    a

    δc

    a

    PAPA

    b

    方法A 方法B 方法C 方法D

    245 φ+

    73

    第 3 章 土 圧

    図 3.35 主働すべり面と土塊に作用する力

    図 3.36 安定計算における土圧作用面

    図 3.37 仮想背面作用する土圧

    φ φ y=H/3

    H

    W W

    ωω

    Hcotω Hcotω

    WR

    PA WR

    RR

    ω−φ

    ω−φ

    a

    bc d

    すべ

    り面

    すべ

    り面

    PA PA

    (a)すべり面と土塊に作用する力 (b)土塊に作用する力の多角形

    PA

    W

    ω

    a

    bc

    すべ

    り面

    PA

    y=H/3

    φ

    y=H/3ω

    R

    a

    c

    すべ

    り面

    y=H/3

    a

    b

    PA

    仮想背面

    (c)方法A (d)方法B (e)方法C

    同じ 同じ

    RW

    ΔW

    ω−δ

    δ yA=H/3ω

    W

    a

    c

    すべ

    り面

    PAΔW

    R

    be

    H

    αδ >φ

    y>H/3

    a

    e

    H

    αR>PA

    仮想

    背面

    (a)すべり面と土塊に作用する力 (b) 力の多角形 (c) 仮想背面に作用する土圧

    PA

  • 74

    第 3 章 土 圧

    WW

    PAΔ+

    −= −1tanωδ ······································································ ( 3.62)

    ( )δω −= sinAPR ················································································ ( 3.63)

    3.5.7 土圧計算法の適用範囲 土圧計算法が適用できる条件を整理すれば図 3.33 となる。適用可能な条件のも

    とであれば,どの計算法を用いても同じ土圧が与えられる。

    汎用性が高いのは,改良試行くさび法と右城・中畑法→試行くさび法と中畑式

    →クーロン式と物部・岡部式→ランキン式の順である。計算の簡便性から言えば

    逆になる。パソコンで計算するのであれば,汎用性の高い改良試行くさび法が適

    している。手計算の場合には,適用条件に応じて簡単な土圧計算法を採用するの

    が賢明である。

    図 3.38 土圧計算法の使い分け方の概念図

    試行

    くさび

    中畑

    かさ上げ盛土

    PAクー

    ロン

    式物

    部・岡

    部式

    重力式擁壁

    PAPA

    改良

    試行

    くさ

    び法

    右城

    ・中畑

    かかと版が長い擁壁

    部分載荷

    かさ上げ盛土

    PA

    PA

    かかと版が短い擁壁

    PAPA PA

    ランキン式

    かかと版が長い擁壁

    PAPA

    75

    3.6 地震

    3.6.1 物部 土木構

    式を地震

    が適用で

    図 3.3

    べり角ω

    きくなり

    設計水

    大なもの

    物部

    関係を剛

    3.41(b)に

    達してす

    震時土圧の新しい

    部・岡部式の問題点

    構造物に作用する地

    震時に拡張した物部

    できるのは,レベル

    39,図 3.40 に示すよ

    ωはどんどん小さく

    り,tanφで土圧は無

    水平震度が大きくな

    のになる。

    ・岡部式に限らず従

    剛塑性と仮定してい

    に示すようになる。

    すべり面が発生した

    図 3.3

    第 3 章 土

    い計算法

    地震時主働土圧の算定

    部・岡部式が用いられ

    ル1地震動のように水

    ように,設計水平震

    なり,tanφで 0 に

    無限大になる。

    なると,土圧が求ま

    従来の土圧理論では,

    いるが,密な土のせん

    初期には歪みの増加

    た後は歪み軟化し,残

    39 物部・岡部法の説明

    土 圧

    定には,震度法に基

    れてきた。しかしな

    水平震度が小さい場

    震度 khが大きくなるの

    なる。土圧係数 KAは

    らないか,求まって

    ,図 3.41(a)のように

    ん断歪みとせん断抵

    加に応じて歪み硬化

    残留強度が発揮され

    明(φ=35゜,c=0 の場合)

    基づいてクーロン

    ながら,この方法

    場合である。

    のに伴って主働す

    は幾何級数的に大

    ても非現実的な過

    に土の応力-歪み

    抵抗角の関係は図

    化するが,ピークに

    れる状態になる。

  • 76

    古関ら

    ひとたび

    断特性を

    る地震時

    図 3.4

    図 3.41 よく締

    ら 10),11)は,土のせん

    びすべり面が形成さ

    を考慮した地震時土

    時土圧計算法である

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    0

    KEA

    第 3 章 土

    40 物部・岡部式による地

    締め固めた盛土のせん断

    ん断強度がピーク強度

    されると土の強度は残

    土圧計算法を提案して

    る。この手法は,平成

    0.2 0.4 0.

    ( )hEA kK 1max tansec −=

    φ=30

    φ

    kh

    土 圧

    地震時主働土圧係数

    断歪みとせん断抵抗角の

    度に達した時点です

    残留強度に低下する

    ている。修正物部・

    成 14 年度から道路橋

    .6 0.8 1 1φ=

    35゜ φ=

    40゜ φ=

    45゜

    φ=50

    h

    の関係

    すべり面が発生し,

    るという土のせん

    岡部式と呼ばれ

    橋示方書・同解説

    1.2

    77

    第 3 章 土 圧

    Ⅴ耐震設計編 20)に取り入れられ,橋台に作用する地震時土圧の算定に用いられて

    いる。

    一方,擁壁工指針 14)においても,U 型擁壁の地震時の照査には,修正物部・岡部

    式を用いるものとしている。

    物部・岡部式は,クーロン式に慣性力を作用させたものであるが,擁壁背後の

    土くさびの応答加速度が地盤加速度と一致する,つまり相対変位を生じないとい

    う仮定に基づいている。擁壁の滑動を認めない設計ではそれでもよいが,まれに

    しか発生しない大規模地震に対しては,ある程度の変位を認めた設計を行うのが

    現実的である。

    松尾ら 12),13)は,擁壁の運動形態を滑動に限定した上で,地盤-擁壁-土くさび

    の動的相互作用を考慮して地震時土圧を算定する手法を提案している。

    本節では,修正物部・岡部法 10),11)及び松尾らの方法による地震時土圧の算定法

    を紹介する。

    3.6.2 修正物部・岡部式 (1) 考え方 修正物部・岡部法式 10),11),土のせん断試験や模型実験から得られた知見に基づ

    いている。

    ①すべり面が形成される過程で,土のせん断抵抗角はピーク強度φpから残留強

    度φrへ低下する。

    ②主働すべり面の角度はピーク強度φpで決定される。

    水平震度 khが増加し盛土のせん断応力がピーク強度に達すると,図 3.42 のよう

    に盛土内部に 1 次すべり面が発生する。このときの主働すべり角ω1は,式(3.64)

    に示す物部・岡部式でθ=tan-1kh1とおいて求めることができる。

    すべり面が発生した時点で,土くさびの内部摩擦角は残留強度φrまで低下する。

    水平震度が増加しても土くさびの大きさは変わらない。したがって,すべり面が

    発生した以後の地震時主働土圧係数 KEA は,式(3.65)においてω=ω1とおいて求め

    ることができる。

  • 78

    さらに

    KEA(φr,

    に一致す

    震度を k

    めること

    いて求め

    ω

    K

    図 3.42 修

    に水平震度 khが大き

    ,ω1)が,物部・岡部

    すると,図 3.42 のよ

    kh2とすると,主働す

    とができる。そして

    めることができる。

    αθα

    ω

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    += −

    cos(cos(

    tan 1

    ( ) (EAK α

    αω −=

    scoscoscos2

    第 3 章 土

    修正物部・岡部法の説明

    きくなり,式(3.64)で

    部式でφ=φpとおいた

    ように新たな 2 次す

    すべり角ω2は,式(3

    て,kh>kh2のときの主

    θβφβδφδθ

    αδφ

    −−−

    ++

    ++

    )sin())sin()

    cos(

    p

    ppp

    pp

    ( ) ( ){( ) ( r

    r

    φωβωφωβα

    −−−+−−

    cossintsin

    土 圧

    明(φp=50゜,φr=35゜の場合

    でω=ω1とおいて求

    た式(3.66)で求められ

    すべり面が発生する。

    3.64)でφ=φp,θ=t

    主働土圧係数は,(3.

    βαδφ

    βα

    −++−

    sin(

    )

    pp

    ( )})r

    r

    δαφωθ

    −−−cosan

    ·····

    合)

    められる土圧係数

    れる土圧係数 KEA’

    このときの水平

    tan-1kh2とおいて求

    .65)でω=ω2とお

    β

    β

    +

    ⎪⎪

    ⎪⎪

    )

    ···· ( 3.64)

    ··············· ( 3.65)

    79

    第 3 章 土 圧

    22

    2

    )cos()cos()sin()sin(

    1)cos(coscos

    )(cos'

    ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧

    −++

    −−++++

    −−=

    βαδθαθβφδφ

    δθααθ

    θαφ

    p

    pppp

    pEAK · ( 3.66)

    図 3.43 修正物部・岡部法による地震時主働土圧係数

    修正物部・岡部式によって地震時主働土圧係数を算定すると,図 3.43 のように

    なる。主働土圧係数は,新たなすべり面が発生すると不連続に増加するが,新た

    なすべり面が発生しなければ水平震度に比例する。また,修正物部・岡部式によ

    って算出される主働土圧係数は,φ=φpとした物部・岡部式(3.66)で求められる土

    圧係数と,式(3.64)で求められるすべり角ωを式(3.65)に代入して求められる土圧係

    数の中間にある。

    (2) 道路橋示方書式 修正物部・岡部式(3.65)は,式(3.67)のように khの 1 次関数式に書き換えること

    ができる 20)。 hEA kaaK 10 += ················································································ ( 3.67)

    ただし,

    00

    地震時主

    働土圧

    係数

    設計水平震度

    ①’

    ②’

    kh1=tanθ1

    KEA1

    KEA2

    1次主働すべり面が発生

    2次主働すべり面が発生

    kh2=tanθ2

    ( )11 ,θφω p

    { }1,ωφrEAK

    ( ){ }θφωφ ,, prEAK

    物部・岡部式(φp)

    物部・岡部式(φr)

    ( )21 ,θφω p

    { }2,ωφrEAK

  • 80

    a

    a

    ここに

    βは地表

    り面の角

    道路橋

    合の主働

    の式で算

    1 次主

    主働土圧

    ( )(a βωα

    αω−

    −=

    22

    20 sincos

    cocos

    ( )(a βωα

    αω−

    −=

    22

    21 sincos

    coscos

    に,KEAは修正物部

    表面傾斜角,δr は壁

    角度である。

    橋示方書Ⅴ耐震設計

    働土圧係数を,レベ

    算定して良いとして

    主働すべり面が kh=0

    圧係数 KEAと水平震

    図 3.44 道路橋

    第 3 章 土

    ( ) ( )) ( rr

    r

    δαφωβφωβα−−−

    −−

    2

    2

    cossinos

    ( ) ( )) ( rr

    r

    δαφωβφωβα−−−

    −−

    2

    2

    coscoss

    ・岡部法による地震

    壁面摩擦角,φr は残

    計編 20)では,地表面が

    ベル 1 地震動,レベル

    ている。

    0 で発生するとすれ

    震度 khの関係は図 3.4

    橋示方書による地震時主

    土 圧

    )r ·························

    )r ·························

    震時主働土圧係数,

    残留内部摩擦角,ω

    が水平(β=0)で壁面

    ル 2 地震動のいずれ

    ば,修正物部・岡部

    44 のようになる。

    主働土圧係数(礫質土の

    ··············· ( 3.68)

    ··············· ( 3.69)

    αは壁面傾斜角

    ω2は 2 次主働すべ

    面が鉛直(α=0)の場

    れに対しても表 3.3

    部法による地震時

    の場合)

    81

    裏込め土

    砂及び

    砂質

    図 3.4

    の場合,

    khで表さ

    道路橋

    次主働す

    の範囲に

    る。

    3.6.3 松尾(1) 滑動

    地盤加

    (擁壁後

    のとする

    土の種せん断

    φp

    び砂礫 50゜ 質土 45゜

    44 は,α=β=δ=0,

    kh

  • 82

    第 3 章 土 圧

    すなわち,擁壁には自重Mg,水平方向慣性力 ( )xXM &&&& + ,土圧P(水平成分 δsinP ,鉛直成分 δcosP ),地盤からの垂直抗力 δcosPMgN += ,摩擦力 NF μ= が作用す

    る。

    土くさびには,土圧 P,鉛直方向慣性力 ( )ygm &&+ ,水平方向慣性力 ( )xXm &&&& + ,すべり面からの抗力 R(水平成分 ( )φω −sinR ,鉛直成分 ( )φω −cosR )が作用する。ただし,壁面摩擦角をδ,擁壁底面の摩擦係数をμとする。

    擁壁および土くさびの運動方程式は,式(3.70)から式(3.72)で表される。また,土

    くさびの変位の適合条件は式(3.73)で表される。

    擁壁に作用する水平方向の力のつり合い条件

    ( ) ( ) δδμ cossin PPMgxXM −+=+ &&&& ·············································· ( 3.70) 土くさびに作用する水平方向と鉛直水平方向と鉛直方向の力のつり合い条件

    ( ) ( ) δφω cossin PRxXm +−−=+ &&&& ····················································· ( 3.71)

    ( ) ( ) δφω sincos PRygm +−=+ && ························································ ( 3.72) 土くさびの変位の適合条件 ωtanxy = ·························································································· ( 3.73)

    式(3.70)から式(3.73)を連立させて解けば,擁壁に作用する地震時土圧 P が次式の

    ように求められる。

    ( ) ( ) ( ){ }[ ] ( )

    ( ) ( ) ( ) ( ){ }mMmMXgP

    φωωφωδμδδφωφωωφωωφωμφω−+−−+−−

    −−−+−+−=

    sintancossincoscossintansintancossin &&

    ······································································································ ( 3.74)

    なお,土くさびの質量 m は式(3.75)で求められる。ρは盛土の密度である。

    ωρ cot21 2Hm = ·············································································· ( 3.75)

    種々のωを仮定して P を算定し,P の最大値を探索すれば,それが正解の地震時

    主働土圧である。

    83

    第 3 章 土 圧

    (2) 滑動の限界状態における地震時土圧 擁壁が滑動の限界状態にあれば,土くさびの応答加速度は地盤加速度と等しく

    相対変位を生じない。したがって,擁壁および土くさびに作用する力は図 3.46 と

    なる。ただし,滑動の限界状態における地盤加速度を ,地震時土圧を Pc とする。

    土くさびに作用する水平方向と鉛直方向の力のつり合い条件式は,次式のように

    なる。

    図 3.46 擁壁と土くさびに作用する力(擁壁が滑動している場合)

    ( ) δφω cossin cc PRXm +−−=&& ··························································· ( 3.76)

    ( ) δφω sincos cPRmg +−= ····························································· ( 3.77) 式(3.76)と式(3.77)を連立させて解けば,限界状態における地震時土圧 Pcを求め

    ることができ,式(3.78)となる。

    ( ) ( )

    ( ) mgXP cc δφω

    φωφω−−

    −+−=

    cossincos&&

    ····················································· ( 3.78)

    式(3.78)は,式(3.75)および最大化の条件を考慮することにより式(3.79)のように

    変形できる。KAcは限界状態における主働土圧係数,khc限界水平震度である。

    Acc KgHP2

    21 ρ= ·············································································· ( 3.79)

    cXm &&

    Mgmg

    ω

    y

    X,x

    ( )φ−ω= sinRRh

    ( )φ−ω= cosRRv

    擁壁に作用する力 土楔に作用する力

    H

    ωcotH

    δ= coscch PP

    δ= sinccv PP

    δ+= sincPMgN

    ( )MgPc +δμ sin

    cXM &&

  • 84

    第 3 章 土 圧

    ( )

    ( ) ( ) ( )( )

    2

    2

    cossinsin1coscos

    cos

    ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧

    +−+

    ++

    −=

    θδθφδφθδθ

    θφAcK ······························· ( 3.80)

    gXk cHc&&

    11 tantan −− ==θ ···································································· ( 3.81)

    式(3.79)は,壁面が鉛直である場合(α=0)の物部・岡部式である。また,この式

    で, 0=cX&& とおけば,クーロンの常時土圧式となる。

    (3) 限界加速度 擁壁が滑動の限界状態にある場合の運動方程式は式(3.82)で与えられる。

    ( ) δδμ cossin ccc PPMgXM −+=&& ···················································· ( 3.82)

    式(3.82)に式(3.78)を代入して整理すれば,限界加速度 cX&& が式(3.83)のように求め

    られる。この式は,右辺の m とωcに cX&& を含んだ陰関数であるため,試行錯誤的

    に cX&& を決定する必要がある。

    ( ) ( )( )

    ( ) ( )( ) gmMmMX

    cc

    ccc δμδφωδφω

    δμδφωδφωμsincoscoscossincossincos

    −−+−−−−−−−

    =&& ······················ ( 3.83)

    ここに,

    ( )

    ( ) ( )( ) ( )

    ⎪⎪⎪⎪⎪

    ⎪⎪⎪⎪⎪

    =

    +−−

    ++

    +=

    =

    gX

    Hm

    c

    c

    c

    &&1

    1

    2

    tan

    sinsin

    sincoscostan

    cot21

    θ

    δφθφ

    δφθδδφω

    ωρ

    ····································· ( 3.84)

    85

    第 3 章 土 圧

    (4) 加速度と地震時土圧の関係 式(3.74)および式(3.79)によって求められる地震時土圧から,設計水平震度と土圧

    係数の関係を示せば図 3.47 となる。設計水平震度が小さいと,擁壁はすべりを生

    じないので物部・岡部式で求められる土圧になる。しかし,設計水平震度がある

    限界値を超えると擁壁は滑動するので,土圧は物部・岡部式で求まるものより小

    さくなる。しかも土圧は,設計震度が大きくなるにしたがって減少する。

    擁壁が滑動する場合の土圧は,擁壁の質量,底面の摩擦係数に影響される。擁

    壁の高さが同じであれば,擁壁の質量 M が大きいほど,底面の摩擦係数が大きい

    ほど土圧は大きくなる。壁面勾配が同じであれば,擁壁の高さが小さいほど主働

    土圧係数は大きくなる。

    図 3.47 設計水平震度と土圧係数の関係

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    1.2

    0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

    物部・岡部

    H=5m,μ=0.8

    H=10m,μ=0.8

    H=5m,μ=0.6

    1:0.

    45

    0.5m

    Hρ=1.9t/m3φ=30゜δ=0

    ρc=2.35t/m3

    H=10m,μ=0.6

    8.9XkH&&

    =設計水平震度

    22gH

    PK Aρ

    =

  • 86

    第 3 章 土 圧

    【計算例】

    下図に示す条件で地震時土圧を計算せよ。ただし,壁面摩擦角は常時,地震時

    とも 0 とする。

    【解答】

    a) 限界加速度

    限界加速度を =cX&& 2.01m/s2と仮定すると,

    gXc&&1tan−=θ =0.2027rad,

    ( ) φθφφθφω

    sinsin

    sincoscostan 1

    −−

    = −c =0.8597rad

    cHm ωρ cot21 2= =20.46t/m

    ( ) gmM

    mMX cc +−−

    =φωμ tan&& =2.01m/s2 (仮定と一致する)

    =< XX c &&&& 3.92m/s2であるので,擁壁は滑動する。

    なお,上記の計算は,表計算ソフト Excel のソルバー機能を使えば簡単に解を求

    めることができる。

    b) 擁壁に作用する土圧 常時土圧

    1:0.

    45

    0.5m

    ρ=1.9t/m3φ=30゜δ=0

    Μ=19.09t/m

    H=5m

    2.75m

    μ=0.6

    2m/s92.3

    4.0

    =⋅=

    =

    gkX

    k

    H

    H&&

    t1=0.2s

    87

    第 3 章 土 圧

    =⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛ −=

    24tan

    21 22 φπρgHPa 77.58kN/m (Ka=0.333)

    限界加速度における地震時土圧

    ( )

    ( )2

    2

    22

    cossinsin1cos

    cos21

    ⎪⎭

    ⎪⎬⎫

    ⎪⎩

    ⎪⎨⎧ −

    +

    −=

    θθφφθ

    θφρgHPc =111.25kN/m (KAc=0.478)

    設計加速度におけるすべりを考慮した地震時土圧

    ω=42゜,δ=0 の場合

    ωρ cot21 2Hm = =26.38t/m

    ( ) ( ){ } ( )( ){ } mMmM

    XgPφωω

    φωωφωωμφωμ−++

    −−−+−+=

    tantan1tantantantantan &&

    =106.40kN/m

    すべり面の角度ωを 25゜から 1゜刻みで 60゜まで変化させ,土圧 P を計算した

    結果を図 3.48 に示す。ω=42゜で P が最大となる。ちなみに,物部・岡部式では,

    ω=34゜で P が最大値 162.16kN/m となる。

    図 3.48 すべり角と土圧の関係

    P=106.40 kN/m

    42゜92

    94

    96

    98

    100

    102

    104

    106

    108

    25 30 35 40 45 50 55 60

    すべり角ω(度)

    土圧

    P(kN

    /m)

  • 88

    第 3 章 土 圧

    3.7 各種擁壁の実用的土圧算定法

    3.7.1 コンクリート壁面に作用する主働土圧 (1) 主働土圧合力 重力式擁壁やもたれ式擁壁の壁面,片持ばり式擁壁のたて壁に作用する主働土

    圧合力 PAは,式(3.85)で算定することができる。

    この式は,設計水平震度 kh,裏込め土の粘着力 c も考慮してお�