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土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
113
人口減少や超高齢社会を迎える我が国において、土地利用ニーズの低下や地縁・血縁関係の希薄化等により資産としての土地に関する国民の意識が希薄化する等社会的状況が変化する中、相続登記が数代にわたって行われないこと等により、所有者不明土地(不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明せず、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地)に関わる問題が顕在化している。 こうした所有者不明土地が存在することで、公共事業や民間の事業においてその土地を取得・利用しようとする際に、所有者の探索等に多大な時間・費用・労力を費やすことを強いられている。また、利用意向がない土地が、長期間管理されずに放置されることで、土地の荒廃を招くなど、管理不全の問題として顕在化するケースが存在する。さらに、農地の集積・集約化、森林の適正な管理等の様々な分野で共通の問題となっている。 そうした課題を踏まえ、政府は、平成29年6月9日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017」において、所有者不明土地問題に対する取組方針を定めた。また、平成30年1月19日には、所有者不明土地等に係る諸課題について関係行政機関の緊密な連携のもと政府一体となって総合的な対策を推進するため、内閣官房長官主宰の「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」が開催された。 こうした動きを踏まえて、本章では、まず第1節で、所有者不明土地の実態把握のための各種調査や所有者不明土地が存在することによる支障事例を取り上げ、所有者不明土地問題の現状について記載する。次に第2節で、国土交通省において実施した国民へのアンケート調査結果等を基に、所有者不明土地問題を取り巻く国民の土地に関する意識について考察する。最後に、所有者不明土地問題に対する政府全体の取組内容及び今後の対応について記載する。
第1節 所有者不明土地の実態と支障事例
1 所有者不明土地の実態
所有者不明土地は、土地の真の所有者を捕捉するシステムがない我が国においては、ある土地の利用・管理等のため所有者に連絡を取るべく所有者の調査を行った際に初めて実態が明らかになるものであり、その全体像を示すデータは存在しない。 ここでは、国土交通省が行っている地籍調査における土地所有者等に関する調査、登記経過年数と不明率に関する調査、法務省が行った不動産登記簿における相続登記未了土地調査及び農林水産省が行った相続未登記農地等の実態調査について取り上げる。
第3章 所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応
114
(平成28年度地籍調査における土地所有者等に関する調査) 平成28年度に地籍調査を実施した1,130地区(563市区町村)の622,608筆について土地所有者等1に関して調査したところ、不動産登記簿で土地所有者等の所在が確認できない土地は20.1%となっており、これが所有者不明土地の外縁と考えられる。地帯別にみると、林地が最も高く25.6%となっており、都市部(DID地区)でも14.5%となっていた。 一方、地籍調査の実施主体である地方公共団体が、これらの土地について、登記名義人の戸籍・住民票等による調査、聞き取り調査等の追跡調査を行った結果、最終的に土地所有者等の所在が不明である土地は全体の0.41%となっており、これが最狭義の所有者不明土地と考えられる(図表3-1-1)。
図表 3-1-1 平成 28年度地籍調査における土地所有者等に関する調査
地帯別※の調査結果【…()内の数字は調査対象筆数に対する割合、〔〕内の数字は登記簿のみで所在不明に対する割合…】
全体 都市部 宅地 農地 林地(DID)調査対象筆数 622,608 79,783 98,775 200,617 243,433
①…登記簿上で所在確認497,549(79.9%)
68,203(85.5%)
81,610(82.6%)
166.648(83.1%)
181,088(74.4%)
②…登記簿のみでは所在不明125,059(20.1%)
11,580(14.5%)
17,165(17.4%)
33,969(16.9%)
62,345(25.6%)
② -1…所有権移転の未登記(相続) 83,371〔66.7%〕5,152
〔44.5%〕10,399
〔60.6%〕24,375
〔71.8%〕43,445
〔69.7%〕
② -2…所有権移転の未登記(売買・交換等) 1,192〔1.0%〕30
〔0.3%〕198
〔1.2%〕786
〔2.3%〕178
〔0.3%〕
② -3…住所変更の未登記 40,496〔32.4%〕6,398
〔55.3%〕6,568
〔38.3%〕8,808
〔25.9%〕18,722
〔30.0%〕
③…最終的に所在不明2,526
(0.41%)304
(0.38%)134
(0.14%)689
(0.34%)1,399
(0.57%)
参考:筆界未定 10,140(1.6%)2,014
(2.5%)1,438
(1.5%)2,264
(1.1%)4,424
(1.8%)
資料:国土交通省「平成 28 年度地籍調査における土地所有等に関する調査」 注:調査地区には、様々な地帯(DID、宅地、農地、林地)が含まれるため、地区内で最も割合の多い地帯で区分
(登記経過年数と不明率に関する調査) 次に、国土交通省において、平成28年度地籍調査実施地区のサンプル地区15地区(13市町)について、不動産登記の最終の登記からの経過年数と登記簿での土地所有者等の所在確認結果を突き合わせたところ、最終の登記からの年数が長いほど、不動産登記簿で所有者の所在が確認できない割合が上昇する傾向となった(図表3-1-2)。
1地籍調査における土地所有者等とは、土地の境界の確認のための調査に立ち会う者で、土地の所有者その他の利害
関係人又はこれらの者の代理人である。
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
115
図表 3-1-2 登記経過年数と不明率に関する調査
○地籍調査における土地所有者等に関する調査を活用した所在確認結果 全体 宅地注1 農地注1 林地注1 その他注1
所有権の登記の個数 15,313 5,887 4,379 3,752 1,295①登記簿上で所在確認 9,798 4,368 2,616 1,929 885②追跡調査で所在確認 5,347 1,468 1,701 1,789 389③所在不明 168 51 62 34 21不明率(② +③/① +② +③) 36% 26% 40% 49% 32%注:ここでいう不明率とは、不動産登記簿等では所有者 の所在を把握できなかった割合をいう
○所有権に関して最終の登記からの経過年数ごとの登記の個数全体 宅地注1 農地注1 林地注1 その他注1
所有権の登記の個数 15,313 5,887 4,379 3,752 1,2950 ~ 29年 7,805 3,483 1,969 1,584 76930 ~ 49年 4,214 1,739 1,159 1,036 28050 ~ 69年 1,789 404 796 514 7570 ~ 89年 546 104 172 223 4790 年以上 864 148 258 366 92登記年なし注2 95 9 25 29 32注 1:宅地(地目:「宅地」)、農地(地目:「田」、「畑」)、…林地(地目:「山林」、「保安林」)、その他(地目:「原野」、「雑種地」等)注 2:登記簿の権利部に所有者名はあるが、受付年がないもの
(突き合わせ)
6000
5000
①登記簿上で所在確認②追跡調査で所在確認③所在不明不明率( )③+②+①(/)③+②
4000
3000
所有権の登記の個数
不明率
2000
1000
0~29年 30~49年 50~69年
15地区の突き合わせ結果(合計)
70~89年
所有権に関して最後の登記からの経過年数
90年以上 登記年なし0
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
6000
5000
①登記簿上で所在確認②追跡調査で所在確認③所在不明不明率( )③+②+①(/)③+②
4000
3000
所有権の登記の個数
不明率
2000
1000
0~29年 30~49年 50~69年
15地区の突き合わせ結果(宅地)
70~89年
所有権に関して最後の登記からの経過年数
90年以上 登記年なし0
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
6000
5000
4000
3000
所有権の登記の個数
不明率
2000
1000
0~29年 30~49年 50~69年
15地区の突き合わせ結果(農地)
70~89年
所有権に関して最後の登記からの経過年数
90年以上 登記年なし0
1,544
22%
40%
66%
81%
71%
421693
271502
23 3212614 76165
1,116
466
30%
556
18
462172340
35186
31348 5 2 5222 2217 0 025
462
44
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
6000
5000
①登記簿上で所在確認②追跡調査で所在確認③所在不明
4000
3000
所有権の登記の個数
不明率
2000
1000
0~29年 30~49年 50~69年
15地区の突き合わせ結果(林地)
70~89年
所有権に関して最後の登記からの経過年数
90年以上 登記年なし0
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
①登記簿上で所在確認②追跡調査で所在確認③所在不明不明率( ③)+②+①(/)③+② 不明率( ③)+②+①(/)③+②
46%
67%
84%87%
93%100%
89%89%
68%
93%
80%79%
62%
37%
6,194
21%
50%
30%
2,895
580
1,218
497
24204
33 17 1 8 061256011
19828
17%
1,594 1,529
2,637
48
673
1,087
29 112 31175
656
33 7 7810
403
17
資料:国土交通省「地籍調査実施地区における、登記経過年数と不明率の突き合わせ」
116
(不動産登記簿における相続登記未了土地調査(法務省)) 平成29年に法務省において、全国10箇所の地区の約10万筆の土地の所有権の登記について、最後の登記からの経過年数を調査した。その結果、登記名義人が自然人であるもののうち、最後の登記から50年以上経過しているものが、大都市で6.6%、大都市以外では26.6%、90年以上経過しているものが、大都市で0.4%、大都市以外で7.0%あった(図表3-1-3)。
図表 3-1-3 不動産登記簿における相続登記未了土地調査(法務省)
調査対象とした自然⼈名義に係る所有権の個数:118,346(参考:国,地方公共団体,会社法⼈等を⼊れた場合:152,232)
※割合は累積値
最後の登記から 90年以上経過しているもの
最後の登記から 70年以上経過しているもの
最後の登記から 50年以上経過しているもの
大都市(所有権の個数:24,360 個) 0.4% 1.1% 6.6%
中小都市・中山間地域(同上:93,986 個) 7.0% 12.0% 26.6%
資料:法務省「不動産登記簿における相続登記未了土地調査について」
(相続未登記農地等の実態調査(農林水産省)) 全国の農地について、農業委員会を通じて網羅的に実態調査を実施したところ、平成28年においては、全国で、登記名義人が死亡していることが確認された農地の面積は約47万7千ha、登記名義人が市町村外に転出する等により、住基台帳上ではその生死が確認できず、相続未登記のおそれのある農地の面積は約45万8千ha存在することが確認され、これらを合計すると約93万4千haとなり、全農地面積の約2割となっている。なお、このうち遊休農地の面積は、約5万4千haとなっている(図表3-1-4)。
図表 3-1-4 相続未登記農地等の実態調査(農林水産省)
相続未登記農地(注1) 476,529ha(うち遊休農地……26,787ha)
相続未登記のおそれのある農地(注2) 457,819ha(うち遊休農地……26,896ha)
合計 934,348ha(うち遊休農地……53,683ha(注3))
資料:農林水産省注1:「相続未登記農地」:登記名義人が死亡していることが確認された農地注2:「相続未登記のおそれのある農地」:登記名義人の市町村外転出、住民票除票の不存在等により、住民基
本台帳上ではその生死が確認できず、相続未登記となっているおそれのある農地注3:相続未登記農地等における遊休農地の面積については、48 市町村では集計ができなかったため、結果
に含めていない注4:全農地面積は 447 万 ha
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
117
コラム 所有者不明土地の量的把握について(民間プラットフォーム「所有者不明土地問題研究会」による試算)
平成29年1月に株式会社野村総合研究所顧問増田寛也氏が座長となり自治体や関係士業団体、大学の研究者などをメンバーとし、関係省庁をオブザーバーとする民間プラットフォーム「所有者不明土地問題研究会」が立ち上げられた。研究会では、所有者不明土地の量的把握(全国推計、将来推計)が行われているので紹介する。
〇量的把握(全国推計:地籍調査を活用した推計) 平成 28 年度地籍調査を実施した 1,130 地区
(563市区町村)の約62万筆についての調査結果(所有者の所在が不明な土地の比率は全体で20.1%、図表3-1-1参照。)を活用し、市区町村別の統計情報との相関関係を用いて全国推計
(「〔備考〕推計方法」参照)を行った結果、不明率は20.3%となり、さらにこれを面積に換算すると、全国の所有者不明土地は約410万ha、九州本島(約367万ha)を超える水準と推計している。ただし、ここでの対象は、別途追跡調査をすれば判明する場合も多く、対象地全てが直ちに問題というものではないことに留意が必要である。
〇量的把握(将来推計:相続未登記率と死亡者数の将来推計を活用した推計) 将来の死亡者数の予測(国立社会保障・人口問題研究所)と相続未登記率の予測(一般消費者へのアンケート調査結果より推計)を活用して、2040年までに新たに発生すると考えられる所有者不明土地面積は約310万haと推計している。将来的に所有者不明土地を増加させないための新たな取組がなされない場合、死亡者数の増加や相続意識の希薄化等に伴い、2040年の所有者不明土地面積は、全国で約720万ha、北海道本島(約780万ha)に迫る水準にまで増加するという推計がなされた。
【図表】所有者不明土地の増加(~2040年)
資料:所有者不明土地問題研究会
0
○所有者不明率の拡大推計方法①「地籍調査の対象地区の面積(ア)」と、「地籍調査の対象地区が含まれる市区町村の土地面積(イ)」の比率により、登記数と所有者不明数(※)を補正。(※)所有者不明数とは、所有者不明の土地(筆)数を指す。•登記数(市区町村別)=登記数(地籍調査の対象地区別)×{(イ)÷(ア)}
•所有者不明数(市区町村別)=所有者不明数(地籍調査の対象地区別)×{(イ)÷(ア)}
②相関式の決定係数が比較的高かった「y1:登記数(市区町村別)」と「x1:総人口(市区町村別)」、「y2:所有者不明数(市区町村別)」と「x2:65歳以上の死亡者数(市区町村別)」との相関式を推定した。
③上記の相関式を利用すれば、x1に「全国の市区町村別の総人口」を、x2に「全国の市区町村別の65歳以上の死亡者数」を代入することで、各市区町村における「y1:登記数(ウ)」と「y2:所有者不明数(エ)」の算定が可能となる。
④上記で得られた(エ)÷(ウ)により、所有者不明土地の比率を算定。
○所有者不明土地面積の推計方法地目別(宅地、農地、林地)の土地面積に、それぞれの所有者不明率を乗じることで推計。地目別の土地面積は、各省の各種統計資料を組み合わせて算出したもの(地目毎の私有地面積)に、個人保有の比率を乗じて推計。なお、ここでの「所有者不明」としては、登記簿上の登記名義人(土地所有者)の登記簿上の住所に、調査実施者から現地調査の通知を郵送し、この方法により通知が到達しなかった場合を計上。
【コラム】所有者不明土地の量的把握について〔備考〕推計方法
資料:所有者不明土地問題研究会
118
2 所有者不明土地を原因とした土地の利用・管理に関する支障事例
所有者不明土地が存在することにより、公共事業や民間の事業等を行う場面でその土地の円滑な利用が阻害されていたり、長期間管理されずに放置されることで土地の荒廃を招いたりするなど様々な問題が発生している。ここでは、所有者不明土地が存在することで事業の円滑な遂行等が阻害された事例について取り上げる。 (多数共有地で法定相続人3名が所在不明の例)
(1)実施しようとする事業及び不動産登記簿の状況 河川改良事業の用地取得において土地の所有者を特定できなかった事例である。対象地は約560㎡の墓地であり、土地所有権の登記名義人は、約40名の共有となっているが、昭和33年の最終登記年月日以降登記簿が更新されていない。
(2)問題点等 現在の所有者を探索するため相続調査を行ったところ、法定相続人は242名と多数にのぼっており、うち3名が所在不明である。相続人が膨大な人数となるため、平成27年10月の交渉開始以来、探索、交渉に時間を要している。所在不明者について不在者財産管理人の選任を行うことや、管理者の時効取得による解決が考えられるが、いずれの方法も費用負担等の交渉や手続きに相当な期間を要するため、引き続き探索を継続しながら解決方法を検討している状況にある(図表3-1-5)。
河 川
: 事業予定地相続人約240名、うち3名が不明
所有者不明土地
(概略図)
7
資料:国土交通省「国土審議会土地政策分科会特別部会」
図表 3-1-5 多数共有地で法定相続人3名が所在不明の例
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
119
(使用貸借しようとしている土地の登記名義人が解散した法人である例)
(1)実施しようとする事業及び不動産登記簿の状況 急傾斜地崩壊対策事業のために土地を使用貸借しようとした際に、土地の所有者を特定できなかった事例である。対象地は約5,280㎡の山林であり、土地所有権の登記名義人は、解散した法人3社(約130㎡、約650㎡、約4,500㎡ずつ所有)となっている。不動産登記簿は、昭和55、57年、平成7年の最終登記年月日以降更新されておらず、上記3法人は全て解散している。
(2)問題点等 土地所有権の登記名義人である解散した法人3社は、会社を解散する際に清算の処理がされずに法的に放置された状態であるため、事業着手に必要な土地使用の承諾が得られない状況である。地域住民から裁判所に清算人の選任の申し立てを行い、所有者を設定した上で進める手法が考えられるが、費用負担等の問題があり、かつ、手続きに期間を要するため、引き続き当時の清算人の探索を継続しながら解決方法を検討している状況にある(図表3-1-6)。
:事業予定地 登記名義人は解散した3法人
(概略図)
道路
所有者不明土地
宅地
宅地
8
資料:国土交通省「国土審議会土地政策分科会特別部会」
図表 3-1-6 使用貸借しようとしている土地の登記名義人が解散した法人である例
120
(暫定的な利用を望んでいるが相続未登記が多数存在する例)
(1)実施しようとする事業及び不動産登記簿の状況 自治体が、利用されていない土地を広場、グラウンドとして利用しようとした際に土地の所有者を特定できなかった事例である。対象地は約18haの敷地の一部であり、約850筆、地権者約170名のうち、約80筆、地権者約40名について相続登記がされていない。 (2)問題点等 所有者不明となっている土地が多く存在するため、樹木を伐採することができず、景観の悪化、ゴミの不法投棄を招いている。現時点で、(最終的な目標である)公園整備まで行える状況にないため、土地収用制度等の公共事業に関する制度は使用することが困難であり、暫定的に広場・グラウンドとして利用したい意向はあるものの、所有者不明問題を解決する方策がないため、方針を立てることができない(図表3-1-7)。
合計約850筆のうち、約80筆、地権者約40名について相続登記がされていない
河川
(概略図)
資料:国土交通省「国土審議会土地政策分科会特別部会」
図表 3-1-7 暫定的な利用を望んでいるが相続未登記が多数存在する例
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
121
第2節 所有者不明土地問題を取り巻く国民の土地に関する意識についての調査結果の分析
土地に関する国民の意識の希薄化など、国民の土地に対する意識が所有者不明土地問題に密接に関係すると考えられることから、国土交通省では、対象者を無作為に抽出した「土地問題に関する国民の意識調査」(以下、「国民への意識調査」という。)及び対象者を「宅地、田畑、山林で利用されていない土地」(以下、「空き地」という。)を所有している者に限定した「利用されていない土地に関するWEBアンケート」(以下、「空き地所有者へのWEBアンケート」という。)の2つの調査2を行った。本節では、所有者不明土地問題を取り巻く土地に関する意識について、「土地所有に対する負担感」「所有する空き地に関する意向」「土地所有者の責務」「土地所有権の放棄」「土地所有者情報の開示」の観点から考察する。
1 土地所有に対する負担感、空き地の管理の実態と負担感との関係
(1)土地所有に対する負担感 土地は、利用すること等によりその価値を見いだすことができる一方、所有には固定資産税等の金銭的負担や外部不経済を生じさせないための維持管理の負担が伴うため、土地を利用していない場合、土地所有に対して負担を感じていることが考えられる。そして、こうした土地所有に対する負担感が高まれば、所有意欲が減退し、管理が放置され、結果所有者不明土地へとつながる可能性が考えられる。 こうした「土地所有に対する負担感」についての国民の意識を明らかにするため、上記2つの調査の結果を用いて考察する。 (国民への意識調査の単純集計) 国民への意識調査の対象者全員(無作為抽出につき、土地の所有者及び土地を所有していない者の双方を対象とする。)に「土地を所有することに負担を感じたことがあるか又は感じると思うか」について質問を行ったところ、「感じたことがある又は感じると思う」の回答が42.3%となった(図表3-2-1)。
2「国民への意識調査」は、全国の市区町村に居住する満20歳以上の者から、層化2段無作為抽出法により対象者を3,000人抽出し、調査員の面接聴取により調査を行ったもの(有効回答数:1,604件)。調査実施期間は、平成29年11月30日から12月24日。「空き地所有者へのWEBアンケート」は、WEBサイトに登録しているモニターのうち空き地を所有している者を対象にアンケートを実施し、5,000人から回答を得たもの。調査期間は、平成30年2月7日から2月12日。
122
わからない0.2%わからない0.2%
負担を感じたことがない又は感じるとは
思わない57.5%
負担を感じたことがない又は感じるとは
思わない57.5%
負担を感じたことがある又は感じると思う42.3%
負担を感じたことがある又は感じると思う42.3%
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:n=1,604
図表 3-2-1 土地所有に対する負担感(単純集計)
(土地を有利な資産と考えるか否かによる違い) 土地を預貯金や株式などに比べて有利な資産と考えるか否かによる土地所有に負担を感じる割合の違いをみると、「有利な資産と思う」と回答した者のうち土地所有に対する負担を「感じたことがある又は感じると思う」と回答した割合は40.8%で、「有利な資産とは思わない」と回答した者では46.5%となっており、土地を有利な資産と思わない者の方が土地所有に負担を感じると回答した者の割合が若干高いが、「有利な資産と思う」者でも4割以上が負担を感じていることが分かる(図表3-2-2)。
0 20 40 60 80 100(%)
有利な資産とは思わない(n=650)
有利な資産と思う(n=485)
46.5
40.8
53.4
59.2
0.2
0.0
46.5
40.8
53.4
59.2
0.2
0.0
負担を感じたことがある又は感じると思う負担を感じたことがない又は感じるとは思わないわからない
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」
図表 3-2-2 土地所有に対する負担感(土地を有利な資産と考えるか否か別)
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
123
(土地所有の有無による違い) 土地の所有の有無についてみると、「土地を所有している」者の割合は64.7%であった。そのうち「利用していない土地を所有している」ものは4.7%であった(図表3-2-3)。
0 20 40 60 8010 30 50 70 90 100(%)
利用している土地のみを所有している60.0
利用している土地のみを所有している60.0
土地を所有していない34.3
土地を所有していない34.3
利用していない土地を所有している 4.7利用していない土地を所有している 4.7
その他0.1
その他0.1
分からない0.9
分からない0.9
土地を所有している64.7
土地を所有している64.7
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:n=1,604
図表 3-2-3 土地所有の有無
土地所有の有無による土地所有に負担を感じる割合の違いをみると、「土地を所有している」者のうち土地所有に「負担を感じたことがある又は感じると思う」と回答した割合は38.9%であるが、「土地を所有していない」者で48.9%となった。土地を所有していない者の方が負担を感じる結果となったが、これは負担に感じるから土地を所有していない者がいることや土地を所有していない者が土地所有に対して実際の負担以上に重い負担があると考えることがあることなどの現れとも考えられる(図表3-2-4)。
0 20 40 60 80 100(%)
土地を所有していない(n=550)
土地を所有している(n=1,038)
48.9
38.9
50.7
61.1
0.4
0.0
48.9
38.9
50.7
61.1
0.4
0.0
負担を感じたことがある又は感じると思う負担を感じたことがない又は感じるとは思わないわからない
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」
図表 3-2-4 土地所有に対する負担感(土地所有の有無別)
124
(空き地所有者へのWEBアンケートの単純集計) 一方、空き地所有者へのWEBアンケートにおいて、所有する空き地(複数の空き地を所有している場合、居住地から最も遠い空き地を念頭に回答してもらっている)について、「所有することに負担を感じたことがあるか」について質問を行ったところ、「負担を感じたことがある」と回答した者の割合は47.4%となった。これは国民への意識調査の「土地を所有している」者の割合より高い(図表3-2-5)。
以下、空き地所有者が感じる所有する空き地への負担感について、上記空き地所有者へのWEBアンケートの負担感に関する単純集計結果と他の質問項目をクロス集計することで考察していく。 (所有する空き地の地目による違い) 所有する空き地の地目別に所有に負担を感じる割合をみると、地目による大きな違いはないものの、所有する空き地が田畑である者が所有に負担を感じたことがあると回答した割合が比較的高く(52.1%)、山林である者がやや低い(43.7%)結果となった(図表3-2-6)。
負担を感じたことがない52.6%
負担を感じたことがない52.6%
負担を感じたことがある47.4%
負担を感じたことがある47.4%
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注:n=5,000
図表 3-2-5 所有する空き地に対する負担感(単純集計)
0 20 40 60 80 100(%)
田畑(n=945)
宅地(n=3,400)
その他(n=74)
山林(n=581)
0.00.20.40.60.81.0
46.646.6 53.453.4
52.152.1 47.947.9
43.743.7 56.356.3
48.648.6 51.451.4
負担を感じたことがある 負担を感じたことがない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-6 所有する空き地に対する負担感(地目別)
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
125
(所有する空き地の取得経緯(相続により取得したか否か)による違い) 所有する空き地の取得経緯(相続により取得したか否か)による所有に負担を感じる割合の違いをみるため、まず空き地を所有する者にその取得経緯を質問したところ、相続により取得した割合が68.3%であった(図表3-2-7)。 これを地目別に集計すると、田畑又は山林である者については、相続により取得した割合が約8割と高い結果となった。
0 20 40 60 80 100(%)
単純集計(n=5,000)
宅地(n=3,400)
【地目別】
田畑(n=945)
山林(n=581)
その他(n=74)
68.368.3 31.731.7
64.064.0 36.036.0
79.679.6 20.420.4
76.176.1 23.923.9
63.563.5 36.536.5
相続により取得 相続以外で取得
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-7 所有する空き地の取得経緯
一方、取得経緯別に負担感をみると、相続で当該空き地を取得した者のうちその所有に「負担を感じたことがある」と回答した者の割合は51.4%で、相続以外の経緯で当該土地を取得した者では38.7%であり、相続により当該空き地を取得した者の方が所有に負担を感じたことがあると回答した者の割合が高い結果となった。これは、自ら所有する意思をもって取得した者の方が負担に感じる割合が低いことを示していると考えられる(図表3-2-8)。
0 20 40 60 80 100(%)
相続以外で取得(n=1,584)
相続により取得(n=3,416)
38.7
51.4
61.3
48.6
38.7
51.4
61.3
48.6
負担を感じたことがある 負担を感じたことがない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-8 所有する空き地に対する負担感(取得経緯別)
126
次に、取得経緯別の負担感を地目別に分析すると、宅地・田畑・山林ともに相続で取得した者の方が「負担を感じたことがある」と回答した者の割合が高い結果となり、特に、宅地又は田畑を相続で取得した者のうち「負担を感じたことがある」と回答した者の割合は半数を超える結果となった(図表3-2-9)。
0 20 40 60 80 100(%)
0 20 40 60 80 100(%)
0 20 40 60 80 100(%)
相続以外で取得(n=1,225)
相続により取得(n=2,175)
相続以外で取得(n=193)
相続により取得(n=752)
43.043.0 57.057.0
相続以外で取得(n=139)
相続により取得(n=442)
【所有する空き地=宅地】
【所有する空き地=田畑】
【所有する空き地=山林】
29.529.5
48.248.2
70.570.5
51.851.8
54.454.4 45.645.6
38.938.9
51.051.0
61.161.1
49.049.0
負担を感じたことがある 負担を感じたことがない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-9 所有する空き地に対する負担感(地目別、取得経緯別)
(土地所有に対する負担感の考察結果まとめ)・ 国民のうち約42%は土地の所有に対し「負担を感じたことがある又は感じると思う」と
回答している。これは、土地を有利な資産と考えるか否かで大きな差はなく、有利な資産と考えている者でも約41%の者が負担を感じている。
・ 土地所有者のうち約39%が負担を感じたことがあると回答した。逆に言えば、土地所有者のうち約6割は土地所有に負担を感じたことがないと回答した。
・ 空き地所有者のうち、その所有に「負担を感じたことがある」と回答した者の割合は約47%と土地所有者を上回る結果となった。これを地目別にみると、田畑で比較的高く、また、「相続」で取得した者の方が高い結果となった。
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
127
(2)所有する空き地の管理の実態と負担感との関係(所有する空き地の管理の実態) 土地が利用されている場合、利用に伴って維持管理がされており、その維持管理に対して負担感を意識することは少ないと考えられるが、利用されていない土地を所有する場合、その土地が外部不経済をもたらさないように維持管理することが負担に感じる一因であると考えられる。そこで、ここでは、所有する空き地の管理の実態をまず明らかにし、その実態と負担感との関係を分析する。 所有する空き地の「管理の有無」(所有者により管理されている場合のほか管理行為を他人に任せている場合も含む)について単純集計及び地目別に集計をしたところ、「管理している」と回答した者の割合は67.1%となった。地目別にみると、当該土地が田畑である者では75.0%と割合が高いが、当該土地が山林である者では46.5%と低くなっており、管理されていない割合が高い(図表3-2-10)。
0 20 40 60 80 100(%)
管理している 管理していない
管理していない32.9%
管理していない32.9%
管理している67.1%
管理している67.1%
(n=5,000)
宅地(n=3,400)
田畑(n=945)
山林(n=581)
その他(n=74)
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
68.6 31.4
75.0 25.0
46.5 53.5
58.1 41.9
図表 3-2-10 所有する空き地の管理の有無
128
所有する空き地を「管理している」と回答した者のその具体的な管理行為の内容(複数回答可)をみると、「草刈り」と回答した者の割合が67.0%と最も高く、次に「見回り(44.6%)」が続いた(図表3-2-11)。
図表3-2-11 所有している空き地の管理の内容
草刈り
見回り
掃除
看板・囲いの設置とその点検
その他
0(%)
10 20 30 40 50 60 70
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注;複数回答、n=3,353
39.2
12.5
2.1
44.6
67.0
図表 3-2-11 所有している空き地を管理している者の管理の内容
所有する空き地を管理している者に対して、その管理行為についての「管理頻度」について質問したところ、「年に1回~数回」と回答した者の割合が50.6%と最も高い結果となっており、「月に1回~数回」と回答した者の割合も38.6%であった(図表3-2-12)。
数年に1回10.9%数年に1回10.9%
年に1回~数回50.6%
年に1回~数回50.6%
月に1回~数回38.6%
月に1回~数回38.6%
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注:n=3,353
図表 3-2-12 所有している空き地を管理している者の管理頻度
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
129
所有する空き地を管理している者に対して、「維持や管理に要する年間にかかる費用(固定資産税等の税金、管理委託料、交通費等を含む)」について質問したところ、「費用はかかっていない」と回答した者の割合が34.1%と最も高く、次に「1万円~3万円未満(17.1%)」が続いた(図表3-2-13)。 各回答項目の中央値(例えば「1万円~3万円未満」では2万円。「50万円以上」は50万円とする。)を用いて所有する空き地を管理している者の当該空き地の維持・管理に要する費用の平均額を試算すると、約4万2千円になる。
費用はかかっていない34.1%
費用はかかっていない34.1%
1万円未満16.7%1万円未満16.7%
5万円~10万円未満10.1%
5万円~10万円未満10.1%
10万円~20万円未満5.8%
10万円~20万円未満5.8%
1万円~3万円未満 17.1%1万円~3万円未満 17.1%
20万円~50万円未満2.4%
20万円~50万円未満2.4%
3万円~5万円未満 12.0%3万円~5万円未満 12.0%
50万円以上1.6%
50万円以上1.6%
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注:n=3,353
図表 3-2-13 所有する空き地を管理している者の維持・管理に要する費用
(所有する空き地の管理の実態と負担感との関係) 所有する空き地の管理の実態による負担感の違いを分析する。 まず、負担感を所有する空き地の管理頻度別に集計すると、管理頻度が「月に1回~数回」と回答した者で負担を感じたことがあると回答した割合が60.2%と最も高く、「年に1回~数回」と回答した者では57.8%、「数年に1回」と回答した者では36.0%、そして「管理していない」と回答した者では29.1%と最も低い結果となった。所有する空き地の管理をしており、その管理頻度が高い者の方が負担を感じている結果となり、利用されていない土地の管理行為により取り組んでいる者ほど、実際に負担を感じていることが示された(図表3-2-14)。
130
0 20 40 60 80 100(%)
年に1回~数回管理している(n=1,696)
数年に1回管理している(n=364)
管理していない(n=1,647)
月に1回~数回管理している(n=1,293)
60.260.2 39.839.8
57.857.8 42.242.2
36.036.0 64.064.0
29.129.1 70.9 70.9
負担を感じたことがある 負担を感じたことがない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-14 所有する空き地に対する負担感(管理頻度別)
次に、負担感を所有する空き地の管理費用別に集計すると、「費用がかかっていない」と回答した者で負担を感じたことがあると回答した割合が40.9%と最も低いが、費用がかかっている者で負担を感じる割合は半数を超える結果となった(図表3-2-15)。
0 20 40 60 80 100(%)
1万円未満(n=561)
1万円~3万円未満(n=574)
3万円~5万円未満(n=404)
費用はかかっていない(n=1,145)
10万円~20万円未満(n=194)
20万円~50万円未満(n=81)
50万円以上(n=54)
5万円~10万円未満(n=340)
40.940.9 59.159.1
56.056.0 44.044.0
65.565.5 34.534.5
63.963.9 36.1 36.1
72.972.9 27.127.1
68.068.0 32.032.0
67.967.9 32.132.1
70.470.4 29.629.6
負担を感じたことがある 負担を感じたことがない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-15 所有する空き地に対する負担感(管理費用別)
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
131
(所有する空き地の管理の実態と負担感との関係の考察結果まとめ)・ 空き地を所有している者の約3分の2は当該土地の管理行為を行っている。・ その管理行為の内容は、草刈り、見回り、掃除等で、頻度は年に1回~数回が多かった。・ 管理行為の実態と負担感との関係をみると、管理頻度が高い方が負担を感じる割合が高い。
また、管理費用がかかっている者で負担を感じる割合は半数を超える結果となった。
2 所有する空き地に関する意向
国民の土地に対する負担感をみてきたところであるが、ここで空き地所有者へのWEBアンケートの結果を用いて、所有する空き地に関する意向、具体的には相続させたいか否か、また、負担を感じている空き地の所有権を手放したいかについて考察する。
(1)所有する空き地を相続させたいか(空き地所有者へのWEBアンケートの単純集計) WEBアンケートの対象である空き地所有者に「所有する空き地を親族等に相続させたいか」について質問したところ、56.6%が「相続させたいとは思わない」と回答した(図表3-2-16)。
相続させたいとは思わない56.6%
相続させたいとは思わない56.6%
相続させたい43.4%
相続させたい43.4%
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注:n=5,000
図表 3-2-16 所有する空き地を相続させたいか(単純集計)
132
(所有する空き地の地目による違い) 所有する空き地の地目によるその土地の相続意向の違いをみると、所有する空き地が「山林」である者で「相続させたいとは思わない」と回答した割合が高い(66.1%)結果となった(図表3-2-17)。
0 20 40 60 80 100(%)
田畑(n=945)
山林(n=581)
その他(n=74)
宅地(n=3,400) 45.145.1 54.954.9
43.543.5 56.556.5
33.933.9 66.166.1
36.536.5 63.5 63.5
相続させたい 相続させたいとは思わない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-17 所有する空き地を相続させたいか(地目別)
(所有する空き地の居住地からの距離による違い) 所有する空き地の居住地からの距離による相続意向の違いをみると、所有する空き地が居住地から遠いほど「相続させたいとは思わない」と回答した割合が高くなる結果となった(図表3-2-18)。
0 20 40 60 80 100(%)
車・電車などで1時間以内(n=1,416)
徒歩圏内(n=1,792)
車・電車などで3時間超~日帰り可能(n=418)
車・電車などで1時間超~3時間以内(n=595)
不明(n=440)
日帰りが不可能(n=339)
51.551.5 48.548.5
49.949.9 50.150.1
38.738.7 61.361.3
30.630.6 69.469.4
28.328.3 71.771.7
19.519.5 80.580.5
相続させたい 相続させたいとは思わない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-18 所有する空き地を相続させたいか(居住地からの距離別)
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
133
(所有する空き地の管理の有無による違い) 所有する空き地を管理しているかどうかによる相続意向の違いをみると、所有する空き地の「管理をしていない者」の方が「相続させたいとは思わない」と回答した割合が高い(72.1%)結果となった。これは逆に、「管理をしている者」の方が、より「相続させたい」と思っていると解釈することができる(図表3-2-19)。
0 20 40 60 80 100(%)
管理していない(n=1,647)
管理している(n=3,353)
27.9
51.0
72.1
49.051.0 49.0
27.9 72.1
相続させたい 相続させたいとは思わない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-19 所有する空き地を相続させたいか(管理の有無別)
(所有する空き地の相続意向に対する考察結果まとめ)・ 空き地所有者の過半は、所有する空き地を「相続させたいとは思わない」と回答している。・ 特に、所有する空き地が「山林」である者で「相続させたいとは思わない」と回答する者
の割合が高く、また、当該土地が居住地から遠い者、当該土地の管理をしていない者ほど「相続させたいとは思わない」と回答する割合が高い結果となった。所有する空き地を「管理していない」者で「相続させたいとは思わない」と回答した割合が高いのは、管理していない土地には子孫に保有させる積極的意義を見いだせないケースが多いと捉えることができる。
134
(2)負担を感じている空き地の将来に対する意向(負担を感じている空き地の所有権を手放したいか) 次に、所有に負担を感じたことがあると回答した空き地所有者(図表3-2-5参照)に「その土地の所有権を手放したいか」について質問したところ、そのまま所有する意向を示した者が半数を超え、このうち利用の見込みの有無はほぼ同数であった。一方、「売れる見込みがあるから売却するつもり」、「売れる見込みはないが手放せるものなら手放したい」と回答した者の割合もそれぞれ22.3%、25.4%を占めた。所有する空き地の地目別に集計すると、「売却するつもり」及び「手放したい」と回答した割合は合わせて、宅地である者で42.9%、田畑である者で49.6%、山林である者で69.7%と順に高くなった(図表3-2-20)。
売れる見込みはないが、手放せるものなら手放したい
25.4%
売れる見込みはないが、手放せるものなら手放したい
25.4%
将来誰かが居住又は利用する見込みがあるからそのまま所有するつもり
26.2%
将来誰かが居住又は利用する見込みがあるからそのまま所有するつもり
26.2%
売れる見込みがあるから売却するつもり22.3%
売れる見込みがあるから売却するつもり22.3%
将来誰かが居住又は利用する見込みはないがそのまま所有するつもり
26.1%
将来誰かが居住又は利用する見込みはないがそのまま所有するつもり
26.1%
0 20 40 60 80 100
田畑(n=492)
山林(n=254)
その他(n=36)
宅地(n=1,586)
(%)
31.6 25.5 23.5 19.4
18.3 32.1 18.9 30.7
10.6 19.7 20.1 49.6
8.3 11.1 33.3 47.2
将来誰かが居住又は利用する見込みがあるからそのまま所有するつもり将来誰かが居住又は利用する見込みはないがそのまま所有するつもり売れる見込みがあるから売却するつもり売れる見込みはないが、手放せるものなら手放したい
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
注:n=2,368
図表 3-2-20 所有に負担を感じる空き地の所有権を手放したいか
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
135
(手放す場合の費用負担) また、「売れる見込みはないが手放せるものなら手放したい」と回答した割合は、宅地である者で19.4%、田畑である者で30.7%、山林である者で49.6%と順に高くなった(図表3-2-20)。これらの回答者に、「所有する空き地を手放すためにいくらまでなら支払ってもよいか」について質問をしたところ、負担を感じたことがあっても「費用がかかるなら手放したいと思わない」と回答した者の割合が49.3%を占める一方で、「固定資産税相当額(1年分)」との回答が28.2%を占めるなど、一定の費用を支払っても所有権を手放したいとする回答が半数を占める結果となった(図表3-2-21)。
図表 3-2-21 所有に負担を感じる空き地の所有権を手放したい者が手放すために支払ってもよい費用
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注:n=602
固定資産税相当額(1年分)28.2%
固定資産税相当額(1年分)28.2%
固定資産税相当額(1年分)及び管理費用(1年分)
8.8%
固定資産税相当額(1年分)及び管理費用(1年分)
8.8%
その他0.7%その他0.7%
費用がかかるなら手放したいと思わない
49.3%
費用がかかるなら手放したいと思わない
49.3%
固定資産税相当額(5年分)及び管理費用(5年分)
7.5%
固定資産税相当額(5年分)及び管理費用(5年分)
7.5%
固定資産税相当額(10年分)及び管理費用(10年分)
5.5%
固定資産税相当額(10年分)及び管理費用(10年分)
5.5%
(負担に感じている空き地の将来に対する意向の考察結果のまとめ)・ 負担を感じたことがある空き地所有者の約半数はその空き地を売却するまたは手放したい
と回答した。・ 「売れる見込みはないが手放せるものなら手放したい」と回答した者のうち、「費用がかか
るなら手放したいと思わない」との回答と「一定の費用を支払ってでも所有権を手放したい」との回答が約半数ずつとなった。
3 土地所有者の責務
所有者不明土地は増加しているが、土地は所有者が不用になったからといって消滅させることができるものではなく、また、管理せずに放置しておくと衛生面、防災面、治安面等で外部不経済をもたらす可能性や、地域の賑わい創出や豊かな住環境の形成のために活用する機会を逸して機会費用が発生する場合があるなど、一般の財と異なる性格を持っている。 そのような中、国民は土地所有者の責務についてどう感じているか、両調査結果を用いて考察する。
136
(国民への意識調査の単純集計) 国民への意識調査で「土地の所有者は、仮にその土地を使っていない場合でも、周囲に悪影響を与えないよう草刈等の管理を行う義務を負っていると考えるか」について質問したところ、「管理の義務を負っていると思う」と回答した者の割合が84.9%を占める結果となった(図表3-2-22)。
わからない4.6%
わからない4.6%
管理の義務を負っているとは思わない10.5%
管理の義務を負っているとは思わない10.5%
管理の義務を負っていると思う
84.9%
管理の義務を負っていると思う
84.9%
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:n=1,604
図表 3-2-22 土地所有者の責務(単純集計)
(土地の所有の有無による違い) 土地の管理義務に対する考えは土地所有の有無により違いがあるのかをみると、「土地を所有している」者のうち「管理の義務を負っていると思う」と回答した割合が87.3%、「土地を所有していない」者のうち同回答をした割合が81.3%となっており、土地を所有している者の方が「管理の義務を負っていると思う」と回答した割合がやや高いが、いずれも8割を超える結果となった(図表3-2-23)。
0 20 40 60 80 100(%)
土地を所有していない(n=550)
土地を所有している(n=1,038)
81.3
87.3
14.0
8.4
4.7
4.387.3 8.4 4.3
81.3 14.0 4.7
管理の義務を負っていると思う管理の義務を負っているとは思わないわからない
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」
図表 3-2-23 土地所有者の責務(土地所有の有無別)
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
137
(空き地所有者へのWEBアンケートの単純集計) 一方、空き地所有者へのWEBアンケートで上記と同様の質問を行ったところ、「管理の義務を負っていると思う」の回答が66.2%と約3分の2を占める結果となったものの、国民への意識調査と比べると一定程度低い結果となった(図表3-2-24)。
管理の義務を負っているとは思わない33.8% 管理の義務を
負っていると思う66.2%
管理の義務を負っていると思う
66.2%
管理の義務を負っているとは思わない33.8%
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注:n=5,000
図表 3-2-24 土地所有者の責務(単純集計)
(所有する空き地を管理しているかどうかによる違い) 空き地所有者の土地の管理義務に対する考えは所有する空き地を管理しているかどうかで違いがあるかをみると、管理している者では「管理の義務を負っていると思う」と回答した者の割合が75.9%と高く、管理をしていない者では46.6%と低い結果となった(図表3-2-25)。
0 20 40 60 80 100(%)
0 20 40 60 80 100
75.9 24.1
46.6 53.4所有する空き地を管理していない(n=1,647)
所有する空き地を管理している(n=3,353)
75.9 24.1
46.6 53.4
管理の義務を負っていると思う 管理の義務を負っているとは思わない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-25 土地所有者の責務(管理の有無別)
138
(所有する空き地を登記しているかどうかによる違い) 空き地所有者の土地の管理義務に対する考えは所有する空き地の登記をしているかどうかで違いがあるかをみると、登記を行っている者では「管理の義務を負っていると思う」と回答した者の割合が71.6%と高く、登記を行っていない者では44.5%と低い結果となった(図表3-2-26)。
0 20 40 60 80 100(%)
0 20 40 60 80 100
71.6 28.4
44.5 55.5
71.6 28.4
44.5 55.5所有する空き地の登記を行っていない(n=982)
所有する空き地の登記を行っている(n=4,018)
管理の義務を負っていると思う 管理の義務を負っているとは思わない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-26 土地所有者の責務(当該土地の登記の有無別)
(土地所有者の責務に対する考察結果まとめ)・ 国民の約85%は「土地所有者は管理の義務を負っている」と考えている。ただし、空き
地所有者では管理義務を負っていると考えている者は約66%と一定程度低い結果となった。
・ 空き地所有者の中でも、特に所有する空き地を管理している者や登記をしている者は、7割を超える者が管理義務を負っていると考えている反面、管理行為や登記を行っていない者では、5割を超える者が管理義務を負っているとは考えていないという結果となった。
4 土地所有権の放棄
土地所有者が土地を所有することによる利益よりも負担の方が大きいと感じた場合、その土地に保有する価値が感じられず所有権を手放したい、つまり所有権を放棄したいという考えに至ることが想定される。 こうした土地所有権の放棄を認めてもよいか、認めてもよいとする場合、放棄をするために費用を支払う必要があると考えるか、放棄された土地はその管理コストも含めてどういった主体が引き受けるべきかについて両調査結果を用いて考察する。 (国民への意識調査の単純集計) 国民への意識調査で「所有している土地が不要になった場合、土地の所有権の放棄を認めてもよいと考えるか」について質問を行ったところ、「放棄を認めてもよい」と回答した者の割合が76.6%を占める結果となった。さらに、「放棄を認めてもよい」と回答した者のうち、
「一定の費用を支払えば認めてもよい」と回答した者が59.3%(全体の45.4%)、「費用を支払うことなく認めてもよい」と回答した者が40.7%(全体の31.2%)となった(図表3-2-27)。 また、上記質問で「放棄を認めてもよい」と回答した者(76.6%)に対して、「放棄され
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
139
た土地は、管理コストを含めて誰が引き受けるべきか」について質問を行ったところ、「地方公共団体」とする回答が62.8%を占め、次に「国」とする回答が28.1%となった。行政ではないより身近な存在としての「自治会等の地域コミュニティ」と回答する割合は4.0%にとどまった(図表3-2-28)。
放棄を認めてはいけない
9.6%
放棄を認めてはいけない
9.6%
わからない13.8%わからない13.8%
放棄を認めてもよい76.6%
放棄を認めてもよい76.6%
費用を支払うことなく認めてもよい40.7%
費用を支払うことなく認めてもよい40.7%
一定の費用を支払えば
認めてもよい59.3%
一定の費用を支払えば
認めてもよい59.3%
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:n=1,604
図表 3-2-27 土地所有権の放棄(単純集計)
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:n=1,228
国28.1%国
28.1%
NPO等の民間の非営利組織2.8%
NPO等の民間の非営利組織2.8%
自治会等の地域コミュニティ4.0%
自治会等の地域コミュニティ4.0%
地方公共団体62.8%
地方公共団体62.8%
その他0.3%その他0.3%
わからない2.0%
わからない2.0%
図表 3-2-28 放棄された土地を引き受けるべき主体
140
(年齢による違い) 土地所有権の放棄に対する考えについて年齢による違いをみると、20代を除き年齢が高くなるにつれて「放棄を認めてもよい」と回答する割合が漸減しているが、70歳以上を除けば概ね4分の3を超える結果となった(図表3-2-29)。
0 20 40 60 80 100(%)
放棄を認めてもよい放棄を認めてはいけないわからない
0.00.20.40.60.81.0
放棄を認めてもよい 放棄を認めてはいけない わからない
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」
70歳以上(n=388)
60~69歳(n=374)
50~59歳(n=269)
40~49歳(n=294)
30~39歳(n=183)
20~29歳(n=96) 77.177.1 9.49.4
2.72.7
6.86.8
8.98.9
11.511.5
13.713.7
13.513.5
8.78.7
8.88.8
8.68.6
13.613.6
24.024.0
88.588.5
84.484.4
82.582.5
74.974.9
62.462.4
図表 3-2-29 土地所有権の放棄(年齢別)
(土地所有の有無による違い) 土地所有権の放棄に対する考えについて土地所有の有無による違いをみると、「土地を所有している」者では「放棄を認めてもよい」と回答した割合が75.8%、「土地を所有していない」者では78.4%と大きな違いはなく、土地所有者のみならず、土地を所有していない者でも土地所有権の「放棄を認めてもよい」と回答した割合が高い結果となった(図表3-2-30)。
0 20 40 60 80 100(%)
土地を所有していない(n=550)
土地を所有している(n=1,038)
78.4
75.8
8.0
10.4
13.6
13.875.8 10.4 13.8
78.4 8.0 13.6
放棄を認めてもよい 放棄を認めてはいけない わからない
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」
図表 3-2-30 土地所有権の放棄(土地所有の有無別)
(土地所有者の責務に対する考えによる違い) 土地所有権の放棄に対する考え方について、土地所有者は管理する義務を負っていると思うか否かによる違いをみると、「管理義務を負っていると思う」者では「放棄してもよい」
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
141
と回答した割合が79.0%、「管理義務を負っているとは思わない」者でも76.8%と大きな違いはなかった(図表3-2-31)。
0 20 40 60 80 100(%)
管理の義務を負っているとは思わない(n=168)
管理の義務を負っていると思う(n=1,362)
76.876.8
79.0
11.9
9.5
11.3
11.579.0 9.5 11.5
11.9 11.3
放棄を認めてもよい 放棄を認めてはいけない わからない
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」
図表 3-2-31 土地所有権の放棄(土地所有者の責務に対する考え別)
(空き地所有者へのWEBアンケートの単純集計) 空き地所有者へのWEBアンケートの対象者全員に、同様に「土地所有権の放棄を認めてもよいか」について質問を行ったところ、「放棄を認めてもよい」の回答が69.0%と、国民への意識調査と比べるとやや低い結果となった。他方、「放棄を認めてもよい」と回答した者のうち、「一定の費用を支払えば認めてもよい」と回答した者が48.8%(全体の33.7%)、「費用を支払うことなく認めてもよい」と回答した者が51.2%(全体の35.3%)と概ね同率となったが、国民への意識調査と比べて「費用を支払うことなく認めてもよい」とする回答の割合がやや高くなった(図表3-2-32)。 また、「放棄を認めてもよい」と回答した者(69.0%)に対して、「放棄された土地は、管理コストを含めて誰が引き受けるべきか」という質問を行った。その結果、「地方公共団体」、
「国」とする回答がそれぞれ54.1%、28.8%となり、「国・地方公共団体以外の公的組織」の9.4%を加えると、公的組織と回答した割合が9割を超え、国民への意識調査の結果と大きく変わらない結果となった(図表3-2-33)。
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注:n=5,000
放棄を認めてはいけない31.0%
放棄を認めてはいけない31.0%
放棄を認めてもよい69.0%
放棄を認めてもよい69.0%
費用を支払うことなく認めてもよい51.2%
費用を支払うことなく認めてもよい51.2%
一定の費用を支払えば
認めてもよい48.8%
一定の費用を支払えば
認めてもよい48.8%
図表 3-2-32 土地所有権の放棄(単純集計)
142
国28.8%国
28.8%
国、地方公共団体以外の公的組織9.4%
国、地方公共団体以外の公的組織9.4%
NPO等の民間の非営利組織3.4%
NPO等の民間の非営利組織3.4%
地方公共団体54.1%
地方公共団体54.1%
自治会等の地域コミュニティ3.7%
自治会等の地域コミュニティ3.7%
その他0.6%その他0.6%
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」 注:n=3,451
図表 3-2-33 放棄された土地を引き受けるべき主体
(空き地所有者の土地所有に対する負担感による違い) 空き地所有者の土地所有権の放棄に対する考えについて土地所有への負担感の有無による違いをみると、空き地の所有に「負担を感じたことがある」者のうち土地所有権の「放棄を認めてもよい」と答えた者の割合は84.0%と国民への意識調査よりも高い割合となった。これは、空き地所有者の放棄制度に対する願望の現れとみることもできよう。他方、空き地の所有に「負担を感じたことがない」者のうち、「放棄を認めてもよい」と答えた者の割合が55.5%とやや低い割合であった(図表3-2-34)。これは、負担を感じたことがないので放棄する制度があってもなくてもよいという態度であるとみることもできる。
負担を感じたことがない(n=2,632)
負担を感じたことがある(n=2,368)
0 20 40 60 80 100(%)
55.5
84.0
55.5
84.0 16.016.0
44.5 44.5
放棄を認めてもよい 放棄を認めてはいけない
資料:国土交通省「利用されていない土地に関するWEBアンケート」
図表 3-2-34 土地所有権の放棄(土地所有に対する負担感の有無別)
(土地所有権の放棄に対する考察結果まとめ)・ 国民の約77%が土地所有権の「放棄を認めてもよい」と回答した。そのうち「一定の費
用を支払えば認めてもよい」と回答した者の割合は約59%(全体の約45%)、「費用を支払うことなく認めてもよい」の回答は約41%(全体の約31%)となり、放棄には費用負担を伴うべきとする回答が費用負担なしで放棄を認めるとする回答を上回った。
・ 空き地所有者では、「放棄を認めてもよい」と回答した割合は、約69%という結果となった。
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
143
そのうち「費用を支払うことなく認めてもよい」の回答が約51%(全体の約35%)となり、こちらは費用負担なく放棄を認めるべきとする回答が上回った。
・ 空き地の所有に負担を感じている者では「放棄を認めてもよい」と回答した割合は8割を超える高い結果となった。これは放棄制度に対する願望の現れとみることもできよう。
・ 土地所有権の「放棄を認めてもよい」と回答した割合は、70歳以上の高齢者では約62%とやや低いが6割を超える水準であり、他の年齢層では、おおむね75%を超える高い割合となった。また、土地所有の有無、土地所有者の責務に対する考え方にかかわらず、土地所有権の「放棄を認めてもよい」と回答した割合も75%を超える結果となった。
5 土地所有者情報の開示
所有者不明土地問題を解消する直接的な手段として、土地所有者情報の開示を制度化することが考えられる。仮に、一般への開示が制度化され、情報へのアクセスが容易になれば、土地を利用したい場合や管理不全の土地があった場合に所有者への連絡が容易になるとともに、所有者自身の自覚も高まるものと思われる。 そこで、土地所有者情報の開示に関する国民の意識について、国民への意識調査の結果を用いて考察を行う。 (国民への意識調査の単純集計) 国民への意識調査の対象者全員に「誰でも簡単に土地の所有者が分かるように、所有者情報は一般に開示されてもよいと考えるか」という質問を行ったところ、「一般に開示されてもよい」との回答が34.7%を占めたが、「一般に開示されてはいけない」との回答が49.6%とこれを上回った(図表3-2-35)。 さらに、「一般に開示されてもよい」と回答した者に「一般に開示されてもよいと考える理由」について質問したところ、「土地が放置され、管理されないことにより害悪が発生した場合、所有者に連絡を取る必要があるため」との回答が69.8%と最も多く、次に、「土地の利用検討者が所有者に連絡を取ることができるようにする必要があるため」の回答が34.9%と続いた(図表3-2-36)。 一方、「一般に開示されてはいけない」と回答した者にその理由を質問したところ、「プライバシーの侵害にあたると考えるため」の回答が70.1%と最も高く、続いて「トラブルが起きると予想されるため」の回答が60.6%で続いた(図表3-2-37)。また、「一般に開示されてはいけない」と回答した者に「どういった主体に対してであれば所有者情報を開示してよいか」について質問したところ、「行政機関に対して(道路や公園等の公共事業のため必要があるときに)」との回答が58.7%と最も多く、次に、「地域の自治会等(土地が放置され、管理されないことにより害悪が発生し、所有者に連絡をとる必要があるときに)」の回答が42.8%と続いた。一方で、「いかなる理由でも開示してはいけない」との回答は12.2%にとどまった(図表3-2-38)。
144
わからない15.8%わからない15.8%
一般に開示されてはいけない49.6%
一般に開示されてはいけない49.6%
一般に開示されてもよい34.7%
一般に開示されてもよい34.7%
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:n=1,604
図表 3-2-35 土地所有者情報の開示
土地の利用検討者が所有者に連絡を取ることができるようにする
必要があるため
土地が放置され、管理されていないことにより害悪が発生した場合、
所有者に連絡を取る必要があるため
その他
わからない
秘匿される必要のない情報であるため
100(%)
69.8
34.9
23.9
0.5
1.3
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:複数回答、n=556
0 20 40 60 80 100
図表 3-2-36 「一般に開示されてもよい」と回答した者の理由
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
145
トラブルが起きると予想されるため
プライバシーの侵害にあたると考えるため
その他
わからない
土地の所有者情報の開示にメリットを感じないため
(%)
0.5
1.4
70.1
60.6
12.6
0 20 40 60 80 100
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:複数回答、n=795
図表 3-2-37 「一般に開示されてはいけない」と回答した者の理由
地域の自治会等に対して(土地が放置され、管理されないことにより害悪が発生し、所有者に連絡をとる必要があるときに)
行政機関に対して(道路や公園等の公共事業のため必要があるときに)
いかなる理由でも開示してはいけない
わからない
その他
民間事業者に対して(地域の再開発事業のために必要があるときに)
42.842.8
11.611.6
12.212.2
9.49.4
0.10.1
58.758.7
0 20 40 60 80 100(%)
資料:国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」 注:複数回答、n=795
図表 3-2-38 「一般に開示されてはいけない」と回答した者にどういった主体に対してであれば開示してよいかの質問に対する結果
(土地所有者情報の開示に対する考察結果まとめ)・ 国民の約3分の1が「所有者情報は一般に開示されてもよい」と回答しているが、約半数
は一般への開示に反対である。・ 開示されてもよい理由は「土地が放置され、管理されないことにより害悪が発生した場合、
所有者に連絡を取る必要があるため」とする回答が約7割と最も高い結果となった。・ 他方、開示に反対の者の理由は、プライバシーの侵害とトラブルが起きることを懸念して
いる点にある。・ 一般への開示に反対の者でも、「行政機関に対して(公共事業のために必要があるときに)」
や「地域の自治会等に対して(害悪が発生し、所有者に連絡をとる必要があるときに)」であれば開示してよいと回答する者はそれぞれ6割弱、4割強いる。
146
第3節 所有者不明土地問題に対する政府の取組及び今後の対応 前述のとおり、政府は、平成29年6月9日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017」において、所有者不明土地問題に対する以下の取組方針を定めた。「公共事業や農地・林地の集約化等において共通課題となっている所有者を特定することが困難な土地に関して、地域の実情に応じた適切な利用や管理が図られるよう、共有地の管理に係る同意要件の明確化や、公的機関の関与により地域ニーズに対応した幅広い公共的目的のための利用を可能とする新たな仕組みの構築、長期間相続登記が未了の土地の解消を図るための方策等について、関係省庁が一体となって検討を行い、必要となる法案の次期通常国会への提出を目指す。さらに、今後、人口減少に伴い所有者を特定することが困難な土地が増大することも見据えて、登記制度や土地所有権の在り方等の中長期的課題については、関連する審議会等において速やかに検討に着手し、経済財政諮問会議に状況を報告するものとする。」
こうした方針を踏まえ、関係省庁は所有者不明土地問題に関して連携して取り組んでいるところである。本節では、所有者不明土地問題に対する平成29年度の政府の取組内容及び今後の対応について記載する。
(平成29年度の取組内容) 国土交通省では、平成29年9月から国土審議会土地政策分科会特別部会において喫緊の課題である所有者不明土地の利用の円滑化に関する制度の方向性等について検討を開始し、同年12月に「国土審議会土地政策分科会特別部会中間とりまとめ」を公表した。同とりまとめでは、当面の対応として、所有者不明土地の利用の円滑化に向けて、公共事業のために収用する場合の手続の合理化、公園や広場など地域住民のための公共的事業に一定期間利用することを可能とする新たな仕組みの構築、所有者の探索を合理化する仕組みの構築等について提言がされた。また、中期的な課題として、所有者不明土地の発生予防等のための土地所有の在り方の見直しについては、法務省において行われる登記制度や土地所有権の在り方など民事基本法制における議論と整合をとりつつ検討を進めることが必要であるとの内容も盛り込まれた。前段の内容を踏まえ、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案を第196回国会に提出した(図表3-3-1)。 法務省は、上記の法案に、地方公共団体の長等に不在者財産管理人等の選任申立権を付与する制度及び長期間相続登記等がされていない土地について、登記官がその旨等を登記簿に記録すること等ができる制度の創設を盛り込んだ。 また、民法の共有物の保存・管理等の解釈が必ずしも明確ではないため、複数の者が共有する私道(共有私道)の必要な補修工事等の実施に支障が生じていることを踏まえ、平成29年8月より共有私道の保存・管理等に関する事例研究会において検討を開始し、平成30年1月に「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~」がとりまとめられた(図表3-3-2)。 さらに、所有者不明土地の発生の抑制・解消に向け、登記制度及び土地所有権の在り方等の根本的課題について、平成29年10月より研究会を立ち上げ、検討を進めている。
土地に関する動向
所有者不明土地問題を取り巻く国民の意識と対応 第3章
147
図表 3-3-1 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案の概要
資料:国土交通省、法務省
所有者の探索において、原則として登記簿、住民票、戸籍など客観性の高い公的書類を調査することとするなど(※)合理化を実施。
平成28年度地籍調査における所有者不明土地
●所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案
背景・必要性
法案の概要
1.所有者不明土地を円滑に利用する仕組み
2.所有者の探索を合理化する仕組み
① 土地等権利者関連情報の利用及び提供
○ 土地の所有者の探索のために必要な公的情報(固定資産課税台帳、地籍調査票等)について、行政機関が利用できる制度を創設
○ 人口減少・高齢化の進展に伴う土地利用ニーズの低下や地方から都
市等への人口移動を背景とした土地の所有意識の希薄化等により、所有者不明土地(※)が全国的に増加している。
○ 今後、相続機会が増加する中で、所有者不明土地も増加の一途をたどることが見込まれる。
○ 公共事業の推進等の様々な場面において、所有者の特定等のため多大なコストを要し、円滑な事業実施への大きな支障となっている。
【目標・効果】○ 所有者不明土地の収用手続に要する期間(収用手続への移行から取得まで) : 約1/3短縮(約31→21ヵ月)○ 地域福利増進事業における利用権の設定数: 施行後10年間で累計100件
経済財政運営と改革の基本方針2017 (平成29年6月9日閣議決定)(抜粋)・所有者を特定することが困難な土地に関して、地域の実情に応じた適切な利用や管理が図られるよう、・・・公的機関の関与により地域ニーズに対応した幅広い公共的目的のための利用を可能とする新たな仕組みの構築、・・・等について、・・・必要となる法案の次期通常国会への提出を目指す。
反対する権利者がおらず、建築物(簡易な構造で小規模なものを除く。)がなく現に利用されていない所有者不明土地について、以下の仕組みを構築。
① 公共事業における収用手続の合理化・円滑化 (所有権の取得)
○ 国、都道府県知事が事業認定(※)した事業について、収用委員会に代わり都道府県知事が裁定
(審理手続を省略、権利取得裁決・明渡裁決を一本化)
② 地域福利増進事業の創設 (利用権の設定)
○ 都道府県知事が公益性等を確認、一定期間の公告
○ 市区町村長の意見を聴いた上で、都道府県知事が利用権(上限10年間)を設定
(所有者が現れ明渡しを求めた場合は期間終了後に原状回復、異議がない場合は延長可能)
ポケットパーク(公園)
直売所(購買施設)
(出典)杉並区
(出典)農研機構 広島県
② 長期相続登記等未了土地に係る不動産登記法の特例
○ 長期間、相続登記等がされていない土地について、登記官が、長期相続登記等未了土地である旨等を登記簿に記録すること等ができる制度を創設
① 財産管理制度に係る民法の特例
○ 所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度を創設 (※民法は、利害関係人又は検察官にのみ財産管理人の選任請求を認めている)
・不動産登記簿上で所有者の所在が�