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1 VOL.25 2004 NO.1 3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ 広田 和彦 *1 1. はじめに 近年,自動化機械,電気自動車,燃料電池など, 直流電源が動力源として使われるようになり,直 流電流の計測機会が増えている.また,インバー タの普及などにより,低周波測定の機会も増えて きている.センサと表示部が一体化したいわゆる ハンディタイプの交流/ 直流用クランプ電流計とし 3284328532873288 をラインナップしてき た.一方,センサと表示部が分離している分離型 クランプ電流計の 3108-013109-01 は発売以来 20 年以上が過ぎ,インバータの普及などに伴い,求 められる周波数帯域が広くなってきたことで,対 応できないケースが出てきている.また,製品に は高い安全性と耐ノイズ性を要求されてきてい る. 3290969196929693 の組み合わせにより最 2000 A までの測定および DC 1 Hz からの測定 を可能にした安全設計の交流/ 直流用クランプ電流 計である. 2. 設計コンセプト 機構,配線が複雑に交わる機械内の電流計測に おいて,表示部が一体化したクランプ電流計では, 表示部確認ができない場合がある.また,直流電 流測定および低周波電流測定の機会が増え,求め られる機能も多くなってきている.これらが実現 可能なセンサと表示部を分離させた測定器を目的 として開発に着手した. 従来機種にあった電圧測定機能を搭載せず,市 場の多くの要望を実現させるために,電流測定用 途に絞った.また多機能なクランプ電流計とする ために表示部を従来のアナログメータからディジ タル表示にすることにした. 従来機種ではセンサと本体が1対になってお り,被測定電路の電流値に合わせて2機種必要な 場合があった.本製品ではセンサ側に回路を搭載 し,調整することで,互換性を持たせることにし た.これにより 1 台の 3290 で,複数のセンサを使 用することが可能となり,さらにセンサと本体の 組み合わせによる管理が不要となった.また,既 存の 328432853287 のクランプセンサ部分を流 用することで開発費用を極力抑えた. 従来機種の延長用中間ケーブルは 10 m (3108-01) および 30 m (3109-01) が限界であったが,本製品で は鉄道車両関係での需要に応え最大 100 m まで可 能とした.また安全性と耐ノイズ性を満足し,国 内,外国の様々な環境で使用できる CE マーキン グに対応しているクランプ電流計である. 3. 機能・特長 9691 (100 A 定格 )9692 (200 A 定格 )9693 (2000 A 定格 ) 3 機種のセンサを用意し,被測定電路の 電流値に応じて,あるいはクランプするスペース が狭いまたはケーブルが太いなど被測定電路の状 況に応じてセンサを選択することができる.3290 ではセンサの識別信号により定格を認識し,自動 的にレンジ処理を行っている.各測定のレンジ構 成を表1に示す. 3.1 センサ (969196929693) 3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ 3290 クランプオン AC/DC ハイテスタは 969196929693 クランプオン AC/DC センサ と組み合せて使用するセンサと本体 ( 表示部 ) が分離した多機能なディジタルクランプ電 流計である.ここに製品の特長、構成について説明する. 3290 の外観 *1 技術部 3 研究室

3290 クランプオン AC/DC · 2015-03-18 · 成を表1に示す. 3.1 センサ(9691, 9692,9693) 3290 クランプオンac/dc ハイテスタ 要 旨 3290 クランプオンac/dc

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1

日 置 技 報 VOL.25 2004 NO.1

3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ

広田 和彦 *1

1. はじめに

近年,自動化機械,電気自動車,燃料電池など,

直流電源が動力源として使われるようになり,直

流電流の計測機会が増えている.また,インバー

タの普及などにより,低周波測定の機会も増えて

きている.センサと表示部が一体化したいわゆる

ハンディタイプの交流/直流用クランプ電流計とし

て 3284, 3285, 3287, 3288 をラインナップしてき

た.一方,センサと表示部が分離している分離型

クランプ電流計の 3108-01, 3109-01 は発売以来 20年以上が過ぎ,インバータの普及などに伴い,求

められる周波数帯域が広くなってきたことで,対

応できないケースが出てきている.また,製品に

は高い安全性と耐ノイズ性を要求されてきてい

る.3290, 9691, 9692,9693 の組み合わせにより

大 2000 A までの測定および DC と 1 Hz からの測定

を可能にした安全設計の交流/直流用クランプ電流

計である.

2. 設計コンセプト

機構,配線が複雑に交わる機械内の電流計測に

おいて,表示部が一体化したクランプ電流計では,

表示部確認ができない場合がある.また,直流電

流測定および低周波電流測定の機会が増え,求め

られる機能も多くなってきている.これらが実現

可能なセンサと表示部を分離させた測定器を目的

として開発に着手した.

従来機種にあった電圧測定機能を搭載せず,市

場の多くの要望を実現させるために,電流測定用

途に絞った.また多機能なクランプ電流計とする

ために表示部を従来のアナログメータからディジ

タル表示にすることにした.

従来機種ではセンサと本体が1対になってお

り,被測定電路の電流値に合わせて2機種必要な

場合があった.本製品ではセンサ側に回路を搭載

し,調整することで,互換性を持たせることにし

た.これにより 1 台の 3290 で,複数のセンサを使

用することが可能となり,さらにセンサと本体の

組み合わせによる管理が不要となった.また,既

存の 3284, 3285, 3287 のクランプセンサ部分を流

用することで開発費用を極力抑えた.

従来機種の延長用中間ケーブルは 10 m (3108-01)および 30 m (3109-01) が限界であったが,本製品で

は鉄道車両関係での需要に応え 大 100 m まで可

能とした.また安全性と耐ノイズ性を満足し,国

内,外国の様々な環境で使用できる CE マーキン

グに対応しているクランプ電流計である.

3. 機能・特長

9691 (100 A定格 ), 9692 (200 A定格 ), 9693 (2000A 定格 ) と 3 機種のセンサを用意し,被測定電路の

電流値に応じて,あるいはクランプするスペース

が狭いまたはケーブルが太いなど被測定電路の状

況に応じてセンサを選択することができる.3290ではセンサの識別信号により定格を認識し,自動

的にレンジ処理を行っている.各測定のレンジ構

成を表1に示す.

3.1 センサ (9691, 9692,9693)

3290クランプオン AC/DCハイテスタ

要 旨

3290 クランプオン AC/DC ハイテスタは 9691, 9692,9693 クランプオン AC/DC センサ

と組み合せて使用するセンサと本体 ( 表示部 ) が分離した多機能なディジタルクランプ電

流計である.ここに製品の特長、構成について説明する.

3290 の外観

*1 技術部 第 3 研究室

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日 置 技 報 VOL.25 2004 NO.1

3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ

(1) 金属露出のないセンサ

安全性を重視した設計でセンサ部すべてをプラ

スチックで覆ったため金属露出がない.

(2) 薄いセンサ (9691) 狭い場所でもクランプできるようにセンサの

厚さを 10 mm としている.またセンサの開閉構造

は両開きになっているため,被測定電路に応じて

開閉でき,よりクランプしやすくなっている.

(3) センサロック機能 (9691) 測定中,振動・衝撃によるセンサ先端部の開き

を防止するため,簡易ロック機構を付けた.

(4) 中間ケーブル

5 m, 10 m, 20 m, 30 m, 50 m, 100 m の中間ケー

ブルを用意.製品仕様に影響を及ぼすことなく,セ

ンサケーブルを延長して測定が可能.

3.2 3290

(1) 低周波電流測定

インバータ 2 次側など 1 Hz からの低周波電流測

定が可能.

(2) 交流測定において測定応答時間切替

通常の応答時間 (0.8 s) の他に,測定応答が早い

測定をしたい場合には FAST (0.2 s),低周波電流測

定をする場合には SLOW (8 s) というような 3 段階

の切替が可能.

(3) 2 出力

2 つの出力端子を持つことにより,電流測定の出

力を得ながら周波数測定の出力も得る,あるいは

電流波形を観測しながら,実効値記録の動きも得

るといったことが可能.

(4) AC,DC 分離機能

AC 電流と DC 電流が混在した電流ラインから,

AC 電流の実効値出力と DC 電流の出力を 2 つの出

力端子から分離して得ることが可能.

表 1 クランプセンサ

センサ 組み合せ

使用センサ測定可能導体径

定格入力 出力レート 測定レンジ大表示 出力レート 周波数帯域

(-3 dB)通常測定 ピーク測定

9691 φ35 mm100 Arms 150 Apeak 1 V/100 A

20.00 A 25.00 A 50.0 A 100 mV/A10 kHz

200.0 A 105.0 A 150.0 A 10 mV/A

9692 φ33 mm200 Arms 300 Apeak 2 V/200 A

20.00 A 25.00 A 50.0 A 100 mV/A20 kHz

200.0 A 210.0 A 300.0 A 10 mV/A

9693 φ55 mm2000 Arms 2840 Apeak 2 V/2000 A 200.0 A 250.0 A 500 A 10 mV/A 15 kHz

9691 の外観

9692 の外観

9693 の外観

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3

日 置 技 報 VOL.25 2004 NO.1

3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ

(5) ピークホールド機能

機器始動時の突入電流の波高値がわかるピーク

ホールド機能.アナログ回路によるピーク検出.

(6) フィルタ機能

インバータ 2 次側のキャリア成分をカットして

基本波の測定を行う場合に有効.

(7) 測定方式切替

ひずみ波を正確に測定できる真の実効値方式

(RMS) と正弦波を正確に測定できる平均値整流実

効値指示方式 (MEAN) を切替えることが可能.

(8) 電池消耗警告信号

電池消耗警告マークが点灯すると警告信号出力

を Hi から Lo にする機能.長時間,出力測定中に

電池消耗警告が出てしまった場合,データ信頼性

の判断が可能.

(9) 設定保存機能

頻繁に使う設定を保存し,以後の電源投入時ご

とに設定するという煩わしさをなくすことができ

る.

4. 構成

4.1 センサ (9691, 9692,9693)

(1) センサ部

9691, 9692, 9693それぞれ 3287, 3284, 3285のセ

ンサ部分を流用している.1) 2)

(2) 筐体部

9691 の筐体裏面にはセンサの開閉をロックする

簡易ロック機構を搭載している ( 図1 ).これは,

測定中の振動などにより測定誤差の原因となるセ

ンサ部の開きを防止するためである.

ツマミを操作することによりセンサ部の動作を

抑制することができるため,多少の振動や衝撃が

加わる設置条件においてもセンサ部の開きに起因

する測定誤差を防止することができる.

(3) 回路部

図 2 にセンサのブロック図を示す.

直流電流測定を行なうため,電流検出センサに

はホール素子を用いている.3290 から供給される

電源から定電流回路を構成しホール素子を駆動さ

せている.これにより被測定電路をクランプする

ことで電路の電流に比例したホール出力電圧が得

られる.この電圧を増幅し,出力アンプを通じ出

力している.(9691: 1 V / 100 A, 9692: 2 V / 200 A,

9693: 2 V / 2000 A)ホール出力電圧は負の温度係数を持つため,回

路内で傾きを補正している.図 15 に示すように,

この補正により 0 ~ 40°Cの範囲で感度変化は極力

抑えられるようになる.

しかし,ホール素子の持つ不平衡電圧 ( オフセッ

ト電圧)の温度特性には固体差があるため回路など

による補正を行っていない (0~ 40°C, 23°C基準に

おいて、9691: typ. ±0.2 A,9692: typ. ±1.0 A,9693:

図 1 9691 センサ部簡易ロック機構

センサロック操作面 内部構造

ロック動作状態図

ロック用スライド部品(上下に移動)

位置決めガイド

センサ

開閉レバー

操作ツマミ

センサ端部を押えこむ

センサ開閉中心軸

レバー回転軸

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日 置 技 報 VOL.25 2004 NO.1

3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ

ÅD

typ. ±1.0 A).そのため温度変化のある環境下での直

流電流測定,特に小さな電流を測定する際にはあ

らかじめ,センサの持つ温度特性をつかんでおく

ことが測定上の誤差を把握するためには重要であ

る.

その他,3290 に接続するだけで3種類のセンサ

を認識できるように識別信号を持たせている.

4.2 3290

(1) 筐体

下ケースや LCD パネルなどは既存製品を流用

し,上パネルとラバーキーのみ新規設計とした.

(2) 回路部

図 3 に 3290 ブロック図を示す.

• 入力部

センサ出力に合わせ,3290 は電圧入力になって

いる.センサ識別信号および入力信号の大きさに

よりマイコン制御にてレンジ選択を行っている.

• 直流測定回路部

直流に重畳している交流分除去のために,ロー

パスフィルタ(LPF)を入れている.これにより3284,3285 ではできなかった半波や全波波形の平均値測

定が可能となった.また,16 bitA/D 変換器を採用

することで,低入力時では極性判別誤差による測

定誤差が大きかった 3284,3285 の問題も解消でき,

低入力の電流測定が可能となった.

直流測定においてセンサの帯磁や測定環境下の

温度変化によるオフセット電圧などは測定誤差の

要因となる.測定前のゼロアジャスト操作により,

マイコンからゼロからの誤差分の補正データを D/A 変換器を通して,入力部にフィードバックし,表

示値および出力値がゼロになるようにしている.

• 交流測定回路部

真の実効値測定方式と平均値検波実効値指示方

式による測定の選択が可能.歪み波形の測定が可

能な真の実効値測定回路では,回路内部コンデン

サの切替により測定応答時間を切替えることがで

きる (FAST, NORMAL, SLOW).過渡的な電流測

定を行う際には,FAST モードでの測定で対応がで

きる.また,1 Hz からの測定においては AC+DCモードの SLOW で測定を可能としている.

• ピーク検出部

3284, 3285 と同様にアナログ回路による検出方

法をとっている.3)

• 周波数測定部

入力信号を波形整形 ( パルス化 ) し,CPU 内部の

8 bitA/D 変換器に入力している.一定期間内ゲート

を開き,その中のパルス数をカウントして,演算

処理後周波数表示している.波形整形はゼロクロ

ス検出によるため,入力を増幅後 LPF により高い

周波数成分をカットし,基本波の周波数測定が正

確に行えるようにしている.

• 出力回路部

出力項目には電流測定の記録 (REC 出力 ),波形

(MON 出力 ),周波数測定の記録 (REC 出力 ),電池

消耗警告信号 (B.Lo 出力 ) がある.出力端子を2つ

設けたことにより,電流波形を観測しながらの実

効値記録,周波数記録を取りながらの電流記録あ

るいは直流と交流が混在した波形からの直流と交

流の分離出力など様々な用途に対応できるように

なっている.また,長時間記録中の電池消耗によ

り出力値変化があった場合についても,どこまで

のデータに信頼性があるのか,B.Lo 信号を監視す

ることで確認が可能である.

• 電源部

図 4 に電源部回路のブロック図を示す.

IC レギュレータとダイオードの順方向電圧を利

用し,AC アダプタ (DC 9 V) と電池 (DC 6 V) に対

応した設計になっている.電池が挿入されている

場合でもACアダプタの電源が優先されるようにし

定電流回路

アンプ

ゼロ調整回路

ゲインアンプ

出力アンプ

ホール素子

出力端子

本体からの電源供給〈±5 V)

センサ識別信号

感度調整回路

9691,9692:1個 9693:2個

図 2 9691,9692,9693 ブロック図

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3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ

ているが,停電時には電池によりバックアップさ

れる.また,復電時には AC アダプタの電源に切り

替わるようになっている.

外部出力を 大 ±4 V まで可能としているため,

電池 (DC6 V) から ±5 V 程度の電源を作る必要があ

る.さらにセンサへの電源供給も必要なため,倍

電圧回路および極性反転回路などを使用し,電流

容量の確保と電池寿命の長時間化に対応する設計

になっている.

(3) ソフトウェア

• 測定システム

(a) 測定詳細

1 回の測定は 250 ms で行われる.測定の流れを

以下に示す.

A/D サンプリング

電流値演算

周波数測定 ( 周波数表示,周波数出力のみ )↓

表示

(b) A/D サンプリング

160 回の A/D サンプリングを行い,A/D 値を加

算する.

なお,周波数表示,および周波数出力時では,

128 回のサンプリングを行い,A/D 値を加算する.

また,ピーク測定では,ピーク検出回路の HOLD値を 1 回サンプリングする.

(c) 電流値演算

加算したA/D値をサンプリング数で割ることで,

平均化を行う.

なお,DC 測定では,平均化した値を用い,4つ

の値を使用して移動平均処理を行う.

また,ピーク測定では,平均化処理を行わない.

(d) 周波数測定

1 Hz から 1000 Hz の範囲の測定を行う.

図 3 3290 ブロック図

SignalIN

AC結合

ピーク検出

RMS/DC変換

コンパレータ

ゼロ調整補正信号

DCAC+DC

AC

周波数測定

REC(Hz)

レンジアンプ

OFF

ON

LPF ゲインアンプ

RMS

MEAN

ACAC+DC

DC

SLOW

NORMAL

FAST

レートアンプ

16 bitA/D

変換器

10 bitD/A

変換器

CPU

Normal

Peak

LPF

出力アンプ

MON

REC(A)

出力アンプ

REC(A)

B.Lo

RECフィルタfc=1Hz

OFF

ON

電池消耗警告信号

LPF

加算回路

出力端子1

センサ識別信号

出力端子2

フィルタ500Hz

全波整流回路

図 4 ブロック図 ( 電源部回路 )

ACアダプタ

+8 Vレギュレータ

電池1.5 V×4本

9 V±5%

DC-DCコンバータ

倍電圧回路

DC-DCコンバータ

極性反転

+5 Vレギュレータ

-5 Vレギュレータ

VCC.A (+5 V)

VEE.A (-5 V)

+2.495 V基準IC

+3.5 V作製

VCC.B (+3.5 V)

OPアンプ

VEE.B (-3.5 V)

9445-02

極性反転

コモンモード

フィルタ

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3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ

周波数表示では,測定した周波数を用い,8 つの

値を使用して移動平均処理を行う.

なお,周波数出力では,10 bitD/A 変換器により

周波数表示に合わせた出力を行う.

(e) 表示

1 回の測定は 250 ms (FAST) で行い,NORMAL

は 2 回の平均,SLOW は 12 回の平均を表示する.

• 設定保存機能

HOLD キーを約 2 秒長押しすると,現在のモー

ドやレンジ等を E2PROM に保存する.これにより,

保存したモードやレンジ等で起動することができ

る.

なお,3290 採用の E2PROM では,100 万回の設

定保存が可能である.

5. 特性

3290 の入力は電圧入力.レンジはセンサごとに

異なるため,H レンジ,L レンジで記載.

3290・電流表示確度 (DC 入力 ) ( 図 5)・電流表示確度 (AC 入力 ) ( 図 6)・電流 MON 出力確度 (DC 入力 ) ( 図 7)・電流 MON 出力確度 (AC 入力 ) ( 図 8)

・電流 REC 出力確度 (DC 入力 ) ( 図 9)・電流 REC 出力確度 (AC 入力 ) ( 図 10)・電流周波数特性 (MON 出力 )( 図 11)センサ

・出力確度 (DC 入力 ) ( 図 12)・出力確度 (AC 入力 ) ( 図 13)・周波数特性 ( 図 14)・感度の温度特性 (AC 入力 )( 図 15)・導体位置の影響 ( 図 16)

図 5 電流表示確度 (DC 入力 )

-3

-2

-1

0

1

2

3

0.01 0.1 1 10

DC入力[V]

誤差

[%] DC(Lレンジ)

DC(Hレンジ)

AC+DC(Lレンジ)

AC+DC(Hレンジ)

図 6 電流表示確度 (AC 入力 )

-3

-2

-1

0

1

2

3

0.01 0.1 1 10

AC入力[V] 55Hz

誤差

[%] AC(Lレンジ)

AC(Hレンジ)

AC+DC(Lレンジ)

AC+DC(Hレンジ)

-3

-2

-1

0

1

2

3

0.01 0.1 1 10

DC入力[V]

誤差

[%] DC(Lレンジ)

DC(Hレンジ)

AC+DC(Lレンジ)

AC+DC(Hレンジ)

図 7 電流 MON 出力確度 (DC 入力 )

-3

-2

-1

0

1

2

3

0.01 0.1 1 10

AC入力[V] 55Hz

誤差

[%] AC(Lレンジ)

AC(Hレンジ)

AC+DC(Lレンジ)

AC+DC(Hレンジ)

図 8 電流 MON 出力確度 (AC 入力 )

-3

-2

-1

0

1

2

3

0.01 0.1 1 10

DC入力[V]

誤差

[%]

AC+DC(Lレンジ)

AC+DC(Hレンジ)

図 9 電流 REC 出力確度 (DC 入力 )

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日 置 技 報 VOL.25 2004 NO.1

3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ

-3

-2

-1

0

1

2

3

1 10 100 1000 10000

DC入力[A]

誤差

[%]

9691

9692

9693

図 12 センサ出力確度 (DC 入力 )

-15

-10

-5

0

5

0.01 0.1 1 10 100 1000 10000 100000

入力周波数[Hz]

gain

[dB

]

AC

AC+DC

図 11 電流周波数特性 (MON 出力 )

-3

-2

-1

0

1

2

3

0.01 0.1 1 10

AC入力[V] 55Hz

誤差

[%] AC RMS(Lレンジ)

AC RMS(Hレンジ)

AC MEAN(Lレンジ)

AC MEAN(Hレンジ)

図 10 電流 REC 出力確度 (AC 入力 )

-3

-2

-1

0

1

2

3

1 10 100 1000 10000

AC入力[A] 55Hz

誤差

[%

9691

9692

9693

図 13 センサ出力確度 (AC 入力 )

-30

-25

-20

-15

-10

-5

0

5

1 10 100 1000 10000 100000

周波数[Hz]

gain

[dB

]

9691

9692

9693

図 14 センサ周波数特性

-3

-2

-1

0

1

2

3

-40 -20 0 20 40 60 80

温度[℃]

偏差

[%]

9691

9692

9693

図 15 センサ感度の温度特性 (AC 入力 )

(23°C 基準 )

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

0 45 90 135 180 225 270 315

導体の位置[deg]

偏差

[%]

9691

9692

9693

図 16 センサ導体位置の影響

A B C D E F G H

基準

AB

DE

F

G

H

( センサ導体位置 )

C

Page 8: 3290 クランプオン AC/DC · 2015-03-18 · 成を表1に示す. 3.1 センサ(9691, 9692,9693) 3290 クランプオンac/dc ハイテスタ 要 旨 3290 クランプオンac/dc

8

日 置 技 報 VOL.25 2004 NO.1

3290 クランプオン AC/DC ハイテスタ

6. おわりに

 3290, 9691, 9692,9693 は 3108-01, 3109-01 の単

なる置き換えにとどまらず,ハンディタイプの電

流計では実現できなかった機能を搭載した多機能

な分離型の電流計である.分離型を必要とする

ユーザばかりでなく,低周波からの電流測定や測

定解析が必要なユーザなどさまざまな分野で幅広

く活用していただければ幸いである.

長沢 広輝 *2,峯村 和孝 *2,北澤 真喜男 *2

塩野入 健一 *3

参考文献

1) 広田 和彦 :3287, 3288クランプオンAC/DCハイ

テスタ,日置技報,VOL.22 2001 No.1,31 (2001)2) 広田 和彦 :3284, 3285クランプオンAC/DCハイ

テスタ,日置技報,VOL.20 1999 No.1,74 (1999)3) 広田 和彦 :3284, 3285クランプオンAC/DCハイ

テスタ,日置技報,VOL.20 1999 No.1,75/76(1999)

*2 技術部 第 3 研究室 

*3 技術部 第 10 研究室