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245 3.3 GPS観測による詳細なひずみ分布の解明 目次 (1) 業務の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・246 (a) 業務題目 (b) 担当者 (c) 業務の目的 (d) 5ヵ年の年次実施計画 1) 平成20年度 2) 平成21年度 3) 平成22年度 4) 平成23年度 5) 平成24年度 (e) 平成20年度業務目的 (2) 平成20年度の成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・247 (a) 業務の要約 (b) 業務の成果 1) 観測機材の整備 2) 観測網の構築 3) 観測の実施 4) データ解析 (c) 結論ならびに今後の課題 (d) 引用文献 (e) 学会等発表実績 (f) 特許出願、ソフトウエア開発、仕様・標準等の策定 (3) 平成21年度業務計画案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・253

3.3 GPS観測による詳細なひずみ分布の解明 目次3〜5km 間隔の稠密GPS 観測網を構築した。平成21 年6 月から7 月にかけて、新潟県糸 魚川市、上越市、十日町市、南魚沼市を訪問してGPS

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245

3.3 GPS観測による詳細なひずみ分布の解明

目次

(1) 業務の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・246

(a) 業務題目

(b) 担当者

(c) 業務の目的

(d) 5ヵ年の年次実施計画

1) 平成20年度 2) 平成21年度 3) 平成22年度

4) 平成23年度

5) 平成24年度 (e) 平成20年度業務目的

(2) 平成20年度の成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・247

(a) 業務の要約

(b) 業務の成果

1) 観測機材の整備

2) 観測網の構築

3) 観測の実施

4) データ解析

(c) 結論ならびに今後の課題

(d) 引用文献

(e) 学会等発表実績

(f) 特許出願、ソフトウエア開発、仕様・標準等の策定

(3) 平成21年度業務計画案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・253

246

(1) 業務の内容

(a) 業務題目 GPS観測による詳細なひずみ分布の解明 (b) 担当者

所属機関 役職 氏名 メールアドレス 名古屋大学

大学院環境学研究科

大学院環境学研究科

大学院環境学研究科

全学技術センター

北海道大学

大学院理学研究院

大学院理学研究院

大学院理学研究院

大学院理学研究院

大学院理学研究院

大学院理学研究院

東北大学

大学院理学研究科

大学院理学研究科

東京大学地震研究所

東京大学地震研究所

富山大学理工学研究部

高知大学理学部

九州大学

大学院理学研究院

鹿児島大学理学部

神奈川県温泉地学研究所

神奈川県温泉地学研究所

教授

教授

助教

技術職員

教授

准教授

技術職員

技術職員

技術職員

研究員

准教授

助教

教授

研究員

教授

教授

准教授

准教授

主任研究員

技師

鷺谷 威

木股 文昭

伊藤 武男

奥田 隆

笠原 稔

高橋 浩晃

山口 照寬

一柳 昌義

高田 真秀

河野 裕希

三浦 哲

太田 雄策

加藤 照之

岩国 真紀子

竹内 章

田部井 隆雄

松島 健

中尾 茂

棚田 俊収

原田 昌武

[email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] [email protected]@onken.odawara.kanagawa.jp

(c) 業務の目的

ひずみ集中帯において精密な GPSキャンペーン観測を実施し、ひずみ集中帯を

横切る方向での地殻変動分布の現状を明らかにするとともに、得られた地殻変動

分布を説明できる物理モデルを構築する。

(d) 5ヵ年の年次実施計画

1) 平成20年度:ひずみ集中帯における詳細なひずみ分布を調査するための準

備として、必要な観測機器を整備し、国土地理院 GPS観測網 GEONETのデータを

有効活用できるように、ひずみ集中帯を横切る 2箇所の測線(新潟県上越市から

247

南魚沼市、柏崎市から南魚沼市を想定)に沿って、それぞれ、 2-3km程度の間隔

で GPSのキャンペーン観測用の観測点を設置する。さらに、年 1回のキャンペー

ン観測を実施する。観測としては、観測点に設置されたボルトにアンテナを固定

して 1〜 2週間の連続観測を実施する。年周変化の影響を避けるため、観測は秋に

実施する。得られた観測データは周囲の GEONET観測点と一緒に解析し、毎日の

精密な座標値を得る。

2) 平成21年度:GPS観測データ解析のための体制を整備すると共に、前年度設置され

た観測点において年1回のキャンペーン観測を実施し、データ解析を行なう。

3) 平成22年度:平成20年度に設置された観測点において年1回のキャンペーン観測を実

施し、データ解析を行なうと共に、これまでのデータから初期的なモデルを構築する。

4) 平成23年度:平成20年度に設置された設置された観測点において年1回のキャンペー

ン観測を実施し、データ解析を行なうと共に、自然地震観測や地殻構造探査などから得ら

れる地下構造を参考にモデルの改良を行なう。

5) 平成24年度:平成20年度に設置された設置された観測点において年1回のキャンペー

ン観測を実施し、データ解析を行なうと共に、各サブプロジェクトから得られる成果を参

考に、ひずみ集中を引き起こしている地殻内の短縮変形の分布や断層幾何形状およびすべ

り分布などを推定し、ひずみ集中帯を横切る詳細な地殻変動分布とそれを説明する物理モ

デルを構築する。

(e) 平成20年度業務目的

必要な観測機器を整備し、ひずみ集中帯を横切る測線(新潟県上越市から南魚沼市、柏

崎市から南魚沼市)に沿って、それぞれ、2-3km 程度の間隔で GPS キャンペーン観測用

の観測点を設置し、キャンペーン観測を実施する。安定した構造物に固定されたボルトに

アンテナを固定して 1~2 週間の連続観測を実施する。得られた観測データは周囲の

GEONET 観測点と一緒に解析し、毎日の精密な座標値を得る。

(2) 平成20年度の成果

(a) 業務の要約

GPS 観測に使用する GPS 受信装置を購入し、機器整備を行った。また、新潟県糸魚川

市、上越市、十日町市、南魚沼市に東西約 100km の範囲に新たに 42 ヶ所の GPS 観測点

を設置し、既存の GEONET 観測点および、2004 年新潟県中越地震および 2007 年新潟県

中越沖地震の余効変動観測で使用された観測点を含め、約 80 ヶ所の観測点からなる観測

網を構築した。糸魚川市から南魚沼市に至る測線では、平均間隔 2-3km という高い空間

分解能で地殻変動を得ることが可能となる。平成 20 年 11 月から 12 月にかけて、合計 50ヶ所の独自観測点において最初のキャンペーン GPS 観測を実施し、50 ヶ所中 48 ヶ所にお

いて、データを得た。これらのデータ解析を実施して、各観測点の精密な座標値を計算し、

次年度以降の観測における基準値を得ることができた。 (b) 業務の成果

1) 観測機材の整備

248

GPS 観測を実施するために必要な機材の整備を行った。機種の選定条件としては、本研

究ではキャンペーン観測を中心に行うため、ソーラー電力で駆動可能なよう消費電力の低

いもの、今後の GPS 衛星の周波数増や Galileo 等に対応可能なもの、また、アンテナの標

準規格である Dorne Margolin チョークリングアンテナを使用可能なもの、といった条件

を課して国際競争入札を実施し、その結果 Leica GGPro1200 を 20 セット購入し、平成

20 年 10 月末に納入された。

また、観測では名古屋大学および関係機関で保有している既存の受信機も使用している

ため、それらとの連携をとるため Trimble5700 を導入した。その他、今後の観測に必要と

なる機材・消耗品等を用意した。

2) 観測網の構築

本研究の目的は,日本海東縁ひずみ集中帯内部の変形の全容を明らかにすることである。

そのため、ひずみ集中帯が陸域に存在する新潟県上越地域において、その全体を横断する

3〜5km 間隔の稠密 GPS 観測網を構築した。平成 21 年 6 月から 7 月にかけて、新潟県糸

魚川市、上越市、十日町市、南魚沼市を訪問して GPS 観測点の候補地を調査した。8 月に

各自治体に財産使用の申請文書を送付し、承認を得た。GPS 観測点は、既存の RC 建造物

の屋上に、GPS アンテナ固定用のボルトを設置することで建設した。9 月から 10 月にか

けて、GPS アンテナを固定するための架台・ボルトの作成および各観測点への取り付けを

外注作業により実施し、合計 42 ヶ所の観測点を新設した。

また、2004 年新潟県中越地震、2007 年新潟県中越沖地震の発生直後に、余効変動観測

の目的で設置された GPS 観測点(ボルト、整準台等が現地に残されていた場所)を調査

し、そのうち 8 点を本観測の観測網に組み込んだ。

これにより、合計 50 点のキャンペーン観測点からなる GPS 観測網を構築した(図 1)。

図 1 GPS 観測点の配置図

249

3) 観測の実施

キャンペーン観測点 50 ヶ所において、平成 20 年 11 月 12 日から 12 月 4 日にかけて、

GPS の連続観測を実施した。観測機材は、本研究で新たに購入した受信機に加え、各大学

で保有していた既存の機器も合わせて使用した(図 2,図 3,図 4)。

50 点のうち、2 観測点では観測機材の不具合や設定ミスにより、精密な座標値を計算す

るために十分なデータを得ることができなかったが、それ以外の 48 点においては、順調

に観測が行われ、十分なデータが取得できた(表 1)。

図 2 GPS アンテナの設置状況(大和川小学校)

250

図 3 GPS 受信機の設置作業(浦本小学校)

図 4 GPS アンテナ,受信機の設置状況(清津峡小学校)

251

表 1 GPS キャンペーン観測によるデータの取得状況

4) データ解析

本研究で得た観測データ(48 点)に、周囲の GEONET 観測点(28 点)および IGS 観

測点(7 点)を加え、合計 83 点のデータ解析を実施して、毎日の精密な座標値を推定した。

データ解析には Bernese GPS Software(version 5.0)を使用し、IGS による精密暦および

地球回転パラメータを使用して解析を実施した。また、解析にあたっては、ITRF2005 座

標系に準拠し、IGS 観測点(TSKB を除く 6 点)を ITRF2005 で与えられる座標値に強く

拘束して座標値を得た。

その結果、観測が行われた約 20 日分の座標値のばらつき(RMS)として、東西成分で

は 1.7-4.6mm(平均 2.6mm)、南北成分で 1.9-8.2mm(平均 2/8mm)、上下成分で

5.1-65.5mm(平均 11.8mm)という結果が得られた。概ね精密な座標値推定ができたと言

えるが、一部の観測点では、特に上下成分で大きな RMS が得られている。この原因とし

ては、観測期間中にあった積雪の影響が考えられ、観測データの詳細な見直しやより慎重

な解析が必要である。

(c) 結論ならびに今後の課題

新潟県上越・中越地域に合計 50 点の観測点からなる稠密 GPS 観測網を構築し、最初の

GPS キャンペーン観測を約 20 日間実施した。このデータを周辺の GEONET 観測点のデ

ータと合わせて解析することにより、各観測点の座標値を精密に推定することができた。

今後、キャンペーン観測を継続することにより、ひずみ集中帯全体で年間 10-20mm 程度

252

と考えられる短縮変形が、その内部でどのように分布しているか、その詳細を明らかにす

ることが十分可能だと考えられる。 今後の課題としては以下のような内容を挙げることができる。1)一部の観測点を連続化

し、非定常な地殻変動を検出可能にする、2)上下成分について議論が可能となるような観

測方法を検討する、3)さらに詳細なデータ解析を実施し、観測精度の向上を図る。特に、

積雪の影響などによる座標値のばらつきを正しく評価し、誤差要因を除去した上で、より

精密な座標値の推定を行う。 (d) 引用文献

特になし (e) 学会等発表実績

学会等における口頭・ポスター発表 発表成果(発表題目、口

頭・ポスター発表の別) 発表者氏名

発表場所 (学会等名)

発表時期 国際・国

内の別 2つのひずみ集中帯と

内陸大地震(口頭:招待

講演)

鷺谷威 新潟市 (日本

地 質 学 会 中

部支部年会)

2008 年 6月

国内

Tectonic loading of crustal faults: how does the lower crust behave?(ポスター)

Sagiya, T., Y. Asahi, M. Ohzono, M. Hashimoto, Y. Hoso, Y. Wada, K. Hirahara, A. Takeuchi, and T. Nishimura,

つ く ば 市

(ASC/SSJ Joint meeting)

2008 年

11月 国際

Tectonic loading of crustal faults: how does the lower crust behave?(ポスター)

Sagiya, T., Y. Asahi, M. Ohzono, M. Hashimoto, Y. Hoso, Y. Wada, K. Hirahara, A. Takeuchi, and T. Nishimura,

サ ン フ ラ ン

シ ス コ 市

(American Geophysical Union Fall Meeting)

2008 年

12月 国際

学会誌・雑誌等における論文掲載

掲載論文(論文題目) 発表者氏名 発表場所

(雑誌等名)発表時期

国際・国

内の別 陸域地殻変動に基

づく日本列島の地

震テクトニクス

鷺谷 威

地震, 2009 年 2月 1 日 受

国内

Coseismic and postseismic deformation

Ohta, Y., S. Miura, T. Iinuma, K. Tachibana, T. Matsushima, H. Takahashi,

Earth, Planets and Space,

2008 年

10月 国際

253

related to the 2007 Chuetsu-oki, Niigata Earthquake,

T. Sagiya, T. Ito, S. Miyazaki, R. Doke, A. Takeuchi, K. Miyao, A. Hirao, T. Maeda, T. Yamaguchi, M. Takada, M. Iwakuni, T. Ochi, I. Meilano, and A. Hasegawa

60, 1081-1086

Postseismic slip associated with the 2007 Chuetsu-oki, Niigata, Japan, Earthquake (M6.8 on 16 July 2007) as inferred from GPS data

T. Iinuma, Y. Ohta, S. Miura, K. Tachibana, T. Matsushima, H. Takahashi, T. Sagiya, T. Ito, S. Miyazaki, R. Doke, A. Takeuchi, K. Miyao, A. Hirao, T. Maeda, T. Yamaguchi, M. Takada, M. Iwakuni, T. Ochi, I. Meilano, A. Hasegawa

Earth, Planets and Space, 60, 1087-1091

2008 年

10月 国際

マスコミ等における報道・掲載

報道・掲載された成果 (記事タイトル)

対応者氏名報道・掲載機関

(新聞名・TV名)発表時期

国際・国

内の別 鷺谷威教授 (名古屋大学 )に聞

く,ひずみ集中帯調査・観測の

最前線

鷺谷威 文部科学時報 2008 年

11月 国内

(f) 特許出願、ソフトウエア開発、仕様・標準等の策定

1) 特許出願

なし

2) ソフトウエア開発

なし 3) 仕様・標準等の策定

なし (3) 平成21年度業務計画案

前年度設置された観測点 50ヶ所において、3〜 4週間のキャンペーン観測を 1回実施する。さらに、GPS観測データ解析のための体制を整備してデータ解析

を行い、前年度の解析結果との比較から地殻変動分布に関する最初の結果を得

る。