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エントロピー学会誌『えんとろぴい』第 72 72 72 72 201 201 201 2012 3 15 15 15 15 【覚書・論考】 2011.12.16.到着 東日本大震災並びに 福島原発被害賠償の財源をめぐる諸問題 桂木 健次 1.はじめに 復興財源をめぐる復興債発行とその償還財源並びに復興予算直接財源としての増税等をめぐっての 議論を整理する。また、原発被害賠償をめぐり政府が機構に拠出した交付国債の評価をめぐる議論を整 理する。併せて、世代間資源配分をめぐる視点からの問題の所在を整理する。 2.復興財源をめぐる問題の所在 2011 2011 2011 2011 年の夏場、復興事業 10 10 10 10 23 23 23 23 兆(前倒し 5 19 19 19 19 兆)とされた時 6 兆は補正予算消化済で、13 13 13 13 円の財源調達先送りが審議され;、①歳費削減・国有財産売却・税の何処かを増税、②復興債発行(償 還財源としての増税)、③政府紙幣若しくは無利子長期国債日銀引受が国会の選択肢とされた。その時[1] [1] [1] [1]「特会制度設計、復興債発行に利用可能資金と遊休資産運用、対外純資産と日銀シニョレッジ(若しく は政府紙幣)」が知事会で復興委員会泉田委員長の主導で提議された。そして郡上市議会が 政府紙幣を 復興財源に充てる意見書[2] [2] [2] [2]を採択した。しかし、財務省筋及び政府は一貫として復興財源捻出のために 増税が必要だという議論であり、ロイター報道(9 28 28 28 28 日)は、「民主党税制調査会の古本伸一郎事務 局長は、税外収入 5 兆円、臨時増税 11 11 11 11 2,000 2,000 2,000 2,000 億円を前提に与野党協議を進める考えを示した」。これ に対して与野党問わず「デフレ下増税はさらなる不況圧力を国民生活にもたらす」ことの懸念が出て 1997 1997 1997 1997 年の消費税 2%増税の際に大不況となり他の税収(法人税・所得税)減少(その額は 2011 2011 2011 2011 年まで 14 14 14 14 年間に約 12 12 12 12 兆円も税収減)となって、財政赤字削減のための増税が結果的に景気の悪化を招き財政赤字を逆に悪化させる事態をもたらした前例が指摘されている。日銀は、長期国債直買い(引受 はしていないが、市中銀行に落札されたのを「買いオペ」で買取り(与信 )、金融資産として積み上げ て間接的に買い上げ(引受)をしているほか、毎年度予算に付議して日銀保有の長期国債で償還期のも のの借換債としての引受上限枠を国会議決で付与されている。日銀が「財政規律信認」から国債直受け を問題とするのは、有利子(長期〉国債を担保しないと運用益に芳しくなくなるから避けたいところ 無利子永久国債であれば、政府紙幣発行と同効果になってしまうからであろうが、何故財務省までが反 対するか分らなかった。 代わって、高橋洋一は増税以外の財源捻出法を指摘した。「復興財源捻出のために日本銀行が毎年、 法律の枠内で行なっている国債直受けから 18 18 18 18 兆円は即座に捻出できる」。その法的根拠であるが、財政 5 条(日銀の国債直接引き受け禁止)の「但し書き」にある「国会の議決を経た金額の範囲内」であ れば可とされているほか、国債整理基金特別会計法第5条の2規定である。そこで、毎年、財務省は予 算案に添えた「予算総則」で「日銀引受け可額」を国会議決(予算可決で)としていることを指摘して いる。尚、日銀も財務省も表向きは「直受はご法度」の言い分に加えて「日銀が国債を直接引受けると 『通貨の信認が毀損する』とか、ハイパーインフレとかの大幅な円安が起こる」と主張しているが、正 しくない。現に超円高と、「国債金利が暴騰して大変なことが起きる」事態は一切起こっていない。確 かに国債積上げには再考の余地がある。そこで財務省も当初は、数年間の元利償還据え置の復興債を発 行して、その間に税外資金調達をおこない、その後の増税によって償還に充てる とした方向を打ち出

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エントロピー学会誌『えんとろぴい』第 72727272号 2012012012012222年 3333月

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【覚書・論考】 2011.12.16.到着

東日本大震災並びに福島原発被害賠償の財源をめぐる諸問題

桂木 健次

1.はじめに

復興財源をめぐる復興債発行とその償還財源並びに復興予算直接財源としての増税等をめぐっての

議論を整理する。また、原発被害賠償をめぐり政府が機構に拠出した交付国債の評価をめぐる議論を整

理する。併せて、世代間資源配分をめぐる視点からの問題の所在を整理する。

2.復興財源をめぐる問題の所在

2011201120112011年の夏場、復興事業 10101010年 23232323兆(前倒し 5555年 19191919兆)とされた時 6666兆は補正予算消化済で、13131313兆

円の財源調達先送りが審議され;、①歳費削減・国有財産売却・税の何処かを増税、②復興債発行(償

還財源としての増税)、③政府紙幣若しくは無利子長期国債日銀引受が国会の選択肢とされた。その時[1][1][1][1]、

「特会制度設計、復興債発行に利用可能資金と遊休資産運用、対外純資産と日銀シニョレッジ(若しく

は政府紙幣)」が知事会で復興委員会泉田委員長の主導で提議された。そして郡上市議会が 政府紙幣を

復興財源に充てる意見書[2][2][2][2]を採択した。しかし、財務省筋及び政府は一貫として復興財源捻出のために

増税が必要だという議論であり、ロイター報道(9999月 28282828日)は、「民主党税制調査会の古本伸一郎事務

局長は、税外収入 5555兆円、臨時増税 11111111兆 2,0002,0002,0002,000億円を前提に与野党協議を進める考えを示した」。これ

に対して与野党問わず「デフレ下増税はさらなる不況圧力を国民生活にもたらす」ことの懸念が出て、

1997199719971997年の消費税 2222%増税の際に大不況となり他の税収(法人税・所得税)減少(その額は 2011201120112011年まで

の 14141414年間に約 12121212兆円も税収減)となって、財政赤字削減のための増税が結果的に景気の悪化を招き、

財政赤字を逆に悪化させる事態をもたらした前例が指摘されている。日銀は、長期国債直買い(引受)

はしていないが、市中銀行に落札されたのを「買いオペ」で買取り(与信)、金融資産として積み上げ

て間接的に買い上げ(引受)をしているほか、毎年度予算に付議して日銀保有の長期国債で償還期のも

のの借換債としての引受上限枠を国会議決で付与されている。日銀が「財政規律信認」から国債直受け

を問題とするのは、有利子(長期〉国債を担保しないと運用益に芳しくなくなるから避けたいところ。

無利子永久国債であれば、政府紙幣発行と同効果になってしまうからであろうが、何故財務省までが反

対するか分らなかった。

代わって、高橋洋一は増税以外の財源捻出法を指摘した。「復興財源捻出のために日本銀行が毎年、

法律の枠内で行なっている国債直受けから 18181818兆円は即座に捻出できる」。その法的根拠であるが、財政

法 5555条(日銀の国債直接引き受け禁止)の「但し書き」にある「国会の議決を経た金額の範囲内」であ

れば可とされているほか、国債整理基金特別会計法第5条の2規定である。そこで、毎年、財務省は予

算案に添えた「予算総則」で「日銀引受け可額」を国会議決(予算可決で)としていることを指摘して

いる。尚、日銀も財務省も表向きは「直受はご法度」の言い分に加えて「日銀が国債を直接引受けると

『通貨の信認が毀損する』とか、ハイパーインフレとかの大幅な円安が起こる」と主張しているが、正

しくない。現に超円高と、「国債金利が暴騰して大変なことが起きる」事態は一切起こっていない。確

かに国債積上げには再考の余地がある。そこで財務省も当初は、数年間の元利償還据え置の復興債を発

行して、その間に税外資金調達をおこない、その後の増税によって償還に充てる とした方向を打ち出

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【覚書・論考】 東日本大震災並びに福島原発被害賠償の財源をめぐる諸問題(桂木 健次)

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していたが、復興債発行の圧縮へと財源措置の枠組み自体を変えてきている。

なお、国債には、<発行目的による分類>

1.歳入債

(普通国債)

歳出需要のための歳入調達国債で新規財源債

と借換債(国債の償還資金調達)

2.繰延債 財政資金の支出に代えて償還日まで支出を繰り延べる目的

で発行される国債。交付国債や出資・拠出国債。

3.融通債 国庫の日々の資金繰りを賄う資金を調達する目的で、

一時的に発行される国債で、政府短期証券(FB)。

がある。その復興債は「歳入債」であるならば国債積増に批判的な論者は到底受け入れ難く、その圧縮

若しくは回避としての税収増若しくは税外収入のほうを選択する。目下話題の「復興債」については山

岡賢次・民主党や中川秀直・自民党らは「20202020兆円規模の復興国債を発行し日銀に引受け」を提案、税

法上は歳入債の赤字国債と同様だが、使途や償還期限を明確にすることで赤字国債とは区別させてはい

る。

私は、財政資金の支出に代えて発行することによりその償還日まで支出を繰延べる目的で発行される

繰延債である交付国債や出資・拠出国債での復興債の発行を提唱している。交付国債とは、支出がどこ

まで膨らむか見通せないとき、あらかじめ国が機関などに対して発行しておく無利子の国債のことで、

支給された機関は必要なときに換金できる記名式で、譲渡や処分はできない。これまでも、戦争被害者

(戦災者・引揚者・抑留者及びその遺族)への弔慰金や救済・補償金を支払う目的で交付されたほか、

破綻金融機関に対する資金援助業務、一般金融機関からの資産買収業務、資本増強業務などでも交付さ

れてきた。1997199719971997年の金融危機のときは、金融システム安定化のために預金保険機構に設定した公的資

金枠に 10101010兆円の交付国債を充てている。資金借り入れのために発行される通常の国債とは性質が異な

り、政府は支払いを要求された時点で初めて予算措置をおこなう。仕組みは、国際機関に資金を出す場

合によく使われる拠出国債、出資国債とほぼ同じ範疇。次項の原発震災東電賠償支援機構への政府支出

原資には繰延債の交付国債を充てているのであるが、何故復興債財源に明示されない。実際、戸田市等

の HPHPHPHPで復興債と区別されて交付金を被災者への受給手順が説明されている。また3次補正案では「東

日本復興交付金」の創設により漁業等第一次産業者支援に、自治体財政負担を軽減で1兆 6666千万枠での

導入が計られている。

3. 原発震災賠償をめぐる問題

しかし、財務省は交付国債を発行した。また日銀が被災地支援で入札実施の初回は 741741741741億円、全額貸

し[3][3][3][3]であった。

交付国債を発行することは、政府紙幣発行や日銀が無利子永久国債を引き受ける場合と同様に国の債

務残高に含まないだけでなく、一時的に現金通貨の過剰状態を生じ、その間に景気や物価に良い効果を

もたらす。

直近の先例をあげると預金保険機構に交付された国債の発行等に関する省令の規定がありそれに今

回も準じられている。その事例を見ると、償還の手続として「政府は、機構から国債の償還の請求を受

けた場合において、当該請求に係る金額の償還を行うときは、その償還を行う金額を日本銀行における

機構の勘定(日銀貸方政府預金勘定の枝科目)に払い込むものとする。」とある。また措置として「政

府は、機構から国債について、その額面金額又は登録金額の一部につき償還の請求を受け、当該請求に

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係る金額の償還を行った場合には、国債証券にあっては、当該国債証券と引換えに、当該額面金額から

当該償還金額を控除した金額を額面金額とする国債証券を機構に交付するものとし、登録国債にあって

は、当該登録金額から当該償還金額を減額するものとする。」とある。尚、東電では年度内 1 兆円賠償

支給を迫られており、政府(支援機構)にその交付国債等からの執行を求めており、大枠交付の小口国

債化が計られるであろう。

このように、交付国債等の繰越債はその発行による発行収入金が発生しない。原則として利子が付け

られず、必要に応じて現金化できるが、譲渡は禁じられているものである。今回でも賠償支援機構に対

して現金通貨若しくは預金通貨を渡すのではなく国債を交付、この機構が支払い時点で保有する国債を

償還し現金化する時点ではじめて予算措置を講じることになるが、それは政府預金(国庫)のキャッシ

ュフローの判断で融通債の短期政府証券等の発行で済ませられる。

4.資源配分からの整理:政府紙幣発行の意義

政府紙幣発行に反対慎重なのがいまの財務省・日銀並びに主だった財政学者である。その主だった主

張は2点ほどに纏められる。

第一点:「流動性の罠を脱した時どうするか」

その主張は「国民にとっては、政府紙幣でも日銀券でも同じなので、政府紙幣の増加分だけ、日銀券の

保有を減らす。それに対応するため、日銀は国債を売り、日銀券を吸収する。その結果、日銀保有の国

債残高が減少し、金利収入が減るので、日銀納付金も減少する。簡単な計算により、現在および将来の

日銀納付金の減少額の現在価値は、政府紙幣による増収額と一致することを示すことができる。結局、

現在価値ベースで見れば、政府紙幣の発行により政府の歳入は増加しない。」

しかしそういうことはない。日銀が必要と思えば国債を市中から買上げることで実質国債引受と同じ

ことをすることができ、また現金の一時過剰状態は日銀券を支払手段に使うことで実現可である。何故

なら、政府発行の紙幣は政府勘定では歳入として税収・歳入債と並んで貸方計上のうち一部は流通しな

い日銀資産として借方で計上となる。形を代えた無利子永久国債引受で、政府が日銀からその分を借入

れたと同じ理屈であるから、日銀が政府証券など売りオペほかで民間流通の政府紙幣が日銀に還流した

分も資産として受入れることが可能である。一時的に民間消費や企業などからの資金需要借入でマネー

サプライが増えても、買いオペをした分売りオペが待っているので中期的には効果が打ち消しになると

いう議論は取越し苦労で、またハイパワードになる可能性は日銀金融操作の枠内で収まる。 二点目

は:歴史逆行とし「政府紙幣の発行は、信用関係の中で生成、消滅する信用通貨の基本原則を破るもの

であり、中央銀行が政府のエージェントとなり財政行為を行うのは歴史を大きく元に戻すもの」という

[4]。

これに関連してアメリカで政府紙幣発行の政策は出ないとされる意見もあるが事実と違う。63 年 6

月 4 日にケネディ大統領令により政府紙幣が復活、71 年以降新規発行はないが現在でも財務長官は 3

億ドルを限度に「合衆国紙幣」(United States Note)を発行することができる(合衆国法典第 31 編第

5115 条)が60年代発行した政府通貨(合衆国内流通限定)と US ドル(基軸通貨だから過半数が海外)

との交換比が1:1から崩れて 71 年に発行停止に至ったままである。我が国で 2001-07 年にアメリカ

の過剰消費を外的条件に景気回復の期を捉えて日銀金融緩和でなく「財政政策」としての政府紙幣発行

による政府債務の解消の提案が登場する背景には「政府から見て日銀がやるべきことを十分してないと

いう認識」があるとした政府研究会報告書もある。このことは、参考資料「政府紙幣発行の財政金融上

の位置づけ―実務的観点からの考察」[5]―にも触れられている(14 ページ)ように榊原英資氏は財務

官としての立場から「政府債務の消去のための一回限りの政府紙幣発行」を提案してもいた。政府紙幣

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【覚書・論考】 東日本大震災並びに福島原発被害賠償の財源をめぐる諸問題(桂木 健次)

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発行は発行益が国庫現金主義会計の国庫では財務効果(所得)となり、かつ日銀にとっても金融効果(M

効果)になるからである。つまり、ケインズ「貨幣改革論」に準じ「インフレによる課税」を政府紙幣

の一回きり発行でやり国債等公債の実質債権の減価を諮る方法がある。つまり「通貨の減価」をもたら

す「平価切下げ」。しかしこれは累進課税的でなく、即、弱小企業と勤労者家計に比例的に優しくない

のでセフティネット政策が伴わないといけないが、政府紙幣発行益は会計的に日銀から国庫への所得移

転であり、現行発生基準会計下の日銀による運用益は言うなれば通貨発行益が転成した「日銀券発行益」

の戻し効果なのだから、10 年以上前までは日銀バランスシートの貸方の勘定科目「発行銀行券」は実

質通貨発行益勘定という見方もあった[6]。

なお、政府が財源を調達するには①税収(増税)②国債発行③政府紙幣に依るシニョレッジ通貨発行

益がある。③については③-1:政府が直接発行、③-2:日銀を通す、③-3:日銀が勘定に受入、

③-4:日銀が政府勘定に預かる、の四つの計理法がある。補助貨幣(硬貨)は政府造幣局が製造・発

行している(額面で日銀に売り渡すが)ので、発行益は日銀に売り渡し時点で政府に発生し歳入とされ

ている。因みに政府紙幣(かつての軍票)もそうで、硬貨や政府紙幣はその額面価額と製造原価の差額

が発行益シニョレッジとなる。

繰り返すが、政府紙幣も日銀券同様に流通通貨(信用貨幣)で、発行権が法貨としての日銀券は日銀

受託、政府紙幣は政府(国庫)にある。従って、発行益所得の帰属が違うので、日銀券では日銀が管理

料・内部留保を差引いて国庫納付、政府紙幣は日銀委託であっても管理費のみ控除し国庫へ所得移転(歳

入)となる。

尚、ついでに触れると、日銀の有利子国債等(借方)と見合うその他人資本の(負債科目)発券勘定

(貸方)は、発券権独占権故に還流と支払い完了性を担保に返済さないで済む「借金でない他人資本」

で、謂わば「自分から借りた形式負債」金庫株のようなものとする会計学的レトリックが成り立ち、永

年発行銀行券勘定は発行益の現在価値とされる見解が残った。

後記

後日、復興債11.55兆円について、本年度(11.5兆)から27年度迄の5年間その年度始め

に時ヾ小出しに発行させ(その期限34年に亘る償還のための国債整理基金特会繰入としその本年度は

58.7億円とした。尚、東電支援の交付国債償還枠に3兆円が繰入とされた。財源は結局復興債が1

1.55兆円と大半で、増税等は償還財源としている。成立予算は[7]を参考のこと。

参考文献

[1] 「<東日本大震災>復旧復興税創設へ…「基本法案」素案」毎日新聞(電子版)2011.3.31 22 時 9

分配信 http://ow.ly/4qO8i http://ow.ly/4qO9b

[2] 「国難に政府紙幣を 郡上市議会が意見書」中日新聞(岐阜版)2011.3.26 http://ow.ly/4nb8l

[3] 平成23年度補正予算(第2号)の概要

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2011/sy230705/hosei230705c.pdf

[4] 小栗誠治「中央銀行券の債務性と政府紙幣の特質に関する研究」滋賀大学経済学部 Working Paper

No.12,2010.3

[5] 財務総合政策研究所 2004.5.11 http://.mof.go.jp/pri/research/discussion_paper/ron086.pdf

[6] 政府貨幣としての発行の場合の利益は貨幣流通残高の増加額とその製造費用(その他経費を含む)

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の差額であり、日本銀行券としての発行の利益は有利子金融資産の金利収入から日本銀行券の製造費用

(その他経費を含む)を差し引いた額の運用益としないで、包括政府発行の益と看做し考察することとす

る。

通貨を M で示すと、法貨に代替されている貨幣発行益は通貨の増加額(ΔM)を物価(P)で除したもの

であり、次のように定義される。

SM=△M/P

ここでは発行利益を実質ベースで考えると、政府貨幣の製造費用は極めて小さく、実際上ネグリジブ

ルであるので捨象、また貨幣回収準備資金も捨象して構わない。

日本銀行券発行益は、次のように定義される。

So=i×M/P

ただし、i は市場金利である。ここでも日本銀行券の製造費用は極めて小さく捨象して構わない。

この場合、「政府貨幣発行の利益」と「日本銀行券発行の利益の現在割引価値」は等しくなる(実質

ベースで検討)。すなわち、今、初期時点 t=0 において、通貨の需要がΔM だけ増加し、日本銀行は、

金利 i の金融資産を購入することによって日本銀行券を供給したとする。この取引に伴い、日本銀行

は毎期 iΔM の利益を永続的に獲得していくことになる。このとき日本銀行券発行の利益の実質現在価

値は、1 年目の利益 iΔM を(1+i)で割り引き、2 年目の利益 iΔM を(1+i)2 で割り引き、以下同様に

将来の利益をそれぞれの割引率で割引いた額の合計額となり、包括政府の貨幣発行益に等しくなる(た

だし、市場金利 i は将来にわたり一定と仮定)。よって、NPV(So)は日銀が政府に代替した法貨として

の日銀券発行益の実質現在価値である。(小栗 2010 参考)

なお、以下も参考文献としている。

・「景気対策を目的とした政府紙幣増発の帰結」UFJ 総合研究所 2003.5

http://www.murc.jp/report/research/2003/0318.pdf

[7]「平成23年度補正予算(第3号、特第3号及び機第2号)等の説明」財務省主計局,2011.10

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2011/sy231028.htm