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TX テクノロジー・ショーケース in つくば 2010 はじめに 老化や長期の寝たきり状態による筋力の低下、脳卒中・ 脳梗塞等の救命率の上昇により歩行のリハビリテーション を必要とする人が年々増えてきている。一方で、歩行練習 をサポートする理学療法士の数は、近年急激に増加して いるものの、十分とは言えない。結果として、ある程度の機 能回復で急性期の歩行練習を終え、機能低下を防ぐ維持 期の練習を続ける人も少なくない。 これに対して、我々はバーチャルリアリティ技術の一つ である歩行感覚呈示装置を用いて、あらかじめ記録した 健常者の足の動きに沿って、患者の足をマニピュレータ で直接動かすことで練習を効率的に行うシステムを開発し た。ところで、これまで本装置による歩行練習は、平地歩 行を対象としてきた。しかしながら、実生活では地面は平 らな場所だけでなく、様々な段差が存在する。本研究では、 階段を上り下りする感覚を提示する手法を開発した。 システム構成 1. ハードウエア 本装置(1)は、スライダクランク機構を介してユーザの 足を前後に移動させることで、一般的な健常者の歩行速 度である1.0 m/sの歩行速度を実現した。機構の先端には 上下動するリニアアクチュエータが取り付けられており、ユ ーザはこのアクチュエータの先端に取り付けられた30cm 四方の床板(フットパッド)に足を載せて、歩行感覚を体験 する。また、フットパッドにはユーザの体重移動を計測す るための圧力センサを取り付けた。 2. ソフトウエア フットパッドの移動軌跡は、事前に計測した健常者の足 (かかと)の動きをモーションキャプチャシステムで記録し、 かかとの相対移動軌跡を算出する。この軌跡に沿ってフッ トパッドを動かすことで、階段を上り下りする感覚を作り出 す。なお、本研究では、単純にフットパッドを周期的に動 かす受動歩行モードと、フットパッドの圧力センサの値か らユーザの適切な体重移動を検出した場合に、次の足が 前に出る、上級者向けの能動歩行モードを用意した。 評価実験 歩行練習中の麻痺患者の足の筋電位を計測したところ、 麻痺側の膝を伸ばす内側広筋が周期的な活動をしている (2)ことがわかり、能動歩行においては床を蹴る動作の 時に働く腓腹筋が活動することがわかった。これより階段 歩行の訓練にも適用可能であることが示唆された。 おわりに 本研究では、ユーザに階段歩行時の軌跡を提示するこ とで、階段歩行練習が可能であることが示された。階段歩 行は、ユーザの運動負荷が高い。例えば、階段の高さを 調節することで、ユーザの運動量をコントロールして、平 地歩行の歩行練習時間(現状は120分)を短縮するなど 新たな練習方法への展開が期待できる。 1. 歩行リハビリテーションシステム 2. 麻痺足の内側広筋の筋電位変化 医療・福祉・介護 階段昇降に対応した歩行リハビリテーションシステム 代表発表者 筑波大学 大学院 システム情報工学研究科 知能機能システム専攻 問合せ先 305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 第三エリア 3M 2 TEL: 029-853-5062, FAX: 029-853-5062 [email protected] ■ キーワード: (1) 歩行リハビリテーション (2) 歩行感覚提示装置 (3) ニューロリハビリテーション P-50 -52-

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TX テクノロジー・ショーケース in つくば 2010

■ はじめに

老化や長期の寝たきり状態による筋力の低下、脳卒中・

脳梗塞等の救命率の上昇により歩行のリハビリテーション

を必要とする人が年々増えてきている。一方で、歩行練習

をサポートする理学療法士の数は、近年急激に増加して

いるものの、十分とは言えない。結果として、ある程度の機

能回復で急性期の歩行練習を終え、機能低下を防ぐ維持

期の練習を続ける人も少なくない。 これに対して、我々はバーチャルリアリティ技術の一つ

である歩行感覚呈示装置を用いて、あらかじめ記録した

健常者の足の動きに沿って、患者の足をマニピュレータ

で直接動かすことで練習を効率的に行うシステムを開発し

た。ところで、これまで本装置による歩行練習は、平地歩

行を対象としてきた。しかしながら、実生活では地面は平

らな場所だけでなく、様々な段差が存在する。本研究では、

階段を上り下りする感覚を提示する手法を開発した。

■ システム構成

1.ハードウエア 本装置(図1)は、スライダクランク機構を介してユーザの

足を前後に移動させることで、一般的な健常者の歩行速

度である1.0 m/sの歩行速度を実現した。機構の先端には

上下動するリニアアクチュエータが取り付けられており、ユ

ーザはこのアクチュエータの先端に取り付けられた30cm四方の床板(フットパッド)に足を載せて、歩行感覚を体験

する。また、フットパッドにはユーザの体重移動を計測す

るための圧力センサを取り付けた。 2.ソフトウエア フットパッドの移動軌跡は、事前に計測した健常者の足

(かかと)の動きをモーションキャプチャシステムで記録し、

かかとの相対移動軌跡を算出する。この軌跡に沿ってフッ

トパッドを動かすことで、階段を上り下りする感覚を作り出

す。なお、本研究では、単純にフットパッドを周期的に動

かす受動歩行モードと、フットパッドの圧力センサの値か

らユーザの適切な体重移動を検出した場合に、次の足が

前に出る、上級者向けの能動歩行モードを用意した。

■ 評価実験

歩行練習中の麻痺患者の足の筋電位を計測したところ、

麻痺側の膝を伸ばす内側広筋が周期的な活動をしている

(図2)ことがわかり、能動歩行においては床を蹴る動作の

時に働く腓腹筋が活動することがわかった。これより階段

歩行の訓練にも適用可能であることが示唆された。

■ おわりに

本研究では、ユーザに階段歩行時の軌跡を提示するこ

とで、階段歩行練習が可能であることが示された。階段歩

行は、ユーザの運動負荷が高い。例えば、階段の高さを

調節することで、ユーザの運動量をコントロールして、平

地歩行の歩行練習時間(現状は1回20分)を短縮するなど

新たな練習方法への展開が期待できる。

図 1.歩行リハビリテーションシステム

図 2.麻痺足の内側広筋の筋電位変化

医療・福祉・介護

階段昇降に対応した歩行リハビリテーションシステム

代表発表者 �� ����� ����� 所 属 筑波大学 大学院 システム情報工学研究科

知能機能システム専攻

問合せ先 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 第三エリア 3M 棟 2 階

TEL: 029-853-5062, FAX: 029-853-5062 [email protected]

■ キーワード: (1) 歩行リハビリテーション

(2) 歩行感覚提示装置 (3) ニューロリハビリテーション

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