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第4章 PET カメラ PET カメラは、検出器系、信号処理系、画像表示システム、ガントリー、ベッドから構成されている。 4-1. PET 装置 a) シンチレータ PET 装置で利用されているシンチレータの特徴を次に示す。 現在稼働している PET 装置の大半が BGO を装備した PET 装置である。 安価な NaI(Tl)クリスタルや高性能な LSOGSO などのクリスタルを装備した PET 装置が製造販売さ れているが、実用面、コスト面から今のところ BGO クリスタルが主流である。 1 PET 装置で利用されるシンチレータの特徴 b) ポジトロン核種のイメージング装置 現在に至るまでに PET 装置の検出器配置も図に示すように発展してきており、それに伴い検出器コス トは上がるが、相対効率が飛躍的に上昇してきている。 2 PET 検出器の配置と相対効率

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第4章 PET カメラ PET カメラは、検出器系、信号処理系、画像表示システム、ガントリー、ベッドから構成されている。

4-1. PET 装置

a) シンチレータ

・ PET 装置で利用されているシンチレータの特徴を次に示す。

・ 現在稼働している PET 装置の大半が BGO を装備した PET 装置である。

・ 安価な NaI(Tl)クリスタルや高性能な LSO、GSO などのクリスタルを装備した PET 装置が製造販売さ

れているが、実用面、コスト面から今のところ BGO クリスタルが主流である。

図 1 PET 装置で利用されるシンチレータの特徴

b) ポジトロン核種のイメージング装置

・ 現在に至るまでに PET 装置の検出器配置も図に示すように発展してきており、それに伴い検出器コス

トは上がるが、相対効率が飛躍的に上昇してきている。

図 2 PET 検出器の配置と相対効率

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c) PET 装置の構造 (施設:大阪大学医学部附属病院)

(例:島津社製 Headtome Ⅴ;SET2400W)

① 装置概観

図 3 島津社製 Headtome Ⅴ;SET2400W

・ 体軸方向に 20cm の有効視野を有し、頚部リンパ節から骨盤部までを大人(身長約 170cm)で 4 ステ

ップでカバーできる。

・ 収集方法は 2D モード、3D モードを選択できるが、当施設では Emission/Transmission 同時収集を採

用しているため、2D モードで 1STEP あたり約 7 分の収集を行っている。

② ガントリー内部の構造

・ 平面方向のガントリー内部を図に示す。ガントリー内に計 28 個の検出器ボックスがあり、各検出器

ボックスには平面方向に 24 本のクリスタルが存在する。

図 4 平面方向の構造

③ BGO 検出器の配列

・ BGO の検出器は、クリスタル部、PMT(光電子増倍管)部、ブリーダー部で構成されている。

・ 検出器の交換はユニット単位で行われ、BGO クリスタル 48 個、PMT4 個、ブリーダー2 個が 1 つの

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ユニットを構成している。

図 5 BGO 検出器と配列

・ 1 ユニットの体軸方向に BGO クリスタルが 8 個並び、全視野で 8×4=32 個クリスタルが並ぶことに

なる。すなわち、32 リングの検出器を装備した PET 装置と言う事になる。

④ 収集の仕組み

・ ポジトロン核種を対象にした収集ですから、180±0.25°に消滅する放射線を同時計測している。

・ 光子の速度が 30cm/ns なので仮に平面方向の視野が 60cm とすると、光子到達時間は 2ns となる。

・ BGO クリスタルでは同時計測を行う例を示すと一般的にタイムウインドウは約 15ns である。ただ同

時偶発計数と真の同時計数を割り出すために遅延回路を用いた演算処理がなされている。収集として

は、約 15ns で収集した後、約 45ns 後にもう一度約 15ns で収集していることになる。

図 6 PET カメラによるポジトロン核種の収集

⑤ 収集データの画像化の仕組み

・ 1 リング(平面方向)で処理されるデータは、図に示すように検出器間で同時計測されたデータを投

影方向にならび替えられ再構成される。

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図 7 1 つの検出器と同時計測されている検出器の例

図 8 投影方向に並び替えられたデータ

1) 2D モード収集

・ 体軸方向に並べられたリング間にセプターといわれるリング状の遮蔽体を装着させた状態で行う収

集方法である。

・ 分解能が良く、散乱線含有率を低く保つことができる収集方法である。

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図 9 2D 体軸方向の構造

図 10 セプターの構造

2) 3D モード収集

・ セプターを退避させることで簡便に切り替えることができる。

・ 収集感度が約 8 倍から 10 倍と良くなる反面、分解能の劣化、散乱線含有率が増加する問題が生じる。

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図 11 3D 体軸方向の構造

図 12 セプターを退避した状態

d) スライス面が構築される仕組み

・ 体軸方向に構築されるスライスは、同一リング上の同時計測線:LOR(Line of Response)で構築され

るスライスと隣り合うリング間の同時計測線から構築されるスライスとがある。前者をダイレクトス

ライス、後者をクロススライスと言う。双方のスライスとリング数との関係は、リング数=N とする

ダイレクトスライス=N

クロススライス=N-1

全スライス=2N-1 の関係が成り立つ

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図 13 ダイレクトスライスとクロススライスの関係

・ 感度を比較するとクロススライスの方が LOR の多い分高くなる。

図 14 ダイレクトスライスとクロススライスの感度

・ LOR1~2 本の感度では低すぎるために実用的にするため全体的に感度を持ち上げる手法がとられる。

その手法が「束ね」である。

ポイント

・ 今、3 スライス目(2 つ目のダイレクトスライス)について考えるとすると、そのままでは LOR1本

の感度である。

・ リングをまたぐ両サイドのリングとの LOR を加えて、本来のダイレクトスライス上にデータを補間

すると感度は LOR3 本分に相当し、結果的に感度が上昇する。

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図 15 ダイレクトスライスの束ね例

・ 同様に 4 スライス目(2 つ目のクロススライス)の場合は、LOR が 2 本から 4 本へと感度が上昇する。

図 16 クロススライスの束ね例

・ このように束ねる LOR の本数を増やすことで、感度を全体的に上昇させることが可能である。

・ ただし、リング周辺部では歪が大きくなるために分解能は劣化する。

・ プールファントムの再構成画像でダイレクトスライス、クロススライス、束ねの関係を図に示す。

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図 17 プールファントムによる画像比較

・ ダイレクト・クロススライス間や束ねによる感度差は、クロスキャリブレーションを施行することで

無くなる。ただ、束ねが少ない両端のリングは S/N が劣化している。これを図に示す。

図 18 クロスキャリブレーションによる感度補正

e) クロスキャリブレーション

・ クロスキャリブレーションとは、PET 装置とウエルカウンターの校正であり、定量性を保証する目的

で行われる。

・ PET装置は多数の検出器が密接した状態で装着されており、温度や経時的変化等で出力ゲインが変

化しやすい。そのため、定期的に校正する必要がある。

・ 校正は 18F または 68Ga を入れた円筒形ファントムを測定し、ファントム内の一部をサンプリングし測

定時の放射濃度を求める方法がとられる。

・ ウエル値/PET 値のことをクロスファクターと呼ばれ、各スライス毎に求められる。

・ PET 値にクロスファクターを乗ずることで放射能濃度単位に変換される。

・ 放射能濃度単位は、cps/g である。ただし、溶液の比重を 1.0 と見なして cps/ml とすることもある。

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図 19 クロスキャリブレーション

f) 分解能

① 平面方向の分解能

・ 分解能を左右する因子は入射する消滅放射線が幾つのクリスタルで発光するかで決定される。

・ 視野中心では発光クリスタル数が も少なくなり、従って分解能は も良くなる。

・ 視野中心から離れるに従い発光クリスタル数は多くなり分解能は劣化する。

図 20 平面方向の分解能

② 体軸方向の分解能

・ 体軸方向は原則的に独立したリングをつなげたものである。従って各リングの分解能のバラツキが反

映されるだけで、ほぼ同等の分解能を示す。

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図 21 体軸方向の分解能

・ 図の縦軸がスライスを示している。

g) 性能試験 5)6)7)8)9)

① 空間分解能

・ 平面方向、体軸方向の分解能を測定する。

・ 2mm 以下の大きさの 18F 点線源を使用する。

・ 測定は半値幅(mm)で評価される。

② 散乱フラクション

・ 全同時計数に対する散乱同時計数の割合を意味する。

・ 水(B.G.)を満たしたプールファントム内に線状の線源を入れて測定する。

・ 線源の配置は、中心と中心から 4cm、8cm の計 3 ヶ所で測定する。

・ 散乱フラクションはサイノグラムから計算される。

図 22 Scattering coincidence

③ 感度

・ 感度は単位放射能(kBq/ml)あたりに検出される同時計数率(cps)と定義される。

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④ 計数損失・偶発同時計数

・ プールファントムを使用する。

・ 測定は全ての補正を行わず、十分飽和した放射能から計数損失や偶発同時計数を無視できるまで径時

的に測定する。

・ そのため使用核種は、通常 11C(半減期 20min)、13N(半減期 10min)が使われる。

図 23 Count rate of PET

⑤ 吸収・散乱補正

・ プールファントム内にコールドエリア(空気、水、テフロン)を持つファントムが使用される。

・ 再構成された各 ROI 値の比から相対誤差を求める。

・ 補正が適正であれば相対誤差は 0 である。

⑥ 計数率補正

・ プールファントムを使用し、適正な補正かどうかを確認する。

・ 測定は十分飽和した放射能から計数損失や偶発同時計数を無視できるまで径時的に測定する。

・ 減衰補正された再構成画像に ROI をとり基準放射能濃度との誤差を求める。

図 24 %Dead time of PET

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⑦ リカバリー係数

・ 部分容積用ファントム使用する。

・ ホットエリアの形状は円柱状、球状の 2 タイプがあるが、3D モードでの測定には必ず球状のタイプ

を使用する。

h) メンテナンス

・ PET 装置の故障の大半が検出器の出力低下である。

・ 出力低下の原因は、十中八九 PMT による出力低下である。

・ 例え 1 本の PMT が破損しても、交換 小単位であるユニットを交換しなければならない。

・ メーカーによってはさらに広範囲のブロック単位におよぶものもある。

・ 図に検出器の出力低下による画像への影響を示す。

図 25 PET 検出器のトラブルと画像への影響

i) PET で行う測定

・ BGO クリスタルは工場出荷の際に、出力ゲインのバラツキが±2%以下になるように調整されている。

図 26 BGO クリスタル発光面のバラツキ

・ クリスタルの発光強度は温度と密接な関係にあり、また、温度は密接した状態で装備されている PMT

の出力のバラツキの原因を引き起こす。

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・ PET 装置には、空冷式や水冷式で放熱し温度管理を行っているが不十分である。

・ そのため定期的に検出器の出力をキャリブレーションする必要がある。

① Normalize scan

・ 定期的に検出器の出力をキャリブレーションするためにする方法である。

・ 68Ge-68Ga ラインソースを用いて 6~8 時間かけてデータが収集される。収集する時間はラインソース

の放射能強度によって異なる。

図 27 Normalize scan

・ Normalize scan から Normalize table file と Blank table file が作成される。 Normalize table file とは、図で示すようにラインソースの滞在時間が補正された table file である。

・ Emission Data の補正に使用される。

メモ

・ 滞在時間補正とは、ラインソースの通過時間が領域により異なるため、それぞれの領域での滞在時間

を補正することである。

Blank table file とは、滞在時間が補正されていない table file である。Transmission Data の補正に使用さ

れる。

・ Transmission Data は、Normalize Data を収集する時と同様にラインソースを回転させるため、滞在時間

の補正は不要である。

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図 28 ラインソースの滞在時間補正

② Transmission scan

・ 被検者に対する放射線の吸収補正を目的とする。

・ 一定角速度で回転するラインソースによりデータが収集される。

図 29 Transmission に使用されるラインソース

・ ラインソースは、使用時に格納スペースから自動的にセプター内に挿入され、図に示すようにセプタ

ー末端の回転機構部に固定される。

・ ラインソースが存在する範囲をマスク収集することでデータを収集する。

・ 得られたデータは、Blank table file により検出器間感度補正されたサイノグラムが作られ、吸収補正

table file が作られる。

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図 30 Transmission scan

③ Emission scan

・ 被検者からの放射線を収集することを目的とする。

・ 視野内のすべてのカウントを収集する。

・ 得られたデータは、Normalize table file により検出器間感度補正されたサイノグラムが作られる。

図 31 Emission scan

4-2. PET 検査に使用される装置

① プラスチックシンチレータ検出器

・ β+線のディテクターである。

・ 直径20mm、厚さ3mmの円盤形状のプラスチックシンチレータと2インチ丸型光電子増倍管からなる。

・ 被験者の動脈血を持続的に吸引する方法で測定される。

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図 32 プラスチックシンチレータ検出器

★ ポイント

検出感度を上げるためにシンチレータ部の通過面積が大きくなるように細管チューブをディテクターに

セットする。また幾何学的配置により検出感度の再現性が異なるため、セッティング毎にウエルカウンタ

ーとの校正計数を求める必要がある。

② 血中RI濃度測定器

・ RI濃度測定器ウエル型シンチレーションカウンター、電子天秤、フットスイッチ(採血時間入力シ

ステム)、パソコン、プリンターで構成されている。

・ 単位重量(g)あたりの動脈血中RI濃度を測定する装置。

・ 血中RI濃度以外に、クロスキャリブレーション測定に使用する。

図 33 血中RI濃度測定装置

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4-3. Hybrid-PET

a) 特徴

・ ガンマカメラ(SPECT 装置)でありながらポジトロン核種を同時計測の方法で収集ができる装置。

・ 装置はあくまで 2 検出器型の SPECT 装置である。

・ リング検出器の PET 装置とは検査スループット、精度は専用機とは根本的に異なる。

図 34 Hybrid-PET の概観

b) 構造

・ Hybrid-PET には、2 Dimensional type、

3 Dimensional type がある。

図 35 Hybrid-PET の構造

・ 各タイプの特徴を図に示す。

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図 36 2 D type、3 D type の特徴

c) Hybrid-PET の分解能と腫瘍検出能

・ 分解能は PET 装置と比較して、ほぼ同等である。しかし、腫瘍を想定した対 B.G.比が 5:1 のファン

トムでは専用機の PET に比べて検出能は低下する。

図 37 分解能と擬似腫瘍ファントムの検出能

・ 擬似腫瘍の検出率の低下は、収集時間の延長により改善する。そのため、検査プロトコールを検討す

ることが必要となると考えられる。

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図 38 収集時間と腫瘍検出能の関係

・ 腫瘍の大きさが同じで取り込み率が異なる場合を想定し、腫瘍コントラストを変化させた場合の検出

率も収集時間を延長することで飛躍的に改善する。

図 39 収集時間によるコントラストの相違

d) 装置の進歩

・ 近年装置の進歩が著しく、検出能が大幅に向上した。その推移を図に示す。

図 40 検出能の推移

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・ 技術の進歩の一つに 3D FORE 法の適用がある。

・ 従来の SSRB 法では回転中心から離れると画像の歪が著しく検出能を劣化させていたが、3D FORE 法

を適用することで歪が改善された。

図 41 3D FORE 法による画像改善

1) 熊谷寛夫(編):実験的物理学講座、vol.28、p.339、共立出版、東京(1980)

2) 藤居一男:放射線医学体系 特別巻6 ポジトロンCT(別冊)、p.53、中山書店(1989)

3) Thomas,L.H.:The paths of ions in the cyclotron. Physical Rev.54:580(1938)

4) Wieland,B.W.:A negative ion cyclotron using 11 MeV protons for the production of radionuclides for clinical

positron tomography. Proceedings of the first workshop on targetry and target chemistry、 p.119、DKFZ、

Heidelberg(1985)

5) NEMA standard publication NU 2-1994 : Performance measurements of positron emission tomographs,1994

6) 日本アイソトープ協会医学薬学部会: PET 装置の性能評価のための測定指針. RADIO

ISOTOPES,43,9,XXXV-LV,1994

7) 織田圭一:PET 装置の性能試験.臨床放射線技術実験ハンドブック(下),日本放射線技術学会編,通

商産業研究社,38-53,1996

8) IEC 61675-1 : Radionuclide imaging devices – Characteristics and test conditions – part 1 : Positron emission

tomographs,1998

9) JESRA TI-0001-1994 : PET 装置の保守点検基準,1994

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参考 PET の物理的特性に関係する用語の解説

1.真の同時計数(true event)

PET は、陽電子消滅に伴い 180 度反対方向に放射される 511keV のγ線対を測定している

(図1)。陽電子消滅は、陽電子がそのエネルギーを失った点(positron range)で生じ、陽

電子と電子の質量がエネルギーに変換されるので、陽電子消滅で生じる一対のγ線の総エ

ネルギーは 1022keV である。個々のγ線は、シンチレータで個々に計測されるので、これ

を single event と呼ぶ。Single event が対向する検出器にほぼ同時に計測された時のみ、true event として計数される。図1の斜線部は、line of response(LOR)と呼ばれる。対向する検

出器が true event を検知した時に、そのγ線を放出した線源が存在する範囲を示している。

PET の特徴の一つは、鉛などの吸収体によるコリメータなしに、同時計数回路という電気

的なコリメータにより、線源の位置を推定することができることである。吸収体によるコ

リメータを装着しない場合、PET カメラは Anger 型カメラよりも 2-3 倍感度が高い。True count のためには両方の検出器で感知されなければならない。従って、single event の方が true event よりもはるかに多い。

β+

e-

検出器1

検出器2

 同時計数回路

( 時間窓~10nsec)

511keV 消滅光子

(計測されない )

511keV 消滅光子

(計測されない )(計測される )

(計測される )

検出器1と2が同時に光子を検出した時、

1個の信号として計測。実際には、 ~10nsecの時間窓を設定する。検出器間を 60cmとす

ると、この間を光子が飛行する時間は 2nsec(光速度 c=300000000m/sec)

Linee of response (LOR)

“511keV のγ線を対向する検出器で同時に計測する”という true event の計測原理は、必

ずしも絶対的なものではない。検出器のエネルギー分解能は高くなく(~30%)、約

250~650keV の範囲のエネルギーを持った光子が検知される。この中にはコンプトン散乱や

消滅光子以外のものが含まれ、ノイズの原因となる。個々の single event には、±0.1nsec の

誤差で、計測した時刻の目印がつけられる。対向する検出器が、一定の時間範囲内に信号

を検知した場合、true event と認識される。この一定の時間幅を、同時計数回路の時間窓τ

(coincidence timing window)という。通常は、6~12nsec である。対向する検出器には消滅

γ線の各々は光速度(3x108m/sec)で飛行するものの、線源の位置によって、わずかに異な

った時間に到達する(ガントリー径が 60cm の場合、この間を飛ぶ時間は 2nsec)。同時計数

回路の信号処理にはある程度の時間を要する。シンチレータによる発光は瞬時に起こり消

滅するのではなく、一定時間持続する(光減衰時間がある)。True event の計測には、この

ような計測システム上の“なまり”がある。

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True coincidence Random coincidence Scatter coincidence

(“True”) (“Random”) (“Scatter”)

NECR = T2/(T+S+R)

2.偶発同時計数(random coincidence)、散乱同時計数(scattered coincidence) 検出器は、True event だけではなく、他の様々な信号を検知する(図1)。これらは、PETの定量性や画質を損なう原因となるので、true event と区別し、取り除かなければならない。

“random event”(偶発同時計数)は、異なる陽電子消滅によるγ線が、時間窓の範囲で一本

ずつ対向する検出器に検知された場合に生じる(図2、B)。したがって、random event は、

本来はその位置にない放射能を計測することになるので、ノイズの原因となる。臨床的に

は、脳の撮像では random/true ventは 0.1~0.2程度であるが、体幹部では 1よりも大きくなる。

偶発同時計数 Crandomは、single event の計数と時間窓の長さに比例する。 Crandom = 2τC1C2 C1、C2 は対向する検出器の計数を表す。ここで重要なのは、true event は放射能濃度にのみ

比例するので random/true の比も放射能濃度に比例して増加することである。従って、撮像

時間を短縮しようとより多くの放射能を投与すると random の計数が true よりも急速に増加

し、画質を損なってしまう。2D PET のように鉛のセプタを装着することにより、random/true event は改善する。また、同時計数回路の時間窓τを小さくすると改善することができる。 検出器の視野外で生じた消滅光子がコンプトン散乱により方向を変え、視野の中に入っ

てくる場合がある。これを scatter(散乱同時計数)と呼ぶ。散乱線は通常 511keV よりもエ

ネルギーが低下するが、それでも充分にシンチレータのエネルギー幅のなかにあるので、

true event として数えられてしまう。Scatter も、本来はその位置にない放射能を計測するこ

とになるので、ノイズの原因となる。Scatter は true と同様に放射能濃度に比例するので、

scatter/true の比は、放射能濃度には依存しない。True と scatter はともに一個の陽電子消滅か

ら生じるので同時計数回路の時間幅には依存しない。一方、2D PET の検出器間のセプタは

大幅に scatter を減少させる。 多くの陽電子放出核種は、エネルギーの高いガンマ線を同時に放射する(62Cu, 66Ga, 68Ga, 75Br, 82Ru, 86Yt, 124I など)。これらもノイズの原因となる。よく用いられる核種には、これは

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ない。表に、主な陽電子放出核種の性質をまとめた。

半減期 β+壊変率 β+の 大エネルギー

(MeV) 水中での飛程

(mm)

Carbon-11 20.4 分 99% 0.96 3.9 mm

Nitrogen-13 9.96 分 100% 1.2 5.1 mm

Oxygen-15 2.05 分 100% 1.7 8.0 mm

Fluorine-18 1.83 時間 97% 0.64 2.3 mm

3.シンチレータ 現在、4種類のシンチレータ(NaI、BGO、GSO、LSO)が用いられている。シンチレー

タの性質として重要なのは、密度、実効原子番号、発光性、発光速度である。高密度、実

効原子番号の大きいシンチレータは、γ線の阻止能(μ)が高く、放射線を効率良く検出

する。また、コンプトン散乱よりも光電効果の割合が大きく、エネルギー弁別による散乱

線の除去が可能になる。発光量が大きいと統計学的雑音が小さくなり、エネルギー分解能

が高く、エネルギー弁別による散乱同時計数を除去しやすくなる。光減衰時間が短いシン

チレータでは同時計数回路の時間窓τを短くすることができ、偶発同時計数を減らすこと

ができる。結晶の光透過性、光電子増倍管への光屈折率、光の波長、潮解性などもシンチ

レータの特性として重要である。 NaI(Tl)結晶は初期の PET装置に用いられていたが、現在は、より阻止能の高い BGO、GSO、

LSO が選ばれるようになった。511keV のγ線に対して、NaI の線阻止能は、BGO、GSO、

LSO の約2倍である。GSO と LSO は、BGO よりも光減衰時間が短い。LSO は発光量が大

きい。GSO はエネルギー分解能がよいので、散乱線の除去能力が高い。 LSO の欠点は、Luteinium-117 を含有し、これが自然発光することである。同位体として

の含有量は 2.6%、半減期は~4x1010年である。201keV と 306keV のγ線を放射する。これら

の合計エネンルギーが 507keV であり、検出器のエネルギー幅に入る。計数率は 240cps/cm3である。カメラ全体では、single event で 100,000 cps、true event で 10,000 cps 程度である。

実際の臨床画像に与える影響は無視できる程度と考えられる。 4.検出器配列 近の PET カメラの検出器配列はリング型で、被験者の全周をカバーするようデザイン

されている。そのようなシステムでは、対向する複数の検出器間で同時計数を検出するた

めに fan-beam が用いられる。N 個の検出器があると、N/4 もしくは N/2 個の fan-beam が必

要となる。リング型では、一個の検出器に対して残りの約半数の検出器が同時計数をする。

全周のうち、部分的に検出器を配列すると、コストを下げることはできるが検出器の回転

が必要になる。Anger カメラ型では、被験者の全周を回転する必要がある。腫瘍等の病巣検

出率は、リング型多検出器システムの方が、回転型システムよりも良好である。

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Kadrmas DJ, Christian PE. Comparative evaluation of lesion detectability for 6 PET imaging platforms using a highly reproducible whole-body phantom with (22)Na lesions and localization ROC analysis. J Nucl Med 43;1545-1554, 2002 5.2D-PET 3D-PET 初期の PET では、鉛、タングステンのセプタが用いられた。Advance GE では、厚さ 1mm、

12cm 長のタングステンのセプタが用いられている。このセプタは視野外のγ線をほぼ除去

する。大きな被写体の場合有効で、全身スキャンに有効である。2D-PET では、true が減少

するので感度が低下する。対向する検出器だけではなくその前後の円周の検出器とも同時

計数する。Direct 断面とクロス断面が生じる。N リングの装置では、2N-1 の断面が得られ

る。クロス断面はリング間の仮想断面である。Direct 断面が一断面の情報であるのに対し

て、クロス断面は2断面の情報であるので、感度は2倍になる。さらに多断層の間のクロ

ス断層像が得られている。 セプタを取り外すことによって、感度はさらに改善される。10000 検出器間に約 1000000の断面(LOR)が得られる。これが 3DPET である。約5倍に感度があがる。Scatter と randomも増加する。臨床では、scatter/true 比は 0.2(2D)~0.5(3D)(脳)、0.4(2D)~2(3D)(体

幹部)である。Scatter の除去のためにはエネルギー分解能のよい検出器(LSO, GSO)が必

要となる。Random の増加と数え落としを防ぐためには、短い時間窓τ、光減衰時間野短い

検出器が必要である。データ処理時間は 2D の約2倍である。2DPET では、軸方向の感度は

ほぼ均一であるが、3D-PET は中心部で高く辺縁で低下する特徴がある。従って、FOV の約

半分の重複が必要となる。FOV 以外からの放射線を除去するために、検出器の外側には遮

蔽が必要である。

2D-direct plane

2D-direct plane+cross plane

2D-direct plane+cross plane

3D-direct plane

Sensitivity

0.2% (75~cps/μCi)

0.5% (185~cps/μCi)

2~10% (740~1850cps/μCi) 6.分解能 分解能は、陽電子消滅の物理的要因と装置に由来する要因がある。ある陽電子放出核種

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について考えると、この核種からは様々な初期エネルギーをもった陽電子が放出される(

小でゼロ、 大で Emax)。平均のエネルギーは約 1/3Emax である。初期エネルギーの大き

さによって、特定の距離だけ飛行しエネルギーを失い消滅する。PET で用いられる核種で

は 0.58~3.7MeV で 大飛行距離 Re は 2~20mm である。この飛程は、解像力を低下させる。18F(Emax=640KeV)では、約 0.1mm の損失、15O(1720KeV)では約 0.5mm の損失がある。 第2の物理的要因は、消滅光子が 180 度反対方向に放射されるわけではないことである。

大 0.25 度の偏位がある。リング径が大きいとこの効果は大きく、全身カメラで約 2mm の

損失となる。 装置に関する要因は検出器の幅 w と厚さ d である。装置自体の分解能は中心部で w/2 で

検出器に近づくほど w に近くなる。厚さ d が増すと、実効的な w が増し、分解能は低下す

る。通常の装置では d は 2~3cm、w は 4mm 程度であるが、この場合 80cm のリング径の装

置では中心部から 10cm の点で 50%の損失となる。 7.感度 感度には、検出器の形状と検出器の計数効率の両方が関係する。検出器の厚さを d、リン

グ径を D とすると中心部での感度は d/D に比例する。single event に関する感度を e とする

と、true event の感度は e2となる。BGO と LSO の e2は GSO の+50%である。 検出器が円形に配列されている場合、等方的に放出される放射線を検出する効率 S は、 S = 2πrwaf2/4πr2

r: 検出器配列円の半径 w: 検出器の厚さ a: 放射能濃度

f: 検出器の検出効率 放射性元素からは、全方向に同じ確率で放射されるが検出器はそのうちの一部しか検出していな

い。2D-PET 装置の感度は、0.2~0.5%(74-185cps/μCi)、3D-PET の場合は 2-10%(740-1850cps/μCi)程度である。 8.雑音等価計数率(NECR, noise-equivalent count rate) 実際の PET 装置では、NECR が重要である。 NECR=T2/T+S+R T: true event S: scattered event R: random event NECR の 大値が装置の 適計数率となる。2D-PET では、セプタが散乱や偶発を除去す

るので、NECR はほぼ true の計数率と等しい。2D-PET の NECR は放射能濃度とともに増加

するので、 適計数率というのはない。一方、3D-PET では、散乱同時計数と真の同時計数

は放射能濃度と平行するが、偶発同時計数は放射能の平方根と比例するので 適計数率が

存在する。光減衰時間の短いシンチレータでは同時計数回路の時間幅を短くすることが可

能で、時間幅が短いほど、偶発同時計数は少なくなる。従って、NECR の 大値、すなわち

適計数率は大きくなる。LSO は、BGO よりも数倍 NECR の 大値が大きい。

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9.計数損失補正、数え落とし補正(dead time correction) 検出器系には不感時間(dead time)があるので、この時間内に到達した信号は計測するこ

とができない。高計数率測定(H215O の dynamic 測定など)で問題になるが、通常の投与量

の FDG-PET では計数損失は少ない。これは、システムの計数率特性をもとに補正される。 10. 偶発同時計数補正 偶発同時計数 Caは、

Ca=2τS1S2

τ: 同時計数時間窓 S1: 検出器 1 の計数率

S2: 検出器 2 の計数率 偶発同時計数と散乱同時計数はいずれもスライスシールドの形状と関係が深い(図2)。 偶発同時計数 Caとスライスシールドの関係は、 Ca=KaA2S4/T2

Ka: 比例定数 A: 放射能濃度

S: スライスシールドの間隔 T: スライスシールドの長さ 偶発同時計数は時間に依存しない。したがって、遅延回路を設け同時計数の時間幅を

50nsec 以降のところに設定し、この時に計測された true を差し引くことによりおこなう。 11. 正規化(normalization) 10000 から 20000 個の検出器の個々の感度は同一ではない。これを補正するために、棒状

もしくは円柱上のファントムを撮像し、検出器対間の計数の差を補正する。 12. 散乱線補正 散乱線はエネルギーが低くなるので、エネルギーウィンドウを設定することによりある

程度除去することができる。エネルギーウィンドウは、通常は 250-600keV に設定されてい

る。この幅を 511keV 近傍に設定すると、散乱線を除去することは可能であるが、シンチレ

ータ内部でのエネルギー損失をも数え落としてしまい、感度を低下させてしまう。3D PETは散乱線成分が総計数率の~40%にも達する。3D-PET では、様々な散乱線補正法が試みられ

ている。 偶発同時計数を除去した画像では、画像周辺に表れる計数は散乱による。画像周辺のノ

イズから数学的に画像全体における散乱線の影響を計算し、差し引く。この方法は 2D-PETや 3D-PET の脳の撮像では有効であるが、3D-PET 一般には有効ではない。3D-PET の散乱

線補正には、エネルギー幅を2ケ所に設定する方法、散乱線分布を測定する方法(Monte Carlo simulation)などがあり、 近の PET 装置では Monre Carlo 法が行われている。 13. 吸収補正 吸収補正は、PET では も大きい補正である。PET の特徴は正確な吸収補正が可能なこ

とである。図に、PET における吸収補正の原理を示した。

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L

x L-x

μ

μ

Ci=C0e μ x Cj=C0e μ (L-x)

coincidencecount rate

=C0e μx e μ(L- x) =C0e μ L

Detector i Detector j

Ci=C0e μ (0)=C0 Cj=C0e μ L

coincidencecount rate

=C0e μ (0) e μ L=C0e μ L

近の進歩は、single-photon の線源(137Ce)を用いて吸収補正をおこなうようになったこ

とである。同じ放射能濃度に対して、137Ce の計数率は 68Ge よりも高い。68Ge では同時計数

を計測しているのに対して、137Ce では single event を計測している。137Ce の半減期は 30 年

で Ge の 287 日より長く、交換の必要がない。137Ce から放射されるγ線エネルギーは 662keVで、 511keV よりも高いので GSO のようなエネルギー解像力の高い検出器では正確に弁別

できる。662keV と 511keV に対する吸収の差を補正する必要がある。 近の PET 装置では、Segmented attenuation correction という方法が行われ、検査時間の短

縮に役立っている。この方法は、短時間の撮像により、体組織を軟部組織、肺、骨にセグ

メント化し、その各々に計算上の値(軟部組織は線減弱計数 0.095、骨は 0.13、肺は 0.035)を当てはめる。1~2 分の短時間の撮影で終えることができる。 PET-CT では、線源の換わりに CT を用いる。CT 画像は基本的には x 線(~80keV)の吸

収の分布画像である。511keV のエネルギーに対する補正が必要になる。~80keV と 511keVに対する質量減弱計数は、0.182/0.096(軟部組織)、0.209/0.093(骨)、0.167/0.087 であり、

単純に画像全体を単一の数字で補正できない。CT データをもとに上記の segmentation(骨、

肺、軟部組織)を行い、組織ごとに減弱計数を補正し、吸収補正を行う。金属や造影剤が

あると過剰に吸収補正され、あたかも高濃度の放射能(悪性腫瘍)があるように見えてし

まう。 14. FBP, OSEM, RAMLA (画像再構成法) PET 画像の再構成には、emission data file, normalization file(検出器間の感度補正)、CT ま

たは transmission data file(吸収補正)、blank file(CT または transmission の基礎データ)が

必要である。 2D-PET では、フィルタ逆投影法(filtered back projection; FBP)が用いられる。これは、

投影データを実空間から周波数空間にフーリエ変換し、このデータに対してフィルター処

理してノイズを軽減し、その後実空間に逆投影する方法である。

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逐次近似画像再構成の代表的なものが 尤推定期待値 大化法(Maximum Likelifood Expectation Maximization:ML-EM)である。ポアソン雑音を含む東映データに対して確率的

に も確からしい線源分布を推定する。この方法をさらに改善したものが Ordered Subset Expectation Maximization:OSEM である。計算時間が大幅に短縮された。FBP で表れる放射状

のアーチファクトが軽減されている。row-action maximization-likelihood(RAMLA)法は、

OSEM に関連した方法であり、極めて良好な画像再構成を実現した。ただし、計算時間が

長い。 15.相互補正計数(cross calibration factor) 数え落とし補正、偶発同時計数補正、感度補正、散乱線補正、吸収補正を行った計数は、

局所の放射能濃度に比例する。局所放射能濃度 Aijk(μCi/ml)は、 Aijk = Cijk/CF ここで、Cijk は PET のカウント(cps/voxel)、CF(cross calibration factor)は、相互補正計

数([cps/voxel]/[ μCi/ml])。CF を求めるには、まず、放射性核種を含む溶液をファントム

に封入し、これを PET 装置で撮像し、Cijk を求める。次いで、ファントム内の溶液をキュ

ーリーメータで測定し Aijk を求める。注意すべき点は、装置の空間分解能に対して充分大

きい径(空間分解能の2倍以上)のファントムを用いることである。 16. SUV 腫瘍や体組織への標識薬剤の集積程度を評価する指標として、Standard Uptake Value(SUV) を用いることが多いが SUV は以下のように求める。 SUV = 組織1ml の放射能濃度/体重 1g あたりの放射能濃度 ここで、組織1ml の放射能濃度 Aijk(μCi/ml)であり、PET 画像に設定した関心領域のカ

ウント(cps/voxel)を相互補正計数で除したものである。なお、PET のカウントは投与時に

減衰補正をするか、撮像の中心時間を記載する。体重 1g あたりの放射能濃度は、投与量を

体重で除したもので、投与した放射性薬剤が全身に均一に分布したと仮定した場合の局所

放射能濃度(μCi 投与量/g 体重)。例えば、SUV=2 とは、ある放射性薬剤が全身に均一に

分布した時の放射能濃度と比較して、対象の組織に2倍の濃度の集積があることを示して

いる。

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第5章 施設の設計

PET 施設の構成は、サイクロトロンを設置し院内で 18FDG 合成を行うのか、または、将

来市販されるであろう 18FDG を購入し検査を行うのかによって全く異なる。また、サイク

ロトロン、標識合成装置の選択は、15O ガスによる検査を行うのか、11C 標識薬剤を考慮す

るのか、が関係する。15O ガス検査の有無は、RI 管理や PET 装置の選択にも影響する。 PET 施設の概要 1)サイクロトロン室 サイクロトロン室には、γ線と中性子が発生するので、床、天井、壁はコンクリート(1.5-2m厚)で遮蔽する。本体の荷重に耐える場所でなければならない。また、耐火構造にする必

要がある。 インターロック、放射線モニター(高線量用γ線エリアモニタ、γ線ガスモニタ)、監視

カメラなどの安全監理システムが必要となる。中性子線の漏洩にも十分配慮しなければな

らない。空気の放射化が考えられるので、RI 濃度が低いことを確認して、換気する。 2)ホットラボ室 サイクロトロンで製造された RI を放射性医薬品として標識する施設である。通常十分な

遮蔽能力を有するホットセル内に自動合成装置を設置し、合成者の被曝を避ける。γ線、

中性子エリアモニタ、電子線量計などによるモニターが必要である。空気を常に負圧状態

で、清浄に保つ。 3)品質検査室 放射性医薬品としての安全性を確認するための施設。製品の純度検査、発熱物質の検出、

細菌検査、pH 検査、浸透圧の調整などを行う。クリーンルーム対応(クラス 10000)が必

要。クリーンベンチ内はクラス 100 レベルに対応する必要がある。 4)PET 検査室 PET カメラが設置されている。患者さんが出入りする区域なので、清潔を保つ。医療従

事者の被曝を避けるため、鉛がラス壁を置いて、遮蔽する。ガス検査を行う場合は配管内

を高濃度の放射性ガスが輸送されるので、十分な遮蔽が必要である。 5)処置室 患者さんへ放射性薬剤を投与するための部屋。 6)安静室 放射性薬剤を投与された患者さんが、撮像までの間(60 分前後)安静に待機する部屋。

複数の患者さんが同時に入室する場合は、お互いの被曝を避けるために鉛板で遮蔽する。

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患者さんの監視のためのシステムが必要となる。 7)回復室 検査終了後、すぐに監理区域外に退出しないである程度体内の放射能が減衰するのを待

つための部屋。医療従事者、病院内の他の患者さん、公衆の被曝を軽減する。 8)貯蔵室 PET 装置の検出器校正用線源の保管などを保管する。 9)廃棄物保管室 放射性廃棄物、医療廃棄物などの保管を行う。 参考のレイアウトを資料に示した(提供 住友重機械工業株式会社)。

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第6章 放射性薬剤の安全管理 1 PET 用放射性薬剤の特性 市販の放射性医薬品については、放射性医薬品メーカーがその“くすり”としての有用

性(有効性、安全性)に責任を持って各医療機関に供給されている。一方、多くの PET 用

放射性薬剤は、ポジトロン放出核種の半減期が極めて短いので、核種の製造から、標識合

成、製剤化、品質管理に至る一連の作業を各施設で行う必要がある。当然のことながら各

施設で製造する放射性薬剤の有用性の確保については、各施設が責任を持ってあたること

になる。従って、施設毎に院内放射性薬剤の製造及び製剤の品質についての管理体制を整

備し、責任の所在を明確にすることが基本的に重要である。図 1 に日本アイソトープ協会・

医学・薬学部会・サイクロトロン利用専門委員会(以下、協会委員会と称す)が作成した

ガイドラインに収載してある組織責任体制の一例を示す。

図Ⅱ.6.1 組織責任体制の一例 また、放射性薬剤の品質管理に際して半減期が短いために、一部の品質管理試験項目につ

いては被験者に投与する前にその試験結果を出せないことがある。その場合、事後検定を

行うことになるが、その取り扱いについては後述する第 3 者の専門家を交えた「薬剤安全

委員会」で評価することが望ましい。品質管理におけるすべての項目について事前検定が

困難な場合は、事後検定の項目に関してはむしろ製造工程管理の意味合いが強くなる。 人体に投与する“くすり”の有用性を確保することは医療機関にとって 低限の義務で

あり、PET 用放射性薬剤の製造に関しては、常に一定規格以上の製剤が行われるような再

現性のある製法の確立が第一義的に重要になってくる。また、確立された製法に従って下

記に示すような項目について文書化し、その内容についても前述の「薬剤安全委員会」で

審査、評価を受けることが望ましい。

製造管理者(氏名:○○○○)

製造管理責任者 (氏名:○○○○)

品質管理責任者 (氏名:○○○○)

※なお、製造管理者は薬剤師で

あることが望ましい。また製造

管理責任者と品質管理責任者は

異なる者が担当することを原則

とする。

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(1) 製造管理組織図 (2) 製品標準書 (3) 製造管理基準書 (4) 製造衛生管理基準書 (5) 品質管理基準書 (6) 入退出手順書 (7) クリーンベンチ操作手順書 (8) 浮遊微粒子試験作業書 (9) 原料及び資材の品質管理記録 (10) 製造指図書兼製造記録 (11) 品質試験記録 (12) 浮遊微粒子測定記録 (13) 落下菌試験記録

PET 用放射性薬剤の 3 番目の特性として、作業者の放射線被曝の防護が挙げられる。タ

ーゲット中で製造される放射性核種の放射能は極めて大量であり、ホットセル内に自動合

成装置を設置、遠隔操作することにより作業者の被曝軽減が計られている。ただし、製剤

の取り出しや分注操作等、今後被曝軽減化のために取り組むべき課題は多い。その他自動

合成装置のライン上にリークがあると、排気中の RI 濃度が基準を越えたり、あるいは揮発

性の放射性物質によってホットセル壁面や床、及び作業者自身が汚染することもあり得る。

放射線防護の観点からは一般的な知識に加えて取り扱う標識化合物や副生成物の性質、自

動合成装置の構造と配管等にも熟知しておく必要がある。 2 日本アイソトープ協会のガイドラインについて 1970 年代後半、放射線医学総合研究所(放医研)において、13N-アンモニアの臨床応用が

開始されたのが我が国における PET 研究の始まりである。当時放医研では放射性医薬品メ

ーカーの専門家を含む「短寿命核種の医学利用委員会」を組織し、院内放射性薬剤の安全

性の確保をどのように行うかについて審議し、放医研における放射性薬剤の製法及び規格

を定めた。1980 年代に入り、日本アイソトープ協会・医学・薬学部会にサイクロトロン利

用専門委員会が設置され、臨床的に有用性が認められた放射性薬剤を成熟薬剤として認定

し、その製法、規格を全国的に統一する方向でガイドラインを作成することとなった。

初のガイドラインは、放医研の基準を参考として放射性医薬品基準(市販の放射性医薬品

の製法、品質等に関する基準を定めたもの)に沿った形で作成されたものである。その後、

何回かの改訂を経て 2001 年に「放射性薬剤の基準」の改訂が行われた(2001 年改訂、

Radioisotopes 50, 190-204, 2001)。この 2001 年改訂版には、院内サイクロトロン製造放射性

薬剤に関する、製法、品質、製造作業環境等に関する基準(ガイドライン)が収載されて

おり、その解説及び参考資料も同時に作成された。この改訂では無菌試験法に従来の「バ

クテック試験法」に加えて「血液培養システムを用いた試験法」も採用された他、「PET 診

断用放射性薬剤製造施設における作業環境及び作業に関するガイドライン」が新たに付け

加えられた。各施設における製造管理、製造管理責任者、品質管理責任者はこの「放射性

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薬剤の基準(2001 年改訂版)」とその解説、参考資料を参考として施設毎の基準の作成にあ

たってもらいたい。 3 2-デオキシ-2-フルオロ-D-グルコース(18F)注射液(FDG)の製造と品質管理について 現在、我が国では住友重機械工業と JFE の 2 社から医療機器としての FDG 合成装置が市

販されている。図 2 にそれぞれのメーカーの FDG 合成装置の外観図を示す。両機種共に基

本的な標識合成反応は図 3 に示すように同一の反応を用いているが、加水分解の試薬、条

件が異なるために、合成に要する時間に多少の違いが生じる。また、JFE 社製の合成装置は

試験等がキット方式となっており取り扱いが簡便になっている。

図Ⅱ.6.2 FDG 合成装置の外観図(左:JFE、右:住友重機械工業)

図Ⅱ.6.3 FDG 合成フローチャート(左:JFE、右:住友重機械工業)

18F-の回収、活性化

照射

反応

精製

加水分解

分離精製

調剤

品質検査

18F-の回収

照射

溶媒留去

反応

精製

加水分解

精製

滅菌濾過

製品

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FDG の製造に際しては、各社の自動合成装置取り扱い説明書に記載されている操作法、

その他に従って操作を行えば特に問題は生じないと考えられる。ただし、各製造担当者に

対する関連知識、及び作業内容等の教育訓練は充分に実施することが重要である。 FDG は大量に標識合成が可能で、施設によっては製造後数時間経過した後にヒトに投与

する事態が想定される。このような場合には、予め FDG の安定性に関するデータを収集し、

各施設における FDG の有効期限を設定しておくことが必要である。表 1 に FDG の品質管

理基準の一例を示す。

表Ⅱ.6.1 18FDG 注射液の品質管理基準 ◎ 外観・性状 : 無色または微黄色澄明 ◎ pH : 5.0-8.0 ◎ 放射能 : 90-110 % ◎ 放射化学的純度 : 95 %以上 ※ 放射核化学的純度 : 511 keV または 1022 keV 以外にピーク を認めない。

(半減期) (105-115 分) ※ 比放射能 : 200 Mbq/mg ◎ Kryptofix2.2.2(K.222) : 40 ppm 以下 ◎ アルミニウムイオン : 10 ppm 以下 ※ エタノール : 2000 ppm 以下 ※ メタノール : 1200 ppm 以下 ※ アセトニトリル : 164 ppm 以下 ※ クロロデオキシグルコース : 40 ppm 以下 ◎ 無菌試験 : 試験に適合する ◎ 発熱性物質 : 試験に適合する ◎ 製造毎に試験を実施する。 ※ 年 1 回以上、試験を実施する。

(大阪大学医学部付属病院の基準を例示) 4 メチオニン(11C)注射液の製法と品質管理 11C-メチオニン注射液は 11C-ヨウ化メチルを標識前駆体として製造される。図 4 に 11C-メチオニン注射液製造装置の外観図を、また図 5 に製造装置のシステムの概略を示している。

本装置は 11C-ヨウ化メチルを標識前駆体として用いる多数の 11C-標識放射性薬剤の製造に

用いることができる。しかし、本装置は医療機器としての承認は受けておらず化合物とし

ての 11C-ヨウ化メチルの製造装置として位置付けられる。従って、11C-メチオニン注射液を

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始めとする個別の放射性薬剤毎に試薬、器具の規格、製法、品質管理基準等を各施設で独

自に設定する必要がある。この例のように医療機器として認可されていない自動合成装置

を取り扱う際には、標識合成反応、合成システムの構成とそれぞれの要素についての専門

的知識を熟知すると共に、器材の滅菌法や保守管理等についても基準を作成しておくこと

が重要である。

図Ⅱ.6.4 11C-メチオニン注射液製造装置の外観図(放医研提供)

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図Ⅱ.6.5 11C-メチオニン注射液製造装置のシステムの概略(放医研提供) また 11C-ヨウ化メチルは汎用性があるために、逆に標識原料や分離・精製用の溶媒を間違

える可能性も大きい。従って、各放射性薬剤毎に試薬や器材を別個に保管することが望ま

しい。 表 2 に 11C-メチオニン注射液の品質管理基準の例を示す。また図 6 には 11C-メチオニン注射

液の標識後の安定性のデータを例示するが、比放射能を高くすると放射線分解による放射

性異物の混入量が時間と共に著しく増えることがわかる。特にレセプターマッピング用の11C-標識薬剤の中には高比放射能が要求されるものがあるが、このような場合、標識後の安

定性に関するデータを収集しておく必要がある。図 7 には例として 11C-Ro15-4513 の比放射

能の違いによる安定性を示す。一般に放射線分解による放射性薬剤の安定性は、pH や含有

される微量成分によっても異なるので、各施設毎に標識後の安定性に関するデータをそろ

えておくことが必要である。

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表Ⅱ.6.2 11C-メチオニン注射液の品質管理基準

(1) pH :pH を測定するとき、その pH は 3.0~7.0 である。 (2) 性状 :肉眼で観察するとき、無色透明の液体である。 (3) 容量 :5~10 ml (4) 放射能 :γ線測定法によりその放射能を測定するとき、測 定時点において 370MBq(10mCi)以上である。 (5) 放射性異物 :ラジオ液体クロマトグラフ法にて試験を行うとき、

11C-メチオニン以外の放射能は総放射能の 5%以下である。 (6) 異核種 :γ線測定法によりγ線スペクトルを描くとき

511KeV 以外のピークを認めない。または、半減期測定法

により半減期を測定するとき、20 分後における放射能残

存率は 47~53%である。 (7) 比放射能 :(5)の試験を行うとき、UV(215nm)の吸収度 よりメチオニン濃度を定量し、比放射能を算出す るとき、その値は 1.1GBq(30mCi)/μmol 以上で ある。 (8) エンドトキシン :エンドトキシン試験法により試験を行うとき、陰 性である。 (9) 無菌試験 :シグナル試験法により試験を行うとき無菌である。

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図Ⅱ.6.6 11C-メチオニン注射液の標識後の安定性(放医研提供)

図Ⅱ.6.7 11C-Ro15-4513 の比放射能の違いによる安定性(放医研提供)

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放射性薬剤安全委員会について 各施設は、「放射性薬剤安全委員会」を組織し、放射性薬剤の有用性(有効性、安定性)

を審議、評価することが、協会委員会のガイドラインでも強く推奨されている。この「放

射性薬剤安全委員会」には外部の放射性薬剤に関する専門家が参加していることが望まし

い。前述した放射性薬剤の製造と品質管理に関する文書の内容については委員会での審議、

許可を受けた上で臨床応用を開始することになる。また、技術の進展に伴い製法の変更、

製品仕様の変更等が生じたら、その毎、委員会でその内容を評価することとなる。資料と

して大阪大学医学部付属病院短寿命放射性薬剤安全管理委員会内規を示す。