27
61 4.総合考察 4.1 地盤定数の提案 ここでは,本調査結果をもとに,以下の地盤定数値について提案を行う。 ② 単位体積重量;γ t ③ 粘着力;④ 内部摩擦角;φ 地盤定数値の提案は,実測値(値,原位置試験値,及び室内土質試験値)を用いて 設定することが望ましいが,実測値の得られていない地層については,一般値,及び 各推定式を用いて整理する。 1)値は,各層の土質特性や,実測値のばらつき等を考慮し,次に示す方法等の適 用性についての評価を行いながら,提案値を設定する。 表-4.1 に設計用値の提案値と提案方法をまとめて示す。 a)実測値を用いる :測定値が少ない場合に適用する。 (しかし,値の過大評価の恐れがある。) b)平均値を用いる :測定値に大きなばらつきがない場合に適用する。 c)標準偏差を考慮する:測定値にばらつきがある場合に適用する。 (平均値-標準偏差/2) 表-4.1 値の提案値 地層名 (記号) 実測提案値 提案方法 実測値 平均値 標準偏差 埋土層(Bs) 2 2.0 0 2 実測値を採用する 沖積第1 粘性土層(Ac1) 1 1.0 0 1 実測値を採用する 沖積第1 砂質土層(As1) 2~15 6.0 6.1 3 標準偏差を考慮する 沖積第2 粘性土層(Ac2) 0~4 1.8 1.3 2 平均値を採用する 洪積第1 粘性土層(Dc1) 4~16 7.6 3.9 6 標準偏差を考慮する 洪積第1 砂質土層(Ds1) 30 30.0 0 30 実測値を採用する 洪積第1 礫質土層(Dg1) 60 以上 60.0 0 60 平均値を採用する 洪積第2 粘性土層(Dc2) 7~10 9.0 1.7 9 平均値を採用する 洪積第2 砂質土層(Ds2) 20~43 31.5 16.3 23 標準偏差を考慮する 洪積第3 粘性土層(Dc3) 10~13 11.5 2.1 10 標準偏差を考慮する 洪積第3 砂質土層(Ds3) 36~60 以上 48.0 17.0 40 標準偏差を考慮する 洪積第4 粘性土層(Dc4) 12~30 18.1 6.2 15 標準偏差を考慮する 洪積第4 砂質土層(Ds4) 16~60 以上 55.6 12.6 49 標準偏差を考慮する 洪積第5 粘性土層(Dc5) 10~28 17.3 9.5 13 標準偏差を考慮する

4.総合考察 4.1 地盤定数の提案 N - Soka...63 表-4.4 粘着力c(kN/m2) 地層名(記号) N値 試験値 計算値 提案値 埋土層(Bs) 2 - 12.5 10 沖積第1粘性土層(Ac1)

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61

4.総合考察

4.1 地盤定数の提案

ここでは,本調査結果をもとに,以下の地盤定数値について提案を行う。

① N 値

② 単位体積重量;γt

③ 粘着力;c

④ 内部摩擦角;φ

地盤定数値の提案は,実測値(N値,原位置試験値,及び室内土質試験値)を用いて

設定することが望ましいが,実測値の得られていない地層については,一般値,及び

各推定式を用いて整理する。

1)N値

N値は,各層の土質特性や,実測N値のばらつき等を考慮し,次に示す方法等の適

用性についての評価を行いながら,提案値を設定する。

表-4.1 に設計用N値の提案値と提案方法をまとめて示す。

a)実測N値を用いる :測定値が少ない場合に適用する。

(しかし,値の過大評価の恐れがある。)

b)平均N値を用いる :測定値に大きなばらつきがない場合に適用する。

c)標準偏差を考慮する:測定値にばらつきがある場合に適用する。

(平均値-標準偏差/2)

表-4.1 N値の提案値

地層名

(記号)

実測N値 提案値 提案方法

実測値 平均値 標準偏差

埋土層(Bs) 2 2.0 0 2 実測値を採用する

沖積第1粘性土層(Ac1) 1 1.0 0 1 実測値を採用する

沖積第1砂質土層(As1) 2~15 6.0 6.1 3 標準偏差を考慮する

沖積第2粘性土層(Ac2) 0~4 1.8 1.3 2 平均値を採用する

洪積第1粘性土層(Dc1) 4~16 7.6 3.9 6 標準偏差を考慮する

洪積第1砂質土層(Ds1) 30 30.0 0 30 実測値を採用する

洪積第1礫質土層(Dg1) 60 以上 60.0 0 60 平均値を採用する

洪積第2粘性土層(Dc2) 7~10 9.0 1.7 9 平均値を採用する

洪積第2砂質土層(Ds2) 20~43 31.5 16.3 23 標準偏差を考慮する

洪積第3粘性土層(Dc3) 10~13 11.5 2.1 10 標準偏差を考慮する

洪積第3砂質土層(Ds3) 36~60 以上 48.0 17.0 40 標準偏差を考慮する

洪積第4粘性土層(Dc4) 12~30 18.1 6.2 15 標準偏差を考慮する

洪積第4砂質土層(Ds4) 16~60 以上 55.6 12.6 49 標準偏差を考慮する

洪積第5粘性土層(Dc5) 10~28 17.3 9.5 13 標準偏差を考慮する

62

2)粘着力 c (kN/m2)

粘性土は,粘土鉱物の特性,及び粒子が微

細で比表面積が広いために,表面にイオンを

吸着する電気化学的な力が生じ,粘着力と呼

ばれる粒子間力が生じる。

一方,砂のように個々の粒子が比較的大き

く,単粒構造の状態では,粒子間力は発生し

ないため,粘着力c≒0 (kN/m2)となる。

ところで,土のせん断強さは,粘着力,内

部摩擦角,及び一軸圧縮強さとの関係として,

次式で表される。

)2

45tan(2

)2

45tan(2

cq

qc

u

u

(kN/m2)

沖積粘性土に代表される飽和粘性土は,せ

ん断応力の増加に伴って発生する間隙水圧が,透水性が低く,消散が迅速に行われず

に土粒子間に残存することとなり,土粒子のかみ合いを妨げることから,内部摩擦角

によるせん断強さが期待できない。

そのため,上式において,φ=0(°)として粘着力を求めることができる。

また,Terzaghi and Peck は,粘土のコンシステンシー,一軸圧縮強さ quと N 値の

関係を表-4.2 のように与え,次式を示している。

)}/(8/{)/(5.12 22 cmkgfNqumkNNqu

表‐4.2 コンシステンシーとN値および一軸圧縮強さの関係

コンシステンシー 非常に

軟らかい 軟らかい 中位の 硬い 非常に硬い 固結した

N値 2以下 2~4 4~8 8~15 15~30 30以上

qu(kN/m2)

{kgf/cm2}

25以下

{0.25以下}

25~50

{0.25~0.50}

50~100

{0.5~1.0}

100~200

{1.0~2.0}

200~400

{2.0~4.0}

400以上

{4.0以上}

(出典:(社)地盤工学会「地盤調査法」,p.202,1995.)

本調査においては,Ac2 層については三軸圧縮試験を実施しており,この結果に従

うこととするが,その他の土層についてはせん断強さに関する試験値は得られていな

いことか,代表の N値をもとに,前述の関係式等を用いて提案値を設定する。

図-4.1 粘着力と内部摩擦角

63

表-4.4 粘着力c(kN/m2)

地層名(記号) N値 試験値 計算値 提案値

埋土層(Bs) 2 - 12.5 10

沖積第1粘性土層(Ac1) 1 - 6.3 10

沖積第1砂質土層(As1) 3 - - 0

沖積第2粘性土層(Ac2) 2 26.1,51.9 12.5 35

洪積第1粘性土層(Dc1) 6 - 37.5 35

洪積第1砂質土層(Ds1) 30 - - 0

洪積第1礫質土層(Dg1) 60 - - 0

洪積第2粘性土層(Dc2) 9 - 56.3 55

洪積第2砂質土層(Ds2) 23 - - 0

洪積第3粘性土層(Dc3) 10 - 62.5 60

洪積第3砂質土層(Ds3) 40 - - 0

洪積第4粘性土層(Dc4) 15 - 93.8 90

洪積第4砂質土層(Ds4) 49 - - 0

洪積第5粘性土層(Dc5) 13 - 81.3 80

3)内部摩擦角 φ(°)

内部摩擦角(φ)は,土粒子相互間の摩擦によって生じるせん断強さの大小を表す指

標であるが,一般に飽和状態にある粘性土では,せん断強さは粘着力cにより支配さ

れるものとして,内部摩擦角はφ=0°として扱われる。

図-4.2 土の構造

しかし,不飽和の状態にある粘性土や,飽和状態にあっても粗粒度をある程度混入

する粘性土では,粘着力によるせん断抵抗力に加え,内部摩擦角によるせん断抵抗力

も有することとなり,沖積粘性土等の飽和粘性土のようにφ=0(°)とすることができ

ない。

こうした粘性土のせん断特性を明らかとするためには,非圧密非排水条件における

三軸圧縮試験を実施し,求められた供試体内の応力変化を整理し,モール・クーロン

の破壊基準に従って粘着力,及び内部摩擦角を求めることとなる。

64

Ac2 層については,このようなせん断特性を明らかとするために実施した三軸圧縮

試験より提案を行うこととする。

一方,粗粒土の内部摩擦角は,N 値をもとにして「建築基礎構造設計指針」に示さ

れる次式から推定することができる。

算定結果は,表-4.6,及び表-4.7 に示した。

この結果をもとに,表-4.5 に提案値をまとめた。

φ= +20(°) (3.5≦N1≦20)

φ=40(°) (20<N1)

N1 :有効上載圧を考慮したN値,

σV0’:有効上載圧(kN/m2)(98≦σV0’)

(出典:日本建築学会「建築基礎構造物設計指針」,p.114,2001.)

表-4.5 内部摩擦角の提案値

地層名

(記号) N値

試験値

φu(°)

推定値

φ(°)

提案値

φ(°)

埋土層(Bs) 2 - - 0

沖積第1粘性土層(Ac1) 1 - - 0

沖積第1砂質土層(As1) 3 - 26.3~37.3

(29.8) 30

沖積第2粘性土層(Ac2) 2 1.2,4.5 - 0

洪積第1粘性土層(Dc1) 6 - - 0

洪積第1砂質土層(Ds1) 30 - 40.0

(40.0) 40

洪積第1礫質土層(Dg1) 60 - 40.0

(40.0) 40

洪積第2粘性土層(Dc2) 9 - - 0

洪積第2砂質土層(Ds2) 23 - 36.1~40.0

(38.1) 35

洪積第3粘性土層(Dc3) 10 - - 0

洪積第3砂質土層(Ds3) 40 - 31.2~40.0

(35.6) 35

洪積第4粘性土層(Dc4) 15 - - 0

洪積第4砂質土層(Ds4) 49 - 32.7~40.0

(39.5) 40

洪積第5粘性土層(Dc5) 13 - - 0

*( )内は,平均値である。

120N

'98/σ・= V01 NN

65

Bs 1.60 1.80 16.0 6.2 25.60

Ac1 2.10 1.80 15.0 5.2 30.16

As1 2.30 1.80 18.0 8.2 31.80 3.0 3.0 27.7

As1 3.35 1.80 18.0 8.2 40.41 3.0 3.0 27.7

As1 4.30 1.80 18.0 8.2 48.20 2.0 2.0 26.3

As1 4.70 1.80 18.0 8.2 51.48

Ac2 15.10 1.80 16.0 6.2 115.96

Dc1 27.35 1.80 16.5 6.7 198.04

Ds1 27.40 1.80 18.0 8.2 198.45 30.0 21.1 40.0

Ds1 28.10 1.80 18.0 8.2 204.19

Dg1 28.30 1.80 20.0 10.2 206.23 67.0 46.2 40.0

Dg1 28.90 1.80 20.0 10.2 212.35

Dc2 29.70 1.80 17.0 7.2 218.11

Ds2 30.30 1.80 18.0 8.2 223.03 43.0 28.5 40.0

Ds2 31.30 1.80 18.0 8.2 231.23 20.0 13.0 36.1

Ds2 31.70 1.80 18.0 8.2 234.51

Dc3 32.80 1.80 17.0 7.2 242.43

Ds3 33.30 1.80 18.5 8.7 246.78 10.0 6.3 31.2

Ds3 33.70 1.80 18.5 8.7 250.26

Dc4 37.20 1.80 17.5 7.7 277.21

Ds4 37.30 1.80 19.0 9.2 278.13 62.0 36.8 40.0

Ds4 38.30 1.80 19.0 9.2 287.33 34.0 19.9 39.9

Ds4 39.20 1.80 19.0 9.2 295.61 100.0 57.6 40.0

Ds4 40.25 1.80 19.0 9.2 305.27 100.0 56.7 40.0

Ds4 41.25 1.80 19.0 9.2 314.47 96.0 53.6 40.0

Ds4 42.25 1.80 19.0 9.2 323.67 100.0 55.0 40.0

Ds4 43.25 1.80 19.0 9.2 332.87 90.0 48.8 40.0

Ds4 44.25 1.80 19.0 9.2 342.07 82.0 43.9 40.0

Ds4 45.25 1.80 19.0 9.2 351.27 86.0 45.4 40.0

Ds4 46.25 1.80 19.0 9.2 360.47 75.0 39.1 40.0

Ds4 47.25 1.80 19.0 9.2 369.67 78.0 40.2 40.0

Ds4 48.25 1.80 19.0 9.2 378.87 100.0 50.9 40.0

Ds4 49.30 1.80 19.0 9.2 388.53 16.0 8.0 32.7

Ds4 50.25 1.80 19.0 9.2 397.27 100.0 49.7 40.0

Ds4 51.25 1.80 19.0 9.2 406.47 100.0 49.1 40.0

Ds4 52.25 1.80 19.0 9.2 415.67 100.0 48.6 40.0

Ds4 53.10 1.80 19.0 9.2 423.49

Dc5 55.45 1.80 17.5 7.7 441.06

地下水位以浅の単位体積重

量 γt1

(kN/m3)

地下水位以深の単位体積重

量 γ't2

(kN/m3)

有効上載

圧 σ'v

(kN/m2)

実測換算N値(回)(上限100)

有効上載圧100kN/㎡

相当に換算した N 1値

内部摩擦角φ

(°)

ボーリング番号:No.1 算定式:『建築基礎構造設計指針』(日本建築学会,2001.)

地層記号

深 度x

(G.L.-m)

地下水位hw

(G.L.-m)

表-4.6 No.1 地点の内部摩擦角の計算

66

Bs 1.80 0.90 16.0 6.2 19.98

Ac1 2.35 0.90 15.0 5.2 22.84

As1 3.30 0.90 18.0 8.2 30.63 15.0 15.0 37.3

As1 3.60 0.90 18.0 8.2 33.09

Ac2 18.70 0.90 16.0 6.2 126.71

Dc1 26.90 0.90 16.5 6.7 181.65

Ds1 27.30 0.90 18.0 8.2 184.93 30.0 21.8 40.0

Ds1 27.60 0.90 18.0 8.2 187.39

Dg1 28.28 0.90 20.0 10.2 194.33 82.0 58.2 40.0

Dg1 29.30 0.90 20.0 10.2 204.73 64.0 44.3 40.0

Dg1 29.70 0.90 20.0 10.2 208.81

Dc2 31.50 0.90 17.0 7.2 221.77

Dc3 32.90 0.90 17.0 7.2 231.85

Ds3 33.30 0.90 18.5 8.7 235.33 64.0 41.3 40.0

Ds3 33.90 0.90 18.5 8.7 240.55

Dc4 37.90 0.90 17.5 7.7 271.35

Ds4 38.30 0.90 19.0 9.2 275.03 62.0 37.0 40.0

Ds4 39.30 0.90 19.0 9.2 284.23 19.0 11.2 34.9

Ds4 40.25 0.90 19.0 9.2 292.97 82.0 47.4 40.0

Ds4 41.25 0.90 19.0 9.2 302.17 100.0 56.9 40.0

Ds4 42.25 0.90 19.0 9.2 311.37 95.0 53.3 40.0

Ds4 43.25 0.90 19.0 9.2 320.57 75.0 41.5 40.0

Ds4 44.25 0.90 19.0 9.2 329.77 67.0 36.5 40.0

Ds4 45.25 0.90 19.0 9.2 338.97 78.0 41.9 40.0

Ds4 46.25 0.90 19.0 9.2 348.17 72.0 38.2 40.0

有効上載圧100kN/㎡

相当に換算した N 1値

内部摩擦角φ

(°)

ボーリング番号:No.2 算定式:『建築基礎構造設計指針』(日本建築学会,2001.)

地層記号

深 度x

(G.L.-m)

地下水位hw

(G.L.-m)

地下水位以浅の単位体積重

量 γt1

(kN/m3)

地下水位以深の単位体積重

量 γ't2

(kN/m3)

有効上載

圧 σ'v

(kN/m2)

実測換算N値(回)(上限100)

表-4.7 No.2 地点の内部摩擦角の計算

67

4)単位体積重量γt(kN/m3)

単位体積重量γt(kN/m3)は,湿潤密度試験結果,土質特性,及び代表N値等を考慮

し,表-4.8,及び表-4.9 を参考として決定する。

表-4.10 に提案値をまとめた。

表-4.8 土の物理的性質の経験値

土 質 物性値

沖積層 洪積層

土 質 粘 土 砂 腐植土 粘 土 砂 ローム

含水比 w (%) 60~90 30~90 150~300 40~60 20~30 100~130

湿潤密度ρt(g/cm3) 1.45~1.60 1.60~1.80 1.00~1.20 1.60~1.70 1.80~2.00 1.25~1.35

間隙比 e 1.60~2.40 0.75~1.50 3.80~8.20 1.30~1.70 0.40~1.00 3.00~4.00

飽和度 Sr(%) 100 85~100 100 85~100 60~80 80~95

備 考 N=10内外の

粘土 地下水位下ではSr=100

(出典:(社)土質工学会(現(社)地盤工学会)「1本のサンプリング試料から」,p.81,1992.)

表-4.9 東京における地盤の単位積重量

地 層 沖積層 関 東

ローム渋 谷粘土層

東京層

砂 質 シルト質 粘土質 砂 質 シルト質 粘土質

単位体積重量 (kN/m3)

16.7~ 18.8

14.8~ 17.0

13.7~ 15.7

12.3~ 14.1

14.0~ 16.3

17.2~ 19.2

15.5~ 17.3

14.1~ 16.2

(出典:日本建築学会「建築基礎構造設計指針」,p.115,2001.)

表-4.10 単位体積重量γt(kN/m3)

地層名

(記号) N値

試験値

ρt(g/cm3)

表-4.8 及び

表-4.9 より 提案値

埋土層(Bs) 2 - 14.2~17.0 16

沖積第1粘性土層(Ac1) 1 - 14.2~17.0 15

沖積第1砂質土層(As1) 3 1.800 15.7~18.8 18

沖積第2粘性土層(Ac2) 2 1.715,1.556 14.2~17.0 16

洪積第1粘性土層(Dc1) 6 - 15.7~17.3 16.5

洪積第1砂質土層(Ds1) 30 - 17.2~19.6 18

洪積第1礫質土層(Dg1) 60 - 17.2~19.6 20

洪積第2粘性土層(Dc2) 9 - 15.7~17.3 17

洪積第2砂質土層(Ds2) 23 - 17.2~19.6 18

洪積第3粘性土層(Dc3) 10 - 15.7~17.3 17

洪積第3砂質土層(Ds3) 40 - 17.2~19.6 18.5

洪積第4粘性土層(Dc4) 15 - 15.7~17.3 17.5

洪積第4砂質土層(Ds4) 49 - 17.2~19.6 19

洪積第5粘性土層(Dc5) 13 - 15.5~17.3 17.5

68

5)地盤定数のまとめ

地盤定数を,表-4.11 にまとめた。

表-4.11 地盤定数

地層名

(記号) N値

粘着力

c (kN/m2)

内部摩擦角

φ (°)

単位体積重量

γt (kN/m3)

埋土層(Bs) 2 10 0 16

沖積第1粘性土層(Ac1) 1 10 0 15

沖積第1砂質土層(As1) 3 0 30 18

沖積第2粘性土層(Ac2) 2 35 0 16

洪積第1粘性土層(Dc1) 6 35 0 16.5

洪積第1砂質土層(Ds1) 30 0 40 18

洪積第1礫質土層(Dg1) 60 0 40 20

洪積第2粘性土層(Dc2) 9 55 0 17

洪積第2砂質土層(Ds2) 23 0 35 18

洪積第3粘性土層(Dc3) 10 60 0 17

洪積第3砂質土層(Ds3) 40 0 35 18.5

洪積第4粘性土層(Dc4) 15 90 0 17.5

洪積第4砂質土層(Ds4) 49 0 40 19

洪積第5粘性土層(Dc5) 13 80 0 17.5

69

4.2 地盤の工学的性質と設計・施工上の留意点

本調査結果をもとに,計画地の地盤について工学的特徴と留意点について述べる。

1)沖積第 1 砂質土層(As1)の透水性について

沖積第 1砂質土層(As1)は,地表面下 2.1~2.35(m)より層厚 1.25~2.6(m)で分布す

る。

粒子は比較的均一な細砂を主体とし,実測N値は 2~15(平均 6.0)と,ややばらつ

きはあるが,“非常に緩い~緩い”状態を示す砂質土層である。

また,水気は多く,シルトを不均質に混入する。

本層の透水性を明らかとするために実施した現場透水試験によると,透水係数(kw)

は kw=6.43×10-5(m/s)の値が求められ,砂層として透水性は「中位」に区分される。

ここで,透水係数は,粒度組成に左右され,表-4.12 に示した粒度試験より求まる

20%粒径(D20)を用いたクレーガー(Creager)の方法から,透水係数を推定することが

できる。

ただし,10-8~10-6(cm/s)台の透水係数は,相関性が低くなるとされる。

表-4.12 クレーガーによるD20と透水係数の関係

これらの値は現場の密度で変わることに注意

(出典:全国地質調査業協会連合会「ボーリング計測マニュアル」,p.193,1993.)

これより,20%粒径(D20)を用いて透水係数を推定すると,表-4.13 の通りである。

粒度試験の結果よる透水係数(kw)は,kw=3.75×10-8~1.66×10-6(m/s)と,現場透水

試験の結果よりも 101~102(m/s)程度低い値が求められた。

D20 (mm)

k (cm/s)

土質分類 D20 (mm)

k (cm/s)

土質分類

0.005 3.00×10-6 粗粒粘土 0.18

0.20

0.25

6.85×10-3

8.90×10-3

1.40×10-2

微粒砂 0.01 1.05×10-5 細粒シルト

0.02

0.03

0.04

0.05

4.00×10-5

8.50×10-5

1.75×10-4

2.80×10-4

粗粒シルト0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

2.20×10-2

3.20×10-2

4.50×10-2

5.80×10-2

7.50×10-2

中粒砂

0.06

0.07

0.08

0.09

0.10

4.60×10-4

6.50×10-4

9.00×10-4

1.40×10-3

1.75×10-3

極微粒砂 0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

1.10×10-1

1.60×10-1

2.15×10-1

2.80×10-1

3.60×10-1

粗粒砂

0.12

0.14

0.16

2.60×10-3

3.80×10-3

5.10×10-3

微粒砂

2.00 1.80 細礫

比較的精度が悪い

70

粒径が小さい範囲における推定値であることから,現場透水試験の結果とやや離れ

た値になったものと考えられる。

よって,As1 層の透水性としては,現場透水試験より求められた透水係数を代表値

として採用することとしたい。

なお,現場透水試験で測定された平衡水位は,地表面下 0.80(m)と非常に浅い位置

にあり,帯水する地下水は被圧された状態にあることが明らかとなっている。

As1 層は,計画地内で連続した分布を有し,また,地形的にも計画地周辺地域に広

く連続性を有して分布する地層であり,地下水は豊富に本層へ供給されているものと

考えられる。

本層を掘削する際には,排水計画等につい慎重な検討が必要といえる。

表-4.13 透水係数一覧

対象層 試 料

深度

G.L.-(m)

Creager による透水係数 現場透水試験

による透水係数

kw(m/s) 20%粒径

D20(㎜) kw(m/s)

As1

1-1 2.15~2.45 0.0055 3.75×10-8

1-2 4.15~4.45 0.0085 8.25×10-8 -

2-1 2.30~3.60 0.039 1.66×10-6 6.43×10-5

2)沖積第 2 粘性土層(Ac2)の特徴について

沖積第 1砂質土層(As1)の下部には,層厚 15m を有する沖積第 2粘性土層(Ac2)が分

布する。

本層は,暗灰色のシルトを主体とし,実測N値は 0~4(平均 1.8)と,“非常に軟ら

かい~軟らかい”状態にあり,不規則に,ブロック状,または層状に細砂を混入する。

また,草茎等の腐植物も混入させ,所々に貝殻片を点在させる軟弱層である。

自然含水比はwn=50.4~76.5(%)(平均 63.5%)と,ややばらつきがあり,混入する

砂分の影響が表れており,不均質な土質といえる。

表-4.14 に,液性限界,及び塑性限界を示したが,自然含水比(wn)は液性限界(wL)

を上回り,現況における堆積構造は,非常に不安定な状態を示す。

表-4.14 液性限界・塑性限界

地層

記号

試料

No.

液性限界

wL(%)

自然含水比

wn(%)

塑性限界

wP(%)

塑性指数

IP

コンシステン

シー指数 IC

Ac2 2-2 40.2 50.4 26.0 14.2 -0.72

2-4 61.6 76.5 34.0 27.6 -0.54

また,土の安定性を示すコンシステンシー指数(IC=(wL-wn)/IP)は,IC≒0 とし

て扱えるものであり,乱されると,強度低下が著しい土質である。

掘削施工等においては,不必要に地盤を乱すことのないよう配慮するとともに,掘

71

Layer 層厚 地表面からの深さ せん断波速度 Tg=(32ΣA)^0.5

(m) (m) hi(m) Hi (m) Vsi (m/s) (秒)

1 埋土、砂混じりシルト 0.00 ~ 2.10 2.10 2.10 120 0.000153 0.0002 0.070

2 シルト混じり細砂 2.10 ~ 4.70 2.60 4.70 120 0.000614 0.0008 0.16

3 砂混じりシルト 4.70 ~ 10.70 6.00 10.70 120 0.003208 0.0040 0.36

4 シルト、砂混じりシルト 10.70 ~ 19.80 9.10 19.80 190 0.003844 0.0078 0.50

5 砂質シルト 19.80 ~ 22.60 2.80 22.60 240 0.001031 0.0089 0.53

6 シルト 22.60 ~ 25.10 2.50 25.10 240 0.001035 0.0099 0.56

7 礫混じり砂質シルト、シルト 25.10 ~ 27.35 2.25 27.35 300 0.000656 0.0105 0.58

8 シルト、細砂、砂礫 27.35 ~ 28.90 1.55 28.90 330 0.000400 0.0109 0.59

9 砂混じりシルト、シルト混じり細砂 28.90 ~ 30.60 1.70 30.60 310 0.000526 0.0115 0.61

10 シルト質細砂、粘土質シルト、細砂 30.60 ~ 33.70 3.10 33.70 290 0.001185 0.0127 0.64

11 粘土質シルト、シルト混じり細砂 33.70 ~ 38.80 5.10 38.80 340 0.001599 0.0143 0.68

12 細砂 38.80 ~ 43.50 4.70 43.50 360 0.001492 0.0157 0.71

13 細砂、砂混じりシルト 43.50 ~ 50.00 6.50 50.00 320 0.002968 0.0187 0.77昭和55年建設省告示第1793 「2007年版 建築物の構造関係技術基準解説書」P.270Tg=(32*Σ(hi((Hi-1+Hi)/2)/(Vsi^2)))^(1/2)

n 基盤から基礎底面までの間の層の数Tg 地盤周期(秒)Hi 建築物の基礎底面あるいは剛強なくいの支持層面からi層下面までの深さ(m)

Vsi i層のせん断波速度hi i層の厚さ(m)

ΣAA=hi*{(H1-i+Hi)/2}/Vsi2主な土質

区 間

削底盤のヒービング等の安定性について,十分な検討が必要といえる。

なお,圧密特性として表-4.15 に圧密試験結果を示したが,過圧密比(OCR=Pc/σv)

はNo.2-2でOCR=2.7と過圧密状態を,No.2-4ではOCR=1.7と軽い過圧密状態を示し,

現況のでは概ね安定した状態にあるものと考えられる。

表-4.15 圧密特性

地層

記号

試料

No.

圧縮指数 Cc 圧密降伏応力

pc (kN/m2)

有効土被り圧*2

po (kN/m2)

過圧密比*3

OCR 圧密履歴

試験値 Skempton式*1

Ac2 2-2 0.43 0.27 166.8 61.02 2.7 過圧密

2-4 1.12 0.46 155.3 89.82 1.7 軽い過圧密

*1:Skempton 式 Cc=0.009×(wL-10) wL:液性限界(%) *2:有効土被り圧は,地下水以下では浮力を考慮し土の単位体積重量から 9.8(kN/m3)を差し引いた値

で算定した。 *3:過圧密比(OCR)と地層の圧密履歴状態の判断基準は,次の通りである。 過圧密比(OCR)=pc/po 正 規 圧 密:OCR=1 軽 い 過 圧 密:OCR=1~2 過 圧 密:OCR=2~8

強 い 過 圧 密:OCR>8

3)耐震設計上の地盤種別

PS検層により得られたS波速度構造から,昭和 55 年建設省告示第 1793 による地

盤周期の算定結果を表-4.16 に示す。

G.L.-38.8m を基盤面と考えた場合,地盤周期は 0.68 秒が求められた。

表-4.16 せん断波測定による地盤周期の算定

72

層厚 S波速度 密 度

(m) (m) (m) (m/s) (t/m3)

1 0.00 ~ 1.60 1.60 120 1.60 5,10,20 埋土

2 1.60 ~ 2.10 0.50 120 1.50 5,10,20 砂混じりシルト

3 2.10 ~ 4.70 2.60 120 1.80 5,10,20 シルト混じり細砂

4 4.70 ~ 10.70 6.00 120 1.60 5,10,20 砂混じりシルト

5 10.70 ~ 19.80 9.10 190 1.60 5,10,20 シルト、砂混じりシルト

6 19.80 ~ 22.60 2.80 240 1.65 5,10,20 砂質シルト

7 22.60 ~ 25.10 2.50 240 1.65 5,10,20 シルト

8 25.10 ~ 27.35 2.25 300 1.65 5,10,20 礫混じり砂質シルト、シルト

9 27.35 ~ 28.10 0.75 330 1.80 5,10,20 細砂

10 28.10 ~ 28.90 0.80 330 2.00 5,10,20 砂礫

11 28.90 ~ 29.70 0.80 310 1.70 5,10,20 砂混じりシルト

12 29.70 ~ 30.60 0.90 310 1.80 5,10,20 シルト混じり細砂

13 30.60 ~ 31.70 1.10 290 1.80 5,10,20 シルト質細砂

14 31.70 ~ 32.80 1.10 290 1.70 5,10,20 粘土質シルト

15 32.80 ~ 33.70 0.90 290 1.85 5,10,20 細砂

16 33.70 ~ 37.20 3.50 340 1.75 5,10,20 粘土質シルト

17 37.20 ~ 38.80 1.60 340 1.90 5,10,20 シルト混じり細砂

18 38.80 ~ 40.00 1.20 360 1.90 5,10,20 細砂

19 40.00 ~ 43.50 3.50 360 1.90 5,10,20 細砂

20 43.50 ~ 50.00 6.50 320 1.90 5,10,20 細砂、砂混じりシルト

Base 50.00 ~ *** *** 320 1.90 5,10,20 ***

は増幅特性計算深度を示す.

Q値は 5,10,20 の3種類を仮定した.

S波速度はPS検層の結果による.

Layer区 間

主な土質Q値

次に,PS検層により得られたS波速度構造から,表-4.17 に示した地盤モデルか

ら,SH波の重複反射理論による増幅特性を計算した。

表-4.17 地盤モデル

※理論計算では,S波速度構造を基に比較的単純な構造と解釈して地盤モデルを作成して計算を実施しているた

め,実際の複雑な地盤構造を正確に再現出来ていない可能性が考えられる。また,入力基盤からの波動を基準

として増幅を計算するため,地盤モデルより深部の入力は考慮されてはいない。Q値については全ての層で固

定して計算している。

図-4.3 SH 波の重複反射理論による増幅特性

73

計算結果として SH 波の重複反射理論による増幅特性を図-4.3 に示した。

なお,Q値(波動振幅の減衰値)については,実測値がないことから仮定値

(Q=5,10,20 の 3 種)を用いた。

また,理論計算では,常時微動測定の測定深度である G.L.-40m を入力基盤とした。

これによると,G.L.-0m/G.L.-40m では,0.65 秒付近にピークが見られる。

常時微動測定結果,及び卓越周期の推定結果をまとめると,次の通りである。

① フーリエスペクトル :0.2~0.8 秒付近,1.0~1.5 秒付近,3.8~6.0 秒付近

② フーリエスペクトル比:0.69~0.71 秒付近

③ H/Vスペクトル :0.47~0.55 秒付近,0.59~0.70 秒付近,

0.74~1.0 秒付近,1.3~1.9 秒付近

④ 告示による地盤周期 :0.68 秒付近

⑤ SH 波の重複反射理論 :0.65 秒付近

測定結果によるフーリエスペクトル比,及びH/Vスペクトルでは,0.69~0.71 秒

付近が共通した卓越周期である。

また,告示による地盤周期,及び SH 波の重複反射理論による推定結果では 0.65~

0.68 秒付近に卓越周期であり,実測結果の卓越周期と多少前後するものの調和的な結

果であるといえる。

当該地盤の卓越周期を実測のフーリエスペクトル比とH/Vスペクトルにおいて共

通する 0.69~0.71 秒付近とすると,表-4.18 に示した耐震設計上の地盤種別によれば

第Ⅱ種地盤に区分される。

表-4.18 耐震設計上の地盤種別

地盤種別 地盤の特性値 TG(秒)

Ⅰ 種 TG≦0.2

Ⅱ 種 0.2<TG≦0.75

Ⅲ 種 0.75<TG

(出典:2007 年版建築物の構造関係技術基準解説書)

しかし,本調査結果における以下の課題が挙げられる。

・S波速度値 Vs400(m/s)以上の層が確認されていないこと。

・理論計算はS波速度値 Vs=360(m/s)の層を基盤とした結果であること。

・卓越周期 0.69~0.71 秒付近は,第Ⅲ種地盤の特性値に近いこと。

・実測のH/Vスペクトルでは,0.74~1.0 秒付近にも顕著な卓越が見られること。

ここで,本計画地の地盤の特性値をTG=0.74~1.0(秒)付近とすると,本計画地の

地盤は,第Ⅲ種地盤と評価することもできる。

計画構造物は,市役所庁舎として重要建築物であり,周辺における既存資料等と併

せ,総合的に検討することが望ましいとものと考えられる。

74

なお,表-4.18 の耐震設計上の地盤種別は,「昭和 55 年建設省告示第 1793 号第 1(最

終改正 平成 19 年国土交通省告示第 597 号)」にて次のように定められている。

第1種地盤

岩盤,硬質砂れき層その他主体として第3紀以前の地層によって構成されて

いるもの又は地盤周期等についての調査若しくは研究の成果に基づき,これ

と同程度の地盤周期を有すると認められるもの。

第2種地盤 第1種地盤及び第3種地盤以外のもの。

第3種地盤

腐植土,泥土その他これらに類するもので大部分が構成されている沖積層(盛

土がある場合においてはこれを含む.)で,その深さがおおむね 30 メートル

以上のもの,沼沢,泥海等を埋め立てた地盤の深さがおおむね 3 メートル以

上であり,かつ,これらで埋め立てられてからおおむね 30 年経過していない

もの又は地盤周期等についての調査若しくは研究の結果に基づき,これらと

同程度の地盤周期を有すると認められるもの。

75

4.3 基礎工について

支持層や基礎形式の選定においては,要求性能や,構造性能を満足する組み合わせ

とし,施工性や経済性等に関する比較検討を行った上で,最も合理的な基礎形式を選

定する必要がある。

図-4.6 に支持地盤の深度と適用可能な基礎形式及び検討事項について示した。

建築物の目的と機能

設計供用期間と限界状態・設計荷重の設定

要求性能の設定

設計与条件・施工与条件の把握

基礎形式と支持地盤の選定

基礎構造の諸元・材料定数の設定

限界値・応答値の算定

設計用限界値・設計用応答値の算定

要求性能の確認

第3者機関による確認と評価

図-4.4 性能設計における基礎構造の設計フローチャート

(出典:㈱総合土木研究所「基礎工5月号(第 30 巻,第 5号,通巻 346 号)」p.72,2002.)

要求性能の設定

設計与条件・施工与条件の把握

予想される土質・基礎工学的問題点の抽出

可能な基礎構造の想定

土質・基礎工学的問題の基本検討

比較検討対象とする基礎構造の抽出

基礎構造の略設計

基礎構造の適用性の比較検討(費用対効果)

基礎形式と支持地盤の選定

図-4.5 基礎構造計画フローチャート

(出典:㈱総合土木研究所「基礎工5月号(第 30 巻,第 5号,通巻 346 号)」p.72,2002.)

76

図-4.6 支持地盤の深度と適用可能な基礎形式,及び検討事項

(出典:日本建築学会「建築基礎構造設計指針」,p.58,2001.より抜粋及び加筆)

1)基礎形式について

計画地の地盤は,表層部の深度 19~20m 付近までは,沖積層(Ac1,As1,Ac2)が分布

し,以深に洪積層として粘性土層(Dc)や砂質土層(Ds,Dg)が概ね互層状に堆積する。

ここで,構造物の基礎工を考えた場合,表層部の沖積層を支持層とした浅い基礎を

採用する際には,地盤の許容支持力と載荷される構造物の荷重による地盤の変形に関

する検討を行い,適切に許容地耐力を評価する必要がある。

77

標高(m) 標高(m)

№1

N値

№2

N値

埋土層(Bs)沖積第1粘性土層(Ac1)

沖積第1砂質土層(As1)

沖積第2粘性土層(Ac2)

洪積第1粘性土層(Dc1)

洪積第1砂質土層(Ds1)

洪積第1礫質土層(Dg1)洪積第2粘性土層(Dc2)

洪積第2砂質土層(Ds2)洪積第3粘性土層(Dc3)洪積第3砂質土層(Ds3)

洪積第4粘性土層(Dc4)

洪積第4砂質土層(Ds4)

洪積第5粘性土層(Dc5)

よって,構造物の必要性能にもよるが,規模の大きな構造物や,重要度の高い構造

物の支持層としては不適と考えられ,将来的に安全に構造物を支持し得る支持層とし

ては,洪積層に求める必要があるものと考えられる。

その場合,基礎形式としては杭基礎の採用となるが,表層部で確認されたAc2層は,

現況において概ね過圧密状態にあることが明らかとされており,一般に軟弱地盤で問

題となる杭のネガティブフリクションによる杭体への付加応力の発生はないものと

思われる。

2)支持層について

No.1 地点では G.L.-39(m)以深,No.2 地点では G.L.-40(m)以深の洪積第 4砂質土層

(Ds4)は,N≧60 以上が連続して確認され,耐震上の基盤となり得る完全支持層と評

価される。

この洪積第 4砂質土層(Ds4)は,No.1 地点では G.L.-53(m)付近まで連続して厚い層

厚で堆積する砂質土層である。

計画構造物の規模や構造等を総合的に評価し,合理的な基礎工の計画を図られたい。

図-4.7 地盤構成と支持層

78

4.4 液状化について

液状化した地盤は,支持力を完全に失ったり,見掛けの剛性が低下することで,直

接基礎の沈下と傾斜を引き起こす。

また,液状化,側方流動地盤で生じる動的,及び残留水平変位と沈下は,杭基礎の

被害につながることもある。

擁壁,地下構造物については,液状化により土圧が増加し,これに伴う被害が発生

することもある。

さらに,液状化した土は,水の約 2倍の単位体積重量を持つ液体のようにふるまう

ため,これより単位体積重量が小さい地中構造物は,浮力の増加と摩擦力の減少によ

り浮き上がる被害が発生する。

このような被害を防止するために,液状化地盤の基礎設計においては,液状化発生

の可能性予測に加え,それに伴う地盤剛性や地盤反力の低下,地盤変形の増加,土圧,

浮力,摩擦力の変化などを把握し,その影響を適切に考慮し,必要に応じて適切な対

策が必要となる。

(1)液状化判定の手順

液状化の判定は,「日本建築学会:建築基礎構造設計指針 2001 年 10 月改訂」に従い,図

-4.8 に示す手順で行う。

図‐4.8 液状化判定の手順

液状化の程度の評価

柱状図及び土質試験結果の整理

液状化の判定を

行う必要がある

土層の判別

検討は行わない 不要

各深さにおける液状化発生に対する

安全率 Flを求める。(式-4.3)

検討地点の地盤内の各深さに発生する等価

な繰返しせん断応力比を求める。(式-4.1)

補正 N値(Na)を求める。

(式-4.2)

補正 N 値に対応する飽和土層の液状

化抵抗比 R=τl/σz´を求める。

79

① 一般に地表面から 20m 以浅の飽和した沖積層。

② 細粒分含有率Fcが 35%以下の土。

③ 埋立地盤など人工造成地盤では,細粒分含有率が 35%以上

の低塑性シルト,液性限界に近い含水比を持ったシルトな

ど。

粘土分(0.005mm 以下の粒径をもつ土粒子)含有率が 10%

以下,または塑性指数が 15 以下の埋立,あるいは盛土地盤。

(出典:日本建築学会「建築基礎構造設計指針」,p.62,2001.より抜粋,加筆)

(2)液状化する土層

地下水面下における飽和砂質土層は,地震時における液状化発生の可能性について

検討する必要性がある。

「日本建築学会:建築基礎構造設計指針 2001 年 10 月改訂」によると,液状化の判定を

行う必要がある土層として次の条件が示されている。

液状化の判定を行う必要がある土層

ここで,液状化判定が必要な土層の判別は,深度 20m以内の室内土質試験を実施し

た土層を対象層とし,物理的特性を表-4.19 に示した。

これによれば,No.2 地点の As1 層,及び Ac2 層の一部については,液状化判定が必

要と判定される。

表-4.19 液状化判定が必要な土層の判別

地層名 試料番号

No.

深 度

G.L.-(m)

自然含水比

wn(%)

液性限界

wL

細粒分含有率

Fc(%) 液状化判定の必要性

As1

1-1 2.15~2.45 - - 45.2 細粒分含有率が 35%以

上のため不要

1-2 4.15~4.45 - - 39.3 細粒分含有率が 35%以

上のため不要

2-1 2.3~3.5 35.4 NP 29.0 細粒分含有率が 35%以

下のため必要

Ac2

2-2 7.0~7.8 50.4 40.2 66.8 細粒分含有率が 35%以

上のため不要

2-3 10.15~10.45 - - 34.1 細粒分含有率が 35%以

下のため必要

2-4 12.0~12.8 76.5 61.6 99.3 細粒分含有率が 35%以

上のため不要

80

(3)液状化の危険度の予測

液状化危険度の予測は,次の a)~c)により行う。

a) 検討地点の地盤内の各深さに発生する等価な繰返しせん断応力比

dz

zn

z

d

g

max … 式-4.1

記号 τd:水平面に生じる等価な一定繰返しせん断応力振幅(Kpa)

σ’Z:検討深さにおける有効土被り圧(鉛直有効応力)(Kpa)

γn:等価な繰返し回数に関する補正係数で,γn=0.1(M‐1)

ただし,Mは地震のマグニチュード。

αmax:地表面における設計用水平加速度(cm/s2)

g:重力加速度(980cm/s2)

σZ:検討深さにおける全土被り圧(鉛直全応力)(Kpa)

γd:地盤が剛体でないことによる低減係数で,(1‐0.015z)

zはメートル単位で表した地表面からの検討深さ。

b) 各深さにおける補正N値(Na)は,次式を用いて計算する。

Na=N1+ΔNf … 式-4.2

N1=CN・N

CN= z /98

記号 Na:補正 N値

N1:換算 N値

ΔNf:細粒土含有率に応じた補正N値増分で,図-4.9 による。

CN:換算N値係数(σ’Zの単位は Kpa)

N:とんび法または自動落下法による実測 N値

c) 液状化抵抗比の算定

図-4.10 のせん断ひずみ振幅 5%曲線を用いて,補正N値(Na)に対応する飽和土

層の液状化抵抗比τl/σ’zを求める。ここで,τlは液状化抵抗である。

d) 安全率Flの算定

各深さにおける液状化発生に対する安全率Flを次式により計算する。

d

l

z

d

z

l

Fl

… 式-4.3

81

図-4.9 細粒分含有率とN値の補正係数

(出典:時松孝次(1997),引用:建築基礎構造設計指針(2001),p.63)

図-4.10 補正N値と液状化抵抗,動的せん断ひずみの関係

(出典:時松,吉見(1986),引用:建築基礎構造設計指針(2001),p.63)

82

(4)算定条件

液状化の判定は,表-4.20 に示す条件で行った。

表-4.20 算定条件

地上面における設計用水平加速度 損傷限界検討用 200 cm/s2

終局限界検討用 350 cm/s2

マグニチュード 8.0

単位体積重量(kN/m2) 表-4.11 の値

細粒分含有率(%) 表-4.19 の値

As1 層の液状化抵抗比 R RL20=0.284(試験値)

(5)算定

算定結果は,巻末資料とした。

算定結果を図-4.11~図-4.14 に示す。

(6)算定結果

求められた安全率 FLが,1より大きい場合は液状化が発生する可能性はないものと

判定し,逆に 1以下の場合は発生の可能性があり,値が小さいほど発生する危険度が

高いと判定される。

算定結果,水平加速度が 200(cm/s2)の場合には,As1 層で FL=1.165~1.779 と 1 以

上を示す。

水平加速度が 350(cm/s2)の場合には,As1 層で FL=0.665~1.016 が求められ,1 以

下を示すところがある。

安全率 FLが 1 以下の場合には,次式より PL値を求める。

表-4.21 PL値による液状化危険度判定区分 (岩崎ほか(1980)に加筆)

PL値 液状化の危険度

0 液状化危険度は極めて低い。液状化に関する詳細な調査

は不要

~5 液状化危険度は低い。特に重要な構造物に対して、より

詳細な調査が必要

5~15 液状化危険度がやや高い。重要な構造物に対してはより

詳細な調査が必要。液状化対策が一般には必要

15~ 液状化危険度が高い。液状化に関する詳細な調査と液状

化対策は不可避

No.1 地点の PL値は 2.54,No.2 地点では 3.49 が求められ,表-4.21 の危険度判定区

分では,“液状化の危険度は低い”と評価される。

よって,地盤全体としては,液状化に関する危険性は低いものと考えられる。

83

83

図-4.11 液状化簡易判定結果 No.1 200gal

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図-4.12 液状化簡易判定結果 No.1 350gal

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85

図-4.13 液状化簡易判定結果 No.2 200gal

85

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図-4.14 液状化簡易判定結果 No.2 350gal

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(7)液状化発生の履歴

計画地周辺の液状化履歴を図-4.15 に示した通り,関東大震災(1923)の際に確認さ

れた液状化発生箇所が多く散在する。

しかし,液状化の安全率の計算結果においては,地盤全体としては液状化が発生す

る危険性は低いものと評価された。

計画地周辺における液状化履歴は多く存在するものの,地盤として液状化を発生さ

せる可能性は少ないものと考えられ,また,仮に発生したとしても,それによる被害

は軽微であると思われる。

なお,今後の構造物等の設計において,液状化に関する問題が重要な要因となる場

合には,地盤の応答を考慮した液状化解析等による詳細な検討が必要といえる。

図-4.15 調査地周辺の液状化の発生履歴

(出典:若松加寿江「日本の地盤液状化履歴マップ 745-2008」2011.)

―以 上―

調査地