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23 「夜間」の事故は、死亡事故になりやすい… 昼間にはない特有の危険がいくつも潜在している… 「夜間(日没から日の出まで)」に発生した交通事故は、全国で年間およそ10 万件に および、交通事故全体の 4 分の 1 以上を占めています。また、死亡事故に限って みると、その半分が「夜間」に発生しており、なかでも 「対歩行者」事故や「車両単 独」事故が多く、「夜間」の事故は「昼間」の事故に比べ、死亡事故になる確率が 3 倍 近くも高い―という大きな特徴があります。 車のライトや街灯などの限られた照明を頼りに運転する夜間走行には、昼間には ない特有の危険が潜在しています。たとえば車のヘッドライトは、「下向き(ロー ビーム)」だと40メートル前方の道路上にある障害 物が確認できる程度―というのが照射距離の限界で す。そのため、道路脇にいる横断歩行者などは、前 方 30 メートルくらいに接近しないと発見しにくく、 実際、夜間の横断歩行者との事故のほとんどは「下 向き」ライトで走行しているときに発生しています。 (警察庁交通局「ライト・ハイビーム(上向き)での交通死亡事故件数」) 一方、ライトを「上向き(ハイビーム)」にすると、 100 メートル前方の道路上にある障害物を確認でき る程度になるため、先行車や対向車がいるとき以外 は、「上向き」ライトで走行しましょう。 しかし、「上向き」ライトでも、左右の照射範囲には限りがあり、夜間の運転視界 は昼間に比べて極端に狭く、照射距離内でもライトが行き届かない道路右側部分 の暗がりから出てくる横断歩行者などを発見しにくい―という危険があります。 さらに、車のライトは照射方向が固定されているため、右・左折時やカーブなど を走行するときには、あらかじめ進行方向を照射することができず、安全確認が 困難になる―という危険があります。 上向きライト(ハイビーム)の視界 下向きライト(ロービーム)の視界 右・左折時には、側方を照射 できないため、横断歩行者な どを見落としやすい… 4 「夜間」の交通事故を防止する

4「夜間」の交通事故を防止する25 「夜間」の事故防止のポイント 1 4 3 2 道路前方右側の暗がりからの 横断歩行者を想定する 先行車や対向車が

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    ■「夜間」の事故は、死亡事故になりやすい…

    ■昼間にはない特有の危険がいくつも潜在している…

    ★「夜間(日没から日の出まで)」に発生した交通事故は、全国で年間およそ10 万件におよび、交通事故全体の4 分の1 以上を占めています。また、死亡事故に限ってみると、その半分が「夜間」に発生しており、なかでも「対歩行者」事故や「車両単独」事故が多く、「夜間」の事故は「昼間」の事故に比べ、死亡事故になる確率が3倍近くも高い―という大きな特徴があります。

    ★車のライトや街灯などの限られた照明を頼りに運転する夜間走行には、昼間にはない特有の危険が潜在しています。たとえば車のヘッドライトは、「下向き(ロービーム)」だと40メートル前方の道路上にある障害物が確認できる程度―というのが照射距離の限界です。そのため、道路脇にいる横断歩行者などは、前方30メートルくらいに接近しないと発見しにくく、実際、夜間の横断歩行者との事故のほとんどは「下向き」ライトで走行しているときに発生しています。

    (警察庁交通局「ライト・ハイビーム(上向き)での交通死亡事故件数」)

    ★一方、ライトを「上向き(ハイビーム)」にすると、100メートル前方の道路上にある障害物を確認できる程度になるため、先行車や対向車がいるとき以外は、「上向き」ライトで走行しましょう。

    ★しかし、「上向き」ライトでも、左右の照射範囲には限りがあり、夜間の運転視界は昼間に比べて極端に狭く、照射距離内でもライトが行き届かない道路右側部分の暗がりから出てくる横断歩行者などを発見しにくい―という危険があります。

    ★さらに、車のライトは照射方向が固定されているため、右・左折時やカーブなどを走行するときには、あらかじめ進行方向を照射することができず、安全確認が困難になる―という危険があります。

    上向きライト(ハイビーム)の視界

    下向きライト(ロービーム)の視界

    右・左折時には、側方を照射できないため、横断歩行者などを見落としやすい…

    4「夜間」の交通事故を防止する

    第2章 安全運転を確かなものにするために

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    ★そうした危険があるにもかかわらず、特に街なかでは、街灯などの照明が多いこともあり、夜の暗さが実感できず、昼間と大差なく見えているつもりになりがちです。しかし、実際に見えているのは限られた範囲の断片的な情景で、その断片的な情景と、昼間の運転で積み重ねられた経験をもとに、想像的に状況を判断しているにすぎません。

    ■夜間の走行

    ■灯火

    ●夜間は視界が悪くなるため、歩行者や自転車などの発見が遅れます。また、速度感が鈍り、速度超過になりがちです。その上、夜間は、過労運転や酒酔い運転をする者や、酔って歩く者などがいたりするので、昼間より速度を落として慎重に運転しましょう。少しでも危ないと感じたときは、まず速度を落とすことが大切です。

    ●視線は、できるだけ先の方へ向け、少しでも早く前方の障害物を発見するようにしましょう。

    ●夜間、道路を通行するときは、前照灯、車幅灯、尾灯などをつけなければなりません。昼間でも、トンネルの中や濃い霧の中などで50メートル(高速道路では200メートル)先が見えないような場所を通行するときも同じです。

    ●前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして、歩行者などを少しでも早く発見するようにしましょう。ただし、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。

    ●交通量の多い市街地の道路などでは、前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう。

    ●見通しの悪い交差点やカーブなどの手前では、前照灯を上向きにするか点滅させて、ほかの車や歩行者に交差点への接近を知らせましょう。

    交通の方法に関する教則 第6章第3節1(一部抜粋・102ページ参照)

    交通の方法に関する教則 第6章第3節2(一部抜粋・102ページ参照)

    第2章 安全運転を確かなものにするために

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    「夜間」の事故防止のポイント

    1

    4

    3

    2

    道路前方右側の暗がりからの横断歩行者を想定する

    先行車や対向車がいるとき以外は、

    「上向き」ライトで走行し、危険の早期発見に努める

    対向車が接近してきたら、その直後から横断してくる歩行者を予測する

    右・左折時は、側方の暗がりから横断する歩行者・自転車を想定する

    ●特に夜間は、道路の右側から横断してきた歩行者と衝突する事故が多発しています。

    ●対向車のライトに目がくらみ、その直後から横断してくる歩行者の発見が困難になります。

    ●交差点付近の歩道上にも目配りし、横断しようとする歩行者・自転車の早期発見にも努めましょう。

    ●特にカーブを「下向き」ライトで走行すると、その見通しは極端に悪くなります。

    第2章 安全運転を確かなものにするために