40
- 34 - 診断基準値 1)化学性の基準値や診断に必要な資料 作物に欠乏症または過剰症の出る各要素の土壌中含有量 (多量要素はmg/100g乾土、微量要素はmg/kg乾土) (高橋英一ら) 欠乏症の出やすい含量 健全土壌の含量 過剰害の出やすい含量 硝酸態 0.5mg以下 硝酸態 38mg 砂質土10mg 粘質土 20mg以上 アンモニア態 2.5mg以下 アンモニア態 515mg 20mg以上 * 有効態 820mg 有効態 30100mg 有効態 300500mg (P2O5) 以下 以上 置換性 10mg以下 置換性 1520mg 置換性 3040mg K2O(野菜は1020mg以下) 以上 カルシウム 置換性 100mg以下 置換性 200400mg 置換性 500mg以上 CaOマグネシウム 置換性 1015mg以下 置換性 2550mg MgO有効態 10mg以下 有効態 15mg以上 過剰害なし SiO2有効態 0.4ppm以下 有効態 0.8有効態 7ppm以上 B2.0ppm 易還元性 5060ppm 易還元性 100易還元性 300ppm以上 (Mn) 以下 250ppm 置換性 23ppm 置換性 48ppm 置換性 10ppm以上 以下 置換性 4.08.0ppm 置換性 810ppm Fe以下 可溶性 4.0ppm以下 可溶性 840ppm 可溶性 100ppm以上 Zn可溶性 0.5ppm以下 可溶性 0.8可溶性 5ppm以上 Cu1.5ppm モリブデン 有効態 0.03ppm以下 有効態 0.05Mo0.4ppm () 上記の数字はだいたいの目安であり、実際にはより高い含有量でも過剰害が起 きない場合がある。 *特にリン酸の場合は、作物の種類によって著しく異なるほか、栽培様式によっ て大幅に変動する。また、地域差(温度の高低)による相違も大きい。

5 診断基準値 1)化学性の基準値や診断に必要な資 …...- 39 - 水田土壌の 項 目 砂 丘 黒ボク土 多 湿 黒 ボ ク 灰 色 未 熟 土 黒ボク土 グライ土

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- 34 -

5 診断基準値

1)化学性の基準値や診断に必要な資料

作物に欠乏症または過剰症の出る各要素の土壌中含有量

(多量要素はmg/100g乾土、微量要素はmg/kg乾土) (高橋英一ら)

要 素 欠乏症の出やすい含量 健全土壌の含量 過剰害の出やすい含量

窒 素 硝酸態 0.5mg以下 硝酸態 3~8mg 砂質土10mg 粘質土

20mg以上

アンモニア態 2.5mg以下 アンモニア態 5~15mg 20mg以上

リ ン 酸* 有効態 8~20mg 有効態 30~100mg 有効態 300~500mg

(P2O5) 以下 以上

カ リ 置換性 10mg以下 置換性 15~20mg 置換性 30~40mg

(K2O) (野菜は10~20mg以下) 以上

カルシウム 置換性 100mg以下 置換性 200~400mg 置換性 500mg以上

(CaO)

マグネシウム 置換性 10~15mg以下 置換性 25~50mg

(MgO)

ケ イ 酸 有効態 10mg以下 有効態 15mg以上 過剰害なし

(SiO2)

ホ ウ 酸 有効態 0.4ppm以下 有効態 0.8~ 有効態 7ppm以上

(B) 2.0ppm

マ ン ガ ン 易還元性 50~60ppm 易還元性 100~ 易還元性 300ppm以上

(Mn) 以下 250ppm

置換性 2~3ppm 置換性 4~8ppm 置換性 10ppm以上

以下

鉄 置換性 4.0~8.0ppm 置換性 8~10ppm

(Fe) 以下

亜 鉛 可溶性 4.0ppm以下 可溶性 8~40ppm 可溶性 100ppm以上

(Zn)

銅 可溶性 0.5ppm以下 可溶性 0.8~ 可溶性 5ppm以上

(Cu) 1.5ppm

モリブデン 有効態 0.03ppm以下 有効態 0.05~

(Mo) 0.4ppm

(注) 1 上記の数字はだいたいの目安であり、実際にはより高い含有量でも過剰害が起

きない場合がある。

2 *特にリン酸の場合は、作物の種類によって著しく異なるほか、栽培様式によっ

て大幅に変動する。また、地域差(温度の高低)による相違も大きい。

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- 35 -

水稲・野菜類の葉中要素含量の

含有 乾 物 100g 中 g(%)

作 物 名 窒 素 リ ン 酸 カ リ カルシウム マグネシウム

程度 (N) (P) (K) (Ca) (Mg)

欠乏 0.02以下 0.3以下 0.06以下

水稲 適量 0.1~0.2

過剰

キュウリ 欠乏 2.5以下 0.2以下 1.5以下 2.0以下 0.3以下

適量 3.0~3.5 0.2~0.4 2.0~2.5 2.5~4.5 0.6~1.0

欠乏 2.0以下 0.1以下 3.0以下 1.5以下 0.3以下

トマト 適量 2.5~3.5 0.2~0.4 4.0~5.0 3.0~5.0 0.5~1.0

過剰 4.0以上 6.0以上

キャベツ 欠乏 2.5以下 0.2以下 1.2以下 1.8以下 0.2以下

適量 3.0~4.0 0.3~0.4 1.5~2.0 2.0~3.5 0.3~0.5

ハクサイ 欠乏 2.0以下 0.1以下 1.5以下 1.5以下 0.2以下

適量 2.5~3.9 0.2~0.4 1.8~2.8 1.5~3.0 0.4~0.5

ホウレンソウ 欠乏

適量

セルリ- 欠乏

適量

ネギ 適量 1.8~2.2 1.6~2.0

ダイコン 適量 2.5~3.0 5.0~6.2 1.0~1.5

ニンジン 適量 1.5~2.0 3.5~4.0 1.5~2.0

サツマイモ 欠乏 1.0以下 0.1以下

適量 1.5~2.0 0.3~0.6

ジャガイモ 適量

(注)(1)適量値は農作物の種類によって異なることはもちろんであるが、品種、土壌

術の推移によっても絶えず変動を続ける。従って、適量値には当然ある程度の

析した既往の資料を参考とした。従って、必ずしも厳密な基準値ではないが、

(2)水稲は収穫期の茎葉の分析値。ダイコン・ニンジン・サツマイモ・ジャガイ

(3)ケイ酸SiO2は水稲では5~8%以下で欠乏、13~15%が適量。

(4)塩素(Cl)は水稲では0.3%以上で過剰。トマトでは1,200ppm以上、キュウ

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- 36 -

欠乏・適量・過剰の判定基準 (高橋英一ら)

乾 物 1kg 中 mg (ppm)

ホウ素 マンガン 鉄 亜 鉛 銅 モリブデン ニッケル コバルト

(B) (Mn) (Fe) (Zn) (Cu) (Mo) (Ni) (Co)

1.0以下 20以下 0.5以下 0.3以下

3~5 80~200 30~100 5~15 0.5~4.0 2~15 5~15

10~40 30~50

15以下 10以下 50以下 8以下 5以下 0.1以下

20~50 20~100 100~200 20~30 6~15 0.5~1.0 1.0~8.0 0.01

10以下 5以下 100以下 15以下 3以下 0.5以下

15~50 30~200 100~350 20~50 10~20 0.5~1.0 1.0~10.0 0.05~0.2

100以上 350以上 30以上

5以下

15~30 100~200 20~60 5~13 1.0~2.0 0.01

15以下 1.0~8.0

20~50 15以上 8.5~12.0 1.0~2.0 0.01~0.1

10以下 10以下 0.1以下

15~20 50~250 50~150 10~15 1.0~2.0 1.5~2.5 0.1~0.3

15以下 20以下

30~70 50~150 150~200 5~15 0.1~7

15~30 50~90 50~120 5~15 0.1~0.2 0.3~0.7 0.01

40~70 30~100 40~70 5~10 0.5~2.0 1.0~1.5 0.2~0.5

20~60 200~300 50~90 5~10 0.2~0.5 0.1~0.5 0.01

20以下 3以下

20~50 100~300 20~50 3~10 0.5~1.0 0.1~0.3 0.01~0.05

30~80 100~200 100~250 10~25 0.2~0.5 0.8~1.5 0.01~0.07

のpH、施肥量および施肥方法などによっても大幅に変動する。また、品種改良や栽培技

幅を持たせた。また、欠乏・過剰の数値は実際に症状の現われているものを対象として分

利用者の便をはかって掲示を試みた。

モは可食部の分析値。その他の野菜は葉の分析値。

リでは800ppm以上で被害が出る。

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- 37 -

主な果樹の葉中無機要素含量

含有 乾 物 100g 中 g(%)

作 物 名

窒 素 リ ン 酸 カ リ カルシウム マグネシウム

程度 (N) (P) (K) (Ca) (Mg)

温州ミカン 欠乏 2.3以下 0.10以下 0.17以下 2.0以下 0.10以下

(普通温州) 適量 2.9~3.4 0.16~0.20 1.0~1.6 3.0~6.0 0.30~0.60

過剰 4.0以上 1.8以上 7.0以上

リ ン ゴ 欠乏 2.0以下 0.10以下 1.2以下 0.5以下 0.20以下

(国光) 適量 3.4~3.6 0.17~0.19 1.3~1.5 0.8~1.3 0.27~0.40

過剰

日本ナシ 欠乏 0.8以下 0.07以下 0.4以下 0.25以下

(7月下旬~ 適量 2.5 0.12~0.14 0.8~1.4 2.3~3.0 0.27~0.40

8月上旬採取) 過剰

モモ (大久保) 欠乏 2.0以下 0.12以下 0.8以下 0.25以下

(6月中旬採取) 適量 3.4~3.5 0.20 0.6~2.0 0.27~0.40

過剰

ブ ド ウ 欠乏 0.6以下 0.10以下 0.4以下 0.5以下 0.25以下

(デラウェア) 適量 2.5~2.9 0.15~0.19 0.7~0.9 0.7~1.2 0.26~0.50

(7月上旬~8月上旬採取) 過剰

甲州ブドウ 欠乏

適量 2.1~3.3 0.17~0.20 0.9~2.0 2.3~3.5 0.19~0.32

富 有 ガ キ 欠乏 1.5以下 0.015以下 0.5以下

(9月上旬採取) 適量 2.3~2.6 0.12~0.14 1.5

ク ル ミ 欠乏 1.8以下 0.003以下

適量 2.0~2.5 0.02~0.04

過剰

ビ ワ 欠乏 1.5以下 0.10以下 0.5以下 0.5以下 0.10以下

適量 2.0~2.5 0.12~0.20 1.0~1.8 0.8~1.5 0.15~0.30

(注)判定基準値は葉分析による。各数値は前表と同様に種々の外部環境・内部環境に

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欠乏・適量・過剰の判定基準 (高橋英一ら)

乾 物 mg/kg(ppm)

ホウ素 マンガン 鉄 亜 鉛 銅 モリブデン ニッケル コバルト

(B) (Mn) (Fe) (Zn) (Cu) (Mo) (Ni) (Co)

30以下 30以下 35以下 10以下 4以下 0.05以下

30~100 30~100 50~150 30~100 10~50 0.2~0.3 2.0~15 5~20

170以上 150以上 250以上 200以上 150以上 25~90以上 30以上

20以下 20以下 15以下

30~50 50~200 30~50 10~30 2.0~4.0 0.3~1.0 0.5~1.5

300以上

15以下

60~200 50~90 10~20 2.0~20 5~35 1.0~2.0

40以上

15以下 25以下 20以下

20~70 50~100 30~50 5~15 0.3~1.0 0.1~0.5

100以上

7以下 50以下 5以下

20~200 100~150 6~15 0.1~1.0 0.2~0.8

250以上

5以下

25~200 30~100 5~25 10~20 0.1~1.0

30以下

100~200 50~2000 10~30 20~30 0.2~0.6 0.1~0.3

25以下 15以下

100~250 20~30 20~50 0.1~1.5

1500以上

対応して変動するので、若干の幅を持たせて活用されたい。

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- 39 -

水田土壌の

項 目 砂 丘 黒ボク土 多 湿 黒 ボ ク 灰 色

未 熟 土 黒ボク土 グライ土 台 地 土

作土の厚さ 15~20 15~25 15~25 15~25 15~20

(cm)

次層のち密度 10以下 20以下 20以下 20以下 20以下

(mm)

pH(H2O) 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5~6.0

塩基置換容量 10以上 20以上 20以上 20以上 15以上

(me/100g)

石灰飽和度 40~50 40~50 40~50 40~50 40~50

(%)

苦土飽和度 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20

(%)

カリ飽和度 1~2 1~2 1~2 1~2 1~2

(%)

塩基飽和度 51~72 51~72 51~72 51~72 51~72

(%)

石灰/苦土比 4~2.5 4~2.5 4~2.5 4~2.5 4~2.5

苦土/カリ比 10 10 10 10 10

有効態リン酸 5~20 10~20 10~20 10~20 10~20

(mg/100g)

有効態ケイ酸 15~30 20~40 20~40 20~40 15~30

(mg/100g)

注)土壌の単位は土壌群を示す

各土壌群の砂質土は砂丘未熟土に準ずる

カリは最低15mg/100gとする

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- 40 -

改良目標値(水稲)

グ ラ イ 黄 色 土 褐 色 灰 色 グライ土 黒 泥 土 泥 炭 土

台 地 土 低 地 土 低 地 土

15~20 15~20 15~20 15~20 15~20 15~25 15~25

20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下

5.5~6.0 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5~6.0 5.5~6.0

15以上 15以上 15以上 15以上 15以上 20以上 20以上

40~50 40~50 40~50 40~50 40~50 40~50 40~50

10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20

1~2 1~2 1~2 1~2 1~2 1~2 1~2

51~72 51~72 51~72 51~72 51~72 51~72 51~72

4~2.5 4~2.5 4~2.5 4~2.5 4~2.5 4~2.5 4~2.5

10 10 10 10 10 10 10

10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20

15~30 15~30 15~30 15~30 15~30 15~30 15~30

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- 41 -

畑土壌の

項 目 岩 屑 土 砂 丘 黒ボク土 多 湿 黒 ボ ク 灰 色

未 熟 土 黒ボク土 グライ土 台 地 土

作土の厚さ 20~25 20~25 20~25 20~25 20~25 20~25

(cm)

心土のち密度 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下

(mm)

地下水位 - 60以上 - 60以上 - -

(地表面より) (cm)

pH(H2O) 6~6.5 6~6.0 6~6.5 6~6.5 6~6.5 6~6.5

EC(1:5) 0.1~0.2 0.1~0.2 0.2~0.5 0.2~0.5 0.2~0.5 0.2~0.5

(作付前)(mS/cm)

塩基置換容量 10以上 10以上 20以上 20以上 15以上 15以上

(me/100g)

石灰飽和度 40~50 40~50 40~50 40~50 40~50 40~50

(%)

苦土飽和度 普10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20

(%) 野15~20 15~20 15~20 15~20 15~20 15~20

カリ飽和度 普1~2 1~2 1~2 1~2 1~2 1~2

(%) 野1~10 1~10 1~10 1~10 1~10 1~10

塩基飽和度 普51~72 51~72 51~72 51~72 51~72 51~72

(%) 野56~80 56~80 56~80 56~80 56~80 56~80

石灰/苦土比 普 3 3 3 3 3 3

野 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6

苦土/カリ比 普 10 10 10 10 10 10

野15~2 15~2 15~2 15~2 15~2 15~2

有効態リン酸 普 5~20 5~20 10~20 10~20 10~20 10~20

(mg/100g) 野10~40 10~40 10~40 10~40 10~40 10~40

注)土壌の単位は土壌群を示す

各土壌群の砂質土は砂丘未熟土に準ずる

普は普通作物、野は野菜を示す

カリは最低15mg/100gとする

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- 42 -

改良目標値(畑作物)

赤 色 土 黄 色 土 暗赤色土 褐 色 灰 色 グライ土 黒 泥 土 泥炭土

低 地 土 低 地 土

20~25 20~25 20~25 20~25 20~25 20~25 20~25 20~25

20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下

- - - 60以上 60以上 60以上 60以上 60以上

6~6.5 6~6.5 6~6.5 6~6.0 6~6.5 6~6.5 6~6.5 6~6.5

0.2~0.5 0.2~0.5 0.2~0.5 0.2~0.5 0.2~0.5 0.2~0.5 0.2~0.5 0.2~0.5

15以上 15以上 15以上 15以上 15以上 15以上 20以上 20以上

40~50 40~50 40~50 40~50 40~50 40~50 40~50 40~50

10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20

15~20 15~20 15~20 15~20 15~20 15~20 15~20 15~20

1~2 1~2 1~2 1~2 1~2 1~2 1~2 1~2

1~10 1~10 1~10 1~10 1~10 1~10 1~10 1~10

51~72 51~72 51~72 51~72 51~72 51~72 51~72 51~72

56~80 56~80 56~80 56~80 56~80 56~80 56~80 56~80

3 3 3 3 3 3 3 3

2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6 2.6

10 10 10 10 10 10 10 10

15~2 15~2 15~2 15~2 15~2 15~2 15~2 15~2

10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20 10~20

10~40 10~40 10~40 10~40 10~40 10~40 10~40 10~40

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- 43 -

樹園地の土壌改良目標値(果樹)

項 目 岩屑土 黒ボク土 褐 色 灰 色 赤色土 黄色土 褐 色 灰 色

森林土 台地土 低地土 低地土

有効根群域の 60~80 60~80 60~80 60~80 60~80 60~80 60~80 60~80

深さ (cm)

有効根群域の 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下

ち密度 (mm)

地下水位 - - - - - - 100以上 100以上

(地表面より) (cm)

pH(H2O) 5~6 5~6 5~6 5~6 5~6 5~6 5~6 5~6

塩基置換容量 10以上 20以上 15以上 15以上 15以上 15以上 15以上 15以上

(me/100g)

石灰飽和度 35~50 35~50 35~50 35~50 35~50 35~50 35~50 35~50

(%)

苦土飽和度 4~8 4~8 4~8 4~8 4~8 4~8 4~8 4~8

(%)

カリ飽和度 1~7 1~7 1~7 1~7 1~7 1~7 1~7 1~7

(%)

塩基飽和度 40~65 40~65 40~65 40~65 40~65 40~65 40~65 40~65

(%)

石灰/苦土比 9~6 9~6 9~6 9~6 9~6 9~6 9~6 9~6

苦土/カリ比 4~1.1 4~1.1 4~1.1 4~1.1 4~1.1 4~1.1 4~1.1 4~1.1

有効態リン酸 10~30 10~30 10~30 10~30 10~30 10~30 10~30 10~30

(mg/100g)

注)土壌の単位は土壌群を示す

各土壌群の砂質土は砂丘未熟土に準ずる

カリは最低15mg/100gとする。

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- 44 -

障害成分等の基準値

元素 抽出法等 土壌の基準値 法律等 要因等

Cu銅 0.1N-HCl抽出 125ppm以下 土汚防止法 鉱山跡・工場排水・銅電線下

Zn亜鉛 N-KCl抽出 100ppm以下 - 鉱山跡・タイヤ・トタン・メッキ

強酸分解 120ppm以下 環 境 庁

Asヒ素 N-HCl抽出 15ppm以下 土汚防止法 鉱山跡・古い果樹園跡

Mnマンガン ヒドロキノン抽出 500ppm以下 - 河川上流の母材

B ホウ素 熱水抽出 7ppm以下 - 陶磁器の彩薬・過剰施肥

Cdカドミウム (精米中) 0.4ppm以下 食品衛生法 鉱山跡・ズリ流入田

(微量要素について詳しくは、作目毎の項を参照)

〈備考〉

上記成分の内、ヒ素を除く各成分は、いずれも土壌pHが低くなると吸収されやすくな

り、生育や流通上の問題を引き起こすので、ケイカル等のアルカリ性肥料の連用を徹底す

る。

ただし、必須成分の銅・亜鉛・マンガン・ホウ素は、土壌中の含量が少ない時、酸性側

で流亡による欠乏、アルカリ側(石灰質肥料の過剰)で難溶化による欠乏障害を発生する

ので、最適pHを守る。

カドミウム自然賦存量の多い地区は、ケイカル・ようりん等の連用を徹底すると同時に、

土壌を乾かさない管理を心掛ける(出穂期以降に好天が続く時には、刈り取り1週間前迄

落水しない還元状態を保つ)。カドミウムの吸収抑制対策技術の詳細については、「Ⅸ

環境保全 3水稲のカドミウム吸収抑制のための対策技術」に記述した。

ヒ素だけは他の成分と異なり、土壌が還元状態になる程障害がひどくなるので、やや節

水気味の管理を心掛ける。

カドミウムとヒ素が共存する地帯は、客土等の根本的対策を必要とするが、当面は、基

肥に硝酸化成抑制剤入り化成(AMやDd入り)を用い、生育の初期は節水気味の管理を、

そして出穂期以降は土壌を乾かさないよう努める。

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水質の診断基準値

項目 範囲 種類 法律等 外れる要因等

pH 水素イオン濃度 6.0~7.5 灌漑水 農水省令

(S.45) 工場排水・酸性雨

COD 化学的酸素要求量 6ppm以下 〃 〃 食品工場や家庭排水等

DO 溶存酸素 5ppm以上 〃 〃 還元剤・あおこの増加

T-N 全窒素 1ppm以下 〃 〃 工場や家庭排水・肥料

As ヒ素 0.05ppm以下 〃 〃 鉱山・工場排水

Zn 亜鉛 0.5ppm以下 〃 〃 鉱山・メッキ排水

Cu 銅 0.02ppm以下 〃 〃 鉱山・メッキ排水

EC 電気伝導度 0.3mS/cm以下 〃 〃 工場排水・塩水混入

SS 浮遊懸濁物質 100ppm以下 〃 〃 泥等の排出

Cl 塩素 1000ppm以下

(3mS/cm) 〃 〃 工場排水・塩水混入

Cd カドミウム 0.01ppm以下 障害 〃 鉱山排水・メッキ排水

Pb 鉛 0.1ppm以下 水質事業 〃 鉱山排水・バッテリー工場

Cr クロム 0.05ppm以下 〃 〃 皮革なめし・メッキ排水

CN シアン N.D. 〃 〃 メッキ排水

R-Hg 有機水銀 N.D. 〃 〃 工場排水

R-P 有機リン N.D. 〃 〃 工場排水

NO3-N 硝酸態窒素 10ppm以下 水道水質 過剰施肥・畜舎近辺

注)干ばつ時の水質について

塩水の影響は、減数分裂期や出穂期に大きく、出穂後日数が経過するに従ってその影響

は小さくなる。しかし、登熟期の干ばつ時には蒸散量が著しく、塩水が濃縮されてくるの

で、塩水が遡上してくる地域では水質に留意する。

通常、ECで3mS/cm以下、Cl濃度では1,000ppm以下を目安とする。ただし、緊急の場

合には、上記の約2倍の値を目処に、稲の生育状況やその後の天候を考慮して灌漑の判断

を行う。

また、ケイカルなどの土づくり肥料の施用は、塩水の影響を軽減する効果があるので、

塩水被害の常習地帯では、必ず土づくりを実施する。

【参考】 ECメ-タ-の読み(mS/cm)÷3×1000 ≒Cl濃度(ppm)

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生物系における微量元素の存在量

(越野正義)

元 素 植 物 体 飼料中の限界濃度 人間の血液

(ppm) (ppm) (μg/100ml)

As ヒ素 1(0.1~5);不要 不要;AS(III)の毒性高 49

B ホウ素 欠乏5-30;過剰+75 不要;毒性低 21

Br 臭素 15;不要、毒性低 不要;C Iと括抗 460

Cd カドミウム 0.2-0.8;不要、毒 不要;毒性中~高 4;腎臓に集積

Co コバルト 0.05-0.5;必須(<0.02>) 反すう運動で必須(0.07) 0.03;肝臓に多い

Cr クロム 0.2-1.0;不要、毒性中 必須、毒性低 2

Cu 銅 欠乏2-4;過剰+20 必須(1-10);毒性低 100

F フッ素 2-20;不要、50毒 歯、骨に有用 36;骨+1,000ppm

I ヨウ素 0.4;不要;10-20毒 必須0.1-1;毒性低 8~12

Mn マンガン 15-100 必須10-40;毒性低 3

Mo モリブデン 欠乏0.1;通常1-100;毒性低 必須<11;毒性中~高 2

Ni ニッケル 1;不要;過剰+50 不要;毒性低~中 1~8

Pb 鉛 0.1-10;不要;毒 不要;毒性中 27

Se セレン 0.02-2;不要;過剰50-100 必須(0.05-0.2);毒性高 20

Se ストロンチウム 5-3,000;不要;無毒 不要;歯、骨に有用 1

V バナジウム 0.1-10;過剰+10 不要;毒性中 1~2

Zn 亜鉛 S-15;過剰+200 必須(10-40);毒性低 650

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2)一般成分の診断や値の見方

(1) pH (ピーエイチまたはペーハー )水素イオン濃度:単位 なし

液の酸性(酢っぱい)やアルカリ性(いがらい)の程度を表す。pH7が中性で、これ

より値が小さい程、酸性が強く(値の1につき10倍)なり、逆に値が大きくなる程アルカ

リ性が強くなる。

測定は、比色法・アンチモン電極法・ガラス電極法等があり、ガラス電極法以外は誤差

が大きい(酸化還元や塩分等の土壌条件により±1前後)。

ガラス電極先端の薄膜は、極めて割れ易く、取り扱いに十分な注意を要するが、近年、

比較的堅牢な携帯用pHメーターが市販され、値の信頼度も高い。

土壌pHの測定は、乾土:純水(又は塩化カリ液)=1:2.5にて測定する。

純水法に対し塩化カリ液法のpHは0.5~1.0低いが、この差が小さい時は、塩類過剰のお

それがある。

なお、現場では、純水に代えて水道水を用いたり、土:液比の異なるEC浸出液(1:5)

でpHを測定することも、実用上、十分可能である。

比色法

アンチモン電極法

ガラス電極法

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作物別の最適pH

pH領域 穀類、工芸 野 菜

花 き 花 木

果 樹 作物、牧草 葉 菜 果 菜 根 菜 植 木

6.5~7.0 アルファルファ エンドウ ガ-ベラ アジサイ(赤) ブドウ

微酸性~中性領域 サトウキビ ホウレンソウ カスミソウ

ビ-ト スイ-トピ-

トルコギキョウ

6.0~6.5 アズキ アスパラガス インゲン コンニャク カ-ネ-ション バラ オウトウ

微酸性領域 オオムギ ウド エダマメ サトイモ キク キウイ

クワ カリフラワ- オクラ ヤマノイモ グラジオラス モモ

コムギ サニ-レタス カボチャ サイネリア

ソルゴ- シュンギク カンピョウ シクラメン

ダイズ セルリ- キュウリ スイセン

タバコ タカナ ササゲ スタ-チス

トウモロコシ ナバナ スイカ ストック

ハトムギ ニラ スイ-トコ-ン ゼラニウム

ホワイトクロ-バ- ネギ ソラマメ パンジ-

ライムギ ハクサイ トウガラシ フリ-ジア

レンゲ パセリ トマト ポインセチア

ハナヤサイ ナス マダガスカル

ブロッコリ- ピ-マン ジャスミン

ミツバ メロン ユリ

ミョウガ ラッカセイ

モロヘイヤ

レタス

5.5~6.5 イネ キャベツ イチゴ コカブ アンスリウム イチジク

微~弱酸性領域 エンバク コマツナ ゴボウ コスモス ウメ

チモシ- サラダナ ダイコン マリ-ゴ-ルド カキ

ヒエ チンゲンサイ タマネギ ナシ

レッドクロ-バ- フキ ニンジン ミカン

レンコン リンゴ

5.5~6.0 イタリアンライグラ

ス サツマイモ セントポ-リア クリ

弱酸性領域 オ-チャ-ドグラス ショウガ プリムラ パイナップル

ソバ ニンニク ブル-ベリ-

ト-ルフェスク ジャガイモ

ラッキョウ

5.0~5.5 チャ アナナス アザレア

酸性領域 シダ サザンカ

洋ラン サツキ

ベゴニア シャクナゲ

リンドウ ツバキ

ツツジ

アジサイ(青)

(農業技術体系より)

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- 49 -

(2) EC(イーシーまたはElectronic conductivity)電気伝導度

:単位(mS/cm=m℧ /cm ミリジーメンス又はミリモーと読む)

食品中の塩分濃度計と測定原理

は同じで、溶液中の塩分濃度を電

気伝導度(電流の通り易さ)で表

す。

原理が簡単なため、携帯型の簡

易な電気伝導度計が市販され、測

定値も正確である。

土壌の塩類濃度測定には、土

壌:純水=1:5法と1:2法が

あり、前者が一般的に用いられる。

塩類濃度障害を生じ易い硝酸イ

オンや塩素イオンは、水に溶け易

いので1:5法の測定値と1:2

法の測定値÷2.5の値がほぼ等しく

なるが、水に溶け難い石膏(硫酸

イオン)が多い場合は、差が大き

くなるので、施肥対策の参考にす

る。

塩の種類とEC

植物の種類と耐塩性

○果樹類

強:ナツメヤシ

中:ザクロ、イチジク、ブドウ、オリーブ

弱:グレープフルーツ、ナシ、アーモンド、アンズ、モ

モ、スモモ、リンゴ、オレンジ、レモン

○畑作物および野菜類

強:テンサイ、ガーデンビート、ミロ、ナタネ、緑葉カ

ンラン、棉

中:アルファルファ、アマ、トマト、アスパラガス、ホ

ックステイルミレット、モロコシ、大麦、ライ麦、

稲、カンタローブ、チサ、ヒマワリ、ニンジン、ホウ

レン草、カボチャ、タマネギ、トウガラシ、小麦

弱:ベッチ、エンドウ、セルリー、カンラン、朝鮮アザ

ミ、ナス、カンショ、バレイショ、緑豆

○牧草類

強:アルカリサカトン、ソールトグラス、ヌタルア

ルカリグラス、バーミュダグラス、ローデスグラ

ス、レスクグラス、カナダワイルドライ、バードレ

スワイルドライ、ウエスタンウイートグラス

中:ホワイトスイートクローバー、イエロースイー

トクローバー、ベレニアルライグラス、マウンテ

ンブローム、大麦(青刈用)、バーズフートトレフ

ォイル、ストロベリークローバー、ダリスグラス、

スーダングラス、ヒューバムクローバー、アルフ

ァルファ、トールフェスク、ライ (青刈用)、小麦

(青刈用)、オート(青刈用)、オーチャードグラス、

ブルーグラス、メドウフェスク、リードカナリー、

ビッグトレフォイル、スムースブローム、トール

メドウオートグラス、サイサーミルクベッチ、サ

ワークローバー、シクルミルクベッチ

弱:ホワイトダッチクローバー、メドウフォックステ

イル、アルサイククローバー、レッドクローバー、

ラジノクローバー、バーネット

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(3) CEC(シーイーシーまたは Cation Exchage Capacity)塩基置換容量

:単位(me(ミリイクイバレント)/100g)

土壌がカルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・カリウム(K)・ナトリウム(Na)・アンモ

ニア(NH4)等の塩基(アルカリの基)を握る手の数を表し、粘土や腐植が多い土壌程こ

の値が大きく(肥持ちが良く)なる。

砂の多い土壌では、優良粘土の客土・有機物の補給によって作土の保肥力を高める

(10me/100g 以上)か、深耕で土層全体の保肥力を高める。

また、CECに対して石灰等の含量が少ないと土が酸性、又、多過ぎるとアルカリ性

になり、CECの80%に塩基が付くと、pHはほぼ6.5となる。

(4) 塩基バランス

土壌CEC(100%)に対し塩基飽和度%は、Ca:Mg:K=50:20:5~10%が望ましく、

残りの10~15%は、施肥時のアンモニアに対する予備となる。この場合、苦土カリ比

や苦土石灰比も自ずと適正値になる。CECの1me/100gに対応する各酸化物重量は、

CaOが28mg・MgOが20mg・Kが47mgなので、代表的CECにおける望ましい塩基含量を以

下に示す。

また、土壌の仮比重(見かけの比重)を1.0、作土の深さを10cmとした時の一般的

な土づくり肥料のおおよその相当量(各成分が全く零の時の施用量に相当)を併記す

る。

実際の対策では、診断結果の不足分を資材に読み替えて投入する。

CEC(me/100g) 5 10 15 20 25 30

CaO(50%)

MgO(20%)

K2O(5% )

mg/100g

70

20

12

140

40

24

210

60

35

280

80

47

350

100

59

420

120

71

60%消石灰

50%水マグ

硫 加

kg/10a

120

40

25

230

80

50

350

120

70

470

160

95

580

200

120

700

240

140

(5) 中和石灰量

酸性が強い土壌のpHを6.5まで中和するのに必要な石灰の量で、前記の塩基状態

から石灰・苦土資材を投入するのが理想的であるが、単にpH矯正のみを目的とする時

は、中和石灰量を求めて、石灰を投入する。

現場的に中和石灰量を求めるには、一定量(100g等)の土壌に、消石灰を段階的(10

mg、20mg、40mg、80mg、100mg、150mg、200mg等)に加え、水を加えて混合後1~2日※

放置しpHを測定する。消石灰の施用量とpHの関係から、石灰施用量を求める(仮比

重1.0 作土10cmならmg/100g≒ g/m2=kg/10a)。

※炭カルや貝化石粉は、中和反応が遅いので1週間以降に測定

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(6) T-C 全炭素:単位(%)

土壌中の腐植か未熟な有機物が多い程高い値となるが、一般に腐植の含量(T-C%×

1.724=腐植%)を表す。

現場で、土壌の黒さから腐植の含量を診断するには、若干の経験が必要となるが、大ま

かには、乾土の灼熱減量から推定できる。

腐植により保肥・保水力が増大し、地温が高まり作物が作り易くなる。

(7) T-N 全窒素:単位(%)

土壌の全窒素は、腐植中に含まれるものが最も多く(90%以上)、その他に、施肥や腐

植の分解により生成した無機態窒素(植物が吸収できる窒素)が若干含まれる。

また、土壌の全窒素は、全炭素のほぼ1/10量含まれる(土壌腐植のC/N比≒10)。

腐植は徐々に分解しながら(高温の畑状態は早い)無機態窒素を植物に供給する(アン

モニア態窒素や硝酸態窒素 を無機態窒素という)。

(8) NH4-N アンモニア態窒素:単位(mg/100g)

水田(還元)状態で安定な無機態窒素で、土壌に吸着されるが、畑状態では、1~2週

間後に、土壌に吸着されない硝酸態窒素に変化する。なお、水田表面は酸化状態なので、

活着肥など表層施肥されたアンモニア態窒素は硝酸態窒素に変化し、すぐ脱窒(窒素ガス

として大気中に揮散)するため、肥効の切れが早い。

なお、硝酸化成抑制剤(AMやDd)を含有するアンモニア態窒素肥料は、地温にもよ

るが、畑状態で約1ヶ月間は安定である。

(9) NO3-N 硝酸態窒素:単位(mg/100g)

土壌に吸着されない窒素肥料のため、畑地の追肥に適するが、水田では窒素ガスとして

大気中に揮散し、無効となる部分が多い。畑地では、他の窒素肥料もこの硝酸態窒素にい

ずれ変化するので、有機・無機など肥料の形態を問わず過剰施肥を慎む。

過剰施肥からくる硝酸態窒素の土壌蓄積は、塩類濃度障害(ハウス等)を引き起こすだ

けでなく、野菜や地下水の硝酸態窒素濃度(乳児に有毒)を高めるため近年問題となって

いる。

近年、現場向きの硝酸イオン電極が市販されているので、栄養診断や塩類過剰の診断に

活用したい。

(10) Av-P2O5 可給態リン酸:単位(mg/100g)

トルオーグ(Truog)法やブレイ-2法等の内、主にトルオーグ法が用いられ、適正値

は10~30mg/100gとされているが、近年300mg/100gを超す値が各地の畑地(特に施設)で

認められる(比較的過剰害が発生しにくいため)。

これらのハウスでは、リン酸肥料(骨粉等)の施用を数年~10年間休止する(リン酸

無施用畝等を設けてチェックすると良い)。

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(11) Av-SiO2 可給態ケイ酸:単位(mg/100g)

現在、pH4酢酸ナトリウム抽出法により 可給態ケイ酸量の診断がなされているが、本

法は元来、ケイカル施用歴の無い地帯での資材要否の判定に適する診断法であるためケイ

カル連用圃場の診断には向かない。

ケイカル連用圃場の診断には、土壌溶液法(代かき状態の生土から、ろ過や遠心分離に

よって土壌溶液を採取し、混合還元剤を加え測定)や培養法(30℃、4週等で溶出するケ

イ酸量を測定)が望ましい。

現場診断には、止葉中のケイ酸を灰化法で測定するのが簡便で、実際の生育やいもち病

発生との関係も深い。

(12) Free-Fe2O3 遊離酸化鉄:単位(%)

土壌中の鉄の内、酸化還元の影響を受ける形態の鉄で、還元で溶ければグライ層の色に

なり、沈澱すれば赤錆び色(斑鉄の色)になる。秋落ち水田では、遊離酸化鉄が少なく

(酸化状態でも赤みが少ない)強還元下における硫化物の毒性から水稲の根を守ることが

できない。現場では、土壌の赤褐色の程度(腐植の多い時困難)から推定する。

(13) E.R.-MnO 易還元性マンガン :単位(mg/100g)

一般的に30mg/100g以上は、マンガン過剰の疑いが持たれるが、リン酸や苦土・pH等が適

正水準にあれば、50mg/100g程度までは、水稲に明らかな生育阻害(でき遅れ等)の認め

られないことが多い。ただし、畑転換等で土壌pHが低下した場合に、大豆葉等に黒色斑

点状の過剰症状を表す。現場では、土層中に褐色の斑点(スコップの削り跡は茶色の線

状)や集積層が観察されるがはっきりしない場合にはテトラベース試薬で青色反応を確認

する。

(14) Eh 酸化還元電位 :単位(±mV)

土壌の酸化還元状態を表す。土壌のpHが異なると電位も異なるので一般には、pH6に

換算した電位で表示する(Eh6)。

機種にもよるが、センサーの白金電極と土壌酸化還元電位の平衡には、10時間以上をも

要するとも言われ、正確を期する場合は、電極を土壌中に埋めっぱなして、必要に応じて

携帯型電位計を接続するのが良い。

十分に安定した電位は、一般土壌の赤い部分(酸化的)で 200mV以上、青い部分(グ

ライ層)で50mV~ -100mVを示す。

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(15) 単位や換算係数等

① 良く出る濃度及び含量等の関係

重量 1%=1g/100g=1,000mg/100g=10,000ppm

1mg/100g=0.001%=10ppm=mg%

1ppm=0.1mg/100g=1mg/1Kg=1g/1t=0.0001%

容量 1%=1ml/1dl=10ml/L=10L/1m3 圧力 Kg/㎡

1ppm=1ml/1m3 =1μl/L

降水量1mm/10a=1t/10a 作土量10cm/10a=100t/10a

② 古い農家が使う単位や輸入品に表示される単位 [長さ] [面積]

1尺=10寸=0.30303m 1坪=1歩=1平方間=3.3058㎡

1間=6尺=1.8182m≒1ひろ 1畝= 30歩 ≒1a

1フィート=0.3048 m 1反=300歩=991.74 m2 ≒10a

1ヤード=0.9144 m 1エーカー=4046.9㎡

1インチ=2.54cm

[体積] [重量]

1升=10合=1.804L 1貫=1,000匁=3.75Kg

1石=10斗=100 升 1斤=600g

1ガロン=4.546L(英)=3.785L(米) 1ポンド=453.6g

1ブッシェル=36.35L(英)=35.24L(米) 1オンス=28.35g

1バレル=159L 1カラット=0.2g

③ 酸化物等換算表 元素名 倍率 酸化物 元素名 倍率 酸化物

カルシウム × 1.4 = 石灰 ナトリウム × 1.35= ソーダー

マグネシウム× 1.67 = 苦土 ケイ素 × 2.14= ケイ酸

カリウム × 1.2 = カリ 鉄 × 1.43= 酸化鉄

リン × 2.29 = リン酸 マンガン × 1.29= 酸化マンガン

全炭素 × 1.72 = 腐植

窒素 × 1.22 = アンモニア(NH3)

窒素 × 4.43 = 硝酸(NO3)

④ 土壌の1meに相当する塩基量 石灰(CaO):28 mg 苦土(MgO):20 mg カリ(K2O):47 mg

(16) 現場で間に合う標準液や試薬 pH4標準液:フタル酸ナトリウム 10.21g/L

pH7標準液:リン酸第1カリウム3.4g+リン酸第2ナトリウム3.55g/L

EC標 準 液:NaCl(食塩)0.500g/L=EC1.0ms/cm(At20℃)

Eh標 準 液:フェロシアン化カリ1.23g+フェリシアン化カリ1.10g+塩加7.4g/L

(Zobell液) (黄血カリ) (赤血カリ)

Eh値=+428mv(At25℃ )

通常は、比較電極の電位(内部液で異なる)を差し引いた値の+150~250mVがメ

ーター部に表示されるので、その電位を加えると、ほぼこの値になる。

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- 54 -

3)物理性の診断基準や参考資料(主として畑作)

排水対策のための土壌診断基準

排 水 対 策

診 断 項 目 階 級 本暗きょ 補助暗きょ 心土破砕

(弾丸暗きょ)

地下水位 cm

(降雨7日目後)

30> ○ ○ -

細粒質 ○

30~60 △ 中粗粒・礫質△

基 細粒質 △ 細粒質 ○

60< 中粗粒・礫質× 中粗粒・礫質△

グライ層位 cm

30> ○ ○ -

本 細粒大 ○ ○

30~60 △ 中粗粒・礫質△ -

細粒質 細粒質 ○

項 60< 中粗粒・礫質× 中粗粒・礫質△

降雨後の停滞水h

(排水までの時間)

24< ○ ○

24> △ △

目 滞水なし × ×

作土の土壌水分 1> ○ ○

(降雨2~3日後 1~1.5 △ △

のpF値) 1.5< × ×

土壌硬度最高値

mm

25< ○ ○

25~19 △ △

19> × ×

ち密層の厚さ cm 10< - -

15~5 - ○

○ 必 要 × 必要でない

△ 必要な場合がある - この項目では判定しない

農業機械の走行性と土壌分級(農業機械学会・農業機械ハンドブック、昭44から作成)

走 行 難 易

車 輪 型 履 滞 型

階級 足沈下量 土壌分級 無負荷走行 無負荷走行

(cm) または けん引作業 備 考 または けん引作業

駆動耕耘 駆動耕耘

A 0~0.3 きわめて

きわめて

容 易 容 易 -

きわめて

容 易

きわめて

容 易

B 0.8~0.7 良 容 易 やや困難 ゴムタイヤ

作業限界

きわめて

容 易 容 易

C 0.7~2.0 やや不良 やや困難 困 難 水田車輪

容 易 やや困難 必 要

D 2.0~5.0 不 良 困 難 きわめて

施回困難 やや困難 困 難 困 難

E 5.0~9.0 きわめて きわめて

不 能 施回不能 困 難 きわめて

不 良 困 難 困 難

F 9.0以上 危 険 不 能 不 能 自力脱出 きわめて

不 能 不 能 困 難

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- 55 -

トラクタ作業の走行可能性の基準 (農林水産技術会議、1969)

注 すべり率:コンクリート路上または硬い平坦な土道基準とする

走行部沈下量:タイヤのラグ基部を基準とする。

貫入抵抗:頂角30°、底断面積2cm2の円錐を使用し、15cmの層に貫入する力の平均値

矩形板:10×2.5cmの矩形板を使用し、荷圧力1.6kg/cm2での沈下量で示す

コンシステンシー指数: 液性限界-現場含水比

で示す 塑性指数

走行判定基準は円錐貫入抵抗、矩形板沈下量、コンシステンシー指数のいずれかで判断する。

収穫の機械による地力変化(灰褐色土壌) (南. 1976)

作土の化学性 作土の物理性 水稲収量

(7月中旬) (9月中旬)

区 分 Eh6 活性Fe11 含水比 コンシス 透水係数 玄米量 指数

(mV) (mg) (%) テンシー (cm/秒) (kg/a) (%)

(指数)

バインダ導入田 -175 430 53.0 0.54 4.98×10-2 61.0 100

コンバイン導入田 -232 707 83.0 0.07 1.31×10-5 50.5 83

(無処理)

コンバイン導入田 -189 484 65.4 0.34 3.74×10-4 55.5 91

(深耕+心土破砕)

注 バインダ導入田:圃場整備後3年連続してバインダによる機械収穫田

コンバイン導入田: 〃 〃 コンバイン 〃

サイドドライブ式ロータリ作用深(矢田、1985) 中干しの強度と収穫時の土壌条件(上川農試)

作業幅(cm) 作用深(cm) 適応馬力(PS) 中干しの程度 収 穫 時 の 土 壌 状 態

120 12~13 18以下 pF 含水比 pF 含水比 Ic 硬度

130 12~13 18以下 (%) (%) (mm)

140 12~13 18~25 1.70 65.3 0.45 71.3 0.27 5.0

160 13~14 20~30 1.85 63.8 1.35 66.3 0.43 5.8

180 13~16.5 25以上 2.10 58.0 2.08 58.9 0.67 15.0

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野菜栽培土壌の物理性の診断基準 (河森)

有効根 根群域上部50cm 透 水 性

土壌 作 物 群域 有 効 根 群 域 の 条 件 土壌水分 の保水量 上部50cm 地下水

必要深 固相率% 空気率 粗孔隙 ち密度 張力 pF 大 中 小 最小透水 の高さ

cm以上 (仮比重) % % mm mm mm mm 係 数 cm

火 果 菜 40~50 <28 >15~20 >10 <20 2.0~2.5 >80 40~80 10-4 >50

山 (<0.75 ) cm/秒

灰 葉 菜 40 <28 >15~20 >10 <20 2.0~2.5 >80 40~80 10-4 >50

(<0.75 )

土 短根菜 40~50 <28 >15~20 >10 <18 2.0~2.5 >80 40~80 10-4 >60

(<0.75 )

壌 長根菜 80 <28 >15~20 >10 <18 2.0~2.5 >80 40~80 10-4 >80

(<0.75 )

砂 果 菜 40~50 <50 >15~20 >10 <20 2.0~2.5 40~80 <40 10-4 >50

(<1.40 )

質 葉 菜 40 <50 >15~20 >10 <20 2.0~2.5 40~80 <40 10-4 >50

(<1.40 )

土 短根菜 40~50 <50 >15~20 >10 <18 2.0~2.5 40~80 <40 10-4 >60

(<1.40 )

壌 長根菜 80 <50 >15~20 >10 <18 2.0~2.5 40~80 <40 10-4 >80

(<1.40 )

壌粘 果 菜 40~50 <53 >15~20 >10 <20 2.0~2.5 >80 40~80 <40 10-4 >50

(<1.35 )

質質 葉 菜 40 <53 >15~20 >10 <20 2.0~2.5 >80 40~80 <40 10-4 >50

(<1.35)

土土 短根菜 40~50 <53 >15~20 >10 <18 2.0~2.5 >80 40~80 <40 10-4 >60

(<1.35 )

壌壌 長根菜 80 <53 >15~20 >10 <18 2.0~2.5 >80 40~80 <40 10-4 >80

(<1.35 )

1)粗孔隙はpF1.5における空気率(%)であり、作土では15%以上が望ましい。

2)ち密度は山中式硬度計の読み(mm)

3)土壌水分張力は深さ10cmにおける状態

4)根群域の保水量は、(圃場容水量-毛管連絡切断点)mm。

土壌群別飽和透水係数の出現頻度分布

資料:昭和53年度土壌肥料関係専門別総括検討会議資料

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土壌三相に関する物理性の定義

土壌模型と若干の用語

全容積 Vt :自然状態のままで採土された土壌の容積全量をいい、通常100ccあるいは2000ccの試

料円筒を用いて採土される。

実容積 V :土壌の全容積中にしめる固相と液相との容積の和

全重量 W :実容積に対応する土壌の重量で、固相部分と液相部分の重量の合量。

固相容積 Vs:土壌の全容積中にしめる固相部分の容積。

固相率 Sv :固相容積Vsの全容積に対する百分率。

固相重量 S :固相部分の重量。

水分容積 VL :土壌の全容積の中にしめる水分の容積。

水分率 Mv :水分容積VLの全容積に対する百分率。

水分重量 M :液相部分の重量。

空気容積 VA:土壌の全容積中にしめる空気の容積。

空気率 Av :空気容積VAの全容積に対する百分率。

全孔隙 p :土壌の全容積の中にしめる空気容積と水分容積の和。すなわち、固相容積の相補的

な量。

孔隙率 P :全孔隙pの全容積に対する百分率。

飽水度 H :水分容積VLの全孔隙pに対する百分率。

容気度 U :空気容積VA の全孔隙pに対する百分率。

含水比 Mo :土壌水分の乾土重量当たり百分率。Mo=M/S

含水率 Mm :土壌水分の湿土重量当たり百分率。Mm=M/W

真比重 d :d=S/Vs≒2.6~2.7

仮比重 da :da=S/Vt

実比重 dA :dA =W/V

水分固相率Ls : Ls=Mv/Sv

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物理性の改良法(全面改良を原則とする)

表 有効土層 土 性 土 色 構 硬 水 分

土 不 足 不 良 不 良 造 不 良

の 不 度

厚 地 礫 盤 砂 重 黄 灰 良 過 過

土壌改良対策の種類 さ 下 色 ) 過 土壌改良法の概要

不 水 粘 ~ 青 非

足 位 層 層 赤 団 大 乾 湿

土 質 色 色 粒

有 完熟有機物

または炭化植物

ピ-トモス

細粒バ-ク堆肥

その他堆肥など

表層30cmの土壌を対象に1㎡当

機 たり100~150を混合する。植

質 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 採後も、マルチあるいは表面へ

土 のすき込みで、年1回ていど有

壌 機物を供給し、改良効果を累積

改 させる。

良 粗大有機物 表層30cmの土壌を対象に、1㎡

資 C/N比30程度 ○ ○ ○ 当たり100ていどすき込む。

材 (粗粒バ-ク堆肥など)

鉱 水湿潤性粘土 ○

1㎡当たり20~30kgを、表層15

物 (ベントナイト) ~30cmの部分に混合

質 非潤性鉱粉 ○

同上

土 (ゼオライトなど)

壌 合成高分子系

(EBaなど)

所定量(製品ごとに表示)を散

改 ○ ○ 布し、土壌とよく混合。散布す

良 るだけでよいものもある。

資 焼成多孔質岩 ○ ○

○ ○ ○

1㎡当たり50~100を、表層30

材 (パ-ライト、バ-ミュキュライト) cmの土壌を対象に混合

土 排 水 工

地下水位を0.6~1.2m以下に下

層 げる。暗渠排水

改 除 礫 工 ○ 深さ0.6mまでの礫層を除く

良 下層土破砕工 ○ ○ 深さ0.6mまでの盤層を破砕

客 土 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 良質の表土を必要な高さに客土

地 蔽 植 物 ○

○ ○ ○

○ ○ 植栽樹と生長と競合しないもの

(低木類がよい)

減水深の推移 (mm/h) (沼倉ら)

区 名 5月25日 5月28日 6月2日 6月10日 6月16日 7月11日

1 標準区 8.3 8.3 7.5 6.5 6.4 6.5

2 ベントナイト a当たり 100kg 2.9 2.8 2.5 2.1 - 3.5

3 ベントナイト a当たり 200〃 1.8 1.8 1.5 2.0 1.5 2.5

4 ゼオライト a当たり 60〃 7.3 7.8 8.3 6.3 - 5.0

5 ゼオライト a当たり 120〃 - 7.8 6.4 5.1 - 4.0

6 ゼオライト a当たり 180〃 7.1 6.9 7.5 7.0 6.4 5.0

7 客 土 a当たり 4t 7.4 5.0 6.6 4.8 4.3 4.0

(注)施用1年目

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作物生育に適当な土壌中の空気量

土壌空気要求度 作 物 名 空気量

最も空気量を多く ニンジン、ホウレンソウ、シュンギク、ハナヤサイ、 25%

要求するもの ブロッコリー、ラッカセイ、サツマイモ、ナタネ、

オオムギ類

比較的空気量を多 ニンニク、タマネギ、ヤマイモ、キャベツ、ハクサイ、 20%

く要求するもの カボチャ、ピーマン、カブ、ソバ、ダイズ、コムギ

比較的空気量の要 レタス、スイートコーン、インゲン、スイカ、キュウリ、 15%

求が少ないもの ナス、トマト、エンバク

最も空気量の要求 サトイモ、ショウガ、イタリアンライグラス、イネ 10%

が少ないもの

土壌の3相組成 (真下、1960)

土 壌 層 位 3 相 組 成 (%)

固体 水 空気

乾性土壌 A 28 22 50

B 33 30 37

湿潤土壌 A 24 43 33

(団粒状構造) B 30 47 22

湿潤土壌 A 24 58 18

(カベ状) B 30 60 10

土壌の構造と保水性

団粒構造の土壌は、各種の大きさの孔隙が万遍なく分布するため、透水性が良く(pF1.5以下が多

い)、その上、保水性も良い(pF1.5~3が多い)。細粒状の構造は、保水性が良くて、排水性が悪い。

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土壌の塑性限界と(PL)と液性限界(LL)

土壌の水分状態と、土に加えた時の(耕耘や代かき、練り返し等)の土壌の状態変化を表す水分値

を示す。

塑性限界(PL)以下の土壌は、砕け易く、液性限界(LL)以上の土壌は砕け難い。

塑性限界から液性限界の間は、作業を繰り返すと、土壌が練り返される。

含水比と砕土率(富山農試) 液性限界測定器(単位mm)

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6 畑地の土づくりと施肥診断

1)畑地土壌と地下水位 畑作物は、施肥以上に通気性(根の周りの酸素)と保水性(利用できる水)の向上が先

決で物理性の診断がポイントとなる。

サトイモ・ショウガ等を除いて、30~40cm以内に地下水や停滞水のないことが必

要で、比較的湿外に強いナスでも最低25cm、キャベツは35cm、本県に作付けの多

い大麦は45cm、大豆で30cm以下に水位を下げる必要がある。

通常の転換畑(除漏水田)では、耕盤による透水阻害が問題となり、作付け中に作溝の

停滞水が見られる地帯では、最低でも上記の深さまでの作溝(畝立)が必要となる。

また、大雨後の停滞水が半日程度で排除できる排水口の設置も必要である。

2)畑地土壌の有効水分(作物が利用できる水) 水田では、5cmの湛水によって55~70t/10aの有効水分が得られるのに対し、

畑地は、深耕で25cmの作土を確保し、十分潅水を行っても10~20t/10aの有

効水分しかない。

本県の転換畑は、全般に湿っていることが多く、一見有効水分が多いように思えるが、

実際には、多少の雨で耕盤上に水が停滞し(根が腐る)、旱ばつ時には下層からの毛管水

が遮断されるので、作物が利用できる水分は極めて少ない(十分湿った13cmの作土当

たり5~10t/10aの有効水分)。このため畑地では特に、保水力向上(深耕や良質

堆肥の補給)を図る必要がある。

ちなみに、圃場蒸発散量(作物葉+土壌表面)は、気温、湿度、風速、葉面積等で多少

変化するが、日射量の影響が最も大きく、1日当たり、真夏の晴天時に6t/10a、春

秋の晴天時で3t/10aで、その80%以上が日中に蒸散する(フェーン時を除いて夜

間や曇雨天時の蒸散はごく少ない)。

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3)畑地土壌の施肥診断のポイント ○畑地は、水田に比べ施肥量が多い(施肥量/吸収量が低い)ので、土づくり・緩効性肥料・

硝酸化成抑制剤入り肥料、前作の残効活用等により肥料の利用効率を高める。

○ガラスハウス等の恒久施設は、雨ざらしの露地とは異なる施肥体系が必要で圃場からの持出

相当量を施用する体型と有機物の補給対策(高温で消耗が激しい)が重要。

表1 畑土壌における養分収支

収支 内訳 備 考(要因等)

収入側 繰 越 ( 前 作 残

効)

施設で多い(露地でも多肥栽培の跡地は残る)

施肥 土づくり肥料、化成肥料(N・P・K)、堆肥等特殊肥料

潅水 水田に比べ天然供給量は少ない(数分の1)

支出側 作物による吸収 作物種と総収量、残さ処理の有無で大きく変化(下表参照)

水による流亡 露地は養分流亡が多く、恒久ハウスでは流亡が殆どない

差引残 後作への繰越 次回に施肥量を加減しないと養分の過不足が拡大(次頁)

露地栽培では、降雨や積雪等による養分流亡が大きいので、一般に示されている量の土づく

り肥料や化成肥料を継続施用しても、土壌養分の過不足はそれほど大きくならない。

一方、ガラスハウス等の恒久的施設において露地並みの施肥を継続すると、土壌養分の極端

な過不足が生ずるので注意が必要である(栽培開始の数年後からは、持出し分の補給に限った

施肥基準に切り替える。また、すでに過剰となった養分は当分施用を控える。)。

表2 作物が圃場から吸収する肥料成分量(kg/生鮮物1tあたり)

窒素 リン酸 カリ 石灰 苦土 窒素 リン酸 カリ 石灰 苦土

トマト 3.2 1.0 4.9 4.2 0.9 ダイコン 3.8 1.2 4.8 2.9 0.7

ナス 4.3 1.0 6.6 2.4 0.3 コカブ 5.6 2.6 7.8 4.0 0.6

ピーマン 5.9 1.1 7.4 2.5 0.9 ゴボウ 7.2 2.6 9.6 5.3 0.8

キュウリ 2.7 0.8 4.0 3.1 0.7 ニンジン 4.1 1.7 10.3 5.9 0.8

カボチャ 3.9 2.1 8.1 4.7 - セロリ 2.4 2.4 2.0 - -

メロン 3.7 1.5 4.5 5.0 1.7 ネギ 2.3 0.6 2.6 1.6 0.2

スイカ 3.0 0.8 3.7 1.8 0.3 タマネギ 2.0 0.8 2.2 0.9 0.3

ハクサイ 2.5 0.9 2.6 2.1 0.7 野菜平均 4.4 1.5 6.1 3.4 0.8

キャベツ 4.8 1.3 5.4 4.5 0.8 青刈ライ麦 5.3 2.4 6.3 1.2 0.5

ハナヤサイ 12.3 4.2 15.7 7.9 1.3 青刈エン麦 3.7 1.3 5.6 0.9 0.4

コマツナ 4.6 1.3 6.5 1.7 0.4 レッドクローバ 4.8 1.3 4.4 4.8 1.5

ホウレンソウ 5.3 1.3 6.9 1.3 1.7 ソルゴー 3.0 0.9 6.4 1.2 0.7

レタス 2.4 0.9 3.9 1.2 0.7 イタリアンライグラス 5.7 2.7 7.1 - -

イチゴ 6.2 2.1 8.3 5.1 1.7 その他平均 4.5 1.7 6.0 2.0 0.8

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- 63 -

表3 恒久的施設の施肥事例と土壌変化 (成分 kg/10a・年 2作)

窒素 リン酸 カリ 石灰 苦土

潅漑水中平均 1 0 1 4 1

牛糞堆肥 2t (T-N 19) 9 16 22 5 2

ようりん 40kg - 8 - 12 6

炭カル 100kg - - - 55 -

888化成 200kg 16 16 16 6 -

骨粉 100kg 4 20 - 25 -

供給合計 (40) 30 60 40 110 10

作物吸収 20~ 30 10~ 20 20~ 40 20~ 60 5~ 10

溶脱流亡 0 0 3~ 5 40~ 60 5~ 10

持出合計 20~ 30 10~ 20 23~ 45 60~120 10~ 20

収支 +土壌蓄積

- 減耗

± 0~+10

(T-N+10~+20)

+40~+50 -5~+17 -10~+50 ±0~-10

施設で数年この体系を継続すると、窒素、石灰、リン酸が蓄積する。リン酸カルシウム

は難溶性なので比較的過剰障害は出にくいが、条件により微量要素欠乏が発生。

冬期間に除覆を行うハウスでは、雨や雪による洗い流しがあるので露地の表を参照

表4 露地畑の施肥事例と土壌変化(上と同設計) (成分 kg/10a・年 2作)

窒素 リン酸 カリ 石灰 苦土

潅漑水中平均 1 0 1 4 1

牛糞堆肥 2t (T-N 19) 7 16 22 5 2

ようりん 40kg - 8 - 12 6

炭カル 100kg - - - 55 -

888化成 200kg 16 16 16 6 -

骨粉 100kg 4 20 - 25 -

供給合計 (41) 28 60 40 110 10

作物吸収 15~ 25 10~ 20 20~ 40 20~ 60 5~ 10

溶脱流亡 跡地残存分 0 3~ 5 40~ 60 5~ 10

持出合計 28 10~ 20 23~ 45 60~120 10~ 20

収支 +土壌蓄積

- 減耗

± 0

(T-N+10~+20)

+40~+50 -5~+17 -10~+50 ±0~-10

リン酸が蓄積する以外は、通常、大幅な養分バランスの崩れは少ない。

(ただし、窒素の過剰施肥が続くと塩基の流亡が増大し、苦土等が不足する恐れ)

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- 64 -

表5 来歴の異なる圃場に畑作物を導入する場合の化学性改善のポイント

土 壌 改 善 対 策

新開畑地土壌 強い酸性とリン欠で、殆どの畑作物は生育不良となるので、初年目は石

灰とようりんを増施(又は鶏糞を基準の倍量程度)し、以後数年は、基準

量の石灰とようりんを施用する。

その後、露地では苦土石灰 150kg 程度と化成肥料の施用、そしてハウス

では持出量の施肥(表2)に切替える。

赤土客土圃場

長く水田使用 水稲時における一部養分の蓄積によって、畑作物に極端な生育不良は出

にくいが、初年目は基準量の石灰とようりんを施用し、以降、露地では苦

土石灰 150kg 程度と化成肥料の施用、そしてハウスでは持出量の施肥(表

2)に切替える。

恒久的ハウス ○濃度障害を起こした土

障害が軽度の場合には、下層のやせた土と混合(2倍深耕)する。

湛水除塩で、硝酸態窒素はかなり減るが、他成分はあまり変わらな

い。

クリーニングクロップを作付けしても、そのまま鋤き込むと養分の増減

はなく、硝酸態窒素が若干減少するだけである。これに対して施設外に

持ち出した場合には、吸収量相当(表2~3参照)の各養分が減少す

る。

○正常な生育をしている場合

診断で不足養分があれば補給を行い、適正範囲に入ったら、以後、持

出相当量(表2)の施肥体系に変更する。

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- 65 -

4)堆肥等の有機物の使い方

(1) 有機物の品質判定法

有機物の品質は、窒素成分の放出パタ-ン・発芽や発根阻害成分の有無・含有成分のバラ

ンス等が問題となるが、一般に未熟な堆厩肥は、分解促進用の窒素質肥料と堆肥母材の肥効

が別々に現わることによる急激な肥効と窒素飢餓や分解途中の有害成分により生育が不安定

となり易い。

このため、現場では、有機物の種類と堆積期間や色・臭気・発酵期間の温度等、下図の評

点の高い部分について十分なチェックを行うと同時に、母材となった有機物の形が殆ど認め

られない程に分解が進んでいるか確かめる。

熟度と肥料成分の事例

水 分 窒 素 リン酸 カリ 備 考

未 熟 堆 肥 75.6 0.39 0.20 0.44 北海道農試

中 熟 堆 肥 76.6 0.48 0.26 0.50

完 熟 堆 肥 74.9 0.63 0.32 0.60

過 熟 堆 肥 71.5 0.47 0.24 0.46

新鮮きゅう肥 75 0.39 0.18 0.46 角田氏

中熟きゅう肥 77 0.50 0.26 0.60

完熟きゅう肥 79 0.58 0.30 0.53

堆肥の腐熟程度判定表(現地)

配点

項目

2点 5点 10点 15点 20点

色 黄色~黄褐色 褐色 黒褐色~黒色

形状 残る かなり崩れる 殆ど形が無い

臭気 糞尿臭が強い 糞尿臭が弱い 堆肥の臭い

水分(強く握る) 汁がでる かなり手に付く 手に付かない

堆積中の最高温度 50℃以下 50~60℃ 60~70℃ 70℃以上

堆積期間 家畜糞のみ 20日以内 20日~2 ケ月 2 ケ月以上

作物残渣と混合 20日以内 20日~3 ケ月 3 ケ月以上

木質物との混合 20日以内 20日~6 ケ月 6 ケ月以上

切り返し回数 2回以下 3~6回 7回以上

強制通気 なし あり

小計 点 点 点 点 点

合計点数 点 判定 (30 点以下未熟・31~80 点中熟・80 点以上完熟)

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稲および麦わらを原料とする堆肥の、およその1m3 当たり重量の目安量は、水分が 70%

程度とし次のように考えられる。

よく腐熟し、容積が約 20%以下に減った完熟物 400~500kg

容積が1/3に減った中熟物 300~400kg

容積が1/2にしか減っていない未熟物 250~300kg

表   各種堆肥腐熟度判定一覧表(静岡農試)

堆肥 備考

 腐熟度判定法

ゅう

ゅう

ゅう

紙ス

ラッ

ジ

ブラナクズ堆肥

都市ゴミコンポスト

泥コ

ンポ

スト

下水

汚泥

のみ

のコ

ンポ

スト

色 別 法 ○ ○ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ × × △ △ ・ ・ ×

臭 い に よ る 法 ・ ・ ・ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

手 ざ わ り に よ る 法 ○ ○ ○ ・ ・ ・ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ △ △ ×

豚 毛 ひ っ ぱ り 法 × × × × ○ × × ○ × × × × × × × × (a)

ネ ス ラ - 法 ・ ・ ・ × × × ・ ・ ・ ・ △ △ △ ・ ・ △

シ ゙ フ ェ ニ - ル ア ミ ン 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ △ △ △ × ・ △

品 温 測 定 法 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (b)

pH 測 定 法 ・ ・ ・ ○ ○ ・ ・ ・ ・ (×) ・ ・ ・ (×) ○ ・ (c)

EC 測 定 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (d)

水洗残渣物重量測定法 ◎ ◎ △ △ △ × ○ ○ ○ × × ○ × △ △ ×

水洗残渣物コンゴ-レッド染色法 △ △ △ △ △ × ○ ○ ○ × × △ △ △ △ ×

ポ リ 袋 法 × × × ○ ○ ○ × × × × × × × × × △

円形ろ紙クロマトグラフィ-法 ◎ △ ○ × ◎ ◎ × × × × ◎ × × ◎ △ △

塩 基 置 換 容 量 法 ○ ○ ○ △ △ △ △ △ △ ○ △ ○ △ ○ ○ △

炭 素 率 に よ る 法 ○ ○ ○ ○ × × ○ ・ ・ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×

ミ ミ ズ 法 ○ ○ △ △ △ △ ○ ○ ○ × △ △ △ △ △ △

発 芽 試 験 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △

幼 植 物 試 験 法 ○ ○ ○ ○ (○)(○) ○ ○ ○ ○○

(×) ○ ○ ○ ○ ・ (e)

追)花粉管阻害法、種子根試験法

(a) ただし、不適堆きゅう肥でも豚ぷんが入っておれば適用可能である。 (b) 実際に堆積を行う場合のみに適用可である。 (c) 極端なpHの堆肥チェックができる。 (d) 高濃度肥料成分や塩類のチェックが必要である。 (e) ECが高い堆きゅう肥は再検査が必要。

注)  ◎ 適用可能な最適な方法 × 適用不能   ○ 適用可能 (○) 一部きゅう肥について適用可能 ・ 判定が難しく他の方法も行う必要あり (×) 一部きゅう肥について適用不能 △ 適用可能と考えられるがデ-タ-不足

現場における判定法

理化学分析による判定法

生物判定法

一般堆肥きゅう肥(家

畜ふんのみ)

家畜ふん主体の堆積物(木質のみ)

木質資材主体の堆積物

その他

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一部のきゅう肥には、飼料中に添加された重金属が高濃度で含まれる場合があるので、大

量の連用を行う時には、きゅう肥の種類や施用量に留意する。

特に、下水汚泥の混入された堆肥資材は、重金属が高濃度になりやすいので、分析等でチ

ェックを行って使用する。

有機物による土壌構造の安定作用は、微生物の活動と関係が深いため、完熟有機物は、団

粒構造の安定作用がゆっくり永続きする。

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(2)有機物活用上の注意

近年、差別化商品の一部として有機栽培が取り上げられ、また、地下水・湖沼水質の汚濁

防止や低投入持続型農業を目指して、有機物の利活用が叫ばれている。

有機物の施用効果については、土壌の理化学性や生物性の向上による総合的な根圏環境の

改善が知られているが、有機物の分解速度と窒素の放出や取り込み特性によって土壌の改良

効果や肥効が大幅に異なるので、目的に応じて使い分ける必要がある(有機物の内、肥効の

速いものは肥料として用い、肥効の緩いものは地力増強に用いる)。

有機物の分解特性施用効果

初年目の分解特徴 施 用 効 果 連用に

N C、N分解速度 有 機 物 別 肥料的 肥沃度 有機物 よるNの

増 集 積 吸収増加

速い 大豆粕等、有機質肥料、

(年 60~80%) 鶏ふん、そ菜残渣、クロ-バ 大 小 小 小

- (C/N比 10前後)

N 中速 豚ぷん等 中 中 中 大

放 (年 40~60%) (C/N比 10~20)

出 ゆっくり 通常の堆肥類、牛ふん等 中~小 大 大 中

群 (年 20~40%) (C/N比 10~20)

非常にゆっくり バ-ク等分解の遅い堆肥類 小 中 大 小

(年0~20%) (C/N比 10~20)

C 速い わら類

(年 60~80%) (C/N比 50~100) 初マイナス 大 大 中

N N取り込み 後 中

取 Cゆっくり 水稲根、製紙かす、未熟

り (年 20~60%) 堆肥 初 小 中 中 小~中

込 N±0または (C/N比 20~140) 後 中

み 取り込み

群 C非常にゆっく オガクズ

り(年0~20%) (C/N比 200~ ) マイナス 小 中 マイナス~

N取り込み 小

有機物の分解は大きく分けて窒素を放出するものと窒素を取り込むものに大別される。ま

た、連用していくと窒素を取り込む有機物でも放出することがある。

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(3)代表的有機物の肥効

有機物中の肥料成分は、微生物の分解によって効き始めるので、低温時には肥効の発現が

遅れる。

① 大豆粕・鶏ふん・有機質肥料・レンゲ等肥効の速い有機物は、含まれる窒素の 70~

80%が施用した年に利用されるので、翌年への残効も少ない。

肥効パタ-ンは、施用後約1週間位から効き始めるので、化学肥料のやや緩効性のもの

に近い生育を示す。

なお、生鶏ふんは速効性のアンモニアを含むので、低温時でも肥効が現われるが、速

効性を含まない発酵鶏ふんは肥効が鈍く、窒素の 40%程度が利用されるものと推定さ

れる。

② 牛ふんは、含まれる窒素の約 30%が施用年に利用されると言われ、特に低温時には、

肥効が遅れる。分解が遅いので、単年施用でも残りの 70%からの肥効が翌年以降に持

続する。このため、牛ふんの連用を続けると、前年までの残効がどんどん増加して、施

用量によっては、水稲の生育が不安定になるので、2~3年はやや多め(3~4t)の

施用とし、以降は1t程度とするのが望ましい。

③ バ-クやモミガラは分解速度が非常にゆっくりしているので、保肥・保水力の拡大

には有効だが、肥料的効果は小さいか、逆に取り込む。ただし、中に鶏ふんや牛ふんを

多量に添加してある時には、それぞれの肥効が重なってくるので注意が必要である。

(初期に肥効が強く、半年から翌年以降は取り込みに回る。)

④ 家畜排せつ物堆肥1tを施用するとどうなるのか?

・ 醗酵鶏ふん1tには約30kg の窒素が含まれ、この肥効率は 70%なので、約21kg

の化学肥料窒素が一度に施用されたことに相当し、水稲では生育が不安定になる(特に

中期)ので、施用量は窒素成分で化学肥料の 1.4 倍にするとよい。

・ 牛ふん1tには約5kg の窒素が含まれ、この肥効率は30%以下なので、減肥しな

いか、または、1.5kg 相当の窒素分を減肥する。

しかし、数年連用を続けると、残効を含めた窒素供給量が4kg となるので、その分の

減肥が必要となる。ただし、低地力水田では、この窒素が追肥回数の削減に有効である。

・ 豚ぷんは、鶏ふん、牛ふんの中間ないしやや鶏ふんに近い肥効を示す。

⑤ モミガラ堆肥の腐熟

モミガラに石灰窒素・尿素などの窒素質肥料を添加して堆積腐熟したモミガラ堆肥は、

腐熟度の判断が難しく、分解が十分に進んでいないものを用いると、窒素飢餓など作物

の生育障害を起こす場合が少なくない。

モミガラ堆肥の腐熟程度を明らかにするため、表面の微細構造を走査型電子顕微鏡で

観察した(次頁)。3 ヶ月の堆積で、モミガラ内側の表層部の一部が分解し(図 1-a)、6

ヶ月の堆積では、表層部の大部分が分解し、内部への分解が進み始めていた(図 1-b)。

さらに 1 年間の堆積では、表層部が分解消失し、内部の分解も進んでいた(図 1-c)。堆

積期間が 2 年以上になると、内部の分解が進み、毛羽立つ状態になった(図 1-d)。一方、

モミガラの外側にある小突起状の組織には、ケイ酸が多量に含まれているため、分解し

にくく、1 年間の堆積でも元の形を保ったままであった(図 1-e)。2 年以上の堆積で外側

の一部が分解していた(図 1-f)。

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a 堆積3ヶ月

b 堆積6ヶ月

c 堆積1ヶ年

d 堆積2ヶ年以上

e 堆積1ヶ年(表面)

f 堆積2ヶ年以上

図1 モミガラ堆肥の表面構造

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モミガラ堆肥の炭素率(C/N 比)は、堆積開始から 9 ヶ月までは、50 前後で推移し、ほとんど

変化がみられなかったが、9ヶ月から 18 ヶ月にかけて C/N 比は急激に低下した。18 ヶ月以

降では、C/N 比の低下の度合は小さくなった。また窒素含有率は、炭素率が低下し始める9ヶ

月以降から微増した(図2)。

このように、モミガラ堆肥の堆肥化過程は非常にゆっくりと進行する。したがって、作物へ

の生育障害をさけるためには、少なくとも 1 年以上堆積した、よく腐熟したものを使う必要が

ある。モミガラの形そのものが長期間維持されるので、土壌の透水性や易耕性など物理理性を

改善する効果が高い。

図2 モミガラ堆肥の堆積腐熟に伴う全窒素および炭素率の変化

20

25

30

35

40

45

50

55

0 2 3 6 9 12 15 18 21 24 27

堆積期間(月)

炭素

率 (C/N比

)

0.5

0.7

0.9

1.1

1.3

全窒

素 (%)

炭素率

全窒素

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図4 硝酸態窒素溶脱量(2003~2006)(最大値-最小値)

0

5

10

15

20

25

30

堆肥無施用

牛堆60%代替

牛堆30%代替

汚泥・60%代替

汚泥・30%代替

NO

3-N(g/㎡

(4)化学肥料低減技術

(1)有機物(堆肥)の利用 有機質肥料は、施用後ゆっくりと

分解が進む。分解される過程におい

て有機物に含まれる肥料養分が無機

化されるため、有機物を施用するこ

とにより化学肥料の施用量を低減さ

せることができる。また、連用によ

り保水性の向上や、保肥力の増加な

ど土づくりの効果がある。

堆肥を適正に施用することにより、

作物収量の増収傾向があることが認

められている。これは堆肥から窒素、

リン酸、カリ等の多量要素や微量要

素が供給される他、上記に記述したように土壌の化学性や物理性、生物性の改善効果による。

表2 スイートコーンとダイコンの収量比

区名

スイートコーン(kg/a) ダイコン(kg/a)

2005 2006 2007 平均

(収量比)

2005 2006 2007 平均

(収量比)

堆肥無施用 163 146 156 155(100) 711 503 558 591(100)

牛糞堆肥60% 149 161 127 146( 94) 817 647 577 680(115)

牛糞堆肥30% 165 166 147 159(103) 788 567 604 653(111)

し尿汚泥60% 171 167 186 175(113) 736 592 525 618(105)

し尿汚泥30% 199 156 180 178(115) 803 623 452 625(106)

牛糞堆肥:籾殻牛糞堆肥

し尿汚泥:農業集落排水汚泥肥料

60(30)%:基肥の窒素代替率,堆肥無施用区はN=5.3kg/a

<環境負荷軽減効果>

堆肥を化学肥料代替として施用すること

により環境負荷を軽減させる効果が得られ

る。化学肥料は降雨により窒素分が地下に

浸透する量が多いこと、堆肥では有機物が

徐々に分解される緩効的な肥効特性により

地下に浸透する窒素分が少なくなるためで

ある。

図3 各堆肥の窒素無機化率

0

20

40

60

80

100

0 200 400 600 800 (日数)

(%)

牛糞籾殻堆肥 排水汚泥 排水汚泥(粒状) オガクズ牛糞

※福井農試内での堆肥埋込試験(オガクズ牛糞の 試験期間 1985~1986、その他堆肥は 2003~2004)

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(2)局所施肥 化学肥料を作物の根の周辺に集中的に施用する。畦内施肥もその一つで、局所施肥は全量

施肥料の20~30%減量できる。

夏まき年内取りキャベツなどで行われている。

(3)肥効調節型肥料の施用

速効性窒素肥料の欠点を補うため、CDU などの緩効性肥料(有機合成窒素化合物)が開

発され、その後、ロング肥料や LP コートという肥効調節型肥料が開発された。LP コート

のリニアタイプはその溶出が直線的なもの、ジグモイドタイプはその溶出が S 字形のもので、

これらのブレンド肥料は全量基肥用肥料として利用されている。

(4)その他 ①養液土耕栽培

土壌に培養液を流す栽培法で、1日に必要とするだけの水を与え、水が湿る範囲や肥料

の使い方を制限し、環境に配慮した栽培法である。普通栽培より20~30%減量できる。

②マルチ栽培

普通栽培より20~30%減量できる。

(5)葉面散布 葉面散布剤は、草勢の回復と生育促進、品質向上、収量増加などの目的に使用されている。

ア)湿害などで根腐れした場合や曇天続きで生育が停滞した場合

イ)風水害等の気象災害などに遭遇して、生育の回復を図る場合

ウ)石灰や苦土等の微量要素が欠乏した場合

エ)養分不足による生育不良を早急に回復させる場合

*留意点

ア) 散布濃度を間違えると薬害を出し、逆効果となる場合がある。

イ) 特に気象災害を受けたときや高温時は薄めの濃度で散布する。

ウ) 散布面積は、応急対策のため、適正な施肥を行う。

葉面散布の方法としては、圧力の強い噴霧器で均等に付着するように散布し、葉面がよ

く濡れる程度とする。

主な葉面散布剤と散布濃度

肥料要素 散布剤 散布濃度(倍)

液肥 液肥特 2 号

トミー液肥

サンピ833等

(10-4-8)

(10-4-6)

( 8-3-3)

300~500

300~500

300~500

カルシウム 塩化カルシウム

カルプラス

カルハード

パフォームCa

カルシウム80%

カルシウム11%

カルシウム 11%、ホウ素

1.5%

200~500

400~500

500~1,000

500~1,000

マグネシウム 塩化マグネシウム 200~500

ホウ素 ホウ砂 200~500