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1997年度,卒業論文,加藤佳寿美
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U9704早13田 大学理工学部建築学科卒業論文
指導教授 渡辺仁史
建築空間の音をみる
加藤 佳寿 美
Department of Architecturc,School of Sciencc and Engincering, Waseda University
И
メ鮨来絆
一楓購.一卜一0=
建築空間の音をみる
G94D051-9 カロ調黒1圭表「:遠
早稲田大学 渡辺仁史研究室
__二_J′′
5。 研究方法
はじめに
1。 研究 目的
建築 における音 に関する研究
3。 音のシミュレーション
3.1 音の可視化と可聴化
3.2 これまでの音の可視化例
4.研 究概要
"空間の音を見 る 図書館の音 を見 る"
5.1 音をみる
5.2 図書館の音をみる
5.3 音をみる方法
6。 結果
7.考察
8。 まとめ
参考文献
おわ りに
9
″
ヾ持や撫C歴器檬製
メ鰻漱絆 燃#一卜・00日
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿撫O肛側檬報
メ網来絆 楓購・卜・08
は|じ|め |‐ に
は じめ に
人は本来、五感全体で空間を把握している。しかし、実際には、人間にとって
視覚の果たしている役割は大きい。特に、自分のまわりにどのようなものが存在
して、自分はそれらとどのような関係にあるのかを知る、いわゆる環境理解のた
めには、視覚からの情報なしにその理解はたいへん困難である。そして、その視
覚情報優位の現代において、最もその影響を受けているのは視覚障害者であるだ
ろう。
その中で視覚とならんで、人間が情報を受け取る重要な知覚が、聴覚である。
人は日常、空気の振動によるたくさんの音に囲まれていて、無意識にそれらを
聴いて知覚している。しかし、聴覚は単純に音を聴くためだけでなく、音の方向
知覚などのように、音源がどこにあるのか、自分がどこにいるのか、というよう
な周囲の状況を認識するための道具としての本能的な機能を持っている。つまり
音というのは立体性を示唆する属性をそなえていて、聴覚による環境理解の大き
な可能性をもっているのである。したがって、本来視覚的な存在であると考えら
れていた建築も空間としてとらえるとやはり聴覚とも連動しており、またその視
覚的広がりも聴覚という存在によって、より3次元的な知覚を行えるようになっ
ている。
そこで、聴覚を一つの切 り口にして、音を導入することにより、視覚障害者の
空間想起の可能性を模索しつつ、音と建築空間について考えていくことにした。
ところで、遠近法の誕生により、3次元空間を 2次元の視覚情報に変換するこ
とが可能になり、今日、視覚の世界では、パースペクティプを使つて世界を疑似
的に再現している。そして、CGもその典型である。一方、聴覚の世界において
は、パースペクティプの様な手法はない。音というのはそれ自体が立体性をもっ
早稲田大学 渡辺仁史研究室
ヾ苺や撫O肛襴熙慨
メ需黎苺●撻#一卜・00耐
|は,じ,め1苺‐
ているものである。
私は、視覚的広がりとして捉えられてきた空間に対して、音を導入し、主体と
なる人物の背面方向の広がり、まだ見えない部分の推測、左右各側面の壁までの
距離や高さなどを聴覚的に記述することによって、立体感の体験という知覚を与
え、そこでの対位の強弱やニュアンス、微妙な差異を表現する有効な手段になる
のではないかと考えた。
しかし、「空間の要素 (形、スケール、主体からの距離)→聴覚情報」の方向
への変換を行うにあたり、形態を音へ変換する法則をどのように規定するかとい
う問題点が大きかった。このための基礎的なデータが現段階ではまだ十分得られ
ていない。そのため、音による空間体験の研究のための基礎研究がまず必要であ
る。
音は、基本的に音量・音質・明瞭度・残響時間などによって分類・評価されて
いる。そこで、これらの要素と建築空間との関係に着日し、音響と空間の固有性
の関係について研究することにした。
ン
早稲田大学 渡辺仁史研究室
〓早 訥研究
第 1
Ю苺榊枷S肛翻難観
メ艤無冊=楓̈蟻一ド03一
‘一
早稲田大学 渡辺仁史研究室
゛総や和S題熱報測
メ纏業苺●燃購一一卜一0一
研 究 目的
本研究は、計画段階においての音場のシミュレーション手法の足掛りであり、
建築空間内の音場といった把握しづらいものを可視化することによって、視覚的
に表現し、音による空間内の音の大きさを評価する手法を検討することを目的と
する。
1-2早稲田大学 渡辺仁史研究室
逢轟,華蓋|ける書
'1員
華轟耕発
Юぐ苺撫e肛翻熙毅一一X鯖搬4■蝿購・‐卜・Φ霧
第 2章
建築における音に関する研究
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юでや榊O肛側熙毅
メ纏米苺・拠購卜一〇2
建築における音に関|する研究
建 築 にお け る音 に関 す る研 究
建築における音に関するこれまでの研究を
。1990年以降
。キーワー ド:サウンドスケープ、音環境、音楽と建築、音響、認知
・対象団体 :日 本建築学会、電子情報通信学会、(社 )日 本造園学会、(社)情
報処理学会、 (ネL)土木学会
という条件の元に調査した結果を分類すると次のようになった。
表 2-1 1990年以降の音・建築系論文の分類
建築空間において音響特性の重要性は言うまでもなく、音も光や温度などとと
もに大事な環境条件の一つである。しかし、論文検索を行った対象が 6団体、過
去 7年間で延べ163件という結果は、視覚に関する研究に比べると少ないといえ
る。
全体としての特徴は、ほとんどが調査型であり音響、ホール部門においても実
例分析が目立つ。さらに、サウンドスケープと認知を組み合わせた論文が飛び抜
けて多い。
項 目 詳細項 目 論文数 累計論文数
騒音 10 10
サウンドスケープ 73 73
認知 振 動 1
37
快・ 不 快 12
印象・イメージ 16牛 理 ・ ′r、理 4
視覚障害者 4
空間の音の状態 (均―・ムラ) 1
音計画 BGM 1
30
環境音楽 3
音環境計画 25
メディア 1
音楽と建築 9 9
音楽ホール 音響 1619和l用状 況・ 特 性 3
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Ю総卿榊O歴側.熙骰
メ鱚来博 弧購卜・09
建築:こおける音に関|する1研究
ロサウンドスケープ (音風景)
未だにこの言葉の定義付けがされていないというが、全くその通りで研究にお
いても各個人まちまちな捉え方をしているために検索結果が多くなった。
大きく分けると住環境、地域、都市空間での音を調査したタイプと、屋外を対
象とした認知などの論文でサウンドスケープという言葉を利用したタイプに分け
られる。周波数、場と音、レパー トリーグリッド、水音、日常語などをテーマと
しているものが多い。それぞれの論文が独自の評価指標を設けて調査をしてみた、
という例が多くあまり深くは掘り下げられていない。
□認知
研究実績が少ないため、生理・心理、視覚障害者に関する研究は少ない。快―
不快、印象 。イメージに関するものが比較的多い。
快―不快は実験を行って被験者の主観によって評価をしたものが多く、印象・
イメージはそれに加えて色光刺激、聴覚誘発電位をしようしたものもあった。
□音計画
音環境計画はテーマパーク、駅などで少し研究が行われているがほとんどは実
例分析なので、実際は音計画はとても少ないと言える。BGMや環境音楽という
ものは存在はするが、それが特定の指標に基づいてなくイメージである。
□音楽と建築
古典芸術としての音楽とその時代の音楽についての思想から論述したものばか
りで、音楽の要素と建築の要素を比べるということを扱つている研究はない。
早稲田大学 渡辺仁史研究室 2-3
Юぐ枷和O歴翻.熙報
メ鱚来侍●狐購一卜い0日
建築ヤこお|ける1音に1関|する1研究
□音楽ホール
音響と利用者の特性の 2つに分かれる。
音響は、実例分析のものと、音がいかにして空間内で均一になるか、また人数、
拍手の有無によりそれがどう影響するか、等という研究が多くなされている。
以上のなかで、実際に建築計画に応用される研究は、騒音対策や音楽ホールに
代表される室内音響設計に関するものである。しかし、一般に人が聴くというこ
とを目的において計画されることの少ないホール以外の建築物においては、空間
内の発生する音場の状態による評価の手法に関する研究はほとんどなされていな
い。
早稲田大学 渡辺仁史研究室
゛ヽ勲榊O肛襴檬繊
メ纏漱苺■拠針一卜一0一H
第 3章
音のシミュレーション
3.1 音の可視化と可聴化
3.2 これまでの音の可視化例
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юヽ勲榊O肛側熙報
音|の |シミ ユ|レ■ |シーヨーーン
音 の シ ミ ュ レー シ ョン
3.1音の可視化と可聴化
建築音響において設計段階で竣工後の音響特性を予測するシミュレーションを
行うが、その出力には音の「可視化」と「可聴化」がある。
シミュレーションの結果を実際に耳で聴き体験することは、音響のさまざまな
情報を一度に把握でき、音響設計の効果・問題点を確認するのに有効であり、よ
り確実な音響設計を実現させるための有力な手段となってきた。ここでは音は見
るよりは聴いたほうが分かりやすいということである。
そこで、可聴化の一例として、ホールの音響設計に以前から用いられているス
ケールモデル実験がある。
これは、実際のホール等の1/10~ 1/20の縮尺モデルを作って、その内
で実際の音楽などを 10倍位の高さの音に変換し、 1/10位 の時間で出して、
小さなマイクロホンで収録し、これを1/10位 の速度で再生して、元の音楽の
高さと速さの音に戻して聴き、実際にできるホールの音を設計の段階で検討する
方法である。
しかし、模型実験の場合、まず現実としてそう簡単に室形を変更して手軽に検
討するということは困難である。
次に、理論計算によるものの場合には、ある点に到達する全反射音を計算し、
この全反射音の特性を、音楽などの音源信号に合成する計算処理をおこなえば、
完成後のホールの音を聴けるようになるというわけである。
この場合、被験者がコンピュータが予測した空間のひびきを体験できるもの
で、異なる音場の差を比較できる。しかし、ある測定地点に到達する音の状態を
聴いているに過ぎず、音場全体の様子を一時に把握することは難しい。
また、可聴化によって得られた結果から、設計にフィードバックしようとした
とき、結果しか分からない可聴化型よりも音場をつくるプロセスが見える可視化
型のほうが利用しやすい。したがつて、音の可視化は以前にも増して重要になっ
メ纏来絆
楓#|
ト00日
3-2早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿榊O肛側駅慨
メ維米絆 楓#卜い0日
音 |の シミ|ユ レー■ シ■‐ン
てきているといえる。
3.2こ れまでの音の可視化例
可視化は本来人間の視覚では直接捕えられない現象や状態を、何らかの方法に
よって目に見える形にして表現することである。音もその一つである。
予測された物理的な音響特性を一般的に音の可視化は、次の2つのタイプに分
類できる。
①幾何音響や波動音響によって理論計算・解析した結果を可視化する
②模型実験等のような何らかの実験をおこない測定した結果を可視化する
ここで、②の測定には電磁波や可聴音、超音波、赤外線など可視光以外を用い
音の可視化の場合、音場全体を一時に表示することに意義がある(し かし、現
状では、音場全体の瞬時音圧や音圧レベル等を測定によって得ることは困難であ
る。したがって理論計算による結果を可視化することになる。
音響シミュレーションの計算理論には幾何音響と波動音響があるが、実務にお
いては、簡便であり、比較的計算時間が短くてすむ幾何音響による手法が依然と
して主流である。
可視化例には次のものがある。
□反射音線図
音源から出た音が伝搬し、反射 して室内のある受音点に到達する状態をその経
路図として表現するものである。その一例を図に示す。反射音の音線のうち、レ
ベルが高くかつ時間遅れの大きいものは音声受聴などを妨げることがある。この
表示により、問題になりそうな反射音が、どの壁面からくるのか、その履歴を知
ることができる。現在はコンピュータを用いて、数回の反射までを3次元的に追
跡することが可能となっている。
3-3早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ掏和O証側檬毅
メ纏来持 楓貯卜OoH
警|の,シ |ミ|二|レ■|シ 奎|ン
□反射音分布
ある音線を放射する無指向性音源を仮定し、客席面に入射する反射音として数
回反射までを追跡して、任意の時間帯内の反射音の分布を求めた結果を表現 した
ものである。一例を図に示す。図において、音線の矢印方向は音線の到来方向を、
長さは客席面へ投影された長さで、短いほど垂直方向からの人射を表している。
図 3-1 反射音線図
図3-2 反射音分布図の例
早稲田大学 渡辺仁史研究室 3-4
この手法は、さらに、音源の指向性を仮定して分布を求めることもできる。
これらの音響の可視化結果から音響欠陥の原因となる壁面の吸音処理、拡声ス
ピーカーの向きや音響ディレー (遅延装置)な どを調整して問題点の原因の除去
などがおこなわれている。
□音の可視化の研究例
①音線法に基づいて2次元音場内の音粒子の挙動を可視化したもの
設定した音源点から多数の音粒子を発生させ、音線法により任意の時間におけ
図3-3 音線法による可視化例
早稲田大学 渡辺仁史研究室 3-5
警|の|シ::ミ|二|レ|■|シ議|ン
る音粒子の位置を解析し可視化表現したものである。これは、解析した形状内の
過渡的なエネルギーの遍在性を、計算した音粒子の密度により推定できる。
②長方形音場のにおける解析解を計算し可視化したもの
長方形音場において変数分離法により解析解を求め、インパルス応答の近似解
を表示 させる。
やヽ却和C肛側熙骰
メ編漱持
●楓#卜02
|||:||‐ ||||‐ |‐ |||||||||ます図3-4 インパルス応答表示
CtitIII● ttOfIloflth● :rtil基
"=赫
Ⅲ麟Orl:lfll●to壽=vIユ
r●oII●df● ld‐
兵嶺3がま|で 1
五=641ま|で
早稲田大学 渡辺仁史研究室 3-6
音|の|シ |ミ|,ユ|ン|■|シ|■ |―ン
③2次元音場における過渡的な音圧分布を計算し可視化したもの
Юぐ蒋和O肛期熙骰
・●メ纏来伴 燃せふ2
摯:やす音ⅢⅢIIⅢIII摯轟議図 3-5 過度音圧分布の可視化例
榔1激略壌1
早稲田大学 渡辺仁史研究室 3-7
゛でや撫〇一証韻熙銀
メ経鍬絆一燃購・一・卜一0い言
④ 2次元音場における瞬時音響インテンシティを計算 し可視化 したもの
差分法を用いて求めた2次元音場の音圧と粒子速度の数値解の積により、各点
における瞬時インテンシティを求め、設定した音源点から疑似パルス音を発生さ
せたときの計算結果を示したものである。これは、障壁等の周りの回折の様子が
観察でき、波動現象が計算されていることが分かる。
|■蓄:
図3-6 瞬時音響インテンシティの可視化夕1
ⅢⅢ・・tllll縮:4nti■ ty●廂 泰
“
諄日ヤ|IⅢ■
“
|こ |||
早稲田大学 渡辺仁史研究室 3-8
Юぐ押和C題側熙報
メ纏懇博●攘購
卜0いH
音:●|シ |ミ|ユ:ン |■|シ議|ン
⑤ BergerOn法 に基づいて音響伝搬性状を可視化したもの
Bergerorl法 のよって得られた解析空間に設定した格子の交差点 (接点)ごと
に瞬時音圧の時間応答から、任意の時刻の音場の応答が横波表示の静止画として
得られる。これらの静止画を連続再生してアニメーションによる可視化を行って
いる。
図3-7 音響伝搬性状の可視化例
早稲田大学 渡辺仁史研究室 3-9
=|,|IⅢlキIⅢl111111111■二|■■■11:難彙霧i築
第 4章
研究概要
゛ヽ都枷O.駆熱檬慨
メ艦靭苺●楓購一卜一0一
早稲田大学 渡辺仁史研究室
゛苺掏伽O肛鯛檬俄
メ権鑑博●撻購一一卜・00=
研 究 概 要
ホテルや図書館、美術館あるいは住宅等を設計する際、設計者は空間の機能に
応じてそこで聞こえる様々な音を考慮しているが、この様な場合に音場をに関す
る評価やシミュレーションをが行われることは少なく、経験的に形態や配置を決
定している。これは、ホールなどの音響空間と異なり、一般的な建築空間におい
ては音の発生や音を聴く主体である人が変化するため、音の状態がそれぞれの機
能に適しているかどうかを評価する手法や、設計の際にそれをシミュレーション
する方法がなかったためである。
そこで、第2章では建築における音に関するこれまでの研究について、また第
3章では音響学的なアプローチからの音のシミュレーションにおける可視化の意
義とこれまで試みられた可視化の事例について整理した。
これらの背景をもとにして、5章以降では、一般的な建築空間として図書館に
着目し、「建築空間の音をみる」簡易的な手法で空間内の音の大きさと構成をみ
るシミュレーションをおこない、得られたデータから、この手法で評価が可能で
あるかどうかを検討する。
早稲田大学 渡辺仁史研究室 4-2
,心虚一鸞蘇露群鱗戯一
.=齢群町麟慰■諄=
第 5章
研究方法 "空間の音をみる、
図書館の音をみる"
5.1音をみる
5.2図書館の音をみる
5。3音をみる方法
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Ю心や撫e歴側熙毅
メ鱚来絆 楓購卜・OoH
研究方法||lrl空1間 の音をみる●図書館の音|をみる1
研究方法 "空 間の音をみる、図書館の音をみる "
5.1音をみる
今日、建築計画の中で音響について考慮されている対象の多くは、ホールで
あるが、ホールという空間の特性上、常に人が「聴く」といった目的において計
画されている。そのため、音源から発せられる音が、すべての周波数について、
適当に拡散 して、均等に分布されるようにするなど、その音場が均質となること
を目指している。
しかし、ホール以外の建築物では、常に人が「聴く」といった目的を主に計
画されることは少ないため、一般に音場が均質でない。また、室内の周囲を見回
してみると音を反射する面もあり、逆に、音を吸収する物体 もある。適当に反射
があり、適当に吸収がある。特に、現在の建築空間は向かい合う壁が平行である
ことが多く、材質もコンクリー ト、ガラスといったように反射性が高いため、空
間内に音場のムラが発生しやすい。つまり、ある空間内において、音場にはムラ
が存在し、それが空間の固有性を示すものの一つともいえる。そこで、音の方向
性、反射という特性に着目し、音源から発せられた音の空間内での大きさと構成
を視覚化 して、任意の位置での音をみる。
空間は壁や屋根などの囲いにより認知するが、空間内の音場は日でみることが
できないために、直接 3次元的に可視化 して評価するのは困難である。それを3
次元的に捉えるために、誤差は生じるが、対象となる空間に対し断面状にスク
リーンを挿入して空間を区切っていき、その連続によって3次元的な評価を試み
る。
早稲田大学 渡辺仁史研究室 5-2
ヾぐ卿和O肛期熙骰
Ⅸ纏米倖 駆購
卜02
研究方法 "空間の音をみる、図書館の音をみる"
5.2図 書館の音をみる
ホール以外の建築物として、その内部において発生する音源の種類が比較的少
なく、また音源の発生箇所も限定して考えられるため、図書館に着日した。
そこで、本研究では、横浜金沢図書館について音をみることにした。
5.3音をみる方法
1.図書館にて音源の発生箇所/種類、室内仕上げの材質について調査する。
2.図書館をモデリングする。
このとき、室内仕上げの材質ごとにレイヤーを分けておく。
3.Strata Studio Proを 用いてレングリングを行う。
a.音源を光源に置き換え、配置する。
音の方向性や反射、透過という特性に着目して、音源を光源に置き換える。音
源から発せられる音量は光源の光の明度に置き換え、また音源を区別するために、
配置する光源の光の色を変える。
ここで、音には光と同じように真っ直ぐ進むという基本的な性質を持つが、回
折することもある。一方、光は波長がきわめて短いために回折が起こりにくい。
図5-1 音源の設定位置
早稲田大学 渡辺仁史研究室 5-3
研究方法 :空間の音をみる、図書館―の音をみる"
しかし、周波数の高い音ほど回折しにくいので、高周波音域に対しては光の減衰
に近似できるといえる。
音源は閲覧・談話コーナー、貸し出しカウンターがある以下の3箇所に配置し、
К〕Bを用いて色分けをする。音の大きさ (光 の明度)はそれぞれ、R=65%、 G
=70%、 B=55%に 設定した。
b.材質特性を設定する。
材質特性の設定方法
①材質の色はすべて白に設定する。
これは、音源からの音の色をみるた
めである。
Юぐ卿和C肛側職毅
X纏米= 楓購卜ooH
②反射度、透過度を求める。
吸音率 Xと透過損失Yか ら、右図に
示すように、
反射度 A=1-X
透過度 B=X× Y/100
とな り、これから数値を求める。
シミュレーションを行う横浜市金沢
図書館において、上の方法によって求
めた各材質ごとの設定数値は次の表の
瑯叫押押逓過損失Y
図 5-2 設定ウイン ドウ
早稲田大学 渡辺仁史研究室
5-2
5-4
Юぐ却和C肛側熙赳
メ鱚来絆 楓貯卜o2
研究方法‐"空間の音をみる、図書館の音をみる"
とおりである。
図書館という空間の特性と音源発 4L位置から、発生している rfを 人の話し声と
仮定し、その周波数は「人のざわめきJの 音の高さを設定している。
③ スクリーンとカメラを配置する。
ド図のように、モデルに観察川のスクリーンを断mi状 にllTl人 する。レンダリン
グ後、そのスクリーン上に映った画像を取り出す。このスクリーンを2 ml11隔で
移動させて合計 1()箇所について、各々の位置でこの作業を繰り返す。
図 5-3 スク リーンの配置
4.各音源からの音を個別に表現 した3種類の画像と、全音源からの音の様子を合
成 した 2種類の画像 (カ ラー表示とグレースケール表示)を取 り出す。
表 5-1横浜市金沢図書館における設定数値
材 質 吸 音 率 透過 損 失 反 射 率 (反射 効 果 ) 置過 率 (透明 度 )
天 丼 成型 岩 綿 吸 音板 062 0209ホール壁 スチールバンチングメタ引
アクリル樹脂焼付塗装
012 253 0223
床 カーペットタイル 008 092 0506開架 室壁 カバ 錬 付 合 板 02 0168
嗅層 窓 (ガ ラス ) 004 096 0317壁 コンクリー ト 001 0544スクリーン 0 0
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юヽ伸榊e肛側熙報■―.一一一メ一鷹業苺●燃針ヽ3
研1究1方法==空
謝の書|を ||み|る
'「
1図1書1館|の1春|なみ|る "
5.取 りだした画像から空間内の任意地点での音をみる。また、取りだした画像の
連続によって、図書館内部の音を3次元的に評価する。
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第 6章
結果
゛ヽや榊O歴器檬慨
状鰭鑑絆■標暑・一卜一〇0=
早稲田大学 渡辺仁史研究室
゛鑢や枷O歴器檬.側
メ鷹報絆●撻暑一一卜一〇0=
今回行った実験では、音を光の状態に置き換えて可視化 したことによって、空
間内の音場の状態 (音の大きさ。構成)を、色分けされた各音源についての個別
の音の様子と、全音源の合成の音の様子についてみることができた。また、画像
の連続によって 3次元的にみることができた。
個別の音の様子からは、各音源についての任意地点での音の大きさをみること
ができる。また、全音源の合成の音の様子からは、任意地点での3音源の構成と、
全体が合成されたときの任意地点での音の大きさをみることができる。
画像の中で、明度が高いところほど色が薄く、低いところほど色が濃い。これ
は、音の大きさが大きいほど色が薄く、小さいほど色が濃いということを示して
いる。
6-2早稲田大学 渡辺仁史研究室
スクリーン NO.1
Юぐ卿榊C肛側熙骰
メ纏来伴 楓購卜02
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿和O肛側檬毅
Ⅸ濡米博 楓購卜02
早稲田大学 渡辺仁史研究室
スクリーン NO.2
Юぐ卿和O肛側熙製
メ催一鎌倖 当貯
卜o8
渡辺仁史研究室
Юぐ却和O肛側檬報
メ編Ж絆
一楓購卜09
早稲田大学 渡辺仁史研究室
スクリーン NO.3
Юく押和C肛側畔骰
メ纏米絆 樫せ
卜o8
BA
|:L稲 田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿榊C肛器駅慨
メ鱚来絆 楓購卜09
早稲田大学 渡辺仁史研究室
スクリーン NO.4
Юぐ卿和O肛側熙製
メ纏来絆 駆せ卜08
6-9早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿和O肛側熙製
メ鱚米件 楓購
卜00〓
早稲田大学 渡辺仁史研究室
スクリーン NO.5
Юぐ卿和O肛器熙毅
メ纏来絆 楓購卜00H
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿榊C肛側熙骰
メ編来件 楓購卜OoH
早稲田大学 渡辺仁史研究室
スクリーン NO.6
ヾ埓や撫O歴側熙慨
メ網来絆
一撻#一・卜一〇0日
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿和C肛側熙骰
メ鱚米伴 楓せ卜09
早稲田大学 渡辺仁史研究室
スクリーン NO.7
Юぐ卿和C肛側熙毅
メ纏米絆 駆せ
卜o8
(,-15早稲 IΠ 大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿榊C肛側畔避
メ編縦廿 楓購
卜o2
渡辺仁史研究室
Юぐ卿榊C肛側熙毅
メ纏米等 樫購
卜o含
スクリーン NO.8
早稲田大学 渡辺仁史研究室 6-17
Юぐ押和C恒側熙側
メ纏駅苺 堅き
卜o8
早稲田大学 渡辺仁史移リピ室
結 果
スクリーン NO.9
1■■111:||:||:|||:|||:|:|||||
Юぐ卿榊C肛期畔製
メ纏米姜 取一き
卜o2
Fュ稲口1大学 渡辺仁l史イリリピ空
紺i果
呻総卿和C肛側鮒製
Ⅸ鱚米苺 堅せ
卜o8
()-20早稲田大学 渡辺仁史研究宝
スクリーン NO.10
゛鑢櫻撫e肛側熙慨
メ網来苺●撻暑一一卜一〇OH
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ押和C肛側畔製
メ纏米姜 督き
卜o8
6-22
スクリーン NO.11
Ю心椰撫O肛側熙報
メ編来棒●拠■卜0一H
早稲田大学 渡辺仁史研究室
Юぐ卿和C肛側甜毅
メ纏漱苺 燃賠
卜02
早稲田大学 渡辺仁史研究室
スクリーン NO.12
Юヽ伸枷e肛器熙慨
メ鮨来.博 楓購一卜・03
早稲田大学 渡辺仁史研究室
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早稲田大学 渡辺仁史研究室
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早稲田大学 渡辺仁史研究室
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早稲田大学 渡辺仁史研究室
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グレー (音の大きさ)
第 7章
考察
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今回の結果から得 られた長所と短所は次のようになる。
長所
1.ス クリーンを挿入するという方法により、任意地点での音場の状態を簡易的に
音をみることができる。
2.人の耳はポイン ト的にしか音を捉えられないため、可聴化ではある一ヶ所での
音しか聴けない。それに対し、3次元的に音をみることによって全体的な把握が
可能である。
3.快・不快、イメージ、印象などの主観的評価に比べて、客観的評価が可能であ
る。
4.本研究では,図書館では他の建築空間に比べて人の声があまり発生しないとい
えるので、この光源を用いた方法は、有効であるといえる。
5.音源を色分けしたことにより、スクリーンを挿入した地点での各音源からの音
がどのように構成されているのかを直観的に捉えることができる。
短所
1.ベ ク トル、経時的な表現ではない。
2.壁際になる程、誤差が大きくなる。
以上の点から考えて、このシミュレーション手法は音を光に置き換えた形で行う
簡易的な方法であるが、形状や内部の配置と、複数の音源の作 り出す音場を表現
することができたといえる。スクリーンを張るという方法により、任意空間での
音場の状態を簡易的に知ることが可能であり、そして、レンダリングによって得
られたデータから、スクリーンの位置においての音場の状態のうち、その地点ま
で達している音源の成分と分布について、直観的に音場を把握することが可能で
あるといえる。また、このように、手軽に、かつビジュアル的に音環境のシミュ
レーションを行うことができれば、建築の初期計画段階においても、有効な設計
支援ツールとなる。
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早稲田大学 渡辺仁史研究室
考 察
また、今回検討を行つた図書館のように、比較的、高周波音が発生 し存在して
いる建築空間に対しては、光を用いたこの手法は有効であるといえる。
このように、手軽に、かつビジュアル的に音環境のシミュレーションを行うこ
とができれば、音をみることができれば、可視化された音場の状態と空間の機能
とを重ね合わせることによって、計画初期段階において、建築空間内の音をみな
がら配置計画の検討を行う、などというように、これまで経験的に行ってきた形
態や配置の決定に対しての有効な設計支援ツールとなる。
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第 8章
まとめ
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8-1早稲田大学 渡辺仁史研究室
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まとめ
一般的な建築において考慮される空間の音は、その大きさや発生場所、音源の
数等が一定ではな く、また時間と共に変化 したりする。したがって、これまで
ホールなどのような建築に対して進められてきた音響設計としての研究は、音響
環境面においては特殊な状況を対象にシミュレーションしているものであり、今
回対象としているような公共的建築には適用できなかった。
それに対して、今回試みた「建築空間の音をみる」手法では、音を光に置き換
えた形で行う簡易な方法であるが、形状や内部の配置と、複数の音源の作 り出す
音場を表現することができたといえる。また、図書館のように比較的、高周波音
の発生する建築空間に対しては、光を用いたこの手法は有効であるといえる。
この様に音をみることができれば、可視化された音場の状態と空間の機能とを
重ね合わせることによって、計画初期段階において、建築空間内の音をみながら
配置計画の検討を行う、などというようなことに有効である。
しかし、今回は音源数を3と して考えたため、RGBを用いて音源か ら発生す
る音の色分けを行ったが、音源数が4以上の場合についてはこのままではうまく
適用できない。また、音の方向性までをみることはできておらず、この手法から
ではベク トル情報は得られない。この他に、機能がさらに増えた場合、時間と共
に変化 した場合、などの問題点も発見された。
本研究で明らかになったこれらの問題点を解決し、今後、この「建築空間の音
をみる」手法をさらに発展させていきたい。そのために、パーティクリレオブジェ
ク ト等を利用して音を粒子として考え、音場をベク トル経時的に評価できること
を目標として、建築空間の音をみる手法を検討していくことを考えている。また、
今回は図書館をサンプルとしたが、他の建築空間に対しても評価を行つていき、
建築計画を進めるに際してのシミュレーション手法としての有効性を検討してし
ていくことも必要である。
8-2早稲田大学 渡辺仁史研究室
Ю総卿榊C肛側熙製
メ鱚米絆 楓購卜09
しかし、今回こうやつて建築空間の音をみたことは、これまであま
なかった音響空間以外の建築空間に対して利用できるシミュレーショ
‐歩として、有効なものであったといえるだろう。
まとめ
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早稲田大学 渡辺仁史研究室 8-3
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参考文献・URLリ ス ト
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日本建築学会 :日 本建築学会設計計画バンフレット4 建築の音環境設計<新訂
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建築思潮研究所編 :建築設計資料 7 図書館 (建築資料研究社、1984)
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早稲田大学 渡辺仁史研究室
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■論文
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会建築音響研究会資料 んへ96-34(1996)
石田康二 :幾何音響学に基づく各種シミュレーション手法について、日本音響学
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本音響学会建築音響研究会資料
山久瀬健 :聴空間入力によるCGI研究、修士論文 (1996)
望月太郎 :建築空間の音楽による記述方法に関する研究、卒業論文 (1996)
■雑誌
特集「音」というメディア、AXIS 506月 号 vd.67、 1997
音のからだ、談 冬号 no.56、 たばこ総合研究センター、1997
早稲田大学 渡辺仁史研究室
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一恭=撫患撼難・難繊
インターコミュニケーション9 音=楽テクノロジー、NF出 版、1994
■ URL
永田穂 :永田音響設計 News 974号
http://1-.nagata.cojplミws/nen7s9704.htm
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http://m― .Inet.nagoya― u.acJp/KENKOU/kb18/1vakun18.ht耐
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おわ りに
私たちの日常には音があふれ、私たちはさまざまな音にいろいろな形で包まれ
ている。一般に「音」が問題にされるとき、それは「音楽」や「騒音」として取
り上げられることが多い。しかし、「音」の世界はそれだけにとどまらない。
その「音」を研究テーマに選択してからは、「ああしたい、こうしたい」と、や
りたいことが膨らむばかりだった。その_上、「音」に関しての基礎知識不足とい
うこともあって、なかなか思うように進まなかった。それがこうやって一つの形
としてなんとかまとめることができて、今はほっとしている。
ところで、しばらくの間、日を開じて周囲の音に耳を澄ましてみる。すると、
無意識に通りすぎていた音が、はつきりと聞こえてくる。最近、私はこうするの
が好きになった。そして、もしそれらの音をみることができたら、そこには聴く
のとは違った発見があるかもしれない。しかし、それが一体何なのか、今回は分
からなかった。
「音」と建築との関係には他にもいろいろな魅力があるが、この卒論を第一歩
として、ささやかな夢を抱きつつ、大学院進学後も「音」をテーマに研究してい
きたいと思っている。
最後に、この卒業論文をまとめるにあたり、渡辺仁史先生をはじめ、卒論担当
者や研究室の方々には大変お世話になった。特に、一緒に徹夜で作業を手伝って
くださった望月さん、発表前にアドバイスをくださった山久瀬さん、なかなか先
へ進まない私を助けてくださった長沢さんには、厚くお礼を申し上げたい。
1997年 11月 加藤佳寿美
早稲田大学 渡辺仁史研究室
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